...

インドの緊急利下げに続くアジア諸国

by user

on
Category: Documents
12

views

Report

Comments

Transcript

インドの緊急利下げに続くアジア諸国
リサーチ TODAY
2015 年 2 月 23 日
インドの緊急利下げに続くアジア諸国
常務執行役員 チーフエコノミスト 高田 創
インド準備銀行(RBI)は2015年1月15日に緊急の政策決定会合を開き、下記の図表に示されるように政
策金利のレポレートを8.00%から7.75%に引き下げた。ラジャン総裁が就任した2013年9月以降、断続的に
引き締められてきた金融政策は緩和に転じた。原油と生鮮品の価格下落に伴うインフレ率の下振れとイン
フレ期待の落ち着きが背景にある。みずほ総合研究所では「緊急利下げに踏み切ったインド」と題するリポ
ートを発表している1。
■図表:インドの金融政策とインフレ関連指標推移
14
(%)
13
12
11
10
9
8
7
6
レポレート
5
インフレ期待(1年後)
4
CPI(前年比)
3
2012
13
14
15
(年)
(資料)RBI、インド統計計画実行省よりみずほ総合研究所作成
インドでは定例の政策決定会合が2カ月毎に開催される。2014年12月2日にはレポレートの据え置きが
決定されたが、今後の政策ガイダンスも示された。すなわち、次の3条件である、①物価安定の継続、②イ
ンフレ期待の鎮静化、③財政再建の動きが確認されれば2015年の早い時期に利下げを行う方針、である。
しかし、2015年2月3日の定例会合を待つことなく、1月の緊急会合で利下げが決定された。特に、物価安
定については、インドの主要な原油価格指標(インディアン・バスケット、2週間平均ベース)が、前回の政
策会合のあった12月上旬に1バレル=67ドルだったのに対し、1月前半は50ドルと約25%下落していたこと
が大きく考慮された。
インド経済は2014年に入り景気の浮揚感を欠いていた。個人消費は一時的要因から堅調に推移したも
のの、投資の不振が続いていた。同時に、マクロ政策の関係上、金融引締めを継続したことから、設備投
1
リサーチTODAY
2015 年 2 月 23 日
資の減速と耐久財を中心に個人消費の停滞は続いていた。下記の図表にも示されるように、これまでの景
気停滞を反映し、製造業の設備稼働率はリーマンショック当時の水準まで落ち込んでおり、足元で企業の
設備ストック過剰感が強いことがうかがわれる。
■図表:インドの製造業設備稼働率推移
84
(%)
稼働率
4期移動平均
82
80
78
76
74
72
70
68
2008
09
10
11
12
13
14
(年)
(資料)RBI よりみずほ総合研究所作成
今後を展望すれば、これまでの原油価格下落で利下げの余地が生じていることから、追加利下げが予
想されるが、2月末公表の予算案で財政再建の進捗が確認されない場合には、利下げが見送られるリスク
もある。
インドでは、経験則的に2四半期程度のラグを経て金融緩和が効果を現すとされてきた。現状は先述の
通り、設備稼働率が低く、追加利下げも小幅と予想されるため、金融緩和による成長率の改善効果は穏や
かに現れるだろう。
今回、1月にインドが緊急の金融緩和に踏み切ったが、同じく1月28日にシンガポールが緊急緩和を決
定している。また、2月4日に中国人民銀行は預金準備率の引き下げを行い、緩和姿勢を示している2。こう
した動きは、いずれも中央銀行による自国通貨の引き下げ誘導ないし上昇抑制を示すものである。同様に、
1月30日のオーストラリア準備銀行の利下げも通貨安を狙ったものであり、アジア地域全般に金融緩和、自
国通貨安の動きが連鎖していることに注目する必要がある。
1
2
小林公司 「緊急利下げに踏み切ったインド」 (みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2015 年 1 月 29 日)
玉井芳野 「中国・預金準備率引き下げの狙い」 (みずほ総合研究所 『みずほインサイト』 2015 年 2 月 13 日)
当レポートは情報提供のみを目的として作成されたものであり、商品の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、当社が信頼できると判断した各種データに基づき
作成されておりますが、その正確性、確実性を保証するものではありません。また、本資料に記載された内容は予告なしに変更されることもあります。
2
Fly UP