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活動報告書 Forum 2015: Friends, fun, freedom, future

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活動報告書 Forum 2015: Friends, fun, freedom, future
Forum 2015: Friends, fun,
freedom, future
活動報告書
ガールスカウト神奈川県第 6 団川邊早織
ガールスカウト大阪府第 101 団山田咲穂
FORUM 2015: FRIENDS, FUN, FREEDOM, FUTURE
GIRL GUIDE& GIRL SCOUT EXPERIENCE FORUM
文責:ガールスカウト神奈川県第 6 団 川邊早織
概要
参加国: アルメニア、オース
か
トラリア、バングラデシ
事業名:Girl Guide& Girl Scout
ュ、バルバドス、ベルギ
Experience Forum
ー、エストニア、フィンラ
滞在期間: 2015 11/27-12/2
ンド、香港、日本、ヨルダ
ン、ケニア、クウェート、
参加者 : 約 40 か国、100 人
開催地: オマーン
マスカット
主催: WAGGGS, アラブ地域
テーマ: Friends, Fun, Freedom
and Future
レバノン、マダガスカル、
マラウィ、マレーシア、モ
ルディブ、メキシコ、ニュ
ージーランド、オマーン、
パキスタン、パナマ、ペル
ー、フィリピン、カター
ル、ルーマニア、ルワン
ダ、スリランカ、スロヴェ
ニア、スーダン、スウェー
フォーラムについて
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum とは?
・WAGGGS の様々な正加盟連盟と準加盟連盟から参加者が集い、それぞ
れのガールスカウト経験を共有することにより、互いの活動に影響を与
えさらに当運動を発展させるための活動方法を模索する。
デン、シリア、チュニジ
・国際的なネットワークを構築してビジョンを共有し、ともにビジョン
ア、イギリス、ウクライ
を実現するために活動する。
ナ、アラブ首長国連邦、イ
エメン、ザンビアなど約 40
この二つを目標に掲げた、初の世界規模の Experience Forum でした。
か国
オマーンについて
首都:マスカット
公用語:アラビア語
面積:312,460 ㎢(日本よりやや大きめ)
人口:約 2,588,000 人(大阪府の人口とほぼ同じ)
通過:Rial(1 Rial=約 314 円)
宗教:イスラム教
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
アラビア半島の東端に位置し、アラビア海(インド洋)とオマーン湾に面している国です。石油ルートとして
著名なホルムズ海峡の航路はオマーン領域内にあります。隣接している国はそれぞれ、北西にアラブ首長国連
邦、西にサウジアラビア、南西にイエメンがあります。
中東地域と聞くと、現在報道されているニュースから「危ない」とか「怖い」というイメージが浮かぶ方も多
いかもしれません。しかし実際に行ってみると人の親切さや街に流れる穏やかな空気など、日本と変わらなく
とても快適に感じました。統計的に見てもオマーンの治安は比較的良く、世界治安度ランキングでは第 47 位
となっています(日本は第 6 位)。
次に、オマーン国の歴史と王の存在についてです。この繋がりはとても深く、1741 年よりブーサイード朝に
支配されていたことに始まります。王の存在の偉大さは、その国章にも表れています。オマーンの国章は国王
の権威を表す短剣カンジャルと太刀を組み合わせたものになっており、これは現在も国旗や貨幣、切手、航空
機、空軍機など、様々なところで目にすることができます。1891 年には一度、イギリスの保護国となりまし
たが、その後 1970 年に国王カーブースが即位してから現在に至るまで、また国王による統治が続けられてい
ます。現国王は首相も兼任しており、国民からの支持はとても高いと言えます、その証拠にオマーンの街中の
ありとあらゆるところには国王の写真が掲げられており、その信頼度の高さがうかがえました。
上から、世界地図でのオマーンの位置と、オマーンの国旗。白は平和、赤は外敵からの手紙、緑は豊かな農作
物による繁栄を意味します。
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
そんなオマーンとガールスカウトとの関係は、イギリスの保護下から独立した後の、1977 年に世界連盟に加
入したことから始まります。現在の会員数は約 10,700 名ほどで、School based(学校を拠点にガイド活動をし
ている)で活動を展開しており、小学校ではボーイスカウトと合同で活動していることが多いです。この
SchoolBased の活動形態が影響して、小学校に通う子供たちの多くが活動に参加しており、現国王も過去にボ
ーイスカウト活動をしていました。そのため、オマーンガイドが作成しているパンフレット等には、制服を着
た国王の写真が印刷されています。王様までもがガイド活動に励んでいたという歴史を持つオマーンが、なん
だか少しうらやましく感じ、またそこまで広く人々に愛されてきたガールスカウト・ガイド活動を誇らしく感
じました。
事前準備
出発前に WAGGGS からそれぞれの参加者に対して、フォーラム中に扱うトピックと関連した質問がいくつ
か提示され、各自それに対する答えを用意してからディスカッションに臨みました。自国の姉妹たちにアンケ
ートを取るようなものもありました。
質問例:
・基本的な教育方針・枠組み、およびその成果はありますか?
・異年齢のグループごとにどのようなプログラム・アクティビティを提供していますか?
・もし若い世代の会員が一つガールスカウト・ガールガイド組織を改革できるとしたら、何を変えますか?
・自分の国の組織の強み、弱点はそれぞれ何だと思いますか?
・今まであなたが経験してきた活動の中で、最も印象深いものは何ですか?
など
また、各都道府県連盟より私たち参加者にメンターの方を紹介して頂きました。経験豊富なメンターからは、
日本連盟の代表として日本のガールスカウトの正しい情報を伝えられるように、とご指導いただきました。個
人としてただ楽しむだけでなく、都道府県連盟や、ひいては日本連盟の現状や意見を代弁することが私たちの
使命だということを再確認し、リーダー講習で習うような基本的なことから、現在日本各地や世界で行われて
いる活動について学びなおしました。
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
スケジュールについて
以下は実際に行われたフォーラムの日程表です。この後のページでは、これに沿って報告書を進めていきま
す。
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
セッション内容
11/27
約 13 時間飛行機に乗り、オマーンの首都マスカットに到着しまし
(1) 地元メディア取材
た。
お昼ご飯を食べた後、オマーンガイドの活動紹介の本やチーフ、ピ
ン、文房具等を支給して頂きました。午後は、アイスブレイキングで
は声を出さずに「家からここまで来るのにかかった時間」で並ぶゲー
ムをしました。最短の人は5分、最長の人で30時間という幅広い結
果になり、ありとあらゆる国から集まったことがわかりました。そし
(2) 日々の質問
てその後、6-8 人程度のグループに別れ自己紹介をし、その日のプロ
グラムは終了しました。
11/28
○Opening Ceremony
このセレモニーでは、オマーンガイドによるマーチングバンドの演奏
披露や、オマーン連盟の活動紹介などが行われました。このセレモニ
(3) セッションの様子
ーの中で現国王スルタン・カブースもオマーンスカウトの一員であっ
たという事実を初めて知り、驚きました。前述の通り、オマーンではスカウティング・ガイディングは School
based(学校を基盤として活動すること)で行われている事もここで学んだことで、大枠での組織編成の違いを知
ることができいいスタートダッシュを切ることができました。このオープニングセレモニーの様子はテレビや
新聞など、各種現地メディアで取り上げられました。(写真(1)参照)
この日の午後の部から、いよいよ本格的にセッションが始まっていきました。100 名全員で話し合うようなセ
ッションもあれば、2つのテーマに分かれて 50 名規模で話し合うセッションもありました。
プログラム期間中は、一日に数個ずつ質問が壁に貼られていき、興味関心のあるものを選んで答えていきま
した。「このフォーラム中で感動したことは何か」「みんなに教えたい意見」「GG/GS をもっと良くするため
に必要なものは何か」等、セッション中には話しきれないようなことを余暇にシェアできるようになっていま
した。日が経つにつれてどんどん壁は付箋で埋め尽くされ、賑やかになっていきました。この付箋はセッショ
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
ンの振り返りにも利用することができ、より理解を深めるためにも有効に活用することができました(写真(2)
参照)。
○Set the Scene
「ガールガイド・スカウト(以下 GG/GS と記載)経験をより良いものにするためには」という問いに対し、68 人程度で構成されたラーニンググループごとに話し合い、自分たちなりの答えを模索しました。そのための
最初のステップとしてまず「ガールガイド・スカウト活動ではどんなことを学べるか」についてそれぞれ考え
ていきました。グループで出たいくつもの案を、丸形に切られたカラフルなメモ用紙に書いていきました。そ
の後、大きな画用紙に気球の絵を描き、その中にメモ用紙を貼りました。そして、メモ用紙を気球の中に積ん
でいる荷物と見立てて、その荷物をできるだけ少なくしていくことを求められました。つまり、活動の軸とな
る重要なもののみ取捨選択しなければなりませんでした。
こうして絞られた各グループの意見を全体でシェアした後、「それらの学びを手に入れるためにどのように
従来の活動を変えていけばよいか」について考えていきました。私が所属していたグループでは①何をするか
(アクティビティの内容)、②どうやってするか(アクティビティを行う方法)、そして③何故それをするか(アク
ティビティを行う目的)をしっかりと考えることで GG/GS 経験は実りあるものになるという結論が出ました。
またその他に、何をもって GG/GS を定義するのかという問いについても話し合い、やくそくとおきて、生
涯学習、国境を越えた深い友情、座学ではなく実践的な学習、制服などの案があがりました。ただ、最後の制
服については、ない連盟もあるので必ずしも必要な要素というわけではない、という意見でました。
○ The GG/GS experience opening up to change
このセッションでは、GG/GS の活動では具体的に何が学べるものなのか考えていきました。(写真(3)参照)
まず、スカウト活動をしている写真が床一面に広げられました。私たちはそれをひろって、そこに写るガイ
ド、スカウトが一体どんな活動をしていて、何を学んでいるのか考えていきました。木を植えている少女の写
真を見て、ある人は「緑の大切さ」について学んでいると答える人もいれば、「命の大切さ」について学んで
いると答える人、「キャンプのときの自然への配慮」について学んでいると答える人もいました。ここから、
1つの活動からスカウトが学べる要素がいくつもあるということに気づきました。
一日の締めくくりとして世界連盟の方から、2020 年までに達成を目指している
①
Increased and diversified membership
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
②
Improved image and visibility of Girl Guiding and Girl Scouting at every level
③
Influenced issues that affect girls and young women
④
Strengthened the quality of the Girl Guiding and Girl Scouting experience
⑤
Built leadership capacity at every level
⑥
Increased funding
の 6 つの目標を、このフォーラムを通してたくさんの国の声を聞くことでヒントを見つけて達成していきた
い、というお話をいただきました。セッション初日に世界連盟の方からこのようなお話が聞けて、世界中の姉
妹たちのこれからの活動がよりよくなるために私たちの意見が反映されていくのかと思い、わくわくしまし
た。
11/29
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
○Facing the future GG/GS in the 22nd century
オーストラリア連盟主導のこのセッションでは、オーストラリア連盟が実
際に行った組織改革の内容とその理由を学びました。オーストラリア連盟
は、1990 年代のブームを境に減少していくガールスカウト人口を増やすた
めに、時代のニーズに合ったプログラムを提供していくことが必要不可欠
だと気づき、約束とおきての更新、制服の刷新、ハンドブックの改訂、各
プログラムのレビューなどを行ったと学びました。この改革により約束と
おきては 1970 年、制服は 1980 年以来初めての見直しがされ、また 1996 年
に一度廃止されていたハンドブックも新たにつくられました。改良された
プログラムの例としては、「オレブ・プログラム」があげられます。これ
は、大学進学や就職、また結婚後の家庭の状況などでスカウティングから
(4)International Night
での民族衣装
足が遠のきがちな若い女性会員(18-30 歳)に向けたもので、彼女たち自身の
成長にフォーカスをあて自主的に活動を行うものです。日本でもやはり、
この年代(18-30 歳)の間に私生活におけるライフスタイルの変化などが理由
でスカウト活動を辞めてしまう、もしくは消極的な参加になってしまうと
いう人が見受けられます。またこれは単に私生活とのバランスという点だ
けでなく、高校を卒業し自らの立場が「スカウト」から「リーダー」へと
変化することで、「自分が」経験をする側ではなく、スカウトの経験を
「サポート」する側になることも関わっていると考えられます。その点、
このオレブ・プログラムは、若い世代のリーダーたちが、自分たち主導で
(5)各国とのスワップ
によって得たお土産
自分たちのための活動が行えるという点で魅力的であるといえます。この
ように、ほかの連盟が実際に行った変革について学ぶことで、机上の空論
ではなく実践的なアイデアを得ることができました。
○Be the change
これは、香港とザンビア主催で行われたセッションでした。はじめに、現代の子供たちが直面している社会
の現状、そしてこれから先に社会がどう変わっていくかについての動画を視聴しました。この動画の中で、現
在この世界に存在する職業は20年後には約65%がなくなってしまい、機械が代わりにやってくれるように
なったり、職業そのものがなくなってしまったりすると言われている事を知りました。実際、現在の社会には
20年前には想像もつかなかった職業が誕生しています。職業が変わっていくということは、働き方も変わる
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
ということを意味します。技術の革新によって今より更にグローバル化が進み、遠く離れたところにいる人と
一緒にプロジェクトを進めるということも可能になってきます。こうした利点もある一方で、効率の良さや生
産性を求めて機械を大量に導入するようになり、能力のない人が淘汰されてしまう可能性もあります。
こうして目まぐるしく変化していく社会に対応するために必要な力は何か、この時代を生き抜くスキルを具
体的にどう育むか、ということをテーマに話し合いをしました。世界連盟から提唱されている方法は、
「Character 個性」「Creativity
力」「Commitment
創造力」「Citizenship
市民」「Communication
交流」「Collaboration
協
約束」の6つを軸に、こうしたスキルを育てていくというものです。この軸に沿って、
ブラウニー、ジュニア、シニア・レンジャー部門について考える3つのチームに分かれ、それぞれの年齢のス
カウトに合った指導法について考えました。その結果、「誰かから教えてもらうものを鵜呑みにするのではな
く、自分で発見する力」こそが、今まさに求められているものであり、リーダーたちはスカウトに活動を通し
てその力を身に付けさせていくべきだという結論に至りました。
○ International night
この日の夜は参加者全員が自国の民族衣装をまとい、伝統的なお菓子や工芸品を持ち寄って交流を深めまし
た。私たちは浴衣やはっぴを着て、おせんべいや栗おこしやあんこを使った和菓子、また小さい時によく食べ
た駄菓子やインスタントのお味噌汁などを持っていきました。食べ物を選ぶ際は、宗教上動物の肉やエキスを
摂取できない一のことを考え、そういったものが入っていない品を選んで持っていきました。他国の人の口に
合う日本らしい食べ物を探すのはとても苦労しました。色とりどりのカラフルな民族衣装を纏った参加者たち
はそれぞれとても華やかで、民族音楽を歌いながら伝統的なダンスを披露してくださった国の方もいて、会場
は大変賑わいました。また、各国のブースを回りながら各国独自の食べ物や工芸品、バッジなどを交換し、素
敵な記念となりました。(写真(4)(5)参照)
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
11/30
○Building a youth led organization
GG/GS を Youth led(若者主導)にする必要性について話し合いました。
(写真(6)参照)まず、現在の組織体系は必ずしも若者主導と呼べるもの
ではないという認識がディスカッショングループの中であがったた
(6)セッション中の自
め、その原因を探りました。そしてその結果、若者の進出を阻む一つ
由な意見交換の様子
の例として年功序列という考え方があがりました。長年経験を積んで
きた大人は、実現可能性などを考えず時に思いもかけぬ独創的かつ革
新的なアイデアを生み出す若者と比べると、リスクを冒してまで未知
の領域に足を踏み入れるということを避けるようになります。失敗を
恐れ、今までに試したことのある安全な領域だけを繰り返しなぞるこ
とは楽ですが、一方でいつまでも過去にとらわれていると時代の変化
にはついていけなくなります。私たちガールスカウトも、長い時の流
(7)オペラハウスの外観
れの中で、少女と女性の変化によりそっていかなくてはならない組織
です。そのためにも、組織の風通しを良くして現役の少女たち(Youth)
の声を取り入れることは必要不可欠である、という見解に至りまし
た。この若者主導の組織という目標を達成することで、若者のニーズ
に合った組織になり、その結果新たな若者(新規会員)を引き付けると
いったメリットが期待できるため、会員数減少に悩む各連盟での必要
性は高いという意見があがりました。また一方で、まだまだ経験も知
識も少ない若者がすべてを自分たちの力で運営するということは不可
能であるとの声も上がり、やはりそのためにはわたしたち指導者の適
度なサポートが重要である、という結論に至りました。
○More
Adventure(新しい活動)
(8)美術館内の生活様式
の様子
このセッションはレバノン主催で行われました。レバノン連盟の活
動をスライドで見た後、様々なゲームを通してスカウトたちが楽しく
遊びながら学べる活動について考えました。ここでは特に、テンダー
フット・ブラウニー・ジュニア部門の、比較的年齢の若いスカウトの
活動について考えました。
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
アイスブレイクでは、一つの筆を使ってチームみんなで絵を描いたり、歌を歌ったりしました。そうしてチ
ームで協調を図り、連携を高めていける事を自分たちで体感しました。その後は、自分たちが今まで経験して
きた活動を列挙していき、それらが「活動的」か「活動的でないか」に分けました。例えば、キャンプや川下
り、アスレチックで遊ぶなどといった活動は体を動かすので「活動的」、映画を鑑賞やギャザリングなど体を
動かすことが少なく、座ったままする事が多いものは「活動的でない」というように分類していきました。そ
して、それぞれどんなメリット・デメリットがあるのかについて話し合いました。
「活動的」な活動は、ゲーム感覚で楽しめるものが多く、自然や人と直に触れあい自らの五感を使って体感
的に学びを深める事ができます。これは、年齢の若いスカウトが集中を切らさず楽しく学ぶことができるとい
うメリットを持っています。しかし一方で、その活動を通して気づいたことを振り返るにはやはり、椅子に座
って頭を動かす「活動的でない」時間が必要であり、そうした時間があってこそより一層学びを深められると
いう意見があがりました。また、単に自己の活動の振り返りだけでなく、議論をする中で自分とは違う誰かの
意見を吸収できる点も「活動的でない」時間のメリットの一つです。これは自分とは異なる価値観に出会い、
思考の幅広げるいい機会になります。
しかし、「百聞は一見に如かず」という言葉があるように、室内の座学では学びきれないものを「活動的」
な時間で学べるという事もまた多くあり、この二つの時間どちらもバランスよく取り入れていくことがスカウ
トの成長にとって重要であるという結論に至りました。
○Muscat Adventure
ここでは、今回のホスト国であるオマーンの首都、マスカットの観光に連れて行っていただきました。このツ
アーでは、オペラハウス、美術館、マーケットなどを回りました。オマーンが芸術を嗜むことに国として力を
入れたのはごく最近のことのようで、オペラハウスや美術館はかなり近代的で清潔感がある立派なつくりをし
ていました。美術館では、オマーンの民族衣装や家具等が時代の流れに沿って展示してあり、オマーンという
国について歴史という観点からより深く学ぶことができるいい機会となりました。(写真(7)(8)参照)
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
12/1
○diversity
現在、世界では多くの人権活動が行われています。女性、障がい者、
人種、LGBT など、どんな人にも平等に自由の権利が与えられるべき
だという活動は、GG/GS も以前から携わってきました。そのことを振
り返りながら、実際に今日の GG/GS 活動では本当に多様性が認められ
ているのかについて話し合いました。
(9)オマーンガイドであ
る子供たちの正装
例)・制服がスカートしかないと、トランスジェンダーのスカウトが
活動しにくいのではないか。
・GG/GS の活動に、他の団体や一般の人(会員以外)も加わる事ができ
る機会を増やすべきではないだろうか。
等
グループ内で国ごとの現状を共有した結果、LGBT の人々に対する差
別は時代の変化とともに徐々に薄まりつつある一方で、やはり従来の
考え方を捨てて時代に追いつく事がなかなか難しい年配のリーダーた
ちの中には、未だ偏見を持つ人も一定数存在していると分かりまし
た。
(10)IdeasMarket での
○Accessibility working with special needs
ヨルダンブースの様
この日はオマーンのガイドたちの集会を訪問しました。(写真(9)参照)
子
クラフトにいそしむ子供と交流し、また障害をもつガイドたちによる
歌やダンスの発表を見学しました。日本連盟とは違って、オマーンガ
イドは School based(学校を拠点にガイディングを行っている、という
こと)だったので集会の場所も現地学校でした。身体的なハンディキャ
ップを抱えながらも、一人ひとりの個性あふれる絵や手芸品、そして
研究展示物をつくり。私たちにいきいきと見せてくれる姿に胸を打た
れました。また、そのようなハンディキャップをもつスカウトの全体
に占める割合は決して低くなく、全体的にもかなりの人数が所属して
いる印象を受けました。そのような大規模な集団でありながら全ての
スカウトがいきいきと活動できているのは、彼らのサポートにとても
熱心な指導者がいるからだということをこの訪問で感じました。
(11)スピーチの様子
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
○Ideas Market and networking
このセッションでは連盟ごとにブースを設けて、各連盟がユース会員に対して提供しているプログラムや取り
組みの紹介をし合いました。(写真(10)参照)
私たちは、事前準備として調べてきた自連盟の取り組みについ
て、参考資料(Girl Scouting などの広報誌、集会の写真、自団の記念誌
等)を使ってブースを訪れた人に説明し
ました。ここでは全員が自連盟の正式な制服で参加することが義務付けられていたので、それぞれの国の間で
の制服の違いなどを見ることができたのもいい経験でした。各国のブースのほかに、フリーの演説スペースも
会場の一角に設けられていました。(写真(11)参照)
ここでは自らが強く他の参加者に向けて主張したい自連
盟の取り組みや、また自国・自地域が抱えている少女に関する問題への意識喚起など、身振り手振りを交えて
報告している人の姿が見受けられました。右記の写真は、アフリカ地域で問題となっている若い少女・女性の
望まない妊娠をなくしたい、という熱い思いをマラウィ連盟会員が主張している様子です。このようなお話を
受け、世界中に広く根差しているガールスカウトという団体だからこそ、日本から遠く離れた地域での少女や
女性の暮らしぶりなどを直接現地にすむ人から聞く機会がある、ということにあらためて感謝をしました。
12/2
○Reviewing national experiences
最終日のセッションということで、これまでのセッションを通して話し合ってきたことを総括するトピックに
ついて話し合いました。印象的だったのは、各連盟の新規会員獲得のための取り組みについての具体例でし
た。例)政府とボランティアによる支援の下、家庭環境に問題を抱える子供向けに無料のキャンプを開催して
活動をアピールする。(ベルギー)
孤児院等の施設で Guiding Session を開き認知度を高める。(メキシコ)
スーパーに併設されているキッズコーナーでワークショップを開き、より多くの子供に広報する。(ウクライ
ナ) 都市部から離れた地域まで出張し、そこに住んでいる子供たちと交流できる集会を開く。(アルメニア)
以上のように、様々な取り組みを通してより多くの子供たちに GG/GS を知ってもらい、また身近に感じても
らうことで、会員数増加を目指す連盟がいくつもあると知りました。
また一方で、会員数の増加は喜ばしいことではあるが、それに伴って指導者である私たちリーダーの人数も増
やしていかなければ、スカウト・ガイド活動としての質を保つことができないのではないか、との声もあがり
ました。リーダーの絶対数が少ない以上、一人ひとりのリーダーにかかわる負担は増してしまいます。それに
より私生活や仕事とのバランスに支障をきたし、結果としてまた人が減ってしまうという負の連鎖が起きかね
ません。少女にとって素晴らしい組織であり続けることはもちろんのことですが、そのためにはそれを支えて
いる女性(リーダー)たちにとっても素晴らしい組織であること亜必要不可欠です。異常を踏まえて私たちのグ
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
ループでは、ただ単にがむしゃらな人数確保をするのではなく、組織が一番いい形で運営していける最適の人
数のバランスを見極めてそれを維持していく、ということがこれからの時代においては重要であるという結論
に至りました。
○Shaping the future(未来を描く)
これまでのセッションを総括したうえで、セッションを通して描いてきたガールスカウトの未来をよりよく
するプランの数々を実際に実現するための具体的な案を出していきました。ベルギーのガイド達は、自連盟の
中心的な存在(理事など)に手紙を書く、ということを主張しました。参加者の全員に対して、このフォーラム
で得た知識をそうした立場ある人に共有する事の重要性を強く訴えかけていました。フォーラムで気づいた、
自国の連盟の改善点を、自分の中にとどめておくだけでは何も変わりません。「一緒ならこの世界を変えられ
る」-この言葉は国境や文化の違いを超えて、私たち GG/GS に深く浸透していると強く感じました。
また次にメキシコのガイドが主体となって、「どうすれば自国の連盟をより良くできるのか」について話し
合いました。ディスカッショングループは 1〜2 つの国で構成され、少人数で内容の濃い話し合いをしまし
た。私たちのグループでは、
・より柔軟に多くの人・団体の意見を聞き入れていくこと
・若い人材を育てていくこと
・SNS を有効活用し、私たちの活動をより広く、効果的に宣伝すること(文字だけでなく、映像や写真などを
有効活用するなどの方法をとる)
ことなどが必要であるという意見がでました。
そして、これらの意見をより具体的につめるため、思いつく限りのアイデアをふせんに書き出していきまし
た。私たちのチームは自由な発想で 48 個ものアイデアを書き出し、自分たちでも「まさかここまで沢山思い
つけるのか」と驚きました。このアイデアの中にはもちろん、実現できそうなものもあればそうでないものも
ありましたが、ただ「変えたい」とぼんやり思うだけでなく自らの頭でその具体的なアイデアを出していかな
ければ何も進まない、ということを改めて痛感できる貴重な時間となりました。
最後に世界連盟の方のスピーチの時間がありました。そこでは、ガールスカウトで得る経験に、必ず組み込
んでほしい「REAL」についての話を聞きました。この REAL とは、
Relevant
Exciting
多くの人と関わり
わくわくして
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
Accessible
Learner-led
身近で
学ぶ人が主体となれる
上記のよっつを含む活動を目指そう、という目標を表すキーワードであり、よっつそれぞれの頭文字をとって
こう表します。今回のフォーラムでも、この REAL の要素が随所に組み込まれており、私たち参加者は多たく
さんの知識を得る事ができました。「新しいことを発見する」経験の楽しさ・嬉しさを、今回フォーラムには
参加できなかった多くのスカウトやリーダーにも体験してもらうためには、世界連盟は各連盟をどのように手
助けができるのか。これについて考える事がこのセッションの目的でした。ここでは、それぞれの国・地域の
実態に寄り添ったより現実的な意見を出すため、6 つの地域に分かれて話し合いました。またその地域の中で
も、学校を主体として活動している school based の連盟と、地域コミュニティに根付いた活動をしている連盟
(日本はこちらにあたる)とに分かれてより具体的に話し合いました。
様々な意見が飛び交う中でも、地域にかかわらず多く見受けられたものは
大きく分けてみっつありました。ひとつめは、全加盟国の詳しい活動内容
や、世界連盟の掲げる目標など、自連盟以外に関する情報へのアクセスを
より容易にしてほしい、という情報管理への要望。また、今回のような国
際的なフォーラムやイベントを更に推進していき、自分自身の目と耳で他
連盟の活動状況を知る機会をもっと増やしてほしい、というイベント運営
への要望。そして最後に、金銭的な理由で活動への参加を断念する人が出
ないような対策をしてほしい、という財政面への要望でした。全てを一度
に解決する事は容易ではありませんが、私たち 40 か国からの代表者の生の
セレモニーの様子
声を直接、世界連盟に届ける事ができたという事は、今後の変革への最初
の一歩となったと言えるでしょう。
○Closing ceremony
このセレモニーには、フォーラムに参加できなかったオマーンのガイド
たちも出席して、一糸乱れぬ行進を披露してくれました。またオマーン連
フォーラム終盤、友情
盟の会長からは、今回のフォーラムでの経験をぜひ実りのある物にすべ
が深まり仲良く輪を作
く、帰国後もガールスカウトの活動の発展に尽力してほしいとのお話をい
る参加者たち
ただきました。そして今回のフォーラムのしめくくりに、修了証と楯をい
ただきました。一週間弱という短い期間でありながらも、朝から晩まで他
国の参加者と意見を交換して GG/GS 活動の発展のための礎を築く事がで
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
き、また時にはとりとめもない会話の中で国々の文化についても学びを深められた今回のフォーラムは、私た
ちの人生において重要な経験となりました。
フォーラムを終えて
フォーラム中、毎日様々なトピックについて話し合いを重ねていく中でどの国にも共通していると気づいた
ことは、10 年、20 年と時が流れていく中で活動にまったく変化のない連盟はないということでした。時代の
変化に伴い、スカウト・ガイドたちが活動に求めるものは日々変化していくため、その時代のニーズに合わせ
るため組織形態・活動内容などを臨機応変に対応させていることが分かりました。今回のフォーラムはその具
体的な方法や内容について、世界中の各地域の連盟の代表から直接話を聞くことができる貴重な機会でした。
また、その他国の代表として参加していた人たちの多くは、各連盟の中でも中心におり組織運営の実働を担
っている人だったため、活動にかける熱意も非常に強く、毎回活発なディスカッションが楽しめました。若輩
の身でありながら、そのような人たちと対等に意見を交わしあいそれぞれの連盟に活かせるアイデアをお互い
に交換することができたことは、私の中での自信につながりました。
日本のガールスカウト運動は、2020 年で活動 100 周年を迎えます。そのような長い歴史の中で、日本のガ
ールスカウトという組織が形成され、またそれを取り巻く社会環境も変化し続けてきました。これからの時
代、ますます技術が発達していき、暮らしが便利になっていくことが予想されます。しかし、仮に何もかもが
便利になってテクノロジーがすべてを解決してくれる世の中になったとしても、「自ら考え行動して生きる
力」を育む場としてガールスカウトがあり続けることを、私は強く望んでいます。
上述のとおり、決して時代の流れに逆行することなく、その時代時代のニーズに合った活動を運営するに
は、私たちガールスカウト会員一人一人が「チェンジエージェント」としての自覚を持ち、自らの声を発信し
ていくことが一番重要だと思います。活動を通して、こうしたらもっとガールスカウト運動はよくなるな、あ
るいはこの日本社会がよくなるな、と気づいたことがあったら、それを伝える努力をすれば、ガールスカウト
会員皆の力でガールスカウト運動、ひいては日本全体をより良い方向に導くことができると思います。そのた
めの小さな一歩として、今回私がこのフォーラムを通して得た知識が今後の日本連盟をより良いものに変えて
いく一助となるよう、1人でも多くの日本連盟会員の皆さんに知識を共有していきたいです。
神奈川県第 6 団 川邊早織
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
時代の流れと共に、私たち GG/GS のニーズも変わってきます。組織もそれに合わせて形を変えられる柔
軟性が必要です。今は世界的に多様性が受け入れられようとしている時代です。どんな人にも人権が与えられ
るべきです。GG/GS は、この時代の先駆者であったはずだと私は思います。しかし、どこか閉鎖的なところが
ありはしないかと、わが身をふりかえる大変貴重な機会をいただきました。
どこの国も会員減少、特に若年層の不足には頭を抱えており、急速に対処しなくてはなりません。それぞれ
の国が、それぞれの形でこの問題に必死で取り掛かろうとしています。自分たちが GG/GS から得た経験は、
必ずやどの女性にとっても価値のあるものだと確信しているからです。減少しつつあるとはいえ、現在でもガ
ールスカウトは世界で最多の少女と女性が集う団体です。国籍も人種も言葉も違う人たちが一つの目的のため
に活動する、ということはある意味至難の業です。それをここ100年近くやってのけた人たちのパワーを、
肌で感じたフォーラムでした。
このフォーラムに参加して、日本がどれだけ若い世代に期待してくれているか、を実感しました。他の多く
の国の参加者は、すぐにでも国連盟を変えるだけの力を持った方たちばかりでした。ですが、勿論私はそんな
力はありません。日本連盟が何年も先のことを見越して派遣してくださったのだと、現地で初めて気づきまし
た。
これからは、私たち若い世代が頑張らなくてはなりません。そのためには、より多くの経験を得て、消化し
て、自分の栄養にする必要があります。そうでないと、稚拙な机上の空論を述べてしまいかねないからです。
経験を積んでようやく、意見に重みと現実味が帯びます。また、日本連盟が良くなると思ったことは、臆せず
声にしていきましょう。若さ故に気づけることだって、山ほどあります。スカウトが若いのですから、ヤング
リーダーはスカウトの大好きなものを見つける力があります。上手くいかないことがあっても、それはきっと
何十年後の私たちが、若い世代に耳を傾けられる大人になっていくための肥やしです。これからの日本連盟を、
私たちの力でもっともっと良くしていきましょう。私もこの経験をすべて還元する力はまだ伴っておりません
が、精一杯尽力したいと思います。
大阪府第101団
山田咲穂
Girl Guide& Girl Scout Experience Forum
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