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E1 偏見に気づく - 大阪府教育センター

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E1 偏見に気づく - 大阪府教育センター
E
E1
偏見に気づく
○対象学年のめやす
○実践する場面
○プログラムのねらい
偏見と差別
小学校(高学年)
、中学校
総合的な学習の時間、特別活動
○事実と意見の違いを知り、固定観念、偏見、差別に気づく。
○偏見と差別をなくす力をつける。
E1 偏見に気づく プログラムの流れ
レッスン1 イメージによる思い込みに気づく:
「この写真は?」
(フォトランゲージ)
○多様な価値観が問われる写真を用意(ex. 肉体労働をする女性、花屋で働く男性、車イス
レースをする障害者、飢餓地域に住む笑顔いっぱいの子ども、泣いている大人の男性、幼
児と戯れる一見怖そうな青年、元気いっぱいの高齢者、等)
。
○写真を部分的に見せながら(または、2つに切って)
、もう一方を予想させる。
○イメージと思い込みについておさえる。
レッスン2 固定観念や偏見に気づく:
「○○といえば…」
(ワークシート)
○自分たちがもっている固定観念に気づき、それが偏見につながることを知る。
レッスン3 偏見と差別のメカニズム:
「息子よ、息子!」
(ワークシート)
○「東京にて」
(模擬ロールプレイ)
レッスン4 偏見と差別をなくすために(整理)
:
○「偏見と差別を見抜こう」
(ワークシート)
固定観念・偏見・差別について整理
○「偏見と差別をなくそう」
(カード)
偏見と差別の起こる理由(問題点)に気づく。
偏見と差別をなくすために、どう考えたらいいか考える。
○自分たちの生活を見つめる
レッスン5 まとめ
○自分たちの生活をふり返り、気づいたことをまとめる。
○決めつけをなくし、ちがいを尊重することの大切さを確認する。
95
レッスン2 固定観念や偏見に気づく:
「○○といえば…」
意義
○子どもたち自身の中にある決めつけに気づき、それが偏見であるという問題性を認識す
る。
目的
○自分たちがもっている固定観念(ステレオタイプ)に気づき、それが偏見につながるこ
とを理解する。
○身近な生活で、仲間や人々にそうした固定観念・偏見で見ていないか、ふり返る。
手法・準備 ○「○○といえば…」ワークシート
時間の目安 ○約 45 分
展開
区分
学習活動・学習内容
指導者の働きかけ・留意点
導入
(略)
○直感で書かかせてみる。
展開
○「○○といえば…」ワークシート
○ほかにもないか、⑧を記入。
○特に固定したイメージになったもの
○まず、個人で記入。
を二つ程ピックアップし、理由を考え
○班で交流して、発表する。
させる。
○固定観念、偏見についておさえる。
○説明資料「固定観念・ステレオタイプとは」
○身の回りの生活をふり返る。
○特に、仲間に対する決めつけはない
・同じようなことがないか?
か、嫌な思いはしたことがないかをふ
グループで話し合う。
り返らせる。
まとめ
○固定観念について
予告
○次は偏見・差別について深める。
追加・発展 ○職業についての学習と関連させることができる。
→人権教育読本『にんげん−ひと ぬくもり』より
「わたしのともだち ゆめにむかって」
96
「○○といえば…」
次の人はどのような人々でしょうか。見た感じは?、性格は?等、思いつくままに印象を書いてみよう。
①保育園の先生
②消防士
③大工
④トラックの運転手
⑤看護師
⑥マッサージ師
⑦建設作業員
⑧(
)
資料
固定観念・ステレオタイプとは
私たちの意識の中には、いろいろな固定観念があります。
そのため、自分以外の特定の人たちに対して、一面的に決め
つけたイメージを思い描きがちになります。このようなイメ
ージのことをステレオタイプといいます。
「女の人は機械に弱い」
「大阪の人はせっかちで信号を守ら
ない」などがステレオタイプの一例です。しかし、実際には
「機械に強い女の人」はたくさんいますし、
「信号を守らない
大阪の人」はそれほどたくさんいるわけではありません。し
かし、こうしたことは、ステレオタイプによって見えなくな
り、一面的なイメージだけが強調されてしまいます。
仕事に対する固定的なイメージ
私たちは、毎日、いろいろな仕事をして
いる人たちに支えられて生活しています。
社会の中には、いろんな仕事や働き方があ
るのです。
しかし、
「力仕事に従事しているから」
「正
社員でないから」など、その仕事の内容や
その人のことを知らないにもかかわらず、
服装などの外見や職業・働き方等に対して
マイナスのイメージを持って、その人のこ
とを判断してしまうことがあります。
『ゆまにてなにわシリーズ vol.19』
(大阪府 人権室/H17.3)より
仕事で判断していませんか?
∼職業や雇用をめぐる人権問題のこと∼
一人一人の仕事の役割を理解し、その仕
事に優劣はないことを心にとめておくこと
が大切です。
『ゆまにてなにわシリーズ vol.19』より
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レッスン3 偏見と差別のメカニズム:
「息子よ、息子!」
「東京にて」
目的
○固定観念と偏見に気づき、それが差別につながっていくことを知り、その問題性を認識
する。
手法・準備 ○「息子よ、息子!」ワークシート、
「東京にて」模範ロールプレイ(教員)
時間の目安 ○約 45 分
展開
区分
学習活動・学習内容
指導者の働きかけ・留意点
導入
○(略)
○実は、偶然にもこの外科医は彼の母だった
展開1
○「息子よ、息子!」
訳だが、外科医は男という固定観念が多
い。
○人は固定観念でものごとをとらえること
が多々ある。
展開2
○「東京にて」ロールプレイ
教員で実演
○気づいたことをワークシートに書く。
→固定観念が偏見につながっていること
に気づく。
○これが、差別につながるのはどういう ・利害対立があるとき
・自分を守るために相手を攻撃するとき
場合か?
○説明「偏見が生み出すもの」
「ステレオ ・自分に嫌なことがあって八つ当たりすると
き
タイプによる偏見・差別」
説明資料 偏見が生み出すもの
ステレオタイプによる偏見・差別
∼偏見が差別につながることもあります∼
「女は女らしく、男は男らしく」
「年寄りの出る幕じゃ
なく」など、こんな決めつけが、
「自分らしく生きたい」
「夢や希望に向かって前向きに生きたい」という思いをど
れほど傷つけていることでしょうか。
一人一人の偏見が、深刻な差別問題を引き起こすことが
あります。また、その人自身の生き方を狭めることにもな
ります。
根拠のない理由や、固定観念で物事を判断していまう
と、ともに違いを認め合い、ともに生きる豊かな社会を自
ら遠ざけてしまいます。人権問題は、私たち自身の問題で
もあるのです。
『ゆまにてなにわシリーズ vol.16』
(大阪府人権室/H143)より
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ステレオタイプに、好き嫌いの感情や、優劣
の考え方が加わると、ある個人がある一面を持
っているという理由だけで、嫌ったり、避けた
りするという偏見や差別を引き起こすことがあ
ります。ステレオタイプは容易に差別に結びつ
くのです。
他者との出会いを楽しいものにしていくため
には、常に一人一人が持つ多様な「個性」=そ
の人自身のことを見つけ出していくことが必要
です。
『ゆまにてなにわシリーズ vol.19』
(H17.3)より
「息子よ、息子!」
◆次の文章「息子よ、息子!」を読んでください。
路上で交通事故がありました。大型トラックが、
ある男性と、彼の息子をひきました。
父は即死しました。息子は病院にはこばれました。
彼の身元を、病院の外科医が確認しました。
外科医は「息子!これは私の息子だ!」と、悲鳴をあげました。
みなさんは、この「息子よ、息子!」の話の意味がわかりますか? どうして外科医は病院に運ばれた
息子に 私の息子だ! と言ったのでしょうか? 息子の父親は事故で死んでいるのですよ。
「おかしいな」
「意味が通じない話だな」と思いませんでしたか?
◆これから、ある寸劇を見てもらいます。この間、学んだことを思い出しながら見てください。
ロールプレイ「東京にて…」を見て
(1) 劇の中で、 当然だ と感じたのは、どんな場面(セリフ)ですか?
(2) 劇の中で おかしいな と思ったのは、どんな場面(セリフ)ですか?
(3) (2)でどうしておかしいと思ったのか、理由を書いてみよう。
シナリオ ロールプレイ「東京にて…」
(ナレーター)正男は大阪出身の中学生です。先日、修学旅行で東京へ行きました。そこで、広志と一緒に
ある店でコーラを注文しました。そのときのことです。
正男:
おっそいなー。たかがコーラくらいで、どんだけ待たせなあかんねん。
広志:
ほんまやな。だいたい、東京ちゅうとこは、なんでもお高くとまってる感じやん。さっきの店員
も、東京弁で「だからさー」とか「∼しちゃった」とか言って、イキってるって感じやったやん。
正男:
オレら、大阪の田舎もんやと思うて、あほにしてんのとちゃうか?
広志:
むかつくなぁ。
正男
:マジで腹立ってきた。
(大声でどなるように)なぁ、オレらのコーラ、忘れてるんちゃう?ええか
げんにせえよ!
マスター:
(驚いて、お盆やコップを落とす)
店員A :す、すみません。ただいま持ってまいります。
(遠くから見ていた店員BとCがヒソヒソ話をする)
店員B :最近の中学生って、どうしてあんなにすぐキレちゃうのかしら?
それにさー、関西弁で話してるみたいね、イヤ∼ね。
店員C :関西の人ってさー、やっぱりキツイよね。ガラ悪いって言うかさー。
店員B :本当だよね、関西の中学生ってガラが悪くて恐いんだもん。
店員C :あんまり、あっちを見ない方がいいよ。目が合ったら、何かされちゃうかもよ。
店員B :そうね、かかわらないようにしましょ。
今度から関西人がお店に入るのはお断り、ってことにしちゃいましょう。
店員C :うんうん。
99
レッスン5 偏見と差別をなくすために(整理)
意義
○固定観念・偏見・差別の問題点について学習してきたことを整理する。
○問題点について知るだけでは、逆に偏見をもち差別的な見方が身につかないとも限らな
い。
「偏見・差別」の学習においては、同時にこれをなくす考え方を身に付ける必要があ
る。
目的
○固定観念・偏見・差別を見抜ける力をつけ、それらをなくす考え方を身に付ける。
留意点
○言葉の意味やしくみを知るだけでなく、固定観念・偏見・差別によって嫌な思いをする
人の気持ちを考えられるようにする。
手法・準備 ○ワークシート「偏見と差別を見抜こう」
○カード「偏見と差別をなくそう」
(a∼e、ア∼オを切り離しておく)
(切り離さずにワークシートとして使用してもいい)
時間の目安 ○約 45 分×2h
展開
区分
学習活動・学習内容
指導者の働きかけ・留意点
導入
○これまでの学習のふり返り
展開1 ワークシート「偏見と差別を見抜こう」 ○子どもの発言やつぶやきを拾いながら整理
1.A固定観念・B偏見・C差別につい
する。
て整理。
○これまで学習してきたことをふり返りなが
2.①身の回りの生活をふり返る。
ら、意見を引き出す。
・特に、②どんな気持ちになるか考える。 ○クラスでいくつか話題になったことに注目
し、問題について気づくようにする。
○イヤな思いをした気持ちを、きちんと受けと
められるようにする。
○a∼e、ア∼オをそれぞれ切り離す。
展開2 カード「偏見と差別をなくそう」
・a∼eの問題点に対してどうしたらいいか、
1.なぜ偏見や差別が生まれるのか。
ア∼オをカード合わせする。
・a∼eの問題点について整理。
○意見を引き出しながら、自分たちで発見でき
2.どう考えたらいいか。
るようにする。
・ア∼オの視点について整理。
・自分が陥りやすい傾向はないか。
「先日のAさんへの決めつけで、Aさん
・今の自分にとって特に必要な視点はな ○例)
はこんな気持ちになったことがわかったよ
いか。
ね。Bさんは家でイヤなことがあってついム
○まとめ…学級の出来事と結びつける。
シャクシャして、暴言してしまったことに気
・方向…これから、問題を見抜けるよう
づいてくれたよね。
」
「みんな違ってていいん
に、気づいたら指摘し、変えていける
だよね。A・Bのよさ認め合いながらやって
ように。
いこうって話し合ったよね。
」
「そして、おか
しい・決めつけだって気づいたら、指摘し合
おうって約束したよね。
」
100
ワークシート
偏見と差別を見抜こう
1 偏見と差別を見抜こう∼言葉と意味の整理
A 固定観念(ステレオタイプ)
「○○といえば…」
「トラックの運転手は△△だ」とい
うような、ある集団や個人に対して、極端に単純化(一
般化)した見方。一人一人の違いを認めずに、勝手にイ
メージを決めつけてしまうこと。否定的な見方が多い
が、肯定的な場合もある。
(
「田舎の人はみんな人が好い」
「イギリス人はみんな紳士的だ」等)
B 偏見
「○○の人は××に違いない」というような、かたよっ
た否定的な決めつけ。ある個人や集団に対しての固定観
念に好き嫌いの感情や優劣の考え方が加わった、否定的
な態度や意見。
C 差別
偏見が行動として表れたもの。人がある集団に属してい
るというだけで不当な扱いをすること。人を仲間に入れ
なかったり、排除したり、心身を傷つけたり、必要なも
の(教育・仕事・権利等)を与えないこと。
<例>
A「関西人はせっかちだ」
「A型の人は几帳面だ」
「女の人は機械に弱い」
「看護師はみな○○だ」
「中学生はすぐにキレる」
B「関西人はみんなせっかちでガラが悪い」
「A型の人はみんな神経質で気むずかしい」
「女の人は機械仕事には向いていない」
「中学生はすぐにキレるから扱いにくい」
C「関西人はせっかちでガラが悪いから付き合
わない」
「この会社からA型の人は辞めてもらおう」
「エンジニアの採用枠には女性は雇わない」
「中学生はすぐにキレて扱いにくいので、店
に入るのは断ろう」
<では、次の文は、固定観念・偏見・差別のどれにあたるでしょうか>
ア「野球部出身のAさんは仕事が遅い」
イ「野球部出身の人は仕事が遅い」
ウ「野球部出身の人は仕事が遅く、役に立たない」
エ「野球部出身の人は仕事が遅く、役に立たないから、雇わない」
2 身の回りの生活を見つめてみよう
①似たようなことはないでしょうか?
[事実(とします)
]
]
[
]
[
]
[
]
②言われた人はどんな思いをするでしょうか?
・
・
・
・
・
・
・
・
・
・
101
カード
偏見と差別をなくそう
1 どうしておこるのか?
2 どう考えたらいいだろう?
偏見・差別は間違っているということに加えて
問題点と例(△ ▲は人権課題)
a 同調する
△「カラスは 不吉 だって!」
△「みんな(世間)が言っている
から…」と、合わせてしまう。
考え方
ア 自分の価値観をもつ
○うわさに振り回されない。
○自分で公正に判断する。
b 違いを認めない
△「外科医は男のはず!と思いこんでいた」
△『一人ぼっちのライオン』
『みにくいあひるの子』
△「障害があるから入れて
あげない」
「××のくせに」
イ 多様性を尊重する
○違っていていい。違っているって楽しい。
○それぞれの個性・存在を認める。
c 決めつけ
△「東京の人は気取ってる」
「関西人はこわい」
△「女の人は機械に弱い
(にちがいない)
」
△「女はおとなしくし
てたらいい」
△「男のくせに泣くのは
弱虫だ!」
d 八つ当たり、攻撃する
△「
(注文がなかなか来ないから)マジで腹立って
きた、ええかげんにせえよ!」
△自分自身に満足できず、
ムシャクシャしている腹
いせで、相手に当たる。
△「
(家が面白くないから)
弱い者いじめしてしまう」
ウ 決めつけを見抜く
○マイナスイメージで一面的に見るのは間違い。
○「あの人は△△に違い
ない」
「みんな○○だ」
と決めつけない。
エ 人に当たらない
○自分にOKを出す。
人のせいにしない。
○気持ちを落ち着ける
(コントロールする)
。
e ねたみ意識、責任転嫁
△「あいつはできるからうらやましい。自分はそ
うじゃないから腹立つ。
ねたましい」
△「自分がうまくいかな
いのは、あいつのせいだ」
オ 自分に自信をもつ
○自分もやればできる
(できることがある)
。
○相手から学ぶ。一緒
にできることもある。
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