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水平換気システムを有する高層オフィスビルの換気性能の

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水平換気システムを有する高層オフィスビルの換気性能の
立命館大学大学院
理工学研究科 2013 年度 修士論文梗概
水平換気システムを有する高層オフィスビルの換気性能の検証
環境都市専攻 建築都市デザインコース 6143120029-4 水島 大輝
(指導教員 近本智行)
1.はじめに
近年、省エネ・低炭素化社会の実現と節電時における
BCP の観点から、これまで換気方式を機械換気が主流と
なっていた高層オフィスビルにおける自然換気システム
の導入が着目されている。研究対象となる高層オフィス
ビルでは、季節や気候、室内環境などの条件に応じて自
然換気と空調制御を自在に組み合わせることができ、冷
房負荷の低減を図る設計がなされている。しかし、実際
の換気性能や自然換気に伴う影響などは明らかになって
おらず、条件に応じて自然換気を最大限に有効利用する
ためのシステムの確立には至っていないのが現状である。
風の流れ
屋外
開閉切替えダンパ
室内
図1 建物外観(左)と自然換気口の断面図(右上)内観(右下)
自然換気システムを最適運用する仕組みづくりには、
自然換気時の執務室環境と居住者への影響の把握などが
必要であり、本プロジェクトではそれらのデータベース
の確立を最終的な目的としている。その第一段階として、
本研究では現地実測を行い、自然換気時の流入風量や流
量係数など自然換気システムの性能検証と、室内温度分
自然換気
完全空調
布など自然換気時に形成される温熱環境の把握を行った。
2.研究対象の概要
2-1 対象建物
対象建物は、大阪都心部に位置する地下 3 階・地上 38
階建(高さ 175m 程度)の複合施設であり、自然換気を行う
オフィス階は 10~37 階を占めている。対象建物の外観写
HV(ハイブリッド空調)
第3種換気
真および自然換気口の断面図・内観写真を図1に示す。
図2 各空調方式の概念図
2-2 空調制御システム
表1 実測における各空調ケースとその設定
図2に各空調方式の概念図を示す。対象建物では、「自
然換気」「完全空調」制御に加えて、自然換気と空調方式
自然換気の開閉 空調機の運転 機械排気(強制)量
自然換気
全面開放
OFF
2800 ㎥/h
を同時に行うことで室温を一定に保つ「ハイブリッド空
完全空調
全閉
24℃ 設定
14000 ㎥/h
調(以下、HV)」
、機械による強制排気によって室内を負圧
HV
全面開放
24℃ 設定
11200 ㎥/h
第3種換気
全面開放
OFF
25200 ㎥/h
にすることで自然換気を促す「第3種換気」といった空
また、図3に 31F 平面図・測定箇所を示す。自然換気
調方式が用いられている。各空調制御は、入居テナント
口は各方向 12 個ずつ計 48 個設置されており、端部とそ
による自然換気の可否判断と、外気温・風速など外部条
れ以外の中央部では開口面積・流量係数が異なっている。
件によって自動的に切り替えられる。
本測定では、トレーサーガス法文 1)による濃度測定、室
3.春季実測による換気性能の把握と室内環境調査
内水平温度分布、上下温度分布、換気口差圧測定を行っ
3-1 実測の概要
た。実測の流れを図4に示す。ステップダウン法を行う
測定は 2013 年 4 月 17 日~2013 年 4 月 23 日にかけて
ために、実測開始前に換気を全く行わない状態でトレー
31F オフィスフロア(テナント未入居)で行った。実測中は
サーガスを発生させ、濃度を室内で一様に上昇させた。
照明による熱負荷に加えて、ホットカーペット(500W×50
台)を用いて、人体による熱負荷を模擬した状態で行った。 また、室温は 24℃になるように調整した。濃度と温度の
実測における各空調制御ケースの制御方法を表1に示す。 上昇の確認した後、各空調制御による換気を開始した。
Performance of High Rise Office Building with System of Natural Ventilation
MIZUSHIMA Taiki
3-2 トレーサーガス法による局所換気回数の分布
トレーサーガスステップダウン法を用いて新鮮外気分
配性状の検討を行った。トレーサーガスには CO2 を用い
ており、室内 24 点文 2)の CO2 濃度減衰データから局所換
気回数を算出することができる。各測定点の CO2 濃度減
衰による局所換気回数 n は、以下の式から算出した。
N
10m
測定対象階 地上31階 (約 150m)
基準階面積
約 2700㎡
天井高
2.8m
自然換気口 :0.24㎡ :0.48㎡
5m
𝑙𝑛
t :経過時間
Pt :t 時の局所 CO2 濃度
Pt0:初期の局所 CO2 濃度
Po :外気の CO2 濃度
n :換気回数
(P𝑡 − 𝑃0 )
= −𝑛𝑡
(𝑃𝑡0 − 𝑃0 )
[h]
[%]
[%]
[%]
[回/h]
測定点
CO2濃度・温度測定点(FL+1100mm)
上下温度分布(FL+0~2800mm)
図5に「自然換気」「HV」「第3種換気」時における代
表日 A・B・C(順当)の局所換気回数分布を示す。各空調
制御の代表日は、平均風速が 3.8・3.3・3.4 m/s と同程度と
なる日を選んだ。また、室平均換気回数は全局所換気回
数の平均値とした。換気口の流入流出を表す矢印の方向
は平均差圧の正負から判断し、流入出風量の大きさを表
す矢印の大小は、平均差圧の絶対値から判断した。
代表日 A では、風上にあたる西側の局所換気回数が高
く、多くの新鮮外気が流入していることがわかる。また、
同じ風下側でも流出風量(矢印)の大きい北側・南側の測
定点では、3.0 回/h 以上の局所換気回数が記録されていた
のに対し、風上の正反対にあたる東側では、流出風量が
小さく局所換気回数も比較的低くなっていた。これは、
ビルの中心にコア部があることで、西面から流入した新
鮮外気が東側に到達する前に、北面・南面の換気口から
排気してしまうことが原因であると考えられる。
代表日 B(「HV」)の結果においても、代表日 A の結果
と同様の結果となり、風上に位置する北東側と正反対方
向の南西側とで局所換気回数に大きな差が見られた。
6
5
4
3
2
1
0
10
20
30
40
50
60
経過時間 【min】
4.1
4.0
3.5
3.2
3.0
2.8
6.2
2.7
N
4.4
3.9
4.9
3.5
E
3.2
3.0
2.5
2.7
5.7
3.4
図5
2.0
CO2濃度 【ppm】
外気
CO2 散布
3.6
30
40
50
60
3.7
3.2
4.6
5.2
4.4
70
2.5
80
60%
40%
20%
0%
4.2
2.8
空調方式:第3種換気
N
E
6
5
4
3
2
1
0
0
S
4.8
5.7
3.5
2.4
3.3
30
40
50
60
4.1
5.0
5.6
70
4.4
4.9
測定日
4月23日
測定時間
12:50~14:10
平均風速
3.2 m/s
室平均換気回数
4.3 回/h
主風向
西
N
2.4
各空調制御におけるトレーサーガス法による局所換気回数
2.7
2.8
2.6
3.6
2.4
7.8
6.9
2.2
20
4.9
5.3
4.2
10
経過時間 【min】
3.7
3.8
3.8
3.1
経過時間 【t】
実測の流れの概要
6.0
N
減衰過程
濃度の撹拌
代表日 C
5.6
測定日
4月20日
測定時間
15:45~17:05
平均風速
3.3 m/s
室平均換気回数
3.4 回/h
主風向
北東
2.4
400ppm
図4
20
実測
1500ppm 程度
経過時間 【min】
3.4
2.6
10
換気開始
定常判定
W
4.4
3.2
実測準備
6
5
4
3
2
1
0
0
S
3.9
5.6
6.5
70
60%
40%
20%
0%
測定階(31F)の平面図と測定箇所
換気なし
空調方式:HV
N
3.3
測定日
4月17日
測定時間
9:55~11:05
平均風速
3.8 m/s
室平均換気回数
3.9 回/h
室平均換気回数
西
4.7
3.1
W
0
S
3.9
平均風速
図3
屋外風速 【m/s】
E
屋外風速 【m/s】
W
60%
40%
20%
0%
代表日 B
空調方式:自然換気
N
屋外風速 【m/s】
代表日 A
換気口差圧測定
4.4
6.4
3.3
2.5
80
実測前後の局所温度変化 【℃】
代表日 C(「第3種換気」)では、実測中の風向が西側に
0秒
集中しているのに対し、建物の東面の自然換気口からも
実験箇所
若干の流入が見られた。これは、機械排気によって室内
が負圧になることで、元々、流出の少ない東面換気口の
5 秒後
4月20日
実測日
差圧が流入側に移行したからであると思われる。
18:27~18:32
測定時間
また、どの代表日においても共通して、流入側では外
第3種換気
空調制御
北北東
主風向
皮から 5m 地点の測定点より、外皮から 10m 地点の測定
平均風速
3.1 m/s
室内外温度差
10.1 ℃
点のほうが、局所換気回数は高くなった。これは自然換
図6 流入外気の可視化実験
気口(h:FL+2500mm)から流入した外気は、すぐに居住域
室内外温度差
1.9 ℃
8.9 ℃
8.8 ℃
2.7 ℃
11.2 ℃
(h:FL+1100mm)に到達するわけではなく、やや距離を置
1.8 回/h
1.5 回/h
1.7 回/h
1.8 回/h
1.9 回/h
1.8 回/h
平均換気回数
いて居住域に達することが要因の一つだと考えられる。
2.0
このことは、煙発生器による流入外気の可視化実験にお
1.2
室平均温度変化
1.0
0.7
いても確認された。(図6参照)
0.3
0.2
0.0
-0.2
3-3 各空調制御における局所温度変化の水平分布
-0.8
-0.5
-1.0
-1.0
CO2 濃度測定と同時に、室内 24 か所の測定点において
-1.1
-1.2
-2.0
温度も測定し、各空調制御下において形成される室内の
-2.1
-2.6
-3.0
水平温度分布の把握を行った。図7に 24 か所の測定点に
①
②
③
④
⑤
-4.0
おける実測後の局所温度変化を示す。図中の縦棒は、各
4/17
4/20
4/22
4/17
4/22
4/21
13:00~14:10 12:55~14:15 15:20~16:40 9:55~11:05
9:35~10:55 10:10~11:30
-5.0
測定点の中で実測後の温度変化の最高値・最低値を示し
HV
AC
空調方式
自然換気
HV(ハイブリッド空調)
完全空調
ており、縦棒が長くなるほど水平温度分布の差が大きい
図7 各測定点における実測後の局所温度変化
ことを意味している。図中の横棒は、全 24 か所の測定点
における温度変化量の平均値である室平均温度変化を示
開始時
終了時
[mm]
高さ[mm]
3000
3000
3000
3000
3000
している。また、代表日①~⑤は「完全空調」制御時の
[mm]
[mm]
自然換気
自然換気
2500
2500
2500
2500
2500
室平均換気回数が 1.8 回/h と同程度の室平均換気回数を記
2000
2000
2000
2000
2000
1500
1500
1500
1500
1500
録した日を選定した。
1000
1000
1000
1000
1000
室内外温度差が小さい代表日①(「自然換気」)では、
500
500
500
500
500
屋外風速 2.0m/s
屋外風速 5.0m/s
[℃]
[℃]
[℃]
[℃]
00
00
温度変化量の最高値と最小値をそれぞれ示した測定点間
0
17.0
19.0
21.0
23.0
27.0
17.0
19.0
21.0
23.0
25.0
27.0
17.0
19.0
21.0
23.0
25.0
17.0
19.0
21.0
23.0
25.0
27.0
17.0
19.0
21.0
23.0
25.0
27.0
3000
3000
で 2.2(+1.2~-1.0)℃の差が見られた。一方で、代表日④
[mm]
[mm]
完全空調
HV
2500
2500
2500
(「HV」)では、代表日①と似た条件であるにも関わらず、
2000
2000
1500
1500
1500
各測定点間の温度変化量差が最大で 1.0(-0.2~-1.2)℃
1000
1000
と比較的小さいことがわかる。室内と外気との温度差が
500
500
[℃]
屋外風速 2.5m/s
[℃]
[℃]
[℃]
0
0
大きかった代表日②・③と⑤を比較しても、同様に「自
19.0
21.0
23.0
25.0
27.0
17.0
19.0
21.0
23.0
25.0
27.0
17.0
17.0
19.0
21.0
23.0
25.0
27.0
然換気」に比べて「HV」制御のほうが、水平方向で温度
図8 風上側における上下温度分布
分布が形成されにくい傾向が確認された。
4.流入風量算出のための追加実測
以上より、
「HV」制御では、自然換気のデメリットの一
4-1
p-Q 特性の作成
つである流入外気による水平温度分布の形成を、温度分
春季実測結果だけでは、各換気口の流入風量を算出す
布を形成されにくい空調制御と組み合わせることによっ
ることができなかったため、流路の差圧と通過流量の関
て緩和することができる文3)ことを確認した。
係を表す p-Q 特性の作成を目的とした追加実測を行った。
3-4 自然換気による上下温度分布の形成
実測期間は 2013 年 11 月 9 日~2013 年 11 月 25 日とし、
上 下 温 度 分 布 の 測 定 点 高 さ は 、 FL+0 ・ 100 ・ 600 ・
測定対象とする自然換気口は、春季実測で差圧を計測し
1100・1600・2100・2600・2800mm(天井)の 8 点とした。
た 31F の換気口とした。(図3参照)また、流入風量は、
図8に風上側における上下温度分布を示す。流入した
流入風の平均風速に換気口面積を乗じることで算出した。
外気の影響によって、温度低下が生じる測定点があり、
図9に自然換気口の風速測定点を示す。中央部・端部
特に高さ FL+1600・2100mm の測定点が顕著に外気の影響
を受けていると思われる。また、外部風速が強くなると、 換気口それぞれ 48 か所の風速測定文4)を行い、平均風速を
より上下温度分布の差が大きくなることが確認された。
算出した。なお、p-Q 特性の作成には流入時の風速のみを
同様の結果が、
「HV」制御時においても見られた。
用いており、流入流出の判断は差圧の正負から行った。
自然換気口の風速測定点
Y : 風量 【CMH】
5000
4000
3000
2000
1000
0
0.0
2.0
中央部
4.0
6.0
8.0
10.0
10000
9000
8000
7000
6000
5000
4000
3000
2000
1000
0
0.0
12.0
2.0
端部
X : 差圧の平方根 【√Pa 】
= 555. 3
4.0
6.0
=
𝑅 = 0. 0
8.0
10.0
12.0
X : 差圧の平方根 【 √
Pa 】
𝑅 = 0.
図 10 各自然換気口のp-Q 特性
自然換気
第3種換気
HV
自然換気
8.0
8.0
6.0
4.0
3.0
2.0
1.0
8.0
0.0
Y : 室平均換気回数 【回/h】
0.0
7.0
トレーサーガス
7.0
6.0
Y : 室平均換気回数 【回/h】
8.0
7.0
6.0自然換気
5.0
2.0
4.0
4.0
X : 外部風速 【m/s】 1.0
HV
第3種換気
6.0 自然換気
5.0
4.0
3.0
2.0
1.0
0.0
8.0 0.0
= 0. 5
第3種換気
= 0.
4.0
HV
3.0
2.0
0.
HV
5.0
第3種換気
HV
= 0.
7.0
自然換気
6.0
5.0
8.0
Y : 室平均換気回数 【回/h】
7.0
5
.
3
= 0.
第3種換気
= 0. 5
3.
=
6.0
自然換気
2.0
= 0.
第3種換気
HV
0.
= 0.4.0
Y : 室平均換気回数 【回/h】
Y : 室平均換気回数 【回/h】
X : 外部風速 【m/s】
7.0
5.0
3.0
0.0
HV
自然換気
第3種換気
6.0
4.0
2.0
4.0 .5
6.0
2.0
8.0 0.0
= 0.553
= 0.5
3.0
5.0
X
:
外部風速
【m/s】
1.0
7.0
2.0
4.0
1.0
第3種換気
0.0
6.0自然換気
3.0HV
0.0
2.0
4.0 = 0. 3
8.0 0.0
3.6.0
0 5
=
5.0
0.0
2.0
4.0
2.0 6.0
X : 外部風速 【m/s】
X : 外部風速
【m/s】
4.0
p-Q特性7.0
1.0
6.0
3.0
0.0
図 11 各空調制御の室平均換気回数と外部風速との相関
5.0
2.0
0.0
2.0
4.0
Y : 室平均換気回数 【回/h】
計算結果より、換気口の流量係数はそれぞれ𝛼 中央部=0.50 、
𝛼端部=0.53 であった。
4-2
流入風量の算出と比較
追加実測によって得られた p-Q 特性を用いて、春季実
測の差圧測定結果から、各換気口の通過風量を算出した。
差圧測定を行っていない換気口の通過風量は、隣接して
いる差圧測定箇所の内挿により算出した。
図 11 に各空調制御におけるトレーサーガス法および pQ 特性による全測定の室平均換気回数と外部風速との相
関図を示す。トレーサーガス法と p-Q 特性による算出結
果を比較すると、ほぼ全ての実測日において、p-Q 特性結
果のほうが室平均換気回数は大きくなった。これは、p-Q
特性結果では自然換気口から流入した風量を全て測定す
るのに対し、トレーサーガス法は居住域のみの局所測定
であるためだと思われる。また、p-Q 特性結果のほうが回
帰線の傾きが大きく、決定係数 R2 も高いことがわかる。
同様に、各空調制御時の機械による強制排気量(自然換
気:0.3、HV:1.2、第3種換気:3.2 回/h 程度の換気回数、
表1参照)を回帰線の切片が概ね示すことから判断しても、
p-Q 特性結果のほうが回帰線の信頼性が高いと思われる。
各空調制御の回帰線の傾きを比べると、「自然換気」が
最も大きく、外部風速の上昇に対して換気回数も増加し
やすいことがわかる。一方で、機械による強制換気量が
多い空調制御ほど室平均換気回数は外部風速に影響され
にくい傾向にある。なお、自然換気時に「完全空調」時
の換気回数である 1.8 回/h 以上を満たすためには、外部風
速が 2.0m/s 以上を一つの目安とすることができる。
図9
6000
Y : 風量 【CMH】
2
∆𝑝
𝜌
[m3/h]
[-]
[kg/ m3]
[Pa]
風速測定点
端部換気口(総開口面積:0.48 m2)
Y : 室平均換気回数 【回/h】
𝑄 = 𝛼𝐴
Q :通過風量
α :流量係数
ρ :流体の密度
⊿p:差圧
中央部換気口(総開口面積:0.24 m2)
Y : 室平均換気回数 【回/h】
図 10 に中央部・端部の自然換気口における差圧の平方
根と通過風量の相関関係を示す。どちらの換気口におい
ても回帰式の決定係数が高い値を示しており、p-Q 特性は
図中の回帰式で表すことができると判断できる。また、
端部と中央部の回帰式を比べると、開口面積に比例して
端部換気口の流入風量が、中央部換気口の流入風量の約 2
倍になることが、それぞれの傾きからうかがえる。
得られた p-Q 特性から、自然開口における圧力差に対
する通過風量の算出式を用いて、流路の通過効率を表す
流量係数𝛼をそれぞれ算出した。
5.まとめ
4.0
1.0
X : 外部風速 【m/s】
3.0
0.0
本研究では、対象建物における自然換気性能の検証を
0.0
2.0
4.0
6.0
2.0
目的とした実測を行い、各空調制御における換気効率の
X : 外部風速 【m/s】
1.0
分布性状および形成された温熱環境の把握を行った。
0.0
0.0
2.0
4.0
6.0
今後は、この研究結果を踏まえたうえでの運用システ
X : 外部風速 【m/s】
ムを構築するとともに、居住テナントが自然換気を積極
的に利用しやすくなるように、空調利用実態の把握とオ
フィス環境・居住者の快適性の調査を行っていく。
【参考文献】
1)空気調和・衛生工学会 SHASE-S 115-2010:室内換気効率の現場測定法・同解説,2010
2)空気調和・衛生工学会 SHASE-S 116:トレーサーガスを用いた端質の換気量測定法,2011
3)近本、村上、加藤ら ほか:冷房時のオフィス空間における自然換気併用ハイブリッド空調方式に関する研究(その1~17)、日本建築
学会大会学術講演梗概集,D-2,pp.597-598 ほか
4)安永、白石ら:空調試運転時を対象とした実測・数値シミュレーションによる自然換気量評価(第一報)、日本建築学会環境系論文
集,vol.77,No.678,2012・8
5)田辺、髙山、山中、甲谷、和田ら:コーナーボイドを有する高層オフィスビルの自然換気性能に関する研究(その3~5)、空気調和・衛
生工学会 (北海道) 論文集,2013 年 9 月
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