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e- 地域資源活用事業

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e- 地域資源活用事業
平
成
年
度 ﹁
「e- 地域資源活用事業」
-
21
平成 21 年度
報 告 書
e
地
域
資
源
活
用
事
業
﹂
報
告
書
平
成
22
平成 21年度
「e- 地域資源活用事業」
報 告 書
平成22年3月 発行
編集・発行 財団法人 地域総合整備財団
〈ふるさと財団〉
年
3
月
財
団
法
人
地
域
総
合
整
備
財
団
<
〒102-0093
東京都千代田区平河町2-5-6 新平河町ビル
TEL 03-3263-5736 FAX 03-3263-5732
URL http://www.furusato-zaidan.or.jp/
++e-地域_表1-4.indd 2
平成22年3月
>
E-mail:[email protected]
ふ
る
さ
と
財
団
2010/05/07 19:18:53
はじめに
今日、全国の多くの自治体がホームページなどを通じて、観光などの地域情報を提供
しており、来訪者や住民に一定の利便性をもたらしています。
しかし、自治体のホームページなどで提供される地域情報のほとんどは、自治体内の
情報に限定されており、また、現地で入手できるローカルな地域情報の提供は限られて
いるのが現状です。
一方、近年は興味ある同一のテーマ、例えば、文学や歴史などにおける特定のテーマ
に沿って、地方自治体の境界を超えて広域にわたる地域情報を入手しようとするニーズ
や、携帯電話などを活用して現地ならではの情報を入手したいとするニーズも高まって
います。
こうしたことから、財団法人地域総合整備財団<ふるさと財団>は総務省と連携し、
また、財団法人市町村振興協会の協力を得て、平成 20 年度より複数市町村が連携し、
ICT(情報通信技術)を活用して広域観光情報の提供を行う「e-地域資源活用」助成事
業を行ってきました。
平成 21 年度は、全国の応募の中から 11 件の事業に対し、助成をいたしました。
この事業を進めるにあたっては、ふるさと財団内に有識者で構成される「e-地域資源
活用事業」推進委員会(委員長:坂村健東京大学大学院教授)を設置し、まず採択につ
いて検討しました。また、委員による各事業の現地視察を実施し、事業に携わる自治体
や関係者の方々と直接意見交換等を行いました。
この事業を通じて、複数市町村の連携が図られ、また、この連携によって新たな地域
資源の発掘や既存の地域資源の活用も進みました。さらに、ICTを活用して、コンテン
ツデータベースを中核とする共通プラットフォームの構築を実施し、来訪者および住民
の目線に立った情報提供の環境整備ができました。
末筆ながら、本推進委員会の坂村健委員長、佐藤喜子光副委員長、委員各位、関係自
治体の職員、その他関係各位に厚く御礼申し上げます。
平成 22 年 3 月
財団法人地域総合整備財団
理事長 嶋
e-地域_0前付.indd 1
津 昭
2010/05/07 19:19:13
平成 21 年度 「e-地域資源活用事業」推進委員会 委員等名簿
委 員 長
坂 村 健
東京大学大学院情報学環
教授
平安女学院大学国際観光学部
学部長
楓 千 里
JTBパブリッシング
法人事業部長
高 地 圭 輔
総務省自治行政局
地域情報政策室長
田 中 章 雄
ブランド総合研究所
代表取締役社長
水 野 靖 久
総務省自治行政局
地域振興室長
総務省自治財政局
地方債課長
財団法人地域総合整備財団
常務理事
副委員長
佐 藤 喜子光
委 員
(伊 藤 信)
満 田 誉
(黒 田 武一郎)
小 川 登美夫
オブザーバー
上 村 章 文
総務省北海道管区行政評価局 局長(任期途中まで)
以上五十音順 敬称略
( )内は前任者
事 務 局
財団法人地域総合整備財団(ふるさと財団)
e-地域_0前付.indd 2
総務部長
水 谷 朋 之 (事務局長
高 島 茂 樹)
地域再生部長
荒 井 弘 正 地域再生部再生課長
桑 畑 拓 央 地域再生部参事役
齋 藤 正 光 地域再生部参事役
山 﨑 誠 (地域再生部参事役
嶋 田 克 美)
地域再生部参事役
赤 嶺 純 地域再生部調査役
西 尾 祥 之 YRPユビキタス・ネットワーキング研究所
峯 岸 康 史 株式会社ワイズスタッフ
遠 藤 圭 悟 みずほ総合研究所株式会社
岩 城 博 之 2010/05/07 19:19:13
目 次
第1章 「e-地域資源活用事業」事業の目的と意義・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 1
1.「e-地域資源活用事業」助成事業による助成の目的 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
2.「e-地域資源活用事業」助成事業の特徴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 2
第2章 「e-地域資源活用事業」助成事業・実施事業の概要 ・・・・・・・・・・・・・・・・ 9
1.助成事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
1−1.大雪広域観光圏共通プラットフォーム事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 10
1−2.岩手ふるさと文学広域連携情報発信事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 19
1−3.南房総地域連携情報発信事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 26
1−4.九十九里地域 13 市町村連携 情報発信事業 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 40
1−5.朝倉氏遺跡観光情報ツール導入事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 52
1−6.奈良県飛鳥地域連携情報発信事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 66
1−7.工房街道情報システムの構築・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 77
1−8.国立公園大山周遊観光・情報連携とユビキタス情報整備事業・・・・・ 88
1−9.朝鮮通信使縁地情報発信事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 115
1−10.天草地域連携情報発信事業・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 125
1−11.世界遺産「斎場御嶽」の映像音声ガイド・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 133
2.共通プラットフォーム整備事業の概要・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 144
第3章 「e-地域資源活用事業」成果と課題 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 147
1.事業の成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148
1−1.地域連携に関する成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 148
1−2.顧客の視点に立った情報発信の提供に関する成果・・・・・・・・・・・・・・ 150
1−3.現地情報の提供内容・方法に関する成果・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 152
1−4.Uコード活用の幅の広がり ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 154
2.事業の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155
2−1.事業推進上の課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 155
2−2.地域資源の利活用・情報発信における課題・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 156
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平成 21 年度「e-地域資源活用事業」推進委員会 各委員会の検討内容
平成 21 年度「e-地域資源活用事業」推進委員会は、計 3 回開催された。また、その
他委員会による現地視察も実施されている。委員会における主要な検討内容は以下の通
りである。
委員会
検討内容
● 委員紹介
●「e-地域資源活用事業」助成事業について
第1回
(平成 21 年 ● 委員長及び委員の選出
7 月 25 日) ● 申請事業案件と採択基準
● 申請事業の評価について
● 事業経過報告
第2回
● 各採択事業の進捗状況
(平成 21 年
● 取りまとめの方向性
11 月 26 日)
● 今後の事業計画等について
第3回
(平成 22 年
3 月 3 日)
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● 平成 21 年度事業の成果と取りまとめ
● 採択基準
● 平成 22 年度事業の採択評価
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第
1章
「e- 地域資源活用事業」
事業の目的と意義
1.「e-地域資源活用事業」助成事業による助成の目的 .......................... 2
2.「e-地域資源活用事業」助成事業の特徴 ............................................. 2
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第
1章
「e- 地域資源活用事業」
事業の目的と意義
1
「e-地域資源活用事業」助成事業による助成の目的
<助成対象の考え方>
複数の市区町村等で構成する組織が連携して取り組む事業で、「共通プラットフォー
ム」を活用して同一のテーマに基づいた観光情報を提供するものとした。
<助成対象事業の考え方>
助成対象事業の組織の代表となる市区町村(政令指定都市を除く)とした。
2
「e-地域資源活用事業」助成事業の特徴
(1)「e-地域資源活用事業」助成事業の採択
<選定の方法>
平成 21 年度「e-地域資源活用事業」では、都道府県を通じて申請を受付け、有識者
による委員会(
「e-地域資源活用事業」推進委員会)において事業選定に関する議論を行っ
た。申請にあたっては、複数の地域の共同での提案を前提とし、事業の概要、事業の目
的、実施体制や期待される効果なども申請内容として求めた。
地域別のバランスは特に考慮せず、各事業の内容そのものを評価し、選定を行った。
<選定の基準>
事業の選定基準としては、以下に示す要件を基準に審査・検討を実施した。採択基準
としては、本事業の特長であるテーマを持った連携であること、事業実施体制が明確で
信頼性が置けること、新規性などが特長である。
2
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選定の基準
分類
項目
A-1 連携市区町村体制
評価
配点
選定の基準
15
・連携範囲が大(県越え、または 5 自治体以上の連携)
である(A)
・連携範囲が中(同一県内でかつ 2 自治体以上 4 自治体
以下の連携)である(B)
・単一自治体である(C)
10
・大学/地元企業/ NPO等の団体が参画している(A)
・行政関連団体以外の参加者がいない(B)
・参加者なし(C)
15
・観光客に訴求するテーマであり、新規性に富んでいる
(A)
・一般的なテーマであるが、広域連携により地域活性化
に寄与できるテーマである(B)
・観光のテーマ性という観点が乏しい(C)
10
・地域資源として観光に適しており、誘客に十分な魅力
を有している(A)
・今後の情報発信により新たな観光資源として有望であ
る(B)
・観光としての地域資源とは言えない(C)
10
・事業目的が明確で、かつ地域活性化への貢献が大と思
われる(A)
・事業目的が明確ではあるが、地域活性化への貢献はそ
こそこと思われる(B)
・事業目的が明確でない(C)
10
・目標が明確であり、地域活性化への効果が大と思われ
る(A)
・目標が明確ではあるが、地域活性化への効果が中程度
と予測される(B)
・目標が明確でなく、効果もあまり期待できない(C)
10
・将来対応が十分計画されており、事業継続の実現性が
高い(A)
・将来対応が計画されており、事業継続できる可能性が
ある(B)
・将来対応など事業継続方針に具体性がない(C)
10
・事業で得た仕組み等を他地域に活用でき、連携の拡大
等が図れる(A)
・地域に限定した資源であり、そのまま他地域への活用
には課題があるが、本事業の連携拡大は可能である(B)
・連携拡大、他地域への活用の可能性が低い(C)
10
・今までにない事業であり、観光における新しい分野を
拓く可能性が大である(A)
・今までに実施された事例ではあるが、新しい手段、方
法等で観光事業に寄与できる(B)
・新規性がない(C)
A:連携
A-2
B-1
大学/地元企業
/団体等の参画
テーマ性
B:地域資源
B-2
C:事業性
<実現性>
地域資源の内容
C-1
事業目的
C-2
成果目標
<想定される
効果>
C-3
継続性
D-1 他地域への展開性
D:モデル性
D-2
新規性
助成希望団体は、上記採択基準を踏まえた申請計画書を提出し、委員会で検討・審査
というプロセスを経て、次ページに示す計 11 事業が採択された。
3
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採択事業一覧
申請
自治体
テーマ
概要等
大雪山を起点とした
周辺観光を楽しむ
対象地域の拡大(1 市 2 町から 1 市 3 町
→ 1 市 8 町)
地域webサイトの構築、携帯電話モバイル
端末を使用した現地での情報収集・事中情
報の配信・活用の仕組みづくり、登山観光
充実に向けた情報提供の充実を図る。
大山など山岳観光での横展開の可能性
ふるさと文学ふれあ
い巡り
携帯電話でのタイムナビゲーション情報提
供(事中情報として現地で過去・四季の情
報などを配信)
カーナビと地域SNSを連動させた地域情
報の提供(H20 に宍粟市で実証実験実施)
他地区、他事業への拡大可能性
南房総花海街道
地域情報発信事業
花街道発見の旅
ウォーキングコースの設定と情報案内・携
帯電話等への事中情報発信
ミニFM、エリア限定ワンセグでの地域情
報発信
九十九里地域との連携による周遊範囲の拡
大
九十九里
地域連携
情報発信事業
観光・医療・福祉・
街づくりに関する地
域ポータルサイトの
構築と情報拠点の整
備−「住んでよし、
訪れてよし」の街づ
くり
観光以外の「医療・福祉・子育て・街づく
り」などの地域の課題と資源を含めた情報
を発信し、地域課題に対応
昨年度webサイトの充実と事中情報対応と
して 13 箇所に無線LANによる情報取得拠
点を整備、現地での最新情報の取得・提供
南房総地域との連携
福井県
福井市
朝倉遺跡観光情報
発信事業
朝倉氏遺跡を中心に事中情報提供の一つと
してタイムナビゲーション的要素を導入
朝倉氏越前の記憶と
(遺跡を前に、無線LANを利用し、CG等で
天下一(てんがいち)
過去を再現した画像を提供)する実験を実
施
6
奈良県
橿原市
飛鳥地方
観光音声ガイド
携帯Q ∼あ∼る案
内「あたかちゃん
2009」事業
日本の
飛鳥(れきし)を
観聞(みいる)旅
7
奈良県
吉野町
工房街道情報シス
テムの構築
地区・工房間の連携・補完による活性化
工房街道での体験・ 200 近くの工房、工房地区の連携したま
交流を楽しもう
ちづくりに向けた情報システムの構築(情
報発信、予約機能なども)
8
鳥取県
米子町
国立公園大山周遊
観光・情報連携と
ユビキタス情報整
備事業
山と海とふるさとリ
ゾート「大山」癒し
の旅《感幸ナビ》
構成団体が持つ独自の情報発信をテーマに
即した形で一元化して情報発信することで
地域の魅力を効果的に発信
一地域で海と山の体験ができる地域資源・
環境
山岳観光としての横展開の可能性
9
長崎県
対馬市
朝鮮通信使縁地情
報発信事業
朝鮮通信使による交
流と連携
「朝鮮通信使」に関する情報の一元化によ
る情報発信
関 連 団 体 へ の 展 開 可 能 性( 申 請 7 市 町、
朝鮮通信使縁地連絡協議会 17 市町)
10
熊本県
天草市
天草地域連携情報
発信事業
西洋と東洋が出会っ
た海「天草キリシタ
ン紀行」
行政の垣根を越え統一テーマでの情報発信
を行うことでの旅行者への情報提供(円滑
な事前情報、事中情報入手のための携帯電
話対応、QRコード等を使った情報提供)
11
沖縄県
南城市
世界遺産「斎場御
嶽」の映像音声ガ
イド
iPod touchア プ リ
東御廻り地域の来訪者(観光客)
、住民の
ケーション、FeliCa
参加型の観光情報提供による情報発信。ツ
機能を活用した観光
アー予約・土産物販売などへの展開
地案内
1
2
3
4
5
北海道
旭川市
岩手県
盛岡市
千葉県
館山市
千葉県
九十九里町
事業名
大雪広域観光圏
共 通 プ ラ ッ ト
フォーム整備事業
ふるさと文学
広域連携
情報発信事業
20 年度事業ウェブサイトの更新、大学生に
ターゲットを絞った新規コンテンツを開発
今井地区(伝統的建造物群保存地区)にお
いて無線LANのアクセスポイントを整備、
観光情報提供・発信
4
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(2)
「e-地域資源活用事業」助成事業・採択事業の特徴
<地域連携の特徴>
平成 21 年事業においては複数の自治体による連携を条件としている。地域連携の状
況につき、整理をすれば以下の通りである。
□ 連携自治体数
採択事業の連携自治体数について、九十九里地域連携情報発信事業推進協議会は 13
自治体、工房街道情報システム構築協議会は 11 自治体の連携となっている。また、朝
鮮通信使連絡協議会については、本事業の構成市町村には対馬市を含め 8 自治体となっ
ているが、同協議会に加盟している自治体数は、14 市 1 区 2 町の計 17 団体となっており、
実質的な連携数は最も多くなっている。
連携自治体数
団体数(協議会名)
5 自治体未満
5 団体(きた北海道・大雪広域観光圏協議会、花海街道「e-旅」研究会、橿原・高市
広域行政事務組合、天草観光情報推進協議会、東御廻り連絡協議会)
5 ∼ 9 自治体
4 団体(ふるさと文学ふれあい巡り協議会、ふくいやまぎわ天下一街道推進協議会、
大山山麓観光推進協議会、朝鮮通信使縁地連絡協議会)
10 自治体以上
2 団体(九十九里地域連携情報発信推進事業推進協議会、工房街道情報システム構
築協議会)
□ 都道府県境を越えた連携
採択事業のうちの 2 事業は、隣接自治体の面的な広がりによる一体化にとどまらず、
都道府県境を越えた連携により本事業を実施している。
例えば、朝鮮通信使縁地連絡協議会は、朝鮮通信使ゆかりの地である 1 府 10 県、17
団体による連携となっており、国境を越え、韓国釜山とも様々な事業を実施している。
また、岩手県盛岡市のふるさと文学ふれあい巡りにおいては、兵庫県の宍粟市と技術連
携を実施、宍粟市が以前に実施した地域SNS情報のカーナビへの情報発信事業のノウハ
ウを活用して事業を進めていくものである。
協議会名
連携自治体・メインテーマ
朝鮮通信使縁地連絡会
協議会
朝鮮通信使事業を実現させた背景としての対馬の地域性・DNAを中心に
1 府 10 県 14 市 1 区 2 町へ地域資源の情報発信に取り組んでいる。
ふるさと文学ふれあい巡り
協議会
石川 木・宮沢賢治・柳田國男「遠野物語」などテーマに関する連携を
通じて 2 県 4 市 1 村で構成し、情報発信を行っている。
□ 大学や地域団体、民間企業などとの連携
地域の観光振興においては、行政のみならず地域のNPOや大学等との連携、実際に
観光事業に携わる団体などとの連携が重要となる。実際に現地を訪問する人にとって必
要な情報の収集・更新作業には、こうした団体などとの連携は不可欠であり、共通プラッ
5
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トフォームでの情報以外の地元での情報提供は重要と考えられる。
本事業においては、連携自治体のほかに、地元のNPOや大学などが連携団体として
事業運営・参画に関わっている事業も見られる。
例えば、九十九里で連携団体となっている城西国際大学については、学生や留学生の
協力を得て、コンテンツ制作やコンテンツの翻訳などを行っている。
連携団体制作例
協議会名
関連団体・役割
きた北海道・大雪広域
観光情報推進協議会
<株式会社北海道録画センター>
・外部委託形式ではなく、協議会として直接、コンテンツ入力や動画撮影
編集といった実際の事業を実施。
・代表取締役が、協議会の理事に就任。
・協議会の一員として、CMSサーバーの構築、共通プラットフォームの
コンテンツ収集・作成・登録等
花街道「e-旅」研究会
<城西国際大学(メディア学部・観光学部)>
・観光学部教授が、花海街道「e-旅」研究会の会長に就任。
・メディア学部長が、花海街道「e-旅」研究会の委員に就任。
<千葉大学(工学デザイン学科)>
・千葉大学名誉教授に情報案内表示にかかるアドバイザーを委託。
<たてやまコミュニティビジネス研究会>
・まちづくり系の 4 つのNPO法人により構成。
・構成団体の一つであるNPO法人南房総IT推進協議会は、システム関係を
行っており、コンテンツ作成及び入力も委託。
・会長が、花海街道「e-旅」研究会の副会長に就任。
九十九里地域連携
情報発信推進事業
推進協議会
<城西国際大学メディア学部>
・コンテンツの制作や、コンテンツの中国語や韓国語への翻訳を、学生、
留学生の協力を得て実施
・共通プラットフォームへの登録用に城西国際大学内に仮サーバーを設置
し、13 市町村からのコンテンツ情報を集約
橿原・高市
広域行政事務組合
<橿原市観光協会、ボランティアガイドの会、飛鳥京観光協会>
・コンテンツに必要な情報の提供。
みんなの東御廻り
連絡協議会
<知念文化協会写真部及び一般市民、周辺情報登録企業>
・webサイト内の最新記事をブログ形式により、情報発信。
<事業内容>
採択事業が実施している事業は、それぞれテーマに応じて情報発信の対象や方法、手
段などを工夫している。採択事業の実施している事業として、共通しているのは事業構
築のための協議会等の設立、共通プラットフォームへの登録に向けたコンテンツの作成
であり、そのほか、地域での共通webサイトの構築、地域CMSサーバーの構築やパン
フレットの作成などを行っている。また、実際の実証実験として福井市事業や南城市事
業では、観光施設内での無線端末による観光客への情報提供を実施した。
6
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情報提供コンテンツ例
協議会名
実施事業内容
きた北海道・大雪広域
観光情報推進協議会
・地域の共通webサイト構築
・共通プラットフォームへのコンテンツ提供
ふるさと文学
ふれあい巡り協議会
・共通プラットフォームへのコンテンツ提供
・もりおか地域SNS等を活用した情報発信
・UコードQR付地域観光パンフレットの作成
花街道「e-旅」研究会
九十九里地域連携
情報発信推進事業
推進協議会
「ふくいやまぎわ天下一
街道広域連絡協議会」
橿原・高市
広域行政事務組合
工房街道情報システム
構築協議会
大山山麓観光推進協議会
朝鮮通信使縁地
連絡協議会
天草観光情報推進協議会
みんなの東御廻り
連絡協議会
・コンテンツの作成と共通プラットフォームへの入力
地域webサイトの構築
・旅行プラン提携サイトとの連携
・ウォーキングコースの設定と情報案内表示の設置
・地域webサイトの構築・運用
・共通プラットフォームへのコンテンツ提供
・多言語(日中韓英)の観光情報発信
・無線LANホットスポット・ライブカメラの設置
・医療情報の付加
・地域観光パンフレットの作成
・共通プラットフォームへのコンテンツ提供
・一乗谷朝倉氏遺跡情報ツール導入
・実証実験の実施、フィードバック
・共通プラットフォームへのコンテンツ提供
・地域観光パンフレット作成、PRグッズ制作
・ユビキタスコミュニケーターでの実証実験の成果からのフィードバック
・工房・宿泊施設等への参加呼びかけとコンテンツ調査
・工房街道情報システム(CMSサーバー/販売システム導入)の構築
・共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成・登録)
・UコードQR付案内板の設置
・情報システム紹介チラシの作成
・共通プラットフォーム連携地域情報共有データベースシステムの構築
・ケータイポータルサイトの整備、スタンプラリーの実施
・無線LANによる情報提供の実施とフィードバック
・朝鮮通信使HPの充実
・共通プラットフォーム向けのコンテンツ提供
・朝鮮通信使関連イベントの実施・連携拡大
・共通webサイトの構築
・共通プラットフォームへのコンテンツ提供
・UコードQR付看板の設置
・みんなの東御廻り連絡協議会の構築
・東御廻りの共通webサイト(CMSサーバー)の構築
・共通プラットフォームへのコンテンツ提供
・東御廻りガイドブックの作成
・webサイトへの口コミやアクセス、
クーポン利用等を多角的に分析しフィー
ドバック
7
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(3)全体事業スケジュール
「e-地域資源活用事業」助成事業の採択は、以下の要領で行われた。
採択スケジュール
期間
概要説明
内容
・平成 21 年 2 月 10 日 事業概要説明
実施要綱の交付
・平成 21 年 2 月 17 日交付
申請期間
・平成 21 年 4 月 17 日まで
審査
・平成 21 年 6 月 4 日の委員会において応募事業につき検討
・検討結果に基づき審査、予算額など査定
採択
・平成 21 年 6 月 12 日、事業採択通知
また採択後の事業について全体事業の説明、協議会間の情報共有を目指して合同説明
会などを開催した。あわせて検討会委員による事業視察、アドバイスなどを行った。
採択事業へのフォローなど−主要なもの−
期間
平成 21 年 6 月 25 日
内容
ふるさと文学ふれあい巡り協議会訪問
7月 3日
合同説明会
7月 8日
九十九里地域連携情報発信推進事業訪問
7 月 27 日
ふるさと文学ふれあい巡り協議会(兵庫県宍粟市)訪問
8 月 25 日
ふるさと文学ふれあい巡り協議会(岩手大学)訪問
9 月 11 日
天草観光情報推進協議会
9 月 14 日
9 月 16 日
「ふくいやまぎわ天下一街道広域連絡協議会」内の作業部会訪問
大山山麓観光推進協議会訪問
10 月 1 日
朝鮮通信使縁地連絡協議会訪問
10 月 16 日
合同連絡会
10 月 26 日
きた北海道・大雪山広域観光情報推進協議会訪問
11 月 4 日
天草観光情報推進協議会訪問
11 月 6 日
工房街道情報システム構築協議会訪問
11 月 13 日
橿原・高市広域行政事務組合訪問
12 月 17 日
みんなの東御廻り連絡協議会訪問
平成 22 年 1 月 25 日
ふるさと文学ふれあい巡り協議会(岩手大学)訪問
8
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第
2章
「e- 地域資源活用事業」
助成事業・実施事業の概要
1.助成事業の概要 ................................................................................... 10
1−1.大雪広域観光圏共通プラットフォーム事業...................... 10
1−2.岩手ふるさと文学広域連携情報発信事業 ......................... 19
1−3.南房総地域連携情報発信事業 ............................................. 26
1−4.九十九里地域 13 市町村連携 情報発信事業 ...................... 40
1−5.朝倉氏遺跡観光情報ツール導入事業 ................................. 52
1−6.奈良県飛鳥地域連携情報発信事業 ..................................... 66
1−7.工房街道情報システムの構築 ............................................. 77
1−8.国立公園大山周遊観光・情報連携とユビキタス情報整備事業 ... 88
1−9.朝鮮通信使縁地情報発信事業 ........................................... 115
1−10.天草地域連携情報発信事業............................................... 125
1−11.世界遺産「斎場御嶽」の映像音声ガイド ....................... 133
2.共通プラットフォ−ム整備事業の概要 ........................................... 144
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第
2章
「e- 地域資源活用事業」
助成事業・実施事業の概要
1
助成事業の概要
1−1.大雪広域観光圏共通プラットフォーム事業
メインテーマ
大雪山を起点とした周辺観光を楽しむ
事業実施主体
きた北海道・大雪広域観光圏協議会
構成市町村
関連団体
北海道旭川市(◎)、東川町、東神楽町、上川町、当麻町、愛別町、比布町(1 市 6 町)
株式会社北海道録画センター
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10
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
大雪山は日本国内でも随一の規模を誇る国立公園であり、毎年老若男女を問わず多く
の観光客が訪れているが、行政区域ごとに管理されているので、大雪山地域全体の情報
(草花・紅葉・登山情報・周辺観光等)を統一した媒体が存在していない。
平成 20 年度においても旭川市・東川町・東神楽町の 1 市 2 町で同事業の認定を受け、
地域観光情報の統合および観光客の立場に立った事前・事中・事後情報等の情報発信環
境の整備・構築を進めてきたところであるが、平成 21 年度においては圏域の他の自治
体も事業に参画する予定であるため、更なる広域化を図るため、継続的に事業を推進す
る必要がある。
<目的>
全国的な人気を誇る旭山動物園や大雪山系の自然などを目的に、毎年多くの観光客が
訪れているが、地域観光の共通プラットフォーム・コンテンツを整備・活用することで、
これまでの画像のみの情報提供だけではなく、動画での情報提供やユーザー側からの投
稿等も可能にすることで、双方向の情報伝達を実現し、新たな観光需要の喚起を図る。
また、本圏域の共通の課題である更なる滞在型・通年型観光の促進を図るため、当該
プラットフォームコンテンツを有効に活用し、広域、テーマ間の連携によるより鮮度の
高い情報提供の充実と広がりを目指し、携帯電話等モバイル端末を使用した、現地での
情報収集をはじめとする、観光事中で役立つ情報配信および活用の仕組みづくりを実現
する。
広域観光の観点から地域観光情報の統合および観光客の立場に立った情報発信環境を
構築し、積極的な情報発信を行うことで、圏域での消費活動を誘発し、更なる滞在型観
光の促進につながるための手段として、webサイトにおいてユーザーからの投稿を可能
にし、口コミ情報の充実を図るとともに、各種クーポン券の配布など、観光客の視点に
立った利便性の高い観光情報の提供を行うことを目的とする。
b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①協議会の運営・広域化
②本圏域の共通webサイト(CMSサーバー)の構築
③共通プラットフォームへのコンテンツ提供
④実証実験の実施・フィードバック
①きた北海道・大雪広域観光圏協議会の運営・広域化
本年は、昨年設立した本協議会の構成自治体の拡大を第一として、事業の展開・手法
を検討し、近隣 6 市町村への声掛けを行った結果、新たに 4 市町村(上川町・愛別町・
比布町・当麻町)が加わることとなった。
11
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②本圏域の共通webサイトの構築
地域の共通テーマ「大雪山を起点とした周辺観光を楽しむ」を中心として、各地域の
観光情報を掲載、大雪山系をひとつのフィールドとして広く発信するサイトを構築。携
帯電話からのアクセスでの旅行中に必要な情報、クーポンなどの情報を提供する。その
ために、以下の事業を実施する。
○地域観光情報の一元化
○観光情報の情報発信・提供方針の検討
○観光情報コンテンツの提供手段の多様化(文字、音声、静止画、動画ほか)
③共通プラットフォームへのコンテンツ提供
登録コンテンツのメインテーマとして、昨年に続き、大雪山国立公園を選択した。
本年は、山岳情報に特化した内容でのコンテンツを作成・登録を行った。
○コンテンツ活用方法
参加市町村の観光パンフレット・チラシ等にUコードQRを印刷し、現地での情報
収集・クーポン券の発行により観光客の事中をサポートし、地域活性化を図る。
○コンテンツ情報種類
従来のホームページデザイン(文字・静止画情報)をベースに、動画・音声を加え
たユニバーサルデザインで情報提供。
④実証実験の実施・フィードバック
旭山動物園園内、各動物施設付近にUコードQRコードタグを設置し、園長・飼育係
が語る動物の小話・トリビア情報を動画・音声で発信。来園者の満足度・UコードQR
を使った情報発信の有用性を検証する。
c.情報発信の方向性
本事業では、メインテーマを「大雪山を起点とした周辺観光を楽しむ」とした地域連
携をベースに以下の 6 つのサブテーマを核として情報発信を行う。
12
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雄大な自然は、老若男女を問わず誰もが憧れるものであることから、情報発信の対象
者は万人を想定しており、現地(事中)情報については携帯電話を中心に情報提供を中
心に行っていく予定である。
共通プラットフォームデータベースには、現地からのPC以外の端末によるアクセス
を前提に置いた、ピンポイントな情報を掲載した。各コンテンツの繋がり、関連性につ
いては後述の地域webサイトにてカバーする。
また、北海道の中でも大雪圏は四季折々が明瞭であることから、国内でも随一の自然
(大雪山)を有する優位性を活かし、視覚的(写真・動画)に季節感あふれる情報発信
を行うことが可能であり、協議会においても、地域webサイトを構築し、観光関連業界
と連携を図ることで、クーポンの設定やまちの話題(交通や天気などを含む)など、リ
アルタイムに情報の提供を行っていきたいと考えている。
さらに、大雪山の自然のみならず本圏域への関心を深めてもらうため、オススメ観光
ルートの紹介や、歴史、文化、人気の飲食店などを始めとする、利用者の立場を重視し
た情報提供を行っていく。
d.事業実施体制
大雪山周辺市町より、旭川市・東川町・東神楽町・上川町・当麻町・比布町・愛別町
の 1 市 6 町で構成された「きた北海道・大雪広域観光情報推進協議会」が中心となって
事業実施を行った。
協議会の会長を旭川市長、副会長を東川町長、監査を東神楽町長、理事を株式会社北
海道録画センター代表取締役とし、その下で運営事務局(旭川市経済観光部観光課)が
事業実施の中心となり、各プロジェクトチームの総括を担い、事業実施を行った。
また、自治体、構成団体より代表各 1 名で構成する企画委員会を設置し、必要の都度、
事業内容や進捗状況、方向性などについて協議・検討した。
実際の事業(地域webサイトの構築、共通プラットフォームのコンテンツ収集・作成・
登録等)については、理事である株式会社北海道録画センターが行った。
(外部委託形式ではなく、協議会として直接執行した(協定を取り交わす))
◎プロジェクトチーム
・共通webサイト構築チーム(北海道録画センターから 2 名)
・情報収集及び編集チーム(各自治体・構成団体から代表 1 名)
観光資源の写真撮影、起稿・編集作業等
・コンテンツ入力チーム(北海道録画センターから 2 名)
情報収集及び編集チームが集積した情報を画像加工等のデータ再編集を行い、共通
プラットフォームへ入力
・動画撮影編集チーム(北海道録画センターから 3 名)
新規の撮影及び北海道録画センター所有のビデオライブラリから映像制作
13
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e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
事業内容
7月
①協議会
②コンテンツ
8月
9月
●
企画会議
●
企画会議
10 月
11 月
12 月
1月
2月
3月
●
●
企画会議 中間報告準備
検討
収集・作成
③Ucode実 証 試 験・
タグ設置
④取材
⑤共通プラットフォー
ムデータベース入力
⑥地域 SMSサイト構
築
試験地の選定
動画・写真加工
データ入力作業
随時掲載情報
追加・更新
WEBサイト制作およびシステム構築
(2)活動・成果状況
a.活動状況
8 月∼ 9 月にかけ、今年度のコンテンツ展開・情報発信方法を検討。10 月に、参加予
定自治体への声掛け・事業の説明を行った。コンテンツのテーマ・内容の方向性につい
て 11 月末に再度協議を実施。登録コンテンツのリストアップ・取材・作成は 12 月∼ 2
月にかけて行い、完成したコンテンツから 1 月より登録を開始した。
14
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活動スケジュール
時期
平成 21 年 8・9 月
内容
事業 方向性の検討
10 月
新規参加自治体への声掛け・説明会
11 月
中間報告会での指摘を受け、テーマ・コンテンツの再検討
12 月
登録予定コンテンツのリストアップ・情報収集開始
平成 21 年 1 月
2月
共通プラットフォームコンテンツの登録開始
共通プラットフォームコンテンツ登録完了
実証試験の実施
地域webサイト運用開始
b.成果状況
<地域webサイトの構築・運用>
メインテーマである「大雪山を起点とした周辺観光を楽しむ」を利用者に伝えていく
ため、地域webサイトにおいてサブテーマごとのストーリー・つながりの整理と、周辺
情報としての飲食店・遊び場や地域特産物などの地元の評判を踏まえた紹介、地域内で
開催されている各種イベント情報をはじめ、気象・服装情報など、事前に必要な情報を
発信する。
<共通プラットフォームへのコンテンツ提供>
メインテーマ、サブテーマ及びターゲット層を想定し、180 件のコンテンツを作成、
登録。特に登録コンテンツの 7 割にあたる大雪山山域関連のコンテンツについては、本
事業のメインコンテンツとして新たに取材・起稿を行い、作成をしたものである。
コンテンツにつき、キーワードで整理すれば、「大雪山の自然」、
「大雪山の歴史」に
関するコンテンツが多くなっている。また、メディア種類としては、文字情報、静止画
情報を中心に作成、動画情報については、委託先である北海道録画センターが保有する
ライブラリ映像を中心に作成・登録している。コンテンツについて、キーワード・メディ
ア種類で今年度登録分を整理すれば、以下の通りである。
15
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今年度登録コンテンツ
数
静止画
文字
動画
音声
知る・学ぶ
118
118
118
8
0
見る
23
23
23
5
0
遊ぶ・楽しむ
25
25
25
4
0
温泉・宿泊
5
5
5
1
0
水
9
9
9
2
0
計
180
180
180
20
0
<実証実験の実施・フィードバック>
旭山動物園内でユビキタスコミュニケーター及び携帯電話を併用した実証実験を実施
する。
圏内主要施設にUコードQR付看板を設置し、そこから園長・飼育係による、パンフレッ
ト等にはない、ここでしか聞けない動物のトリビア情報を提供。
利用者の待ち時間解消と満足度向上を図る。
<テーマによる地域連携の成果>
本事業を通してテーマに基づいた地域コンテンツの洗い出し、関連市町村との共同作
業、関連団体への情報提供協力などを通して、完全に具体化はしていないものの以下の
ような新たな連携構築の方向性や地域との協動可能性が出てきている。
①関連市町村間の公共施設相互利用
②協議会への観光関連団体の加入
③商工会議所加盟組合員からの地域webサイトでの情報提供・特産品販売希望
(3)事業の評価・課題
本事業でのテーマによる地域連携、情報発信に対する利用者の評価、事業実施におけ
る課題を「情報発信に関しての評価・課題」「連携に関する評価・課題」の大きく二つ
の面から整理する。
a.情報発信に関する評価・課題
<テーマ性・ストーリー性のあるコンテンツの提供>
本事業で作成した地域webサイト、共通プラットフォームでの本事業コンテンツへ
のPCからのアクセスについては、基本的に事前の情報収集のためのものと考えられる。
本事業のメインテーマである「大雪山を起点とした周辺観光を楽しむ」と関連の薄いコ
ンテンツ群、圏域の市町村から数合わせで入れたコンテンツ等へのアクセスが低く、テー
マ性に即した山岳情報等、関連性がはっきりと見られるものへの評価が高くなっている
傾向が見られる。そのため、今後はよりテーマ性・ストーリー構築に重点を置き、利用
者への訴求をしっかりと考えた情報提供を行っていく必要がある。
16
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<現地(事中)情報における周辺観光情報の重要性>
携帯電話等モバイル端末からのアクセスの大半は、圏域内に設置したUコードQR付
看板(旭山動物園内)、現地配布のクーポン券記載チラシなどであり、主に現地(事中)
での情報入手である。これらのアクセスの傾向をみると共通プラットフォームへの対象
コンテンツへのものが主であるが、一方で地域webサイトでの交通情報や周辺の飲食店
情報などへのアクセスも多くなっている。また、本事業で実施した実証実験の評価の声
の中でも周辺でのお勧めの特産品や飲食店、特に交通情報などを望む声が多くなってい
た。そのため現地(事中)情報提供においては、利用者の満足度を高めるための情報提
供に加え、次の行動を誘発するための周辺情報、観光ルートの提案・充実について検討
していく必要がある。
<現地(事中)情報提供におけるUコードQR活用、IT活用の有効性>
本事業では、旭山動物園地区において少数ながら、UコードQRを活用した実証実験
を行った。施設入場までの待ち時間に、園長・飼育係の動画と音声による動物のトリビ
ア情報解説や混雑緩和を目的とし、次の施設への誘導を行うなど、現地(事中)情報提
供による利用者満足度の向上、コンテンツへの評価などを確認。利用者アンケートの結
果では、パンフレット等では掲載されていないより深い情報が得られた・園内をスムー
ズに回ることができた・もっとたくさんの動物情報が知りたい(UコードQRの設置数
を増やしてほしい)というコメントなど、今後のコンテンツ展開に役立つ意見が得られ、
概ね好感触であった。
実証試験の結果を踏まえ、園内すべてのUコードQRにアクセスすると、退園時に特
典をつけるなど、利用者の増加を図る方法や、より深いコンテンツ展開実現できるよう
検討していく。
b.連携に関する評価・課題
<多様な主体の参画、行政以外のリーダーの必要性>
本事業において利用者の目線に立った情報提供を想定すると行政という主体では提供
しづらい地元独自のイベント情報や、飲食店や観光スポットの地元住民からの評価結果
などが必要となる。特に漫然と行政側が羅列した観光資源のコンテンツでは利用者側が
困惑するだけでなく、折角のテーマへの期待感・魅力をそぐ結果となっているとの指摘
も受けた。こうしたコンテンツの取捨選択、情報の収集について行政が主体となってい
る場合には、行政間の横並び意識などから選別は難しい。また、これらの情報を収集し
整理するためには行政のほか、観光協会や地元のNPOほか様々な主体の参画が必要と
なる。そのため多様な主体の参画と、それらをまとめてテーマ性ある情報発信を強力に
進めていくための行政以外の地域のリーダーなどによる運営も検討していく必要があ
る。
また、多様な主体の参画は、今後の情報発信の継続のための財源の確保という視点か
らも重要と考えられる。
17
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(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していく上
で、今後の展開としては、大きく 3 つのポイントがあると考えている。
①連携の拡大(広域化・重層化)
②テーマに基づいたコンテンツの拡充
③利用者の行動分析からの展開の検討
①連携の拡大(広域化・重層化)
本事業がテーマとしている「大雪山を起点とした周辺観光を楽しむ」に関係するエリ
アを考えると美瑛町や富良野市などは利用者の視点からみて一体的な行動圏となってい
る。これまでの様々な働きかけを行ってきているが、今後も連携実現に向け、事業を継
続させていく。さらに、利用者の求める現地(事中)情報の提供のためには観光協会や
商工会議所、地元のNPOなどからの情報提供などが不可欠であり、連携地域内での主
体間の連携強化が必要である。
②テーマに基づいたコンテンツの拡充
地域webサイトや共通プラットフォームへのPC、携帯電話などからのアクセスによ
るコンテンツの閲覧状況、実証実験での利用者から得られたコンテンツの改善方向など
を踏まえ、テーマに基づいたコンテンツの拡充について以下のようなことを行っていき
たい。
・テーマに基づく地域資源のさらなる発掘
・利用者ニーズに即した飲食店や土産物などのクチコミ情報・評価情報の取り込み
・現地(事中)での利用者満足度をさらに高めるための音声情報提供、加工された
画像の提供の拡充、地元観光ガイドとの連携
③利用者の行動分析からの展開の検討
技術的な検討も必要となってくるが、現地(事中)での利用者の行動について観光パ
ンフレットとの連動、クーポンの発行利用状況、携帯電話からのアクセスログの解析な
どから利用者の属性による行動の特徴などを分析し、属性に応じた圏域内での観光ルー
トの提案や、その観光ルート周辺でのマーケティング展開などを検討していくことも考
えていきたい。
18
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1−2.岩手ふるさと文学広域連携情報発信事業
メインテーマ
岩手ふるさと文学ふれあい巡り
事業実施主体
ふるさと文学ふれあい巡り協議会
構成市町村
関連団体
岩手県盛岡市(◎)、岩手県花巻市、岩手県遠野市、岩手県滝沢村、
兵庫県宍粟市(4 市 1 村、延べ 2 県)
岩手大学、
もりおか地域SNSコミュニティ「ふるさと文学ふれあい巡り協議会」、
有限会社マクロネットワークス、株式会社ノーザンシステムサービス、
インフォミーム株式会社
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
岩手県は魅力ある文人を数多く輩出しており、自然を舞台とした文学作品も多い。近
年、これらの文学遺産に対する需要の増大など、この地域に散在する資源を活かした観
光促進の機運も盛り上がりつつある。また、観光の情報発信サービスとして、テーマ別
のネットサーフィンや、地図情報と連動しながら店や観光地の口コミを投稿する住民参
加型ポータルサイトに、人気が集中することが実証されている。以上を背景とし、個別
の市や村の取り組みでは、地域ブランドの確立という点も難しいため、今回、岩手ふる
さと文学ふれあい巡りというテーマで連携して取り組むこととした。
19
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<目的>
岩手県の盛岡市、花巻市、遠野市、滝沢村、兵庫県宍粟市、岩手大学、民間企業等が
連携して、宮沢賢治、石川
木、
柳田國男に関する文学遺産の情報を提供することにより、
地域づくりや観光振興を図る。情報を発信する手段としては、共通プラットフォームの
他に、盛岡市が運営するもりおか地域SNS「モリオネット」の活用や、UコードQR付
き観光パンフレットを作成する。これらにより、一般的なwebサイトや書籍では入手が
困難な地元に密着した情報を提供することが可能であり、有効利用される情報発信事業
を目指す。さらに、住民自らがもりおか地域SNSによって文学の魅力を掘り起こし、情
報発信の主体となる住民参加型の地域活性化共通モデルを、複数地域が連携して構築す
る。なお、UコードQR付き観光パンフレットを 1,000 部作成して、地域内の道の駅や鉄
道駅、宿泊施設などに配布して、観光客の利便性を図る。
b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①ふるさと文学ふれあい巡り協議会の設立
②共通プラットフォームへのコンテンツ提供
③もりおか地域SNS等を活用した情報発信
④UコードQR付き地域観光パンフレットの作成
①ふるさと文学ふれあい巡り協議会の設立
本事業の実施に当たり、平成 21 年 8 月に関係する市や村、大学、民間企業等で協議
会を設立した。
②共通プラットフォームへのコンテンツ提供
「岩手ふるさと文学ふれあい巡り」をテーマに、宮沢賢治や石川
木、柳田國男に関
する連携市村のコンテンツを提供した。
③もりおか地域SNS等を活用した情報発信
共通プラットフォームSOAPインターフェースからコンテンツを取得し、もりおか地
域SNSの本事業用コミュニティに登録する仕組みを開発した。これにより、共通プラッ
トフォームにあるコンテンツを、もりおか地域SNSからも閲覧できるようになるととも
に、本コミュニティに参加しているユーザからも情報発信できるようになった。さらに、
同様の情報をCARWINGS搭載のカーナビからも入手できる仕組みとなっている。実際
に、盛岡市内を巡って、共通プラットフォーム、もりおか地域SNS、カーナビが連携し
て動作し、利用できることを確認した。
④UコードQR付き地域観光パンフレットの作成
「岩手ふるさと文学ふれあい巡り」をテーマに、連携市村の文学遺産が一覧できるパ
ンフレットを作成。UコードQRを付け、詳細な情報を入手したい場合はwebサイトへ
アクセスしやすいものとした。
20
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c.情報発信の方向性(地域資源の利活用)
本事業では、メインテーマを「岩手ふるさと文学ふれあい巡り」とした地域連携をベー
スに、4 つのサブテーマ、
「宮沢賢治の世界」、
「石川
木の世界」、
「柳田國男の世界」
、
「岩
手探訪ワールド」を核として情報発信を行っていく。
事前情報としては、共通プラットフォームやもりおか地域SNSから、岩手の文学につ
いて理解を深められる情報を提供する。
一方、事中情報としては、もりおか地域SNSに設置した本事業用コミュニティに、口
コミ情報、イベント情報など実際の旅先での行動に即した情報を随時提供する。
これらの情報は、PCや携帯電話、さらにCARWINGS搭載のカーナビから入手するこ
とができる。
岩手ふるさと文学ふれあい巡り
共通PF
地域SNSコミュニティ
宮沢賢治の世界
口コミ情報
石川ଘ木の世界
個別コンテンツを紹介
イベント情報
柳田國男の世界
交通情報
岩手探訪ワールド
地域観光
パンフレット
からアクセス
主として事前情報
事前と現場(事中)情報
地元ならではの情報
d.事業実施体制
ふるさと文学ふれあい巡り協議会は、岩手県盛岡市、花巻市、遠野市、滝沢村さらに
兵庫県宍粟市を構成市町村として、本事業を実施するために設立したものである。協議
会の会長、副会長には、もりおか地域SNSコミュニティ「ふるさと文学ふれあい巡り協
議会」や岩手大学の関係者が就任した。事務局は岩手大学である。
実際の事業については、岩手大学、民間企業のメンバーが中心となって企画立案など
を行い、実際のコンテンツ登録や実証実験のためのシステム整備などについては外部委
託をして実施した。
21
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体制図は以下のとおり。
事業実施体制
ふるさと文学ふれあい巡り協議会
会長:豊村徹也
(もりおか地域SNSコミュニティ「ふるさと文学ふれあい巡り協議会」)
副会長:厚井裕司(岩手大学)
事務局:岩手大学
自 岩手県盛岡市
治 岩手県花巻市、岩手県遠野市、岩手県滝沢村
体 兵庫県宍粟市
大 岩手大学
学 もりおか地域SNSコミュニティ
等 「ふるさと文学ふれあい巡り協議会」
(有)
マクロネットワークス
民 (株)ノーザンシステムサービス
間 インフォミーム(株)
e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
事業内容
①協議会の設立
7月
8月
9月
10 月
12 月
1月
2月
3月
●
事業報告
②地域共通PFへのコ
ンテンツ提供
情報収集
③もりおか地域SNS等
を活用した情報発信
計画
④地域観光パンフレッ
トの作成
11 月
●
設立
企画/取材
作成/登録/確認
実験/フィードバック
システム構築
企画/設計
作成
22
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(2)活動・成果状況
a.活動状況
本事業実施に当たり、ふるさと文学ふれあい巡り協議会を平成 21 年 8 月に設立した。
平成 21 年 9 月∼ 10 月に、計画の立案や情報収集を行い、平成 21 年 11 月∼平成 22 年
1 月に外部委託によりコンテンツ作成、もりおか地域SNS等のシステム構築、パンフレッ
ト作成等を行った。平成 22 年 2 月に協議会総会を開催し、事業報告を行った。
時期
平成 21 年 8 月
平成 21 年 9 月∼ 10 月
平成 21 年 11 月∼
平成 22 年 1 月
平成 22 年 2 月
内容
協議会設立
計画・情報収集
コンテンツ作成、もりおか地域SNS等のシステム構築、
パンフレット作成
事業報告
b.成果状況
<地域webサイトの構築・運用>
平成 22 年 1 月、もりおか地域SNSの試験サイトにおいて、本事業用のコミュニティ
を立ち上げテスト運用を行った。岩手県の地図上から登録コンテンツの場所を指定して、
その画像や説明文を閲覧できるほか、もりおか地域SNSの会員は、本コミュニティに参
加することで、自ら情報を発信することも可能な仕組みとなっている。
出所:もりおか地域SNS試験サイト
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<共通プラットフォームへのコンテンツ提供>
メインテーマ、サブテーマやターゲット層を想定し、宮沢賢治、石川
木、柳田國男
に関するコンテンツについて、関係市村が情報提供を行い、不足している情報は取材に
より収集した。それらをもとに、コンテンツの作成と登録を行った。
コンテンツは、賢治、
木の「詩碑」、「歌碑」に関するものが多く、メディアの種類
としては、文字情報、静止画情報や音声情報がある。今年度登録したコンテンツを、キー
ワード・メディア種類で集計すると、以下の通り。
数
静止画
文字
音声
石川啄木の世界
63
63
63
1
宮沢賢治の世界
42
42
42
5
柳田國男の世界
19
19
19
4
いわて探訪ワールド
18
13
18
3
計
142
137
142
13
また、共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表例は、以下の通り。
出所:ふるさと観光ユビキタス
http://uct06.uctec.com/furusato-commonPF/page.cgi
24
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<地域観光パンフレットの作成>
岩手県域に跨る岩手ふるさと文学ふれあい巡りをテーマとした観光パンフレットを作
成した。UコードQRを付け、詳細な情報を入手したい場合はwebサイトへアクセスし
やすいものとした。今後、地域内の道の駅や観光施設などに設置、配付を行う予定である。
(3)事業の評価・課題
利用者の目線に立って考えると、一般的なwebサイトや書籍では入手が困難な、地元
住民からの新鮮な情報が重要である。このことから、本事業では、もりおか地域SNSを
活用することとし、カーナビや携帯電話からも情報を入手できる仕組みをとっている。
今後、地元住民等からの情報発信ツールとして活用してもらうため、周知活動を行っ
ていく必要がある。
(4)今後の展開
もりおか地域SNSや共通プラットフォームへのPC、携帯電話、カーナビからの閲覧
状況や利用者からの意見をもとに、地元住民の協力を得ながら、コンテンツの拡充を行っ
ていきたい。また、必要に応じて、観光協会、商工会議所、NPOに対して、情報提供
について働きかけていきたい。
25
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1−3.南房総地域連携情報発信事業
メインテーマ
南房総「花海街道」発見の旅
事業実施主体
花海街道「e-旅」研究会
構成市町村
千葉県館山市(◎)、南房総市、鴨川市、鋸南町
千葉大学大学院・城西国際大学観光学部
たてやまコミュニティビジネス研究会(NPO法人たてやま海辺のまちづくり塾・
NPO法人たてやま海辺の鑑定団・NPO法人安房文化遺産フォーラム・NPO法南房総
IT推進協議会)
関連団体
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
南房総の海岸一帯は南房総国定公園に指定され、温暖な気候・優れた景勝地・避寒地
としての観光特性を持っている。
年間観光客は総数で約 1,200 万人となっているが、そのうち宿泊客の占める割合は
20%弱である。平成 19 年度に富津・館山道路が全線開通したことにより、首都圏から
南房総地域へのアクセスが飛躍的に向上する一方で、日帰り客の比率は高まり宿泊客は
減少傾向にある。
一方、近年の自然志向やエコ・健康に対する意識の高まりを背景に、新たな観光資源
として「ガイドが案内する海辺の自然体験」・
「戦争遺跡めぐり」・「農漁業体験」
・
「マリ
ンスポーツ体験」などの体験メニューが、NPOや地域との連携により開発・提供され
ている。
こうした状況のなか、南房総には、数多くの観光資源・地域資源が潜在しているもの
26
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の、地域住民の生活や仕事が地域の観光イメージに関わっているという意識が希薄であ
ることや、観光資源・観光情報などを統括する組織が機能していないため、個々の魅力
だけにとどまり他と連携されず、観光資源としてより大きな成果につながっていないの
が現状である。
平成 20 年度において館山市と南房総・鴨川市の連携によりe-地域資源活用事業を
実施し、エリア内の 140 コンテンツについて共通プラットフォームに登録し、大学や
NPOとも連携を図り、テキストデータの他、静止画データ・地図データ、一部動画コ
ンンテンツについても登録したところである。
また、併せてウォーキングモデルコースの設定と情報案内表示の設置も実施し、情報
案内表示にUコードQRを添付することにより、観光客がウォーキング途中でモバイル
を活用し周辺の地域情報を取得できるよう整備した。
さらに、平成 20 年 10 月の観光庁発足に合わせ、南房総地域の 3 市 1 町(館山市・鴨川市・
南房総市・鋸南町)が南房総地域観光圏に認定され、地方公共団体・関係団体・企業等
幅広い関係者の広域連携により、観光客の宿泊旅行回数や滞在日数を拡大し、2 泊 3 日
以上の滞在型観光を促進する取り組みが始まっている。
これによりフラワーツーリズムの促進や棚田のライトアップなど、南房総の各地で地
域資源を活用した観光振興に係る取り組みが展開されている。
また、南房総を取り巻くように延びる国道及び県道は、平成 19 年度に国土交通省よ
り日本風景街道の一つに選定され、「南房総花海街道」として、南房総地域の 3 市 1 町
が連携して沿道や周辺地域の景観、自然、歴史を守り魅力あるものとして伝えていくと
の方向性が示されている。
<目的>
こうした状況を背景に、今年度事業では、南房総地域観光圏事業や日本風景街道事業
の実施エリアとの整合性を図り、館山市・鴨川市・南房総市・鋸南町の連携により地域
資源の発掘と再評価を行うとともに、これらを千葉大学大学院工学研究科や鴨川市に拠
点を置く城西国際大学観光学部、まちづくりを活動目標としているNPO、あるいは地
域住民との連携の下、共通プラットフォームを活用した一元的・一体的な情報発信を行
い、体験プログラムの開発及び提供による宿泊客の増大や体験観光・教育旅行の活性化
を図った。
具体的には、首都圏住民をターゲットとし、webサイトによる情報発信や情報案内表
示及びUコードQRを活用した情報提供・微弱電波を活用した情報発信により、南房総
地域における観光客入込数の増加及び宿泊客数の増加を目標とした。
27
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b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①花海街道「e-旅」研究会の運営
②情報コンテンツの制作と共通プラットフォームへの登録
③地域webサイトの構築
④旅行プラン提供サイトとの連携
⑤ウォーキングコースの設定と情報案内表示の設置
①花海街道「e-旅」研究会の運営
○平成 20 年 9 月 9 日、本事業を広域連携により取り組むため、行政・大学・NPO関
係者による花海街道「e-旅」研究会を設立済み。
○花海街道「e-旅」研究会に「コンテンツ」及び「情報案内表示」のワーキングチー
ムを設置済み。(事務局:館山市経済観光部商工観光課)
ワーキングチームメンバー一覧
NO
氏名
1
鈴木聡明
2
所属
WT
備考
城西国際大学観光学部教授
コンテンツ(リーダー)
会長
高橋幸民
たてやまコミュニティビジネス研究会会長
情報案内
3
尾形弘雄
NPO法人南房総IT推進協議会理事長
コンテンツ
4
辰野方哉
NPO法人たてやま海辺のまちづくり塾理事長
情報案内
5
竹内聖一
NPO法人たてやま海辺の鑑定団理事長
コンテンツ/情報案内
6
愛沢伸雄
NPO法人安房文化遺産フォーラム理事長
情報案内
7
袁 福之
城西国際大学メディア学部長
コンテンツ
8
平川 潔
鴨川市建設経済部商工観光課
コンテンツ
9
福原正和
南房総市商工観光部観光プロモーション課
コンテンツ
10
飯田 浩
鋸南町地域振興課 まちづくり推進室
コンテンツ
11
荒井 毅
館山市経済観光部商工観光課長
情報案内
12
清水忠男
千葉大学工学部名誉教授
情報案内(リーダー)
13
石井博臣
館山市経済観光部商工観光課
コンテンツ
事務局
14
宇山弘道
館山市経済観光部商工観光課
情報案内
事務局
副会長
②情報コンテンツの制作と共通プラットフォームへの登録
昨年度に引続き、南房総における着地型旅行商品・教育旅行商品の素材となる、体験
プログラムや自然・歴史・文化などの各地域資源をテーマ別に制作し、共通プラット
フォームに入力し、データの充実を図った。(データ数 150 件)
また、これらの情報は、情報案内表示にUコードQRを添付することにより、来訪者
が携帯電話からインターネットで、花海街道「e-旅」研究会サーバー(以下「協議会サー
バー」という。)や共通プラットフォームにアクセスし、必要な地域資源や周辺情報を
得られるようにした。
28
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③地域webサイトの構築
地域の共通テーマ「花海街道発見の旅」を内容として、地域固有に情報(クチコミ情
報など)を掲載、地域ブランドとしての「花海街道」を広く発信するサイトを構築した。
また、旅行中における携帯電話からのアクセスによる必要な情報等を提供するため、
以下の事業を実施した。
○地域観光情報の一元化
○観光情報の発信、提供方針の検討
○観光情報コンテンツの提供手段の多様化(テキスト・音声・静止画・動画等)
○地域SNSとの連携(RSS)
④旅行プラン提供サイトとの連携
外部の旅行プラン提供サイトとの連携により、本事業で制作したデータを提供し、東
京湾アクアラインが 800 円に値下げされたタイミングで特集ページを掲載した。
http://tabiken.jp/contents/special/no_036/index.html
特集ページでは、テーマ別のコースや体験プログラムを掲載し、旅行者のニーズに合
わせた多様な周遊コースを用意し、旅行者の周遊性の向上を図った。
⑤ウォーキングコースの設定と情報案内表示の設置
情報コンテンツの制作に併せ、千葉大学大学院との連携によりエリア内に複数の
ウォーキングモデルコースを設定し、コース上に情報案内表示を設置した。
<那古船形コース>
館山駅を起点とし館山市八幡・湊地区を経由し、那古・船形地区を巡るルートにウォー
キングコースを設定した。
またコース沿いに情報案内表示板を設置するとともに、共通プラットフォーム及び協
議会サーバーのURLを入力したUコードQRを添付し、来訪者が看板から当該地域資源
の情報や周辺の関連情報を携帯電話により引き出せるようにした。
<館山駅∼城山コース>
館山駅から市街地を通り、平成 20 年度に設定した城山公園から赤山地下壕にかけて
のウォーキングルートを結ぶルートを設定し、面的な広がりを拡充した。
<渚の駅∼沖ノ島コース>
平成 23 年度末に完成が予定されている
「渚の駅」
から沖の島を結ぶルートの設定を行った。
⑥実証実験の実施・フィードバック
<微弱電波を活用した地域情報の発信>
道の駅など地域内の主要な交流拠点 10 箇所に、微弱電波によるミニFM送信機を設
置するとともに、レンタル配信サーバーを活用し、共通プラットフォームから音声デー
タを配信する。
なお、これは将来的にコミュティ FMを視野に入れた、実証実験としての意味を持っ
ている。
29
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c.情報発信の方向性
本事業のメインテーマについてさらに 7 つのサブテーマからストーリーを作成し、地
域webサイトと共通プラットフォームを適宜、組み合わせて情報発信を行う。
地域WEBサイト
共通PF
花海街道発見の旅
花海街道の自然
花海街道の歴史・文化
個別コンテンツ
を紹介
クチコミ情報
交通情報
花海街道の寺社仏閣
花海街道の体験
お勧めの店
花海街道のイベント
交通情報
花海街道の食
花海街道の伝統
地域 SNS
との連携
主として事前情報
情報案内
表示板QR
コードから
アクセス
事前と現場
(事中)
情報
地元ならではの情報
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南房総には主軸となる地域資源がない反面、自然・歴史・文化・自然体験など、多様
な地域資源が存在することから、これらをピックアップし連携して情報発信することに
より、地域のポテンシャルを高めた。
情報提供はPCからの閲覧だけに留まらず、UコードQRを活用し、来訪者が訪問先で
必要な情報をモバイルで入手できるようにした。その際、情報案内表示(サイン表示)
やパンフレット等にUコードQRを添付し、来訪者がアクセスしやすい環境を整えた。
また、本地域への関心を深めてもらうため、テキストだけではなく、静止画や動画・
音性などビジュアルな情報提供も行なった。
d.事業実施体制
花海街道「e-旅」研究会は、行政・NPO・大学の連携により構成された組織であり、
本事業の実施のため、平成 20 年度に設立されたものである。
行政は南房総地域の 3 市 1 町(館山市・鴨川市・南房総市・鋸南町)で、この枠組み
は、平成 20 年度の認定された南房総地域観光圏と整合性が図られている。
大学としては鴨川市にあり観光学部を有する城西国際大学と千葉大学大学院が参画し
ている。
また、NPOはまちづくり系のNPOの連合体であるコミュニティビジネス研究会が参
加している。同研究会はNPO法人南房総IT推進協議会・NPO法人たてやま海辺のまち
づくり塾・NPO法人たてやま海辺の鑑定団・NPO法人安房文化遺産フォーラムで構成
されている。
花海街道「e-旅」研究会の会長は、城西国際大学観光学部准教授が、また副会長には
たてやまコミュニティビジネス研究会会長が就任している。
運営事務局は館山市、システム関係はNPO法人南房総IT推進協議会が行なっている。
実施の事業は、コンテンツの作成及び入力をコンテンツワーキングチームが、また情
報案内表示・パンフレットの制作を情報案内ワーキングチームが執行している。
30
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さらに、コンテンツ作成及び入力については、NPO法人南房総IT推進協議会に委託
しており、また千葉大学名誉教授に情報案内表示にかかるアドバイザーを委託している。
体制図は以下のとおり。
事業実施体制
実施主体:花海街道「 e −旅」研究会(平成 20年 9月 9日設立)
事務局 :館山市経済観光部商工観光課
花海街道「e−旅」研究会
会長:鈴木聡明
(城西国際大学観光学部教授)
副会長:高橋幸民
(たてやまコミュニティビジネス研究会)
<事務局>
館山市経済観光部
商工観光課
会計:荒井 毅
(館山市経済観光部商工観光課長)
・協議会の運営
・ワーキングチームの運営管理
監事:竹内聖一
(NPO法人たてやま・海辺の鑑定団)
<委 員>
行政:館山市 / 南房総市 / 鴨川市 / 鋸南町
大学:千葉大学大学院 / 城西国際大学(観光学部)
NPO :たてやまコミュニティビジネス研究会
NPO 法人南房総 IT 進協議会
NPO 法人たてやま海辺の鑑定団
NPO 法人たてやま海辺のまちづくり塾
NPO 法人安房文化遺産フォーラム
ワーキングチーム
<コンテンツワーキングチーム>
・コンテンツの作成・入力
・CMSサーバーの構築
・旅行プラン提供サイトとの連携
・微弱電波を活用した情報発信
<情報案内表示ワーキングチーム>
・ウォーキングコースの選定
・情報案内表示のデザイン検討
・情報案内表示の設置
31
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e.事業スケジュール
事業内容
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
●
●
●
●
●
①花 海 街 道「e-旅 」 会議開催 会議開催 会議開催
会議開催 会議開催
研究会の運営
ワーキングチーム・メーリングリストによる情報交換
コンテンツWG
情報案内表示WG
②情 報コンテンツの
制作と共通プラット
フォームへの登録
③地 域Webサイトの
構築
④旅行プラン提供サ
イトとの連携
1月
2月
3月
●
●
会議開催 結果報告
●
●
●
●
●
●
●
会議開催 会議開催 会議開催 会議開催 会議開催 会議開催 会議開催
作成方針・方向性の確認
サイト運用開始
●
●
●
会議開催 会議開催 会議開催
モデルコース及び
方向性の確認
カテゴリ検討・
決定
●
●
●
●
●
会議開催 会議開催 会議開催 会議開催 会議開催
現地調査
事業報告
設置箇所確定
コンテンツ現地調査・
情報収集
システム・デザイン
見直し・検討
コンテンツ作成・登録
企画・ コンテンツ
内容検討
提供
⑤ウォーキングコース
の設定と情報案内
表示の設置
モデルコース
選定
⑥実証実験の実 施・
フィードバック
コンテンツ制作・登録
確認
運用
登録・確認
運用
運用
効果測定
現地調査
設置場所
確定
設置
ミニFM
送信機設置
コンテンツの作成 送信機設置 ●
場所確定 放送実験
運用
運用
(2)活動・成果状況
a.活動状況
<花海街道「e-旅」研究会>
事業実施の協議会については、平成 20 年 9 月 9 日に花海街道「e-旅」研究会を設立
済みであり、今年度も引き続き事業実施主体となり、具体的な作業についても昨年度同
様、コンテンツ及び情報案内表示の各ワーキングチームが推進した。
32
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研究会の活動状況を下表に示す。
時期
平成 21 年 5 月
内容
花海街道「e-旅」研究会開催
6月
花海街道「e-旅」研究会
コンテンツのカテゴリ、情報発信の方向性、収集した地域情報を活用したウォーキ
ングコースや情報案内表示板の方向性等を決定
外部委託先決定
7月
花海街道「e-旅」研究会
コンテンツの現地調査・情報収集を開始
8月
旅行プラン提供サイトとの連携開始(周遊コース情報の提供)
ウォーキングコース設定に関する現地調査の開始
9月
花海街道「e-旅」研究会
10 月
花海街道「e-旅」研究会
地域情報収集を終了
11 月
共通プラットフォームコンテンツ登録開始
12 月
花海街道「e-旅」研究会
ウォーキングコース設定に関する現地調査完了
情報案内表示板デザイン提案
平成 22 年 1 月
2月
地域webサイトへの情報追加
情報案内表示板設置開始
事業完了
花海街道「e-旅」研究会(事業の検証)
b.成果状況
①花海街道「e-旅」研究会の運営
昨年度同様、南房総市・鴨川市に加え今年度より鋸南町が参画し南房総地域の自治体
と連携して取り組んだことで、南房総地域観光圏事業との整合性が図られ、相乗効果を
引き出すことが出来た。
南房総地域の自然や文化・歴史等の地域資源は、館山市だけで完結するものではなく、
また、来訪者の殆どは館山市や南房総市など個別の市に行くのではなく「南房総地域に
行く」という感覚を持っているため、複数市で連携することにより地域の魅力ある資源
として情報発信することができた。
また、研究会にまちづくりに関わるNPOや千葉大学大学院・城西国際大学が参画し、
市民や大学との連携により事業が推進されたことも大きな成果であった。
②情報コンテンツの制作と共通プラットフォームへの登録
メインテーマ、サブテーマ及びターゲット層を対称に、コンテンツ枠 500 件に対し昨
年度に引き続き、新たに 150 件のコンテンツを作成し追加登録した。
コンテンツについて、キーワード・メディア種類で今年度登録分を整理すると以下の
とおりである。
33
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コンテンツ一覧
テーマ
数
テキスト
静止画
動画
音声
自然
10
10
10
0
0
歴史・文化
31
31
31
0
0
寺社仏閣
77
77
77
30
0
体験
12
12
12
5
0
食
5
5
5
0
0
地域
15
15
15
15
15
計
150
150
150
50
15
なお、追加登録したコンテンツの主なものとしては、ウォーキングコースの対象エリ
アに係るコンテンツ、今年度より連携団体に参画した鋸南町に係るコンテンツ、南房総
全域にまたがる安房国札三十四観音霊場に係るコンテンツがある。
今年度鋸南町に係るコンテンツを登録したことにより、平成 20 年 10 月に観光庁より
認定された南房総地域観光圏との整合性が図られた。
特に観光圏事業では、周遊性・滞在性の向上を図り旅行者の宿泊日数の増加を目標に
様々な新規事業が展開されているが、「安房国札三十四観音霊場巡り」という、古くか
ら時間と日数をかけてこの地を巡るシステムにスポットをあて掘り起こしたことは、文
字通り「温故知新」の事例として価値があった。
またこのほか、今年度は語り部による語りや地元音楽家による地域ソングなどの音声
データも登録し、これらは微弱電波による情報発信のコンテンツとしても活用した。
共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表的なものを示せば、以下のとおり。
ふるさとユビキタス表示例
③地域webサイトの構築
昨年度構築した、地域webサイトにコンテンツを追加登録し、内容の拡充を図った。
昨年度登録済みのコンテンツについては、共通プラットフォームに登録のコンテンツ
も含め、静止画のほか動画による情報提供について判りやすいとの評価を得ている。
34
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昨年来(2009 年 4 月∼ 12 月まで)のアクセス数は、12,405 件(一日平均 34 件)であり、
特に 8 月のアクセス数は 2,040 件(16.44%)と多く、これは、海水浴シーズンであるこ
とと、8 月 1 日よりアクアラインの通行料が普通車で 800 円に値下げされたことにより
旅行ニーズが増加し、それに伴う情報取得のためのアクセスが増えたものと推測される。
また、昨年度に引き続き、地域SNS「房州わんだぁらんど」との連携により、地域
SNS上でアップされた口コミ情報がRSSでトップ画面に表示されるようにし、観光客が
レアな地域情報を得られるようにした。
なお「房州わんだぁらんど」では、2009 年 12 月から着地型ツアーの造成を目的とし
たコミュニティも立ち上がり、今後、当該コミュニティとの連携も期待される。
④旅行プラン提供サイトとの連携
(株)モバたびの運営するたびけんサイトに情報を提供し、平成 21 年 7 月 31 日から
「祝
アクアライン 800 円 めざせ!花海街道 南房総のまわり方」についての特集ページを作
成し、旅行プランや自然体験プラン、平成 20 年度に設定したウォーキングコースに関
する情報提供を行った。
<提供した旅行プラン>
・アクアラインから南房総一周日帰りドライブ
・館山ロマンチックデートコース「夕焼けドライブ」
・あばれんぼうコース
・花と自然を満喫するコース「房総フラワーライン」
・アクアラインから内房満喫!日帰りゆったりドライブ
上記旅行プランへのアクセス状況(平成 20 年 7 月 31 日∼ 11 月 30 日)を集計したと
ころ、トップページへのアクセスは総計 9,175 件(携帯からのアクセスは除く)で、7
/ 31 ∼ 8 / 31 の間が 3,986 件と一番多かった。これは、地域webサイト同様、アクア
ラインの値下げ効果が現れているものと考えられる。
あわせて圏域内にUコードQR付看板を設置し、そこから地域webサイトへの誘導を
行った。
35
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UコードQR付看板より、地域webサイトへのアクセス数
コース名
8月
9月
10 月
11 月
合計
アクアラインから南房総一周日帰りドライブ
555
483
264
163
1,465
館山ロマンチックデートコース「夕焼けドライブ」
216
168
99
61
544
あばれんぼうコース
126
84
24
37
271
花と自然を満喫するコース「房総フラワーライン」
113
91
37
45
286
アクアラインから内房満喫!日帰りゆったりドライ
72
39
15
5
131
合計
1,082
865
439
311
2,697
また各地域資源別のアクセス数は延べ 30,764 件で、
大福寺(崖観音・館山市)3,018 件、
沖ノ島海水浴場(館山市)1,574 件、鋸山・日本寺(鋸南町)1,810 件、枇杷倶楽部(南
房総市)1,170 件が、1,000 件を超えるアクセスとなっている。
各地域資源別アクセス数
地域資源名
8月
9月
10 月
11 月
合計
大福寺(崖観音・館山市)
1,139
861
625
393
3,018
沖ノ島海水浴場(館山市)
986
342
129
117
1,574
鋸山・日本寺(鋸南町)
759
535
281
235
1,810
枇杷倶楽部
555
282
204
129
1,170
その他(39 箇所)
9,657
6,313
4,061
3,161
23,192
合計
13,096
8,333
5,300
4,035
30,764
⑤ウォーキングコースの設定と情報案内表示の設置
平成 20 年度の設置したウォーキングコースに加え、新たに 3 つのルートについて
ウォーキングコースの設定を行い観光客の周遊性・滞在性の向上が図られるとともに、
コース上に情報案内表示 70 基を設置し、観光客の利便性の向上を図ることができた。
なお、平成 20 年度に設定したウォーキングコース及び情報案内板については、JR東
日本(株)が主催する「駅からハイキング」のコースの一部として活用され、利用者か
ら「適切な情報案内表示によりコースがわかりやすかった」
「コース上にいろいろな見
どころがあることがわかり、ハイキングを楽しめた」等の感想をもらい、適切な事中情
報の提供が行われたものと思われる。
<那古船形コース>
館山駅を起点とし「槙の生垣」の景観が集中する八幡・湊地区を経由し、那古寺(安
房国札三十四観音霊場第一番札所・坂東三十三札所結願寺)を中心とした那古地区を経
て、船形地区の大福寺(安房国札三十四観音霊場第三番札所)ふれあい市場を巡るルー
トにウォーキングコースを設定した。
コース沿いに情報案内表示板を設置するとともに、共通プラットフォーム及び協議会
サーバーのURLを入力したUコードQRを添付し、来訪者が看板から当該地域資源の情
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報や周辺の関連情報を携帯電話により引き出せるようにし、来訪者の利便性の向上を図
るとともに、滞在時間を延ばすことにより宿泊客の増大を図った。
<館山駅∼城山コース>
館山駅から中心市街地を経由し城山公園に至るまでのコースを設定した。城山公園は
平成 20 年度に設定したウォーキングコースの起点であり、館山駅と接続することによ
り面的な広がりを持たせ周遊性の向上と中心市街地の活性化を図った。
<渚の駅∼沖ノ島コース>
平成 23 年度末に完成が予定されている「渚の駅」から沖の島を結ぶルートの設定を
行うことにより、渚の駅を訪れた旅行者に対し、周遊性及び滞在性の向上を図った。
⑥実証実験の実施・フィードバック
旅行者に対し事中情報を提供する手段としての可能性を検証するため、道の駅を中心
に 10 箇所の交流拠点に電波法第 4 条に規定する微弱電波を発信する機器を設置し、限
られたエリア内におけるミニFM放送の実証実験を行った。
この放送に伴い、館山市内にコンテンツ配信サーバーを設置し、本事業で作成した音
楽や語り部等の音声データの放送を行った。
また、平成 21 年 12 月に実施されたイベント会場で、機器を設置し実験的にミニFM
放送を行ったところ、複数の企業や団体が特設サテライトスタジオからライブで情報発
信を行うなど、今後のミニFM放送の可能性を検討することができた。
(3)事業の評価・課題
本事業でのテーマによる地域連携、情報発信に対する利用者の評価、事業実施におけ
る課題を「情報発信に関しての評価・課題」「連携に関する評価・課題」の大きく二つ
の面から整理する。
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a.情報発信に関する評価・課題
<テーマ性・ストーリー性あるコンテンツの提供>
本事業で作成した地域webサイト、共通プラットフォーム、旅行プラン提供サイトで
の本事業コンテンツへのPCからのアクセスについては、基本的に事前の情報収集のた
めのものと考えられる。
これらの結果をみると、テーマ性と関連の薄いコンテンツ・周遊モデルコースに取り
上げなかったコンテンツへのアクセスが低く、テーマ性に即したもの周遊のモデルを示
したコンテンツへの評価が高くなっている傾向が見られる。
このためテーマ性を持たせるとともに、各資源を周遊の順序をしっかり組み立てて情
報提供を行っていく必要がある。
<現地(事中)情報における周辺観光情報の重要性>
携帯電話からの共通プラットフォームや地域webサイトへのアクセスの多くは、本事
業でウォーキングコース上に設置した情報案内表示版に添付したUコードQRからのも
のと考えられる。
これらのアクセスの傾向をみると、共通プラットフォームの対象コンテンツへのアク
セスが多いが、一方で地域webサイトでの公共交通機関の時刻表や周辺飲食店情報など
へのアクセスが多くなっている。
今年度登録したコンテンツに「安房国札三十四観音霊場」があるが、これについても
単に各寺院の情報だけでなく、今後、周辺の立寄ってみたい飲食店の情報や交通機関に
関する情報を付加することにより、利用者の満足度を高めらると考えられる。
<現地(事中)情報提供におけるIT活用の有効性>
本事業では、道の駅を中心に微弱電波(ミニFM)を活用した情報発信の実証実験を
行った。実験開始が事業期間の末期であったため、数値的な検証は行っていないが、ミ
ニFMによる音声情報提供が有効である感触を得た。
今後、配信サーバーに蓄積された情報の配信のみならず、パーソナリティによるリア
ルタイムな情報提供を検討する必要がある。
b.連携に関する評価・課題
<多様な主体の参画、行政以外のリーダーの必要性>
本事業において、利用者の目線に立った情報提供を想定すると、行政が主体となった
場合は、個別の飲食店や宿泊施設に関する情報は提供が難しい。
このため地域webサイトの運営はNPOに任せることにより、地元視点・利用者目線の
情報が提供できた。
また、NPOのほか千葉大学大学院や城西国際大学の参画により、
「学」との協働や「わ
かもの」の視点を取り入れることができた。
多様な主体の参画は、今後の情報発信の継続のための財源確保という視点からも重要
であると考えられる。
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(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していくうえ
で、今後の展開としては、大きく以下の 3 つのポイントがあると考えている。
①連携の拡大(広域化・重層化)
②周遊モデルコースの拡充
③利用者の行動分析からの展開の検討
①連携の拡大(広域化・重層化)
千葉県では南房総地域の他に、銚子市からいすみ市にかけての九十九里地域が本事業
を実施しており、両地域とも豊かな自然や固有の歴史や文化を有する観光地域である。
このため次年度に向けては、南房総地域と九十九里地域が一体となり、一つの協議会
の事業を展開するなど連携を拡大することが重要である。
南房総地域観光圏では 3 市 1 町の連携により周遊性を高め、観光客の滞在時間を延ば
し宿泊に結びつける取り組みを行っているところであるが、九十九里地域との連携によ
り周遊性・滞在性がさらに高まるものと考えられる。
九十九里地域における年間の観光入込み客数は、南房総地域とほぼ同数であることか
ら、それぞれの地域を訪れた観光客をお互いの地域に呼び込むことは、両地域の経済活
性化にとっても大きなメリットがある。
なお両地域の間に空白部分(御宿町・大多喜町・勝浦市)があるが、今後これら市町
との連携も視野に入れる必要がある。
②周遊モデルコースや口コミ情報の拡充
地域webサイトや共通プラットフォーム、旅行プラン提供サイトに対するアクセス状
況を踏まえると、テーマに沿うというものの、各コンテンツの羅列では利用者(旅行者)
の関心は薄く、今後は以下のような取り組みを行っていきたい。
・テーマ別、時間別、季節別等による周遊プランやモデルコースの提供
・利用者ニーズに即したコンテンツ周辺の飲食店やみやげ物などの情報
・地元住民や利用者によるクチコミ情報の拡充
・地元観光ガイドとの連携
③利用者の行動分析からの展開の検討
技術的な検討も必要となってくるが、現地(事中)での利用者の行動について、観光
パンフレットとの連動、携帯電話からのアクセスログの解析などから利用者の属性によ
る行動の特徴などを分析し、属性に応じた圏域内での周遊コースの設定や、当該周遊コー
ス周辺でのマーケティング展開などを検討する必要がある。
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1−4.九十九里地域 13 市町村連携 情報発信事業
メインテーマ
九十九里浜の文化的景観の再発見
―海の幸・山の幸に育まれた文化と景観の 13 市町村連携による情報発信
事業実施主体
九十九里地域連携 情報発信推進事業 推進協議会
構成市町村
千葉県九十九里町(◎)、銚子市、旭市、匝瑳市、横芝光町、山武市、東金市、大網
白里町、白子町、茂原市、長生村、一宮町、いすみ市(7 市 5 町 1 村)
関連団体
千葉県、九十九里サロン(九十九里地域の行政、NPO、個人からなる街づくり団体)、
城西国際大学
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
平成 20 年度には「九十九里浜“海からのプレゼント”をあなたに」をテーマに
九十九里地域連携情報発信事業を実施した。千葉県九十九里海岸地域の 13 市町村(銚
子市、旭市、匝瑳市、横芝光町、山武市、九十九里町、東金市、大網白里町、白子町、
茂原市、長生村、一宮町、いすみ市)が連携し、各市町村が個別的に発信していた観光
情報を集約し、統一のサイトで、統一のフォーマットで、地域横断的に情報を発信して
いていく事業を完成させた。
平成 21 年度は、前年度の事業を発展させて、「九十九里浜の文化的景観の再発見―海
の幸・山の幸に育まれた文化と景観の 13 市町村連携による情報発信」をテーマに、ラ
イブカメラと無線LANホットスポットを整備し、リアルタイムに情報を取得できるよ
うにするとともに、医療情報をも付加して、観光客と住民に対する「安心と安全」の情
報提供を強化する。
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<目的>
千葉県九十九里地域の 13 市町村(銚子市、
旭市、匝瑳市、
横芝光町、山武市、九十九里町、
東金市、大網白里町、白子町、茂原市、長生村、一宮町、いすみ市)が連携し、統一的
に観光情報を発信することを通じて、地域内の協働を促し、地域づくりと観光振興に取
り組む。
大学などと連携して「九十九里浜の文化的景観の再発見―海の幸・山の幸に育まれた
文化と景観の 13 市町村連携による情報発信」をテーマに、多言語(日英中韓)で観光
情報を発信する。ライブカメラと無線LANを整備し、モバイル端末等対応のwebサイ
トを作り、事中でもリアルタイムに情報を取得できるようにする。また、医療情報をも
付加して、観光客と住民の「安心と安全」を強化していく。
b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①九十九里地域連携 情報発信推進事業 推進協議会の構築・運営
②九十九里地域 13 市町村連携の観光情報webサイトの構築・運用
③共通プラットフォームへのコンテンツ提供(情報収集、作成、登録)
④成田空港に隣接する地域特性に基づく多言語(日英中韓)の観光情報の発信
⑤九十九里海岸の観光拠点にライブカメラを 4 か所、無線LANを 3 か所設置、iPhone
対応webサイトを構築、事中でもリアルタイムに情報を取得可能な体制を整備
⑥観光情報に医療情報を付加し、「安心と安全」に関する情報提供を強化
⑦地域観光パンフレットの作成
⑧実証実験の実施・フィードバック
①九十九里地域連携 情報発信推進事業 推進協議会の構築・運営
事業実施のための体制整備としての「九十九里地域連携 情報発信推進事業 推進協議
会」を設立、定期的に担当者会議を開き、本事業の方向性・スケジュールや実施方法・
作業分担などを検討し実施した。
②九十九里地域 13 市町村連携の観光情報webサイトの構築・運用
九十九里地域 13 市町村が連携して、統一テーマ「九十九里浜の文化的景観の再発見
―海の幸・山の幸に育まれた文化と景観の 13 市町村連携による情報発信」で、地域ブ
ランドとしての「九十九里」を広く発信するwebサイトを構築する。3 か所の国民宿舎
に無線LANを設置し、iPhone対応のwebサイトを構築して、旅行中に必要な観光情報・
医療情報などを提供する。そのために、以下の事業を実施した。
○九十九里地域 13 市町村が連携し、地域内の観光情報を一元化し、地域ブランド
「九十九里」で、統一的にwebサイトhttp://www.99coast.jp/を構築し情報発信する。
○ 13 市町村が定期的に編集会議を開き、観光情報の情報発信・提供方針を検討する。
○観光情報コンテンツの提供手段の多様化(文字、音声、静止画、動画、多言語対応)
を方針にwebサイトを構築する。
○iPhone対応のwebサイトhttp://www.99coast.jp/i/を構築し公開した。
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③共通プラットフォームへのコンテンツ提供(情報収集、作成、登録)
九十九里地域 13 市町村の地域資源の中で、「九十九里浜の文化的景観の再発見―海の
幸・山の幸に育まれた文化と景観の 13 市町村連携による情報発信」のテーマに関連す
る自然、景観、文化、史跡に関するコンテンツなどを各自治体から収集し、説明、英語・
中国語・韓国語の翻訳、画像、地図情報を作成し、共通プラットフォームに登録した。
④成田空港に隣接する地域特性に基づく多言語(日英中韓)の観光情報の発信
九十九里海岸 13 市町村は、成田国際空港に隣接しており、海外からの観光客や空港
周辺に宿泊する航空会社の添乗員が訪れる潜在的可能性が高い地域である。そのため、
英語、中国語、韓国語による各市町村の紹介と観光情報をwebサイトで発信した。
⑤九十九里海岸の観光拠点にライブカメラを 4 か所、無線LANを 3 か所設置、
iPhone対応webサイトを構築、事中でもリアルタイムに情報を
取得可能な体制を整備
⑥観光情報に医療情報を付加し、「安心と安全」に関する情報提供を強化
「ちば医療なび」
(千葉県医療情報提供システム)http://www.iryo.pref.chiba.lg.jpを
参照するなど、現地(事中)における「安心と安全」に関する情報を提供した。
⑦地域観光パンフレットの作成
九十九里地域 13 市町村の地域webサイトや共通プラットフォームでの事中の情報入
手を促すためUコードQRを付加した地域観光パンフレットを作成、本地域への訪問者
の入り口となる地域内の観光案内所で配布した。
⑧実証実験の実施・フィードバック
九十九里地域 13 市町村の国民宿舎 3 か所に無線LANを整備し、無線LAN端末での利
用者への事中情報を提供する。提供コンテンツへの評価、アクセスログ解析の可能性な
どの検証を試みた。
c.情報発信の方向性
本事業のメインテーマについてさらに市町村横断の 9 つのサブテーマ「桜、苺、
花、
幸、
海、祭、史、酒、体験・交流」からストーリーを作成し、地域webサイトと共通プラッ
トフォームを適宜、組み合わせて情報発信を行った。
42
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サブテーマイメージ
九十九里浜の文化的景観の再発見
―海の幸・山の幸に育まれた文化と景観を13市町村が連携して発信する
九十九里地域13市町村の紹介・観光情報
共通PF
地域WEBサイト
市町村横断テーマ: 桜
市町村横断テーマ: 苺
市町村横断テーマ: 花
市町村横断テーマ: 幸 (山、海)
市町村横断テーマ: 海
九十九里地域
13市町村の観光情
報
13市町村横断検索
見る、知る、遊ぶ、
巡る、味わう、寛ぐ
住む、健康・福祉
安心・安全
市町村横断テーマ: 祭
市町村横断テーマ: 史
市町村横断テーマ: 酒
市町村横断テーマ: 体験・交流
主として
事前情報
3か所の国民宿舎で
無線LAN端末への
現場
(事中)
情報提供
九十九里地域
13市町村の観光情
報
地域観光
パンフレット
からアクセス
13市町村横断の
統一テーマ:
桜、苺、花、幸、
海、祭、史、酒
体験
事前と現場(事中)
情報
地元ならではの情報
事前情報として地域webサイトでは、13 市町村別に観光情報を発信するとともに、9
つのサブテーマ「桜、苺、花、幸、海、祭、史、酒、体験・交流」に従って、市町村横
断的に観光情報とコンテンツを統一的に提案する。共通プラットフォームを活用して、
他の都道府県の観光情報と、キーワードに沿って横断的に参照できるようにしている。
現地(事中)情報提供については、地域webサイトにおいて利用者の利便性を高めるた
め、電子地図情報(位置・ナビゲーション)、土産物の情報、医療情報を提供している。
現地(事中)情報の提供については、3 か所の国民宿舎で新たに無線LANを整備し、
そこでiPod / iPhone、ネットブックなどの無線端末を通じて、現場の状況にあわせた
観光情報の提供の実証実験を実施する。また圏域の観光案内所で配布している地域の観
光情報パンフレットともあわせ圏域内の利用者への周辺観光情報の提供などを地域web
サイトに誘導する。
d.事業実施体制
「九十九里地域連携 情報発信推進事業 推進協議会」は、千葉県九十九里海岸 13 市町
村である、銚子市、旭市、匝瑳市、横芝光町、山武市、九十九里町、東金市、大網白里
町、白子町、茂原市、長生村、一宮町、いすみ市を構成市町村として設立された協議会
であり、本事業の実施のために設立されたものである。協議会の会長は構成市町村の首
長が就任し、その下で実質的な取組を行う「担当者会議」で事業実施を行う。運営事務
局について総務関係は九十九里町、コンテンツやシステム関連は関連団体の城西国際大
学が行っている。
実際の事業(コンテンツ収集・作成・登録)については、2 つのワーキンググループ
(WG)、「コンテンツWG」「無線LAN・ライブカメラWG」を設置し、市町村職員、城
西国際大学、民間企業のメンバーが、企画立案などを行い、実際のコンテンツ登録や実
証実験のためのシステム整備などについては外部委託して実施した。
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実施体制は以下のとおり。
事務局
矢印付きの線は委託
矢印なしは、組織内
九十九里町産業振興課
コンテンツWG
城西国際大学
無線LAN・ライブカメラ
民間企業
九十九里 地域連携 情報発信推進事業推進協議会
九十九里地域
13市町村
城西国際大学
民間企業
e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
事業内容
①協議会の構築・運営
7月
8月
9月
●
●
設立総会
●
計画策定
②地域WEBサイトの
構築・運用
③地域共通PFへのコ
ンテンツ提供
④多言語(日英中韓)
の観光情報の発信
⑤無線LANホットスポッ
トライブカメラの設置
10 月
⑧実証実験の実 施・
フィードバック
1月
2月
●
成果確認
●
成果報告
「体験・交流」コンテンツの収集
PFに関する理解と勉強
コンテンツの内容を検討
英語・中国語・韓国語の翻訳
WEBサイト構築
企画・設計
内容検討
情報収集
計画/設
登録・確認
運用
システム設計・計画
情報の内容の検討と収集
3月
運用
市町村でコンテンツの
見直し取捨選択
実地調査・交渉
⑥医療情報の付加
⑦地 域 観 光 パ ンフ
レットの作成
12 月
●
●
●
担当者会議 担当者会議 担当者会議
計画/
コンテンツ訂正・更新
テーマ/サブ
テーマ検討
11 月
WEB制作
デザイン/原稿作成
設置
設置
印刷
運用
運用
配布
システム構築/デザイン/コンテンツ
(2)活動・成果状況
a.活動状況
○平成 20 年度の助成事業で設置した協議会を、平成 21 年 7 月に継続させることを決
議した。
○コンテンツの作成方針、情報発信の方向性の確認について 10 ∼ 11 月にかけて実施、
共通プラットフォームに登録するコンテンツの情報収集については 1 月∼ 2 月に実
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施、コンテンツの修正・追加・編集などは 11 月から 1 月に実施した。
○ライブカメラ・無線LANの設置は、10 月から各施設に調査・打診、11 月現地調査、
12 月に実施計画案を策定して、担当者会議に諮る。1 月の担当者会議で最終計画を
確定し、2 月に着工し完成させる。
○最終的な地域共通プラットフォームへの登録、地域webサイトについては、2 月に
リニューアルしてオープンする。
活動スケジュール
時期
平成 21 年 8 月
9月
10 月
内容
平成 20 年度事業報告、平成 21 年度事業計画の承認
前年度の協議会を継続し事業を行うことを決議
昨年作成したwebページの訂正・更新
コンテンツ制作WG会議、無線LANライブカメラGW会議
コンテンツの方針決定、情報収集・取材など実施
担当者会議の見学会(ふるさと財団、東京都庁)
ライブカメラ・無線LANの設置場所・内容の検討、外部委託先の決定
11・12 月
地域webサイトの英語・中国語・韓国語の翻訳の完成
平成 22 年 1 月
共通プラットフォームコンテンツ作成、実証実験準備
2月
ライブカメラ、無線LANホットスポットの設置
パンフレット印刷、事業報告
b.成果状況
<地域webサイトの構築・運用>
メインテーマである「九十九里浜の文化的景観の再発見―海の幸・山の幸に育まれ
た文化と景観の 13 市町村連携による情報発信」を利用者に伝えていくため、地域共通
webサイトにおいて、9 つのサブテーマ「桜、苺、花、幸、海、祭、史、酒、体験・交流」
ごとに 13 市町村の観光情報を整理し、市町村横断的にプロデュースするwebページを構
築した。それぞれのコンテンツについては、
写真・説明文・問い合わせ先、
電子地図
(Google
MAP)を掲載し、利用者の現地におけるナビゲーションに役立つ情報を提供している。
地域webサイトhttp://www.99coast.jpのトップページ
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重要なページについては、英語、中国語、韓国語の翻訳を掲載した。銚子市、旭市、
大網白里町、茂原市の公式webサイトでは、英語のページを掲載しているが、中国語、
韓国語による情報発信をしていない。他の 9 市町村の公式webサイトでは、
外国語のペー
ジを掲載していない。このように、多言語(英語、中国語、韓国語)による統一的な情
報発信は、この地域では初めての試みといえる。
多言語(日本語・英語・中国語・韓国語)とiPhone対応のWEBサイト
○千葉県観光協会のwebサイトhttp://www.omoshiro-chiba.or.jpには外国語による
ページを掲載していない。
○千葉県 商工労働部 観光課が運営するwebサイト「ちばの観光 まるごと紹介」
http://www.kanko.chuo.chiba.jp/では、英語、中国語(繁体字、簡体字)、韓国語
による紹介があるが、市町村ごとに詳しく紹介されていない。ケータイサイトを構
築していない。
このため、本事業の「多言語とiPhone / iPod touch対応」のサイトを構築している
点は、意味がある試みであるといえよう。
コンテンツワーキンググループ(WG)は、定期的に編集会議を開き、市町村の枠組
みを超えて、「九十九里ブランド」に基づいて地域全体をどのようにプロデュースして
いくべきかについて論議し、コンテンツの見直しや提供のあり方について検討を重ねて
いる。このような地道な取組みによって、13 市町村間の共通な認識と信頼感が醸成さ
れ、連携が深まっている。13 市町村の広域にまたがるwebサイトの統一感が形成され、
地域の総合的な魅力もみえるようになった。
サブテーマ「桜」のwebページ
サブテーマ「苺」のwebページ
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<共通プラットフォームへのコンテンツ提供>
メインテーマ、サブテーマ及びターゲット層を想定し、コンテンツ枠 850 件に対し、
212 件までコンテンツ数を減らして、英語訳、中国語訳、韓国語訳を同時に作成・登録
する。
コンテンツをキーワードで整理すれば、「文化・伝統・祭り」、
「景色・景観」
「食」に
関するコンテンツが多くなっている。また、メディア種類としては、文字情報、静止画
情報を中心に作成、動画情報については、
統一テーマに沿って、取材を行い、現在では、
「初
日の出」を動画配信している。コンテンツについて、キーワード・メディア種類で今年
度登録分を整理すれば、以下の通り。
平成 21 年度コンテンツ登録数
13 市町村
合計
テキスト
静止画
動画・音声
銚子市
28
28
28
0
旭市
30
30
30
0
匝瑳市
26
26
26
0
横芝光町
17
17
17
0
山武市
28
28
28
0
東金市
22
22
22
0
九十九里町
22
22
22
0
大網白里町
15
15
15
0
白子町
31
31
31
0
茂原市
27
27
27
0
長生村
24
24
24
0
一宮町
21
21
21
0
いすみ市
26
26
26
0
合計
316
316
316
0
共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表的なものを示せば、以下の通り。
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<地域観光パンフレットの作成>
九十九里海岸地域全体としての「九十九里浜の文化
的景観の再発見―海の幸・山の幸に育まれた文化と景
観の 13 市町村連携による情報発信」をテーマとした観
光パンフレットにつき、本事業を通じてはじめて関係
市町村で検討し作成した。本年度事業では 2 月に 500
部を作成、地域内の観光案内所などに配付する。パン
フレットに付記されたUコードQRから地域共通プラッ
トフォーム、
地域webサイトへのアクセスを期待できる。
パンフレットのイメージは右記の通り。
<実証実験の実施・フィードバック>
九十九里海岸地域の国民宿舎にライ
ブカメラを 4 基、無線LANを 3 か所設
置し、iPhone / iPod touchやネットブッ
クで現地(事中)の情報を参照できる
ようにする。
<テーマによる地域連携の成果>
本事業を通して、千葉県九十九里海
岸地域の 13 市町村(銚子市、旭市、匝
瑳市、横芝光町、山武市、九十九里町、東金市、大網白里町、白子町、茂原市、長生村、
一宮町、いすみ市)が連携し、定期的に役場の担当者会議を開き、市町村が互いに学び
あい、論議と検討を重ね、計画を策定するなどの共同作業を積み重ねてきた。この結果、
次のような新たな連携の方向性が出てきている。
○館山市・鴨川市のふるさと財団の助成事業と九十九里海岸 13 市町村の連携事業が
「祭り」をテーマに連携する機運が高まっている。新たに勝浦市をも加えて、房総
半島の「南総と東総」の連続した地域で本事業が拡大する可能性が出ている。
○ライブカメラ 4 基と無線LANホットスポット 3 か所の設置によって、九十九里海
岸の広い地域にまたがって、「現地(事中)」でのリアルタイムな情報提供の重要性
が認識されるようになった。今後、祭りのインターネット中継など、地域の魅力を
リアルタイムに情報発信していく機運が高まりつつある。
(3)事業の評価・課題
本事業でのテーマによる地域連携、情報発信に対する利用者の評価、事業実施におけ
る課題を「情報発信に関しての評価・課題」「連携に関する評価・課題」の大きく二つ
の面から整理する。
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a.情報発信に関する評価・課題
<テーマ性・ストーリー性あるコンテンツの提供>
本事業で作成した地域webサイト、共通プラットフォームでの本事業コンテンツへの
PCからのアクセスは、基本的に事前の情報収集のためのものと考えられる。これらの
アクセスの傾向について、下記のように分析することができる。2009 年 12 月からの 2 ヶ
月間の閲覧件数は 1909 ページビュー、全国 95 市町村から 557 ユニークユーザ 808 セッ
ションのアクセスがあった。また、サーチエンジンGoogleで「九十九里 観光」をキーワー
ドで検索すると、本事業で構築した地域webサイトが、第 1 位で表示されるようになっ
た(2010 年 2 月 3 日)
。
サーチエンジンの検索キーワード
セッション
九十九里 観光
144
九十九里
52
99coast
10
九十九里観光
7
九十九里 13 市町村
6
九十九里海岸観光ガイド
6
99 13 市町村
2
九十九里 花
2
九十九里 観光ガイド
2
九十九里海岸
2
本事業を通じて、九十九里海岸 13 市町村が、
「九十九里ブランド」で連携し共同で観
光情報を発信していく重要性を確認することができた。
<現地(事中)情報における周辺観光情報の重要性>
iPod touch / iPhoneを通じて、共通プラットフォームや地域webサイトへのアクセ
スは、まだ少なく、本事業で作成したUコードQR付観光パンフレットを通じて広報す
ることが必要である。無線LANのホットスポットが整備され、ライブカメラの映像が
正式に運用されることになれば、現地(事中)での情報入手の可能性が飛躍的に高まる。
そのため現地(事中)情報提供においては、利用者の満足度を高めるための情報提供に
加え、次の行動を誘発するための周辺情報提供の充実について検討していく必要がある。
<現地(事中)情報提供におけるIT活用の有効性>
本事業では、九十九里海岸地区の国民宿舎において、ライブカメラ 4 基、無線LANホッ
トスポット 3 か所を設置する。現地(事中)情報提供による利用者満足度の向上を図っ
ていく。また、本格運用には至っていないため、現地(事中)情報提供の有効性や関心
のあるコンテンツに関する評価ができていない。作成する地域パンフレットには、Uコー
ドQRを付け、地域webサイトや周辺の関連観光サイトへの誘導を促していく。
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b.連携に関する評価・課題
<多様な主体の参画、行政以外のリーダーの必要性>
本事業は、九十九里海岸 13 市町村の広い地域にわたる事業であるため、協議会は行
政を主体に立ち上げた。城西国際大学の教員と学生の参加を得て、利用者の目線に立っ
た情報の提供、学生による取材などを試みた。しかし、学生の参加は限定的であり、必
ずしも期待された広がりにつながっていない。これから、大学内の体制を整えると同時
に、行政のほか、観光協会や地元のNPOほか様々な主体の参画が必要となる。そのた
め多様な主体の参画と、それらをまとめてテーマ性ある情報発信を強力に進めていくた
めの行政以外の地域のリーダーなどによる運営も検討していく必要がある。
また、多様な主体の参画は、今後の情報発信の継続のための財源の確保という視点か
らも重要と考えられる。
(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していく上
で、今後の展開としては、大きく 4 つのポイントがあると考えている。
①連携主体の重層化
連携の地域的な広がりが達成されたが、地域各層の連携をさらに重層化していく
必要がある。
②地道な取材とコンテンツ編集力の強化
テーマに沿った地道な取材活動を定着させ、コンテンツのブラッシュアップを図っ
ていく必要がある。
③リアルタイムの情報発信
ライブカメラ、祭りのインターネット中継など、リアルタイムで新鮮な情報を発
信していくことを強化する。
④利用者の行動分析から、コンテンツの内容や編集のあり方を検討する。
①連携主体の重層化
本事業のテーマとして、「九十九里浜の文化的景観の再発見―海の幸・山の幸に育ま
れた文化と景観の 13 市町村連携による情報発信」を設定した理由は、利用者の視点か
らみた場合、九十九里海岸 13 市町村を一体的な行動圏を形成している。道路が発達し
ているこの地域において、観光を 1 つの行政地域内で自己完結させていくことが、非常
に限界がある。2 年間にわたり、13 市町村が連携してきた貴重な経験は、今後、この地
域のいろんな問題を解決していく際の協働のプラットフォームになりえる。
さらに、利用者の求める現地(事中)情報の提供のためには観光協会や商工会議所、
地元のNPOなどからの情報提供などが不可欠であり、連携地域内での主体間の連携強
化が必要である。さらに、共通プラットフォームのテーマで類似性の高い南房総の館山
市と鴨川市などの地域と連携した相互の情報発信などにより、房総半島の文化と景観の
魅力をさらにアピールしていきたい。
50
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②地道な取材とコンテンツ編集力の強化
テーマまたはサブテーマに沿った地道な取材活動を定着させ、コンテンツのブラッ
シュアップを図り、利用者の視点に沿って再編集していく必要がある。以下のように、
テーマとサブテーマに基づいたコンテンツを強化していきたい。
・既成の情報を掲載するだけではなく、新たな視点で取材を重ね、地域の魅力をプ
ロデュースしていく。
・13 市町村を横断的にプロデュースする、利用者の視点に立ってコンテンツの編集
力を強化する必要がある。
・連携主体を多重化することにより、より多様でリアルな情報を収集して情報を発
信していく。
・現地(事中)での利用者満足度をさらに高めるため、情報更新の体制を整え、新
鮮な情報を随時に届ける。
③リアルタイムの情報発信
ライブカメラ、無線LANホットスポットを設置することにより、素晴らしい九十九
里の海岸の四季を随時にみることができる。また、祭りのインターネット中継など、リ
アルタイムで新鮮な情報を発信していく可能性が広がる。
④利用者の行動分析から、コンテンツの内容や編集のあり方を検討する。
webアクセスを解析する体制を整えることにより、事前、事中(現地)での利用者の
興味や行動を分析し、関心が高いコンテンツを充実させるとともに、利用者の属性に応
じた圏域内での観光ルートの提案や、その観光ルート周辺でのマーケティング展開など
を検討していくことも考えていきたい。
51
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1−5.朝倉氏遺跡観光情報ツール導入事業
メインテーマ
朝倉氏越前の記憶と天下一
事業実施主体
ふくいやまぎわ天下一街道推進協議会
福井県福井市(◎)、福井県越前市、福井県鯖江市
福井県永平寺町、福井県勝山市、福井県大野市(5 市 1 町、延べ 1 県)
構成市町村
関連団体
(社)朝倉氏遺跡保存協会
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
福井県の越前市、鯖江市、福井市、永平寺町、勝山市、大野市にかけての白山麓の山
すそには、一乗谷朝倉氏遺跡や永平寺、福井県立恐竜博物館や白山平泉寺、さらに産業
面でも独自の地域資源を個々に有している地域である。それぞれの地域資源は「日本一」
「天下一」のものであるが、現状はアピールが不十分である。しかし、平成 21 年 6 月に
は地域内の一乗谷朝倉氏遺跡において全国植樹祭が開催され全国に情報発信されるな
ど、個別に全国への情報発信の機会が増えてきて機運も盛り上がってきているが、個別
市町の取り組みでは限界もあるため、連携して取り組むことにした。
<目的>
「朝倉氏越前の記憶と天下一」のテーマを中心に、一乗谷朝倉氏遺跡や周辺に広がる
「日
本一」「天下一」の観光資源を連携させて情報発信を行うこととする。
この事業でのメインターゲットは、現在まさに一乗谷朝倉氏遺跡を訪れている観光客
であり、この観光客に対し、「現地(事中)情報」として一乗谷朝倉氏遺跡の情報(目
52
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の前に広がる情報ではなく、付加価値を与える情報)を提供するとともに、周辺の「日
本一」「天下一」の観光資源を紹介することを目的とし、これにより観光客の利便性の
向上や、周辺部への観光の広がりが得られる。また、共通プラットフォームによる一乗
谷朝倉氏遺跡の情報の提供や、一乗谷朝倉氏遺跡での携帯情報端末による観光情報提供
による新しい話題の喚起により、一乗谷朝倉氏遺跡への観光客増も期待でき、さらにそ
れが周辺観光客増に繋がることが期待される。
b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①協議会の構築・運営
②共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成、登録)
③一乗谷朝倉氏遺跡情報ツール導入
④実証実験の実施・フィードバック
①協議会の構築・運営
本事業の実施を推進するため、福井県福井市が中心となり、連携市町や関連団体等の
協力と、既存の「ふくいやまぎわ天下一街道広域連携協議会」の協力を得て、既存の「ふ
くいやまぎわ天下一街道広域連携協議会」の中に作業部会を構築した。この作業部会で
情報提供の実施方法検討やコンテンツの情報の収集・確認などを実施した。新規の写真
の撮影や旅行基本情報(営業時間・定休日等)は作業部会のメンバーで実施した。
②共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成、登録)
共通プラットフォームでは、朝倉氏越前の記憶と天下一のテーマのもと、一乗谷朝倉
氏遺跡や、「日本一」「天下一」のテーマ性のある施設、その他周辺の見所を中心に連携
市町の地域資源情報を提供する。作業部会が中心となって、提供するコンテンツの情報
収集整理や作成、登録を実施した。特に写真については全て新規に撮影している。
③一乗谷朝倉氏遺跡情報ツール導入
一乗谷朝倉氏遺跡は、国の「特別史跡」
「特別名勝」
「
(出土品の)重要文化財指定」
の三重指定を受けている全国でも屈指の文化資産であり、また観光資源であるが、遺跡
という性質上、観光客にはわかりにくい場所であるのが現状である。そこで、一乗谷朝
倉氏遺跡の復原町並(往時の様子を礎石などの遺跡資料をもとに復原した箇所)におい
て、往時の様子をさらにイメージできるような情報を携帯情報端末を利用して提供する
ことで、理解を深めてもらうとともに、付加情報を提供することでさらに一層の興味を
持ってもらい、連携する周辺地域の観光情報も提供することで観光客の滞在時間延長を
図る。
8 月∼ 11 月に無線LANアンテナの設置可能性や設置箇所について検証を行うととも
に、文化財施設であることから、関連機関とも相談・調整を行い、平成 22 年 2 月に無
線LANアンテナの設置を行った。
同時に、9 月より提供する情報コンテンツの作りこみを開始した。動画や静止画、ま
た文字情報による情報コンテンツを作成した。
53
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④実証実験の実施・フィードバック
2 月に、実際に端末を持って一乗谷朝倉氏遺跡を歩いていただく実証実験を実施した。
情報端末としては、Apple社のiPod touchを使用し、貸し出しを実施するとともに、
観光客の所持している無線LAN対応の携帯情報端末でも利用可能とした。
c.情報発信の方向性
本事業では、メインテーマを「朝倉氏越前の記憶と天下一」とした地域連携をベース
に、以下の 4 つのサブテーマを核として情報発信を実施した。
朝倉氏越前の記憶と天下一
一乗谷朝倉氏遺跡を知る(事前情報)
一乗谷朝倉氏遺跡を歩く(事中情報)
越前の天下一を知る(事前情報)
越前の天下一へ行く(事中情報から事前情報へ)
事前情報…旅行出発前に得る情報。旅行先の交通手段、営業時間、施設案内など。
事中情報…旅行中に得る情報。旅行中の天気や交通状況などが含まれる。
このうち、事前情報については、静止画・文字情報を中心に情報提供を共通プラット
フォームで実施した。また、「ふくいやまぎわ天下一街道」の既存webページを活用す
ることにした。
事中情報については、携帯電話については各個人のパケット定額制・割引制の適用の
有無の問題もあることから、文字情報や軽い静止画による情報提供になるが、携帯情報
端末で無線LANの接続が可能なものについては、動画や静止画、文字情報を中心に大
容量コンテンツを提供した。
一乗谷朝倉氏遺跡においては、現在まさに遺跡を訪れている観光客に、目の前で見ら
れる情報を提供するのでは意味がないため、訪問時とは別の季節や別の角度、また詳細
な解説の情報を提供することで理解を深め、さらに興味を持てるようにした。加えて、
方言の多少含まれる音声での解説をすることで、旅情をかきたてられるようにした。
また、朝倉氏遺跡での新観光情報システム(無線LAN・携帯電話)において、周辺
の連携観光地への紹介や交通手段等を案内することで、連携の強化を図るとともに、
「つ
いでにもう一足」という観光のスタイルを惹起し、該当エリアの回遊性を高め、今まで
は関連して訪れることがなかったエリアにも観光客が訪れることで滞在時間の延長を図
ることができた。
さらに、観光客が観光地で知りたい情報として、「今後の天気」(天気予報)、
「交通機
関情報」(電車やバスの時刻、交通機関の遅延情報)、
「周辺の観光地情報」(市や県の総
合観光案内サイト)などがあると考え、これらのサイトへのリンクを掲載することで、
インターネットを利用して知りたい情報が得られるようにした。朝倉氏遺跡では無線
LANとインターネットを接続しているため、インターネット上の情報を容易に閲覧す
ることができる。当初は時刻表コンテンツなどを本システム上に内包することも考えた
54
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が、時刻表の改正等の可能性を考え、各事業者へのリンクとすることにした。
d.事業実施体制
協議会は、5 市 1 町を構成市町村として設立された協議会であり、
既に存在していた「ふ
くいやまぎわ天下一街道広域連携協議会」の会員がそのまま構成員となっている。その
協議会の下で実質的な取組を行う作業部会で事業実施を行う。運営事務局(作業部会)
について総務関係やシステム関連は福井市が行っている。
実際の事業(コンテンツ収集・作成・登録)については、その作業部会にて、市職員、
関連団体のメンバーが、企画立案などを行い、実際のコンテンツ登録や実証実験のため
のシステム整備などについては外部委託をして実施した。
体制図は以下のとおり。
福
井
開 市
発
観
光
室
聯
絡
協
議
会
天
下
一
街
道
広
域
ふ
く
い
や
ま
ぎ
わ
協議会メンバー
(各種情報提供)
データ提供
データ提供
契約・協議
データ提供
共通プラットフォーム
株式会社福井テレビ開発
・コンテンツ作成
・トータルコーディネート
株式会社アイコム
(ICOM)
・無線LAN設備
・ハードウェア
三谷商事株式会社
・サーバ系
・ハードウェア
朝倉情報
ツール
福井ケーブルテレビ
・アクセス回線
・ネットワーク
55
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e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
事業内容
7月
①協議会の構築・運営
②共通プラットフォー
ムへのコンテンツ
提供
8月
9月
●
事業内容の
企画検討
●
コンテンツ
の整理
10 月
11 月
12 月
2月
3月
●
最終報告
・今後の方針決定
コンテンツの取材等
システム
全体の検討
コンテンツの
作成作業
システムの開発(ハード面)
許認可について打合せ
③一乗谷朝倉氏遺跡
情報ツール導入
1月
コンテンツの登録作業
システムの設置
(ハード面)
情報の集約・情報方針の検討
動画・静止画コンテンツ作成
webコンテンツ(文字等)作成
④実証実験の実 施・
フィードバック
実証実験
(2)活動・成果状況
a.活動状況
事業実施体制の整備のための協議会(作業部会)を平成 21 年 7 月に設立した。
コンテンツの作成方針、情報発信の方向性の確認について 8 ∼ 9 月にかけて実施、共
通プラットフォームに登録するコンテンツの情報収集については 10 月∼翌年 1 月に実
施、コンテンツへの加工・編集などは平成 22 年 1 月から 2 月に実施した。
最終的な地域プラットフォームへの登録、ローカルコンテンツサーバー(一乗谷朝倉
氏遺跡でのデータ提供に用いるサーバー)は 2 月に立ち上げ、試行している。
時期
平成 21 年 7 月
内容
協議会(作業部会)設立
8月
技術仕様策定(要求要件定義書作成)
9月
事業実施先の選定(外部委託決定)
10 ∼ 12 月
平成 22 年 1 月
1 月∼ 2 月
2月
コンテンツの方針決定、情報収集・取材など実施
地域webサイトシステム構築、共通プラットフォームコンテンツ作成
共通プラットフォームコンテンツ登録、パンフレット印刷
ローカルコンテンツサーバー、無線LAN装置設置、実証実験、事業報告
56
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b.成果状況
<朝倉氏遺跡情報ツール導入・運用(ハード)>
一乗谷朝倉氏遺跡において、無線LANをアクセス回線とし、無線LANを送受信でき
る小型端末を利用者端末としたシステムの導入を実施した。
コンテンツサーバーを一乗谷朝倉氏遺跡内に設置し、また一乗谷朝倉氏遺跡の復原町
並内に無線LAN送受信アンテナ 3 基(1 基がネットワークに接続されており、残りの 2
基についてはレピータとして機能)を設置した。
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ネットワークは、上流回線としてケーブルテレビのインターネット網に接続し、イン
ターネットのアクセスが可能なほか、イントラネット内にコンテンツサーバーを設置す
ることにより、朝倉氏遺跡の復原町並内に設置されているアンテナから電波を受信した
場合にのみ見られるコンテンツを作成することで、朝倉氏遺跡に来るメリットを増大さ
せている。
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57
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汎用的な無線LANと、HTTPのシステムを利用しているため、観光客自身の無線
LANとHTTPに対応している端末(iPod touchやiPhone、ニンテンドー DSi / iLLや
PSPなど)でコンテンツを見られるほか、貸し出し用端末としてiPod touch5 台を用意し、
体験出来るようにしている。
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<朝倉氏遺跡情報ツール導入・運用(ソフト)>
一乗谷朝倉氏遺跡の復原町並で情報提供を行っていることから、一乗谷朝倉氏遺跡の
復原町並の見所各所の情報を新規に写真撮影し、また動画も撮影したうえで文字情報と
ともに提供できるようにした。さらに、一乗谷朝倉氏遺跡の復原町並以外の部分につい
ても情報収集を行い、こちらも静止画・動画・文字情報にて提供した。
一乗谷朝倉氏遺跡内で目の前で見られる情報をシステムに掲載するのではあまり意味
をなさないため、一乗谷朝倉氏遺跡内のコンテンツについては、通常では見られない映
像・静止画を盛り込んで作成した。
具体的には、
(1)空撮映像、
(2)昔の(発掘調査前の)一乗谷朝倉氏遺跡の写真、
(3)
指カメラを利用して復元模型を撮影することにより、原寸大復原されていない建物を臨
場感あるように見せる映像、などが挙げられる。
(1)「空撮映像」については、委託業者が過去撮影した空撮映像があり、提供可能と
のことであったのでコンテンツに盛り込んだ。
(2)
「昔の写真」
については、
一乗谷地区の住民より提供を受け、
コンテンツに盛り込んだ。
(3)「小型カメラでの模型映像」については、新規に撮影を行った。
58
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2010/05/07 19:19:03
また、連携市町の各観光施設についても、情報収集を行い、また写真を新規に撮影し
た上でコンテンツを作成し、情報提供を実施した。
観光客が、朝倉氏遺跡で知ることができると便利な情報として、天気予報情報や交通
機関情報(時刻表情報)、観光協会のページなどへのリンクも同時に提供した。
一般的なインターネットのwebページを作成するのと同様の仕組みで動作しているた
め、情報を簡単に追加・削除できるようにしており、変更が非常に容易になっている。
また、観光客の持ち歩く端末には一切情報を入れていない(無線LANと、インターネッ
トブラウザがあれば良い)ため、情報の変更にあたっても、サーバー上の情報を変更す
るのみで足り、端末それぞれへの操作は一切必要ない。
加えて、即時性のある情報も提供できるようにしている。「お知らせ」ページを作成
しており、こちらはIDとパスワードの認証が必要なページで簡単にコンテンツの登録
や変更、削除が行えるようにしている。ここには、イベント情報やお知らせしたい内容
を登録し、すぐに表示できるようにしている。
ソフトウエア整備(コンテンツ作成)と、ハードウェ
ア整備(無線LAN等設置)が完了し、供用が開始さ
れた段階で、チラシを作成し、連携している各観光
地にて配布を実施した。これにより、チラシを他の
連携観光地で見た利用者が一乗谷朝倉氏遺跡に来訪
する流れを作り、また一乗谷朝倉氏遺跡で新観光情
報システムを体した観光客が別の連携観光地を訪れ
るという流れを作り出している。
59
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<共通プラットフォームへのコンテンツ提供>
「ふくいやまぎわ天下一街道」にちなんだ各所についてのコンテンツを作成、登録した。
ふくいやまぎわ天下一街道に関わっている観光施設・名所等のほか、周辺の宿泊施設
や飲食店、鉄道駅などの情報を盛り込むことで、ふくいやまぎわ天下一街道周辺への来
訪者が情報を入手しやすくし、また旅先でも情報を楽しめるようにした。
特に登録コンテンツのほぼ全数(9 割強)のコンテンツについては、本事業のコンテ
ンツとして新たに写真撮影を実施し、また旅行基本情報(営業日・開館時間など)取材
を行い、作成をしたものである。
コンテンツにつき、
メディア種類としては、
文字情報、
静止画情報を中心に作成している。
朝倉氏遺跡での情報端末に掲載の情報は、動画コンテンツも掲載し、また文字情報も
詳細にわたり記載しているが、共通プラットフォームに登録しているコンテンツについ
ては、写真も一枚のみ、文字情報も限定された情報のみとしている。
そのため、朝倉氏遺跡で実際に観光情報システムを触らないと見られないコンテンツ
も多数存在する。
本事業において共通プラットフォームへ提供した情報は以下のとおりである。
数
動画
静止画
文字
音声
史跡
17
0
17
17
0
観光施設
3
0
2
3
0
歴史
2
0
2
2
0
文化
3
0
2
3
0
自然
1
0
1
1
0
産業
4
0
4
4
0
癒し
1
0
1
1
0
イベント
1
0
0
1
0
郷土料理
1
0
1
1
0
合計
33
0
30
33
0
(※複数カテゴリに登録しているものは、代表的なカテゴリのみに加算した。)
60
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2010/05/07 19:19:06
また、共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表的なものを示せば、以下の
とおり。
<実証実験の実施・フィードバック>
特別史跡・特別名勝内での無線LAN設備の設置のため、許認可の必要な場所であり、
許認可に対し時間がかかったため、2 月に実証実験を実施した。
短期間の実証実験であり、利用者は 20 人であり、うち 12 人よりアンケートの有効回
答を得た。
アンケートの中で特徴のあった項目は以下のとおりである。
①音声が聞き取りにくい
②無線の電波が途中で途切れる
61
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2010/05/07 19:19:06
③情報の書き換えがすぐにできるのは便利そう
④iPod touch(実験で利用した無線LAN利用可能な情報端末)が欲しくなった
⑤文字が小さい
⑥GPSと連動する仕組み(位置特定)があると良い
⑦動画の内容がよかった
⑧お知らせ情報を充実させて欲しい
⑨端末の情報をひとつひとつ変更するのではなく、一箇所を変えると全部変わるのは
作成側にもメリットがあると思う。
(3)事業の評価・課題
<遺跡におけるハードウェア整備>
一乗谷朝倉氏遺跡は、国指定の特別史跡・特別名勝であるため、新規の機械の設置が
極めて難しい。景観に配慮する必要があり、また新たに配線などを行うことが非常に難
しくなっている。本事業における整備にあたっては、既存の電灯線を活用し、またアン
テナを着色し、アンテナを木箱で覆うなどの対策を実施し、アンテナの設置箇所を面積
の割には非常に少なくすることで、ようやく設置の許可が出た。
しかし、アンテナを木箱で覆い、また着色を実施したことにより、当初の推定無線有
効範囲よりも幾分電波の到達範囲が小さくなってしまった。また、アンテナの設置個数
も非常に少ないため、電波暗所と呼ばれる、電波が届きにくい場所が発生してしまった。
また、遺跡内の構造物は戦国時代当時の建築技法で作られた土壁などがあり、この土
壁は水分を含むと一気に電波の通りが悪くなるという現象を発生させた。
アンケートにおいても、電波が不安定であるという意見が多くあった。本システムは
電波(無線LAN)によりコンテンツを表示させているため、電波が一つのネックとなっ
た。
今後同種のシステムを導入するにあたっては、可能な限り無線LANのアンテナを設
置し、電波暗所を減らす必要があると感じた。特に、屋外の場合は電波の到達状況が天
候などにも左右されてしまうため、電波状況には気を使う必要があると思われる。
あるいは、今後は無線LANではなく、別のネットワークインフラを利用するのも一
考である。
<利用者の持ち歩く端末>
本事業では、利用者端末として「iPod touch」等の無線LANとタッチパネル、ブラウ
ザを備えた機器を使用した。
「iPod touch」は音楽プレーヤーとして普及が進んでおり、また携帯電話機能を有す
る「iPhone」と併せて、所持している人も増加してきている。操作についてはタッチパ
ネル式であり、ボタンもiPod touchの場合で 4 つ(電源・音量大・音量小・ホーム)で
あることから、比較的直感的に使用しやすい端末である。
本事業では、インターネットブラウザを利用しており、webページ(インターネット)
を利用したことがある人の場合は、直感的に操作することができたようである。
ただ、室内での実験の段階では、
「iPod touch」のスピーカーから出る音の大きさが
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十分であると感じられていたが、実際に外で利用するとなると音が小さく感じられたよ
うである。特に複数人で利用する場合、お互いの音が干渉して聞こえづらい状態になる
ようである。
対処法として、希望する場合にはイヤホンを提供することが考えられる。
<端末用コンテンツについて>
iPod touch等の無線LAN端末用には、動画・静止画・文字情報でのコンテンツ作成を
行った。また、携帯電話等の端末用には静止画・文字情報でのコンテンツ作成を行った。
一番よく見られていたのは、朝倉氏遺跡内の各箇所の解説動画である。文字情報や静
止画でも遺跡内の各箇所の解説を行っているが、やはり解りやすさでは動画が群を抜い
ているようであり、興味を持ってみていた人も多かったようである。また、何度も見返
したり、映像と同じ場所に行って照らし合わせてみたりする人の姿も見受けられた。
コンテンツについては、基本的にはwebページの作成方法と同じであるため、変更や
追加などが簡単にできるように設計してある。今後、遺跡の発掘が進みコンテンツの追
加の必要が出てきた場合でも、追加や変更が容易に可能である。
課題としては、現在のコンテンツでは「位置情報」が盛り込まれておらず、利用者が
能動的に「現在知りたい情報」を選択することで、はじめて情報を見ることができるよ
うになっている。このことは、誤った位置情報により別のコンテンツが利用者の意図に
よらず表示されることは防げるが、利用者が現在位置を知らないとコンテンツが表示で
きない。今後は、なんらかの形で位置を特定して情報を表示させる必要があると思われ
る。ただ、利用者が意図しない情報の表示は、利用者の混乱を招く恐れがあるため、控
えめに「おしらせ」の形で情報がある旨の表示を行い、利用者が能動的に「おしらせ」
の内容を見たいと選択した場合のみに情報が表示されるようにするのが望ましいと思わ
れる。
また、文字の大きさが小さいとの意見もあった。今後は、文字の大きさも自由に選択
できるようにする方法が考えられる。文字とデザインを切り離して作成すれば、文字の
大きさを選択できるようになるため、小さい文字が苦手な人にも使いやすいシステムが
作成できると思う。
加えて、写真を掲載はしていたが、その写真の中のどの部分が今の説明の場所かがわ
かりにくいという意見があった。写真自体に「○」や「→」をつけることは、本システ
ムでは非常に容易に可能であるため、コンテンツの改善の参考にしたい。
<事中情報提供におけるシステム活用の有効性>
本事業におけるシステムでは、事中情報として、利用者(観光客)が旅行先で得られ
ると便利な情報の提供を考えた。
旅行先で得たい情報として、「天気予報」「交通機関情報(運行状況)
」「交通機関時刻
表」
「ほかの観光地情報」などがあると考え、システム上でこれらを提供しているインター
ネット上のwebサイトへのリンクを掲載することで情報提供をすることにした。
時刻表情報などはシステムに内包する方法も考えられたが、時刻表は一定期間ごとに
変更が必要であり、コンテンツ更新の手間が増えることや、古い情報が掲載されている
ことによる問題発生を防止するため、外部のサイトを利用することにした。
63
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利用された中で一番多かったのは「天気予報」のコンテンツであった。特に実証実験
中は気象状態が大きく変わっていた時期であったため、これからの天気が気になったよ
うである。
インターネットと、本事業におけるシステムがシームレスに接続されているため、イ
ンターネットで得られる情報を容易に閲覧し、また必要に応じて検索できるようにして
いる。この仕組みは好評であった。旅行先でもニュースなどが気になる人もいるようで、
検索ページからさらにニュース(オリンピック情報など)を閲覧している利用者もいた。
今後については、利用者が他にどのような事中情報としてのコンテンツを希望してい
るのかを引き続き調査し、それらの情報を提供しているwebページへのリンクを実施し、
またコンテンツとして作成していく必要を感じた。
<連携観光地の情報提供について>
本事業におけるシステム、また共通プラットフォーム上では、一乗谷朝倉氏遺跡のみ
ではなく、連携観光地の情報提供を行った。
本事業のシステム上では、「周辺観光地」の項目を作成し、その中で連携観光地の写
真や旅行基本情報(営業時間・営業日・入場料など)、紹介記事などを掲載した。また、
システムを一乗谷朝倉氏遺跡内で閲覧していることから、それぞれの施設への交通手段
については、一般的な経路(主要駅である福井駅からの所要時間など)に加え、一乗谷
朝倉氏遺跡からの経路についても紹介を実施した。
連携観光地の情報の中で、一番閲覧数が多かったのは「永平寺」であった。ネームバ
リューがあるため、クリック率が上がったと考えられる。ただ、連携観光地情報自体を
クリックする率が低かったため、何らかの形で目立たせる必要があると思われる。現在
居る場所と関連する連携観光地を表示させることや、この観光情報を見た人はこの情報
に興味を示しています(いわゆるウィッシュリスト)という情報を提示することで、誘
導する必要はあると思われる。
現時点では、連携している観光地の紹介にとどまってはいるが、今後はさらに範囲を
広げ、連携観光地や一乗谷朝倉氏遺跡周辺の観光関連サービス(飲食・土産・宿泊など)
の情報も掲載していく必要を感じた。
<連携に関する評価・課題>
本年度は一乗谷朝倉氏遺跡を重点的に整備対象とした。新しい情報システムを利用す
るということに対し、連携している各施設等でも温度差がかなり見受けられた。特に、
新しい情報システムを口頭や文字などでの説明で理解するのは難しく、何らかのデモン
ストレーションがないと理解が得られないのが現状である。
今回のシステムの導入で、多少、新しい情報システムに対する温度差が改善されつつ
あると感じられるのと、導入に対し興味を示している団体等が出てきていることが本事
業のメリットであったと感じられる。
今後の課題としては、導入に当たっては技術面に明るい人物が複数人必要であること、
また機器などを導入した場合は、非常時対応(軽微なトラブル対応)などが求められる
ため、ある程度技術的にわかる(トラブル対応法など)人物が必要となることから、そ
ういう人物の育成なども必須であると考えられる。
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連携を進めるには、従来の観光PR方法や、観光案内方法とは異なるアプローチが必
要となることから、さまざまな背景をもつ人たちの参画も必要になってくると思われる。
特に、飲食店や土産店など観光関連事業者の情報を充実させるためには、これらの事業
者の参画が絶対的に不可欠であり、課題としては、これらの事業者にいかにして連携の
輪の中に入ってもらうのかという点が挙げられる。
(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していく上
で、今後の展開としては、大きく 3 つのポイントがあると考えている。
①さらなる連携の拡大(広域化・内容増強)
②導入するシステムの検討
③利用者の行動分析からの展開の検討
①連携の拡大(広域化・内容増強)
本事業がテーマとしている「朝倉氏越前の記憶と天下一」に関係するエリア、特に旅
行者の流動を考えると、福井市及び周辺市町への自家用車を利用した広域観光の広がり
が考えられる。本年においては、一乗谷朝倉氏遺跡での情報提供を主眼において実施し
たが、今後はその他の施設・観光地における情報提供や、回遊性・滞在促進を図るため
に、連携している施設・観光地を訪ね、複数個所を回ることにより楽しめるコンテンツ
やシステムを作成する必要がある。
②導入するシステムの検討
本年においては、一乗谷朝倉氏遺跡という施設において、無線LANを利用した情報
提供システムを導入した。このシステムは汎用的な技術を利用しており、比較的安易に
導入でき、技術的にも比較的枯れている技術であるため安定性もある。しかしながら、
インターネット回線の有無など既存のインフラに左右される部分や、広大な範囲をカ
バーするためには複数本のアンテナが必要なこと、全てのアンテナに電力供給やネット
ワーク環境が必要なことなどの課題もある。特に、送受信の能力はアンテナにより影響
を受けるが、同時に利用者が持つ端末のアンテナ能力にも影響を受けるため、エリアを
大きくし難い問題もある。
今後システムを導入するにあたっては、電源やネットワーク環境などのインフラのほ
か、アンテナ設置に関する問題点なども検討に入れたうえ、適切なシステムを場所ごと
に選択する必要がある。
③利用者の行動分析からの展開の検討
技術的な検討も必要となってくるが、現地(事中)での利用者の行動について観光パ
ンフレットとの連動、クーポンの発行利用状況、携帯電話からのアクセスログの解析な
どから利用者の属性による行動の特徴などを分析し、属性に応じた圏域内での観光ルー
トの提案や、その観光ルート周辺でのマーケティング展開などを検討していくことも考
えていきたい。
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1−6.奈良県飛鳥地域連携情報発信事業
メインテーマ
日本の飛鳥(れきし)を観聞(みいる)旅
事業実施主体
橿原・高市広域行政事務組合
構成市町村
奈良県橿原市(◎)、奈良県高市郡高取町、奈良県高市郡明日香村(1 市 1 町 1 村)
関連団体
社団法人橿原市観光協会、橿原市ボランティアガイドの会、飛鳥京観光協会、高取
町観光協会
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
飛鳥地方においては、昨年度より圏域内の史跡・名勝など 100 箇所のコンテンツの完
成を見たところである。
2009 年においては、新規コンテンツの構築と、地元住民や当圏域を訪れる観光客は
高齢者が多いことから、本システムの利用方法について理解し便利に利用できるよう、
積極的にPR活動に取り組むこととする。
<目的>
2008 年に製作した既存コンテンツについて、当圏域の取り組みの中で目玉として構
築している音声ガイドのさらなる充実をはかり、併せて圏域内にまだまだ数多く点在
する史跡・旧跡・文化遺産に対してのコンテンツ制作に着手し、平成 21 年度でさらに
100 ヶ所の完成をめざす。また、新たな企画として 2009 年度では、県内大学と連携し、
コンピュータグラフィックス(CG)を駆使したコンテンツの各データ(文字、写真、
音声、
動画)の制作に取り組む。また、外国人観光客に対しても「もてなしの心」を実践する
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ために大学に留学している学生の協力を得て、外国語(英語・中国語・韓国語)版を制
作し提供するものとする。
b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①事業担当者部会の運営
②共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成、登録)
③地域観光パンフレット作成、PRグッズ制作及びそれらを用いたPR活動
④他の事業による実証実験の結果を受けたフィードバック及びアクセス解析
①事業担当者部会の運営
本事業実施と推進のために組合構成市町村(橿原市・高取町・明日香村)の担当者に
よる部会を適宜開催し、本事業の方向性・スケジュールや実施方法・作業分担などを検
討した。また、連携する大学関係者とも適宜協議を行った。
②共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成、登録)
共通プラットフォームでは、テーマ「日本の飛鳥(れきし)を観聞(みいる)旅」に
関連する歴史的背景や見所を中心に連携市町村の地域資源情報を提供する。各市町村担
当職員からなる事業担当者部会が中心となって、連携大学関係者や委託業者も交え以下
のコンテンツ制作を行った。
1.既存コンテンツの拡充
2.官学連携によるコンテンツ制作
3.官学連携によるコンテンツ制作に伴うマップ制作
③地域観光パンフレット作成、PRグッズ制作及びそれらを用いたPR活動
2008 年より取り組んだ当事業については、圏域内でも好評を得ており、昨年度に作
成したパンフレットの在庫が無くなったことにより、パンフレットの増刷を行った。ま
た、さらにより広くPRすることと、地元住民の方々への本事業への認識を高め地元住
民から「もてなしの心」として観光客に当システムを説明するための体験イベントを平
成 21 年 3 月に行った。そしてこれらPR活動を行うためのグッズとして、最近特に幅広
い年代層で人気のある「きぐるみ」を当組合のマスコットキャラクター「あたかちゃん」
で制作した。
④他の事業による実証実験実施を受けたフィードバック及びアクセス解析
平成 21 年度の国土交通省からの委託によるユビキタスコミュニケーターを使用した
実証実験を奈良県橿原市の重要伝統的建造物群保存地区の「今井町」において実施し、
観光客及び住民のアンケート調査を行った。その結果を受けて本事業が将来に向けてど
のように取り組むべきか事業担当者部会等において検討する。また、昨年度から作成し
たコンテンツのアクセスログを解析し利用件数の多寡などを踏まえて今後のコンテンツ
作成に反映していく。
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c.情報発信の方向性
本事業のメインテーマについてさらに 3 つのサブテーマからストーリーを作成し、共
通プラットフォームから情報発信を行う。
日本の飛鳥(れきし)を観聞(みいる)旅
共通PF
飛鳥を知る・探す
飛鳥で癒す・見つける
飛鳥を観る・歩く
個別コンテンツ
を紹介
文字・静止画・動画
音声
英語・中国語・韓国語
地域WEBサイト
WEBサイトは無し
本事業の観光パンフ
レット
UコードQR看板
からアクセス
地域観光
パンフレット
からアクセス
主として事前情報
音声は現場(事中情報)
で景色を見ながら携帯
電話で内容を聞く
事前と現場(事中)情報
地元ならではの情報
事前情報として共通プラットフォームから、動画や静止画、文字情報などにより地域
の歴史・文化の背景について理解を深められる情報の提供を行う。自然・文化関係の情
報提供には、季節性への配慮なども検討する。事前情報の確認はPC利用者が多いこと
から、動画を配信し、見た人が飛鳥の地を訪れたくなるような内容になるように工夫し
ている。
事中情報については、携帯電話を利用した情報の取得を想定して音声を中心に提供し
ている。その音声情報にはカンヌ映画祭などで話題の映画監督 河瀨直美氏にすべての
ナレーションをお願いするなどの工夫を行っているのが、本事業の特徴である。また、
圏域内の色々な施設で本事業の観光パンフレットの配布を行うほか、UコードQRのつ
いた看板を各コンテンツの場所に合わせて設置し、それらから共通プラットフォームへ
誘導する。そして、本地域、本テーマへの関心を強めてもらうため、グッズの開発や体
験ウォークなどのイベントを開催し、地元住民が理解して、観光客に本事業を勧められ
る観光案内となること及び共通プラットフォームに誘導できるようにしていく。
d.事業実施体制
橿原・高市広域行政事務組合は、1 市 1 町 1 村を構成市町村として設立された地方自
治法で定められた一部事務組合であり、平成 8 年に設立されたものである。一部事務組
合の管理者、副管理者には構成市町村の首長が就任し、その下で実質的な取組を行う事
業担当者部会で事業実施を行う。運営事務局については橿原・高市広域行政事務組合 総務課(橿原市 企画政策課)が行う。
実際の事業(コンテンツ収集・作成・登録、その他)については、事業担当者部会の
中で各事業について企画立案などを行い、実際のコンテンツ制作や制作物などについて
は外部委託をして実施した。
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体制図は以下のとおり。
事務局
橿原市
企画調整部
企画政策課
矢印付きの線は委託
矢印なしは、組織内
コンテンツ
奈良新聞社
奈良産業大学
天理大学
大学連
岡村印刷工業
アイプリコム
奈良新聞社
パンフレット・PR活動
管理者:橿原市長
副管理者:高取町長・明日香村長
橿原・高市広域行政事務組合
民間団体
大学等
自治体
社団法人橿原市観光協会
飛鳥京観光協会
高取町観光協会
奈良産業大学
天理大学
高取町
明日香村
e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
事業内容
7月
●
①協議会の構築・運営
設立総会
②地域WEBサイトの
構築・運用
③地域共通PFへのコ
ンテンツ提供
④地域観光パンフレッ
トの作成
⑤実証実験の実 施・
フィードバック
8月
9月
10 月
11 月
●
企画検討
●
計画決定
●
進捗確認
●
進捗確認
計画/設計
1月
2月
●
結果確認
●
結果報告
システム構築/デザイン/コンテンツ
テーマ/サブ コンテンツ
情報収集
テーマ検討 内容検討
取材
企画・設計
内容検討
計画/設計
12 月
情報収集
コンテンツ作成
テスト
3月
運用
登録・確認
デザイン/原稿作成
印刷
配布
システム構築/デザイン/コンテンツ
実証実験/
フィードバック
(2)活動・成果状況
a.活動状況
7 月に担当者部会により今年度の取組方針を決定した。また、担当者部会は必要に応
じて随時開催した。
コンテンツを制作するための大学連携先との協議を 8 月に実施、共通プラットフォー
ムに登録するコンテンツの情報収集については 9 月∼ 10 月に実施、コンテンツへの加工・
編集などは 11 月から 1 月に実施した。
PR活動として 10 月の圏域内でのイベントへのブース出展を行い、3 月には地域住民
を対象としたウォークイベントを開催した。パンフレット等は 9 月に昨年度作成したパ
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ンフレットの増刷を行い、2 月には新たなマップやパンフレットの印刷を行った。さら
に、8 月から 12 月にかけて当組合のマスコットキャラクター「あたかちゃん」のUコー
ドQR付きのきぐるみを制作した。
最終的な地域共通プラットフォームへの登録については 2 月に行った。
時期
平成 21 年 7 月
内容
担当者部会(以下、随時)、事業取組方針決定
8月
大学連携協議
9月
PRパンフレット増刷、コンテンツの情報収集・取材など実施
10 月
合同連絡会参加、大学連携協議、PR活動
11 月
推進委員視察、外国語版データ制作
12 月
TRONSHOW発表、各種データ制作
平成 22 年 1 月
2月
各種データ確認
パンフレット・マップ印刷、コンテンツ登録完了、事業報告
あたか探検隊(地元PR活動)、担当者部会(最終)
b.成果状況
<共通プラットフォームへのコンテンツ提供>
メインテーマ、サブテーマ及びターゲット層を想定し、コンテンツ枠 900 件に対し、
多言語対応として天理大学との連携により英語、中国語、韓国語に 51 × 3 ヶ国語の計
153 コンテンツを作成、登録した。特に登録コンテンツの 5 割にあたる音声案内付のコ
ンテンツについては、本事業のメインコンテンツとして今年もナレーターに映画作家の
河瀨直美氏に引き続き依頼し、新たに 49 コンテンツ分の収録を行い作成した。これに
より、当事業の特徴である音声ガイドをほぼすべての日本語コンテンツで登録した。
また、もう一つの大学連携として奈良産業大学との連携により、橿原市にかつて存在
した藤原京を再現したCGを活用したコンテンツを作成し登録した。このCGは橿原市が
平成 19 年度から「藤原京CG再現プロジェクト」として奈良産業大学との連携により 3 ヵ
年計画で進めている事業により制作したものである。
作成したコンテンツは、静止画に作成したCGを使用し、CGは現在の風景に再現した
藤原京を合成したもので、これに藤原京のどの位置からどのアングルでの画像であるか
を示したマップを作成し、観光客がこのマップを持って藤原京の現地に赴き、携帯電話
でUコードQRを読み込み画像をダウンロードすることで、現地の景色を見ながら、携
帯画面で当時の様子を楽しむことができる仕掛けとなっている。今回は 9 コンテンツ分
制作した。さらに、マップだけでなくより詳しく藤原京を紹介したパンフレットも作成
した。
コンテンツにつき、キーワードで整理すれば、
「飛鳥を知る・探す」、
「飛鳥で観る・歩く」
に関するコンテンツが多くなっている。また、メディア種類としては、文字情報、静止
画情報及び音声情報を中心に作成、動画情報については、自宅のPCで見て、飛鳥地方
に足を運びたくなるように作成するよう心がけている。
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コンテンツについて、キーワード・メディア種類で昨年度と今年度登録分を整理すれ
ば、以下の通り。
日本語
動画
静止画
文字
音声
外国語
(英中韓)
53(23)
(30)
飛鳥を知る・探す
57(4)
11
57(4)
57(4)
飛鳥で癒す・見つける
10
6
10
10
10(3)
(7)
飛鳥で観る・歩く
37
3
37
37
37(23)
(14)
計
104(4)
30(10)
104(4)
104(4)
100(49)
(51)
※括弧の中は今年度作成したコンテンツ数
共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表的なものを示せば、以下の通り。
<地域観光パンフレットの作成・PR活動>
飛鳥地域全体としての「日本の飛鳥(れきし)を観聞(みいる)旅」をテーマとした
観光パンフレットにつき、本事業の関係市町村で検討し作成した。昨年度に 7,500 部印
刷し、本年度事業では 9 月に 2,000 部を増刷、地域内の公共施設や観光施設、大型ショッ
ピングセンターなどに設置、配付した。パンフレットに付記されたUコードQRから共
通プラットフォームへのアクセスは 2009 年 7 月 19 日∼ 10 月 15 日まで 269 件のUコー
ドQRの読み取りと 431 件のホームページ閲覧となっている。
パンフレットのイメージは以下の通り。
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本事業を広く周知し、多くの人に当該システムを利用してもらうために、様々なPR
活動を実施している。
本事業をPRするブースを、10 月に藤原京で開催されたムーンライトIN藤原京と、橿
原市にある奈良芸術短期大学の学園祭において出展した。
また、奈良県の地域情報誌「ぱーぷる」11 月号に本事業を紹介する記事が掲載され、
また、読売奈良ライフの「月刊よみっこ」6 月号や大阪府が出版している「自治大阪」
7 月号においても記事が掲載された。
さらに、7 月には福井県大野市議会議員が本事業を知り視察に 6 名の方が来られ、事
業説明を行った。12 月には、東京のミッドタウンで開催されたTRONSHOWにおいて、
ユビキタスで地域活性化(各論)のセッションにおいて「飛鳥地方とユビキタス」とい
うタイトルで事業発表を行った。
PR活動を進めるために、橿原・高市広域行政事務組合のマスコットキャラクターで
あるあたかちゃんのUコードQR付のきぐるみを作成した。またそのことが奈良新聞に
掲載された。
あと、地元住民にこのシステムを体験し、周知するための体験型ウォークイベントと
して「あたか探検隊」を開催した。これは、小中学生とその親を対象としたイベントで、
体験中にUコードQRを読み取るチェックポイントを設置し、ゴール地点でその読み取っ
た情報を利用した宝探しゲームをするものである。このイベントに圏域内から約 200 組
が参加し、楽しみながら当事業のシステムに触れ親しんだ。このイベントを通じて、地
元住民に当システムの存在を広報し、飛鳥地方を訪れた観光客に当システムの使い方な
どを説明し、利用者促進につなげるための重要な活動であるととらえている。
最後に、平成 20 年度に作成したUコードQR付ストラップを今年度か
ら本格的に販売(圏域内 8 ヶ所)で開始し、1 月までで、約 280 個販売
している。
<他の事業の実証実験の実施・フィードバック>
奈良県橿原市今井町にある重要伝統的建造物群保存地区でユビキタスコミュニケー
ターを活用した実証実験を国土交通省による「モビリティサポートモデル事業」として
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実施した。実証実験には期間中 364 人が参加、フィードバックのアンケートの中では
「わ
かりやすかった」「地元の方と気軽に話しができた」「道に迷わずに済んだ」といった意
見が多く聞かれた。
<テーマによる地域連携の成果>
本事業を通してテーマに基づいた地域コンテンツの洗い出し、関連市町村との共同作
業、関連団体への情報提供協力などを通して、完全に具体化はしていないものの以下の
ような新たな連携構築の方向性や地域との協動可能性が出てきている。
①市町村の行政界にとらわれない広域的に観光に取組むことができる仕組みづくり
②地域を越えた情報提供、特産品販売のための基礎づくり
(3)事業の評価・課題
本事業でのテーマによる地域連携、情報発信に対する利用者の評価、事業実施におけ
る課題を「情報発信に関しての評価・課題」「連携に関する評価・課題」の大きく二つ
の面から整理する。
a.情報発信に関する評価・課題
<テーマ性・ストーリー性あるコンテンツの提供>
本事業で作成した地域webサイト、共通プラットフォームでの本事業コンテンツへ
のPCからのアクセスについては、基本的に事前の情報収集のためのものと考えられる。
これらのアクセスの傾向について、テーマ、コンテンツ別にみた結果が以下のとおりで
ある。
これらの結果をみるとテーマ性と関連の薄いコンテンツ群、圏域の市町村から数合わ
せで入れたコンテンツ等へのアクセスが低く、テーマ性に即したもの、関連性がはっき
りと見られるものへの評価が高くなっている傾向が見られる。そのため、テーマ・ストー
リーをベースに、利用者への訴求をしっかりと考えた情報提供を行っていく必要がある。
<現地(事中)情報における周辺観光情報の重要性>
携帯電話からの共通プラットフォームや地域webサイトへのアクセスの多くは本事業
で作成した観光パンフレット、圏域内に設置したUコードQR付看板からのものであり、
現地(事中)での情報入手である。これらのアクセスの傾向をみると共通プラットフォー
ムへの対象コンテンツへのものも多いが、一方で地域webサイトでの交通情報や周辺の
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飲食店情報などへのアクセスが多くなっている。また、本事業で実施した実証実験の評
価の声の中でも周辺でのお勧めの特産品や飲食店、交通情報などを望む声が多くなって
いた。そのため現地(事中)情報提供においては、利用者の満足度を高めるための情報
提供に加え、次の行動を誘発するための周辺情報提供の充実について検討していく必要
がある。
<現地(事中)情報提供におけるUコード活用、IT活用の有効性>
本事業では、藤原京を再現したCGを活用したコンテンツ提供を行った。また、これ
にマップを組み合わせることにより、現地で現在の風景を見ながらいにしえの姿をIT
活用により楽しめるものとなった。これは、現地が特別史跡という重要な文化的価値の
ある場所であり、簡単に構造物を設置できない場所では有効な手段ではないかと考える。
今井地区においてユビキタスコミュニケーターを活用した実証実験を他の事業で実施
したが、地元住民やNPOや観光ボランティアガイドを巻き込んだコンテンツ作成を意
識したことで、より深い内容の現地(事中)情報提供による利用者満足度の向上、コン
テンツへの評価などを確認した。利用者アンケートの結果などにより、わかりやすかっ
た、よくわかったという趣旨の感想を多く集め、こうしたコンテンツの有効性が確認で
きた。
その一方で、通常のコンテンツでは、音声情報での提供を中心に行い、ナレーターに
映画作家の河瀨直美氏がすべて務めており、好評を得ている。ただ、音声情報はデータ
容量が大きく、通信のパケット料が高額になることと、全ての携帯電話でダウンロード
可能となっていないので、ダウンロードできなかったという声も届いている。
こうしたIT活用の有効性を認めつつ、地元との対話の中で聞こえてくるのが、IT技
術を導入することで、観光客と地元住民やボランティアガイドとの交流を奪うのではな
いかということであった。要するに、IT活用により観光情報を観光客に提供すること
により、地元住民やボランティアガイドが「もてなしの心」を発揮し、観光客と触れ合
う機会が無くなるのではないかといことである。こちらについては、コンテンツから地
元住民の顔が見えるような内容に工夫し、このシステムが観光客と地元住民等を結びつ
けるきっかけになるような仕掛け作りに取組んでいきたい。
また、同時に作成した地域パンフレットについては、UコードQRを付け、共通プラッ
トフォームへの誘導を促した。通常のQRコードとしなかったことで、周辺の関連観光
サイトの統合といった突発的事象が発生したものの、UコードQRの紐付け情報を変更
することだけで対応することができ、Uコードでのデータベース構築の有用性が実感で
きた。さらに、パンフレットの大きさも持ち歩けるサイズとし、表紙は現地にある看板
と同じデザインとすることで、現地で迷わずに看板を見つけることができるように工夫
している。
b.連携に関する評価・課題
<多様な主体の参画、行政以外のリーダーの必要性>
本事業において利用者の目線に立った情報提供を想定すると行政という主体では提供
しづらい地元独自のイベント情報や、飲食店や観光スポットの地元住民からの評価結果
などが必要となる。特に漫然と行政側が羅列した観光資源のコンテンツでは利用者側が
74
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困惑するだけでなく、折角のテーマへの期待感・魅力をそぐ結果となっているとの指摘
も受けた。こうしたコンテンツの取捨選択、情報の収集について行政が主体となってい
る場合には、行政間の横並び意識などから選別は難しい。また、これらの情報を収集し
整理するためには行政のほか、観光協会や地元のNPOほか様々な主体の参画が必要と
なる。そのため多様な主体の参画と、それらをまとめてテーマ性ある情報発信を強力に
進めていくための行政以外の地域のリーダーなどによる運営も検討していく必要があ
る。
また、多様な主体の参画は、今後の情報発信の継続のための財源の確保という視点か
らも重要と考えられる。
(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していく上
で、今後の展開としては、大きく 3 つのポイントがあると考えている。
①連携の拡大(広域化・重層化)
②テーマに基づいたコンテンツの拡充
③利用者の行動分析からの展開の検討
①連携の拡大(広域化・重層化)
本事業がテーマとしている「日本の飛鳥(れきし)を観聞(みいる)旅」に関係する
エリアを考えると近隣の桜井市を含む奈良県の中南和地域は利用者の視点からみて一体
的な行動圏となっている。これまでの様々な取組を行っているが、今後も連携実現に向
け、事業を継続させていく。さらに、利用者の求める現地(事中)情報の提供のために
は観光協会や商工会議所、地元のNPOなどからの情報提供などが不可欠であり、連携
地域内での主体間の連携強化が必要である。さらに、共通プラットフォームのテーマで
現在は観光に特化しているが、観光と類似性の高い寺社仏閣のご利益に関することのほ
か、観光分野以外でも健康や医療、福祉などのテーマで地域と連携した相互の情報発信
などにより、当地域に興味を持ってもらうための入り口の多様化なども図っていきたい。
②テーマに基づいたコンテンツの拡充
共通プラットフォームへのPC、携帯電話などからのアクセスによるコンテンツの閲
覧状況、実証実験での利用者から得られたコンテンツの改善方向などを踏まえ、テーマ
に基づいたコンテンツの拡充について以下のようなことを行っていきたい。
・テーマに基づく地域資源のさらなる発掘と地元の顔が見えるコンテンツ作り
・利用者ニーズに即した飲食店や土産物などのクチコミ情報・評価情報の取り込み
・現地(事中)での利用者満足度をさらに高めるための加工された画像の提供の拡充、
地元観光ガイドとの連携
・外国語(英語、中国語、韓国語)のさらなる充実
75
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③利用者の行動分析からの展開の検討
技術的な検討も必要となってくるが、現地(事中)での利用者の行動について観光パ
ンフレットとの連動、携帯電話からのアクセスログの解析などから利用者の属性による
行動の特徴などを分析し、属性に応じた圏域内での観光ルートの提案や、その観光ルー
ト周辺でのマーケティング展開などを検討していくことも考えていきたい。
さらに、今後このシステム利用者を増大させていくには、特に関西においては利用者
が得するシステムを構築する必要があり、クーポンの発行などが出来るようお店との連
携を図り、システム化できるよう検討していきたい。
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1−7.工房街道情報システムの構築
メインテーマ
工房街道での体験・交流を楽しもう
事業実施主体
工房街道情報システム構築協議会
構成市町村
関連団体
奈良県吉野町(◎)、奈良市、宇陀市、山添村、曽爾村、御杖村、東吉野村、川上村、
下市町、黒滝村、天川村(2 市 2 町 7 村)
奈良のむらづくり協議会、工房街道推進協議会、地域づくり支援機構
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
奈良県東部の中山間地域には、数多くの工房が立地しているが、この地域は、大阪を
中心とする放射状交通体系の影響により、南北方向の移動の利便性に欠けるため、地域
としてのまとまりに難がある。
この地域を、多くの工房が立地する生活文化豊かな「工房街道」として、都市住民に
認識してもらうことができれば、また、質の高い生活・空間演出用工芸品等を各工房に
おいて来訪者に提供できれば、この地域は、来訪するたびに満足を持ち帰る観光交流地
として発展していくことが可能であると考えられる。
そこで、本事業では、この地域の工房等と歴史文化資源を活かし、「何度も訪れて地
元住民と信頼ある交流関係を築き、来訪するたびに満足を持ち帰る観光交流地」として
の地域発展を成し遂げること、また、それを通して、地域経済の好循環を生み出すこと
を目的とした。
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<目的>
工房街道地域には、連綿と引き継がれ、優れた技術をもって発展してきた伝統産業や
地場産業の工房が数多く立地する。また、木工やガラス工芸など様々な分野のデザイナー
や芸術家が移住し、工房をかまえている。その数は、確認済の奈良市・田原地区、宇陀
市、山添村、曽爾村、御杖村、吉野町、東吉野村、川上村で 150 を超える。一方、この
地域には、古代からの歴史文化資源も極めて多い。
個別工房だけでは、来訪者を受入れる基盤が不十分であるため、工房街道の「人」「工
房」
「まちやむら」
「宿泊施設」
「交流施設」
「農産物生産者(生産するもの)」
「飲食店(提
供する食事)」ならびに「歴史文化資源」などネットワーク化を図り、webサイトを通
じて発信し、来訪者・域外住民に利便を提供する。
この時、地域の「工房」
「まちやむら」等ならびに古代からの「歴史文化資源」を調査・
整理し、画像情報等のコンテンツを制作して、来訪者・域外住民にわかりやすく提供する。
即ち、埋もれていた地域資源を蘇らせ、それを域内外に広く情報発信することで、工房
街道に行きたくなる、工房街道の魅力がます情報システムとする。参加する「工房」「ま
ちやむら」「宿泊施設」「交流施設」等の数は、100 以上を目指す。
この情報システムは、共通プラットフォームと連動したCMSサーバーの構築により
サイトの運営を容易にするとともに、工房制作品・地域産品等の販売システムを付加す
ることによって、手数料収入を発生させ、魅力ある情報システムとしての質・内容の維
持・更新を図りつつ事業を継続する。
また、現地での情報入手を充実させるように、11 市町村の主要地区にUコードQR付
き案内板を各 1 ∼ 2 箇所設置する。
さらに、webサイトならびに事中提供情報を周知させるために、情報システム紹介チ
ラシを計 30,000 部作成し、宿泊施設、交流施設等で発信する。
b.事業内容
工房街道事業では、以下の 6 つの事業を実施した。
①工房街道情報システム構築協議会の設置
②工房・宿泊施設等への参加呼びかけとコンテンツ調査
③工房街道情報システム(CMSサーバー/販売システム導入)の構築
④共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成、登録)
⑤UコードQR付き案内板の設置
⑥情報システム紹介チラシの作成
①工房街道情報システム構築協議会の設置
本事業の実施の推進に向けて、奈良県吉野町、奈良のむらづくり協議会が中心となり、
連携市町村・地元関連団体の協力を得て、7 月 8 日に工房街道情報システム構築協議会
を設置した。
その後、9 月 24 日に第 2 回協議会、11 月 25 日に第 3 回協議会、1 月 27 日に第 4 回
協議会を開催し、本事業の方向性・スケジュール、掲載コンテンツの制作方針の検討、
コンテンツ内容の確認、案内板設置箇所の検討などを行った。
78
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②工房・宿泊施設等への参加呼びかけとコンテンツ調査
工房街道情報システム構築協議会の参加メンバーから、7 月から工房・宿泊施設等の
紹介、ならびにコンテンツ関連情報を収集するとともに、7 ∼ 12 月に現地取材等を通
じて地域の「工房」「まちやむら」等ならびに古代からの「歴史文化資源」を調査・整
理した。また同時に、工房・宿泊施設等に工房街道情報システムへの参加を呼びかけ、
掲載するコンテンツを制作した。
工房街道情報システムへ掲載する情報は、一定の条件に合致する「人」「工房」「まち
やむら」「宿泊施設」「交流施設」「生産するもの」「提供する食事」とした。一定の条件
は、「地域資源の利用」「安全」「品質」「もてなし」「工房街道地域への愛着」「工房街道
運動への参画意向」等について定めた。
③工房街道情報システム(CMSサーバー/販売システム導入)の構築
工房街道情報システム(CMSサーバー)は、9 月に全体像を構築し、販売システムの
追加など随時システムを更新した。また、掲載コンテンツを制作し随時掲載情報を更新
した。
④共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成、登録)
工房街道情報システムと共通プラットフォームは、歴史文化資源などの情報を一部連
動したシステムを構築した。工房街道情報システムの掲載コンテンツ(写真)の制作・
情報更新と併せて、共通プラットフォームでの登録を行った。
⑤UコードQR付き案内板の設置
現地での情報入手を充実させるために、11 市町村の主要地区にUコードQR付き案内
板を 10 箇所に設置した。案内板に設置するUコードQRは、周辺地域の工房・宿泊施設、
アクセス方法等のより詳細な情報が入手できるようにし、地域での長期滞在や再訪を促
すことを目指すものである。
⑥情報システム紹介チラシの作成
情報システム紹介チラシを作成し、宿泊施設、交流施設等で掲出した。webサイトの
紹介、ならびに現地での情報入手方法、案内板設置箇所等を記載し、事中・事後のweb
サイトへのアクセスを誘導した。
c.情報発信の方向性
本事業では、メインテーマを『奈良の「工房街道」での体験・交流を楽しもう』とし
た工房街道地域の情報を、「まち・むら」
、「歴史文化資源」、ならびに一定の条件に合致
する「工房」、「宿泊施設」、
「交流施設」、
「飲食店」、
「農産物生産者」のサブテーマを核
として情報発信を行う。
工房街道情報システム(CMSサーバー)では、上記のほか、
「おすすめ体験メニュー」
、
「交流イベント」など随時更新が必要な情報の発信を行うとともに、工房制作品・地域
産品等の販売システムを付加し、魅力ある情報システムとしての質・内容の維持・更新
を図る。
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事中情報については、工房や宿泊施設等の位置が非常にわかりづらく、携帯の電波が
届く地域が限定されるという課題があるため、11 市町村の主要拠点においてUコード
QR付き案内板を設置し、周辺地域の工房・宿泊施設の情報、各工房・施設へのアクセ
ス方法等を提供する。
事前情報については、「歴史文化資源」、「工房」
、
「まちやむら」、「宿泊施設」、「交流
施設」、「飲食店」を、画像などを用いて、工房街道に行きたくなる、工房街道の魅力が
ますように情報を発信する。また、交流イベント等の動画情報の配信と随時イベント内
容案内の更新、工房制作品・地域産品等の販売を行うことで、工房街道地域への関心を
高めてもらう。
■地域CMS(主として事前情報として発信)
共通プラットフォームにて登録
事中情報として発信
⇒UコードQR付案内看板からアクセス
⇒パンフレットからアクセス
d.事業実施体制
7 月上旬に連携市町村と関連団体による工房街道情報システム構築協議会(幹事:吉
野町)を設置し、本協議会が事業内容の検討と方針の決定を行っている。
工房街道情報システム構築協議会参加メンバーからの工房・宿泊施設等の紹介、なら
びにコンテンツ関連情報の提供に基づき、情報の集約・整理、コンテンツの作成は、事
業総括(担当)である奈良のむらづくり協議会が実施した。協議会の運営・調整は、事
業総括である吉野町が行った。
80
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事業実施体制
< 事 業 の流 れ >
工 房 街 道 情 報 シス テム構 築 協 議 会 」 情 報 システム
構築事業実施
( 幹 事 :吉 野 町)
協議会において情報システムの
構築方針を協議・確認
参加
情報システムの設計・構築
<市町村>
奈良市、宇陀市、山添村、曽爾村、御杖村
吉野町 、東 吉 野村、川 上 村 、下 市 町
黒滝村 、天 川 村(11 市町 村 )
<関連団 体 >
奈良の む らづ くり協議会
工房・宿泊施設等への参加呼び
かけとコンテンツ調査
協議会参加
メンバーから
の情報提供
協議会において掲載コンテンツ
の制作方針を協議・確認
◇工房・宿泊
施 設等紹 介
◇コンテンツ
関 係情報
奈良県内各地域の連携と発展を目指し、県内の
産学官により構成 /会員数 53 人・団 体
工房街道推進協議会
情報システム掲載コンテンツの
制作
工房主や工房集中立地地区の代表、また、彼ら
を支援する都市在住のデザイナー等により構成
会員数 42 人・団体
協議会においてシステムの全体
像の検証
地域 づ くり支 援機 構
地域づくりを支援する地域プランナーや地域
コーディネータを擁す る組織
地域プランナ ー・コーディネー タ数 27 人
情報システム運用開始
e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
事業内容
7月
8月
●
①工房街道情報シス 協議会
テム構築協議会の 協議会設置
情報システム構築
設置
方針の確認
②工房・宿泊施設等
への参加呼びかけ
とコンテンツ調査
9月
10 月
11 月
●
協議会
掲載コンテンツの
協議・確認
看板設置箇所の検討
12 月
1月
●
協議会
掲載コンテンツの
協議・確認
看板設置内容の検討
2月
3月
●
協議会
システム全体像の検討
看板設置内容の確認
システム紹介チラシの確認
工房調査と参加呼びかけ
掲載コンテンツ制作
掲載コンテンツの
精緻化
全体像の
検証
運用開始
情報システムの設計・構築
③工房街道情報シス
テムの構築
◇工房街道の概要紹介
(設立趣旨・事業内容・
ブランド宣言・キット
開発状況)
◇イベント等の告知
④共通プラットフォー
ムへのコンテンツ
提供(作成・登録)
⑤UコードQR付き案
内板の設置
(左記に追加)
◇工房・農産品紹介
◇ひと・まち・むら紹介
(左記に追加)
◇予約・販売システム
◇歴史紹介
◇交流施設紹介
◇宿泊施設紹介
◇飲食店紹介 等
◇システム上の
問題点の解消
◇コンテンツの
最終確認
提供するコンテンツの整理
コンテンツの登録
看板設置箇所の検討
看板デザインの検討
⑥情報システム紹介
のチラシの作成
作成
拠点地区看板制作・設置
配布
(2)活動・成果状況
a.活動状況
事業実施体制の整備のための協議会を平成 21 年 7 月に設立した。
コンテンツの作成方針、情報発信の方向性の確認について 9 ∼ 10 月にかけて実施、
共通プラットフォームに登録するコンテンツの情報収集については 10 月∼ 11 月に実施、
コンテンツへの加工・編集などは 11 月から 12 月に実施した。
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最終的な地域プラットフォームへの登録、地域webサイトについては 2 月に立ち上げ、
試行している。
時期
内容
平成 21 年 7 月 【協議会設立・開催】情報システム構築方針の確認
7∼9月
9月
9 ∼ 11 月
11 月
11 月∼ 1 月
平成 22 年 1 月
1∼2月
情報収集・取材など実施、掲載コンテンツの制作
情報システムの設計・構築(9 月に第 1 段階としてCMSの一部を立上げ)
【協議会開催】掲載コンテンツの協議・確認、看板設置箇所の検討
情報収集・取材など実施、掲載コンテンツの制作
情報システムの設計・構築[随時追加(テストサイト運用)]
【協議会開催】掲載コンテンツの協議・確認、看板設置内容の検討
コンテンツの整理・登録、看板のデザインの検討
情報システムの設計・構築[随時追加(テストサイト運用)]
【協議会開催】システム全体像の検討、看板設置内容の確認
システムの紹介チラシの確認
情報システムの一般公開、看板制作・設置
システムの紹介チラシの印刷・配布
事業報告
b.成果状況
<工房街道情報システム(CMSサーバー/販売システム導入)の構築・運用>
メインテーマである『奈良の「工房街道」での体験・交流を楽しもう』とした工房街
道地域の情報の発信に向けて、現地取材等を通じて工房・宿泊施設等に工房街道情報シ
ステムへの参加を呼びかけ、「まち・むら」
、
「歴史文化資源」、ならびに一定の条件に合
致する「工房」、「宿泊施設」、
「交流施設」、
「飲食店」、「農産物生産者」のサブテーマの
コンテンツ関連情報の収集・制作を行った。
「工房」や「農産物生産者」については、人の魅力に焦点を当て、工房主等のものづ
くりへの思いなどを中心に情報を整理した。
「まち・むら」については、地域の紹介を行うとともに、それぞれの地域の中の工房
や施設が地図上で表示できるシステムを構築した。また、個別の工房や施設の紹介ペー
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ジについても、周辺の施設情報を地図上に表示することで、各工房と施設等とのネット
ワーク化を図られ、来訪者・域外住民に体験・交流プログラムを含む多様なプランが立
てられるようにした。
工房街道情報システムと共通プラットフォームは、歴史文化資源などの情報を一部連
動したシステムを構築し、容易に更新ができるようにするとともに、工房街道情報シス
テムには「おすすめ体験メニュー」、
「交流イベント」、「ブログ」など、随時最新の地域
の情報が発信され、地域への関心を高められるようにした。なお、これらの情報は、ブ
ログ形式で容易に更新が出来るようにし、新着情報としてトップページが自動的に更新
されるシステムの構築を行った。さらに、地域に来訪した人が工房制作品・地域産品等
の販売システムを付加し、サイト上で制作品等の購入が可能となるようにした。
2009 年 9 月より第 1 段階のサイトの立上げを行い、9 月以降、随時テストページで運
用を開始、システム上の問題点の解消などを行っている。
<共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成・登録)>
メインテーマ、サブテーマを想定し、コンテンツ枠 230 に対し、216 のコンテンツを
作成、登録した。登録コンテンツの約 4 割にあたる
「工房(58)
」
、
ならびに「交流施設(24)
」
、
「宿泊施設(23)」の一部のコンテンツについては、新たに現地取材を行い、作成したも
のである。
キーワード別には、「歴史文化資源」、
「工房」に関するコンテンツが多くなっており、
メディア種類としては、文字情報と静止画情報で作成・登録している。
数
動画
静止画
文字
音声
まち・むら
17
―
14
17
―
歴史文化資源
84
―
68
84
―
工房
58
―
53
58
―
交流施設
24
―
14
24
―
農産物生産者
4
―
3
4
―
食事処
6
―
―
6
―
宿泊施設
23
―
9
23
―
計
216
―
161
216
―
共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表的なものは、以下の通りである。
83
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<UコードQR付き案内板の設置>
圏域内 10 箇所にUコードQR付案内板を設置し、そこから地域webサイトへの誘導を
行った。
市町村
設置候補
奈良市
田原ふる里ほっとステーション
山添村
花香房直売所玄関
曽爾村
曽爾高原ファームガーデン
御杖村
道の駅 伊勢本街道 御杖
宇陀市
ふるさと元気村
吉野町国栖地区
吉野町
三茶屋
川上村
吉野杉工房
黒滝村
道の駅 吉野路 黒滝
天川村
小路の駅「てん」
<情報システム紹介チラシの作成>
工房街道情報システムを紹介するパンフレットを作成、各市町村や道の駅などの観光
施設に設置、配付した。パンフレットは、各施設のUコードQRを付記し、共通プラッ
トフォームでの情報入手が可能となるようにするとともに、UコードQR付案内板の設
置箇所を記し、現地で情報が得られるようにした。
パンフレットのイメージは以下の通りである。
84
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<テーマによる地域連携の成果>
本事業により、工房などの優れた地域資源を掘り起こし、情報発信することで、体験・
交流を通じた来訪者の受入れの新たな可能性を広げた。
また、工房が集中立地している地域や宿泊施設が多く立地する地域など、これまで地
域ごとの個別の取組みに留まっていたが、地域間での連携を強化することにより、新た
な観光交流の発展に繋がるのみならず、奈良県東部の中山間地域における南北方向の移
動を促すことになる。
さらに、本事業を通してコンテンツ関連情報を収集することで、関連市町村や観光関
連団体等との連携が強化され、下記のような新たな連携構築の方向性が出てきている。
①コンテンツの拡充(飲食店、宿泊施設、農産物生産者等の情報の充実、地域の祭・
伝統等の情報の整理・拡充)
②利用可能な交通機関情報の発信
(バス運行案内、レンタカー・レンタサイクル、タクシーなどの利用方法等)
③地域の観光ガイドの情報等の発信
④各施設へのUコードQR付説明板の設置
(3)事業の評価・課題
本事業の実施における課題を「情報収集に関する評価・課題」、
「システム構築に関す
る評価・課題」、「連携に関する評価・課題」の大きく三つの面から整理する。
a.情報収集に関する評価・課題
<情報収集を通じた新たな連携拡大>
工房街道情報システムへ掲載する情報は、「工房」や「交流施設」
、
「宿泊施設」など
の情報収集を行い、個別に現地取材によってコンテンツを作成した。個別の情報収集を
通じて、工房や施設からの紹介により新たな情報が得られ、コンテンツ数の拡充に繋が
り、50 を超える工房の了承を得た。また、収集した情報は、各工房や施設が知らない
情報も多く、工房間、または工房と施設間の連携に繋がる足がかりとなる。
なお、制作に集中したい、見学や体験を受入れる余裕がない等の理由から、今年度の
情報掲載を見送った工房数が全体の約 3 分の 2 程度残されており、また、宿泊施設、飲
食店についても、独自にホームページ等で情報発信をしており、新たに掲載をする必要
性を感じない等の理由から、情報掲載に消極的な面が見られたが、工房や各施設につい
て事業への理解が進むことで、さらなる情報の充実に繋がることが期待される。
今後、案内板の設置や情報システム紹介チラシの作成・配布などを通じて、本事業へ
の認知を高め、掲載情報の充実を図る必要がある。また、工房までの交通手段や、体験・
教室の開講状況、イベント情報等に関する問合せが多いことから、来訪者が求める情報
を分析し、「おすすめ体験メニュー」、「交流イベント」などの情報についても随時更新
を進めるとともに、交通情報等の情報発信を充実させていく必要がある。
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b.システム構築に関する評価・課題
<システムの充実と継続的な運営体制の構築>
ホームページの更新が容易にできるように、工房街道情報システムと共通プラット
フォームは、歴史文化資源などの情報を一部連動したシステムを構築するとともに、
「お
すすめ体験メニュー」、「交流イベント」
、「ブログ」などの情報は、ブログ形式で容易に
更新が出来るようにし、トップページの新着情報が自動的に更新されるシステムを導入
した。
これらのシステムの導入により、「ブログ」等の情報については工房や施設等の方か
らの情報発信も可能となるため、多様な主体が情報の更新作業を行い、さまざまな情報
が発信される体制に発展させていくことで、魅力あるホームページにしていくことが求
められる。
c.連携に関する評価・課題
<観光関連団体との連携強化>
本事業では、情報収集に関して奈良のむらづくり協議会や工房街道推進協議会等の協
力を得ており、行政という主体では提供しづらい独自の情報が得られた。また、観光協
会などの観光関連団体との連携が強化され、新たな連携発展への可能性が高まっている。
なお、地域内での連携も進んでいない地域や、行政と地域との関係が希薄である地域、
新たな事業に消極的な地域等もあり、コンテンツ数に地域差が生じている。
今後、各地域の情報の充実に向けては、観光協会や商工会議所、観光関連団体などの
連携強化を進める必要がある。
(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と情報発信の充実を図る上で、今後の展開とし
ては、3 つのポイントが挙げられる。
①飲食店、宿泊施設、農産物生産者等の情報の充実
②新たな情報の拡充
(利用可能な交通機関、地域の伝統・祭、観光ガイドの情報等の付加)
③利用者の行動分析からの展開の検討
①飲食店、宿泊施設、農産物生産者等の情報の充実
工房街道地域において新たな観光交流地として発展を促していくためにも、飲食店や
宿泊施設等の情報の充実は不可欠であり、観光協会や商工会議所、観光関連団体などの
連携強化を進める必要がある。さらに、宿泊施設、飲食店については情報掲載に消極的
であるため、宿泊施設や飲食店等の情報紹介に留まらず、クーポン等の発行、口コミ情
報の追加等の付加を検討し、宿泊施設や飲食店の情報掲載数を増加させることが求めら
れる。
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②新たな情報の拡充
工房街道地域では、地域内あるいは地域間の移動手段について一元化された情報がな
いため、鉄道やバスの運行情報や、レンタカー・レンタサイクル、タクシーなど、各工
房や施設への利用可能な交通手段の情報を発信することにより、来訪者・域外住民にとっ
て利便が提供されると考えられる。
また、地域の伝統や祭なども含めイベント情報やおすすめ体験メニュー等の情報を充
実させ、来訪者の関心を惹くとともに、観光ボランティアガイド等の情報を整理・発信
していきたい。
③利用者の行動分析からの展開の検討
今年度立ち上げる工房街道情報システムのアクセス、ならびにUコードQR付き案内
板、情報システム紹介チラシからのアクセス数などを解析し、利用者の行動特性を分析
し、新たな観光ルート等の提案、ならびにおすすめ体験コース等の紹介などの付加を進
めることも考えていきたい。
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1−8.国立公園大山周遊観光・情報連携とユビキタス情報整備事業
メインテーマ
山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅《感幸ナビ》
事業実施主体
大山山麓観光推進協議会
構成市町村
鳥取県米子市(◎)
・鳥取県大山町・鳥取県境港市・鳥取県南部町・鳥取県伯耆町・
鳥取県江府町・鳥取県日吉津村・鳥取県琴浦町(2 市 5 町 1 村、延べ 1 県)
大山山麓観光推進協議会
NPO法人 大山中海観光推進機構(以降 大山王国)
関連団体
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
この度山陰文化観光圏として指定を受けた、中国地方最高峰 国立公園大山(だいせん)
とその麓の地域は、山岳地域、高原地域、農作地域、砂州地域などが連続して存在し、
裾には日本海と中海を望むなど、個々の市町村が持つ観光資源は極めて豊富ではあるも
のの、広域連携しての情報発信は限定的で、当地全体としてのテーマ性を持ったPRが
求められている。
①体験観光、着地型観光、癒しの旅などの旅のトレンドへの対応及び、連泊対応につ
いての総合的な対策が課題となっている。
②当エリア内の各自治体は個別に観光情報を発信しているものの、断片的な情報と
なっている。またNPOによる広域観光サイト「大山王国ホームページ」があるも
のの、詳細情報を網羅するには至っていないのが現状である。
③着地形のユビキタスな情報発信ツールとしてケータイ端末が今後益々重要となって
きており、当地ではケータイ対応が遅れているのが現状である。
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④施設ごとのブログは多少あるものの、これらを横断するコミュニティは無く、当地
の総合的なファンづくりには至っていない。
<目的>
当エリア全体の魅力を全国へアピールできるような統一したテーマを設けて情報を再
整理すると共に、各自治体が持つ観光情報を効率よく横断的に発信できる環境と情報の
整備をし、これらの情報を来訪されたお客様へユビキタスに提供することによって、当
エリアの魅力を深く理解してもらい、連泊や、リピーター、ファンとなって戴くことを
目的としている。
①総合的な当地の旅のテーマを策定し、体験観光、着地型観光、癒しの旅などに対応
した情報発信をし、連泊、滞在型観光へと導いていく。
②エリア内の各自治体やNPOが個々に発信している情報を、連携する仕組みを構築
して当エリア内の情報を横断的にPRしやすくする。
③現地でのユビキタスな情報収集へ対応すべく、ケータイサイトを充実し、観光客の
利便性の向上と、周遊観光情報の発信力を強化する。
④各観光施設から直接情報発信できる仕組みとコミュニティを形成して、当地を深く
理解していただきリピーター、ファン作りをする。
b.事業内容
本事業では、下記の 12 項目の事業を実施した。
①大山山麓観光推進協議会の地域内における当事業内容の浸透
②共通プラットフォーム連携−UコードQR対応・地域共有情報データベースシステ
ムの開発
③地域共有情報データベースシステムへの情報入力
④大山王国ホームページ生成用CMSの最適化
⑤地域共有情報データベースシステムを利用して、大山王国ホームページをリニュー
アル
⑥大山パークウェイホームページの情報メンテナンス
⑦大山王国ケータイホームページの充実(ケータイポータルサイトの整備)
⑧ケータイスタンプラリーの開催
⑨ケータイ対応の地域コミュニティ(ブログ)の運営と連携
⑩ペーパー等による告知
⑪ホットスポットによる実証実験
⑫実証実験の実施とフィードバック
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当事業のシステム概要図(②∼⑨について)
共通プラットフォーム連携
地域情報共有 DBシステム
③観光施設情報
②情報入力
共有データ
入力
②情報入力
②情報入力
②情報入力
②共通プラット
フォーム連携
地域共有情報
DBシステム
《新規開発》
U コード
対応
総務省
共通プラットフォーム
地域共有情報
ふるさと財団システム
共通プラットフォームDB
地域共有情報 APIの発行機
結果出力
APIへの対応機能
⑤大山王国
②情報入力
固有の情報
②情報入力
②情報入力
②情報入力
⑥大山パーク
②情報入力
ウェイ情報
②情報入力
②情報入力
②情報入力
大山王国
PC用webサイト
④大山王国
ホームページ
生成用CMSの
最適化
ケータイ情報
生成機能
⑦大山王国
②情報入力
固有の情報
②情報入力
②情報入力
②情報入力
その他の周辺システム
(既存システム・ASPシステム)
ケータイ
スタンプラリー
システム
(既存システム)
⑧スタンプラリー
②情報入力
の情報入力
②情報入力
②情報入力
②情報入力
大山王国
ケータイ用サイト
大山王国ホームページ
生成用 CMS(既存システム)
ケータイ対応
地域コミュニティ
システム
(ASPシステム)
⑨ブログシステ
②情報入力
ムへの情報入力
②情報入力
②情報入力
②情報入力
①大山山麓観光推進協議会の地域内における当事業内容の浸透
○当協議会を構成する 8 市町の担当者に対して当事業の説明会を実施
○当協議会を構成する 8 市町の担当者を中心としたメーリングリストを運用中
②共通プラットフォーム連携−UコードQR対応・
地域共有情報データベースシステムの開発
○共通プラットフォームのフォーマットに準拠した入力項目と設定
○UコードQRへ対応したシステム
○入力した情報は、共通プラットフォームのサーバーへも送信できるよう設定
○入力した情報は、API化して、希望者が簡単に引用利用できるよう設定
○出力方法は、PC用の他に、ケータイ用の出力をサポート
○座標情報入力により、MAP表示(PCとケータイ)と、マップコードへ対応
③地域共有情報データベースシステムへの情報入力
○現在の大山王国保有の観光施設情報を当システムへ入力してデータベース化
○主要な施設情報については、UコードQRを利用した情報入力形式
○主要な施設情報については、MAP表示とマップコード出力へ対応
④大山王国ホームページ生成用CMSの最適化
○地域共有情報データベースシステムのAPIを有効活用できるようCMSを最適化
○地域共有情報データベースシステムの出力するケータイ情報を利用できるよう最適
化
90
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⑤地域共有情報データベースシステムを利用して、
大山王国ホームページをリニューアル
○トップページ及びデザインをリニューアル
○コンテンツ項目の再編成(※事前情報として分かりやすくまとめた)
○中ページ情報を、地域共有情報データベースシステムのAPIを利用して作成
⑥大山パークウェイホームページの情報メンテナンス
○トップページ及び中ページの情報追加・更新
○ケータイサイトの充実
⑦大山王国ケータイホームページの充実(ケータイポータルサイトの整備)
○大山王国ケータイサイトの情報を充実
○観光地までの誘導には、カーナビ用マップコードを表記
○観光地までの誘導には、ケータイMAP(ASP利用)を表示
○ケータイサイトのアクセス解析を実施
⑧ケータイスタンプラリーの開催
○ケータイスタンプラリーシステムを最適化して実装
○ケータイスタンプラリーの内容をシステムへ登録
○ケータイスタンプラリーを夏と秋の 2 回開催
○参加者の中から抽選で特産品グルメをプレゼント
○アンケート調査の実施・集計
⑨ケータイ対応の地域コミュニティ(ブログ)の運営と連携
○地域住民とゲストを結ぶブログポータルサイトの運営
○地元住民側へのブログ教室を開催
⑩ペーパー等による告知
○ホットスポット実施についてQRコードとURL入りのポスターを配布してPR
⑪ホットスポットによる実証実験
○当エリア内に無線LANを利用してフリーに利用できるホットスポットを設置
○利用に関する統計調査を実施
⑫実証実験の実施とフィードバック
ケータイ電話(主要 3 キャリア)
、ニンテンドー DS、iPod touchを利用して、モバイ
ル情報サイトへアクセスできるか、またカーナビからマップコードを利用できるかの実
証実験を実施し、最適化
91
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c.情報発信の方向性
本事業では、メインテーマを「山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅《感幸
ナビ》」として、下記の 7 つのサブテーマを核として情報発信を実施している。
①メインテーマとサブテーマ
山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅
《感幸ナビ》
ブナの森から紺碧の海へ、大山パークウェイ
神々の足跡を追いかけて 古事記とタタラ伝説
悠久の大山寺と、弥生白鳳ロマンにひたる
後醍醐天皇の見た夢、太平記へのトリップ
とっとり花回廊と、大山の風に吹かれて
米子城下町と中海遊覧 水鳥たちの愛した風景
山陰日本海の幸と、妖怪たちのパラダイス
②情報発信の対象者(ターゲット)
山陰・鳥取県西部に位置する当エリアは、中国地方最高峰 国立公園大山(だいせん
標高 1,709m)の裾野が日本海まで伸び、日本でも有数の自然景観に恵まれると共に、
わが国の高度発展から取り残されたかのような昔ながらの人々の暮らしがあり、人と人
とが絆によって結ばれ、生活している。
一方、現代の日本人(とりわけ都会の生活者)は、混雑と渋滞の中、マネーゲームと
拝金主義に追われるかのごとく慌しく暮らしている。
情報発信のターゲットは、
「都会生活に疲れ、癒しを求めている人」と位置づけ、年齢・
性別を問わず、癒しの旅情報として当地の資源を結び付けて情報発信している。
③当地へ旅をし、何を感じ取ってもらうのか(情報の内容)
人が旅をするのには様々な理由がある。景観観光や歴史探訪であったり、温泉旅行や
ご当地グルメが目的だったりと様々である。もちろん、当地の観光についても、景観・
歴史・温泉・グルメ・体験などを紹介しながら旅のプランを立ててもらうものの、旅を
終えた後に心に残るものとして、『「幸せ感」のある旅、自分の人生を振り返る旅、大切
なものを見失わないための旅を提言し、観光から「感幸(かんこう)」へ。』をメインテー
マとして感じ取れるように結んでいった。
観光情報
(資源)
景観
歴史
感幸情報
(テーマ)
お宿
グルメ
体験
周辺
×
癒し
幸せ感
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④情報の伝達手段
当事業での情報伝達は、旅の事前情報、事中情報、事後情報に分けて発信している。
[事前情報]
事前情報は、大山王国ホームページ並びに、
サブテーマである「大山パークウェイ」ホー
ムページをリニューアルして、テーマに沿ったより分かりやすい内容とし、主要な施設
内用は共通プラットフォームと連携して情報発信した。
施設情報については、UコードQRを活用して体系的な情報とした。
[事中情報]
事中情報は、大山王国ケータイサイトによって発信できるように整備し、現地のパン
フレットに記載のQRコードからもアクセス可能とした。
Uコード、カーナビ用マップコード、ケータイ用MAPを表示し現地まで誘導した。
ケータイスタンプラリーを開催して、最寄りのスタンプラリーポイントへ誘導した。
[事後情報]
NPO大山王国が主催している地域密着型ブログポータルを活用して、コミュニティ
の充実を図るために、当地での旅の思い出写真などを掲載可能なブログサイトを無料に
て開放し、旅の思い出、旅の計画などについて、地元民が簡単にコメントできるように
整備した。
[事前・事中・事後情報の連携]
事前・事中・事後それぞれの情報は、効果的にお互いにリンクされて、相乗効果があ
がるようにサイト間で相互リンクした。
d.事業実施体制
大山山麓の 2 市 5 町 1 村により構成された、大山山麓観光推進協議会において当事業
を実施した。当事業の具体的な推進については、NPO法人 大山中海観光推進機構(NPO
大山王国)内に推進部を置きこれを実施した。NPO大山王国は当事業具体化のために
適材な企業と契約しワーキンググループを立ち上げて事業を進めた。経理及び事務処理
については、当事業統括である大山山麓観光推進協議会(事務局 米子市役所観光課)
において行なった。
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体制図は以下のとおり。
事業実施体制
大山山麓観光推進協議会
会 長 米子市長 野坂 康夫
事業統括・窓口【米子市観光課】
副会長 境港市長 中村 勝治
大山町長 森田 増範
監査役 琴浦町長 田中 満雄
NPO 大山王国との調整・進捗管理
委員会【構成会員から代表者が参加】
事業内容の検討・方針決定
日吉津村長 石 操
構成会員
協議会の運営・調整業務
鳥取県米子市(◎)・鳥取県大山町・鳥取県境港市・鳥取県南部
町・鳥取県伯耆町・鳥取県江府町・鳥取県日吉津村・鳥取県琴浦町
NPO法人 大山中海観光推進機構(大山王国)
理事長 石村隆男
当事業推進部【責任者 石村隆男】
ワーキンググループとの調整・進捗管理
ワーキンググループ
紙媒体事業 有限会社地域未来
インターネット事業 有限会社ジャプロ
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e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
事業内容
7月
①事業内容の浸透
8月
9月
●
協議会
②地域共有情報DB
システムの開発
10 月
11 月
●
進捗報告
●
進捗報告
設計
12 月
2月
3月
● ●
進捗報告 協議会
構築
メンテナンス
メーリングリストの運用
③地域共有DBへの
情報入力
施設データの準備
情報入力 情報メンテナンス
④大山王国CMSの
最適化
⑤大山王国ホーム
ページリニューアル
1月
設計
最適化
詳細情報のDB連携
企画・デザイン・情報作成
情報メンテナンス
情報メンテナンス
⑥大山パークウェイ
情報メンテナンス
リニューアル作業
⑦大山王国ケータイ
サイトの整備
⑧ケータイスタンプラ
リーの開催
⑨ブログポータルサイ
トの運営
⑩ペーパーによる告知
⑪ホットスポットによ
る実証実験
⑫実証実験の実施と
フィードバック
施設データの準備
実施期間
当選者発表
アンケート集計
企画・構築
情報入力 情報メンテナンス
実施期間
当選者発表
アンケート集計
運営
制作期間
機材準備
テスト
表示期間
実証実験開始
アクセス解析他の実施
集計
(2)活動・成果状況
a.活動状況
事業実施体制の整備のための協議会を平成 21 年 8 月に開催した。
コンテンツの作成方針、情報発信の方向性の確認について 9 ∼ 10 月にかけて実施、
共通プラットフォームに登録するコンテンツの情報収集については 10 月∼ 11 月に実施、
コンテンツへの加工・編集などは 11 月から 12 月に実施した。
最終的な地域プラットフォームへの登録、地域webサイトについては 2 月に立ち上げ、
試行している。
95
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時期
内容
平成 21 年 8 月
大山山麓観光推進協議会にて当取り組み内容の共有確認
8月
事業実施先の選定(NPO大山王国からの外部委託決定)
8月
大山王国ホームページリニューアルの情報収集を開始(2 月完了)
8月
第 1 回目のスタンプラリーを実施(9 月完了)
9月
地域共有情報データベースシステムの設計に着手(2 月完了)
9月
大山パークウェイホームページリニューアル作業への着手(11 月完了)
10 月
ブログサイトの充実に着手(2 月完了)
10 月
第 2 回目のスタンプラリーを実施(12 月完了)
12 月
ホットスポットの設置機種選定開始、2 箇所へ設置(1 月完了)
12 月
ホットスポットの告知ツールの作成開始、2 箇所へ設置(1 月完了)
平成 22 年 1 月
大山王国CMSシステムの最適化に着手(2 月完了)
1月
大山王国ケータイサイトの充実に着手(2 月完了)
1月
共通プラットフォームコンテンツ登録、実証実験/フィードバック
2月
地域webサイト(大山王国HP)と、共通プラットフォームのシステム連携テスト運用
事業報告
b.成果状況
<地域webサイトの構築・運用>
①当地域webサイト≪大山王国ホームページ≫
http://www.daisenking.net/
メインテーマである「山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅《感幸ナビ》」
を利用者に伝えていくため、地域共通webサイト①≪大山王国ホームページ≫において
テーマに沿った特集記事の整理と、旅の事前情報としての必要十分な情報サイトとして
全面的に再構築しリニューアルした。システムとしては、共通プラットフォームとの情
報連携システムを開発し、当地域webサイトと情報が自動同期するようにした。
イ.メインテーマに沿って、デザインを全面リニューアルした。
ロ.メインテーマに沿って、特集記事を新規作成した。
ハ.観光施設内用の情報を、共通プラットフォームとシステム連携した。
ニ.サイト内の情報を目的別に整理し、事前情報として閲覧しやすく再構成した。
ホ.事中情報としてのケータイサイトへのQRコードを表示して連携を強化した。
ヘ.事後情報としてのブログサイトとの連携を強化した。
96
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Web改善例①
リニューアル前の当地域webサイト
大山王国のホームページの状況
2010 年 2 月にリニューアルした、当地域webサイト
大山王国ホームページの状況
リニューアル前のサイトでは
各種取り組みの告知バナーの
作成と、表示をした。
②当地域webサイト≪大山パークウェイホームページ≫
http://parkway.daisenking.net/
また、サブテーマ「ブナの森から紺碧の海へ、大山パークウェイ」を広くPRするた
めの専用サイト≪大山パークウェイホームページ≫を拡張して、より具体的な事前情報
として活用できるように、年間を通して現地の写真撮影を実施して画像情報を増強した。
イ.トップページのフラッシュによるスライド写真を新規撮影して追加した。
ロ.
「お泊り旅でゆったり観たい朝焼け・夕焼け・星空 絶景パークウェイアルバム」コー
ナーを新設した。
ハ.「パークウェイDE食べるグルメドライブMAP」コーナーを新設した。
ニ.大山王国アンケート(ユビキタスアンケート)を実施した。
ホ.フリースポットのPRをした。
97
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Web改善例②
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Web改善例③
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③ケータイwebサイトの拡張≪大山王国ケータイサイト≫
http://www.daisenking.net/m
④ケータイwebサイトの拡張≪大山パークウェイケータイサイト≫
http://parkway.daisenking.net/m/
99
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当事業では、旅の事中情報として、特にケータイサイトの充実を図った。とりわけ、
旅の楽しみである「グルメ情報」を増強し、マップコードによるカーナビからの誘導、
及びケータイ用に最適化された地図とリンクするなどして、使い勝手の向上を実現した。
また、施設情報については、共通プラットフォームの情報とシステム連携を取って、
情報ソースの一元化を実現した。
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ࡑ࠶ࡊࠦ࡯࠼‫࠲࡯ࠤޔ‬
ࠗ࿾࿑⴫␜ࠍߒߡ‫⃻ޔ‬
࿾߳⺃ዉߒߡ޿߹ߔ‫ޕ‬
<共通プラットフォームへのコンテンツ提供>
当事業により、下図の「②共通プラットフォーム連携−uコード対応・地域共有情報
データベースシステム」を開発できたため、地域情報のワンソース化と、共通プラット
フォームへの情報連携を自動的に送信することが可能となった。
100
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■当事業のシステム概要
共通プラットフォーム連携
地域情報共有 DBシステム
③観光施設情報
②情報入力
共有データ
入力
②情報入力
②情報入力
②情報入力
②共通プラット
フォーム連携
地域共有情報
DBシステム
《新規開発》
U コード
対応
総務省
共通プラットフォーム
地域共有情報
ふるさと財団システム
共通プラットフォームDB
地域共有情報 APIの発行機
結果出力
APIへの対応機能
⑤大山王国
②情報入力
固有の情報
②情報入力
②情報入力
②情報入力
⑥大山パーク
②情報入力
ウェイ情報
②情報入力
②情報入力
②情報入力
大山王国
PC用webサイト
④大山王国
ホームページ
生成用CMSの
最適化
ケータイ情報
生成機能
⑦大山王国
②情報入力
固有の情報
②情報入力
②情報入力
②情報入力
その他の周辺システム
(既存システム・ASPシステム)
ケータイ
スタンプラリー
システム
(既存システム)
⑧スタンプラリー
②情報入力
の情報入力
②情報入力
②情報入力
②情報入力
大山王国
ケータイ用サイト
大山王国ホームページ
生成用 CMS(既存システム)
ケータイ対応
地域コミュニティ
システム
(ASPシステム)
⑨ブログシステ
②情報入力
ムへの情報入力
②情報入力
②情報入力
②情報入力
■当システムの運用による情報の流れ
<観光施設情報など共通プラットフォームとデータ共有したい場合>
1.③観光施設情報共有データ(以降 施設データという)を作成する。項目内容は共
通プラットフォームの内容に準ずるように整形しておく。
2.この度新規開発した、②共通プラットフォーム連携地域情報データベース(以降
地域情報データベースという)システムへ、施設データを入力する。
3.共有が必要な施設データは、ふるさと財団共有プラットフォームデータベースシ
ステム(以降 共有プラットフォームデータベースという)へ送信され、登録される。
4.同時に、地域情報データベースシステムは、同内容を簡単に引用して利用できる
APIとしても発行する。
5.④大山王国ホームページ生成用CMS(以降 大山王国CMS)システム側では、API
により発行された地域情報の内容を受け取り、ホームページへ表示する。
<イベント情報など地域固有の情報の場合>
1.イベント情報や新着情報など地域固有の情報については、⑤大山王国固有の情報
データを作成する。項目内容は共通プラットフォームの内容に準ずる必要はない。
2.イベント情報や新着情報など地域固有の情報については、④大山王国CMSへ直接
入力する。(この場合は、
共有プラットフォームデータベースへは情報連携しない)
3.イベントの開催地情報など、地域情報データベースへ既に登録済みの情報部分に
ついては、APIを利用して、簡単に引用してイベント記事と合成して表示できる。
<実現できた情報連携効果>
○ワンソースによる入力で、地域情報データベースと共有プラットフォームデータ
ベースの同期を図ることが可能となった。
101
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○地域情報データベースとして登録された情報は、APIにより配布されるため、これ
を利用できる権限を持ったユーザーは、簡単な操作で、地域情報データベースの登
録内容を引用して再利用することが可能となった。
○登録された地域情報データベースの内容を変更すれば、API情報として伝搬される
ため、これを利用して作成した全ての情報は速やか且つ自動的に一括変更できるよ
うになった。
(例えば、観光施設の利用料金の変更や、開館時間の変更などが、一
括変更できるようになった)
※ただし、今期事業では実験的に、大山王国ホームページのみがAPI利用しており、
現段階では、地域全体での利用にまでは至っていない。
■共通プラットフォームへ登録したコンテンツ内容について
今期事業では、大山王国が情報発信している該当地域(2 市 5 町 1 村)の主要な観光
施設情報について 230 件を共通プラットフォームデータベースへ登録した。
また、今回登録した観光施設情報については、今後のAPIによる再配信を意識して、
オリジナルの説明文を新規作成し、画像情報についてもオリジナル撮影した写真を中心
として、NPO大山王国側が著作権を保有している内容とした。また、開館時間・祝休日・
入館料金などについても最新の情報であるかを見直し情報鮮度と正確性に注意した。
コンテンツについて、キーワード・メディア種類での今年度登録分は、以下の通り
山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅《感幸ナビ》
項目
数
静止画
文字
動画
音声
ブナの森から紺碧の海へ、大山パークウェイ
28
28
28
0
0
神々の足跡を追いかけて 古事記とタタラ伝説
36
36
36
0
0
悠久の大山寺と、弥生白鳳ロマンにひたる
52
52
52
0
0
後醍醐天皇の見た夢、太平記へのトリップ
25
25
25
0
0
とっとり花回廊と、大山の風に吹かれて
31
31
31
0
0
米子城下町と中海遊覧 水鳥たちの愛した風景
15
15
15
0
0
山陰日本海の幸と、妖怪たちのパラダイス
16
16
16
0
0
計
203
203
203
0
0
102
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■共通プラットフォームへ登録したコンテンツ内容例
共通プラットフォームへ登録したコンテンツの代表的なものを示せば、以下の通り。
テーマに沿った特集記事や特集コースを計画し、その取材内容をオリジナル記事とオ
リジナル写真で構成・制作してホームページへ掲載し、テーマに沿った当地への来往機
会を増やすための魅力的な情報発信に取り組んだ。
<ケータイスタンプラリーの開催>
旅の事中情報の充実を図るために、ケータイスタンプラリーを、夏と秋の 2 回にわけ
て実施した。実施内容の概略は下記の通り。
■実施場所(スタンプラリーポイント)
≪蒜山・奥大山エリア≫ 道の駅 風の家、休暇村 大山鏡ヶ成(公共の宿)
≪伯耆・南部エリア≫ 桝水フィールドステーション 天空リフト
≪大山・琴浦エリア≫ 大山町観光案内所(大山情報館内)
≪米子・日吉津エリア≫ お菓子の壽城
≪境港・美保関エリア≫ 水木しげる記念館、美保関灯台
以上の計 7 箇所にスタンプラリー用QRコードを置いて実施した。
■実施期間
≪夏≫ 7 月 18 日(土)∼ 9 月 27 日(日)
≪秋≫ 10 月 20 日(火)∼ 11 月 23 日(月)
103
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■実施内容の概要
大山パークウェイのコース中に設置してあるQRコード付のラリープレートに、携帯電話でアクセス
してポイントをゲットしよう。
ラリープレート設置 7 施設の中から“3 ヵ所”のスタンプを集めて応募すると、
抽選で“50 名様”に“豪華ご当地グルメ賞品”が当たります!
さらに 7 施設すべてを回ると当選確率 2 倍のダブルチャンス!!
自然の大パノラマ、大山パークウェイをドライブして、ご当地グルメをいただいちゃおう♪
【応募方法】
・下記の中から 3 ヵ所以上を巡った人の中から抽選で 100 名様(夏 50 名様・秋 50 名様)へ
ご当地グルメプレゼント(※プレゼント内容は選ぶことは出来ません)
・ご応募の際には簡単なアンケートにお答えいただきます。
・全箇所を巡った人は当選確率が 2 倍になります。
・夏の期間が終わった時点でスタンプをリセットして、秋は最初からとなります。
夏・秋 2 回に参加していただいても結構です。
・当選者発表はホームページ及び発送をもって代えさせていただきます。
(※各当選者へは直接メールで連絡いたします。)
【お楽しみ方】
1.
「ケータイスタンプはこちら!」よりQRコードからメールアドレスを読み込み空メールを送りま
す!
2.届いたエントリーメール中のアドレスにアクセス!
3.エントリー画面より簡単なアンケートに答えるとスタンプラリーがスタート!
4.各施設のQRコードを読み込み、空メールを送りポイントをゲット!
※鏡ヶ成ではAuとソフトバンクが圏外になる場合があります。
鏡ヶ成でQRコードを読み込んだ方は、電波の入るところに移動してから送信していただくようお願
いいたします。
7 ヵ所のうち 3 ヵ所ゲットで豪華賞品が当たるチャンス!
7 ヵ所すべてで当選確率が 2 倍のWチャンス!!
■告知ツール
告知の方法として、下記内容のチラシを印刷して配布したほか、大山王国ホームペー
ジ上に告知ページを掲載して、バナー広告、大山王国メルマガ、大山王国メーリングリ
ストなどによって告知した。
104
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Web掲載例
○ケータイスタンプラリー用プレート
大山フィールドステーション正面玄関
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○告知用A4 チラシ
○告知用ホームページ
105
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○ケータイスタンプラリー実施画面(ケータイweb画面)
次は何処へ行けば良いのかを案内し、施設写真、施設詳細、カーナビ用マップコード、
地図などで案内した。また、次のプレゼントまでのポイント数を表示して促した。
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<ホットスポット(フリースポット)による実証実験>
ユビキタスな通信環境についての実証実験として、当エリア内の 2 箇所に、無料の無
線LANホットスポット(フリースポット)を設置して利用実験を行った。
また、当ホットスポットの利用を促すためのポスターを作製して表示すると共に、大
山王国ホームページにバナー広告と、詳細情報を掲載してPRした。
■実施場所
米子市観光センター(皆生温泉)
大山情報館 2 階・大山町観光案内所(大山寺博労座)
■設置期間
米子、大山共に、2009 年 12 月下旬より利用開始∼現在も稼動中
106
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Web掲載例
○告知用ポスター
○設置場所
米子市観光センター
大山情報館 2 階
○大山王国HPに設置したバナー広告 ○新規に作成したPR用ホームページ ○大山パークウェイホームページ
107
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<ホットスポットに関する、観光情報サービスアンケート>
主にホットスポットに関する質問を中心とした、当地域におけるユビキタス情報発信
についてのアンケートを実施し、その結果を集計した。
○アンケートフォーム
○アンケート内容
<ケータイ対応の地域コミュニティ(ブログ)の運営と連携>
本事業では、旅の情報を「事前情報」「事中情報」「事後情報」として分けて考えてい
るが、事後情報についてはブログポータルサイトの可能性について検証した。
NPO大山王国では、地域密着型ブログポータルサイト≪じげ風呂≫を運営しており、
当ポータルサイトを利用して、「大山パークウェイ スタンプラリー」の参加者間でのコ
ミュニケーションを図った。当サイトは、
現地から直接ケータイ投稿、閲覧が可能である。
結果としては、大山パークウェイスタンプラリーに複数のブロガー達が参加し、プレ
ゼントアンケートにも積極的に答えるなど、事中・事後情報の充実が図られた。参加の
ブロガー達は、意識的に情報発信しているというよりは「こんなに楽しい事があるよ」
という事を各々が書いている点(CGM=ネットでのクチコミ)が特徴的であった。
<テーマによる地域連携の成果>
本事業では、メインテーマを「山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅《感幸
ナビ》
」として、地域コンテンツの洗い出し、関連市町村との共同作業、関連団体への
情報提供協力などを通して、完全に具体化はしていないものの以下のような新たな連携
構築の方向性や地域との協動可能性が出てきている。
○メインテーマ
・山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅《感幸ナビ》
本事業によって、当地の観光資源は何であるか、それは「山」と「海」と「ふるさ
と」であり、その中心には「大山」があり、主な観光の目的は「癒し」であり、そ
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れを提供する旅のナビゲーションを「感幸ナビ」と呼ぶ…という地域の共通テーマ
の訴求が、完全ではないが徐々に浸透しつつある。
○サブテーマ
・ブナの森から紺碧の海へ、大山パークウェイ
本事業での取り組みをはじめとして、鳥取県、島根県、岡山県の県境を乗り越えて
ある程度の共通認識が生まれつつある。
・神々の足跡を追いかけて古事記とタタラ伝説
各地で歴史散策コースなどの開発が進んでいる段階だが、今後の広域的でトータル
的なコンセプト創造への機運が高まっている。
・悠久の大山寺と、弥生白鳳ロマンにひたる
大山寺においても地域連携への意識が生まれつつある。
・後醍醐天皇の見た夢、太平記へのトリップ
大山東側においても地域連携への意識が生まれつつある。
・とっとり花回廊と、大山の風に吹かれて
大山麓西側においても地域連携への意識が生まれつつある。
・米子城下町と中海遊覧 水鳥たちの愛した風景
米子市内の中心市街地の取り組みとも意識共有が生まれつつある。
・山陰日本海の幸と、妖怪たちのパラダイス
鳥取県境港市と島根県美保関との広域連携の意識が生まれつつある
○今後期待できること
・関連市町村間の観光施設情報の共有化
・当取り組みへの関連市町村からの期待感の高揚と、協力姿勢の強化
・当エリア内の各観光施設からの期待感の高揚と、協力姿勢の強化
(3)事業の評価・課題
本事業では、メインテーマを「山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅《感幸
ナビ》
」として、テーマによる地域連携、情報発信に対する利用者の評価、事業実施に
おける課題について、「情報発信に関しての評価・課題」「連携に関する評価・課題」の
二つの面から整理し、さらに情報発信については、
「事前情報」、
「事中情報」、
「事後情報」
として評価した。
a.情報発信に関する評価・課題
<事前情報における、テーマ性・ストーリー性あるコンテンツの必要性>
本事業で作成した地域webサイト、共通プラットフォームでの本事業コンテンツへの
PCからのアクセスについては、基本的に事前の情報収集のためのものと考えられる。
当ホームページへの来訪機会となるキーワードは実に多様であるが、大山の観光では、
登山、紅葉などが多いことが分かる。一見ばらけて見えるキーワードも、それらをテー
マに関連して繋ぎ合わせることで、魅力ある情報発信の可能性が見えてくる。
109
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■各コンテンツ内容ごとの閲覧者数比較
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⑺䈲⚃⪲䉝䊷䊃
これらの結果を見ると、まずはニュースフラッシュ、新着情報など速報性の高い情報
へのアクセス数が圧倒的に多いことが分かる。
また、その他のコンテンツ内容については、夏・秋・冬と、季節ごとに見られている
内容は異なるものの、テーマ性、ストーリー性のあるコンテンツの閲覧者数が多く、
「○
○プラン」、
「○○コース」というような提案型のコンテンツの人気が高いことが分かる。
これらの結果をまとめると、新規性があり、季節性があり、コース・プラン提案型の
情報に人気が集まっており、当事業における情報発信の方向性とも一致しているので、
今後も提案型のコース・プランを継続して発信する必要があると考えられる。
ITに留まらず、当地の情報発信全般の課題としては、「大山」「鳥取県」
「山陰」それ
ぞれの単語ともに知名度が低く、なかなか検索してもらえないというSEO的な弱さがあ
るため、今後も引き続き、地域ブランドを確立して知名度を上げるための努力が必要と
思われる。
<現地(事中)情報における、周辺観光情報の重要性>
ケータイ(携帯電話)から、共通プラットフォームや地域のwebサイト(大山王国ホー
ムページ)へのアクセスの多くはNPO大山王国が発行している既存の観光パンフレッ
トに掲載しているQRコードや、圏域内に設置したQRコード付看板からのものと、検索
キーワード「大山王国」及び「大山 観光」などによるものであり、その多くは、
現地(事
中)での情報入手と考えられる。これらのアクセスの傾向をみると観光施設情報など共
通プラットフォームへ提供しているコンテンツ内容も多いが、一方で地域webサイト(大
山王国ホームページ)固有の交通情報や周辺の飲食店情報などへのアクセスも多い。
また、本事業で実施した「ホットスポットに関する、観光情報サービスアンケート」
調査の中でも、ケータイサイトなど現地(事中)に利用できる機器からの観光情報を望
む声が多くなっている。
110
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今後の現地(事中)情報提供においての課題としては、基本的な観光施設情報、アク
セス情報、イベント情報、などの基礎情報の充実に加えて、次の行動を誘発するための
コース情報、周辺情報などについても充実していく必要がある。
<事後情報における、CGM(ITによるクチコミ)効果の重要性>
当事業の事後情報については、NPO大山王国が運営している、地域密着型ブログポー
タルサイト≪じげ風呂≫を利用して、「大山パークウェイ スタンプラリー」の参加者間
でのコミュニケーションを図った。当コミュニティは烏取県内を中心とした参加者約
1,000 名ほどのブロガー参加による小さなコミュニティではあるが、ITを使ったクチコ
ミ(CGMコンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)の情報波及力の強さを再認
識できた。
しかしながら、当ブログポータルサイトの運営はNPOが中心としており、運用費用
面での苦労が多く、まだまだ様々なシステム的な改善や、補強すべきサービス的な改善
があるものの実現しがたい状況となっている。
当地観光後の事後情報の中核を担う、地域密着型ブログポータルサイトであるから、
今後の安定した運営のための資金調達面などの工夫が課題となっており、これを解決す
るためには、地域の観光施設や自治体などからの有料協賛バナーの表示や、コンセプト
の一致する他の協議会などとの共同運営についても模索する必要がある。
b.連携に関する評価・課題
<当地共通のコンセプト、長期的で統合的な
地域ブランドイメージの共有が不可欠>
本事業では、メインテーマを「山と 海と ふるさとリゾート「大山」癒しの旅《感幸
ナビ》」として、テーマによる広域地域連携、広域情報発信の連携について取り組んで
きた。
当エリアの中心は鳥取県西部の市町村であるが、サブテーマである「大山パークウェ
イ」については、鳥取県、島根県、岡山県と県境を跨いだ 3 県による広域連携のため調
整の難しさはあるものの、近年は本事業をはじめとして複数の広域イベント企画等が平
行して実施されるなど連携の厚みを増している。
今後の課題としては、これらの取り組みが単年度の散発的な取り組みとなってしまわ
ないよう、当事業のほか平行して実施されている様々な取り組みも含めて、年を経てど
んどんと大きく強い輪を描くように、継続して深めていかなければならない。
そのためには、県境をも跨いだ、広域的で長期的で奥の深い、統合的なコンセプトに
よる広域地域ブランドイメージの創造が不可欠と思われる。
課題解決のためには、当地の地域資源、観光資源などの目に見える資源についての検
証のほかに、歴史や文化や地域性などを見つめなおし、当地周辺に住む人たち皆が共有
できるようなコンセプトの立案が必要で、現在、取りまとめ作業中である。
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(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していく上
で、今後の展開としては、大きく 7 つのポイントがあると考えている。
①広域連携組織の意思疎通への支援
②具体的な着地型観光メニュー造成への支援と情報収集
③広域地域ブランドの創造と全国普及
④地域共通テーマに基づいたコンテンツ表現の統一と支援
⑤地域共有情報データベースシステムAPIの有効利用を推進
⑥観光客の動向調査、ニーズ調査と利活用
⑦地域住民を巻き込んだCGMの推進
①広域連携組織の意思疎通への支援
当事業のメインとなる対象地域は鳥取県西部の 2 市 5 町 1 村であるが、サブテーマで
ある大山パークウェイが結ぶエリアは、鳥取県、島根県、岡山県の 3 県に跨っているた
め、これらの広域的な意思の疎通は容易ではないが、これをまとめるためには、管理者
レベル、担当者レベルなどそれぞれに細かな連絡が必要で、現在活用中のメーリングリ
ストだけでは万全ではなく、画像や資料を含めたデータ共有や、意思疎通のためのICT
技術支援が必要と思われる。
②具体的な着地型観光メニュー造成への支援と情報収集
今後益々ニーズが高まると考えられる着地型・体験型観光メニューの造成や、田舎体
験、営農体験などのメニュー開発には、農商工連携、営農者と観光事業者との連携など、
多様な連携が必要で、体験素材情報の共有や、商品の告知、参加者募集などにおいて、
実際のコミュニティ活動も重要であるが、ICTを効率的に活用して支援できる体制も欠
かせない。例えば、メニュー造成のためのツールとして、SNSや地域ブログなどによる
地域内のコミュニティツールの増強が必要と思われる。
③広域地域ブランドの創造と全国普及の支援
当エリア全体としての統合的な地域ブランドの創造と、全国へのインパクトあるイ
メージ訴求が必要であるが、より効率よく全国へ普及するためには各マスメディアを駆
使すると共に、ICT技術を活用して効率よく総合的にPRしていく必要がある。そのた
めには、旅の事前情報としてのホームページの充実を図り、波及的に様々な話題を全国
発信し続ける必要があり、広域的な情報発信を組織的に推進する体制の確保が必須と考
えられる。
④地域共通テーマに基づいたコンテンツ表現の統一と支援
当事業では地域共通テーマに基づいたコンテンツ作成に着手してきたが今期一年では
万全ではなく、まだまだこれから磨き上げるべき事柄の方が多く、長期的にコンテンツ
内容を増強しながら、共通テーマについても深めていく必要がある。
112
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⑤地域共有情報データベースシステムAPIの有効利用を推進
今年度事業で新規に開発した「地域共有情報データベースシステム」により、必要な
地域情報をAPIにより自動的に引用して再利用できる環境が整ったが、現在のところは
これを引用して利用できるのは大山王国自身のみであるが、本来はこのAPIシステムを
地域内で活用してこそ本来の意味があるものと考えられる。
当システムの活用により、例えば観光施設の情報管理者が元データを一度作成すれば、
そのデータ(画像・紹介文・スペック等)を、例えば隣の市町村の情報担当者や、許可
された一般ユーザーなどは、APIを利用して簡単に引用して正確な情報を発信できる。
また、元データの情報発信者が、情報内容を修正すれば、それを引用した情報は全て
瞬時に自動的に修正される環境が整い、地域内の情報が正確に効率よく共有利用できる。
当事業システムの将来性について ≪APIを利用する基本情報の流れ≫
共通プラットフォーム連携
地域情報共有DB システム
共通プ ラ ット
フォ ーム連携
地域共有情報
DBシステム
(既存システム)
観光設情報
②情報入力
共有データ入力
②情報入力
②情報入力
②情報入力
共通プ ラ ットフォ ーム
への準拠によ り対応
地域共有情報API
の発行機媒
地域共有情報
DBシステム
共通プラットフォームDB
API への対応機媒
CMSの最適化
境港市観光サイト
API への対応機媒
CMSの最適化
米子市観光サイト
API への対応機媒
CMSの最適化
大山町観光サイト
API への対応機媒
CMSの最適化
伯耆町観光サイト
API への対応機媒
CMSの最適化
南部町観光サイト
API への対応機媒
CMSの最適化
日南町観光サイト
API への対応機媒
CMSの最適化
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
基本的な観光施設情報については、一回の情報登録で共通プラットフォームへの登録
と共に、当エリア内の主な行政サイトの情報を連携して更新可能となり、ワンソースマ
ルチユースによる合理的な情報発信が可能となる。
113
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当事業システムの将来性について ≪新着情報RSSの応用利用の流れ≫
共通プラットフォーム連携
地域情報共有DBシステム
共通プラット
フォーム連携
地域共有情報
DBシステム
(既存システム)
観光設情報
②情報入力
共有データ入力
②情報入力
②情報入力
②情報入力
共通プラットフォーム
への準拠により対応
RSS 収集・情報解析機媒
文脈・単語検出など、
高度な情報内容の
解析機
想定しています。
地域共有情報
DBシステム
RSS として再配信
共通プラットフォームDB
RSS配信機媒
固有の新着情報
RSS 配信機媒
境港市観光サイト
固有の新着情報
米子市観光サイト
RSS 配信機媒
固有の新着情報
大山町観光サイト
RSS配信機媒
固有の新着情報
RSS 配信機媒
固有の新着情報
伯耆町観光サイト
南部町観光サイト
RSS配信機媒
固有の新着情報
日南町観光サイト
RSS配信機媒
固有の新着情報
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
⑥観光客の動向調査、ニーズ調査と利活用
本年度事業で取得したアンケート調査内容のほか、ホームページのアクセス解析を元
にした利用者の動向調査を経年的に比較調査して、現場で活用できるデータとしていき
たい。
また、今期事業ではケータイサイト及びホットスポットの詳細なアクセス解析データ
の取得が出来なかったために分析内容が曖昧であったので、これを実施してデータの精
度を上げていきたい。
これらの技術的なデータ分析に加えて、現場からの生きた情報を加味して、それらを
総合的に分析してPDCAサイクルを確立し、計画的に観光誘客に直結するICT技術を確
立していきたい。
⑦地域住民を巻き込んだCGMの推進
最後に、今後のICT技術を活用した情報発信の方向性についてのまとめとして、CGM
(コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)の活用を進めていきたいと考ている。
とりわけ鳥取県は、観光地としての知名度も低く、全国的にも観光に対する予算規模
も小さく、大きなメディアを動かしての大掛かりな観光振興策には限りがある。しかし、
実際の観光資源は実に豊かで、とりのこされた自然、ゆったりと暮らす人々、日本海か
らの海の幸と山の幸、山間の温泉など、癒しを求めてひとたび訪れた人たちのリピート
率は高く、満足度も高いことを裏付けるデータがある。
例えば、地域密着型ブログのさらなる活用、写真コミュニティや写真コンテストの開
催、ケータイスタンプラリーの持続的な開催、USTREAMなどによるweb放送、世界
カメラ(エアタグ)やTwitterなどの利用によるコミュニケーションなど、CGMを駆使
してICTゲリラ的に、地域住民とファン達の輪がジリジリと広がるような取り組みをし
ていきたいと考えている。
CGMは、ICTを利用した「クチコミ」であるため、少数ずつでよいから当地を訪れて
その良さを知った人たちによって、徐々にファンを増やしていくことが大切と考えている。
114
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1−9.朝鮮通信使縁地情報発信事業
メインテーマ
朝鮮通信使の足跡をたどる
事業実施主体
朝鮮通信使縁地連絡協議会
構成市町村
長崎県対馬市(◎)、滋賀県長浜市、岡山県瀬戸内市、山口県下関市、岐阜県大垣市、
静岡県静岡市、広島県福山市、滋賀県近江八幡市 (8 市、延べ 7 県)
関連団体
栃木県日光市、滋賀県彦根市、京都市、神戸市兵庫区、兵庫県たつの市、広島県呉市、
山口県上関町、福岡県新宮町、長崎県壱岐市
対州海運(株)、かみのせき郷土史学習にんじゃ隊、
「静岡に文化の風を」の会、
(財)
蘭島文化振興財団、芳洲会、新宮チェビの会、青丘人権文化の会、
(財)高麗美術館、
津市分部町唐人踊保存会、唐子踊保存会、朝鮮通信使行列振興会、対馬芳洲会、日
朝協会愛知県連合会、保土ヶ谷宿四〇〇倶楽部、日朝協会神奈川県支部連合会、唐
辛子の会、東京対馬会、日朝協会東京都連合会、九州の中の朝鮮文化を考える会、
日本コリア協会・大阪、兵庫津・朝鮮通信使を知る会、日本コリア協会・福岡、呉
史談会、対馬観光物産協会、NPO法人 辛基秀と朝鮮通信使を研究する青丘文化ホー
ル、かみのせき史談会、
(株)JTB西日本EC営業部、在日本大韓民国民団堺支部、
(財)
まちみらい千代田、埼玉・コリア 21 ∼今よみがえる朝鮮通信使∼、21 世紀の朝鮮
通信使友情ウォークの会、
(株)コミュニティメディア、在日本大韓民国民団京都府
地方本部
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䇭ㄭᳯ౎ᐈᏒ
(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
「朝鮮通信使」は、豊臣秀吉の朝鮮侵略による国交断絶後、1607 年に徳川幕府が、隣
国との和平を図るために招いた大文化使節団である。これは、鎖国時代の日本にあって
唯一の外交使節団で、将軍の代替わり等に計 12 回、総勢約 400 ∼ 500 人が 1 年ほどか
けて江戸まで大パレードをした。その途中は各地で、諸大名や民衆の歓待を受け、華や
かな国際交流の場となった。
1995 年(平成 7 年)には、朝鮮通信使が訪れたゆかりの地の自治体や市民活動団体
で構成する「朝鮮通信使縁地連絡協議会(略称:縁地連)」が結成された。
以降、対馬藩の儒学者であった雨森芳洲が唱えた「互いに欺かず、争わず、真実をもっ
て交わる」という『誠信交隣』をテーマに掲げて、朝鮮通信使を核にした地域づくり、
観光振興、人権啓発のシンポジウムや行列再現、情報交換会を行っている。
115
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<目的>
朝鮮通信使ゆかりの自治体や団体の共同により朝鮮通信使の歴史史料等について研究
を重ねるとともに、各地域の振興をはかりながら広域縁地間の連携を強めつつ、
“アジ
アの共生”の理念から韓国内縁地との交流を促進する。
具体的には、全国交流会の開催、ホームページの充実、情報紙の発行(200 部)によ
り会員情報の発信を行うと共に、日本国内はもちろん韓国内の朝鮮通信使ゆかりの地で
開催される通信使関連事業等に相互協力を行う。
b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①朝鮮通信使縁地連絡協議会運営(役員会 2 回、総会)
②ホームページの充実及び共通プラットフォームへのコンテンツ提供(情報収集、
作成、登録)
③全国交流会(高月大会)の開催支援
④情報誌「縁地連だより」の発行、活動記録DVDの作成・配付
⑤日本国内及び韓国での通信使関連イベントへの協力・参加
⑥講演会の開催(対馬市)
①朝鮮通信使縁地連絡協議会運営
長崎県対馬市が事務局を持ち、滋賀県高月町(合併のため現在長浜市)で 5 月に役員会、
10 月に理事会、総会を開催し、本事業の方向性・スケジュールや実施方法などを協議・
決定した。
②ホームページの充実及び共通プラットフォームへのコンテンツ提供
(情報収集、作成、登録)
「朝鮮通信使」をテーマに歴史的背景や見所を中心に、各連携市町村や団体の地域資
源情報を提供した。(日本語・韓国語対応)
○既存のホームページに、各地の通信使関連コンテンツを追加登録するなど、連携市
町村の見所を紹介
○連携市町村、団体からのコンテンツ情報収集(整理)、コンテンツ作成、共通プラッ
トフォームへのコンテンツ登録、運用
○画像及び文字(日本語、韓国語)によりコンテンツを提供
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③全国交流会(高月大会)の開催支援
10 月 17 日・18 日に滋賀県高月町(現長浜市)で「第 16 回朝鮮通信使ゆかりのまち
全国交流会高月大会」を滋賀県高月町と共催で開催した。
・縁地連理事会(縁地連主催)
・縁地連総会(縁地連主催)
10 月
17 日
(1 日目)
・縁地連朝鮮通信使関係地域史研究会総会、研究発表(縁地連主催)
・対馬市と高月町で「友好の町縁組」締結式を実施
・朝鮮通信使ゆかりのまち全国交流会(縁地連共催)
・懇親会
・雨森芳洲先生子どもミュージカル(縁地連共催)
10 月
18 日
(2 日目)
・フィールドワーク(縁地連共催)
・縁地連会員「朝鮮通信使行列振興会」の協力により朝鮮通信使行列再現(200 人規模)
(縁地連共催)
④情報発信誌「縁地連だより」の発行、活動記録DVDの作成・配付
縁地間の交流、日韓交流の促進を図るため、朝鮮通信使に関することや会員の活動状
況等を冊子にするとともに、通信使に関するイベントなど 1 年間の活動記録のDVDを
作成し会員へ配付した。
冊子には、UコードQRを付け、ウエブサイトにアクセスしやすくし、詳細な情報の
提供を図る。
平成 21 年 1 月
掲載情報の収集
掲載情報の編集・印刷、配付
2月
活動記録DVDの作成・配付
⑤日本国内及び韓国での通信使関連イベントへの協力・参加
平成 21 年 4 月
5月
8月
9月
朝鮮通信使韓日文化交流事業 三使任命式(ソウル)
朝鮮通信使友情ウオーク(ソウル∼東京) 対馬で歓迎式
朝鮮通信使韓日文化交流事業 朝鮮通信使祭り(釜山市)
対馬アリラン祭 通信使行列再現、歓迎晩餐会(対馬市)
下関馬関まつり 通信使行列再現(下関市)
福岡・釜山友情の年記念「朝鮮通信使友情の祭り」(福岡市)
⑥講演会の開催
平成 21 年 1 月
平安女学院大学 佐藤教授による講演会開催(対馬市)
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c.情報発信の方向性
本事業では、メインテーマを「朝鮮通信使の足跡をたどる」とした地域連携をベース
に、以下の 4 つのサブテーマを核としてストーリーを作成し、地域webサイトと共通プ
ラットフォームを適宜、組み合わせて情報発信を行う。
朝鮮通信使の足跡をたどる
共通PF
地域WEBサイト
朝鮮との国交回復を目指した対馬藩
朝鮮通信使が通った道をたどる
個別コンテンツ
を紹介
ストーリーを解説
協議会の活動紹
介
構成員のHPへリン
ク
関係団体のHPへリン
ク
外交官-雨森芳洲
朝鮮通信使以降
主として事前情報
地元ならではの情報
事前情報として地域webサイトでは、コンテンツ間の流れを示しながら、テーマの背
景や流れを提案し、その個別材料としてのコンテンツ表示には共通プラットフォームを
活用した。また文字(日・韓 2 ヶ国語)
・静止画による通信使やゆかりの地の紹介、史跡、
イベントの紹介、協議会の活動状況等の情報を発信するとともに、協議会会員のHPへ
リンクし、より詳細な情報、お勧めの観光地情報、相互協力関係にある関係団体の情報
発信を行う。
d.事業実施体制
朝鮮通信使縁地連絡協議会は、朝鮮通信使ゆかりの地 14 市 1 区 2 町及び 33 の関係団
体を構成員とした協議会であり、平成 7 年に設立された。協議会の会長、副会長、理事
には構成市町村の首長及び関係団体の長が就任し、会長、理事長、事務局については、
対馬市が就任している。
事業の実施については、事務局担当市である対馬市が行っており、コンテンツの収集、
登録などについては外部委託をして実施した。
118
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体制図は以下のとおり。
事業実施体制
e.事業スケジュール
事業内容
①協議会運営
5月
6月
7月
8月
9月
10 月
11 月
12 月
1月
2月
3月
●
理事会・総会/今後の方針決定
●
理事会
事業内容の検討
情報収集
②ホームページの充
実、プラットフォー
ムコンテンツ提供
コンテンツ作成
コンテンツ登録
コンテンツの更新
③ 全国交流会の開催
支援
全国交流会準備
●
交流会開催
④情報発信誌の発行
情報の収集
●
印刷
及び発行
掲載内容の編集
⑤日本 国内及び 韓 国
友好ウォーク(国内イベント)
対馬アリラン祭 通信使友情の祭り
内での通信使関連イ
下関馬関まつり
ベントへの協力参加
三使任命式 釜山まつり(韓国内イベント)(国内イベント)
⑥講演会の開催④情
報発信誌の発行
●
講演会の開催
119
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(2)活動・成果状況
a.活動状況
日本国内及び韓国内で開催される朝鮮通信使関連行事に支援・参加協力を行った。(6
回)
事業実施のための役員会(5 月、10 月)及び総会(10 月)を開催した。
コンテンツの作成方針、情報発信の方向性の確認について 10 月に実施、地域ウエブ
サイト、共通プラットフォームに登録するコンテンツの情報収集については 11 月に予
備調査を実施、委託先を決定し、1 月までに本格収集、作成、登録作業を実施した。
最終的な地域プラットフォームへの登録、地域webサイトについては 2 月に立ち上げ、
試行している。
時期
平成 21 年 4 月
内容
韓国行事 三使任命式への参加【ソウル】
友情ウオーク支援【ソウル∼東京、∼ 5 月】、友情ウオーク歓迎式【対馬市】
5月
釜山まつり(朝鮮通信使祝祭)へ参加【釜山市】
第 1 回理事会を開催(事業概要の説明)【高月町】
8月
対馬アリラン祭 朝鮮通信使行列再現行事、歓迎晩餐会【対馬市】
馬関まつり参加【下関市】
9月
通信使友情の祭り参加【福岡市】
10 月
第 2 回理事会、総会を開催(事業内容の検討、決定)、全国交流会開催【高月町】
11 月
コンテンツの情報収集(予備調査)
委託先決定
12 月、1 月
コンテンツ情報の収集、作成、登録
平成 22 年 1 月
2月
情報発信誌原稿収集、講演会の開催【対馬市】
情報発信誌編集、印刷、DVD作成
地域webサイトのテスト運用
事業報告
b.成果状況
①朝鮮通信使縁地連絡協議会運営
滋賀県高月町(合併のため現在長浜市)で 5 月に役員会、
10 月に理事会、総会を開催し、
本事業の方向性・スケジュールや実施方法を含む協議会全体の事業計画・予算案などを
協議・決定した。
②ホームページの充実及び共通プラットフォームへのコンテンツ提供
(情報収集、作成、登録)
「朝鮮通信使の足跡をたどる」をメインテーマとし、時代の流れに沿った形でサブテー
マを設定しストーリー性をもたせ、更に通信使の足跡をたどる形でコンテンツを整理し、
利用者に時間的流れ、コンテンツの位置的情報を伝えることができるようにした。
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既存のホームページには、縁地連の概要(会員名簿、過去のイベント報告、各会員へ
のリンクが主)のみの表示であったため、本事業で上記テーマに沿ったコンテンツを直
接検索できるように新規に追加登録した。
また、閲覧件数をカウントするシステムがなかったため、閲覧カウントシステムを整
備し、今後閲覧状況の分析ができるよう整備した。
共通プラットフォームには、本年度は通信使に関するコンテンツのみを新規募集、登
録(116 コンテンツ、日本語・韓国語対応)をしたが、更に登録件数を増やすと共に、
周辺の観光情報、グルメ情報についても整備していきたい。
コンテンツについて、キーワード・メディア種類で今年度登録分を整理すれば、以下の通り。
カテゴリ
数
動画
静止画
文字(日・韓)
音声
観光施設
10
0
10
20
0
文化・伝統・祭り
2
0
2
4
0
イベント・体験・交流
4
1
4
8
0
歴史
23
0
23
46
0
史跡
13
0
12
26
0
町並み
3
0
2
6
0
教育
3
0
3
6
0
計
58
1
56
116
0
121
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共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表的なものを示せば、以下の通り。
③全国交流会(高月大会)の開催支援
全国交流会(高月大会)を開催する
にあたり、開催地の高月町(現長浜市)
と行事内容等について事前の連絡・協
議を密にし、10 月 17 日・18 日に滋賀
県高月町で「第 16 回朝鮮通信使ゆか
りのまち全国交流会高月大会」を滋賀
県高月町と共催で開催することができ
た(イベント集客数 2 日間延べ 6,990
人)
。また、来年度は、福岡県新宮町
で開催することを全国交流会で確認す
ることができた。
④情報発信誌「縁地連だより」の発行
通信使に関することや会員の活動状況等を募集、冊子(200 部)にし、会員及び関係
団体等へ配付し、会員間の活動状況・見所の周知・PR、更には、新規会員の加入促進を図っ
た。
冊子には、UコードQRを付け、ウエブサイトにアクセスしやすくし、会員地域の情
報提供拡大を図った。
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⑤日本国内及び韓国での通信使関連イベントへの協力・参加
日本及び韓国内で開催される朝鮮通信使関連イベントに参加協力をした。
⑥講演会及び懇談会の開催
平安女学院大学佐藤教授による講演会を対馬市にて開催し、朝鮮通信使の時代、対馬
藩は生き残る為に日韓交流に全力で取り組んでいたことを参考としながら、これからの
対馬の地域力を活かした事業に向けての提言があった。また、韓国の朝鮮通信使文化事
業会との懇談会を開催し、朝鮮通信使関連事業に対する相互協力の協議・確認を行った。
<テーマによる地域連携の成果>
本事業を通してテーマに基づいた地域コンテンツの洗い出し、関連市町村との共同作
業、関連団体への情報提供協力などを通して、今後以下のような新たな連携構築の方向
性や地域との協動可能性ができてきている。
①朝鮮通信使ゆかりの町との相互交流(イベント交流等)の拡大
②協議会への新規関連自治体・団体等の加入促進
③韓国の朝鮮通信使関係団体等との交流促進
④朝鮮通信使をテーマとした、広域観光ルートの開発
(3)事業の評価・課題
本事業でのテーマによる地域連携、情報発信に対する利用者の評価、事業実施におけ
る課題を「情報発信に関しての評価・課題」「連携に関する評価・課題」の大きく二つ
の面から整理する。
a.情報発信に関する評価・課題
<テーマ性・ストーリー性あるコンテンツの提供>
本事業で作成した地域webサイト、共通プラットフォームでの本事業コンテンツへの
PCからのアクセスについては、基本的に事前の情報収集のためのものと考えられる。
そこで、今年度の取り組み方針としては、「朝鮮通信使」をテーマとしたコンテンツ
のみに絞り、ストーリー性をもたせた情報を提供することにより、利用者がテーマに沿っ
た情報を広域的に収集できるようになったものと思われる。
運用が 2 月になったため、アクセス傾向等の実証実験はできなかったが、今後のアク
セスデータや評価を分析し、課題の掘り起こし、改善を図っていきたい。
b.連携に関する評価・課題
本協議会は、1 府 10 県にまたがり構成されており、
「朝鮮通信使」をテーマとした強
力な連携が構築されている。
現在、年 2 回の役員会及び年 1 回の全国交流会・総会、更には随時行われる各地域の
イベント等への相互参加を行っているが、各会員の旅費等に関わる経済的負担が大きい
ことが課題である。
123
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(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していく上
で、今後の展開としては、大きく 3 つのポイントがあると考えている。
①連携の拡大(広域化・重層化)
②テーマに基づいたコンテンツの拡充
③テーマに基づいた広域観光ルートの開発
①連携の拡大(広域化・重層化)
現在、本協議会には、「朝鮮通信使」ゆかりの 17 自治体及び関係団体で構成されてい
るが、今後は、未加入の自治体・関係団体への加入勧誘を行い、連携を拡大していきたい。
また、同時に「朝鮮通信使」をテーマとして広域的な情報発信をするとともに、国内
外各地で開催される「朝鮮通信使」関係イベント等への相互参加・相互協力を行い連携
を強化していく。
②テーマに基づいたコンテンツの拡充
地域webサイトや共通プラットフォームへのアクセスによるコンテンツの閲覧状況、
実証実験での利用者から得られたコンテンツの改善方向などを分析し、テーマに基づい
たコンテンツの拡充について以下のようなことを行っていきたい。
・テーマに基づく地域資源のさらなる発掘、新規コンテンツの収集・情報発信
・利用者ニーズに即した飲食店や土産物などのクチコミ情報・評価情報の取り込み
・現地(事中)での利用者満足度をさらに高めるための周辺情報の提供、地元観光
ガイドとの連携
③テーマに基づいた広域観光ルートの開発
各縁地間の「朝鮮通信使」に関するコンテンツ情報の充実を図り、通信使に関連した
観光ルートの提案を検討していきたい。
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1− 10.天草地域連携情報発信事業
メインテーマ
西洋と東洋が出会った海 ∼天草キリシタン紀行∼
事業実施主体
天草観光情報推進協議会
構成市町村
関連団体
熊本県県天草市(◎)、熊本県上天草市、熊本県苓北町(2 市 1 町)
(社)天草宝島観光協会
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䂾䇭᭴ᚑᏒ↸᧛
(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
天草は「雲仙天草国立公園」内にある島嶼地域で、総面積は約 880㎢に及ぶ。昭和 41
年に天草五橋の開通により九州本土と陸続きとなったが、日本のほぼ最西端に位置する
ことから、古くから大陸との交流があり、美しい景観と特異な歴史によって年間 400 万
人を超える観光客が訪れる九州でも有数の観光地である。一方、これまでの観光施策の
取り組みは、主に行政区域ごとに行われてきたことから情報発信も散発的となり、旅行
者にとって分かりやすいものとは言えない状況にある。近年、一体化した取り組みが必
要であるという認識を各自治体間で共有していたが、平成 17 年から 18 年にかけて市町
合併が進み、現在 2 市 1 町となったこともあって、広域連携の機運がさらに高まってき
た。天草には多様な観光資源があるが、中でも(キリシタンに関する)歴史については、
特に広域的な取組が必要と考えられている。
<目的>
本事業では、多様化する旅のニーズに応えるためにも、デジタルとアナログが融合し
125
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た「新しい天草の旅」の提案を行政の垣根を越えて行うこととする。
とりわけ、キリシタン文化や歴史を象徴する名所(史跡)や遺物等をテーマとした観
光情報を発信することで、この地を訪れる旅行者に対し、有意義な事前情報の提供と旅
行者をサポートする旅行中の情報提供を行い、観光入込客数の増大と、旅行者の満足度
を高めることを目的とする。
b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①天草地域観光情報推進協議会の構築
②共通webサイトの構築
③共通プラットフォームへのコンテンツ提供(情報収集、作成、登録)
④UコードQRを貼付した看板の設置
①天草地域観光情報推進協議会の構築
事業実施のための体制整備としての天草地域観光情報推進協議会を設立、協議会にお
いて本事業の方向性・スケジュールや実施方法・作業分担などを検討した。
②共通webサイトの構築
地域共通のテーマ「東洋と西洋が出会った海∼天草キリシタン紀行∼」に即した観光
情報や地域固有の情報などを掲載し、地域ブランドとしての「キリシタン文化」を広く
発信するサイトを構築する。携帯電話からのアクセスにより、旅行中に必要な様々な情
報を入手できるように環境を整える。
そのために実施した具体的な内容は以下の通り。
○地域情報の集約
各市町単位で提供している情報の集約、一元化。
○情報発信、提供方針の検討
情報へのアクセスのしやすさの他、情報の鮮度・有益性、実際の観光ルートとの関
連付け、情報の見せ方などの提供方法を検討
○情報コンテンツの提供手段の多様化(文字、静止画、音声、多言語対応等)
③共通プラットフォームへのコンテンツ提供(情報収集、作成、登録)
共通する地域資源である「キリシタン文化」とは、16 世紀のキリスト教をはじめと
する西洋文化の伝播と浸透、そして宗教弾圧と苛政により勃発した江戸時代最大の農民
一揆「天草島原の乱」、乱後の天草の復興に尽力した代官たち。隠れて信仰を守り続け、
フランスのパリミッションの布教活動により復活を遂げた「隠れキリシタン」など、天
草地域で 300 年間に亘って繰り広げられた歴史である。このメインテーマと併せて、天
草地域の観光素材(景勝地・物産・イベント等)を各自治体から収集し、共通プラット
フォームに登録した。
④UコードQRを貼付した看板の設置
圏域内 40 箇所のキリシタン関連地点(史跡・資料館等)、交通の要衝(港・空港)等
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に各地点付近の観光情報を提供するUコードQR付看板を設置した。関連地点等への回
遊性の向上と滞在時間の拡大を図った。
c.情報発信の方向性
本事業のメインテーマ「天草キリシタン紀行」として、天草地域の歴史等をベースと
したサブテーマを核として天草の多彩な観光情報を発信する。
地域WEBサイト
共通PF
天草キリシタン紀行
事前情報の
提供
歴史
(メインテーマ、その他)
自然
(海・山の景勝地、
温泉等)
多彩な観光資源の
コンテンツ紹介
(歴史・自然・食・
産業等)
○歴史・場所等の
整理
○ストーリー解説
食
(物産館等)
産業
(窯元、その他)
その他(観光案内所 他)
事中情報の
提供
UコードQR 看板
からのアクセス
これまで、各市町、観光協会等で個別に発信されてきた情報の一元化を図るとともに、
時代考証を加えた情報の提供を図る。キリスト教が伝来し、南蛮文化の繁栄から天草島
原の乱の勃発、弾圧、明治以降の再興といった歴史の流れとそれらに関連する観光ポイ
ントの情報を分かりやすく旅行者へ提供する。また、各ポイントの地理情報や現在まで
伝えられてきた文化・産業の関連付けを行い、旅の事前情報、旅の途中の情報として入
手しやすさを重視した情報提供に取り組む。
d.事業実施体制
天草地域の 3 自治体(天草市、上天草市、苓北町)、及び、(社)天草宝島観光協会を
メンバーとして天草地域観光情報推進協議会を設立し、協議会で方針の決定、進捗状況、
内容等の管理を行い、コンテンツ制作・UコードQR看板等の設置については、株式会
社エヌ・アイ・ケイに外部委託を行い実施した。
体制図は以下のとおり。
天草地域観光情報推進協議会
【構成市町】
熊本県天草市
熊本県上天草市
熊本県苓北町
【関連団体】
社団法人
天草宝島観光協会
【業務委託先】
株式会社 エヌ・アイ・ケイ
・コンテンツ、データ作成
・看板制作設置
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e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
12 月
①協議会の構築・運営
●
協議
●
協議
1月
2月
●進捗
11 月
●設置
事業内容
3月
●
結果報告
コンテンツ作成
②地域WEBサイトの
構築・運用
テスト
③地域共通PFへのコ
ンテンツ提供
内容検討
④UcodeQRを貼付し
た看板の作成・設置
内容検討
運用
コンテンツ作成・登録
設置箇所確認
設置
(2)活動・成果状況
a.活動状況
11 月から 12 月にかけてコンテンツの作成方針、情報発信の方向性等について、事業
実施地域(天草地域)の 3 自治体(天草市・上天草市・苓北町)と関連団体である社団
法人天草宝島観光協会と検討し、情報を収集した。12 月には事業実施先を選定し、Uコー
ドQR貼付看板設置箇所等について検討した。事業実施体制整備のための協議会を平成
22 年 1 月に設立し、共通プラットフォームへのコンテンツ作成・登録を実施した。地
域webサイトの運用、UコードQR貼付看板設置を 2 月に実施した。
時期
平成 21 年 11 月
12 月
平成 22 年 1 月
2月
内容
コンテンツの方針決定、情報収集
事業実施先の選定(外部委託決定)
共通プラットフォームコンテンツ検討
UコードQR貼付看板設置箇所等検討
協議会設立
共通プラットフォームコンテンツ作成・登録
地域webサイトのテスト運用
UコードQRを貼付した看板の設置
事業報告
b.成果状況
<地域webサイトの構築・運用>
天草の観光資源の一つとしてキリシタン関連の歴史がある。しかしながら、それらを
旅のテーマとして訪れる旅行者は、情報の多くを散在するwebサイトや現地での紙媒体
情報(パンフレット等)の収集に頼っていた。これらの断片的な情報では、時代背景や
ストーリーが整理されておらず、来島者からは、南蛮文化の繁栄から天草島原の乱の勃
発、キリシタン弾圧、明治以降の再興といった歴史の流れがつかみにくいとの感想が寄
せられていた。そのため、本事業のメインテーマである「西洋と東洋が出会った海 ∼
天草キリシタン紀行∼」に則し、地域共通webサイトにおいてキリシタン関連の遺構・
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地点と時代(背景)を関連付けた情報の提供や、地域内で開催されるイベント情報など
を発信する地域webサイトを構築した。
出所:天草「キリシタン紀行」http://amakusa-tabi.kumamoto-net.ne.jp/
2010 年 2 月よりテスト運用を開始し、訴求性、デザイン性、視認性等について確認
作業を行っている。
<共通プラットフォームへのコンテンツ提供>
メインテーマ、サブテーマ及びターゲット層を想定し、コンテンツ枠 500 に対し、
262 のコンテンツ(日本語)を作成、登録した。特にメインテーマ関連のコンテンツに
関しては、新たに検証を行ったものを登録している。
コンテンツにつき、キーワードで整理すれば、
「自然(海・山の景勝地等)」
、
「産業(窯
元等)」に関するコンテンツが多くなっている。また、メディア種類としては、文字情報、
静止画情報及び音声情報を中心に作成している。また、メインテーマ関連のコンテンツ
に関しては、文字情報と音声情報で多言語対応としている。
コンテンツについて、キーワード・メディア種類で今年度登録分を整理すれば、以下
の通り。
数
文字
音声
静止画
歴史(メインテーマ)
40
40
40
40
歴史(その他)
19
19
0
19
自然(海・山の景勝地、温泉等)
128
128
0
128
食(物産館等)
14
14
0
14
産業(窯元、その他)
24
24
0
24
その他(観光案内所 他)
37
37
0
37
計
262
262
40
262
備考
イベント含む
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共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表的なものを示せば、以下の通り。
<UコードQR付看板の設置>
メインテーマに関連する圏域内 40 箇所にUコードQR付看板を設置し、そこから地域
webサイトへの誘導を行った。
<テーマによる地域連携の成果>
平成の大合併で 2 市 13 町から成っ
ていた天草地域は 2 市 1 町となった。
効率的な行政運営が求められる中
で、各自治体が行っていた観光振興
についても、地域連携の機運が高ま
り、観光協会の再編、合同でのPR
活動等の取り組みが進んでいる。今
回の事業は、そのような認識の高ま
りの中で、地域が共有する歴史を再
確認する機会となった。
観光を地域振興の手段とする地域間の競争激化が予想される中で、今後、2 市 1 町の
連携に留まることなく、昨年認定された雲仙天草観光圏の圏域である長崎県島原地方と
の連携も視野に入れ、さらに回遊性を高めることを検討している。
島という天草の地理的条件は、これまで交通アクセスという点でマイナスイメージが
大きかったが、視点を変えれば、本事業のメインテーマである「西洋と東洋が出会った
海 ∼天草キリシタン紀行∼」に表現されているとおり、海を通じて広く開かれた地域
でもあるため、今後、関連地域との連携を強めることで、情報発信効率の向上を進める
予定である。
(3)事業の評価・課題
広域地域連携、情報発信に対する課題を「情報発信に関しての評価・課題」「地域連
携に関する評価・課題」の二つの面から整理する。
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a.情報発信に関する評価・課題
<テーマ性・ストーリー性あるコンテンツの提供>
○多様化する観光への対応
近年の観光旅行の形態が、団体旅行から個人旅行、見学から体験・参加・交流へと変
化してきている。併せて、環境問題や食の安全、精神性の希求を動機とする(ニッチ)
ツー
リズム等、これまでにない様々なテーマに基づいた旅が求められている。
多種多様な媒体から旅の情報は発信されているが、それらにはない着地発信の強みを
活かし、深く掘り下げたテーマ性、ストーリー性の高い情報を発信し、特化したニーズ
に対応することが必要である。
<現地(事中)情報における周辺観光情報の重要性>
旅行先での現地(事中)情報提供においては、利用者の満足度を高めるための情報提
供に加え、次の行動を誘発するための周辺情報提供の充実について検討していく必要が
ある。
○周遊を意識した観光情報提供により域内滞在時間(日数)の延長へ
これまで発信していた観光情報の多くは、歴史や景観、体験型観光といった多様な情
報が混在する総花的なものが中心で、テーマ性やストーリーを掘り下げたものではな
かった。そのため、新たな需要の開拓や、リピーターの獲得には至らないケースが見ら
れた。
今後、テーマ性、ストーリー性の高い事前情報の提供と、事中情報の充実により、利
用者の満足度を高め、併せて、事中情報においては、次の行動を誘発するための周辺情
報提供を図り、旅行者と地域・人をつなぐことで、これまでのポイント(点)観光から
線、面(広域)の観光地への広がりを検討していく必要がある。
<現地(事中)情報提供におけるUコード活用、IT活用の有効性>
本事業では、メインテーマに基づき域内の 40 箇所にUコードQR看板を設置し、事中
情報提供による利用者満足度の向上、テーマ性の高い旅への対応を図った。
天草地域の面積は約 880㎢に及び、観光地点から観光地点への距離が遠いため、次の
目的地への動機づけ(行動誘発)が周遊観光を促進する条件となる。この点において、
UコードQR付きの看板が周遊観光への行動を促し、滞在時間の延長に寄与している。
さらに幅広いニーズに応えるため、コンテンツの改善と充実を検討している。
b.連携に関する評価・課題
<多様な主体の参画、行政以外のリーダーの必要性>
圏域内の観光資源の見直しや既存資源の磨き上げなどを図るため、地域の主体的な取
り組みをさらに強化し、魅力ある観光地づくりを進めることが不可欠である。
住民が地域に存在する観光資源に気づかなかったり、忘れかけているといった状況が
あるため、観光客や域外居住者との交流によって、それらの視点を意識的に取り入れる
必要がある。
また、多様化する旅行者のニーズに応え、リアルタイムに近い情報提供を行うため、
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これまでの観光産業の枠を超えた幅広い業種の連携を推進することが必要である。
(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していく上
で、今後の展開としては、大きく 3 つのポイントがあると考えている。
①連携の拡大(雲仙天草観光圏との連携)
②メインテーマの掘り下げと多様なコンテンツの拡充
③利用者の行動分析からの展開の検討
①連携の拡大(雲仙天草観光圏との連携)
「天草」は島原・天草の乱(島原・天草一揆)や国立公園に指定されていることで知
られているが、観光地としての知名度は決して高いとは言えない。観光客を誘致するた
めには、これらの資源を活かした情報を発信することが重要である。
本事業がテーマとしている「西洋と東洋が出会った海 ∼天草キリシタン紀行∼」に
関係するエリアは、乱の勃発、終焉の地を含む長崎県の島原半島も含まれ、これらの地
域との連携は不可欠である。
昨年 4 月には、雲仙天草観光圏の認定を受け、既に島原地域との連携した観光振興の
取り組みが行われている。
さらに、昨年 8 月には島原地域が世界ジオパーク(地球活動の遺産を主な見所とする
自然の中の公園)の認定を受け、10 月には日本ジオパークの認定を天草の御所浦地域
が受け、交流も行われている。こういったつながりからも、来年度はさらに一体となっ
た事業を進めることとしたい。
②メインテーマの掘り下げと多様なコンテンツの拡充
地域webサイトや共通プラットフォームへのPC、携帯電話などからのアクセスによ
るコンテンツの閲覧状況、利用者から得られたコンテンツの利便性等に関する意見を踏
まえ、今後のコンテンツの拡充について以下のことを実施したい。
・テーマに基づいた地域資源の掘り下げ(うんちく)
・利用者ニーズに即した飲食店や土産物などのクチコミ情報等の収集、提供
・現地(事中)での利用者満足度をさらに高めるための音声情報提供、外国語対応
の強化、地元観光ガイド等との連携
③利用者の行動分析からの展開の検討
現地(事中)情報入手のための携帯電話からのアクセスログの解析などから利用者の
属性による行動の特徴などを分析し、属性に応じた圏域内での観光ルートの提案や、そ
の観光ルート周辺でのマーケティング展開などを検討していくことも考えていきたい。
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1− 11.世界遺産「斎場御嶽」の映像音声ガイド
メインテーマ
神々と琉球王朝のロマンを訪ねる「東御廻り」
事業実施主体
東御廻り連絡協議会
構成市町村
関連団体
沖縄県南城市(◎)、沖縄県与那原町、沖縄県那覇市
知念文化財案内講師友の会、玉グスク文化財ガイド友の会、知念文化協会写真部
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(1)事業概要
a.事業の背景と目的
<背景>
東御廻り(アガリウマーイ)は、沖縄本島南部の東地域に点在する聖地を巡拝する行
事であり、南城市、那覇市、与那原町の 3 市町にまたがっている。近年、沖縄の精神文
化に興味を持ちこれらの聖地を訪れる県内の若者や県外からの観光客も増えつつある。
しかしながら、個別の市町村単位では、聖地を観光振興に結び付けるような取り組み
が難しいため、東御廻りをテーマに連携して取り組むこととした。
<目的>
平成 20 年度の「e-地域資源活用」助成事業で実施した『みんなの東御廻り』は事前
情報の配信として位置付けし、平成 21 年度は事中情報の配信によりICTを活用した観
光客満足度向上のための取り組みを行うこととする。
世界遺産「斎場御嶽」の映像音声ガイドは、iPod touchアプリケーションやFeliCa機
能を活用し、webサイトやガイドブックに掲載されてない、質の高い情報の提供及び外
国語対応の映像音声ガイドのコンテンツ作成を行い、より高い満足感を与えること及び
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利用者のマナー向上を目的とする。
今回は仮運用として、約 1 カ月間実証実験を行い利用して頂いた方々に、コンテンツ
の内容や、操作性などについての満足度調査を行い、調査の結果を踏まえ今後の事業展
開を検討していく。またFeliCa機能を利用することで、webサイト(東御廻り.com)へ
のアクセスを容易にし、東御廻り.comへのアクセス 2 万件/月を目指す。
b.事業内容
本事業では、以下の事業を実施した。
①世界遺産「斎場御嶽」の映像音声ガイドの構築
②みんなの東御廻り協議会の継続実施
③東御廻りの共通webサイト(CMSサーバー)の運用
④共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成、登録)
⑤実証実験の実施・フィードバック
①世界遺産「斎場御嶽」の映像音声ガイドの構築
神々と琉球王朝のロマンを訪ねる「東御廻り」として、斎場御嶽の歴史的な背景等、
webサイトや情報誌では得ることができない詳細情報を観光客等に提供する、世界遺産
「斎場御嶽」の映像音声ガイドを 12 月に構築した。インフラとしてのサイト構築及びア
プリケーション開発は(株)芝通、サンネット(株)に外注し、モバイル及びサイトの
管理・運用に関してはワーキンググループが担当した。ワーキンググループが具体的に
実施した内容は以下の通り。
○地域情報の集約
8 月中にみんなの東御廻り協議会による検討会を開催し情報を集約した。
○情報発信・提供方針の検討
8 月∼ 9 月に情報へのアクセスのしやすさや、情報の鮮度・有益度、情報の見せ方、
音声ガイドの内容及びその提供方法など、訪れる人にとって魅力的で有益な情報発
信について検討した。12 月から現地での仮運用及びアンケート調査を実施し、評
価及び改善点・今後の課題等の検討を行った。
○情報コンテンツの提供手段の多様化(文字、音声、静止画、動画、多言語対応)
9 月中旬から 11 月にかけて、音声や静止画、動画などコンテンツの多様化を図る
とともに、外国人旅行者に対応するため英語・韓国語・中国語(北京語・広東語)
を作成した。
②みんなの東御廻り協議会の継続実施
本事業を推進するため、沖縄県南城市が中心となり、連携市町村・関連団体・関係者
の協力を得て、8 月中旬に検討会を開催した。
③東御廻りの共通webサイト(CMSサーバー)の運用
平成 20 年度事業で構築したwebサイト(東御廻り.com)の管理・運用についてワー
キンググループで検討した。ワーキンググループが具体的に実施する内容は以下の通り。
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○会議の開催
4 月より東御廻り.com連絡会を開催しwebサイトのアクセス解析・今後の運用につい
て検討した。
○情報発信・提供方針の検討
東御廻り.comのアクセス数増加を目指し、キャンペーンやサイト周知活動を実施
・掲載事業者へのブログ講習会の開催
・観光客が減少する梅雨時期に特別クーポンによるキャンペーンを実施。
・年末に 1 年間の疲れを癒すスポット特集として特別クーポンによるキャンペーンを
実施
・関係団体サイトへのバナー掲載の実施。
・独自でQRコードを掲載したポスター作成による、広報周知活動を実施。
④共通プラットフォームへのコンテンツ提供(作成・登録)
共通プラットフォームでは、東御廻りに関連する歴史的背景や見所及び斎場御嶽映像
音声ガイドのコンテンツを中心に、連携市町村の新規の地域資源情報を引き続き提供し
た。
⑤実証実験の実施・フィードバック
FeliCa機能付き携帯電話及びiPod touchを、世界遺産「斎場御嶽」のガイドとして活
用し、観光客の満足度を上げることができるか実証実験を行った。
・ FeliCaリーダーによるサイトへのアクセス
・ガイドマップ・音声案内・紹介映像・テキストデータによる説明の提供
・ iPod touchによる、マップ上でのタッチ操作による案内の連動
・上記端末利用者への満足度調査等
c.情報発信の方向性
本事業のメインテーマについてさらに 5 つのサブテーマからストーリーを作成し、地
域webサイトと共通プラットフォームを適宜、組み合わせて情報発信を行う。
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平成 20 年度の「e-地域資源活用」助成事業で実施した『みんなの東御廻り』は事前
情報の配信として位置付けし、地域webサイト/共通プラットフォームにて沖縄の精神
文化である東御廻りをテーマに文字・音声・画像(静止画・動画)にて情報配信を行い、
また地域webサイトでは利用者の利便性を高めるため周辺の交通情報や飲食店・土産物
の情報、地域のブログなどと連携した地域ならではのお勧め、クーポンなどの情報提供
を行った。
今年度は、現地(事中)情報の提供として、神々と琉球王朝のロマンを訪ねる「東御
廻り」として、斎場御嶽の歴史的な背景等、webサイトや情報誌では得ることができな
い詳細情報をiPod touch/FeliCa(携帯)を利用し観光客等に提供する。また斎場御嶽
の管理施設に無線LANを整備し、iPod touchのWi-Fi機能により観光情報の提供を行い
地域webサイトに誘導する。
d.事業実施体制
みんなの東御廻り協議会は、2 市 1 町を構成市町村として設立された協議会であり、
本事業の実施のために設立されたものである。実質的な取組については、南城市情報推
進課を中心とした検討委員会で行う。また、運営事務局については南城市情報推進課が
行っている。
実際の事業(コンテンツ収集・作成・登録)については、コンテンツ、実証実験、の
2 つのワーキンググループ(WG)を設置し、市職員、NPO法人、民間企業のメンバーが、
企画立案などを行い、実際のコンテンツ作成やシステム整備などについては外部委託を
行った。
体制図は以下のとおり。
事務局
沖縄県南城市
南城市情報推進課
矢印付きの線は委託
矢印なしは、組織内
コンテンツWG
南城市文化課・情報推進課
知念文化財案内講師友の会
玉グスク文化財友の会
㈱芝通・㈱サンネット
(民間企業)
実証実験WG
南城市文化課・情報推進課
みんなの東御廻り協議会
自治体
沖縄県 那覇市
与那原町
会長:南城市情報推進課長
副会長:与那原町企画総務課係長
大学等
知念文化協会写真部
知念文化財案内講師友の会
玉グスク文化財友の会
民間団体
㈱芝通・㈱サンネット
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e.事業スケジュール
本事業については、以下のスケジュールで実施した。
事業内容
7月
8月
9月
計画/設計
①世界 遺 産「 斎 場 御 嶽 」
の映像音声ガイドの構築
②みんなの東御廻り
協議会の継続実施
④地 域共通PFへのコン
テンツ提供
(作成・登録)
11 月
12 月
1月
2月
3月
映像・音声・テキスト 動作検証
コンテンツ作成/携帯用web
サイト撮影
●
●
協議会開催 計画決定
③東御廻り共通web
キャンペーン第一弾
サイトの運用
10 月
●
進捗確認
●
進捗確認
情報収集・事業者連絡会開催
コンテンツ内容検討
コンテンツ作成
●
結果確認
●
結果報告書
年末年始キャンペーン
登録・確認
⑤実証実験の実 施・
フィードバック
実証実験/ 評価及び改善点
フィードバック 今後の調整等検討
(2)活動・成果状況
a.活動状況
事業実施体制の整備のための協議会を平成 21 年 8 月に開催した。
コンテンツの作成方針、情報発信の方向性の確認について 8 月にかけて実施、斎場御
嶽映像音声ガイドのコンテンツの情報収集については 8 月∼ 9 月に実施、コンテンツの
作成・編集などは 9 月∼ 12 月に実施した。
最終的な地域プラットフォームへの登録については 1 月に立ち上げ、試行している。
時期
平成 21 年 8 月
8 月∼ 9 月
10 月
10・11・12 月
12・1 月
平成 22 年 1 月・2 月
内容
協議会開催
仕様・計画・設計
実施事業実施先の選定(外部委託決定)
コンテンツ作成、実証実験準備
共通プラットフォームコンテンツ登録、実証実験/フィードバック
事業報告
b.成果状況
<世界遺産「斎場御嶽」の映像音声ガイドの構築>
メインテーマである「神々と琉球王朝のロマンを訪ねる(東御廻り)」を利用者に伝
えていくため、iPod touchアプリケーションやFeliCa機能を活用し、webサイトやガイ
ドブックに掲載されてない、質の高い情報の提供及び外国語対応【英語・韓国語・中国
語(北京語・広東語)】のコンテンツ作成を行い、世界遺産「斎場御嶽」の映像音声ガ
イドを構築した。
今回は仮運用として、約 1 カ月間実証実験を行い利用して頂いた方々に、コンテンツ
の内容や、操作性などについての満足度調査を行い、調査の結果を踏まえ今後の事業展
開を検討していく。また、斎場御嶽の管理施設に無線LANを整備し、そこでiPod touch
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を貸し出し、利用者への周辺観光情報の提供を行い地域webサイトに誘導する。また
FeliCa機能を利用することで、webサイト(東御廻り.com)へのアクセスを容易にし地
域webサイトへ誘導する。
2010 年 12 月よりテスト運用を開始、12 月からの約 1 ヶ月間現地での仮運用及びアン
ケート調査を実施し、評価及び改善点・今後の課題等の検討を行った。
<共通プラットフォームへのコンテンツ提供>
メインテーマ、サブテーマ及びターゲット層を想定し、コンテンツ枠 500 に対し、19
の新規コンテンツを作成、登録した。特に登録コンテンツの 8 割にあたる東御廻り関連
のコンテンツについては、本事業のメインコンテンツとして新たに取材を行い、作成を
したものである。
コンテンツにつき、キーワードで整理すれば、「歴史」
、
「自然」に関するコンテンツ
が多くなっている。また、メディア種類としては、文字情報、静止画情報及び音声情報
を中心に作成、動画情報については、サブテーマにかかる世界遺産「斎場御嶽」を知る
について作成・登録している。また、多言語対応として、全体の 3 割のコンテンツにつ
いては、英語、韓国語、中国語(北京語・広東語)対応の文字情報も提供している。
コンテンツについて、キーワード・メディア種類で今年度登録分を整理すれば、以下
の通り。
数
動画
静止画
文字
音声
自然
4
0
4
4
4
歴史
8
4
8
8
8
健康
2
0
2
2
0
食
3
0
3
3
0
その他
2
0
2
2
0
計
19
4
19
19
12
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共通プラットフォームに登録したコンテンツの代表的なものを示せば、以下の通り。
<東御廻りの共通webサイト(CMSサーバー)の運用>
昨年度作成した東御廻り.comのアクセス数増加を目指し、キャンペーンやサイト周知
活動を実施した。現在約 1 万 5000 件のアクセス/月を記録 3 カ月前より約 36%の伸び
を示している。今後、本事業にて構築した映像音声ガイドからの誘導及び特集・キャン
ペーン頻度を多くし更なるアクセス件数の向上に取り組んで行く。
コンテンツに対する利用者の評価等は実際聴取してないが、利用者のユーザビリティー
の向上に向けて、ページリニューアルを実施、今後、質の高いコンテンツの提供に向け
て写真・文書の変更等実施していく。
<実証実験の実施・フィードバック>
世界遺産「斎場御嶽」にてiPod touch及びFeliCa機能を活用した実証実験を実施した。
実証実験には期間中 968 人が参加、フィードバックのアンケートの中では体験して良
かったといった意見が多く聞かれた。
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あわせてFeliCaリーダー及び無線LANを整備し、そこから地域webサイトへの誘導を
行った。
<テーマによる地域連携の成果>
本事業を通してテーマに基づいた地域コンテンツの洗い出し、関連市町村との連携に
より、沖縄の精神文化である東御廻りの一元的な観光情報の集約が可能となった。関連
団体への情報提供協力などを通して、完全に具体化はしていないものの以下のような新
たな連携構築の方向性や地域との協動可能性が出てきている。
○地域webサイトでの情報提供・特産品販売
(3)事業の評価・課題
本事業でのテーマによる地域連携、情報発信に対する利用者の評価、事業実施におけ
る課題を「情報発信に関しての評価・課題」「連携に関する評価・課題」の大きく二つ
の面から整理する。
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a.情報発信に関する評価・課題
<テーマ性・ストーリー性あるコンテンツの提供>
本事業で作成した地域webサイトでの本事業コンテンツへのPCからのアクセスにつ
いては、基本的に事前の情報収集のためのものと考えられる。これらのアクセスの傾向
について、テーマ、コンテンツ別にみた結果が以下のとおりである。
順位
コンテンツタイトル
ページビュー
セッション数
18,518
8,753
1
ROAstER CAFE(自家焙煎珈琲店)JyOGOO
2
浜川御嶽
2,989
1,375
3
マナーと参拝方法
2,972
1,445
4
斎場御嶽
2,125
818
5
受水・走水
1,588
1,157
上位コンテンツの結果をみると、テーマ性に即したもの、関連性がはっきりと見られ
るものへの評価が高くなっている傾向が見られる。またブログなどを積極的に更新し
ている店舗へのアクセスが高くなっている。そのため、関連のあるテーマ・ストーリー
での情報提供及び新しい情報を常時提供するなど利用者の求めるものを考えた情報提供
を行っていく必要がある。
<現地(事中)情報における周辺観光情報の重要性>
携帯電話からの共通プラットフォームや地域webサイトへのアクセスの多くは本事業
にて作成した観光パンフレット、圏域内に設置したQRコード(シール・ポスター)か
らのものであり、現場での事中情報の入手である。これらのアクセスの傾向をみると交
通情報・口コミなどの情報・機能が掲載されている地域webサイトへのアクセスがほと
んどであり、今後共通プラットフォーム(事前情報の提供)と地域webサイト(事後情
報の提供)の使い分け・役割分担が必要になる。本事業において、斎場御嶽の管理施
設に無線LANを整備し、そこでiPod touchを貸し出し利用者への周辺観光情報の提供を
行っており、今後はより利用者の満足度を高めるための情報提供に加え、次の行動を誘
発するための周辺情報の充実について検討していく必要がある。
<現地(事中)情報提供におけるUコード活用、IT活用の有効性>
本事業では東御廻りを訪れた方々に満足感を与えること及び訪れた利用者のマナー向
上を図ること及び対外国人への対応を目的にiPod touch・FeliCa(携帯)を活用した音
声映像ガイドを整備し、約 1 カ月間実証実験を行い利用して頂いた方々に、コンテンツ
の内容や、操作性などについてアンケート調査を行った。
実証実験の期間中におけるアンケート調査の結果については十分満足できる内容で
あった。多くの利用者から称賛の声が多く、iPod touch音声ガイドの目的は十分達成す
ることができると考える。また、実証実験前に懸念された既存ガイドへの影響について
は、実証実験中も利用者はあることから、大きな影響はないと推測され、共存は可能と
考える。しかしながら、本実証実験にて本稼働に向けての課題も挙がっており、アンケー
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ト調査の結果と併せて検討する必要がある。
<課題>
①外国人等に対し、貸出しを行う場合の体制作り(外国語話せる人材の配置)
②iPod touchガイドとリンクした案内板の整備(iPod touch地図番号と案内板に番号
を付けてリンクさせる等)
③見学時に見落としがちな箇所やモノを音声や加工した画像で補足する仕組み作り
今後、このような課題を踏まえ、利用者の満足度をより高めるための情報提供につ
いて検討していく必要がある。
b.連携に関する評価・課題
<多様な主体の参画、行政以外のリーダーの必要性>
本事業にて、東御廻りを訪れた方々の目線に立った情報提供(コンテンツ製作)を行
うにあたり行政だけではなく、地元NPO(知念文化財案内講師友の会、玉グスク文化
財ガイド友の会)の協力が必要不可欠であった。様々な主体が参画することで、利用者
へより魅力的な情報提供ができる。今後は、テーマ性のある情報発信を強力に進めてい
くための行政以外の地域のリーダーなどによる運営も検討していく必要がある。
また、多様な主体の参画は、今後の情報発信の継続のための財源の確保という視点か
らも重要と考えられる。
(4)今後の展開
本事業におけるテーマによる地域連携と利用者に向けた情報発信を継続していく上
で、今後の展開としては、大きく 3 つのポイントがあると考えている。
①連携の拡大(広域化・重層化)
②テーマに基づいたコンテンツの拡充
③利用者の行動分析からの展開の検討
①連携の拡大(広域化・重層化)
本事業がテーマとしている「東御廻り」に関係するエリアを考えると那覇市や与那原
町などは利用者の視点からみて一体的な行動圏となっている。これまでの様々な働きか
けを行ってきているが、今後も連携実現に向け、事業を継続させていく。さらに、利用
者の求める現地(事中)情報の提供のためには、本年 2 月に設立される南城市観光協会、
商工会、地元のNPO及び関係課、などからの情報提供などが不可欠であり、連携地域
内での主体間の連携強化が必要である。
さらに共通プラットフォームのテーマで類似性の高い奈良県橿原市や南城市の姉妹都
市である宮崎県高千穂町などの地域と連携した相互の情報発信などにより、当地域に興
味を持ってもらうための入り口の多様化なども図っていく。
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②テーマに基づいたコンテンツの拡充
地域webサイトや共通プラットフォームへのPC、携帯電話などからのアクセスによ
るコンテンツの閲覧状況、実証実験での利用者から得られたコンテンツの改善方向など
を踏まえ、テーマに基づいたコンテンツの拡充について以下のようなことを行っていき
たい。
・テーマに基づく地域資源のさらなる発掘
・利用者ニーズに即した飲食店や土産物などのクチコミ情報・評価情報の取り込み
・現地(事中)での利用者満足度をさらに高めるための音声情報提供、加工された
画像の提供の拡充、地元観光ガイドとの連携
③利用者の行動分析からの展開の検討
技術的な検討も必要となってくるが、現地(事中)での利用者の行動について観光パ
ンフレットとの連動、クーポンの発行利用状況、携帯電話からのアクセスログの解析な
どから利用者の属性による行動の特徴などを分析し、属性及び季節に応じた圏域内での
観光ルートの提案や、その観光ルート周辺でのマーケティング展開などを検討していく
ことも考えていきたい。
また、上記のような展開を行っていくには、圏域内の観光施設・各事業者との連携の
強化が必要になる。今後は、観光施設・各事業者とも密に協議・協力しながら圏域内の
活性化に向けて取り組んでいきたい。
143
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2
共通プラットフォーム整備事業の概要
各採択事業のテーマごとの情報発信のためUコードを基盤に「ふるさとユビキタス」
のwebサイトが共通プラットフォームとして構築されている(http://www.furusatoinfo.jp/)。本サイトでは、今年度の 11 テーマのほか昨年度に実施した 3 テーマを加え
た計 14 テーマの旅に関する情報発信が行われている。
現在、14 のテーマに対して計 2,570 のコンテンツが登録されており、日本語以外のコ
ンテンツが 2 割弱程度を占めている。動画や音声が付加されているコンテンツは全体の
1 割弱程度である。昨年度から登録されているテーマであるが、
「日本の飛鳥(れきし)
を観聞(みいる)旅」
「源氏物語をめぐる」といったテーマへのアクセス数が高くなっ
ている。橿原市の事業では、パンフレットでの周知も行っていること、修学旅行生の利
用が多いことから携帯電話からのアクセスが多い。また、現時点では日本語以外のコン
テンツへのアクセス数は少なく、PRによる周知も行っていく必要がある。
144
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テーマ別コンテンツ数
日本語コンテンツ
静止画
動画
日本語以外コンテンツ
音声
静止画
動画
音声
大雪山自然街道
264
264
23
0
14
14
0
0
岩手県 ふるさと文学
ふれあい巡り
142
137
0
10
0
0
0
0
花海街道発見の旅
277
218
83
13
0
0
0
0
九十九里浜“海からの
プレゼント”
231
222
0
0
0
0
0
0
越前朝倉王国の記憶と
天下一(てんがいち)
33
26
0
0
0
0
0
0
日本の飛鳥(れきし)を
観聞(みいる)旅
130
112
21
51
0
0
0
0
奈良の「工房街道」を
楽しむ
199
94
0
0
0
0
0
0
山と海とふるさとリ
ゾート 「大山」 癒しの
旅
19
1
0
0
0
0
0
0
朝鮮通信使の足跡をた
どる
64
62
11
0
66
65
1
0
西洋と東洋が出会った
海「天草キリシタン紀
行」
239
197
0
44
238
191
0
40
90
88
1
3
9
9
3
9
186
181
0
0
0
0
0
0
35
35
3
34
105
105
9
102
209
157
0
0
0
0
0
0
2,118
1,794
142
155
432
384
13
151
神々と琉球王朝のロマ
ンを訪ねる「東御廻り」
「東信州中山道」歴史
浪漫の道
源氏物語をめぐる
AMAの国「光・水・や
すらぎ」観光Vライン
計
145
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第
3章
「e- 地域資源活用事業」
成果と課題
1.事業の成果 ......................................................................................... 148
1−1.地域連携に関する成果 ...................................................... 148
1−2.顧客の視点に立った情報発信の提供に関する成果 ........ 150
1−3.現地情報の提供内容・方法に関する成果 ....................... 152
1−4.Uコード活用の幅の広がり................................................ 154
2.事業の課題 ......................................................................................... 155
2−1.事業推進上の課題 .............................................................. 155
2−2.地域資源の利活用・情報発信における課題.................... 156
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第
3章
「e- 地域資源活用事業」
成果と課題
1
事業の成果
平成 21 年度「e-地域資源活用事業」助成事業においては、テーマについて採択され
た 11 事業の成果を列挙すれば以下の通り。
1−1.地域連携に関する成果
○テーマを持った地域連携の実現
○地域連携の拡大
○市町村間連携から地域内の主体間連携への広がり
1−2.顧客の視点に立った情報発信の提供に関する成果
○事前・現地(事中)・事後情報の考え方
○共通プラットフォームと地域WEBサイトの組み合わせによる事前情報提供
1−3.現地情報の提供内容・方法に関する成果
○現地情報に必要な情報の種類
○現地情報に必要な情報提供手段・提供方法
1−4.Uコード活用の幅の広がり
○Uコードを活用したデータベース
○UコードQRを活用したパンフレット
1−1.地域連携に関する成果
<テーマを持った地域連携の実現>
本事業の特筆すべき点は、複数市町村の連携による事業実施を採択の基準としている
ところである。これまでの観光振興において観光情報の提供は、自治体や都道府県など
いわゆる行政界で線引きされた形での情報提供が中心となっていた。しかし顧客となる
利用者・観光客にとって行政界は地図上に物理的に引かれている線に過ぎず、実際の観
光行動を決定する中では必要がないものである。逆に、行政界によって情報が隔絶され
ていることは顧客にとっては不利益でしかなかった。
一方、市町村同士の連携は平成の大合併の過程でも全国各地で見られたように容易な
ものではない。特に観光という面では、各々の自治体が自分の自治体への誘客、自分の
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自治体内での消費の完結ということに固執する向きが強く、連携という視点は持ちにく
かったのが実態であろう。
しかし本事業ではUコードによって顧客がいつでも、どこでも自由に情報入手を行え
るメリットを享受する機会を高めるためにテーマを持った複数自治体による連携を条件
として設定した。こうした難しい状況にも関わらず、昨年度からの継続の 5 事業に加え
新規 6 事業の計 11 事業を通してテーマによる地域連携のための体制構築が行われ、観
光情報を中心とした情報提供が実現した。11 採択事業の事業実施主体となった申請自
治体や関係自治体、それを支援した都道府県、その他関係団体にとって連携というハー
ドルは、事業体制構築、事業実施において大変な困難があったことは想像に難くないが、
その効果・意義は非常に大きかったものと思われる。
<地域連携の拡大>
本事業に採択され事業を進めていくなかで地域連携が拡大していくケースもある。本
年度の場合は、旭川市の事業において昨年度来のアプローチにより 4 町が追加となった。
また、九十九里と館山の事業については事業を通していく中で「祭り」をテーマとした
連携可能性などが出てきており、次年度以降に拡大していく可能性も出てきているなど
の動きも出ている。
申請自治体
地域連携の拡大
北海道旭川市
3 自治体(H20 年度)→ 7 自治体(H21 年度)
千葉県館山市
3 自治体(H20 年度)→ 4 自治体(H21 年度)
H22 年度以降、千葉県九十九里町の事業と連携拡大可能性・テーマ「祭り」
<市町村間連携から地域内の主体間連携への広がり>
実際に現地を訪ねた旅行者が必要とする現地情報の中には、地元で評判の食堂やお土
産など地元の人しか知らない情報、店舗などの評価情報が含まれる。こうした情報につ
いては、本事業の実施主体となる行政が提供することは性格上、困難である。ただし利
用者の満足度を高め、地域のリピーター、ファンとなってもらう上では重要な情報提供
手段である。そのため、地元の商工会や地域SNSなどのサイトなどと連携し、利用者が
必要な情報へアクセスできる環境整備が必要となる。本年度の事業では、地域SNSとの
連携を想定した盛岡の事例や、南城市の事例など地域内の他団体との連携の動きが見ら
れてきている。事業の継続のための体制整備という視点からも広域での連携と同時に、
地域内の観光関連団体などとの連携が必要となる。
テーマによる市町村連携の拡大
B市
A町
D市
C村
E町
情報提供範囲の広がり
テーマによる情報提供のための主体間連携の拡大
A町
B市
協議会(自治体中心)
市民ブログ
観光関連:観光協会、観光事業者 etc
産業界:商工会議所、商店街 etc
学:○○大学、専門学校 etc
情報提供
幅の広がり
住民・利用者:地域SNS・市民ブログ
149
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1−2.顧客の視点に立った情報発信の提供に関する成果
<事前・現地(事中)・事後情報の考え方>
本事業では、Uコードを活用することでいつでも、どこでも利用者が情報にアクセス
できる環境を整備することを目指している。ただ情報にアクセスできることと、そこで
得られた情報が必要で適切な情報であるのかとは、別次元のものである。昨年度の事業
を通して観光行動の時点により必要な情報の内容、情報へのアクセス手段などが異なっ
ていることを提示した。今年度の採択事業については、事業説明会などを通して観光情
報の 3 つのフェーズを提示しており、事前情報、現地(事中)情報、事後情報という 3
つの情報を切り分け、事業が行われた。特に1−3で示すように現地(事中)情報の提
供については、幾つかの実証実験が行われ、その情報提供方法や内容についての利用者
の意見も得られ課題なども得ることが出来た。ここで、観光情報の 3 フェーズについて
簡単に整理を行う。
事前情報は、旅への誘いのための情報提供であり、地域の魅力を伝え、旅を促すため
の情報提供であり、きっかけづくりのためのものである。本事業の共通プラットフォー
ムで提供する多くのコンテンツは、そのための素材であり、テーマという切り口で地域
ごとに整理されている。
現地(事中)情報は、旅先で必要となる情報、旅先での満足度を向上させるための情
報提供であり、大きくは後述の通り、①観光ガイド情報、②周辺案内情報及び③ヘルプ
情報に分けられる。
事後情報は、旅の思い出情報であり、利用者が自分の旅の記録を振り返り、知人・友
人などに旅自慢をするための素材としての情報などである。現在は、ブログ情報などと
して一部、紹介されている。
本事業で示す事前−現地(事中)−事後での情報提供のサイクルを通して利用者が、
地域のファンとして根付き、リピーターとして来訪することや、旅先で食べた地元の産
品を通信販売で購入することや友人たちに地域の良さを伝えるスポークスマンとなって
いくことで地域活性化に貢献するというのが、この情報提供のサイクルの持つ究極の目
的である。
<共通プラットフォームと地域 WEB サイトの組み合わせによる事前情報提供>
各採択事業では、テーマにより連携し利用者に対しての地域の観光情報の発信を行っ
ている。情報発信のためのプラットフォームとして多くの協議会ではUコードを基盤に
整備された共通プラットフォームと、それぞれの地域WEBサイトの二本立てを取って
いる。共通プラットフォームは携帯電話などでのアクセスにも対応できることから事前・
現地(事中)のどちらにも対応できるものである。またコンテンツのデータベースとし
ては汎用性が高いが、一方、コンテンツ間の関係性・流れなどのストーリーを持たせた
見せ方ということには適していない。
しかしテーマの中にはまだ一般的な認知度が高くないことからぶつ切りのコンテンツ
をみても興味がわきにくく、コンテンツ間を流れる全体テーマのストーリーや時代背景
150
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を理解させることが重要なものも少なくない。そのため地域WEBサイトでストーリー
やマップを示し、そのコンテンツとして共通プラットフォームのデータベースを活用す
る形が出てきている。
例えば、長崎県対馬市の事業では、朝鮮通信使が辿った道をマップとして地域WEB
サイトで示して、そこから地域のコンテンツを表示するときに共通プラットフォームの
コンテンツを活用している。
< IT の特性を活かしたコンテンツの提供>
本事業では、ITの特性を活かした観光情報の提供も目指している。ITの利点の一つ
として、時間や空間に制約されない映像や情報の提供ができるということがある。こう
した利点を活用し、現地において、映像としては昔の映像を提供したり、別の季節の情
報を提供したり、CGなどでの再現映像を見せるといったことが可能である。
以下の橿原市の事業の例では、今はただの広場に過ぎない藤原宮跡地においてCGで
再現した藤原宮の映像を携帯電話などに提供することで、利用者が往時の姿に思いをは
せることを手助けする仕組みとなっている。もし、こうした仕組みがなければ大半の利
用者にとっては、ただの空間に来た以上のものではなく、感動を覚えることが出来るの
は、この時代の歴史が好きであるか、事前に十分に下調べをした利用者に限定される可
能性がある。もしくは上手な語り部と一緒にこの地を訪れた観光客であれば、何もない
空間でも感動を覚えることが出来るかもしれない。本仕組みを使うことで、利用者の満
足感を向上させる可能性は非常に高いと思われる。
ただしCGの作成などはコストなどがかかることも想定され、福井市の事業において
は、復元された模型を小型カメラで撮影することで人の目線から見ているような映像と
して加工し、その映像を一乗谷朝倉氏遺跡の跡地で提供することでCGと同じような効
151
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果を狙っている。
現在の藤原宮跡
歴史好きな人、当時の状況を想起できる人には魅力的な空間
普通は、なかなか往時を思い起こすことは出来ない
素晴らしい語り部・ガイド、十分な下調べと興味があれば…
CGで再現した藤原宮
現在の藤原宮跡を見ながら、この映像を見たとしたら…
歴史に精通していない、十分な下調べをしていなくても
ただの原っぱだと思っていた空間に対して違った感情が…
1−3.現地情報の提供内容・方法に関する成果
<現地情報に必要な情報の種類>
現地情報に必要な機能を大きく大別すれば、①観光ガイド情報、②周辺案内情報、③
ヘルプ情報に分けることが出来る。
①観光ガイド情報
観光ガイド情報とは、従来の団体旅行では存在していた観光ガイドの役割を果たす補
助的な情報である。ITを使った観光ガイド情報は、十分な予備知識を持っていなくても、
対象施設の歴史的背景などを説明し、うっかり見過ごしてしまいそうなものを気づかせ、
ちょっとしたトリビア的な情報を交えて利用者満足度を高めるものである。本事業では、
福井市が一乗谷朝倉氏遺跡で、南城市が斎場御嶽で無線端末を使った観光ガイド情報を
提供しているが、利用者からガイドなしではつい見過ごしてしまったかも知れないもの
に気づけた、ガイドがあることで理解が深まったといった声が聞かれ、ITでの観光ガ
イド情報は利用者満足度に寄与している。
②周辺案内情報
周辺情報とは、食や土産物あるいは近くのお奨め施設などについての情報である。観
光ガイドやネット情報により事前に下調べをしていても、地元で評判の、地元の人しか
いかないお店といった情報には旅行者は敏感である。今回の事業の中では行政そのもの
が評価などはできないものの、地域のブログ情報や地域SNSなどでのお進め情報へのア
クセスが簡単にできるように準備をすることが求められる。また、次に行くのにお勧め
できる場所などは域内での滞在時間を増やし消費行動を誘発する可能性もあるので、現
在地からの時間距離やテーマ・利用者の属性(ファミリー、年齢層)に応じて複数を提
示できるような仕組みがあると理想的である。
152
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③ヘルプ情報
ヘルプ情報は、なじみのない土地ではわかりにくいバスや電車・路線の乗り継ぎ、時
刻表、タクシー会社の連絡先などの移動に関するものや病気や怪我などのときの薬局や
医療機関などへのアクセスなどである。今回の事業の中でも地域webサイトのコンテン
ツアクセスでは交通情報などが上位に来ており、旅行者にとって必要な情報であること
は間違いない。
<現地情報の提供手段・提供方法>
現地情報を利用者が入手するときには携帯電話、無線端末機器、専用端末などが考え
られる。今回の事業では、橿原市は携帯電話、南城市や福井市は無線端末機器を活用し
ているが、今後のIT技術の進展方向などに依存しており、方向性が明確になっている
わけではない。ただ、現地情報を入手する場面では、実際に現地で写真や画面ではなく
現物を目でみて、現物の置かれている全体の雰囲気を五感で感じており、入手情報には
工夫が必要となる。
今回の事業での利用者アンケートなどを見ると全体的には良かったとの感想が多いも
のの、動画情報の量や文字情報の分量、音声の適切性などについては、不満を感じてい
る利用者も少なくなかった。現地情報の提供においては、対象とするものの説明に必要
な時間や方法について、十分に検討していく必要がある。
また、現地(事中)情報での画像情報についても、実際に目で見ているものと全く同
じ画像であれば、画像をみる必要はないので、画像を示すのであれば、一工夫が必要で
ある。以下は南城市の実証実験で現地(事中)情報提供の端末で提供される画像である。
現地で実物をみていても、気づきにくい事物に解説をつけて表示することで利用者の利
便性を高めている。
当初は、解説がついていなかった。
実証実験の過程でわかりにくいとの
意見を踏まえ、反映させたもの
(一見したら、ただの石ころ)
解説をつけることで、目の前にあって
気づきにくい箇所に目が行きやすくなる。
もし付いていなければ、音声で解説されても
どのことかわからないまま通りすぎたかも
知れない。
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1−4.Uコード活用の幅の広がり
< U コード QR を活用したパンフレット>
携帯電話でのアクセスを想定してQRコードが印刷されいている観光パンフレットが
多くなっている。本事業の採択事業の中には、単なるQRコードではなくUコードQRを
印刷しているケースが多くなっている。以下の盛岡市事業の「ふるさと文学ふれあい巡
りマップ」のほか橿原市事業などもUコードQR付のパンフレットを作成している。
従来のQRコードの場合は、リンク先のURLがコード化されているものなのでリンク
先のデータ更新によってパンフレットの利用者がアクセスできなくなるケースが発生
し、その修正作業は困難であり、パンフレットの刷りなおし・更新を余儀なくされるこ
とも発生しうる。一方、UコードQRで設定しておけば、リンク先の団体のデータ更新
があった場合、Uコードのリンク先を変更するだけでパンフレットそのものの変更をす
る必要がなく、リンク先のデータ更新によってパンフレットを更新せざるを得ない事態
にまでは発展しない。また、Uコードのリンク先を発行元が操作することで、時期に合
わせた画像への差し替えやイベント時に告知ページに誘導することなども可能となり活
用の自由度が高くなる。
そのため、今後の観光パンフレット作成においてはUコードQRで作成していくこと
が利用者、発行者双方にとってメリットが高いものとなる。
< U コードを活用したデータベース>
米子市事業では、関連する市町村や観光関連団体がそれぞれ独自の観光関連サイトを
持っていた。多くの観光サイトがあること自体は利用者の選択の幅が広いことも意味す
るが、掲載されている観光施設の休館日や開館時間、利用料金といった情報が必ずしも
更新されていないために、複数のサイトを見た利用者が困惑する状況が散見された。
154
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そのため米子市事業では、観光施設などの情報をUコードを活用したデータベースと
して一元的に整備し、関係する観光関連サイトが、そのデータベースを参照する形でサ
イト間での情報の不統一をなくし、最新の正しい情報を利用者が得られる仕組みを構築
している。今後、利用者の利便性の観点からこうした情報が一元管理され、そこからリ
ンクを設定していく形での情報発信は一つのモデルケースとなりうる。
2
事業の課題
2−1.事業推進上の課題
<事業推進のためのキーマン・民間団体の必要性>
本事業は、利用者の視点に立った情報提供という観点もあり単独自治体ではなく複数
自治体の連携での事業推進を求めた。本事業の事業実施主体として関連自治体をまた
がった形で自治体以外の団体が多く関与しているケースでは事業推進がスムーズに進ん
でいるように思われる。例えば、吉野町事業における「奈良のむらづくり協議会」や米
子市事業における「大山王国」といった団体が該当する。逆に自治体が中心となって事
業を進めているケース、大学が関与しているケースの中では市町村間の調整などに忙殺
され事業遂行が大変だったケースも見受けられた。特に市町村が中心となって事業を進
める場合には、リーダーとなる人材の負荷は連携する市町村担当者との調整だけにとど
まらず、連携市町村の他部署にあるコンテンツなどの収集なども発生するなど負荷が相
当に大きかったものと思われる。そのため事業遂行においては、このキーマンの存在が
カギを握ることとなる。
<事業継続のための体制構築>
本事業を通して全国で様々な形でのテーマによる連携での観光情報発信が行われた。
事業の進捗に伴って利用者が求める情報の幅・内容に対応するため行政だけではなく観
光事業者や他の産業界、地域の声・地元ならではの情報を提供できる住民などとの連携
した情報発信が求められるようになってきている。また、本助成事業の中で作成したコ
ンテンツについても、メンテナンスが必要なもの、また新規・追加していくコンテンツ
なども整備していくことが今後の助成期間終了後にも求められる。
今後も事業継続をしていくためには、こうした観光情報提供が地元産業界に利益を還
元していくサイクルをもたらすための情報発信サイクルの高度化と、それを測定する仕
組みなどを構築していく必要があり、例えばクーポンの発行と効果測定といった形で利
益を地元にみせていく工夫と同時に、その利益を得るための事業者の協力、資金負担と
いった体制構築も進めていく必要がある。
そのため、これまでは市町村間の連携・調整という側面が強かったため、行政がリー
ダーシップを取っていたが、地元の産業界などの人材がリーダーシップを発揮して全体
を推進していく形への変更なども進めていく必要が出てくる。
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2−2.地域資源の利活用・情報発信における課題
<顧客側が欲しい情報と行政が提供したい情報・コンテンツとの乖離>
本事業における情報発信は共通プラットフォームへのコンテンツ登録と地域webサイ
トでの情報発信の二つを併用している事業が大半である。本事業は連携を条件としてお
り、協議会の組成にあたっての予算配分などの関係で共通プラットフォームのコンテン
ツ登録数を予算配分枠で設定しているケースも当然、想起される。ただし、利用者から
みた魅力あるコンテンツは、構成市町村間に予算配分の比率で存在しているわけではな
い。予算配分が重要ではあるが、利用者が入手したい情報の濃淡を加味することは必要
である。
あるいは、コンテンツへのアクセス数などを基に見直しをする仕組みを取り入れて、
調整する必要はあると思われる。
<事前・現地(事中)・事後情報への対応>
昨年度及び今年度事業を通して、観光情報に 3 つのフェーズがあることを確認し、事
前情報の提供、現地(事中)情報の提供については、実証実験なども幾つかの事業で行
われた。しかし利用者の行動記録の保存・提供や行動記録の分析を用いた事前情報や現
地(事中)情報、産業界や観光事業者へのフィードバックについては、あまり対応が出
来ていない。
今後、利用者のクーポン入手・利用履歴の分析、コンテンツへの事前のアクセスと現
地(事中)でのアクセス状況などを踏まえたコンテンツの取捨選択、追加して提供すべ
きコンテンツの種類などについて検討していく仕組み、それを地域に還元する仕組みに
ついては構築を検討していく必要がある。
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平
成
年
度 ﹁
「e- 地域資源活用事業」
-
21
平成 21 年度
報 告 書
e
地
域
資
源
活
用
事
業
﹂
報
告
書
平
成
22
平成 21年度
「e- 地域資源活用事業」
報 告 書
平成22年3月 発行
編集・発行 財団法人 地域総合整備財団
〈ふるさと財団〉
年
3
月
財
団
法
人
地
域
総
合
整
備
財
団
<
〒102-0093
東京都千代田区平河町2-5-6 新平河町ビル
TEL 03-3263-5736 FAX 03-3263-5732
URL http://www.furusato-zaidan.or.jp/
++e-地域_表1-4.indd 2
平成22年3月
>
E-mail:[email protected]
ふ
る
さ
と
財
団
2010/05/07 19:18:53
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