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第4 章 第三者行為(自動車事故)による補償
第 4 章 第三者行為(自動車事故)による補償 自動車事故 自動車事故は、戦後の高度成長期に自動車保有率の上昇率と呼応して増 加し、年間 1 万人以上が死亡する事態である。戦争でもないのに膨大な人 数が犠牲となることから 「交通戦争」 と揶揄されることになった。 特に 1970 年は交通事故で年間 1 万 6765 人が死亡し、史上最悪の年であった。その 後、警察や道路管理者などが教育と対策に取り組んだこと、また 2 度のオ イルショックで経済の伸びが鈍化したことなどによる影響で事故数・被害 ともに一旦減尐した。その後、1980 年代に再び増加、1993 年以降減尐に 転じるが、交通事故発生件数・負傷者数については 1990 年代より増加傾 向にある。これらの数字は、警察に届けがあったものや、通知されたもの だけであり、おそらく死亡事故以外の人身事故や物損事故はもっと多いと 思われる。 不幸にして交通事故が発生してしまった場合、法律として「刑事上の責 任」 「行政上の責任」 「民事上の責任」の3つを負わなければならない。 「刑事上の責任」は加害車両の運転者に、業務上過失傷害罪や業務上過失 致死罪の責任があるかどうか、道路交通法による責任があるかどうかなど の問題である。 「行政上の責任」は、いわゆる行政処分と呼ばれるもので、 公安委員会が免許の停止や取り消しなどの処分を行うものである。 「民事上 の責任」は、被害者に与えた損害をどのように賠償するか、という問題で ある。 自動車事故の損害補償は、損害の形態により人身事故と物損事故に大別 されるが、この章では本誌の性格に鑑み、人身事故について触れる事とす る。 1 自動車事故と損害賠償 根拠法令 民法 自動車損害賠償保障法 (1) 損害賠償の基本事項 ここでは、自動車事故から発生する問題やその解決方法などの大筋を理 解するために損害賠償の基本的事項について簡単に説明する。 ① 損害賠償支払義務者(損害賠償責任を負うのは誰か) ア 事故運転者(加害者) イ 加害者の使用者(雇主) 従業員が業務運転中に第三者に損害を与えたとき、原則としてその雇 主は使用者として賠償責任(使用者責任)を負うことになる。そのた め、雇主にも損害賠償を請求できる。 1 ウ 運行共用者 運行共用者は、たとえ直接自分が起こした事故でなくとも賠償責任を 負うことになる。雇主は使用者責任と運行共用責任があるため、従業 員の業務中の事故について賠償責任を負う可能性が高い。この他、車 の所有者はもちろんのこと、借主も運行共用者である。また、場合に よっては車の貸主、名義貸人などにも運転共用者責任が及ぶことがあ る。 エ 未成年者の親 a 未成年の子が親の車で起こした事故については、一般に親は運転 共用者として、賠償責任を負う。 b 子が自分の車若しくは第三者の車で事故を起こした場合、その子 が「責任判断能力の無い未成年」であるとき、親はその監督責任 によって賠償責任を負うことになる。 c 加害者が未成年者でも判断能力がある場合には通常、親は責任を 負う必要は無いが、 監督義務を十分果たしていないという点から、 親に賠償を請求できるという考え方もある。 ② 損害賠償請求権者(損害賠償を請求できるのは誰か) 死亡事故 相続人 相続人からの賠償請求 ア 第一順位 子(胎児を含む) ・孫などの直系卑属 イ 第二順位 父母・祖父母など、直系尊属 ウ 第三順位 兄弟姉妹またはその子 (配偶者は常にそれぞれと同順位で相続できる) 傷害事故 直接負傷した本人のみ 請求者 負傷者が幼児等の場合でも、法律上の請求権者はあくまでもその幼児自 身である。ただし、子供が大きな負傷(後遺障がい三級以上)をした時は、 その両親に慰謝料請求権が認められることもある。 ・被害者が直接請求できない場合 被害者が死亡していなくても、重大な後遺症が残った時には、一定の 近親者(父母・配偶者及び子)が法定代理人として請求できる。 ※被害者が未成年の場合 本人に法的手続きをとる行為能力がないため、親権者(親)が法定代 理人として請求することになる。被害者が精神上の障がいにより、事理 弁識能力を欠く場合も同様に後見人が請求する。 2 ③ 損害賠償の対象となる項目 ア 死亡事故の場合 死亡するまでのケガによる損害 治療費・入院費・付添看護費 入院雑費・交通費 葬儀関係費用(仏壇購入、墓碑建設) 積極的損害 財産的損害 雑費 消極的損害 精神的損害 将来の逸失利益 慰謝料 イ 傷害事故の場合 治療費・入院費・付添看護費 入院雑費・交通費・器具類購入費 家屋の改良費 積極的損害 財産的損害 雑費 消極的損害 精神的損害 休業損害 慰謝料 ④ 損害賠償額の算定 損害賠償は、その賠償金額が定型・定額化している。これは主に被害の平 等を図るためで、この結果大量に発生する事故の賠償事務を速やかに処理 できるようになった。人身事故の損害は、積極的損害、消極的損害、慰謝 料に分かれている。 3 逸失利益 ・逸失利益とは、事故がなければ得られたはずの将来の利益である。死亡 事故の逸失利益は、あと何年働けたかを基準にして、死亡して働けなく なった分の損害の額を算定する。傷害事故は後遺症が残り、事故後の収 入が減った分の推計で、後遺障がい等級の何級に該当するかと年収によ って逸失利益の額も決まる。 慰謝料 ・財産権以外の損害、すなわち精神的・肉体的苦痛による損害を賠償する もの。慰謝料の算出では加害者・被害者それぞれの事情が考慮される。 慰謝料の額も定型・定額化されているが、算定基準には弁護士会、自賠 責保険、任意保険のものがある。 ・考慮される事由 被害者の事情 : 障がいの部位や程度、後遺症の程度、治癒に至る 過程、年齢、性別、既・未婚の別、職業、生活状況 加害者の事情 : 被害者に対する誠意、加害者の年齢・職業、不法行 為の有無や程度 休業損害 ・治療のため得ることができなかった収入や賃金。ただし、被害者が実際 に損害を受けなかった場合には補償は受けられない。会社から給料が全 額支払われた場合などは、会社が加害者に給料分を請求できる。被害者 は自分の受けた損害の限度で損害を請求できる。 ◎サラリーマン------事故前 3 ヶ月分の収入を平均して1日あたりの平均賃 金を算出して計算する。日給計算の場合には、1日の 賃金が1日の休業の補償分となる。長期休業でボーナ スに影響がある場合、その分も請求できる。現実の収 入減がなくても有給休暇を使用した場合は、休業とし て請求できる。 ◎自営業者------------前年度の確定申告の所得を基準にして算出する。これ よりも実際の収入が多い場合は帳簿や書類によって証 明すればよい。 ◎農・漁業者----------年収を出し、それを 365 で割って 1 日あたりの賃金を 出し休業日数を掛けて算出する。 ◎幼児・生徒・主婦----主婦の場合は女子労働者の平均賃金を基準にして算 出する。幼児・生徒などの場合は労働収入がないた め休業補償はない。 医療費関係 ・病院に支払った実費が損害となる。病院からの請求書や領収書は、後日 証拠となるので大切に保管する必要がある。過剰診療、濃厚診療、贅沢 診療の場合には治療費のうち一定額を超える部分について損害と認めら れないことがある。 付添看護関係費 ・通常の病院は看護体制が整っているため、原則として付添看護の必要 性は認められない。ただし、医師の指示のある場合や、受傷の部位、 程度または被害者の年齢などからみて付添いの必要があれば損害と認め られる。 4 ⑤ 過失相殺(責任分担割合) 被害者に支払われる賠償額は、必ずしも全損害額とは限らない。加害者、 被害者双方に過失がある場合、その割合に応じて賠償額が相殺される。被 害者に重大な過失がある場合には、強制保険(自賠責保険)でも減額され る。どの程度被害者が過失の割合に応じた金額を負担するかは事故の状況 によって様々だが、一般的には道路交通法に定められている優先関係、遵 守事項、公平の理念に照らして判断される。 ⑥ 損害賠償を解決する方法 ア 示談 示談とは、被害者と加害者が裁判所の手を借りずに話し合いによって賠 償責任の有無、その金額、支払方法などを決定することである。交通事故 の 9 割以上が示談によって解決されている。原則として、一度示談となっ た場合のやり直しはできないが、示談成立後後遺症が発生した場合や、容 態が著しく変化したときなど示談時に予見できなかった内容について請求 できる場合もある。 イ 調停 調停とは、感情的になったり知識が不足しているなどの理由で、事故の 当事者同士の示談交渉がうまくいかない場合がある。そのような場合、裁 判所に調停を申し立てて、調停委員に間に入ってもらい、意見を聞いたり 助言を受けたりしながら交渉を進める。 ウ 訴訟 示談や調停では話がまとまらない場合、 裁判により解決する方法である。 訴訟の場合は、目撃者等の証人や当事者への尋問、現場の検証、鑑定など 法的な立証手続きが必要なため、通常は双方が弁護士を立てて手続きを進 めることとなる。 2 自動車保険 根拠法令 自動車損害賠償保障法 自動車事故により損害賠償は、近年は個人の資力ではとても払いきれな いほどに高額化している。被害者が事故によって被った損害賠償金を請求 しても、加害者にもし資力がない場合には結局補償を受けられず、泣き寝 入りということにもなりかねない。 このように、自動車事故による損害賠償は「自動車保険」がなければ解 決できないと言っても過言ではない。ここでは、その自動車保険について 説明する。 自動車保険は、大きく分けて自動車損害賠償保険(自賠責保険)と任意 自動車保険(任意保険)の二つがある。また、農業協同組合では、共済事 業として自賠責共済と自動車共済を取り扱っているが、内容はほとんど同 様であると考えてよい。 5 (1) 自動車損害賠償責任保険(自賠責保険) ① 自賠責保険の特徴 ア 強制保険(対人強制保険)である。 自動車損害賠償補償法に基づき、車の所有者(原動機つき自転車を含 む)は必ず加入しなければならない強制保険である。保険金の支払い は、人身事故の損害賠償に限られ一人あたりの支払い額に限度が設け られている。 イ 被害者保護が目的。 被害者救済の立場から、被害者も直接保険会社に保険を請求できる仕 組み(被害者請求)になっている。また、被害者に重大な過失があっ た場合にのみ被害者の過失割合に応じて損害額から減額される。親族 間事故では、他人性が認められる場合は、賠償が受けられる。 ② 自賠責保険の内容 死亡による損害 死亡による損害賠償項目には、死亡による逸失利益、葬儀費用、死亡に 対する慰謝料があるが支払い限度は 3,000 万円である。なお、死亡に至る まで医療費等がかかった場合は、120 万円まで支払われる。従って、最高 限度額は 3,120 万円となる。 傷害による損害 損害賠償項目には積極的損害(治療に関する費用等) 、休業補償及び慰謝 料があるが、支払い限度額は 120 万円である。なお、物損については支払 われないが、被害者が負傷した際、義肢、メガネ等身体の機能を補う物が 破損した場合には例外的にその費用についても支払われる。 後遺障がいによる 損害 損害賠償項目には、傷害による損害の他に後遺症障がいによる逸失利益 と慰謝料があるが、傷害による損害の 120 万円の他に、後遺症障がいの等 級(1 級~14 級)に応じて最高 3,000 万円(介護を必要とする場合は 4,000 万円)まで支払われる。従って、最高限度額は 3,120 万円(4,120 万円) となる。 コメント 自賠責による保険金は国によって統一的に定められた「自動車損害賠償 責任保険損害査定要綱」によって計算された金額であり、損害額がこれよ り大きくても自賠責保険から支払いを受ける事はできない。そういう場合 は、後述するが加害者側より任意保険を使うなり自己負担するなりの支払 い方法がある。 逆に、 適正な損害賠償金が支払い限度額を下回った場合は、 その適正な賠償金が支払われることになる。 6 自賠責保険金額一覧表 支払い限度 項 目 内訳金額 適 用 死 逸失利益 ケース毎に算定 一定の計算方法がある 亡 葬儀費用 60 万円 証明があれば、100 万まで 死亡本人の慰謝料 350 万円 遺族の 請求権者が 550 万円 慰謝料 1 名の場合 に よ 3,000 万円 る 被害者に被扶養者がいる場合は、 左記の金額 損 2 名の場合 650 万円 害 3 名の場合 750 万円 医 治療費 障 療 入 が 関 院 い 係 に 費 よ 120 万円 る 慰謝料請求権者は、父母、配偶者、子である。 に 200 万円を上乗せする。 実費 必要かつ妥当な実費 付添い(近親者) 4,100 円(1 日あたり) 原則として12 歳以下の子供に近親者が付添 った場合。 立証資料により、額を超え必要妥当な実費。 1,100 円(1 日あたり) 立証資料により、額を超え必要妥当な実費。 通 付添い(近親者) 2,050 円(1 日あたり) 立証資料により、額を超え必要妥当な実費。 院 諸雑費 付添い(看護婦・家政婦) 立証資料により、必要妥当な実費。 損 交通費 タクシー代は、必要な時。 害 諸雑費 要 介 護 実費 必要かつ妥当な額 休業損害 5,700 円(1 日あたり) 立証資料により、額を超え 19,000 円まで。 慰謝料 4,200 円(1 日あたり) 障がいの程度や診療日数により計算 等級 支払い限度額 慰謝料 第1級 4,000 1,600 第2級 3,000 1,163 万円 適 万円 用 慰謝料等は、被扶養者がいるときは、第 1 級については 1,800 万円とし、第 2 級については、1,333 万円となる。 初期費用の加算もある。 後 第1級 3,000 1,100 慰謝料等は、被扶養者がいるときは、第 1 級については 遺 第2級 2,590 958 1,300 万円とし、第 2 級については、1,128 万円とし、第 3 級については 973 万円となる。 障 そ 第3級 2,219 829 が の 第4級 1,889 712 い 他 第5級 1,574 599 に 第6級 1,296 498 よ 第7級 1,051 409 “要介護” 、 “その他”ともにケース毎に所定の算式により る 第8級 819 324 算定し、限度額の範囲内で支払われる。 損 第9級 616 245 第10級 461 187 第11級 331 135 第12級 224 93 第13級 139 57 第14級 75 32 害 7 ③ 加入及び継続の手続き 通常、新車購入時と車検更新時に行われる。加入、継続時には次の車 検までの保険料を支払っている。 ④ 保険料の決まり方 自賠責保険の保険料は、自賠責法に基づき、政令で決定されている。区 分は車種、用途、使用の本拠の位置で決められている。また、死亡事故を 起こした場合は、追加料金を支払う必要がある ⑤ 自賠責保険の請求方法 請求者 ア 加害者請求 加害者が示談成立後、まず被害者に損害賠償を支払った上で、その領 収書その他必要書類を添えて保険金の請求をする(未払い分の請求は できない) 。 イ 被害者請求 加害者に誠意がなかったり、資力がなかったりして賠償が受けられな い場合、加害者の加入している保険会社に直接請求できる(加害者の 同意は不要) 。被害者請求のうちで、治療費についてのみ医療機関が 被害者からの委任状を受け、加害者の加入している保険会社に直接請 求することができることになっている。但し、この方法をとると、傷 害による損害の支払い限度額が120万円であるため、休業補償や慰 謝料に当てる分が尐なくなる可能性があるので、医療機関などとよく 相談の上、利用するとよい。 必要書類 ア 自動車損害賠償責任保険金支払い請求書 イ 交通事故証明書 自動車安全運転センター事務所より交付を受ける。 警察への届出がないと発行を受けられない。 ウ 事故発生状況報告書 事故の当事者や目撃者が記入する。 エ 医師の診断書 死亡の時は死亡診断書(死体検案書) 、後遺障がいがある時は後遺障 がい診断書。 オ 診療報酬明細書 カ 休業損害証明書 給与所得者は事業主から発行してもらい、源泉徴収票を添付する。そ の他自営業や農業従事者等は納税・課税証明書または確定申告書控え など。 キ 交通費、付添い人費用などの明細書及び領収証 ク 印鑑証明書・委任状(請求権者が複数の場合) ケ 戸籍(除籍)謄本(死亡による損害のみ) コ 加害者の支払いを証明する書類(被害者請求の場合は当然不要) 被害者の領収証など。 8 窓口 加害者の加入している保険会社。 保険会社で受け付けられた請求は、すべて調査事務所が調査しその結果に 基づいて保険会社が最終的に支払いを決定し、請求者に支払われることに なる。 時効 ア 加害者請求の場合 被害者に損害賠償を支払った翌日から2年以内。 (事故日が平成 22 年 4 月 1 日以降の場合は 3 年) イ 被害者請求の場合 事故発生の翌日から2年以内。 (事故日が平成 22 年 4 月 1 日以降の場合は 3 年) コメント 何らかの事情で期間内に請求ができない場合などは、保険会社に対して 時効中断の手続きをすれば延期することも可能である。保険金等は加害者 の損害賠償の支出を補償するものであり、加害者請求が原則である。しか し、自賠責保険は被害者の保護のためにあり被害者側からの請求が認めら れている。さらに、自賠責保険には被害者が事故によって困窮しないよう に、示談が成立して保険金が出るまでの制度として内払金、仮渡金制度が ある。 ⑥ 仮渡金制度:前払い金として請求できる制度 仮渡金制度とは 事故発生後に必要な書類を整え、それから自賠責保険に請求をし、調査 事務所の調査、損害査定となり、現実に保険金を受け取るまでには1~2 ヶ月の時間を要する。しかし、被害者は治療費や葬儀費など当座の費用に 念出に困るケースも尐なくない。このように、当座の出費をまかなうため に、一定の金額を前払い金として請求できるという被害者のみに適用され る制度である。ただし、治療日数が 11 日以上の傷害でなければならない 等、傷害の程度によって区別されており、請求は 1 回限りである。 内容 死亡の場合は 290 万円、傷害の場合は、その傷害の部位・程度に応じて 40 万円、20 万円、5万円の三段階がある。 窓口 加害者の加入している保険会社。 必要書類 ア 仮渡金支払い請求書 イ 交通事故証明書 ウ 事故発生状況報告書 エ 医師の診断書 ※ 委任する場合 オ 被害者本人の委任状と印鑑証明 カ 受任者の印鑑証明 ⑦ 内払金制度:10万円単位で請求できる制度 内払金制度とは 傷害事故で被害者の治療が継続しているため、損害額のトータルが決定 せず示談することができないような場合に、すでに加害者が被害者に支払 っている損害額が10 万円以上になっている時に10 万円単位で仮に保険金 9 が支払われる制度である。この請求は、120 万円まで何回でも請求する ことができる。 窓口 加害者の加入している保険会社。 所定の必要書類を提出して請求する。 (2) 政府による保障事業 : 自賠責保険未加入車、盗難された車両、ひき逃げ等の保障事業 保障事業とは 自賠責保険は法律により加入が義務づけられているが、未加入の車両に はねられた場合や、ひき逃げで加害者が不明な場合、更には盗難等のため 車両の所有者が責任を負わない場合などは、自賠責保険の適用がなく、被 害者は十分な補償が受けられない。 このような場合でも被害者救済のため、 自賠責保険とほぼ同様な保険給付を受ける事ができるように、政府が自動 車損害賠償保障事業を行っている。また、自衛隊の車両、米軍の車両など は適用外車と呼ばれ、法律によって自賠責保険をつけなくてもよいことに なっているが、この適用外車両によって被害にあった場合、その運転者に 過失があれば国等が賠償責任義務を負うことになる。 窓口 自賠責保険を取り扱う最寄りの保険会社。 事情を説明し、所定の必要書類を提出して請求する。 なお、この保障事業は損害賠償を受ける事が出来ない場合の救済処置であ るため、後述するが、損害事故の場合等の治療費等は社会保険から給付を 受けるのが通例である。請求は、傷害・後遺障がい・死亡に区分され、治 療を終えた日または症状固定日、死亡日から 2 年以内となる(事故発生日 が平成 22 年 4 月 1 日以降は 3 年) 。 (3) 任意自動車保険(任意保険) ① 任意保険の特徴 ア 任意契約である。 自賠責保険は、法律で加入が義務付けられており、保険内容や保険料 が一律であるのに対し、任意保険は、加入も任意であり、どんな保険 にどれ位の金額の契約をするかは全く自由で、契約者が任意に決めら れる。 イ 上乗せ保険である。 対象となる損害項目は、物損(対物賠償保険)が増える程度で、あと は自賠責保険の対象項目と同様であり、適正な賠償金額が自賠責保険 金額を超えた場合に、その超えた分が支払われる。 ウ 免責時効・免責金額がある。 任意保険では契約時に運転を特定の者に限定したり、故意や天災によ る事故、親族間災害事故、同僚間災害事故などの場合は保険を適用し ないという取り決め事項や、保険の種類によっては保険金のごく一部 を自己負担しなければならないということもある。 10 ② 任意保険の種類 任意保険の種類には、対人賠償保険、対物賠償保険、搭乗者傷害保険、 自損事故保険、更には車両保険などがある。 最近はこれらの諸保険を組み合わせてセットになった形の保険(自家用 自動車総合保険)もあり、加害者(被保険者)に代わって示談交渉をして くれるというサービスもついている。 ③ 保険料の決まり方 自動車保険は事故を起こす危険性をいくつかの要素で分けて保険料を決 定している。事故を起こしやすい人や損害が大きくなるような車は保険料 を高く、事故をあまり起こさないと考えられる人には安い保険料を設定し て不公平が起きないようにしている。 最近は、この区分を保険会社によってさらに細かくしたり、新たな区分 を設けたりして独自に保険料を設定している。 ④ 任意保険の請求方法 自賠責保険と同様、加害者請求が原則だが被害者が直接請求する場合も ある。 ⑤ 任意保険の内払い 任意保険には示談成立前の自賠責保険の内払制度はないが、実際は治療 費・休業補償などについて、実損額を予測しながら内払金を払っている。 ⑥ 一括払制度 加害者が自賠責保険の他に任意保険にも加入している場合は、保険会社 を通して一括して自賠責保険も請求することができる。 コメント 自賠責保険でも任意保険でも、損害賠償金(保険金)は示談書成立後に 支払われるのが一般的である。しかし、損害賠償額が明らかに自賠責保険 金額を超えると判断される場合や示談が長引くような場合は自賠責保険を 請求することができる。 いずれにしても、保険金のスムーズな支払いを受けるためには、保険会 社との密接な連絡は不可欠であり、自分勝手な判断や交渉は禁物である。 (4) 自動車事故の相談機関 示談交渉を進める上で、任意保険がかなり普及している現在は、加害者 は保険会社が代理、代行するのが一般的であるが、これに対し被害者の多 くは素人であり、特にはじめての事故の当事者になった場合などは驚きや 怒り、不安などで十分な主張もできず、保険会社などの実務熟練者のいう とおりに示談金や負担割合を決めてしまう例も無いわけではない。 11 このような場合、前述のように被害者も損害賠償の基本的知識を深める ことも必要であるが、示談書を交わす前に内容が妥当かどうか、相談機関 を積極的に利用すると良い。なお、相談は無料のものもあり、気軽に利用 できる。 相談に行く時のポイント ア 何を相談したいのか、要点をまとめる。 損害賠償の問題は複雑多岐にわたるため、どんなことを相談したい のか、要点をよくまとめておく。 イ 電話相談はなるべく避ける。 微妙な事実の相違が結論に影響するため、 誤解を避ける意味でも労を惜しまず足を運ぶ事。なお、相談に行く 時は、最初に電話で予約をとった方がよい。 ウ 必要書類を準備し、なるべく当事者が行くこと。 事故や損害賠償に関係のある資料はできる限り準備し、できれば事 故の状況を最もよく知っている当事者が行くのが望ましい。 ① 山形県内の相談機関一覧表 ア 山形県交通事故相談所:交通事故による被害者やその家族に対する損害賠償の適正化を図る為 に設置されている。 所 在 地 電話番号 山形市松波 2-8-1 (023) 山形県庁舎 1 階 630-3047 東田川郡三川町大字横山袖東 19-1 (0235) 庄内総合支庁 1 階 66-5452 摘 要 月~金 09:00~17:00 (面談は~16:00) イ 日弁連交通事故相談センター:全国に相談所を開設、弁護士が示談斡旋、審査業務を行ってい る。まずは相談を。 毎週火・金曜日 山形県弁護士会法律相談センター (023) 山形市七日町 2-7-10 ナナビーンズ 8 階 635-3648 酒田市役所内 同上に受付 第 4 金曜日(奇数月) 酒田市本町 2-2-45 要予約 13:00~18:00 鶴岡市役所内 同上に受付 第 4 金曜日(偶数月) 鶴岡市馬場町 9-25 要予約 13:00~18:00 12 13:00~18:00 料金:30 分`5,000 円 ウ 日本損害保険協会山形自動車保険請求相談センター :自動車保険専門の相談所で保険請求の方法から必要書類など を具体的に教えてもらえる。 山形市香澄町 3-1-7 朝日生命ビル (023) 2階 633-0589 毎月曜日~金曜日 09:00~12:00 13:00~17:00 エ 自動車安全運転センター:保険金請求に必要な交通事故証明書を発行するところ。 天童市大字高擶 1300 (023) 窓口申請か郵便振替で手続 山形県総合交通安全センター内 655-3456 きをする オ 独立行政法人自動車事故対策機構:自動車事故の発生の防止と、自動車事故による被害者への 援護の業務。 ・ 介護料の支給や重度後遺障がい者への援護 ・ 交通遺児への育英資金貸付等の援護 山形市十日町 2-4-19 (023) 住友生命山形第 2 ビル 2 階 609-0500 カ 山形県自家用自動車協会:主に任意保険加入、車庫証明等受付を行っている 山形市大字漆山字行段 1422 (023) 酒田・鶴岡・新庄にも支部が 686-3951 ある ※ 米沢・新庄でも相談を行っているので、上記電話番号に随時確認 13 3 自動車事故と社会保険 根拠法令 自動車損害賠償保障法 健康保険法 国民健康保険法等 労働者災害補償保険法 第Ⅰ章社会保険でも触れたように、私たちは社会の中でより良く生活し ていくために、病気やケガに備えて各種の医療保険に、勤労者は業務上の 病気やケガ、死亡等に備えて労災保険に加入している。しかし、そのよう な保険給付をすべき事由が、第三者行為、すなわちここでは自動車事故に よる場合でも、社会保険より給付を受けることができる。むしろ、被害者 に過失がある場合などは、社会保険から給付を受けた方が安心できるケー スも尐なくない。但し、自動車事故という性質上、過失割合などによって 賠償程度などが複雑にからむため、一般の社会保険給付とは違った取り扱 いになっている。ここでは、医療保険と労災保険との関係について触れて みる。 (1)自動車事故と医療保険 ① 医療保険との調整規定 医療保険には、健康保険や共済保険、国民健康保険などのいくつかの種 類があるが、いずれの保険にも同じような内容の損害賠償との調整規定が 設けられている。 (なお以下にいう保険者とは、健康保険は各協会けんぽま たは健保組合、共済保険は各共済組合、国民健康保険は各市町村のことで ある。 ) その内容は、自動車事故による賠償は、本来加害者が行うべきものであ るが、被害者が医療保険を使用した場合は、保険者は被害者が加害者に対 して持っている損害賠償請求権を自動的に取得(代位取得)し、加害者に 対して保険給付に要した費用の限度内で請求できる、というものである。 ② 医療保険使用の際の届出義務 被害者が加入している医療保険を使用する場合は、一般の保険給付と区 別する意味でも、また後に加害者側との複雑な調整が必要であるため、保 険者に対して一定の届出をするよう義務づけられている。なお、必要書類 は以下のとおりである。 健康保険の場合 ア 第三者行為による傷病届 イ 治療(受診)の状況 ウ 事故発生状況報告書 エ 第三者(相手方)の自動車保険等の加入状況 オ 念書 カ 示談書(示談成立の場合のみ、その写し) キ 交通事故証明書 14 国民健康保険の ア 第三者の行為による被害者届書 場合 イ 交通事故証明書 ウ 事故発生状況報告書 エ 念書(被害者が記入) オ 誓約書(加害者が記入) カ 診断書 コメント ・自動車事故の傷病に対する医療費は、医療機関ごとにその診療報酬が決 められる自由診療になっており、普通の医療費よりも 1.5 倍前後高額に なるのが一般的である。被害者にも過失がある場合、医療保険を使用す ることによってその負担が尐なくなれば、過失相殺による減額も尐なく なり、さらに保険者の部分負担も含めれば、結果として被害者に有利と なる場合もある。 ・健康保険の場合は、療養の給付のほかに、健康保険本人であれば傷病手 当金の支給も受けられる。保険者が代位取得できる範囲は、医療保険で 給付したものに限られ、慰謝料などは当然含まれない。このことは、次 の労災保険でも同様である。 ・自賠責などの自動車保険を活用するか、医療保険を使用するかは被害者 の自由であるが、 医療費が高額になる場合や、 加害者に資力が無い場合、 任意保険に加入していない場合などは、保険者や医療機関などとよく相 談し、最初から医療保険を使用した方がよい。 (2)自動車事故と労災保険 ① 労災保険との調停規定 労災保険においても、各医療保険と同様に損害賠償との調停規定が設け られている。その内容は、加害者の不法行為による業務災害又は通勤災害 については被災労働者、死亡の時は遺族に対して労災保険から保険給付を 行った場合、国(保険者)は、被災労働者又は遺族が加害者に対して有す る損害賠償請求権を代位取得して、加害者側に請求することができる。ま た、被災労働者又は遺族が、加害者から損害賠償を受けた場合は、国は同 一事由についてその賠償金の限度内での保険給付をしなくてもよいという ものである。要するに、同一事由についての損害が二重に補償されないよ うに調整されている。 ② 労災保険使用の際の届出義務 ア 第三者行為災害届 イ 「交通事故証明書」又は「交通事故発生届」 ウ 念書 ③ 年金給付との調整 ( )内は通勤災害 労災保険の場合、被災労働者が死亡又は一定の障がいが残った場合、遺 族補償年金(遺族年金)や障がい補償年金(障がい年金) 、傷病補償年金(傷 病年金)が給付されるが、一時金に換算して行う損害賠償金との間にも一 定の調整がなされる。 15 ア 年金給付が損害賠償により先に行われた場合 災害発生後三年以内に支給された年金について、国は被災労働者の損 害賠償請求権を代位取得し、加害者に請求(求償)する。それ以後の 年金給付について求償は行わない。 イ 損害賠償が年金給付より先に行われた場合 災害発生後三年以内の期間において、支給されるべき年金額が損害 賠償金額に達するまでの間は、年金給付は停止となる。但し、三年経 過した後は、支給停止された年金額がまだ損害賠償金額に達していな くても年金は支給される。 コメント 自動車事故による業務災害、通勤災害の場合、被害者は労災保険にも自 賠責保険にもそれぞれ請求権を有し、それをどのように行使するかはあく までも被害者の自由である。しかし、各関係機関で協議の結果、現在では 事務処理等便宜上、まず自賠責保険を先行し、限度額を越えた時点で労災 保険に移行する、という取り決めがなされており、また被害者にとっても その方が有利であるといえる。 4 独立行政法人自動車事故対策機構(NASVA) 独立行政法人自動車事故対策機構は、昭和48年7月に公布された自動 車事故対策センター法に基づき、設立された自動車事故対策センターの後 を受け、独立行政法人自動車事故対策機構法に基づき平成 15 年 10 月に設 立された。東京都に本部を置き、全国の都道府県に50カ所の支所が設置 され、交通事故の発生を防止するため自動車運転者の適正診断と運行管理 者等の指導・講習、又、自賠制度の周知宣伝の業務の他に次のような自動 車事故による被害者の援護業務を行っている。 (1) 交通遺児等の援護 ① 交通遺児等貸付け 貸付対象者 自動車事故で死亡した方、又は重度障がいが残った方の子弟で、義務教 育終了前の児童。 貸付金額 当初、一人につき一時金 155,000 円、以後月額 20,000 円、小学校及び 中学校入学時に入学支度金 44,000 円。 利率 無利子 返還期限 貸付期間終了後、6 ヶ月又は1年据え置いた後 20 年以内。 返還方法 割賦(年賦、半年賦又は月賦のうちから選択)による均等払いで返還する。 (ただし、中学校卒業後、高等学校・大学等に進学したときは、それを卒 業するまでの期間、返還を猶予できる。また、災害・傷い疾病等により返 還が困難となった時も、返還を猶予できる。 ) 必要書類 ア 貸付申込書 イ 生活状況を証する書面 (3)参照 ウ 自動車事故の証明書 エ 戸籍謄本 16 オ 印鑑証明書(保護者のもの) カ 重度後遺障がいを証する書面(重度後遺障がいが残った者の子弟につ いてのみ) ② 交通事故対策センター交通遺児友の会 交通遺児等の貸し付けを利用している遺児等および家族を会員とし、会 報「友の会だより」の発行、海や山への日帰り旅行、絵画・書道等のコン テスト等を実施し、会員相互の結びつきを強め、交通遺児等の健全な育成 を図っている。 ③ 交通遺児等家庭相談 経験豊かな相談員を各支所に置き、交通遺児等の家庭を対象に、教育・ 医療・就職など生活全般にわたる問題について相談に応じ、必要な助言を 行っている。 (2) その他の生活資金の貸付け ① 後遺障がい保険金(共済金)の一部立替貸し付け 貸付対象者 自動車事故による被害者で、後遺障がいが残る場合、その後遺障がいに ついて自動車障がい賠償責任保険の保険金(自動車損害賠償責任共済の共 済金を含む)の支払いを請求し、支払いを受けていない者。 貸付金額 10 万円以上 290 万円以内の額。ただし、推定される保険金額の2分の 1の範囲内に限られる。 利率 返還期限 無利子 保険金が支払われるとき。ただし、保険金が支払われないことが決定さ れたときはその時。 請求・受領代行 保険会社等に対する保険金の請求と受領については、機構に委任する。 返還方法 保険金が支払われたときに貸付金と相殺される。保険金が支払われない ことが決定されたときは一括して返還する。 必要書類 ア 貸付申込書 イ 生活状況を証する書面 (3)参照 ウ 請求・受領代行関係書類(交通事故証明書、自賠責の後遺障がいの等 級認定書、委任状等) エ 印鑑証明書 ② 保険金一部立替貸付け 貸付対象者 ひき逃げ事故又は無保険車や盗難車が原因の事故による被害者で、保障 金(政府の自動車損害賠償保障事業による損害補てん金)を請求し、支払 いを受けていない者。 貸付金額 死亡と後遺症に関する場合は、10 万円以上 290 万円以内の額。傷害に 関する場合は、10 万円以上 40 万円以内の額。ただし、いずれも推定され る保障金額の2分の1の範囲内に限られる。 利率 返還期限 無利子 保障金が支払われるとき。ただし、保障金が支払われないことが決定さ れたときはその時。 17 請求・受領代行 政府に対する保障金の請求と受領については、機構に委任する。 返還方法 保障金が支払われたときに貸付金と相殺される。保障金が支払われない ことが決定された時は、一括して返還する。 必要書類 後遺障がい保険金(共済金)の場合と同じ。 ③ 不履行判決等貸し付け 貸付対象者 自動車事故による被害者で、損害賠償についての確定判決などの債務名 義を得ていながら、その弁済を受けることができないでいる者。 (人的損害 に限る) 確定判決などとは ア 確定判決 イ 仮執行宣言付給付判決・支払い命令 ウ 執行証書 エ 訴訟上の和解調書 オ 調停調書 貸付金額 10 万円以上 100 万円以内の額。ただし、債務名義で定められた損害賠 償のうち弁済を受けることができない額の 2 分の 1 の範囲内に限られる。 利率 年3% 返還期限 1 年据え置いた後 10 年以内 返還方法 割賦(年賦・半年賦又は月賦のうちから選択)による元利均等払で返還 する。ただし、債権の弁済を受けた時は、その時に一括して返還する。 必要書類 ア 貸付申込書 イ 生活状況を証する書面 ウ 債務名義を証する書面 エ 印鑑証明書 (3) 貸付を利用する資格としての生活状況について 貸付を利用できるのは、本人(扶養している保護者がいる場合は、その 保護者)の生活状況が次のいずれか一つにあてはまる者に限られる。 内 容 証明書等の発行所 生活保護を受けている(被保護者) 福祉事務所 生活保護を必要とする状態である(要保護者) 福祉事務所 所得税を納めることを要しない 税務署 市区町村民税を納めることを要しない 市区町村 区町村民税の均等割だけを納めている 市区町村 国民年金の保険料を免除されている 市区町村 児童扶養手当の支給を受けている 市区町村 生活福祉資金の貸付を受けている 社会福祉協議会 市区町村教育委員会から就学援助を受けている 教育委員会又は学校 18 (4) 重度後遺障がい者の援護 ① 重度後遺障がい者介護料の支給 自動車事故により、常時又は随時の介護を必要とする重度後遺障がい者 の方に、介護料を支給している。 支給要件 自動車事故が原因で自賠責保険等において、後遺障がい等級が次のとお り認定されている者。 種 別 最重度 後 遺 障 が い 等 級 特Ⅰ種 常時要介護のうち、次の要件を満たす者 常時要介護 Ⅰ種 自賠責法施行令別表第一「第1級1号」又は「第1級2号」 随時要介護 Ⅱ種 自賠責法施行令別表第一「第1級1号」又は「第1級2号」 最重度(特Ⅰ種)の要件 種 別 脳損傷 要 件 ・自力移動が不可能である。 ・自力摂食が不可能である。 ・屎尿失禁状態にある。 ・眼球は、かろうじて物を追うこともあるが、認識はできない。 ・声を出しても、意味のある発言は全く不可能である。 ・目を開け、手を握れという簡単な命令にはかろうじて応ずるこ ともあるが、それ以上の意志の疎通は不可能である。 脊髄損傷 ・自力移動が不可能である。 ・自力摂食が不可能である。 ・尿失禁状態にある。 ・人工介添呼吸が必要な状態である。 自賠責法施行令別表第一(抜粋) 等級 介護を要する後遺障がい 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障がいを残し、常に介護を要するもの。 第1級 2. 胸腹部臓器の機能に著しい障がいを残し、常に介護を要するもの。 1. 神経系統の機能又は精神に著しい障がいを残し、随時介護を要するもの。 第2級 2.胸腹部臓器の機能に著しい障がいを残し、随時に介護を要するもの。 ただし、受給資格が次のいずれかに該当するときは支給しない。 ① 自動車事故対策機構が設置した療護施設に入院したとき ② 労働者災害補償保険法に基づく特別看護の保険給付または介護保障給付も しくは介護給付を受けたとき ③ 国家公務員災害補償法に基づく介護補償の給付を受けたとき ④ 地方公務員災害補償法に基づく介護補償の給付を受けたとき 19 ⑤ 船員保険法に基づく介護料の給付を受けたとき ⑥ 法令に基づき重度の障がいを持つ者を収容することを目的とした施設に入 所したとき ⑦ 介護保険法に基づく介護給付を受けたとき自動車事故対策機構が設置した 療護施設に入院したとき 受給資格者の主たる生計維持者(受給資格者本人または受給資格者の生 計を維持する民法上の扶養義務者の中で一番所得の多い方)にかかる前年 合計所得金額が1千万円を超えるときは、その年の9月から翌年8月まで の間は、介護料は支給しない。 支給金額 介護料は月額で支給する。ただし、介護に要する費用(訪問介護・短期 入院等)の負担に応じて上限額までの範囲で支給する。ただし、親族、友 人、知人のサービス提供は支給対象とならない。 ①最重度(特Ⅰ種) …68.440 円~136.880 円 ②常時要介護(Ⅰ種) …58.570 円~108.000 円 ③随時要介護(Ⅱ種) …29.290 円~54.000 円 *「短期入院費用助成制度」 (平成 23 年 9 月 1 日より一部改正) 受給資格を有する方(特Ⅰ 受給資格を有する方(特Ⅰ種~Ⅱ種)が、短期間の治療及び養護を受け ることを目的として病院等に滞在(原則として、1 回の入院が 2 日以上 14 日以内)した場合には、室料差額負担金および食事負担金に要する費用と して自己負担した額について、1 日当たり 1 万円で換算した額を上限とし た額に、入退院時の患者移送費に要する費用として自己負担した額を加え た額について、年間 45 日以内かつ年間 45 万円以内の範囲内で支給する。 入退院時の患者移送 支給期間と支払 期月 ① 支給期間は申請受付のあった日の属する月から、支給すべき事由がな くなった日の属する月まで。 ② 支払期月は、毎年 3 月・6 月・9 月・12 月の 4 回で、前の 3 ヶ月分に ついてまとめて支給する 必要書類 ア 介護料受給資格認定申請書 イ 戸籍謄本および住民票 ウ 自賠責保険(共済)の後遺障がい等級認定通知書 エ 交通事故証明書 オ 事故時の診断書 カ 所得証明書 キ 誓約書 ク 重度後遺障がい診断書 20 ② 療護センターの設置・運営 自動車事故対策機構では自動車事故による脳損傷によって重度の後遺障 がいが残り、治療と常時の介護を必要とする方のうち、特に重度で一定の 要件に該当する方を入院させ、社会復帰の可能性を追求しながら適切な治 療と看護を行う、重度後遺障がい者専門の療護センターを設置・運営して いる。 《千葉療護センター》 昭和 59 年 2 月業務開始 ・運営委託:医療法人 社団 誠馨会 ・所在地 :千葉県美浜区磯辺3-30-1 ベッド数:80床 《東北療護センター》 平成元年 8 月業務開始 ・運営委託:財団法人広南会 広南病院 ・所在地 :仙台市太白区長町南4-20-6 ベッド数:50床 《岡山療護センター》 平成6年2月業務開始 ・運営委託:社会福祉法人恩賜財団済生会支部岡山県済生会 岡山済生会総合病院 ・所在地:岡山市北区西古松2-8-35 ベッド数:50床 《中部療護センター》 平成13年7月業務開始 ・運営委託:社会医療法人 厚生会 木沢記念病院 ・所在地:美濃加茂市古井町下古井630 ベッド数:50床 《療護機能委託病床(北海道地区) 》 平成 19 年 12 月業務開始 ・病床委託:医療法人 医仁会 中村記念病院 ・所在地:札幌市中央区南 1 条 14 丁目 ベッド数:12床 《療護機能委託病床(九州地区) 》 平成 19 年 12 月業務開始 ・病床委託:社会医療法人 雪の聖母会 聖マリア病院 ・所在地:福岡県久留米市津福本町 422 問合せ・相談窓口 ベッド数:20 床 自動車事故対策機構山形支所 電話(023)609-0500 山形市十日町 2 丁目 4-19 住友生命山形第 2 ビル 2 階 21 22 23 24