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インドネシア・北スマラン環状有料道路整備計画に係る調査

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インドネシア・北スマラン環状有料道路整備計画に係る調査
平成 18 年度
地球環境・プラント活性化事業等調査
「インドネシア・北スマラン環状有料道路整備計画調
査」
(インドネシア)
報告書要約
平成 19 年 3 月
株式会社パシフィックコンサルタンツインターナショナル
三井住友建設株式会社
要 約 編
1. プロジェクトの背景
1.1
背景
北スマラン環状有料道路はジャワ海沿いのスマラン市北部地域を横断する形で計画され
ており、スマラン市を含む地域全体にとって非常に重要な役割を担う2つの国際および都
市間ターミナルへのアクセス改善を目的にしている。これら2つのターミナルはアフマッ
ド・ヤニ国際空港と、タンジュン・ウマス国際港であり、これらは地域経済にとって非常
に重要な位置を占めている。北スマラン環状有料道路を整備することにより物流および人
の移動を活性化させることが期待されている。当初の計画では空港と港湾の脇を通る全長
12km になっている。
また、北スマラン環状有料道路を整備することにより、スマラン市の通過交通にバイパ
スを提供し、中心部の交通環境を改善することが期待されている。バイパスを提供するこ
とによりスマラン市中心部の交通料全体を減尐させ、交通渋滞を緩和することに貢献する
と考えられている。
北スマラン環状有料道路は既存の高速道路と連結し、環状道路を完成させる計画である。
既存の高速道路は丘陵地域であるスマラン市南部地域を囲む形で建設され、南環状道路を
形成している。開通済み区間の総延長は約 20km である。
図 S-1
北スマラン環状有料道路(NSTRR)位置図
この調査は日本貿易振興機構(ジェトロ)の資金を活用し、スマラン市を含む地域経済
の発展に貢献するスマラン環状有料道路のうち、北スマラン環状有料道路を整備する有用
性・妥当性を検討する調査である。
1.2
これまでの経緯
スマラン環状有料道路はインドネシア共和国・公共事業省により 1970 年代にスマラン市
を含む地域全体の経済の活性化を目的に計画された。公共事業省と Jasa Marga(ジャサマ
ルガ:当時はインドネシア国道路公団、現在は民営化済)は 1980 年代前半に南部区間から
開発を始めることを決定した。
最初に開通したのは B 区間である。B 区間は双方向4車線(片側2車線)道路として全
長 6km が整備され、環状道路から南方向へ延びる都市間高速道路が大部分を占める。スマ
ラン市から南方向にはジョグジャカルタやスラバヤと言うジャワ島中東部にとって重要な
都市がある。A 区間(西部区間)は 1987 年に供用が開始された双方向2車線(片側1車線)
道路で全長 8km ある。縦断勾配の急な区間では登坂車線が設置され、B 区間と Jl. Siliwangi
(北スマラン環状有料道路の起点)を結んでいる。C 区間は双方向4車線(片側2車線)
道路として 1998 年に全長 10.7km が開通した。B 区間と Jl. Kaligawe(北スマラン環状有料
道路の終点)を結ぶ区間である。これら開通済みの3区間はスマラン環状有料道路の過半
を占め、
北スマラン環状有料道路と一体となり環状有料道路を形成する計画になっている。
図 S-2
スマラン市周辺の既存有料道路ネットワーク
公共事業省と Jasa Marga は国内の高速道路ネットワーク整備計画を策定し、それにはス
マラン環状道路から延びる都市間高速道路も含まれている。一つ目は西に延びる路線(路
線①)あるが、これは Batang 方向へジャワ海沿岸を通る。この路線はインドネシア共和国
の首都であるジャカルタまで通じ、Merak というスマトラ島への主要フェーリターミナル
のある港町で終点になる。次に南方向への路線(路線②)であり、これはジョグジャカル
タやスラカルタ(ソロ)への路線である。この路線は Bawen という町で2方向に分かれ、
一方はジョグジャカルタへ、もう一方はスラカルタへ向かう。後者はそのままインドネシ
ア共和国第二の都市であるスラバヤまで通じる。以上の2路線はジャワ島を横断するトラ
ンスジャワ有料道路の2区間を形成している。インドネシア政府は民間投資家に PFI ス
キームでの有料道路開発を奨励しており、民間資金を活用した建設・運営を推し進めている。
最後の路線(路線③)は Demak への約 25km の短い区間である。この路線は暫定的にス
マランから北東方面の Demak までの 25km が計画されているが、将来的にはジャワ海沿岸
を抜けスラバヤまでのトランスジャワ有料道路の代替路線としての構想が発表されている。
北スマラン環状有料道路は既存の高速道路とスマラン環状有料道路を形成し、これらの
都市間有料道路3路線をつなぐ路線である。特に路線①と路線③を直接つなぎ、東西方向
の通過交通に有力なバイパス機能を提供する。その結果、通過交通は中心部を走ることは
ないため、中心部の交通量減尐し渋滞を軽減することが期待されている。
図 S-3
スマラン市周辺の道路ネットワーク
1.3
社会経済状況
インドネシアの経済はタイのバーツ暴落から生じた 1997 年のアジア経済危機により、
大
きく後退した。インドネシア経済は 1997 年前半までは順調に成長していた。アジア経済危
機は東南アジア全体を直撃し、特にタイ、韓国、インドネシアでは影響が深刻で IMF(国
際通貨基金)
に援助を仰ぐ結果となった。
インドネシアの通貨であるルピアは対ドルのレー
トで1年足らずの間に 2,500 ルピアから 17,000 ルピアまで暴落した。1998 年の実質経済成
長率は-13.1%、名目成長率-55.8%(US ドルベース)であり、インドネシアはドルベース
で過半の資産を失った結果となった。
その後インドネシア経済は徐々に回復し、1997 年のレベルを GDP が 2003 年に、国民一
人当たりの GDP が 2004 年に上回った。その後も力強く成長しており、2006 年の実質成長
率は 2005 年の成長率(5.6%)を上回ると予想されている。
経済成長率は順調に推移しているが、2005 年にはインフレ率が急激に上昇した。これは
主に 9 月に実施された石油製品の急激な値上げによるところが大きい。例えばプレミアム
ガソリンは 1 リットルあたり Rp 2,500 から Rp 4,500 に跳ね上がった。現地英字新聞のジャ
カルタポストによると 2006 年 1 月のインフレ率は対前年同月比で 17%を越えていたもの
が、11 月には 5.3%までに落ち着いている。11 月のインフレ率は 2004 年の年間インフレ率
よりも低いものになっている。
米ドルとの為替レートは 2006 年時点では Rp 9,000 前後である。その後も小幅な値動き
は見受けられるが、インドネシア経済の好調な成長に影響するほどの値動きは生じていな
い。2005 年9月の急激な石油製品値上げはインドネシア経済に差ほど大きな影響も及ぼさ
ず、かつ早急に復旧したと言っても過言ではない。
表 S-1
1997
インドネシア経済の経済指標 (1998~)
1999
2000
2001
2002
2003
2004
2005
95,446
140,001
165,021
164,145
203,819
243,293
245,526
281,276
-55.8
46.7
17.9
-0.5
24.2
19.4
0.9
14.6
516.0
745.8
806.9
772.7
928.1
1,099.7
1,176.0
1,283.2
-56.4
44.5
8.2
-4.2
20.1
18.5
6.9
9.1
4.7
-13.1
0.8
4.9
3.8
4.3
4.5
5.1
5.6
対 US$レート(Rp)
2,909
10,013
7,855
8,421
10,260
9,311
8,577
8,938
9,704
インフレ率 (%)
10.3
77.5
2.0
9.4
12.6
10.0
5.1
6.4
17.1
GDP*(mil US$)
1998
215,749
名目成長率(%)
GDP/capita*(US$)
1184.0
名目成長率(%)
GDP 実質成長率(%)
* 名目値
(出典: ジェトロ home page, http://www.ジェトロ.go.jp)
中部ジャワ州の経済もインドネシア経済の傾向を踏襲し、年率 5%程度の成長を続けて
いる。中部ジャワ州の地域内総生産(GRDP)はインドネシア全国の約 8%を占めており、
33 州1中4番目の規模である。しかしながら一人当たりの地域内総生産はインドネシア全
体のものの 55%にとどまっている。これは主に州内に大規模な石油・ガス関連産業がない
ことに起因すると思われる。
スマラン市もインドネシア経済の成長傾向を踏襲し、近年は年率約 5%の成長を達成し
ている。スマラン市は中部ジャワ州の州都であるばかりでなく、地域内総生産の 12%を超
える額を生み出す域内の中核都市でもある。一人当たりの地域内総生産はインドネシア全
体のものを 50%以上上回っており、地域の発展を牽引する役割をはたしており、今後も果
たし続けると予想されている。
地域の物流ハブターミナルはスマラン市北部に位置するアフマッド・ヤニ国際空港とタ
ンジュン・ウマス国際港である。アフマッド・ヤニ国際空港の利用人数と貨物量は共に 2000
年から 2004 年の間に3倍に増えた。
タンジュン・ウマス港からの輸出額も 2000 年から 2005
年の間に 50%以上増加した。この需要の増加に加え、地域経済の持続的発展をサポートす
るためにも、この2大ハブターミナルへのアクセスの改善は緊急に解決するべき課題であ
る。空港・港湾共にそれぞれの拡張計画事業が進んでおり、アフマッド・ヤニ空港は建設
が開始されている。
図 S-4 ではスマラン市の道路ネットワークの現状を示した。中心部から延びる放射状道
路は他都市へと延びる都市間道路が5路線、2大ハブターミナルへ延びる2路線がそれぞ
れ整備されている。
西へと延びる路線(路線①)はチレボンを経由し首都ジャカルタへと続く。北東方面の
路線(路線②)はジャワ海沿岸を進みスラバヤへとつながる。これら2路線は「北ジャワ
回廊」と呼ばれ、インドネシアの2大都市を結ぶ最も重要な幹線国道である。南への路線
(路線③)はスマランとジョグジャカルタを結ぶ主要な路線である。ジョグジャカルタは
ジャワ地方の古都であり、非常に有名な観光都市として日本にも知れ渡っている。この路
線はまたソロとして知られている有名な観光都市であるスラカルタにもつながる。スラカ
ルタは中部ジャワ州第2の都市であり、人口も 50 万人を上回る中核都市である。スラカル
タを経てこの路線はスラバヤまで延びている。その他の2路線(路線④、⑤)は州内の地
方都市とスマランを結ぶ地方幹線道路である。
1
ジャカルタ、ジョグジャカルタ、アチェの3特別州を含む。
図 S-4
スマラン市道路ネットワークの現状
供用中の高速道路はスマラン環状有料道路の南半分と都市間有料道路
(スラカルタ、
ジョ
グジャカルタおよびスラバヤ)の一部を形成している。環状道路区間は全長約 21km でス
マラン市中心部を囲むように建設されている。都市間有料道路区間は約 4km に過ぎず、環
状道路区間と都市間一般国道を結んでいるのみである。北スマラン環状有料道路はスマラ
ン市の環状道路ネットワークを完成させるために必須の区間である。
一般道の環状道路は北地域に一部のみ建設済みであり、現在も開発中である。中心部の
交通状況を改善するためには、環状有料道路のみでなく一般道の幹線環状道路があること
が望ましい。南側の環状道路も早急に事業計画を策定し実施を進めるべきである。
1.4
交通状況
図 S-5 に 2006 年 11 月に調査団が実施した交通調査の結果の一部を示す。
図 S-5
北スマラン環状有料道路計画路線付近の現況交通状況
調査対象路線の最も大きな交通流は西の放射状幹線道路の交通である。2輪車以外の4
輪車で一日当たり3万台以上の交通がある。これには南西から来る Boja という地方都市か
らの交通を加えていない。この交通の大部分は本調査の起点部で右折し高速道路に向かう
のではなく、北ジャワ回廊(Jl. Siliwangi)を進んで中心部へと直進している。調査結果を
分析した結果、起点から Kalibanteng 交差点までの区間は、全線双方向4車線(片側2車線)
(大部分は6車線、片側3車線で整備済み)の道路が整備されているにもかかわらず、一
日当たり3万台以上の交通があり、頻繁に渋滞が発生している。
建設済みのスマラン北環状道路(SNRR、一般環状道路)には西側の区間には一日当た
り2万台足らず、東側区間では約 14,000 台の4輪車の交通がある。この路線の特徴は非常
に重車両の割合が高いところである。西側区間はすでに双方向4車線(片側2車線)で整
備済みであるが、東側区間はまだ双方向2車線(片側1車線)である。東側車線には 23%
もの重車両交通が通り、おそらく過積載と思われるトラックによる徐行運転のため頻繁に
渋滞が発生している。西側区間での渋滞は事故や混雑時間帯での信号待ちなど限られた場
合にのみ発生し、おおよそ快適な交通環境が保たれている。
2大ハブターミナル(空港・港湾)は起終点として対象道路の交通を発生させている。
空港は一日当たり約 5,800 台、港湾は 7,300 台程度の往来が観測されている。
1.5
自然条件
調査対象地域にはジャワ海沿岸に広範囲にわたり軟弱地盤地帯が広がる。強固な支持基
盤は 60m 以深まで存在しない場所さえある。調査団はボーリング調査による土質調査を実
施し、起点から 2km 地点までは比較的良好な地盤対であることを確認したが、それ以降は
軟弱地盤対であることが判明した。地表面から 15~30m ほどは N 値が 0~3 の超軟弱地盤
であり、道路建設のためには対策を施さねばならない地盤である。また、港湾付近一帯で
は深刻な地盤沈下も確認されている。図 S-6 に調査対象地域の土質状況を示す。
EL.100m
A’
A’
Shore Line
EL.0m
EL. -75m
A’
A
Legend
完新世沖積層:主に軟弱な粘土・シルト
更新世洪積層:比較的軟弱な粘土・シルト・砂
Damar 層:砂岸、礫岩、火山岩
Kalibiuk 層:砂岸、礫岩、火山岩
A
図 S-6
土質状況
2. プロジェクトの必要性
2.1
調査目的
本調査は北スマラン環状有料道路を整備し、スマラン環状有料道路を完成させる事業の
実行可能性を調査する。スマラン環状有料道路は放射状の都市間有料道路3路線とつなが
り、トランスジャワ有料道路ネットワークの一部を形成する。
本事業の主な目的は以下のとおりである。
(1) スマラン地域の経済を刺激し発展させる。
(2) スマラン地域の道路ネットワークの整備を推し進める。
(3) スマラン市中心街の交通渋滞を緩和する。
(4) 北ジャワ幹線の交通を始め、スマラン市の通過交通にバイパスを提供する。
(5) ジャワ島、中部ジャワ州、スマラン市の高速道路整備を促進する。
(6) アフマッド・ヤニ空港、タンジュン・ウマス港へのアクセスを改善する。
(7) 物流および人の動きを活性化させる。
(8) 沿線の都市開発を喚起する。
2.2
需要
本調査では交通調査を実施し、交通需要を予測した。下の表とグラフは、現在の道路ネッ
トワークのまま本事業を実施しなかった場合の結果の抜粋である。
表 S-2
交通需要予測(without Project Case)
区間
路線
距離
2006
2014
2019
2024
W1-1
起点~Kalibanteng 交差点
2,050m
145,128
242,200
289,600
328,200
2,900m
34,027
71,400
81,800
93,100
3,110m
40,049
81,100
106,100
130,900
W1-2
W1-3
Kalibanteng 交差点~
空港アクセス IC
空港アクセス IC~
西タンジュン・ウマス IC
N2
タンジュン・ウマス港地区
2,240m
38,050
80,700
109,700
130,000
E3
西タンジュン・ウマス IC~終点
2,300m
27,947
50,200
69,200
109,200
800,000
600,000
E3
N2
W1-3
W1-2
W1-1
400,000
200,000
0
2006
2014
2019
2024
(出典: ジェトロ調査団)
起点から Kalibanteng 交差点まで(W1-1 区間)は、現在でも頻繁に渋滞が起こり、スマ
ラン市の道路ネットワークにとって重大なボトルネックになる。この区間は早急に整備さ
れることが望まれる。
次の Kalibanteng 交差点からエアポートアクセス IC までの区間(W1-2 区間)はスマラン
市西部地域とアフマッド・ヤニ国際空港、タンジュン・ウマス国際港とを結ぶ重要な区間
である。将来空港の拡張計画が進捗し、新規ターミナルが供用開始されると、現在は
Kalibanteng 交差点からアクセスしている交通のほとんどがこの路線を経由すると考えら
れる。数字以上に交通需要の伸びが期待されている区間である。
エアポートアクセス IC からタンジュン・ウマス西 IC までの区間(W1-3 区間)はアフ
マッド・ヤニ国際空港とタンジュン・ウマス国際港とを結ぶ地域産業にとって高い需要が
ある。スマラン市西部の郊外に建設された工業団地からタンジュン・ウマス港へのアクセ
スを強化することは地域産業にとって非常に重要である。
タンジュン・ウマスタンジュン・ウマス港前 FO の区間やタンジュン・ウマス東 IC から
終点までの区間は他の区間に比べてさほど高くない需要であるが、Demak へと続く北ジャ
ワ回廊沿いには工業団地もあり、潜在的な需要は非常に多いと考える。また、終点から
Demak への北ジャワ回廊では、現在世界銀行の融資を活用した道路拡幅工事が行われてお
り、
工事による渋滞が頻発している。
この工事渋滞を迂回する車両も確認済みであるため、
本来この区間を利用する交通は調査結果以上に存在する可能性が高い。
この2区間の整備は W1 区間に比べて緊急度が低いが、地域経済全体のことを考慮する
と、非常に重要な区間であることには変わりない。スマラン市郊外に位置する工業団地か
ら発生する産業関連の車両の交通状況を改善することは物流および人の動きを活性化させ、
地域経済の発展につながる。
2.3
プロジェクトの必要性
スマラン市とその周辺地域の経済は年率5%で発展を続け、また今後も引き続きその傾
向が続くと予測されている。その予測通り経済が発展を続けると、市中心部および郊外の
交通量は急激に増加すると考えられる。それに比例して中心部を通過する交通量も増加す
る。現況のスマラン市道路ネットワークはその交通量の増加に対処するだけの容量を持ち
合わせていない。したがって、交通料の増加に対処可能な容量を出来るだけ確保し、経済
を持続的に発展させるためにも通過交通のためのバイパス機能を強化する環状有料道路が
完全に整備されることが望まれている。
バイパスおよび環状有料道路はともに、交通の障害となるボトルネック交差点などを迂
回することを可能にし、移動時間の振れ幅を小さくする。これに伴い、物流および人の移
動時間の確実性が増し、産業活動を活発化させる。
また北スマラン環状有料道路は整備後、沿道の新規開発も誘発する。特にインターチェ
ンジ周辺ではその効果が著しい。これらの活動は地域経済が持続的に発展することへ尐な
からず寄与すると考えられている。
3. プロジェクトの基本方針
3.1
現状と問題点
調査対象地域の現状の主な問題点を以下に示す。
(1) 中心街での交通渋滞
スマラン市は中部ジャワ州の首都であり、その中心街は市・地域・州の中心を成してい
る。また、スマラン市および中部ジャワ州の官庁街のみならず、地域経済の中核を成す経
済の中心地としても発展を続けている。この中心街には郊外からの流入交通および郊外へ
の流出交通が非常に多く存在している。
一方、スマラン市中心街にはジャワ島内の主要幹線道路である北ジャワ幹線が東西を横
断している。そのためスマラン市の東西の通過交通は中心街を抜けて、全体の交通量を増
加させていた。このことが中心街の交通渋滞発生原因の一因であった。インドネシア政府
は世界銀行から融資を募り、SNRR(スマラン北環状道路)を整備し、これら通過交通の
ためのバイパスを整備中である。しかしながら、SNRR の整備が完了してもスマラン市中
心街の交通渋滞が引き続き発生することが予想されている。
そのため、
スマラン市道路ネッ
トワーク全体の機能を向上させ、交通を再配分することが強く求められている。
(2) 環状有料道路およびバイパスの未整備区間
スマラン環状有料道路の整備は完了しておらず、約 12km の未整備区間が残っている。
このプロジェクトは環状有料道路の整備を完了させることである。この環状有料道路は整
備完了後あらゆる通過交通にバイパスを提供し、中心街を通ることなくスマラン市を通過
させることを可能にする。
スマラン北環状道路(SNRR:約 10km)は東西方向の通過交通のバイパスであり、
Kalibanteng 交差点と Jl. Kligawe(供用中高速道路 C 区間の終点)を結んでいる。供用中の
高速道路も南回り約 21km のバイパス機能が備わっており、このプロジェクトの起点(Jl.
Siliwagni)と終点(Jl. Kligawe)をつないでいる。これらバイパス2路線は同じ点が終点と
なっているが、起点は異なっている。東西通過交通の大部分は SNRR が一般国道でかつ有
料道路よりも距離が短いことなどにより、SNRR を利用する傾向にある。Jl. Siliwangi は
Kalibanteng 交差点を通り、中心街へと続くスマラン市道路ネットワークでも非常に重要な
道路である。プロジェクトの起点から Kalibanteng 交差点までの区間では交通料が多く、頻
繁に渋滞が発生している。SNRR が中心街のバイパスとして機能してもこの区間の渋滞は
解消されず、道路状況も改善されないまま今なお増加する交通に対処する必要がある。こ
の区間はスマラン市道路ネットワーク内で最も深刻なボトルネックの一つである。
(3) アフマッド・ヤニ国際空港、タンジュン・ウマス国際港へのアクセス道路上のボトル
ネック
スマラン市の地域経済はここ数年年率およそ5%の効率で成長を続けており、この傾向
は今後も続くと予想されている。それに伴い、アフマッド・ヤニ国際空港の旅客数・貨物
取扱量、タンジュン・ウマス項の貨物取扱量が飛躍的に伸びている。しかしながら、両ター
ミナルまでのアクセス道路には依然としてボトルネックが存在し、スマラン市東西の郊外
地区に位置する工業団地からの物流への障害が発生している。これらのボトルネックを解
消し、特に物流ネットワークの改善が求められている。
(4) 軟弱地盤と地盤沈下
ジャワ海沿岸地帯は世界でも有数の軟弱地盤地帯が広がっている。この厚い粘土層は非
常に軟弱で圧密による沈下が進行しやすい。スマラン市のジャワ海沿岸地帯も例外ではな
く、この軟弱地盤地帯が広がっている。特にタンジュン・ウマス港周辺の地帯には厚く非
常に軟弱な地層が存在する。この層は深さ 20m 超にわたり0~3の N 値しかないことが
今回実施した土質調査によっても証明された。
この沿岸地帯は標高の低い海岸線よりの地域であり、飲料水などの真水の確保が地下水
の海水の流入により容易ではない。河川や運河の水は汚染されており、地域住民や事業社
は塩分の尐ない真水を獲得するために、地中深い井戸を利用する必要がある。しかしなが
ら、ほとんどの地域住民は費用面の問題もあり 30m 以下の浅い井戸を利用しているが、タ
ンジュン・ウマス港やインドネシアパワー2の発電所などは真水の品質と量を確保するため
に深井戸を利用している。中部ジャワ州の政府関係者へのインタビューによると、地下
150m 付近に豊富な地下水を含む厚い滞水層がある。地下水の汲み上げにより広範囲にわ
たって深刻な地盤沈下を招いている。地域住民は高潮による洪水に悩まされており、すで
に何件かの破棄された家屋が存在する。
この地盤沈下により、構造物と土工部の段差が発生している。本調査ではこの問題につ
いて調査し、対処法について調査する。
3.2
問題解決に向けた方針
(1) 中心街での交通渋滞
この問題はスマラン市全体、特にその中心街の道路ネットワーク全体の機能改善により
解決を図らなければならない。北スマラン環状有料道路は環状有料道路を完成させ、あら
2
インドネシア国営電力会社(PT.PLN)から独立したジャワ・バリ島地域の発電会社
ゆる通過交通へのバイパスを整備することにより、この問題解決は非常に重要な役割を
担っている。本調査において交通需要予測を実施し、交通量を配分した。
(2) 環状有料道路およびバイパスの未整備区間
環状有料道路整備の完成によって問題は解消される。この調査では環状有料道路の未整
備区間の整備を推し進める妥当性を探るが、環状有料道路の完成により現況のバイパス路
線の未整備区間問題も解消される。本調査では交通需要予測を実施することにより、環状
有料道路整備が現況のバイパス路線に与える影響も同時に分析を行った。
(3) アフマッド・ヤニ国際空港、タンジュン・ウマス国際港へのアクセス道路上のボトル
ネック
この問題は郊外のボトルネック部(Jl. Siliwangi および Jl. Kaligawe)とその交差点の交通
容量改善に北スマラン環状有料道路が直接的に寄与するため、整備後は一定の改善を図る
ことができると考えられる。特にスマランから延びる放射状の有料道路(都市間有料道路)
が整備され、郊外から有料道路ネットワークを利用して両ターミナルへのアクセスが可能
になれば、各高速道路区間の整備効果はそれぞれが相互に相乗効果を発揮し、大きな効果
が得られると期待される。
(4) 軟弱地盤と地盤沈下
調査地域の軟弱層は非常に容易に圧密および沈下が進行する。本調査では北スマラン環
状有料道路整備から発生する直接的な影響を分析した。盛土による圧密量を計算し、経済
性および施工性を主な判断基準に最適な対処法を選出した。地盤沈下のメカニズムと影響
は関連調査結果を分析することにより想定した。北スマラン環状有料道路整備による影響
や現実的に対処可能な対処法は調査結果に含んだが、地盤沈下の主な原因は地下水の過剰
揚水にあるため、本調査では地盤沈下をとめるために有効な施策を提案するにとどめるこ
とにする。
3.3
プロジェクト構想・重要規制
本プロジェクトはスマラン地域の高速道路ネットワークならびに全ての道路ネットワー
クの機能を向上させ、地域経済を活性化させることを目的にしている。したがって北スマ
ラン環状有料道路整備事業では、その線形や構造形式などの決定に際してこの2大目的に
沿うように計画を策定する。北スマラン環状有料道路は主に地域の交通状況を改善するこ
とにより、これら2つの目的を実現させることに貢献すると考えられている。
タンジュン・ウマス港前に延長約 1.1km のフライオーバ(立体交差高架橋)が整備済み
である。このフライオーバは設計速度 80km/h を満足する線形を有し、双方向4車線(片
側2車線)の幅員構成で、高い交通容量を兼ね備えている。交通需要予測の結果によって
はこのフライオーバを有料道路ネットワークの一部として活用することが可能である。さ
らに、この区間(N2)の北スマラン環状有料道路の建設は交通の渋滞度合い(飽和度)が
ある程度に達するまで、延期することも可能である。事業実施計画策定に当たり、交通需
要に基づいたフェーズ分けによる建設時期の調整も考慮する。
道路新規開発事業では常に土地買収と住民移転という大きな問題点がある。これらはし
ばしば事業費を増大させ、事業完了および供用開始を遅らせる。これらの問題点を極力抑
えるため、本調査では土地買収の面積と移転住民数を最小限に抑える計画を策定する。こ
の方針は北スマラン環状有料道路の線形決定にあたり、最も重要な方針である。
道路用官民境界線の幅(ROW: Right of Way)が十分にある場合、計画道路の構造は土工
(盛土を含む)部となる。この区間には本線の両脇に必要な車線数の側道を計画する。官
民境界線の幅が不十分な場合、高架橋構造を採用する。この区間では必要な側道を高架橋
の桁下に計画する。
北スマラン環状有料道路は最小でも双方向4車線(片側2車線)の幅員構成を有する計
画にする。計画道路の線形が現道沿いになる場合は、既存道路の交通条件を悪化させない
ことが、インドネシア国内法によって定められている。北スマラン環状有料道路が既存道
路の一部を活用する場合は、現道の交通条件を尐なくとも現況と同レベルにするために、
その施設の代替になる施設を本プロジェクトで建設する必要がある。
北スマラン環状有料道路の線形計画に当たり、特に縦断線形を計画する際にアフマッ
ド・ヤニ国際空港の空域制限を考慮する必要がある。滑走路の終端は既存のスマラン北環
状道路(SNRR:一般道路)から約 600m に位置する。北スマラン環状有料道路が SNRR
の線形に沿った計画になる際には、この空域制限を犯さない線形が必要である。さらに、
鉄道は有料道路と立体交差する必要がある。
3.4
調査項目
次の表は本調査で実施した調査項目である。
表 S-3
調査項目
項目
現場調査
現場踏査
交通需要予測
概略設計
内容
-
交通調査
-
測量調査
-
土質調査
-
環境調査
-
現場踏査
-
社会経済フレームワーク
-
交通需要予測
-
線形検討
-
道路設計
-
舗装設計
-
橋梁・構造物設計
-
軟弱地盤分析
-
インターチェンジ設計
-
付帯構造物設計
-
施工計画策定
-
工費・事業費見積
-
環境影響調査(EIA: Environmental Impact Assessment)
および土地買収および住民移転アクションプラン
初期環境影響調査(IEE: Initial
(LARAP: Land Acquisition and Resettlement Action
Environmental Evaluation)
経済・財務分析
事業実施計画
運営・維持管理計画策定
Plan)の業務仕様書作成
-
環境影響の概略評価
-
必要な場合、必要な対処法の計画
-
通行料金検討
-
PPP スキームの検討
-
資金調達スキームの検討
-
事業実施開始年度の検討
-
フェージングの検討
-
ITS 導入構想の策定
-
アセットマネジメント導入構想の策定
4. プロジェクトの事業概要
4.1
調査結果
(1) 交通
現況の交通流は以下にあげる傾向が認められる。
1)
西・南・東方向の放射状道路はそれぞれ一日当たり3万台の交通量がある。
2)
放射状道路の現況交通の多くは中心街から(へ)の流出(流入)交通である。
3)
通過交通はバイパスの利用が増加傾向にある。
4)
東西方向の通過交通はスマラン北環状道路(SNRR)を通る傾向がある。
5)
東側地域と南側地域との間の通過交通は供用済み有料道路の B 区間および C 区間を通
る傾向がある。
6)
南北方向の通過交通は供用済み有料道路の B 区間および C 区間を通る傾向がある。
7)
西側地域と南側地域との間の通過交通は供用済み有料道路の A 区間および B 区間を
通る傾向がある。
8)
中心街の内側および入口(出口)の主な交差点では頻繁に渋滞が発生する。
9)
Demak 市までの放射状道路(東方面)は世界銀行の融資により拡幅事業(SRIP: Strategic
Road Improvement Project)が実施されており、交通量および移動速度が工事の影響を
受けて、分析に影響する程度以上に低減されている可能性が高い。
10) タンジュン・ウマス港は交通の大きな発生源(起終点)となっている。
(2) 測量
調査対象地域の地形的な特徴を以下に示す。
1)
スマラン市周辺地域には 5 つの特徴的な地形が存在する。それらは海岸低地、沖積低
地、台地、丘陵地である。
2)
海岸低地はジャワ海沿岸の海抜 5m 以下の地帯に分布する。堆積物は主に粘土とシル
トである。
3)
沖積低地は海岸低地に沿って内陸側、かつ海抜 10m 以下の地帯に分布する。堆積物は
主に粘土とシルトである。
4)
台地は沖積低地と丘陵地にはさまれた形で沖積低地の内陸側に分布している。半固結
上の砂状やシルト状の堆積層から構成される段丘堆積物や崖錐堆積物から成る。
5)
丘陵地は地域の南部に分布する。主に第四世紀の固結した堆積層から成る。標高は総
じて台地よりも高くなっている。
(3) 土質・地質
調査対象地域の土質・地質の特徴を以下に示す。
1)
第四期の地層形成は未固結もしくは半固結堆積層から形成され、第 3 期の基層(堆積
岩および火山岩)の上に分布している。
2)
第四期の地層の暑さは 150m 以上あるところさえある。
3)
海岸低地の代表的な地質構成を表 S-4 に示す。
表 S-4
海岸低地の地質状況
深さ
特徴
N値
内容
0 – 30m
未固結(軟弱)
0-2
粘土、シルト
25 – 50m
未固結および半固結
0–5
粘土、シルト
5 - 30
細砂、砂
40 – 80m
未固結および固結
70 – 150m
未固結および固結
20 – 50
粘土、シルト
25 – 50
細砂、砂、礫
50 以上
細砂、砂
細砂、砂、礫
(出典: ジェトロ Study Team)
(4) 自然環境
調査対象地域の自然環境の特徴を以下に示す。
1)
スマランの気候条件は熱帯性モンスーン気候に属し、乾期(5月~10 月)
、雤期(11
月~4月)から成る。
2)
年間降水量は 2,000mm を越え、そのうちの 80%が雤季に降る。12 月から2月までの
最も降雤の多い3ヶ月間に年間の半分以上の降雤がある。
3)
気温は一年を通して穏やかで 21℃~33℃の間である。
4)
湿度は年間を通して高く、61%~89%の間である。
5)
スマランの低地には地下水が豊富に存在する。
6)
地下水の過剰揚水により深刻な地盤沈下が発生している地域がある。
7)
北スマラン環状有料道路はそれらの被害地域を通る。揚水活動の制限を強化して地盤
沈下を止めることが望まれる。
8)
発生の可能性の高い影響は以下の通り。
・ 大気汚染(建設時)
・ 大気汚染の改善(供用開始後)
・ 騒音および振動
・ 水質汚濁
(5) 社会環境
調査対象地域の社会環境の特徴を以下に示す。
1)
供用済みのスマラン北環状道路沿いには比較的広い幅で道路用地(ROW=60m)が確
保されており、土地買収・住民移転、PAP(プロジェクト・アフェクテッド・パーソ
ンズ)を最小限に抑えることが出来る。
2)
スマラン北環状道路沿いを始め、調査対象地域には、学校施設・宗教施設・医療施設
があり、本プロジェクト計画策定の際にはじゅうぶんに考慮する必要がある。
3)
環境影響評価(EIA)および土地買収および住民移転アクションプラン(LARAP)の
承認がプロジェクトの開始前に必要である。
4)
EIA を実施する際にパブリックコンサルテーションを通じてステークホルダー間の同
意を取り付ける必要がある。
5)
発生の可能性の高い影響は以下の通り。
・ 就労の機会創出およびビジネスチャンスの拡大
・ 交通安全の悪化
・ 水流の滞留
・ ごみ・廃棄物の増加
(6) 路線線形の検討
北スマラン環状有料道路の線形を計画するにあたり、代替案を4案設定した。このうち
代替案 I を最適ルートとして選出した。主な理由は土地収用および PAP(プロジェクト・
アフェクテッド・パーソン)を最小限に抑えることが出来るからである。同時にこの代替
案では他の案よりも建設費を抑え、自然環境への影響も尐なくすることが出来る。次の図
に代替案の位置を示し、比較表には代替案 I の選出理由を示す。
北スマラン環状有料道路整備計画調査(ジェトロ調査)最終報告書
要約 20 / 60
平面線形代替案位置図
図 S-7
要約編
代替案 I
Kalibanteng 交差点まで Jl. Siliwangi 沿
内容
いに進み、その後 SNRR(スマラン北
環状道路)沿いを進む。
平面線形代替案比較表
代替案 II
Kalibanteng 交差点まで Jl. Siliwangi 沿
いに進み、その後 Jl. Jend. Sudirman
および西放水路(Banjir Kanal Barat)沿
いを進む
との関連
いに進み、その後ジャワ海に向かって
小さな水路沿いに進む。その後東に
進行方向を変えて SNRR(スマラン北
代替案 IV
起点よりジャワ海に向かって北に進
む。アフマッド・ヤニ国際空港の北を
回って、西放水路を渡り、SNRR と合
流する。
Jl. Siliwangi は高架橋構造
鉄道との交差はフライオーバ
全区間高架橋
鉄道との交差はアンダーバス
鉄道部との交差はフライオーバ
2箇所の交差点でフライオーバ
放水路内にも高架橋建設
空港との新しいアクセス道路との交差
その他は土工部
その他は土工部
関連プロジェクト
Kalibanteng 交差点まで Jl. Siliwangi 沿
環状道路)に合流する。
Jl. Siliwangi は高架橋構造
構造
代替案 III
点はフライオーバ、その他は土工部
Kalibanteng・フライオーバとの整合の
Kalibanteng・フライオーバおよび西放
必要有
水路改善整備計画との整合の必要有
Kalibanteng・フライオーバおよびアフ
アフマッド・ヤニ国際空港拡張計画が
マッド・ヤニ国際空港拡張計画との整
ジャワ海岸線まで到達するので、路線
合の必要有
線形が海上を通ることになる。
北スマラン環状有料道路整備計画調査(ジェトロ調査)最終報告書
表 S-5
放水路の洪水流用の通水断面内に橋
自然環境
道路のない土地に新規道路を開発す
脚が建設され、洪水流を妨げる一因と
鉄道とのアンダーパスの排水用の設
る部分はない。
なる。
備も維持管理費も莫大になる。
路線全体が締め固められていない軟
弱地盤上になる。
建設時に水質汚濁の懸念がある。
土地買収は大規模、PAP は尐数
社会環境
土地買収と PAP が最も尐ない。
土地買収が大規模になる。
空港用地内の線形が長距離に渡り存
土地買収は大規模
PAP が非常に多くなる。
在するので、セキュリティの確保が困
PAP は尐数
建設費
中庸
非常に高い
高い
低い
工期
短期
短期
長期
非常に長い
評価
推奨案
-
-
-
要約編
要約 21 / 60
難
(7) 道路設計(設計基準、幅員構成など)
道路の設計基準は“Standard Specifications for Geometric Design of Urban Roads, (Ministry of
Public Works, 1992)”を用いる。これに「道路構造令(日本道路協会、2004 年)
」および“A Policy
on Geometric Design of Highways and Streets (AASHTO, 2004)”により補完する。設計速度は
80km/h に設定する。
タンジュン・ウマス港前のインドネシアパワー3火力発電所より北スマラン環状有料道路
路線線形沿いに高圧電線が設置されている。これらは道路計画および建設にとっては障害
であり、出来るだけ支障しない線形が望まれる。場合によっては高圧ケーブルおよびその
支柱を移設することが道路線形を動かすことよりも高額になる。高圧電線による支障を極
力避けた設計および計画にする。
(8) 舗装設計(設計基準、構造など)
舗装の設計基準は“Guide for Design of Pavement Structures (AASHTO, 1986)”である。これ
に「アスファルト舗装要綱(日本道路協会、1993 年)」により補完する。交通需要予測の
結果も舗装設計に用いる。下の図は土工部の舗装構成を示す。
図 S-8
表層 (アスファルト):
5cm
基層 (アスファルト):
6cm
上層路盤 (アスファルト):
10cm
下層路盤:
60cm
舗装構成(土工部)
(9) 橋梁設計(Jl. Siliwangi, Kalibanteng 交差点、鉄道フライオーバ)
橋梁の設計基準は“Bridge Design Code [draft] (Ministry of Public Works, 1992)”であり、これ
を「道路橋示方書(日本道路協会、2002 年)
」および“Standard Specifications for Highway
Bridges (AASHTO, 1996)”により補完する。
下の図では北スマラン環状有料道路で計画された主な構造物を示す。
3
インドネシア国営電力会社(PT.PLN)から独立したジャワ・バリ島地域の発電会社
北スマラン環状有料道路整備計画調査(ジェトロ調査)最終報告書
要約編
主要構造物位置図
要約 23 / 60
図 S-9
表 S-6
主要構造物一覧表
名称
No.
構造形式
備考
FO:鋼箱桁
R =300m
IC: PC-I 桁
ハーフダイアモンド
Siliwangi Viaduct
鋼パネル=Hビーム合成桁
径間長 30m
C
Kalibanteng FO
鋼箱桁
R = 600m
D
Railway FO
PC-I 桁
E
Anjasmoro FO
PC-I 桁
F
Airport Access FO & IC
G
Banjir Kanal Barat Bridge
PC-I 桁
構造形式と径間長は既存のフライ
H
Asin River Bridge
PC-I 桁
オーバと統一する。
I
West Tanjung Emas IC
土工
ハーフダイアモンド
J
Baru River Bridge
PC-I 桁
構造形式と径間長は既存のフライ
K
Tanjung Emas FO
PC-I 桁
オーバと統一する。
L
East Tanjung Emas IC
土工
ハーフダイアモンド
M
Banjir Kanal Timur Bridge
PC-I 桁
構造形式と径間長は既存のフライ
N
Tanggang River Bridge
PC-I 桁
オーバと統一する。
O
Kaligawe IC
土工
ハーフダイアモンド
A
Siliwangi FO & IC
B
FO: PC-I 桁
IC: 土工
構造形式と径間長は既存のフライ
オーバと統一する。
フルダイアモンド
上記構造物は主に渡河部分と立体交差の橋梁(FO)である。一般的な橋梁、高架につい
てはインドネシアで実績の豊富な PC 桁橋を適用工法として採用する。しかし当プロジェ
クト範囲では(1)Siliwangi FO & IC、(2)Siliwangi Viaduct、(3)Kalibanteng FO の 3 箇所が特に
延長規模も大きいため、各々の箇所で工事期間中の現道処理や周囲環境に配慮した橋梁計
画を行った。
1)
Siliwangi 交差点立体交差(Siliwagni FO)
南環状区間の終点と連結し、交角約 90 度(R300m)の曲線橋となるため、スパン長 60
m程度の連続鋼箱桁橋とした。大型トラッククレーンを使用した一括架設を用いることで
桁架設時間を大きく短縮することが出来る。また必要であれば、鋼合成床版を使用するこ
とで床版施工を省略化出来、架設工期を更に短縮することもできる。
図 S-10
2)
Siliwangi 交差点立体交差(Siliwangi FO)
起点側連続高架橋(Siliwangi Viaduct)
起点の Siliwangi FO から Kalibanteng 交差点までの約 1.4kmの区間は延長が最も長く、
その工費と工期が当プロジェクトに占める割合が最も大きいため、高架計画の是非がプロ
ジェクト実行性に大きく影響を与える。従って現地の状況から求められる条件を満たす最
適な橋種及び工法を以下の様に選定し比較検討を行った。
図 S-11
第1案 プレキャスト PC-I 桁橋(トラッククレーン架設工法)
図 S-12
図 S-13
第2案 連続非合成 鋼尐数主桁ラーメン橋
第3案 連続合成 鋼パネル・H型鋼合成桁橋
上記 3 案に対し①構造性②施工中の現交通への影響度③下部工規模を勘案した施工工期
④コストを比較検討項目とした。比較検討の結果、総合的に「第3案連続合成 鋼パネル・
H 型鋼合成桁橋」採用する。検討の詳細は「要約編:表 S-37 または本編:表 8-5」参照。
3)
Kalibanteng 交差点立体交差(Kalibanteng FO)
Kalibanteng 交差点は現在6差路のロータリー交差点を形成している。起点側連続高架
(Siliwangi Viaduct)と連続した FO として高速有料道路が交差点を速やかに通過する計画
にする。Siliwangi-FO と同様に曲線(R=300m)に対応可能な橋梁を短時間で架設すること、
現交通を片側 2 車線確保するため 1 柱式の橋脚を計画し、スパン長 70~100mの鋼連続曲
線箱桁橋を計画した。桁一括架設の採用により施工省略化、工期短縮を図る計画とした。
Siliwangi FO に同じく、必要であれば鋼合成床版の採用で工期をさらに短縮することが可
能である。
図 S-14
Kalibanteng 交差点立体交差(FO)
(10) 軟弱地盤
軟弱地盤への対策工の選定は現道の設計とその歴史を考慮して行った。次の表は軟弱地
盤対策を区間ごとに示している。
表 S-7
No.
1
軟弱地盤対策一覧表
内容
位置
歴史
既存道路の
タンジュン・ウマス
双方向4車線
両脇への土
港から西、海岸線
(片側2車線)の一般国道
工事
沿いの区間
が 1990 年代に建設済み。
既存道路部の設計
対策工法
バーティカルドレーン
プレロード工法によ
工法とプレロードの
る施工
工法の併用
図 S-15 参照
双方向2車線
2
既存道路に
タンジュン・ウマス
挟まれた
港から終点まで
土工時
の区間
(片側1車線)の一般国道
が 1990 年代に建設済み。
双方向4車線
バーティカルドレー
ン工法とプレロード
の工法の併用
(片側2車線)への拡幅が
バーティカルドレーン
工法とプレロードの
工法の併用
図 S-16 参照
近々建設開始
杭基礎
3
構造物の近
-
地盤沈下による段差が発
生。
隣
橋台背面に盛土荷
杭長を徐々に短くする
重を軽減するボック
杭基礎構造の採用
スカルバート設置
図 S-17 参照
18m
バーティカルドレーン
図 S-15
軟弱地盤対策工(1)
18m
バーティカルドレーン
図 S-16
軟弱地盤対策工(2)
32m
80m
24m
杭長に段差を設けた杭基礎
バーティカルドレーン
図 S-17
軟弱地盤対策工(3)
(11) インターチェンジ計画
北スマラン環状有料道路にはフルダイアモンド型のインターチェンジが1箇所、ハーフ
ダイアモンド型のインターチェンジ4箇所計画されている。4箇所のハーフダイアモンド
のうち2箇所は起点と終点において既存のインターチェンジとフルダイアモンド型のイン
ターチェンジを形成する。インターチェンジの位置図を図 S-9 に、下の表にはそれらの詳
細を示す。
表 S-8
名称
No.*
インターチェンジ一覧
タイプ
A
Siliwangi IC
ハーフダイアモンド
F
Airport Access IC
フルダイアモンド
I
West Tanjung Emas
IC
ハーフダイアモンド
L
East Tanjung Emas IC
ハーフダイアモンド
O
Kaligawe IC
ハーフダイアモンド
方向
オンランプ:東方向
オフランプ:西方向
オン/オフランプ双方向
備考
高架橋へランプ橋建設
ランプ内にフライオーバ
オンランプ:西方向
タンジュン・ウマス港前フ
オフランプ:東方向
ライオーバの西に設置
オンランプ:東方向
タンジュン・ウマス港前フ
オフランプ:西方向
ライオーバの東に設置
オンランプ:北方向
既存のフライオーバが IC
オフランプ:南方向
内に入る
* No.は図 S-9 内の No.
Kalibanteng 交差点で双方向のインターチェンジを設置することは交通需要予測結果を
反映すると理想的である。しかしながら、Kalibanteng 交差点に双方向インターチェンジを
設置するためには大掛かりな土地買収および住民移転が発生する。そのため、工費および
工期に影響するリスクを発生させることになる。本調査では Jl. Jend. Sudirman の西行き交
通(中心街からの流出交通)のためのオンランプのみの設置も検討したが、交通政策上の
メリットは認められるものの設置するか否かを決定するには至っていない。より詳細な調
査および設計をし、一般国道に計画されている Kalibanteng・フライオーバとの調整後決定
されるべきであるとの結論に達した。
(12) 維持管理施設
本調査では北スマラン環状有料道路整備に当たって ITS の導入を検討した。
次の表は ITS
を含めた維持管理施設の計画を示す。
表 S-9
現状の問題点と維持管理施設計画
問題点
対策工
渋滞・故障車や事故車情報の
道路監視:CCTV
監視並びに伝達
交通情報伝達:可変式情報板
料金の一元管理
ITS カテゴリ
データの収集:伝送装置/高速通信回線
統括管理事務所の設置
通過交通量・旅行速度
車両検出装置*
道路交通情報の一元化
交通情報:放送チャンネルの統一*
重量車両の管制
車両管制:ETC 導入時に対応*
道路交通システム
* Semarang と首都圏 Jakarta 間の有料道路が接続した時期に実施する。
(13) 施工計画
橋げたは全てクレーンでの架設を想定した。基礎杭は場所打ち杭と打込杭を施工場所・
工事規模などを基に設定した。打込杭は主に海岸線沿いの軟弱地盤に適用する。
Jl. Siliwangi の Siliwangi 高架橋は H ビームと鋼パネルの合成桁橋を計画した。鋼パネル
と H ビームは工場でプレファブ化された製品を組立てた状態で、トレーラを使い架設現場
へと搬送する。一組の H ビームと鋼パネルはクレーンによって一度に架設され、鋼パネル
を足場および型枠として利用して床版のコンクリートを打設する。この工程は現場での作
業を大幅に削減し、架設工期全体を大きく短縮する。下の図は鋼パネル=H ビーム合成桁
橋のイメージである。
図 S-18
鋼パネル=Hビーム合成桁橋
4.2
プロジェクトの事業概要
表 S-10 にプロジェクトの事業概要を示す。
表 S-10
No.
キロ程
延長
プロジェクトの事業概要
道路構造
構造形式
備考
1
00 - 300
00 - 170
130
盛土
擁壁含む
-
2
00 - 170
00 + 300
470
フライオーバ
鋼箱桁
Siliwangi IC
3
00 + 300
01 + 680
1380
高架橋
鋼パネル=H ビーム合成桁橋
Jl. Siliwangi
4
01 + 680
01 + 830
150
フライオーバ
鋼箱桁
Kalibanteng 交差点
5
01 + 830
02 + 010
180
高架橋
鋼パネル=H ビーム合成桁橋
-
6
02 + 010
02 + 150
140
盛土
擁壁含む
-
7
02 + 150
02 + 240
90
土工
-
空域制限
8
02 + 240
02 + 820
580
フライオーバ
PC 桁、盛土含む
鉄道
9
02 + 820
03 + 280
460
土工
-
-
10
03 + 280
03 + 860
580
フライオーバ
PC 桁、盛土含む
Jl. Anjasmoro
11
03 + 860
04 + 360
500
土工
-
-
12
04 + 360
04 + 940
580
フライオーバ
PC 桁、盛土含む
空港新アクセス道路
13
04 + 940
05 + 340
400
土工
-
-
14
05 + 340
05 + 920
580
橋梁
PC 桁、盛土含む
西放水路
15
05 + 920
06 + 170
250
土工
-
-
16
06 + 170
06 + 430
260
ボックス
RC、盛土含む
-
17
06 + 430
06 + 610
180
土工
-
-
18
06 + 610
06 + 990
380
橋梁
PC 桁、盛土含む
Asin river
19
06 + 990
07 + 220
230
土工
-
-
20
07 + 220
07 + 490
270
ボックス
RC、盛土含む
-
21
07 + 490
07 + 760
270
土工
-
-
22
07 + 760
09 + 750
1990
フライオーバ
PC 桁、盛土含む
Baru river
23
09 + 750
10 + 280
530
土工
-
-
24
10 + 280
10 + 990
710
橋梁
PC 桁、盛土含む
東放水路
25
10 + 990
11 + 250
260
土工
-
-
26
11 + 250
11 + 750
500
橋梁
PC 桁、盛土含む
Tanggang River
27
11 + 750
12 + 400
650
土工
-
Kaligawe IC
次の図は北スマラン環状有料道路の幅員構成を表す。
(a) 土工区間
(b) ランプ区間(インターチェンジ)
(c) 高架橋区間
図 S-19
幅員構成
図 S-20 にプロジェクトの事業概要を示す。
北スマラン環状有料道路整備計画調査(ジェトロ調査)最終報告書
要約編
プロジェクトの事業概要
要約 33 / 60
図 S-20
(1) 事業費
表 S-11 では主要工種の数量をまとめた。表 S-12 は事業費の積算結果を示す。価格上昇
率はルピアを 6%、円を 1%と設定した。
表 S-11
項目
道路
主要工種数量*
単位
数量
備考
-
-
-
土工部
m
5,320
バーティカルドレーン
m
1,291,082
橋梁
2
鋼箱桁
m
+ 水平ドレーン、ジオテキスタイル併用
-
-
14,300
-
2
33,660
-
2
114,400
盛土含む
2
289,764
-
鋼パネル=H ビーム合成桁橋
m
PC-I 桁
m
舗装
盛土含む
m
* 北スマラン環状有料道路全線の数量であり、円借款事業対象区間の数量ではない。
円借款事業対象区間の数量は要約編 5.2 もしくは本編5章を参照。
表 S-12
FC**
mil. Yen
LC
mil. Rp
事業費総額**
合計
mil. Rp
備考
mil. Yen
直接工事費
4,809
923,024
1,293,317
16,796
-
間接工事費
481
219,634
256,671
3,333
VAT+予備費
コンサルティング・サービス
384
73,042
102,610
1,333
詳細設計+施工管理
0
80,314
80,314
1,043
-
160
43,773
56,093
728
5,834
1,339,787
1,789,005
23,234
土地買収費
雑費
総合計
移転補償費+公共設備移設費
* ¥ 1 = Rp 77.0, FC: 外貨(円), LC: 内貨(ルピア), VAT: 付加価値税(Value Added Tax)
** 北スマラン環状有料道路全線の事業費であり、円借款事業対象区間の事業費ではない。
円借款事業対象区間の事業費は要約編 5.2 もしくは本編5章を参照。
(2) 経済分析
表 S-13 に経済分析の結果を表す。このケースは全路線を即座に整備し、2014 年に全線
を開通した計画を基に分析している。分析期間は 2007 年から 35 年間に設定した。社会的
割引率は 12%である。
表 S-13
経済分析結果(基本ケース*)
項目
単位
結果
備考
EIRR(経済的内部収益率)
%
18.6%
-
ENPV(経済的純現在価値)
mil Rp
891.8
割引率 12%
B/C
-
1.9
割引率 12%
* 北スマラン環状有料道路全線を 2014 年に供用開始、
注) 本調査の推奨する事業実施計画での分析結果ではない。
上記の結果によるとスマラン地域の交通需要を考慮し他の高い経済指標を持つプロジェ
クトと比較すると、
北スマラン全線を 2014 年に供用開始するのは時期尚早だと判断できる。
そこで、本調査では調査対象地域の交通需要を考慮に入れて、北スマラン環状有料道路を
いつ供用開始すればいいのかを分析・検討することにした。この分析結果は要約編5章お
よび本編第5章に示す。以下の表に本調査が推奨するプロジェクト実施スケジュールでの
経済分析結果を示す。
表 S-14
経済分析結果(推奨ケース*)
項目
単位
結果
備考
EIRR(経済的内部収益率)
%
21.8%
-
ENPV(経済的純現在価値)
mil Rp
1,057.8
割引率 12%
B/C
-
2.4
割引率 12%
* W1 および E3 区間を 2014 年に供用開始、N2 区間を 2024 年に供用開始
(3) 通行料金
北スマラン環状有料道路では、距離も短い都市内高速道路であるため均一料金システム
であることが望ましい。原則的に供用中の有料道路からの流入車両からは料金ゲートで徴
収し、新たに設置するインターチェンジからの車両は入り口に設置する個別ブースでの徴
収を設定している。本調査の対象路線は供用中の有料道路区間と接続するため、既存の料
金システムを基に検討を行った。
本調査では簡易な支払意思額調査を実施した。結果的に北スマラン環状有料道路には Rp
3,000 程度の意思額があることが判明した。
この額は供用中の有料道路区間の料金と比べる
と値上がりしているが、依然としてジャカルタの都市高速のレベルと比べると約半額程度
にしかならない。表 S-15 に供用中の有料道路区間の料金体系を示す。
表 S-15
供用中のスマラン有料道路通行料金体系
区間
延長
クラス I
クラス IIA
クラス IIB
A
8km
1,000
1,000
2,000
B
6km
1,000
1,500
2,000
C
12km
1,500
2,000
2,500
表 S-16
クラス I
クラス別車種
乗用車、ジープ、ワンボックス、ピックアップトラック、
マイクロバス、小型トラック(4t 未満)
クラス IIA
大型トラック、大型バス(2 軸)
クラス IIB
大型トラック、大型バス(3 軸)
、トレーラ
北スマラン環状有料道路の供用を開始する前に、額を含めた料金システムを慎重に決定
する必要がある。距離別料金システムでは均一料金システムよりも短いトリップの交通を
有料道路に導くことが可能であるが。このシステムでは各ランプに料金ブースが必要とな
り、料金所での渋滞の発生率が高くなる。料金システムおよび料金額についてはより詳細
な調査が必要であり、その結果を基により精度の高い財務分析が行われるべきである。
本調査では将来の需要増加および物価上昇を考慮しておよそ Rp 500/km になるように各
区間の料金を均一料金システムで設定した。2014 年時点での通行料金は、全線が開通した
場合は Rp 6,000Rp、区間別の段階整備の場合、それぞれの区間(W1, N2, E3)は Rp 4,000,
Rp, 1,000, Rp 1000 に設定し、財務分析を実施している。
表 S-17
北スマラン環状有料道路通行料金(2014 年~)
区間
路線
距離
W1
起点~西タンジュン・ウマス IC
2,050m
N2
タンジュン・ウマス港地区
2,240m
E3
西タンジュン・ウマス IC~終点
2,300m
基本ケース* (Rp)
I
6,000
IIA
9,000
推奨ケース** (Rp)
IIB
I
IIA
IIB
4,000
6,000
8,000
未開通
12,000
1,000
1,500
2,000
* 北スマラン環状有料道路全線を 2014 年に供用開始、
このケースは本調査の推奨する事業実施計画での分析結果ではない。
** W1 および E3 区間を 2014 年に供用開始、N2 区間を 2024 年に供用開始
(4) 交通需要予測結果
経済分析および財務分析に用いた北スマラン環状有料道路の交通量の一部を示す。上の
経済・財務分析に用いた基本ケースと推奨ケースの結果である。
表 S-18
区間
路線
距離
W1-1,2
起点~空港アクセス IC
W1-3
N2
E3
空港アクセス IC~
西タンジュン・ウマス IC
タンジュン・ウマス港地区
西タンジュン・ウマス IC~
終点
交通需要予測
基本ケース* (pcu/day)
推奨ケース** (pcu/day)
2014
2019
2024
2014
2019
2024
2,050m
29,283
51,237
67,953
29,164
50,810
67,953
3,110m
20539
41,721
56,578
20,112
38,794
56,578
2,240m
8,747
16,616
33,118
未開通
未開通
33,118
2,300m
7,952
13,292
26,494
4,771
9,305
26,494
* 北スマラン環状有料道路全線を 2014 年に供用開始、
このケースは本調査の推奨する事業実施計画での分析結果ではない。
** W1 および E3 区間を 2014 年に供用開始、N2 区間を 2024 年に供用開始
(5) 財務分析
表 S-19 に財務分析の結果を示す。ここでの財務分析は一般的に民間コンソーシアムが
設計、建設、資金調達、運営の全てを実施し、通行料金により投資額を回収してリターン
を上げる事業実施計画をベースにしている。
一般的には DBFO 方式と呼ばれる方式である。
分析期間は 35 年に設定した。
物価上昇率はインドネシア国内での新規高速道路開発調査で
広く用いられている 6%(円貨は 1.5%)で金利は年率 14%で分析した。自己資本率はこれ
もまたインドネシアで用いられている最低割合である 30%に設定し、70%までプロジェク
トファイナンスなどを活用して融資を受けられることにした。割引率は、インドネシアの
国としてのリスク、国内市場のリスク、活用融資の金利などを考慮して設定した。民間事
業主体は、競争入札を落札することにより政府とコンセッション契約を結び、それにより
付与される開発・営業権を行使して、設計・建設・資金調達・運用の全てを行う。
表 S-19
項目
FIRR
(財務的内部収益率)
FNPV
(財務的純現在価値)
財務分析 (DBFO 方式, 基本ケース*)
単位
除金利**
含金利**
含金利
+返済**
ROE***
(自己資本利益率)
%
12.1%
9.3%
7.4%
10.2%
mil Rp
-352.7
-815.6
-1,167.7
-561.6
* 北スマラン環状有料道路全線を 2014 年に供用開始、** 割引率 15.3% ***割引率 18.4%
この結果では、本プロジェクトは民間が単独で資金を調達し、開発・運営を行って利益
を得ることは非常に難しいことを示している。初期投資(設計・建設)に見合うリターン
を得たり、十分な利益を得たりする可能性は非常に乏しい。
本調査では有効な民間資金の活用のために、本プロジェクトを PPP(官民パートナーシッ
プ)のスキームを利用した開発を提案することにした。特にジャカルタで円借款を活用し
て実施中のタンジュン・プリオク・アクセス道路でのスキームを参考にした。そこでの財
務分析は以下の条件により行った。
1)
事業実施スケジュールは本調査が推奨するケースを用いる。
(W1+E3 区間 2014 年供用開始、N2 区間 2024 年供用開始)
2)
初期投資(設計・建設・土地買収など)は 100%政府により実施される
3)
初期投資は円借款を活用する(一般または STEP)
。自己資本比率は 25%または 15%
4)
運営・維持管理(O&M)は競争入札を落札した民間事業者が実施する。
5)
プロジェクトの財務分析は大部分の資本を提供するインドネシア政府機関向けに行
い FIRR, FNPV を求める。
6)
供用後の維持管理(O&M)期間については民間事業者を対象に ROE(自己資本利益
率)の分析を実施し、FIRR, FNPV を求める。
表 S-20 に上の条件で PPP スキームにより運営維持管理(O&M)を民間が実施する方式
(O&M 方式)を実施した場合の財務分析結果を示す。その結果、民間事業者が参入でき
るレベルの収益率がある事が判明した。しかも、通行料金を円借款返済に活用しながらで
も、民間事業者による有料道路の運営・維持管理(O&M)が可能であるとの見通しが立っ
た。
表 S-20
財務分析 (PPP スキーム、O&M 方式:推奨ケース*)
項目
FIRR
(財務的内部収益率)
FNPV
(財務的純現在価値)
単位
除金利**
含金利**
含金利
+返済**
ROE***
(自己資本利益率)
%
11.8%
11.6%
11.1%
25.5%
mil Rp
6,216.9
6,108.7
5,550.5
145.8
* N1 区間と E3 区間を 2014 年、N2 区間を 2024 年に供用開始、
** 割引率(WACC)3.1%
***割引率(Cost of Equity)18.4%、自己資本比率を 15%と仮定
(6) 環境面での懸念事項
本プロジェクト実施における環境面での懸念事項は、同規模の都市内高速道路整備案件
に比べると尐ないと言える。初期環境影響調査(IEE)によると土地買収面積も比較的尐
なく、移転世帯数も尐ない。移転対象世帯の多くは起点から Klibanteng 交差点までの Jl.
Siliwangi 沿いとタンジュン・ウマス港前に家屋を構えている。また土地買収の大部分も同
じ地域に位置している。これらの地域の開発および事業実施においては、地方自治体およ
びインドネシア政府関係者による最新の注意を払った実施が求められる。
5. プロジェクト実施スケジュール
5.1
事業実施計画の代替案
北スマラン環状有料道路を現況により3区間に分割した。表 S-21 に詳細を示す。
表 S-21
区間
北スマラン環状有料道路の区間割り
キロ程
延長
備考
-0+300
7+760
8,060
N2
7+760
10+000
2,200
タンジュン・ウマス港より西部区間
アフマッド・ヤニ国際空港沿線を含む
タンジュン・ウマス港前区間
E3
10+000
12+300
2,300
タンジュン・ウマス港より東部区間
W1
事業実施計画の検討に当たり、表 S-22 に示す3つのケースを設定した。
表 S-22
ケース
事業実施計画代替案
内容
備考
1
全区間を同時に整備する。
環状有料道路の整備を優先させる。
2
W1 区間および E3 区間をまず整備
し、その後 N2 区間を整備する。
起点および終点付近の交通渋滞改善を目指した計画。交通
容量の大きなタンジュン・ウマス港前の高架橋区間(双方
向 8 車線、片側 4 車線)の整備を延期する。
3
W1 区間を最初に、E3 区間をその 各区間の整備時期はそれぞれの交通容量と需要のバラン
次に、最後に N2 区間を整備する。 スから決定する。
次の表は北スマラン環状有料道路に並行して走る一般道の需要予測結果である。一般道
が混雑する交通飽和度を 0.8 に設定すると、各区間の最適な供用開始年は W1 区間が 2014
年以前、E3 区間が 2019~2024 年、N2 区間が 2024 年以降である事がわかる。
表 S-23
交通需要予測(without Project Case)および路線飽和度
区間
路線
交通容量*
W1
起点~タンジュン・ウマス港西 IC
(-0+300 – 7+760 : 8,060m)
113,990
タンジュン・ウマス港地区内
(7+760 – 10+000 : 2,240m)
144,690
タンジュン・ウマス港東 IC~終点
(10+000 – 12+300 : 2,300m)
31,990
N2
E3*
2006
2014
2019
2024
75,690
127,450
152,440
172,760
0.66
1.12
1.34
1.52
25,510
54,190
73,600
87,270
0.18
0.37
0.51
0.60
19,600
35,080
48,410
76,390
0.61
0.44
0.61
0.96
* 単位:PCU/日
表 S-24 に各代替案の事業実施スケジュールを示す。この事業実施計画を基に各ケース
を経済面・財務面で比較した。その結果、ケース2とケース3の間にはほとんど差がない
ことが判明した。詳細を表 S-25 に示す。
case
4
2010
5
2011
6
2012
7
2013
各代替案の事業実施スケジュール
1
2007
2
2008
3
2009
8
2014
L/A
process
D/D
Tender
Construction (W1, N2, E3)
Opening
L/A
process
D/D
Tender
(W1+E3)
Construction (W1+E3)
Opening
(W1+E3)
9
2015
10
2016
11
2017
12
2018
13
2019
14
2020
15
2021
16
2022
17
2023
18
2024
1
2
Tender
(N2)
L/A
process
D/D
Tender
(W1)
Construction (W1)
Construction (N2)
Opening
(N2)
Tender
(N2)
Opening
(N2)
Opening
(W1)
19
2025
20
2026
北スマラン環状有料道路整備計画調査(ジェトロ調査)最終報告書
要約 40 / 60
表 S-24
3
Tender
(E3)
Construction (E3)
Opening
(E3)
Construction (N2)
* W1: 8,060m, N2: 2,240m, E3: 2,300m
要約編
項目
ケース 1
内容
全区間を同時に整備する。
事業実施計画比較表(1)
ケース 2
ケース 3
W1 区間および E3 区間をまず整備し、
W1 区間を最初に、E3 区間をその次に、
その後 N2 区間を整備する。
最後に N2 区間を整備する。
起点および終点付近の交通渋滞改善のため W1、E3
各区間の整備時期はそれぞれの交通容量と需要の
区間から整備する。
バランスから決定する。
概要
W1: 8,060m
N2: 2,240m
E3: 2,300m
環状有料道路の整備を優先させる。
交通容量の大きなタンジュン・ウマス港前の高架橋区
間(双方向 8 車線、片側 4 車線)の整備を延期する。
EIRR
18.6%
21.8%
22.0%
FIRR
10.8%
11.2%
11.4%
事業費
1,789,005 mil Rp (W1, N2, E3)
円借款の
一般
STEP (フェーズ 1)
STEP (フェーズ 1, 2)
種類
金利:1.50%、返済期間:30 年、措置期間:10 年
金利:0.40%、返済期間:40 年、措置期間:10 年
金利:0.40%、返済期間:40 年、措置期間:10 年
1,524,266 mil Rp
フェーズ 2 (2024 年、N2:二重線):
1,307,485 mil Rp
481,520 mil Rp
フェーズ 1:
1,122,889 mil Rp
フェーズ 2:
要再検討
フェーズ 1 (2014 年、N1:実線):
1,071,698 mil Rp
フェーズ 2 (2019 年、E3:二重線):
235,787 mil Rp
フェーズ 3 (2024 年、N2:破線):
481,520 mil Rp
フェーズ 1:
920,353 mil Rp
フェーズ 2:
202,536 mil Rp
フェーズ 3:
要再検討
返済額
約 2,048 bil Rp, 約 111 bil Rp/年
約 1,241 bil Rp, 約 42 bil Rp/年
約 1,241 bil Rp, 約 42 bil Rp/年
備考
通行料金収入で円借款の返済が可能な見込み
通行料金収入で円借款の返済が可能な見込み
通行料金収入で円借款の返済が可能な見込み
評価
×
○
○
要約編
要約 41 / 60
円借款額
フェーズ 1 (2014 年、W1+E3:実線):
北スマラン環状有料道路整備計画調査(ジェトロ調査)最終報告書
表 S-25
表 S-25 の結果からケース2とケース3にはほとんど大差がないことが判明したため、こ
の2ケースについてさらに詳しく比較検討を実施した。ここでは以下の3項目について比
較する。①経済的内部収益率(EIRR)
、②周辺地域への事業波及効果、③整備(供用開始)
時期と交通需要とのバランス、
である。
①でプロジェクトの地域への経済的貢献度を量り、
②は地域全体で見た道路ネットワークの整備状況で判断し、③は各区間の供用開始年次と
交通飽和度(予測交通量÷交通容量)との関係で評価した。③は供用開始年次に交通飽和
度が 0.8 に近いほど高い評価となり、それより高すぎても低すぎても評価は低くなる(高
い場合は整備が遅く、低い場合は整備が早すぎる)
。検討結果を表 S-26 に示す。
表 S-26
事業実施計画比較表(2)
ケース2 [W1+E3:2014 年、N2:2024 年に供用開始]
項目
経済的内部収益率
(EIRR)
調査結果
ランク
ウェイト
評点
21.8%
4
50%
2.0
4
30%
1.2
4
20%
0.8
2014 年に既存のタンジュン・ウマス高架橋を利用した環状高速道
周辺地域への
路が完成する。起点付近・終点付近双方での渋滞緩和効果が見
事業波及効果
込める。
W1: 2014 年に供用開始⇔すでに渋滞発生
整備(供用開始)
N2: 2024 年に供用開始⇔当分混雑しない
時期と交通需要
E3: 2014 年に供用開始⇔2020 年頃渋滞発生
とのバランス
W1 と N2 区間で交通需要とのタイミングが合致している。
EIRR はわずかに劣るが、地域への波及効果や調査対象区間以
総合評価
評価点
外の渋滞解消への寄与を考慮して
4.0 (最高点
この案を推奨する。
5.0)
ケース3 [W1:2014 年、E3:2019 年、N2:2024 年に供用開始]
項目
経済的内部収益率
(EIRR)
周辺地域への
事業波及効果
整備(供用開始)
時期と交通需要
とのバランス
調査結果
ランク
ウェイト
評点
22.0%
4
50%
2.0
2
30%
0.6
5
20%
1.0
2019 年に既存のタンジュン・ウマス高架橋を利用した環状高速道
路が完成する。それ以前は E3 区間がミッシングリンクとして残る。
終点付近での渋滞緩和効果も 2019 年まで見込めない。
W1: 2014 年に供用開始⇔すでに渋滞発生
N2: 2024 年に供用開始⇔当分混雑しない
E3: 2019 年に供用開始⇔2020 年頃渋滞発生
W1、N2、E3 区間で交通需要とのタイミングが合致している。
EIRR はわずかに上回っているが、地域への波及効果や調査対
総合評価
象区間以外の渋滞解消への寄与を勘案すると
この案を推奨するのは困難である。
評価点
3.6(最高点
5.0)
本調査の実質的なカウンターパートである公共事業省・有料道路開発課との協議により
上述の3つの指標の優先度は、①経済的内部収益率(EIRR)、②周辺地域への事業波及効
果、③整備時期と交通需要とのバランス、の順で重要視することにした。この協議結果を
反映させるために、それぞれの指標のウェイトを 50%、30%、20%に設定した。それぞれ
の指標に対する数値化(ランク)の基準は以下のように設定した。各指標のランク付けに
ついては本編第6章を参照。
5.2
事業実施計画の推奨案
本調査での推奨案はケース2である。北スマラン環状有料道路整備に関して、ケース1
の事業実施計画では過剰投資になる恐れがある。ケース2とケース3は経済効果もほとん
ど変わらないが、渋滞緩和効果がケース2の方が大きく見込まれることなどから、周辺へ
の事業効果波及の差でケース2を推奨する。下の表にケース2の詳細なスケジュールを示
す。
表 S-27
最適事業実施スケジュール(ケース2)
1
2
3
4
5
6
7
8
9
10
11
12
13
14
15
16
17
18
19
2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 2025
年
フェーズ1
ローン要請
コンサルタント選定
小生設計
施工業者選定(W1+E3区間)
施工(W1+E3区間)
供用(W1+E3区間)
フェーズ2
ローン要請
コンサルタント選定
小生設計
施工業者選定(N2区間)
施工(N2区間)
供用(N2区間)
* W1: 8,060m, N2: 2,240m, E3: 2,300m
円借款プロジェクト推奨案の事業概要を表 S-28 に示す。
表 S-28
円借款プロジェクト推奨案の事業概要
W1 区間 (8,060m)
No.
キロ程
延長
構造
構造形式
備考
100
盛土
擁壁含む
-
1
00-300
00-200
2
00-200
00+300
500
フライオーバ
鋼箱桁
Siliwangi IC
3
00+300
01+680
1380
高架橋
鋼パネル=H ビーム合成桁橋
Jl. Siliwangi
4
01+680
01+830
150
フライオーバ
鋼箱桁
Kalibanteng 交差点
5
01+830
01+980
150
高架橋
鋼パネル=H ビーム合成桁橋
-
6
01+980
02+150
170
盛土
擁壁含む
-
7
02+150
02+300
150
土工部
-
空域制限
8
02+300
02+800
500
フライオーバ
PC 桁、盛土含む
鉄道
9
02+800
03+280
480
土工部
-
-
10
03+280
03+860
580
フライオーバ
PC 桁、盛土含む
Jl. Anjasmoro
11
03+860
04+360
500
土工部
-
-
12
04+360
04+950
590
フライオーバ
PC 桁、盛土含む
13
04+950
05+500
550
土工部
-
14
05+500
05+800
300
橋梁
PC 桁、盛土含む
15
05+800
05+920
120
土工部
-
-
16
05+920
06+430
510
ボックスカルバート
RC、盛土含む
-
17
06+430
06+700
270
土工部
-
-
18
06+700
06+900
200
橋梁
PC 桁、盛土含む
Asin river
19
06+900
06+950
50
土工部
-
-
20
06+950
07+490
540
ボックスカルバート
RC、盛土含む
-
21
07+490
07+760
270
土工部
-
-
延長
構造
構造形式
備考
空港新アクセス道路
Airport access IC
西放水路
E3 区間 (2,300m)
No.
キロ程
22
10+000
10+280
280
土工部
-
-
23
10+280
10+900
620
橋梁
PC 桁、盛土含む
東放水路
24
10+900
11+280
380
土工部
-
-
25
11+280
11+700
420
橋梁
PC 桁、盛土含む
Tanggang River
26
11+700
12+300
600
土工部
-
Kaligawe IC
表 S-29 および表 S-29 に円借款プロジェクト推奨案の主要工種別数量と事業費総額を
示す。
表 S-29
円借款プロジェクト推奨案の主要工種別数量
項目
単位
延長
m
道路
-
W1 区間
E3 区間
8,060
-
合計
備考
2,300
10,360
-
-
-
-
土工部
m
3,710
1,360
5,070
バーティカルドレーン
m
1,217,322
62,307
1,279,629
橋梁
-
盛土含む
水平ドレーン、
ジオテキスタイル併用
-
-
-
-
鋼箱桁
鋼パネル=H ビーム合成桁橋
m
2
m
2
14,300
33,660
-
14,300
33,660
-
PC-I 桁
m
2
47,740
22,880
70,620
盛土含む
2
186,300
57,312
233,612
-
舗装
m
表 S-30
円借款プロジェクト推奨案の事業費総額
合計(W1+E3 区間:10,360m)
FC
mil. Yen
項目
直接工事費
LC
mil. Rp
合計
mil. Rp
mil. Yen
備考
3,780
678,269
969,329
12,589
-
間接工事費
コンサルティング・サービス
378
302
163,080
53,589
192,186
76,843
2,496
998
VAT および予備費含む
詳細設計+施工管理
土地買収費
雑費
0
126
25,314
34,111
25,314
43,813
329
569
4,586
954,363
1,307,485
16,980
合計(フェーズ1)
移転補償費+公共設備移設費
W1+E3 区間
W1 区間:8,060m
LC
mil. Rp
合計
mil. Rp
mil. Yen
3,381
530,959
791,296
10,277
-
間接工事費
コンサルティング・サービス
338
270
130,886
41,941
156,912
62,731
2,038
815
VAT および予備費含む
詳細設計+施工管理
土地買収費
雑費
0
113
25,314
26,744
25,314
35,445
329
460
4,102
755,844
1,071,698
13,918
FC
mil. Yen
項目
直接工事費
小計(W1 区間)
備考
移転補償費+公共設備移設費
W1 区間
E3 区間:2,300m
合計
FC
LC
mil. Yen
mil. Rp
mil. Rp
399
147,310
178,033
2,312
間接工事費
コンサルティング・サービス
40
32
32,194
11,648
35,274
14,112
458
183
VAT, physical contingency
詳細設計+施工管理
土地買収費
雑費
0
13
0
7,367
0
8,368
0
109
-
484
198,519
235,787
3,062
項目
直接工事費
小計(E3 区間)
* ¥ 1 = Rp 77.0,
FC: 外貨(円), LC: 内貨(ルピア),
mil. Yen
備考
-
E3区間
VAT: 付加価値税(Value Added Tax)
次に 2024 年まで供用を延期することになった N2 区間の主要工種別数量と事業費積算結
果を示す。
表 S-31
N2 区間主要工種別数量
項目
単位
延長
m
道路
-
備考
N2 区間
-
-
土工部
m
250
バーティカルドレーン
m
11,453
-
-
橋梁
鋼箱桁
PC-I 桁
-
2
0
-
2
43,780
盛土含む
2
46,152
-
m
m
表 S-32
水平ドレーン、
ジオテキスタイル併用
0
m
舗装
盛土含む
2
m
鋼パネル=H ビーム合成桁橋
供用開始 2024 年
2,240
N2 区間事業費総額
N2 区間:2,240m
FC
mil. Yen
LC
mil. Rp
合計
mil. Rp mil. Yen
直接工事費
1,029
244,755
323,988
4,208
間接工事費
103
56,554
64,485
837
-
82
19,453
25,767
335
詳細設計+施工管理
0
55,000
55,000
714
-
34
9,662
12,280
159
移転補償費+公共設備移設費
1,248
385,424
481,520
6,254
項目
コンサルティング・サービス
土地買収費
雑費
合計(N2 区間)
備考
VAT および予備費含む
供用開始 2024 年
6. プロジェクトの実行可能性
6.1
技術的実行可能性
(1) 道路線形
北スマラン環状有料道路の平面線形は供用中の一般国道であるスマラン北環状道路沿い
に設定された(表 S-5 参照)
。この線形案は自然環境にも社会環境にも最も影響が尐ない
と判断されている。本調査内で実施した初期環境影響評価(IEE)によるとこの案がもっ
とも土地買収の面積と影響を受ける住民(プロジェクト・アフェクテッド・パーソンズ)
の数とが尐ない。
さらに、
この線形上の道路建設は他のルートよりも建設期間が短いことも判明している。
その理由は供用中のスマラン北環状道路には多数の大型車が通行しているが、それらは一
帯に広がる軟弱地盤を締固め、
圧密を促進し、
強度を上げることを意図せずに繰り返し行っ
ているからである。これは北スマラン環状有料道路の工事の一部を先行して行っているこ
とになり、施工期間の短縮に大いに貢献する。
またスマラン北環状道路の道路用地幅は 60m 程あり、北スマラン環状有料道路を土工で
建設することを可能にしている。そのため大幅な工費縮減につながっている。
以上より、本調査で計画した線形での建設は、低コスト・早期施工を補償するものであ
り、技術的実行可能性は非常に高い。
(2) 橋梁
本調査では3タイプの橋梁形式を計画した。①PC-I 桁、②鋼箱桁、③鋼パネル=H ビー
ム合成桁である。
PC-I 桁は、
現在すでにスマラン北環状道路 PC-I 桁を採用している橋梁およびフライオー
バに平行して新設する橋梁およびフライオーバに採用する。この種類の桁はインドネシア
内で非常に広く採用されており、大きなマーケットが存在する。したがって、建設費の縮
減にもつながる安価な製品桁の採用が有効である。
鋼箱桁は Siliwangi フライオーバと Kalibanteng・フライオーバに採用する。両フライオー
バはそれぞれ R=300m の曲線橋となっており、Kalibanteng・フライオーバはロータリーを
跨ぐため、径間長が 70m 程度必要になる。これらの条件では PC-I 桁の採用は困難である
ため、曲線橋および長い径間長に対応可能な鋼桁を採用することにした。
鋼パネル=H ビーム合成桁は比較的新しい本邦企業の技術であり、上部工の死荷重を軽
減し、現場作業を極力減らすことにより現況交通への影響を抑え、工期も短縮する工法で
ある。上部工の死荷重を軽減することにより、支持杭の本数も減らすことが可能になり、
フーチングのサイズも縮小される。そのため、通常大きな作業ヤードが必要となり車線規
制数が多くなる基礎工・下部工の施工時にも双方向4車線(片側2車線)の確保が可能に
なった。これは建設期間中の渋滞を軽減し、大きな道路ユーザの VOC(車両走行費用)の
節約につながる。この VOC の節約を考慮すると、PC-I 桁に比べても非常に経済的になる。
概算工費の比較では当該区間の直工費を約 15%増加させるだけで建設が可能であるという
結果が出ている。これは全体の事業費をわずか約3%増加させるに過ぎない。
(3) 軟弱地盤
計画路線上には N 値が0~2という非常に軟弱な地盤が広範囲に広がっている。この軟
弱層は深いところでは 30m 以上まで達し、道路建設前にその荷重対策および支持力増強の
ために対策を講じなければならない。現在、一般国道である北スマラン環状道路が供用中
であるが、この部分にはプレロード工法、バーティカルドレーン工法およびそれらの併用
工法が用いられている。北スマラン環状道路の現在の交通状況は、大型で重量の大きな車
両が頻繁に通っているが、現場踏査の結果では路面状況に大きな損傷は見受けられなかっ
た。これはスマラン北環状道路建設時に採用した、プレロード工法、バーティカルドレー
ン工法は期待通りの効果を挙げていることを示している。
本調査では上の2案の欠点である長期の建設期間を補う新たな工法を検討した。検討し
た工法は、盛土に発砲モルタルを用いる工法、浅層および深層混合処理工法などである。
しかしながら、いずれの工法も工費が増大し経済性で満足する結果が得られなかった。し
たがって、本調査では北スマラン環状有料道路整備には図 S-15 および図 S-16 に示すよう
にバーティカルドレーン工法にプレロード工法を併用する工法を提案する。
6.2
経済的・財務的実行可能性
ここでは要約編4章で行ったケース1の事業実施計画に基づいた経済・財務分析を見直
し、最適な事業実施計画であるケース2で再度経済・財務分析を行う。表 S-33 は見直し
た結果である。財務分析は競争入札を落札した民間セクターに開通済みの運営・維持管理
(O&M)を委託する PPP スキーム(O&M 方式)を実施する計画で見直しを行った。料金
システムは料金均一システム、料金は 2014 年時点で W1 区間:Rp 4,000、E3 区間:Rp1,000
に設定した。2024 年に全区間が開通した後は全区間の均一システムを採用した(Rp 6,000:
2014 年価値換算)
。
表 S-33
経済分析(PPP スキーム、O&M 方式、ケース2*:事業実施計画推奨案)
単位
結果
備考
EIRR(経済的内部収益率)
%
21.8%
-
ENPV(経済的純現在価値)
mil Rp
1,057.8
割引率 12%
B/C
-
2.4
割引率 12%
* W1+E3 区間(2014 年供用開始)
、N2 区間(2024 年供用開始)
表 S-34
財務分析(PPP スキーム、O&M 方式、ケース 2C*:事業実施計画推奨案)
項目
FIRR
(財務的内部収益率)
FNPV
(財務的純現在価値)
単位
除金利**
含金利**
含金利
+返済**
ROE***
(自己資本利益率)
%
11.9%
11.7%
11.2%
25.6%
mil Rp
6,233.2
6,125.8
5,572.0
146.9
* N1 区間と E3 区間を 2014 年、N2 区間を 2024 年に供用開始、
** 割引率(WACC)3.1%
***割引率(Cost of Equity)18.4%、自己資本比率を 15%と仮定
この事業実施計画では北スマラン環状有料道路プロジェクトは経済的にも財務的にも実
行可能である。したがって、現在首都ジャカルタで実施中のタンジュン・プリオク・アク
セス道路の PPP(官民パートナーシップ)スキームは本プロジェクト実施にも有効である
事が判明した。本プロジェクトには通常の DBFO(Design, Build, Finance, Operate)方式は
適当でない。政府が Design, Build, Finance を執り行い、民間事業者が Operation を実施する
スキーム(O&M 方式)であれば、民間資金を有効に活用した整備を実施できる。民間事
業者が実施する運営・維持管理(O&M)は料金収入によって運営される。また、本調査で
は料金収入を活用して政府借入金(本調査では円借款)を 100%返済できることも示して
いる。
6.3
環境面での懸念事項とその対策
表 S-35 に主な環境面での懸念事項とその対策を示す。これらの対策を所定の作業を踏
んで実施すれば、北スマラン環状有料道路整備に実効性に影響を及ぼさないと考える。
表 S-35
懸念事項
環境面での懸念事項とその対策
期間
対策
自然環境
大気汚染
建設中
建設業者の EIA 環境モニタリング計画に則った行動
騒音・振動
建設中、供用後
水質汚濁
建設中
建設業者の EIA 環境モニタリング計画に則った行動
排水の滞留
供用後
管理事業者が定期的に排水施設の清掃を実施
最高速度の規制と交通警察による監視
社会環境
非自発的住民移転
事業実施前
決めの細かいパブリックコンサルテーションと規定の
土地買収
事業実施前
補償費用の確実な支払の実施
道路安全の低下
(交通事故の増加など)
ごみ・廃棄物の増加
6.4
建設中、供用後
建設中
全ての道路利用者への交通安全の啓蒙
建設業者の EIA 環境モニタリング計画に則った行動
北スマラン環状有料道路整備事業の現状
本プロジェクトの実施には本プロジェクトのスマラン市および中央ジャワ州が策定する
地域開発マスタープランへの追加が求められる。土地収用などの地方政府が実施する住民
対策費はこの地域開発マスタープランに基づいて予算が確保されるので、マスタープラン
に本プロジェクトが明記されていないと住民対策が遅延する一因になり、本路線の供用開
始も遅れる。したがって、本プロジェクトに関連するマスタープラン、特にスマラン市開
発マスタープランに本プロジェクトを追加することが必要である。関連マスタープランと
して、①ジャワ島有料道路開発計画(公共事業省)
、②スマラン市開発マスタープラン、③
中部ジャワ州開発マスタープランなどが上げられる。この現状の招いた大きな原因として、
本調査が本プロジェクトに関する最初の本格調査である事が上げられる。今までは構想と
して長期間にわたり取り上げられてきたが、
予算不足もあり本格調査は実施されなかった。
この報告書が必要なデータ、分析結果を提供し、上記のマスタープランに本プロジェクト
を追加するために活用されることを切望する。
本調査は北スマラン環状有料道路整備に関する最初の本格調査であるが、さらに詳細な
調査および設計を行い、プロジェクト実施につなげるべきであると考える。本調査で本プ
ロジェクトの経済的実行可能性が示され、民間事業者による運営・維持管理(O&M)も可
能なことも提示された。インドネシア政府によりタンジュン・プリオク・アクセス道路同
様の PPP(官民パートナーシップ)スキーム、O&M 方式(初期投資は政府、運営は民間)
により、整備を実施することが実現できれば、本プロジェクトは地域経済発展に大いに貢
献する非常に有意義なプロジェクトになる。
7. 本邦企業の技術的優位性
7.1
先進技術応用の可能性
本プロジェクトに関する現地調査結果により、本邦企業の先進技術活用の可能性がある
技術は以下の6つである事が明らかになった。
(1) 都市内での早期施工
(2) 鋼橋
(3) 耐震技術
(4) 軟弱地盤対策
(5) コンクリート橋梁
(6) 都市交通システム
7.2
検討項目
(1) 都市内での早期施工
起点より約 2km 区間は交通量の激しい幹線国道内での高架橋建設が計画されている。こ
の区間は沿道の開発も進み、道路用地幅が 30m ほどしかないため、その他の区間のように
高速道路を土工部として計画できなかった。しかしながら、現道では頻繁に交通渋滞が発
生するほど交通量も多く、建設には出来る限り早期に完工し、施工期間中も占有面積を出
来るだけ尐なくする計画が必要である。それにより、地域が被る建設中の渋滞発生による
VOC(車両走行費用)の増加および地域経済にとっての損失を極力抑えることができる。
この2点(早期施工、施工ヤードの縮小)を実現化するため日本の都市土木分野の先進工
法および施工技術が大いにプロジェクト実現に貢献する。
インドネシアも十数年にわたり都市内での高架橋建設を実施してきた。特に首都ジャカ
ルタのイントラアーバン有料道路などである。しかしながらここでの橋梁形式は PC-I 桁を
PC 梁で支持するものがほとんどである。本調査では本邦技術が PC-I 桁を用いた場合より
も技術性および経済性を鑑みて総合的に適しているかどうかを検討する。
(2) 鋼橋
本調査で計画した平面線形では、トラッククレーン架設を前提としたコンクリート桁を
用いた施工では、施工が不可能または困難な区間が存在する。これらの区間は曲線半径が
小さなカーブ内であったり、径間長が 40m を越える部分であったりする。このような区間
では場所打ちでのコンクリート桁、もしくは鋼橋に上部工形式が限定される。北スマラン
環状有料道路のように都市内での施工ではコンクリートを現場で打設するための制限が多
く、鋼橋の方が適している。これらの区間では長い径間長に適合する高強度の鋼製桁橋が
用いられることが多い。これらの高強度の橋梁用鋼材はインドネシアで精錬できないばか
りか、わが国では世界的にも高品質状態で多量に生産している。
さらに、この区間の鋼桁には精巧な3次元での加工技術が必要であり、特に平面・縦断
共に曲線の入る部分では様々な種類の形状の部材が必要で、製作作業が複雑になる。イン
ドネシアで建設済みの鋼橋は直線部もしくはゆるいカーブの部分がほとんどであり、わが
国に比較して精巧な技術が根付いていない傾向にある。本調査ではわが国の先端技術であ
る高強度の鋼材を用いた橋梁の採用の可能性を探る。
(3) 耐震技術
ここ数年インドネシアは大規模な地震により大きな被害を受けている。2004 年 12 月の
スマトラ沖地震、2005 年 3 月のニアス島沖地震、2006 年 5 月のジャワ島中部地震である。
地震の揺れによって引き起こされた津波や家屋の倒壊により多くに住民が犠牲になった。
日本も阪神淡路大震災を筆頭に数多くの大地震を経験しており、世界屈指の耐震技術先進
国である。
耐震設計基準は“Indonesian Bridge Design Code (Ministry of Public Works, 1992)”に規定さ
れており、スマラン地域はゾーン54に規定されている。ちなみにスマトラ沖地震で大きな
被害を受けたアチェ州はゾーン1又は2、ジャワ島中部地震で被災したジョグジャカルタ
はゾーン3の地域である。この基準から判断すると、スマラン地域は過去に大きな地震に
見舞われた記録があまりないと判断できる。
4
ゾーン1:大地震を想定、ゾーン6:小規模な地震を想定
スマラン地区ではこれまでほとんどの橋梁およびフライオーバが PC-I 桁で建設されて
きた。本調査では広大な軟弱地盤地帯でも PC-I 桁が適当であるのか、もしくは他の耐震構
造に優れる橋梁形式により適した形式があるのかを検討する。
(4) 軟弱地盤対策
調査対象地域の大部分に N 値が0~2程度という非常に地盤状態のわるい軟弱地盤地帯
が広がり、場所によっては最大 30m もの厚さがある。日本にも有明海沿岸など海岸線沿い
を中心に分厚い軟弱地盤が存在し、その上に道路を建設してきた経験がある。本邦企業は
軟弱地盤補強・改良に多くの先進技術を開発してきた。この技術が北スマラン環状有料道
路の開発に貢献できる可能性が高い。
インドネシアの広大な軟弱地盤地帯での道路建設ではプレロード工法およびバーティカ
ルドレーン工法が多く用いられてきた。日本では数多くの地盤改良工法や軽量盛土工法が
開発済みである。
このような本邦技術がインドネシアで幅広く採用されている工法に比べ、
技術的および経済的に比較し、総合的に適しているかどうかを検討する。
(5) コンクリート橋梁
一般的に典型的なインドネシアの橋梁はトラッククレーン架設による PC 桁橋である。
この橋種はインドネシア全国の橋梁および高架橋に採用されている。しかし、径間長は最
大でも 40m まででそれ以上延ばすのはほとんど不可能である。一方、ディビダーク工法な
どの新技術も尐しずつ導入されだしている。
しかしながら、
いまだにインドネシアでは採用されていない先端技術・工法がコンクリー
ト橋梁には存在する。例えば、外ケーブル工法やエクストラドーズド橋などである。本調
査ではこれらの先端技術・工法の採用可能性を探る。
(6) 都市交通システム
ITS(高度交通システム)は近年わが国の道路に導入され、普及が進められている。また、
カーナビゲーションシステムのわが国での普及は VICS などの情報提供システムの普及に
大きく貢献した。また、双方向通信による ETC など世界的な先端技術をわが国は保有して
いる。
インドネシアに導入された ITS 技術は可変情報版や CCTV ネットワークなど非常に限ら
れている。カーナビゲーションや ETC などはいまだに導入されていない。円借款を活用し
てジャカルタ首都圏で事業実施中のタンジュン・プリオク・アクセス道路プロジェクトで
は、ETC などの先端 ITS 技術の導入が検討されている。本調査では、これらの先端 ITS 技
術の北スマラン環状有料道路整備における導入の可能性を探る。
7.3
検討結果
次の表は本邦企業の先端技術活用が適当である構造物の一覧である。それらは主に早期
施工と鋼橋である。この2分野に関する詳述を以下に示し、その他の先端技術活用が困難
な分野については本編8章に記述した。
表 S-36
No
構造物
1
フライオーバ
種類
本邦先端技術活用構造物
分野
内容
備考
高強度鋼材
3次元曲線
上部工架設工法
早期施工
鋼製箱桁
鋼橋
鋼パネル=
幹線道路
H ビーム合成桁
(早期施工)
2
高架橋
3
高架橋
鋼製橋脚
鋼橋
鋼材加工
4
PC 桁
PC-I 桁
コンクリート橋梁
PC 鋼材
3次元曲線
アンカーフレーム
-
(1) 都市内での早期施工
本調査では3形式の橋梁を地域の不利益(VOC の増加など)を加味して総合的に比較検
討した。形式はそれぞれ、①PC-I 桁、②鋼ラーメン(2主鈑桁)
、③鋼パネル=H ビーム
合成桁、である。検討の結果、③鋼パネル=H ビーム合成桁が総合的に判断して、最も適
していることが判明した。
表 S-37
都市内での早期施工を要する高架橋構造形式比較表
PC-I 桁橋
鋼ラーメン橋
鋼パネル=H ビーム合成桁橋
幅員構成
杭打設時および下部工施工時に双方向2車線
杭打設時および下部工施工時に双方向2車線
双方向4車線(片側2車線)の確保が施工期間
(片側1車線)しか確保できない。
(片側1車線)しか確保できない。
全体にわたり可能
上部工形式
PC-I 桁
トラッククレーンによる合吊りによる架設
架設工法
(クレーン設置にヤードが必要)
一般的な RC 床版
下部工形式
施工方法
鋼ラーメン(2主鈑桁)
大型クレーンを使用した1スパン一括架設が可
能で、現場作業が尐ない。
PC 床版の採用により工期短縮、維持管理の容
易性の向上および作業の削減が可能
鋼パネル=H ビーム合成桁
トラッククレーン一台による架設。
(杭打設に必要なヤード以上必要ない)
H ビームと鋼パネルは工場で加工・組立されて
現場に搬送されるため、現場作業が削減される。
(図 S-18 参照)
RC 構造、梁のみ PC 構造
鋼製橋脚
鋼製橋脚
梁部分のコンクリート打設時の型枠脱型までが
橋脚梁部はクレーンで架設され、現況交通を妨
橋脚梁部はクレーンで架設され、現況交通を妨
最も現況交通を妨げる。
げない。
げない。
基礎工形式
RC 場所打ち杭8本、RC フーチング
RC 場所打ち杭9本、RC フーチング
RC 場所打ち杭4本、RC フーチング
スパン長
30m
60m
30m
施工期間
24 ヶ月
16 ヶ月
12 ヶ月
直工費
1.00
1.85
1.15
評価
△
×
◎
(2) 鋼橋
北スマラン環状有料道路は起点部で供用中の高速道路 A 区間と接続する。この部分の平
面線形はほぼ 90°折れている。設計速度は 80km/h なので、最小半径は 300m である。縦
断線形も変化し縦断曲線も入り、オンランプ・オフランプも接続するため、非常に複雑な
経常になる。しかも、現況は北ジャワ幹線の位置路線である Jl. Siliwangi には 30,000/日を
越える交通があるため、この部分は速やかな架設を前提としたフライオーバ構造となる。
本調査では検討の結果、曲線半径 300m の鋼製箱桁を提案する。
Kalibanteng 交差点も半径 60m の中央島を有するロータリー交差点であり、中央島の周り
に3車線の交通が常時存在する。北スマラン環状有料道路はこれらを跨ぐ構造である必要
があり、橋脚は中央島内部にしか建設できない。また平面線形が約 40°曲がるが、用地制
限があるため、なるべく小さな半径での平面線形が求められる。本調査では検討の結果曲
線半径 300m で径間長が 70m 以上必要なことが判明した。この径間長では鋼橋の方がコン
クリート橋梁よりも経済的である。また、ロータリーの現況交通への影響を最小限で抑え
るためにも、上部工架設は早期に終える必要がある。そのためクレーンでの架設がより容
易な鋼橋が推奨される。この区間でも検討の結果、曲線半径 300m の鋼製箱桁を提案する。
この2区間では、径間長、線形条件(R=300m、3次元曲線など)および現況交通の条
件により高強度の鋼製桁が必要である。また、架設以前の政策には非常に精巧な技術が求
められる。鋼橋製作および架設に多くの経験を有する本邦企業の先端技術を活用すること
を推奨する。
8. プロジェクト実現までのスケジュールとそれに対するリスク
8.1
プロジェクト実現までのスケジュール
円借款プロジェクトを前提とした場合、事業を実施する前に L/A(ローンアグリーメン
ト)が日本政府とインドネシア政府との間で交わされる。それまでに実施する必要がある
項目を以下に示す。
-
環境省(BAPEDALDA)より EIA(環境影響評価)および LARAP(土地買収および
住民移転アクションプラン)の承認を得る必要がある。
-
交通需要予測、経済・財務分析、概略設計および事業費などの精度を高めるためより
詳細な調査を実施する。
-
スマラン市、中部ジャワ州の開発計画の将来道路ネットワークに北スマラン環状有料
道路を追加する。
-
土地買収、住民移転を完了する。
本プロジェクトを道路総局(Bina Marga)および公共事業省の要請リストに上げ、国
-
家開発計画庁(BAPPENAS)に申請して、国家として正式に要請リストに記載する。
インドネシア政府から日本政府に正式にローンの要請をする。
-
次に示す表は、日本政府に正式要請をするためにインドネシア政府、地方政府および関
連団体が実行するアクションプランの一例である。
表 S-38
円借款プロジェクト要請関連手続きスケジュール
2007
項目
2008
2009
4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 1 2 3
環境影響評価(EIA)調査
EIA承認
土地買収・住民移転アクションプラン
(LARAP)調査
LARAP承認
地域開発マスタープランのレビュー
土地買収
追加調査(必要であれば)
ロングリスト申請用案件の選定
(公共事業省)
ロングリスト策定(国家開発庁)
F/Fミッション
アプレイザルミッション
E/N, L/A締結
8.2
事業開始までのリスク
事業開始までに発生する可能性のあるリスクを次に述べる。
他の新規高速道路開発プロジェクトに同じく本プロジェクトも環境影響評価(EIA)お
よび土地買収および住民移転アクションプラン(LARAP)の承認を取得する必要がある。
EIA および LARAP の承認を申請するためにより詳細な調査を実施する必要があるが、こ
れにはそれぞれ約 6 ヶ月間の期間が調査必要であり、承認申請後に承認が発行されるまで
通常さらに3ヶ月ほど必要である。
EIA ではステークホルダー・ミーティングやプロジェクト・アフェクテッド・パーソン
ズ(PAPs)へのコンサルテーションを通して、関係者の合意形成を行わなければならない。
所定の手続きを踏み、計画通りの日程で合意形成を行うために、細心の注意を持って実施
しなければならない。この作業に大きく手間取るようなことがあると、事業開始を遅らせ
るばかりでなく、実施そのものに影響を与えることもしばしば起こり得る。
土地買収は LARAP が承認された後、即座に取り掛かれることになっている。しかしな
がら、買収予算確保のためには地域開発マスタープランへの本プロジェクト追加などが必
要になる。この計画の変更作業は、EIA および LARAP の詳細調査および承認作業と並行
して行うことが可能である。マスタープランが変更され、LARAP の承認が下りれば予算
獲得の大きな障害を取り除くことになり、作業の進捗を助けることにつながる。
住民移転の進捗は往々にして計画よりも遅れることがある。そのため余裕のあるスケ
ジューリングが肝要であるが、移転対象者がしっかり納得するためにも移転作業が所定の
工程を踏んでいるか、また補償費が対象者に直接支払われているかなどを正確にモニタリ
ングする必要がある。移転問題はしばしば事業開始時期、工事の進捗度および工期の延長
に大きく影響するため、実施には細心の注意が必要である。
インドネシア政府の実施機関である公共事業省は独自に円借款プロジェクトを要請でき
るわけではなインドネシア家開発計画庁(BAPPENAS)が要請を承認し、財務省(日本政
府)に国家として正式に要請を実施する。そのためには公共事業省が本プロジェクトの必
要性・妥当性などを国家開発計画庁(BAPPENAS)に納得させ、要請を決定させる必要が
ある。さらに、道路総局(Bina Marga)は公共事業省内で、他総局との調整をして本プロ
ジェクトを公共事業省の海外からの融資を活用する案件として国家開発計画庁
(BAPPENAS)に要請する必要がある。道路総局は円借款プロジェクト実現のため、コー
ディネータとして各関連団体でのコンセンサスを形成し、必要な手続きが予定通り進んで
いるか確認し、実行していかなければならない。
8.3
事業実施期間中のリスク
一旦事業が実施されるとリスクは技術的および財務的なものになる。技術的リスクは軟
弱地盤に関する問題が予想できる。本調査では土質調査を実施し、5箇所でボーリング調
査を実施したが、より詳細な調査を実施することによりさらに厳しい土質条件の地域が出
現する可能性があり、建設費を増大しないとは言い切れない。地盤沈下の問題も収束に向
かうべく地下水の揚水を管理する必要がある。現在のペースで継続的に沈下が進行すると、
維持管理(O&M)費が増大し、プロジェクト全体の経済的・財務的実行可能性が低下する
恐れさえある。また、土地買収や住民移転問題がこじれた場合も事業費を増大させる。
財務的なリスクは市場に左右される。最も重要なリスクは為替レートと物価上昇率であ
る。海外通貨(本プロジェクトの場合は円)が予想外に下落した場合や、突然のインフレー
ションがルピアの同等の下落を伴わずに引き起こされた場合は、事業費が増大してローン
額が不足する事につながりかねない。このような事態のために適切なリスクヘッジを実施
しなければ、最悪の場合に事業の一部スコープダウンにつながることもありえる。
9. 調査対象位置図
Semarang
Scale: 1/250,000
図 S-21
調査対象位置図
10. 結論と提案
10.1
結論
本調査で得られた本プロジェクトの結論は以下のとおりである。
-
北スマラン環状有料道路は既存の一般国道である Jl. Seliwangi とスマラン北環状道路
沿って整備する。
-
北スマラン環状有料道路は経済的な収益率が高く実行可能性に富む。
-
北スマラン環状有料道路は民間セクターが独自に資金調達し、
整備するのは困難である。
-
北スマラン環状有料道路の運営・維持管理(O&M)は財務的収益率が高く、民間セク
ターが参入しても収益を上げることが可能なため、PPP スキームの活用が有効である。
-
北スマラン環状有料道路はスマラン市の道路ネットワークの機能改善を促進する。
-
北スマラン環状有料道路の整備にあたり土地買収の対象になる世帯数は 100~200 件程
度と予想される。
-
自然および社会環境面での懸念事項は所定の手続きを踏む事により解決できる。
-
本邦技術は既存道路上に高架橋を建設する際の早期施工法が特に有意である。
-
整備順序は経済性・事業の周辺への波及効果などを勘案して、W1+E3 区間(2014 年
供用開始)
、N2 区間(2024 年供用開始)の順に進める。
-
W1+E3 区間の事業費総額は約 13,075 億ルピア(約 169 億 8,000 万円)に見積もる。
(直接工事費:約 9,693 億ルピア:約 125 億 8,900 万円)
-
円借款は W1+E3 区間整備への STEP 活用など有益に活用することが可能であり、STEP
活用は総返済額の節約や、年間返済額の縮減にもつながる。
10.2
提案
本調査で得られた結果から、本事業実施に向けて以下の提言を行う。
-
公共事業省による環境影響評価(EIA)および土地買収および住民移転アクションプラ
ン(LARAP)策定のための調査の早急な実施と、環境省からの承認を取得する。
-
公共事業省による EIA 調査実施時に所定の手続きを踏み、ステークホルダー間の合意
の形成を図る。
-
スマラン市計画局が公共事業省と協同してスマラン市開発マスタープランの改定を行
い、北スマラン環状有料道路を将来道路ネットワークに追加する。
-
公共事業省およびスマラン市が土地買収、住民移転、補償費支払を所定の手続きを踏ん
で実施する。
-
公共事業省は事業実施に関するより精度の高い見通しを得るため、
より詳細な調査の実
施を検討し、必要であれば SAPROF などの活用も考慮する。
-
公共事業省がインドネシア国内の関係省庁および団体の調整を実施し、国家開発計画庁
による承認を経て、北スマラン環状有料道路を正式に要請案件として取り上げる。
-
北スマラン環状有料道路から延びる都市間有料道路の一路線であるスマラン-Demak
区間とのジャンクションは Sta. 11+550 付近に計画した。この2区間は同時に開通する
ことが最も望ましいが、多くの場合その実現は困難である。ジャンクション建設前にス
マラン-Demak 区間の事業実施機関による詳細な計画・設計が必要である。
-
Kalibanteng 立体交差の関連団体との公共事業省によるきめ細かな調整が必要である。
(詳細は6章7節参照)
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