...

10号( PDF 1.7MB)

by user

on
Category: Documents
3

views

Report

Comments

Transcript

10号( PDF 1.7MB)
2010年10月
N―299∼N―311
日本産科婦人科学会
研修コーナー
62巻
10
号
2010
日本産科婦人科学会雑誌
JAPAN SOCIETY OF OBSTETRICS AND GYNECOLOGY
N―300
日産婦誌62巻10号
第5回
画像診断
1)骨盤 MRI 検査 …………………………………………
(N-301)
2)骨盤 CT 検査 …………………………………………(N-306)
3)妊婦に対する放射線検査,MRI ……………………(N-309)
奈良県立医科大学 小林
浩
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
2010年10月
N―301
研修コーナー
5.画像診断
1)骨盤 MRI 検査
2)骨盤 CT 検査
3)妊婦に対する放射線検査,MRI 検査
1)骨盤 MRI 検査
・MRI とは Magnetic Resonance Imaging
(磁気共鳴画像)
の略であり,コイルに電流を流して磁場
を発生させて撮影した画像である.
・骨盤部では MRI を,腹部では CT を第一選択にする.
・T1強調画像では T1が長いほど磁化の回復が遅れるため信号が低く
(黒く)
,T2強調画像では T2
が長いほど磁化の減衰が遅れるため信号が高く
(白く)
描出される.T1と T2の組み合わせで組織
の成分が推定できる.
MRI 読影のコツ
T1 low,T2 high は 1 つ
①尿,胆汁,膵液といった液体
生体内では液体成分が最も T1,T2が長いため,尿,胆汁,膵液といった液体成分は,T1強調画
像では真っ黒く,T2強調画像では真っ白く描出される.
T1 high は 2 つ
①脂肪
②血腫
たまにタンパク成分に富むものもあるので,卵巣囊腫で T1 high なら類皮囊胞腫か子宮内膜症性囊
胞,まれにタンパク成分に富む卵巣囊腫があげられる.
T2 low は 4 つ
①線維成分→子宮筋腫を含んだ fibroma
②筋肉由来→子宮筋腫.しかし変性を起こすと T2 high になる
③血腫→T1 high+T2 low が典型的.T2 low の血腫は T1 high の血腫より新鮮である.
④ヘモジデリンなどの沈殿物
子宮筋腫
研修コーナー
N―302
日産婦誌62巻10号
研修コーナー
・T2強調画像で T2 low
・子宮体部前壁から外方性に突出する充実性腫瘤
(→)
・小さな筋層内筋腫もある
(矢頭)
・境界明瞭
・有茎性漿膜下筋腫の場合は T2 low の卵巣腫瘍と鑑別
→両側卵巣が存在するか確認する
→T2 low の卵巣腫瘍には,線維腫,莢膜細胞腫,Brenner 腫瘍,顆粒膜細胞腫,Krukenberg
腫瘍,内膜症性囊胞,卵巣甲状腺腫がある
・小さいが多発性の子宮筋腫
(矢頭)
・子宮内膜は白い
(←)
子宮腺筋症
・子宮体部後壁の筋層は T2 low
・子宮筋腫との鑑別は T2強調画像で低信号域の境界が不鮮明
・内部に点状の T2 high 高信号の散在する像(←)
・子宮筋腫の変性の場合の T2 high は高信号域がもっと広く大きい
研修コーナー
2010年10月
N―303
研修コーナー
・血液成分は T1 high の点状高信号域を示すこともある
・CT では,単純,造影のいずれにおいても特異的な画像を描出するのが困難
・子宮体部前壁の筋層は T2 low
類皮囊胞腫
(成熟囊胞性奇形腫)
・T1強調画像
(右)
で皮下脂肪と同じ高信号域の境界明瞭な囊胞性病変
・脂肪抑制 T1強調画像
(左)
で高信号が抑制される→内膜症性囊胞との鑑別
漿液性囊胞腺腫
・T1(左)
low,T2(右)
high
・壁の肥厚なし
研修コーナー
N―304
研修コーナー
・充実部なし
内膜症性囊胞
・T1強調画像
(左)
で皮下脂肪と同じ高信号域の境界明瞭な囊胞性病変
・脂肪抑制 T1強調画像で高信号が抑制されない→類皮囊胞腫との鑑別
・T2強調画像
(右)
での囊胞背側に信号低下が起こる→shading と呼ばれ特徴的
卵巣粘液製囊胞腺腫
左:脂肪抑制 T2強調矢状断像,右:脂肪抑制 Gd 造影 T1強調矢状断像
・薄い壁で構成される囊胞性腫瘤
・各囊胞性の大きさがさまざま
・壁は造影されている
・薄く平滑であり
・壁が集簇したようにみえる部分
(←)
は境界悪性
卵巣卵管膿瘍
左:脂肪抑制 T2強調矢状断像,右:脂肪抑制 Gd 造影 T1強調矢状断像
研修コーナー
日産婦誌62巻10号
2010年10月
N―305
研修コーナー
・厚い壁で構成される囊胞性腫瘤→卵巣卵管膿瘍
・卵管が高度に拡張
・壁は厚く造影→炎症性の肥厚
卵巣がん
(卵巣明細胞腺癌)
左:脂肪抑制 T2強調矢状断像,右:脂肪抑制 Gd 造影 T1強調矢状断像
・囊胞壁に充実性成分を有する腫瘤
・単房性の囊胞の腹側に粗大な結節が存在
・造影されている
(矢印)
・内膜症性囊胞に由来する明細胞癌
子宮頸がん
T2強調矢状断像
・子宮頸部を占拠する T2 high
(矢印)
研修コーナー
N―306
日産婦誌62巻10号
研修コーナー
子宮体がん
左:MRI
T2強調像 右:MRI 造影 T1強調像
(ダイナミック造影)
・T2強調像で年齢不相応な内腔の拡大
(患者年齢を記入してください)
・正常子宮内膜よりも低信号を示す子宮体癌
(矢印で示してください)
・Junctional zone は保たれている
・腫瘍―筋層境界は整
・ダイナミック造影の一コマで,後壁側の subendometrial enhancement(SEE)
が明瞭
(矢印)
・前壁側では SEE が不明瞭
・SEE の所見から筋層浸潤の疑い→子宮体癌 pT1b
2)骨盤 CT 検査
CT には以下の 3 種類があるが通常の臨床で用いるコンベンショナル CT について述べる.
コンベンショナル CT(大根の輪切り的画像)
シングルスライスヘリカル CT
ヘリカル CT
(りんごの皮むき的画像) マルチスライスヘリカル CT
上腹部では CT を骨盤部では MRI を第一選択にする.
類皮囊胞腫
研修コーナー
2010年10月
N―307
研修コーナー
・囊胞内容に脂肪と思われる CT 値の低い部分
(矢印)
・充実性部分に歯牙と思われる CT 値の高い部分
(矢頭)
・脂肪と石灰化を含む腫瘤で典型的
子宮筋腫
扇和之,山下晶祥.腹部・骨盤部 CT ここが読影のポイント 第4章02
子宮筋腫 165頁「病変」
羊土社
・子宮に大小の充実性腫瘤の多発をみる
(矢印)
・奬膜下筋腫の場合は子宮外方に突出する
・奬膜下筋腫は卵巣腫瘍との鑑別が重要
・高齢者の子宮に石灰化があったら子宮筋腫を疑う
卵巣囊腫
・多囊胞性の巨大な囊胞
・隔壁が薄く
(矢印)
,充実部や壁の肥厚も認められない→良性卵巣囊腫
研修コーナー
N―308
研修コーナー
卵巣がん
・子宮
(矢頭)
の右側から後方にかけて巨大な多囊胞性腫瘍
・不規則な充実部と肥厚した隔壁
(矢印)
・囊胞性腫瘤を認めるが,造影剤でエンハンスされる
卵巣がん大動脈周囲リンパ節転移
・下大静脈外下方にリンパ節腫大
(矢印)
・リンパ節転移検出は CT の得意分野
子宮頸がん
研修コーナー
日産婦誌62巻10号
2010年10月
N―309
研修コーナー
・CT 画像
(右)
では子宮頸部
(矢印)
の腫大が観察されるが,MRI 画像
(左)
と比較して腫瘍そのもの
の描出は不十分
・子宮頸部に境界不鮮明な低濃度腫瘤がみられる
・頸部間質浸潤や傍結合織浸潤は MRI が優れる
子宮体がん
・CT
(左)
:液貯留を伴った子宮体部の腫大
・乳頭状に増殖した内膜の肥厚
(矢印)
・MR
(右)
:矢状断での筋層浸潤や頸管浸潤の詳細な観察が可能
・子宮体部に境界不鮮明な低濃度腫瘤あり
造影 CT 横断像
・子宮体部内腔の拡大
・子宮筋層より弱い増強効果を示す子宮体癌
・腫瘍―筋層境界は不整
(矢印)
・強い増強効果を示している正常筋層部分から本来の筋層厚を推定し,腫瘍の広がりは1!
2以下→
pT1b であった
3)妊婦に対する放射線検査,MRI
妊娠中のレントゲン検査
・妊婦が医療被曝を受けていなくても新生児の約3%は何らかの遺伝的障害を持って生まれてくる
研修コーナー
N―310
日産婦誌62巻10号
研修コーナー
ことを理解する
・受精後から 8 週間までが特に放射線による影響を受けやすい時期
・受精から15週までに100mSv 以上の被曝をすると流産や奇形,発育遅延の可能性がある
・100mSv とは胸部レントゲンで約1,000回,腹部レントゲンでは約100回を 1 度に受けたときの被
曝線量に相当
・被曝線量が100mSv に達するような検査を妊婦に行うことはない
妊娠中の MRI 検査
・放射線被曝はない
・磁場が胎児に与える影響についてはあまり知られていない
・種子の発芽実験や血液の性状の変化,さらには妊娠動物に対する曝露実験結果から催奇形性につ
いては否定的
・羊水中の温度変化は認められない
・医療用に実用化されてからまだ日が浅く,検査に用いる電磁波の第 1 三半期間
(妊娠期間の最初
の1!
3)
の胎児への影響は不明
・器官形成期の施行は慎重に行うべきであり,原則としてこの時期の妊婦の MRI 検査は行わない
・ガドリニウム造影剤は妊婦と胎児に対する安全性が実証されていない
・ガドリニウム造影剤は母乳にも移行するので24時間授乳を控える
・MRI は少なくとも X 線検査よりは安全な検査法である
胎児 MRI 撮影はどのような疾患に行うか
・中枢神経系異常
・横隔膜疾患
・腹腔内疾患
・尿路系異常
胎児脳くも膜囊胞
(妊娠30週)
・T2強調画像:左が冠状断面,中が矢状断面,右が水平断面
研修コーナー
2010年10月
N―311
研修コーナー
二分脊椎
T1強調画像
・妊娠35週の胎児の全身が 1 画面に描出
・二分脊椎部分の皮膚欠損が明瞭に描出
本章の写真については以下の HP より引用した
MRI
子宮筋腫:http:!
!
www.geocities.jp!
ayu60435474!
ope.htm
http:!
!
www.m-satellite.jp!
info_check!05.html
子宮腺筋症:http:!
!
k-sato.com!
womensmed!adenomypsis.htm
http:!
!
www.m-satellite.jp!
info_check!
05.html
類皮囊胞腫:http:!
!
www.hachicli-dock.jp!
ladys!
instance.shtml
漿液性囊胞腺腫:http:!
!
www.hachicli-dock.jp!
ladys!
instance.shtml
内膜症性囊胞:http:!
!www.ladys-home.ne.jp!
faqsite!
ans-files!
FAQ-H!
FAQ-H6.html
子宮頸がん:http:!
!
www2.khsc.or.jp!
gan_center!
pdf!
19-3-fujin.pdf
奈良県立医科大学
小林
浩
研修コーナー
Fly UP