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(12) オルタナティブ農業の展望② - 京都大学 大学院経済学研究科・経済
2008年度後期 経済学部講義 国際農政論 (12) オルタナティブ農業の展望② ~有機農業・地産地消の可能性と課題~ 2009 2009.1.20 有機農産物・食品 有機農業とは何か? 農法的(技術的)側面 単に無農薬・無化学肥料農業というだけでなく (消極的理解)、植物 単に無農薬・無化学肥料農業というだけでなく(消極的理解)、植物 の栄養補給に自然の生物学的循環を活用し、それを歪める物質代 謝を可能なかぎり避けようとする農業 単に有機質肥料を投入するというだけでなく 、その適期・適量を守り、 単に有機質肥料を投入するというだけでなく、その適期・適量を守り、 自然の生物学的循環を損ねないような農業 昔の農業に戻るのではなく、植物生理学・育種学・土壌学・畜産学な 昔の農業に戻るのではなく、植物生理学・育種学・土壌学・畜産学な ど農業科学技術の成果を積極的に取り入れ、それを生かそうとする 農業・・・高度な管理技術の可能性をもった農業 社会的側面 環境問題や社会的正義 (農業労働者の権利)への対応 環境問題や社会的正義(農業労働者の権利)への対応 生産者と消費者との関係性 、双方の単なるニーズを超えた「意志」 単なるニーズを超えた「意志」 生産者と消費者との関係性、双方の S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 1 有機農産物・食品 有機認証・・・当該製品が「有機」であることを証明する手法 特別な市場で、より高い価格で販売される場合、利害関係者間で 特別な市場で、より高い価格で販売される場合、利害関係者間で 理解と信用が欠けていたり、生産者と消費者の間に「距離」がある 状況下で不可欠 状況下で不可欠 Í有機農業の当初の理念からの逸脱・飛躍… 有機農業の当初の理念からの逸脱・飛躍…? 有機基準・・・生産・取扱方法に関する要件 IFOAM(国際有機農業運動連盟)「基礎基準」 IFOAM(国際有機農業運動連盟)「基礎基準」 コーデックス委員会「有機食品表示ガイドライン」 認証プロセス 申請Æ Æ検査Æ Æ判定Æ 申請Æ申請書審査 申請書審査Æ 検査Æ報告書評価 報告書評価Æ 判定Æ認証発行 監視・検査・報告書提出Æ 監視・検査・報告書提出Æ認証再発行 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 有機農産物・食品 有機セクターの成立と成長 国際有機農業運動連盟IFOAM が主に統括 国際有機農業運動連盟IFOAMが主に統括 108ヵ国 750の団体・組織で構成 の団体・組織で構成 108ヵ国750 有機農業団体・組織 コンサルティング、トレーニング機関 有機流通・加工業者 有機認証組織 検査機関・独立検査員 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 2 有機農産物・食品 有機認証組織 有機認証システムの開発・運用は1970 年代から 有機認証システムの開発・運用は1970年代から 英・Soil 英・Soil Association= Association=1973年 1973年 米・CCOF (カリフォルニア認証有機農業者協会)=1973 1973年 年 米・CCOF(カリフォルニア認証有機農業者協会)= 世界全体で156 、有機検査組織は128 128( (2002年時点) 世界全体で156、有機検査組織は 2002年時点) 種類 ①通常の国家管理に統合されたもの ②政府の専門機関 ③利益集団の一つと関係するもの(農業生産者組合など) ④非営利協会が運営するもの ⑤複数の集団による組織・連盟 ⑥公益信託 ⑦民間企業 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 有機農産物・食品 有機表示(認証ロゴ) 民間の有機認証・・・任意、付加価値(高い社会的信用や名声) 公的な有機認証・・・法的規制(ミニマム・スタンダード) 大規模な有機農場、加工業者、卸小売業者によるPB 「有機ブラ 大規模な有機農場、加工業者、卸小売業者によるPB「有機ブラ ンド」・・・いずれかの有機認証をベースに S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 3 有機農産物・食品 有機認証の法制化 米国: 2002年「全国有機プログラム 年「全国有機プログラム 米国:1990年「有機食品生産法」、 1990年「有機食品生産法」、2002 (NOP)」で、認証は USDAに認可された州・民間機関が実施 に認可された州・民間機関が実施 NOP)」で、認証はUSDA EU: EU:1991年「有機規則 1991年「有機規則 EC Regulation 2092/91」に基づき、各加 2092/91」に基づき、各加 盟国が責任をもって実施 日本: 日本:1992年「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイ 1992年「有機農産物及び特別栽培農産物に係る表示ガイ ドライン」で表示適正化、2001 年4月の有機JAS 法施行で表示義 ドライン」で表示適正化、2001年 月の有機JAS法施行で表示義 務化 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 有機農産物・食品 有機認証のグローバル化(=標準化) 有機認証プログラムの相互承認 二重認証コストの軽減 国際流通の円滑化 有機認証組織の認定 一段上位にある第三者による認定 1992年「 IFOAM認定プログラム」 認定プログラム」 by 国際有機認定サービスIOAS 1992年「IFOAM 国際有機認定サービスIOAS 国際的な信用と相互承認 IFOAM認定ロゴの使用権 IFOAM認定ロゴの使用権 煩雑な認証手続きの必要性を軽減 国際流通の円滑化 有機認証組織・活動の多国展開(認証プログラムの「輸出」) Skal(蘭)、 ECOCERT(仏)、 (仏)、NASAA NASAA(豪)、 (豪)、Soil Soil Assoc. Skal(蘭)、ECOCERT Assoc.など S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 4 有機農産物・食品 コーデックス委員会「有機ガイドライン」(1999 年) コーデックス委員会「有機ガイドライン」(1999年) 基本的にIFOAM 基礎基準と同様の内容 基本的にIFOAM基礎基準と同様の内容 社会的に機能していたデファクト・スタンダードの政府機関による承認・ 制度化 「科学的根拠」に基づく品質・安全基準の制定を志向 「有機」は本来、品質(プロダクト)基準ではなくプロセス基準に基づく表 示だった。つまり、有機表示は本来、「この有機ガイドラインを遵守して いることを、然るべき認証団体によって認証されたものである」ことを保 証するためのもの その意味で、コーデックス規格の性格と異質? 食品安全基準などを国際規格に整合化することを義務づけている WTO・ WTO・SPS協定との関係 SPS協定との関係 非関税障壁とみなされWTO 紛争処理パネルに提訴される可能性 非関税障壁とみなされWTO紛争処理パネルに提訴される可能性 これを避けるため、全体として下方標準化される可能性が大 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 有機食品市場の成長 有機食品市場の成長 消費者の環境問題や食品安全性、健康、栄養への関心 2006 億㌦(Í Í 2000年 2006年の販売総額=約386 年の販売総額=約386億㌦( 2000年180億㌦) 180億㌦) EU: 46億㌦、英国 億㌦、英国28 28億㌦、イタリア 億㌦、イタリア19 19億㌦、フラ 億㌦、フラ EU:52% 52%、200億㌦(ドイツ 200億㌦(ドイツ46 ンス17 億㌦など) ンス17億㌦など) US: US:41% 41%、160億㌦ 160億㌦ 農業生産全体に占める割合はまだ小さい 有機認証された農場(2006 年、IFOAM IFOAM資料) 資料) 有機認証された農場(2006年、 世界全体で138 ヵ国、70 70万戸、 万戸、3,040 3,040万 万ha、 世界全体で138ヵ国、 ha、0.65% 0.65% 1.リヒテンシュタイン:29.1 %、2.オーストリア:13.0 %、3.スイス: リヒテンシュタイン:29.1% オーストリア:13.0% %、、、20.ドイツ:4.8 %、、、23.英国:3.8 %、、、 11.8% 11.8%、4.イタリア:9.0 イタリア:9.0% ドイツ:4.8% 英国:3.8% 32.フランス:2.0 % ※EU27 ヵ国平均4.0 4.0% % フランス:2.0% EU27ヵ国平均 29.豪州:2.8 %、、、52.米国:0.5 %、、、54.韓国:0.4 %、、、78.日本:0.2 % 豪州:2.8% 米国:0.5% 韓国:0.4% 日本:0.2% 高い成長率 Î市場飽和化と過当競争にあえぐ食品業界にとっての魅力大 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 5 有機食品市場の成長 流通チャネルの変化 専門店・直接販売に加え、一般小売店での販売が拡大 Wal2006年 年3月) Wal-Martが参入( Martが参入(2006 日本ではイオングループのPB 「トップバリュ」など 日本ではイオングループのPB「トップバリュ」など 有機食品企業のM&A や有機事業部門の設立を通じた多国籍アグリビジ 有機食品企業のM&Aや有機事業部門の設立を通じた多国籍アグリビジ ネスの参入 General Mills( 99年に 年にMuir Muir Glen買収) Mills(95年~有機ブランド、 95年~有機ブランド、99 Glen買収) H.J.Heinz( Hainへ資本参加、 へ資本参加、02 02年~有機ブランド) 年~有機ブランド) H.J.Heinz(99年に 99年にHain Kellogg( Natural Touch等を買収) Kellogg(99年~ 99年~Natural Touch等を買収) Kraft Boca Foods等を買収) Kraft Foods( Foods(00年~ 00年~Boca Foods等を買収) ConAgra( Lightlife買収、 買収、05 05年~有機ブランド) 年~有機ブランド) ConAgra(00年に 00年にLightlife Odwalla買収) 買収) CocaCoca-Cola( Cola(01年に 01年にOdwalla Dole( Dole(01年~有機ブランド) 01年~有機ブランド) PepsiCo( PepsiCo(03年~有機ブランド) 03年~有機ブランド) Unilever( ( 03年~有機ブランド) Unilever 03年~有機ブランド) Cadbury Schweppes( 05年に 年にGreen Green & Black’ Schweppes(04年~有機ブランド、 04年~有機ブランド、05 Black’s買収) S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 6 有機食品市場の成長 どう評価すべきか? 一方で・・・ 有機農業・食品の価値(意義)が広く認知され、多種多様な有機商品が 手頃な価格で購入できるようになる 他方で・・・ 有機農産物貿易の拡大・・・食材の季節感・地域性の喪失、遠隔流通 にともなう環境負荷 有機ジャンクフードの登場 有機市場での競争Î 有機市場での競争Î品質競争から価格競争へÎ 品質競争から価格競争へÎ生産費用・取引費用 の削減圧力 有機認証基準の緩和要求 「規模の経済」を発揮できない独立系専門企業や中小有機農業経 営の淘汰 有機農業の理念から逸脱・乖離する生産実態 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 オルタナティブな取り組み オルタナティブな農業・食料システムの岐路 新たな「品質」概念の導入・・・環境的/社会的な正義 フェアトレード 有機食品 総じて倫理的調達 オルタナティブが本来めざしていた対抗軸・・・「地域」 農と食のあり方(大規模・長距離・工業的なそれからの脱却) 地域に根ざした食生活・食文化の再評価 地域社会・農村社会の担い手としての家族農業の擁護 環境保護や食品安全性はそれらの結果として達成されるもの S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 7 オルタナティブな取り組み① ファーマーズ・マーケット 都市の広場や公園等の公共空間で、生産者が消費者に直接販売 する「市(いち)」 消費者にとってのメリット 地元の新鮮で安全な農産物の手頃 な価格での入手 地元の新鮮で安全な農産物の手頃な価格での入手 売り手と買い手が直接に交流できる「顔の見える」市場 農業生産者にとってのメリット 小ロットや規格外の農産物でも販売できる とくに中小規模経営にとって重要な所得源になりつつある 地域社会にとってのメリット 新鮮で栄養価の高い食料を手に入れたい都市住民の需要 食と栄養について都市住民を教育する役割 地域経済の活性化と雇用の確保(所得の域内循環) 社会政策の一環=低所得高齢者向けの栄養援助プログラム S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 オルタナティブな取り組み② 地域支援 農業(Community Community Supported Agriculture, CSA) 地域支援農業( CSA) 1990年代に米国で急速に拡大してきた、農業生産者と消費者の提 1990年代に米国で急速に拡大してきた、農業生産者と消費者の提 携活動 ルーツは日本の産直運動(ex. ルーツは日本の産直運動(ex. 1970年代後半~京都「地域食糧確立 1970年代後半~京都「地域食糧確立 運動」、京都府下の農協・漁協と京都生協との産直協定が見本となっ て全国に拡大) 基本的な考え方 地域の農業生産者と消費者を結びつけること 地域内の食料供給の拡大、地域経済の活性化とコミュニティの維持、 農地の保全など CSAの基本的な方法 ――消費者が前払いでシェア(出資株)を購入し、 消費者が前払いでシェア(出資株)を購入し、 CSAの基本的な方法―― その見返りとして一定の農産物をボックス方式等によって定期的に受 け取る Î 「責任ある関係」の構築 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 8 オルタナティブな取り組み② 農業生産者にとってのメリット 農産物に対する確実で安定した市場を確保 収穫に先立って支払いを受けられる 消費者会員向けÆ 消費者会員向けÆ多品目少量生産を志向Æ 多品目少量生産を志向Æ農業の多様性を促進 消費者にとってのメリット 季節の新鮮な食料を安い価格で購入できる 食料がどこでどのように栽培されるかについての知識・情報を得られる 都市消費者に農業生産者、土地と再結合する機会を提供する 社会政策の一環=低所得高齢者向けの栄養援助プログラムとしての 位置づけ S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 オルタナティブな取り組み③ スローフード運動 1989年にイタリアで誕生 1989年にイタリアで誕生 2006年時点で、世界 104ヵ国、約 ヵ国、約80,000 80,000人 人の会員 2006年時点で、世界104 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 9 オルタナティブな取り組み③ Philosophy We believe that everyone has a fundamental right to pleasure and consequently the responsibility to protect the heritage of food, food, tradition and culture that make this pleasure possible. possible. Our movement is founded upon this concept of ecoeco-gastronomy – a recognition of the strong connections between plate and planet. planet. Slow Food is good, good, clean and fair food. We believe that the food we eat should taste good; good; that it should be produced in a clean way that does not harm the environment, animal welfare or our health; health; and that food producers should receive fair compensation for their work. work. We consider ourselves coco-producers, producers, not consumers, because by being informed about how our food is produced and actively supporting those who produce it, we become a part of and a partner in the production process. process. S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 オルタナティブな取り組み④ 農民組織の国際ネットワーク( 農民組織の国際ネットワーク(La Via Campesina) Campesina) 1993年に設立、アジア、アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパの中小 1993年に設立、アジア、アフリカ、南北アメリカ、ヨーロッパの中小 規模農業生産者、農業労働者、農村助成、先住民コミュニティなど の組織の連絡調整 平等で社会的に公正な経済関係、土地の保全、食料主権、持続可 能な農業生産、中小規模の農業生産者を基礎とした平等を促進 食料主権(Peoples 食料主権(Peoples’’ Food Sovereignty) Sovereignty) 「農業と食料はすべての人々にとっての基本条件である。生産の点で も、十分な量の安全で健康な食料を手に入れるという点でも、また健 全なコミュニティ、文化や環境の基礎としても。」 全なコミュニティ、文化や環境の基礎としても。」 これらが米国政府、EU やWTO、 これらが米国政府、EUや WTO、IMF、世界銀行によって推進されて IMF、世界銀行によって推進されて いる新自由主義的な経済政策によって危うくされているとし、食料と農 業に関するすべての事項をWTO の管轄からはずし、これに代えて食 業に関するすべての事項をWTOの管轄からはずし、これに代えて食 料・農業の持続的な生産と貿易についての多国間規制の国際的枠組 みを創出することを要求 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 10 日本での取り組み① 産直運動 京都の経験(1970 年代末~) 京都の経験(1970年代末~) 産直三原則 生産地と生産者が明確であること 栽培方法が明確であること 生産者と消費者が交流できること 多様な産直形態の発展 協同組合間産直 農民組合の産直センター 消費者組織や小売業者が主導する産直 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 日本での取り組み② 地産地消(「地場生産、地場消費」) 諸形態 ファーマーズ・マーケット 農産物直売所(道の駅など)・・・全国1 )、但し、 農産物直売所(道の駅など)・・・全国1万カ所(常設は約3000 万カ所(常設は約3000)、但し、 「地産地販」 地域支援型農業(地域レベル or 地域同士の生消提携) 行政的支援の拡大(農水省) 全国地産地消推進協議会の設置(2007.1 ) 全国地産地消推進協議会の設置(2007.1) 広報誌「地もの大好き 地産地消」を刊行(2006.12 ) 地産地消」を刊行(2006.12) 今年度の地産地消特別対策予算=7.94 億円 今年度の地産地消特別対策予算=7.94億円 地域における地産地消推進計画の策定数を全国900 地区へ 地域における地産地消推進計画の策定数を全国900地区へ 学校給食における地場産品使用割合をH 3割以上へ 学校給食における地場産品使用割合をH22までに 22までに3 これ以外に、間接的に関連する施策は多数 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 11 日本での取り組み 学校給食や食農教育との連携 完全学校給食を実施する単独調理方式の小中学校の76.6 % 完全学校給食を実施する単独調理方式の小中学校の76.6% で地場農産物を「恒常的に使用」、6.8 6.8% % で「試験的に使用」、 で地場農産物を「恒常的に使用」、 「3年前に比べて増えた」が56.0 %、「今後増やしたい」が 年前に比べて増えた」が56.0% 76.4% % 76.4 直接的な背景 1998年=学校給食米に自主流通米の使用が認められた 1998年=学校給食米に自主流通米の使用が認められた 2001年=学校給食米への助成措置廃止 Î米飯給食回数の減 2001年=学校給食米への助成措置廃止Î 少を懸念した行政・農業団体が、地場産利用を条件に助成措置。 以降、他の食材でも地産地消が拡大 埼玉県、秋田県など 愛媛県今治市、東京都日野市、高知県南国市など S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 日本での取り組み③ 大豆畑トラスト運動 日本消費者連盟に設置された「遺伝子組換え食品いらない!キャン ペーン」の呼びかけで、1998 年にスタート ペーン」の呼びかけで、1998年にスタート 運動の背景 日本型食生活の要である大豆の自給率・・・わずか4 日本型食生活の要である大豆の自給率・・・わずか4% 輸入される遺伝子組換え大豆の安全性への不安 失われつつある多様な在来種の保全への関心 拡大する転作田や耕作放棄地の活用 行政的取り組みをも促進(国産大豆普及) 課題 生産者負担(コストと手間)、消費者負担(価格)、関心の移ろい 消費者ピーク=99 年6000人、生産者ピーク= 00年 年57団体、現在は 41 消費者ピーク=99年 6000人、生産者ピーク=00 57団体、現在は41 カ所で交流活動 品目横断別対策にともなう大豆振興策の後退 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 12 日本での取り組み④ 伝統食を考える会 1981年に大阪市東淀川区で発足、現在の会員は全国 600人余り、 人余り、 1981年に大阪市東淀川区で発足、現在の会員は全国600 機関誌発行部数1500 部 機関誌発行部数1500部 主な活動内容 系統的な伝統食の学習と料理実習・交流の拡大・深化 産直や学校給食(子どもの食生活)の問題ともリンク 関西を中心に大学生協とも協力した大学生対象の「食生活相談」 地域農林漁業と伝統食の見学会、視察旅行・交流会の開催 機関誌「伝統食だより」の発行と調査・出版活動 行政、農民組合、消費者団体(消団連、食健連)、大学生協連などと 連携した活動 伝統食列車の取り組み―― 1988~ ~89年に全国を縦断した米国食 伝統食列車の取り組み――1988 89年に全国を縦断した米国食 料戦略の一環である「アメリカン・トレイン」に対抗、1992 年から続け、 料戦略の一環である「アメリカン・トレイン」に対抗、1992年から続け、 2002年の第 13号列車は京都 号列車は京都、 、2006年は沖縄 2002年の第13 2006年は沖縄 S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 まとめ (1)関係性 (1)関係性 市場における「商品と商品との取引関係」の背後にある、「人と人と 市場における「商品と商品との取引関係」の背後にある、「人と人と の関係」や「 人と自然との関係」「 」「人と社会との関係 人と社会との関係」への反省 」への反省 の関係」や「人と自然との関係 商品世界の関係(経済システム)が生活世界の基本である食の領 域に侵入し、それを覆い尽くすことへの抵抗 生産者と消費者、人と自然とが共生 できる関係をいかに確立してい 生産者と消費者、人と自然とが共生できる関係をいかに確立してい くか S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 13 まとめ (2)自己決定 (2)自己決定 多国籍アグリビジネスによる農業・食料支配と市場独占によって、 生産者と消費者の双方にとって選択の自由が実質的に奪われてい 生産者と消費者の双方にとって選択の自由が実質的に奪われてい る状況 新自由主義イデオロギーは「選択の自由」を主張 多国籍アグリビジネスは政府から多額の補助金を受け取りながら、 生産者と消費者をサポートする施策の後退と規制の緩和が進行 新自由主義イデオロギーは「自助自立」を主張 「食についての自己決定」ができる条件 と力量をいかに獲得してい 食についての自己決定」ができる条件と くか S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 まとめ (3)パートナーシップ (3)パートナーシップ 食と農に関わる国際的な運動・・・ 生産者と消費者が対等な立場で 食と農に関わる国際的な運動・・・生産者と消費者が対等な立場で 関係を結び、分権的なネットワーク型組織として展開 しかし… しかし… オルタナティブをとりまく厳しい現実、課題と展望 所詮は(リッチな)「ニッチ」にとどまっているのではないのか? conventionalisationの危うさも conventionalisationの危うさも それでも、市場だけに依存しない新しい経済社会関係の萌芽、公 正なルールに基づく新しい市場関係の形成 可能性を見いだせるの 正なルールに基づく新しい市場関係の形成可能性を見いだせるの ではないか? S.Hisano, .Hisano, Political Economy of Agriculture, Kyoto University, 2008 14