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赤痢菌の試験法について

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赤痢菌の試験法について
事
務
連
絡
平成14年1月9日
各
都道府県
政 令 市
特 別 区
衛生主管部(局)
食品衛生担当課 御中
厚生労働省医薬局食品保健部監視安全課
送信枚数17枚(本紙を含む)
赤痢菌の試験法について
平成13年11月下旬から西日本を中心に、30都道府県、159名(同年12月2
7日午後6時現在)の赤痢菌患者の発生が報告され、当課から同月28日に患者が喫食
したと考えられる韓国産かき及び患者から分離された赤痢菌と同一のPFGEパターン
を有する赤痢菌が検出されたことをお知らせしたところです。
食品からの赤痢菌の検出については、従来から困難とされているところですが、本事
件において国立医薬品食品衛生研究所が実施した検査方法を参考までに送付しますので、
同様の事件が発生した際には活用されるようお願いします。
なお、食品中の赤痢菌の検出方法については、今年度の厚生科学研究でさらなる検討
を行っているところであり、最終的な結論が提出された段階で、改めて各都道府県等に
対して通知する予定です。
監視安全課食品安全係
TEL:03-5253-1111(内 2478)
直通 TEL:03-3595-2337
FAX:03-3503-7964
Shigella sonneiの試験法(1)
検体25g(カキ)をストマッカ-袋に秤量
ノボビオシン加 Shigella broth*1 225mlを注加した後,時々手
でもみ撹拌する
10分間
室温放置(時々手でもみ撹拌)
10分間後,嫌気条件下(ガス発生キット等)に置く
44℃
20時間
嫌気培養
P C R試験
培養液を撹拌後,一白金耳を下記の選択分離平板培地
( MAC に加え,それぞれの培地から1種類づつを選択)に塗抹
MAC
CRT ・DHL ・XLD
1)
2)
(弱い選択力)
5個釣菌
3)
4)
(中間的選択力)
5個釣菌
35− 37℃
5)
6)
18∼24時間培養
18∼24時間培養
確認試験(生化学試験/同定キット)
毒素遺伝子確認試験(PCR)
血清型別試験
7)
(強い選択力の培地)
5個釣菌
普通寒天斜面に画線塗抹
35−37℃
エネツ ・HEA ・SS
冷凍カキのShigella sonnei 試験法(2)
検体25g(カキ)をストマッカ-袋に秤量
Buffered Peptone Water 225mlを注加した後,時々
手でもみ撹拌しながら10分間室温放置
35− 37℃
18∼24時間培養
培養液1mlをノボビオシン加 Shigella broth*1 10mlに接種
44℃
20時間 嫌気培養
(ガス発生キット等)
P C R 試験
培養液を撹拌後,一白金耳を下記の選択分離平板培地
( MAC に加え,それぞれの培地から1種類づつを選択)に塗抹
MAC
CRT ・DHL ・XLD
1)
2)
(弱い選択力)
5個釣菌
3)
4)
(中間的選択力)
5個釣菌
35− 37℃
5)
6)
18∼24時間培養
18∼24時間培養
確認試験(生化学試験/同定キット)
毒素遺伝子確認試験(PCR)
血清型別試験
7)
(強い選択力の培地)
5個釣菌
普通寒天斜面に画線塗抹
35−37℃
エネツ ・HEA ・SS
赤 痢 菌 ( Shigella sonnei) の 検 査 法 解 説
1.検体の採取
1 )食 品 の 場 合 は 2 0 0 g 以 上 を 採 取 す る .な お ,表 面 汚 染 が 考 え ら れ る 食 品
は , 表 面 部 300∼ 500cm 2 を 厚 さ 0.2∼ 0.3mmに 削 り 検 体 と す る 。
2)水の場合は,蛇口をアルコ−ル綿等で殺菌後3L以上を採水する.水
槽から直接採水する場合は,柄杓(ヒシャク)等を使用する.なお,塩素消
毒した水はチオ硫酸ナトリウムで中和する.
2.試料の調製
1)食品
採 取 し た 検 体 の 全 体 を 細 切 ,混 和 後 ,そ の 2 5 g を ス ト マ ッ カ − 袋( ピ
ペットが目詰まりするような検体ではフィルタ−機能のあるものを使
用)に秤量して試料とする.
2)水
採 取 し た 検 体 の 3 L を メ ン ブ レ ン フ ィ ル タ −( ポ ア サ イ ズ 0 . 4 5 μ m )
により濾過する.フィルタ−が途中で目詰まりした場合は新しいフィ
ルタ−を追加使用する.なお,検水が成分の違い,汚濁の状態などか
ら1枚のフィルタ−ではろ過できない場合は,水試料(3L)を適宜
小分けする.
3)陽性対照の作製方法と用い方
赤 痢 菌 ( Shigella sonnei) 株 ( 普 通 寒 天 斜 面 保 存 株 ) の 一 白 金 耳 を
T S B ( 3mL) に 接 種 , 35∼ 37℃ で 18 時 間 培 養 す る . こ の 培 養 液 1
mLを 0.1% ペ プ ト ン 加 滅 菌 生 理 食 塩 水 ( 9 mL) を 用 い て 10 −5 倍 希 釈
す る .こ の 1 0 − 5 倍 希 釈 液 1 m L を ,さ ら に 4 0 m L の 0 . 1 % ペ プ ト ン 加 滅
菌 生 理 食 塩 水 で 希 釈 し た 菌 液 を 試 料 と す る .本 試 料 2 0 0 μ L を 検 体 2 5 g
に接種し陽性対照とする.陽性対照に用いる菌株は,PFGE(DN
Aパタ−ン)が確認されているものを用いること.
3.増菌培養
1)食品
1
ス ト マ ッ カ − 袋 中 の 試 料 に 増 菌 培 地 2 2 5 m L を 注 加 し た 後 ,時 々 手 揉
み し な が ら 1 0 分 間 室 温 放 置 す る( ス ト マ ッ カ − 処 理 は し な い ).室 温
放 置 後 , 増 菌 培 地 が B P W の 場 合 は , 35∼ 37℃ で 18∼ 24 時 間 好 気 培
養 す る . 増 菌 培 地 が Shigella brothの 場 合 は 44℃ で 18∼ 24 時 間 嫌 気
培養 する.ただし,食中毒検体の検査にあたっては,検査検体数を増
や し た り ,一 次 お よ び 二 次 増 菌 に 加 え ,S h i g e l l a b r o t h を 用 い た 三 次 増
菌やビ−ズ法などの導入に加え,分離平板培地の種類を増やすなどの
工夫が必要と思われる.
2)水
濾過したフィルタ−を必要に応じ細切し,中試験管など適当な滅菌
容 器 に 入 れ , 増 菌 培 地 が B P W の 場 合 は 培 地 15mLを 注 加 し て 35∼
3 7 ℃ で 1 8 ∼ 2 4 時 間 好 気 培 養 す る .増 菌 培 地 が S h i g e l l a b r o t h の 場 合 は
培 地 15mLを 注 加 し て 44℃ で 18∼ 24 時 間 嫌 気 培 養 す る .
4.増菌用培地
1 ) B P W ( B u f f e r e d P e p t o n e Wa t e r ) ( O X O I D , M E R C K , 栄 研 , そ の 他 )
10.0g
ペプトン
塩化ナトリウム
5.0g
リン酸2ナトリウム
4.0g*
リン酸1カリウム
1.5g*
1,000mL
蒸留水
pH 7.2±0.1
★ : 121℃ で 15 分 間 滅 菌 後 40℃ 程 度 に 冷 却 し 使 用 す る . *リ ン 酸 緩 衝 剤 の
配合は,培地メ−カ−によってまちまちであるが,担当者の好みで選択して
も差し支えない.
2 ) Shigella
broth( 自 家 調 製 ,OXOID)
組成:
20.0g
トリプトン
リン酸水素二カリウム
2.0g
リン酸二水素カリウム
2.0g
塩化ナトリウム
5.0g
2
グルコース
1.0g
Tw e e n 8 0
1.5mL
ノボビオシン
0.5mg
1000mL
精製水
pH
7.0±0.2
★ : ノ ボ ビ オ シ ン 以 外 の す べ て の 組 成 ( 3 1 . 5 g / L )を フ ラ ス コ に 入 れ ,1 L の
精 製 水 を 加 え て 溶 解 す る . 121℃ ・ 15 分 間 オ ー ト ク レ ー ブ す る . ノ ボ ビ オ シ
ン 5 0 m g を 1 L の 精 製 水 に 溶 解 し ,0 . 2 μ m の メ ン ブ ラ ン フ ィ ル タ ー で ろ 過 滅
菌 す る . 調 製 し た ノ ボ ビ オ シ ン 溶 液 は , 滅 菌 し た 培 地 225mL に 2.5mL の 割
合 で 添 加 す る ( I S O で は ノ ボ ビ オ シ ン 25.0mg を 1 L の 精 製 水 で 溶 解 し ,
5 m L を 添 加 す る 事 に な っ て い る ). Tw e e n 8 0 の 比 重 は 1 . 0 8 で あ る た め
1.5g/L の 添 加 で も 良 い .
嫌気培養
・ 嫌 気 ジ ャ ー ( OXOID,MERCK,BBL,三 菱 化 学 ,そ の 他 )
・ 嫌 気 性 菌 用 ガ ス 発 生 キ ッ ト ( OXOID,BBL,三 菱 化 学 ,そ の 他 )
★嫌気ジャーを用いた嫌気培養
① 嫌 気 性 菌 用 ガ ス 発 生 キ ッ ト を 嫌 気 ジ ャ ー に セ ッ ト す る .触 媒 が 必 要 な 場 合
はこれも同時にセットする事.
② 培養する検体を嫌気ジャーに入れる.
③ 嫌気性指示薬を嫌気ジャーにセットする.
④ 嫌気性菌用ガス発生キットを活性化し,嫌気ジャーにセットする.
⑤ ジ ャ ー を 密 閉 し ,イ ン ジ ケ ー タ の 色 で ,嫌 気 と な っ て い る 事 を 確 認 し て か
ら,44℃で20時間培養する.
5.分離培養
一 般 に ,標 的 菌( 赤 痢 菌 :Shigella sonnei)を 分 離 し よ う と す る 場 合 に は ,多
くの単離集落が出現するように塗抹することである.また,使用する分離培
地の種類や平板数を増やしたり,あるいは増菌培養液を希釈するなどの操作
を行うことが重要である.釣菌する集落は,疑わしい集落をできる限り多く
釣菌しないと,標的菌を得ることは難しい.分離用培地としては,以下のも
のが利用できるが,培地組成はメ−カ−により若干異なっているので,それ
3
ぞれの研究室あるいは検査室で日常使い慣れた培地を用いることを薦める.
はじめて使用するところでは,標準菌を各分離培地に接種して,集落の大き
さ,色調,形状などを確認しておくこと.
1) MAC: MacConkey
Agar
No.3
( OXOID,Difco,栄 研 ,日 水 ,そ の 他 )
組成
ペプトン
20.0g
乳糖
10.0g
胆 汁 酸 塩 No.3
1.5g
塩化ナトリウム
5.0g
ニュートラルレッド
0.03g
クリスタルバイオレット
0.001g
15.0g
カンテン
1000mL
精製水
pH
7.1±0.2
★ : す べ て の 組 成 ( 51.5g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加
温 溶 解 す る . 溶 解 後 ,1 2 1 ℃ ・ 1 5 分 間 オ ー ト ク レ ー ブ し た 後 ,5 0 ℃ ぐ ら い
ま で 冷 却 し 20mL づ つ 滅 菌 シ ャ ー レ に 分 注 す る .
2)
C R T : C H R O M a g a r O 1 5 7 TA M
( CHROMagar; 関 東 化 学 )
組成
ペプトンと塩化ナトリウム
31.5g
カンテン
12.0g
1.0g
特殊色素混合物
1000mL
精製水
pH
7.2
★ : す べ て の 組 成 ( 44.5g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加
温 溶 解 す る . 溶 解 後 , 50℃ ぐ ら い ま で 冷 却 し 20mL づ つ 滅 菌 シ ャ ー レ に
分注する.オートクレーブを用いた滅菌は行ってはいけない.
3)
DHL
Agar( 日 水 ,栄 研 ,OXOID,MERCK,そ の 他 )
組成
3.0g
肉エキス
4
ペプトン
20.0g
乳糖
15.0g
白糖
10.0g
デオキシコール酸ナトリウム
1.0g
チオ硫酸ナトリウム
2.3g
クエン酸ナトリウム
1.0g
クエン酸鉄アンモニウム
1.0g
ニュートラルレッド
0.03g
15.0g
カンテン
1000mL
精製水
pH
7.0±0.2
★ : す べ て の 組 成 ( 63.3g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加
温 溶 解 す る . 溶 解 後 , 50℃ ぐ ら い ま で 冷 却 し 20mL づ つ 滅 菌 シ ャ ー レ に
分注する.オートクレーブを用いた滅菌は行ってはいけない.
4 ) XLD
Agar( OXOID,栄 研 ,Difco,MERCK,そ の 他 )
組成
酵母エキス
3.0g
乳糖
7.5g
白糖
7.5g
キシロース
3.75g
塩酸リジン
5.0g
デオキシコール酸ナトリウム
1.0g
塩化ナトリウム
5.0g
チオ硫酸ナトリウム
6.8g
クエン酸鉄アンモニウム
0.8g
フェノールレッド
0.08g
12.5g
カンテン
1000mL
精製水
7.4±0.2
pH
★ : す べ て の 組 成 ( 52.9g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加
温 溶 解 す る . 溶 解 後 , 50℃ ぐ ら い ま で 冷 却 し 20mL づ つ 滅 菌 シ ャ ー レ に
分注する.オートクレーブを用いた滅菌は行ってはいけない.
5
5)
エ ネ ツ : Salmonella
Agar
acc.
to
Onoz( MERCK)
組成
酵母エキス
3.0g
肉エキス
6.0g
肉ペプトン
6.8g
乳糖
11 . 5 g
白糖
13.0g
胆汁酸塩混合物
3.825g
クエン酸ナトリウム
9.3g
チオ硫酸ナトリウム
4.25g
L-フ ェ ニ ル ア ラ ニ ン
5.0g
クエン酸鉄
0.5g
硫酸マグネシウム
0.4g
ブリリアントグリーン
0.00166g
ニュートラルレッド
0.022g
アニリンブルー
0.25g
メタクロムイエロー
0.47g
リン酸水素二ナトリウム
1.0g
15.0g
カンテン
1000mL
精製水
pH
7.1±0.2
★ : す べ て の 組 成 ( 80.5g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加
温 溶 解 す る . 溶 解 後 , 50℃ ぐ ら い ま で 冷 却 し 20mL づ つ 滅 菌 シ ャ ー レ に
分 注 す る .オ ー ト ク レ ー ブ を 用 い た 滅 菌 は 行 っ て は い け な い .本 培 地 は 溶
けにくいので注意すること.
6)
HEA: Hektoen
Enteric
Agar( OXOID,Difco,そ の 他 )
組成
プロテオースペプトン
12.0g
3.0g
酵母エキス
乳糖
12.0g
白糖
12.0g
6
サリシン
2.0g
胆 汁 酸 塩 No.3
9.0g
塩化ナトリウム
5.0g
チオ硫酸ナトリウム
5.0g
クエン酸鉄アンモニウム
1.5g
酸性フクシン
0.1g
ブロモチモールブルー
0.065g
14.0g
カンテン
1000mL
精製水
pH
7.5±0.2
★ : す べ て の 組 成 ( 76.0g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加
温 溶 解 す る . 溶 解 後 , 50℃ ぐ ら い ま で 冷 却 し 20mL づ つ 滅 菌 シ ャ ー レ に
分 注 す る .オ ー ト ク レ ー ブ を 用 い た 滅 菌 は 行 っ て は い け な い .本 培 地 は 溶
けにくいので注意すること.
7)
S S A g a r :S a l m o n e l l a S h i g e l l a
A g a r( O X O I D ,日 水 ,栄 研 ,M E R C K ,
Difco)
組成
肉エキス
5.0g
ペプトン
5.0g
10.0g
乳糖
胆汁酸塩
8.5g
クエン酸ナトリウム
8.5g
チオ硫酸ナトリウム
8.5g
クエン酸鉄
1.0g
ブリリアントグリーン
0.00033g
ニュートラルレッド
0.025g
13.5g
カンテン
1000mL
精製水
pH
7.0±0.2
★ : す べ て の 組 成 ( 60g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加 温
溶 解 す る . 溶 解 後 , 50℃ ぐ ら い ま で 冷 却 し 20mL づ つ 滅 菌 シ ャ ー レ に 分
注する.オートクレーブを用いた滅菌は行ってはいけない.
7
6.確認培養
分 離 平 板 培 地 上 に 発 育 し た 赤 痢 菌 ( Shigella sonnei) と 疑 わ れ る 集
落 を 釣 菌 し て 普 通 寒 天 斜 面 培 地 に 接 種 し , 35∼ 37℃ で 18∼ 24 時 間 培
養する.この培地を基株としてグラム染色,チトクロ−ムオキダ−ゼ
およびカタラ−ゼ試験を行う.また,普通ブイヨンに接種,培養後,
本培養液をTSI斜面寒天培地,LIM培地,ブドウ糖加普通ブイヨ
ン ( ダ − ラ ム 管 入 り ), オ ル ニ チ ン 培 地 ( メ ラ − ), シ モ ン ズ ク エ ン 酸
塩 斜 面 寒 天 培 地 お よ び ア セ テ − ト 斜 面 寒 天 培 地 に そ れ ぞ れ 接 種 し , 35
∼ 37℃ で 18∼ 24 時 間 培 養 す る . 培 養 後 , T S I 斜 面 寒 天 培 地 で は 高
層部黄変,斜面部赤変(黄変の場合あり)硫化水素陰性,糖からのガ
ス産生陰性(TSIで糖からのガス産生の有無を判定することもでき
る が , 糖 の 種 類 を 特 定 す る の は 困 難 ), ブ ド ウ 糖 か ら の ガ ス 産 生 陰 性 ,
LIM培地では運動性なし,インド−ル陰性,硫化水素陰性,リシン
デカルボキシラ−ゼ陰性,オルニチンデカルボキシラ−ゼ陽性,クエ
ン酸塩培地陰性およびアセテ−ト培地陰性の菌株を赤痢菌陰性と確定
し,血清学的試験を行う.
赤 痢 菌 ( Shigella sonnei) の 主 な 生 化 学 性 状
グラム染色
(−)
チトクロ−ムオキダ−ゼ
(−)
カタラ−ゼ
(+)
運動性
(−)
インド−ル
(−)
リシンデカルボキシラ−ゼ
(−)
ブドウ糖からのガス産生
(−)
乳糖分解性(−)陽性の場合あり
(−)
白糖分解性(−)陽性の場合あり
(−)
硫化水素産生
(−)
オルニチンデカルボキシラ−ゼ
(+)
クエン酸塩
(−)
アセテ−ト培地
(−)
イ ン ド − ル 試 験 ( コ バ ッ ク の 方 法 ):
8
培養を終了したLIM培地で運動性およびリシンデカルボキシラ−
ゼ の 陽 性 陰 性 を 観 察 ,記 帳 し た 後 ,L I M 培 地 に ク ロ ロ ホ ル ム 約 1 m L
を 重 層 す る ( 浸 透 し て は な ら な い ). 次 に , コ バ ッ ク の 試 薬 約 1 m L を
滴下する.陽性の場合はクロロホルム層が赤色となる.大腸菌は陽性
であるが,赤痢菌は陰性で赤変しない.
コ バ ッ ク の 試 薬 は ,パ ラ ジ メ チ ル ア ミ ノ ベ ン ツ ア ル デ ヒ ド 5 g を ア ミ
ル ア ル コ − ル ま た は イ ソ ア ミ ル ア ル コ − ル 75mL に 溶 か し , さ ら に 濃
塩 酸 25mL を 加 え て つ く る . 冷 蔵 庫 で 保 存 す れ ば 長 期 間 使 用 で き る .
チトクロ−ムオキシダ−ゼの確認法:
寒天平板培地上の赤痢菌と思われる集落を楊子で釣菌し,その菌苔
を精製水でわずかに湿らせた試験用濾紙上にこすり付着させる.チト
クロ−ムオキシダ−ゼ陽性菌は,1分以内に被検菌の付着部分が深青
色を呈する.陰性菌は変化しない.色の変化が明確で無い場合は,楊
子またはガラス棒を用いて再度行う.
・ オ キ シ ダ ー ゼ 鑑 別 用 ス テ ィ ッ ク ( OXOID: 関 東 化 学 No.714064-1)
100 本
定 価 6,800 円
・ オ キ シ ダ ー ゼ テ ス ト ( B B L : N o . 2 6 11 8 1 ) 5 0 個
定 価 7,500 円
カタラ−ゼ試験法:
寒天平板培地上の赤痢菌と思われる集落を楊子で釣菌し,その菌苔を
スライドグラスあるいは窓ガラス用ガラスに付着させる.付着させた部
分 に 3% 過 酸 化 水 素 水 を ガ ラ ス の キ ャ ピ ラ リ − チ ュ − ブ あ る い は 注 射 器
( 1mL )で 吸 い 上 げ 一 滴 滴 下 す る .カ タ ラ − ゼ 陽 性 菌 は ,気 泡 を 産 生 す
るが陰性菌は気泡の産生がない.
A)
LIM 培 地 ( 日 水 , 栄 研 , MERCK, そ の 他 )
組成
12.8g
ペプトン
酵母エキス
3.0g
ブドウ糖
1.0g
L-リ ジ ン 塩 酸 塩
10.0g
L-ト リ プ ト フ ァ ン
0.5g
ブロムクレゾールパープル
0.02g
カンテン
2.7g
9
pH
6.8±0.1
★ : す べ て の 組 成 ( 30g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加 温
溶 解 す る .小 試 験 管 に 分 注 し ,121℃ ・ 15 分 間 オ ー ト ク レ ー ブ 後 ,急 冷 し
高層培地とする.
B) TSI 培 地 ( OXOID,日 水 ,栄 研 ,MERCK,そ の 他 )
組成
肉エキス
5.0g
塩化ナトリウム
5.0g
ペプトン
15.0g
乳糖
10.0g
白糖
10.0g
ブドウ糖
1.0g
クエン酸第二鉄
0.2g
チオ硫酸ナトリウム
0.2g
フェノールレッド
0.02g
15.0g
カンテン
pH
7.4±0.2
★ : す べ て の 組 成 ( 6 1 . 4 g / L ) を フ ラ ス コ に 入 れ ,1 L の 精 製 水 を 加 え て 加 温
溶 解 す る .溶 解 後 ,小 試 験 管 に 分 注 し 1 2 1 ℃・1 5 分 間 オ ー ト ク レ ー ブ し た 後 ,
斜面培地とする.
C)
オ ル ニ チ ン 培 地 ( メ ラ ー ) ( 栄 研 ,そ の 他 )
組成:
ペプトン
5.0g
肉エキス
5.0g
リン酸ピリドキサール
5.0mg
ブドウ糖
0.5g
L-オ ル ニ チ ン 塩 酸 塩
10.0g
ブロムクレゾールパープル
0.02g
クレゾールレッド
0.01g
pH
6.0±0.1
10
★ : す べ て の 組 成 ( 60g/L) を フ ラ ス コ に 入 れ , 1 L の 精 製 水 を 加 え て 加 温
溶 解 す る . 溶 解 後 , 小 試 験 管 に 2 ∼ 3mL 分 注 し 121℃ ・ 15 分 間 オ ー ト ク
レーブする.
D)
シ モ ン ズ ・ ク エ ン 酸 培 地 ( 栄 研 ,OXOID,MERCK,日 水 ,そ の 他 )
組成 :
リン酸二カリウム
1.0g
リン酸一アンモニウム
1.0g
クエン酸ナトリウム
2.0g
硫酸マグネシウム
0.2g
塩化ナトリウム
5.0g
ブロムチモールブルー
0.024g
15.0g
カンテン
pH
6.7±0.1
★ : す べ て の 組 成 ( 2 4 . 2 g / L ) を フ ラ ス コ に 入 れ ,1 L の 精 製 水 を 加 え て 加 温
溶 解 す る .小 試 験 管 に 分 注 し 121℃ ・ 15 分 間 オ ー ト ク レ ー ブ し た 後 ,斜 面 培
地とする.
E) Acetate agar( 自 家 調 整 )
組
成:
酢酸ナトリウム
2.0g
塩化ナトリウム
5.0g
硫 酸 マ グ ネ シ ウ ム (7 水 塩 )
0.2g
リン酸一アンモニウム
1.0g
リン酸水素二カリウム
1.0g
ブロムチモ−ルブル−
0.08g
20.0g
寒天
1,000mL
蒸留水
p H 6.7±0.1
★:硫酸マグネシウムを除いた全ての組成をフラスコに入れ,1Lの精製
水 を 加 え て 加 温 溶 解 す る . 溶 解 後 , 硫 酸 マ グ ネ シ ウ ム を 加 え p H 6.7 に 調 整
す る .作 製 し た A c e t a t e a g a r を 8 m L づ つ 中 試 験 管 に 分 注・綿 栓( シ リ コ 栓 ,
モ ル ト ン 栓 ,そ の 他 )し 1 2 1 ℃ ・ 1 5 分 間 オ − ト ク レ − ブ し た 後 ,斜 面 部 が 5 c m
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になるように斜面寒天にする.
Acetate agar 陽 性 菌 ( E. coli) お よ び 陰 性 菌 ( S.sonnei) を 本 培 地 斜 面 に
接 種 し , 35∼ 37℃ ・ 24∼ 72 時 間 培 養 す る . 培 養 後 , 陽 性 菌 は 斜 面 部 あ る い
は培地面全体が濃青色(藍色)となる.陰性菌では 変 化 し な い .
★ : 35∼ 37℃ ・ 24∼ 72 培 養 後 , 変 化 が み ら れ な い 場 合 で も 即 , 陰 性 と せ ず
に7日間培養することを薦める.
7.血 清 学 的 試 験
赤 痢 菌 は , 1949 年 の Ewing の 提 案 を 基 礎 と す る 国 際 腸 内 細 菌 型 別 小 委 員
会 勧 告( 1984 年 )に 従 っ て ,生 化 学 的 性 状 と 菌 体 抗 原( O 抗 原 )を 用 い た 血
清 学 的 性 状 に よ っ て 分 類 さ れ ,志 賀 赤 痢 菌( S h i g e l l a d y s e n t e r i a e ,A 亜 群 ),
フ レ キ シ ネ ル 赤 痢 菌 ( S h i g e l l a f l e x n e r i , B 亜 群 ), ボ イ ド 赤 痢 菌 ( S h i g e l l a
boydii, C 亜 群 ) お よ び ソ ン ネ 赤 痢 菌 ( Shigella sonnei, D 亜 群 ) の 4 種 類
に分けられている.
さ ら に ,S . d y s e n t e r i a e は 型 抗 原 に よ り 1 2 血 清 型 に ,S . f l e x n e r i は 型 抗 原
と 群 抗 原 に よ り 6 血 清 型 ・ 13 亜 型 に , S.boydii は 型 抗 原 に よ っ て 18 血 清 型
に分けられている.
S . s o n n e i の 血 清 型 は 1 種 で あ る ,い わ ゆ る O 抗 原 の S − R 変 異 に 伴 い Ⅰ 相( ス
ム−ス:S型)とⅡ相(ラフ:R型)に区別される.
試験方法
生 化 学 的 試 験 に よ り 赤 痢 菌 と 同 定 さ れ た 菌 株 を 普 通 ブ イ ヨ ン に 接 種 し ,35
∼ 37℃ ・ 18∼ 24 時 間 で 好 気 培 養 後 , 普 通 寒 天 平 板 培 地 に 画 線 塗 抹 し 同 様 に
好気培養し純培養菌であることを確認する.その平板から5∼6集落を掻き
取 り , 0.5mL 生 理 食 塩 水 に 均 一 に 浮 遊 さ せ 抗 原 液 と す る .
①スライド凝集法
ガラス鉛筆でスライドグラスあるいは窓用透明ガラスを区分けし,区画毎
に 各 多 価 血 清 及 び 生 理 食 塩 水 ( 30μ L ) 滴 下 す る . そ れ に 抗 原 液 の 1 白 金 耳
( ま た は マ イ ク ロ ピ ペ ッ ト で 5∼ 10μ L ) を お き , よ く 混 和 す る . ス ラ イ ド
グラスあるいは窓ガラスを前後に傾斜させながら凝集の有無を観察する.
②因子血清
多価血清で陽性と判定された場合は,その多価血清を構成する因子血清を
用いて同様に試験する.
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③結果の判定
凝集の観察は,透過光下で行う.最初に,凝集抗原が生理食塩水との反応
で凝集していないことことを確認する.各血清との反応では,1分間以内の
強い凝集が観察されたものだけを陽性とする.
★:赤痢菌の中には生菌で型別不能な株がある.赤痢菌と同定された株が多
価 血 清 で 陰 性 の 場 合 は ,上 記 と 同 様 に 5 ∼ 6 集 落 を 掻 き 取 り ,3 m L の 生 理 食
塩 水 に 浮 遊 さ せ た 後 ,1 2 1 ℃ ・ 1 5 分 間 ,ま た は 1 0 0 ℃ ・ 6 0 分 間 加 熱 処 理 を す る .
加 熱 後 ,3000 回 転 10 分 間 遠 心 後 ,上 清 を 捨 て ,沈 渣 に 0.5mL の 生 理 食 塩 水
を加え均一に浮遊させ抗原液とする.その後の方法は,上記の通りとする.
複数の多価血清に陽性を示したり,複数の血清型に陽性を示した場合は,
純培養菌であることを確認した後,生化学性状を再確認した後,加熱抗原を
調整して再試験すること.また,多価血清のみで赤痢菌の推定を行わないこ
と.
8. 赤 痢 菌 及 び 腸 管 侵 入 性 大 腸 菌 病 原 因 子 遺 伝 子 の PCR に よ る 検 出
i p a H 遺 伝 子 は ,ゲ ノ ム あ る い は プ ラ ス ミ ド の い ず れ か に 存 在 す る と 言 わ れ
ており,ほとんどの赤痢菌株はこの遺伝子が陽性であるが,その機能はわか
っ て い な い .I n v E 遺 伝 子 は プ ラ ス ミ ド 上 に あ る 侵 入 性 遺 伝 子 で す の で ,脱 落
す る 場 合 が あ る . i p a H 遺 伝 子 陽 性 株 の う ち ,約 5 0 % が i n v E 遺 伝 子 陽 性 株 と
言われている.また,これらの遺伝子を検出しても,赤痢菌と大腸菌の区別
はつかないので,他の生化学的性状での判定が必要である.
PCR の た め の 検 体 DNA 液 調 整
① ブロスによるPCR
培 養 液 1 m L を 1.5 mL チ ュ ー ブ に 採 取 し , 5,000 rpm で 2 分 間 遠 心 後 ,
上清を捨て(感染性ある場合もあるので分離した液は滅菌すること,ピペッ
ト 等 で 培 養 液 を で き る だ け 取 り 去 る こ と ), 滅 菌 蒸 留 水 1 0 0 μ L を 加 え て ,
撹 拌 後 , 95℃ , 5 分 間 加 熱 後 , 13,000 rpm で 10 分 間 遠 心 し , 上 清 液 を 分 離
使用する.
②コロニーでのPCR
1 . 5 m L チ ュ ー ブ に 1 0 0 μ L 滅 菌 水 を 入 れ ,コ ロ ニ ー を 白 金 線 で 採 取 懸 濁 さ
せ,①の加熱からと同様に処理する.
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PCR の や り 方
Ta K a R a の E x Ta q と Ta K a R a 特 殊 細 菌 検 出 用 P r i m e r S e t ( 赤 痢 菌 お よ び 腸
管 侵 入 性 大 腸 菌 invE お よ び ipaH 遺 伝 子 検 出 用 )を 使 用 す る .
① PCR 試 薬
Ta K a R a E x Ta q ( R R 0 0 1 )
② Primer Set
Ta K a R a i n v E 遺 伝 子 検 出 用 P r i m e r S e t I N V- 1 / 2 ( S 0 1 6 )
Ta K a R a i p a H 遺 伝 子 検 出 用 P r i m e r S e t I PA - 1 / 2 ( S 0 1 7 )
③反応液組成
X 1 0 E x Ta q 添 付 B u f f e r
2 μL
添 付 dNTP Mixture (2.5 mM each)
2 μL
p r i m e r I N V- 1
0.2 μ L
p r i m e r I N V- 2
0.2 μ L
p r i m e r I PA - 1
0.2 μ L
p r i m e r I PA - 2
0.2 μ L
E x Ta q
0.1 μ L
14.1 μ L
滅菌蒸留水
Te m p l a t e D N A ( 検 体 D N A 液 * )
1 μL
* 上 記 ,検 体 D N A 液 調 整 ① ,② で 調 整 し た 検 体 D N A 液 を 使 用 .
④ PCR 条 件
熱変性
94℃
30 秒 間
アニーリング
55℃
30 秒 間
伸長
72℃
30 秒 間
以 上 を 35 cycles. そ の 後 , 72℃
7 分 間 伸 長 後 に 4℃ に 温 度 を 下 げ て
終了.
⑤結果判定
2 % ア ガ ロ ー ス に よ る 電 気 泳 動 の 結 果 , 目 的 の 遺 伝 子 I N V- 1 / 2 P r i m e r
S e t に よ っ て 2 9 3 b p の , I PA - 1 / 2 P r i m e r S e t に よ っ て 2 4 2 b p の 長 さ
の DNA バ ン ド が 出 現 し た も の を 陽 性 と す る . ipaH は 赤 痢 菌 及 び 腸 管
侵 入 性 大 腸 菌 の 存 在 を ,病 原 因 子 で は invE の 存 在 が 必 要 で あ る こ と か
ら,判定材料として考える.
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