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MUインタフェース対応光送受信モジュール

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MUインタフェース対応光送受信モジュール
PLC
MU形光コネクタとその応用技術
SFPモジュール
MUレセプタクル
MUインタフェース対応光送受信モジュール
し ゅ と う よ し と はしもと
としかず
首藤 義人 /橋本 俊和
か ん だ あつし
す ぎ も と な お と
NTTフォトニクス研究所では,PLCハイブリッド実装技術とMUコネクタ
神田
淳 /杉本 直登
技術を応用して単心双方向光トランシーバを開発しました.このトランシー
な が せ
りょう
バでは,光インタフェースにMUレセプタクル構造を採用しているために,
長瀬
亮
高速データの送受信機能を備えた光回路をSFP(Small Form-Factor Pluggable)
NTTフォトニクス研究所
サイズに小型化することができます.
光トランシーバの高速・小型化
光通信の基本となる光部品の1つに
光トランシーバがあります.この光ト
に対応するために,光トランシーバの
伝送速度の高速化が求められています.
MU光インタフェース技術
SFFとSFPとは
光トランシーバの小型化・標準化を
進める取り組みとして,SFF(Small
Form Factor)およびその関連のSFP
ランシーバは,発光・受光素子が組み
NTTは,MU(Miniature Universal
込まれ,電気信号と光信号の変換を
coupling)形光コネクタを本格導入し
( Small Form-Factor Pluggable)
行うもので,主にLAN(Local Area
ていくことに決定しています.このMU
化の動きがあります.SFFは,1998年
Network)やMAN(Metropolitan
形光コネクタには,光ファイバの先に
に米国の通信機器メーカや通信会社
Area Network)の中でデータ伝送に
取り付けて低コストな光インタフェー
を中 心 にして光 トランシーバの小 型
使用されます.光トランシーバには,
スを実現する簡易光レセプタクルの技
化・標準化を目的に制定されたもの
光ファイバと発光・受光素子との接続
術があり,すでにNTTビル 側のF TM
で,従来のSC2連タイプのものを大
の際に2個のS C形プラグを光トラン
(Fiber Termination Module)などの
幅に小型化し,モジュラジャックと同
シーバに差し込む,S C 2連タイプの
装置に導入されています.
程度の断面積を持つサイズまで高密度
ものがありますが,N T T では光ファ
NTTフォトニクス研究所がこれまで
化することを目指しています.具体的
イバの有効利用の観点から,波長分
開発したピッグテール・タイプの単心
にはSFFに準拠した2連コネクタ型の
割多重(WDM: Wavelength Division
双方向光トランシーバには,平面光回
トランシーバのサイズは,幅13.6 mm,
Multiplexing)伝送技術を適用した単
路 (PLC: Planar Lightwave Circuit)
奥行き49.5 mm,高さ9.8 mmと決め
心双方向光トランシーバを開発してい
を用いた低コストなPLCプラットフォー
られています.SFF光トランシーバの
ます.これまで,お客さま宅に設置す
ムが用いられています.このプラット
外観を図1に示します.
る ONU( Optical Network Unit)
フォームの光導波路端に光ファイバが
S F P は,S F F に準拠した光トラン
やNTTビル側に設置する装置には,
接着固定されているため,この光トラ
シーバを,プラグタイプとして挿抜で
光ファイバを永久接続するピッグテー
ンシーバにそのまま簡易レセプタクル
きるようにしたものです.このプラグタ
ル・タイプの単心双方向光トランシー
を取り付けようとすれば,PLCとレセ
イプの利点は,ボードや装置の組み立
バが使われてきましたが,お客さまの
プタクルの途中にファイバの急激な曲
て時に光トランシーバを実装せずに作
数が増大するに伴い,特にNTTビル
がりを防止するためのファイバ余長を
業でき,最終段階で挿入すればよいた
側においてさらなる小型化が求められ
収納するスペースが必要となり,大幅
めに,生産管理面を含めトータルコス
ています.また,近年のインターネッ
な小型化は困難でした.
トを下げられる点や,後から挿抜でき
ト等による急激なデータ通信量の増加
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NTT技術ジャーナル 2003.10
るので光トランシーバに問題があって
特
集
も交換などの対応が容易である点など
において,コアとクラッドの比屈折率
が挙げられます.
差△を1.5%まで大きくして光回路の
MUレセプタクルの採用
小型化(従来面積比3分の1)を図っ
SFP 規格に準拠した限定されたス
たこと,② 小型化によって送受信の電
ペース内で,効率良くMU形光プラグ
気信号間のクロストークが増加します
からの光入出力信号を発光・受光素
が,発光・受光素子間距離の最適化,
子に伝達するためには,PLCプラット
プタクル(MUレセプタクル)とPLC
プリント配線基板接地面の多層化など
フォームの光導波路とMUプラグ内の
技術を組み合わせ,新たな実装技術に
の工夫を施し,この電気クロストーク
光ファイバを高精度に位置合わせする
よって,ギガビット・イーサネット(GbE)
の抑制を図ったこと,③ 光トランシー
技術が必要です.このために,開発し
に適用でき,占有体積の小さな単心
バの筐体寸法と電気入出力端子のピ
た光トランシーバでは,PLCプラット
双方向光トランシーバを開発しました.
ン配置を,SFP規格に準拠させたこと
フォームにシリコンV溝を形成し,光
です.
ファイバの入出力部にMUレセプタク
小型単心双方向光トランシーバの
開発
NTTでは,今回MU形簡易光レセ
この技術のポイントは3つあります.
①PLCプラットフォームの光導波路
ルを採用しています.
MUレセプタクルによる光結合の様
子を図 2 に示します.P L C プラット
フォームのV溝とレセプタクルとの結
合には,光ファイバ付きフェルールが
用いられます.このフェルールに接続
された短尺の光ファイバは,P L C プ
ラットフォーム上のV溝に設置される
ことで(プラットフォームの)光導波
路と高精度に接続できるため,ピッグ
テール・タイプの場合のような余分な
ファイバは不要であり,レセプタクル
とPLCプラットフォームの間を極限ま
図1 SFF光トランシーバ
で短くすることができます.このよう
MUプラグ
MUレセプタクル
フェルール
光ファイバ
PLCプラットフォーム
シリコンV溝
光導波路
図2 MUレセプタクルによる光結合
NTT技術ジャーナル 2003.10
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MU形光コネクタとその応用技術
に,開発した光トランシーバの内部で
は,非常に簡略化した構成で外部の
MUプラグとPLCプラットフォームと
の高精度な光接続が可能となるため
に,プラットフォーム上の発光素子を
駆動するための電子回路や,受光素子
からの微小電気信号を増幅するための
プリアンプなどを,プリント配線基板
に搭載するスペースが生まれます.こ
れらの部品を搭載した小型単心双方
向光トランシーバの外観を図3に示し
図3 単心双方向光トランシーバ
ます.各部の寸法は,完全にSFP規
格に合致しています.
WDMによる光信号処理
1.31/1.55 μm WDMフィルタ
PLCプラットフォームでは,光ファ
イバから入射される波長1.55 μmの
MUフェルール
1.31 μmLD
シリコンV溝
1.55 μm
光 信 号 を 受 信 PD( Photo Diode)
へ,プラットフォーム上のLD(Laser
Diode)から出射される波長1.31 μm
1.31 μm
光ファイバ
の光信号を光ファイバへ導く働きを行
モニタPD
います.この様子を図4に示します.
1.55 μm受信PD
波長の異なる光信号を処理するために
は,PLCプラットフォームの交差形光
図4 PLCプラットフォームでの光信号の流れ
導波路の真中に設置されたWDMフィ
ルタが重要な働きを行います.この
フィルタは1.31 μ mの光 を反 射 し,
表1 光トランシーバの特性
1.55 μmの光を透過させる性質を持っ
ています.このため,LDから出射した
1.31 μmの光信号は導波路を通って
反 射
1.1 dB
透 過
1.1 dB
ファイバ-PLC
0.7 dB
WDMフィルタ挿入損失
結合損失
LD-PLC
WDMフィルタに到達すると,効率良
く反射されてシリコンV溝のある方向
3.1 dB
LD駆動電流(0 dBm出力)
19.5 mA
受光感度
0.6 A/W
へ導波路を通って流れていきます.V
光クロストーク
−32.4 dB
溝まで到達した光信号は,光ファイバ
に結合して外部へと伝えられていきま
信PDに到達して,光信号は電気信号
さくて済みますがファイバやフィルタと
す.これに対して,外部より光ファイ
に変換されます.
の接続部で結合損失が大きく(悪く)
このような電気・光信号変換処理を
なります.このため,これらの部分で
シリコンV溝の光導波路からP LC プ
行うPLCプラットフォームは,光導波
は光導波路の幅を広げて損失の低減
ラットフォームに導かれ,導波路の途
路の△を大きくして光回路の小型化を
を図っています.その結果,表1にあ
中にあるWDMフィルタに到達します.
図り,寸法は1×12 mm 2 と従来面積
るようにフィルタの挿入損失は反射側
1.55 μmの光はこのフィルタを効率良
の3分の1まで小さくしています.こ
および透過側で1dB程度,ファイバ
く透過できるため,ここを通過して受
のように△を大きくすると,回路は小
とPLCの結合損失は0.7 dBと非常に
バに届いた波長1.55 μmの光信号は,
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NTT技術ジャーナル 2003.10
特
集
図5 光LAN PCカード
小さな値に抑えられていることがわか
ります.
光トランシーバの特性
こうして作製した単心双方向光トラ
また,1本もしくは多数本の光ファ
イバと結合するメディアコンバータに
組み込むと,光トランシーバの大きさ
が小さいことで,コンバータの小型化,
高密度化が実現できます.
ンシーバの特性(静特性)を表1に
今後,ホームネットワークや各種の
示します.この表から,GbEの光送信
集線装置(ノード)で必要とされるこ
電力として代表的な−3 dBmを得る
れらの光部品・装置の性能・コストを
ためには,20 mA程度の電流で駆動可
向上させるために,ここで紹介した光
能であること,光クロストークは−32 dB
トランシーバの経済化と高性能化を行
と非常に小さいために,GbE 規格の
う予定です.
−1 9 d B m 以下の光信号を受信可能
であることが わ かります.実 際 に
1 . 2 5 Gbit/sの速度で信号の送受信
動作を行い,動特性においてもGbE規
格の−19 dBmをクリアする良好な特
性が得られています.
今後の展開
(後列左から)長瀬
亮/ 杉本 直登
(前列左から)橋本 俊和/ 首藤 義人/
現在,NTTフォトニクス研究所で
は,PCに簡単に装着して光 LANが実
現できる光LAN PCカードの開発を進
めています.図5に光 LAN PCカード
神田
淳
テレコムやデータコムの分野で使われる
小型光トランシーバを紹介しました.今後
もさらに高機能な光部品を実現するための
研究開発を進めていきます.
の外観を示します.
このPCカードでは,光の入出力部
の大きさが小さいほどコンパクトにな
るため,ここで開発された小型単心双
方向光トランシーバを組み込むことが
検討されています.
◆問い合わせ先
NTTフォトニクス研究所
フォトニクスインテグレーションプロジェクト
TEL 046-240-2235
FAX 046-240-2912
E-mail [email protected]
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