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木工用自動倣い加工機の開発 レーザー距離センサを用いた立体物の

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木工用自動倣い加工機の開発 レーザー距離センサを用いた立体物の
平成 26 年度 岐阜県生活技術研究所研究報告 No.17
木工用自動倣い加工機の開発
レーザー距離センサを用いた立体物の形状計測技術
森茂智彦*
Development of Automatic Wood Copying Lathe
Shape measurement technology of solid objects using a laser sensor
Tomohiko MORIMO*
低コストな木工用自動倣い加工機の開発を目的として、スポット検出タイプのレーザー距
離センサを用いた立体物の形状計測方法を検討した。立体物の回転と同期して、レーザー距
離センサを立体物の回転軸方向に移動させながら測定値を収集した。測定値から照射した点
の3次元座標を求め、各座標値をプロットすることで、立体物の形状を画像上に再現した。
さらに、レーザー距離センサの光軸ずれによる誤差を補正することにより、手作業で出射光
軸を調整した場合と比べて、立体物の端部を正確に測定することができた。
1. 緒言
飛騨地区の家具産業で主に製造されているテー
ブルや椅子の部材は、多品種・少量生産のものが
多く、効率的な生産方法が求められている。
現在、家具の部材加工で行われている加工方法
の一つに倣い加工がある。倣い加工とは、モデル
となる原型を倣い装置でなぞりながら原型と同形
状のものを切削する加工方法である。倣い加工は
倣い装置が常に原型に触れているため、原型はベ
ークライトのような硬く加工が難しい材料で作る
ことが多い。しかし、家具の部材は多品種・少量
生産であることから、倣い加工の原型には、加工
し易い材料で簡易に作製できることが求められて
いる。そこで、加工し易い材料で作製した原型の
形状計測を行い、そのデータを用いて加工を行う
機械を開発することにした。
本報告では、原型の形状計測方法について、原
型の材質に影響されない非接触式センサによる計
測方法を検討した。家具の部材が木材である点、
加工後、研磨を行う点から、木材加工のための測
定では、精度の点で一定の譲歩をしても低コスト
に計測できることが望ましいため、非接触式セン
サは安価なスポット検出タイプのレーザー距離セ
ンサを用いた。
──────────────────────
試験研究部
*
2. 計測方法
2.1 計測システム
図1に計測システムの模式図を示す。原型の回転
軸とレーザー距離センサを取り付けたボールネジ
をベルトで結合する。モータを回転させることで、
原型の回転と同期して、レーザー距離センサは原
型の回転軸方向に移動する。原型が一定角度回転
する毎に、レーザー距離センサの測定値を記録す
る。
図1 計測システムの模式図
2.2 3次元座標変換
測定結果を3次元座標へ変換する方法について、
座標軸は図2の通り定義する。
平成 26 年度 岐阜県生活技術研究所研究報告 No.17
図2 座標軸の定義
2.2.1 x,y座標値
原型の回転中心を原点としたレーザー距離セン
サの測定値をL,x軸とのなす角をθとすれば、x,y
座標値は式(1)で算出することができる。測定は原
型が一定角度回転する毎に行うため、隣り合う測
定点と原点との角度は一定となる。よって、測定
開始時を0°とすれば、隣り合う測定点間の一定角
度分を積算することで、求める測定点までの角度
θを求めることができる。
 x   L ⋅ cos θ 
  = 
 ・・・(1)
⋅
y
L
sin
θ
  

3. 光軸ずれによる誤差補正
3.1 光軸ずれによる誤差
光軸ずれとは、レーザーの出射光軸と中心軸と
のずれである。本報告で用いるタイプのレーザー
距離センサの場合、取り付け時にレーザー距離セ
ンサ本体の取り付け角度を調整して、レーザーの
出射光軸が中心軸と重なるようにすることが多い。
しかし、手作業で調整する必要があり、高い精度
で取り付けることは困難である。そこで、図4に示
すように、レーザー距離センサを原型の回転軸に
対して水平に取り付け、レーザー距離センサの中
心軸上の点P1ではなく、レーザーが照射した点P2
を測定することとする。
図4 光軸ずれ
3.2 誤差補正方法
3.2.1 補正値の算出
図5に補正概要図を示す。補正値としてLr,θr,
zrを算出する。光軸ずれ角のy軸成分をθy,z軸成
分をθzとする。レーザー距離センサの出力は、
対象物までの距離が、センサとz軸との距離であ
るRの時に「0」となるよう設定してあるため、レ
ーザー距離センサの測定値をLとすると、レーザ
ー距離センサからP2までの距離はR-Lとなる。各
変数を用いて、補正値は式(2)で求められる。
図3
x,y座標算出
2.2.2 z座標値
原型の回転と同期して、レーザー距離センサはz
軸方向に移動する。測定は原型が一定角度回転す
る毎に行うため、隣り合う測定点間のz軸移動量は
一定となる。よって、測定開始時を0とすれば、隣
り合う測定点間のz軸一定移動量分を積算するこ
とで、求める測定点までのz座標値を求めることが
できる。

 a 2 + b2

 Lr  

  
b

−1 

 θr  =  tan  
a

 zr  
   ( R − a ) ⋅ tan θ 
z
・・・(2)


R−L

a = R −
1 + tan 2 θ y + tan 2 θ z

b = ( R − a ) ⋅ tan θ
y

平成 26 年度 岐阜県生活技術研究所研究報告 No.17
4.
結果及び考察
4.1 実験条件
図7に測定する原型の形状を示す。原型の材質は
加工し易い材料である木材にした。表1に測定条件
を示す。レーザー距離センサはキーエンス製
IL-300を用いる。測定値の原点はIL-300の基準距
離である300mmに設定した。使用したレーザー距離
センサの光軸ずれ角は、3.3項に記載した方法で測
定、計算した結果、θy=0.907°,θz=0.573°とな
った。
図5 補正概要図
3.2.2 補正値による補正
補正後の3次元座標は式(3)で求められる。θ, z
は、2.2項に記載した方法を用いて算出する。
 x   Lr ⋅ cos(θ + θr ) 
  

 y  =  Lr ⋅ sin(θ + θr )  ・・・(3)

 z   z + zr

  
3.3 光軸ずれ角の測定
式(2)を適用するには、レーザー距離センサの光
軸ずれ角θy,θzを測定する必要がある。簡易に測
定するため、水平面上に垂直な壁を設置し、セン
サから照射点までの長さ(図6に示す長さl,m,n)を
測定し、逆正接関数にて角度を算出する。
図7 原型形状
表1 測定条件
モータ回転数
30
原型1回転あたりの測定数
250
レーザー距離センサ移動量
1.44
min-1
回/回転
mm/回転
4.2 光軸ずれ補正の影響
図8に、測定値を3次元座標に変換し、各座標値
を画像上にプロットした結果を示す。
光軸ずれによる誤差を補正することで、原型と
同様の形状を再現することができた。
m 

arctan(
)

θy 
l
 ・・・(3)
 =
θ  
n
 z   arctan( ) 
l 

(a) 補正前
(b) 補正後
図8 測定結果(光軸ずれ角補正適用)
図6 光軸ずれ角の測定
平成 26 年度 岐阜県生活技術研究所研究報告 No.17
図9に、光軸ずれ角の誤差補正を使用せず、手作
業でレーザー距離センサ本体の取り付け角度を調
整し、出射光軸が可能な限り中心軸と重なるよう
に試みて測定した結果を示す。
断面形状
右上拡大
図11 手作業による本体角度調整時の測定結果
図9 測定結果(手作業による本体角度調整)
図8,図9の測定結果にて、ある断面の座標を抜き
出したものを図10,図11に示す。それぞれを比較す
ると、光軸ずれ角補正を適用した図10の方が端部
を鋭く測定できていることが分かる。手作業でレ
ーザー距離センサ本体を傾け、出射光軸を調整し
た図11の場合、調整次第では図10と同程度の測定
結果が得られると考えられるが、光軸ずれ角補正
を用いる方が簡易に測定できると考えられる。
図10,図11の右上を拡大した図から、測定点間の
距離が長いところで1mm近くあることが分かる。隣
り合う測定点と原点との角度は一定であるため、
原型のx,y座標方向が長くなる程、測定点間の距離
も長くなる。この距離を短くするには、原型1回転
あたりの測定数を増やすことが考えられるが、デ
ータ数や必要な処理が増えるため、測定データを
用いて切削加工を行う際には、切削時間や切削物
に求める精度等を考慮し、適切な測定条件を考え
る必要がある。
断面形状
右上拡大
図10 光軸ずれ角補正適用時の測定結果
5. まとめ
レーザー距離センサを用いて立体物の形状計測
を行った。レーザー距離センサの測定値を3次元座
標に変換し、各座標値をプロットすることで、立
体物の形状を画像上に再現した。
レーザー距離センサの誤差要因の一つである光
軸ずれを考慮した値に補正することにより、手作
業で出射光軸を調整した場合と比べて労力を費や
さず、端部をより正確に測定することができた。
測定結果の数値的評価は未実施であるため、今
後の課題としたい。その他の課題として、測定条
件の最適化、測定結果を用いた切削加工の実施が
挙げられる。
謝辞
本研究は協同組合飛騨木工連合会自主改善研究
会の皆様の協力により共同で実施した。また、本
研究の一部は、一般財団法人越山科学技術振興財
団の研究助成金により実施した。ここに感謝の意
を表する。
参考文献
1) 奈須野雅明他:野球バット用形状測定装置の
開発,富山県工業技術センター研究報告,
No.21,pp.Ⅲ-84,2007.
2) 小畑誠他:レーザー変位計を用いた鋼管状物
体の形状の精密計測法の提案,土木学会構造
工学論文集 A,Vol.56A,pp.68-76,2010.
3) 橋本裕之他:3 次元加工を実現した CNC 木工
旋盤の開発,第 62 回日本木材学会大会研究発
表要旨集,2012.
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