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「バングラデシュの教育改革を考える」 ~現地調査から見えたもの

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「バングラデシュの教育改革を考える」 ~現地調査から見えたもの
GCMP2013 冬プログラム活動報告書
A チーム(教育チーム)
「バングラデシュの教育改革を考える」
~現地調査から見えたもの、チームアクション~
大谷茉莉花
高橋真一
新倉奈々
古川理沙子
村上綾野
薄井大地
0
<目次>
1. はじめに
1-1 教育チーム 日本人メンバー紹介
2
1-2 教育チーム バングラデシュ人メンバー紹介
3
1-3 バングラデシュの教育制度に関する基礎情報
3
2. 渡航前準備
2-1 タイムスケジュール
5
2-2 映像コンテンツの作成
8
3. 現地活動
3-1 タイムテーブル
10
3-2 調査地情報
11
3-3 Jafar からの聞き取り
11
3-4 親ヒアリング
13
3-5 授業見学
14
3-6 先生インタビュー
15
3-7 Chairman プレゼン
16
3-8 特別授業
19
3-9 ディスカッション
21
4. アクションプラン(バングラデシュの教育改革)
4-1 教員育成支援(JICA プログラムを活用した支援事業)
23
4-2 教員育成支援(Benesse または GCMP による BOP ビジネス化プラン) 24
4-3 Teach for Bangladesh への運営支援
4-4 高校での職業訓練プログラムの導入
1
26
27
1.はじめに
1-1 教育チーム 日本人メンバー紹介
1.所属
2.途上国に興味をもったきっかけ
3.なぜ教育のテーマを選んだか、教育にはどんな力があると考えているか
新倉奈々
大谷茉莉花
にいくらなな
おおたにまりか
学生参加
学生参加
東京都出身
岡山県出身
1.一橋大学 商学部 1年
1.東京工業大学
2.本やドキュメンタリー番組(グラミン
公共システムコース 3年
銀行やBRACに関する)
2.
「絶対貧困」という本を読んで、数値で
3.将来は行政に関わりたいと思っていて、
は表れない途上国の生活に興味をもった
教育は国の未来を決定する、重要なテーマ
3.人の基礎を形作る教育に変革をもたら
だと思ったから。
すことで世界を変革出来ると考えるから。
村上綾野
高橋真一
むらかみあや
たかはししんいち
社会人参加
社会人参加
工学部
社会工学科
京都府出身
1.株式会社ベネッセコーポレーション(神
1.株式会社産業革新機構(一橋大学商学
戸大学 発達科学部卒)
部、ハーバード大学経営大学院卒 MBA)
2.フォスタープランの会誌など
2.日々の業務にて接する各種情報
3.
「生きることは楽しい」と思える人生を、
3.国の発展を考える上で教育は全ての根
全ての子ども達に与えてあげたいと思った
本だと考えています。教育力を上げる事で
から。教育には子どもの未来の選択肢を広
人々の選択肢の幅を広げ、結果として
げ、主体的な人生を歩ませる力があると考
会全体の活動が改善されます。同時に教育
えています。
は最も変える事が困難且つ時間の掛る分野
でもある為今回取組みました。
2
社
古川理沙子
薄井大地
ふるかわりさこ
うすいだいち
学生参加
スタッフ参加
福島県出身
栃木県出身
1.群馬県立女子大学
国際コミュニケー
1.有限会社学力会(早稲田大学
政治経
ション学部 1年
済学部卒)
2.途上国に関する本やドキュメンタリー
2.バングラデシュに学生を派遣する団体
番組・映画、ニュース
のスタートアップに友人から誘われたこと
3.途上国の子供たちと同じ「学生」とい
3.日本の教育問題解決に携わる身として、
う共通項で関わり、教育・学びについて受
途上国の教育に触れる経験はきっと意味が
ける立場以外の異なる視点から途上国の教
あると思ったから
育に触れることによって視野を広げ、自分
自身の成長につなげたいと思ったため。
1-2 教育チーム バングラデシュ人メンバー紹介
Jafar Saleh
Marjan Hossain Mitu
University of Dhaka
University of Dhaka
Major : Anthropology
Major : Chemistry
(Post Graduation)
(Grade-2)
Chandpur, Chittagong
Bhola, Dhaka
1-3 バングラデシュの教育制度に関する基礎情報
バングラデシュの教育制度は「5-5-2制」で、Primary School(1~5年生)・
Secondary School もしくは High School(6~10年生)・Collage(11~12年生)と
いう区分となっている。また、これとは異なる独自の教育を行う Madrasah と呼ばれる宗
教学校もある。
※なお、本報告書において特に断りがない場合、小学校は Primary School を、中学校は
Secondary School / High School を、高校は Collage を指す。
3
施設数
総数
Public
Primary
女子
子校
校
比
数)
率)
(女
(うち
総数
女性教
師数)
師比
総数
子生徒
数)
率)
(女
子生
徒比
率)
51.20
Private 41013
182628
38.54
7053640 3491881
49.50
計
78685
395281 194538
49.22 16957894 8563133
50.50
Public
18723
3375
47917
22.73
53.49
317
147
7231
2417
33.43
19040
3522
18.50 218011
50334
Public
3068
535
17.44
77320
Private
256
67
26.17
3324
602
Public
37672
性教
(うち女
9904254 5071252
計
University
(女
58.38
計
Madrasah
(うち
生徒数
212653 124150
Secondary Private
College
教師数
3
18.03 210780
46.37
70388
7240497 3873157
225277
106519
47.28
23.09
7465774 3979676
53.31
16265
21.04
1505166
716423
47.60
9900
2310
23.33
889109
358523
40.32
18.11
87220
18575
21.30
2394275 1074946
44.90
0.00
104
0
0.00
6064
231
3.81
Private
9358
1177
12.58 107743
10911
10.13
2194863 1167427
53.19
計
9361
1177
12.57 107847
10911
10.12
2200927 1167658
53.05
Public
31
0.00
9163
1656
18.07
262941
81988
31.18
Private
51
0.00
5710
1701
29.79
200939
49125
24.45
計
82
0.00
14873
3357
22.57
463880
131113
28.26
(バングラデシュ Ministry of Education の 2010 年統計をもとに筆者作成)
今回訪れた村の小学校での聞き取り調査によると、テストが年に3回(4~5月・7~
8月・10月)実施され、100点満点中33点で合格となる。また、1年生から進級試
験があり、パス出来なければ留年となる。教師は、実際に教え始める前に1年半のトレー
ニング期間があり、その後も年に2~3回、地域の3校の先生たちが集まる研修機会が設
けられている。
その他バングラデシュ国内の教育に関する基本情報は、
「3-3 Jafar からの聞き取り」
を参照されたい。
4
2.渡航前の活動
2-1タイムスケジュール
内容
11 月 30 日
・自己紹介
メール上
全員
12 月 3 日
・課題提示
メール上
課題①:過去の教育チームの報告書をじっくりと読み込み、疑問・質
全員
問をメールで共有
課題②:過去の報告書を読み込んだ上で、「自分はこういったことを
知りたい!見たい!聞きたい!」、または「こんなアイデアを現地に提
案したい!」といった内容を自由にまとめてメールで共有
12 月 8 日
<目的>
(ワークショップ) ①顔合わせ
HIS 本部
②現時点での各自の興味・提案・問題意識の共有
全員
③今回の渡航でアプローチする対象(教師・生徒・親)を検討する
②に関して
<共有した問題>
・ドロップアウト
・進路選択(類型選択時とドロップアウト後)
・女性の教育と就職
・教育システム・授業の質
・教師の質(教師自身の意識、Private Teacher 問題)
5
③に関して
<共有した提案>
・子供向け
-大学生によるロールモデル講演
-E-education
-フリーペーパー
-家庭一人でできる家庭学習
-子ども同士の支援
-職業図鑑
-Private Teacher
・親向け
-授業参観・面談など教師とつなぐ機会
・教師向け
-「考える」ことができる教育プログラムを提供
12 月 15 日
<目的>
新宿
① フォーカスする対象(生徒・親・教師)の決定
全員
② 渡航前に SWITCH!メンバーにメールで聞き、明らかにしたい不
足情報・疑問点を共有し、取捨選択
<結果>
① に関して
ドロップアウトに焦点をあてるという方向で話が進んでいたため、基
礎部分の理解が必要不可欠な教育において、ドロップアウトを減らす
ためには初等教育が重要だという結論に至った。したがって今回は、
親や教師への働きかけをする中でも特に初等教育に焦点を当てるこ
とになった。
12 月 22 日
<目的>
神谷町
・長期的目標と短期的目標の設定
全員
・チームプラン(現地で行うこと)の最終決定
<決定事項>
・短期的目標:授業実施
–対象:ドロップアウトしていく小学生
–目的:学ぶ楽しさを感じさせ、学びへの意欲喚起
・長期的目標① :職業図鑑・映像コンテンツ
–対象:中高生
–目的:ロールモデルを持たせて意識を高める
6
・長期的目標②:密着取材(Private
Teacherの問題掘り下げ)
–対象:教師
–目的:学ぶ楽しさを子どもが感じられる教師育成
12 月 23 日
<目的>
早稲田
・職業図鑑作成
大谷・薄井
<結果>
GCMP の WEB サイトのテンプレートを使用して、簡易版の職業図
鑑を作成した。Teacher や Doctor、Banker など6つの職業を掲載し、
うち1つ(Teacher)には詳細説明(項目は License and Acility や
Average Salary など)を載せるリンクを作った。
※下記 URL から職業図鑑のデモ版を閲覧可能
http://www.gcm-p.com/member_jobdemo.html
12 月 24 日
<目的>
一橋大学
・コミュニティライブラリに導入するバングラデシュからの留学生へ
新倉・古川
のインタビュー映像の撮影と不足情報の聞き取り調査
<結果>
→2-2参照
12 月 27 日
・課題提示
メール上
課題:SWITCH!メンバーから送られてきた以下の英文献を各自 2 つ
選んで 1 月 3 日までに読んでおく
① Participatory Evaluation : Cause of Primary School Drop-out
②
Bangladesh Primary Education Annual Sector Performance
Report 2012
③ Innovation in Primary Education in Bangladesh
Primary
Education
in
Bangladesh-Viability
Millennium Development Goals
7
of
Achieving
2-2 映像コンテンツの作成

主な概要
渡航前の活動として、日本に留学しているバングラデシュ学生と直接会い、バングラデシ
ュについて話を聞かせていただくとともに、映像コンテンツの撮影にご協力していただい
た。この映像コンテンツの撮影は、前回のプログラムの活動を引き継ぐものであり、以下
は前回の教育チームレポート(2012夏)を引用したものである。

前回(2012夏プログラム)の活動
“SWITCH! とは、ダッカ大学の学生や卒業生を中心としたグループで、youth platform を
作り若者から社会起業家を輩出することを目的としている現地の団体である。まだ発足し
て半年ほどの新しい組織であるが、様々な社会貢献活動をスタートさせている。GCMP2012
夏プログラムの通訳も SWITCH!メンバーが務める。
この団体が今取り組んでいて、かつ、もっと普及させようとしているプログラムの一つ
に Community Library(以下、CL)の建設がある。CL とは、都市部から離れた地域に、
民家の空き家や学校の一部屋を借りて、そこを図書館にするという SWITCH!のプロジェク
トのことである。彼らはすでに5つの CL を建設し、そのうち4つがすでに運営されてい
る。
農村地域に住む人々は、本を買うためには高い交通費をかけてダッカなどの都市部に行か
なければならないという問題も抱えているため、CL 内には本屋も併設してその場で本
“私たちはコミュニティライブラリをいかに活性化させるか、つまり何が生徒の気をひく
かということにもっとも焦点をあてた。そこで考えたのが映像コンテンツの導入だ。生徒
たちは本でも興味をひかれるであろうが映像だったらもっと興味を示すのではないかと考
えた。
映像の中身としては、今回の調査で海外に興味を持つ生徒が多かったことから海外のこと
を知ることができる映像を中心としたものにする予定である。これは、「将来地域に貢献
するリーダーを村から輩出する」というチームのミッションにつながるコンテンツである。
例えば日本にいるバングラデシュ人留学生の学生生活を紹介することである。バングラ
デシュ人留学生の学生生活を撮ることで学生たちは日本の風景や文化を映像を通して知る
ことができる。そして最後に映像に出てきた本人から直接本の紹介をしてもらう。この映
像を見た生徒たちはその本を読んでみたいと思う気持ちに駆られるであろうし、その本を
図書館で借りることで図書館の活性化を望むことができると考える”
8

活動目的
前回の活動を引き継ぎ、映像コンテンツにより CL の活性化を図る。また、成功者、目標と
なる人からの熱いメッセージを伝え、バングラデシュの中高生に将来の展望や勉強へのモ
チベーションを与える。

内容および流れ
スカイプミーティング(12/23 夜)を行い、過去参加者と映像コンテンツの目的や内容に
ついて確認
↓
バングラデシュ人留学生の方と会い、活動の目的を説明後、以下の問いについてベンガル
語でビデオ撮影を行った。
(12/24)
・どんな思いで勉強しているのか?してきたのか?
・なぜ日本に来たのか?
・高校、中学では何をしていたか?
・日本での留学生活について
など
↓
現地で SWICH! へ撮った映像を渡す。
↓
(予定)映像コンテンツとして編集後、各CLへ配信

今後の展望
今回撮影を行ったのは、パイロット版として一回だけであり、今後も引き続き映像コンテ
ンツの数を増やしていくのが望ましい。加えて、CL配信後のフィードバックも受け取り
たい。また、渡航中にバングラデシュの学生と話して、日本への留学を望む学生が多いこ
とに気付いた。今回のような活動以外にも、SWICH! と日本に留学生になんらかのネット
ワークを作れば、お互いに情報交換やモチベーションの高めあいができるのではないかと
思った。今後のアクションプランとしては、Facebook 上で日本にいる留学生とバングラデ
シュにいる留学希望学生のグループを作り、相互の情報交換や交流を図ることを考えてい
る。
9
3.現地活動
3-1 タイムテーブル
活動内容
1月6日(日)
活動場所
【朝】Jafar、Mitu からヒアリング
宿舎
(→3-3)
【昼】学校訪問
Jhogonathpun Primary
・基礎情報調査(児童数、科目等)
School / Jhogonathpun
・High School 校長先生らとディスカッシ
High School
ョン(→3-4)
1月7日(月)
【夕方】親インタビュー (→3-4)
宿舎近くの民家
【朝~昼】学校訪問
Jhogonathpun Primary
・教科書等調査(写真保存有)
School / Jhogonathpun
・授業見学(録画保存有)
(→3-5)
High School
・Primary School 先生インタビュー
(→3-6)
【夕方以降】翌日の活動準備
1月8日(火)
宿舎
<2チームに分割>
① Chairman プレゼンテーション
Upzila Office
(3→7)
②学校訪問
Jhogonathpun Primary
・High School ディスカッション
School / Jhogonathpun
・Primary School 特別授業(3→8)
High School
10
3-2 調査地情報
Khulna Division / Jossore Destrict / Upa-zilla of Jossore / Basundia Village
クルナ管区(Khulna Division)は、バングラデシュの南西部に位置しインドと接してい
る。ガンジス川の下流に形成されたデルタ地帯で、面積はおよそ 2 万 2273 平方 km。人口
は 2000 年の統計で 1446 万 8819 人。
3-3 Jafar からの聞き取り
2013 年 1 月 6 日
面談議事録
インターナル Jafar
小学校について
・先生
・尊敬はされている
・先生からのコミュニケーションが一方的、高圧的なので生徒側が発言できない
環境
・先生の動機づけは?→給料は低水準、クラスの準備時間がない(女性の場合特
に)小学校は 6 割が女性→家族との両立
・時間は 10 時から 16 時
・プライベート授業は高校での問題、小学校では余り見られない。
・給料 10000 タカ・月給小学校、高校では 15000-24000 タカ
・数学等の先生は補修等で追加収入があり得る
・法律上、自分の学校の生徒に対して対価を貰う補修はできない
・地方では原則教師か地方政府以外の職は存在しない、民間企業での就職機会は
ゼロ
・教師は政府関連職の中でも給与水準が低いので人気は低い
・小学校での制服制度はバラバラ
・JICA が支援をした上で先生向けのトレーニングセンターもできている
・Class 10 を完了する事が先生になる必要条件、その条件を満たした後に中退し
ても受験資格を受けられる
・先生への良い授業を行う事に対しての動機づけが存在しない
・国立大学は 7000 タカ(年額)、私立大学は 15 万タカ
・国内で国立大学は 17 大学
11
・ダッカ大学の入学率は 20 倍(4500 人、応募者 20 万人)
・毎年高校卒業者は約 20 万人、しかし国立大学の応募者総数は 3 万人、結果とし
て多くの生徒がドロップアウトするか、私立大学への進学となる(57 校)
・政府関連の 85%がダッカ大学出身者で占められている
・人気業種は? 政府関連、金融機関、
・海外への就職としては UK、カナダ等が多い
3-4 親ヒアリング

目的
教育に対する親の意識調査
子どもの家庭環境調査

調査内容
学校に行っている子どものいる家庭に、2グループに分かれて訪問。母親に対し通訳を通
して質問する。ヒアリングはそれぞれの家庭の庭で行われた。訪問家庭数2。午後三時か
ら四時頃。

仮説
Ⅰ親はあまり子どもの教育に関心がない
Ⅱ経済的余裕がないので、教育費はあまりかけてない

質問事項
①家族構成
②扶養者の職業
③家で勉強をするか?
④自分の子どもにどこまで教育を進ませたいか?
⑤子どもが落第したらどうするか?
⑥学校以外の教育費はかけているか?

調査結果
家族構成
A
B
夫婦、祖母、夫の兄弟、娘二人
夫婦、祖母、息子二人(13歳、
(5歳、10歳)
18歳)
12
扶養者の職業
Businessman ( 村 で 働 い て い
農家の夫、専業主婦
る)の夫、専業主婦
自宅学習について
家族が勉強を教えている
毎日6時間程度(長男)
(主に社会について教えてい
るといっていたので、宗教、道
徳やしつけなどを指している
と考えられる)
進学について
出来れば University に進ませ
College。長男が入学試験のために
たいが、女の子は早く結婚する
勉強中。
から行かないだろう
落第について
家 庭 教 師 を 雇 っ て 、 PSP 先生が学校で教えることに対す
(Primary School Certificate)
る意識が低い←Private Teacher
に合格させる。しかし金銭的な
があるから
問題でどうなるかわからない
学校以外の教育費
ほとんどかけていない。本や、
教科書以外の教材は家にない。

考査
A,B どちらの家庭でも、衣服や生活環境を見る限り、金銭的に困窮している様子はうかがえ
ないが、教育費にかけられる費用は限られているようだ。
A の家庭は教育にあまり関心がない、もしくは深く考えていない様子。
母親が言っていたように、村では早婚が多く、10代で結婚することは一般的。したがっ
て、女子の大学進学は限られたものになるだろう。
“教育”がしつけや宗教などとして意識されていることから、学業的教育より人間的教育
に重点がおかれていることがわかる。
B の家庭では、子どもが6時間以上勉強しているといっており、バングラデシュの受験事情
の厳しさが伝わってくる。
生徒が実感できるほど、先生の教える意識が低い。

まとめ
親の教育への意識は、差はあれどもあまり高くなく、教育費もあまりかけてない。
経済的に教育費がどうしてもかけられないというよりは、教育にそこまで強いインテンシ
ブを持っていない様子。
13

感想
結果はおおかた予想通りであるが、B の家庭では6時間も勉強している子どもがいることに
驚いた。また、教育=学業という固定観念を持っていた私にとって、人間的教育という観
点は新鮮であった。バングラデシュの親も子どもにより良い教育を受けさせたいと願って
いることはいうまでもないが、日本よりそのインテンシブは低い。日本は近代以前から教
育を重視する国民性をもっていて、それが迅速な近代化と経済発展を可能にしたのだとい
えるが、バングラデシュは識字率の低さや本の有無を見るかぎり、教育に関心のない国民
性なのだろうか。

反省点
時間が限られていたことや、準備不足のところもあり、詳しく聞くことができなかった。
質問事項を絞り込み、アンケート用紙にまとめていれば、スムーズに進行できたと思う。
また、今回訪問できたのは二件だけなので、村の一般的な教育意識の調査にまでは到達で
きなかった。
3-5 授業見学
調査目的:事前調査から、子供に考えさせる授業が行われていないという情報を元に、実
際にどのような授業が行われているのかを体験調査する。
実施日時:2013 年 1 月 7 日
実施場所:バスンディアの小学校(Jhogonathpun primary school)と中学校(Jhogonathpun
High School)
調査方法:学校から見学及びビデオ撮影の許可を得て 3 人 2 グループに別れ、グループ 1
は 2 学年と 8 学年の英語の授業、
グループ 2 は 5 学年の英語と 10 学年の数学の授業を見学。
教室の後ろで見学させていただいた。
調査結果:グループ 1(担当:薄井・大谷・古川・Jafar)
学年/教科
2 学年 English(& Math)
8 学年 English
人数
32 人(女子 20 人 男子 12 人)
31 人(女子 16 人 男子 15 人)
・1から50まで数字を書き出す課題
が出される・挨拶
授業内容
・先生が英単語を読み、生徒がそれ
を反芻する
14
・Article(冠詞)の授業
・途中から数学に切り替わる
・1から50まで数字を書き出す課題
が出される
気づき
・教師は授業中に教室内で通話して
・生徒の私語が一切ない
いた
・教師の「これ分かる人いる?」と聞
・通路を隔てて女子と男子の席に分
くと、複数の生徒が積極的に挙手して
かれていた
いて、正解だとその子を褒めていた
・教師が生徒の背中を叩くという場
面が見られた
・授業途中、生徒全員に一人ひと袋
クッキーのようなものが配られた
(給食のようなものか?)
調査結果:グループ 2(担当:高橋・新倉・村上・Mito)
学年/教科
5 学年 English
10 学年 Math
人数
35 人
10 人(男子 7 人 女子 10 人)
・最初に前回までの確認
・挨拶
・英語の歌を歌う
・先生が該当のページを3回朗読、 ・20の因数について説明
復唱
–20の素数を使った因数分解を例題と
・先生が紙を貼る(字が小さい)
して先生が前で説明
-グループ分け→板書
→ブランクを埋める問題
–x^2+12x+20を生徒みんなに聞きなが
→個人で出来た子から先生に見て
ら解説
もらう→全員終わらずに終了
授業内容
・単語の学習
–難易度の高い問題を聞きながら前で
–単語カード(薄くて小さい)を前に
説明
貼り、意味を確認
基本的には先生が各問題について前
・文章を 3 つの文章でまとめる
で解説するのを聞いているのみ。た
-出来た子から答え合わせ
だ、すべての生徒が集中して解説を聞
いていた。また、日本と異なり、類題
を各自で解くという時間は取られて
おらず、基本となる問題を 2 問解いた
後は、急に難易度の高い問題を説明し
ていた。
15
・先生の質問文と板書に文法的に ・子ども達が理解している前提なのか、
おかしな部分が見られる
わからない部分は Private Teacher と
・GW の導入に意味がない
して教える予定なのかは不明。
・文法等の説明はほぼない
・前に掲示するカードはほとんど読
・専門に分かれたのちの理系クラスだ
めない
ったこともあるのか、全体的にはハイ
・すべての子どもの理解状況把握は レベルな授業展開だと感じた。教科書
気づき
していない
の説明は丁寧ではなく、問題の難易度
・生徒はまじめに取り組んではいる も高めであった。
が、ほかの人の発言は聞かない(と ・因数分解のやり方が日本と異なって
いうより、ほかの人の発言は聞こえ いた。
ない)
X^2+x-20
=x^2+5x-4x-20
*子どもが文章の意味を理解して =x(x+5)-4(x+5)
いるかどうかは不明
=(x+5)(x-4)
3-6 先生インタビュー
調査目的:教育に対する教師のモチベーションの低さが教育の質を下げている一因だとさ
れており、Private Teacher との兼業などが深刻な問題になっている。教師の
生の声を聞くことで教育現場を知るためにインタビューを行なった。
調査日時:2013 年 1 月 7 日
実施場所:バスンディアの小学校(Jhogonathpun primary school)
実施方法:3 人 2 グループに分かれて事前に用意した質問に一問一答形式で答えてもらうイ
ンタビューを 1 人 30 分程度行なった。
調査結果:
<質問項目>
1
出身は?
2
最終学歴は?
3
どこで教え方を学んだか?
4
教師歴は?
5
担当学年と教科
6
授業展開をどうやって決めるか?
16
7
小学校でどんな教育が必要だと思うか?
8
なぜ教師になったのか?
<回答>
教師 A
質問
教師 B
教師 C
約 30km 離れた場所
1
約 20km 離れた村
約 10km 離れた場所
(毎日いくつかの交通機関
で通っているためとても
お金がかかる)
2
College(数学の修士課程)
College
College
-----
-----
10 年
10 年
1年半トレーニングセンタ
ーに行く。それが政府によ
3
る施設で学ぶ。年に2~3
回研修に行くが、それは教
科書の読み解き方レベル。
10 年
4
5
1~5年のEnglishと数学
3 年 Bengali
1 年 Bengali
4年
Social science
4 年 English
5年
Science
5年
Social Science
トレーニングセンター
教師用補助教材はなく、学
年4回、先生のための研修
(PTM)で準備している。
校に来るのに時間がかか
会のようなものが政府に
教育のエキスパートが来
るため授業の予習をする
よって行われている。
て教え方を教えてくれる。 時間はない。
6
教科書以外の教師用の補
助教材はなく教科書のみ。
1年から5年まで週や月1
のテストは教師が作成し
ている。
絵を描く、体育、音楽
7
(今やるとすれば授業の
-----
-----
-----
-----
後)
教師になったのはそれが
8
“HOBBY”だから。
教えることが好き。
他
・パソコンなどの授業をや
----17
(教える上で最も難しい
ことは? という質問に対
りたいけどできない
して)農村の学校では生徒
・学校に来て教えて帰る、
が集中しない。とくに夏は
それ以外で教えることは
教室内がとても暑くなる
ない
ため、生徒が集中せず指示
・他の先生が休んだときに
に従わない。
他の教科を教えることが
ある
反省
事前に質問をきちんと決めておかなかったため、データとして相対的に照らし合わせるこ
とができなかった。インタビュー前に質問をきちんと英訳するところまで落とし込んでお
くべきだった。
3-7 chairman プレゼン
実施日時:2013 年 1 月 8 日
実施場所:Basundia の小学校
対象:Basundia の chairman、小学校の教職員
プレゼン内容:
我々の渡航目的
バングラデシュの教育の現状を知り、改善提案をし、アクションを起こすこと
村での 3 日間の調査内容
インタビュー、授業見学、ディスカッション、特別授業
調査内容からの気づき
① 指導に関しては教師の裁量によるところが大きく、困難を感じている。
② 求人数が多くないことによって、教育への意識が低下している。
提案事項
① ・日本における PTA の様なシステムを作ることで、教師だけでなく保護者も
巻き込んで教育意識に変革をもたらすことが出来る。
・自治体や学校が主体となって細かい教育指導要領を作成し、教師にブリーフ
ィングすることで、教師個人の負担が軽減されると伴に、教育の質が保たれる。
② ・短期プランとして、教師・保護者・生徒が将来の職業を意識した日常生活を
送ることでより適切な教育をもたらすことが出来るのではないか。
・長期プランとして、農業・工業などについての職業訓練学校を設立し、技術
をもった若者を育成することで、バングラデシュの労働力の魅力が増す。
18
質疑応答:
質疑
応答
1.指導要領について。バングラデシュは日本
1.日本からノウハウを輸出することは可能
などの先進国と異なりノウハウがないので
である。
作成そのものが厳しいのではないか。
2.職業訓練学校に関して。バングラデシュは
例えば、外資企業が学校を作り卒業生をその
そもそも雇用が少なく、先進国からの支援を
まま企業に雇用するという形をとることも
必要とする国である。職業訓練学校で教えら
出来る。安価な労働力は先進国の企業にとっ
れるような人材もいない。またいくら技術を
て魅力の大きいものであり、技術を身につけ
身につけたところでそもそも雇用がなけれ た労働力を求めて参入したい企業もあるか
ば意味がないのではないか。
もしれない。教員や資本を含め学校そのもの
を海外から輸入することは不可能ではない。
また修練したバングラデシュ現地の技術者
が将来的に自身のビジネスを起こす可能性
も大いにあり、雇用数の拡大に繋がるはずで
ある。
3-8 特別授業

目的
バングラデシュの子どもたちの「考える力」がどの程度あるのか、日本の子ども
たちと差があるのかを調べること。
【背景】
バングラデシュでは、国民の「思考力不足」も大きな課題である。例えば「汚い
水は健康に悪い」
「自分が飲んでいる水は汚い」という 2 つの事実があったとして
も、
「水のせいで健康を害するから、水を飲んではいけない」という結論にたどり
着けないということが言われている。しかし、「考える力」はそもそも人には備わ
っているものであり、それが失われているとすれば教育によるものが大きいと考
えられる。

実施日時・場所
2013 年 1 月 8 日 13:00~/Jhogonathpun primary school 5 年生クラス

授業受講人数
50人
19

授業概要

導入:日本についてのレクチャー
まずは日本という国について説明。事前にスライドを作成していたが、停電
のため PC のバッテリー切れ+プロジェクターが使用できなかったため、黒板
にイラスト等を書いて説明した。
説明内容は、日本とバングラの位置関係、日本のもの紹介(ドラエモン、
TOYOTA、SONY など)
、日本とバングラの類似点・違い(人口/国土面積/
四季があること)など

本編:折り紙授業(子どもたちの「思考力」確認)
「日本の子どもたちの遊びを教える」として、折り紙授業を実施。まずはお
り方を教えながらハトを全員で折る(折り紙についての基礎を習得する)
。そ
の後、サンプルを渡し「同じものを折って」と伝え、その課題に対する問題
解決の手法を見ることで、子どもたちの「考える力」を確認した。

締め:
「夢」を考える
子どもたち自身に「何になりたいか」をベンガル語で紙に書いてもらい、そ
の後発表してもらった。事前情報で聞いていた通り、医師、学校の先生、エ
ンジニアなどのあこがれの職業を言う子どもが多く、あこがれの域を出ない
状況であることが分かった。
(ただし、小 5 では日本の子どもも同じ状況であ
るため、この状態が悪いとは一概には言い切れない)

仮説と結果・考察
【仮説】
考える力がある場合、サンプルをみて空間構成を理解し折ることができたり、サ
ンプルを解体しそのとおりに折ってみるなどにより、サンプル同様のものを折る
ことができる。逆に考える力がない場合は、折り紙を前に何も折れないという状
況が発生する。
【結果】
全体の 2 割ほどの生徒がサンプルを解体して折りはじめ、追随した生徒もサンプ
ルの折り跡から、自ら理解して折ることができていた。この段階では日本の子ど
もたちとの大きな「考える力」の差は見られなかった。
【考察】
そもそも子どもたち自身は「考える力」を十分に兼ね備えている状態であり、成
長して「思考停止状態」となるのは、暗記中心の考えることを求められない教育
を長期間受け、それが習慣化したからであると考えられる。
20
3-9 ディスカッション
実施日時;1 月 8 日
参加者 ;高等学校教職員、PTA 代表者、自治体担当他 (約 20 名)
(GCMP 担当者;古川、薄井、高橋、村上)
今後のバングラデシュの教育向上に向けた提案に加えて、モデルとして日本の教育制度に
も言及した内容のプレゼンを行なった。流れとして、GCMP からのプレゼンを行なったあ
とに、質疑応答という形式で行われた。
GCMP よるプレゼンテーション
①
本紹介(バングラデ
シュとの相違点を中心
に)
③ 本の教育制度
東アジアの島国であることや人口や面積を説明、写真を用い
て四季やスカイツリーなどを紹介
6-3-3制、義務教育の期間や高校・大学の進学率、学費
など
④ 本の高度成長
の要因
・日本は、高付加価値の製造業で国際競争に勝つという戦
(前日夜に
略をとった。
Jafar らと話し
・学校教育は、組織を大切にする人材・優秀な技術者を生み
合い、それをま
出す教育を行なった。
とめて発表し
・産業と教育が噛みあったことが日本の発展の大きな要因。
た。)
【教師】
現在の産業に関する知識にアンテナを張ること。5年先・10
年先の国内の産業状況を常に見据えること。担当教科の授
業をするだけでなく、そういった生徒の卒業後の社会につい
⑤ ングラデシュに
おいて、「教師」
ての情報を、生徒・親に提供することも同じ比重で力を入れ
て行うべき。
「生徒」「親」の
それぞれがす
【生徒】
べきと考えられ
教師から積極的に卒業後の社会について学ぶこと。そしてそ
ること
れを踏まえて自分の進路を考えることで、学ぶ目的を明確に
すること。そのためにも最善のコース選択(8年生の終わりに
行う)をするべき。
21
【親】
産業と教育の関係を理解すること。そのために教師から積極
的に卒業後の社会について学ぶこと。その情報をもとに、子
どもの教育の機会をしっかりとデザインするべき。
GCMP のプレゼンテーションに対して質疑応答
・生徒の学習意欲は高い半面、経済的事情によりドロップアウト等が発生している。特に、
子供が Science コースへの進学を希望しているのにも関わらず、経済的面で(理系は文系よ
り学費が高い)親がコースを変更してしまうという問題が起こっている。
・最大の問題は学校教育を修了した後の雇用、特に地方では大きな産業が存在しない為難
しい状況が続いている。そのため農村では教育にお金をかける必要性を認識できない親が
とても多い
・その観点では将来的な職業或いは雇用に結び付く「職業訓練」プログラムには大変関心
がある。日本で機能しているのであれば是非バングラデシュとしても学び、導入したい。
・職業訓練学校を新しく作るとすると大変な話しになるが、既存の高校で職業訓練授業の
様なものを行う事は十分可能。特に、Agriculture と Technology など実技的な科目は農村
でも需要があるため、将来性がある。
・今回の GCMP による訪問は大変嬉しく思っている。是非今回の議論のみに終わらず、今
後も継続して貰いたい。
またこれらの私たちの提案に関する質問に加え、日本の教育システムや現状に関する質問
も多く寄せられ教育の質向上に対する意気込みが感じられた
22
4.アクションプラン <バングラデシュの教育改革>

提案概要
バングラデシュで「思考力」を育成しきれていないことや、学習内容が理解でき
ず、留年・ドロップアウトしてしまう理由として、授業展開・質の課題が大きい
ことが今回の事前調査・渡航調査の結果からわかった。これらの課題に対応する
ためには、教員のスキルアップと意欲向上が欠かせないと考えられる。そこで、
本チームでは、教員のスキルと意欲を向上するための継続的な支援策を検討・実
現させることを提案する。
また、あわせて、職業訓練というプログラムを高校教育にとりいれることで、学
校を、職業に関する知識を得られる場とし、卒業後の進路の確保につなぐことが
できるようにする。

目指す状態

思考力育成・ドロップアウトに関して

対子ども:思考力を身につけ、学習内容を理解できる授業を通して、留
年・ドロップアウトする子どもを減らし、9 割以上の子どもが初等教育(5
年)を修了でいるような状態をつくる。

対教員:卒業したての教員も含めた全ての教員が、子ども達の思考力を
育成し、その単元の学習内容を理解できるような授業展開ができるよう
になること。

職業訓練に関して
職業訓練を行うことで、卒業後の進路の確保と活躍の場を提供し、バングラ
デシュの経済の活性化につなげられること。

現状

子どもの思考力について【要追加調査】

5 年生クラスでは思考力自体は日本の子どもと遜色は見られなかった。

理系 10 年生クラスでは、難易度の高い微分積分の問題も理解している様
子が見られた。

その一方、バングラデシュでは思考力停止状態にあるという調査結果も
あり、また、学校の授業内容も子ども達に「考えさせる」というプロセ
スをあまり踏んでいないことが見受けられた。

【追跡調査・検討事項】
思考力を育成する授業方法や、思考力のレベル確認の方法などについて、
データに基づき確認・判断することが必要。
23

子どものドロップアウトについて

9 割の子どもが初等教育に入学するが、初等教育卒業時(5 年修了時)に
は約 5 割がドロップアウトしている。

ドロップアウトの割合は男子のほうが高い。

ドロップアウトする理由は複合ではあるが、
「留年」はその大きな要因の
一つであると考えられる。

ドロップアウト後は、ダッカに出てストリートチルドレンになったり、
リキシャの運転手をしたり、農業に従事したりしている。

教員の育成・意識について

中学校を卒業すれば、教員になる試験を受ける資格が与えられ、早けれ
ば 16 歳くらいで教員になる子どもがいる。

教師に対しては、子どもたちに配布する教科書以外の教材は与えられて
いない。

教師になった際に 3 か月間、その後も定期的に「研修センター」にて教
育プログラムの研修を受けている。
(ただし、そこで何が教えられている
かは不明)

上記の結果、教師自身の裁量と工夫で授業を展開している様子が見受け
られたが、日本の授業展開と比較して、
「クラス全体」という意識が希薄
であり、子ども達が授業内容を理解できるような授業展開にはなってい
ない。

職業訓練について

高校卒業後の雇用確保へより直接的に結びつく知識並びにスキルを提供
する事が求められている。

課題認識

現在のバングラデシュ国内では、子どもの思考力を育成することや、詰め込
みではなく子どもたち自身で理解することを目指した教育を行うことが十分
にできてはいないこと。そもそもそのような教育を行うべきであるという認
識を教師自身が持つことができていないこと。

教師として経験不足のまま教育現場に出ざるを得ず、さらにその経験不足を
補うツールが存在しないこと。

「教える」ということに意義を感じず、生業として携わっている教員が一定
以上の割合で存在すること。

職業訓練のプログラムが現在提供されておらず、ニーズを満たしていない状
況であること。
24
4-1 教員育成支援(JICA プログラムを活用した支援事業)

支援案

JICA が世界各国に向けて教育カリキュラム提供の支援を行っているため、
JICA からの支援を受けることで、より効率的に、教員育成の支援を行う。

なお、JICA はすでに初等教育の理数系教科において、バングラデシュのカリ
キュラム改革に着手しており、2016 年までのプロジェクトが存在している状
態。その動きも踏まえ、理数系教科だけではなく、他の教科においてもカリ
キュラム改革を行うことができるように連携していくことが必要。
http://www.jica.go.jp/project/bangladesh/0511146E0/

具体的な支援イメージ

教科ごとの指導ガイド作成(できれば単元ごとにあることが望ましい)
マニュアルをもとに授業を展開すれば、最低限必要なことを子どもたちが学
べるようにする。

授業展開見本教材の配布(DVD など)
見本となる授業展開を見ることで、各自の授業に対する課題認識を持つ。

学校内・学校間での研究授業の開催
相互に授業を見学、FB を行うことで、全体の授業の質向上を目指す。

実現ステップ

2013 年 2 月~3 月
今回教育チームのサポートをした SWITCH!メンバーである Jafar と Mito を
中心に、バングラデシュの教育問題を解決したい学生・または社会人のメン
バーをバングラデシュ国内で集め、上記支援イメージに加え、バングラデシ
ュで実現したい支援イメージを固める。

2013 年 3 月
JICA 辻氏より、バングラデシュ現地の JICA 担当を紹介してもらい、
SWITCH!メンバーとの間を連携する。
※現地 NGO 法人からの依頼という形であれば、政府経由ではなくても JICA
として依頼を受けること可能性が高いため。

2013 年 4 月~
JICA の担当者、SWITCH!メンバーと共に、バングラデシュの教員に向けた
具体的な支援策を検討する。

2013 年 5 月~
JICA で補いきれない部分があれば、GCMP の支援として別途実現方法を検
25
討し、総合的に教員育成のための支援が実現できるようにする。
教員養成支援(Benesse または GCMP による BOP ビジネス化プラン)
4-2

支援案

教科書・カリキュラム・指導要領・使用教材(テスト含む)
・学力診断・サポ
ートをオールインパッケージ化して提供することで、(株)ベネッセコーポレ
ーションの一事業としてバングラデシュの教育再生を行う。

Benesse は FB を受けて上記パッケージを修正、他の発展途上国へも、教育パ
ッケージとして提供する。

具体的な支援イメージ

バングラデシュ政府に向けた、初等教育のカリキュラムと教科書の改善提案、
新カリキュラム&教科書の提供

学校単位の採用も視野に入れた、教員用の指導マニュアル・各種教材・テス
ト・学力診断などの「授業用パッケージ」の提供(現地教員への研修等も含
む)

実現ステップ

2013 年 2 月
バングラデシュの初等教育のカリキュラムと教科書一式を入手する
※SWITCH!経由。それが困難であれば E-Education 経由。

2013 年 2 月~3 月
ベンガル語の教科書を英訳(→和訳)する
※SWITCH!に依頼?(無料でやってもらえることが前提)
※今後の展開を踏まえ、バングラデシュ国内の翻訳相場は要確認

2013 年 2 月~4 月
カリキュラム&教科書の課題改善案と、現教科書に基づく指導マニュアルを
作成する。
※英語は 2 月に先行して開始。それ以外は英訳されたものから順次。

2013 年 5 月
上記 2 点をベンガル語版に改訂したうえで、バングラデシュの学校現場教員
に提示し、現状の課題への気付きや、教材使用希望等についてのアンケート
を取得する。

2013 年 2 月~4 月
26
公的機関の導入だけではなく、学校単位での導入も視野に入れ、国単位で導
入の場合/Upzila 単位で導入の場合/学校単位で導入の場合の資金計画を算
出する(学校単位などの場合はマイクロファイナンスの活用も必要となる?)
※ビジネスモデルについては今後要検討

2013 年 5 月~6 月
実現に向けた具体案を踏まえ、ベネッセ内での提案を行う。ベネッセ内で毎
年行われている事業案コンテストに応募、またはグローバルビジネス推進室
長への直接のプレゼンを行い、ベネッセ内での事業化について判断を仰ぐ。
ベネッセ内での事業化は見合わせるという判断になった場合は、GCMP 独自
プロジェクトとして、E-Education などと連携しつつ、READYFOR?などを
活用して本支援を行う準備を進める。

2013 年 7 月~(仮:ベネッセ内 PJ となった場合は別途検討)
改訂版カリキュラム・教科書について、バングラデシュ政府へ提案する。
また、この際、必要に応じて JICA へのサポート依頼も検討する。
※バングラデシュでは教科書は政府より無償で配布されているため、カリキ
ュラムや教科書の提案は政府向けが妥当。

2013 年 7 月~(仮:ベネッセ内 PJ となった場合は別途検討)
指導マニュアル・教材サポートの活用は、各学校単位へ提案する。その準備
として、モデル校を1~3校程度選定し、マニュアル導入・研修・調査を行
い、効果検証を実施する。その成果をもとに、対価をもらう形でマニュアル
採用校を拡大してもらう。
(どの程度の対価をもらえればビジネスとして成立
するのかは別途概算)
Teach For Bangladesh の運営支援
4-3

支援策

教員育成環境を整えたとしても、バングラデシュ国内の、教育に対する意識
が向上しなければ環境改善は難しい。そこで、
Teach For Bangladesh により、
各地域の各校に、教育に熱意を持つメンバーを派遣し、教育改革を行う土壌
づくりがキーになる。そのため、2012 年に設立したばかりの Teach For
Bangladesh への支援を行うことで、バングラデシュの教育改善の促進を図る。

具体的な支援イメージ

GCMP(SWITCH!)と Teach For Bangladesh との連携
Teach For Bangladesh に、GCMP(SWITCH!)への協力を要請。今後の GCMP
27
の教育チームには、Teach For Bangladesh のメンバーに同行してもらい、現
場で日本人が感じた教育課題を、すぐにバングラデシュ国内で共有・課題解
決に向けて動き出せるような体制をつくる。

実現ステップ

2013 年 2 月
GCMP&SWITCH!から、Teach For Bangladesh への支援の申し出を行う。
GCMP からはメールでの連絡が中心になるが、SWITCH!メンバーは Teach
For Bangladesh への訪問を行い、現場の状況や課題と考える内容についての
ヒアリング等を行う。

2013 年 3 月
GCMP&SWITCH!としての具体的な支援策を検討、Teach For Bangladesh
への提案を行う。
4-4

高校での職業訓練プログラムの導入
支援案

現地高校での教職員並びに自治体、PTA 関係者との議論の中で高校卒業後の
雇用確保へより直接的に結びつく知識並びにスキルを提供する事が求められ
ている事より、既存の高校に対して授業としての「職業訓練プログラム」の
提供を行う

具体的な支援イメージ

2 つのテーマ「農業」並びに「繊維産業」にフォーカスした上で「職業訓練プ
ログラム」のコンテンツ作成並びに最終的には講師派遣も協力頂ける中核協
力企業を選定した上で推進する。協力企業としては原則本邦事業会社を想定。

高校での議論の中で今回の地域では鉱工業は殆ど無い事より最も関心の高い
テーマは「農業」とのコメントを得ている。同時にバングラデシュ全体とし
ては繊維産業の紡績、生地加工等の中間工程の集積地として位置付けられて
いる事より「繊維製造」関連のテーマも検討するべきものと思われる(第 3
のテーマ候補としては部品製造業)
。

実現ステップ

2013 年 2 月~6 月

SWITCH 等を通してバングラデシュ高校サイドでの実際のニーズの確認
28
及び精緻化。高校への授業提供を想定した場合、制約条件詳細について
も確認

このフェーズにてバングラデシュサイドでの本件受け皿推進者(
OR 推進機関)の特定

上記作業を踏まえて第一弾の職業訓練プログラムテーマ(農業或いは繊
維製造)並びにプログラム提供形態(定期的な授業
vs イベント等)並
びに第 1 回実施ターゲット時期の大枠検討

同時にこのフェーズにて農業並びに繊維製造関連企業との初期的意見交
換を実施、協力企業候補リストを作成

2013 年 7 月~9 月

上記テーマ設定並びに想定コンテンツを確定した上で協力企業候補への
正式打診、興味を示した企業との協議継続によりコンテンツ作成開始

2013 年 10 月以降

バングラデシュでの本プロジェクトキックオフ打合せ開催、プログラム
コンテンツ、高校への提供方法、当面の提供先高校の選定等を実施

可能であれば同じタイミングにてパイロット授業を実施
29
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