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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ

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本文ファイル - 長崎大学 学術研究成果リポジトリ
NAOSITE: Nagasaki University's Academic Output SITE
Title
ソフトフェライト膜作用Nd:YAGレーザーPLDシステムの開発
Author(s)
辻, 峰男; 本城, 隆; 泉, 勝弘
Citation
長崎大学工学部研究報告 Vol.32(59) p.75-78, 2002
Issue Date
2002-07
URL
http://hdl.handle.net/10069/5213
Right
This document is downloaded at: 2017-03-29T20:58:51Z
http://naosite.lb.nagasaki-u.ac.jp
長崎大学工学部研 究報告
第32巻
第59号
平成 1
4年 7月
75
ソフ トフェライ ト膜作製用Nd
:
YAGレーザ p
LDシステムの開発
藤島
友之*・中野
山下
正基 **・竹滞
敬彦**・松尾
昌晃 ***・松尾
寿夫** ・福永
良夫****
博俊**
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1. は じめに
フェライ トは,原材料 に起 因 して安価 であ り耐酸化
ス を設計 ・開発す るためには,低温 プロセスによるフェ
ライ ト膜 の 開発 が不 可 欠 で あ る. そ うい う中, 中野
性 が強 く化学 的 に安定 であ るため, ソフ ト磁性材料 ・
ら1̀
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、3̀
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は,エ キ シマ レーザ を用 い雰 囲気制御 したパ ル
磁 石材料 ・磁気記録媒体 と磁性材料 の応用分野 の ほぼ
ス レー ザ デ ポ ジ シ ョ ン (
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全分野 に用 い られてお り,磁性分野 の 中で最 も重宝 さ
PLD) 法 に よ り, ナ ノ結 晶 ソフ トフェライ ト膜 の室温
れてい る磁性材料 であ る. フェライ トの 中で もソフ ト
基板 上へ の作 製 を世界 に先駆 け実現 した.
フェライ トは,高 い抵抗率 ,透磁率 の優 れた周波数特
しか し,エ キ シマ レーザ は,主 にハ ロゲ ンガス と希
性 ,安価 な どの特長 を持 ち,薄膜化が実現 され た際 に
ガスか ら構成 され る レーザ媒 質 に高電圧パ ルス を印加
はGHz
帯 で使 用 され るマ イクロイ ンダク タ,マ イクロ
して レーザ発振 させ る仕組 みであ るため,希 ガス な ど
トラ ンス な どマ イクロL素子用磁性材料 と して大 い に
が高価 ,高電圧パ ルス発生電源部 の経 時劣化 が大 き く
期待 されてい る.
修理が高額 な どの理 由に よ り, ラ ンニ ングコス トが高
現状 で は, ソフ トフェライ ト膜 の作 製時 に 1
00℃以
く,研 究室 レベ ルでの維持 が困難であ る.そのため,
上 の高 い基板 温度 を必 要 とす るため,積層化 して実 デ
ラ ンニ ングコス トが低 く,pLD法 に充分 な出力エ ネル
バ イス と して加工 す る際 に他 のデバ イス材料 の特性 を
ギー,繰返 しを有 す る レーザ を使用 したpLDシステム
劣化 させ るな どの理 由 に よ り,実用材料 を得 るにはい
の開発 が必 要 となった.
たってい ない.
そ こで ,PLD法 の レーザ光源 と してNd:
YAGレーザ
したが って,マ イクロ磁気 デバ イスの高性 能化 ,小
を利用 す る ソフ トフェライ ト膜作 製用 Nd:
YAGレーザ
型化 ,実用化 を促 進す る とともに,新 しい磁 気 デバ イ
pLDシステム を開発 したので,その システムの詳細 を
4年 4月 1
2日受理
平成 1
*大学 院生産科学研 究科 (
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FDK株式 会社 (
76
藤島 友之 ・中野 正基 ・竹滞 昌晃 ・松尾 良夫 ・山下 敏彦 ・松尾 寿夫 ・福永 博俊
ここに紹介す る.
安定性 においてNd:
YAGレーザのほ うが優 れている.
2,Nd:
YAGレーザPLDシステム
ラフィの光源 として産業界で重宝 されているレーザで
また,Nd:
YAGレーザは, レーザ加工や フォ トリソグ
今回開発 したソフ トフェライ ト膜作製用Nd:
YAGレー
もあるため,学生がその ような レーザ に触れることの
ザpLDシステムは,(
1
)
光源であるNd:
YAGレーザ と(
2)
メリッ トもある. この ような理 由によ り,本研究では
膜堆積 を行 う真空チェンバか ら構成 される.それぞれ
Nd:
YAGレーザ をpLD法のための レーザ光源 として採
について詳細 を述べ る.
用 した.
図 1に , 今 回導 入 したNd:
YAGレー ザ (
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2. 1 Nd:
YAGレーザ
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0)の写真 を示す.電
pLD法で使用 される レーザ には,堆積薄膜の特性 に
源部 とレーザ発振部 とに分かれてお り非常 にコンパ ク
及ぼす影響か ら,短パルス,高出力,短波長,高繰返
トになっている. レーザのカタログ上の性能 は,表 1
しなどの特性が求め られる.現在 , この要求 を満 たす
の ようになってお り,第 4高調波 までPLD法 に使用で
レーザ としては,気体 レーザであるエキシマ レーザ と
きる もの と期待 された.実際,納品検査時の第 2高調
固体 レーザであるNd:
YAGレーザが挙 げ られる.
波 ,第 3高調波,第 4高調波の出力エネルギーは,秦
近年 ,Nd:
YAGレーザの性能が向上 し,高 出力 ・高
1に も示 したが , それぞれ,8
(
氾mJ,40
0mJ, 1
0
0mJ
繰返 しの製品が入手可能 となった.加 えて, ランニ ン
であった.第 4高調波 も充分 にPLD法 に使用可能であ
グコス ト, メンテナ ンス性,お よび,出力エ ネルギー
ることが確認で きた.
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ソフ トフェライ ト膜作製用Nd:
YAGレーザpLDシステムの開発
Nd:
YAG結 晶の初期劣化 に よる出力エ ネルギーの低
77
を得 る システム となっている.
下が予想 されるが, カ タログスペ ックを越 えた出力が
各排気装置作動時の真空室内の圧力 は,サーモ カ ッ
得 られてお り,堆積膜特性 の レーザ波長依存性 な ど,
プルゲー ジ (
ANELVA製 , TG550B), 電 離 真 空 計
様 々な研究 テーマが新 しく創 出 され研究教育が さらに
(
ANELVA製,MI
G(
泊l
),キ ャパ シタンスマ ノメー タ
発展す る もの と期待 している.
(
pFEI
FFER製,cMR262) を使用 してモニ ターす る.
具体的には,サーモカップルゲージによりロー タリー
2.2 PL
Dチ ェンバ
図 2に,今回開発 したpLDチェ ンバ (
ヴイテ ック製,
ポ ンプ使用時の圧力 をモニ ター し, ターボ分子 ポ ンプ
が稼動可能か どうか を判断す る.そ して,電離真空計
VTCNFN520)の写真 を示す.膜の堆積 を行 うpLDチェ
により,ターボ分子ポンプお よびチ タンサブリメーシ ョ
ンバ は, メインの真空室,真空排気のための排気系,
ンポ ンプ稼動時の到達真空度 を測定す る.キ ャパ シタ
膜 を堆積 させ る基板 を設置する基板保持機構, ターゲ ッ
ンスマ ノメー タは,気体の種類 に依存 しない絶対圧 を
トを保持 ・回転 させ る ターゲ ッ ト回転機構 の 4つの部
表示す るので,雰囲気 ガス を真空室内 に導入 して製膜
分か ら構成 され る.以下,それぞれについて詳細 に述
を行 う際 に使用す る.
べ る.
雰囲気 ガスは,3系統 (
02
,N2
,Ar
)のマス フロー
コ ン トロー ラ (
SAM製 ,sFC280E) に よ り流 量 を制
2. 2. 1 真空室
真空室 は,前述 したNd:
YAGレーザの レーザ光 を真
御 して,真空室内に導入で きる.マスフローコン トロー
ラは 3系統が完全に独立 し,それぞれ出口側 に二万ボー
空室内 に入射す るための レーザ入射 ポー トや各種サー
ルバ ルブを有 しているため,製膜時の雰囲気 ガス とし
ビスポー トを有 し, 内径 ≠40 mm, 高 さ30 … で,
て は,真空 ,02・N2・Ar
の単独 ガスお よび混合 ガス
sUs304の ステ ン レス製 であ る.真 空排気 時 の真 空室
が設定可能である.
内壁 か らの脱 ガス を促進す るため に,真空室 内面 をバ
フ研摩後,電界研磨処理 を施 してある.真空室外壁 に
2. 2. 3 ターゲ ッ ト回転機構
は シース ヒー タを設置 してお り,脱 ガス促 進のため,
pLD法 では,作製 したい薄膜 と同 じ化学量論比 の組
外壁温度 をCA熱電対 で温度 をモニ タリング しなが ら
成 を有す るセ ラ ミクスな どを真空室内 に設置 して レー
ベ ーキ ングす ることが可能 となっている.
ザ光 を照射す る ターゲ ッ トとして用 いる.本 システム
上蓋 (アル ミ,1
7kg) は,基板 セ ッテ ィングな どの
では, ターゲ ッ トのサ イズ と して,厚 さ-1
0mm,直
真空室 内での作業 を容易 にす るため,バ ラ ンサー を取
0-50
mmの ターゲ ッ トを装着 で きる ようになって
径1
り付 け,手動 で容易 に開閉で きる ように している.
いる. ターゲ ッ トを変更す ることによ り,様 々なソフ
レーザ入射 ポー トは,真空製膜時 に レーザ入射 窓の
石英 ガラス (
合成石英 , 1
0mm厚 ) に薄膜 が堆積す る
こ とを防 ぐため に,真 空室 の 中心 よ り50 mm離 れ た
トフェライ ト膜や ソフ トフェライ ト以外 の膜作製 も可
能である.
また, 1箇所 に レーザ光 を照射 しっづ ける と穿孔 や
位置 に設置 している. レーザ入射窓の石英 ガラスには,
溶融 といった問題が生 じ堆積膜 の特性 を劣化 させ るこ
ガラス面 か らの反射光 のba
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ngに よる レーザ光
とがあるため, ターゲ ッ トを回転 させ る必要がある.
学系 の損傷 を防 ぐため に,反射防止 コーテ ィングを施
特 に, このPLDシステムで使用す るNd:
YAGレーザは,
した もの を採用 している.
3
0Hzで発振す るため,通常 の ターゲ ッ ト回転数 (1-
2. 2. 2 排気系 および雰囲気 ガス供給系
5叩m) よ りも高速で回転 させ る必 要があ る.そ こで,
充分 なパ ワー を持 つ交流サ ーボモ ー タ (
vEXTA製 ,
真空室 を真空排気す るための排気装置 として, ロー
BXM51
20GFH2) をパ ルス制御 す る こ とに よ り, 1
0
0
タ リーポ ンプ (
ALCATEL製 ,201
5), ター ボ分子 ポ
-5 叩m の範 囲で , ターゲ ッ ト回転 数 を可変 で きる
ンプ (
三菱重工業製,pT300)
,チ タンサブ リメーシ ョ
ようになっている.
ンポ ンプ (
ANELVA製,956701
5) を備 えている.
さらに, ターゲ ッ トを偏心す るこ とな く回転 させ る
ロー タリーポ ンプによ り大気圧か ら中真空領域 まで
ためのベ ア リングによる偏心 防止機構 と, ターゲ ッ ト
排気 した後 , ターボ分子 ポ ンプによって高真空領域 ま
位置 を回転軸方向に微調整す るための位置決め機構 を
で排気す る.その後, ターボ分子 ポ ンプ と併用 してチ
備 えている.
タンサ ブ リメーシ ョンポ ンプを稼動 させ,昇華 したチ
タンと脱 ガス成分 を反応 させ て, よ りクリー ンな真空
78
藤島
友之 ・中野
正基 ・竹滞
昌晃 ・松尾
2.2.4 基板保持機構
良夫 ・山下
敬彦 ・松尾
寿夫 ・福永
博俊
Nd:
YAGレーザpLDシステムの開発 にあた り,設計
前述の ターゲ ッ トに対 向 して,薄膜 を堆積 させ る基
上のア ドバ イス を頂 き,pLDチ ェンバ システムの製作
板 を固定で きる ように基板保持機構 を設置 している.
を行 っていただいた(
有)ヴイテ ックの稲 田秀記氏 ,石
大学 での研究では試料の作製が中心であるため,標準
川知利氏 ,野 郎 告-氏 に深謝 いた します. また,Nd:
0mm角 の基板 を固定 で きる ように基板 ホル
では最大 1
YAGレーザ とpLDチ ェ ンバ を結 ぶ光学系 の設計 と作
ダーの設計 を行 った.
製 を行 った長崎大学大学 院生産科学研究科の国債智彦
基板 ホル ダーは ヒー タブロ ックに着脱可能 となって
君,松浦康寿君,結城貴文君 に感謝 します.
00℃程
お り, ヒー タを加熱す るこ とに よって基板 を9
なお, この ソフ トフェライ ト膜作 製用Nd:
YAGレー
度 まで加熱 で きる.基板温度 は , CA熱電対 によ りモ
ザpLDシステム開発 の大部分 は,新エ ネルギー ・産業
ニ ター しなが ら,温度調節器 (
cHI
NO製,KPl
∝X)
)
技術総合 開発機構 (
NEDO)の平成 1
3年度産業技術研
でPI
D制御 を行 える.
究助成事業費助成金 によ り行 われた ことを明記 し,謝
この基板保持機構 (
基板ホルダーお よびヒー タブロッ
辞 といた します.
ク) は,直線導入機 を介 して真空室 に取 り付 け られて
参考文献
お り,Nd:
YAGレーザの レーザ光 を遮 るこ とな くター
ゲ ッ ト正面 か ら3
0m の距離 まで近づ ける こ とが可能
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であ り, ターゲ ッ ト 基板 間距離 を変更で きる ように
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さらに,基板加熱 を要 しない場合,ア ダプター を使
用す ることによ りレーザ光 を遮 ることな くターゲ ッ ト
正面 か ら 5m の距離 まで 5mm角 の基板 を近づ け る
ことが可能 な機構 となっている.
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3.まとめ
今 回新 た に開発 した ソフ トフェライ ト膜作製用Nd:
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9.
YAGレーザpLDシステムの詳細 を紹介 した.Nd:
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レーザ もpLDチ ェンバ も納入後や っ と設置が完了 した
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ばか りであ るが,今後, ソフ トフェライ ト膜 を中心 と
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膜化 の実現,学生 ・院生 のスキルア ップに貢献す るこ
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1
999.
9)
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とが期待 される.
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