...

本文(PDF:137K)

by user

on
Category: Documents
14

views

Report

Comments

Transcript

本文(PDF:137K)
平成16年度
政策評価書(総合評価)
担当部局:人事教育局人事第2課
実施時期:16年10月∼17年3月
制度等名:
自衛隊就職援護情報ネットワークシステムの活用
政策分野:
自衛隊を担う人材の確保、育成及び維持
内
容:
①
評価を行う目的
求人情報や求職情報などの雇用情報の活用を図る観点から、平成13年度に自衛隊就職援護情報ネットワークシステムを導
入したが、導入後2年以上経過したこともあり、雇用情報が陸・海・空の各自衛隊及び財団法人自衛隊援護協会相互において
有効に活用されているかについてその現状を検証・評価するものである。
②
政策等の目的
退職予定自衛官の再就職を円滑に実施するため、陸・海・空自衛隊及び財団法人自衛隊援護協会が保有する求人情報や求職
情報などの雇用情報を有効に活用できるよう共有化することにより、企業からの求人があっても求職者側の年齢や能力などと
合致しないために就職まで結びつかないといったいわゆる雇用のミスマッチの抑制並びに就職援護業務や無料職業紹介事業の
円滑化・効率化を図ることを目的としている。
③
政策の手段
陸・海・空自衛隊の雇用情報管理を目的とした就職援護システムと財団法人自衛隊援護協会の雇用情報システムとを連接す
ることにより、雇用情報の一元的な蓄積・管理を行うとともに、各自衛隊間の情報の融通・交換及び財団法人自衛隊援護協会
への雇用情報の取次等を可能とする自衛隊就職援護情報ネットワークシステムを導入している。
○
評価の内容
1.制度等の効果
(1) 自衛隊就職援護情報ネットワークシステムの導入の背景
防衛庁・自衛隊は、その任務の性格上、精強性を維持する必要があるため、自衛官の大半が、若年定年制で54歳から56歳
に、または、任期制※で20歳代に退職しているが、これらのうちの多くは退職後の生活基盤の確保などのため再就職を必要と
している。これらの退職予定自衛官に対して、満足のいく再就職ができるよう国としてできる限りの就職援護施策を講ずること
は、隊員の士気の高揚を図るとともに将来における優秀な隊員の確保に寄与することから、重要な人事施策の一つと位置付けて
いる(平成15年度は退職者約1万人のうち援護希望者は約7千人)。
ところで、厳しい雇用環境の中、退職予定自衛官の再就職を円滑に実施するためには、求人情報や求職情報などの雇用情報が
有効に活用されることが不可欠であるが、従来は、①自衛隊においては、雇用情報を電子情報として管理していたものの陸・海
・空各自衛隊内のみにしか利用されておらず相互に活用が図られていない状況にあったこと、また、②財団法人自衛隊援護協会
※※(以下「援護協会」という。)の有する雇用情報については電子情報による管理でないため限定的な活用にとどまる状況に
あったことから、こうした雇用情報を相互に融通・交換することにより雇用情報の有効活用を促進するためとして、陸・海・空
自衛隊及び援護協会の雇用情報システムをネットワークで連接する自衛隊就職援護情報ネットワークシステムの導入の必要性が
検討されたところである。
※
任期制:2年又は3年という期間を区切って任用する制度。
※※ 財団法人自衛隊援護協会: 退職予定自衛官の再就職のためには、適切な職業紹介が必須であるが、防衛庁は独自に
就職を斡旋できる職業紹介権を有していない。このため、援護協会が厚生労働大臣から
無料職業紹介事業の許可を得て、退職予定自衛官に対する職業紹介を行っている。
(2)
自衛隊就職援護情報ネットワークシステムの概要
自衛隊就職援護情報ネットワークシステム(以下「本ネットワークシステム」という。)は、①情報の共有化の観点から雇用
情報の有効活用を促進することにより、②雇用のミスマッチの抑制並びに③就職援護業務及び無料職業紹介事業の円滑化・効率
化を図ることを目的として、雇用情報管理を行っている陸・海・空自衛隊の就職援護システムを連接させ、かつ、新たに導入す
る援護協会の雇用情報システムと連接することで各システムで入力された雇用情報を一元的に蓄積・管理するとともに、自衛隊
間の情報の融通・交換と援護協会への雇用情報の取次等を行うことを可能としたものであり、平成13年12月から運用を開始
した。
(参考1)概念図
自衛隊就職援護情報ネットワークシステム
磁気媒体
自衛隊援護協会
雇用情報入出力
雇用情報共有化
装置
サーバ
ネットワーク
防衛庁中央OAネットワーク・システム
陸 上 自 衛 隊
援護情報ネットワーク
システム
海
上
自
衛
就職援護システム
隊
航
空
自
衛
就職援護システム
隊
(3) 本ネットワークシステム導入前と導入後の状況
【導入前】
○ 状況
ア 陸・海・空自衛隊における雇用情報は、電子情報として管理されてはいたが、各々の管理であるため、求人情報があったと
しても、それぞれの自衛隊に適任者がいない場合には有効活用されないまま期限を過ぎてしまうケースが多く見られたことか
ら、退職予定自衛官の再就職先の選択の幅を狭めているケースが見られた。
イ
援護協会における雇用情報は、電子情報による管理がなされていないため、駐屯地等や退職予定自衛官に対する求人情報の
提供は、電話やFAXなどにより行われていたが、情報提供に時間を要するとともに正確性に欠けることがあった。また、ペ
ーパー情報では、勤務地、業種、職種や勤務条件等の検索を行う場合、希望条件等の検索に多くの時間を要するため、退職予
定自衛官への的確・迅速な情報提供に支障が生じていた。
ウ
退職予定自衛官においては、限定的な求人情報による再就職先の選定を余儀なくされており、退職後の生活基盤の確保のた
め、希望しない職種等であったとしてもやむなく再就職先を決定しているケースが見られた。そのため、再就職したものの早
期に退職するなど、再就職後の定着率が安定してない状況が起きていた。
【導入後】
○ 効果
ア 本ネットワークシステム導入により、全国の駐屯地等において求人情報の検索や閲覧が可能となり、就職援護担当者及び退
職予定自衛官による雇用情報の共有化が可能となったことから、
① 退職予定自衛官においては、希望に応じた勤務地、業種、職種等の求人情報をネットワークシステムの画面上で就職援護
担当者と共に検索・確認することができ、再就職先の選択肢の拡大とともに、職種や給与条件等の雇用状況に関する理解を
深める事が可能となった。一方、就職援護担当者においても、求人情報の増加や他地域との情報の交換が可能となったこと
により、退職予定自衛官に対し希望職種、賃金等に係る傾向を示すことができ、かつ求職希望に応じた客観的・具体的な指
導が可能となった。その結果、退職予定自衛官と就職援護担当者との間の信頼関係が醸成された。
② 求人情報が電子化され、メール機能を活用したことによりデータの伝達が即時に行われ、援護担当者間における求人情報
の内容確認が迅速かつ容易となり、正確性も増した。同様に、求人情報の職種等の検索についても、電子化されたことに伴
い迅速かつ容易に行うことが可能となった。
このように、業務の円滑化が図れるとともに正確な情報交換ができるようになったことから、駐屯地等相互間及び援護担
当者間の連携強化による迅速な対応が可能となった。援護担当者は、繁雑な調整業務が軽減され効率化が図られたことに伴
い、退職予定自衛官との面談、企業訪問等に要する時間を大幅に確保することができるようになり、よりきめ細かな就職援
護活動を行うことが可能となった。
イ
雇用情報が共有化され各自衛隊が管理する求人情報を閲覧できることになったことにより、再就職先の選択肢が拡大した。
この結果、退職予定自衛官の希望する条件の再就職の可能性が増加し、職業選択の段階における、雇用のミスマッチの改善も
図られ、再就職後の早期の離職についても減少するものと見込まれるところである。
○
改善を要する事項
一方、本ネットワークシステムについては、次のような改善を要する事項がみられた。
ア 駐屯地等の援護担当者の中には、本ネットワークシステムに関する操作要領について理解していない者が散見され、そのた
め、雇用情報が十分に活用されない状況が一部に発生していた。また、援護協会においては、雇用情報の活用のためには、そ
の内容を常に最新の状態に更新し、職業紹介の経過・結果に関する情報まで遅滞することなくネットワークシステム上に提供
することが重要であるが、一部には、情報の更新が遅滞する例がみられた。
イ
本ネットワークシステムでは、ネットワークシステム内のデータを統計的に表示する機能が一部付加されていない。例えば、
共有して管理している情報について、退職自衛官の業種別、職種別、地域別等の採用数、年齢別、職種別等の初任給、役職等
の傾向を統計的に分析し表示する機能がない。このため、退職自衛官に対する具体的な指導を行うために有益な再就職の動向
を正確に把握することが困難となっている。
ウ
退職予定自衛官に対する雇用情報のより一層の有効活用を図り、かつ質的向上を図るためには、より多くの退職予定自衛官
が雇用情報を閲覧できる環境が必要であるが、本ネットワークシステムでは、援護担当者が操作する端末機は整備されている
ものの、退職予定自衛官が自由に雇用情報を閲覧できるような専用の端末機の整備がなされていない。
(参考2)本ネットワークシステムの登録実績(平成13∼15年度)
(単位:件)
年度
求人情報
求職情報
計
13
851
5,563
6,414
14
22,567
18,626
41,193
15
19,419
17,941
37,360
注:1 このデータは、各年度末の状況を示す。
2 「求人情報」欄には、援護協会が入手した求人情報を含む。
3 本ネットワークの導入は平成13年度12月からであり、データ登録は同月以降から実施した。
(参考3)平成15年度求人情報の内訳
(単位:件)
区分
陸自
海自
空自
計
求人情報
6,206
6,128
7,085
19,419
注: 陸・海・空自のデータの中には、援護協会が入手した求人情報740件が含まれる。
(4)
本ネットワークシステム導入の効果等に対する評価
本ネットワークシステムの導入に伴い、雇用情報の有効活用の促進の観点から次第に効果をあげていると言える。具体的には、
雇用情報が共有化され、求職者である退職予定自衛官の希望する職種等の求人情報が増加したことにより選択肢が拡大し、より
求職者の希望に適合した企業等への再就職が可能となることにより、雇用のミスマッチの抑制に資するものと見込まれる。さら
に、各自衛隊及び援護協会においても、相互の連携の強化とともに就職援護業務及び無料職業紹介事業の円滑化・効率化が図ら
れてきていると評価できる。
しかしながら、本ネットワークシステムを十分に活用するためには、援護担当者に対する普及教育について徹底を図ることが
重要であり、また、本ネットワークシステムの更なる充実を図るため、退職予定自衛官が再就職先を決定する際、参考となる統
計資料の提供が可能となる統計機能の充実や退職予定自衛官が自由に雇用情報を閲覧できる環境を確保することも考えられると
ころである。
2.方策等の検討
(1) 援護担当者に対する教育の徹底
本ネットワークシステムに関し、駐屯地等の援護担当者の中には、本ネットワークシステムに関する操作要領について理解し
ていない者がいたこと、また、援護協会においては、一部に情報の更新が遅滞した例があったことから、①援護担当者教育等の
集合訓練を活用し基本的教育をさらに充実させる、②操作要領に関しOJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)教育を導入す
る、など徹底した教育を実施し再発防止に努める必要がある。
(2)
ネットワークシステムの機能付加
本ネットワークシステムに雇用情報の有効活用の促進に関して次のような機能を付加できれば、一層充実したシステムになる
ものと考えられる。
ア
統計機能の充実
本ネットワークシステムに関し、退職自衛官の採用数(業種別、職種別、地域別等 )、初任給(年齢別、職種別等)、役職
等の傾向を統計的に分析し表示する機能が付加されていない。退職予定自衛官が再就職先を決定する際、参考となる統計資料
の提供が望まれていることから、換装時期に合わせて本ネットワークシステム内のデータを統計処理し、表示する機能を充実
させる必要がある。
イ
求職者情報の活用
本ネットワークシステム上において、特定の分野の求職者や有為な資格や技能等を有する求職者の情報が一覧性のある形で
表示されれば、各自衛隊及び援護協会の援護担当者にとって、求人と求職の適合を迅速に行うことが可能となり、より迅速な
再就職先の決定が可能となる。
ウ
求職者専用の求人情報閲覧端末機の整備
各駐屯地等の端末は、各々1台のみの整備となっており、また、操作上もセキュリティ確保のためパスワードが設定されて
いるため、援護担当者のみが操作可能となっている。従って、退職予定自衛官自身がタッチパネル等により簡単な操作で求人
情報の閲覧が可能な端末機を整備するとともに、閲覧できるスペースの確保などの環境が整備されれば、一層の活用促進が図
られると考えられる。
3.今後の対応
各自衛隊及び援護協会が管理している雇用情報を一層有効に活用するため、防衛庁・自衛隊として、今まで以上に、雇用情報の
共有化、雇用のミスマッチの抑制、本ネットワークシステムの効率的な運用を目指すことを目標とし、「改善を要する事項」とし
て掲げた援護担当者に対する普及教育の更なる充実、本ネットワークシステムにおける統計機能の充実及び退職予定自衛官用の端
末機の整備などについて、今後とも実効ある措置を講ずるため検討を進めてまいりたい。
4.その他
(1) 学識経験を有する者等の知見の活用
【学識経験者の現職及び氏名】
・ 中央職業能力開発協会 常務理事 吉村
憲治
【意見聴取を行った日時】
・ 平成17年 2月 9日(水)13:30∼15:30
【知見の概要】
・ 平成13年度に導入された「自衛隊就職援護情報ネットワークシステム」は、失業なき退職予定自衛官の再就職を円滑に進
めるため、陸・海・空自衛隊及び援護協会が保有する雇用情報の共有化が可能となったことにより、いわゆる雇用のミスマッ
チが抑制され、求人データの即時化に伴い就職援護業務の合理化・効率化が図られており、有効活用の効果は上がってきてい
ることから、所期の目的は達成できているものと思われる。
・
(2)
しかしながら、本ネットワークシステムは、援護協会と防衛庁間のデータの交換をセキュリティの観点からMO媒体で実施
しており、雇用情報の入力から提供まで4日間も期間を要している。そこで、雇用情報は生き物であるため、速やかに情報を
提供するべきとの観点から、オンラインで連接し即日処理できるようにする方が望ましい。そして、退職予定自衛官に雇用情
報を提供するためには、共有化した雇用情報が常に最新な状態であることが重要であることから、例えば、期限を過ぎた雇用
情報の処理を速やかに実施し、最新の雇用情報(データ)を提供できるようにするなど、信頼性を確保したネットワークシス
テムであることが望まれる。今後も、本ネットワークシステムの使用頻度がさらに増すと予想されることから、援護担当者に
は、本ネットワークシステムを熟知するため積極的に自己研鑽を促し、合わせてキャリア・カウンセラーとしての資質を養わ
せ退職予定自衛官に対する指導能力を向上させることが望まれる。
また、将来的には、退職予定自衛官が自ら求人情報の検索ができる自己検索機を整備することで、雇用環境を自ら確認する
ことが可能となり、ひいては、退職予定自衛官が再就職に対する意識を高揚させる一助としても活用できるものにすべきと考
える。
このようなことから、本ネットワークシステムは、退職予定自衛官が再就職を円滑に実施できるようにするための重要な手
段として、就職援護業務の一翼を担っていかなければならないことから、更新等の時期に合わせ今後も十分な検討を重ね、さ
らなる改善を図り、有意義なネットワークシステムとして維持していくことが望まれる。
参考資料
参考1:就職援護業務の流れ
参考2:自衛隊就職援護情報ネットワークシステム導入前・後の情報の流れ
参考3:過去3年間の就職援護状況
参考4:自衛隊就職援護情報ネットワークシステムの概要
参考5:就職援護情報の内容
Fly UP