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東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の販売業者に対する

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東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の販売業者に対する
東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の販売業者に対する
排除措置命令及び課徴金納付命令について
平成21年3月17日
公 正 取 引 委 員 会
公正取引委員会は,青森県,岩手県,宮城県,秋田県,山形県及び福島県の区
域(以下「東北地区」という。)に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の販
売業者に対し,独占禁止法の規定に基づいて審査を行ってきたところ,同法第
3条(不当な取引制限の禁止)の規定に違反する行為を行っていたとして,本日,
同法第7条第2項の規定に基づく排除措置命令及び同法第7条の2第1項の規定
に基づく課徴金納付命令を次のとおり行った(違反行為については別添排除措置
命令書参照。)。
1
排除措置命令及び課徴金納付命令の対象事業者並びに課徴金額
番
号
事業者名
本店の所在地
代表者
課徴金額
1 株式会社シラカワ
東京都中央区日本橋馬喰町一丁目
13番11号
代表取締役
白川 和英
2358万円
2 アズマ株式会社
東京都台東区小島二丁目1番1号
代表取締役
武藤喜八郎
1372万円
3 カナガワ株式会社
神奈川県愛甲郡愛川町田代
437番地
代表取締役
市来 啓道
439万円
合
計
4169万円
2
違反行為の概要
株式会社シラカワ,アズマ株式会社 及びカナガワ株式会社の3社(以下
「3社」という。)は,平成17年3月29日ころ,3社が直接又は特定販売
業者(注1)を通じて需要者(注2)に販売する東北地区に所在する縫製工場等向け工
業用ミシン糸(以下「特定工業用ミシン糸」という。)の需要者渡し価格につ
いて,同年4月21日以降遅くとも同年5月21日までの受注分から,現行価
格より10パーセント以上引き上げることを合意することにより,公共の利益
に反して,東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の販売分野にお
ける競争を実質的に制限していた。
(注1) 青森縫糸株式会社,秋田糸業株式会社,亀屋株式会社,有限会社東双,東北かながわ株式会社,
株式会社トスク(平成20年10月20日破産手続終結により消滅),株式会社中村糸店及び福島
糸業株式会社(平成18年10月13日に設立)をいう。
(注2) 工業用ミシン糸を縫製等に用いる者をいう。
問い合わせ先
ホームページ
公正取引委員会事務総局東北事務所第二審査課
電話 022−225−8421(直通)
公正取引委員会事務総局審査局第四審査上席
電話 03−3581−3345(直通)
http://www.jftc.go.jp
3 排除措置命令の概要
(1) 3社は,それぞれ,前記2の合意が消滅している旨を確認すること及び今
後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,特定工業用ミシン糸の
需要者渡し価格を決定せず,各社がそれぞれ自主的に決める旨を,取締役会
において決議しなければならない。
(2) 3社は,それぞれ,前記(1)に基づいて採った措置を,自社を除く2社に通
知するとともに,特定販売業者のうち株式会社トスクを除く7社及び特定工
業用ミシン糸の需要者に周知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければ
ならない。
(3) 3社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の事業者と共同して,
特定工業用ミシン糸の需要者渡し価格を決定してはならない。
4
課徴金納付命令の概要
3社は,平成21年6月18日までに,それぞれ前記1の表の「課徴金額」
欄記載の額(総額4169万円)を支払わなければならない。
参
1
2
工業用ミシン糸
工業用ミシン糸は,縫製工場等において,衣服,皮革,製袋,帆布,履物等の縫
製等に用いられるミシン用の縫糸である。工業用ミシン糸には,素材別に,天然繊
維である絹,綿及び麻のもの並びに合成繊維であるポリエステル,ナイロン,ビニ
ロン等のものがある。
最近の価格カルテル事件
件
名
措置年月日
内
塩化ビニル管及び塩化ビニル管継手について,
平成16年3月1日受注分から,塩化ビニル管の出荷価格につい
ては現行価格から15パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷価
格については現行価格から10パーセント以上引き上げること等
② 平成16年10月1日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格につ
いては現行価格から10パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷
価格については現行価格から8パーセント以上引き上げること等
③ 平成17年10月11日ころ出荷分から,塩化ビニル管の出荷価
格については現行価格から8パーセント以上,塩化ビニル管継手の
出荷価格については現行価格から5パーセント以上引き上げること
等
④ 平成18年6月21日出荷分から,塩化ビニル管の出荷価格につ
いては現行価格から15パーセント以上,塩化ビニル管継手の出荷
価格については現行価格から10パーセント以上引き上げること等
のクボタシーアイ㈱の価格引上げ方針に沿って出荷価格を引き上げ
ること
を合意していた。
①
平成21年(措)第1号
積水化学工業㈱ほか
1社に対する件
平成21年2月18日
容
考
件
名
措置年月日
内
容
平成20年(措)第20号
シャープ㈱ほか1社
に対する件
平成20年12月18日
任天堂㈱が製造販売する「ニンテンドーDS Lite」と称する
携帯型ゲーム機の表示画面に用いられるTFT液晶ディスプレイモ
ジュールの平成19年第一四半期受注分の任天堂㈱に対する販売価格
について,㈱日立ディスプレイズが平成18年9月11日ころに任天
堂㈱に対して提示した価格を目途とする旨の共通の意思を形成してい
た。
平成20年(納)第62号
シャープ㈱に対する件
平成20年12月18日
任天堂㈱が製造販売する「ニンテンドーDS」と称する携帯型ゲー
ム機の表示画面に用いられるTFT液晶ディスプレイモジュールの平
成17年度下期受注分の任天堂㈱に対する販売価格について,現行価
格から100円を超えて下回らないようにする旨の共通の意思を形成
していた。
平成20年(措)第12号
JFEスチール㈱ほか
1社に対する件
平成20年6月4日
国,地方公共団体等が発注する建設工事を請け負う建設業者が同工
事に使用する鋼管杭について,
① 平成16年4月契約分から,1キログラム当たりのベース価格
を,建設業者の区分ごとに設定した特定の価格以上とすることによ
り,建設業者向け販売価格を現行価格から引き上げること
② 平成17年4月契約分から,1キログラム当たりのベース価格
を,建設業者の区分ごとに設定した特定の価格以上とすることによ
り,建設業者向け販売価格を現行価格から引き上げること
を合意していた。
平成20年(措)第13号
JFEスチール㈱
に対する件
平成20年6月4日
国,地方公共団体等が発注する建設工事を請け負う建設業者が同工
事に使用する鋼矢板について,
① 平成16年4月契約分から,1キログラム当たりのベース価格
を,全国規模で営業を展開する建設業者向けについては75円以上
と,それ以外の建設業者向けについては77円以上とすることによ
り,建設業者向け販売価格を現行価格から引き上げること
② 平成17年4月契約分から,1キログラム当たりのベース価格
を,全国規模で営業を展開する建設業者向けについては77円以上
と,それ以外の建設業者向けについては79円以上とすることによ
り,建設業者向け販売価格を現行価格から引き上げること
を合意していた。
ポリプロピレン製シュリンクフィルムの出荷価格について,
平成16年4月上旬ころ出荷分又は契約分から,現行価格より1
cc当たり3銭を目途に引き上げること等
② 平成17年10月上旬ころ出荷分又は契約分から,現行価格より
1cc当たり3銭を目途に引き上げること
③ 平成18年9月下旬ころ出荷分又は契約分から,現行価格より1
cc当たり3銭を目途に引き上げること
を決定していた。
①
平成20年(措)第5号
㈱興人ほか1社
に対する件
平成20年3月28日
ガス用フレキシブル管について,
基準額を現行のものから13パーセント引き上げ,もって,平成
16年4月1日出荷分から,需要者又は販売業者に対する販売価格
を現行価格から引き上げること
② 基準額を現行のものから16パーセント引き上げ,もって,平成
18年10月1日出荷分から,需要者又は販売業者に対する販売価
格を現行価格から引き上げること
を合意していた。
①
平成20年(措)第3号
JFE継手㈱ほか2社
に対する件
平成20年3月24日
件
名
措置年月日
内
容
ガス用フレキシブル管継手について,
基準額を現行のものから10パーセント引き上げ,もって,平成
16年4月1日出荷分から,需要者又は販売業者に対する販売価格
を現行価格から引き上げること
② 基準額を現行のものから20パーセント引き上げ,もって,平成
18年6月1日出荷分から,需要者又は販売業者に対する販売価格
を現行価格から引き上げること
を合意していた。
①
平成20年(措)第4号
新和産業㈱ほか1社
に対する件
平成20年3月24日
3
参照条文
○
私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(抄)
(昭和二十二年四月十四日法律第五十四号)
〔定義〕
第二条
⑥ この法律において「不当な取引制限」とは,事業者が,契約,協定その他何らの名義
をもつてするかを問わず,他の事業者と共同して対価を決定し,維持し,若しくは引き
上げ,又は数量,技術,製品,設備若しくは取引の相手方を制限する等相互にその事業
活動を拘束し,又は遂行することにより,公共の利益に反して,一定の取引分野におけ
る競争を実質的に制限することをいう。
〔私的独占又は不当な取引制限の禁止〕
第三条 事業者は,私的独占又は不当な取引制限をしてはならない。
〔排除措置〕
第七条
② 公正取引委員会は,第三条〔私的独占又は不当な取引制限の禁止〕又は前条の規定に
違反する行為が既になくなつている場合においても,特に必要があると認めるときは,
第八章第二節〔手続〕に規定する手続に従い,事業者に対し,当該行為が既になくなつ
ている旨の周知措置その他当該行為が排除されたことを確保するために必要な措置を命
ずることができる。ただし,当該行為がなくなつた日から三年を経過したときは,この
限りでない。
〔課徴金〕
第七条の二 事業者が,不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とする
国際的協定若しくは国際的契約で次の各号のいずれかに該当するものをしたときは,公
正取引委員会は,第八章第二節〔手続〕に規定する手続に従い,当該事業者に対し,当
該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業活動がなく
なる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは,当該行為の実行としての事業活動
がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」という。)における当
該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額(当該行為が商品又は役務の
供給を受けることに係るものである場合は,当該商品又は役務の政令で定める方法によ
り算定した購入額)に百分の十(小売業については百分の三,卸売業については百分の
二とする。)を乗じて得た額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなけれ
ばならない。ただし,その額が百万円未満であるときは,その納付を命ずることができ
ない。
一 商品又は役務の対価に係るもの
二 (略)
※
ただし,平成十七年改正法附則第五条(課徴金に関する経過措置)の規定により,違
反行為のうち施行日前に係るものについての「課徴金の額の計算」については,改正前
の私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「旧法」という。)の規定に
よる。
平成十七年改正法附則(抄)
(課徴金に関する経過措置)
第五条
2 前条第二項に規定する違反行為について新法第五十条第六項において読み替えて準
用する新法第四十九条第五項の規定による通知をする場合において当該違反行為が施
行日前に開始され,施行日以後になくなったものであるときは,当該違反行為のうち
施行日前に係るものについての課徴金の額の計算(売上額に乗ずる率に限る。)につ
いては,なお従前の例による。
旧法の規定
〔課徴金〕
第七条の二 事業者が,不当な取引制限又は不当な取引制限に該当する事項を内容とす
る国際的協定若しくは国際的契約で,商品若しくは役務の対価に係るもの又は実質的
に商品若しくは役務の供給量を制限することによりその対価に影響があるものをした
ときは,公正取引委員会は,第八章第二節〔手続〕に規定する手続に従い,事業者に
対し,当該行為の実行としての事業活動を行つた日から当該行為の実行としての事業
活動がなくなる日までの期間(当該期間が三年を超えるときは,当該行為の実行とし
ての事業活動がなくなる日からさかのぼつて三年間とする。以下「実行期間」とい
う。)における当該商品又は役務の政令で定める方法により算定した売上額に百分の
六(小売業については百分の二,卸売業については百分の一とする。)を乗じて得た
額に相当する額の課徴金を国庫に納付することを命じなければならない。ただし,そ
の額が五十万円未満であるときは,その納付を命ずることができない。
4 課徴金制度の概要
(1) 課徴金納付命令
公正取引委員会は,事業者がカルテル・談合をした場合,当該事業者に対して,
課徴金を国庫に納付することを命ずる(第7条の2①。ただし,平成17年改正法
附則第5条②の規定により,違反行為のうち施行日前に係るものについての「課徴
金の額の計算(売上額に乗ずる率に限る。)」については,旧法の規定による。)。
(注)カルテル・談合をした会社が課徴金納付命令を受ける前に合併により消滅した場合は,合併
後存続し,又は合併により設立された会社に課徴金の納付を命ずる(第7条の2⑲)。
(2) 課徴金額の計算
ア カルテル・談合の実行期間中(最長3年間)の対象商品又は役務の売上額を基
に,事業者の規模や業種ごとに定められた課徴金算定率を乗じて計算する。
課徴金額
=
カルテル・談合の実行期間中の
対象商品又は役務の売上額
×
課徴金算定率
(注)課徴金額が100万円未満であるときは,課徴金の納付は命ずることができない(第7条の
2①)。また,課徴金額に1万円未満の端数があるときは,切捨てとなる(第7条の2⑱)。
イ
課徴金算定率((
)内は,旧法の規定による課徴金算定率。)
大企業
業種
早期解消
製造業等
小売業
卸売業
10%
(6%)
3%
(2%)
2%
(1%)
中小企業
再度の違反
8%
15%
2.4%
4.5%
1.6%
3%
早期解消
4%
(3%)
1.2%
(1%)
1%
(1%)
再度の違反
3.2%
6%
1%
1.8%
0.8%
1.5%
(注)1
早期解消の課徴金算定率は,調査開始日の1か月前の日までに違反行為をやめ,かつ,
違反行為に係る実行期間が2年未満である事業者に対して適用される。ただし,当該事業
者が再度の違反事業者である場合には適用されない(第7条の2⑤)。
2 再度の違反の課徴金算定率は,調査開始日からさかのぼり10年以内に課徴金納付命令
(当該命令が確定している場合に限る。)等を受けた事業者に対して適用される(第7条
の2⑥)。
3 違反事業者が,同一事件について,罰金の刑に処する確定裁判を受けたときは,課徴金
額(課徴金減免制度の適用を受ける場合は,減額後の課徴金額)から,罰金額の2分の1
に相当する金額が控除される(第7条の2⑭)。ただし,課徴金額が罰金額の2分の1に
相当する金額を超えないとき,又は課徴金額から罰金額の2分の1に相当する金額を控除
した後の金額が100万円未満であるときは,課徴金の納付は命ずることができない(第7
条の2⑮)。
(3)
課徴金減免制度
事業者が自ら関与したカルテル・談合について,その内容を公正取引委員会に自
主的に報告した場合,課徴金額が減免される(第7条の2⑦∼⑨)。
①調査開始日前の1番目の申請者 = 課徴金納付を免除
②調査開始日前の2番目の申請者 = 課徴金額を50%減額
合計3社まで
③調査開始日前の3番目の申請者 = 課徴金額を30%減額
④調査開始日以後の申請者
= 課徴金額を30%減額
(注)課徴金納付命令等がなされるまでの間,公正取引委員会の求めに応じ,違反行為に係る事実
の報告等を追加して行わないとき等においては,課徴金の減免を受けることはできない(第7
条の2⑪・⑫)。
別添
平成21年(措)第4号
排
除
措
置
命
令
書
東京都中央区日本橋馬喰町一丁目13番11号
株式会社シラカワ
同代表者
代表取締役
白
川
和
英
藤
喜八郎
東京都台東区小島二丁目1番1号
アズマ株式会社
同代表者
代表取締役
武
神奈川県愛甲郡愛川町田代437番地
カナガワ株式会社
同代表者
代表取締役
市
来
啓
道
公正取引委員会は,上記の者らに対し,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関
する法律(以下「独占禁止法」という。)第7条第2項の規定に基づき,次のとお
り命令する。
主
1
文
株式会社シラカワ,アズマ株式会社及びカナガワ株式会
社の3社(以下主文において「3社」という。)は,それ
ぞれ,次の事項を,取締役会において決議しなければなら
ない。
(1)
3社が直接又は特定販売業者(別表記載の販売業者を
いう。以下主文において同じ。)を通じて需要者(工業
用ミシン糸を縫製等に用いる者をいう。以下主文におい
て同じ。)に販売する東北地区(青森県,岩手県,宮城
県,秋田県,山形県及び福島県の区域をいう。)に所在
する縫製工場等向け工業用ミシン糸(以下主文において
「特定工業用ミシン糸」という。)について,平成17
年3月29日ころに3社が共同して行った需要者渡し価
1
格を引き上げる旨の合意が消滅している旨を確認するこ
と
(2)
今後,相互の間において,又は他の事業者と共同して,
特定工業用ミシン糸の需要者渡し価格を決定せず,各社
がそれぞれ自主的に決める旨
2
3社は,それぞれ,前項に基づいて採った措置を,自社
を除く2社に通知するとともに,特定販売業者のうち株式
会社トスクを除く7社及び特定工業用ミシン糸の需要者に
周知し,かつ,自社の従業員に周知徹底しなければならな
い。これらの通知,周知及び周知徹底の方法については,
あらかじめ,公正取引委員会の承認を受けなければならな
い。
3
3社は,今後,それぞれ,相互の間において,又は他の
事業者と共同して,特定工業用ミシン糸の需要者渡し価格
を決定してはならない。
4
3社は,それぞれ,第1項及び第2項に基づいて採った
措置を速やかに公正取引委員会に報告しなければならない。
理
第1
由
事実
1 (1)ア
株式会社シラカワ(以下「シラカワ」という。)は,肩書地に本店を置
き,青森県,岩手県,宮城県,秋田県,山形県及び福島県の区域(以下「東
北地区」という。)に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の販売業を
営む者である。
イ
アズマ株式会社(以下「アズマ」という。)及びカナガワ株式会社(以
下「カナガワ」という。)は,それぞれ,肩書地に本店を置き,東北地区
に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の製造販売業を営む者である。
(2) ア
シラカワは,工業用ミシン糸を縫製等に用いる者(以下「需要者」とい
う。)に対し,東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸のほと
んどを直接販売し,一部を販売業者を通じて販売していた。
イ
アズマは,需要者に対し,東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミ
シン糸のほとんどを直接販売し,一部を別表記載の販売業者(以下「特定
2
販売業者」という。)を含む販売業者を通じて販売していた。
ウ
カナガワは,需要者に対し,東北地区に所在する縫製工場等向け工業用
ミシン糸のすべてを特定販売業者を含む販売業者を通じて販売していたと
ころ,特定販売業者を通じた当該工業用ミシン糸の販売において,特定販
売業者の需要者渡し価格が低下するなどして特定販売業者の収支が悪化す
る場合は,当該特定販売業者へのカナガワの販売価格は影響を受ける関係
にあった。
(3)
特定販売業者は,それぞれ,シラカワ,アズマ及びカナガワの3社(以下
「3社」という。)との間において,資本関係又は人的関係において密接な
関係があること,取引依存度が高いこと,販売能力に差があること等の理由
から,東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の販売方針につい
て,3社の意向に従わざるを得ない立場にあった。
(4)
3社は,かねてから,各社の取締役,営業責任者等による「三社会」と称
する会合(以下「三社会」という。)を開催するとともに,前記(3)の関係を
利用して,三社会の事実上の下部会合である「東北工業糸会」と称する会合
(以下「東北工業糸会」という。)に一部の特定販売業者の営業責任者等も
参加させ,また,東北工業糸会の下部会合である「青森会」,「宮城・岩手
会」等と称する地区ごとの会合(以下これらを総称して「地区会」という。)
に,それぞれの地区で東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸を
販売している特定販売業者の営業責任者等も参加させ,これらの会合におい
て工業用ミシン糸の市況等に関する情報交換を行っていた。
(5)
3社が直接又は特定販売業者を通じて需要者に販売する東北地区に所在す
る縫製工場等向け工業用ミシン糸(以下「特定工業用ミシン糸」という。)
の販売金額の合計は,東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の
総販売金額の大部分を占めていた。
2
3社は,原油価格の高騰等により工業用ミシン糸の物流費が上昇したことか
ら,平成16年10月ころ以降,三社会において,特定工業用ミシン糸の需要
者渡し価格の引上げについて検討を行い,平成17年3月29日ころ,東京都
台東区所在のカナガワ東京営業所内の会議室において開催した三社会におい
て,特定工業用ミシン糸の需要者渡し価格について,同年4月21日以降遅く
とも同年5月21日までの受注分から,現行価格より10パーセント以上引き
上げることを合意した。
3
3 (1)
3社は,前記2の合意の実効を確保するため
ア
三社会,東北工業糸会及び地区会を開催するなどして,特定工業用ミシ
ン糸の需要者渡し価格の引上げ状況及び引上げ後の状況を確認し合う
イ
自社を除く2社及び特定販売業者が既に東北地区に所在する縫製工場等
向け工業用ミシン糸の取引をしている需要者との取引を低価格販売を行う
ことにより奪わないこととする,「フリーズ」等と称する方針に基づき営
業活動を行うとともに,特定販売業者にも同方針を遵守させる
ウ
東北地区に所在する縫製工場等向け工業用ミシン糸について低価格販売
を行う販売業者に対し,特定販売業者が東北地区に所在する縫製工場等向
け工業用ミシン糸を販売していた場合には,特定販売業者をして,当該販
売業者に対し当該工業用ミシン糸を販売しないようにさせる
などしていた。
(2)
前記2の合意に基づき,シラカワ及びアズマは直接需要者に対し特定工業
用ミシン糸の需要者渡し価格を引き上げる旨の申入れを行うとともに,3社
は,特定販売業者に対し個別に又は東北工業糸会若しくは地区会において当
該合意内容を伝達し,当該特定販売業者をして,需要者に対し特定工業用ミ
シン糸の需要者渡し価格を引き上げる旨の申入れを行わせるなどして,3社
はそれぞれ特定工業用ミシン糸の需要者渡し価格をおおむね引き上げていた。
4
平成20年7月30日,本件について,公正取引委員会が独占禁止法第47
条第1項第4号の規定に基づく立入検査を行ったところ,3社は,同日以降,
それまで開催していた三社会,東北工業糸会及び地区会の会合を取りやめてい
ること等から,当該合意は事実上消滅しているものと認められる。
第2
法令の適用
前記事実によれば,3社は,共同して,特定工業用ミシン糸の需要者渡し価
格を引き上げる旨を合意することにより,公共の利益に反して,東北地区に所
在する縫製工場等向け工業用ミシン糸の販売分野における競争を実質的に制限
していたものであって,これは,独占禁止法第2条第6項に規定する不当な取
引制限に該当し,独占禁止法第3条の規定に違反するものである。また,違反
行為が長期間にわたって行われていたこと等の諸事情を総合的に勘案すれば,
3社については,特に排除措置を命ずる必要があると認められる。
よって,3社に対し,独占禁止法第7条第2項の規定に基づき,主文のとお
り命令する。
4
平成21年3月17日
公
正
取
引
委
員
会
委員長
竹
島
一
彦
委
員
濱
崎
恭
生
委
員
後
藤
委
員
神
垣
5
晃
清
水
別表
事業者
本店の所在地
青森縫糸株式会社
青森県八戸市
秋田糸業株式会社
秋田市
亀屋株式会社
岐阜市
有限会社東双
福島県南相馬市
東北かながわ株式会社
仙台市若林区
株式会社トスク(注1)
福島市
株式会社中村糸店
東京都墨田区
福島糸業株式会社(注2)
福島市
(注1)
株式会社トスクは,平成20年10月20日破産手続終結により消滅し
たものである。
(注2)
福島糸業株式会社は,平成18年10月13日に設立されたものである。
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