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“不への挑戦” へのコントロール

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“不への挑戦” へのコントロール
《プロフィール》
医学博士・心理学博
士。東京大学卒業後、
渡米。U・Cユニオ
ン大学院(心理学)、
セント・トーマス大
学院(身体精神医学)
博士号取得。
ほんろう
100 年に一度というほどの世界的金融恐慌が続いています。不況の波に翻弄され、なかなか抜け出
せません。企業組織は減産、減益を余儀なくされ、それがいつまで続くのか予測もつきません。働
く人もいつ賃金カットされるか、いつリストラされるか、ますます不安が募ります。
私たちの心は沈みます。「沈みっぱなしではなく夢を持とうよ!」と言ったところで、そんな余裕
もありません。しかし、それでも私たちは、沈んだままではいけません。自滅するわけにはいかな
いのです。だから、ただ、
「今の自分はどうすればよいのだろうか」という思いだけを持つことです。
夢は持たなくても構いません。夢を持つとそれに向かって「やらなきゃ∼」という義務感がわいて
きて、自分で自分を苦しめることになります。
心が沈んで立ち向かえないときは、立ち向かわなくてよいのです。しかし、心は“不への挑戦”を怠っ
てはいけません。この時期だからこそ、不に立ち向かう心のコントロールが必要なのです。
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1.あおいくま退治
不は私たちに「おい、あくま」になれ!「あおいくま」になれ! とささやきます。
おいあくま=「あおいくま」 つまり「あ:焦る お:怒る い:威張る く:朽ちる ま:間違いを許さない」
不が迫ってくると、ちょっとしたことで焦ります。自分の価値観に合わないこと、計画に合わな
いことがあると、すぐ感情的になって怒ります。何でも他人のせいにして他人に威張ります。もう
ダメだ∼と自分の心を朽ちさせ、間違いを許す心が持てなくなってしまうのです。
私たちの心の中に「あおいくま」が巣食っていると、頑張っているつもりでも、迷走しているだ
けになってしまうのです。空回りしているだけなのに、努力していると思いこんでいます。頑張っ
ているという錯覚だけで、結果が出ないので、さらに焦り、怒り、威張り、朽ち、間違いを許せなくなっ
て惰性でやるしかなくなってしまうのです。
2.休養に挑戦
がむしゃらがダメなのは、疲れて迷走するからです。休むことへの挑戦が必要なのです。“不への
挑戦”へのコントロールの1つは、休養をとることです。
あきら
それは、成長を諦めることではなく、夢を諦めるのでもなく、ちょっと休息すること。心が沈ん
でいても、何かに期待感があり、どこかに希望を持つことを忘れないためです。具体的活動はしな
くても心の活動はしている。「あおいくま」が変わり迷走がなくなります。
①休養は挑むための調整になる
挑むためには、常に全力ではダメでコントロールが必要です。目標そのものだけでなく、周囲に
対しても準備や調整が必要なのです。がむしゃらにワンパターンで全力疾走してもすぐに疲れて止
まってしまいます。ちょっと止まって、またやらなきゃ∼と急いで走る、このような状態ではムラ
が生じます。
頑張ったら休んで、また頑張る。休んでいる間は「停滞」ではありません。休養によって疲れが取れ、
パワーが蘇り、さらにパワーアップして次への頑張りが確保されます。休みがなければ、疲労から
ストレス状態になり、さまざまな悪い状況を引き起こします。
44 《Dr . ジョージの心の経営論》『 不への挑戦 へのコントロール』
JA 総研レポート/ 2009 /春/第9号
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②休養はひらめきを創る
休養をとることは、怠けることではありません。怠けている人は夢・目標を持たずに、努力を放
棄している人です。
休養すれば、今の自分を中断し振り返ることができます。ぼうっと考えていると、ふっとひらめ
くことがあります。それは、1つの問題を常に検討しているから、何かしらアイデア、解決法がひ
らめくのです。体は休んでいても心は休んでいないのです。
例えば、数学の勉強をしていて疲れて休むときはどうしますか? 寝る、テレビを見る……人間の
脳は、右脳と左脳のバランスをとることによって、休養と同じ効果を得ることができます。つまり、
数学の勉強をしていて疲れたときは、国語の勉強をすればよいのです。左脳で論理的思考をした後は、
漢字を覚えるなど右脳を使って記憶するという具合です。右脳左脳をバランスよく使うとシーソー
ゲームをしながら、だんだんとどちらもが上昇し、どちらも成長できるのです。だから、体を鍛え
ることによって心が鍛えられます。また、心を鍛えることによって体も鍛えられるのです。
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3.こりつ退治
「こりつ」とは、「こ:こだわって り:利己的に つ:突っ走る」 つまり孤立です。
不を乗り切るために、自分だけ不を最小限にしようとか、脱出に一番乗りしようとか、自分の都
合と自分の感覚でしか考えず、自分の価値観に合うことしか行動しない、他人はどうでもよく、自
分さえ生き残れたらよいなど、「共に生きる概念」がないのです。
私たちは欲望を持って生きています。だから貪欲になってよいのですが、立場を間違うと孤立して、
不から抜け出せなくなってしまいます。
4.誠実に挑戦
自分の立場だけを守ろうとするのは、不実です。誠実の反対。誠実は「共に生きる概念」があります。
相手の都合と相手の感覚、相手の立場で考える余裕があります。だから、柔軟に対応でき、ワンパター
ンにならないのです。 誠実は、「誠実でいよう」という心構えではなく、行動で示さなければいけません。絵に描いた餅
にしないためには、柔軟な対応をする
ために次の3つを共有するように努力
しましょう。それが、“不への挑戦”
へのコントロールの2つ目です。
①希望の心:目の前にいる人と希望の
心を共有すること。漠然
としたものでよい。
②手 段:人と共通項を作る。例え
ば、一緒にお茶を飲む、
同じ釜の飯を食う、一緒
に〇〇するなど、時間を
共有すること。
③言 葉:相手と使う言葉を同じに
する。自分が素直な心に
なって、相手を認めてあ
げる、そのために相手の
使った言葉を自分も使う
こと。
JA 総研レポート/ 2009 /春/第9号
《Dr . ジョージの心の経営論》『 不への挑戦 へのコントロール』 45
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