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戦後職業病概観

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戦後職業病概観
戦 後 職 業 病 概 観
後 藤 凋
(大阪大学医学部助教授)
野 村 拓
(大阪大学医学部衛生学教室)
目 次
I.序
Ⅱ.政治的・経済的変遷
Ⅱ.産 業 構 造
1.小史-技術の変遷2.中小企業の問題
Ⅳ.労働衛生行政からみた職業病対策
Ⅴ.職業病発生概況
1.労働省業務上疾病統計
2.定期健康診断結果報告
3.特殊健康診断
4.中小企業について
班.化学繊絶工業の場合
-ビスコースレイヨン工業における二硫化炭素中毒について1.ビスコースレイヨン製造工程概要並びに二硫化炭素中毒の発生の機会と症状
2.化学繊維工業労働衛生研究会の成り立ち
3.化学繊維工業労働衛生研究会の活動
-二硫化炭素中毒の実態と研究事情4.技術部会との関係
Ⅶ.総括的考按
-職業病とは何か一一
-
1
-
I.序
わが国における職業病対策についての法的・社会的背景は,第二次世界大戦前と後とでは本
質的に異なる。すなわち,戦後,新憲法により基本的人権が確立され,労働基準法により労働
の場における人権が広範囲にわたって具体的に保護されることになった。戦前にもすでに工場
汰(1916.大正5年施行)があったが,その労働衛生史上における意義は別として,それは職
業病を法的に正当に認めたものとはいい難い。
戦後すでに十数年を経た今日,この画期的事情下で職業病対策が如何に進捗したかをふり返
ってみることは,今後の当該対策の問題点を認識,分析する上に重要なことであると考える。
これが本署の契機であり,本署を題して戦後職業病概観という所以である。
本署のⅡ章からⅤ章までは,職業病発生概況を軸とし,それを支配する因子として政治経済
事情・産業構造・労働衛生行政などの関連事項の変化発展を概括した。これらの諸因子の相互
関係についての分析・考按は筆者のよく為し得ることではなかった。従って,これらの概括は
職業病問題に関心をもつ方々に対して,ささやかな便覧を提供するに止まるであろう。
第Ⅵ章において,二硫化炭素中毒対策を中心とした化学繊維工業労働衛生研究会の戦後の努
力が纏められている。
職業病対策の実効は,一般的には政治・経済・産業・医学を総合した条件の如何によるので
あるが,一企業ないし,一産業については,経営・労務・技術・医務の協調如何にかかってい
る。上記化繊労働衛生研究会は,この協調のわが国における最も優れた例であると考えられて
いるOたまたま,筆者(後藤)はこの研究会の-メンバ-として昭和26年以来研究会活動を内
・外からながめ得たし,わが国のビスコースレイヨン工業現場の大部分をみる概会をもち得
た。 Ⅵ章において,筆者は特定の職業病に対する具体的な対策活動の実例を通じて職業病対策
に必要な組織と手順とを示すと同時に,筆者自身がそこから体得した問題を提起してみた。
最終章において,筆者が主としてⅥ章の具体的経験から得た問題の考按を試みた。その要点
は,職業病とは何かということと,それと表裏の関係にある職業病診断基準との問題である。
また,当該対策組織とそれにおける職業病研究,あるいは当該研究者の役割との問題である。
筆者の専門の故に,考按は主として自然科学の埠内に閉じ込められ,考按を職業病の本来の姿
が潜んでいる社会的背景にまで充分には及ぼし得なかった。
Ⅵ章に示された化繊労働衛生研究会の組織と成果とは,職業病対策の組織活動の優れた例と
して,確かに高く評価出来る。しかし,その成果について医学が果した役割は,医学そのもの
の科学的内容によったというより,むしろ現場医並びに職業病折究者が研究会を通じて化繊企
業全体において占め得た地位によったといい得る。今後の職業病対策の眼目が主として中小・
零細企業にあることについては議論の余地などあるまい。その具体的方策に関して, Ⅵ章の内
容が一つの目標を明示するものと考えるが,それは化繊研究会におけると同じく,中小・零細
企業における職業病対策の医学的活動が当該企業の経営・労務.技術の各面と如何なる関連に
おいて為されるかという問題につながる。
- 2 -
最後に,本署において珪肺問題には,職業病に関する概括的な統計を除き,触れていない。
珪肺は社会問題としてのスケール,行政措置とも職業病中別格である上に,その調査・研究は
他の職業病とは比較にならぬほど豊富である。これを総括・批判することも,また別格とする
が妥当と考える.
Ⅱ.政治的・経済的変化
日本の政治・経済は,敗戦を契機として大きな変貌をとげた。戦後のE]本が蒙った政治的・
経済的な変化は,いずれも歴史的に重要な意味を持つものであるが,それらの中から職業柄の
趨勢に比較的密接な関係をもつと思われる事項について以下に述べる0
1.占領軍の政策
敗戦の結果としてのアメリカ軍の占領は,日本の政治・経済に大きな影響を与えた。占領軍
の政策を大別すれば次の四つとなる。
(1)財閥の解体
(2)農 地 改 革
(3)労働権の確立
(4)財政の民主化
このうち,職業病ともっとも密接な関係をもつものは, (3)の労働権の確立であり,その骨髄
をなすものは労働組合法(1946.2.25公布)および労働基準法(1947.4.7公布)である。特に
労働基準法は,戦後成立した諸立法の中でも,もっとも民主的な法律の一つとされ,戦後の労
働条件の向上に果した役割は大きなものがある。
2.労働基準法の成立とその性格 -1947労働組合法および労働基準法の成立前後の事情は,当時の政治的な力関係を反映して,かな
り微妙なものを含んでいるO アメリカ・イギリス等の先進資本主義国は, E]本産業の国際競争
能力を抑制するためにそれらの法規を必要としたし,他方では,日本の民主化を確保しようと
する勢力によって,それらが要求された。
このような事情の下に成立した労働基準法は,戦前の諸立法に比べると,次の点において進
んだ内容をもっている。
(1)適用範囲が広い。
(2)はじめて8時間労働制が明記された。
(3)労働関係の近代化を企図する規定が含まれている(強制労働の禁止・差別待遇のてっ廃
等)
-13-
(4)労働組合の意見の尊重。
この労働基準法が職業病対策に果した役割については第Ⅳ章以下で具錘的にふれる。
3.インフL/抑制策の失敗とドッiy・ライン -1949以上のような占領軍による民主的諸改革は,政治的な面では一応成功したが,経済的な面で
は難行した。日本経済の非軍事化と民主化とは,占債政策の大原則であったが,戦後数年問に
わたるインフレを抑制することはできなかった。日本の経済復興がインフレのため著しくおく
れることは,占領軍当局の意外としたことであり,少なくとも当初の政策,すなわち日本の経
済を非軍事化しつつ日本をして自力によって復興せしめるという政策について反省をうながし
たようである。ここにおいて占嶺軍は,日本に対する資金援助・賠償の緩和等の政策をとり,
それらは政府のとった「傾斜生産方式」と相侯って,はじめて生産回復の兆が見られるよ
うになった。しかし,それは採算を度外視して全面的に政府の補助金に頼ったものであっ
た。
そこで1948年の末,マッカ-サーは吉田首相に対して「経済安定九原則」を示した。その骨
子は日本が自立するためには輸出の振興が必要であり,それがためには,政府が不換紙幣を発
行して特殊の産業に補助金を与えるという政策を直ちにやめるべきである,ということであ
った。そうして翌1949年には,この政策の実行を監視させるために,ドッジが日本に派遣さ
れた。この時とられた経済政策はドッジ・ラインと呼ばれるが,その基本方針は,通貨の安定
と産業の合理化を目標とした徹底的なデフレーション政策であったから,当然,事業の整理と
失業とを伴なった。
4.占額政策の転換と日本経済の復興 -1952この日本経済の行詰りを救ったのが朝鮮戦争の勃発である。この戦争でアメリカ軍は,その
作戦上必要な軍需品を日本で調達した。ついで緊急の必要が減った後も,アジヤ全体にわたっ
てその共同防衛力を強化するために,アメリカは日本の軍需工業力を利用することを便利とし
た。そしてそれらの設備建設に必要な多くの資材を日本で買付けた。かくして動乱ブームが生
れるわけであるが,この動乱ブ-ムは軍需品と輸出とを中心としたので,一般に鉱業・石炭業
・鉄鋼業・機械工業において発現し,これらの産業はそれぞれ設備を大きくした。
朝鮮戦争を契機として,日本経済は著しい復興を遂げるのであるが,これには占領政策の転
換が大きく作用している。
1947年頃から米ソの対立は次第に激化し, 1949年には中国革命の成功, 1950年には朝鮮戦争
など国際情勢は緊迫の度を増した。このような情勢下にあって,アメリカは極東における日本
の地位の重要性を認め,口本を自己の陣営内に留めるため,次の三つの点において占債政策の
転換を実行した。
(1)日本の共産主義化を阻止すること。
1本の軍事盛地化を促進し,日本をアメリカの防塞化すること。
- 4 -
(3)日本の経済力を強化し,アメリカのために「極東の工場化」すること。
かくして占領政策の眼目の一つであった日本の非軍事化政策は放棄され,アメリカは,日本
の国際的地位を強化するため,占領事態を終結させ,日本の独立を認める政策をとり,この結
果, 1951年に講和条約が調印された。さらにひきつづき日米安全保障条約及び日米行政協定が
調印され,政治・経済面における軍団な日米協力体制が出来上るのである。
そうしてこの時期を出発点として,日本政府は,新しい資本主義的政策を積極的に推進しは
じめるのである。この政策の内容を列記すれば次の通りである。
(1)電源の開発
(2)炭鉱の合理化
(3)合成繊維産業の保護
(4)鉄鋼設備の近代化
(5)硫安の輸出奨励
(6)造船事業の援助
(7)食糧増産方策の推進
上記の計画は,部門によって凹凸があるが,大体1952年から1956年にかけて,政府の強力な
資金援助によって推進され,日本経済は,戦前の水準を超えてめざましい復興をなしとげ,戟
後における経済成長率では憧界第†位を示している。
今日,日本は,主要産業においては,すでに世界的な水準の設備をもっているのであるが,
国民経済全体の上からいえば,なお,その生産の大部分は中小企業に負っている,といえる。
一般に中小企業というときは,その資本金が1,000万円以下,またはその従業員が300人以下の
工業と30人未満の従業員しかもたぬサ-ビス業または商業のことであるが,この規準によれば
事業所数の2996,従業者の84%を,この中小企業が占めているのである。
また労働条件については,技術革新を経た大企業と,中小企業・零細企業との問の格差は増
大する傾向にある。そうしてこの格差の増大は,華々しい成長をとげた日本経済の反面をなす
ものである。
5.今 日 の 問題
戦後日本の政治・経済を通観するとき,政治的には,すでに労働基準法があり,また新憲法
の精神に沿った社会保障制度があり,経済的には,日本の産業は世界第一の経済成長率を示し
ている。従って大企業の労働者については,問題は減少しているのであるが,中小企業・零細
企業の労働者の問題は,依然として残されており,今後ますますウェイトを増大させてゆくも
のと考えられる。従って,これからの職業病の問題・労働者の健康の問題は,日本の労働者の
大部分を雇傭する中小企業・零細企業の動向に密接な関係をもつことになるわけである。
- 5 -
Ⅱ.産 業 構 造
1.小史 -技術の変遷戦後における産業構造の変化の中で,もっとも重要な点は,産業の重・化学工業化であるO
これは繊維などの軽工業が産業の中心的位置を占めた戦前との著しい相違点である。
戦後の日本の産業は,このような基本的な傾向をたどりながらも,各部門でそれぞれ重要な
技術的進歩が達成せられた。その異体的な内容を年表式に整理したものがTab. m.1.であ
る。
この年表を一覧すれば,産業別の技術的進歩・構造的変化が理解されるわけであるが,表示
できぬ点について,以下に補足することにする。
戦後における産業の発展を通観すれば,朝鮮戦争期までは,いわば戦前水準への量的回復で
あり,戦前と同質のものが復興されたに過ぎなかった。そうして,それ以後,技術革新期を通
じて,明らかに異質のものが現われるのである。従って,職業病との関連において産業構造を
眺める場合の問題点は,技術革新期以前と以後における産業構造の変化,及びそれに伴なう作
業条件の変化という問題に集約される。これらの変化を主要産業別に要約すれば次の通りであ
る。
(1)鉄 鋼 業
鉄鋼業は1951年から1953年までの第一次合理化計画及び1956年から1960年までの第二次合理
化計画によって大きな変貌を遂げた。
第一次合理化計画の要点は次の3点である。
i )従来から進行していた原料の事前処理技術の増強o
ii)圧延とくに薄板中心(ストリップ・ミルの導入) 0
iii)川崎製鉄千葉の一貫工場の新設。
これはともに戦後鉄鋼業の戦前とのちがいを示すものである。
また第2次合理化計画は,次の3点に特色がある。
i)新一貴工場計画(八幡・戸畑,鋼管・水江,神鋼・灘浜,住友・和歌山)
ii)純酸素上吹転炉の新設。
iii)圧延部門の合理化。
このような技術的進歩によって,従来責筋労働の典型であった鉄鋼業の薄板圧延作業は,旧
来の手動圧延では生産高1トン当りの労働量7,200カロリーが,ストリップ.ミルの採用によ
って70分の1の104カロリ-の消耗ですむことになったo しかし,他方筋肉労働では疲れた時
に随時休息し,実働率は普通低いのにたいし,ストリップ・ミルではこうした自己調節は不可
能である。さらに直接看視作業の増大,人員の激減から生ずる責任感・束縛感・促迫感,また
緊張感と単調感等,作業密度と心理的負担の増大を訴えるものも見られる。
以上が戦後における鉄鋼業の進歩と,それに伴なう作業条件の変化であるが,これからの鉄
- 6 -
鋼業の動向を示す重要な点は,鉄鋼業の化学工業への進出である。すなわち,製鉄部門の拡充
と平炉の熱効率の改善によってコークス炉ガス(COG),高炉ガスが大量に過剰になり,さら
に今後,酸素上吹転炉の増設によってCOGはまったく不要となる。この廃ガス利用による硫
安製造は,コストが極めて低廉である。さらに硫安だけでなく,たとえばCOG中のメタンの
利用,タール工業の高度の発展すなわちスチロ-ルの合成やその他の合成樹脂への進出の面で
も,あらたな発展の可能性をもっているO こうして鉄鋼大メーカーは独立の化学部門の子会社
を設立して鉄鋼-化学コンビナート結成への動きをみせ,また既存の硫安企業へのCOG供給
による提携の動き(八幡戸畑と東庄彦島または大牟田,富士鉄室蘭と東圧砂川,富士鉄広畑と
別府化学,鋼管川崎と昭電・日東化学)も進行している。
(2)電 力 業
電力業は, 1953年から1957年までの電力5カ年計画によって大きな進歩を遂げた。
水力発電では,大型ダム建設技廟の進歩があったOすなわち,ダムの大型化・多様化と設計
の改良による資材の大幅節減,開発工事の級械化による工事期間の短縮と人員および経費の節
減などであり,その典型例は佐久間ダムである。
また火力発電では, 1952年に完成した九州電力築上火力をはしりとして,つぎつぎに一層大
型化・高温高圧化・オートメーション化した新鋭火力が建設されているO
このような変化に伴ない,ダム建設の場合には,単純筋肉労働の機械化によって新職種によ
る旧職種の広範な代位が生じたし,また火力発電の場合には,オートメ-ション化により,あ
る程度の電気や数学の知識をもって計器看視作業に従事する新しい労働者が,古い重筋労働者
に代位した。
(3)石 炭 鉱 業
石炭鉱業は,もっとも技術の停滞している部門であり,めぼしい技術的改善は, 1950年,ド
イツから輸入されたカッペ採炭法ぐらいである。カッペは切羽での作業能率を向上させ,切羽
の機械化を可能とした。また1952年頃から炭坑の合理化計画が進められ,標準作業量の引上げ
が行なわれた。その結果,労働者1人当り月出炭高は7.7トン(1949)から12.5トン(1954)
に,さらに14.2トン(1956)に上昇した。しかし,この数字は依然として戦前最高の18.9トン
(1933)に及んでいない。
(41化 学 工 業
戦後の化学工業は,肥料中心の平和産業として再建された。そうして戦前水準-の復興がな
されると同時に,硫安工業の多角化とガス源転換が開始された。
多角化の第-は,アンモニアとその製造工程の産物,炭酸ガスの利用でつくる尿菜の製造で
あり,第二は合成繊維原料への進出であったOすなわち, 8カプロラクタム(ナイロン6の中
間原料,東亜合成・宇部興産など),アクリルニトリル(アクリル系繊維の中間原料,東圧・
日東・三菱・住友・日本瓦斯化学など)などの生産である。
これらの変革の中で,根本的なものは,アンモニアのガス源転換であった。アンモニア製造
- 7 -
では敗戦直後一時復活した電解法の地位は低下し,ガス法が圧倒的になっていくが,ガス法の
うち,割高なコークスや石炭などの固体原料法から有利な流体原料法に切りかえることが,疏
安合理化の中心にすえられた。こうしたガス源転換が次第に完成し,それとともに他部門から
のアンモニア進出と競合して肥料工業だけでなく化学工業全体の再編成が進行するのである。
そうしてこのような再編成を通じて,それまでの肥料中心的化学コンビナ-トは解体し,石油
または天然ガスを中心にした新総合化学コンビナートの形成が進むのであるO
いうまでもなく,この変革の中心は,石油化学工業の勃興であり,石油化学工業は,既存の
各種化学工業と全面的な競合関係にあり(カーバイト工業・ソ-ダ工業・タール工業・アンモ
ニア工業等,いずれも深刻な影響を蒙っている)これを通して従来の化学工業の仝体系に衝撃
をあたえ,その再編成を強行しつつある。
かくして,現在ではすでに硫安は,主軸から石油化学廃ガス・製鉄廃ガス・アセチレン製造
廃ガスの副次的部門になりつつある。
(5)擁 城 工 業
機械工業は,戦前水準-の回復が一番はやく,すでに1948年頃には戦前水準に到達し,その
生産量は1951年にはぼ2倍, 1955年にはほぼ2倍半になっている。機械工業の内部は多種多様
であって,一様には扱えないが,もっとも高度の発展を遂げたのは,造船・電機・車軸.光学
機械等の部門である。
造船業を例にとれば,造船技術遊歩の中心は, 1950-1952年の鋲接から電気熔接-の転換,
つづいてこれに対応する1953.-1954年のブロック建造方式の確立,及びモノポール技術の導入
である。これらにより, 1955年には, 1949年と比較して鋼材使用量で2割弱,工数で4割弱の
減少をうみ,船台期間もほぼ半減した。
以上の結果,かって造船業の中心的存在であった鋲接工・穿孔工・境鉄工等の減少と,逆に
電気熔接工・検査工・ガス切断工・取付工の増大をもたらしたO またガス切断とモノポールの
導入は,切削工・罫書工を減少させる一方,原図工のような,まったく新しい職種を増大させ
た。さらに在来職種でも,取付工の多能工化と熔接工の単能工化(一定方向のみの熔接)のよ
うな作業内容の変化があるo
mmmm 因 業
戦前から高水準にあったわが国の繊維技術は1951年から1954年にかけて外国技術を急速に導
入消化して,国際的にトノブ・レベルに立つようになり,全体として労働生産性のいちじるし
い向上を実現した。
綿紡では,機械設備の改善と導入による労働節約的な生産性向上が大規模に行なわれたが,
その要点は次の通りである。
a.工程の節約と連続化。
b.機械の高速化と連続化。
C.掃除の枚械化。
d.中間移送のケンス(管)を大きくしたラージ・パッケージ化0
- 8 -
これらにより,一万錘当りの直接部門工員数は, 1950年の194人から, 1952年には138人,
1960年には94. 3人と減少した。
またこの他,加工部門では樹脂加工,サンフォライズなどがあり,さらに化繊・合繊との混
紡技術も発展した。
綿では,生産性の上昇は著しかったが,原理的に新しい技術はあらわれず,労働節約と製品
の高級品化がすべてであったO
化織の場合には,戦時の空自が大きく,各社の技術代表の海外出張,各社の技術公開(1946
-1949)という異例の努力もあったが,技術改善が本格的に行なわれたのは1951年頃からであ
sa
その主なものはスラ1)-浸漬法(1952年,帝国人絹と東邦レーヨンに導入,以後各社が競っ
て設置し, 1956年には仝化繊設備の半分をしめた) ・連続老成装置・瞬間脱泡機・多孔ノズル
等であり,これらにより全体として工程の連続化・製品の均斉化・時間と労働の大幅な節約が
おこなわれた。
このような改善により,一般的には筋肉労働的な労働負担は減少されたが,一方においてラ
ージ・パッケージ化,受持台数の増加による肉体労働の強化もみられるO
以上は戦後日本の産業・技術の発展と,それに伴なう諸問題について「年表」を補足する意
味で略述したが,これらは主として最先進企業に関するものである。従って次節において中小
企業の問題にふれ,併せて産業構造全体の展望を試みたい。
-9 -
Tab. M. 1.産 業 発 達 史 年 表(1945-1958)の(1)間代日本産業講座」に準拠して作成
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川 昆 ft . わ か 国 最 初 の ス I パ 一 . ハ イ ド ラ フ ト採 用 。
は 2 0d 万 錘 , 人 ㍉
′
l 糸 設 備能
托 ./f <lU ∴二と
て lJU コ , FミLl レ i , ォ 後 ア
J ラ ン テ ク ス i│:S? * J 一}
ろほ か ナ イロ ン
I-l望=法製 造 6)f光 を Jit め た 0
始 O
公 fi lii敵
了
l:間
I'fi O .3 t ), 柁 業 開 始 0
H r態, ア セ T I ト ー フ レ I ク , ア セ T r
ノJ1:ま15 1 t / y
能 3 6 1 / Ll) O
( う ち逆 転 lEl
試 ョ 所 て fT攻 1 F=一
工深 化 間 始 つ
r] 本 レ lri二治 ,y 一
j "iて
,I ポ リア ミ ド系 合 繊 研 究 着 手
造 化 lji 大 1/r工 拐 て ポ J) ビ ニ ル テ グ ス 設 偏 ( u
ィ ラ メ ン トa fL 再 開 。
ト - フ
ポ リ ビ ニ ル 合 敵 試 巧灸設 dill以 元 。
旭 化 成 , 塩 化 ビ ニ リデ ン 系 丹誠 研 究 を 開 始 0
大 E]本 セ ル ロ イ ド( 3 JD ,
人 j,1月生 涯 開 始 0
w u 准 窒 三
!こ( 4 JJ ) ア セ テ ー ト
Tab.正.1 産 圭 発 達 史 年 表 (1945-195S)の(2】
if- ft
4 ′J
閃
i
1 S 4 9
昭 2 -;)
トツ ジ公 使 新 -T -ff につ い て 声 明発 表 ー ドッジ . ライ
ン実施 O
5 J 】 故 山 作法 ,.';蝣
」
> .I;施行 +
Ii
指
l l)」
m 気 Ijf業再 鰯 成 省議 会発 足
醍
12 /J
民 ll'i]輸 lPl再 開 C
GH Q 机 蜘 ′
J技 舶 旨導 開 胎 り
鉄
1 9 5 0
昭 2 5)
1 9 S 1
l1 月
4 /l
5月
民 間 的入 間 始 。
日放 四分 割裏 施 (八 帽 . 富 士 の発 足 ) 。
外 資 導 入法 公 布 施 行 つ炭 蝣
'蝣
Jrrr¥は 管 理 停 止 。
6
8月
gn
朝 '4 動 乱iJ 充 。
鉄鋼 一
才蝣
R ft a 化 包策 曹ffl d l定
i比後 は じめて }d 鉄 輸 入 つ
軍写
7 J
J'l'iuliSC令公布 ′ 9 ノj
志 士 よ .∴七ih v 'V.榊 ㌫ :
10月
昭 26 )
カ ツペ 採 炭 法補 助 金 交 付規 定 施 行 O
買杢璽
磯
野 迄 0 「日糊
朝 lq{休 機 こ全 て
. 月催 0
ヌ柑 Tl;.和 条約 サ ン フ ラ ンシ ス コで 調
障条約潤印0
丸 l-捕
「四大 屯 長森 貴 」方 針 (電 九
鉄 鋼 ) を 示す 0
協 力」 に肘
O 日米 lt 全 保
船弧
石炭,
節 1 次 合 矧 化 (19 55 年 ま で )0
脚 q 7 0 0 トンiL: 抄 て コ ー ライ ト道 内 炭 のみ に よ る操 業 に
成功コ
i'A
3 j3
葺男
(圧 延 設 備 特 に ス トリ ソプ . ミル体 系 中 心 )
業
鋼 の rS 要 減少 し, 並 鉛 の (M
Ji:鉄
金
m
紘
栄
三 井 金凪
ア メ リカの シン グマ ス ク I . プ ラ イ アr l社 募 り
山 .-.H : 型 十・
i "'蝣
蝣
蝣I"技 術を 寸入
r *^ ''.こf il l" せ 設 (昭 軸 29
& 1濃 開 始 ) 。
電
エ
L増 加
G H Q 水 力 グI7d 関 )57E L洋iU r.
電 力 都 濃再 糾完 了, 九
カ 会 社発 足 。
刀
ネ
ノレ 石
エ ロ アEH =に よ り米 久坑 級 は輸 入 ,
宇 部大 浜 坑 3 0 m 切 羽 で カ ソペ採 炭 試 験 成功 ▼ 各 炭鉱 の切 羽
カ ツペ 採炭 法 補 助 金 交 付規 定 施 行 ( 3 月 )0重 液返 炭 . 故 粉
械 械化 .3 .速 に 進 む 0 た だ米技 術 よ り独 技 術 が 歓 迎 され た0
炭 回 収 等 の技 糾進 歩 0
ギ
三 井 三 池人 工 島 完 成 ( 8 月 ) Cl
一 炭
良
業
石
油
太 平 `Ti岸 製 nil所再 玩 許可 rノ
ガ リオ ア盛 会 に よ り巌 初 の肺 由輸 入 0
日石 . カル テ ソ クス合 弁 の 日本 石 油紙 製 (秩 ) 設 」
▼
rI。
化
学
二
工
業
東 洋 レ ー ヨン. ナ イ ロ ン日産 1 トン設 鳩 の 建 設着 手 , 倉 敷
レイ ヨ ン, ビニ ロ ン設 備 を 日淀 1 トンに 拡 張 0
旭 硝子 , 徳 山常 連 , 塩 安 製 造 開 始0
硫 安生 産 戦 前 最 高 水準 を 突 破 0
呉 羽化 学 工 業 B H C 尻!M こ
製造O
ー
:irtll-溜 運転 開
東 fA カ ス, ニ 池 合成 , パ イプ ス チル に よ る通
続i-邦
ォ;,
日立 造 船, B & W 型 デ イ I ゼ ル特 許 概 数.W o
捕 出 船見 玉 島 デ イI ゼ ル共 同 で ス ルザ - と技 術ffi 扶( チ
ィ ーゼ ル ) 。
三 菱 長 崎 , n 立間 呂
7)な どブ ロ ック姐 造方 式 を 導 入 0
口立 造 船 は 日動熔 接 機 を 呼 人 O
-I'r
船
近
機
El{机 トJ j ー 'V 'M <〃二「いiJti& i . "H r j ,八 浅 さな ま し川 トンネ
軸
∵
ン小 . 丁 ∴ l'蝣
!^
機
臼空 タ イノ、ツ, エ ンジ ン- ミ ッシ ョン
に 切+I+ え 0
動
Jii伐
休 組 立 て を流 れ 作 禁
-il王
北 電 力lii葦 築 A 変 芯 肺 こ遠 方 訟 脚 JE川 悦 抗 採 用 。
rTZ
械
トヨ タ, 2 00 0 トリフ ォー ジ ングプ レスを 設 ォ . 又 , 製 造 の
分 散管 理 方 式 を嘩 用 0
いす ず , シ リ ンダ . へ ソ トのマ ル ア イフ ル - ドリ リン クマ
シ ン10 台 を新 設 , 又 , 川 崎 の組 立 ラ イ ンを 延 長 し, 赤 外 線
乾 燥 炉及 び コ ンベ ア を設 脆 , ( 末吉 , 中 子両 エ fi の合 理 化
を 完 了 )0
公 社芯 気 通 信 研 究 魂 を は じめ 各研 究 所 , 大学 , 会 社で
トラ ン ジス タの本 格 的 研 究 開始 さる O
id 通 肌 点 接 触 トラ ンジ ス タの 試 作 に成 功 0
気
i
トー
代.
CO
I
ォ
工
業
哩
カ ツペ I宗7LR 方 式の 柁 用 ▼ それ と と もに カ ツクI 製 作 の研 究
か 地 /i/に な る0
ロI f., 石 川 G , ク ソI エ キ ス 力ベ ー タ製 n .に 着 手 0
業
機
械
技 術& 肌 , ノ}IL工 業 = オ ス カ コI ホ ン(化繊 用 微税 ) , 新 三 菱
主 レ一 ▼
j ン コ ンサ ル タ ン ト(化繊 Jl1枚 仙 ), 三 菱 化工 枚 = ヤ
ン グ氏 ( 'f'^f 池 退 隠 )0
国 仔 の タ イ ヤ モ ン ド一群 I リン グ粍 抜プこ用化 0
三 基 N M L マ イ ニ ング ロ I ダI 製 作 さ る。
日本 石炭 工 業 力 ソペ 試 作成 功
米 デ ンバ - 礼 の 比 正 選鉱 粍 輸 入 0O
建 設 省型 ダ ンプ . トラ ソ ク試 作 0
各 社 小型 パ ワ- . シ ョベ ル 山 生 休引
川 こ入 る0
工機
作械
t
維
工
業
東 仔 レその 他 に ケー ク机 組 i去導 入 され るJ
呉 羽紡 , 塩 化 ヒニ 1) テ ン合 繊 研 先rji】
始0
錨 紡 . .ヒニ ロン製 造 設 イ
尉 iL元 0
Lj 木 合成 化 学大 lFi工 賜 に ポバ I ル抑 迫 設 陥 完 成 。
東 拷 レ. ナ イロ シの工 業化 決 定 マ ル チ . フ ィラ メ ン ト生
産 開始 0
レI ヨ ン . タイヤ コI ト協 同 研 究 会 設_ォ蝣
-
東 fT‥レ, ナ イ ロ ン . ス テ I ブ ル′y 'c 間 始 。
介 敷 レ 山 (ボ バ I ル) . 間 iU ( ヒニ ロ ン) 工 & ア 産 開 始 O
El 紡 ′坂 越 に ヒニ ロン . ステ I プル 工 ft .',建 設 0
艶 消 し人 絹 ノ、艶 lf 州 をLi川 7 マ ル チ人 音日ノ、
普M 糸右凌駕
(生 産 畢 )0
人 絹 部門 て 瞬 its]脱 泡 機, ス ラ ツシ ャI . サ イ ジ ン グ採 用 n
東 洋 レI ヨ ソ, テ ユボ ン社 とナ イ ロ ン に関 す る.技 術 撹 乱
三 井 化学 (名 古 屋 ), 塩 ビ工 場 建 設 。
日本 触 妹, .無 水 フ タI ル酸 真 空 蒸 溜工 場 新 設 。
西 r] 本薙 工 及 び 巾 日本 重 工 , ス ル ザ I と顎 術提 携 0
播 磨造 船 , ス ル ザ I と技 術 提 携 ( いず れ も. デ イ一 ゼ ル )
三 菱長 胤 東 邦海 運 , 束 竜 丸 (9, 83 0 トン) 建 造 , 熔 接 率
芸 監 護 嘉 如 整触
よぴ デ イI ゼ ル聯 設 即 増 強 に若
手0
い す ず, 川 崎 に鋳 物 不 良 対 策 と して メ タ リコン装 置取 付 0
ま た. 末 吉 の サ ン 卜ブ ラ ス トを シ ョ ッ トブ ラ ス トに 取 換 。
トヨタ. B Ⅹ 型 トラ ソ クの製 造 開 始 。 トヨタ, 2 00 0 トン グ
-t 言 芸,1/ 宕謡
㌢昌‡ 超 昌 誓 ま ㌣サ
V7│㍍ 協
鵠
臥
.? ,ト聖
精
霊 左肺
, 原臓
& 蝣
」 IG E と技 的捉 ft ( 発 電 用 タI ビ ン) O
三 逆電 概 , ウ ェステ イ ンJf ハ ウス 及 び ウ ェス テ ィ.ン グハ ウ
昌 Jl 晶霜 完 霜 鳥 禦 岩盈 上郡 .熟
柿
を製 作 (当的 如 '(蝣
- , 111界有 数 の拐 水 発電 所 用 後 器 )。
日立 , 口木 最 初 の肋 .lj任 用 8 万 K V A 三 相 変 圧 器 を製 f rサ
束 l1 , 三 菱電 機 - F] 本 蚊 初 の組 高 圧 送 電 用 28 .7 5 万 V , 5
千 M V A の相 子 型 遮 断 器 を製 作 O
E -J .-T 軌
r] 九 段 初 の 接 触型 も竺流 器 250 V , 5 千 A を 製 作 0
日JLL . 家 庭用 芯 気 冷 ifA J.ド, 電 気 仇 iカ機 な どの 本 格 的 生産 を
閑始O
レr ダI のLー
-'FT:再 開 0
電 通 帆 ゲ ル マニ ウ ムの W l製 に成 功 0
技 * 比仇 , 大 阪 機 皿 = ス イ スル ワ A G ( 机紡 機 ) ▼ 芝 浦 共
撃 竺 言 霊 xU E- 7x T(晶 蒜品 tu )-. 農 雪駄
警 譜 票 ク番
ー
、レヘ - メ - = オ - チ 女
(ス ペ リ- 式 諸 汁 ㌫'t,)!ll 、
tJオ - I+ スノ
エ
J
o tifr 、′
エ レベ - タ( エ レヘ I ク) ー東 洋パ ブ コ ソ ク= バ ブ コ ッ ク&
ウ イル コ ノクス( パ ル プ廃 液 回 収 裟 F O .- 三菱 El木 重工 = 米
C E I (製 紙橡 仙 ), 二 井 造 船= ケ ミカル コ ン トフ ク -/ ヨ ン
(電解 榊 ). 三 枚 工 濃 = ドル オ リバ (化 -Y 諸 綴 臓 )0
H A iE Ji†
1= デ . メル (純 ア ル コー ルノ祁 池 川 ), 三 菱化 工 機
= ア メ リカ ン シ アナ ミド(粒 状 石 灰宴 ,+;製 造装 置 )- 八 幡 製
鉄 = ア I ム コ イ ン タナ シ ョナ ル( :lー
′
板 連 続 メ ソキ装 E ) 0 月
J/L, 三 池 , 湖 山工 業 な ど H 製 チ エ-4 ン . コ ンベ ア を製 作0
池 貝 鉄工 l 溝 ノ□ 工場 に恒 W J定 蔓 を設 毘0
池ユ
1 - 似 旋盤 N 2 0完 成 0
東 揮 レ一光 デ ュポ ンと ナ イ ロ ン製 造 技 糾提 携 契約 (6 月 ) I
東 it-レー ナ イ ロ ン'.¥-J宅 を愛 知 . 名 古 屋工 場 に集 中0
呉 羽 紡 猪 B J一
一
研究 所 で塩 化 ヒニ リデ ン系 令 放 ク レハ ロ ン月
産 10 t 設 備 完 成 , 紡 糸 開 始0
Tab. H. 1.産 発 達 史 年 衰 (1945-1958)の(3)
年
次
1 9 5 2
1月
的
2月
逮
l指
標
日米 行 政 協 定 調 印。
3月
企 淡 合 理 化 促 進法 公 布
7月
FT
E 源 開 発 促進 法公 布 施 行 )
12 月
GHQ
兵 器 生 産 を許 可 0
造 船 利 7 -補 給は 案 決 定 0
古 土 欽広 肌
秩
昭 27V
公 益 弔 文 蚕 , 電 源 開 発 5 カ年 こ
汁l珂発 表 0
ホ ノ ト. ス ト リップ . ざル 改 増 設 0
1 9 5 3
昭 2 8)
1 9 5 4
昭 29 )
1月
ア イ ゼ ンハ ウア I . 米大 統領 に就 任 0
3月
2月
6月
北 上 川綜 合 開 発 計画 閣議 で決 定 0
奥 只見 , 田 子倉 発 電 所建 設 決 定 0 川 鉄 千濫 製 鉄.所 那
1 号高 炉 操 業 0
朝 鮮休 戦 協 定 調 印0
日本兵 器 工 業 会発 足 O
4 月
内閣 に原 子 力 利用 欝 議 会 設 置決 定 D
5 /]
:,-,';'ili?J K 十
抹札 付 ⊥ ㍊ 時 把 ㌫法 上 # 脇 付 ナ
6 月
臨 時 肥 券、
し,訂給 安 定 m , 硫 安 工 業 合邦!化 法 お よび 硫 安
7月
10 月
日米 M S A
四 協定 調 印 0
輪 Hi調 懲 臨糊 lt汀 1,法 公 * ;
川 鉄 千 葉 工場 操 業 開 始 700 トン高 炉 新設 O (戦 後 始 めて の
新 設 一 貫 工 場) 0
鍋
業
大 阪 特 殊製 鉄 (大阪 チ タニ ウム の前 身 ) クロ ール 法 に よ るチ
タ ンの工 発 的∠
上二
産 に 成功 0
同 和鉱 業小 坂 で 流 動滞 焼 炉 を 用 い た 黒鉱 の新 湿 式製 鉄 法 に
よ る操 巣 隅 始 0
日立鉱 0 4, 選鉱 廃 梓の坑 内売 掛 こよ る採掘 法 開 始 0
新 鋭 さ く岩 概 と して ライ ト . ド リフ クI 使 用 増 加 の
罪
鉄
金
属
紘
業
I
質
日立 . 別 子, 尾 去 沢 三 鉱 山で P S コ ン ク .} 一 ト支 柱 採 用 e
日本鉱 業 , 子 会 社 刺 」
け タニ ウム設 立 , チ タ ン生 産 開 始 0
同 和 鉱 業 岡 山製 錬 所 , 流 動熔 焼 炉 を使 用 し て 磁 硫 鉄 鉱 よl 東京 ガ ス で 石 炭 乾 溜 残 約 か ら, 三 菱 金属 直 島で 亜 鉛 製 錬
り, 硫 酸 製造 , 焼 鉱 を脱 飼 して 良 質 製 鉄 原料 を得 る0
残 債 か らゲ ル マ ニ ウ ム回 収 製 錬 開始 0
古河 鉱 業, フ ィ ン ラン ド . オ I トク ンプ 杜 よ り鍋 の 白溶 製
鉄 法 を技 術 導 入 , 足 尾 で 工 業 化 (操 業 開 始 は 昭3 1年 ) O
ライ トド リフ タIJ にニ ユ I マ チ ック . ス タ ン ド軽 A 金 ガ イ
Fl
ドセ ル装 着 , - 人作 業 方 式 を と るよ うに な る 0
九 電築 上 火 力 (発 ) 完 成 (3 -5万 K W ) , 新 鋭 火 力 (発 )の 先 .
火 力 (発 ) 増 設 . 新 鋭 大 容 量化 0
端Q
九電 相 補 (発 ) (14 .5 万 K W ) , 同 築 上 (発,) (17 -5 万 K W )
エ
ネ
等0
力
ノレ 石
国 産採 炭 織 機 導 入 目立 つ ー三 池製 作所 75 .1.弓力 コI ル . カ ツ
日本水 煮 コ ツパ I ス式 微 粉 炭 ガ ス化炉 建 設 .
ク - , n 立 . 三 選 造船 所 耐 煤 型 デ イ I ゼル . ロコ等 0
ギ
t
産
メ炭
石
石 油各 社 , 外 国 賢 本 と技 術 導 入 . 資 金 借入 れ 契 約 0
日石 椅下 松 一 興亜 麻 里 布 わ が国 最 初 のプ ラ ッ ト. フ ォl ミ
ン グ建 設
(U O P , プ ラ ッ ト . フ ォI ミン グ完 成 〔1949 〕)
東 燃和 歌 山 に流 動 式ハ イ ドロ . フ ォI ミン グ装 置完 成 .
日石清 横 浜 に埼 動 式接 触 分 解 装 置 (F C C ) を建 設 e
三 菱 川 崎 テ キサ コ式 フル フ ラI ル 溶 剤精 製 装 置建 設 .
*
一
油
日
日
造
住
旭
筆
」
I追
船
追
牧
檎
尊 航
M
昌 空
戟
m
秩
本
本
を
友
化
カ
瓦
開
化
成
⊥
斯
始
学
,
バ
化
。
.
ダ
イ ト, 密 閉 回 転 式 電 気 炉 を 完 成 0
学 . 新 潟 で 天 然 ガ ス か ら 初 め て メ タ ノ ー ル の 製
ポ リ エ チ レ ン 試 験 工 場 建 設 0
ウ . ケ ミ カ ル と 技 術 提 携 し て 旭 ダ ウ 設 立 0
技 術 提 携 : 三 菱
ン ), 三 井 造 船 =
三 菱 E] 本 重 工 =
(デ ィ ー ゼ ル ) 0
日 立 因 島 , 船 台
造 方 式 に 適 応 )
造 船 ,= エ ツ シ ャ I ウ イ ス
(陛 舶 用 タ ー ビ
エ ツ シ ャ 【 ウ イ ス (ガ ス ク 【 ビ ン ) 0
M A N (デ ィ ー ゼ ル ) 0 川 崎 亜 工 = M A N
を 拡 充 し 桁 接 組 立 工 b] )を 新 設
又 , 流 れ 作 業 方 式 を 採 用 0
( ブ ロ ッ ク 姥
日 産 ー 英 オ ー ス チ ン と 技 術 提 携 一 口 野 デ ィ ー ゼ ル , 仏 ル ノ
I と
ト ヨ
プ レ
い す
に 成
技
タ
ス
ず
功
術
工
,
0
提
熱
場
D
携
処
,
A
0
理 工 場 に 電 気 抵 抗 式 日 動 焼 き も ど し 炉 設 備 ▼
ボ デ ィ 工 場 を 増 改 築 0
4 5 デ イ I ゼ ル ヘ ッ ド 予 ォ* & m 辺 の 乾 式 化 試 作
電
技 術 山 伏 : 東 芝 = R C A ▼ ロ 木 電 気 = R C A , 早 川 ,G 俄 =
R C A , 八 欧 電 織 = R C A , [ 一 木 コ 。. ン ビ ア = R C A
(以
気
ち
抵
械
芝 . 相
良 大 容 量 の 4 . 5 万 K V A ノ帖 冷 却 IH 1 JW 調 抑 機 を 製 作 0
大 阪 変 rf: 器
悶 鵬
初 の ユ ニ オ ン メ ル ト n 政 所 弧 熔 接 機 を
製 紙
奉 型 発 電 機 の 採 用 O マ イ ク ロ ウ エ - プ 回. I線 の 設 if lこ 0
tf :
技 的 捉 挽 : 月 島 機 械 = エ ツ シ ャ I ウ イ ス ( jサ 'C >分 離 機 ) . ≡
菱 塾 船 = 西 独 G S A G (扶 肌 用 文 化
及 び カ :ノ ペ ) , 日 本 製
I
トー
ォr
】
エ
X
業
根
城
工
作
級
械
fl
雑 ‥
二[
ォ
根
所
*
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f]
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,
ソ
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ト
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ア
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ス
リ
ス
グ
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プ
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ッ
毘 竺
ク ソ ド フ I
l} ナ ワ ル ト
ス チ ヤ ル マ
順 リ.
ラ ウ 製 作 0( 鉱
L} ソ プ - ミ
プ . ミ ル W
競
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二 池
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ル 仕
t .の
I
ダ
杜
盲
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上
先
悪
Ik 禦
,-f b1 G ( E* J (h 9 ) o- i t i
ク I パ ル フ
抑 逃
リ ナ ワ J L/ ト 蚊 結 盟 K )
と 捉 祝 し . 大 王H ジ ヨ
′r /f r , M C L - C P 1 3
iy t w 工 業 , 訂 士 製
げ ス タ ン ド 2 兆 製 作
汚 ーt )
津 上 製 作 , 仏 ク }) ド ン ( il 'i 速 ね じ 川 機 械 ) ,
( ロ ソ ク ナ ッ ト, フ ア ス ナ I ) と 技 的 山 伏 0
綿
ラ
*
帝
ly j 介
イ ア
ラ イ
人 .
P Lu
一
ズ
放
同 和 鉱 業 . ド ル コ 式 流 動 賠 焼 炉 お よ び モ ン サ ン ト 式 接 触 設
備 建 設 (岡 山 )0
化 進
. キ
C S
′Y ー レ
む
?. 4 速
ャ ッ プ ,
扱 導 入 ▼
ー ス ラ -}
コ
オ
ス
I
ー
I
I
式
マ
ト
パ
迎
I
マ
ー
続
, ラ I
チ ッ ク
. ハ イ
浸 ii i 法
,
o 神 戸
ウ ク ラ
7
鉄 向 け
( ホ ッ
l
製
ツ
コ
ホ
ト
rK
鋼
シ
フ
ツ
.
米 ロ ビ ン ソ ン
ジ . パ ソ ケ I ジ , フ
. ス プ ラ I , サ ン フ
ド ラ フ ト 普 及 等 O
導 入 。
技 糾 捉 仇 : 三 井 造 船 = エ ツ シ ャ I ウ イ ス (ガ ス タ ー ビ ン 及
び JlJ 変 節 州 逸 機 ) 0 三 菱 日 本 重 工 = M A N , 川 崎 重 工 = M A
N (い ず れ も テ ィ I ゼ ル ) 0 捕 致 = ス ル ザ - (高 速 デ イ I ゼ
ル ) 0 三 菱 出 船 = エ ツ シ ャ I ウ イ ス (蒸 気 タ ー ビ ン 及 び ガ ス
タ 【 ビ ン )0
三 菱 造 船 , U E 型 デ ィ ー ゼ ル . エ ン ジ ン を 完 成 0
三 菱 長 崎 に 1 00 万 ボ ル ト Ⅹ 線 撮 影 装 置 完 成 (高 圧 ポ イ ラ 一
検 査 用 ) 0
い す ず , 英 ル L ツ と 技 術 提 挑 0 ト ヨ タ , カ ナ デ ィ ア ン . ニ
ッ ケ ル . プ ロ ダ ク ツ と 鋳 造 技 術 に 関 す る 技 純 提 仇 0 ト ヨ タ .
節 1 枚 械 工 域 に コ ン ベ ア 設 IS , R 型 エ ン ジ ン 3 5 1 次 生 産 設
備 を 完 了 0 ダ イ ハ ツ , 歯 切 機 械 等 を 導 入 , i ll 休 工 場 を 新 設 5 00 ト ン プ レ ス , シ ェ ル モ I ル ド 鋳 造 装 置 な ど を 設 置 0
日 産 Ⅰ 民 生 デ ィ ー ゼ ル 工 業 ( 秩 ) と 提 携 0
デ イ I ゼ ル 機 一刻 i 巨 キ ハ 1 7 型 製 作 さ る 0
私 鉄 で 高 性 能 電 車 の 採 用 を 始 め る 0
技 的 提 机 : 三 選 = R C A , 松 下 = R C A , 13 本 ビ ク タ ← = R
C A ( 以 上 テ レ ヒ E兇 係 ) . ソ ニ I = ウ エ ス タ ン . エ レ ク ト リ
ツ ク
ト ラ ン ジ ス タ
ゲ ル マ ニ ウ ム くl
E
電
= シ ン
ト ロ ン (芯 は & )
閃 電 丸 山 発 蝣' li / 九
7.2 5万 K Ⅴ A 発 電 機 (発 電 機 の 大 木 塩 化
が 始 ま る ) 0 火 電 鶴 見 ^卯 二 火 力 発 ( 電 所 , 6 . 6 K W 戦 後 , 火
.l ー .'."> t r ; 小
J ★′一 +. 十一t
7 - t: ン 八 サl i ' - M , rt A │ i t J T J の +
用 始 ま る D
p <r . 絞 返 し 71旦電 子 門 式 ア ナ ロ グ = 一 第 槻 製 作 0
新 出 鉄 工 ff u 米 ウ オ シ ン ト ン 社 と 捉 仇 一 新 湘 ウ オ シ ン ト ン
( 株 ) を S i ( ポ ン プ - コ ン プ レ ソ サ I )O 技 術 提 供 : 石 川
代 jJ lL田 i 工化
= 西 独
* =
サ メ I ソ- ト ド( 化リ 学ル ,機
G H H 祉 (い ず れ
ツ シ ャ I
神 戸
0
用化 06 石 ト 川ン FトJ 重ラ 工ッ ,ク .日 ク本 レ 翻 - r cンr r.j製 け 作 1 01 5ス t ク/ レn '2I パ段
延 機 製 作 0 三 選 出 船 , 神 戸 製 制 所 向 け 冷 l川 四
Ln
三
池
む
=工 =ジ テョ
G H H 祉
P5 M !ハ
イキ サ コ コ ン デ プ ベ レ ロ ソプ
- 大 同 製 鋼 〒
ゼ マ I ク
ラ
ロ械
も
,
)I , タ三 I 菱 0造
鉄 柱 ) .* 鳩
1
l
-逆 転の 製式 作分 本塊
股 圧 延 挽 製
船
山
格旺
作 0
l運 工 作 所 , 仏 力 ズ ヌ ー ヴ と 技 術 提 挽 (超 高 速 旋 盤 ) 。
菱 造 船 . エ リ コ ン と 技 術 山 肌 ( if 5 速 旋 盤 及 び 油 圧 倣 装 置 )
貝
.:V I′L m i 看 過 似 旋 盤 A 1 8 及 び 大 型 倣 ロ I ル 旋 盤 ( 総 重
50 ト ン )完 成 O
棉 筋 の 労 M i l.戸Tl性 , 戦 前 水 準 ( 昭
当 り 原 綿 消 班 壷 14 ポ ン ド に 0
9 最 高 )を 汝 館 。 女 工 一 人
東 亜 合 成 , ナ イ ロ ン 6 原 料 カ プ ロ ラ ク タ ム 接 産 開 始 0
人 絹 ス フ 部 門 コ ン ペ ン セ I タ I 付 紡 糸 概 を 導 入 。
ソ I ダ 工 業 , 戦 前 最 高 水 準 果 酵 0
日 本 水 鼠
コ ツ パ 一 ス 式 微 粉 炭 ガ ス 化 炉 建 設 。
大 阪 瓦 翫
常 圧 二 段 式 新 式 パ イ プ ス ケ ル 建 設 。 三 菱 石 油 l
テ キ サ コ 式 フ ル フ ラ I ル 溶 剤 椅 製 法 完 成 0
三 菱 長 崎 , 米 ナ シ ョ ナ ル . プ ロ I チ 社 よ り 最 新 式 ギ ヤ I lt
シ エ I ビ ン グ . マ シ ン 購 入 0
主 霊
‥ 完 霜
ン .
ト ロ lj _
技 的 捉 挽
ン . エ レ
ク
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, .l 一
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松
接
頭 下
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票 至 .,9 禦
且票 譜
吾 等 讐 V(と
. コ ン 'S T 等 新 設 ) 。
: 明 電 舎 = A E G (
ク ト リ ッ ク ,
日 立 =
= ウ
ス タ ン . エ レ
エ
電欝 子 工震 濃 =宗 R C 法 A ( 空1
変 t 君 江等 ) ,
ウ エ ス タ ン
ク い
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信
管
,
.3 謂
ft:w ト*, ラ85
東 芝 = ウ ェ ス タ
.. エ レ ク ト リ ツ
E
ト ラ ン ジ ス
5ン:㌶ ジ ス 翫 タ ) 0憲 、 姦
A K V A , 36 00 rp m 一 三 :E造
,
三
ー ヒ -ン 発 電 機 を 製 作 0 パ ラ メ ト ロ ン の
ニ I , ト ラ ジ ス タ 工 業 化 開 始 0
船 = ケ ネ デ . バ ン サ ン (セ メ ン ト薗 破 訂
イ ( マ イ ン カ 一 口 I ダ ) r 三 菱 化 工 扱 =
′ 二,
理 装 5 ) . 宇 ロ 興 & = ロ ソ シ エ
製 作 = ? ン リ I Iヘ ッ セ (微 粉 回 収 法 K
ン マ ン ド リ フ ク 製 作 に 成 功 ( ラ イ ト ド
フ
六 、本
* t l ,V J 一 一.
い タ I
1聖 0 ソ
尚 、
ノ
使 用 始 ま る 0 日 本 開 発 撤 . ロ ツ 力 I - シ ョ ベ ル 製 作 開 始
久メ 保ン 田ト 鉄. 工タ ,ン 抗ク 打l恥 バの 製ン 造マ 開製 始作 0- 一秋 莞 ダ ム 建 設 用 に 納 入 0
な
塞
技
石
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古
7
F 0 三 女
ど 大 誇
(後 藤 英
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川 島 重
. ガ ス
ン ト 機
河 鉱 業
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呈 高 速 ク
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工 = ジ .ヨ
ガ ス 発
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鉄
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ン ド と 技 サ I 捉 fi , ( ペ ソ ド 型 ′ ー: 産 フ
ソ シ エ テ ヌ I ベ ル と t 4 iW 仇 ( 帆
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業
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置
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大
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,
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0
,
桃
バ イ エ ル と ア セ テ I ト 技 ft l 捉 携 0
ス イ ス . イ ン へ ン タ と ナ イ ロ ン 製 造 技 術 提 携 0
工 場 . ア ク リ ル 系 合 繊 カ ネ カ ロ ン 中 間 試 験 設 備 操
大 型 1 2 m _t 旋 盤 製 什 ()
盤 A 3 130 F U を 製 作 0
パ シ フ ィ ッ ク . コ ン パ I タ I , ピ ン ド ラ フ タ I 等
井 製 網 , 台 紙 漁 網 の 結 節 工 程 簡 責 化 研 究 完 成 0
Tab. M.1.産 業 発 達 史 年 表 (1945-1958)の(4)
年
次
1 9 6 5
昭 30)
1 月 閣議, 経済 6 力年計画大碗決定 (特 : 8 月
関
需脱却と完全雇用)0
M
I
石油資源開発(株)法公布施抗
1
石炭
鉱 業余剰 ヒ臨時措 置法公布 。
t 12月 経済審議会, 経 済長調 6 カ年計画谷
2 j] 日本生産性本部発足 O
礼 経済 自立 5 カ年計画閣議疾定0
7 月 経済審議 会設㌍0 通産省, 石 油化学 一
I
工業育成対策決定0
i
拾
f
9 S
昭 31)
1月
3月
国鉄経営調査会合理化 の徹底をキ
写恥ー
通産省 カI バ イ t.タI ル工党Vf戊
対策 決定0
5 月 繊維工業設備臨時措置こ
法戊立O 柁披
工業振興臨時措置法戊立D
I
F
節 2 次合理 化開始 (圧延設備垣新 およひナ
;T
臥
一貫 プラン ト建設)0
鋼
,
i
で
++
ノ
rこ
三五金属直読製錬所で剃飼陽極柿製方式採
用0
三井金属三池で亜鉛製ふh残醇からゲルマニ
罪
I
鉄
金
属
紘
業
-
核燃料物質 の探私開始0
日本鉱業酸累製鋼法を a si製鉄所 で企濃化
(昭33年操業開始)0
大容量 (発) 建設進む0 九電刈 田火力 7.5
万K W , 九電上椎葉水力 9 万 K W , アーチ
式ダム, 大容量貯水池式 (発) の劃期0
中部電佐久間水力 (発) (35万K W ), 同佐
久間東西幹線 (275K V ) 完成0
東海道線電化なるO
エ 刀
ネ
石
けい肺接公<!.-蝣
ギ
I
ローダ【試用 (切戟積込完全枚械化)。
古河西独プル ンテ と提携,プル ンテ.カープ
炭
産
業 石
油
日窒江迎西独 ウエス トフアリアの レツペ .
ホI ベル輸入O
北炭で 日立製 120馬力ラーメンカ ツクI .
ノ
レ
石油化学工業会社設立相次 ぐ0
スエズ動乱。 タンカI 義邦丸竣工 , 3.3 万
トン, わが国初のスI パI . タンカI 0
- i有
i
ウム回収, 製鉄開始0
電
-
ド. コンベ ア設置0
化
JV .
エ
業
近
船
追
檎
灰法)工場建設開始o
∵二:∴-圭∵ ∴一言ォ---一
東 洋 高圧 千 葉 工 場, 天 然 ガ ス を利 用 しメ タ
ノー ル生 産 を 開始 0
東 京瓦 斯蛸 浜 工 場ベ ンゾ I ル加 圧 水添 精 製
鼓 置 稼働 0
f
船 舶大 型 化 によ り大 ド ック時代 へ 0
運 輸 省, 内 航埠 に ス ク ラ ップ . ア ン ド . ど
薪 三 菱 神 戸 - マ ンモ ス用 乾 ド ック完 成
ル ト方 式 の 採 用 を決 定 。
(6. 5万 トン) 0
車 航 トヨタ. D 型 エ ンヂ ンの生 産開 始 0
トヨタ. 月産 1 万 台 を 目標 と し て 設 備拡
秩 m
充0
昌空
日産 . 鶴見 に叙 造 型彫 工 場 , 熱 処 理 工 場 を
動
完成。
車
東 洋工 業, シ ェル モー ル ド法 採 用 0
北 陸 線電 化 に伴 い. 苫D 70 型 電 気 機 関車 を
新 造 (水 鍛 整 流器 式 )e
トヨタ. プ ラジ∠L/に合 弁 で ラ ン ドクル I ザ
I 組 立工 場 を 建 設 ( 自動 車 プ ラン ト輸 出 の
第 1 号 )0
トヨ タ, デ イI ゼ ル乗 用車 : 及
ヨペ ツ
ラウン
J
の
l パ 【 ド ライヴ 装 置採 用 ) を 発表 。
富 士 重工 . スバ ル を発 表 。
トヨタ - 熱 処 理 工場 , エ ン ジ ン工 場 完成 ー
M
横 河電 概 , 仝 電子 管 式 交流 計 算 盤 を製 作 。
沖 電 気 - ウ エス タ ン . エ レ ク トl} ツク とば
術 提 携 ( トラン ジ ス タ, ダ イオ ー ド) 0
東 電 千 葉 火 力発 電 所 完 成 0
工
電
気
枚
ォ
産
*
*
概
故
エ
作
職
械
技 術 提 携 = 日立 = フ ィ .J ツブ ス, 三 菱 = 7
号 41J 'J,.. 吉 事,R 誓 言 蒜三 号 -f
U >-)V て
テ レ ビ受信 擁 ) ソ ニ- = R C A 及 び IG E ,
富 士 = R C A (以上 トラ ン ジス タ)
トラ ン ジス タ量産 化 (各 社 の工 場建 設 )
琵禦 艶
:# ≡ 撃 幣
日立 ▼ トラ ンジ ス タ工 場 を 建 設 。
貢 XV 賢覧 は 蒜護 護 賢 . 三 菱電 機 . 縫 カ 選鉱 株 製作 。
日立 , ブル ドー ザー製 作 に着 手 0
芝 浦 共 同工 業 . 富 士 製 鉄向 け. ホ ・
y t- ス ト
リップ 4 段 6 基 連続 圧 延綴 製 作 0
栗 本鉄 工 = デ ンバ 一 .(浮 滋 選鉱 機 ) , 川崎
禦
讐義 金 金品 ) EIA JH
M fi (lK :X =3 孟 宗RM Stf G -fe
新 三 菱 ー ペ ロイ トイ ン タナ シ ョナ ル と技 術
提 携 (抄 紙 放 ) 。
(分 塊 圧延 機 ), 石 川 島= 才TJ川 島 フ オス タI
ウイ ラ (石 油化 学 プ ラ ン ト等 )0
三 井 * s機 , ル ノー と技 約 提 携 ( 自動車 専 用
芝浦扱城, 仏 SE A
拷,
倣 装 置) 0 池 貝 , 放 電 加工 機 を 米 国へ 輸 fllo
トラ ンス フ アマ シ ンそ の他 ) 0
新潟鉄工, N ZA
型 嵐車 研 削 盤 を発 表
(上
と技 術 提 携 (電 子管 式
池 貝 . 大 型 精 密旋 盤 D A 100 を製 作 0
下 往 復 研 削ー ク ラウ ニ ン グ研削 が 可能 )0
日立 , 軸 用 トラ ンス フ アマ シン製 作 0
カ ネ カ ロン生 産 開始 (わ が 国最 初 の ア ク リ
川 崎化 成 , 西独 ヘ ンケ ル社 と テ レ フタ I ル
ル 系 合繊 生産 日産 5 .5 t)o
酸 製造 技 術 提 携 (テ トロ ン原 料 ) 。
東 洋 レ三 島工 場 , ポ リエ ステ ル系 合 繊 テ ト
ロ ンの生 産 開 始 ( 4 月 ) 0
日東 化 学 ア ク リロニ トリル生 産 開 始 ( カ ネ
倉 レ米 エア . .) ダ クシ ヨン杜 と ポノ了一 ル 製
カ ロ ン原 料) O
造 技術 提 挽 (技術 輸 山) 。
プ レス工 場 を拡 充 0
日産 , プ レス工 場完 成 , 吉原 に トラ ンス 7
7L マ
ン工 場 新
P シ空
ロ設
ツ0 車
ー 体 工場 拡充 0
哨 成 株 )0
Tab. M. 1.産 業 発 達 史 年 表 (1945-1958)の(5)
年
.
次
閑
逮
1
9
6
7
2月
造 船 利 子 補 給 ▼関 取 の 造 船金 利徴 収
6月
猶 予措 置取 止 め0
石 蕗 化学 10社 石 油 化学 懇 談会 結 成 0
指
昭
32 )
1
12 月
9
5
8
昭
新 国 民健 康 保 険 法成 立 。
I
J
デ フ レ実 行予 算 決 定 0
揺
鉄
1 1月
中小 企 葛 団 体法 成 立 0
八胤
純 酸 素 上 氷転 炉 (50 トン) 操 業 開始 。
33 )
;
富士 鉄 広 畑 , 別 府化 学 問 の ガ ス供 給 計 画 0
鍋
業 .
日本 鉱 業 の 子 会 社東 洋 ジル コニ ウム, ジル
非
鉄
金
属
紘
*
三 井金 属 高 純 皮 イ ンジ ウ ムの 生 産 開始 0
東海 電 極 . 半 導 体用 高 純 度金 属 シ l) コ ンを
刀
ノレ 石
ギ
東電 臓 須賀 火 力 (発 ) (26. 5万 K W ) 着工 .
原 研 第 1 号 実験 原子 炉 完 成 。 ( 9 月 )
大 規 模 水 力 開 発開 始 , 閑電 黒 部 川 第 4 その
わ が国 最 大能 力0 本 邦 初 の ガ ス クI ビ ン発
他。
局 , 北 海 道電 力 豊 富 (発 ) ( 5 千 K W ) 天 然
原 研 国 産 原 子 炉 (琴 然 ウ ラン重 水 型,
ガ ス利 用 0
K W ) 着工 0
1万
原 研 で 「原 子 の 火」 と も る0 ( 8 月 )
大 平 柁 炭 鉱 , コ ンテ イニ ユア ス マ イlナ I 導
貯 炭 1 千 万 トン突 破 0
( 畠月 )
入 0 国 産 カI プ ド - コ ンベ ア ( 日立 . 三 菱
電 機製 ) 使 用 普 及O
炭
m
業
ソネ 一社 よ り シ l} コ シ製 錬技 術 導 入 申 請。
デ ュ ポ ン法 で 生産 開 始 e
ネ
I
ラン製 錬 技 術 導 入 0
三 菱 金 属 , 三 菱電 機 - 日本 電 池 共 同で 仏 ペ
電
エ
原 子 力 燃 料 公 社 , 住 友 金属 - 古 河電 工 , ウ
コニ ウム 製 錬 に成 功 , 生 産 開 始 0
石
油
三菱川 I
∼
崎飼 塩脱 硫 装 置建 設 lい ず れ もわ が 国 最 初 0 I
t
l
.
I
I
I
東燃 和 歌 山 アル キ レ{ シ ヨン装 鼠
飯 野 海 運 タ ンカ l 剛 邦丸 竣 工 4 .6 万 トン,
現 在 我 国最 大 O
i
i
日
建
本
東
化
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近
船
追
檎
卓 航
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動
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1
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東
ガ
尿
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海
ス
素
一
硫
源
プ
式
安
転
ラ
重
,
換
ン
油 常 圧 ガ ス 化 炉
協 和 轍 軌
新 日
q
ト ( H M O ト ン )
法 〕▼ ポ リ エ チ レ ン の 製 造 技 術 導 入 0
呉 羽 化 成 , ク レ ハ ロ ン . プ ラ ン JL ( 日 産 5
ト ン ) 建 設 完 了 0
日 本 レ イ ヨ ン -」 冶 工 場 ナ イ ロ ン ( 日 捉 5 . 5 ト
東 汀
i i t i -: ,
ン )設 佑 完 戊 ( ス イ ス - イ ン ベ ン タ 社 の 技 術
導 入 )0
日 立 H ii . 大 型 タ ン カ 受 注 に 伴 い , 船 台 拡
三 菱 長 崎 - 第 一 , 第 二 船 台 ガ ン ト !> -
川 的 JT.工 ー
張 -
ー ン 補 強 工 't ' o
5 万
〔 チ I ゲ ラ 一 法 〕 ▼ 住 友 化 ' -] "- 〔 l C l
ト ン 船 台 を 新 設 . 又 , 造 胞 鉄 機 工
場 を 拡 充 強 化 し . モ ノ ポ I ル
・ ク レ
( 日 動 ガ ス 切
日
始
入
雷
産 一 二 ソ サ ン U D デ
。 ト ヨ タ , 調 質 工 場
れ - 焼 き 戻 し 炉 完 成
鼓 翫
浩 施
欄
発
I
新
調
,
ゼ
設
整
E
ル 巾
し 一
工 場
D J4 1
製
連
の
製
流 電 気 機 一刻 雄 第 1 号 ) 0
川 的 航 空 胤
ロ ソ キ I ト と 技 的 捉 挽
造 を 開
紘 焼 き
市 締 検
作 (交
3 3 ジ エ ソ ト 機 )0
新 三 菱 ▼ ノ I ス ア メ リ カ ン と 技 術 投 影5 ( F
8 6戦 闘 機 )0
( T -
t l 七 、 九 二 一 件 1 ーI 'j i │ l 9 . 3 ′ i K V A 埼 lU 他
作 0 r∃ A /-. ,
業 杜 ー 佐 久 間 用 10 /j K W フ ラ
c m ' , 5 1 3 ーC ( ポ イ ラ I の m JuA ik i圧 化 ) 0
日 立 . ォs 発 西 東 石- て 変 電 所 用 1 5 . 6 万 K V A 大 容
ン
材
日
ン
東
技
ク
サ
ヤ
オ
豊 変 圧
日ツ 本チ 電の
テ レ ビ
ト ラ ン
シ ス / M 」製 f l C 水 車 効 率 を 一 段 と 向 上 .
F 1 - 榔* n i i′Eこの
ユ 改 良 )
A , I刻 電 殿 山 月 1 1 - 7 万 K W , 7 1 m カ プ ラ
水 l ll d it 界 的 苗 落 差 カ プ ラ ン ) 0
電 新 東 京 火 力 用 ポ イ ラ - 2 8 0 t/ h 9 8 k g /
術 捉 仇 = 千 代 田 化 工 = ケ ミ カ ル プ ロ ジ エ
ト (石 油 化 学 等 )。 新 三 菱 = ジ ョ ー ン ズ &
ン ズ ( 製 紙 織 機 )O 荏 原 製 作 = ア リ ス チ
I マ ー ス (水 力 タ I ビ ン )a
I エ ム 紡 織 = ラ ル フ A R (開 綿 挽 ) 0
川
旋
納
型
ll
東 経
t ,
ン 生
呉 羽
5 t )
倉 レ
(L V
蛇
級
旋
.
T'
川
胤
蛇
経
X ., 仏 ベ ル テ .イ
,rl E j ,J 管 M 蜘 倣 装
ベ ル テ ィ 工 と
) 。
済 旋 盤 E N 18
火 ′Y ーガ ス 化 学 設
:
日 本 触 媒 . 直 接 酸 化 に よ る エ チ レ ン グ リ コ
. ロU ' ur)i ー.ナ ス ∼山 こ 上 る 加 圧 分
然 ガ ス に よ る C C C 法 如
工 L+l 拙 .段 。 火 J JL ミ 瓦 斯 豊 洲
.
l
L
l
I
l
I
住
着
守
i と 捉 臥
X.
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人
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ト , 肥 n J 日 を 汝 (K O
エ ソ シ 十 I ウ イ ス と 技 術 捉 K
日
製
力
日
器
気国
生
ジ
製 作
産 化日
産 本
ス タ
( 変 圧 器 の 大 谷 立 王化 が 進 展 ) 0
ク ロ ス バ ー ス イ
に立 成 沖功 電0 気
格 化 。P
ラ ジ オ 製 品 化 開 始 0
立 . カ ツ タ I ロ I ダ - H F C L D O M E 12 0
作
(運 続 採 炭 方 式 に 適 応 世 界 的 大 山
) 0
立 造 船 型 連 続 式 パ ル プ 製 造 装 置 完 成 。
備
0
( 日 産
5 ト ン ) 着 工
ス ー パ ー タ ン カ I 建 造 用 に 船 台
ド ソ ク 拡 張 工 IK
い
衆
ソ
ツ
日
ロ
シ
い
す
か
ク
シ
産
ソ
ン
す
ず
試
を
l1
ク
据
ず
. ニ ュ
作 第 1
発 表 (
. 、ト
オ ー ス
及 び ヘ
付 , オ
. 鶴 見
技
れ
電
に
富
計
術
も
通
成
士
算
提
ク
研
功
写
機
携 : 東 芝
I ビ ン 発
, パ ラ メ
0
真 フ イ ル
F u ji を
製
メ
製
0H
鋼 - ア リ ス チ ヤ I マ I と 技 術 捉 ォ
ン ト 級 棟 , パ ル プ 紙 概 械 ) 0
作 所 一 国 座 最 大 の し ゆ ん せ つ ポ ン プ
O 完 成
N B C に 納 入 0
神 戸
( セ
荏 原
(18 5
ー
号
国
ラ
チ
ッ
I
の
ヒ
を
産
ン
ン
ド
ス
ヒ
ル
允
大
ス
加
チ
ル
マ ン
丸
型 4 t
ミ ッ
ジ ュ
工 用
ン の
マ ン
発
F
最
シ
ニ
の
M
工
表 O
A 6 3
初 の
ョ ン
ア の
ト ラ
窟 化
E) )を
ト ヨ
A A
シ ン
を 採
シ リ
ン ス
を 完
完 成
タ
型
ク
用
ン
フ
了
,
, 大
ト ラ
ロ メ
) O
ダ プ
ア マ
0
ヒ ル
l マ ン の エ ン ヂ ン ギ ア ボ ッ ク ス の 国 産 化 を 完
… T・ o4 ノ 、 ツ , 多 軸 白 地
ガ ス 渉 脚
な ど を
l
馳
;
速 10 0 k m ) 0 石 川 島 重 工
,
> IG E , U 立 = IG E ( い ず
電 機 )
ト ロ ン0 応 用 電 子 交 換 扱 試 作
ム - わ が 国 故 初 の 自 動 電 子
発 表 0
を 完 成 。
( 日 産 30
場 ナ イ ロ
帝 国 人 綿 . テ ビ ロ ン 設 備 ( 日 産
拡 充 O
芝 fl i 工 概 . % 子 倣 式 立 タ レ ,/ ト 旋 盤 製 作 。
工 と 技 術 捉 fi
(立
置 )O
技 術 捉 放 (単 支 柱
レ ▼ ナ イ ロ ン 大 量 生 産 開 始
坐 3 1年 36 t に )J
B レ 宇 治 工
産 開 始 。
化 成 錦 工 場 ク レ ハ ロ ン 製 造 設
撰 集 開 始 0
高 強 力 ビ ニ ロ ン の 製 造 に 成 功
ル 製 造 に 成 功 0
友 化 学 , 帝 石 と 提 携 , メ タ ノ ー ル 生 産 に
手 O
弊
苛 ,J レ 姦 姦 遺 品 a 監 闇
蟹
油 投 船 軋
(可 変 節 推 進 機 )0
竣 工 0 第 三
イ
を
ー
表
m
tラ ∴ン トi F T l ヒ l7
T ン モ
文 開 始
力 I バ
三 選 L t 崎 , 新 柄 J E :工 n l . 移 血 Ft i 収 熔 接 工 場
断 機 ) 等 を 導 入 0
石
型
芝
作
立
m . 池
-械
工
フ
い
油
ポ
-サ
解 .lT クン
日 本 丸
月三 サ M
工 V A x
f T成 川
完 成 0
三 井 化 学
業
ft
産
設
宅
洋
東 亜 合 成 , ペ ン ゾ 一 ル 法 に よ る シ ク ロ ヘ キ
サ ノ ン オ キ シ ム (ナ イ ロ ン 原 料 )生 産 開 始 。
旭
生
日
I
ン
化
産
本
ル
原
成
準
触
製
料
I1
. ア ク ,. ル 系 合 組 ( カ シ ミ ロ ン )
備 を 関 始 0
i
蛇 - 直 接 酸 化 に よ る エ チ レ ン グ リ コ I
造 に 成 功 ( ポ リ エ ス テ ル 合 繊 テ ト ロ .
)。
l
I
.
( ジ エ
1王鑑
識
畏 措
き 金 芙 モ晶
∼ 謡
蒜
IG E と 技 術 提 携
y ト . エ ン ジ ン ) 0
電 気 試 験 汎
ト ラ ン ジ ス タ 電 子 計 算 俄
L M a r k J l[ を 完 成 。
E T
2.中小企業o│,".j噛
日本の産業の構造的特徴は,一方において巨大な独占資本,大賀本の発展がみられながら,
他方においてきわめて広汎に中小企業業が存在し,全労働者の中で,中小企業や零細企業の労
働者のしめる比重が異常に高いことに示される。
Fig. M. 1.日本鉄鋼業の構造
数字は「製鉄業参考資料」 1957年,および「工業統計表」 1956年による・工場数は従
業員3人以下をも含む-現代El本産業講座Ⅱ鉄鋼業(1959,岩波書店)より転載
鉄鋼業を例にとれば,その構成はFig. H.I.の如くである。すなわち,このピラミッドの頂
点には鋼材生産の70%を占めるマンモス企業8社(労働者10万人)が位し,その下に残り30%
の鋼材を生産する数百の鉄鋼会社(労働者9万人)および,これらの鉄鋼業から流れ出る鋼材
を加工する3万の零細企業が位している。この零細企業には40万人の労働者が働いているが,
その賃金はだいたい頂上企業の労働者の賃金の半分またはそれ以下であるo
また織維工業の場合にはFig. M. 2.のような構成となる。現在,繊維労働者数は120万人
におよんでいるが,そのうち,化・合繊労働者は約7万,紡織労働者は約113万人である。
しかし,化・合繊労働者は,そのほとんどが大企業労働者であるのに反し,紡織労働者では零
細・小企業の労働者の割合が非常に多く,しかもこの傾向は,戦後,かえって強化される傾向
にある。
以上のように,日本の中小企業がそれぞれの産業の中で大きな比重を占めていることは明ら
かであるが,これを国際的に比較した場合にも,日本の中小企業は,欧米諸国に比べて圧倒的
に数が多いとされている。
-20-
更に賓的な面,例えば賃金につい
ては, Fig. M.3.の如く,大企業・
中小企業間の格差が著しく,しかも
それは年とともに拡大する傾向にあ
る,,
前節で述べた抜術革新の華々しい
動きも主として前記ピラミッドの頂
点もしくはそれに近い部分で行なわ
れたに過ぎない。従って,大企業と
中小企業への分極傾向は益々進行し
ているわけであるが,この分極傾向
の内容は決して単純一様のものでは
HM
現代日本産業講座Ⅶ織維産業(1960,岩波書店)
P.284による。
両者の問には,いわゆる系列化の
問題がある。大企業が部品外注や原
料加工のために中小企業を利用する
ことは戦前からの通則であったが,
戦後においても大企業は,危険負担
の回避・賃金格差の利用・組織労働
者の圧力回避などの意図から,中小
企業を下請として利用している。し
かし,技術革新期以後においては,
中小企業の育成と監督が独占的大企
Fig. M. 3.賃金格差の国際比較(製造業)
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メ
業自体の必要となり,親企業が,傘
イ
ギリ
ス
下下請企業群の中からとくに優秀な
日本
ものを選別して,これに株式参加・
数字は各国工業サンセスによる日本生産性本
金融的援助・重役派遣による経営指
部の調べによる。 -現代日本産業講座I
導,とくに品質管理を通ずる技術指
近代産業の発展(1959,岩波書店)より転載
導など,育成と支配を強化し,それを自己の経営計画の内部に編入する動きが強くなった。こ
のような単純下請から選別系列化-の移行は,親企業の支配力の強化と経営の充実を達成しな
がらも,一方において,一部中小企業の水準向上をもたらしはじめている。しかしその反面,
選別から洩れた中小企業は没落せざるをえない状態にあり,それらの非選別中小企業およびそ
の再下請零細企業は,日本の産業構造の底辺をなしている。
最後に,大企業とその下請中小企業との問の作業内容の差異の問題であるが,これについて
の系統的な研究はまだ行なわれていないようであり 2, 3の例を挙げるにとどめるO
まず,化学工業の場合を例にとればアンモニア合成の作業と,その最終製品である硫賓のP^
-当主-
語の作業との問で経営上の一線が引かれ,臥詰めの作業は,下請企業や臨時工の仕事となって
5」*
また鉄鋼業においては,鉱津処理や定期の炉修理は,多くの場合下請企業の仕事であり,こ
れに従事する労働者は,高熱の下で作業しなければならなくなり,低賃金労働の上に,著しい
苛酷さが加わることとなった。鉄鋼業だけに限らず,大企業が,危険な作業はなるべく自分の
ところでやらずに,下請に出すという傾向は,すでに各方面で指摘されているところである。
Ⅳ.労働衛生行政からみた職業病対策
労働基準法施行以来,職業病対策に関して発せられた各条文の解釈,指導指針などについて
の通牒は枚挙にいとまがない。また幾つかの規則も新たに公布された。これらの一半は戦後の
急速な産業事情,構造の変化にからむ現場の職業病発生に即応,対処するためのものである
が,他は牢固たる中小・零細企業の不良衛生管理事情改善を目標とした努力・試行のためであ
ると考えられる。
その主なものを次にあげる。
(1)所謂恕限度通牒,昭和23.8.12,基発1178号。
(2)四エチル鉛危害防止規則,昭和26.5.1,労働省令第12号.
(3)職業病特殊検診についての通牒,昭和31.5. 18,基発第30号。
(4)電離放射線障害防止規則,昭和34.3.31,労働省令第11号。
(5)有機溶剤中毒予防規則,昭和35. 10. 13,労働省令第24号。
以上のうち,職業病対策上その内容が包括的かつ基本的であるものとして,恕限度通牒,特
殊健康診断通牒,有機溶剤中毒予防規則の3ツに注目したい。すなわち,職業病対策の基本は
の基準が定められる)する点で,職業病対策上画期的な内容をもつもので,問題の最終段階に
行政的一歩を印したものといい得る。
衛生管理,あるいは職業病対策を積極的に指導向上せしめ得るものは法であり,技術である
とするならば,法に関してはその基本的方向はまず提示しつくされたのではあるまいか。筆者
がおそれるのは,法の示す基本方針と中小企業の実状との間の大きい隔りが常識化することで
ある。
上述の3ツの通牒,規則は本署の趣旨と関係が深いから,以下それぞれの要所を附記する.
(I)所靖恕限度通牒,昭和23.8.12,基発1178号O
安第48条にいう鉛,水銀,クローム,批素,黄燐.弗素,塩素,塩酸,硝酸,亜硫酸,硫酸,二硫化炭
鼠 青酸,ベンゼン,アニリン,その他これに準ずる有害物の粉じん,蒸気又はガスを発散する場所に於
ける業務。
(1)本号の場所とは作業場の空気がこれらの物質のガス,蒸気又は粉じんを左の限度以上に含有する場
所をいう。
鉛(lm3中0.5mmg),水鍍UmS中O.lmmg),クローム(lm'中0.5mmg),放棄(1),東風2),弗
素(3),塩素(1),塩酸(10),硝酸(40),亜硫酸(10),硫酸Im'中5g),一酸化炭素(100),二硫化炭
素(20),青酸(20),ベンゼン(100),アニリン(7), 単位は特記しないものについては100万分の1
単位とする。
(21その他これに準ずる有害物とは,次のものをいう。
鉛の化合物,水銀の化合物(朱のような無害なものを除く),燐化水素,批素化合物,シアン化合
物,クロ-ム化合物,臭素,弗化水素,硝気(酸化窒素類) ,アンモニア,ホルムアルデヒド,エ
-テル,酪酸アミル,四塩化エタン,テレピン油,芳香族及びその誘導体,高濃度の炭酸ガス,但
し分量軽少で衛生上有害でない場合はこれを含まない。
(2)職業病特殊検診通牒,昭和31.5.18,基発第30号。
職業病特殊検診について
基発第30号
昭和31年5月18日
労働省労動基準局長
都道府県労働基準局長殿
特殊健康診断指導指針について
標記指針を別紙のとおり定めたので,これに基いて特殊健康診断が適切に実施されるよう格段の配意を
致されたい。
なお本年度に於いては差し当り衛生管理者を選任すべき事業場について指導することとされたい。
追って特殊健康診断が実施された結果を左記事項について取縛め昭和32年3月末日迄に報告されたい。
記
1.有害業務(又は有害のおそれある作業)別受検労働者数及びその実施検査項目別異常所見者数
2.使用者等の意見
(別 紙)
特殊健康診断指導指針
(略)
-23-
(別 紙)
有・害又は有害のおそれある主要な作業
(16種,略)
^mヨ
検珍対象業務,検査項目及び検査方法
検 査 対 象 業 務
ラジウム放射線,エックス
線,その他の有事放射線に
さらされる業務(紫外線,
赤外線を除く)
検 査 項 目
1.赤血球及び白血球数
i
I 2
皮膚の障害
検 査 方 法
メランジュ-ル法又は東大
公衆衛生教室法
視診
i
紫外線,赤外線にさらされ
る業務
眼の障専
視 診
けい肺を除くじん肺を起し r
又はそのおそれある粉じん[
胸部の変化
エックス線直接撮影
強烈な騒音を発する場所に
おける業務
1.聴力の異常
2.聴器の自覚障啓
Z^Ei田OHE
鉛その合金若しくはその化
合物をとり扱う業務又はそ
の蒸気若しくは粉じんを発
散する場所における業務
(四エチル鉛を除く)
1.血液比重
2.好塩基点赤血球数
硫酸銅法
3.尿中のコプロポルフィ
フィッシャー法
を発散する場所における業
務
問 診
ギムザ法又はライト法
リン
4.鉛 緑
5.上下肢伸筋麻挿及び知
視 診
視診,問診,触診
fi異常
6.便秘,痛痛等
7.鉛顔貌
8.頭痛,不眠及びめまい
問 診
1視 診
Y 問 珍
蝣・$
水奴,そのアマルガム又は
化合物(但し朱のような無
害のものを除く)を取り扱
う業務又はその蒸気若しく
は粉じんを発散する場所に
おける業務
1.尿中ウロビリノ-ゲン
及び蛋白
ウロビリノーゲン--・エー
ルリッヒ試薬を用いる法
蛋白°--ズルフォサリチル
酸試薬を用いる法
クローム又はその化合物の
蒸気若しくは粉じんを発散
する場所における業務
2.歯敵炎等
3.手指振顛
4.血性下痢等
5.不眠,頭痛等
視 診
1.鼻炎.潰癌,鼻中隔穿
視 診
孔等
2.皮膚の障害
視 診
視 診
問 診
問 診
I
[
1
8 】
t
マンガン又はその化合物を
取り扱う業務又はそのガス,
兼気若しくは粉じんを発散
する場所における業務
1.四肢特に指の振額,小
事症,突進症等
2.撞カー 背筋力の障害
】
一糾-
視 診
スメツドレ一式握力計を用
いる法及びKY式背筋力計
を用いる法
黄燐を取り扱う業務又は燐
の化合物のガス蒸気若しく
は粉じんを発散する場所に
おける業務
1.顎骨の変化
エックス線撮影
有機燐剤を取り扱う業務又
はガス,蒸気若しくは粉じ
んを発散する場所における
業務
1.血清,コリンエステラ
ーゼ活性値
2.多汗,縮臨 眼験,顔
面の筋せん維性撃縮
PHメータ-を使用するマ
イケル変法
問診,視診
亜硫酸ガスを発散する場所
における業務
1.歯牙の変化
2.消化器系の障曹
視 珍
問 紗
二硫化炭素を取り扱う業務
又はそのガスを発散する場
所における業務
1.頭痛,下肢倦怠,焦燥
感等
2.網状赤血球数
問 診
プリラントクレジルブラウ
汰
ベンゼンその同族体を取り
・扱う業務又はそのガス,慕
13 l気を発散する場所における
-'・"蝣:-
ベンチヂンを取り扱う業務
又はそれらの蒸気若しくは
粉じんを発散する場所にお
ける業務
15
前記以外のベンゼンのニト
ロ,アミド化合物を取り扱
う業務,又はそれらのガス,
蒸気若しくは,粉じんを発
散する場所における業務
脂肪族の塩化又は臭化炭化
水素を取り扱う業務又はそ
れらのガス,蒸気若しくは
粉じんを発散する場所にお
ける業務
16
1.赤,白血球数
メランジュール法又は東大
公衆衛生学教室法
2.尿中のコプロポルフィ
フィッシャー法
リン
1_ 潜血反応及び沈漬検鏡
2.血液比重
潜血反応---トリヂンを用
いる法
硫酸銅法
1.血液比重
硫酸銅法
2.ウロビリノーゲン,コ
糖 二一ランデル法
プロポルフィリン及び
糖
3. チアノ-ゼ
視 診
1.血 圧
2.白血球数
3.血液比重
リパロッチ氏血圧計を用い
る法
メランジュール法
硫酸銅法
4.ウロビリノケサン及び蛋
ウロビリノゲン一一エール
n
リッヒ試薬を用いる法
蛋白一一ズルフォサリチル
酸試薬を用いる法
5.複 視
6.疲労感,めまい,吐気
問 診
問 診
(3)有様溶剤中毒予防規則,昭和35年10月13日,労働省令第24号0
第1章 総 則
第1粂
1項 (略)
2項 有機溶剤は,次の表の下欄に掲げるところにより,第1種有機溶剤から第3種有機溶剤ま
でに区分するものとする。
-25-
】--2(cjiy5iゥ
2.SU^!j121t?--5fcゥゥ<3-ゥ;S」tl
-3T%m%2Kmtfzb<。%mmm<&!ョi<Dmm<D5,<!-
(以下略)
第2粂∼第4条 (略)
第2章 施 設
第5条-第13条 (略)
第3章 換気装置の性能等
(局所排出装置のフード)
第14条 局所排出装置のフードは,次の各号に定めるところに適合するものでなければならない0
1有機溶剤の蒸気の発散源ごとに設けられていること。
2 有機溶剤の蒸気の発散源にできるだけ近い位置に設けられていること。
3 作業方法,有槻溶剤の蒸気の発散状況及び有機溶剤の蒸気の比重等からみて,当該有機溶剤
の蒸気を吸引するのに適した型式及び大きさのものであること。
(排風機等)
第15粂 局所排出装置の排風機は,当該局所排出装置に空気清浄装置が設けられている場合は,清浄後
の空気が通る位置に設けるようにしなければならない。
2 全体換気装置の送風機又は排風機(ダクトを使用する全体換気装置にあっては,当該ダクトの
開口部)は,できるだけ有機溶剤の語気の発散源に近い位置に設けなければならない。
(局所排出装置の性能)
第16条 局所排出装置は,別表第4の上欄に掲げる型式及び同表の中欄に掲げる区分に応じて,それぞ
れ同表の下欄に掲げる制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。
2 前項の規定にかかわらず,次の各号の1に該当する場合においては,当該局所排出装置は,そ
の換気畳を,発散する有機溶剤等の区分に応じて,それぞれ次条に規定する全体換気装置の換
気量に等しくなるまで下げた場合の制御風速を出し得る能力を有すれば足りる。
1算6条又は第7灸の規定により局所排出装置を設けた場合
2 第5粂又は第8条の規定により局所排出装置を設けた場合であって,第10条罪1号又は第2
号に掲げる場合に該当するときo
(全体換気装置の性能)
罪17条 全体換気装匿は,次の表の上欄に掲げる区分に応じて,それぞれ同表の下欄に掲げる式により
計算した1分間当りの換気量(区分の異なる有機溶剤等を同時に消費する場合は,それぞれの
区分ごとに計算した1分間当りの換気量を合算した量)を山し得る能力を有するものでなけれ
ばならない。
-25-
消費する有様溶剤等の区分1 1分間当りの換気量
第1種有機溶剤等 i Q-0.2W
第2種有機溶剤等 Q -0. 03W
第3種有機溶剤等 Q -0. 008W
この表において, Q及びWは,それぞ
れの次の数値を表わすものとする。
Q 1分間当りの換気量
(単位立方 メ-トル)
W 作業時間1時間に消費する有機溶剤
等の量(単位 グラム)
2 前項の作業時間1時間に消費する有機溶剤等の畳は,次の各号に掲げる業務に応じて,それぞ
れ当該各号に掲げるものとする。
1第1粂第1項第3号イ又はロに該当する業務 作業時間一時間に蒸発する有擁溶剤の畳
2 第1粂第1項第3号ハからへまで,チ,リ又はルに該当する業務 作業時間1時間に消費す
る有放溶剤等の畳に労働大臣が別に定める数値を乗じて得た畳
3 第1条第1項第3号ト又はヌに該当する業務 作業時間1時間に接着し,又は乾燥する物に
それぞれ塗布され,又は附著している有機溶剤等の畳に労働大臣が別に定める数値を乗じて
得た量
3 (略)
第18条 (略)
第19粂 (略)
第4章 管 理
(衛生管理者の職務等)
第20条 有概溶剤業務を行う事業の衛生管理者及び有概溶剤業務を行なう事業のうち衛生管理者を選任
することを要しない事業の使用者は,次の事項を行なわなければならない。
1有機溶剤業務を行なう屋内作業場,タンク,船胎及び坑を毎週1回以上巡視し.並びに居所
排出装置及び全体換気装置を毎月1回以上点検し,有機溶剤による中毒の発生するおそれが
あると認めた場合は,それぞれ必要な措置を講ずること。
2 有槻溶剤による中毒の発生の防止に必要な注意事項を関係労働者に周知させること。
3 巡視及び点検の結果の記録その他職務に関する記録を整備すること。
2 前項第1号の規定による局所排出装置及び全体換気装置の点検は,次の事項について行なわな
ければならない。
1フード及びダクトの磨耗,腐蝕 くぼみ,その他規傷の有無及びその程度
2 ダクト並びに送風機及び排風概におけるじんあいの推積状態
3 送風機及び排風機の注油状態
4 ダクトの接続部におけるゆるみの有無
5 電動機とファンとを連結するベルトの作動状態
6 ダンパーの開閉状態の適否
(掲示)
第21条 使用者は,屋内作業場,タンク,船艇又は坑において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合
は,次の各号に掲げる事項を,作業中の労働者が容易に知ることができるよう,見やすい場所
に掲示しなければならない。
1 有槻溶剤の人体に及ぼす作用
2 有機溶剤等の取扱い上の注意事項
3 有機溶剤による中毒が発生したときの応急処置
2 前項各号に掲げる事項の内容及び掲示方法は,労働大臣が別に定める。
(有枚溶剤等の区分の表示)
第22条 使用者は,屋内作業場,タンク,船艇又は坑において有機溶剤業務に労働者を従事させる場合
は,当該有機溶剤業務に係る有機溶剤等の区分を,作業中の労働者が容易に知ることができる
よう,その区分に応じて,それぞれ次の各号に掲げる色をもって,見やすい場所に表示しなけ
-27-
ればならない。
1第1種有機溶剤等については赤
2 第2種有機溶剤等については黄
3 第3種有機溶剤有については育
(タンク内作業)
第23条-第24粂 (略)
第5章 保 護 具
第25条∼第27粂 (略)
第6章 健康珍断
(定期の健康診断)
第28条 使用者は,屋内作業場,タンク,船胎又は坑において,第1種有機溶剤又は第2種有機溶剤等
に係る有機溶剤業務に常時従事する労働者については,労働安全衛生規則(昭和22年労働省令
第9号)第49条第3項の健康診断を, 6月以内ごとに1回,定期的に,行なわなければならな
い。
(健康診断の項目)
第29粂 前条の労働者に係る労働安全衛生規則第48条及び第49条第3項の健康診断においては,同規則
第50条の規定によるほか一 次の各号に掲げる項目について検査又は検診を行なわなければなら
ran
l 頭重,頭痛,不眠,焦そう感,めまい,下肢けん息 神経痛,食欲不振,胃の症状等神経系
又は消化器系障書の有無
2 赤血球数又は仝血比重
3 尿中のウロビリノーゲン及び蛋白の有無
(健康診断に関する記録)
第30条-第31条 (略)
第7章 測 定
第32条 (略)
第八章 有機溶剤等の貯蔵及び空容器の処理
第33粂一第34条 (略)
i^Hl
この省令は,昭和35年1月1日から施行する。ただし,第2章及び第3章の規定は.昭和36年4月1日
から施行する。
別表第1
クロロホルム(トリクロルメタン)
四塩化アセチレン(四塩化エタン,テトラクロルエタン)
四塩化炭素(テトラクロルメタン,カーボンテトラクロライド)
二塩化アセチレン(ジタロルエチレン,アセチレンジクロライド)
二塩化エチレン(ェチレンジクロライド)
二硫化炭素
ベンゼン(ベンゾ-ル)
別表第2
アセトン(ジメチルケトン)
イソアミルアルコール(イソプチルカルビノ-ル)
イソプチルアルコール(イソブタノー蝣"蝣', 2-メチループロパノ-ルー1)
イソプロピルアルコール(イソプロパノ-ル,ジメチルカルビノ-ル)
ェチルエーテル(ェーテル,ジエチルエ-テル)
ェチレングリコールモノエチルエ-テル(セロソルプ)
-28-
エ≠レングリコールモノエチルエーテルヂセナ-ト(セロソルブァセテート)
エチレングリコールモノプチルエーテル(プチルセロソルプ)
ェチレングリコールモノメチルエ-テル(メチルセロソルブ)
オルソジクロルベンゼン(1* 2-ジクロルベンゼン. 0-ジクロルベンゼン)
キシレン(キシロール)
クレゾール(クレゾール酸)
クロルベンゼン(塩化ベンゼン)
酢酸アミル(アミルアセテート)
酢酸イソアミル(イソアミルアセテート)
酢酸イソプチル(イソプチルアセテート)
酢酸イソプロピル(イソプロピルアセテート)
酢酸エチル(エチルアセテート)
酢酸プロピル(プロピルアセート)
酢酸プチル(プチルアセテート)
酢酸メチル(メチルアセテート)
三塩化エチレン(トリクロルエチレン.トリクレン)
ジオキサン(ジエチレンオキサイド)
四塩化エチレン(テトラクロルエチレン,パークロルエチレン)
シクロヘキサノール(ヘキサヒドロフェノール)
シクロヘキサノン
第1プチルアルコ-ル(ブタノールー1)
第2プチルアルコール(ブタノ-ルー2)
トルエン(トルオール)
二塩化メチレン(メチレンジクロライド,塩化メチレン,ジタロルメタン)
メタノ-ル(メチルアルコール)
メチルイソプチルケトン(-キソン, 2-メチルペンタノンー4)
メチルシクロヘキサノ-ル(-キサヒドロメチルフェノール)
メチルシクロヘキサノン
メチルプチルケトン
メチルエチルケトン
別表第3
JJBMIB
コ-ルタールナフサ(ソルベソトナフサ)
石油エーテル
石油ナフサ
石油ベンジン
テレピン油(ターペンチン池)
ノルマルヘキサン(-キサン)
ミネラルスピリット(ミネラルシンナー,ペトロリウムスピリット,ホワイトスピリット,ミネラルター
ペン)
別表第4
囲い型2面関口7-ド
1種有機溶剤等
2種有機溶剤等
3種有機溶剤等
側 方 型 7 -
種有機溶剤等
2種有機溶剤等
3種有繊溶剤等
ド
天蓋型3側面開口フード
胤'-i t?¥等
種
種
天蓋塑4側面開口フード
第1種有機溶剤等
第2種有機溶剤等
第3種有機溶剤等
下 方 型 フ ー ド
第1種有機溶剤等
第2種有機溶剤等
第3種有機溶剤等
備 考1 この表における制御風速は,局所排出装置のすべてのフードを閑放した場合の制伽風速
をいう。
2 この表における制御風速は,フードの型式に応じて,それぞれ次に掲げる風速をいう。
イ 囲い型7-ドにあっては,フードの開口面における最少風速
口 側方型フ-ド,天音型フード及び下方型フ-ドにあっては,当該7-ドにより有枚溶
剤の蒸気を吸引しようとする範囲内における当該フードの開口面から最も離れた作業
位置の風速
Ⅴ.職業病発生概況
戦後の職業病発生事情を総括的に示す統計資料は甚しく不充分である。しかし,労働省の業
務上疾病統計,最近の特殊健康診断集計などが示すものは,その内容に多くの問題があるにせ
よ,戦前に比べると隔世の観がある。戦前には職業病全般に亘る統計資料は皆無といってよか
519!
問題の統計資料を得るむつかしさは次の諸点に関してあると考えられるO
(I)有害工場動態C
(B)職業病検診組織。
(3)職業病診断豪華O
(1), £)Jj点につし、ては,わが国の_L場数の93%以上(従業員数100人以トの工場数は全数の
98%を占める。本章中小企業の項参JKOを占める中小,就中零細企業並びに臨時工において甚
しく不備である。 (3)の点については,企業規模の大小を聞わず,有害条件に曝された人間の生
理学及び病理学とその職業病診断面-の応用との現状,すなわち職業病に関する医学の現状,
からみてなお多くの問題が残されている。更に,ここには新奇な製品の登場・生産技術の発展
・改革などから,新しい有雷条件が次々と現われてくるということも大きい問題となる。
これらの諸問題,特に職業病診断速準については最後の章で考接する。本章では幾つかの当
該統計資料をあげて,それが示す内容を簡単に考按するに止めるO
-30-
1.労働省業癖上疾病統計
s^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^^mw P
労働省業務上疾病統計は労働基準法施行規則第57条による労働者死傷病報告に基いて集計さ
(1)
れたものである。本統計は縦欄に基準法施行規則軍35条の各号( 1-38号)横欄に産業分類を
とっている。すなわち,縦欄は原因別職業病分類であって,物理的・化学的・生物学的原因の
順に38種に分たれている。
死傷病報告は所轄監督署に提出され,地方基準局を経て本省で纏められる。報告の内容及び
その様式は上記第57条の各号に示されているが,報告件数の大半は労災保険の披給付件数とみ
てよいと考えられる。
労災保険給付請求は労働者災害補償保険法施行規則第9条以下に示された手続に縫って所轄
労基監督署長に対して行なわれる。請求書には上記各条文中の各号に従って,発病の原因・発
生状況などに関しては事業主の証明,診断及び療養の内容に関しては診療担当者の証明を添え
なければならない。職業病発生が急性,あるいは災害性の場合には,その診断はむつかしくは
ないであろうO しかし,慢性の経過をとる職業病の診断は容易ではないO その診断が困難な請
求症例の検討は監督署から地方巌準局に移されるo慢性疾患の殆んとはこのケースをとってい
る。
以上から,労働省業坊上疾病統計の内容--職業病発生の実状をどれだけ正確に伝えてくれ
るか-を支配する因子として,保険請求時における下記の4段階をあげることが出来る。
m
l)職業病罷患者(従業員)
m
2)事業主。
3)診療担当者。
4)当該行政組織及び担当官。
この4段階の事情によって,職業病が無視され,あるいは見失なわれる機会は少なくないと
註(1) Tab. V.2.参照.
(2)労働者死傷病報告の様式の-ツをあげる。この原票は監督署に保存され,局には件数のみが報告
される。木票の内容が業務上疾病統計に活用されれば極めて有意義であると考える。
楓式第26号の1
'」働下能mix. 1 1?建逗Lli
労働者死傷病報告
. -a z の け tu
十∴工・・‥L
・Jf t>サ 二 fi日 事婆の叫iT地 蝣<?鋤者し州m
被害労 虹ンiKi 、川粍辛 tftL`州.1、I] I即車トVv I蝣蝣蝣?.土井t「LI
「「 表国蝣unEan獲■鰹
死因, 1'加両名及 びffe溝の部位J症状及び程度
災害の原因び!
蝣」 '主oUに言>i
年 月 日
比l¥¥a 皿 氏11 ⑳
I(VJ山.心再::i 「い1良,'ll',さ
備考 ※印の欄は,記入しないこと。
-31-
患われるO
前述した如く,本統計の示す内容を簡明にいいきるならば,それは各年度の産業別・職業病
Fig. V. 1.生産業業務上疾病の年
種別保険給付件数にしか過ぎない。産業規模別職業病発生
あるいは職業病発生率に関しては何の説明もしていない。
しかもそれは,本章後節に記す中小企業における職業病発
生状況と全労働者数中の中小企業労働者数の占める割合(
本章4節参照)とから推して,現実の職業病発生件数を遥
かに下廻る数値を示していると考えられる。 Fig.V.I.
に総業務上疾病の全産業合算件数の年次変化を示した。昭
和25年25,094件,同32年17,022件で67%に減少している。
いま,もしこの各年度の件数が現実の各年度職業病発生件
数に比例して増減しているとするならば,適当な労働者数
昭和 年 度
顧和32年度労働基準監督年報より,同26年
度年報こけ当該絵件数ニ20511とあり. a
と一致しない.
を選ぶことによって職業病の相対発生率の年次変化を見る
ことが出来る。一応Tab. V. 1.の如く産業別総業務上疾病
件数と労働者数及び同病発生率とを厚めてみた。労働者数
は労働基準監督年報中産業別保険関係成立事業所数及び労
Fig. V. 2.業種別業務上疾病発生
率の推移
働者数から引用した。また,相対発生率は下記の如く算出
した。
業務上疾病発生率-疎品誤品数×1, 000
Tab. V.I.は本文の目的上産業大分類中,鉱業・建設業
・製造工業の3つをあげるに止めた。 Fig. V.2.に示し
た如く,発生率は鉱業・製造業・建設業の順に小さくな
っている。何れも昭和27年にピークを示し,以後減少して
いるCただ,鉱業のみ昭和32年度が前年より高率にならて
いるO 昭和27年に発生率が最大である傾向は,製造工業中
の何れの分類においても認められるO他業種より鉱業にお
いて発生率が大きいのは,後者において発生する疾病が他
業種のそれより診断が容易であることに主として起因する
と考えられる。参考までに,岨和32年の業務上疾病統計を
あげたが(Tab. V.2.)鉱業における業務上疾病件数を原
因別にみると,その大部分が1-7号,就中3, 1号にお
註前頁(3)労桝久保田虫孝氏は職業病に閲する労働者の無礼 無関心の甚しさを随所に拒摘している(労
働の科学Vol. 10,5,1955)。 1例をあげると,ある工場から氏に寄せられた手紙を開封しただけ
で特有の染料刺u体の臭がし,また使葺も黄色く染っていたというQまた,かって筆者を訪ねて
来た-&'.」\染料工場の-労働者が,休養中の彼の同僚の症状を訴えて,その原因について質ねたこ
とがあった。彼によれば,療養補償を請求することは,即ちクビになることであった。
-32-
いてみられる。すなわち,何れも物理的原因による疾病である。
27年をピークとして,各産業における単位作業人員当りの疾病数が減少を示していることの
原因については,明確な断定を下すことは困難であるが,考えられうる要因としては,朝鮮動
乱ブーム以後の不況時代にとられた一連の産業合理化措置による老朽設備の更新,外国技術の
導入等をあげ得るであろう。
Tab. V.I. 年度別,業種別業務上疾病件数,労働者数及び疾病発生率。
S
i 1
鉱
業
建 ffl . 業
Mar m
千
、
、 、三
∴
芸腎
「
工
二
1957
( S 26)
( S 27)
( S 2 8)
( S 29)
( S 30)
C S 3 1)
( S 32)
1 ,4 9 6 ,4 3 1
1. 7 6 2
12,639
1, 6 6 3 , 8 9 6
1.880
14,117
〕
賓
∵
笠 屋 等
そ の 他の
1 9 56
労
強
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数
涙 病 発 生 ll率
業 奉 ∃襲 帝
労 J -l働 . 者 …畢
疾 病 発 生 率
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$ ア.wm m 」.ft ".整
織尋
1955
3,866
麗 辞 文 は 畢 車上 味埠 煙 草
業
19 5 4
5 72 , 3 7 5
6.754
3,129
語
S i
1953
3 ,5 2 9
・"-サ :
*
工
1952
586,298
6.019
2 ,6 3 7
金謡
尋
19 5 1
業務上疾病件数
J
労 H .薗 A・
・者 … 薮
疾 病 ..発 二重 ..率
寒 啓 三巨額 晦 日事
芸
ミ労
十
頭
こ
-「
芸若
菜
!芸 務 志 疾 要 件 覧
業 疾 . 戻 .発 ・* ."蝣
車
∴
∴
3 ,9 5 6
,
6 1 1 ,3 5 9
6 .4 7 1
2,846
541,235
5-258
3 , 73 5
3,674
2 , 3 5 2 ,6 9 3 2 , 3 2 1 , 1 4 2
1 .5 8 7
1.582
0301
2,585
,
496,815
5 .2 0 3
2,813
2,538,271
1.108
9 , 52 9
52
2 , 64 1
由1
3,202
564,00
岳二6 7 7
5 031
76 0
3,00
2 ,4 99 4 0 9 2 , 9 3 2 , 2 8
1.02
1 io 去
9 5垣
8,494
漢は蝣I B JK U U 4 , 3 0 4 ,
■2椅期 M U M !】4 , 7 9 5 , 2 2 8
声, 1 8 7
5, 7 5 4 , 1 4 0
3 .0 6 8
3.279
3 .0 5 1
2.411
1.952
1 由ラ
1-476
3,279
3,856
2,897
2 466
2,56
345,510
381,637
4 2 8 , 17 4
514,871
581,541
6 6 3 ,4 5 2
770,04
9 .4 9 0
10 . 1 0 3
-" " 畠‥.岳由
9 . 70 3
6.692
4-981
3 . 7 16 一一
4,344
4 , 18 0
3,395
2 ▼7 8 7
2,649
2,27
9 12 , 9 4 7
9 4 4 , 0 0 6 1 , 0 3 3 , 14 0 1 , 2 5 0 , 4 5 2 1 , 2 2 8 , 8 1 7 1 ,3 4 1, 8 5 3 1, 5 5 9 , 2 3 1
2 二2 6 8
4 .0 2 8
4.601
4 -0 4 5
1 二9 7 4
2-715
1.460
369
568
666
611
4 64
458
48
18 5 , 6
195,633
2 0 7 ,6 5 0
2 2 6 ,9 7 7
223,114
2 54 ,9 12
283,13
1. 9 8 7
2.903
3 .2 0 8
2 . 7 査畠
2 .0 4 4
1. 7 9 6
1.72
3 , 5 16
3,087
2 , 53 4
1.977
1,573
1 ,3 7 9
1,33
5 4 1, 6 8 9
535,736
5 5 3 ,8 2 7
586,708
595,930
6 2 3 , 1 10
668,653
6.490
5.762
4 ‥5 7 5
3-369
2 .6 39
2 .2 13
1.992
441
443
407
3 89
43
IH
K
S fil
366,170
3 8 9 ー2 5 0
420,984
4 1 6 ,2 86
4 39 , 4 6 1
481,014
1.160
1.180
1 . 13 8
0.967
0 .9 34
0 .9 9 9
0.906
750
1,023
993
.] 4 軍
722
1, 2 0 5
69
2Tre * OT I U
967,454
,
,
,
0.828
1.057
0 .9 9 5
0.699
0 .6 74
1 .2 3 1
0-66
2 8l
2T 7
386
456
394
347,478
3 86 ,5 8 2
485,191
5 1 9 ,9 2 3
557,539
599,892
,
,
0 -8 6 7 2
1.111
1 .2 7 2 1
0.888
0.398
0 .8 18
0.65
30
69
92】
70
88
49
73
100,097
110,211
1 24 ,1 3 7
188,691
1 9 9 .4 1 1
209,532
240,100
0 .7 4 1…
0 二3 8 7
0 . A 皇O
0.299
0 - 6 26
0 .3 5 1
0.204
.
10 2 , 7 2 7
0.827
20,511
7 ,5 5 9 , 0 6 9
2.713
104,264
1 ー1 89
1 2 0 ,9 6 1
1 .3 5 5
23,308
8,057,013
9 , 3 62 ,7 9 4
2.892
2 .6 0 4
308,997
0.725
2 25
3 0 0 , 10 4
0 -7 5 0
1 7 ,0 9 7
327,694
0.894
25
358,74
0.70
9 , 6 7 9 , 2 8 8 1 0 , 24 4 ,3 10 10 ,7 2 5 由 0 12 , 2 0 6 , 8 1 0
1.由 4
2 - 0 96
1 .6 6 8
1 由0
備 考
1)業務上疾病件数は労働基準監督年報中〝業務上の疾病及び食中毒発生状況〟より,労働者数
は同じく労災保険加入事業所数及び労働者数より。
2)製造業総疾病件数中には,ガス,電気,水道業の疾病件数が加算されている。発生率計算の
分母にえらんだ保険加入事業所数労働者の1号工業分類には,ガス,電気,水道業が含まれ
_.)
ているからである。
33-
Tab. V.2- 職 務 上 疾 病(職業病) (1957年1-12月)
磨
柿
お
よ
び
水
産
t
水ガ 商
道ス
お
*
製 造 工 業
鉱岸
蝣*
工機
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業び 莱
食
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雲警
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1.046i 1.291! 380
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15
642 447
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よ 融
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143
4::1;;
6
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1
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1991 554i 1,511
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10
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過
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業
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150
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1
1
合
計
167
61
61
6
1
249
49
10;i 64
931
4月
9
ll
i: ≡査
8
早
24
26
7
5
21号;
22 号l
卿[ 拘 引
46: 31. 40
早
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早
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1
143
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3
班
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1
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I
h 3
4
11 62; 8
29 13
25 157 30
2
25
_障:
3,202 3,009│ 2,568
10
1
4
8
97
I
501
2 3 9
計 550
3
1
2,278 1,3三雲
487
lij :
I
ll
252】 112 123 1,104
4:: 17, ii;
〔備考〕 1) 8, 13, 19, 34, 37号には該当なし。
2)その他とは, ll, 14, 16, 17, 20, 23, 25, 28, 31, 33, 36号の計である。
3)各号該当疾患は労働基準法施行規則(第35粂)において以下のどとく規定されている。
1.負傷に起因する疾病, 21重激なる業虜に因る筋肉,磨,関節の疾病並びに内臓脱,
3.高熱- 刺激性ガス若しくは蒸気- 有害光線又は異物による結膜炎その他の眼の疾患4.ラジウム放射線,紫外線,エックス線及びその他有害放射線に因る疾病, 5.暑熱な場
所における業務に因る日射病及び熱射病, 6.暑熱な場所における業務又は高熱物体を取扱
う業務に因る第二度以上の熱傷及び寒冷な場所における業務又は低温物体を取扱う業務に因
る第二度以上の凍傷, 7.粉じんを発散する場所における業務によるじん肺疾病及びこれに
伴う肺結核- 9.異常気圧下における業務に因る潜函病その他の疾病 10.製糸又は紡績
等の業務に因る手指の蜂寓織炎及び皮膚炎 12.強烈な騒音を発する場所における業務に
因る耳の疾患, 15.水銀そのアマルガム又は化合物に因る中毒及びその続発症, 18- 亜鉛
その他の金属蒸気に因る金属熟 21.硝気又は亜硫酸ガスに因る中毒及びその続発症,
22.硫化水素に因る中毒及びその続発症 24.一酸化炭素に因る中毒及びその続発鼠
26.鉱酸,苛性アルカリ一 塩鼠 弗素,石炭酸又はそれらの化合物,その他腐蝕性又は刺
激性の物に因る腐蝕 酒癖及び炎症 27.ベンゼン又はその同族体並びにそのニトロ及び
-34-
アミノ誘導体に因る中毒並びにその続発鼠 29.前二号以外の脂肪族又は芳香族の炭化水
素化合物に因る中毒及びその続発症,その他の疾病, 30.煤煙,鉱物・軋 桐油,ウルシ,タ
ール,セメント等に因る蜂高織炎,湿疹その他の皮膚疾患 32.第14号ないし第31粘膜
号に掲げるもの以外の毒岨劇性その他の有害物に因る中毒及びその続発症又は皮膚及び粘
膜の疾患 38.その他業務に起因することの明かな疾病。
2.定期健康参断結果報告
労働基準監督年報中の表題の報告は,基準法労働安全衛生規則第22条の規定に基ずき,事業
場より所轄基準監督署長あてに報告されたものを集計したものである。報告は縦の欄に産業種
(前節業務上疾病の場合と同分類)横の欄に受鯵者数,疾病総数,呼吸器系の結果,業務上の
疾病(昭和27年後期以後O 同年前期までの桟の欄疾病分類方法はこれと異なっている)をと
り,各縦桟の組合せに該当総数が男女別に記入されているC
この各年度報告から受診者及び業務上疾病の各男女合計数をとり,前節と同様の方法で業務
Fig. V. 3- 定期健康診断(牛二回)時における
業種別職業病発見率の推移
上疾病発見率を求め,鉱業・建設業・
製造業及び全産業についてまとめたの
がFig. V-3.である。定期健康珍断
は年2期に分けて集計されているが,
ここでは雨期件数を合算してまとめ
た。勿論,そこに示された職業病件数
は各事業場における健康珍断時に発見
記載されたものであって,年間通じて
の発生件数ではない。他方この場合,
受紗数は正確につかまえられているO
前節の業務上疾病相対発生率に代えて
発見率と呼ぶ所以である。また,その
診断には基準監督上の規制はない。恐
らくその診断基準は各事業場でまちま
ちであろうと考えられる。
しかし,前節業務上疾病相対発生率
の場合と同様に,本節の職業病発見率
年次変化は現実の同病発生事情の一面
を現わしていると考える。ここでも
(Fig. V.3.)鉱業において他産業並
びに全産業平均におけるより発見率が
大きい。また,昭和27年にみられる建
年度
設業・製造業における職業病発見率の
ピーク,及び同年を境として同29年に
みられる鉱業における当該率のピークは,前節Fig. V. 2.における昭和27年のピークと同
様の社会的背景を原因としていると考える。昭和31, 32年からの発見率の増加は,前記の昭
和27年を中心としてみられるピ-クとはその内容を異にしていると考える。前節では昭和32年
度までしか集計されていないが,鉱業においては本節同様昭和31年より発生率増大の傾向がみ
られている。この最近の増大傾向は,診療機関,事業所全般に亘る職業病診断技術及びその対
策に関する関心増大に起因しているのではなかろうかO すなわち,昭和30年7月29日「けい肺
及び外傷性せき髄障害に関する特
Fig. V.4.工場規模別定期健康診断施行率の推移
別保護法」が公布され,同年9月
(労働基準監督年報より)
10日施行された。また昭和31年5
_ _一一一(3000人山上)
(1000-
---」' -sipr. too-〒000
(2000-3000人)
。。。丈))
月,特殊健康診断に関する通牒が
.!・. (200-500X)
発せられた。この時期を画して職
ts*
(100-200人)
業病対策に関する法的規制.指導
(50-100人)
が飛躍的に進歩し,具体化したと
いい得る。公にされる職業病統計
so
の意味及び職業病とは何かという
問題については,末章で職業病
一二一一∴
請,あるいは診断論として考接し 70
wn
Fig. V.4-に工場規模別定/q健
康診断実施率の年次推移を示す。
全体に戦後より昭和27年にかけて
急速に実施率がよくなっている。
しかし,昭和31年度においても50
100人規模工場においてはなお
それは90%に満たない。また, 40
年度195i
52号'51
s26号:∋忌'51
工場(衛生管理者非選任)においては,その実施状態が極めて不良であることは容易に想像さ
s29'55
s3。一浩
れる。
データはないが, 50人以下の規模
3.特殊健康診断
労働衛生行政問題としての特殊健康診断の意義,その他については前述した(Ⅳ章参照)0
労働省では特健通牒を発して(昭和31年)以来,引続き毎年それを行政上の重点項目として挙
げてその指導勧奨に努力している。
特健項目については,その診断上の妥当性の問題が少なからず残されているにせよ,特健成
績が示すものは,前述の莞務上疾病,あるいは定期健康診断集計が示す職業病発生事情に比べ
ー36-
れば,その内容は遥かに具体的であり,その意義は格段に大きい。それは,本章の初めにも述
べた如く,職業病統計をとる際に最も重要なファクターの1つである診断基準が一応確立され
ているからである。
(I
(1)実施状況
実施状況を各年度別にみるとTab.V.3.の如くである。総計において昭和31年度の受検者
指数を100とすると,32年度142,33年度181と漸次受検者数は増加している。実施事業場数
も32年度4,477件が,33年度5,911件と増加している。しかし,これらの数は労働省によって昭
和33年3月31日現在で調査把握された「有害放射線にさらされる業務その他有害な,また有害
のおそれある業務」に従事する労働者数と比較すると,昭和33年度の受検者数はそれの07t
ol・サ
である。これは未だ本健診の趣旨が関係事業場に徹底していないこと,健診機関の不足などに
Tab.V.3-業務別年度別受診状況(全国労働衛生週間のしおり,1959より)
有啓業務従1 受 診 者 実 人 員 昭和33年度
二rlrI-.こ蝣.'.31Y-IV.∴ I-1--'n'l.・'蝣 こ
有事放射線にさらされる業務
紫外線、赤外線にさらされる業務
粉じんを発散する場所の業務
強烈な騒音を発する場所の業務
鉛を取扱う場所の業務
9, 714
136, 306
12, 819
252, 664
48, 827
水銀,そのアマルガム又は化合物を取扱う場
所の業務
1, 997
クローム又その化合物を取扱う場所の業務
4, 011
マンガン又その化合物を取扱う場所の業務
1. 511
黄燐を取扱う場所の業務
5711
有機燐剤を取扱う場所の業務
829
亜硫酸ガスの発散する場所の業務
二硫化炭素を取扱う場所の業務
ベンゼンその同族体を取扱う場所の業務
8, 5121
二
I
ベンチヂンを取扱う場所の業務
69!
ベンゼンのニトロアミド化合物を取扱う場所
の業務
1, 387
脂肪族の酸化又は臭化炭化水素を取扱う場所
の業務
756
計
499, 707
琵(1)全国労働衛生週間のしおり, P-72-76大阪労働基準局鼠19590
37-
よるわけであるが,要するに零細,小・中企業における当該実施率の低いことが主な原因であ
ると考えられる(本章中小企業の節参照)。昭和34年度から,本健診の対象が衛生管理者非選
任事業場にも拡大された。以後の成果に対する期待と関心とは少なくない。
また本健診を実施した事業場における受診率は,総計で昭和32年度83. 0^, 33年度88. 2%と
増加している。
ヨbMJ. J昌E^i
特殊健康沙断の結果発見された異常所見者は,昭和31年度11.396, 32年度12.3%, 33年度
13.%%と増加しているO この発見率増加の意味は単純なものではない。それは,そのまま総有
害業務中の異常者絶対数増加を示すものではなくて,主として次の2つの要因に支配された結
果と考えられる。
i )実施対象の変化
具体的にいうと,もし小,零細規模事業場の特健受診率が年々増加するとすれば,間違い
なく受珍者総計についての異常者発見率は年々増大することになろラ(本章中小企業の節参
照)0
Tab. V.4. 有害原因別異常者発見率
有 害 原 因
昭 和 31年
異常者
昭 和 32 年
受検者数
L^L十」撃)-放射線
紫外線,赤外線
2,381 ' 15.7
4, 484
30, 174 4. 4
42, 187
1
石綿
騒-¥V.
Li
録
水
3, 333 4- 0
1, 928
42.230 1 13.9
63, 097
8, 365 13. 9
12, 084
804 12- 4 1, 209 18. 7
ク
ロ .-
ム
1, 642 18. 0
マ
ン ガ
ン
819 2. 6
黄
蘇
4tS
413
1, 783 18. 6
7:,5 1
有
機 鱗
刺
亜
硫 酸 ガ
ス
4, 951 10. 0
硫 化 炭
秦
3. 144 28. 7 4, 123
ン
22. 4 7, 927
ベ ン ゼ
875
5,083
I
ll.1
ペ ン チ ヂ ン
ベンゼンのニトロアミド化合物
三塩化エチレン,臭化エチル
労働の科学シT)-ズ XI (S.33.ll)より
93ォ
ii )現場医の特健批判
これは特健項目の妥当性,ひいては職業病とは何かという問題につながる。その考按は最後
の章にゆずるが,一例として二硫化炭素に関する特健結果をあげる Tab. V.4.は昭和31・
32年の労働省による特健成績集計である。二硫化炭素についてみると31年度の異常者発見率は
28.7!で同年特健対象有害業務中最高であるが,翌32年度には3.5^と激減している。
この発見率の大きい変化は,他党的検査項目が「網状赤血球数算定」だけであるという極め
て不備な当該特健項目を, 32年度においては現場医が医学的確信のもとに補足して特健を行な
ったことによるとしか考えられない。この辺の経緯は別章「化繊工業の場合」で詳しく考按す
る。
Fig. V.5.全産業に於ける工場規
4.中小企業について
模別労働者数割合の年次変化
労働省の業務上疾病統計は工場規模別に取扱われて
いない。また,他に日本全体についての職業病発生状
態を示す資料はない。従って,中小企業の当該状態を
云々するためには,労働省・各労働科学研究所・大学
などが地域的・部分的・断片的に調査発表した文献,
あるいは資料を参考にして全体を推しはかる以外に方
法はない。
(1)労働音数及び工場数
全産業における工場規模別労働者数の割合をFig.
Ⅴ.5に示す。すなわち,最も大きい割合を占めてい
るのはⅡグループ(10.-99人)で,全労働者数の約40
%である。つぎがIグル-プ(∼9人)で約22%, I
Ⅱ合計すると60%を越える。また,年次変化としては
4年(昭和29.-32年)しか集計出来なかったが, Fig.
V.5.から認め得る特徴として第工グループ(-9
人),すなわち小,零細工場の労働者数の漸増をあげ
得る。
前記の労働者数に関する統計資料は,臨時工を含ま
ぬ場合が多いと考えられる。臨時工数の把握は極めて
困難であり,従って,これに関する全国的な資料はお
ろか,地方的資料さえも極めて少なく,僅かに北海道
臨時工問題調査連絡協議会が, 1953年6月から足がけ
4年間にわたって行なった調査研究の結果を「臨時
-39-
(労働基準監督年報による)
Fig. V. 7.生産業に於ける規模別工場数割合
Fig. V. 6- 年度別本工,臨時工,全従
の年次変化(労働基準監督年報による)
業員数と全従業員に対する臨時工比率
b/c96
/8 78
16 77
1949 '50 '51 52 53
a本工数 旦臨時=比率
b臨時工数 c
c-a十b
2!
(1)
工」として発表している程度である。
この調査によると,本工数・臨時工数 20
の全般的趨勢はFig. V.6.に示されて
いる通りである。これで明かなように本
I
り[iliBSK
工数が調査期間を通じて顕著な増減を示
さぬのに対して,臨時工数は, 1951年を
1950
1955 1957
ピークとする山型の線を示し,その増加 S25 s30 s32
が朝鮮動乱の影響によるものであることは明らかである。しかしながら,臨時工の雇億は好況
期のみの現象ではなく, 1949年, 1953年の不況期にも,それぞれ全従業員の7 KQA 19'と
いう数字が示されている。従って,臨時工は景気変動の調節弁としての作用以上に,企業の定
常的な労働力としての位置を占めていることは明らかである。
工場数に関して前述と同じ規模別にみるとFig. V.7.の如くになる。すなわち, Ⅳグルー
プ1,000人以上の規模をもつ工場数は全工場の1%以下, Ⅱグループ(1,000-999人)は1・5
琵(1)臨時工,北海道立労働科学研究所鼠 日本評論新社,昭和30年
- 40 -
%以下,他約98%がI, Ⅱグル-プで占められているo Ⅱグループは昭和25年度の25%が昭和
32年度には21%弱に減少しているが, Iグループでは逆に73%から78%に増加しているoこの
表からは,今後,中小工場数と大企業のそれとの比率が大きく動くという傾向は見られないo
(B)職業病発生事情
Tab. V.5. 中小工場の職業病(労働の科学 Vol. 10- 5, 1955)
羊
∴
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- 蝣
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蝣
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27-8
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27-5
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28-11
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28-12
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29.3
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〝
29.3 - 29.10
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29-5
D P
ヂオクチル フタレー ト( D . 0 - P )
〝
29-9
D I
D K
油
〝
C K
〝
P F
29-10
N H
脂
塩
素
ガ
ス
50
鉛
.
水
銀
10
l 孟
る
品
目
SIE
〝
〝
Tab.V.6. 中 小 企 業 の 職 業 病(労働科学より)
異
検 査 内 容
月司業 種(場所)
鉛作業工場(東京都)
ラヂエータ-製造工場
はんだ付工
昭和24夏 鉛を主とした現場(大阪)
37/37血中鉛濃皮
8/27
115/a芸:霊芸Hb,Bas。philia
28/28 埜蟹,埜九自覚症・血圧!28(全員)
血液,尿
〝23.9
化学工場 鉛工(名古屋市)
WZB
電線,印刷,自動車,ラヂ
エ-タ一工場 鉛工
:1?<I
i:,l;.言I・・,1,1;
・′ 24-25
電線工場 鉛工
血中鉛量,血液所見,尿蛋白
〝26.8
神岡鉱山 鉛精練工
鉛縁
37
11工場 転写印刷工
血液像,尿所見
90
赤血球減少
A/G比低下
尿中コプロポルフィリン(+)
尿中蛋白(+)
m
42
69
15
28.
9一-10
電線,造船所,塗装工,鉛
工
〝24-ll
ラッカー塗料工場
ト)¥y 17/25
自覚症状,血液所見,尿ウ。I
8
6. 4
15
28- 9
ビリノ-ケン L
I
〝24-9
印刷工場 印刷係 ;
〝 30/ α
l
〝26.6
車時候野工場 吹付塗装工;
L
〝 51
(埼玉)
a
体重・血液,尿 1
A/G比
尿コプロポルフィリン
4
K
F
〝27-7
自動車工場 ベンゾール取
扱工
〝28.2
ペイント工場
I. トII ,r
J′
29/ α
ガソリン貯蔵庫
〝24-8
染羊: XHI
ニトロペン
〝99
染料工場
アニリン
〝29
8. 9.-ll
Iiujに. FA
〝
〝28. 10
〟29-8
血清アルカリフォスファタゼ
四エチル鉛
ゾ∼ル
〝 (同上工場)
′′
20/20
小規模
Jl
′′
31/α 尿中アミノ基
34. *
33/ α
′′
結膜異常着色
三.;さt¥ x W
′′
32/ 32
J′
染料工場
Va
72/ 72
′′
TNT工場
TNT
*I I E
nsu
120/ 120
血液所見(白血球左方移動,
好酸球)
10/ α
皮膚炎,貧血
東洋高圧彦畠工場
-o <*
皮膚炎
自動車工場,製薬工場
32/ α
E'リtiもiJ Jflli漣. !・>;
m淑丁:i!i瑞軒ti)
芸芸酸ガスに9/a
胸部レ線像
血液所見
製紙工場
3/a
BSl院P
自覚症状(血液,相中機能言20-605」
水&&
122/122
-42-
臨床症状,血清コリンエステ
ラーゼ活性値,尿中水銀
29. 6
"労働科学誌〝から約30例の中,小工場調査を引用 Tab. V.5.の如く握めた。各引用論文
の調査の目的・項目はまちまちである。また, Tab. V.6.は労働科学研究所(東京)が戦後
行なった東京周辺を主とした中,小工場の調査結果を示している。両者をみて言い得ること
は,もしこれらの成績が中小企業有害作業場における職業病事情を代表しているものとすれ
ば,その職業病発生率は数10%から100^に至る,実に驚くほどの高率であり,久保田重孝氏
による職業病対策第I期(Ⅶ総括参照) -職業病発見期(大正以前) -に相当する状態で
あるといえる。また,両Tab.からは戦後10年の問に衛生管理上の進歩は全くみられない。
これら両表とTab. V.I.労働省業務上疾病統計製造業の中の化学工業の部とを比較する
と,後者では職業病届出最高率年度昭和26年で541,689人中3,516人,すなわち0.6#,最低年
度昭和32年668,653人中1,332人で0.296であって,前者,中小企業における当該発生率,数10
%の比ではない。このことだけからでも労働省統計が事実からかけはなれること,及び集計方
法がお座なりに過ぎることを指摘出来る。何れにせよ職業病対策の焦点を,あらゆる角度から
貧血の程度(血色素監)
IE
LO一瑚加-H9UIJ0-13.4)
D化学
0化サ
工 場 概 要
Fig. V. 8. 小工場における年次別貧血比率
∵ x.1 *'
十
D
十
ナル フ ト ル
0
巨
よネチ汐ソ
N
l
〝
W
十∵
L
7,、
ニレiy ソ
↓
t, ニ トロペ ソゼソ
ニ トロクロルペソゼソ
-43-
*
サ
150
化
学
50
化
学
50
化
学
化
40
↓
学
n
まず中小企業におくべきことに異論をはさむ余地はあるまい。
El
最後に,大阪府立労研グループの興味ある調査報告をあげる。それはFig.V.8.に示す4
つの小化学工場を数年問継続して調査した結果である。各工場の衛生管理に対する力の入れ方
が職業病対策に如何に効果があるかを示しているOすなわち,貧血を指標としてこの4工場の
一職業病発生の推移を霞めたのがFig. V. 8.である。 D化学は衛生管理・環境改善に努力(脱
水機のガス脱き設置,粉砕.配合作業の改善,寄生虫対策etc.)した例で, 6年間で貧血者
の比率はy7に減少している0
-万, 0化学, N薬品では大規模な施設改善は困難であって,ともに職業病対策の効果があ
がっていない例である。しかし, 0化学ではたまたま1956年に爆発事故が起り, 3カ月作業休
止,以後面目を一新した近代工場を新築したため,その年の貧血者比率は前年の1jiとなった.
W染料では1956年度よりヂニトロベンゼン,ニトロクロルベンゼン等の製造を開始し,急性中
毒読出,貧血者比率も激増,また貧血程度も増悪した例である。 W染料の場合は大企業ももて
余し気味の有害作業を,社運回復のため下請した様子である。
(3)特殊健康診断
特健に関する労働省の本来の意図は,中小企業における職業病対策にあったと考えられる
が,再三述べた如く,現在のところ特健成績からも中小企業の職業病発生事情を概観するに
は,なおほど遠い状態`である。一方,特健通牒発を境として,中小企業における職業病管理を
飛躍的に向上させ得るであろう一つの具体的な遺すじがついたことは確かである。そして,午
〟,特健に関する関心は深まって,その実施事業場数及び受診者数が増加していることは先述
した(Tab.V. 3.参照)。しかし,未だに小,零細企業における特健実施率は甚しく低いと想
像される。
(2)
本項では,原が大阪の3監督署の昭和32年度特健報告によって霞めた規模別特健実施率をあ
げるに止める(Tab.V.7.)。
註(1)大阪市府立労働科学研究所創立10同年記念誌, 1960。
(2)原一敗 中小企業と特殊健診,労働の科学シリ-ズ,礼p.41,昭和33.10・
-・44-・
Tab. V.I. 規模別特殊健康診断実施率
A :対象事業場数(有害作業従事労働者数調査による)
B :健診実施事業場数(昭和32,特殊健診結果報告による)
P
規
模
別
衛 生
管
理
者
非
任
事
業
選
同
選
上
任
事
業
B
A
局
実
実
R .
施
率
H
(形 )
19
1,112
1 .7
48
3,042
2 12
356
59 .2
288
965
15.7
局
芸一
施 率
(% )
231
1 ,4 6 8
計
Q
336
禰
局
実
施 率
(% )
1.5
22
96*
2 2 .9
2 9 .8
121
178
67-6
8.3
143
2 74
52-1
備 考 * 実態把担艮。
榊 実態把握不良o実際は記載数の2倍の見込.
L
規
模
署
M
別
昔
N
ー実 (碧 ) 率
A
50
人
未
満
50′
-
199 人
200′
4 99人
500′
-
999人
1,000- 4,999人
計
13*
13
21
15
8
8
95 王
B
A
署
実
施 率
(形 )
3
14 5*
2.0
5
55
9.0
55.2
76
11.8
15
72
20.8
61.9
7
15
46-6
12
20
60 -0
60-0
4
6
66 -6
-
2
2
7.6
53-3
10 0
53 -6
9.1
備 考 井 実態把握不良o
lO名以上の事業場を調べたとのこと。
-45-
100
25 -9
VI.化学縫絶工業の場合
-ビスコースレイヨン工業における二硫化炭素中毒について1.ビスコ-スレイヨン製造工程と中毒の機会及びその症状
2.化学織維工業労働衛生研究会の成り立ち
3.化学杜絶工業労働衛生研究会の活動-二硫化炭素中毒の実態と研究事情(1)研究活動第工期(昭和24-29)
A.現場調査
B.ヂエチルアミン(二硫化炭素)測定小委員会
C.診断基準小委員会
(2)研究活動第Ⅱ期(昭和29.- )
A.基礎研究
B.特殊健康診断
C.衛生管理者教育
4.技術部会との関係
(1)二硫化炭素測定問題
(21測定基準小委員会
(3)現場環境改善経過
化学級維または人造繊維は天然繊維に対して附せられた言葉であるが,大別すると次の4種
になる。
i)無機質繊維(金属杜絶・ガラス織経等)
ii)再成繊維(セルローズ系・蛋白質系等)
iii)半合成繊維(セルローズ系等)
iv)合成姐維(ポリアミド系・ポリ塩化ビニール系.ポリアクリロニトリル系等)
すなわち,純粋の合成紙経はナイロン(ポリアミド系)などによって代表される比較的最近
工業化されたものが大部分であって,戦前・戦後長らく化学繊維と呼ばれていたものは,主と
してビスコースレイヨン法によってセルロ-ズ(パルプ-植物繊維)から再成された人絹・
スフであった。
現在急速に発展しつつある合成繊維工業の労働衛生問題については,これからの問題でもあ
るし,また目下のところ資料が少ないので,この章の最後に簡単に触れるに止どめる。本章で
はビスコ-スレイヨン工業における労働衛生問題の経緯を,化学繊維工業労働衛生研究会の活
動を中心にしてやや詳しく述べることにする。これは筆者の専門の然らしむるところでもある
が, 1つのカテゴリーに属する産業が一体となって,労働衛生問題-当該カテゴリ-固有の
職業病対策-をLi」心に労務・技術・医務・研究者グループからなる研究会を組織し,数多の
問題を逐時解決,あるいは改善・縮少して来た注目すべき好例と考えるからである。レイヨン
工業においてこのことが成ったのは,当該⊥業に属する十数社の会社が,紡績兼業という問題
を除くと,資本内容・生産のスケールなどが晴々近似のレベルにあることが幸したためであろ
うO しかし,化学繊維工業における労働衛生研究会の組織と成果とは,今後のEj本の労働衛生
-46-
のあり方を考える場合の1つの壷要な参考ケースとなると思う0
1.ビスコ-スL/イヨン生産工程概要並びに二硫化炭素中毒の発生の機会と症
状
(1)ビスコースレイヨン生産工程と二硫化炭素発生部位との概要(Fig.VI.1.参照)O
ビスコース法という人造繊維の生産工程は,1892年,英国のCross,Bevan,Beedleの3
氏により発明せられた方法で,繊維素を苛性ソーダと二硫化炭素を用いて水に溶解させて,粘
租(Viscous)な溶液-ビスコース(Viscose)-とし,この溶液を塩類を含む硫酸浴中に,
極めて小さな孔から噴出させて,凝固,再生させ,細くて長い再生繊維素を得る方法である。
この再生繊維素が絹糸のどとく,長く連続した形で完成した糸となって行くものを,わが国で
はレイヨンまたは人絹といっている。
スフとは,これを途中の工程で2吋,3吋の程度に切断して,天然の綿のように短くしたも
のであって,両者の生産工程は,ビスコースを再生繊維素とするまではほとんど同一であり,
その後において,切断工程の有無や,精錬の方式などが異なっているといって差支えがない。
上述の製造原理から,二硫化炭素(中毒)発生の機会のある生産工程,あるいは作業部位次
の如くである。
i)硫化溶解工程(硫化室)
ビスコース,すなわち繊維素ザントゲン酸ソーダを作る工程である。
Cell-ONa+CS,-S-CくgCell
Na
アルカリ繊維素二硫化炭素繊維ザントゲン酸ソーダ
ii)紡糸工程(紡糸主)
下記の放維再成反応から明かな如く,この部位では必然的に二硫化炭素が発生する。
2S-C<gCell
Na+H2SO4-Na2SO4+2CS2+Cell-OH
繊維素ザントゲン酸ソ-ダ硫酸硫酸ソ-ダニ硫化炭素再生油維素
中和反応として
2NaOH-I-H2SO4-Na2SO4+2H20
苛性ソーダ硫酸硫酸ソーダ水
中毒発生予防に関して,技術の果す役割の大きい作業部著である.
iii)精練工程(精練室,あるいは紡糸精練室)
紡糸浴から山たトウに附著している不純物を除くために,除酸・脱硫・漂白を,ついで油剤
附着を一貫して行なう工程である。逓杭・換気が一般に完全であるたlめに問題は少ない・。た
だ,捲縮スフ製造の場合には精練工程にはいる前に,まづトウはアシッドカッタ-にかけられ
て所要の長さのチップとされ,温浴L出こ投入・捲縮を付与されるOこの部位は中毒発生の機会
として,しばしば紡糸部位以上に問題となる。
-47-
技術改善に伴なう幾つかの重要な衛生問題,その工程部位については後述する(本章4節参
輿)0
Fig. VI. 1.普通ス フ製造工程
l くコ
(2)二硫化炭素中毒の主要症状
戦前及び戦後の復興初期に問題となった急性二硫化炭素中毒発生は,今日では稀であり,か
つその大部分は災害性のものであるO その症候はアルコ-ル中毒,またはエ-テルなどによる
麻酔における種々の段階とほぼ同様の像を示す。すなわち,頭痛・唯気・唯吐・失調歩行・絃
輩・多弁・峡笑・噂泣・昏迷などの症状を示すO重症例では,この初動症状に続いて昏睡死亡
に至ることがある。
慢性中毒に田しては,その存在についてなお多くの問題が残されているが,動物実験及び現
場調査から数多の存在根拠があげられている.ビスコ-スレイヨンの現状では,研究会の目標
は慢性中毒問題にからんだ,診断基準・恕限度の2つの問題にしぼられている(本章3節研究
誌動き;.tt蝣、
ここではMckeeとCalhounが諸家の記載を参考にして作った表をあげるに止めておく。
-48-
Tab. VI. 1. 二硫化炭素中毒症状
二硫化炭素濃度概数
状
mg/∫
ppm
4860
3200 -3840
1920. -3200
960.- 1600
320.- 390
35- 65
0- 26
即死,曝露%-1時間にて死亡
曝露^2- 1時間にて生命に危険
曝露%時間後に重鴬症状-狂操または昏腫状態
%-ユ時間曝露に耐えた後即発または連発する障害
数時間後に頭痛と精神的不活発(1日間の曝露にて)
神経炎,視覚障害.精神障害
毎日の曝露を反復して頭痛,健気,ヒステリー性発作
無症状,毎日曝露を反復しても安全といわれる
Mckee, R.W. & Calhoun, J.A. : (Wampler, F. J. , The Principle and Practice of Ind.
Med‥ 1943より引用)
(1)
2.化学繊維工業労働衛生研究会の成り立ち
(I)化学純推工業労働衛生研究会の母胎
化学繊維工業労働衛生研究会は昭和24年1月に設立されたが,本会を組織するに当っては戦
前の化学姑維工業保健衛生調査会の経験が生かされている.後者,保健衛生調査会は昭和13年
厚生省労働局の意向並びに人絹連合会及びスフ製造工業会の要請の結果設立された。時はわが
国における当該工業の最盛期に当る(Fig.VI.2.参照)oまた,同工業における二硫化炭素中毒
は諸種職業性疾患の中で,特に注目されていた時期であった。
保健衛生調査会はその内部機構として専門委員会を含み,これは嘩峻義等を委員長として関
係各社から選任された医務・労務及び技術関係の委員,並びに労働科学研究所の関係研究員に
よって構成された。専門委員会は労務・技術・医務の小委員会に分れ,各々の角度から二硫化
炭素中毒対策が検討された。労務小委員会では現場従業員の勤務方式,特に交替制の問題が検
討された。中毒との関連において,高濃度二硫化炭素ガスに曝露される時間的関係と同時に,
疲労や作業能率の角度から作業動作について調査研究が行なわれた。その結果,採用された3
組3交替制は当時の社会,労務管理事情からみれば,英断といい得る。
技術小委員会関係では換気に関する問題が検討の中心となったO以莱,槻係工場に急速に紡
糸機カバーが普及した。
医務小委員会においては,まず職業性疾病のiE催な統計が必要であり,ために疾病分類と各
疾患についての診断基準とが討論された.広汎な現場対象についての疾病統計が,かかる手順
をふんでとられたことは,おそらくわが国ではこれが初めてであろう。この統計は昭和14, 15
(2)
年にとられ,結果は後に久保田によって報告された。
まつ1) B本化学繊維協会労働衛生研究会鼠 ビスコ-スレイヨン工業の労働衛生p. 9-23, 1954(2)久保田重孝,也,人絹スフ工業に於ける職業病- 労働科学25,8,昭24.
-49-
Fig. VI. 2.わが国のレ-ヨン並びに合成地紋生産高の経線
(化搬-ンドブック,日本化餓協会,昭34より)
(2)化学純維工業労働衛生研究会の成立と組織
戦前40数工場を数えたわが国のレイヨン工業も,戦争によってその大部分が転換,あるいは
操業停止となった。しかし,戦後その生産は技術的進歩と相まって急速に復興増加した(Fig.
vI.2.参照)。この時に,先述の戦前における労働衛生問題における経験と戦後の社会・政治事
情とから,木工業における職業病予防対策を主眼とする化学繊維工業労働衛生研究会が,戦後
結成された日本化学織維協会の一機関として設立された(昭和24年1月)。本会の設立に際し
てそれを戦後その面目を一新したわが国の労働衛生行政,あるいは組合活動に対するバッファ
ーたらしめようとの意図が経営者側にあったかも知れない。しかし,かかる研究会が必要であ
ることは,組織活動以外には実効を望み得ない職業病対策の第一段階であろう.要は研究会が
如何にスムースに運営され,活動するかにあると思う。
本会の実行委員として関係各社の医務関係者,及び特別委員(研究者グループ)として南産業
衛生協会理事長をはじめ労働科学研究所・東京大学・大阪大学・慶応義塾大学の衛生関係の教
授研究者から構成組織された。医務関係委員は本会に平行独立して衛生専門委員会を組織し,
本会に協力したO労働衛生研究会はその活動の重点を二硫化炭素中毒対策におき,衛生専門委
員会は各社の衛生問題全般について協議,協力の場を作った。別に,化学繊維協会の機関とし
-50 -
て,関係各社の委員からなる労務部会・技術部会があり,それらは適時労働衛生研究会の活動
に協力した。
労働衛生研児会は,まづ,今後の研究に対する問題の焦点を掴む目的をもって,労研を主体
として,人絹・スフ工場の詳細な調査研究を行なった。同時に戦時中入手不能であった当該問
題の外国文献を含む文献資料の蒐集,整理がなされたo結果,現場の実態調査を続ける一方,
早急を要する問題として二硫化炭素測定法の統一(昭和25年9月),及び診断基準の確立(昭
和26年5月)の2つがとりあげられ,それぞれ小委員会を設け研究が集中統一されることにな
sm
3.化学繊維工業労働衛生研究会の活動
-二硫化炭素中毒の実態と研究事情(1)研究活動第I期(昭和24年∼29年)
-二硫化炭素測定法,同測定規準並びに二硫化炭素中毒早期診断基準の成立までA.現 場 調 査
二硫化炭素中毒の実態並びにその研究と対策との目標を摘むために,昭和25年以降約10工場
について広汎な調査項目を含む寛場討査が,労働科学研究所を主体とした研究者グル-プによ
って行なわれたO この一連の調査の効果・意義・諸基礎研究との関連性については,総括のと
ころで考按,批判する。
各回の調査における検査項目を下記する。
一工場の調査に,常に7-8名の専門研究者が約1週間を要したO
(1)
i )人絹.スフ各一工場に於ける調査。昭和25年。
検 査 項 目
a) time study及びmotion study。
b)作業者の検診:血液形態学的検査一触こアドレナt)ソ畠痕によるエオヂン噂好球の消長,血
中及び尿中二硫化炭素測息尿中ビタミンC排推量測定,色視野測定,フ.)ッカー値測定o
(1)
iii) -スフ工場に於ける調査。昭和26年1月。
検 査 項 目
a)環境調査'・同前。
b)作業者の検診: (n)の調査に肝槻能検査(-ハトサルファレン試験,果糖負荷後の尿中焦
性ブドウ酸反応,尿塩化第2鉄反応,尿中ウロビリノゲン測定)が加えられた。
(2)
iv) -スフ工場に於ける調査。昭和28年2月。
枚 査 項 目
a)環境調査:同前。
b)作業者の検診:血液の形態学的検査,尿中ウロビリノゲン検査に加えて,本回の調査の特徴は
下記の諸検査にある。即ち,血清コレステロール測定,尿中17-ケトステロイド測定,血清
及び尿中SO4測定,作業後呼気中二硫化炭素濃度の推移,眼クロナキシ-測定,眼科的検
査(角膜知覚.眼圧,最大眼底血圧,及び最大,最小血圧) ,心理学的検査(色名呼称.逮
続打叩作業検査,運動能検査,四字抹消検査,握力エルゴグラフ) o
(2)
Ⅴ)一人絹工場に於ける調査。昭和28年7月。
検 査 項 目
a)呼気中二硫化炭素量測定による作業環境の評価。
b)血液検査:全血比重.血祭比重.ヘマトクリット,ヘモグロビン畳,好酸球数,血清コレス
テロール。
C)尿検査:ウロビリノゲン,無頼硫酸及び総硫酸, 17-ケトステロイドo
d)眼科的検査:視力,角膜知覚,全身及び眼底血圧,及び眼底所見。
e)フリッカー及び生理学的諸検査:フT)ッカ-値の中心値,膝開催,皮膚の電気抵抗.
平衡枚髄o
f)眼及び筋のクロナキシー。
(3)
vi) -スフ工場の調査。昭和28年12月O
検 査 項 目
a)血液の形態学的検査。
b)血液の生化学的換査'・血清コレステロール,血清アルブミンーグロブリン比
C)良:二硫化炭素定量.比重,ウロビリノゲン定量, S/N比.尿酸クレアチン比, 17-ケト
ステロイド。
d)眼科的諸検査:同前。
e)色視野フリッカー測定。
f)生理的機能検査:平衡機能,タッビング数.皮膚の電気抵抗.触覚及び痛覚鯛値o
g)眼及び筋クロナキシー。
(4)
以上に加ふるに各研究者が本研究会活動とは別に行なった3回のセロファン工場調査成績が
参考資料として同研究会で報告されているO
以上の調査結果の主なものを,図及び表にまとめあげておく。
註(1)化繊協会労働衛生研究会資料,第9号一昭28, 4,
(2)同上,第14号,昭28, lie
(3)同上,第15号,昭29, 1,
く4'・同上,夢21号,昭30. 1月。第54号, _昭35, 4月。
-52-
Fig. VI. 3.各工場紡糸精練工好酸球数
分布
Fig. VI. 4.某スフ工場員の血清コレステ
ロール値
5900
.2238
.2581 .2163
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[ml
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中均554 605 664 65-2 S3.7 630 461 558 66.0
A工場 B工場 C工場
Fig. VI. 5.スフ工場員の血清A/G比 Fig. VI. 6. CS2作業者の仝血比重分布
(作業中8時間の蓄尿について)
1.06!
53
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°
P
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57
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0
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1.22
8
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柿
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1、3q
坊糸 靭帯l
壬=56 9 -S5.S
N-71 N-73
測定法は富ill.斎藤の塩折法による (紡糸工と対照との差は危険率1 %で有意1
-53-
Fig. VI. 8.
Fig. VI. 7.
スフ工場員の尿中硫酸窒素
也(N/S)
(作業中8時間蓄尿について)
人絹工場員の尿中無機
硫酸畳(硫黄)
尿中総硫酸-S, 8時間尿
(単位噂)
500
4()0
EJ
8
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A
8
-*.守
プOO
孟i
* !
も 8
100
0
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糸
工 嘩
れラ
235
, 176m甘
対脂事JI■ 析*.WサI
Tab. VI. 2- 6工場の紡糸精練工における視機能検査成績
A . 人 絹, ス フ
ち. 人 絹, 紡 糸
C . 人 絹, ス フ
D . ス フ憎 姦
E . ス フ憎 姦
】例
l! 検 査 年 月
l
i
}
】 昭 26. 1
26. 8
26.10
角
膜
知
栄
&
限
症
血
症
11
40
l
-
l
F
F . ス フ憎 姦
4
5
認
14
5
12
2
15 : 0
23 ! 2
昭 27. 7 8
昭 27-10
昭 28. 2
フ
眼
底
リ
ツカ 所
I 見
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…
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Tab. VI. 3.紡糸精練工の眼のクロナキシー測定結果
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苦
…
工場名
▼
- , 一一 一L
懐 くな って い る もの
i≡
な つ三 、る も…
A
B
6
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C
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D
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7
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(ll.8# )
7.
6
28
(19.4 % )
-
】
14
(46 .6# )
15
l
i
I (46 チ
芸% )
i
30
L
( )は被検者に対する%を示す
-54
計
ll
i (36.:
13
(32.(
45
(32 .(
3(i
36
144
j
Fig. VI. 9一 工場別勤続年数と眼のクロナキシー値との関係
Fig. VI. 10.セロファン工場の各職場に於けるアセトン体排滑量の比較
°
°
t
°
°
T
°
l
°
°
°
l
° °
l
e °
°
B.ヂエチルアミン測定小委員会
:ォ
従来,二硫化炭素はGastine法によって測定されていた。この方法は操作に時間を要し,
現場分析,あるいは衛生管理上実用に供し得べきものではなかった。勿論,研究上も甚だ不便
m
なしろものであったO 戦後Mckeeによって紹介されたTischler のヂエチルアミン法(也
色法)は,操作及び定量精度に関して前者より遥かに優れていることが,同小委員会において
まず追試された。
ついで,主として研究・論議された問題は,現場における肉眼比色標準色列を簡便に作り得
る方法と,操具も含めて比色法を統一することとであった。このことは,ヂエチルヂチオカルバ
(3)
ミン酸ソーダが安定な三分子の結晶水をもっていることが筆者に確認されることによって解決
された。すなわち,ヂエチルヂチオカルバミン酸ソーダ結晶を任意の量秤りとり,鋼イオンを
反応させれば,任意の濃度の標準色を得ることが出来る。不安定・揮発性の二硫化炭素を定量
的に操作するという問題が解決されたのである(昭和28年10月)0
以後,測定手技の統一については速かに意見の一致をみて(昭和29年1月)本小委員会は閉
じられたのであるが,この間3年余,技術及び特別委員の関係委員間における研究の協調,疏
i,及び議論は極めて熱心,活発であった。これは問題が純粋化学の領域にあったことにも起
因していようが,筆者は本労働衛生研究活動の中でこれほど活発,有意義に終始したことを他
に知らない。
測定規準に関しては,昭和26年9月に一応研究会案がまとまった。昭和27年5月7日付,基
発276号労働省労働基準局通牒「人絹・スフ製造工業における二硫化炭素ガスの測定について」
は上記案を殆んどそのまま採決している。筆者はこの間の事情について微妙な問題があると考
えている。後述「技術部会と労働衛生研究会との関係」の項で再述,考接したい。
C.診断基準小委員会(昭和26年5月-29年3月)
昭和の初め,重篤な二硫化炭素中毒が注目されて以来,断片的ではあるが幾多の症例,調
査,研究業績が報告されては来たが,当該中毒についての診断方式は確立されるに至らなかっ
た。その病理,中毒機序に関する基礎的な知識も,また貧弱なものでしかなかったO加之環場
環境の変遷,改善に伴なって中毒の発生情況,個々の疾病の現われ方も次第に変化することが
現場調査から明かにされたO (この現場環境と中毒発生情況との関係については,最終章職業
病論で考按する)
診断基準小委員会は全開係会社の医務委員の参加協力のもとに,まず次の研究主題を掲げて
詫(1) Gastine法-これは二硫化炭素がアルコールカリと硫酸銅と反応して生ずる黄色のキサント
ゲン酸銅を比色する方法である。 (玉井,医事研究, 15, 1941)
(21ヂエチルアミン法-二硫化炭素がヂエチルアミン及び酢酸銅と反応して生ずる黄色の踏塩ヂエ
チルヂチオカルバミン酸銅塩を比色する方法である。
CSa -KCjHs)曾NH+Cu (C2H302) 2- 〔(C2H5) 2NCS2〕2Cu
(Mckee, R.W., J.ind. Hyg. and Toxicol‥ 23, 4, 1941)
(3)後藤樹,也,労働科学季報, 6, 1・-4, 1958
- 56 -
発足した。
i )二硫化炭素が作業者に及ぼす影響の実態を究明すること。
ii)二硫化炭素が人体に吸入された場合,どこに最も強く作用し,どんな風に排湘されるかを明か
にすることo
iii)二硫化炭素中毒の早期診断及び予防処置o
iv)予防剤の研究b
v)二硫化炭素作用にみちれる著しい個人差に開聯しての体質の研究O
現場調査に併せて研究しようとするこれらのテーマは,いわば職業病研究の要点を網羅して
いる。つまり,これは当時二硫化炭素中毒に関して,その現象面についての幾つかの断片的知
識はあったが,その基礎的・医学的な面については殆んど知るところがなかったことを示して
ma
二硫化炭素中毒は,原因は特異であっても症状は一般的である,という一つの疾病病理(生
理)に関する考え方を支持する好例と思われる。本中毒の特異症状を掴もうとする研究・努力
は未だに酬いられていないO にも拘らず,本小委員会は現場調査を中心にした3年の餅究で,
当該中毒早期診断術式を一応極め得る段階に達したことははめられてよい(昭和28年)。そこ
で各社工場は昭和28年秋期定期健康診断時を期して本術式案に従った9項目の検診を実施し,
その成績をまって,同術式が検討され,定められることになった。このことは労働省の特殊健
康診断に関する通牒(昭和31年5月,第Ⅳ章参照)に先き立つこと3年であった。
昭和29年3月,本小委員会及び本研究会によって採決された暫定二硫化炭素中毒早期診断術
式の検査項目を下記する。
a)二硫化炭素が体内に吸収されたことを証明する目的で用いられる検査項目
i )呼気中二硫化炭素の測定
ii)尿中二硫化炭素の測定
iii)尿中含硫代謝産物の測定, S/N
iv)自覚症状についての問珍
b)早期診断のために実施される検査項目
i )網状赤血球数の算定
ii)好酸球数の算定
iii)血清コレステロール及びエステル比の測定
iv)血清A/G比の測定
Ⅴ)尿水ウロビリノゲンの検出
vi)尿中尿酸クレアチエン比の測定
vii)自覚症状についての問診
viii)神経系統に関する臨床検査
C )診断確定のための精密検診に於て実施される検査項目
i)自覚症状の検査
ii)一般精神神経機能検査
iii)眼底所見の検査
iv)周辺及び中心視野検査
Ⅴ)色視野フリッカー検査
vi)眼のクロナキシー値の測定
-57-
vii)必要に応じ上記(a), (b)にあげた検査を併用する。
viii)現場から離れさせて経過を観察する。
ix)前限部障害の検査
Ⅹ)皮膚障害の検査
以 上
本期の経った研究成果としては,前述の測定法と診断基準との2つの問題に関連した調査・
研究の他に,ビタミンC,メチニオ三ンの予防的効果についての実験成績が注目されたこと,
・・また基礎研究として,二硫化炭素の出納(Clearance)が動物実験により略々明かにされたこ
となどをあげ得る。
またこの間,人絹6,スフ12工場の紡糸,精錬工に対して63間にわたる質問調査が一斉に行
なわれた.しかし,睡眠障害,削疫,疲労,下肢倦怠,頭重,頭痛,物忘れ,四肢の冷え,悼
欲減退,胸やけなど二硫化炭素作用本態と関係すると考えられる症状を訴えるものが対照に比
べて僅かに多いという結果が得られた程度であった。
以上,昭和23年化学織維工業労働衛生研究会が設立されて以来, 6年の間の成果は,労働科
学研究所勝木新次を委員長とする当該研究会の編集実行委員会によってまとめられ「ビスコー
スレイヨン工業の労働衛生,日本化学繊維協会労働衛生研究会編, 1954」として出版され
た。
(2)研究活動第Ⅱ期(昭和29年∼ )
-二硫化炭素中毒の基礎的研究と衛生管理教育研究活動第I期はビスコースレイヨン工業の復興と相まって研究の目標が具体的に明確であ
った時期といえる。第Ⅱ期は当該工業の経済的・技術的停滞,及び化学繊維工業の産業構造の
変化(合成繊維工業の発展)などの業界の動き(Fig. VI. 2.)に加えて,慢性中毒問題にから
む「医学の限界」という微妙な問題のために,研究会が具体的な研究テーマを掴むのに腐心す
る時期といい得る。この辺の経緯は大企業の労働衛生問題にとって大切なことがらと考えるの
で,後章で疾病論及び診断論として一般的に考按してみたい。
昭和29年以降,研究会は予防と診断治療の2小委員会に分れ活動し,現在に至っている。予
防小委員会は技術部会の協力を得て,主として,二硫化炭素耐性の問題並びに恕限度問題につ
いて研究・討議して来た。診断治療小委員会は労働省通牒による特殊健康診断問題(第Ⅳ, Ⅴ
章参照)を中心に診断基準に関する調査,研究を進めて来た。これらの問題は医学的には極め
て複雑,困難なものであって,基礎研究を推進することを除いては第工期以上の進歩を望み得
ないものであった。
従って,研究者グループは活動の重点をその基礎研究におき,前記両小委員会は研究活動に
協力する一方,従前に得られた研究成果を現場に応用することに力を入れた。
A.基 礎 研 究
第I期でまとめられた二硫化炭素の吸入,二硫化炭素としての排滑,体内残留(Clearance)
(1)
の成果から,その吸入量の約50%の行方が不明という結果が出た。これはアメリカ,チェッ
醍(1) Mckee, R.W., et. al., J.A.M.A.,217, 122.
-- 58--
(1)
コスロバキャ等における研究成績とも一致していたO また,これらの諸外国を含めた基礎研究
のレベルも五十歩,百歩で,各国とも上記50%の行方,換言すると二硫化炭素の代謝機構を明
かにすることが,これからの主要テーマであった。このような研究方向が,診断基準,予防,
治療といった現場への応用問題に対する簡便にして信頼出来る方法を見付ける早道であると,
特に当時の筆者は考えていた。
(2)
まず筆者らによって血清蛋白質と二硫化炭素との反応関係がin vitroで追求された。そし
て,血液に接触する二硫化炭素が(恐らく結合型としそ)行方不明になってゆく時間的経過が
定量的に追求され,ついで,二硫化炭素が蛋白の遊離アミノ基と結合することが定性跡こ証明
された。
たまたま,昭和29年(1954),イタリーで開かれた第11回国際産業医学会におけるミラノ労働
(3)
科学研究所ウィ1)ァーニの特別講演「慢性二硫化炭素中毒について」が本研究会を少なからず
刺戟した。彼の所説は,血中の遊離二硫化炭素がヘパリンに作用し,ヘパリンを中心とした血中
脂質代謝(clearing reaction)を障害し,これが反復,長期に亘ると動脈硬化症(Aterosclerosis)を惹起するに至る,というのである。慶大,労研の研究グループでは,この傍証の一つ
として,二硫化炭素慢性中毒時の血清A/G比の低下に廃する, β・及びγ -グロブリンの増加の
(4) (5)
意義を認め,また,急性中毒時のα-, β・グロブリンの増加はウィリア-ニのいうリボ駕白増
加に対応することを明かにした。しかし,この研究は蛋自分画分析法についての問題と,次の
研究段階へ如何な道すじで前進するかという問題とに関して疑問があるo
また,昭和31年度より毎月1回,環場戯員各工場について50名以上の血圧測定を一斉に行な
うことになったのもウィリァーニの影響であろう(後述)O
(6)
他に,慶大グループによる二硫化炭素中毒家兎の腎機能検査(ロメオテスト)に関する研究
(7)
成績,阪大による同中毒白鼠の尿中に排推されるケトン体追求に関する研究は注目されてよ
い.前者によって,腎糸球体漣過量の減少,細尿管尿清浄能の増加,腎指数の減少,細尿管利
尿指数の動揺(代償されたネフロバチ-)が明かにされた。後者阪大の研究によって,低濃度
の二硫化炭素曝露が反復されると生体の終末酸化機構(クレブスサイクル)が障害されること
が, in vivoで明かにされ,今後の中毒機序の生化学的追求に一つの方向が与えられたO また
(8)
阪大グル-プによる二硫化炭素の糖代謝に及ぼす影響(家兎において,グリコーゲンの分解元
読(1) Teisinger, J., et. al., J.Ind. Hyg. &Toxicol., 31, No.2, 1949.
(2)後藤桐,労働科学季報, 6, 1-4, 1958。
(3) Viglia血, E.C., et. al., Arch, f. Gewerbepath. & Gewerbehyg., 14, 1955.
(4)久保田重孝,他,化繊労働衛生研究会昭和30年度事業概況,参考資料(1)
(5)増田義徳 同 上 参考資料(2)
(6)外山敏夫,他, 同 上 参考資料(4),斎藤毅,労働科学,33,
No.l, No.2, 1957
(71後藤桐,他,化繊労働衛生研究資料,第48号.昭和34年7月,梶野三郎.大阪大学医学雑誌,
11, 10, 1959.
(8)原一郎,労働秤学事報. 6, 1-4, 1958
-59-
進またはその合成能の低下,及び血糖調節械能の不安定性が招来される),及び筋電図を指標
(1)
としての二硫化炭素の白鼠の末梢運動神経に及ぼす作用についての研究なども注目される。
以上の研究は何れも当該中毒の一断面を明かにしてはいるが,更に進んで中毒の本態に近づ
こうとする一貫した計画に欠けるところがあると思う。なし得ること,やりやすいものを手当
り次第試みた憾みがある。そこで研究者グループは本節の初めに述べた意味から,中毒本態,
あるいは代謝機構に関する研究を進めるためにはラヂオアイソト-プ標識二硫化炭素を利用す
る他ないとの考えに立って,その経済的協力を研究会事務局に申し出たのである。
昭和33年度からアイソトープ利用研究が具体的に発足した。まず阪大において CS㌢ の実
(2)
験動物曝露装置が完成され,その尿中代謝産物が追求された。その被曝露白鼠の諸臓器は労研
(3)
において,ラヂオオートグラフィ-研究に供せられ,また同血液は慶大において血中S35化合
(4)
物分析に供せられた。何れの研究も目下進行中で,当該中毒機序を明かにする上に重要な成果
が得られるものと射寺される.また,後述特殊健康診断問題に対しても画期的な方法が得られ
る可能性もある。
B.特殊健康診断
特殊健康診断の行政面に関する経緯は前述した(第Ⅳ章及び第Ⅴ章3節参照)。一方,本章
の研究活動等=勘で述べた如く,化学織維工業労働衛生研究会の最初のテ-マであった「早期
診断基準の確立」は,とりも直さず「特殊健康診断」の問題であった。すなわち,すでに労働
省当該指針の発せられる3年前に,現状の医学からみて妥当な特健項目が化繊労働衛生研究会
において握められていた。
二硫化炭素に関する労働省の指針項目はTab.VI.4.の如くであって,その基礎となった労
働省試験研究費による特健項目についての研さん委員会の答申はTab.VI.5.の如くであっ
た。この表から,研さん委員会の案は化繊労働衛生研究会の業績に完全に依存していることが
分る。この際,問題になることは, (1)労働省指定項目の診断学的意義 答申案が労働省指針
に変化縮少された経緯,の2つである。 (1)に関する答えは明瞭である。二硫化炭素中毒の他覚
的症状として網状赤血球数だけを算定しても,その診断的意義はない。 (2)に関する答えは複雑
かつ徽妙であるが,労働省指針は下記の方針の上に立って出された,ということが一つの解答
となろう。
註(1)水野俊夫,労働科学季報, 5- 1.-4, 1957
(21後藤桐,他,化繊労働衛生研究資料,第42号,昭和34年1月
同 上 同 上 第52号,昭和35年3月
同 上 労働科学, 35, ll. 1959(3)森岡博,化繊労働衛生研究資料,第49号,昭和34年10月
(41林嘉男,他,同上 第54号,昭和35年4月
-60-
Tab. VI. 4.労働省による二硫化炭素の特殊健康診断指導指針
検 査 対象 業務
二硫化炭素 をと り
扱 う業務 またはそ
のガ スを発散す る
場所 における業務
検
査
項
目
検
1. 頭 痛, 下肢倦怠
感 , 焦燥感等
2. 網状赤血球数
問
査
方
法
診
プ リラン ト ク レ
ジル プラウ法
Tab. VI.5.研さん委員会による二硫化炭素の特殊健康診断項目
業 務 の 種 類
または作業の状 態
指定 臨床診断項 目
二 硫化炭素を とり扱
う業務 またはそのガ
スを発散 さす場所 に
おける業務
1) 一般検査
神経系の障専 (頭重頭痛,
下肢倦怠, 焦燥感等)
その他の臨床検査項 目
有害物又は代謝産物の証 明
筋 および眼のクロナキ
シー, 視野 検査 (周辺
および中心視野測定)
呼気中または尿中の二
硫化炭素 の固定
尿 中硫酸比 (S O 4/ N )
2) 血液 検査
網状赤血球好感球数の
算定, 血清 コ レス テロ
ール比 (E / T ) の測定
血 清 A /G 比の測定
(1)
(1)特健項目は現状の医務,あるいは衛生管理態勢で実行可能であること。 (2)一方,当該指
導指針は将来の中小企業における職業病対策を目標とした第一歩であること(3)従って昭和
31年の通牒を最終案とするのではない。特健なる従前にない積極的な職業病対策を打ち出すこ
とにまず衛生行政上の意義を認めること,ついでその対策上の効果,進歩と平行して,診断項
目及び実施対象を改善拡張してゆくこと。
しかし,その理由の如何に拘らず診断意義のないものを特健項目としてとり上げたことに対
して,当然現場と研究者側とから批判が出た。化織協会労働衛生研究会診断治療小委員会にお
いて,上記労働省指示項目を充分納得出来ぬとして,昭和32年後半より同委員会の重要議題と
して「特健項目検討」をとり上げた。この契機の一つとして労働省による昭和31年度特健異常
者発見率は二硫化炭素取扱業務において22,-196 (受検者数3,144, V章 3, Tab. V.4.秦
鳳)で15有害原因中最大であったことをあげ得るO
たまたま同研究会予防及び診断治療小委員会において,昭和31年以来「二硫化庚療耐性問
題」として現場職員の血圧測定を中心とした調査を行なっていた。本章研究活動第Ⅱ期Aに述
べたウィリァーニー派の二硫化炭素の慢性効果としての動脈硬化症に関する研究が,耐性調査
の有力な動機となっている。耐性問題調査項目と特健検討項目とは重複するところが多いの
で,以後両者を塵めて検討することになったo 以下,これらの調査の内容を要約する。
2
i)耐性調査集計
a)対象: 17レーヨン工場,被検者は紡糸約線工873,対照者136。
註(1)特健は差当り衛生管理者が選任されている事業場に対してその実施が勧奨されている。それ以下
の規模を有する所謂中小企業に対しては指導は原則として行ほれていない。
(2)化繊労働衛生研究会資料,昭和32年8月0
-61-
b)凋査項目:血圧,尿ウロビリノゲン及び蛋白定性奴応。仝血比重、白血球数-好酸球数o R
覚症。
C)調査接度及び被検者の速出:この謬査は紡糸,精練工(男子)の中から50人を選び,毎月1
回,同一人について継統的に行うO但し血液検査は春秋2回。被検者選出に当っては次の区
分に従うものとする。
なお,今後紡糸及び精練部署に新入者があった場合には,上記人数以外にその全員を調査に参
加させる。
(1
ii)第1回特殊健康診断調査集計
a)対象: 15レーヨン工場O被検者は紡糸精練工846,対腰者294名o
b)調査日時:昭和32年5-6日。
C)調査項目:全血比重,網状球数,好酸球数.尿ウロビリノゲン,尿蛋白,尿クレアチニン自覚症状。
iii)上記耐性及び特健調査に於ける,所謂異常者発見率
前述の如く労働省の特健集計結果によると,二硫化炭素取扱業務における異常者発見率が非
常に高い。化繊研究会ではまず上記の2調査の結果を検討して労働省特健指針及び労働省の上
記集計結果を批判した。
a)網 状 球
網状球数11%o以上を異常として前記2調査の成績を集計すると,紡糸精練工では1.596,対
照ではl.o:の異常者発見率を得た。なお,この発見率が,勤続年数または年令のすすむとと
もに大きくなる傾向が見出だされた。しかし,成績を工場別に分けてみると(Tab. VI. 6.),
各工場において異常者発見率に大きい相違のあることが分ったO これは各工場での網状球測定
手技が異なることに起因するものと考えられるc
b)白 山 球 数
白血球数5,000/mm3以下のものは,紡糸精練工では16.%%,対照者では15.196である。こ
の場合も異常者発見率は工場別に大差あり,測定手技の不統一が痛感されるo
c)全 血 比 重
耐性,特健両調査ともに, 1055未満の所謂異常者は現場職員より対照者に多いo
d)好 酸 球 数
500/mm3以上を異常者とすると,両調査ともに紡糸精練の方に対照者より.異常者が多くな
っている。
以上から,純状球,白血球,好酸球数が問題となるが,現場と対地との差は小さく,また全
体としてこれらの項目だけから異常者と診断することに医学的に無理がある。
註(1)化繊労働衛生研究会資料,昭和32年8月。
-62-
Tab. VI. 6一 工場別胸状球異常者発見率
工
堤
忠
A
部
署
別
! 繁 糸 精 練
照
BC
l 鍔
被検者数桓
表
ー 22 7 [
128
G
紡 糸 精 練
対
照
I
紡 糸 精 練
対
照
L
紡 糸 精 練
対
照
M
紡 糸 椅 練
対
照
∼
3
6 .8
0
0
紡 糸 精 練
対
照
】
0
4
10.0
10-0
P
m * ォ **
芸 糸 輝 蒜
部
署
別
桓
者数
[
20
10
異常者数
i
i
i
-
0
I
Er - .
[ 0
l 0
一一
i
,
F i
"- -^ i_
0 I∼ 20-5
1
三
2.2
3.4
i
oO
0
0
R
39
】
0
0
r
A
lV
S
10
7.1
0
T
紡 糸 精 錬
対
凧
80
10
0
Ⅴ
紡 糸 精 練
対
周
171
19
0
0
W
紡 糸 精 練
対
照
22
3
0
0
0
0
紡 糸 精 練
対
照
814
289
12
計
14
5
-
1.3
0
0
1
紡 糸 椅 酎
対
¥ -! " 蝣蝣 "-.
m * m
対
照
工
場
名
3
l金 .圧
E
V
F
発見率
形
17
-
0
-
l
-
-
35
10
0
0
0
0
;" 辛
+
三二
1.5
1.0
(注) A.B-- -は工場別。
これとは別個の見地に立って成績を検討すると,異常者発見率の工場別の相違が注目される
が,このことは対照者においても同様の傾向がある。従ってこれは各工場における二硫化炭素
曝露条件の差に起因しているのではなく,測定手技の相違によるものと考えられる。
これが一つの契機となって,研究会は現場あ医師,技術者,衛生管理者を対象としたレーヨ
ン工業を中心とした労働衛生教育と検査技術実習とを企てることになった(本節C参照)。た
またま昭和33年6月労働省より産業衛生協会に対して特健及びその項目改善に関する諮問が
あったO化繊労働衛生研究会では上記2調査に引続き更に下記の2調査を計画し,同研究会の
成果に立って,特健に対する態度を明かにしようとした。
(1)
iv)第2回特殊健廉診断調査
a)対象: 16工場。紡糸精練工1,079,対照441名。
b)項目:血圧.尿蛋白,ウロビリノ-ゲン,全血比重,白血球数,好酸球数,自覚症状及び柵
状赤血球数。
以上について昭和32年8月より同33年7月までの閲,大体月1回の割で調査,工場別,勤務
年数別に集計された。
(2)
Ⅴ)第3回特殊健康診断調査
a)対象: 19工場。紡糸精練工1,190,対照670名。
b)項目:網状赤血球放,仝血比重,尿クレアチニン,問診- 神経検査。
C)日時:昭和33年10, 11月。
註(11第2回特健結光集計表(その1), [B] (その2)化繊労働衛生研究会資料,昭和33年8月。
l」)第3回特健結米集計表,化誠労働衛生研究会資料,昭和34年3月。
-63・-
今臥ま二硫化酸素中毒の特性を再検討して鍋査項目に神経換査(ロンベルグ症状,膝蓋醍反
射,足樺掃)を追加した。
以上2回の調査の結果,縄状球,問診について幾らかの差が披検者,対照者問にみられた
(Tab. VI. 7.参照)が神経諸検査はじめ他の項目については注目すべき変化は得られなかっ
た。
Tab. VI. 7.
b)自覚症状発見率
a )網状赤血球数の勤続年数別異常者発見率(11%以上)
[
A
勤続年数
l蔽 姦 l盲
f罰
B
盲 高 音
A
「裏
書電
ゾ
被 検 者
異常者発
見率
%
42
2-39
88
0
1 年未満
42
2-76
1 年∼
157
1.9 1
123
0.8
1年
157
1.02
3年
105
0.95
168
0.6
3年
106
1.03
5年
137
0.
206
2-4
75 4E
^ -
2138 8
0-99
7年∼
288
1.0 4
139
1-4
9年
248
0.8 1
43
7-0
11年
209
1.9 1
47
1,186
1.18
814
1.5
601
0.8 3
289
1.0
1 年未満
計
対 照 者
0.97
9 年"
査
247
0.81
209
0.66
1霊 =
0-96
11年
対 -=
者
l
0-65
備考 A :第3回特健結果集計表,化姐労働衛生資料,昭和34年3月
B : CS2耐性調査及び特健結果に於ける異常者発見率,同上,昭和32年10月
自覚症状(問診) :頭重,頭痛,不眠,下肢倦怠,食欲減退,焦燥感,めまい。
ォ
以上の調査成績並びに研究成果に加えて,諸外国の文献を参照し,研究会では下記の如き特
殊健康診断様式の化繊案を纏めた(昭和33年3旦)a
特 殊 健 康 診 断 様 式(化繊案)
3 月12 日
(3月13日委員会承認)
tl)第1ふるいわけ検査
全員について実施し,これによって抽出された被検者については東に第2ふるいわけ検査を行
う。
(a)問診及び視診
o問診の内容
異常なし,神経痛,胃の症状,頭重及び頭痛,不眠,下肢倦怠,食欲不振,焦そう感,めま
い,その他。
o申合せ事項
当分の間定期検診と第1ふるいわけ検査の結果,最低10%以上の被検者が第2ふるいわけ検
査に移されるようにする。
(b)神経検査
o検査の内容と基準
(1)特に下記の文献は重要である。
Vigliani, E.C. et al. , Ach. f. Gewerbepath. und Gewerbehyg., 14, 1955.
Rechenenberg, H.K. , Arch, f. Gewerbepath. uud Gewerbehyg., 15, 1957Johnstone, R. T. , Occupational Medicine and Industrial Hygiene, St. Louis, 1948.
64-
膝蓄膿反射 元進消失者をふるいわける。
足 描 掃 明らかに出るものをふるいわける。
ロンベルグ 明らかに陽性のものをふるいわける。
3項目のうち1つでもふるいわけにかかるものは第2ふるいわけ検査に移す。
o申合せ事項
検査基準は第3回特殊健診項目検討調査の要嶺によるO
(21第2ふるいわけ検査
第1ふるいわけ検査で抽出されたもののみについて実施する。
o検査の内容と基準
(a)血清総コレステロール及びエステル百分率(E/T)
ふるいわけ限界 50以下
(b)仝血比重
ふるいわけ限界 1. 055未満
(C)尿ウロビリノーゲン
明らかに陽性のもののみふるいわける。
(a)胸状赤血球数
ふるいわけ限界 10%,以上
以上の4項目のふるいわけ検査のうち(a)についてふるいわけられたものは必ず精密検診を行い
また(b), (c), (d)のうち2項目以上のふるいわけにかかったものも精密検診に移す。
o申合せ事項
(a)血清総コレステロール及びエステル百分率(E/T)のふるいわけ限界50以下は改訂の
可能性を有す。
(b)四項目の実施上の便宜は考慮検討する.
(3)精密検診
第2ふるいわけ検査の抽出者についてのみ実施し,この精密検珍での抽出者は労災法の業務上
疾患としての扱いを受ける。
o検診の内容
ta)精神神経学的精密検診
(b)血清蛋自分画(A/G, β/αを含む)
(C)好.酸 球
(dI 色視野及び眼底検査
(e)血 圧
参考項目
(a)尿中CS2の証明,尿総硫酸/N
(b)職歴及び既往病歴
o検診の基準
基準値はきめないで置いて(1), 12), (3)段階の各検査成績から医師が総合判定する。
ここで筆者が強謁したいことは,上記化繊案特健様式の第2ふるいわけ検査に「血清コレス
テロール及びエステル百分率(E/T)」が採られたことであるo 二硫化炭素中毒症状はLaudenheimerのいう「CS2-Vergiftung konne alles machen」で実に多彩多様であるo 同中毒
に関する医学の現段階では上記化織案は妥当な診断基準といい得る。その繁墳な内容もまた止
むを得ない。血清コレステロールのE/T比という技術的に手の込んだ検査法を,それが目下
のところ当該中毒の最も信頼出来る他覚的所見であることから,現場医中心の研究会がすすん
でふるいわけ検査項目として採用したことは称賛されてよい。
- bo -
本案は労働省の産業衛生協会宛「特健再検討に関する諮問」 (昭和33年6月)に対する二硫
化炭素中毒関係答申案の骨子となった。
C.衛生管理者教育
化繊協会労働衛生研究会が衛生管理者教育問題に手をつけたのは昭和30年以降である。その
理由として筆者は次の3つをあげる。
i )衛生管理者教育は労働衛生,あるいは職業病対策の最も具体的な本質的側面である。従
って研究会としては早晩とりあげねばならぬ問題である。
ii)特殊健康診断に関する調査(本筋B参照)によって,各現場における診断技術の不備,
不一致が明かにされた。このことは,同一企業における職業病問題を総括的・統計的に分析す
る時に,最も基本的な問題となる。
iii)研究活動第Ⅱ期の初めに述べた如く,二硫化炭素中毒対策に関して医学的にまずなすべ
きこと,なし得ることは研究活動第I期に略々完了した。またその間に現場事情は著しく好転
した。残された問題として軽度,慢性二硫化炭素中毒の診断と対策とがあるが,これは純粋に
医学上の問題としては非常にむつかしく,早急の解決は望めない。従って慢性中毒の基礎研究
を進める一方,最も実際的な衛生管理向上に努力することによって中毒対策の実をあげる。
以上である。
(1)衛生スライド
これは二硫化炭素中毒の他,レーヨン現場で問題になる硫化水素,酸,アルカT)などによる
職業病も併せて,その概要,応急処置,対策(例えば現場作業における標準動作)など看, 56
枚のカラ-スライド及び録音テープで極めて解りやすく説明したものである。これによって衛
生管理者は勿論レーヨン現場の職員すべてに対して,己の職場を通じて労働衛生教育が効果的
に行なわれるものと期待出来る。昭和30年度末に完成した。
(2)衛生管理指針
これには現場事故に際しての応急処置など, E]常必要な衛生管理の要点が常時携帯に便利な
小冊子に纏められている1,800部印刷され関係者に配布された(昭和30年末)。
(3)衛生シリーズ
昭和31年度当初の議題として「衛生管理者の再教育」が問題にされた。しかし種々の事情,
例えば衛生管理者の出張許可及びその時間的余裕などに関する各社の事情の相違から年度半ば
からまず衛生シリーズの刊行を行なうことに切り換えられた.すなわち,第1冊ビスコース
レーヨン工業における労働衛生問題,第2冊環境調査実技(1),第3冊環境調査実技(2),第4
冊疲労検査法,第5冊健康診断実技からなる全5冊を逐時刊行することになった。後述する労
働衛生問題討議実習会とからんで,まず第5冊の早勘刊行が望まれた。第5冊健康診断実技は
昭和32年に刊行され,各現場における診断技術の改善統-の第一歩が印された。その内容は,
全血比重の測定,網状赤血球数の算定,好酸球の算定,血清コレステロール比の測定,尿酸ク
ー66-
レアチニン比の測定,展ウロビリノゲン反応の検査,尿蛋白の定性換査,その他で,参考とし
て赤血球及び白血球数の算定,ビュルケル計算盤による血球の数え方,尿スクリーニングテス
ト,容量分析,光電光度計の使い方の5項目を附加してある。
(4)労働衛生問題討議実習会
上述の衛生管理者,あるいは技術者の教育活動は研究各社委員の討議並びに印刷物を通じて
の間接的なものであった。昭和32年度に至って,次の2つの理由から新たに「労働衛生問題討
議実習会」が計画され常置されることになった。
a)最近相次いで各工場医師の交替があり,既往の二硫化炭素問題の経過を熟知しない医師
が多くなってきた。
b)特殊健康診断問題を契棟として,診断手技の改善,統一の必要が強まった。
以後行なわれた当該討議実習会の内容を下に要約する。各社の事情によりその出席者は医師
である管理者,医師でない管理者,あるいは技術者等まちまちであるが,このことによって得
られた手技統一及び衛生管理実務者の啓蒙に対する効果は小さくないと考える。
出席者は常に各工場1ないし2名で計20ないし25名,医師と非医師との割合は大体半々であ
った。講師,あるいは実習指導者には阪大,慶大,労研の各特別委員または研究者が当った。
(1)
i )第1回労働衛生問題討議会(講演及び討議)昭和32年, 10月, 於東京
a)労働衛生研究会経過内容 化繊労働衛生研究会委員長
b)作業場ガス濃皮の推移 労働科学研究所々長
南
木
新 次
C )二硫化炭素中毒研究の現段階 労研病理学研究室主任
久保田
重 孝
d)二硫化炭素の神経系統に対する作用について
阪大教授
梶 原
三 郎
e )二硫化炭素の吸収と代謝
問ESaJi国
原 島
進
勝
俊 治
(1)
ii)第2回労働衛生問題討議実習会(実習及び討議) 昭和33年, 2月,於阪大医学部
a)尿中クレアチエン測定法
b)血清コレステロール測定法
C )血液検査及び尿の定性検査
m
iii)第3回労働衛生討議実習会,昭和33年7月,於阪大医学部
a) ,'ti席者:医師11.技術員8,非医師衛生管理者4,計23名
b)実習項目:尿中二硫化炭素の定量,尿中含硫代謝産物の測定,血液検査の枚討
iv)第4I司労働衛生討議実習全,昭和34年1月,於労研(東京)
a)実習項目:血液検査の検討, A/G比の測定。
4 技術部会との関係
現場の衛生事情の好転,あるいは環境有害物質濃度の低下は技術的対策に待つより他に方法
がない。理想的な立場からいえば,職業病対藁に関する医学の役割は主として恕限度問題にお
いて技術者側に対する一つの勧告,要求をなすものにしか過ぎない。強い表現を用いれば,覗
場の医学的,あるいは衛生学的管理は現場の衛生事情が技術的に解決されるまでの現実的,中
間的,消極的職業病対策に過ぎない。
読(1)化繊労働衛生研究会,昭和32年度事業概況,昭和33年5月。
し2) M 上, 昭和33年度事業概況,昭和34年5fit
- 67 -
現在,なお一般に抜循者の労働衛生に対する関心は低いと考えられる。化繊集界が昭和13年
にすでに労働衛生対策に関して技術と医務,労務との協力体制を作ったことは高く評価されて
よい。戦後,化繊協会労働衛生研究会は適時同協会技術部会と協力して下記の問題解決に当っ
た。その協力関係は常に必ずしもスムースではなかったが,両者の協力によって得られた効果
は大きい。
(1)二硫化炭素測定閉塞
現場労働衛生の最も基本的な問題である気中二硫化炭素測定法の簡便化,統一のために,昭
和25年9月「ヂエチルアミン測定小委員会」が発足した。メムバーば阪大,慶大,労研の各研
究者の他,技術側から3名,衛生側から3名をもって構成された。本小委員会における討論は
激しかった。しかし,問題が純化学的なものであったからと考えるが,会の運びは極めて円
滑,効果的であった。内容の詳細は先に述べた(本章3, (1), B参照)0
(2)測定基準小委鼻会
昭和26年1月,某地方基準局が管内某人絹工場の綜合監督を行なった結果,二硫化炭素によ
ると思われる疾患の多発せることを指摘し,これが防止対策を中心としての通牒が発せられ
た。加之,昭和23年8月の労働省衛生課長内款による測定法は, 「労働者の常時作業せる場
所」において測定するように指示せられておらないので,労働省から化繊労働衛生研究会に対
し,部署は勿論,時間をも考慮した適正な測定方法に関する意見を具申されたいとの申し入れ
があった。そこで研究会は,直ちにこの間題の換討を試み,同年5月,測定基準小委員会を創
設した。その構成は,特別委員を含め,技術および衛生側の委員若干名をもってなされた。
問題の性質上,技術委員を中心として研究を重ね,これに特別委員の意見を加味しつつ議を
ねることとし,原則として,測定法はヂエチルアミン法とすること,測定は人絹,スフでそれ
ぞれ考え方を変えることとし,当時近く完成予定であった,技術部会ガス対策小委員会の研究
資料に基ずき,立案することを申し合せ,第1回会合を終った。次いで,技術部会提出のス
フ,人椙各別に測定した,各社平均部署別ガス測定値に就き論議の上,各社さらに繰り返えし
慎重測定を行ない,その結果を待って再検討することとなった。第3回会合において,再度刺
定の各社平均部署別ガス測定値を検討し,各部署の測定位置およびその各位置に工員のおる時
間的関係を考慮した平均ガス濃度の算出方法について討議して,答申案を作成し, 9月11日付
化学繊維協会労働衛生研究会の創こおいて,労働省労働衛生課長宛に「レイヨン,スフ作業,
二硫化炭素,ガス濃度測定基準案に関する件」を提出したO その後委員会原案の趣旨はほとん
どそのまま採択され,昭和27年5月7日付基発376号労働省労働基準局通牒「人絹,スフ製造
工業における二硫化炭素,ガスの測定について」が発せられた。その大要を下記する。
-68
基発第376号
労働省 労働基準局長
昭和27年5月7日
都道府県労働基準局長殿
人絹スフ製造工業における二硫化炭素ガス濃度測定について
人絹,スフ製造工業に於ける二硫化炭素ガス濃度の測定は今後左記によって実施し昭和23年8月
12日量発第1178号通牒に定めたる二硫化炭素ガス濃度の判定基準とせられたい。
なお昭和23年8月25日,基衡発第34号は廃止する。
記
1、二硫化炭素ガス濃度の測定はヂエチルアミン法によること。
(註) 71ェチルアミン比色法による測定法であって、その詳細は化梯協会労働衛生研究会ヂエチルアミン測定小委員会に
て検討して決定せる方法に従うを良とする
2.測定は作業中の労働者の頭部の位置に於ける空気を採取して行うこと0
(註) (略)
3.各業務におけるガス濃度は当該業務における任意の労働者の実働時間を作業を行う位置によっ
て区分し,各作業位置における当該労働時間と作業位置におけるガス濃度との積の和を各労働
時間の和で除して算出すること。
(慕)各作業場のガス濃度を算出するに単にその平面的算術平均を以ってせずその作業場に於て作業する作業員の時間的
要EElを加えたる平均算出法に改めること.
たとえば別賦によると入婿紡糸作業場においては,作菜区分として,紡機内作業- 紡擁外作業,室内通路の三区分
としその作業区分における労働時間係数を2, 5, 3として各作業区分の測定ガス漉産との槽を10(2十5十3)に
て除したるものをその作業場の平均濃度とする.
4.作業位置におけるガス濃度の測定は時刻ならびに機台を変えて数回行い,その平均値を当該作
業位置におけるガス濃度とすること。
但し,停電,根城の故障により偶発する異常濃度は除外すること。
5.前記2および3について紡糸,普通スプ精練,アシドカッターの業務においては,別紙測定要
領によること.
(琵) (暗)
6.ガス濃度を決定するに当ってこの測方法が甚しく実情に合はない場合,たとえばガス濃度の時
間的変化が極めて大きい場合,またはガス濃度20ppm未満であるにもかかわらず,二硫化炭
素ガスによると認められる疾病が多発している場合などの取扱については本省に経伺するこ
と。
人絹紡糸業務におけるCS2 ガス濃度測定要領
1.測定箇所(図参照)
a.紡糸機内
紡糸機のスクリーンを2枚開きその左右の中央に測定者から見て手前の機側とバス壁との中
央の直上で床上130cmないし150cmの所とするO
スクリ-ンのない場合もこれに準ずる.
b.紡糸機外
紡糸楓の槻側から60cm離れ,床上130-150cmの所とする。
C.室内通路
紡糸機間でない通路の中心線上の位置で高さ130-150cmの所とする0
2.紡糸窒ガス濃度の算出法
a, b, cの測定値の平均を夫々2, 5, 3倍した値を加えて10で割りこれを紡糸室ガス濃度
とする。
-69-
(註) a 紡糸棟内ガス濃度(ppm)
b・-・・紡糸耗外 〝 ( 〟 )
c-一室内通路 〝 ( 〟 )
輯キ什平射ri・>.'-'まKfc-.Lサア5ヤー⊥3-(ppm1
10
人絹紡糸室ガス測定位置
□□□□□□姉川
.r
ロロ[コ[コ[コ⊂コ
--一一一一 一一‥・OC
スフ作業場CS2ガス濃度測定要蝕
A 紡糸の業務
略
B 普通スフ精練の業務
略
C アシッドカッタ-の業務
略
労働省とレイヨン工業なる特定の業務との間の上記の如き経緯は,他に例がない。当時はレ
イヨン工業の急速な復興期であったために,生産工程に技術上の無理が少なくなかった。従っ
て衛生環境の極めて悪い工場も幾つかあった。このことが労働省通牒の動機になったことは確
かであるが,一方,当該業界が戦後労働衛生研究会を再発足させ,これが対策に積極的であっ
たことも,かかる異例の通牒を発せしめた原因と考えられる。
筆者は労働衛生問題に関する医務と技術との関係という立場から,ここで測定小委員会が行
なった時間調査(time study)に注目したいO 筆者は当時より化繊労働衛生研究会に関係し
ていたが,この時間調査が労働衛生関係者から独立して技術部会のrtjだけでなされたことを遺
憾に恩っている。現場における労働衛生の最も基本的な問題に,現場医も研究者も自由にタッ
チ出来ないということはおかしいことである。筆者は最近かねがね筆者の尊敬している某人絹
会社の技術課長に当時の経緯を質ねた。彼によれば,技術部会に持ちよられたデータは,少な
くとも彼の工場に関する限り入念正確なものであり,かつ,彼の工場のデータを中心に,苦労
して各工場データを調整し厚め上げたものが労働省に対する答申の基になった由である。彼の
言によって筆者の不満は小さくなったとはいえ,技術と医学との協調という労働衛生上の重要
なことがらについての問題意識は益々強いO
(3)現場環境改善経過
前述のとおり,昭和14・-15年紡糸機カバーが短期間内に全般に普及し,紡糸室のガス濃度は
著明に低下したが,昭和16年には太平洋戦争が勃発し,生産設備も荒廃するに至った。
終戦後ビスコ-スレイヨン工業はいち早く生産設備の復元と生産の上昇につとめ,環境の改
-70-
善にも多大の努力を払った。この間にガス濃度の低下を促進するに有効であった事項を列挙し
てみると,
a.二硫化炭素濃度測定法の簡易化。
b.作業員教育の徹底。
C.労働衛生に対する一般の関心の増大。
d.パルプおよび苛性ソ-ダの品質向上,酸調整その他各種の生産技術上の改良進歩と,
それにともなうカバー開放の機会の減少.
などがその主なものであった。
ところで環境改善のための諸工作の細目および濃度の低下の要因は,一々の工場によって種
種異なるのであるが,以下人絹とスフとに分け,そのうちの主要な事項を概括的に述べること
とする。
A.人 絹
i)給排気設備:送排風機の増強またはシロッコファン・ターボファン能率のよいリミッ
トロードファンに取替えることなどが行なわれ,給排気ダクトの新設,修理,給気法の変更,
送気吹出口のアネモスタットの改良により送風が均一となり,紡糸機内に(殊に遮蔽戸開放時
に)強く流入してガスの漏出することを少ないようにしたことなど。
ii)遮蔽戸の保健o
iii)ポットケース:ポットカバーの改良,ポットケース内亡硝付着防止の考案など。
iv)ビスコースの清浄化,酸調節技術の向上による紡糸の順調化,ノズル交換率の減少,従
ってまた遮蔽戸開放時間の減少など。
Ⅴ)ケ-クあげ標準作業の改良による遮蔽戸開放時問の短縮。
vi)大型ポットの使用によるケークあげ時間の間隔の延長o
vii)凝固液中のガス溶在量の減少:紡糸室から出て来た凝固液に空気吹込みその他の方法に
よって脱ガスを行ない,この液が再び紡糸室に送られて来た時のガス放出量が少なくなるよう
にしたこと。
以上のような諸改善により,ガス濃度は低下し,ガスに起因する疾病もまた減少した。
設備改善工事とガス濃度の変化の1例を示すと, Fig.VI.12のごとくである。
Fig. VI. ll.設備改善によるガス濃度低下の1例(某人絹工場)
①
②
③
④
A
14.2 15.I
カバ-;*サ
::果
挫備 中
⑤
B ⑥
牲L
ーlノ 2 15
23A
25 7
カバl l 応訓 告 管 雷 雲誤 芯 盈 払
打
2 7.5
農 法
吹出口放良作幕安定
儲盟 請
よ る
71
B.ス フ
i)紡糸室の給排気設備の改善:おおむね人絹の場合と同様の点について改善が行なわれ
た。
ii)遮蔽戸の改修および新設:ガラスの代りに有機ガラスを,木枠の代りにアルミ枠を用い
た例があり,開閉装置の検討も行なわれた。
iii)集束機のガス排除:従来紡糸槻ほどの関心が払われず,そのため反ってこの事のガス濃
度の高い場合があったので,天蓋を付するか,あるいはスクリーンを付設して排気するなど,
各工場でそれぞれ工夫された。
iv)紡糸機,集束機と精紡機との連結方法:集束機を出た篠をタイミングの目的で受箱また
(1)
は糸溜機に滞留させるのが普通であるが,この部でも二硫化炭素が発散するので,天蓋または
ガラスボックスで蔽って排気する。受箱は人力を要するので糸溜機に変更されてゆく傾向があ
り,また工場により紡糸および精練の速度を同一にしてこの糸溜機をも廃し,紡糸機と精練機
を直結した例もある。またこれらの工程を送られてゆく間に,篠からガスの発散するのを防ぐ
ために,糸溜機から紡糸室出口および精練機第1水洗フィードローラーまで,あるいはアシッ
ドカッタ-までの間を特別の篠送りケースの中,または水流のある溝中を通過せしめる工場も
ある。
V)捲縮浴およびアシッドカッタ-の対ガス設備:捲縮スフのアシッドカッタ-では末精練
の篠を切断するので,この上にフ-ドを設けるか,捲縮浴とともに遮蔽して排気するo またカ
ッターおよび浴の上にフードを設けて上方に排気するほか,カッターの下方に別に排気孔を設
けている例もある。カッターの調子監視のためカッタ-工の立つその頭上の位置へ送風するこ
とも行なわれているが,この際ガスを捜拝する結果に陥らないように注意が払われている。ア
シッドカッターを遮蔽装置としての小室に入れてしまっている例もある。
カッターで切断されたチップは捲縮浴に投入され,ついで精練機に送られるが,この部もカ
バーを施し,排気されているO
ある工場で,カッタ-に天蓋,捲縮浴にカバーを施し,両者より排気して効果があったが,
なお捲縮熱水リタ-ソ落口の遮蔽に欠陥があり,蒸気がカッタ-方面に流れるのを見出してこ
の部を改善し,僅かの経費で艮結果を収めた例があるOその改良前後の二硫化炭素濃度の変化
を示すと,次のごとくである。
Tab. VI. 8.カッター付近の設備改善によるCS2濃度の低減
位
改
置
捲 縮 浴
】
改
良
芸39 p pm
カ ッ タ ー 工 程 位 置
38
10
趣
75
18
ッ
細
タ
浴
排
外 側
前
47 pp m
カ
カ バ I
良
ー
出
後
桟
口
註(1)昭和28年筆者が環境調査を行った某スフ工場では,篠の受箱附近(糸滑室内) ,篠手押運搬車附
近で200.-500ppmの二硫化炭素が随所に測定された。
-72-
vi)精練棟の遠蔽:普通精練機の第1水洗浴および脱硫浴にフードまたはスクリーンを付し
て排気している。ある工場では第1水洗に熱水を用いて積極的に二硫化炭素を分離せしめ,こ
の部の遮蔽を完全にし強力に排気する方法をとっている。
C.二硫化炭素回収装置
引火爆発性の強い二硫化炭素を紡糸浴から回収することは,技術的に容易ではない。その安
全性と経済的採算とを満足する装置を実用化したのはドイツである。わが国では Tab.VI.9.
の如く昭和32年来相次いでドイツ製回収装置を輸入装備した。早晩仝スフ工場にそれが利用附
設される由である。
ドイツにおける当該装置考案の動機については知らないが,わが国がその輸入装備にふみ切
った理由は経済的なものであることには間違いあるまいO何れにせよ本装置の登場によって現
場環境の二硫化炭素問題は技術的に解消されたといっても過言ではない。それが単に二硫化炭
素節約という経済問題から出発したのは皮肉なことであるが。
本節の初めに述べた如く,職業病の直接の原因である現場有害物質に関する問題を最終的に
解消するものは技術の側にしかない。本装置の如きものが,労働衛生の場での医務,技術の協
議協調の結果,発案,研究,実用化されることが望ましい.また,医務,技術の両者の間に職
業病対策に関する本質的,具体的なつながりがあれば,回収装置はもっと早期に実用化されて
いたであろう。
Tab. VI. 9- 二硫化炭素回収装置附設工場(スフ)
昭和32年4月 東 洋 紡 績
〝 5月 東邦レーヨン
〝 12月 三菱レーヨン
昭和33年2月 鏡 淵 紡 績
昭和34年12月 倉敷レーヨン
昭和35年9月 富 士 紡 績
日新紡績.大和紡績,近々附設の予定
備 考 附設せられた回収装置はLurgi Gesellschaft fur WSrmetechnik. M.B.H.のもの
とPintsch Bamag A.G.のものの2種類ある。
-73-
Ⅶ 総 括 的 考 按
-職業病 と は何か-
「一定の職業についている人に,その職業自身が原因となって病気がおこった場合,それを
(1)
職業病と呼ぶ」と云う職業病の概念規定は常識的である。ある職場の従業員におこった特定の
疾病と,その職場における彼の労働条件とを結びつけることは,果して常に容易であろうか。
純生物学的(狭義の医学)な立場に立てば,答-は「否」である。
(2)
一方, 「職業病とは職場自身の病気である。」と言ほれている。この表現も極めて常識的で
あるが,上述の概念規定に比べると一歩職業病の本質に近づいているように恩はれる。
要するに,社会的要因をぬきにして,純生物学的に-ツの職業病像をえがこうとすることは
本質的に無理であると考-るO そして,病或は,診断と言う一般医学に用いられている言葉を
職業病にそのまま持ち込んだことが,職業病の概念をばかした一因であると思う。職業病なる
概念は,職業病を一般疾病のカテゴリーから一応切り離して,根本的に検討し直す必要がある
と考える。
以下,この問題について,主として二硫化炭素中毒に具体例をとりなから考按してゆきた
い。
1.職業病診断における医学の限界について。
(3)
久保田がまとめた「二硫化炭素中毒問題の推移」 Tab. W. 1.は問題を展開する糸口とし
て恰好・のものであると思う。同表によると,昭和初年より10年の週期で二硫化炭素中毒発生事
情或は当該工業衛生管理事情が好転していることが分る。この四ツの区分について,中毒発生
の要因としての社会事情,産業事情,その対策のための医学上,技術上,並びに労務管理上の
諸事情が,当然のこと乍ら中毒発生の様相(中毒症状)と見事に相関している。就中,昭和20
年を境とする戦前と戦後との対比は解かである。即ち,戦前では実際上比較的容易に判定でき
る急性4'毒(重症)が注目され,戦後は判定が容易でない慢性Itl毒(軽症)が主として問題と
された。
急性中毒が注目される時,qlでは,その病理学的知識及び医学的判定(診断)方法が極めて不
備,幼稚であっても,同種従業員が多数である現場に於ける小義発生事情から,その原因物質
註(1)日本の職業病,第2章,労働科学研究所編.昭34
(21久保田重孝,有害作業とその処理.結語,労働科学研究所出版部,昭32
(3)久保田重孝,化学工業における職業病(Ⅱ)自然, ll, 7, 1956
-74
Tab. VH. 1.ビスコースレイヨン工業における二硫化炭素中毒問題の推移
-I
備考:久保田氏原表に筆者による若干の変更補足が加えられている。
と中毒とを結びつけることは層々納得され易い。つまり,無意識裡にしろ,職場固有の極立っ
て特徴ある症状群を,統計的に捕え易いのである。
しかし,慢性中毒が問題とされる時期では,原因物質と中毒とを関係づけることは容易では
m
ない. 「職業病の作因は独特であるが,症状は一般的である」と言う Fluryの言葉は慢性二
硫化炭素中毒についても至言である。
ここで筆者が注目したいことは,戦後ビスコースレイヨン工業に於て問題にされた軽症は当
然戦前でも発生していたはづであること,しかもそのような軽症は当時当該中毒とは考えられ
なかったであろうことである。 -ツの疾病が,社会事情如何によって見逃がされたり或は誤診
されたりすることは一般的な医療問題としても重要なことである。しかし,この点に関する職
業病問題の内容は一般疾病と異り,卿か特異であると考えるのである。
いま,昭和初年にビスコースレイヨン工業の現場職員が軽度の頭痛,胃腸障害,神経炎にか
らむ症状などを訴えたとしよう。勿論,本人も医者もそれを-ツの疾病とみなし,何らかの治
療を講じたであろう。しかし,当時では彼の症状と,原因としての二硫化炭素とは,社会的に
は勿論医学的にも決して結びつかなかったであろう。つまり,職業病の病理に関する研究進歩
は,一般医学のレベルからは可成ずれておくれているのである。自然条件における疾病発生と
人工的条件の所産である職業病発生との歴史的な相違から,それは当然の結果ではあろう。従
って,疾病の診断は容易である場合でも,それが職業病であることの判定は医学的に決して容
易ではないのである。
では,ビスコースレイヨン工業における労働衛生研究会が発足して20年になるが,二硫化炭
素中毒本態に関する研究はどれだけ進歩したであろうか。その戦後の研究経過と内容との大略
を前章に紹介した。そこに当該中毒についての数多の医学的或は生物学的研究をみることがで
琵(1)梶原三郎,現代社会の職業性疾患.自然, ll, 6, 1956
-75-
きる。しかし・それらは何れも断片的なものであり,同時に,特定の現場職員の慢性二硫化炭
素中毒判定(診断)と言う実際問題に関して医学が果し得る役割は,戦前と大差ないことも明
瞭にうかがえる。当該研究会の診断基準小委員会がまとめた,二硫化炭素早期発見のための珍
断基準(第Ⅵ章3節(1), C参照),及び特殊健康診断項目(第Ⅵ章3節(2), B参照)の衛生管
理上の効果については注目と敬意とをはらうことを惜しまないが(後述),その慢性中毒判定
(診断)上の医学的(生物学的)意義については疑問をもたざるを得ない。また,当該中毒に
ついての労働省の特殊健康診断項目(Tab.VI. 4)参只削こついては,診断上の意味はないと言っ
てよい。
要は,一般疾病診断と職業病判定(診断)との間に,研究進歩の時間的なずれ以上に,本質
的な差異があると筆者は主張したいのである。先にあげたFluryの言葉や,前章に引用した
(1)
Laudenheimerの言葉を思い出してもらいたい。 -ツの慢性疾患に対して,肝機能障害或は
貧血なる診断を下すことは困難ではない。そして,一般疾病の枠内でそれらの障害は分析さ
れ,生理のひずみが何に起因するかが追求されるであろう。同時に,一連の治療方式も自ら生
れてくるであろう。しかし,それが特定の産業毒物に起因して起ったと医学的に判定すること
は,現在においても,将来においても例外的な二,三の物質に限っては可能なことであろう
が,一般的には不可能であろうO
2.医学の限界について。
前節で聾者は,二硫化炭素中毒に例をひいて,職業性急性中毒は判定され易いが,慢性中毒
の判定は極めて困難であると述べた。また,前者急性中毒の判定も,医師と患者との一対一の
関係における判定ではなく,問題の職場におけるきわ立った特徴をもつ症状群の発生がその判
定を可能にすると説明した。そして,一般疾病診断と職業病判定との問に,本質的な相違があ
るのではないかと云う問題を提起した。
この問題を考按する前に,より一般的な,医学の限界と言う問題について一言しておきた
い。この際,医学と言う複雑な性格をもつものの概念を混乱させないために,以後単に医学と
言うときには,一応純生物学的方法乃至物理化学的方法に依存している,自然科学としての医
学をさすことにする。
現状の自然科学としての医学について先づ言いたいことは,それが物理学や化学に比べると
甚しく未熟な,記述的段階にあると言うことである。医学門外者は,屡々所謂医学的諸検査を
受けることによって,彼等の身体の不調(疾病)が忽ち分析され,その因果関係が明かにさ
れ,疾病は治療されると信じている。しかし,医学は彼等が思っている程進歩していないし,
また医学の将来に対して純生物学的方法乃至は物理化学的方法-身体の構成物質の物理的化
学的反応系として,生理を,従って病理を理解し分析してゆこうとする方法-にどれだけの
期待をもてるかも明かでない。如何なる分野の自然科学でも, -ツの理論はある限られた条件
琵(1) Schwefelkohlenstoff-Vergiftung kftnne alles machen.
arJE
下においてのみ成り立っのである。その完全なる姿の故におそろしい程美しい古典力学です
ら,電子や中性子の飛び廻る微視的世界に於ては無力に等しい。医学及び生物学のむつかし
さ,厳しさは,生命が活動できる条件の捨象を許さないことにある。医学において血柴蛋白質
のもつ抽象的意義と,物理学において剛体のもつそれとの間には,実際問題として甚しい距り
があるO人間の生理を理解するのに分析方法しか知らない医学の苦しみはここにあるO
しかし,健康と疾病との諸問題について,上述自然科学としての医学が直接或は間接に極め
て有効な処置を講じ得る方法を提供してくれることは確かである。また,自然科学としての医
学が,人間及び人間の社会における存在様式を理解するに必要且つ有効な学問であることも確
かなことである。
医学にとって不可避な限界があるとしても,一般疾病に対する医学の立場は上述の有効性に
ある。また,疾病を治療すると言う目的をもった医学には,学問としての独自な世界がある。
職業病に対しても,医学は確かに最も有効な判定手段を提供してくれる。しかし,それは職業
病を一般疾病として診,且つ取扱う限りにおいてのことであると考える。この点については次
節で考按したい。
職業病問題における医学の立場は,現実の問題として職業病判定に対して, -ツの有効な手
段である医学が,如何にとり入れられ,活用されるかにある。職業病判定について,一般疾病
におけると同じ考え方から,医学にその判定に対する全責任をとらそうとする潜在的な勢力が
一般にあるとすれば,それは大きい誤りと言はねばならない。
3.職業病とは何か。
以上,筆者は,医学は職業病半し定の-必要条件にしか過ぎぬと述べた。また,本章のはじめ
に,柄,或は診断と言う一般医学に用いられている言葉を職業病にそのまま持ち込んだこと
が,職業病の概念をばかした一因だと述べたO ここで,筆者は「職業病は直接には医学的診断
の対象とならない」と考えたい。 「職業病なる概念は類型である」と主張したい。
(1ノ
医学的診断と類型とは違う.珍断とは,病気であるかないかのニッのうち-ツをはっきり決
めることである.類型とは,模型化された尺度であって,これをもって測り,これと-比較すべ
きものである。あるものがこの類型であるかないかと言うのではなく,この類型の特徴を多く
もっているか,少くもっているかが問題になるのである。例えば,診断とは,ある人が進行麻
津であるか否かは直ちに確定できないにしても,事実はその人が進行麻輝であるのか,ないの
かのニッのうち-ツであると言う立場で医学的分析をすすめてゆくことであるO しかし,例え
ば熟狂者と言う類型については,ある人は種々の程度の熟狂者であり得るのであるO
職業病問題における医学の役割は,特定の職場における従業員の疾病または身体不調につい
て,その「発生の仕方」及びその「一般的症状」に関する特徴を統計1伽こ分析することにあ
るO現場における疾病を一般医学の立場から診断し,治療することは勿論現場医或は一般医師
註(I) Kurt Schneider,精神医学.西丸四方訳,南山堂一 昭19
-77
の役割であるが,それを職業病とするか否かは,上記医学的統計的分析を-ツの必要条件とす
る,職業病国有の分野における問題でなければならないと考える。
職業病を問題にする場合,まづ各現場の環境調査と現場職員の身体諸検査が詳細に行ほれな
ければならないO併せて生物学的実験もなされなければならない。それらの調査,研究から特
定の現場に対して, -ツ或はそれ以上の記述的職業病類型(症状群)が抽き出されるであろ
うO類型分矧こ際して,理論的先入観に捉はれることをなるべく少くするために,敢て記述的
類型と言う立場をとったのである。しかし例えば,諸種産業有害物質が属する有機溶剤と言う
カテゴリーのrFlでは,数多の医学的根拠から-ツの理論的,統一的な類型が生み出されるであ
ろう。
職業病を類型とする方向に対して,勿論いろんな閑難が附随すると思う。ある職場で発生し
た疾病を-ツの類型に入れようとする場合,そこに無数の段階と境界とが生ずる。この境界を
定めるためには,社会的評価と言う非医学的見地が用いられることになるから,全く実用的な
ものとなり,或る場合には自由裁量的になる可能性もある。しかし,本来存在しない「職業」
病を診断しようとする無謀と違って,類型と言う立場には職業病対策に対して極めて有効なそ
して具体的な医学的根拠がある。
上述の観点から,前章に述べたビスコースレイヨン工場現場の調査,二硫化炭素中毒に関す
る諸研究をみるならば,その成果が決して小さくないことが分るであろう。特に,同車研究活
動第Ⅲ期の意義は,ここに見出されなければならない。耐性問題及び特殊健康診断に関する広
範囲の調査,現場技術者の診断実技教育などを,二硫化炭素中毒の記述的症状類型確立のため
の努力とみるならば,当該研究会は着々と成果をつみ重ねていると言えるであろう。
労働省の特殊健康診断についても,また同じことが言える。そこにみられる諸検査項目を,
疾病診断と言う立場からみれば問題にならない場合が多いが,職業病類型と言う観点からみれ
ば,一応首肯出来るのである。
二,三年前の産業医学会におけるシンポヂウムで,ある現場医が二硫化炭素中毒についての
労働省特健項目を問題にしたことがあった。彼は,その他覚的診断項目として「網状赤血球の
算定」 -ツだけで当該中毒について何が分るかと言うのである。この疑問は,疾病診断と言う
立場からすれば,化繊労働衛生研究会が独自の立場から逃走した項目(第Ⅵ章3節(1), C及び
B参照)についても同じく発し得るものであると考える。しかし,二硫化炭素中毒類型症
状を抽き出すとIEjう考え方からみれば,労働省の「網状球算定」 -ツと言う線も大きい意味を
もつし,化繊」二業なる大企業体の¥r.場からは化繊案診断項E]は妥当なものであると言えるので
ある。
後者,化繊案項LHま,労働省項目に比べれば,遥かに大きい当該中毒類型としての医学的意
義をもっているO しかし,それは化繊二L二業労働衛生研究会があったからこそ生れたものであ
り,またその研究会を存続せしめ得た企業においてはじめて実行可能な検査項目であると言う
のが,日本における衛生管雅の現状であると思うO従って,化繊案項目が二硫化炭素中毒類型
として鼓も優れたものであっても,直ちにそれをすべての二硫化炭素使用企業に対する法的特
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健項目とするのは問題であろうO これは,化観衆が歳も重視している血清コレステロール定量
-ツを考へただけで容易に肯づけることであるO スクリーニング・テストとして血清コレステ
ロールを定量することは,中小企業の衛生管理の現状及び普通の診療機関,開業医における検
査能力の実状からみて無理なことである。
診断はおろそかにできないが,類型の選定は,産業事情,社会事情の実状に沿って実際的に
行ってよいものと考へる。要は,職業病対策の実をあげることにある。さきに,筆者が社会的
要因を抜いて職業病像をえがき得ぬとした所以である。勿論,職業病専門家は理想的な職業病
類型の確立に努力すべきであるし,当該対策もまた理想酌な職業病類型に目標と規準とをおく
べきである。何れにせよ,職業病は記述的症候群類型であると言う医学的根拠から,その対策
の-基本である特殊健康診断の意義が明瞭になるし,業務上疾病規準の問題も,科学的に処理
し得る道が開けると考える。
最後に,自然科学の徒としての筆者の研究態度について一言しておきたい。職業病を専攻し
ているものとして,現実の職業病問題を処理するに役立つ方法について研究しなければならぬ
ことは当然であるが,一方,基礎医学者として筆者は「生理機能が順応できる物理的,化学的
環境の範囲」と言うテーマを生涯の目標としているO それは生理学そのものであり,物理化学
的方法若しくは純生物学的方法を遵守するものにとっては,夢に等しいテーマであるかも知れ
ないO しかし,その専門分野が何であれ,基礎医学者が社会に応へ得るためのオーソドックス
な道は,これ以外にないと考えるoまた,長い目でみれば,ここに基礎医学と実際的な職業病
問題とのつながりがあると思う。本章の論旨と,この筆者の基礎医学者としての研究態度との
問の矛盾は,職業病専攻者である今後の筆者にとっての大きい問題息となるであろう。
- あ と が きVI童までについては,その日的を序章に述べたo最終章では,具体的且つ詳細に筆者の職業
病論を展開したかった。しかし,時間の関係で,それはささやかな,しかも極めて抽象的な小試論に了ってしまった。また,筆者の専門と経験とから止むを得なかったとは言え,殆ど二
硫化炭素中毒問題からのみ具体例をとって考按を職業病一般に及ぼした点も,捌か強引に走る
きらいがあったと思う。折があれば,職業病論について,改めて本格的な考按を試みたいと思
っている。
最終童において,問題を特殊健康診断と業務上疾病判定基準との二つに限って「職業病類型
論」を展肌したならば,論旨は一層明解になったであろうし,予憩される大方の批判にも強く
耐え得るものになったであろうO しかし,筆者は充分の論証を伴うことなく,敢て一般病疾論
を含めて-ツの職業柄論を試みた。問題提起と言う意味から,この点については宜しく御批判
願いたい。
なお, n, n章は主として野村が,他章は後藤が執筆した。
本稿執筆の機会を与えて下さった上,終始筆者らを御搬捷下さった,生命保険文化研究所常
任理事,今山益三氏に心から感謝の意を表する。
9」Eこ
昭和36年6月15日 印刷
昭和36年6月20日 発行
hmtmS
大阪市東区今橋4丁目13番地
発行所 豊契生命保険文化研究所
発行者 今 田 益
大市西区執本町2丁目89
印刷者 石 部 藤 四 郎
印刷所 単式印刷株式会社
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