...

耳 川 水 系 総 合 土 砂 管 理 に 関 す る 技 術 検 討 会 ダ ム ・

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耳 川 水 系 総 合 土 砂 管 理 に 関 す る 技 術 検 討 会 ダ ム ・
資 料 -4
耳川水系総合土砂管理に関する技術検討会
ダム・河道領域ワーキング
目
次
1. ダム・河道領域の現状と課題 ..........................................................................1
2. 土砂に関わる問題の現状..................................................................................3
2.1 ダム領域
2.2 河道領域
3
5
3. 総合土砂管理上の課題 ...................................................................................13
3.1 ダム領域における課題
3.2 河道領域における課題
13
15
4. 耳川水系の現状と課題のまとめ .....................................................................19
平 成 22 年 7 月 28 日
宮崎県河川課
1. ダム・河道領域の現状と課題
現時点で把握している耳川のダム・河道領域における現状と課題を下記に示す。
土砂に関わる問題の現状
【ダム領域の土砂に関わる問題の現状】
2.1.1 土砂流入量の増加
・大規模洪水時における局所的な土砂堆砂
2.1.2 土砂移動の連続の遮断
・貯水池内堆砂量の経年的増加
(下流河道に対しては土砂供給量の減少)
・貯水池内末端部における土砂堆積の進行
・細粒土砂の長期滞留による細粒土砂の捕捉
(下流河道に対しては濁水長期化)
2.1.3 流倒木の流入
総合土砂管理上の課題
【ダム領域の課題】
● 治水面
(1) 貯水池内堆砂の増加に伴う貯水容量の減少
・背水および貯水池内上流部の堆砂による流下能力低下
(2) 流入流倒木による放流施設の機能障害
・流入流倒木による放流設備の閉塞及び損傷による放流機能の低下
● 利水面
(3) 貯水池内堆砂の増加に伴う貯水容量の減少
・堆砂量増加(利水容量の減少)による減電
・貯水池内堆砂による取水口の埋没(取水機能)
(4) 流入流倒木による取水施設の機能障害
・流入流倒木による取水設備の閉塞及び損傷による取水機能の低下
● 環境面
(5) 土砂移動および生態系の連続性遮断
・水中生物の生息空間の連続性遮断
【河道領域の土砂に関わる問題の現状】
(1) 河床の変化状況
・全体的には河床低下
・橋脚・護岸近傍の局所洗掘や河床低下
(2) 土砂供給量の減少に伴い粒径が変化
・ダム下流の河床材料の粗粒化
(3) 土砂供給量の減少に伴う地形変化
・瀬・淵の消失
【河道領域の課題】
● 治水面
(1) 河道の治水安全度の低下
・異常堆積による流下能力低下
・雑木繁茂による流下能力低下
・河床低下に伴う河岸崩壊
(2) 大規模洪水時の施設被害
・護岸堤脚部の急激な河床低下に伴う被災
● 利水面
(3) 取水施設の機能低下
・河床上昇による取水口の埋没
・河床低下による取水の不安定化
・濁水による影響
(4) 内水面漁業への影響
・供給土砂量の減少(アーマー化,地形変化)に伴う産卵・生育場の変化,および,大洪水による流出
● 環境面
(5) 動植物の生息・生育環境の変化
・堰直下流の河床低下による魚道の機能低下
・供給土砂量の減少(アーマー化,地形変化)に伴う生息環境の変化
・付着藻類の変化による生育環境の激変
(6) 濁水長期化による水質の悪化
・出水後の貯水池からの放流水
「第 2 回 耳川水系総合土砂管理に関する技術検討会」より
1
図 1 耳川流域図
図 1 耳川流域図
2
2. 土砂に関わる問題の現状
堆砂測量方法変更
(2003 年)
2.1 ダム領域
シングルビーム
2.1.1 土砂流入量の増加
■ 大規模洪水時に発生する局所的堆砂
35,000
耳川に位置する全利水ダムでの近年の年堆砂量の実績を図 2 に示す。大きな洪水が発生した年の堆砂量は、そ
30,000
の他の年に比べて大きな値を示しており、規模の大きな洪水が発生すると、土砂生産が活発になることがわかる。
年間堆積土砂量(全ダム合計値)
3
年間堆積土砂量(千m )
堆積土砂量(千m 3 )
平 成1 7 年 9 月
5,000
4,000
3,000
大内原ダム
西郷ダム
山須原ダム
岩屋戸ダム
上椎葉ダム
諸塚ダム
塚原ダム
25,000
6,000
20,000
15,000
10,000
平成 1 6 年8 月
平 成5 年8 月
2,000
マルチビーム
5,000
0
1930年
1,000
1940年
1950年
1960年
1970年
1980年
1990年
2000年
図 3(1) 堆砂実績(累計)の経年変化図(2008 年度時点)
2008年
2007年
2006年
2005年
2004年
2003年
2002年
2001年
2000年
1999年
1998年
1997年
1996年
1995年
1994年
1993年
1992年
1991年
1990年
0
20,000
18,000
図 2 年堆砂量の経年変化(耳川流域に位置する 7 ダムの合計)
大内原ダム
岩屋戸ダム
西郷ダム
上椎葉ダム
山須原ダム
諸塚ダム
塚原ダム
16,000
堆積土砂量(千m3 )
14,000
2.1.2 土砂移動の連続の遮断
■ 貯水池内堆砂量の経年的増加
耳川流域内の 7 ダムの堆砂実績を表 1,図 3 に示す。同図表より以下に示す事項がわかる。
・各ダムとも堆砂量は経年的に増加している。
12,000
10,000
8,000
6,000
・ダム別の堆砂量では、約 80%を上流の 3 ダム(上椎葉、岩屋戸、塚原ダム)が占めており、特に最上流の上
椎葉ダムでは、全体の約 40%が堆積している。
4,000
2,000
・ダムの改造・運用変更を計画している山須原,西郷,大内原ダムの堆砂量は、7ダムの総堆砂量の約 15%程
度である。
0
1930年
1940年
1950年
・2008 年(平成 20 年)時点における 7 ダムの全堆砂量は約 3,100 万 m3(東京ドーム 25 個分)であり、下流河
1960年
1970年
1980年
1990年
2000年
※岩屋戸ダムからの堆砂量が 1972 年に急増しているのは、測量範囲の追加による(支川:十根川)
。
道の土砂動態に与える影響は非常に大きいものと想定される。
図 3(2) 堆砂実績(各ダム)の経年変化図(2008 年度時点)
参 考)ダム貯水池の堆砂測量方法について
表 1 ダム堆砂量の内訳表(2008 年度時点)
大内原ダム
2008 年
累計堆砂量
※
堆砂率
各ダム堆砂÷
全ダム合計堆砂
3
西郷ダム
3
山須原ダム
3
塚原ダム
3
【シングルビーム】
岩屋戸ダム
上椎葉ダム
3
3
諸塚ダム
3
合 計
・ 複数の管理測線を横断測量し、各2 次元断面での面積と断面間の距離から堆砂量を算定する方法。
3
1,868 千 m
1,023 千 m
2,508 千 m
6,586 千 m
5,511 千 m
12,375 千 m
1,000 千 m
30,871 千 m
33.2%
83.17%
85.5%
45.3%
282.5%
106.5%
46.7%
-
6.1%
3.3%
8.1%
21.3%
17.9%
40.1%
3.2%
100.0%
※
ここでは、堆砂率は最低水位以下容量に対する実績堆砂量(2008 年)の割合を示す。
・ 管理測線の間が未測域となるため、精度は劣る。
【マルチビーム】
・ 貯水池底の堆積状況を 3 次元化することで、貯水池底の状況を立体的に把握することができる。
・ 堆砂量は、シングルビームと同様、2 次元断面での面積と断面間の距離から求めるが、断面数や断面間の距離を任意に設定できるため、
堆砂量の算定精度は高い。
従来、ダム貯水池の堆砂測量は、シングルビーム法で実施していたが、最近、マルチビーム法に移行しているダムが多い。
3
■ 貯水池内末端部における土砂堆積の進行
■ 細粒土砂の捕捉
図 4 はダム貯水池内における堆砂進行のイメージについて示したものであるが、ダム貯水地内の堆砂は図 4 の
図 6 に上椎葉ダム貯水池内および貯水池上流の土砂の粒度分布を示す。同図より、以下に示す事項がわかる。
左図に示すように低標高部から順次堆積していくのではなく、右図のように流速が急減する貯水池上流端付近か
・貯水池内の粒度分布は、貯水池末端からダム地点へ近づくにつれて、徐々に細粒成分の含有率が多くなって
ら堆積しはじめ段丘を形成する。形成された段丘は時間とともにダム方向に進行していく。
いる。
・貯水池末端部の粒度分布はほぼ同様の形態を示していることや、通常運用時においては湛水区間外であるこ
ダム建設当初の洪水位
ダム建設当初の洪水位
常時満水位
常時満水位
最低水位
最低水位
とから、末端部の粒度分布はダムが無かった場合の粒度分布と同様の様相を示していると考えられる。
・以上より、ダムがない状態では細粒土砂は河床にほとんど存在していないが、ダムの存在により貯水池内に
細粒土砂が捕捉されていることが確認できる。
100
堆砂の進行のイメージ
計画上の堆砂進行イメージ
90
ダム建設前の河床高
80
ダム建設前の河床高
通過質量百分率(%)
図 4 堆砂進行のイメージ図
60
40
30
20
10
の現象が発生していることがわかる。
0
0.001
490
常時満水位 本川(泥)-100m
本川(泥)-200m
本川(ボ)-4900m
本川(ボ)-6800m
本川(河)-6800m
本川(河)-6800m
支川(ボ)-2400m
支川(ボ)-4000m
支川(河)-4000m
50
図 5 に耳川流域内のダムの代表例として上椎葉ダムの堆砂進行状況(概ね 10 年ピッチ)を示すが、図より上記
480
実線:貯水池内
点線:貯水池末端
70
480.00m
0.01
1
10
100
1000
粒径(mm)
470
図 6 上椎葉ダムおよび上椎葉上流土砂の粒度分布
460
堆砂位(EL.m)
0.1
参 考)材料調査の概要について
450
440
グラフ
最低水位 435.00m
材料のサンプリング法
凡例
430
420
(泥)
410
400
建設当初
S60
390
S45
H7
(ボ)
S50
H17
名
称
概 要
採
泥
エクマンバージ採泥機により堆積土砂の表層
(エクマンバージ)
ボーリング採取
(河)
370
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
孔を掘って堆積土砂を採取する方法
平成 20 年 2 月
備 考
貯水池堆積土砂表層
(堤体直上流)
平成 20 年 2 月
貯水池内の堆積土砂
平成 18 年 8 月
河床材料の表層
1m×1m の平面格子内で堆積土砂の表層を採
380
0
を採取する方法
採取年月
8000
容積サンプリング
取する方法(粒径 10cm 以下の土砂のみ採取)
※掘削土砂量全量を現地計測
9000
上椎葉ダムからの距離(m)
図 5 上椎葉ダム堆砂進行状況
【ボーリング採取深度】
採取地点
削孔深度
本川(ボ)-4900m
24m
本川(ボ)-6800m
14m
支川(ボ)-2400m
14m
支川(ボ)-4000m
9m
【エクマンバージ採泥機】
4
2.2 河道領域
2.1.3 流倒木の流入
斜面崩壊が度々発生している耳川流域では、斜面崩壊や土砂流出とともに樹木が連鎖的に倒壊して多数の流木
が発生し、これらの流木がダム地点にまで流出している。
一般的に、ダムが建設されると、建設前は通過していた土砂の一部がダムで捕捉されるため、ダム上下流での
図 7 にダム地点に到達した流木等の処理実績を示す。平成 6 年から 21 年度まで、年間約 6,000m3 の流木※が流
土砂移動の不連続性が発生する。
耳川では、貯水容量に余裕のある、上椎葉ダム,塚原ダムにおいては上流から流下する土砂の大部分が堆積し、
入していることが分かる。
(
2.2.1 土砂移動の連続性遮断
※
貯水容量が小さい岩屋戸ダム,山須原ダム,西郷ダム,大内原ダムでは、上流から流下する土砂の一部が堆積し、
一部が捕捉され、残りは下流へと流下している。表中の値は堤体位置にて捕捉された流木の実績を示した
土砂移動の不連続性をまねいていると考えられる。
耳川流域内のダムには網場等の流木捕捉施設が設置されていないため、堤体位置まで流入してきた流木は
ものである。
)
大内原
西郷
山須原
塚原
岩屋戸
上椎葉
諸塚
合計
流入土砂の
多くが堆積
流木のみ
流木及び塵芥
流 入 土 砂の
多くが通過
20,000
流 入土 砂 の
多くが堆積
18,000
流木塵芥処理量(m3)
16,000
流 入 土 砂の
多くが通過
14,000
流入土砂の大
部分が堆積
流入土砂の
多くが通過
12,000
10,000
流入土砂の
一部が堆積
流 入 土砂 の
多くが通過
8,000
流入土砂の大
部分が堆積
6,000
流入土砂の
一部が堆積
4,000
流入土砂の
一部が堆積
2,000
0
H6年
H7年
H8年
H9年 H10年 H11年 H12年 H13年 H14年 H15年 H16年 H17年 H18年 H19年 H20年 H21年
0
諸塚
上椎葉 1,000
0
岩屋戸
680
塚原
0
山須原
600
2,100
1,700
720
420
1,440
1,690
450
1,000
3,000
3,000
1,200
270
1,170
170
0
300
850
200
85
0
136
100
0
21
157
0
0
120
0
1,163
220
102
423
169
0
307
2,948
75
277
1,155
1,916
49
653
267
989
20
441
390
2,680
69
751
0
650
806
265
0
2,302
190
89
290
0
80
0
70
0
30
380
133
26
1,712
0
222
451
123
0
0
0
2,120
0
4,000
110
10,030
0
2,180
200
6,140
0
2,250
0
265
460
5,222
62
818
9
4,478
21
2,478
850
2,768
1,429
1,012
41
3,039
145
749
1,680
7,530
8,000
18,420
3,790
7,845
2,486
473
7,565
1,707
8,120
7,984
5,335
6,553
5,252
3,598
西郷
大内原
合計
背砂・ 背水の
影 響が 顕在化
(諸塚村)
ゲート敷高が河床標高程度であるため、
流入土砂の一部が堆積
大内原ダム
西郷ダム
山須原ダム
塚原ダム
岩屋戸ダム
上椎葉ダム
図 8 土砂移動のイメージ図(洪水時)
※参考)日向土木事務所管内の沿岸域(五十鈴川河口~耳川河口付近)での流木処理量:8,490m3(平成 17 年度)
図 7 流木処理実績
5
2.2.2 河床の変化状況
25
10
新
東
郷
大
橋
5
耳
川
大
橋
美
々
津
橋
→
美
々耳
津川
大鉄
橋橋
→
最深標高 (EL.m)
←
冠
橋
→
15
→
→
地点付近)のみであり、堰は存在しない。また、後述するように、耳川では、治水上支障が生じた箇所において
福
瀬
大
橋
H18.1
→
大内原ダム下流から河口までの区間の取水施設は、出口川合流点直下流の富島幹線用水路用の取水口(11.4km
H17.3/H17.2
→
に示す(河道横断面図における最深標高から整理)
。また、比較的変動差が大きかった地点の横断面図を図 11 に
示す。
H16.3
20
東
郷
橋
富
島
幹
取線
水用
口水
路
→
大内原ダム下流から河口までの航空写真を図 10に、
このうち河口から17k600地点までの河床の変化状況を図 9
H9.12/H11.10
0
河床掘削を経年的に実施している(図 10 中の赤丸の地点)
。
-5
全体的には河床低下の傾向にあり、最大で 4m 程度の河床低下が確認できる(2k600 地点:H9.12→H18.1)
。
・ 河床変動が比較的大きな地点は、以下のとおりである(H9.12/H11.10→H18.1 の最深標高の変動高)
。
-10
0
2
4
6
8
10
12
14
16
18
20 距離(km)
上昇:11k400(+2.0m) 取水口付近,出口川合流点付近
10
13k300(+2.3m) 大谷川合流点付近 … 図 10 中の緑丸
新
東
郷
大
橋
→
冠
橋
→
河床変動高さ(m)
東
郷
橋
→
→
→
15k740(-2.1m) 椎谷川合流点付近 … 図 10 中の青丸
富
島
幹
取線
水用
口水
路
福
瀬
大
橋
→
14k500(-2.5m)
,14k780(-3.1m) 坪谷川合流点下流
耳
川
大
橋
美
々
津
橋
→
12k000(-3.7m)
,12k100(-2.2m)
5
→
→
低下: 2k600(-4.1m) 湾曲部
美
々耳
津川
大鉄
橋橋
0
-5
H9.12/H11.10→H18.1の変動高
※横断図最深河床標高より整理
-10
・ 橋脚・護岸近傍の局所洗掘や河床低下を図 12 に示す。
坪谷川上流の東郷橋
(14k960 地点)
や、
東郷大橋
(16k280
図9
最深河床標高の経時変化(耳川河口~17k600 地点)
地点)において橋脚の局所洗掘が確認できるものの、福瀬大橋(8k540 地点)では橋脚部の洗掘等は確認で
きない。
測量実施範囲(耳川河口 0k000~17k600 まで)
東郷町広瀬
H18:15,000m3
H20:33,000m3
福瀬大橋
美々津大橋
椎谷川
東郷町羽板
H18: 7,500m3
耳川鉄橋
美々津橋
東郷町白浜
H20:22,000m3
耳川大橋
新東郷橋
東郷橋
八重原橋
東郷町八重原
H19: 5,000m3
H20:30,200m3
八重原大橋
迫野内川
冠橋
山陰橋
大谷川
:河床上昇(H9.12 → H18.1)
:河床低下(H9.12 → H18.1)
:河床掘削実施地点(H18~H21)
東郷町瀧下
H19: 8,600m3
H20: 4,000m3
H21: 8,500m3
図 10
東郷町鹿瀬
H18: 6,500m3
H20:35,400m3
河床変動地点と河床掘削実施位置(大内原ダム下流~耳川河口の航空写真)
6
2K600
4.1m 低下
12K000
3.7m 低下
14K780
3.1m 低下
図 11 比較的大きな河床変動量を確認した断面
7
福瀬大橋
8K540
東郷橋
橋脚部の洗掘,河床低下が確認できる(H17.2~H18.1 の間に対策実施?)
東郷大橋
図 12 橋梁部での河床変動状況
8
2.2.3 土砂供給量の減少に伴い粒径が変化
■ ダム下流の河床材料の粗粒化
大内原ダム下流における河床材料調査位置・写真を左下図に、各調査地点の粒度分布を右下図に示す(参考として大内原ダム上流の支川の河床材料を添付)
。写真および粒度分布より、以下に示す事項がわかる。
・大内原ダム下流では本川と支川で粒度構成が大きく異なっており、本川における粒度分布が粗くなっている(図 13 と図 14 の比較)
。
・大内原ダム下流支川の粒度分布(図 14)と大内原ダム上流支川の粒度分布(図 15)は、ほぼ同様の粒度分布であり、ダムがない
100
場合には、これらの土砂が本川の河床材料を構成していると想定される。
大内原ダム下流(写真①)
90
80
なお、支川合流後の耳川本川においても粗粒化の緩和は確認できず、ほぼダムサイト直下と同様の粒度分布となっている(図 13 参照)
。
70
通過質量百分率(%)
以上より、ダムの存在(供給土砂量の減少)により、大内原ダム下流本川においては粗粒化が進行しているものと推測される。
大内原ダム直下流(写真②)
75mm 以上の
割合が多い
大きい粒径が多い
【粗粒化】
60
50
40
30
2mm 以下の
割合が少ない
20
10
粒径が大きい
粒径が小さい
0
0.001
0.01
0.1
1
粒径(mm)
10
100
1000
図 13 大内原ダム下流本川の粒度分布
写真② 大内原ダム直下流
100
写真③ 大谷川
90
通過質量百分率(%)
80
大内原ダム下流支川:大谷川(写真③)
大内原ダム下流支川:坪谷川(写真④)
大内原ダム下流支川:椎谷川(写真⑤)
70
60
粒度分布に偏りが少ない
50
40
30
20
坪谷川
10
0
0.001
写真④ 坪谷川
粒径が大きい
粒径が小さい
0.01
0.1
1
10
100
1000
粒径(mm)
耳川
図 14 大内原ダム下流支川の粒度分布
100
90
通過質量百分率(%)
80
写真① 大内原ダム下流
注)粗粒化:上流からの細粒物質の供給が減少し、河床表層の構成材料が粗くなることをいう。
ダムによる粗粒化が発生しやすい条件として、ダム上下流で土砂供給量が大きく減少
することが挙げられる。
図 13 大内原ダム下流本川の粒度分布
図 14 大内原ダム下流支川の粒度分布
図 15 参考:大内原ダム上流支川(大内原~山須原)の粒度分布
写真⑤ 椎谷川
70
60
粒度分布に偏りが少ない
50
40
30
20
10
0
0.01
粒径が小さい
粒径が大きい
0.1
1
10
100
1000
粒径(mm)
図 15 参考:大内原ダム上流支川(大内原~山須原)の粒度分布
9
2.2.4 大内原ダム下流の地形変化
耳川下流域における河川状況の比較について、以下に示す航空写真を用いて平面形状の経年変化を比較した。
■ 瀬・淵の消失
・現存している最も古い航空写真で、大内原ダム完成前の 1947 年に米軍が撮影した航空写真
河道の中には、流れが速く水深の浅い場所と流れが遅く水深の深い場所があり、流れが速く浅い場所は「瀬」
、その
・近年の航空写真(2002 年に宮崎県が撮影)
前後で流れが緩やかで深いところは「淵」と呼ばれている。瀬・淵は砂州(河道に形成される土砂のたまり場)を含
めた流れの中で発生する。
【比較対象範囲(大内原ダム下流)
】図 12 参照
瀬は水深が浅いため、日光が川底まで届き石に付着する藻類がたくさん育ち、これを食べる水生昆虫が集まるので
魚の餌場にもなる。淵は流れが緩やかで深いため、魚の休憩所にもなり、鳥や人間に追われたときは逃げ場所になる。
範囲1:大内原ダム~八重原 ,範囲2:八重原~中ノ原
範囲3:中ノ原~広瀬
,範囲4:鳥川~耳川河口
またコイ等の大型の魚の棲みかにもなっている。
このように、瀬・淵は生態系にとって非常に重要な生息場となっている。
ここで、砂州の大きさと瀬・淵の関係について見てみると砂州が大きい左図と比べて、砂州が小さい右図では瀬に
おける水面幅が広がっていることが分かる。そのため、砂州の規模が小さくなると、瀬の水面幅が広がり流速が小さ
くなることから、瀬と淵が明確でなくなる。
瀬
淵
瀬
砂州(大)
淵
砂州(小)
瀬
瀬
淵
砂州(大)
(1)砂州が大きい場合
砂州(小)
淵
(2)砂州が小さい場合
図 17 航空写真による平面形状の比較(1947 年と 2002 年の比較)
図 16 砂州の大きさと瀬淵の関係のイメージ
比較の結果、以下に示す事項がわかる。
・ 大内原ダム完成前後で、河道の線形に変化は無い。
・ 砂州の発生位置は、大内原ダム完成前後で大きな変化は無い。
・ 砂州の規模は、大内原ダム完成前に比べて完成後がやや小さい傾向が見受けられる。
10
1947年(昭和22年)
2002年(平成14年)
大内原ダム
鹿瀬地区
範囲1 大内原~八重原
鹿瀬地区
八重原地区
八重原地区
八重原橋
八重原大橋
八重原地区
八重原地区
八重原大橋
八重原橋
範囲2 八重原~中ノ原
坪谷川合流点
東郷大橋
坪谷川合流点
備考
米軍撮影
宮崎県撮影
11
1947年(昭和22年)
2002年(平成14年)
福瀬地区
福瀬地区
範囲3 中ノ原~広瀬
広瀬地区
広瀬地区
範囲4 烏川~耳川河口
広域農道
幸脇地区
幸脇地区
美々津橋
美々津港
美々津大橋
備考
米軍撮影
美々津港
宮崎県撮影
12
3. 総合土砂管理上の課題
3.1 ダム領域における課題
(1) 治水面上の課題
3.1.1 貯水池内堆砂の増加に伴う貯水容量の減少
■ 背水および貯水池内上流部の堆砂による流下能力低下
表 2 に、耳川水系 7 ダムの平成 20 年度までの堆砂実績を示す。これより堆砂量が総貯水容量に対し 66%程度
山須原ダム上流の諸塚村で浸水被害が発生した、平成 17 年の洪水時の最大流入量を表 3 に示す。
平成 17 年台風時の流入量は最大で 4,110m3/s(設計洪水流量の 121%)であり、諸塚村の浸水被害は、異常出水
を示すダムも認められる。
図 18 は耳川水系 7 ダムの空き容量(総貯水容量-堆砂量)を示しており、西郷,山須原,岩屋戸ダムは余裕量
による影響に加え、貯水池上流部の河床上昇と背水に伴う水位の上昇により、被害を助長させたと考えられる。
が小さくなってきていることがわかる。下流 3 ダム(山須原,西郷,大内原ダム)については余裕量が小さく、
特に山須原ダムと西郷ダムでは、堆砂量が総貯水容量の半分程度を占めている。
表 3 耳川流域内のダム設計洪水流量と既往大規模洪水時の最大流入量
表 2 堆砂実績表(平成 20 年度まで)
(ダム順序:上流から)
竣工年月
容量(千 m3)
(a)
総貯水容量内
全堆砂実績(千 m3)
(b)
堆砂率(%)
(b/a)
上 椎 葉 九州電力
1955 年 5 月
91,550
12,375
13.5%
岩 屋 戸 九州電力
1942 年 1 月
8,309
5,511
66.3%
塚
原 九州電力
1938 年 10 月
34,326
6,586
19.2%
諸
塚 九州電力
1961 年 2 月
3,484
1,000
28.7%
山 須 原 九州電力
1932 年 1 月
4,194
2,508
59.8%
西
郷 九州電力
1929 年 12 月
2,452
1,023
41.7%
大 内 原 九州電力
1956 年 6 月
7,488
1,868
24.9%
ダム名
管理者名
上椎葉ダム
岩屋戸ダム
塚原ダム
山須原ダム
西郷ダム
大内原ダム
諸塚ダム
設計洪水流量
1,800 m3/s
2,127 m3/s
2,650 m3/s
3,387 m3/s
3,572 m3/s
5,000 m3/s
600 m3/s
平成17年
台風14号
1,736 m3/s
(96%)
2,684 m3/s
(126%)
3,040 m3/s
(115%)
4,110 m3/s
(121%)
4,940 m3/s
(138%)
5,454 m3/s
(109%)
372 m3/s
(62%)
※( )
:設計洪水流量に対する割合
背水による堰上げ
洪水位
洪水位
(背砂がない場合)
堆砂(背砂)
貯水池
ダム建設前の河床高
ダム建設前の河床高
②堆砂進行
①ダム建設直後
90%
上椎葉ダム
80%
塚原ダム
70%
大内原ダム
諸塚ダム
図 19 背水および貯水池内上流部の堆砂による影響のイメージ図
諸塚地区
125
60%
堆砂による水位上昇
水位の上昇
貯水池
100%
西郷ダム
120
常時満水位:EL.123.333m
最低水位 :EL.120.303m
50%
岩屋戸ダム
30%
20%
10%
115
山須原ダム
40%
上椎葉ダム
岩屋戸ダム
塚原ダム
山須原ダム
西郷ダム
大内原ダム
標高(EL.m)
空容量(%) : 総貯水容量-堆砂量
水位の上昇
110
105
諸塚ダム
初期河床
図 20 山須原ダム堆砂形状(初期河道・平成
17 年河道) H17河道
100
0%
1960年
1970年
1980年
1990年
2000年
図 18 空き容量(総貯水容量-堆砂量)の経年変化図
(1) 治水面上の課題
2010年
95
0
1,000
2,000
3,000
4,000
5,000
6,000
山須原ダムからの距離(m)
図 20 山須原ダム堆砂形状(初期河道・平成 17 年河道)
13
(2) 利水面上の課題
3.1.2 流倒木の流入による機能障害
■ 利水容量の減少による減電
(1) 治水面上の課題
ダム貯水池に流入した土砂は、有効容量内にも堆積する。その堆積量が少ない間はダム機能上大きな問題とは
ならないが、特別な対策を講じないかぎり堆砂が進行するとともに有効容量内の堆積量も増加し、利水に使用で
きる有効容量が減少する。堆砂の進行が原因で有効容量の減少が顕在化したダムでは、有効容量の維持・回復を
目的に,掘削・浚渫を実施しているダムや排砂バイパストンネルを設置しているダムもある。
■ 流木による放流設備の機能障害
流木の到達状況を写真 1 に示す。倒流木がダム地点まで到達すると、放流施設および取水施設に対して機能障
害を生じさせるおそれがある。
放流設備に機能障害(放流能力の低下等)が生じた場合には、適切なダム操作(主に流入量=放流量)を行う
ことが困難となり、放流量不足による貯水位の上昇を引き起こすことや、流木の急激な流出により放流能力が回
490
復すると急激な放流量の増加を引き起こすことが懸念される。
常時満水位 480.000
480
470
460
450
440
最低水位 435.000
有効容量の減少
⇒減電
430
写真 1(1) 流木到達状況(上椎葉ダム)
420
410
400
H17
390
元河床
380
370
0
1000
2000
3000
4000
5000
6000
7000
8000
9000
写真 1 流木到達状況
図 21 貯水池内堆積土砂の形状(上椎葉ダム)
(2) 利水面上の課題
■ 貯水池内堆砂による取水口の埋没
■ 流木による取水設備の機能障害
岩屋戸ダムでは、右岸側支川がダム地点近傍で合流しているが、支川から大量の土砂が流入しておりダム堤体
付近において土砂が多く堆積している。図に示すとおり左岸側に位置する取水口 2 号の敷高以上まで堆積が進行
放流施設と同様に取水設備に流木が到達すると、施設の故障の原因となり洪水後の適切な流水管理が困難とな
ることが懸念される。
しており、このまま河床が上昇すると、発電取水の機能障害が懸念される。
340
330
常時満水位 326.400
取水口1号敷高 321.0m
320
310
取水口2号敷高 300.0m
300
(3) 環境面上の課題
元河床
290
H17
元河床
280
0
500
1000
1500
2000
2500
3000
3500
4000
図 22 貯水池内堆積土砂の形状(岩屋戸ダム)
14
3.2 河道領域における課題
3.2.1 河道の治水安全度の低下
■ 異常堆積による流下能力低下
場所によっては、土砂の異常堆積により流下能力が低下していることから、経年的に河床掘削を実施している。
河床掘削地点を図 23 に、河床掘削前後の状況写真を写真 2 に,河床掘削量の集計表を表 4 に示す。
地点
掘 削 前
掘 削 後
大内原ダム
広 瀬
平成 22 年 5 月 18 日撮影
平成 21 年 1 月 24 日撮影
八重原
図 23 耳川の河床掘削位置図
平成 21 年 1 月 26 日撮影
平成 22 年 5 月 18 日撮影
写真 2 河床掘削前後の状況
表 4 河床掘削量の経年変化(掘削地点別)
3
地 区 名
H18
西郷区和田
3,500
東郷町鹿瀬
6,500
東郷町八重原
H19
8,100
5,000
東郷町白浜
東郷町羽坂
H20
H21
17,000
20,800
8,600
東郷町広瀬
15,000
合 計
32,500
上流にダムを持つ河川における一般的な課題として、河道内における植生の繁茂が挙げられる。
河道内の樹林は、堤防の保護や動植物の生息場など治水・環境面において重要な役割を果たしている。しかし、
35,400
41,900
土砂供給量の減少、河床の洗掘、高水敷への土砂堆積、冠水頻度の減少等が原因となり高水敷の樹林化が進行す
30,200
35,200
ると、洪水疎通能力の低下や良好な河川景観の喪失など治水・環境面において支障をきたすことがある。
22,000
22,000
耳川においては、河道内の雑木繁茂の状況は確認されていない。これは、上流域にダム群を有しているが、発
7,500
電ダムであり、洪水時の放流量は流入量と同様であるため、冠水頻度はダム完成前から大きく変化していないた
4,000
8,500
33,300
21,700
■ 雑木繁茂による流下能力低下
49,400
7,500
東郷町瀧下
(単位:m )
合 計
141,900
21,100
めと考えられる。
48,300
29,300
225,400
15
3.2.2 河床低下に伴う施設被害
■ 河床低下に伴う護岸堤脚部の被災
■ 河床低下に伴う護岸崩壊
大内原ダム下流に位置している東郷橋(河口から 14.96km)においては、経年的な河床低下により護岸橋脚部に
大内原ダム下流は全体的に河床が低下しているが、河床低下に伴い懸念される現象としては、護岸崩壊が挙げ
られる。護岸崩壊のプロセスは以下のとおりである(図 24 参照)。
① 河床の低下により護岸の基礎が浮くことで浮いた部分から背面土砂が吸い出される。
② 背面土がいっそうの侵食を受け、ついには安定性を失って破壊を誘発する。
おいて安全性の低下が懸念される。同地区では縦断的に見ても経年的に河床が低下しており、このまま河床が低
下すると、横断構造物の安全性が低下することが懸念される。
なお、同地区における河床低下は土砂供給の減少による影響と考えられるが、大内原ダム下流域に存在してい
る福瀬大橋(河口から 8.54km)の近傍では、河床低下の傾向は見られず河床は安定している。
写真 3 東郷橋の河床低下状況
図 24 河床低下による護岸崩壊のイメージ
大内原ダム下流でも護岸崩壊が発生しているが、河床低下によるものか原因は不明である。
図 25 東郷橋の経年的な河床低下状況
16
3.2.3 取水施設の機能低下
3.2.4 動植物の生息・生育環境の変化
取水施設については、河床低下,河床上昇のどちらについても取水機能が低下する。河床上昇により取水口が埋没
し取水できなくなること、河床低下に伴い通常時の水位が低下することにより取水が困難になることが挙げられる。
大内原ダム下流における取水口は、富島幹線用水路におけるものが挙げられるが、富島幹線用水路の取水口におい
て、上記のような機能障害の状況について確認を行った結果を示す。
■ 粗粒化,河床低下,土砂移動の連続性遮断等による生息・生育環境の変化
一般に、河川にダムを建設すると,上流からの土砂移動の連続性が遮断されるために土砂の移動量が減少し、
ダムの下流区間では粗粒化や河床低下が生じる。こうした物理環境の変化は、底生動物や付着藻類等の生息環境
を変化させ,これらと生物相互作用を有する種にも影響を及ぼし、健全な生態系が損なわれる可能性がある。
例えば、付着藻類の剥離・更新に必要な土砂(砂・礫)の供給が制限されると、付着藻類の活性が行われず、
アユ,オイカワなどの付着藻類を餌とする種に影響する。生物の摂餌は、河床環境を維持するうえで大きな役割
を果たしているため、
ある特定の種類の付着藻類が繁茂する等、
生息量や多様性に影響が及ぶことが考えられる。
3.2.5 内水面漁業への影響
■ 流出土砂量の減少(瀬・淵の変化,河床低下)に伴う産卵・生育場の変化および大洪水による流出
3.2.6 濁水発生による水質の変化
■ 出水後の貯水池からの放流水
図 26 富島幹線用水路位置図
■ 河床上昇による取水口の埋没
現時点では、上記のような現象は確認されていない。
■ 河床低下による取水の不安定化
渇水期の流量の違いによるものか、河床低下による上述のような現象によるものか、その因果関係については
明らかでは無いが、平成 13 年と平成 21 年における渇水期の水位は低下している。因果関係の分析および今後の
状況変化について確認を行っていくことが必要である。
取水口呑口
H13 年渇水期水位
H21 年渇水期水位
図 27 取水口断面と渇水時の水位(H13 年と H21 年比較)
17
これらのダムによる土砂移動の連続性の遮断に起因した各種課題の改善策として、現在、下流 3 ダム(山須原
ダム,西郷ダム,大内原ダム)の改造および運用変更を計画している。
流入土砂の
多くが堆積
現状(耳川本川)
流 入 土 砂の
多くが通過
流 入土 砂 の
多くが堆積
流 入 土 砂の
多くが通過
流入土砂 の大
部分が堆積
流入土砂の
多くが通過
流 入 土砂 の
一部が堆積
流 入 土砂 の
多くが通過
流入 土砂の大
部分が堆積
流入土砂の
一部が堆積
背砂・背水の
影響が顕在化
流入土砂の
一部が堆積
(諸塚村)
ゲート敷高が河床標高程度であるため 、
流入土砂の一部が堆積
大内原ダム
西郷ダム
山須原ダム
塚原ダム
岩屋戸ダム
上椎葉ダム
流入土砂の
多くが堆積
ダム改造・運用変更後
流 入 土 砂の
多くが通過
流 入 土 砂の
多くが堆積
ほ ぼ全 量
が通過
ほぼ 全量
が通過
流入土砂 の大
部分が堆積
流入土砂の
一部が堆積
ほ ぼ 全量
が通過
流入 土砂の大
部分が堆積
ゲート改修により河川の状態に近づけ、
流入土砂の大部 分を流下させる。
ゲート改修により河川の状態に近づけ、
流入土砂の大部分を流下させる。
ダム の運 用変 更によ り河川の 状態 に近 づ
け、流入土砂の大部分を流下させる
大内原ダム
西郷ダム
山須原ダム
塚原ダム
岩屋戸ダム
上椎葉ダム
図 28 洪水時の土砂移動のイメージ図
18
4. 耳川水系の現状と課題のまとめ
山地領域,ダム・河道領域,河口・海岸領域における耳川水系の現状および治水面・利水面・環境面における課題をま
とめると下表のようになる。
表 5 各領域の現状と課題
領域
山地
ダム
(利水)
河道
河口
・海岸
流域
関係者
(機関名称)
土砂に関わる問題の現状
森林管理者
① 崩壊箇所の増加
国
局所化する豪雨、大型化する台風
表 5 ・各領域の現状と課題
県森林整備課
・ 植栽未植地の増加
② 土砂流出量の増加
県自然環境課
日向市,美郷町,諸塚村,椎葉村
・ 間伐の低下に起因する林内土壌の流亡
・ 想定外の流出土砂量
林業事業体
・ H17台風による崩壊地からの土砂供給
森林所有者
③ 土砂移動の不連続の発生
砂防施設管理者
・ 堰堤完成後、一定期間、砂防ダム地点を流下する土砂の
県砂防課,
大部分を捕捉
道路管理者
砂防施設の堆砂容量の減少
④
県道路保全課,日向市,美郷町,諸塚
村,椎葉村
⑤ 土砂流入量の増加
ダム管理者
九州電力(株)
・ 大規模洪水時の局所的堆砂
⑥ 貯水池末端部に土砂が堆積
・ 貯水池末端部における土砂堆積の進行
⑦ 土砂移動の連続の遮断
・ 貯水池内堆砂量の経年的増加
・ 貯水池内土砂の細粒化
・ 貯水池に流入する土砂の堆砂
河川管理者
⑧ 河床上昇
県河川課
・ ダム下流区間および堰上流側(取水部)の河床上昇
利水者
⑨ 河床低下および局所洗掘
県農村計画課
・ 橋脚・護岸近傍の局所洗掘や河床低下
県漁港漁場整備課
・ 取水部および堰直下流の河床低下
・ 河床低下による河岸崩壊
県水産政策課
企業局
⑩ ダム建設により粒径が変化
・ ダム下流の河床材の粗粒化
日向市(水道)
⑪ 濁水の発生
土地改良区
⑫ 瀬・淵の地形変化
利用者
漁業協同組合
・ 瀬・淵の消失
港湾管理者
県港湾課
県漁港漁場整備課
県水産政策課
海岸管理者
県港湾課
県漁港漁場整備課
県水産政策課
利用者
漁業協同組合
地域住民
日向市,美郷町,諸塚村,椎葉村
⑬
⑭
⑮
・
河口・港湾部への土砂堆積
海岸浸食
供給土砂の減少および砂利採取に伴う瀬・淵の地形変化
瀬の消失(流路の固定化)
-
総合土砂管理上の課題
治 水 面
利 水 面
環 境 面
① 山腹の緑化
・ 崩壊地の増加による山林の減少
② 動植物の生息・生育環境の変化
・ 砂防ダムによる水中生物の生息空間
の不連続
① 山地の保水力低下
・ 手入れの行き届かない森林の増加
・ 崩壊地の増加
② 山腹の安定化
③ 適正な森林管理
④ 貯水池内の土砂管理
・ 貯砂ダムの設置、浚渫、通砂等
⑤ 土砂移動の連続性確保
・ 下流への土砂供給
⑥ 流木対策
① 利水容量の減少
・ 堆砂量増加(利水容量の減少)による減電
② 取水施設の障害
・ 貯水池内堆砂による取水口の埋没
・ 流木の堆積
③ 生態系の連続性遮断
・ 水中生物の生息空間の連続性遮断
④ 濁水の長期化
⑦ 河道の治水安全度の低下
・ 異常堆積による流下能力低下
・ 貯水地上流末端におけるダムの背砂・背水の
影響による流下能力低下
・ 雑木繁茂による流下能力低下
⑧ 施設被害
・ 河床低下に伴う河岸崩壊
・ 河床低下に伴う護岸堤脚部の被災
⑨ 適切な河床管理
・ 土砂除去、置砂等
③ 取水施設の機能低下
・ 河床上昇による取水口の埋没
・ 河床低下による取水の不安定化
④ 内水面漁業への影響
・ 流出土砂量の減少に伴う産卵・生育場の変
化,および,大洪水による流出
・ (風評被害による遊漁券の売り上げ減)
⑤ 動植物の生息・生育環境の変化
・ 堰直下流の河床低下による魚道の機
能低下
・ アーマー化,河床低下,堆砂等による
生息環境の変化
・ 付着藻類の変化による生育環境の激
変
⑥ 濁水発生による水質変化
・ 出水後の貯水池からの放流水
⑩ 河口の治水安全度の低下
・ 河口部の土砂堆積による流下能力低下
・ 背後施設の浸水被害
・ 流出流木の漂流漂着
⑪ 堆積土砂浚渫
⑤ 海面漁業への影響
・ 港湾施設の埋設
・ 漂流木による船舶の航行の支障や操業中の
トラブル
⑥ 瀬の減少に伴う生息環境への影響
・ 鮎の産卵・生育場の減少
⑦ 海岸利用者の危険性
・ 漂流・漂着木との接触
⑧ 漂着木による環境悪化
⑨ 親水空間の減少
合意形成が必要(地元との意見交換会)
19
Fly UP