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鉱物資源政策プラットフォーム - RIETI

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鉱物資源政策プラットフォーム - RIETI
「鉱物資源政策プラットフォーム」活動報告
平成14年4月25日
経済産業省鉱物資源課
1.「鉱物資源政策プラットフォーム」とは
鉱物資源政策全般に関し産学官の有識者多数がネット上で議論を行うオンライン会議。発
言はホームページ(http://www.rieti.go.jp/pps/)上に掲載されるとともに、メールで参
加者全員に配信。経済産業省鉱物資源課が主宰(プラットフォームマスターは児嶋課長補
佐)。平成13年5月開設。
2.開設趣旨
近年、国内金属鉱山の相次ぐ閉山、鉱物資源の輸入依存の加速、企業の海外探鉱の活発化、
金属リサイクルの本格化、IT産業や環境産業の発達に伴うレアメタルの需要の増大等、我
が国の鉱物資源を巡る環境は急速に変化。
経済産業省としては、このような環境変化に遅れることなく、国内鉱業振興を旨とするか
つての「鉱業政策」から、我が国の鉱物資源安定供給確保を追求する「鉱物資源政策」への
転換を、従来にも増して強力に推し進めていくことが必要。
かかる認識に基づき、ITを活用し広く省内外の英知を総結集することにより、鉱物資源
政策のバックボーンとなる理論的基礎を構築するとともに、あわせて個別施策の企画も行う
べく、「鉱物資源政策プラットフォーム」を開設する。
3.参加者
現在、参加者数は223名(発言数は315件)。
【内訳】
産: 79名(鉱山会社48、商社9、資源コンサル9、メーカー等13)
学: 47名(大学25、産総研22)
官: 97名(経産省本省37、地方局12、金属鉱業事業団30、公益法人等18)
海外:15名(ロンドン、アルマティ、リマ、リオ、サンチャゴ、シドニー他)
地方:24名(札幌、秋田、仙台、盛岡、京都、大阪、高松、広島、沖縄他)
4.活動内容
【平成13年】
5月15日 「鉱物資源政策プラットフォーム」開設
テーマ: ①鉱物資源安定供給確保の意義
②環境問題への鉱業の貢献(金属リサイクルの推進)
③非金属政策の体系化(コンクリート骨材枯渇危機の回避)
6月12日 第1回論点整理
7月 5日 オフライン会議(於:経産省)
7月下旬
企業ヒアリング開始
8月22日 第2回論点整理
8月28日 総合資源エネルギー調査会鉱業分科会に中間報告
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9月下旬
鉱物資源供給障害影響度分析検討開始(資源素材学会)
【平成14年】
3月末
鉱物資源供給障害影響度分析検討終了
5月
鉱山開発リスクコミュニケーション研究開始(産総研)
夏頃
報告書とりまとめ・出版(目標)
5.これまでの議論の概要
【テーマ1:鉱物資源安定供給確保の意義】
(1) 安定供給の態様
鉱物資源の安定供給を論ずるため、まず「安定供給」とはいかなる状態かについて考察す
べき。安定供給でない状態すなわち「供給障害」には、供給途絶の状態と価格高騰の状態の
2つが考えられる。但し、後者を供給障害と捉えることには疑問もある。すなわち、価格が
いくら高騰しようと物理的に何時でも購入可能な状態も供給障害と言いうるのか。更に、経
済学上は価格は安定するよりむしろ変動する方が売り手買い手双方にとって望ましい。また、
対日価格のみが高騰することがありうるのかについても検証が必要。
安定供給を論じる際には、経済的側面だけでなく、地域社会の反対、自然環境、鉱業法の
未整備、地域資源の基礎情報の不足、政情不安等の非市場的要因も含む概念すなわち「アク
セシビリティ」で捉えるべきではないか。また、そもそも鉱物資源市場はほぼ全ての鉱種に
おいて一部の大供給者が価格に変動を及ぼす力を有している「不完全競争市場」であり、か
かる観点からは、鉱物資源の供給構造は長期的には必ずしも安定的ではないと考えられる。
更に、副産物として産するコバルトやタンタル等や製錬過程が複雑なチタン等は、資源量
(耐用年数)に関係なく需給逼迫が常に生じうる。
(2) 供給障害の影響
鉱物資源政策の費用対効果を論ずるため、「供給障害」が発生した場合の経済社会への影
響はどの程度深刻かを考察すべき。鉱物資源は減耗性、偏在性、希少性という本来的宿命を
持つが故に、その供給は資源保有国の国家戦略に左右される部分が大きい。したがって、供
給途絶や急激な価格変動が生じやすく、その影響は下流産業に伝わりやすい。資源に乏しい
大消費国である日本には大きな影響があるのではないか。
鉱物資源の供給障害の影響度を正確に把握するためには、製錬業だけでなく商社や地金
ユーザーも含めた企業の話を個別によく聴取することが必要。また、供給障害の影響を定量
的かつ客観的に評価するため、鉱種毎の代替性も考慮しつつ、「多部門一般均衡モデル」に
よるシミュレーション分析を行うべき。
(3) 対日差別価格の有無
鉱物資源の安定供給を阻害する要因として、非鉄メジャーの国際的寡占の影響、特に対日
差別価格は存在するのかを把握すべき。鉱物資源の市場は完全競争が達成されておらず、政
治的な力が大きく働くが故に、対日差別価格は存在するのではないか。日本の鉱山・製錬企
業が自山鉱比率を高めようとするのは、かかる問題を回避するためでもあるのではないか。
しかしながら、非鉄メジャーも民間企業である以上、その寡占が如何に進もうと、その本社
がどの国にあろうと、特定の買い手国だけが不公正な配分を強いられるとは常識的には考え
にくい。
LME対象地金の対日ローカルプレミアム価格に限れば、国内に高品質の地金を供給でき
る製錬所が存在するが故に、日本は売り手市場とはなっていない。すなわち、国内製錬所の
存在が対日プレミアムの抑制に貢献していると言えるのではないか。実際、アルミニウムの
対日プレミアムは1987年に国内製錬所が消滅した直後に急騰した。
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(4) 政策のあり方
鉱物資源の安定供給を確保するために、政府が市場機能だけに任せずどこまで介入すべき
かを考察すべき。政府介入すべきケースとしては、常時市場に介入(現代においてはあまり
現実的ではない)、価格高騰等の経済的非常時に介入、供給途絶等の絶対的非常時のみ介入、
価格高騰や供給途絶の可能性を低減するために介入、の4つが考えられる。ここから、政府
による情報収集・提供、技術開発、備蓄の必要性を導くことは、代替容易な鉱種を除けば難
しくはない。
一方、政府による探鉱支援については、鉱山・製錬企業の経営と安定供給との関係を説明
する必要がある。地金の安定供給確保だけでは不十分なのか。鉱石については自主開発や融
資買鉱がある程度なければ、国内の消費者や企業は急激な価格変動の衝撃を吸収できないと
言えるのか。
また、鉱物資源は減耗性を有するが故にその持続的な補填すなわち探鉱が必要であるとし
ても、それをなぜ日本政府が行わねばならないのか。これに対しては、安定供給政策とは供
給ソースの多角化・裾野拡大努力であり、このため資源保有国のカントリーリスク及び探査
リスクを低減する必要があることから、その一環として政府による探鉱支援の必要性も説明
できるのではないか。また、今後経済発展する中国が鉱物資源調達を巡り日本と競合関係と
なるであろう現実は、政策による探鉱支援の必要性を高めるのではないか。
加えて、ODAの供与や国際会議への参加を通じ、鉱物資源の大消費国として世界の資源
量増加と持続的発展に貢献することがひいては自らの国益につながると考えることも可能で
はないか。また、膨大な資源量を有する深海底の探査は企業では行えないので、政府が行う
意義はあるのではないか。
更に、そもそも「安定供給確保」を鉱物資源政策の目的に掲げるのは適当なのか。むしろ、
「産業競争力強化」、すなわち海外に移転できない国内の高付加価値部品産業にとって必須
の鉱物資源に対する支配力を高めたり、高品質のベースメタル地金を供給する国内製錬産業
の競争力を維持するという観点が適当なのではないか。
【テーマ2:環境問題への鉱業の貢献】
(1) リサイクルの経済性
鉱物資源のリサイクルすなわち廃棄物からの金属回収は、多くの場合、金属回収のみでは
ビジネスとして成り立たない。今日、廃自動車のシュレッダーダストや廃家電からの金属回
収が行われているのは、廃棄物の廃棄費用すなわち最終処分場の受入費用が日本においては
高額であるため、製錬所において廃棄物処理に併せて金属回収を行うのが次善の策として経
済合理的であるからではないか。
廃棄物処理に伴う金属回収は、金属の毒性による環境インパクトとエネルギー消費による
環境インパクトとのトレードオフの関係にある。環境負荷を増大させるリサイクルはナンセ
ンスである。最終処分場に埋め立てられている廃自動車や廃家電は、シュレッダー業者が
銅・アルミ等を回収した後、他の燃えないゴミと混合される。この鉱物資源を再処理するた
めには過大な費用とエネルギーがかかるため、いつまでもリサイクルされない状態にある。
したがって、廃棄物の資源としての品位を上げる観点から、ゴミの分別回収の徹底は重要で
ある。
(2) 非鉄製錬業の位置付け
日本の非鉄製錬業は日本の循環型社会形成のために、廃棄物処理やリサイクルのために重
要な位置を占めている。日本での金属リサイクルは収集・運搬・分別の人件費コストが高く、
1次製錬プロセスの活用がなければ経済的に成立しない。製錬所は重金属を処理する技術と
場所及び回収した金属の販路を持ち、一部は最終処分が可能な土地も有している。したがっ
て、もはや日本の製錬所は単に1次原料から金属素材を製造しているだけの場所ではない。
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仮に日本の非鉄製錬業が外国で操業することで企業としては生き残ったとしても、国内で操
業が止まれば廃棄物処理やリサイクルに重大な支障をきたす。
以上から、非鉄製錬の現場がなくなれば循環型社会構築など絵に描いた餅である。かかる
重要機能を有する国内製錬所を今後とも維持するために、政府は資源戦略すなわち探鉱支援
等を通じた精鉱確保を行うことが必要であるとも考えうるのではないか。これは、国内製錬
所が消滅した場合の重金属処理コストの試算をシミュレーションすることにより明らかとな
るのではないか。
(3) 政策のあり方
廃棄物の無意味・不合理な品位低下や異物混入を防止するため、政府はリサイクル法等の
制度を拡充強化し意図的に消費者、自治体及びメーカーに分別廃棄と収集を義務づけるとと
もに、減税等の措置によりリサイクル事業への支援を行うべきではないか。また、現時点で
リサイクルすることが経済合理的でない廃棄物については、無理にリサイクルせずに貯蔵さ
せるべきではないか。現在、廃棄物については統計がほとんど未整備であるので、政府は廃
棄物に関する基礎的調査と分析を通じ将来展望を示すべきではないか。
また、廃棄物処理とリサイクルの要としての国内製錬所を維持するため、政府は国内製錬
所が国際競争力を身につける技術開発を支援すべき。乾式製錬は硫酸の問題が大きいので、
これからは湿式製錬が中心となるのではないか。スラグ等副産物の徹底した有効利用技術も
重要となると考えられる。技術開発支援以外では、最終処分場の技術基準を大幅に強化する
ことにより処分費用を引き上げ、製錬所における廃棄物処理とリサイクルの採算性を向上さ
せることも有効ではないか。但し、これを我が国だけが過度に推し進めると、将来的に諸外
国との比較において国内経済へのマイナス要因ともなりうることに注意すべき。
なお、欧州では、鉱山への環境規制強化の動きを鉱山協会が積極的に捉え、逆にビジネス
チャンスを拡大するような対応をしている。環境適応型鉱山開発を進めるためには、政府は
単に廃棄物処理技術等による対応だけでなく、探鉱開発から始まるサイクルの中で常に環境
対策を意識し、これと結びついた探査、開発、生産等を促進することが必要ではないか。そ
れが結果として資源国のカントリーリスクを低減し、ひいては安定供給にもつながるのでは
ないか。
【テーマ3:非金属政策の体系化】
(1) 骨材問題の本質
現代日本の社会基盤はコンクリートで整備されている。コンクリート中の83%は骨材
(粗骨材=砕石、細骨材=天然砂及び一部砕砂)である。骨材消費は1972年の列島改造
論以降急伸し年間8億トンに達している。短期間にこれほど大量に消費された単一の資源は
他に例がない。問題は、コンクリート構造物は劣化するため60∼70年で再構築しなけれ
ばならないこと。近い将来、第2次コンクリート社会の構築に伴い、莫大な骨材需要が発生
することは間違いない。これに対し、現時点で既に国内の天然砂(海砂、山砂、陸砂)は枯
渇寸前の状況にある。例えば、関西の骨材需要の太宗を賄ってきた瀬戸内海の海砂は、沿岸
県の採取禁止措置により今後は供給が見込めない。千葉県の山砂も北海道の陸砂も採取場の
確保が困難化している。したがって、骨材の需給問題はコンクリートに依存する日本社会の
根底を揺るがしかねない重大問題と認識すべきではないか。
これに対して、今後、天然砂の需給が逼迫し価格が上昇すれば、中長期的には中国等近隣
諸国からの輸入、砕石からの砕砂、廃コンクリートからのリサイクル骨材等、代替資源の供
給が経済的に成立するようになるに過ぎないので、需給自体は問題たりえないのではないか。
むしろ、このような中長期的な需給構造の変化の見通しが国民に示されないが故に無用な混
乱を生じうることが骨材問題の本質ではないのか。
(2) 代替資源の現実性
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鉱物資源を輸入資源と自給資源に大別すれば、両者の差を決定づけるのは価格であり、経
験上その境界は概ね4000円/トンと推定されるので、砂が輸入資源となるには現在の2
∼3倍の価格高騰が必要となる。すなわち社会基盤の整備は現在の1/2∼1/3となる。
コンクリート社会を維持するための大原則は骨材の低価格大量供給であるので、輸入による
代替は現実的ではないのではないか。また、骨材に使用できる高品位の砂は地形的に日本の
ような島弧に最も豊富にあり、中国や韓国には豊富には存在しない。既に中国を除くアジア
諸国では砂問題は深刻化しており、中国においても今後急速な社会基盤整備に伴うコンク
リート需要増が予想されることから、近隣諸国からの輸入に長期間大量に依存できるかどう
かは疑問である。
また、砕石からの砕砂や廃コンクリートからのリサイクル骨材は、ある程度は代替しうる
が、現在の天然砂需要の全量を代替するには規模が小さすぎるのではないか。砕砂の生産に
は相当高額の設備投資が必要であり、高品位の砕砂を生産するための基礎研究も不十分な状
態である。リサイクル骨材は埋め立てや路盤材には利用できるが、コンクリートに用いるに
は強度が不十分である。また、リサイクル骨材の最大の問題は、いつどこでどれだけの廃材
が発生するかの見通しが立たないことにある。
更に、そもそも現実の骨材市場は複雑な因習や伝統や人間関係等に縛られた世界であり、
市場原理が通用しない面が多々ある。このような骨材市場が近代化・正常化するには長い年
月を要するため、市場原理に任せるだけでなく政府として対策を講ずる必要があるのではな
いか。
(3) 政策のあり方
骨材用の天然砂が枯渇寸前であり代替も現実的でないのであれば、政府や地方自治体は環
境配慮の一方で、砂利採取地の確保を積極的に行うべきではないか。このため、まずは高品
位骨材資源の分布を調査すべきであり、これについては産総研が平成13年度から6∼7年
計画で調査に着手したところである。また、骨材供給に対する地域住民の合意形成や、採石
場の誘導・指導に行政の強い取り組みが必要ではないか。特に、砕砂の供給を増大するため
には、景観を害さないような砕石場の建設を促すことが重要。具体的には、中小の砕石業者
に対し将来計画に基づく協調採掘を指導すべきではないか。
他方、今後中長期的に代替資源への移行が予測されるのであれば、政府は国内資源の限界
がいつ来るのか、輸入やリサイクルへの代替がどう進むのか、骨材価格がどう上昇していく
のかの見通しを国民に示し、再調整過程での混乱を未然防止すべきではないか。また、これ
まで無理な採取が行われてきたことに伴う跡地整備や環境保全問題も政府として取り組むべ
き課題ではないか。
【各論:具体的施策の提案】
(1) 鉱山開発へのリスクコミュニケーションの導入
原発や化学プラントの立地プロセスにおいて、企業は地域住民やNGO等様々な関係者と
適切なコミュニケーションをとることによって反対運動を起こされるリスクを抑制している。
このリスクコミュニケーションの視点は海外鉱山開発においても有効であり、鉱物資源政策
にもその視点を取り入れ、そのノウハウや経験則を蓄積すべきではないか。
(2) 鉱山開発への円借款の活用
途上国の鉱山開発や周辺インフラ整備に円借款を適用することは条件が整えば可能であり、
その前例もある。鉱物資源安定供給確保の観点から、政府は日本企業の参加する海外鉱山開
発プロジェクトへの円借款適用を積極的に検討すべきではないか。
(3) 鉱山技術の継承
日本には採鉱技術や選鉱技術等を有する人材が不足しており、それが企業の海外鉱山開発
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投資のネックの一つになっているのではないか。政府として鉱山技術者の育成をするべきで
はないか。その場合に必須となる現場経験の場を、国内鉱山が少なくなった現在は海外鉱山
に求めるしかないと考えられるが、これを如何に確保すべきか。
6.新規参加者大募集中
(1) 参加資格
鉱物資源及び鉱物資源政策に知見又は関心を有する者(肩書等不問)。
自分のメールアドレスを持っていることが条件。
(2) 参加方法
経産省鉱物資源課・児嶋にメールで、氏名、所属、メールアドレスを連絡。
連絡先:[email protected]
(3) 備考
入会金、会費等一切無し。発言義務無し(ROM歓迎)。入退会自由。
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