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保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント

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保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント
保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント
Assessment of Cognitive Distortions in Sexual Offenders on Probation or Parole
勝田 聡
KATSUTA Satoshi
要旨 性犯罪者処遇は、子どもや女性についての性的な認知の歪みの変容を図ることが、
改善更生のために有益であるという仮説を前提としている。しかし、現段階において、性
犯罪者の認知の歪みの概念は、一定のコンセンサスに至っていない。また、日本の保護観
察所においては、性犯罪の保護観察対象者の認知の歪みを測定する質問紙調査を行ってい
るが、回答結果の評価方法や、どのように保護観察処遇に生かすかが明らかではない。本
研究では、認知の歪みに関する先行研究を調査し、保護観察官が性犯罪者のアセスメント
において重視すべき 3 つの事項を指摘した。すなわち、 1 )質問紙の限界を意識し、質
問紙への回答結果の背景要因を探求すること、 2 )質問紙が性犯罪の正当化の有無や程
度を尋ねていることを意識すること、 3 )質問紙で問うている認知の歪みが一般的な被
害者についてのものなのか、自分の犯罪行為の被害者についてのものなのかを識別するこ
と、である。
1 .問題と目的
1.1. 犯罪者の考え方、態度、ビリーフ
日本においても、欧米においても、政府機関は、犯罪をした人の改善更生を図り、再犯
を防止することを目的として、刑事施設等における施設内処遇や社会内処遇を実施してき
ている。特に欧米諸国の研究者や実務家達は、効果的な犯罪者処遇のあり方を理論的ある
いは実証的に探求してきている。近年では、処遇の実施者は、犯罪行動の原因や背景事情
となっている要因を明らかにし、その要因に焦点を当てることが重要であるとされている
(Andrews & Bonta, 2010)。
犯罪の要因の一つとして、従来から、犯罪者特有の考え方、態度、ビリーフの存在が指
摘されてきている。たとえば、Sykes & Matza(1957)は、非行少年が、犯罪行動を不適切
に正当化しているとし、これを中和の技術(techniques of neutralization)と呼んだ。Sykes
& Matza(1957)は次の 3 点を指摘している。 1 )中和の技術には、責任の否定、加害の
否定、被害者の否定、懲罰者の断罪、より高い忠誠の表現という 5 つの分類がある。 2 )
非行少年は、
社会規範に逆らう考え方を持っているが故に中和の技術を用いるのではなく、
社会規範を容認した上で犯罪の不適切な正当化を行っている。 3 )非行少年は、中和の技
術を用いることによって、犯罪行動を事後的に合理化し、その結果、その後の逸脱行動が
行いやすくなる。
Gibbs(2003)は、非行少年には道徳的発達の遅れがあると論じている。具体的には、
子どもの道徳的な発達は、 1 )正当性を力の強さや罰の有無で判断する段階、 2 )道徳性
を善意や悪意の等価的な交換として判断する段階、3 )信頼と相互的援助を重視する段階、
4 )社会のための相互依存と協調を重視する段階という 4 つの段階を通じて達成される。
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保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント(勝田)
しかし、非行少年は第 2 段階に止まることが多いという。さらに、Gibbs(2010)は、非
行 少 年 に は、 道 徳 的 発 達 の 遅 れ に 加 え て、 自 己 保 護 的 認 知 の 歪 み(self-serving
distortions)
、社会的スキルの不足という 3 つの特徴があるとしている。Gibbs(2010)が提
唱した自己保護的認知の歪みという概念は、次のようなものである。すなわち、非行少年
は、自己保護的認知の歪みによる合理化をして、自己中心性と反社会的行動を幼少時から
維持し、強化してきている。自己保護的認知の歪みは、自分の反社会的行動と善い人間で
あるという自己像との認知不協和(Festinger, 1957 末永訳 1965)を解消する機能を果
たしており、 1 )他罰(被害者に対する非難など)
、 2 )最悪の仮定(最悪のシナリオを
必然的であるかのように考える)
、 3 )レッテル貼りの誤り(被害のわい小化、被害者を
蔑むなど)の 3 種類がある。
Gibbs(2003、2010)による道徳的発達の理論に対して、Bandura(1991)は、道徳的に
不正な行動は自己統制の観点から説明すべきであるとしている。Bandura(1991)の自己
統制の議論をまとめると次のようになる。まず、人間が逸脱行動をしないのは、社会的な
制裁と内面的な自己非難を回避しようとするからである。人間の逸脱行動は、自己統制を
解くことによって促進される。たとえば、強姦犯罪者は、女性蔑視等の社会的要因のほか、
被害者の非人格化、被害者への非難、結果のわい小化といったことによる自己非難の緩和
によって自己統制を解放している。
以上の、Sykes & Matza(1957)の中和の技術、Gibbs(2010)の自己保護的認知の歪み、
Bandura(1991)の自己非難の緩和という理論は、いずれも、犯罪をする人には、犯罪を
促進するような特有の考え方、態度、ビリーフがあるとしている点で一致している。
欧米諸国の研究者達は、性犯罪者についても、性犯罪者特有の考え方、態度、ビリーフ、
すなわち認知の歪みがあると論じてきている。欧米諸国でも日本でも、性犯罪者処遇の実
務家達は、
性犯罪者の改善更生のためには、
認知の歪みの変容を目的とした働きかけによっ
て再犯を一層抑止できるという仮説を前提として、性犯罪者処遇を行っている。たとえば、
カナダでは、性犯罪者処遇プログラムのうち91%が、逸脱した性的態度(強姦神話、被害
者 へ の 非 難) に 処 遇 の 焦 点 を 当 て、 認 知 再 構 築 を 実 施 し て い る(Wormith & Hanson,
1992)。しかし、後述するように性犯罪者の認知の歪みの概念の具体的な内容は、研究者
によって異なっている。加えて、日本の保護観察所は、性犯罪者処遇プログラムにおいて、
保護観察対象者の認知の歪みを明らかにするための質問紙を用いているが、質問紙への回
答結果得点の高低や項目による相違を、保護観察官がどのように評価すべきかに関する指
針を明らかにしていない。質問紙への回答結果を踏まえた保護観察処遇上の留意事項も示
されていない。
そこで、本研究においては、性犯罪者の認知の歪みに関する先行研究を調査し、認知の
歪みの研究状況を明らかにし、保護観察所の性犯罪者処遇における留意事項について論じ
ることを目的とする。
2 .先行研究の調査結果
2.1. 子どもを被害者とする性犯罪者の認知の歪み
犯罪者の認知の歪みという概念を、性犯罪者に適用したのは、Abel, Becker, & Rathner
(1984)である。Abel et al.(1984)の議論をまとめると、次のようになる。子どもは、発
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人文社会科学研究 第 28 号
達過程において逸脱した性的興奮を体験したときに、逸脱した性的興奮を合理化し、自己
否定を回避することがある。このような合理化を繰り返すと、性的逸脱行動が固着化する。
この合理化には 7 つの例があり,子どもを被害者とする性犯罪者に特徴的に見られるもの
である。すなわち、 1 )抵抗しなかった子どもは性行為を望んでいる、 2 )大人との性行
為は子どもの性教育になる、 3 )子どもは本当は性行為を楽しんでいる、 4 )将来的には
子どもとの性行為は社会的に正当化される、 5 )触るだけならば子どもにはたいした害は
ない、 6 )性行為に関する質問をする子どもは大人との性行為を望んでいる、 7 )性行為
によって子どもとの関係が深まる、という考え方である。これらを性犯罪者の認知の歪み
(cognitive distortion)と呼ぶ。
認知の歪みという言葉は、当初、犯罪者処遇の分野ではなく、Beck(1963, 1964)がう
つ病治療の分野において提唱したものである。Beck(1963, 1964)が提唱した認知の歪み
の理論は次のようなものである。うつ病患者には、低い自己評価、喪失感、問題の過剰視、
自己批判、自制、逃避、希死念慮という典型的な特徴がある。うつ病患者は、これらの特
徴的な状態が発生するプロセスにおいて 3 つの特徴的な認知を示す。すなわち、 1 )誤っ
た論理的推理、 2 )過大視、わい小化、 3 )不適切なレッテル貼りである。これらは、現
実的で論理的な思考から逸脱した構造となっている。このような構造(認知の歪み)は、
態度、ビリーフ、仮説を形成し、認知的構造(スキーマ)として固着化する。したがって、
うつ病患者の心理療法においては、患者の非論理的・非現実的な結論や価値観について患
者と議論することを通じて、患者がより論理的・現実的な判断ができるよう援助すること
が有益である。
Abel et al.(1984)の性犯罪者の認知の歪みの概念と、Beck(1963, 1964)のうつ病患者
の認知の歪みの概念は、
非合理的あるいは非現実的な認知であることでは類似しているが、
前者は犯罪行動の原因とされている一方で、後者は情動的な抑うつ状態の原因とされてい
る点では、明らかに異なっている。Maruna & Mann(2006)によれば、Beck(1963)のう
つ病患者の認知の歪みの概念は、患者に特有の歪んだ思考の内容を意味していたが、Abel
et al.(1984)の性犯罪者の認知の歪みの概念は、わいせつ行為を合理化するために用いら
れる内的過程であり、正当化、観点、判断を含むものに変化している。
欧米諸国の研究者達は、性犯罪者の認知の歪みに焦点を当てた実証研究を積み重ねてき
ている。まず、Abel, Gore, Camp, Becker, & Rathner(1989)は、子どもを被害者とする性
犯罪者を対象とする質問紙Abel and Becker Cognitions Scaleを開発し、子どもを被害者とす
る性犯罪者、その他のパラフィリックな性犯罪者、性犯罪者ではない学生等に実施した。
その結果、子どもを被害者とする性犯罪者は、非犯罪者よりも有意に高い回答の得点を示
し た。 同 じ 質 問 紙 を 用 い た 研 究 は、Marshall, Hamilton, & Fernandez(2001)
、Stermac &
Segal(1989)も行っており、子どもを被害者とする性犯罪者の回答の得点が、性犯罪では
ない犯罪者や、非犯罪者よりも有意に高いという結果が示されている。
Bumby(1996) は、Abel and Becker Cognitions Scaleを 改 良 し た 質 問 紙 で あ るMOLEST
Scaleを開発し、検証を行った。その結果、子どもを被害者とする性犯罪者は、強姦犯罪
者や一般の犯罪者よりも、得点が有意に高かった。MOLEST Scale については、多くの追
試がなされている。たとえば、Blumenthal, Gudjonsson, & Burns(1999)は大人を被害者と
する性犯罪者との比較において、Marshall, Marshall, Sachdev, & Kruger(2003)は財産犯罪
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保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント(勝田)
者や非犯罪者との比較において、Feelgood, Cortoni, & Thompson(2005)
、Pervan & Hunter
(2007)は強姦犯罪者や暴力犯罪者との比較において、Arkowitz & Vess(2009)は強姦犯
罪者との比較において、いずれも、子どもを被害者とする性犯罪者の回答結果の得点のほ
うが有意に高いことを見出してきている。ただし、MOLEST Scale は 1 点から 4 点の 4 段
階による38項目の質問紙なので、最低点は38点、最高点は152点であり、尺度上の中央値
は95点であるが、子どもを被害者とする性犯罪者の回答結果は、Arkowitz & Vess(2009)
では68.6、Blumenthal et al.(1999)では80.1、Feelgood et al.(2005)では63.0、Marshall et
al.(2003)では66.0、Pervan & Hunter(2007)では65.0となっており、中央値よりも低い。
2.2. 強姦犯罪者の認知の歪み
強姦犯罪者の認知の歪みに関する研究に先鞭を付けたのは、Burt(1980)である。Burt
(1980)は、フェミニズムの立場から、強姦の行為、被害者及び加害者への社会的・文化
的な偏見、ステレオタイプあるいは誤ったビリーフの存在を指摘し、それを強姦神話(Rape
myths)と呼んだ。具体的には、たとえば、
「悪い女性だから強姦されるのだ」
、
「被害者が
本当に嫌なら抵抗できたはずだ」
、
「被害者は本当は強姦を望んでいた」
などの内容である。
さらに、Burt(1980)は、強姦神話に関する質問紙(Rape Myth Acceptance Scale)を開発し
た。ただし、この研究では、性犯罪者とその他の者との相違を検証していない。
強姦犯罪者についても、子どもを被害者とする性犯罪者と同様に、質問紙を用いて認知
の歪みを測定する実証研究がなされてきている。使用されている質問紙は、たとえば、
Attitude Toward Women Scale(Spence, Helmreich, & Stapp, 1973)、RAPE Scale(Bumby,
1996)を挙げることができる。Attitude Toward Women Scale を使用した研究では、強姦犯
罪者は暴力犯罪者や非犯罪者よりも有意に回答の得点が高いとする研究(Scott & Tetreaut,
2001)がある一方で、強姦犯罪者と、他の犯罪者あるいは非犯罪者との有意差が認められ
なかった研究(Marolla & Scully, 1986; Segal & Stermac, 1984)もある。RAPE Scale を使用
した研究においては、強姦犯罪者と、他の犯罪者・非犯罪者との有意差が認められなかっ
たという結果(Bumby, 1996; Feelgood et al., 2005; Pervan & Hunter, 2007)のほか、子どもを
被害者とする性犯罪者よりも強姦犯罪者のほうがむしろ有意に回答の得点が低い(すなわ
ち、歪みがより小さい)という結果も示されている(Arkowitz & Vess, 2009)
。このように、
強姦犯罪者の性的な認知の歪みが大きいかどうかは、一定の結果が得られてはいない
(Fisher & Beech, 2007; Langton, 2007)
。
日本の性犯罪者の性的認知の歪みについては、大淵・石毛・山入端・井上(1985)が、
Rape Myth Acceptance Scale を改編した質問紙調査を行っている。ただし、この研究は被験
者の数が少ないという限界がある。
2.3. 性犯罪者の認知の歪みの概念の明確化
性犯罪者の認知の歪みの概念には、多くの批判がなされてきた。たとえば、Thakker,
Ward, & Navathe(2007)は、認知の歪みの理論的な説明が十分になされてきていないとし、
特に、認知の歪みが固定的なビリーフの構造なのか、行動と態度の不協和を減少させる一
時的な作用なのかが、明らかではないと主張している。Ward, Keown, & Gannon(2007)は、
認知の歪みがビリーフの構造を示すものか、犯罪を実行する時の自己弁護か、あるいは、
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人文社会科学研究 第 28 号
犯罪後に社会的非難を免れるための言い訳なのかが明らかではないと批判している。
Langton(2007)も、認知の歪みが情報処理過程のエラーなのか、意図的な情報解釈の誤
りなのか、明らかではないとしている。
このような批判を踏まえ、認知の歪みの概念の明確化が試みられてきている。Marshall,
Marshall, Serran, & O’Brien(2011)は、再犯に関係する認知の歪みは、性的加害への寛容
さや子どもへの情緒的同一化の態度などのごく一部の認知に限られると述べている。
Maruna & Mann(2006)や Ward, Gannon, & Keown(2006)は、犯罪を支持する態度(たと
えば、「子どもが大人との性行為を望んでいた」
)と事後的な犯罪の正当化を区別し、前者
が再犯に関係するものであると論じている。Dean, Mann, Milner, & Maruna(2007)は、再
犯防止のためには、 1 )犯罪支持的態度、 2 )自己洞察を妨げるような認知、 3 )固定的
で変化を妨げるような認知、 4 )犯罪に対する脆弱性を強めるようなスキーマに関係する
ビリーフに焦点を当てるべきであるとしている。Ward et al.(2007)は、認知の歪みが、
単に、非難を回避するためのものであれば、自分が本当は悪い人間ではない、という主張
であると捉え、将来に向けて、再度過ちを犯さないために動機付けを高めることが有益で
あると指摘している。同様に、Ware & Mann(2012)も、言い訳や犯罪の正当化は、再犯
の意志があることを示すというよりも、犯罪を認めてしまうことを恐れていたり、自尊心
を保とうとすることから生じるものであって、正常で健康的な反応であると述べている。
2.4. 認知的構造や認知的なプロセスに着目した認知の歪みの理論
認知の歪みの概念への上述の批判に対して、概念の明確化よりも、認知の歪みの背景に
ある認知的構造やプロセスに注目すべきであるとする主張もなされている(e.g., Langton,
2007; Maruna & Mann, 2006; Ward et al, 1997)
。
2.4.1. 認知的構造に着目したモデル
Ward & Keenan(1999)は、子どもを被害者とする性犯罪者は特徴的な潜在的セオリー
(Implicit Theory)を持っている傾向があるとの仮説を提唱した。具体的には、 1 )性的
な存在としての子ども、 2 )加害の本質(加害を低く見積もり、あるいは愛情表現と考え
る。)
、 3 )危険な世界、 4 )統制不能、の 4 つである。Polaschek & Ward(2002)は、従
来の質問紙による研究成果を分析し、強姦犯罪者にも特徴的な潜在的セオリーがあるとの
仮説を提示した。その内容は、 1 )女性の言動への不信、 2 )女性の性的道具視、 3 )性
的権利意識、 4 )男性の性的衝動のコントロール不能、 5 )危険な世界、の 5 つである。
Polaschek & Ward(2002)によれば、性犯罪者の中には、幼少時における虐待経験や重
要な他者を喪失した体験を背景に潜在的セオリーを発達させ、多くの場合は無自覚に、外
界から得られた情報を潜在的セオリーに基づいて解釈し、不適応的な行動に至っている人
が少なくないという。Ward(2000)によると、認知の歪みとは、潜在的セオリーを状況に
適用し、その適合性を評価するときに生じるものである。
以上のような潜在的セオリーの理論に対して、Mann & Beech(2003)は、スキーマの概
念を提唱している。その内容をまとめると次のようなものである。人は、発達過程におい
て、人生経験を解釈するためのスキーマを発達させる。スキーマとは、類似するテーマや
パターンについてのビリーフや態度を含んだ構造体である。スキーマには、自分自身や、
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保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント(勝田)
自分と他者や周囲の世界との関係をどう理解するかの基本的な仮説を含んでいる。スキー
マは常時アクセス可能な固定的な構造であり、人間が新たな情報を処理するときに判断の
枠組みとして作用している。性犯罪者処遇においては、性犯罪者のスキーマを明らかにし、
スキーマの変容に焦点を当てた処遇をすることが有益である。
潜在的セオリーもスキーマモデルも、認知的構造に着目したモデルであるが、これらの
構造が犯罪にどのような役割を果たしているかは、現時点では実証的に検証されてはいな
い(Gannon & Wood, 2007; Thakker et al., 2007)
。なお、日本の性犯罪者のスキーマや潜在
的セオリーに焦点を当てた研究はこれまでなされていない。
2.4.2. 認知的プロセスに着目した理論
認知的プロセスに着目した認知の歪みの理論も提唱されてきている。具体的には、認知
の歪みは、固定的な資質として存在するものではなく、外的な環境に左右され、判断や決
意に至る動的な心理現象であるとする観点である。
Ward et al.(2006)によれば、性犯罪者の認知の歪みは、すべて潜在的セオリーから導
き出すことができるものではなく、また、持続する不適切なビリーフに限られるものでも
なく、環境や犯罪のプロセスを踏まえて文脈的に理解すべきである。Gannon & Polaschek
(2006)も、特定のスキーマが、繰り返し活性化され、慢性的にアクセスしやすいものに
なっていたとしても、そのスキーマによって行動するかどうかは、文脈的あるいは社会的
な要因に左右されると指摘している。Ward(2009)とWard & Casey(2010)も、性犯罪者
の認知の歪みは、認知的実践であり、動的で、社会的あるいは文化的な文脈に依存してい
るとしている。
このような認知的プロセスに着目した理論の一つとして、性犯罪を自己統制の失敗とし
て捉えるアプローチもなされている。たとえば、Baumeister(1990)によれば、人間は、
ストレス状況において、否定的な自己評価をもたらすようなプロセスを回避するために、
抽象的思考、長期的で多角的な視点、柔軟な判断を抑制し、具体的思考、短期的で表面的
な視点に焦点化することがある(認知脱構築:cognitive deconstruction)
。Ward, Hudson, &
Marshal(1995)は、この認知脱構築の理論を性犯罪の原因の理解に適用できるとしている。
Ward et al.(1995)の理論をまとめるならば、次のようになる。幼少時から虐待等の被害
体験を繰り返し受けてきた人は、
虐待を受けたときの否定的な自己評価を回避するために、
目の前の具体的な快楽に対する強度の欲求を生じるという認知脱構築を反復し、日常的に
認知脱構築の状態になってしまうことがある。このような脆弱性を持つ人が性犯罪に至っ
た場合には、短絡的行動そのものを合理化しようとするため、被害者に与えた害悪を否定
するなどの、性犯罪を支持するようなビリーフシステムを身に付けやすい。他方、幼少時
からの認知脱構築の反復がない人であっても、強度のストレスによって一時的な認知脱構
築の状態に至り、その結果として性犯罪をすることがある。性犯罪者が、
「犯罪時に通常
の判断が停止したようになっており、自分がなぜこんなことをしたのか分からない」と述
べることは少なくない。このような性犯罪者は、認知脱構築の結果として生じた害悪を否
定しようとするため、事後的に犯罪行為を正当化する傾向がある。
このような認知脱構築の理論については、経験科学的な検証はなされていないが、
Gannon & Polaschek(2006)や Mann(2004)も、性犯罪の原因の理解のために認知脱構築
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人文社会科学研究 第 28 号
の理論を適用することが有益であると述べている。
2.5. 性犯罪者の認知の歪みと共感
性犯罪者の認知の歪みの内容には、被害者の言動に対する一方的な思い込みや、被害者
の苦痛の軽視といったものが多く含まれている。したがって、認知が歪んでいる性犯罪者
は、他者への共感にも問題があるのではないか、と論じられてきている。たとえば、
Barnett & Mann(2013a, 2013b)は、性犯罪者の共感の阻害要因として認知の歪みを位置付
けている。具体的には、 1 )加害行為のわい小化や、加害行為が被害者に利益を与えると
いう内容の認知の歪みは、他者の観点に立つこと(視点取得)を阻害し、 2 )犯罪支持的
ビリーフ、女性への不信、性的権利意識は、共感に必要な他者への思いやりと尊重を阻害
する、と述べている。
実証的な研究も多くなされてきている。まず、性犯罪者に対して、一定の社会的関係の
場面を提示して、その捉え方を測定する社会的認識スキルのテストや質問紙調査が行われ
てきたが、その結果は一定していない(Elsegood & Duff, 2010; Lipton, McDonel, & McFall,
1987; Murphy, Coleman, & Haynes, 1986; Stahl & Sacco, 1995; Stermac & Segal, 1989)
。加えて、
被害者の苦痛をどう認識し、どう感じているのかを問う質問紙調査も行われている。具体
的には、同じ質問に、一般的な被害者を想定した回答と、性犯罪の被害者を想定した回答
を求め、性犯罪者の回答結果と対照群の回答結果を比較した研究や(McGrath, Cann, &
Konopasky, 1998)
、これら 2 つの区分に加えて、自分の犯罪行為の被害者を想定した回答
を求めた研究もなされている(Fernandez & Marshall, 2003; Fernandez, Marshall, Lightbody, &
O’
Sullivan, 1999; Marshall & Moulden, 2001)
。その結果をまとめると、 1 )一般的な被害者
への共感(交通事故等の被害者への共感)は性犯罪者のほうが低いというわけではないこ
と、 2 )性犯罪の被害者を想定した回答の分析結果は一定していないこと、 3 )自分の犯
罪行為の被害者への共感は、一般的な被害者や性犯罪の被害者への共感よりも低いことが
示されている。これらの研究結果は、性犯罪者の共感の問題は、自分の被害者という特定
の 対 象 に 関 す る 問 題 で あ る 可 能 性 を 示 し て い る。Brown, Harkins, & Beech(2012) や
Fernandez & Marshall(2003)は、自分の被害者という特定の対象への共感の問題は、被害
者が性犯罪を誘発した、被害者が性犯罪行為を望んでいた、被害者は加害行為に値すると
いう内容であり、認知の歪みの一種であると論じている。
日本においては、性犯罪者の共感の能力に焦点を当てた実証的研究はほとんどなされて
いない。唯一、野村・東本・小畠・嶋田(2010)が電車内痴漢行為経験者の共感を測定し
ているが、被験者数が電車内痴漢行為経験者 4 人、対照群16人と少ない。
3 .考察
3.1. 性犯罪者の認知の歪みに関する質問紙研究の結果について
認知の歪みに関する質問紙(以下、単に「質問紙」
)による先行研究の結果をまとめると、
次の 3 点が指摘できる。すなわち、 1 )子どもを被害者とする性犯罪者は、他の犯罪者や
非犯罪者よりも子どもに関する性的認知の歪みが大きいとする研究結果が多く示されてい
る、 2 )強姦など大人を被害者とする性犯罪者は、他の犯罪者や非犯罪者よりも女性に関
する認知の歪みが大きいか否かに関して一定の結果が得られていない、 3 )質問紙への性
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保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント(勝田)
犯罪者の回答結果の得点は尺度上の中央値よりも低い。
まず、強姦犯罪者の認知の歪みについて考察する。すでに述べたように、強姦神話は性
犯罪者に特有の現象ではないということが示唆されている。加えて、Eccleston & Owen
(2007)によれば、強姦犯罪者は、子どもを被害者とする性犯罪者よりも暴力犯罪者と類
似しており、反社会的パーソナリティ傾向、攻撃性、衝動性が高い。これらの議論を踏ま
えると、強姦犯罪者は、
「被害者が強姦行為を喜んでいる」とか、
「被害者に大した影響は
ない」と考えているというよりも、被害者に害悪を与えることを認識した上で、加害行為
を行った人が多いと解することができるのではないだろうか。そうだとするならば、保護
観察官は、このような保護観察対象者には、攻撃性、衝動性に焦点を当てた処遇を行うこ
とが必要であろう。
次に、質問紙への回答結果の得点の低さについて考察する。質問紙への回答結果の得点
が低い原因の一つに、社会的望ましさの影響を挙げる先行研究がある(Arkowitz & Vess,
2009; Bumby, 1996; Stermac, Segal, & Gillis, 1990)
。社会的な望ましさは、質問紙への回答
において、被験者の真の態度、考え方、ビリーフを表明することを抑制するものであるが、
だからと言って、質問紙調査がアセスメントや処遇の方法の一つとして不適切であるとは
言えない。なぜならば、回答結果の得点が低くとも、子どもを被害者とする性犯罪者の得
点と、性犯罪以外の犯罪者あるいは非犯罪者の得点との間に統計的有意差が認められると
した先行研究が少なくないからである。保護観察官は、質問紙調査の回答が、たとえば、
5 段階中第 2 段階である「あまりそう思わない」であっても、当該回答者である性犯罪者
に認知の歪みがある可能性があることを考慮し、
面接や記録から得られる情報も踏まえて、
認知の歪みに焦点を当てた保護観察処遇を実施することが可能である。
第 3 に、認知の歪みに関する質問紙調査の限界について論じる。Gannon & Polaschek
(2006)やGannon & Wood(2007)は、質問紙の性犯罪者の回答結果の得点が中央値より
も低いということから、性犯罪者の認知が歪んでいるとは言えないとしている。加えて、
質問紙調査によっては、認知的構造を明らかにすることができないとの批判もなされてい
る(Maruna & Mann, 2006; Thakker et al., 2007; Ward, Hudson, Johnston, & Marshall, 1997)
。さ
らに、Gannon & Wood(2007)は、質問紙調査の 2 つの限界を指摘している。すなわち、1 )
質問紙調査は、面接調査と異なり、犯罪時の特定の文脈を再体験させていないため、十分
な反応が得られていないことと、 2 )質問紙には対象者の見解を公式に質問するという性
質があり、スキーマや潜在的なセオリーが表出されにくいことである。しかし、Langton
(2007)は、性犯罪者のアセスメントにおいて、客観的に把握することが可能なものは認
知的生産物のみであるため、認知的生産物を手掛かりとして、背後にある認知的構造や情
報処理過程を推論する必要があると論じており、質問紙調査の有益性を主張している。さ
らに、Miller & Eisenberg(1988)は、質問紙法には、広範な範囲の事項を、被験者に過度
の負担を与えることなく測定できるという利点があるとしている。
以上の議論を踏まえると、日本の性犯罪者処遇プログラムにおいては、保護観察官は、
質問紙の限界を意識しつつ、質問紙の回答結果の背後にある要因を明らかにするよう、面
接を併用したアセスメントを行う必要があると言えよう。
157
人文社会科学研究 第 28 号
3.2. 認知の歪みの概念における犯罪の正当化について
先述したように、犯罪者の認知に関する先行研究においては、犯罪者には犯罪行為を正
当化する考え方、態度、ビリーフがあること(中和の技術)
、自己中心性を維持するため
に自己保護的な認知をすること
(道徳的発達の観点)
、
自己非難を緩和しようとすること
(自
己統制の理論)が論じられてきた。性犯罪者の認知の歪みに関する先行研究においては、
認知の歪みの具体的な内容には、被害者の言動に対する一方的な決め付け、被害者への責
任転嫁、加害行為の社会的是認、加害行為の結果のわい小化を含んでいる。これらの理論
が共通しているのは、犯罪行為を正当化しているという点であろう。すなわち、不正な行
為を正しい行為であるという主張、あるいは不正の程度が軽い行為であるという主張であ
る。具体的には、たとえば、
「子どもも大人と性愛関係になることがある」という考えは、
単なる事実の説明ではなく、
「子どもとの性愛関係は場合によっては肯定されるべきだ」
、
という性犯罪の正当化でもあると言えよう。被害・加害のわい小化は、侵害の程度の低さ
の主張のみならず、その程度の犯罪行動は許容されるものとする正当化でもあろう。
Gannon & Polaschek(2006)によれば、性犯罪者の認知の歪みは、自分の行動が悪いこと
であると認識していながら、これに反する行動をしたために生じる認知の不一致を解消す
る作用を持っている。認知の歪みを測定する質問紙調査を実施し、その結果を踏まえて保
護観察処遇を行う保護観察官は、質問事項の内容が、性犯罪を正当化する態度の有無や程
度を問うていることを意識することが重要であろう。なお、認知の歪みの概念を明確化す
る試みとして、犯罪を支持する態度と事後的な犯罪の正当化を区別することが提唱されて
いる。しかしながら、事後的な犯罪の正当化とは、考え、態度、ビリーフの目的あるいは
機能であるが、犯罪を支持する態度とは、考え、態度、ビリーフの内容そのものであって、
観点が異なる。したがって、犯罪を支持する態度と事後的な犯罪の正当化は、 2 項対立的
に区別できるものではなく、
重なり合う概念と言える。
たとえば、
「子どもは性愛の対象だ」
というのは犯罪を支持する態度であるが、
「子どもは性愛の対象だから、性行為をしても
悪くない」という犯罪の正当化の側面もあるはずである。犯罪を支持する態度という概念
も犯罪の正当化という観点から再構成する必要があると言えよう。
3.3. 認知の歪みと共感について
性犯罪者の共感の実証研究は一定した結果が得られていないが、近年、一般的な共感、
性的被害者への共感、自分の犯罪の被害者への共感を区別した研究が行われ、性犯罪者は、
自分の事件の被害者のみへの共感が低いことが明らかにされてきた。しかし、認知の歪み
を測定する質問紙の質問項目は、一般的な子どもや女性への考え方を測定しているのか、
個別の犯罪行為への態度を測定しているのかが明らかではない。子どもとの性行為や女性
に対する一般的なステレオタイプ、性犯罪被害者への認知、自分の犯罪への認知は異なる
ものであるので、それぞれを測定できるような質問紙を開発するか、あるいは、面接によっ
て補充することが有益であろう。これによって、共感と認知の歪みとが、どのような相互
作用をもっているかを明らかにすることもできるだろう。
Abel et al.(1984)が提唱した性犯罪者の認知の歪みは、生育歴を通じて固着したものと
されている。これは、上記の観点からすると、一般的な子どもや一般的な性的被害者を対
象とする認知の歪みであろう。しかし、発達上問題がなかった人が認知脱構築状態を背景
158
保護観察中の性犯罪者の認知の歪みに関するアセスメント(勝田)
として性犯罪を起こした場合の事後的正当化は、特定の被害者を対象とする認知の歪みと
言えよう。保護観察処遇に当たっては、これら両者の識別は重要である。前者の場合には
歪んだ認知の修正に焦点を当てる必要があるが、後者の場合には認知脱構築に至らないよ
うなストレス解消法などの訓練に焦点を当てることが有益であろう。
3.4. 今後の課題
日本においては、性犯罪者の認知の歪みに関する研究が十分になされてきていない。性
犯罪者の質問紙調査の結果等の認知の歪みに関する情報について、分析可能な数を収集で
きるのは、矯正施設や更生保護官署のみであり、これらの実務者の研究努力が求められる。
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