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MS-2629 - Analog Devices

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MS-2629 - Analog Devices
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技術記事
MS-2629
.
高速コンバータ:
その概要と原理、利用法
タ信号についても同様です。これらの問題を理解することは、部
品の選択に限らず、全体的なシステム・アーキテクチャの選択に
おいても大変重要です。
高速の追求(より高速に)
数多くの技術領域において、技術の進歩は、より高い速度に関連
付けられるようになっています。イーサネットからワイヤレス
LAN、セルラー通信に至るまでのデータ通信では、主たる技術目
標はより高速にビットを移動させることです。この目標のため、
マイクロプロセッサ、デジタル・シグナル・プロセッサ、FPGA
は、クロック・レートの向上により大きな進歩を遂げています。
デバイス性能は、主に微細化が進むプロセス・リソグラフィーに
よって実現されたもので、高速スイッチングが可能な(より低消
費電力の)小型トランジスタを実現しています。これらの動きは、
処理能力やデータ帯域幅が指数関数的に増大する環境を作り出
しました。この技術を用いた強力なデジタル・エンジンによって、
処理する信号やデータの量も指数級数的に増大する結果となっ
ています。その対象は静止画像からビデオ、広帯域スペクトルに
までおよび、媒体が有線か無線かは問いません。100 MHz で動作
するプロセッサは、帯域幅 1 MHz から 10 MHz の信号を効果的に
処理することができます。さらに、数 GHz のクロック・レート
で動作するプロセッサは、帯域幅数百 MHz の信号を扱うことが
できます。
著者:David Robertson, vice president of
Analog Technology, Analog Devices, Inc.
「現実の世界」のアナログ領域と 1 と 0 で構成されるデジタル世
界の間のゲートウェイであるデータ・コンバータは、今日の信号
処理の不可欠な要素です。過去 30 年にわたり、データ変換のさ
まざまな革新は、医療用撮像技術からセルラー通信、民生用オー
ディオ&ビデオに至るまで、あらゆるものの性能とアーキテク
チャの進歩を実現しただけでなく、まったく新しいアプリケー
ションを生み出すことにも役立ってきました。
広帯域通信および高性能画像処理アプリケーションは拡大の一
途をたどっており、このため高速データ変換、すなわち帯域幅 10
MHz から 1 GHz 以上の信号を扱うことができるコンバータの重
要性も増大しています。これらの高い速度を実現するためにさま
ざまなコンバータ・アーキテクチャが使われており、それぞれに
特別な利点があります。アナログ領域とデジタル領域間の高速の
やりとりは、信号品質に関する特別な課題をもたらすことにもな
ります。それは、アナログ信号だけではなく、クロック信号やデー
図 1.
アナログ・デバイセズ社は、提供する情報が正確で信頼できるものであることを期していますが、その情報の利用に関して、あるいは利用に
よって生じる第三者の特許やその他の権利の侵害に関して一切の責任を負いません。また、アナログ・デバイセズ社の特許または特許の権利
の使用を明示的または暗示的に許諾するものでもありません。仕様は、予告なく変更される場合があります。本紙記載の商標および登録商標
は、それぞれの所有者の財産です。※日本語版資料は REVISION が古い場合があります。最新の内容については、英語版をご参照ください。
©2015 Analog Devices, Inc. All rights reserved.
本
社/〒105-6891 東京都港区海岸 1-16-1 ニューピア竹芝サウスタワービル
電話 03(5402)8200
大阪営業所/〒532-0003 大阪府大阪市淀川区宮原 3-5-36 新大阪トラストタワー
電話 06(6350)6868
MS-2629
技術記事
より高い処理能力と速度が、より高速のデータ変換という要求に
向かうのは自然なことです。広帯域信号処理技術はその帯域幅を
拡大し(多くの場合は、物理的条件やレギュレータによって設定
されるスペクトル限界まで)、画像システムはより高解像度の画
像をより高速で処理するために、1 秒あたりに扱うピクセル数が
増加する方向に向かっています。各種のシステムでは、この極め
て高い処理能力の利点を生かすために、並列処理を行うなどアー
キテクチャの再構築が行われています。処理を並列化するという
ことは、マルチチャンネル・データ・コンバータが必要になるこ
とを意味します。
アーキテクチャに関するもうひとつの重要な変化は、マルチキャ
リア/マルチチャンネル、あるいはさらに高度なソフトウェア・
ディファインド・システム(ソフトウェア設定で動作を定義でき
るシステム)へ向けた動きです。従来のアナログ集約型システム
では、シグナル・コンディショニング作業(フィルタリング、増
幅、周波数変換)の大部分をアナログ領域で行っていました。信
号は慎重に処理されてからデジタル領域に送られます。その一例
が FM 無線です。無線局は、88 MHz から 108 MHz までの無線帯
域のどこかに位置する 200 kHz 幅のチャンネルを使用します。
従来の受信機は、この局の周波数を 10.7 MHz の中間周波数(IF)
に変換して、ほかのチャンネル成分をすべてフィルタで除去し、
復調に最適な振幅まで信号を増幅します。マルチキャリア・アー
キテクチャでは、20 MHz FM 帯のすべてをデジタル化します。さ
らにデジタル処理を使用して対象無線局を選択し、受信します。
マルチキャリア方式は非常に高度な回路を必要としますが、シス
テム上の大きな利点もいくつかあります。このシステムは、側波
帯局を含む複数局の放送を同時に受信できます。適切に設計すれ
図 2.
ば、マルチキャリア・システムは、ソフトウェアで構成を変更し
て新しい標準(たとえば、これまで無線側波帯を使用していた新
しい HD 無線局)に対応することも可能です。この方式を究極ま
で拡張したものが、すべての帯域を取り込むことができる広帯域
デジタイザと、あらゆるタイプの信号を再生することができる強
力なプロセッサを使用する形態です。これはソフトウェア無線
(SDR)と呼ばれます。ほかの分野においても同様のアーキテク
チャ、すなわちソフトウェア計測器やソフトウェア・カメラなど
があります。これは、信号処理の仮想化と考えることができます。
この種の柔軟なアーキテクチャの実現を可能にするハードウェ
アが、強力な信号処理能力を持つ強力な高性能のデータ・コン
バータです。
帯域幅とダイナミック・レンジ
アナログかデジタルかを問わず、信号処理の基本的な次元は帯
域幅とダイナミック・レンジです。これら 2 つの要素は、ある
システムが実際にどれだけの情報を扱うことができるかを決定
します。通信においては、シャノン(Claude Shannon)の定理
が、これら 2 つの次元を使用して、ある通信チャンネル上でど
れだけの情報を運ぶことができるかについて基本的な理論上の
限界を示すことができますが、この原理はさまざまなシステム
形態に適用されています。画像システムでは、帯域幅は所定の
時間内に処理できるピクセル数を決定し、ダイナミック・レン
ジは、許容最低限の光源とピクセル飽和ポイント間の輝度や色
の範囲を決定します。
データ・コンバータの使用可能帯域幅には、ナイキスト・サンプ
リングの定理によって設定される基本的な理論上の限界があり
ます。
マルチキャリアの例
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技術記事
すなわち、帯域幅 F の信号を表したり扱ったりするには、少なく
とも 2× F のサンプリング・レートで動作するデータ・コンバー
タが必要です(この法則は、アナログとデジタルの別を問わず、
サンプリングを行うあらゆるデータ・システムに当てはまりま
す)。実際のシステムでは、ある程度のオーバーサンプリングを
行うことでシステム設計を大幅に簡素化できます。一般的なのは、
帯域幅の 2.5 倍から 3 倍の速度です。すでに述べたように、処理
能力の絶え間ない向上によってシステムはより広い帯域幅を扱
うことができるようになり、携帯電話、ケーブル・システム、有
線および無線 LAN、画像処理、計測などにおけるシステムは、よ
り広帯域のシステムへと向かう傾向にあります。このような帯域
幅の拡大は、より高いサンプリング・レートのデータ・コンバー
タを必要とします。
帯域幅については直感的に理解できると思いますが、ダイナ
ミック・レンジに関しては少し分かりにくいかもしれません。
信号処理におけるダイナミック・レンジは、飽和やクリッピン
グ無しでシステムが扱うことのできる最大の信号から、システ
ムが有効に捉えることができる最小の信号までの広がりを表し
ます。ダイナミック・レンジの拡大については、2 つのタイプ
を考えることができます。浮動小数点動作のダイナミック・レ
ンジは、低分解能 A/D コンバータ(ADC)の前段にプログラマ
ブル・ゲイン・アンプ(PGA)を付加することで実現できます
(例えば 8 ビット・コンバータの前に PGA による 4 ビット分が
あって、12 ビットの浮動小数点ダイナミック・レンジを構成す
ると考えてください)。ゲインが小さい場合は、この構成で、
コンバータの処理範囲を超えない範囲で大きな信号を取り込む
ことができます。信号が非常に小さい場合は、コンバータのノ
イズ・フロア以上に信号を増幅するために、PGA を高ゲインに
設定します。信号は、例として強力な無線局と微弱な無線局、
あるいは画像システムの明るいピクセルと暗いピクセルとみな
せます。この種の浮動小数点ダイナミック・レンジは、一度に
ひとつの信号だけを再生しようとする従来型のシグナル・プロ
セッシング・アーキテクチャにとっては、非常に効果的です。
瞬間的なダイナミック・レンジはさらに強力です。この構成のシ
ステムには、クリッピングなしに大信号を取り込むと同時に、14
ビット・コンバータが必要な小信号を再生できるだけの、十分な
ダイナミック・レンジがあります。この原則は、強力な無線局と
微弱な無線局、あるいは携帯電話呼び出し信号の受信や、1 つの
画像の非常に明るい部分と暗い部分の再生など、さまざまなアプ
リケーションに適用できます。システムがより高度なシグナル・
プロセッシング・アルゴリズムを求める方向へ動くにつれて、ダ
イナミック・レンジも拡大しなければならなくなっています。こ
れによって、システムはより多くの信号を扱うことができるよう
になります。信号強度が同じと仮定して、2 倍の信号を処理する
必要がある場合は 3 dB のダイナミック・レンジ拡大が必要です
(ほかのすべての値が同じと想定した場合)。さらに重要と思わ
れるのは、すでに述べたように、そのシステムが強い信号と弱い
信号の両方を同時に扱う必要がある場合、ダイナミック・レンジ
拡大の必要性が格段に大きくなるという点です。
ダイナミック・レンジ規定のさまざまな測定基準
デジタル・シグナル・プロセッシングにおけるダイナミック・レ
ンジの重要なパラメータは、信号を表す際のビット数、あるいは
ワード長です。32 ビット・プロセッサには 16 ビット・プロセッ
サよりも広いダイナミック・レンジがあります。大きい信号はク
リップされますが、これは非直線性が強い操作であり、ほとんど
の場合は信号品質が低下します。逆に小さい信号(振幅で 1 LSB
未満)は検出できなくなり、その情報は失われてしまいます。こ
の有限分解能は量子化誤差、あるいは量子化ノイズと呼ばれるこ
とが多く、検出可能フロアを知るために重要な要素となります。
量子化ノイズはミックスドシグナル・システムでも重要な要素で
すが、データ・コンバータで使用できるダイナミック・レンジを
決定する要素はほかにもいくつかあり、それぞれに固有の仕様が
あります。
•
•
•
図 3.
信号処理の基本的な次元
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S/N 比(SNR)-コンバータのフルスケールと帯域内の
合計ノイズとの比。このノイズは、量子化ノイズ(上述)、
熱ノイズ(現実のすべてのシステムに存在)、またはそ
の他の誤差項によるものです。
静的非直線性-これは微分非直線性(DNL)と積分非直
線性(INL)からなり、データ・コンバータの入力から
出力への DC 変換機能における非理想性を表します
(DNL は多くの場合、画像システムのダイナミック・レ
ンジを決定します)。
全高調波歪み(THD)-静的および動的非直線性は高調
波トーンを生成しますが、これはほかの信号をマスク
してしまいます。多くの場合、高調波歪みはオーディ
オ・システムなどのダイナミック・レンジを制限します。
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技術記事
スプリアス・フリー・ダイナミック・レンジ(SFDR)
-2 次高調波か 3 次高調波あるいはクロック・フィード
スルーか、また 60 Hz ハムであるかどうかを問わず、入
力信号と比較して最も大きいスペクトルと信号の差で
す。スペクトル・トーン(スペクトル・スプリアス)は
小さい信号をマスクしてしまうため、SFDR は数多くの
通信システムで使用可能なダイナミック・レンジの良
い基準となります。
これら以外にも注意すべき仕様があります。実際、それぞれのア
プリケーションにはダイナミック・レンジを効果的に表す固有の
方法があります。データ・コンバータの分解能はダイナミック・
レンジを表す良い目安となりますが、実際のダイナミック・レン
ジを表すために適切な仕様を選ぶことは非常に重要です。重要な
原則は広いほど良いということです。信号処理により広い帯域幅
が必要であることは数多くのシステムで認識されているものの、
ダイナミック・レンジの影響はそれほど明確ではありません。し
かしこの条件はより厳しくなってきています。
帯域幅とダイナミック・レンジは信号処理における 2 つの基本的
次元ですが、3 つめの次元である効率について考えることも有益
図 4.
です。これは、
「追加的な性能はどの程度のコストがかかるのか」
という疑問について考える助けとなります。コストといえば購入
価格を考えがちですが、データ・コンバータや信号処理に関する
コストを評価する純粋に技術的な一つの方法は、消費電力に着目
することです。広い帯域幅とダイナミック・レンジを備えた、よ
り高性能のシステムは、より多くの電力を消費する傾向にありま
すが、技術の進歩とともに、帯域幅およびダイナミック・レンジ
の拡大と、消費電力の削減に目が向けられるようになっています。
主なアプリケーション
上に述べたように、それぞれのアプリケーションには信号の各種
基本的な面に関してさまざまな要求があり、ある特定のアプリ
ケーション内にも幅広い性能基準が存在します。例として、1 メ
ガピクセルのカメラと 10 メガピクセルのカメラを考えてみま
しょう。各種のアプリケーションで通常必要とされる帯域幅とダ
イナミック・レンジの代表例を図 4 に示します。この図の上半分
が「高速」と呼ばれることが多いもので、コンバータは 10 MHz
以上の帯域幅を効果的に扱うことのできるサンプリング・レート
25 MHz 以上が使われます。
各種代表的アプリケーションの帯域幅(速度)とダイナミック・レンジ(ビット分解能)に関する条件
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技術記事
この図は固定的なものではない、という点に留意してください。
既存のアプリケーションには、新しい高性能技術の利点を利用し
て、その能力を強化できます。たとえば高精細ビデオカメラや高
分解能の 3D 超音波画像装置です。毎年出現するまったく新しい
アプリケーションもあります。また、新しい動きの多くが性能向
上の最前線に位置しています。これらは高速と高分解能の新たな
組み合わせによって実現され、池に生じた波紋のようにコンバー
タ性能の限界を広げていきます。
•
先進的なアーキテクチャ(これは旧世代のデータ・コン
バータでの話ではありません)-半導体プロセスの進
歩を補完しながら、過去 20 年間に高速データ・コンバー
タ・アーキテクチャに関していくつかの革新の波があ
り、より広い帯域幅とダイナミック・レンジ、そして優
れた電力効率の実現に寄与してきました。従来から高
速 A/D コンバータに使われているアプローチには、フ
ラッシュ、畳み込み、インターリーブ、パイプラインな
どの方式を含むさまざまな種類がありますが、これら
は現在でも広く使われています。これに加え、高速で使
用するために創造的な変更が加えられてきた逐次比較
レジスタ(SAR)やシグマデルタを含め、従来は低速ア
プリケーションに関係付けられることが多かったアー
キテクチャも登場しています。これらのアーキテク
チャにはそれぞれ固有の長所と短所があり、一部のア
プリケーションでは、これらのトレードオフをもとに、
好ましいアーキテクチャを探す傾向にあります。高速
DAC に関しては電流スイッチ・モード構造のアーキテ
クチャが選択される傾向にありますが、これには数多
くの派生型があります。また、スイッチド・キャパシタ
を使用する方法は常にその速度を向上させており、い
くつかの組込み高速アプリケーションでは依然として
高い人気を保っています。
•
デジタル・アシストによる向上 - プロセスとアーキテ
クチャに加えて、ここ何年かの間に高速データ変換の
ための回路手法においても、多くの革新が実現されて
きました。キャリブレーション方法に関しても数十年
の歴史があります。これは集積回路固有の素子不整合
の補正において極めて重要な存在になっており、回路
のダイナミック・レンジを拡大することを可能にしま
す。キャリブレーションは静的誤差の補正だけでなく、
それ以上の領域に達しており、設定誤差や高調波歪み
を含め、動的な非直線性の補償にまで使われることが
多くなっています。
また、大部分のアプリケーションで消費電力が課題となる点に留
意することも重要です。ポータブル/バッテリ駆動アプリケー
ションでは消費電力が主な技術的制約となりますが、商用電源を
使用するシステムにおいても、所定の物理的領域でどれだけの成
果を上げられるかを最終的に制限するのは、信号処理要素(アナ
ログとデジタルの区別なく)の消費電力です。
技術の傾向と革新-その実現方法
このように各種のアプリケーションがデータ・コンバータの性能
向上を牽引しているという現実のなかで、コンバータ業界は技術
の絶え間ない進歩によってこれに応えてきました。先進的な高速
データ・コンバータを実現する技術的進歩の要因は、複数ありま
す。
•
プロセス技術:ムーアの法則とデータ・コンバータ -
半導体業界は拡大を続けるデジタル処理能力のために
目覚ましい成果を上げてきましたが、これを大きく前
進させたのが、微細化が進むリソグラフィー技術によ
るウェハ加工の進歩です。ディープ・サブミクロン
CMOS ト ラ ン ジ ス タ の ス イ ッ チ ン グ 速 度 は 従 来 の
CMOS の速度よりはるかに高く、コントローラ、デジタ
ル・プロセッサ、FPGA を数 GHz の速度で動作させる
ことを可能にしました。データ・コンバータのような
ミックスドシグナル回路もこれらリソグラフィーの進
歩の利点を生かし、ムーアの法則を利用してさらなる
高速化に向かうことができますが、ミックスドシグナ
ル回路においてはペナルティもあります。より先進的
なリソグラフィー・プロセスは、ますます低い電源電圧
で動作する傾向にあります。これは、アナログ回路にお
ける信号スイングが小さくなることを意味し、アナロ
グ信号を熱ノイズ・フロアよりも大きくしておくこと
がますます困難になります。つまり、速度が向上する一
方でダイナミック・レンジが犠牲になるということで
す。
以上のことをもとに、これらの領域における革新は、高速データ
変換における最先端の技術を大幅に発展させてきました。
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技術記事
実装方法
タや位相ノイズがコンバータの使用可能なダイナミッ
ク・レンジを制限することがあります。一般的なデジタ
ル信号の品質のクロックはこの種のシステムには不十
分で、通常は高性能な専用クロックが必要になります。
広帯域ミックスドシグナル・システムを実現する作業は、適切な
データ・コンバータを選ぶことだけで終わりではありません。こ
れらのシステムは、シグナル・チェーンのほかの部分に厳しい要
求を課すことがあります。この場合も、課題は広い帯域幅で良好
なダイナミック・レンジを実現すること、すなわち、デジタル領
域との間でより多くの信号をやり取りし、高い処理能力の利点を
生かすことです。
•
•
•
広帯域シグナル・コンディショニング - 従来のシング
ル・キャリア・システムにおける信号処理とは、おおむ
ね、できるだけ速やかに不要信号を除去して、必要な信
号を増幅することを挿します。多くの場合、これには選
択的なフィルタリングと、対象信号に合わせてチュー
ニングされた狭帯域システムが必要です。これらのよ
く調整された回路は必要なゲインの実現には非常に効
果的であり、場合によっては周波数プランニング手法
を使用して、高調波やその他のスプリアスを帯域外に
することができます。ところが広帯域システムではこ
れらの狭帯域手法を使用することはできず、こうした
システムで広帯域増幅を実現するには非常な困難が伴
います。
図 5.
データ・インターフェース - 従来型の CMOS デジタ
ル・インターフェースでは 100 MHz をはるかに超える
データ・レートに対応できませんが、低電圧差動スイン
グ(LVDS)データ・インターフェースは 800 MHz から
1 GHz まで動作します。これより高いデータ・レートで
はマルチバス・インタフェースに切り替えるか、
SERDES インターフェースに変更することができます。
現代のデータ・コンバータは 12.5 GSPS の SERDES イ
ンターフェースを使用しており(JESD204B 規格の仕様
による)、コンバータ・インタフェース内の異なる分解
能と速度の組み合わせに対応するために、複数のデー
タ・レーンを使用することができます。また、これらの
インターフェースでは、それ自体に極めて高度な機能
を持たせることができます。
クロック・インターフェース - 高速信号の処理では、
システム内で使用するクロックの要求が極めて厳しく
なることがあります。時間領域のジッタ/誤差は、図 5
に示すように信号のノイズや誤差となって現れます。
100 MHz 以上で信号を処理する場合は、クロック・ジッ
- 6/6 -
クロック誤差と信号誤差の関係
結論
広帯域信号とソフトウェア・ディファインド・システムへと向か
う傾向は加速しており、業界は、より高性能で高速のコンバータ
を作り出し、帯域幅、ダイナミック・レンジ、電力効率を新たな
レベルに押し上げるための革新的な方法の実現に取り組み続け
ています。
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