...

南薩(指宿)の特色を活かした豆類の産地育成

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

南薩(指宿)の特色を活かした豆類の産地育成
鹿児島県
南薩(指宿)の特色を活かした豆類の産地育成
活動期間:平成24年度~(継続中)
○ 指宿地域は、温暖な気候を活かした日本有数の冬場の豆類産地であり
産地の維持・発展のため、新規就農者の技術向上と定着を支援している。
○ 実えんどうは「かごしまブランド」として指定されているが、近年面積が減
少傾向である中で、新品種「まめこぞう」の現地適応性試験を行い、技術・
販売面等支援を行い、拡大普及を行っている。
○ 豆類を栽培している新規就農者の定着が図られ、「いぶすきの豆・マメ・
まめ祭り」の開催により、県内外の人々の認知度向上につながった。
具体的な成果
普及指導員の活動
1 新規就農者の技術向上と定着
新規就農者等を対象に普及指導協力委
員、指導農業士の協力のもと豆類ニュー
ファーマー研修を開催→新規就農者が定
着
平成24~26年
■豆類ニューファーマー研修を年4~5回開
催し、普及指導協力委員、指導農業士と
ともにほ場等で、細かな指導を実施し、新
規就農者の技術向上を支援
豆類を栽培している新規就農者の推移
区分
24年度 25年度 26年度
新規就農者
14
17
22
定着状況
93
100
100
(単位:戸,%)
2 実えんどう新品種「まめこぞう」の導入・
販売戦略の検討
実証ほを設置して現地適応性を確認し、
普及推進 → 2ha導入
「まめこぞう販売対策プロジェクトチーム」
で販売戦略を検討 → 関係機関の意識
統一
3 消費拡大に向けたPR活動による豆産
地としての認知度向上
地元消費者・子ども、観光客等に指宿の
豆を知ってもらうために、指宿駅前で「いぶ
すきの豆・マメ・まめ祭り」を開催
第1回(平成25年3月3日)
来場者数 約300名
第2回(平成26年2月16日)
来場者数 約500名
第3回(平成27年2月15日)
来場者数 約1000名
豆祭りを行うことで、①生産者同士の交
流・連携強化、②商工・観光関係者との連
携強化、③情報発信に対する理解が進む
とともに豆産地としての認知度が向上
平成24~26年
■新品種「まめこぞう」の実証ほ設置による
現地適応性,生産性等の確認
■「まめこぞう販売対策プロジェクトチーム」
を立ち上げ、消費者ニーズを元に商品コ
ンセプトの検討を支援
平成24~26年
■「いぶすきの豆・マメ・まめ祭り」開催にあ
たり、農家・農業団体、行政、さらに地元
飲食店、農業高校など多様な関係者の
意識統一
■祭りの内容の見直し、拡充などの改善方
策の提案
普及指導員だからできたこと
・ 普及指導協力委員・指導農業士の協力を
得て、新規就農者の栽培技術向上等への
継続的な支援体制を確立できた。
・ 地域のコーディネーターができる普及指
導員だからこそ、多様な関係者の意識を統
一し、「いぶすきの豆・マメ・まめ祭り」を開催
できた。また、PDCAサイクルによる見直し改
善により、参加者が増加し定着しつつある。
鹿児島県
南薩(指宿)の特色を活かした豆類の産地育成
活動期間:平成 24 年度~(継続中)
1.取組の背景
鹿児島県指宿地域は畑作地帯で,温暖な気候と南薩畑地かんがいを活かした豆
類やオクラ,かぼちゃ等の野菜産地となっている。特に豆類「そらまめ」・「実え
んどう」・「スナップえんどう」は,冬場の温暖な気候を活かして全国に先駆けた
出荷が可能なことから,日本有数の産地である。
農家戸数は年々減少している状況の中,農業が就業の場として見なされてきて
おり,指宿では新規就農者や農業後継者が増えてきている。新規就農者等の早期
経営確立及び地域の担い手農家への経営改善指導を行い,豆類産地を支える経営
体を育成していく必要がある。
しかしながら,重点品目である「そらまめ」,「実えんどう」は,消費の伸び悩
み・価格の低迷等で栽培が減少傾向にあり,特に「実えんどう」は面積減少が大
きく,産地再編のために産地の課題整理や新品種導入検討及び「実えんどう」に
対する認知度の向上が必要である。一方,需要が高まっている「スナップえんど
う」の栽培は増加傾向にある。地域の経営体は,この豆類3品目を組み合わせた
営農類型が多く,更なる安定生産が求められている。
そのような中,観光地としても有名な指宿市では,指宿を訪れる観光客を含
め,全国に指宿産農産物を PR しようと,JA いぶすき・県南薩地域振興局農政普
及課・指宿市による「農産物三者連携 PR 会議」(以下 PR 会議)が発足し,関係機
関の連携体制が整いつつあった。
表1 豆類の生産者及び生産額の推移(単位:戸,ha,千円,kg/10a,%)
品 目
年度
栽培戸数
栽培面積
H23年
855
H26年 施設12,露地710
H23年
267
実えんどう
H26年
138
H23年
700
スナップえんどう
H26年 施設120,露地850
H23年
-
3品目計
H26年
-
注)データ:指宿市,いぶすき農業協同組合とりまとめより
そらまめ
239
202
48
36
174
238
461
476
生産額
1,448,990
1,270,018
348,325
253,753
1,677,290
2,267,312
3,474,605
3,791,083
平均反収
露地栽培品目で
100a以上,施設
栽培品目で30a
以上の農家数
1,389
1,405
989
994
1,159
1,259
-
(単位:戸,%)
表2 豆類を栽培している新規就農者の推移
区分
21年度
22年度
23年度
24年度
25年度
26年度
新規就農者
10
10
9
14
17
22
定着状況
100
100
100
93
100
100
2.活動内容
(1)産地を支える経営体(新規就農者)の育成支援
新規就農者等の栽培経験の浅い農家に対し,基礎的な栽培技術及び経営の基
礎に関する研修会を開催した。また,実践的な農業技術習得支援及びパソコン
1
15
20
1
5
4
-
簿記の習得支援も併せて行った。
(2)実えんどう新品種「まめこぞう」の導入・技術実証による普及推進
実えんどうの栽培面積の減少は,生産性の低下(単収低下,単価低迷)が主
な要因であるが,市場からは品質(剥き身率)や食味が他産地の実えんどうと比
較して劣るとの指摘があり,その改善を求められていた。そこで,多収で食味の
良い実えんどうの新品種「まめこぞう(鹿児島県農業開発総合センター育成,地
元農業高校の鹿児島県立山川高等学校生による命名)」の現地適応性試験(平成
24~26 年度)を行い,平成 26 年度には,栽培研修会等を開催し,普及推進を図
った。
(3)実えんどう新品種「まめこぞう」の販売対策支援
鹿児島市内の消費者や博多阪急の消費者を対象に,「実えんどう」のイメー
ジや購買行動,食べ方・調理法についてのグループインタビューを実施し,消
費者ニーズの把握を行った。
「まめこぞう」の本格的な導入を前に,生産者及び関係機関で販売対策を検討
するため「まめこぞう販売対策プロジェクトチーム」を結成し,消費者ニーズ・
シーズの整理,コンセプトシート作成を支援した。
地元での「まめこぞう」の認知度を高めるため,山川高校,学校給食センター
と連携し,学校給食に豆ご飯を取り入れるなど,地元小中学生への食育活動を行
った。
(4)豆類 PR 活動の支援
PR 会議の一員として,指宿市内における豆類の消費拡大・PR 活動の支援を
行った。その活動の1つとして,地元飲食店組織「お野菜ひろめ隊」と JA い
ぶすきそらまめ部会及びえんどう部会の代表者による意見交換の場を設け,そ
れぞれの立場から豆に対する思いを引き出した。
両者の「地元で豆に特化したイベントを開催し,地元の子どもたちにもっと
豆にふれてほしい」という思いを受け,イベント「いぶすきの豆・マメ・まめ
祭り」(以下豆祭り)開催を支援した。具体的には,内容の企画・提案,生産者
組織及び関係機関の連絡調整など,コーディネート機能を発揮した。
3.具体的な成果
(1)産地を支える経営体(新規就農者)の育成支援
普及指導協力委員,指導農業士と協力し,豆類の生理生態・栽培管理等をほ
場で栽培中の豆を見ながら,講座形式で指導を行い,新規栽培者等(就農5年以
内が中心)の技術向上が図られた (表3)。
また,パソコン簿記記帳研修会及び定例会により経営管理能力向上を促し
た。
平成 21 年度以降,豆類を栽培している新規就農者の定着状況は 100%に近い
(表2)。
(単位:回,人)
表3 豆類ニューファーマー研修の開催状況
区分
平成22年度 平成23年度 平成24年度 平成25年度 平成26年度
開催回数
2
4
5
5
4
参加人員(延べ)
86
87
87
62
79
2
(2)実えんどう新品種「まめこぞう」の導入・技術実証による普及推進
平成 25 年度の現地適応性試験の結果は,年内高温の影響もあり草勢が強くな
りすぎたため,着莢率が下がり単収が低下したため,平成 26 年度は,過繁茂に
なりすぎない対策として,株間を広げる対策(15cm2粒→10cm1粒)を実施し
た。
平成 26 年度の「まめこぞう」導入面積は,当初4ha の計画であったが,種
子の確保が困難で約2ha の導入面積となった。
(3)実えんどう新品種「まめこぞう」の販売対策支援
「まめこぞう」の販売対策について,「まめこぞう販売プロジェクトチーム」
を立ち上げ検討の場を設けたことで関係機関の意識統一を図ることができた。平
成 26 年度は,学校給食で「まめこぞう」を使った豆ご飯を提供するとともに,
地元小学校で,生産者・山川高校生による「まめこぞう」の授業を開催するな
ど,地域で「まめこぞう」の認知度を高めることができた。
(4)豆類 PR 活動の支援
平成 25 年3月,指宿駅前広場で第1回豆祭りを開催した。グリーンピースの
さやむき大会,生産者による豆料理のふるまい,そらまめのつかみ取り,豆弁
(当)の販売,お野菜ひろめ隊(地元飲食店による組織)による豆料理対決等
が行われ,好天にも恵まれ盛大なイベントとなった。
平成 26 年2月の第2回目からは,地元農業高校の山川高校生も加わり,「お
野菜ひろめ隊」とコラボした「Bean・豆(ビーンズ)レストラン(豆づくしの
料理による1日レストラン)花野果」をオープンするとともに,鉢栽培のそら
まめを含めた山川高校の活動に関する展示も行うようになった。
平成 27 年2月の第3回目ではガラポン抽選会,豆スイーツ・加工品販売等が
新たに加わった。指宿駅前中央通りで「マルシェ&マハロマーケット(歩行者
天国)」も同時に開催されたこと,JR 指宿枕崎線の各駅に豆祭りのチラシを配布
したことなどにより,来場者が増え,1,000 名以上であった。
各関係機関・団体,協議会から予算を持ちより,手探りの状態から始まった
「いぶすきの豆・マメ・まめ祭り」であるが,3回経験したことにより,指宿
の豆類をPRする手段として定着しつつある。
豆祭りを行うことで①生産者同士の交流・連携強化,②商工・観光関係者と
の連携強化,③地元における農産物 PR,情報発信の必要性の理解が進んだ。
豆類ニューファーマー講座
「いぶすきの豆・マメ・まめ祭り」
グリーンピースのさやむき大会
3
4.農家等からの評価・コメント
「いぶすきの豆・マメ・まめ祭り」については,「生産者と飲食店が連携し,
また関係機関が一体となり,豆類に特化した魅力的なイベントになってきた。」
「豆類に特化したことで,目的がぼやけることがなく,消費者に対し豆類の認知
度を効果的に高めることができた。」「指宿の春を伝える新たな風物詩として,今
後定着することができれば,指宿産豆類の消費拡大にもつながる」との評価が得
られている。
実えんどうの新品種「まめこぞう」については,「地域にあった栽培技術が確
立していない。」という声がある一方,「この品種を栽培してみたい」あるいは
『「まめこぞう」が地域に早く普及するように支援してほしい。』という声も聞か
れる。
5.普及指導員のコメント(南薩地域振興局農政普及課指宿市十二町駐在)
技術主幹
中川耕人
技術専門員 園中光範
技術主査
野間直美
豆類は,指宿市の特産野菜として定着しており,市場性も高い。また,オク
ラや葉菜類との複合経営の拡大によって,所得が確保され新規就農者も定着し
ている。今後は,更に新規就農者の栽培技術確立に取り組むとともに,豆類の
新たな加工品や用途の開発,PR活動の促進等による市場開拓等を支援してい
きたい。
また,安心安全な野菜生産が求められる中,GAPの認証取得継続と併せ
て,豆類におけるIPMの推進を図っていきたい。
6.現状・今後の展開等
(1)豆類の生産振興目標の明確化
園芸産地活性化プラン等の見直しで,関係機関の重点課題の共通認識,目標
の明確化は出来たが,重点課題のうち,①そらまめの3月下旬~4月上旬の出
荷集中に関する対策,②スナップえんどうのアザミウマ類対策,③豆類の付加
価値を高めた製品化の検討等の具体的な検討が残された課題となっている。
(2)収量品質向上技術の実証(実えんどう新品種「まめこぞう」)
まめこぞうは,草勢が強い品種なので,過繁茂になりすぎない対策(播種時
期,株間,施肥量)を総合的に検討し,生産安定を図る必要がある。
(3)豆類PR活動の展開手法の検討
「まめこぞう」の販売対策については,現在はPR活動のみとなっているの
で,収量品質向上技術の確立と併せ,具体的な販売対策を検討する必要があ
る。
「いぶすきの豆・マメ・まめ祭り」を今後,発展させながら継続して取り組
んでいくためには,活動体制の確立,生産者を巻き込んだPR活動の展開を検
討していく必要がある。
4
Fly UP