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JAMSTEC
SAFETY & ECO-REPORT 2015
CONTENTS
理事長ごあいさつ……………………………………………
1
安全・環境報告書 2015 のご案内… ………………………
2
○特集 東北海洋生態系調査研究船「新青丸」……………
4
JAMSTEC TOPICS 2014…………………………………… 11
Ⅰ.JAMSTEC の概要… …………………………………… 14
1.事業概要
2.JAMSTEC の研究・開発・推進事業
3.組織構成
4.経営指標
5.沿革
Ⅱ.安全衛生及び環境配慮のマネジメント……………… 29
1.安全衛生及び環境配慮のための体制
2.委員会とその任務
Ⅲ.安全への取組み………………………………………… 34
1.労働安全衛生の取組み
2.危険性を有する物品・生物の管理
3.事故・トラブルへの対応
4.防災への取組み
Ⅳ.環境への取組み…………………………………………
44
1.JAMSTEC のマテリアルバランス(2014 年度)
2.主要な環境パフォーマンスデータの推移
3.各拠点の環境パフォーマンスと取組み
4.環境配慮活動の目標・実績・評価
5.環境に配慮した調達・契約
6.いろいろな環境配慮活動
7.環境に関わる研究紹介
Ⅴ.社会的取組み…………………………………………… 59
1.組織統治
2.労働慣行
3.社会貢献
4.国際協力・外部機関との連携
5.表彰・顕彰
Ⅵ.コミュニケーション活動……………………………… 67
JAMSTEC のイベント
安全・環境報告書の評価…………………………………… 69
◇第三者による検証
◇第三者意見
JAMSTEC では海洋への関心が高まっている今
日、未来を担う子供達がもつ海洋への夢や憧れ、
興味をさらに高めるために、全国の小学生を対象
とした「ハガキにかこう海洋の夢コンテスト」を
毎年実施し、2014 年度で 17 回目を迎えました。
募集する部門は、
「絵画部門」
「CG 部門」
「アイディ
ア部門」の 3 つです。
本報告書の表紙は第 17 回コンテストの入賞作品
の一部をデザイン化し作成しました。
ジャムステック・トリビア
JAMSTEC・TRIVIA
2014 年のテーマ:小中学生向けの JAMSTEC 刊行物および協力書籍・DVD
◇学研のクイズ図鑑 深海生物のクイズ図鑑
◇くじら号のちきゅう大ぼうけん
◇つくって・あそんで・学ぶ 海と地球のペーパークラフト
◇日本の海産プランクトン図鑑(DVD 付き)第 2 版
◇深海 鯨が誘う もうひとつの世界
◇ぼくは「しんかい 6500」のパイロット
◇海中大探索! しんかい 6500 で行く深海への旅
◇海洋地球研究船「みらい」とっておきの空と海
◇深海生物大事典
◇子供の科学サイエンスブックス 深海の不思議な生物
◇深海と深海生物 美しき神秘の世界
◇海のプロフェッショナル~海洋学への招待状~
海のプロフェッショナル 2 ~楽しい海の世界への扉~
◇梅雨前線の正体 ( 新しい気象技術と気象学 )
◇ JAMSTEC カレンダー
◇海と地球の情報誌 Blue Earth
私ども海洋研究開発機構は、
「海洋・地球・生命の
統合的理解への挑戦」を目標に掲げる研究所です。そ
のような立場から近年我が国で発生する自然界の現象
に視点を向けると、日本列島は時々刻々と変化する「地
球」というものを体感することのできる場所であると
いうことを改めて実感できます。
2011 年 3 月 11 日に東日本大震災が発生しました。
一昨年 11 月に小笠原諸島・西之島南東沖の噴火で新
たな陸地が誕生し、現在も活発な噴火活動が続いてい
ます。昨年 9 月には長野県と岐阜県に跨る御嶽山が
噴火し、戦後の火山災害としては最悪の被害が発生す
るという極めて悲痛で衝撃的な結果となりました。今
年に入りましてもなお 6 月に神奈川県の箱根山・大
涌谷で噴火が発生し、噴火警戒レベルが 3(入山規制)
に引上げられましたし、鹿児島県の口永良部島や桜島
の噴火なども記憶に新しいところであります。これら
の災害に被災された皆様には心からお悔やみを申し上
げます。
当機構におきましても関係機関と連携し、6 月に西
之島周辺海域の海底面の撮影や海底地形調査、海底に
ある溶岩試料の採取、西之島の噴火活動で噴出した火
山灰の採取等の調査を行ったところであり、その成果
を広く我が国の安全・安心に貢献できるよう、尽力さ
せていただいているところであります。
さて、当機構は、独立行政法人通則法の改正(2014
年 6 月 13 日)に伴い、本年 4 月 1 日から我が国の
科学技術の水準の向上を通じた国民経済の健全な発展
その他の公益に資するため、研究開発の最大限の成果
を確保することを目的とした「国立研究開発法人」に
なりました。今後は研究開発型の法人として研究開発
成果の最大化を図りつつ、効率的かつ効果的な業務運
営を行い、世界の海洋科学技術の中核機関としての立
場を一層明確なものとし、世界及び我が国の関係機関
とより強固で有機的な連携・協力関係を構築しながら、
理事長ごあいさつ
理事長ごあいさつ
人類的課題の解決や我が国の将来にわたる持続的な成
長と社会の発展を実現するための研究開発を推進いた
します。
この私どもに課せられた使命を達成するために不可
欠な一つの要素として、安全や環境に配慮する意識を
組織として高め、実行することが挙げられます。安全
を犠牲にする組織運営には何ら意味はなく、安全こそ
が組織の第一義的な目標であり、研究開発、技術開発、
船舶等の運用に携わる研究者、技術者のみならず全て
の職員が安全第一で業務に取組み、同時に環境に配慮
することで環境に優しい研究所を目指して参りたいと
思っております。しかしながら昨年度、当機構では火
災に繋がりかねない事象が数件発生しており慙愧に堪
えません。そこで私どもはこれらに鑑み、さらには安
全の追求と再発防止、そして自戒の意味も込め、今年
度発行する報告書から、これまで「環境報告書」とし
て公表して参りましたところを「安全・環境報告書」
と改称し、決意を新たに報告書の内容を精査・刷新致
しました。
つきましては、昨年度発生した事故・トラブルの情
報や安全への取組みについても掲載させていただいて
おりますので、ご高覧頂ければ幸いです。
また、特集では 2013 年 6 月に建造造船所から当
機構に引き渡され、海上試験及び慣熟訓練を経て、同
年 12 月から東北地方の復興に貢献すべく本格的に活
動を開始した当機構最新の研究船である東北海洋生態
系調査研究船「新青丸」についてご紹介しております
ので、併せて是非ご覧ください。
当機構は「自由闊達にして愉快であり、かつ日本、
そして世界から本当に必要とされる研究所、叡智と人
類愛にあふれた豊かな文化創造の研究所」を目指して
います。冒頭申し上げました火山活動の事例にもあり
ますように、我々の暮らしのあらゆる方面について、
安全・安心そして環境保全は最も優先されるべきこと
であろうと思います。このような社会のニーズを常に
念頭に置きながらこれからも研究・開発業務を進め、
その成果を海洋地球生命科学の発展のみならず、防災
を始めとしたあらゆる分野に対し提供するなどして社
会に広く還元してゆく所存です。また、実際の業務に
際しましてもゼロ災害を希求し環境に配慮しつつ、真
に皆様から必要とされる研究所となれるよう緒活動を
推進して参りますので、今後とも皆様のご支援、ご協
力を賜りたく、心よりお願い申し上げます。
平成 27 年 9 月 30 日
国立研究開発法人海洋研究開発機構
理事長
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
1
安全・環境報告書 2015 のご案内
環境報告書のご案内
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 INFORMATION
<はじめに>
継ぐとともに、『東北マリンサイエンス拠点形成事業』
に必要な研究を最先端の観測機器・研究設備により、
JAMSTEC SAFETY&ECO-REPORT(国立研究開発
法人海洋研究開発機構“安全・環境報告書”)は、環
効率的・効果的に推進するために建造されました。本
報告書にて特集としてご紹介しています。
境配慮促進法の規定に基づき発行するもので、国立研
究開発法人海洋研究開発機構(Japan Agency for
Marine-Earth Science and Technology:
JAMSTEC /ジャムステック)の事業活動に伴う環境
への負荷量や、その負荷を低減させるための取組みな
ど、環境パフォーマンスの概要をまとめた報告書です。
また、今回はじめて JAMSTEC の安全に関する姿
勢や取組みをご紹介するとともに、実際に発生した事
故・トラブル等についても掲載しています。
さらに、社会的取組みとして、リスクマネジメント
や社会貢献活動等についてもご紹介しています。
<報告書の特色>
◆ 研究・開発成果のご紹介
本報告書では安全衛生活動及び環境パフォーマンス
のデータの開示に加え、最新の研究・開発の成果など
をご紹介し、JAMSTEC の活動をより多くの皆様にご
○ 社会的取組み
理解いただけるよう心がけて作成しました。
◆ 東北海洋生態系調査研究船「新青丸」のご紹介
「新青丸」は、2013 年 1 月に退役した学術研究船「淡
青丸」の後継船として、同船が担ってきた役割を引き
JAMSTEC
TRIVIA
2
◆ JAMSTEC についての豆知識をご紹介
『JAMSTEC・TRIVIA』 と い う コ ラ ム 欄 を 設 け、
JAMSTEC に関する豆知識をご紹介しています。今回
のテーマは「小中学生向けの JAMSTEC 刊行物および
協力書籍・DVD」です。
◆ WEB による公開
多くの皆様に JAMSTEC の活動について知っても
らいたいと考え、本報告書をホームページ上で公開し
ています。
<編集の方針>
この報告書の編集に当たっては、以下の方針に従っ
て編集を行いました。
◆ 対象組織
JAMSTEC の全事業所(横須賀本部、横浜研究所、
むつ研究所、高知コア研究所、国際海洋環境情報セン
ター、東京事務所)及び全研究船の事業活動を対象と
し、記載しています。
1.学研のクイズ図鑑 深海生物のクイズ図鑑
土田真二 監修/学研教育出版刊
ダイオウイカ、ダイオウグソクムシなど、深海には不思議な生き物がいっぱい! 迫力
ある写真とイラストで深海の世界を楽しみながら 100 問のクイズに挑戦しよう。
持ち運びに便利な文庫サイズの人気ミニ図鑑シリーズです。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
fo
in
環境報告書のご案内
◆ お問い合わせ先
◆ 記事の対象期間
2014 年度のデータを記載しています。ただし、環
国立研究開発法人海洋研究開発機構
境配慮活動などの取組みについては、日付を記載した
安全・環境管理室
上で一部最新の情報を記載しています。
〒 237-0061
神奈川県横須賀市夏島町2番地 15
◆ 記載した分野
電 話:046-866-3811(代)
JAMSTEC における安全及び環境に関連した内容を
記載しているほか、社会的取組みについても記載して
046-867-9118
(安全・環境報告書担当直通)
います。
F A X :046-867-9105
◆ 発行年月日
JAMSTEC ホームページ URL:
e-mail:[email protected]
http://www.jamstec.go.jp/
平成 27 年 9 月 30 日
安全・環境報告書掲載ページ URL:
http://www.jamstec.go.jp/j/about/
◆ 次回の発行予定
environmental/report.html
平成 28 年 9 月
◆ 作成に当たって準拠したガイドライン
環境報告ガイドライン 2012 年版(環境省)に準拠
して作成しました。
ジャムステック・キャラクターズ
○ 社会的取組み
ロッキー
JAMSTEC
TRIVIA
ニッキー
ウーラー
アンジー
2.くじら号のちきゅう大ぼうけん
佐藤孝子 文,阿部伸二 絵/ミュール刊
主人公はくじら号に乗って、深い海から宇宙まで大冒険をすることになりました。
海から出発した、主人公が最後に見たもの、それは一体…。
実際に潜航経験のある研究者だからこそ書ける世界観。研究者であり、母である筆
者が子供たちのためにこだわりにこだわった渾身の1冊です。深海のスケールに子供
だけでなく、大人もドキドキワクワクしながら、たろうと一緒に深海への旅が楽しめ
ます。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
3
東北海洋生態系調査研究船『新青丸』
特 集
「新青丸」(写真左)と「淡青丸」(写真右)
2013 年 1 月に学術研究船「淡青丸」が退役し、その後継船として、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」が新たに建造さ
れました。本報告書では、JAMSTEC が誇る最新鋭の研究船「新青丸」についてご紹介します。
1.
「東北マリンサイエンス拠点形成事業」と
「新青丸」
行うことが可能です。搭載できる設備や機器の例としては、
平洋岸の海洋生態系は、大量のがれきが堆積したり、藻場
や各種ウインチなどがあります。
2011 年に発生した東日本大震災により、東北地方の太
や干潟が失われるなどして大きな影響を受けました。この
無人探査機、20 フィートコンテナをクリーンルームとして
改造したクリーンラボコンテナ、エアガンのコンプレッサー
「新青丸」は次のような調査・観測が可能となっています。
海洋環境が激変した東北の海の復興を図るため、大学や研
●海洋環境観測(水温、水質、流向、流速等の観測)
究機関が構築した復興支援事業が「東北マリンサイエンス
●生物資源量の定量的測定(計量魚群探知機)
拠点形成事業-海洋生態系の調査研究-(TEAMS)」であり、
●海洋気象観測(風向、風速、温度、湿度、気圧、降水量、
文部科学省の海洋生態系研究開発拠点機能形成事業費補助
CO2 等の観測)
金制度により、東北大学、東京大学大気海洋研究所、海洋
●海底地形調査(マルチビーム音響測深装置)
研究開発機構が中心となって実施しています。TEAMS は海
●海底下浅部地層調査(音波探査による地下構造の把握)
洋生態系の変動メカニズムを解明することで、漁場の設定
●遠隔操作型無人探査機(ROV)による各種調査・作業
や資源量予測に資する科学的知見やデータを提供すること
●海底地質サンプリング(ドレッジ、ピストンコアラー等)
を目的としています。
この TEAMS に必要な研究を推進するために、そして、
2013 年 1 月に退役した学術研究船「淡青丸」の後継船と
「新青丸」の推進器はアジマス推進器(アジマススラスタ)
しての役割を引き継ぐために建造されたのが「新青丸」です。
を採用しており、これまでの船舶の主な推進システムであ
学術研究船「淡青 丸」の後継船であることと、東北地方
るプロペラと舵の組合せによるものではありません。これ
の復興、つまり「新生」に貢献するため、「新青丸」と名付
までの船舶では回頭の際には舵の向き(角度)を変え、プ
けられました。
ロペラからの水流を舵に当ててその圧力によって船舶の方
・
・
2.
「新青丸」の特徴
(1)さまざまな調査に対応できるシステム
「新青丸」は国際総トン数が 1,629 トン(その他の主要
目についてはⅠ.3.研究船の項目をご覧ください。)で、
JAMSTEC が保有する研究船の中では最も小さい研究船で
すが、常時搭載されている観測機器・研究設備のほか、い
ろいろな観測機器・研究設備を積み替えることで、海洋環
境観測、海底地形調査、海洋気象観測など多方面の調査を
4
(2)アジマス推進器
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
向を変えていました。しかし、アジマス推進器にはこの舵
がなく、プロペラが 360°回転することにより推進力そのも
ので船舶の向きを変えることができ、非常に回頭の性能(舵
利き)が良くなっています。
特
集
タと船尾にあるアジマス推進器を調整して数 cm 単位で船
位を保持します。
これにより「新青丸」は潮流や風に流されることなく、
一点に留まることができるのです。
(4)「新青丸」のファンネルマーク
フ ァ ン ネ ル マ ー ク は、
特 集
船の煙突に描かれる模様
のことで、各船会社や運
航事業者独自のデザイン
になっており、このファ
ンネルマークで船会社や
プロペラと舵による推進システム(例:海洋調査船「なつしま」)
を「新青丸」の推進システムであるアジマス推進器
運航事業者を識別するこ 「新青丸」のファンネルマーク。
東京大学大気海洋研究所の大気海
とができます。
「 新 青 丸 」 は、 共 同 利
用航海の公募を東京大学
洋研究拠点を表すマーク(写真左
側)と JAMSTEC のロゴマーク(写
真右側)が共に描かれている。
大気海洋研究所が行い、運航については JAMSTEC が行っ
ているため、「新青丸」のファンネルマークは東京大学大気
海洋研究所が文部科学省から認定を受けた「大気海洋研究
拠点(JURC AOS:Joint Usage/Research Center for
Atmosphere and Ocean Science)」 と JAMSTEC の 双
方のマークがデザインされたものとなっています。
アジマス推進器(写真左)と
バウスラスタ(写真右)
3.
「新青丸」船内ツアー
それでは、
「新青丸」の船
内を見学してみましょう。
先ずは船を操船する操
(3)ダイナミックポジショニングシステム
いろいろな海洋観測・調査を行うときには、海上の一箇
所に留まることが必要になる場合があります。しかし、海
上では潮流や風の影響により、一箇所に留まることが非常
に困難です。
ダイナミックポジショニングシステム(DPS)は、船舶
舵室、自動車の運転席に
相当する場所です。船橋
(ブリッジ)とも言います。
操舵室には、操船する
ための操縦盤が設置され
ていて、レーダー、電子
JAMSTEC 横須賀本部の岸壁に
停泊中の「新青丸」
が一箇所に留まるためのシステムで、人工衛星から送られ
海図、操船ハンドル、各種モニタなどが備え付けられてい
てくる位置情報や、海底に設置されたトランスポンダの信
ます。非常に機能的に設計されており、一人でも操船する
号から現在位置を正確に把握し、コンピューターにより潮
ことができるようになっています。
流や風等の影響を考慮したうえで、船首にあるバウスラス
飛行機のコックピットのような操縦盤。操船するためのいろいろな
機器が組み込まれています。
操縦盤の右舷側にはダイナミックポジショニングシステ
ム(DPS)の操縦スタンドが設置されていて、船の位置を
数 cm の精度で一定に保持するよう自動で制御するほか、
DPS の概念図
ジョイスティックレバー1本で手動により船を動かすこと
も可能です。横にも斜めにも動くことができます。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
5
操舵室の両舷側にも
りますが、このウインチ操作室から全て(プロトン磁力計ウ
ジョイスティックレバー
インチ以外)を動かすことができます。ウインチ操作室から
があり、入出港時等のデ
は後部の甲板を見通すことができ、また、直接目視できない
リケートな操船を要求さ
箇所についてはカメラによる映像もモニタで見ることができ
れるときにでも、周囲の
るようになっており、実際のウインチの様子を把握しながら
見 張 り の し 易 い 場 所 で、
ウインチの操作をすることができます。
直接操船をすることが可
特 集
能となっています。
次に、船内での日常生活の施設や設備をご紹介します。
DPS の説明をする吉田船長
操舵室の後方には第1
居室(船室)には、個室と二段ベッドが設置された複数
名で利用するタイプがあり、それぞれの居室にはテレビや
研究室があり、気象、潮流、
事務机、冷蔵庫なども設置さ
海底地形の調査・観測機
れていて、快適に船内生活を
器や魚群探知機といった
過ごすことができるように
最新の各種海洋調査・音
なっています。
響調査機器のモニタや
浴室は一度に数名が利用す
サーバが設置されていま
ることができ、洗濯機も設置
す。水中の観測装置につ
操舵室右舷側のジョイスティック
言っていいほど充実して
バーを使って、周囲の様子を確認
しながら直接操船することができ
ます。
されています。女性の研究者
いてはないものがないと レバー。このジョイスティックレ
います。
により設計された女性専用の
第1研究室の後方右舷
側にはウインチ操作室が
あります。
「新青丸」には
二段ベッドが設置された居室。
快適に船内生活を過ごすこと
ができます。
常設のウインチが5基あ
各種海洋調査・音響調査機器のモ
ニタ画面。気象、潮流、海底地形
などを調査・観測することができ
ます。
ウインチ操作室。目視やモニ
タなどでウインチの状況を確
認しながら操作することが可
能です。
JAMSTEC
TRIVIA
各種海洋調査・音響調査機器の説
明をする深川電子士
男子用の浴室。清掃が行き届
いており清潔です。
女性専用の浴室も整備されており、女性も安心して乗船すること
ができます。
3.つくって・あそんで・学ぶ
海と地球のペーパークラフト
JAMSTEC Blue Earth 編集委員会編,藤本憲章デザイン/ミュール刊
楽しく遊びながら、海の生き物や船のことがわかっちゃう! 丸ごと取り外せる解
説編と 8 種類のペーパークラフトが作れるクラフト編の 2 部構成! さらにカバーの
裏側が海に早変わり! できあがったクラフトを乗せてジオラマに!
JAMSTEC の HP でもペーパークラフトがダウンロードできますので、他の生物や船
を作りたくなったら是非!
(URL: http://www.jamstec.go.jp/j/museum/papercraft/)
6
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
特
集
浴室も整備されています。
甲板上にはいろいろな機器が設置されています。
後部の作業甲板には、A フレームクレーン、5t クレーン
など、海中に観測機器を投入・揚収する時などに重量物を
吊り下げるための機器が取り付けられています。
特 集
明るい雰囲気の食堂。乗組員も研究者もここで一緒に食事をします。
食堂横の調理室。コンロやオー
ブンなどの調理器具はオール
電化となっています。
食堂は船における憩いの場所です。船では一般的に幹部
職員(士官)と部員の食堂が分かれていますが、「新青丸」
には食堂は一箇所しかなく、乗組員と研究者が一緒に食事
を取ります。
食堂横にある調理室の
調理器具はオール電化に
なっており、安全に調理
をすることができるよう
になっています。
次に、調査・観測に利
第 2 研究室にはドラフトチャンバー
などの実験設備が設置されていま
す。
用する施設・設備を見て
みましょう。
A フレームクレーン(写真左)と 5t クレーン(写真右)
また、「新青丸」の特徴として、その時々の調査目的に応
じた観測機器や設備をフレキシブルに積み替えることが可
能となっており、実験室仕様に改造したコンテナラボや可
搬型のウインチを搭載することが可能です。
ウ イ ン チ に つ い て は、
積み替えて使用するもの
の ほ か、「 新 青 丸 」 に 5
基のウインチが常設され
ています。
「新青丸」のほぼ中央部
搭載した2基の可搬型ウインチ
分 に あ る 第 2 研 究 室 は、
ドライ区画、ウェット区
画、セミドライ区画と別
れており、作業内容に応
じてサンプルの処理や観
察をすることができるよ
航海を控え、第 2 研究室に搬入さ
れた実験資機材。
うになっています。
第2研究室の後ろの扉
を出ますと、CTD 室があり、CTD 採水器が置かれています。
「新青丸」に備え付けられたウインチ各種。左のウインチに巻かれ
ているケーブルの長さは 7,000m に及ぶ。
この採水器を海中に降ろして、目的の深度の海水を採取
因みに、「新青丸」の暴露甲板 * の多くの部分では、通常
することができ、また同時に塩分・水温・水圧等を測定す
の鋼製の甲板ではなく、アフリカンチークという硬い木で
ることができます。
作られた木甲板が採用されています。
木甲板はメンテナンスに多少手間がかかり、溶接ができ
ないなどの短所もありま
すが、鉄板と比べて緩衝
性があることが最大の特
徴です。さらに、夏の厳
暑の折にも鋼製の甲板に
CTD 採水器(写真左)と CTD クレーン(写真右)。CTD クレー
ンで CTD 採水器を吊り下げ、海中に降ろします。
比べ甲板自体が熱くなら
ないため、船内の温度上
昇が抑制され環境配慮と
格調高く落ち着いた雰囲気のある
木甲板(後部甲板)
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
7
いう面では優れており、また、滑りにくいため安全に甲板
作業を行うことができるなどの長所があります。
Q 「新青丸」の特徴とはなんでしょうか?
最新鋭の機器がたくさんあるとお話ししましたが、そ
最 後 に、「 新 青 丸 」 は
特 集
船員災害防止協会(船災
の中でも特に本船は操縦性能が極めて優れている船です。
防 )* の 優 良 会 員 と し て
本船は研究船としては小型の方に分類されると思います
認定されています。「新青
が、その推進力はとても強く、これまでの船ではおそら
丸」の運航は日本海洋事
く操船が難しかったであろう状況下でも能動的に動かす
業株式会社にその業務を
ことができます。因みにバウスラスタは JAMSTEC の
委託していますが、同社
5,000 トンクラスの船(本船の大きさは約 1,600 トンで
の船舶への安全に対する
船内に掲示された船災防による優良
すが……)に装備されているものと同等のものが備わっ
取組みと実績が認定され、 会員証。労働災害の防止に努めなが
JAMSTEC が 同 社 に 管 理 ら業務を行っています。
ているのでとても力強いです。
を委託している「なつしま」、
「かいよう」、
「よこすか」、
「か
りに動かそうと思ってもその操縦性能からできることと
いれい」、
「新青丸」についてもこの優良会員証のステッカー
できないことがあるもので、その特性や制約を理解しな
を掲示しています。
がら操縦をしているわけです。例えば船の場合は横方向
「新青丸」は海洋地球生命科学の発展に貢献できるよう、
自動車や飛行機でもそうですが、乗り物には思った通
の移動が苦手で、横に動かそうと思ってもなかなかうま
日々安全に配慮しながらこれからも業務を遂行していきま
くいきません。研究船は外洋で観測機器を降ろすために
す。
定点に留まっていなければならないわけですが、これま
4.吉田船長に聞きました
では風とか潮の流れといった外力を定常的に観測し、人
の感覚でその外力を相殺するように推力を調整したり船
「新青丸」の竣工時から船長として乗船している吉田力太
の向きを変えたりして船位を保持していました。これは
船長(日本海洋事業株式会社所属)に「新青丸」のことを
これで非常に高い技術が必要なのですが、どうしても外
聞きました。
力に太刀打ちできない状況はあるもので、その場合はこ
れまでの船ではなす術がありませんでした。ですが、本
船はパワフルでなおかつ自由度のあるアジマス推進器と
バウスラスタにより、この外力に対して逆らって動く、
つまり自ら能動的に動いて対処することができるのです。
一般的に船が苦手な横方向にも移動することができます。
それともう一つ、本船には DPS という自動定点保持装
「新青丸」の吉田船長
Q 「新青丸」とこれまでの船との違いなど、「新青丸」に
乗船してみての感想をお聞かせください。
私はこれまで、石炭運搬船やフルーツを運ぶ冷蔵運
搬 船、 漁 業 の 練 習 船 な ど に 乗 船 し た 経 歴 が あ り ま す。
JAMSTEC の研究船では、「なつしま」、「かいよう」、「よ
こすか」、「かいれい」、「淡青丸」、そして「新青丸」と乗
船しました。
「新青丸」については艤装 * 時に艤装員長 * を務めさせ
ていただいたこともあり、それ以来、ずっと「新青丸」
置があって、これは広域 DGPS* による精密な位置情報な
どを基にコンピューター制御によって数 cm 単位で船位
を保持することのできるシステムです。本船は、この定
点保持能力をこれまでの船と比べて格段に上げた船であ
ると言えます。
この極めて優れた操縦性能と定点保持能力が、
「新青丸」
の最大の特徴であり、これにより安全で効率の良い調査
ができるわけです。
Q 「新青丸」に乗船して、思い出に残ることは何でしょ
うか?
を見てきましたが、本船は他の船と比べようのないほど
「新青丸」の船籍港 * は岩手県の大槌町です。ご存じの
レベルの高い最新鋭の機器を搭載している船舶です。使
通り大槌町は東日本大震災のときに津波で甚大な被害を
えば使うほど、その性能については驚きの連続で、その
被った所です。
ような性能を使い切れるようにこれまで努力してきまし
たし、これからもその努力を続けていくつもりです。
自動車で例えると、以前乗船していた貨物船をダンプ
カーとするなら、本船はスーパーカーですね。
これまで本船は、津波の被害の影響で母港である大槌
港に入ることができなかったのですが、新しく整備され
た漁港に昨年度初めて着岸することができ、非常に感動
したことを覚えています。
そのときには本船を一般の方々に公開し、地元の方々
8
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
特
集
にも見学してもらったのですが、その一般公開のときに
必要な電力の状況に合わせて動かす発電機の台数を制限
地元の方々が声をかけてくださって、津波の辛い体験を
しています。これによって、燃料の消費や排出ガスの排
聞かせて頂いたり、
「俺たちも頑張るから新青丸も頑張れ
出量を抑えることができ、無駄にエネルギーを消費しな
よ」と声をかけていただいたりして、非常に感慨深いも
いように努力しています。
のがありました。
応援してくれて有難いと思いますし、その期待に沿え
るように頑張っていきたいと思っています。
あと、船内の照明ですが、消費電力が少なく長持ちす
る LED タイプのものを多く採用していますし、情報の管
理という面では船内 LAN* システムを構築していますの
Q これまで長い期間船の上でお仕事をされていると思い
ますが、海上から環境の変化などを感じることがあり
ますか?
特 集
で、仕事の上で必要な資料などについてはネットワーク
上で共有しておけば誰でもパソコンやタブレットで閲覧
できますので、ペーパーレスにも役立っています。
それと、船は自動車の車検と同じように年に一回ドッ
クに入ります。ドックに入ると船内の発電機を回すこと
まず感じるのが、東京湾の水が綺麗になったことです。
ができませんので陸上から電源を取るのですが、安全上
私達は日常的に東京湾に出入りしていますが、十数年前
の配慮ということもあり、これまでは何も考えずに船内
から綺麗になったなと感じるようになりました。以前の
の電気機器をそのままつけっぱなしにしていました。で
東京湾の海水は赤味がかった独特の色をしていましたが、
すが、このドック時の電気機器について、安全が確保で
最近は真っ青なときもあり、確実に東京湾の水が綺麗に
きる最低限のものだけを残して他の不要な機器のスイッ
なっているなと感じます。
チを切ったところ、それまでの消費電力の 1/3 を削減す
しかし反面、ゴミは相変わらず多くて、プラスチック
ることができました。たかだかこまめに電気を切るとい
ゴミなどはむしろ増えたのではないでしょうか? 東京
う取組みですが、想像以上に節電効果があるものだなと
湾内の各港には清掃船が配備されていて、海の清掃をし
驚いています。
ているところをよく見かけますが、それでも追いつかな
いくらいゴミが多いのではないかと思います。
それと、気象についてですが、最近は予報以上に悪く
次に安全の配慮についてですが、これについては常日
頃から努力しています。当然のことながら、作業の前に
その作業手順や危険性について確認や打ち合わせを行っ
なることが多くなったなと感じています。船を安全に運
たり、日常的に点検やパトロールなどを実施しています。
航するために、我々は気象の状況を把握して、今、船が
船の運航はそもそも現場の仕事で、危ないことがたくさ
置かれている状況や、予報を基にこれから天候がどのよ
んあります。そういう環境の中で事故を起こさず安全に
うに変わっていくか常に注意を払っていますが、最近の
業務を行っていくことが一番大切で、船の仕事そのもの
気象現象は極端で、その原因が何であるかは分かりませ
が安全に配慮するための仕事と言ってもよいくらいです。
んが、予報以上に激しい現象が起こることが増えたよう
な気がします。例えば、予報ではあまり発達しないとい
われていた低気圧が、結果として猛威を振るった、など
の経験があります。
あと、これはあくまで私の体感としてですが、気温に
ついては確実に暑くなっているのではないでしょうか?
大ベテランの乗組員も「最近は暑くなったな~、地球
がおかしくなっているのでは?」などと言っています。
Q 船内で実施している環境や安全に配慮した活動などが
ありましたら教えてください。
Q
Q 東北地方の復興のための「新青丸」の役割をどうお考
えになりますか?
本船は年に3回~4回位のローテーションでルーチン
的に東北地方の津波の調査をしています。先程、大槌で
の一般公開のエピソードをお話ししましたが、そのよう
な地元の方との触れ合いの中で、「新青丸」を応援して下
さっていることをヒシヒシと感じます。
東北地方の復興は思ったようには進んでおらず、未だ
に港にガレキが残っていたりします。海上から見ても、
元に戻ったとはとても言えない状況です。漁業の再開な
本船は電力推進、つまり船内の発電機を動かして作っ
ど、皆さん頑張って確実に復興していることは確かです
た電力で推進器を回しています。この発電機ですが、海
が、それでも復興は未だ途上、むしろ遅れているように
洋汚染防止条約(MARPOL 条約)* の基準に適合し認証
感じられます。
されたタイプのもので、酸性雨や光化学スモッグの原因
本船の活動は、復興に直接貢献できるものではないか
となる窒素酸化物(NOx)* の排出量を極力抑えた環境
もしれませんが、ただ単に洋上で調査しているという感
に優しい発電機です。
覚を超えて、何かしら復興の役に立ちたいと心底思って
発電機の性能そのものが環境に優しいのですが、使用
方法についても我々は少し工夫をしていて、そのときに
います。
もちろん、我々乗組員だけではできないこともありま
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
9
すから、研究者の方々を始め関係者が一丸となって東北
地方の復興のために有効なデータを取得するために頑
張っていきたいですし、そこに何らかの夢や希望を載せ
て届けることができたらとても嬉しいですね。
特 集
【ことば】
◆
◆
◆
◆
◆
◆
◆
<こちらのホームページもあわせてご覧ください!>
◆知ろう! 記者に発表した最新研究
http://www.jamstec.go.jp/j/kids/press_release/shinseimaru/
http://www.jamstec.go.jp/j/kids/press_release/shinseimaru_2/
◆東北海洋生態系調査研究船「新青丸」
http://www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/shinseimaru.html
◆東北マリンサイエンス拠点形成事業-海洋生態系の調査研究-(TEAMS)
http://www.jamstec.go.jp/teams/
◆日本海洋事業株式会社
http://www.nmeweb.jp/index.html
10 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
1
第 3 期中間計画の開始
2014 年 4 月 1 日より第 3 期中間計画を開始しまし
た。第 3 期中期計画では国家的・社会的ニーズを踏まえた出
口志向の重点研究開発を実施することとし、これらを組織横断
的に推進するため、7 つの中期研究開発課題を設定しました。
JAMSTEC は、得られた海洋・地球・生命に関する科学的知見
や地球環境情報を積極的に社会に還元し、人類の共有財産とし
て国際的にも発信していきます。
2
http://www.jamstec.go.jp/j/pr/ship/20140913_otsuchi/
「新青丸」は 2014 年 9 月 13 日~ 14 日に船籍港である岩手県
上閉伊郡大槌町に初入港し、記念講演会「おでかけ教室 in 大
槌 三陸の海は今!」並びに「一般公開」(722 名が訪船)を行
いました。また、多種多様な観測機器・研究設備を装備し、効
率的・効果的に研究観測を行うことを可能とした優れた研究船
であることが評価され、「シップ・オブ・ザ・イヤー 2013」の
特殊船部門賞を受賞しました。
東北海洋生態系調査研究船「新青丸」
S
IC
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20140726/
2010 年に発見した伊平屋北オリジナルサイトの熱水溜まりの
分布を調べるべく、2014 年 7 月に戦略的イノベーション創造
プログラム(SIP)「次世代海洋資源調査技術」の「海洋資源の
成因に関する科学的研究」の一環として、地球深部探査船「ちきゅ
う」による掘削調査を行いました。この地域では今年度にマル
チビーム音響測深機を用いた高速広域調査により、新たに 2 つ
の熱水域(伊平屋北ナツサイト、アキサイト)が発見されており、
広範囲に熱水溜まりが分布していることが想定されていました
が、調査の結果、熱水溜まりは東西に 2㎞以上、南北に 3㎞程
度広がっていると推定され、沖縄海域で発見された中では最大
の熱水域であることが分かりました。
(掘削地点図)
★:掘 削 同 時 検 層 と
コア試料採取双方
を行った地点
☆:掘 削 同 時 検 層 の
みを行った地点
●:IODP に よ る 科
学掘削調査の地点
4
新たな国際協力を展開
http://www.jamstec.go.jp/j/jamstec_news/20140807/
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20140905/
2014 年 8 月にブラジル科学技術イノベーション省、インド地
球科学省それぞれと、新たに海洋分野における研究協力に関す
る意図表明文書を締結するなど、当機構の国際化をさらに進め
ました。
日・ブラジル両首脳前での覚書等文書発表式
(写真左より、平理事長、安倍総理、ジニス科学技術イノベーショ
ン大臣)
引用写真:PORTAL DO MINISTÉRIO DA CIÊNCIA,
TECNOLOGIA E INOVAÇÃO
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 11
TOPICS
大槌港にて東北海洋生態系調査研究船
「新青丸」の一般公開を実施
O
P
沖縄海域の伊平屋北海丘に広大な
熱水溜まりを発見
写真左より、土橋理事、平理事長、白山理事、堀田理事
3
T
JAMSTEC TOPICS 2014
5
新しい海底津波観測手法の立証と
実海域リアルタイム観測の成功
6
北極海で渦によりプランクトンの
生息環境が向上したことを発見
TOPICS
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20140404/
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20140527/
海洋ダイナモ効果を利用した新しい海底津波観測手法を立証し
ました。また、海底に設置したベクトル津波計からウェーブグ
ライダーへ、さらに衛星通信によって観測データを陸上まで伝
送するシステムによりリアルタイムに信頼性の高いデータを得
ることに成功しました。チリで発生した地震に伴い、日本の太
平洋岸に到達した津波についても、リアルタイムで津波の伝播
過程を詳細に捉えることに成功しており、その有効性が確認さ
れました。
冬季には生物活動が困難だとされてきた北極海の水深の深い海
域で、プランクトンの生息環境が向上していたことを突き止め
ました。地球温暖化に伴う北極海の海氷減少の影響で、強化し
た海洋渦が栄養豊富な大陸棚由来の海水を多く運びこんだため
です。
海氷減少に対する海洋生態系の応答を示した模式図
ベクトル津波計リアルタイム観測システムの構成
7
プレート運動の原動力に関する新たな発見
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20140331/
8
「地震・津波観測監視システム (DONET)」
により得られた観測情報を地方自治体や
民間企業へ提供開始
http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20131010/
北海道南東沖において地下構造探査システムおよび海底地震計
を用いて地殻と上部マントルの大規模構造調査を実施した結果、
海洋プレート生成時は、マントルの流動によりプレート運動が
駆動されていたことを発見しました。プレートの原動力につい
ては、沈み込むプレートの自重によるという説やマントルの流
動によるという説がありましたが、プレート生成域での運動を
解明するうえで本成果は有力な手掛かりとなります。
和歌山県、三重県尾鷲市および中部電力株式会社との間で「地震・
津波観測監視システム(DONET)」により得られる観測情報を
社会実装の可能性を探るパイロットプロジェクトの一環として
「DONET 情報伝送システム」初期版が完成しました。その実
証実験として、初めて地方自治体および民間企業へ DONET に
より得られる観測情報とそれによる津波予測情報の提供を開始
しました。
今回確認された観測事実とプレート運動の原動力を示す模式図
DONET 1 及び DONET 2 設置図
12 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
S
IC
O
P
T
9
高知コアセンターに掘削コア試料の
新保管庫棟が完成
2013 年度から高知大学により建設が進められていた高知大学
海洋コア総合研究センター新保管庫棟の竣工披露式典が 2014
年 10 月 17 日に開催されました。現在のコア保管庫は、すで
に満杯状態であり、掘削コア試料の新保管庫の建設が望まれて
いました。これにより、新たに約 150㎞分のコアが収納可能と
なり、今後の IODP コア研究支援が遅延なく進むと期待されま
す。
10
横須賀本部専用岸壁桟橋新設工事および無
人探査機整備場増築工事竣工
JAMSTEC 横須賀本部の専用岸壁桟橋新設工事および無人探査
機整備場増設工事が竣工し、2014 年 4 月 8 日に竣工披露記念
式典が行われました。桟橋を新設することで、水深が 5.5 mか
ら 8.0 mと深くなり、近年、水深の影響で JAMSTEC 所有船舶
の着岸に支障が出ていましたが、一層効率的な船舶の運用が可
能となりました。
TOPICS
新保管庫棟 竣工披露式典の様子
JAMSTEC
TRIVIA
専用岸壁桟橋 竣工披露記念式典の様子
4.日本の海産プランクトン図鑑(DVD 付き)第 2 版
末友靖隆 編著/共立出版刊
日本の近海にみられる海産の動植物プランクトンを、美しい写真とイラストレーショ
ンで解説した図鑑です。好評だった第 1 版にさらに多くの種類を加え大増ページして
パワーアップ! プランクトンの簡単な採集方法や、顕微鏡の選び方、種類がわかる
検索表や観察のポイント、そして安価な採集器具(プランクトンネット)の作成法な
どなど、詳しく丁寧に解説します。さらに本書に付属するプランクトン動画 DVD に
より、いろいろな種類のプランクトンの生き生きとした姿が楽しめます! これ一冊
であなたもプランクトン博士になれる!
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 13
Ⅰ.JAMSTEC の概要
1. 事業概要
(1)事業の目的
(3)中期計画
国立研究開発法人海洋研究開発機構(Japan Agency for
JAMSTEC は独立行政法人通則法により、主務大臣で
Marine-Earth Science and Technology:JAMSTEC ジャ
ある文部科学大臣から JAMSTEC が達成すべき業務運営
ムステック)は、平和と福祉の理念に基づき、海洋に関す
に関する目標(中期目標)の指示を受けます。これを基に
る基盤的研究開発、海洋に関する学術研究に関する協力等
JAMSTEC では中期計画を作成し、更には事業年度ごとの
の業務を総合的に行うことにより海洋科学技術の水準の向
年度計画を作成したうえで中期目標の達成に向けて業務を
上を図るとともに、学術研究の発展に資することを目的と
遂行します。平成 26 年 4 月 1 日から平成 31 年 3 月 31
して、2004 年 4 月に前身の海洋科学技術センターから独
日までの 5 年間を対象とした第 3 期中期計画では、我が国
立行政法人海洋研究開発機構として発足し、2015 年 4 月
の海洋科学技術の中核機関として、将来にわたる持続的な
1 日に国立研究開発法人海洋研究開発機構に名称変更しま
成長と社会の発展の実現や我が国が直面する重要課題等へ
した。
の対応に積極的に貢献し、海洋基本計画で示された海洋立
【国立研究開発法人海洋研究開発機構法(平成 15 年法律第
JAMSTECの概要
95 号)第 4 条】
国日本の目指すべき姿を実現するため、また、海洋の開発・
利用により富と繁栄をもたらし、地球規模課題を解決する
ために、以下の使命を持って研究開発活動を展開すること
(2)事業の範囲
としています。
1.国 家的・社会的要請を踏まえた戦略的・重点的な研
JAMSTEC では主に以下のような業務を行っています。
①海洋に関する基盤的研究開発を行うとともに、その成
果の普及、活用の促進を行っています。
②大学及び大学共同利用機関における海洋に関する学術
研究に対して、船舶の運航等の協力・支援を行ってい
ます。
③科学技術に関する研究開発又は学術研究を行う方に対
し、機構の施設・設備を供与しています。
究開発を推進すること
2.世界最先端の研究開発基盤を運用・共用すること
3.国民の理解を深めるため、
海洋科学技術に関する情報・
知見を積極的に発信し、利用を促進すること
4.世 界の頭脳循環の拠点として、グローバルに活躍す
る研究者の交流、育成・確保に貢献すること
5.産 学連携によるイノベーションの創出と成果の社会
還元を推進すること
○ 社会的取組み
④海洋科学技術に関する研究者及び技術者を養成し、そ
の資質の向上を図っています。
⑤海洋科学技術に関する内外の情報及び資料の収集、整
理、保管、提供を行っています。
【国立研究開発法人海洋研究開発機構法(平成 15 年法律第
95 号)第 17 条】
JAMSTEC
TRIVIA
5.深海 鯨が誘う もうひとつの世界
藤原義弘 監修・写真,なかのひろみ 構成・文/山と渓谷社刊
深海怪物学はもう卒業だ。
深海生物学者が撮影した 5 万枚もの写真と JAMSTEC の膨大な記録画像から
選んだ貴重な写真 500 枚超。深海生物の素顔は不思議! 美しい! 可愛い?!
リアルでちょっとマニアックな深海生物図譜。
14 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
第 3 期中期計画の概要
Ⅰ 国民に対して提供するサービスその他業務の質の向上に関する事項
1.国家的・社会的ニーズを踏まえた戦略的・重点的な
研究開発の推進
(1)船舶・深海調査システム等
(2)「地球シミュレータ」
(3)その他の施設設備の運用
3.海洋科学技術関連情報の提供・利用
促進
(1)データ及びサンプルの提供・利用促進
(2)普及広報活動
(3)成果の情報発信
4.世界の頭脳循環の拠点としての国際
連携と人材育成の推進
(1)国際連携、プロジェクトの推進
(2)人材育成と資質の向上
5.産学連携によるイノベーションの創出
と成果の社会還元の推進
(1)共同研究及び機関連携による研究協力
(2)研究開発成果の権利化及び適切な管理
(3)研究開発成果の実用化及び事業化
(4)外部資金による研究の推進
JAMSTECの概要
(1)海底資源研究開発
①海底熱水鉱床の成因解明とそれに基づく調査手法の構築
②コバルトリッチクラスト・レアアース泥の成因解明とそれに
基づく高品質な鉱床発見に貢献する手法の構築
③海底炭化水素資源の成因解明と持続的な炭素・エネルギー
循環に関する研究
④環境影響評価手法の構築
(2)海洋・地球環境変動研究開発
①地球環境変動の理解と予測のための観測研究
②地球表層における物質循環研究
③観測研究に基づく地球環境変動予測の高度化と応用
(3)海域地震発生帯研究開発
①プレート境界域の地震発生帯実態解明研究
②地震・津波の総合災害ポテンシャル評価研究
③地震・津波による生態系被害と復興に関する研究
(4)海洋生命理工学研究開発
①海洋生態系機能の解析研究
②極限環境生命圏機能の探査、機能解析及びその利活用
(5)先端的基盤技術の開発及びその活用
①先端的掘削技術を活用した総合海洋掘削科学の推進
②先端的融合情報科学の研究開発
③海洋フロンティアを切り拓く研究基盤の構築
2.研究開発基盤の運用・共用
Ⅱ 業務運営の効率化に関する事項
1.柔軟かつ効率的な組織の運営
(1)内部統制及びガバナンスの強化
(4)情報セキュリティ対策の推進
2.業務の合理化・効率化
(2)合理的・効率的な資源配分
(5)情報公開及び個人情報保護
(3)評価の実施
(6)業務の安全の確保
中期目標・中期計画・年度計画の詳細については、http://www.jamstec.go.jp/j/about/project/index.html をご覧ください。
JAMSTEC
TRIVIA
6.ぼくは「しんかい 6500」のパイロット
吉梅剛 著/こぶし書房刊
「しんかい 6500」チームの潜航長をつとめた吉梅パイロットが、319 回にのぼる
潜航体験のなかで出会った、謎に満ちた深海の光景、驚異の生きものたち、恐るべ
きトラブル、そしてなによりも日本の技術の粋を集めた「しんかい 6500」への愛
――。地球の神秘に挑む JAMSTEC クルーたちの姿を情熱とともに 書き下ろした 1
冊です。
本書では、内容に合わせて潜航中の動画にリンクした QR コードを本文にもりこ
み、携帯電話やスマートフォン、タブレット PC などから動画を閲覧することがで
きるようになっています。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 15
○ 社会的取組み
(1)業務の合理化・効率化 (2)給与水準の適正化 (3)事務事業の見直し等 (4)契約の適正化
2. JAMSTEC の研究・開発・推進事業
(1)研究・開発・推進事業の概要
JAMSTEC では、我が国及び世界における真の海洋科学
技術の中核機関として海洋科学術分野をリードし、世界最先
端の研究開発基盤を十分に活用しながら先進的・基盤的な
研究開発を推進するため、研究部門、開発・運用部門、経営
研究部門には、戦略研究開発領域、基幹研究領域、む
つ研究所、高知コア研究所があり、それぞれの領域には
研究開発センターや分野を設置し、主に次のような研究・
開発業務を行っています。
管理部門の三つの部門に分け、次のような研究・開発・推進
事業活動を行っています。
① 研究部門
JAMSTECの概要
○ 社会的取組み
戦略研究開発領域
地球環境観測研究開発センター
◇ 環境変動による海洋生態系の応答機構に係る研究
◇ 熱帯域から亜熱帯域の表層海洋物理過程を含む大気海洋相互作用に係る研究 ◇ 海洋観測を中心とした海洋循環及び海洋環境変動に係る研究
◇ 全球海洋スケールでの化学・物理環境の中長期変動に係る研究開発
海洋掘削科学研究開発センター
◇ 現場観測・試料分析による地震過程等の沈み込み帯の形成・発達過程に係る研究
◇ マントル及び海洋地殻掘削に係る研究
◇ 堆積盆地の形成及び発展並びに堆積物試料からの地質情報の抽出・解析に係る研究
◇ 物理探査データ、孔内計測データ及び掘削コア試料分析データの統合に係る研究 など
地震津波海域観測研究開発センター
◇ 海底観測ネットワークに係る研究開発
◇ 調査観測の研究成果、モニタリングデータ等を用いた地震発生予測の高度化に係る研究
◇ リアルタイムデータを統合したモニタリングによる地震発生帯に係る研究
◇ 地下構造データ、海底地形、歴史資料等の総合解析による海域断層解析評価に係る研究
◇ プレート境界域における地震発生構造に係る研究
◇ 地震学的手法による海底下及び海洋の活動、構造及び現象に係る研究
◇ 海底地質及び地球物理観測による海底変動及び海底下の構造、物質及び熱循環に係る研究 など
海洋生命理工学研究開発センター
◇ 極限環境生命機能及びその利活用に係る研究
◇ 極限環境生命圏の新たな機能の開拓及びその利活用に係る研究
◇ 深海生物リソースの産業応用に係る研究開発 など
海底資源研究開発センター
◇ 海底下資源環境の実態及び利活用に係る地球科学と生命科学とを融合した研究
◇ 海底資源の生成年代及び資源の成因に係る研究
◇ 海底資源の利活用に必要な生態系変動解析並びにモニタリング及び影響評価の手法に係る研究 など
アプリケーションラボ
◇ 季節内振動から十年スケールの現象までの気候変動予測及びその応用に係る研究開発
◇ 海洋・大気環境変動予測及びその応用に係る研究開発
◇ 先端海洋科学に基づく海洋・地球情報の新たな展開に係る研究 など
気候変動リスク情報創生プロジェクトチーム
◇ 温室効果気体濃度変動や土地利用変化等を取り扱う地球システムモデルの開発及びその地球環境科学に関する諸問題に対する
応用に係る研究
◇ 安定化目標値設定に向けた社会シナリオに関する検討及び情報収集に係る業務
◇ 気候変動予測に用いる初期値及び境界値の最適化技術及びデータ同化技術の開発
◇ 全球雲解像モデルを用いた気候感度の不確実性低減に係る研究 東日本海洋生態系変動解析プロジェクトチーム
◇ 自然起源の擾乱に伴う動的な底層生態系変動及び人為起源の擾乱に係る研究並びに環境影響評価に係る研究
◇ 東北日本を中心とした環境変動に係る研究
◇ 東日本生態系変動研究におけるハビタットマッピングに係る研究
◇ 東日本生態系変動研究によって取得されたデータ等の管理、公開及び運用に係る業務並びに関連システム構築に係る開発
北極環境変動総合研究センター
◇ 北極における海域環境の変化とその気候変動への影響に関する観測及びシミュレーションに係る研究
16 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
◇
◇
◇
◇
北極における海洋酸性化とその生態系への影響に関する観測及びシミュレーションに係る研究
化学物資循環による北極への影響に関する観測及びシミュレーションに係る研究
北極域から中緯度域の気候変動と将来予測に関するシミュレーションに係る研究
北極における観測研究等を効果的に促進するための技術開発 基幹研究領域
大気海洋相互作用研究分野
◇ 熱帯域における短期気候変動現象に係る研究
◇ 現場観測に基づく豪雨等の極端現象に係る研究
◇ 長期自然変動と短期気候変動現象の関係に係る研究
◇ 熱帯域と中緯度域との間の相互作用に係る研究
地球表層物質循環研究分野
沿岸から近海域における熱・物質輸送、生物及び海洋環境に係る研究
高知コア研究所
◇ 掘削コア試料等を用いた地震断層運動プロセスの総合理解による地震・津波発生機構、地球深部生命の生理生態、進化、金属
同位体分析法及び解析法等に係る研究
◇ 極微量・極微小領域の高精度同位体及び微量元素分析技術に係る研究開発
◇ コア試料等の管理、分析、活用及び関連技術に係る研究
◇ 高知コア研究所の分析・計測及び研究に係る施設・設備の運用、保守、維持、整備、管理、利用、機能向上及び関連技術に係
る研究開発
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 17
○ 社会的取組み
むつ研究所
◇
JAMSTECの概要
◇ 地表面と大気との間で交換される物質とエネルギー並びに各種陸上生態系の分布及び質の変動が環境へ及ぼす影響に係る研究
◇ 大気組成の変動機構並びにその陸面、海洋及び人間圏との連関に係る研究
統合的気候変動予測研究分野
◇ 地球表層環境に関わるシミュレーションモデルを用いた気候・水循環変動、地球温暖化等の地球環境の変化と変動に係る研究
◇ シミュレーションモデルを用いた人新世の地球史的位置付けに係る研究
シームレス環境予測研究分野
◇ シームレス環境予測システム開発及び活用に係る研究
◇ マルチスケール気象擾乱予測に係る研究
◇ 水資源予測に係る研究
◇ 素過程数理モデリングに係る研究
地球深部ダイナミクス研究分野
◇ 地球表層から深部にわたる構造とその時空間変動に係る研究
地球内部物質循環研究分野
◇ 地球内部と表層との間の物質循環と地球進化に係る研究
◇ プレートの形成、進化及び循環に係る研究
◇ 沈み込み帯域における物質循環及び変動に係る研究
◇ 物質循環に関わる岩石及び流体の高精度元素・同位体分析技術に係る研究開発
海洋生物多様性研究分野
◇ 海洋生物多様性の研究
深海・地殻内生物圏研究分野
◇ 未到極限環境生命圏、地球生命及び生命圏の限界、生命存在条件並びに生命進化のプロセス及びメカニズムに係る研究
◇ 長期飼育・培養に基づく極限環境条件下での生物機能、相互作用及び物理・化学プロセスに係る研究
◇ 海洋・深海生態系に存在する特異的な共生系の形成及び細胞間相互作用の研究
生物地球化学研究分野
◇ 海底掘削試料の高精度分析技術の開発及び応用に係る研究
◇ 堆積物記録による地球史及び気候変動に係る研究
◇ 地球内部及び表層における生物物質の循環に係る研究
数理科学・先端技術研究分野
◇ 数理科学的手法による地球及び生命システムのダイナミクスに係る研究
◇ 海洋開発に必要な理工学的知識及び先端技術体系の構築に係る研究
海洋地球生命史研究分野
◇ 化学進化から生命進化への相変異の原理及びエネルギー・炭素・窒素代謝の初期進化に係る研究
◇ 地球及び生命の元素循環並びに元素利用能の進化プロセスに係る研究
◇ 宇宙・太陽変動及び地球深部変動の解析並びに極端表層環境変動の結合様式に係る研究
② 開発・運用部門
海洋工学センター
◇ 海洋エネルギー・資源に関連する基盤技術に係る研究開発
◇ 海洋利活用、次世代探査機、海中海底探査・観測、水中音響、海洋のセンシング及びモニタリングに関連する要素技術に係る
研究開発
◇ 海中探査機に係る開発
◇ ブイ等の海洋観測システムの運用、維持及び管理と開発及び機能向上
◇ 水中音響通信・測位技術に係る研究開発
◇ 音響を組み合わせた観測及びデータ通信システムに係る開発
◇ 海洋の物理センサー、化学センサー及び生物センサーに関連する計測技術に係る研究開発
◇ データを高品質に収集する計測システムに係る開発
◇ 研究船等におけるデータ及びサンプルに係る業務
◇ 研究船等及び学術研究船の運航計画、運航管理
◇ 深海用探査機及び調査観測機器に係る運用・操作技術の向上並びに運航・保守整備
◇ 外国の排他的経済水域・領海における海洋の科学的調査に対する同意の申請及び調整
◇ 海洋研究船の建造 など
地球情報基盤センター
JAMSTECの概要
◇
◇
◇
◇
◇
◇
◇
◇
◇
◇
◇
地球シミュレータ等の成果に係る事業化推進
海洋地球科学における様々なスケールのプロセス及び諸現象シミュレーションに係る研究開発
海洋地球科学モデルの計算特性及び計算機技術に係る基盤情報科学の研究開発
シミュレーション結果と観測データの統融合、同化手法等に係る研究開発
地球シミュレータ等の導入、維持、管理及び開発
地球シミュレータ等の利用者に対する総合的な技術支援、産業分野等における利用推進
地球シミュレータ等の数値シミュレーション手法及び高速化技法等の研究開発
海洋・地球観測データの活用のための公開、提供、情報化及び可視化に係る研究開発
海洋・地球観測データ・サンプルの管理、公開及び提供
海洋・地球観測データの管理技術及び品質評価手法に係る研究開発
各種データベース構築・運用管理に係る情報の収集、分類、整理、加工、提供及び保管 など
地球深部探査センター
○ 社会的取組み
◇
◇
◇
◇
◇
◇
◇
◇
「ちきゅう」の運用計画の立案、乗船者管理、操業管理
「ちきゅう」船体システムに関する研究開発及び保守整備
「ちきゅう」掘削システムに関する研究開発及び保守整備
「ちきゅう」サブシーシステムに関する研究開発及び保守整備
「ちきゅう」コアリングシステムに関する研究開発及び保守整備
「ちきゅう」による掘削に係る科学的分野における実施計画の立案及び推進
「ちきゅう」による研究航海に関係する研究者の支援及びその科学成果のとりまとめ
「ちきゅう」上及び保管場所への輸送におけるコアサンプルの管理 など
次世代海洋資源調査技術研究開発プロジェクトチーム
◇
◇
◇
◇
◇
◇
◇
海底資源の形成過程及び成因解明に係る研究開発
調査の実施に係る業務及び調査活動に付随する業務
海洋資源探査システム・運用手法に係る研究開発
自律型無人探査機(AUV)の複数機運用に係る研究開発
遠隔操作型無人探査機(ROV)を用いた作業システムに係る研究開発
海洋生態系観測及び変動予測手法の開発に係る研究
海洋資源開発対象海域の多様なモニタリングを実現させるためのケーブル式観測システム及びそれに付随したシステムに係る
研究開発 など
18 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
(2)研究活動行動規準
JAMSTEC では研究活動における不正行為などが行われ
ないように、2006 年度から研究活動に携わる者が遵守す
べきポリシーとして、
「研究活動行動規準」を策定し、これ
に従い研究活動を行ってきましたが、研究者の不正は今も
なお社会的に問題となっており、また 2011 年 3 月 11 日
する誠実さがより求められること等を踏まえ、日本学術会
議が定めた「科学者の行動規範」(2006 年 10 月 3 日)を
参考に、2012 年 10 月に従来の規準を見直しました。
JAMSTEC では、改正された基準に従いこれからも誠実
に研究活動を実施して参ります。
に発生した東日本大震災以降、研究者の社会への発言に対
研究活動行動規準
独立行政法人海洋研究開発機構(以下「JAMSTEC」という。)は、平和と福祉の理念に基づき、海洋に関する基盤的研究開発、海洋に
関する学術研究に関する協力等の業務を統合的に行うことにより、海洋科学技術の水準の向上を図るとともに、学術研究の発展に資する
ことを目的としています(独立行政法人海洋研究開発機構法第 4 条)。
研究活動は、いうまでもなく研究に携わる者一人一人の誠実性、自律性を基盤として行われるべきものであり、そこに不誠実性が存在
することは許されません。特に科学活動とその成果が大きな影響力を持つ現代において、研究者は常に倫理的な判断に基づいて行動しな
くてはなりません。
JAMSTECの概要
JAMSTEC において研究活動に携わる私たちには、前述の目的を踏まえ、新たなる真理を発見し、専門知識や技術を活かして人類の福祉、
社会の安全と安寧、そして地球環境の持続性に貢献する責任があります。
私たちは、ここに日々の研究活動において常に意識すべきことを、「研究活動行動規準」として制定し、その行動を自らが厳正に律する
倫理観の確立を目指します。
1.研究活動に携わる者として、常に誠実性、客観性、透明性をもって研究活動にあたり、課せられた社会的責任を全うします。
2.研究活動に係る資金については、社会からの負託の基に供与されているものと強く認識し、適正な申請・管理・執行に務めます。
3.研究活動における不正(研究に関わる捏造、改ざん、盗用、研究資金の不正使用等)を発見した場合には黙認せず、JAMSTEC に所
属する者として定められたルールに基づき、適切に対応します。
4.指導的な立場にある者は、JAMSTEC の方針に則り、各々の部門において誠実な研究活動を維持向上できる環境の構築に務め、研究
活動における不正の余地が生じないよう、日々適切なコミュニケーションを心がけます
○ 社会的取組み
(3)業務の評価
文部科学省所管の国立研究開発法人である JAMSTEC は、毎事業年度の業務実績について、文部科学省の国立研究開発法人
審議会の審議を経て、文部科学大臣により評価を受けています。平成 26 年度における業務の実績に関する評価の概要は次頁
のとおりです。
なお、詳細については、
http://www.mext.go.jp/component/b_menu/shingi/toushin/__icsFiles/afieldfile/2015/09/11/1361301_07.pdf
をご覧ください。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 19
<全体の評定>
評定:B *
国立研究開発法人の目的・業務,中長期目標等に照らし,法人の活動による成果,取組等について諸事情を踏まえて
総合的に勘案した結果、「研究開発成果の最大化」に向けて成果の創出や将来的な成果の創出の期待等が認められ、着実
な業務運営がなされている。
JAMSTECの概要
(*)評定はS、A、B、C、Dの5段階でなされ、各評定の基準は以下のとおりとなっています。
S:国立研究開発法人の目的・業務、中長期目標等に照らし、法人の活動による成果、取組等について諸事情を踏まえて総合的に勘案し
た結果、適正、効果的かつ効率的な業務運営の下で「研究開発成果の最大化」に向けて特に顕著な成果の創出や将来的な特別な成果の
創出の期待等が認められる。
A:国立研究開発法人の目的・業務、中長期目標等に照らし、法人の活動による成果、取組等について諸事情を踏まえて総合的に勘案し
た結果、適正、効果的かつ効率的な業務運営の下で「研究開発成果の最大化」に向けて顕著な成果の創出や将来的な成果の創出の期待
等が認められる。
B:国立研究開発法人の目的・業務,中長期目標等に照らし、法人の活動による成果、取組等について諸事情を踏まえて総合的に勘案し
た結果、「研究開発成果の最大化」に向けて成果の創出や将来的な成果の創出の期待等が認められ、着実な業務運営がなされている。
C:国立研究開発法人の目的・業務、中長期目標等に照らし、法人の活動による成果、取組等について諸事情を踏まえて総合的に勘案し
た結果、「研究開発成果の最大化」又は「適正,効果的かつ効率的な業務運営」に向けてより一層の工夫、改善等が期待される。
D:国立研究開発法人の目的・業務、中長期目標等に照らし、法人の活動による成果、取組等について諸事情を踏まえて総合的に勘案し
た結果、「研究開発成果の最大化」又は「適正、効果的かつ効率的な業務運営」に向けて抜本的な見直しを含め特段の工夫、改善等を
求める。
<法人全体に対する評価>
海洋研究開発機構として 15 年先を見据えた長期ビジョン及びそれを実現するための技術ビジョンを策定するととも
に、7つの中期研究開発課題に取り組むための大幅な組織体制の見直しを行い、第3期中期計画の第1事業年度として「研
究開発成果の最大化」に向けた着実な組織運営が行われていると評価する。
<項目別評価の主な課題,改善事項等>
特に全体の評価に影響を与える事象はなかった。
<国立研究開発法人審議会の主な意見>
○ 社会的取組み
全体の評定について
◦機構全体としての自己評価Bは妥当と考える。自己評価(SABC)については,大きく修正を要すると考えるところはな
い。全体的に計画を達成あるいは上回る成果を挙げている。
成果について
◦研究論文から見た研究活動は、当該分野で国内随一の研究機関として発展していることを十分に示している。いずれの
分野においても、質の高い国際学術雑誌でインパクトの高い・研究成果・論文の発表が継続的になされている。
◦平成 26 年度の各分野のトピックスや、平成 26 年度業務実績等報告書は、多様な分野の研究が、研究者の独創性や、他
研究機関との共同研究をとりまとめる調整力により、高いレベルで推進されていることを十分に示している。
◦研究開発成果の産業利用・産業転換又は民間企業との共同研究が、より自然に、かつ、無理のない形で進められている。
長期マネジメントについて
◦海洋立国における世界の中核機関として長期ビジョンに基づく目標を設定し、その実現に向けた組織構成の見直しなど
に取り組んでいる。
◦優れた研究成果の創出に加え、交付金の削減が著しい中、組織横断的な中期研究開発課題を推進する体制の整備、巨大ファ
シリティの維持・運営、情報発信の強化、地球シミュレータ後継機の戦略的調達と優れた運用に成功しており、活動は全
体として高く評価される。
◦研究が多様な分野に発展的に広がっていくことと、資金や人材の集中的な投入の必要性との間で、困難な判断が求めら
れていることを予想するが、研究職・技術職あわせて約 600 名の常勤職員を有する当該分野で国内随一の研究機関とし
ては、さまざまな工夫により、研究の多様な発展を維持していただくことが国全体の成果最大化に貢献するという面はあ
ると思うので、引き続き、バランスのよい発展を期待する。
20 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
3. 組織構成
組 織 図
理 事 長
監 事
理 事
研究部門
戦略研究開発領域
開発・運用部門
海洋工学センター
運営管理部門
経営企画部
企画調整室
企画課
海洋掘削科学研究開発センター
海洋技術開発部
経営戦略課
地震津波海域観測研究開発センター
運航管理部
法人制度企画調整室
海洋生命理工学研究開発センター
海洋研究船建造室
海底資源研究開発センター
アプリケーションラボ
気候変動リスク情報創生プロジェクトチーム
東日本海洋生態系変動解析プロジェクトチーム
北極環境変動総合研究センター
基幹研究領域
大気海洋相互作用研究分野
地球表層物質循環研究分野
統合的気候変動予測研究分野
シームレス環境予測研究分野
地球深部ダイナミクス研究分野
地球内部物質循環研究分野
海洋生物多様性研究分野
生物地球化学研究分野
数理科学・先端技術研究分野
海洋地球生命史研究分野
むつ研究所
総務課
企画調整室
施設課
先端情報研究開発部
横浜管理課
統合地球情報研究開発部
東京事務所
情報システム部
法務・コンプライアンス課
地球情報技術部
人事部
国際海洋環境情報センター
人事第1課
地球深部探査センター
人事第2課
企画調整室
職員課
運用部
男女共同参画・職員サポート課
技術部
経理部
科学支援部
経理課
環境保安グループ
次世代海洋資源調査技術研究開発
プロジェクトチーム
財務課
契約第 1 課
契約第 2 課
事業推進部
産学連携課
陸域周辺海域海洋環境変動研究グループ
外部資金課
研究推進グループ
国際課
管理課
高知コア研究所
断層物性研究グループ
地球深部生命研究グループ
同位体地球化学研究グループ
科学支援グループ
管理課
研究推進部
広報部
広報課
報道課
安全・環境管理室
監査室
海洋科学技術イノベーション
推進本部
研究推進第 1 課
研究推進第 2 課
国際協力プロジェクト推進室
(平成 27 年7月1日現在)
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 21
○ 社会的取組み
深海・地殻内生物圏研究分野
総務部
地球情報基盤センター
JAMSTECの概要
地球環境観測研究開発センター
むつ研究所
青森県むつ市大字関根字北関根 690 番地
横浜研究所
神奈川県横浜市金沢区昭和町 3173 番地 25
東京事務所
東京都千代田区内幸町 2 丁目 2 番 2 号
富国生命ビル 23 階
JAMSTECの概要
高知コア研究所
高知県南国市物部乙 200
横須賀本部
神奈川県横須賀市夏島町 2 番地 15
○ 社会的取組み
国際海洋環境情報センター(GODAC)
沖縄県名護市字豊原 224 番地 3
JAMSTEC
TRIVIA
7.海中大探索! しんかい 6500 で行く深海への旅
井上ようこ 作,木下真一郎 絵/岩崎書店刊
「しんかい 6500」に乗りこみ海中大探険へ出発し、話題のダイオウイカをはじめ、
数々の深海生物と出会う。それぞれの深度毎に生物を紹介した充実した内容と、写
真ではなく細密なイラストで深海の中を探検し、そこに棲む深海生物たちの様子を
見せてくれる、見て美しい、読んで楽しい絵本
22 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
研究船
●海洋調査船「なつしま」
●海洋調査船「かいよう」
全 長 67.3m
全 長 61.5m
幅
幅
13.0m
28.0m
深 さ 6.3m
深 さ 10.6m
喫 水 5.0 m
喫 水 6.3m
国 際
3,350 トン
総トン数
(ソーナードーム含)
国 際
1,739 トン
総トン数
航海速力 約 13 ノット
航海速力 約 11 ノット
航続距離 約 6,200 マイル
航続距離 約 10,800 マイル
定 員 60 名(乗組員 29 名 / 研究者等 31 名)
定 員 55 名(乗組員 37 名 / 研究者等 18 名)
主推進機関誘導電動機 860kW × 4 基
主推進機関ディーゼル機関 625kW × 2 基
主推進方式可変ピッチプロペラ×2軸
●深海潜水調査船支援母船「よこすか」
●深海調査研究船「かいれい」
全 長 105.2m
全 長 106.0m
幅
幅
16.0m
16.0m
深 さ 7.3m
喫 水 4.7m
喫 水 4.7m
国 際
4,439 トン
総トン数
国 際
4,517 トン
総トン数
航海速力 約 16 ノット
航海速力 約 16 ノット
航続距離 約 9,500 マイル
航続距離 約 9,600 マイル
定 員 60 名(乗組員 45 名 / 研究者等 15 名)
定 員 60 名(乗組員 38 名 / 研究者等 22 名)
主推進機関ディーゼル機関 2,206kW × 2 基
主推進機関ディーゼル機関 2,206kW × 2 基
主推進方式可変ピッチプロペラ×2軸
主推進方式可変ピッチプロペラ×2軸
◆「しんかい 6500」、「うらしま」の支援母船
◆「かいこう MK- Ⅳ」の支援母船
●海洋地球研究船「みらい」
●学術研究船「白鳳丸」
全 長 128.5m
全 長 100.0m
幅
幅
19.0m
16.2m
深 さ 10.5m
深 さ 8.9m
喫 水 6.9m
喫 水 6.3m
国 際
8,706 トン
総トン数
国 際
3,991 トン
総トン数
航海速力 約 16 ノット
航海速力 約 16 ノット
航続距離 約 12,000 マイル
航続距離 約 12,000 マイル
定 員 80 名(乗組員 34 名 / 研究者等 46 名)
定 員 89 名(乗組員 54 名 / 研究者等 35 名)
主推進機関ディーゼル機関 1,838kW × 4 基
主推進機関4 サイクルディーゼル機関 1,900ps × 4 基
推進電動機 700kW × 2 基
主推進方式可変ピッチプロペラ×2軸
電気推進モーター 460kW × 2 基
主推進方式4翼可変ピッチプロペラ
(ハイスキュー型×2軸×2舵)
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 23
○ 社会的取組み
深 さ 7.3m
JAMSTECの概要
主推進方式可変ピッチプロペラ×2軸
研究船
●東北海洋生態系調査研究船「新青丸」
●有人潜水調査船「しんかい 6500」
全 長 66.0m
全 長 9.7m
幅
幅
13.0m
2.8m
深 さ 6.2m
高 さ 4.1m
喫 水 5.0m
空中重量 26.7 トン
国 際
1,629 トン
総トン数
潜航深度 6,500m
航海速力 約 12 ノット
ライフサポート時間
航続距離 約 6,500 マイル
定 員 41 名(乗組員 26 名 / 研究者等 15 名)
乗 員 数 3 名(パイロット 2 名/研究者 1 名)
主推進機関推進電動機 1,300kW × 2 基
最大速力 2.7 ノット
潜航時間 8 時間
129 時間
主推進器 アジマス推進器(2基)
JAMSTECの概要
●地球深部探査船「ちきゅう」
全 長 210m
幅
38.0m
深 さ 16.2m
喫 水 9.2m
国 際
56,752 トン
総トン数
航海速力 約 12 ノット
航続距離 約 14,800 マイル
定 員 200 名 推進システム
ディーゼル電気推進
○ 社会的取組み
探査機
●深海巡航探査機「うらしま」
●深海探査機「じんべい」
全 長 10.0m
全 長 4.0m
幅
幅
1.3m
1.1m
高 さ 1.5m
高 さ 1.0m
空中重量 約 7 トン
空中重量 1.7 トン
潜航深度 3,000m
(リチウムイオン電池を搭載時)
潜航深度 3,500m
速 力 2 ノット
航続距離 100km 以上
潜航時間 約 10 時間
速 力 3 ノット(最大 4 ノット)
動 力 源 リチウムイオン電池
24 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
探査機
●深海探査機「おとひめ」
●深海探査機「ゆめいるか」
全 長 2.5m
全 長 5.0m
幅
幅
2.1m
1.2m
高 さ 1.4m
高 さ 1.2m
空中重量 850kg
空中重量 2.7 トン
潜航深度 3,000m
潜航深度 3,000m
速 力 0.5 ~ 1.5 ノット
速 力 2 ~ 3 ノット
潜航時間 約 8 時間
潜航時間 約 16 時間
全 長 5.2m 幅 2.6m 高さ 3.2m
空中重量 5.8 トン
最大潜航
11,000m
深 度
●無人探査機「かいこう 7000 Ⅱ」ビークル
●無人探査機「かいこうMk-Ⅳ」
全 長 3.0m
全 長 3.0m
幅
幅
2.0m
JAMSTECの概要
● 7000 m級無人探査機「かいこう」システム ランチャー(ランチャーは共用)
2.0m
高 さ 2.6m
空中重量 約 4 トン
空中重量 約 6 トン
潜航深度 7,000m
潜航深度 7,000m
● 3000m 級探査機「ハイパードルフィン」
●深海曳航調査システム「ディープ・トウ」
全 長 3.0m
全長数千メートルのケーブル
幅
の先端にソーナーやカメラを
○ 社会的取組み
高 さ 2.1m
2.0m
高 さ 2.6m
装 備 し た 曳 航 体 を 取 り 付 け、
空中重量 4.3 トン
海底付近をごく低速で曳航する
潜航深度 3,000m
システム。
最大速力 (前進/後進)
3 ノット/ 2 ノット
最大速力 (横進/上昇・下降)
2 ノット/ 1.5 ノット
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 25
施設設備
●地球シミュレータ
●コア保管庫
庫内温度 4℃(冷凍保管庫は−20℃)
広さ【従来保管庫】 約 2,000㎡
【新保管庫】
約 1,000㎡(中2階構造・高さ約 7.5m)
収納できるコア本数
【従来保管庫】 約 17 万本
【新保管庫】
JAMSTECの概要
計算ノード
CPU 数
コア数
演算性能(コア当たり)
メモリ容量
メモリバンド幅
システム
総ノード数
総 CPU 数
総コア数
総合演算性能
総メモリ容量
総メモリバンド幅
約 20 万本
1
4
64 GFLOPS
64 GB
256 GB/s
5120
5120
20480
1.3 PFLOPS
320 TB
1.3 PB/s
新保管庫へ引っ越しの様子
●超音波水槽装置
●高圧実験水槽装置
材 質 鉄筋コンクリート
有効寸法 【大型】内径 1.4m ×高さ 3m(有効容積:4.61㎥)
水槽寸法 長さ 9m ×幅 9m ×深さ 9m
無響装置 壁面(5 面)全体に吸音材(マイヤーゴム)を装備
最大使用圧力
【中型】内径 0.6m ×高さ 1.6m(有効容積:0.49㎥)
147MPa(共通)
○ 社会的取組み
昇降圧速度
【大型】0.39 ~ 3.9MPa/min
【中型】2.74 ~ 27.4MPa/min
加圧媒体 真水(共通)
●多目的プール
●多目的実験水槽
構 造 鉄筋コンクリート(水密)
材 質 鉄筋コンクリート
大 き さ
水槽寸法 長さ 40m ×幅 4m ×深さ 2m(一部 2.3m)
長さ 21m ×幅 21m ×深さ 1.5m 及び 3.3m
26 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
4.経営指標
JAMSTEC 全体の収入、支出及び人員の推移は以下のとおりです。2004 年度より独立行政法人化され、収入及び支出について、
以下のような区分で管理しています。
(百万円)
90,000
収 入
8,990
80,000
1,614
70,000
事業等収入
補助金収入
60,000
50,000
0
4,790
2,241
4,473
2,766
11
330
38,431
2008
施設費補助金
35,548
3,191
211
560
38,560
7,545
949
3,818
3,946
8,445
3,143
1,808
3,427
450
36,337
36,028
36,354
34,449
39,672
2009
2010
2011
2012
2013
2014 (年度)
6,211
4,431
1,033
1,328
2,815
8,773
運営費交付金
JAMSTECの概要
40,000
受託収入
8,019
(百万円)
支 出
90,000
7,235
受託経費
80,000
施設費
70,000
60,000
40,000
0
6,087
5,250
事業経費
8,670
一般管理費
3,904
3,818
32,568
1,305
8,445
7,971
41,720
1,317
483
211
37,084
1,356
4,081
433
2,859
37,024
1,307
38,038
1,145
38,821
1,117
5,875
2,798
1,283
34,929
1,451
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014 (年度)
261
245
268
310
332
347
229
32
53
126
25
50
117
46
50
124
46
46
40
44
137
40
47
148
45
46
4,374
322
11
7,725
(人)
人員の推移
1,200
800
128
167
その他 ( 事務スタッフなど)
出向契約職員
船員
任期制事務・技術職
400
369
421
437
445
479
495
490
180
194
199
210
212
210
227
66
62
58
56
53
54
80
2008
2009
2010
2011
2012
2013
任期制研究職
定年制事務・技術職
0
定年制研究職
2014 (年度)
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 27
○ 社会的取組み
50,000
補助金事業
35,132
5. 沿 革
1971 年
1981 年
1985 年
1990 年
1995 年
JAMSTECの概要
10 月
10 月
5月
4月
3月
10 月
1997 年 1 ∼ 2 月
3月
9月
12 月
2000 年
10 月
10 月
2001 年
4月
10 月
11 月
2002 年
4月
8月
10 月
2004 年
3月
4月
2005 年
2月
2月
7月
10 月
2007 年
3月
3月
9月
2008 年 2 ∼ 3 月
10 月
2009 年
3月
2011 年
3月
3月
11 月
2013 年
1月
1 月∼11 月
6月
2015 年
4月
5月
「海洋科学技術センター」設立
「しんかい 2000」/「なつしま」システム完成
海中作業実験船「かいよう」竣工
「しんかい 6500」/「よこすか」システム完成
10,000m 級無人探査機「かいこう」がマリアナ海溝の世界最深部の潜航に成功
「むつ事業所」開設
ロシア船籍タンカー「ナホトカ号」沈没部調査
深海調査研究船「かいれい」竣工
海洋地球研究船「みらい」竣工
学童疎開船「対馬丸」調査
「ワシントン事務所」開設
「むつ研究所」発足
「シアトル事務所」開設
実習船「えひめ丸」ハワイ沖引き揚げ調査協力
「国際海洋環境情報センター」開設
「地球シミュレータ」世界最高の演算性能を達成
「横浜研究所」開設
地球深部探査センター発足
「しんかい 2000」退役
「独立行政法人海洋研究開発機構」発足
インドネシア・スマトラ島沖地震調査を実施
「うらしま」が世界新記録航続距離 317 ㎞を達成
地球深部探査船「ちきゅう」竣工
「高知コア研究所」設立
「シアトル事務所」閉鎖
「しんかい 6500」1000 回潜航を達成
地球深部探査船「ちきゅう」による「南海トラフ地震発生帯掘削計画」開始
護衛艦「あたご」と漁船「清徳丸」衝突事故に関する海域調査を実施
IPCC のノーベル賞受賞に地球シミュレータが貢献
地球シミュレータ更新
東日本大震災に関する緊急調査を実施
「ワシントン事務所」閉鎖
神戸サテライト開設
学術研究船「淡青丸」退役
「しんかい 6500」世界一周航海「QUELLE(クヴェレ)2013」実施
東北海洋生態系調査研究船「新青丸」竣工
「国立研究開発法人海洋研究開発機構」に名称変更
海底広域研究船「かいめい」進水
環境配慮活動の歩み
2003 ∼ 2005 年度 海洋調査観測活動に伴う海洋環境に対する影響等の諸調査を実施
2006 年
3月
「環境への配慮に係る基本方針」策定
「調査・観測活動に係る環境保全のための指針」策定
9月
第 1 回目の環境報告書を発行
2008 年
3月
「チーム・マイナス 6%」プロジェクトに参加
2009 年
4月
2010 年
1月
「チャレンジ 25」キャンペーンに参加
2014 年
4月
「安全衛生及び環境配慮に係る基本方針」策定
安全管理の方針等を審議する「安全会議」を「安全・環境会議」に改称
28 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
Ⅱ.安全衛生及び環境配慮のマネジメント
1. 安全衛生及び環境配慮のための体制
(1)基本方針・指針
JAMSTEC の安全衛生管理は、労働安全衛生法、船員法
等の労働関係法令に則り各種委員会やパトロール、有害業
務に係る作業環境測定等を実施して職場の安全及び衛生の
管理を行っているほか、ヒヤリハット事例の収集、リスク
アセスメントの推進、安全管理システムで PDCA サイクル
を回すことなどにより継続的改善に努めています。
また、緊急事態が生じた場合に迅速に対応できるようマ
ニュアルを整備し定期的に訓練を行っているほか、職員の
安全衛生の意識向上のため、教育・訓練を実施しています。
環境配慮面では、平成 17 年 4 月の環境配慮促進法の施
行に伴い、特定事業者として毎年環境報告書の作成と公表
を義務付けられることとなりました。これを契機として、
平成 18 年 3 月に「環境への配慮に係る基本方針」を策定
し、環境配慮活動に取り組むこととしました。それまで調査・
観測活動を対象とした指針は一部の部署では策定されてい
ましたが、全体としての指針は策定されておらず、更には
海洋における調査観測活動について、「国連海洋法条約」や
「生物多様性条約」等により、環境保全という観点からの実
施が必要とされている情勢を受け、「環境への配慮に係る基
本方針」と同時に「独立行政法人海洋研究開発機構におけ
る調査・観測活動に係る環境保全のための指針」を策定し、
実施することとしました。
平成 26 年 4 月 1 日からは、第 3 期の中期計画の開始に
伴い、安全衛生と環境配慮に係る基本方針を統合すること
とし、新しく安全衛生及び環境配慮に係る基本方針を平成
26 年 4 月 25 日に制定しました。
安全衛生及び環境配慮に係る基本方針
【安全衛生】ゼロ災害の希求及び健全・快活な職場環境の形成
【環境】持続可能社会構築への貢献
機構は、研究開発機関として機構が保有する研究開発資源を最大限に活用し、次の活動を通じて持続可能な社会の構築に貢献します。
(1)研究・開発活動を通じて得られた地球環境変動にかかわる科学的知見を広く社会に発信します。
(2)事業活動に伴う環境負荷の低減に資する行動を計画的に実施します。
(3)環境保全に係る国内外の規範の遵守は勿論のこと、更なる環境配慮活動の充実を図ります。
調査・観測活動に係る環境保全のための指針
独立行政法人海洋研究開発機構(以下「機構」という。)は、環境保全・生態系保全の観点から、海洋に関する基盤的研究開発の推
進のための観測・調査研究及び技術開発等(以下「調査・観測活動」という。)の実施にあたり、以下の事項に配慮することとする。
1.機構は、調査・観測活動を実施する場合は、国内の関連法令はもとより、基本的に「国連海洋法条約」「生物多様性条約」等の国
際的な法規範を尊重する。
2.機構は、調査・観測活動のために利用する機器、船舶及び無人探査機等の運用に際しては、環境保全及び生態系保全に配慮する。
3.採取する試料については、環境の保全及び生態系の保全を最優先に考え、必要最小限に抑えるように努める。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 29
○ 社会的取組み
機構は、事故・災害の発生を未然に防止するという断固とした意志のもとゼロ災害を希求するとともに、役職員の心身の健康を保持・
増進し、良好な人間関係の構築を図るため、次の活動を通じて健全で快活な職場環境を形成します。
(1)職場や作業に潜む事故・災害が発生するリスクを発見・把握・分析・解決し、事故・災害の発生を未然に防止します。
(2)上長が率先垂範して安全管理、作業環境管理、作業管理、健康管理を確実に行い、安全衛生管理を徹底します。
(3)役職員相互のコミュニケーションの活性化を図り、一人一人が自主・自発的に安全行動を実践します。
安全衛生及び環境配慮の
マネジメント
独立行政法人海洋研究開発機構(以下「機構」という。)は、業務の遂行にあたって安全と健康の確保を最優先とし、快適な職場環
境の形成を促進するため、役職員が一丸となって安全衛生の諸活動に取り組みます。
また、海洋科学技術分野をリードする研究開発機関としての責務を認識し、地球環境の保全に積極的に貢献します。
以上の決意のもと、機構は安全衛生及び環境配慮に係る基本方針を定めます。
(2)安全衛生及び環境配慮マネジメントシステム
JAMSTEC では、安全衛生の管理と環境配慮活動に関す
る意思決定を、理事長を議長とする安全・環境会議で行っ
ています。年度当初に開催される安全・環境会議では、安
全衛生及び環境配慮に係る基本方針や、その年度の安全衛
生・環境配慮目標を定め、この基本方針や安全衛生・環境
配慮目標を土台として、各部署それぞれがアクションプラ
ンを作成し、そのアクションプランに従って安全衛生の管
理や改善活動及び環境配慮活動を行います。
各部署はアクションプランの実施状況を次年度の安全・
環境会議で報告することになっており、また必要に応じて
安全・環境管理室の安全監査を受けることとしています。
このアクションプランの実施結果や安全監査の結果を踏
まえた上で現状の問題点や課題を分析し、それらの課題等
を是正するように次年度の新たな目標の設定を安全・環境
会議で行います。このような一連のサイクルにより安全衛
生及び環境配慮に係るマネジメントシステムの運用を行っ
ています。
JAMSTECの安全衛生及び環境配慮マネジメントシステム図
安全・環境会議
----------------------------------------------------
議長/理事長 委員/理事 ほか
安全衛生及び環境配慮の
マネジメント
---------------------------------------------------安全衛生及び環境配慮に係る基本方針の策定
その年度の安全衛生・環境配慮目標の設定
安全監査
---------------------------
安全・環境管理室
--------------------------アクションプランの実施状況についての監査を行う
このサイクルを繰り返します
アクションプラン実施報告
---------------------アクションプランの実施状況を年度末に報告する
アクションプランの策定(年度当初)と活動の実施
----------------------
各部署
---------------------アクションプランに従い安全の管理、改善及び環境配慮活動を実施する
JAMSTEC
TRIVIA
8.海洋地球研究船「みらい」
とっておきの空と海
柏野祐二・堀 E. 正岳・内田裕 著/幻冬舎刊
広域・荒天域の観測調査が可能な「みらい」船上で、自然の織り成すさまざま
な風景が 1 冊にまとめられています。普段の生活では目の当たりにすることが出
来ない景色について 1 枚 1 枚丁寧な解説が付いています。まさに“とっておき”
の 1 冊です。
30 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
(3)平成 27 年度の安全衛生・環境配慮目標
平成 27 年度の安全衛生・環境配慮目標は次のとおりです。
平成 27 年度 安全衛生・環境配慮目標
1.安全衛生教育の推進
労働災害の発生を未然に防止するため、安全衛生教育を推進する。
2.不安全行動の防止
安全衛生教育、作業手順の確認、リスクアセスメント、声掛けなどを実施し、業務における不安全行動の防止を図る(各部署に
て 5 件以上のヒヤリハット事例を収集する)。
3.火災予防の推進及び火災発生時の対応の徹底
4.電気機器の適切な取扱い
電気機器については適切に使用し、概ね 15 年を経過した機器については廃棄又は更新に努め、もしくは使用方法又は管理方法
の検討を行う。
(4)平成 26 年度の実績
平成 26 年度の安全・環境配慮目標とその実績は次のとおりです。
1.安全管理体制の再確認
大幅な組織改編が行われたことに伴い、各部署の所管業務に係る安全管理体制を再確認する。不備があると認められる場合には
再構築を行う。
2.不安全箇所の抽出と対策
各業務の作業手順の再確認とヒヤリハット事例の収集を行い、不安全箇所の抽出とそれに対する対策・改善を講じる。
3.職場内のコミュニケーションの活性化
安全の確保と快適な職場環境を形成するために、挨拶・声掛けの励行、ミーティングの実施など、役職員相互のコミュニケーショ
ンの活性化を図る。
4.環境負荷低減活動の実施
各部署のエネルギー・資源の利用状況を点検し、省エネルギー、省資源、4R(Refuse, Reduce, Reuse, Recycle)活動を推進する。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 31
安全衛生及び環境配慮の
省エネルギー・省資源等の環境配慮活動について、定量的な目標を設定し、より効果的な環境配慮活動を推進する。
マネジメント
5.定量的な環境配慮活動の推進
実施内容
実施部署
安全衛生及び環境配慮の
マネジメント
研究部門内に陸域及び海域の調査・研究等を対象とする 2 つの安全検討部会において、調査活動等の実施要領書 計 61 件
の安全及び信頼性について審議した。また、調査活動等の進捗・終了等の状況について、これまで以上の密な連絡体制を策定し、
実施した。
研究室等の環境整備を実施し、ボンベ類及び薬品等の蔵置量の適正化を図った。また、JAMSTEC 全体の実験室等の戦略
的かつ総合的な利用促進を図るため「実験施設等運営委員会」立ち上げ準備を行った。
各研究センター、
各研究分野
及び
研究推進部
DONET の運用や調査観測において通常時並びに緊急時の各グループ間の連携について体制の見直しを行った。特に実際
に起こった障害発生事例の対応について考察し、緊急連絡体制等に反映を行った。また、船舶や海外での調査観測活動につ
いても、調査責任者からの連絡・情報共有を強化した。
地震津波海域観測
研究開発センター
実験室における管理責任者と研究に供する装置類の使用状況を確認し、必要に応じて設置場所の変更やアース処理等の対
策を講じた。また、海域調査については、定例会において実施要領書の確認を行い、より安全な業務実施に努めた。業務を
通じて得られたヒヤリハット情報は都度定例会において共有し、事故・トラブルの防止を図った。
海底資源研究開発
センター
冬期間の雪道、路面凍結時の運転について、ヒヤリハット事例の収集を行い、注意喚起並びに冬道運転実技講習を実施した。
災害に備えた設備・備蓄品等並びに実験環境の点検を継続して行い、安全衛生パトロール等において、確認・改善を行った。
また、分析棟の空調機について一部更新を行い、運転時に環境負荷が低い機器を導入した。
むつ研究所
横須賀本部で起こった小火(ぼや)発生を踏まえて、所内職員へ注意喚起を行った。また、毎月実施している安全パトロー
ルにて、重点項目として火災発生が想定されそうな箇所の点検を実施した。
業務上関連が深い高知大学が整備している防災マニュアルに参画し、防災対策班のメンバーについて確認を行った。
高知コア研究所
船舶・整備場・実験棟に見学者が訪れる際は、広報部と連携し、作業の中断等の対応を行った。作業場等におけるヒヤリハッ
ト情報の報告について積極的な収集に努め、意識の向上を図った。
年 1 回開催の運航管理部、運航委託会社等で構成する「安全運航に関する意見交換会」では、「白鳳丸」や運航委託各社のヒ
ヤリハットの収集や展開に関する情報を積極的に紹介し、その情報を基により良いシステムの構築について意見交換を行っ
た。
研究船利用に関する機構内外の委員会での審査・査読用プロポーザル資料の電子化を促進し、省資源化を図った。
海洋工学センター
データ公開システムを設置している GODAC への台風接近について常に留意し、横浜研究所側と連携し、当該サーバの停
止措置等を行うなど、台風対策のための行動方針の見直しを行った。また、横浜研究所に設置しているサーバ室の適正な温
度管理を行い、転倒防止のための整理整頓及び居室整備を行った。
岩石サンプル処理作業においては、各作業担当者の業務内容並びにヒヤリハット情報を整理し、共有化及び対策・改善に
努めた。
地球情報基盤
センター
潜在的 HSE(衛生・安全・環境)リスク抽出のため行われたフル安全監査により指摘された事項について、センター全体
会議にて是正計画を協議し、アクションアイテムを決定した。
HSE に関する基本方針、
安全目標、
アクションプラン等を周知徹底し、
CDEX Safety Award の創設や技術・ノウハウ継承シー
トの活用等で HSE に関する意識・意欲の向上・維持に努めた。
地球深部探査
センター
ヒヤリハット事例の収集に関し、適宜部員へヒアリングを行い、改善を図った。モノクロ、両面及び 2in1 印刷を促進し、
コピー用紙等の節減に努めた。
経営企画部
現行の複合機の稼働率および組織改編に伴う部署の再配置において、複合機の統廃合及び設置を見直して、従前より 10 台
少ない配置並びに省エネタイプの機器導入を実現し、省エネルギーの推進とコスト及び用紙節減を実現した。また、建屋ご
との子メーターにより日・月・年で使用量を把握し、各設備の効率的な運用を行った。
災害等発生時の対応における要点をカードサイズにまとめ、常に携帯できるよう役職員に配付し、有事の際のリスク低減
に努めた。
総務部
課内会・部内会等でヒヤリハット活動及び省エネルギー・省資源・4R 活動に関する事例・対策等の共有を行った。
また、離席時に作業中のパソコン画面を最小化にしておく等、情報漏洩防止に関する適正な取扱いについて留意した。
人事部
空調利用時にサーキュレーターや扇風機を併用して居室の温度を均一化するようにし設定温度の調整を行った。居室内及
び机上等を整理し、周囲の職員に積極的に声掛けを行い、より安全な職場環境の整備について共同作業を行った。
経理部
居室における不要物の撤去・整理整頓を推進した。電気プラグの状態が見えるよう机の配置を工夫し、埃の除去を行う等、
漏電対策に努めた。モノクロ、両面及び 2in1 印刷を促進し、紙利用の節減に努めた。
また、海外出張時における現地の安全情報について各方面より情報収集を行い、伝染病やテロ、犯罪等の危険のある地域
への出張を控えた。さらに、いざという時、在外公館などから緊急時情報提供を受けられる海外旅行登録システム「たびレジ」
(外務省提供)の利用呼びかけを全職員向けに行った。
事業推進部
施設・船舶公開時における見学ルート上のヒヤリハット事例を収集し、安全を再確認した。イベント開催時には津波発生時
の避難経路を自治体の協力を元に入手し、参加者への周知徹底等を実施した。
広報部
大幅な組織改編に伴い、各部署の所管業務に係る安全管理体制の再確認を行った。ヒヤリハット事例の収集を促進するた
めのプロモーション活動を行い、収集件数の増加を促した。
また、外部講師を招聘し、電気の安全に関する講習会を開催した。
安全・環境管理室
防災対策として、居室内の什器について転倒防止確認並びに非常時における避難路の確保のため、書類及び備品等の整理
整頓を行った。
また、ヒヤリハット事例並びに空調の適正管理や資源節約の取り組み等の環境負荷低減活動について、室内会において情
報共有を図り、職場環境の維持に努めた。
監査室
32 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
2. 委員会とその任務
JAMSTEC が行っている研究や開発などの事業活動を円
JAMSTEC の事業活動に伴う安全性及び環境影響の評価
滑に行うためには、事故・トラブルの未然防止、作業環境
や安全衛生及び環境保全の課題については、その活動の形
測定などの衛生管理、エネルギーの効率的な使用、コンプ
態や分野に応じてそれらの活動を所掌する各委員会で審議
ライアンスの推進、リスクの管理などを適切に行い対策を
するほか、比較的大規模なプロジェクトなどについては事
取ることが重要です。JAMSTEC では、これらの事項につ
前に個別の専門委員会を設置・開催し、安全性及び環境影
いて規程などのルールを整備して制度的に管理するととも
響の評価や実施計画の策定などを行い実施しています。
に、各種の委員会を設置していろいろな課題を審議し、問
JAMSTEC では次のような安全・環境に関連した委員会
題の解決を図っています。
を設置しており、定期的に開催しています。
◆安全・環境・リスクマネジメント関連委員会と設置の目的
委員会名称
設置の目的
労働安全衛生委員会
職員の安全と健康維持に関して調査・審議します。
研究安全委員会
JAMSTEC で行われる重要な調査・研究を安全に推進するための方策などを審議します。
科学掘削安全検討委員会
地球深部探査船「ちきゅう」の運航や「ちきゅう」で行われる掘削に関して、その重要事
項や安全対策について審議します。
化学物質環境安全委員会
試薬などに代表される化学物質の取扱いに関して、環境の安全や職員の健康と安全につい
て調査・審議します。
組換え DNA 実験安全委員会
遺伝子組換え実験に関しての安全性を調査・審議します。
微生物等実験安全委員会
微生物実験に関しての安全性を調査・審議します。
放射線安全委員会
放射線障害の防止について、調査・審議します。
エネルギー使用合理化推進委員会
エネルギーの合理的な使用について審議します。
リスクマネジメント委員会
リスクマネジメントに関する諸規程及び体制の整備やリスク対応等の推進について検討・
審議します。
JAMSTECの安全・環境・リスクマネジメント関連委員会の体制
理事長
リス クマ ネ ジメント 委 員 会
放射線安全委員会
微生物等実験安全委員会
組 換えDNA実 験 安 全 委 員 会
化学物質環境安全委員会
科学掘削安全検討委員会
研究安全委員会
労働安全衛生委員会
エネルギ ー 使 用 合 理 化 推 進 委 員 会
安全・環境会議
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 33
安全衛生及び環境配慮の
JAMSTEC の安全衛生管理の方針や目標、安全衛生と環境に関する重要事項を審議します。
また、各安全委員会の所掌の調整も行います。
マネジメント
安全・環境会議
Ⅲ.安全への取組み
1.労働安全衛生の取組み
(1)労働安全衛生委員会と各種パトロール
JAMSTEC では、労働安全衛生法に定めるところによ
り横須賀本部と横浜研究所においては労働安全衛生委員
会を、むつ研究所及び高知コア研究所においては労働安
全衛生連絡会を設置し、職員の安全と健康維持に関係す
る事項の調査・審議をしており、事故・トラブル事例の
紹介や労働安全衛生に関わる諸活動の報告など労働災害
の防止についての情報を展開するなどして意見を交わし
ています。
また、各拠点において定期的に安全衛生パトロールや
衛生職場巡視を行い、構内にある不安全箇所の発見に努
めて改善を行っています。
なお、JAMSTEC では、化学物質や放射性物質などを
扱う有害業務も日常的に行っているため、これらの業務
の安全管理についても化学物質環境安全パトロール、放
射線施設の安全パトロールを定期的に実施し、化学物質
の保管状況や放射線施設の維持管理状況などの安全性を
チェックしています。
(2)ヒヤリハットの収集とリスクアセスメント
JAMSTEC では構内の各所に設置した安全衛生環境提
案箱や、社内ポータル上の投稿掲示板にてヒヤリハット
事例を収集しており、寄せられたヒヤリハット事例につ
いては危険因子を改善又は低減させるような対策・対応
を行っています。
また、リスクアセスメントとは、事故を未然に防止す
るために職場に潜む危険
性・有害性を見つけ出し、
これを除去・低減するため
の 手 法 で す が、JAMSTEC
では、業務全般に対してリ
スクアセスメントを行うこ
とを推奨しており、各部署
において優先度に応じてリ
スクアセスメントを実施し
ているほか、必要に応じて
安全衛生管理担当部署がリ
スクアセスメントの実施に
ついての支援をしていま
構内各所に設置されている安
全衛生環境提案箱
す。
安全への取組み
事故・トラブルについては、発生後の対応について考
えるのではなく、いかに未然に防止するかを考えること
が重要です。そのためにはヒヤリハット事例を収集した
り、リスクアセスメントを実施するなどして事故・トラ
ブルが発生する前に不安全行為や不安全箇所の改善を行
うことが必要となってきます。
JAMSTEC
TRIVIA
9.深海生物大事典
佐藤孝子 著/成美堂出版刊
「大事典」と言うだけあって、深海生物の掲載数は 200 種以上と相当なボリューム
です。深海生物の写真と詳しい解説。研究者目線で詳しく解説しているので、視覚だ
けではなく、文字でも深海生物の生態を知ることが出来ます。
次はどんな生物が出てくるのか? と興味をかきたてられながら読み進めていける
1 冊になっています。
34 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
(3)教育・訓練
JAMSTEC では、職員の安全に対する意識向上を目的
として、定期的に安全に関する講習会や講演会、研修を
実施しています。2014 年度については、以下のような
安全教育活動を行いました。
名 称
内 容
実験従事者安全講習会
試薬などの化学物質、微生物、放射線を取扱う者に対して、その安全な取扱いに関する以
下の内容の講習会を実施しました。
●【バイオ】遺伝子組換え実験の実施手続きについて
●【化 学】化学物質(薬品)の取扱について
●【放射線】許可内容の変更点及び最近の話題について
電気安全講習会
横須賀本部でおきた電化製品・分析機器を原因とする 2 件の小火(ぼや)及び OA タッ
プを原因とする1件の漏電事故の発生を受けて、関東電気保安協会より講師をお招きし、
電気を安全に利用するための基礎知識、事故防止対策などに関する講習会を実施しました。
安全講習「怪我の予防」
身体の構造の特徴を考慮し、怪我の予防に繋がる手法についての説明を行いました。
普通救命講習
応急手当のための心肺蘇生法、出血時の止血法、異物の除去、搬送法、自動体外式除細動
器(AED) の使用方法などについて講習会を行いました。
(4)ホ ームページやメールニュースによる…
情報伝達
(5)構内セキュリティ
ています。施設の入口では警備員による 24 時間体制の監
手段として「安全情報サイト」という役職員向けのホー
視と、研究室および執務室がある建屋への入退管理はセ
ムページを開設しているほか、
「安全ニュース」というメー
キュリティカードによる出入り口の制限等を行い、不審
ルニュースを配信し、有機的な情報伝達活動を実施して
者の侵入や情報の漏洩等を防ぐよう、安全な環境の維持
います。
に努めています。
安全情報サイトのトップページ
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 35
安全への取組み
JAMSTEC では、職員の他にさまざまな訪問客を迎え
安全衛生に関する情報を職員に伝達・周知するための
2.危険性を有する物品・生物の管理
(1)化学物質の安全管理
害性・危険性のある物質の管理を徹底しています。これら
の薬品については、法令の定めるところにより、施錠や表
①化学物質の安全管理
示を行うことはもちろんですが、薬品を使用する事業所で
薬品)に関し、PRTR 法に定める対象物質の移動量を追跡し
システム(薬品管理システム)を導入し、薬品納入時から
JAMSTEC では実験などで使用する化学物質(試薬等の
ていますが、JAMSTEC における年間の PRTR 法対象物質
の取扱量は届出を要する取扱量には達していないため、所
要の届出は行っておりません。
また、不測の事故を防ぐため毒物・劇物、危険物等の有
はそれぞれの事業所の特性を活かした形で薬品管理の電子
全量消費に至るまでの在庫管理を行っているほか、定期的
に化学物質環境安全パトロールや薬品実地検査を実施し、
毒物・劇物を始めとする薬品類やドラフトチャンバーの管
理状況などを点検しています。
<横須賀本部における薬品登録の流れ>
安全・環境管理室に薬品管理シールの発行を依頼する
発行を受けた薬品管理シールを試薬容器に貼付する
薬品管理システムにアクセスする
薬品の名称や薬品管理シールの番号などを入力して薬品を登録する
安全への取組み
薬品を使用した場合は使用量をそのつど入力する
使い切った場合は使用終了として登録を解除する
(使用履歴はデータとして残ります)
薬品管理システム画面及び薬品管理シール
②化学廃液の処理
試薬などの使用に伴い発生する化学廃液の処理に関して
は、実験室系の排水系統には排水処理設備を有していない
ため全量(原液及び洗浄水)を回収し、産業廃棄物として
産業廃棄物処理業者を通じて処理をしています。なお、実
験室からの排水に関しては中和、曝気、生物処理を行った
後に公共用水域に排出していますが、定期的に水質検査を
行うことで排水基準を超えた排水の排出事故が生じないよ
う監視を行っています。
船上で実施する実験に伴い発生する化学廃液についても
全量を回収し、陸揚げ後に産業廃棄物として処理を行って
います。なお、地球深部探査船「ちきゅう」では、廃液の
分別を行い、有害物質を含まない化学廃液については、希
釈や pH の調整を実施後、必要に応じて再度有害性のチェッ
クを行い、距岸 50 海里以上離れた海域において海洋中に
排出しています。
36 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
(2)放射線の安全管理
①放射線の安全管理
JAMSTEC では放射性物質を使用した実験を行っていま
す。そのため放射性物質の購入、払出、運搬、放射性廃棄
物の保管、廃棄、放射線関連施設の維持管理等の業務が定
常的に発生します。
放射性物質や関連施設、実験に従事する者等の管理につ
いては放射線障害防止法や労働安全衛生法、原子炉等規制
法などの放射線管理に関連する法令に則り管理を行ってい
るほか、定期的な RI パトロールの実施、施設・設備のメン
テナンス、施設周辺や事業所境界の放射能調査・放射線量
調査を行い、放射線施設に異常が無いか、想定外の放射性
物質や放射線の漏えいが無いかどうか等を監視しています。
JAMSTEC ではその前身である海洋科学技術センターで
あった平成 15 年に、北大西洋に設置した係留型観測機器(放
射性物質として炭素 14(14C)を 14.8MBq 搭載)の所在
んので、産業廃棄物としてその性状に合わせた処理を行っ
不明事故を起こしておりますが、それ以降は放射性物質の
ています。
紛失・漏洩等の放射線に関連した異常な事象は認められて
おりません。今後についても事故の再発を防止し、厳正に
管理をしてまいります。
②遺伝子組換え実験・微生物実験の管理
JAMSTEC では前述のとおり遺伝子組換え実験や微生物
を使用した実験を行っています。
これらの遺伝子組み換え生物や微生物はその殆どが人体
に対して害の無いものですが、ごく希に人体に対して感染
し、思わぬ疾病を発症させる可能性があるため、実験の方法、
運搬、保管、廃棄方法については厳重に管理を行うことが
求められています。
JAMSTEC ではカルタヘナ法や世界保健機関(WHO)
が発行している実験室バイオセーフティ指針、国立感染症
研究所の病源体等安全管理規程を参考に内部規程を定め、
JAMSTEC 所有各船に搭載可能なコンテナ
型放射線使用施設(アイソバン実験室)
②放射性廃棄物の処理
放射性物質を使用した実験から発生する固体状の放射性
廃棄物については全量を回収し、公益社団法人日本アイソ
トープ協会に定期的に引き渡すことにより処理を行ってい
ます。
により処理を行っていますが、実験器具の洗浄などで発生
する低濃度の排水については、排水処理設備において放射
線障害防止法に定める濃度限度以下にし、公共用水域に排
出しています。
放射性物質を含んだガスの排気については、HEPA フィ
ルターなどのフィルターを介して放射性物質を捕集したの
た組換え DNA 実験安全委員会や微生物等実験安全委員会
において安全性を審議した上で実験の承認を行うこととし、
実験室についても各実験のレベルに応じた対策を行い、生
物災害が生じないよう厳正な管理を行っています。なお、
JAMSTEC では微生物実験に用いる微生物として、重大な
健康被害を起こす見込みのない微生物(リスク群 2 相当ま
で)に限定して実験を行うこととしています。
また、生物多様性の保全への取組みとしましては、「安全
衛生及び環境配慮に係る基本方針」と「調査・観測活動に
係る環境保全のための指針」に規範の順守と、生物多様性
条約を尊重し、環境の保全、生態系の保全を最優先に考え
ることを明記しています。実際の調査・観測活動に際して
は事前に研究安全委員会等でその安全性を審議し、生物多
様性の保全に当たり問題がないかをチェックしています。
ち、放射線障害防止法に定める濃度限度以下にし、大気中
に放出しています。フィルターについては固体の放射性廃
棄物と同様の処理を行っています。
また、JAMSTEC では電子顕微鏡用試料の染色や古環境
の研究のために、少量の核燃料物質(国際規制物資)であ
る劣化ウランやトリウムを所持しておりますが、使用した
廃液については全量を回収し保管廃棄を行っています。
(3)バイオセーフティの取組み
①生物系廃棄物の処理
JAMSTEC では微生物や遺伝子組換え生物を用いた実験
を行っていますが、これらの実験に伴う廃棄物については、
遺伝子組換え実験室の表示
高圧滅菌器(オートクレーブ)や薬剤等で確実に滅菌・不
活化した上で処理をしています。滅菌・不活化した後の廃
棄物については、感染などの生物学的な有害性はありませ
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 37
安全への取組み
液体状の廃棄物については、固体状の廃棄物と同様に公
益社団法人日本アイソトープ協会に定期的に引き渡すこと
これらの実験を行う際には事前に外部機関の専門家を交え
(4)高圧ガス管理
適切に高圧ガスを管理するためにルールを定めて保有して
いる高圧ガスの量などを厳正に管理しています。
保有量の管理については、高圧ガスの納品時に在庫管理
JAMSTEC では、ICP 質量分析計などを利用した機器分
用のデータベースに登録のうえ高圧ガス管理票を発行し、
析業務や、「しんかい 6500」の運用に伴い、アルゴン、ヘ
この管理票を高圧ガス容器に掲示することで、保有量の把
リウム、酸素など多くの高圧ガスを使用しています。これ
握に漏れが無いようにしています。
ら高圧ガスの使用については、高圧ガス保安法を順守し、
<横須賀本部における高圧ガス登録の流れ>
㋐容器の返却
要求者(部署)
①発注
却
返
の
発
票
の
票
理
出
提
の
示
け
掲
・
届
行
理
管
㋑
管
⑤
入
納
④
②納品
高圧ガス
供給事業者
③受領書の
写しを提出
安全・環境管理室
安全への取組み
(5)危険物管理
JAMSTEC では、各種研究・開発活動や、船舶の運航に
伴い、アルコール類、アセトン、各種油類などの危険物を
取扱い、貯蔵しています。
これらの危険物は、消防法や市町村の火災予防条例の規
購入時
返却
(6)廃棄物の処理
①陸上施設における廃棄物処理
陸上施設から発生する廃棄物の処理については、廃棄物
処理法や放射線障害防止法を始めとする廃棄物それぞれの
種別に応じた関連法令に則り処理を行っています。
制を受けるため、所内のルールを定めてその貯蔵量を常に
基本的には産業廃棄物として処理を行っていますが、4R
把握し、厳正に管理しています。試薬として用いる危険物
(Refuse, Reduce, Reuse, Recycle)を推進するため、家
については、薬品管理システムによりその貯蔵状況を把握
電リサイクル法の対象となる家電製品やパソコンなどを始
することができます。
め、紙などの再資源化可能な廃棄物に関しては可能な限り
なお、法令に定めるところにより、一定量を超えた危険
資源化し、コピー用紙の両面コピーや裏紙の使用、文房具
物については、屋内貯蔵所又は少量危険物貯蔵取扱所にお
のリユース、トナーカートリッジやインクカートリッジの
いて貯蔵しています。
リサイクルなどを行い、廃棄物の排出量を抑えるように努
めています。
一方、陸上施設で発生した生活排水については、浄化槽
で処理を行った後、公共用水域に放流して処理を行うか、
下水道が整備されている地区の事業所では下水道に排出し
ています。
②船舶における廃棄物処理
船舶から発生する廃棄物の処理については、海洋汚染防
横須賀本部に設置されている少量危険物貯
蔵取扱所
38 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
止法等の法令を順守しています。船舶で発生した廃棄物は
原則として船内に保管し、着岸後に産業廃棄物などとして
陸揚げして処理をしています。船舶からの廃棄物について
も、可能な限りリサイクルを行い、通函(かよいばこ:物
③ PCB 廃棄物
横須賀本部ではトランスなどで使用されていた PCB(ポ
品を輸送する際に 繰り返し使用される箱のこと。)を使用
リ塩化ビフェニル)をステンレス製密閉型ドラム缶に格納
するなどして廃棄物の発生を抑制するよう努めています。
し、PCB 特別措置法に則り処分するまでの間厳重に保管し
なお法令の基準の範囲内で、船内で発生した一部の廃油
ています。
については焼却して処分を行い、残飯などの食品屑につい
てはディスポーザーで粉砕した後、海中に放出しています。
一方、船内で発生するふん尿等の汚水については船内の
汚水処理設備において浄化した後、排出可能な海域におい
て海洋中に排出しています。また、風呂からの排水など一
般的な生活排水は、排出可能な海域でそのまま海洋中に排
出しています。
廃棄物排出量の推移については、第Ⅳ章の「環境への取
組み」をご覧ください。
安全への取組み
JAMSTEC
TRIVIA
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藤倉克則 監修/誠文堂新光社刊
過酷な水圧の中、光の届かない真っ暗な深海。我々から見ると厳しい環境にいる深
海生物は、我々の想像を超えた不思議な生き方をしている生物たちがたくさんいます。
本書ではそれらを写真とわかりやすい解説で紹介します。また、最新の深海探査につ
いても解説します。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 39
3.事故・トラブルへの対応
(1)緊急時の対応体制
2010 年度から 2012 年度は 30 件前後で推移し、2013
年度には 20 件を下回りましたが、2014 年度は 38 件と過
JAMSTEC では、事故やトラブルなど緊急時の対処につ
いて遺漏が無いよう万全を期すために、「事故・トラブル緊
急対処要領」を定めています。
この要領では、人命優先の原則、通報の原則、被害の拡
大防止の原則、過大評価の原則を基本原則としており、こ
の原則に沿うように対処方法を構築しているほか、想定さ
れる事故・トラブルについては、機構の全部署が発生した
事故・トラブルを的確に把握し、共通認識を持って適切に
事態に対応することを目的に、各事象を影響度ランク(ラ
ンク外及びランク1~4の5段階に区分され、数字が小さ
いほど影響度は低いものとして設定されている。)を定めて
分類しており、この影響度ランクに応じた対処方法により
対応することとしています。
また、定期的に緊急時を想定した対応訓練を行い、迅速
に対応できるよう訓練を行っています。
去 5 年間では最多の発生件数となりました。事象区分では、
「研究船関連」と「通勤時」は 2013 年度まで減少傾向にあ
りましたが、2014 年度にそれぞれ 9 件及び 5 件増加して
います。「構内」においては 2011 年度から 2014 年度まで
毎年 10 件前後で、ほぼ横ばい状態です。
「ブイ・係留系関連」
では、2012 年度にブイの漂流が続き多くなっていますが、
2013 年度は係留系の漂流、2014 年度はブイの移動・通信
途絶の 1 件ずつとなっています。 ② 2014 年度の事故・トラブル発生概況
2014 年度には、38 件の事故・トラブルが発生しており、
その 50%(19 件)は構内及び通勤時に発生し、約 30%(12
件)は研究船関連の事象です。発生場所を「陸上」「海上」
に分けると、「陸上」は 24 件、「海上」は 14 件となってい
ます。
事故・トラブルの内容については、「陸上」においては、
* 2014 年度に実施した主な緊急時対応訓練
本人の不注意による怪我等 8 件、交通事故 8 件(人身 4 件、
6 月 12 日
緊急対策本部立上訓練(総務部)
7 月 14 日
CDEX 緊急対策訓練(地球深部探査センター)
疾病、怪我等 7 件、機器不具合等で 7 件あり、
「陸上」「海上」
8 月 18 日
陸域調査机上演習(研究推進部)
とも人に関係する事例が全体の 50%を超えています。
安全への取組み
9月 4日
物損 4 件)、火災関連が 5 件であり、「海上」では乗船中の
「白鳳丸」保安演習及び通報訓練
(海洋工学センター)
( )内は主たる実施部署
(2)事故・トラブルの発生状況とその対応
③事故・トラブル防止の取組み
事故・トラブルが発生した際にはその内容を十分分析し、
今後、同様の事故・トラブルを繰り返さないようにするこ
とが重要です。そのため JAMSTEC では、事故・トラブル
が発生した場合、その業務を所掌する部署からの事故報告
①過去 5 年間の事故・トラブルの発生の推移
書に基づき、再発防止策を講じます。また、事故・トラブ
含む。)の発生状況については次の表のとおりです。
所に設置してある HSE(衛生・安全・環境)ボードへの資
過去 5 年間の事故・トラブル(通勤災害、物品の亡失を
事象区分 \ 年度
研究船関連
2010
2011
2012
2013
2014
8
9
7
3
12
10
1
8
1
1
ブイ・係留系関連
5
0
8
1
1
構内
4
11
7
9
12
通勤時
6
2
1
2
7
その他
2
5
1
3
5
35
28
32
19
38
「ちきゅう」
科学掘削関連
合計
40 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
ルの内容を労働安全衛生委員会で報告し、さらには構内各
料の掲示や安全情報サイトという所内向けホームページへ
の掲載を行うなどして、職員に情報の展開を行っています。
所内各所に設置された HSE ボー
ド。
衛生(H)、安全(S)、環境(E)に
関係した情報が掲示されている。
社内ポータル
安全情報サイト「事故・トラブル
情報」のページ
④小火(ぼや)の発生について
ウ.アクションプランの作成と具体的な防火対策の実施
2014 年度に発生した事故・トラブルの中で、特に重大
各部署が 2014 年度当初に作成した安全衛生及び環
な事故・トラブルとして小火(ぼや)の発生が挙げられ、
境配慮に関するアクションプランに防火対策に関する
JAMSTEC では早急に対策すべき喫緊の課題として認識して
事項を追加し、各部署において防火対策を推進しまし
います。発生件数としては火災につながるおそれのある事象
た。
を含めて 6 件であり、概要については次表のとおりです。
また、2015 年度においても電化製品使用実態調査
の結果を反映させた形で引き続きアクションプランに
月 日
概 要
電化製品の適切な使用に関する事項を盛り込み、概ね
5 月 14 日
横須賀本部フロンティア研究棟にて冷蔵庫の漏
電による小火(ぼや)発生
15 年以上経過した電気機器に関しては廃棄・更新に努
9 月 10 日
横須賀本部深海総合研究棟にて分析機器が原因
と思われる小火(ぼや)が発生
用について注意喚起を行っています。
11 月 3 日
横須賀本部本館1階喫煙室にて、吸い殻の消火不
十分で灰皿が過熱状態となり損壊
11 月 4 日
横須賀本部海洋生態研究棟にて使用されていた
「OA タップ」から漏電
2 月 18 日
横浜研究所にてゴミ収集車の荷箱内で小火(ぼ
や)発生
3 月 9 日
横浜研究所地球情報館の照明器具の焼損
めるなどの目標を立て、継続して電化製品の適切な使
* 2014 年度に各部署が行った防火対策の例 非常ベル・非常放送の鳴動試験と聞こえ方の確認
研究用装置類の使用状況の確認とアース処置
火災のリスクのある場所のパトロールの実施
不必要な電気機器の電源 OFF とプラグから抜くことの徹底
使用中のコンセントの状況確認
以上の 6 件の火災関連事象のうち 4 件について電気機器
の漏電が原因となっているため、JAMSTEC では以下の通
り再発防止策を実施しました。
エ.自作の研究機器に対する基準の検討
実験などで使用する自作の研究機器については、電
気回路等が発火するおそれがあることから、このよう
な自作の機器については、専門の委員会で審査を受け
全事業所において使用している電化製品の実態調査
るなどの安全性を確保するためのルールについて検討
を行い、使用年数の古い電化製品の洗い出しを行うな
しています。
どして、内在するリスクを把握しました。その結果、
保有している電化製品の約 15%について 15 年以上使
用していることが判明しました。
イ.教育・訓練の実施
一般財団法人関東電気保安協会から講師を招聘し、
電気の安全について講習会を開催しました。
電気安全講習会(2015.1.27)
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 41
安全への取組み
ア.電化製品使用実態調査の実施
4.防災への取組み
(1)自衛消防組織
JAMSTEC では火災及び地震等の災害発生時に公設消防
や救援が到着するまでの間の初動活動や在構者の安全確保
づき自衛消防組織を設置しており、実際の発災時にも確実
に機能するよう、防災訓練などを実施しています。
をより円滑かつ確実に行うことを目的として、消防法に基
安全への取組み
横須賀本部における自衛消防組織の構成
(2)災害への備え
①防災システムの導入
横須賀本部及び横浜研究所では、構内放送に連動した緊
急地震速報システムを設置しており、「震度4」以上の揺れ
が予測される場合に“緊急地震速報”が全館及び敷地内に
アナウンス(日本語及び英語)されます。
また、出張中や休暇中の職員を含め、災害時に職員の安
否状況等の確認を迅速に行うとともに、事業復旧や被害軽
減のための初動対応のベースとするため、携帯電話等のメー
ルアドレスを利用した“緊急状況確認システム”を導入し
ています。
②災害発生時初期対応要領
JAMSTEC では、構内で災害が発生した場合など、咄嗟
の時に的確に初動の対応や連絡を行えるようにすることを
目的として、役職員全員にカードサイズの“災害発生時初
期対応要領(携行版)”を配布しています。
42 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
災害発生時初期対応要領(携行版)両面
③防災設備の整備
消火器、火災報知機等の法令に定める消防設備の整備は
勿論ですが、その他にも自動体外式除細動器(AED)
、災害
発生時の救助に有用となるバールなどの工具が納められた
実施日
訓練内容
2014 年 4 月 21 日
緊急状況確認システム訓練配信
(横須賀本部)
救助工具格納箱、発災時に誰でも使用することのできるヘ
7月
4日
第 1 回自主防災訓練(横浜研究所)
ルメットなどを要所に設置しており、災害時に備えていま
9 月 18 日
第 2 回自主防災訓練(横浜研究所)
す。
10 月
2015 年
8日
総合防災訓練(横須賀本部)及び
緊急情報確認システム訓練配信
10 月 20 日
防災訓練(むつ研究所)
10 月 29 日
総合防災訓練(横浜研究所)及び
緊急情報確認システム訓練配信
3月
2日
防災訓練
(国際海洋環境情報センター)
自動体外式除細動器(AED)
【横須賀本部本館】
防災訓練の様子
ヘルメットの設置
【横須賀本部深海総合研究棟】
(3)防災訓練
(4)地域防災への貢献
高知県南国市にある高知コア研究所の周辺は、津波発生
時に避難できるような高台や高層の建物が少ないため、同
研究所では津波発生時の地域の避難場所として開放できる
よう整備を行っています。
JAMSTEC では、災害が起きた場合、人的・物的被害を
また、横浜研究所についても横浜市金沢区と「津波発生
最小限にし、早期に事業運営を復旧するため総合的な対策
時における施設等の提供協力に関する協定」を締結してお
を行ってきました。年に1回以上、各拠点で行われる防災
り、津波発生時の避難場所となっています。
訓練では、地震・津波を想定した総合訓練、火災を想定し
た避難訓練、消火器操法および応急救護の個別訓練の 3 部
構成で実施しています。2014 年度に実施した緊急時対応
訓練は以下のとおりです。
津波の避難場所として整備されてい
る高知コア研究所の屋上
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 43
安全への取組み
救助工具格納箱
【横須賀本部食堂】
消火器を使用した消火訓練
Ⅳ.環境への取組み
1.JAMSTEC のマテリアルバランス(2014 年度)
JAMSTEC 全体のマテリアルバランスと環境パフォーマンス
本図は JAMSTEC の事業活動(2014 年度)に伴う、エネルギーや資源などの投入量(INPUT)と CO2 や廃棄物などの排
出量(OUTPUT)を表しています。なお、端数処理の関係上、合計と一致しない場合があります。
総投入量(INPUT)
電力
59,689,017KWh
紙
64.1t
油
30,754 ㎘
水
154,911㎥※1
ガス
64.75 ㎦
化学物質
10,927kg
(都市ガス+LPG)
(PRTR 対象)
陸上投入量
海上投入量
電力
電力:97,807kWh
油:30,751㎘
水:66,594㎥
紙:2.0t
化学物質
(PRTR法対象物質 :10,835㎏
海上の活動
陸上の活動
電力:59,591,210kWh
59,591,210kWh
油:3㎘
水:88,317㎥
紙:62.1t
ガス: 64.8㎦
化学物質
(PRTR法対象物質 :93㎏
海上排出量
陸上排出量
環境への取組み
CO2:31,952tCO2
廃棄物:382t ※2
排水:88,317㎥
水域排出物(BOD,COD):82.4kg
大気排出物(NOx,SOx):0t
(NOx,SOx):0t
CO2:83,323tCO2
廃棄物:834t
排水:66,594㎥
大気排出物(NOx,SOx):1,639t
廃棄物
1,216t
CO2
115,275tCO2 ※3
NOx,SOx
排水
154,911㎥ ※1
水域排出物
82.4 ㎏ ※4
大気排出物
1,639t ※5
総排出量(OUTPUT)
※1 水の INPUT については 2014 年度より船舶における海水からの造水についても集計を追加しています。また、排水量(OUTPUT)に
ついては INPUT と同量を記載しています。
※2 この他にも放射性廃棄物 2.0kℓを排出しています。
※3 CO2 排出量についてはエネルギー起源の CO2 排出量のみを記載しています。なお、排出量の算定については、環境報告ガイドライン
2012 年版(環境省)による「エネルギー起源 CO2 排出量の算定式」によります。
※4 水域排出物については生物化学的酸素要求量(BOD)及び化学的酸素要求量(COD)の値から算出しています。
※5 大気排出物については窒素酸化物(NOX)及び硫黄酸化物(SOX)の値から算出しています。
44 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
2.主要な環境パフォーマンスデータの推移
(千 kWh)
電気使用量
陸上
129
60,000
○JAMSTEC の消費電力の大部分は、地球シ
ミュレータ及び空調設備が占めています。
2013年12月に地球シミュレータ用の空冷
設備を従来のガス式から電気式へ更新したこ
とにより、2014 年度の使用量は 2013 年
度と比べて約 10%増加しています。
○船舶における 2014 年度の使用量は 2013
年度と比べて約14%減少しています。これ
は、ドック時における節電の取組みが反映さ
れたものと思われます。
40,000
119
108
114
67,432
57,352 55,143 53,370 54,392 54,128
20,000
0
337
104
2008
2009
2010
2011
2012
(㎘)
燃料油使用量
船舶
80,000
2013
98
59,591
2014 (年度)
陸上
船舶
40,000
30,000
20,000
10,000
0
33,818 34,901 36,606 33,156 30,751
22,640
27,365
19
20
14
18
4.5
2.9
2008
2009
2010
2011
2012
2013
(㎦)
水使用量
2014 (年度)
陸上
船舶
200
150
○2014 年度の水の使用量は 2013 年度比で、
陸上で約 24%減少、船舶で約 38%増加、
全体で約 11%減少しています。
○陸上での主な減少要因は、横浜研究所の地球
シミュレータ用空冷設備更新に伴い、稼働機
の単体運転が可能となり、冷却水量の節約が
できたことです。船舶では「ちきゅう」の停
泊期間が増加したため、補水量が増加したこ
とが影響しています。
3.0
28
17
27
125
119
29
26
31
109
115
116
67
100
148
50
0
88
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014 (年度)
※2014 年度より船舶における海水からの造水についても含めて集計しています。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 45
環境への取組み
○JAMSTEC の油類の使用量のほとんどが船
舶の運航に係わるA重油です。このため、船
舶の航海の形態(航走距離、速力、調査海域
など)により使用量は変動します。
○2014 年度の使用量は 2013 年度と比べて
約 7%減少しています。これは、到着時刻や
入港時刻の考慮、回航中の速力の減速など、
燃料消費の削減に配慮した運航計画を策定
し、燃料使用量削減のため、効率的な運用が
なされたものと評価できます。
(㎦)
ガス使用量
3,000
陸上
0.0
※
※
○JAMSTECでは都市ガスとLPGを使用して
います。主な都市ガスの用途は地球シミュ
レータの空調でした。LPGについては、潜
水訓練用プールの温水ヒーターや暖房、食堂
で調理に使用しています。船上ではほとんど
ガスは使用していません。
○2014 年度のガスの使用量は、2013 年度
に比べて約 96%減少しています。これは地
球シミュレータ用の空調設備を 2013 年に
ガス式から電気式のより高効率の機器に更新
した影響によるものです。
0.0
2,000
0.0
0.0
0.0
0.0
2,974
1,000
0
船舶
2,237
2,133
2,202
2,419
1,743
65
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2014(年度)
※船舶においては少量使用していますが、端数処理により 0.0 を表記しています。
船舶からの廃油
(t)
廃棄物排出量
4,000
320
3,379
2,000
1,000
環境への取組み
0
船舶
257
3,500
○JAMSTEC の廃棄物排出量は、船舶からの
廃棄物の排出量によって大きく変動するた
め、船舶の稼働率に依存します。
○2014 年度の廃棄物排出量は 2013 年度と
比べて総量で約 68%減少しています。主な
要因としては、「ちきゅう」の航海日数が減
少したことにより、掘削作業時に発生する汚
泥の処理量が減少したことによります。
陸上
88
74
258
383
238
1148
1043
262
191
211
264
311
2008
2009
2010
2011
2012
2013
2,819
279
834
666
382
2014(年度)
※2014 年度より船舶からの廃油については船舶における総量に含み集計をしています。
(tCO2)
陸上
船舶
150,000
CO22 排出量
120,000
90,000
○エネルギーの使用に由来するCO2排出量を示して
います。
○2014年度のCO2排出量については2013年度と
比べて、陸上で約19%増加、船舶で約7%減少、
総量としては約1%減少しています。
○陸上におけるCO2排出量の増加については、地球
シミュレータの空調設備の更新等の省エネ対策を
行いましたが、地球シミュレータ自体の稼働率及
び猛暑の影響による空調設備の稼働率が増加した
こと、また、電気使用量からCO2排出量を算出す
る際の係数が大きくなったことなどにより、CO2
排出量についても増加したものと思われます。
○船舶における CO2排出量の減少については、燃料
消費削減のために実施した船舶の効率的運航の成
果によるものと思われます。
60,000
30,000
0
46 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
56,446
83,323
25,008 23,633 25,007
36,227 26,848
31,952
2009
2012
68,193
44,191
2008
99,189
89,840
84,254
2010
94,714
2011
2013
2014 (年度)
3.各拠点の環境パフォーマンスと取組み
〈環境配慮活動及び社会的活動の取組事例〉
●電気
○横須賀本部、横浜研究所、東京事務所の複合機を環境に配慮された省エネ
仕様の機器に入替え、新エネルギースター規格の TEC 値において 1/2 の
消費電力の削減を行いました。
○数カ所に保管されていたサーバーを集約することで、それまで各部屋で運
転していたエアコンを止めることができ、電力使用量を削減することがで
きました。
○空調設備を一部省エネ型の機器に更新し、電力使用量の削減に取り組みま
した。
○東京事務所では時間外の利用を控えるように周知しています。また、一括
作動する空調をこまめに消したり、空調の温度設定を高めに設定するなど
節電に取り組んでいます。
○冷房使用時にはサーキュレーターや扇風機などを併用して居室内の温度を
均一化し、効率的な冷房の使用を心がけています。
○天気の良い日にはブラインドの角度調整を行うことで照明の利用を控えて
います。
○照明について、間引き、昼休み時の消灯を行いました。また、一部の照明
を LED 照明に更新しました。
○むつ研究所の研究交流棟では、外付けの遮光カーテンを利用することによ
り、室内の温度上昇を抑制する取組みを実施しています。
○国際海洋環境情報センター(GODAC)では、館内空調設備を更新し、また、
空調システムを 24 時間監視することで、前年比で約 8%電力使用量を削
減しました。
○船舶のドック期間中、不要な機器・照明などのスイッチを切るなどして陸
上電源使用量の削減に取り組み、前年比で約 20%電力使用量を削減しま
した。
●水道
○トイレには擬音装置を導入し、節水に取り組んでいます。
●燃料油
○定点観測時や洋上漂泊時に減機運転を行い、燃料消費の削減に取り組んで
います。
○操業中、航海中、停泊中における電力デマンドに応じた原動機負荷最適化
運転を実施し、過去の同一条件下と比べて、約 10%燃料油の消費を削減
しました。また、このことで、NOX 及び SOX の排出も抑制することがで
きました。
○調査海域の到着時刻、入港時刻などを勘案して航海速力の調整(減速)を
行うことで、燃料消費の削減に取り組んでいます。
●廃棄物
○充電型電池を使用することにより、廃棄物の削減に取り組んでいます。
○ボールペンの替え芯を利用し、
ボールペン本体の使い捨てを削減しています。
○コピー用紙の裏紙をメモ用紙として再利用しています。
●紙
○研 究推進部では、一部の会議の配付資料の印刷を廃止し、電子データで
の配布のみに切り替えることにより、コピー用紙の使用量を前年比で約
100kg 削減しました。
○両面印刷、裏紙の使用、2in1 印刷などを行うことで、コピー用紙使用量
の削減に取り組んでいます。
●再資源
○再資源化可能なゴミについては、リサイクルに回す取組みを行っています。
○機材納品については通い箱を使用し、梱包段ボール等の削減を行いました。
○機材等の発注の際に、「包装の簡素化」・「緩衝材の最小限化」を指示して
います。
○深海調査システムのペイロード等の取り付けに使用する資材(タイトン・
番線等)を、可能な限り再利用しています。また、取付け方法をボルト・
ナットに変更するなどして、資材の使用量の削減に取り組んでいます。
○エコキャップの回収を行っています。
●社会
○むつ研究所では「沿岸観察会・講演会」、
「むつ海洋・環境科学シンポジウム」
などの環境に関するイベントを実施し、海洋環境情報の発信に取り組みま
した。
○東北マリンサイエンス拠点形成事業では、市民への防災・環境に関する情
報の提供を行い、また、お出かけ授業等を行うことで海洋に対する理解を
深める活動を実施しました。
○地球環境研究や地球科学研究に関する講習会、講演会などを開催し、地球
環境研究や地球科学研究に関する情報発信や啓発活動に取り組みました。
○東日本大震災で被災した漁業協同組合に、トライトンブイ使用済係留ロー
プ約 16,162 tを譲渡しました。
○ GODAC では「琉球諸島の地震と津波」「みんなで考えよう!台風との
上手なつきあい方」などのテーマで「GODAC セミナー」を開催しました。
横須賀本部
7,502
7,029 7,232
CO2 排出量〔tCO2〕
6,169 6,539 6,553 6,346
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
4,047
124
128
150
31.6
181
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
24.3
27.5
22.3
22.0
CO2 排出量〔tCO2〕
56,508
46,133
48,106
42,825
42,931
43,515
43,276
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
紙使用量〔 t 〕
249
157
3,028 2,697
2,550 2,579
3,330
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
廃棄物排出量〔 t 〕
185
3,294
電気使用量〔千 kWh〕
37,950
25,398
25,193
21,302
20,26218,825
16,017
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
紙使用量〔 t 〕
廃棄物排出量〔 t 〕
25.9
54
23.5
31.6
46
46
30
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
27
37
24.3
35
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
27.5
22.3
22.0
25.9
23.5
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
※横浜研究所で使用している紙は、横須賀本部で購入しているため、同じ量を計上しています。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 47
環境への取組み
電気使用量〔千 kWh〕
横浜研究所
むつ研究所
電気使用量〔千 kWh〕
1,499
1,333
1,384
1,263
1,392 1,364
高知コア研究所
CO2 排出量〔tCO2〕
1,336
854
760 768
電気使用量〔千 kWh〕
790
1,884 1,906 1,969
2,124 2,264
CO2 排出量〔tCO2〕
2,834
2,396
625
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
廃棄物排出量〔 t 〕
26
19
23
18
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
紙使用量〔 t 〕
3.9
0.6
11
0.4
0.4
3.4
1.0
0.8
3.9
3.1
3.1
0.6
0.4
0.4
0.4
0.0
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
513
474
505
485
448 471
ちきゅう
357
335 304
289
環境への取組み
273
6
17
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
8
19
15
16
17
18
19
19
16
13
17
18
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2013
46,464
43,669
43,005
41,476
34,749
21,717
15,284
51,045
46,834
46,476
52,726
48,574
42,778
41,162
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
みらい
ちきゅう
ガソリン使用量〔kℓ〕
1.9
1.6
1.6
廃棄物排出量〔 t 〕
紙使用量〔 t 〕
紙使用量〔 t 〕 2.6
0.4
1.4
0.4
0.3
0.3
2,974
0.2
0.1
0
0.1
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2.5
2.4
0.5
1.9
ちきゅう以外
CO2 排出量〔tCO2〕
376
439
0.05
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
A 重油使用量〔千 kℓ〕
CO2 排出量〔tCO2〕
544
0.4
0.2
研究船
国際海洋環境情報センター(GODAC)
電気使用量〔千 kWh〕
693
紙使用量〔 t 〕
5.0
0.6
17
704
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
廃棄物排出量〔 t 〕
0.9
23
1,098
1,048
479 455
412
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2,001
1,573
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2,470
42 873 691 356
599
589 405 349 4
363 426
111
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
1.1
1.0
「ちきゅう」では、紙の削減活動を行って
おりますが、データは取得できていない
ため、数値を記載しておりません。
2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014
2009 年度以降の CO2 排出量は 2010 年に改訂された温室効果ガス排出量の排出係数と、電気事業者別の排出係数により算出しているため、
総エネルギー消費量が以前と比べて減少した場合でも CO2 排出量が増加している場合があります。
48 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
2.0
1.2
4.環境配慮活動の目標・実績・評価
2014 年度の環境配慮活動の実績については以下の通りです。2015 年度につきましても引き続き省エネルギー、省資源、
廃棄物排出量の削減、環境に配慮した契約など種々の環境配慮活動に積極的に取り組み、前年度よりも良い環境パフォーマン
スとなるよう尽力いたします。
評価
約 10%増加
地球シミュレータ及び空調設備が当機構の消費電力の大部分を占めています。電
力使用量は、近年ほぼ同水準で推移していましたが、2013 年 12 月に地球シミュ
レータ用の空調設備をガス式から電気式へ更新したことにより、2014 年度の電力
使用量は 2013 年度比で約 10%増加しています。
電力消費量についてはこれらの機器の稼働率に大きく影響され、計算機能を利用
する研究内容並びに稼働実績も年ごとに変動するため、目標設定が難しいところ
でありますが、引き続き諸々の節電対策を実施し、削減に取り組みます。
約 96%減少
JAMSTEC では都市ガスと LPG を使用しています。主な都市ガスの用途は地球シ
ミュレータの空調でした。LPG については、潜水訓練用プールの温水ヒーターや
暖房、食堂で調理に使用しています。船上ではほとんどガスは使用されておりま
せん。
2014 年度のガスの使用量は、2013 年度に比べて約 96%減少しています。これ
は地球シミュレータ用の空調設備を 2013 年 12 月にガス式から電気式のより高
効率の機器に更新した影響によるものです。
約 11%減少
2014 年度の水の使用量は 2013 年度比で、陸上では約 24%減少、船舶では約
38%増加、全体で約 11%減少しています。陸上での主な減少要因は、横浜研究
所の地球シミュレータ用空冷設備更新により単体運転が可能となり、冷却水量の
節約ができたことによります。船舶では「ちきゅう」の停泊期間が増加したため、
補水量が増加したことが影響しています。今後も節水活動、水資源の循環利用に
積極的に取り組みます。
約 7%減少
JAMSTEC の油類の使用量のほとんどが船舶の運航に係わる A 重油です。このた
め、船舶の航海の形態(航走距離、速力、調査海域など)により使用量は変動します。
2014 年度の使用量は 2013 年度と比べて約 7%減少しています。これは、到着時
刻や入港時刻を考慮し、回航中の速力の減速など、燃料消費の削減に配慮した運
航計画を策定し、きわめて効率的な運用がなされたものと評価できます。
廃棄物
約 68%減少
廃棄物排出量は船舶からの廃棄物の排出量によって大きく変動するため、船舶の
稼働率に依存します。
2014 年度の廃棄物排出量は 2013 年度と比べて総量で約 68%減少しており、こ
の減少の主な要因としては、地球深部探査船「ちきゅう」の航海日数が減少した
ことにより、掘削作業時に発生する汚泥の処理量が減少したことによります。今
後も引き続きあらゆる業務において廃棄物が極力出ないような工夫を行うなど、
排出量の削減に努めてまいります。
紙
約 48%増加
法人文書や会議資料の電子化、両面コピーや裏紙の使用などを推進し、紙の使用
量を抑える活動を行っていますが、組織改編などに伴いパンフレット類の印刷が
増えたことにより、2014 年度は 2013 年度に比べて約 48%増加しています。今
後も出来る限りペーパーレスに取り組み、削減に努めます。
約 1%減少
2014 年度の CO2 排出量については、2013 年度と比べて陸上で約 19%増加、
船舶で約 7%減少、総量としては約 1%減少しました。陸上における CO2 排出量
の増加については、地球シミュレータ自体の稼働率及び猛暑の影響による空調設
備の稼働率の増加などにより電気使用量が増大したことに合わせ、電気使用量か
ら CO2 排出量を算出する際の係数が大きくなったことが影響しているものと思
われますが、燃料消費削減のために実施した船舶の効率的運航により船舶からの
CO2 排出量が減少したため、総量としては約 1%削減することができました。
電気
ガス
水道
燃料油
温室効果ガス
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 49
環境への取組み
実績
(2013 年度比)
項目
5.環境に配慮した調達・契約
(1)環境に配慮した調達・契約の概要
当機構ではグリーン購入法及び環境配慮契約法の規定に則り、グリーン購入を推進するための方針(環境物品等の調達の推
進を図るための方針:調達方針)を作成し環境物品の調達を行うとともに、国が定める環境配慮契約の基本方針に従い環境配
慮契約を推進する体制を整備しています。なお、グリーン購入に係る方針、調達率、実績及び環境配慮契約に係る実績につい
ては、ホームページ上にて公開しています。
http://www.jamstec.go.jp/j/about/procurement/kankyo_hairyo.html
(2)調達方針
当機構では 2015 年度の調達方針を以下のように定めています。
Ⅰ.特定調達物品等の平成 27 年度における調達の目標
平成 27 年度における個別の特定調達物品等
(環境物品等の調達の推進に関する基本方針
(平成 27 年 2 月 3 日変更閣議決定。以下
「基
本方針」という。
)に定める特定調達品目毎に判断の基準を満たすもの。
)の調達目標は、全ての調達項目について 100%(公共工事、
役務に関しては詳細な事項がありますので、上記 URL をご参照ください。
)とします。 なお、基本方針に規定された判断の基準は、
あくまでも調達の推進に当たっての一つの目安を示すものであり、できる限り環境への負荷の少ない物品等の調達に努めることとし
ます。
Ⅱ.特定調達物品等以外の平成 27 年度に調達を推進する環境物品等及びその調達の目標
物品の選択に当たっては、エコマークの認定を受けている製品またはこれと同等のものを調達するよう努めます。OA 機器、家電
製品については、より消費電力が小さく、かつ再生材料を多く使用しているものを選択します。
Ⅲ.その他環境物品等の調達の推進に関する事項
1. 環境物品等の調達を推進するため、
「環境物品等の調達推進体制」を定め、推進体制を整備します。
2. 本方針は海洋研究開発機構全ての部署を対象とします。
3. 機器類等については、できる限り修理等を行い、長期間の使用に努めます。
環境への取組み
4. 調達する品目に応じて、エコマークやエコリーフなどの第三者機関による環境ラベルの情報を十分に活用するなど基本方針に定め
る判断の基準を満たすことにとどまらず、できる限り環境負荷の少ない物品の調達に努めます。
5. 物品等を納入する事業者、役務の提供事業者、公共工事の請負事業者等に対して事業者自身が本調達方針に準じたグリーン購入を
推進するよう働きかけるとともに、
物品の納入に際しては、
原則として本調達方針で定められた自動車を利用するよう働きかけます。
6. 事業者の選定に当たっては、ISO14001 又は環境活動評価プログラム等により環境管理を行なっている者又は環境報告書を作成し
ている者を優先して考慮するものとします。
7. 調達を行う地域の地方公共団体の環境政策及び調達方針と連帯を図りつつグリーン購入を推進します。
8.本方針に基づく調達担当窓口は経理部契約第 1 課とします。
環境物品等調達体制
分任契約担当役
経理部長
事務局:経理部契約第1課
物品供用責任者指定細則に定める
物品供用責任者
50 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
(3)グリーン購入の実績
(4)調達に関連したその他の取組み
2014 年度の調達方針に定めた各品目の目標調達率を達成
したものは 44 品目(2013 年度 46 品目)
、達成できなかっ
たものは 6 品目(同 11 品目)でした。
①特定調達物品等以外の環境物品等の調達状況
特定調達物品以外の環境物品等については、3R(reduce・
reuse・recycle)の推進を図り、エコマークの認定を受けた
研究現場で使用する調達品目についてはグリーン購入法非
もの、または同等品のものを選択し消費電力が小さく、か
適合品もありますが、環境配慮に関する各法の順守を前提と
つ再生材料などを使用したものを選択するよう努めました。
して環境負荷の低減に配慮し、特に文具等消耗品について調
達率向上を図るなど、役職員が意識して一層の改善に努めて
②その他環境物品等の調達推進に関する事項について
2015 年度の調達方針に表記した事項の他、契約業者等に
まいりたいと考えております。
グリーン購入の推進を呼びかけ、また、機構内では両面コ
ピー・使用済み裏紙コピーの活用、分別ごみ回収の促進に努
めました。
<主な特定調達品目の調達状況>
調達項目
1
紙類
2
調達率
調達項目
調達率
11
消火器
文具類
95%( 97%)
12
制服・作業服
-%( - %)
3
オフィス家具等
99%( 99%)
13
インテリア・寝装寝具
-%( - %)
4
OA 機器
99%(100%)
14
作業手袋
-%( - %)
5
移動電話
-%( - %)
15
その他繊維製品
-%( - %)
6
家電製品
-%( - %)
16
設備
-%( - %)
7
エアコンディショナー等
-%( - %)
17
防災備蓄用品
100%( - %)
8
温水器等
-%( - %)
18
公共工事
100%(100%)
9
照明
-%(
19
役務
自動車等(一般公用車)
-%( - %)
10
JAMSTEC
TRIVIA
0%)
100%(100%)
-%( - %)
◦調達目標は、全ての項目について 100% ◦( )内は前年度の調達率
◦「―」は調達実績なし ◦紙類は重量ベースの比率
11.深海と深海生物 美しき神秘の世界
JAMSTEC 監修/ナツメ社刊
まだ私たちが解明していない領域がそこには広がっており、尽きることのない魅力
のある世界が深海です。技術を集結し、その謎を解明するために日夜努力を惜しまな
い科学者や技術者の姿がそこにはありました。深海に生息する生物の神秘な姿もふん
だんに掲載されており、最後には「なるほど!」と納得し、誰かにその知識を言いた
くなる 1 冊となっています。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 51
環境への取組み
100%(100%)
(5)温室効果ガス等の排出の削減に配慮した
契約の締結実績
国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約
の推進に関する法律(以下「環境配慮契約法」という。
)に
基づき、2014 年度における温室効果ガス等の排出の削減に
配慮した契約の締結実績は以下のとおりです。
②環境配慮契約の締結状況
環境配慮契約基本方針で環境配慮契約の具体的な方法が
定められているⅰ電気の供給、ⅱ自動車の購入及び賃貸借、
ⅲ船舶の調達、ⅳ省エネルギー改修事業(ESCO 事業)、ⅴ
建築物の建築又は大規模な改修に係る設計業務、ⅵ産業廃
棄物処理のうち、JAMSTEC の 2 拠点において使用する電
気の調達に関して、下表のとおり環境配慮契約を締結しま
した。
また、自動車の賃貸借に係る契約では、賃借料及び環境
① 2014 年度の取組み
環境配慮契約法及び国及び独立行政法人等における温室
効果ガス等の排出の削減に配慮した契約の推進に関する基
本方針(平成 22 年 2 月 5 日閣議決定。以下「環境配慮契
約基本方針」という。
)に基づき、可能なものについて温室
効果ガス等の排出の削減に配慮した契約(以下「環境配慮
契約」という。)を締結しました。
性能(燃費)を総合的に評価し、その結果が最も優れた者
と契約を締結する総合評価落札方式による入札を実施しま
した。(1 台)
なお、船舶の調達、省エネルギー改修事業(ESCO 事業)、
建築物の建築又は大規模な改修に係る設計業務及び産業廃
棄物処理については環境配慮契約により調達した案件があ
りませんでした。
○電気の供給を受ける契約
【むつ研究所】
契約期間
契約電力
予定使用電力量
平成 26 年 4 月 1 日~平成 27 年 3 月 31 日
動力需要:92kW
電灯動力併用需要:209kW
動力需要:246,000kWh
電灯動力併用需要:1,018,000kWh
環境への取組み
契約方式
事業者の環境配慮の取組状況により入札参加資格を制限する一般競争入札(裾切り方式)(注)
入札申込者
1者
落札者
東北電力(株)
【高知コア研究所】
契約期間
平成 26 年 4 月 1 日~平成 27 年 3 月 31 日
契約電力
462kW
予定使用電力量
2,700,000kWh
契約方式
事業者の環境配慮の取組状況により入札参加資格を制限する一般競争入札(裾切り方式)(注)
入札申込者
1者
落札者
四国電力 ( 株 )
(注)当該入札の申込者のうち、二酸化炭素排出係数、未利用エネルギー活用状況、新エネルギー導入状況及びグリーン電力証書の調達者への
譲渡予定量に係る数値をそれぞれ点数化し、その合計が基準以上である者の中から、最低の価格をもって申込みをした者を落札者とする
もの。
52 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
6.いろいろな環境配慮活動
(1)省エネルギーの取組み
<夏季の省エネルギー対策>
JAMSTEC では、夏季(5 月 1 日~ 10 月 31 日まで)の
(2)環境を考える日
横須賀本部では毎週水曜日を「環境を考える日」と定め、
職員に室内の消灯などを以下のように放送で呼びかけてい
省エネルギー対策として次のような取組みを行っています。
ます。
◆適正な室温管理
明を消灯するなど省エネルギーと環境に配慮した生活を心
冷房時の空調設定温度の目安を概ね 28℃とする。
◆軽装の励行
通常業務及び会議にお
いて上着、ネクタイの省
略を励行する。またその
『毎週水曜日は環境を考える日です。昼休みには室内の照
がけましょう』
(3)エコキャップの収集
JAMSTEC では 2009 年度から横須賀本部、横浜研究所、
旨を受付等に掲示し、来
むつ研究所、国際海洋環
訪者にも周知する。
境情報センターで収集を
開 始 し、 平 成 27 年 3 月
◆オフピーク使用
31 日までに累計で 39 万
消費ピーク時間帯(13 : 00 ~ 16 : 00)外にする
のキャップを回収し、エ
使用電力の大きい機器の使用にあたっては、極力、電力
3547 個のペットボトル
コキャップを回収してい
<通年で行っている省エネルギー対策>
る団体に送付しました。
◆照明の消灯
業務上特に必要な場合
を除き、昼休み、勤務時
間外は消灯する。
廊下、エントランスホー
ル等は、安全上支障のな
◆ OA 機器の管理
昼休みを含め、業務上支障のないパソコン、プリンター
及びコピー機等の電源をこまめに切る。
◆会議資料
特に必要な場合以外は両面コピーとし、報告書等は概要
資料とする。
(4)ビーチクリーン
JAMSTEC は海に関する研究や開発を行っている研究所
です。そこで、日頃お世話になっている「海」に対し感謝
するため、公益財団法人かながわ海岸美化財団の支援を得
てビーチクリーン(海岸清掃)を定期的に行っています。
これまでに行ったビーチクリーンの実績は次の表のとおり
です。これからも、微力ながらも海岸の美化に貢献してい
きたいと考えています。
実施日
2014.11.30
2013.12.7
以上のほか、各拠点で実施されている環境配慮の取組み
については、3.各拠点の環境パフォーマンスと取組みをご
2013.6.1
覧ください。
2012.12.1
実施場所
材木座海岸
(神奈川県鎌倉市)
七里ガ浜
(神奈川県鎌倉市)
由比ガ浜
(神奈川県鎌倉市)
材木座海岸
(神奈川県鎌倉市)
参加者数
25 名
19 名
22 名
18 名
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 53
環境への取組み
い範囲で消灯する。
収集したエコキャップ
(6)グリーンカーテン
横浜研究所のフロンティア研究棟では、2012 年からヘ
チマ、ゴーヤ、アサガオでグリーンカーテンを制作し、夏
季の建物の温度上昇を防ぐ試みを行っています。制作を始
めた 2012 年当初は植物の育ち具合も期待したとおりには
いかずカーテンの出来具合も今一つでしたが、年々コツを
つかみ、今夏も立派なカーテンが出来ました。
ビーチクリーン(2014.11.30)
(5)循環使用・再利用
横須賀本部から排出される生活排水は浄化槽で処理を
行った後、海域に排出していますが、夏場の雨が少ない時
期などはこの処理水を緑地管理に使用し水資源の節制に努
めています。使用量は 1 日当たり 5 ~ 10m3 です。
環境への取組み
JAMSTEC
TRIVIA
南側壁面で生育中のグリーンカーテン
12.海のプロフェッショナル~海洋学への招待状~
海のプロフェッショナル 2 ~楽しい海の世界への扉~
窪川かおる 編,女性海洋研究者チーム・海洋女性チーム 著/東海大学出版会刊
本書は海に携わる女性たちの物語です。海を「学び」、
海に「進学」し、海へ「就職」すると言うライフイベ
ントごとに様々な女性研究者たちが海での活動につ
いて語っています。 海で過ごす「ある 1 日のスケジュール」「ある 1 年
のスケジュール」はとても参考になるはずです。
そして、第 2 弾も発行されました。「海の魅力を伝
えたい!」と言う熱い想いに満ちた海で活躍する海洋
女性チームが、惜しみなく語ってくれています。海に
携わりたいと少しでも思っている方に是非手に取っ
ていただきたい 1 冊です。
54 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
7.環境に関わる研究紹介【※掲載文中の所属・役職名称は発表時のものです。】
(1)温室効果ガス排出量推定、見直しの可能性を示唆
~大気中における水酸基ラジカル分布を総合的に評価~
JAMSTEC 地球表層物質循環研究分野のプ
メチルクロロホルムの南北濃度
差と、それを用いて推定した水
酸基ラジカル南北濃度比。
■と◆は国際地表観測ネット
ワーク AGAGE のメースヘッド
(アイルランド)とケープグリム
(オーストラリア)の2ヶ所での
観測値の差異を示す。▲はアメ
リカ海洋大気庁によるアラート
(カナダ)と南極パーマー基地に
おける観測値の差異。▼は航空
機 観 測 HIPPO に よ る、 高 度
1km か ら 4km で 平 均 し た、 両
極付近 ( 南緯 60 度以南および北
緯 60 度以北 ) での観測値の差異。
さまざまな場所での観測結果と
化学輸送モデルとを用いた推定
結果がほぼ一致(差異は 2%程度)
することが分かる。
ラビール・パトラ主任研究員らは、活性酸素
の 1 つでメタンなどの温室効果ガスや大気汚
染物質に大きな影響力を持つ水酸基ラジカル
濃度について、化学輸送モデル(ACTM)と
各種観測の結果から、南半球と北半球間でほ
とんど差がないことを明らかにしました。水
酸基ラジカルについて、多面的な手法を用い
た評価は世界で初めての試みです。
水酸基ラジカルは大気中での化学反応を通
じて、温室効果ガス、大気汚染物質、オゾン
層破壊物質などの大気中濃度に非常に大きな
影響を与えています。このため、その大気中
濃度の正確な把握は、地表からの化学物質の
排出量推定や化学―気候相互作用の将来予測
の精緻化にとって非常に重要です。しかし水酸基ラジカルはその濃度変動の直接観測や化学輸送モデルとの直接比較が困難な
ため、メチルクロロホルムなどを用い、水酸基ラジカルの濃度と分布を間接的に推定し、南北半球の平均値を用いて比較・検
証が行われてきました。その結果、これまでは水酸基ラジカルの濃度は、南半球よりも北半球の方が高いと考えられてきました。
研究チームは、独自に開発した化学輸送モデル(ACTM)の結果と各種観測を組み合わせ、水酸基ラジカル濃度の南北比を
推定したところ、南北半球の平均濃度がほぼ同じであることを明らかにしました。また、北半球の水酸基ラジカル濃度を従来の
化学輸送モデルが過大評価している可能性も指摘し、大気中への温室効果ガスや化学汚染物質などの排出量推定などを見直す可
能性を示唆しました。地球表層物質循環研究分野では、今後も排出量推定や大気環境変動予測の精緻化に取り組んでいきます。
プレスリリース http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20140911/
JAMSTEC 北極環境変動総合研究センターの朴昊澤主任
研究員は、近年進行する北極の地温上昇に対する主な影響
要因は地域によっては積雪であり、その寄与率は 50%以
上であることを明らかにしました。
北極域は地球温暖化による影響が顕著に表れる地域で、
近年地温の上昇と永久凍土の衰退が急速に進行していま
す。従来は地温上昇の最大要因には気温が挙げられてきま
したが、積雪との指摘もあり、その寄与率の定量的な解明
が求められてきました。
そこで本研究では、1901 年~ 2009 年まで 109 年間の
北極陸域観測データを解析し、数値モデルを用いて実験を
行いました。その結果、まず東シベリアでは、109 年間で
気温より地温の方が上昇率は高く、1950 年以降の積雪は
北半球の凍土の分布図(左)、1971 − 2009 年における 3.6m の地温変
動に対する気温(中央)と積雪(右)の各寄与率を示したもの。北極域の
うち、特に東シベリアとアラスカにおいて地温に対する積雪量の寄与率が
気温を上回ることがわかる。
増加していました。これは、雪が厚く積もることで地表を布団のようにおおい地中に対して断熱効果を発揮し、地中が暖まり
やすくなったためと考えられます。反対に北米では、1990 年以降では急激に気温が上昇したにも関わらず地温は横ばいか下
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 55
環境への取組み
(2)北極域の永久凍土域において積雪が地温上昇に与える影響を解明
がっており、同時期の積雪は減少していました。雪があまり積もらず断熱効果は低下、地中の熱が大気へ放出されたためと考
えられます。
これらを検証するため数値モデルを用いて降雪量と気温に変化を与えて実験したところ、北極域、特に永久凍土が存在する
地域では、気温条件に関わらず積雪の変化と連動して地温が上下することを確認しました。地温に対する積雪と気温の寄与率
を比較したところ、東シベリアとアラスカでは積雪の寄与率が 50%以上となり、気温を上回りました。一方で、その他の地域
では気温の寄与率が顕著でした。
本研究により、地温に対して最も影響を与える要因が積雪の地域もある、つまり北極域の地温変動に対する地域により異な
る気候的特性の影響が示されました。今後、温暖化により積雪の変化が予想されていますが、気温変化に加えて積雪の影響が
加わることで、その変化率がさらに増幅する可能性もあります。今後の研究によりそのメカニズムが明らかになることが期待
されます。
プレスリリース http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20141020/
http://www.jamstec.go.jp/j/kids/press_release/20141020/
(3)東北地方太平洋沖地震と津波による下北沖底層生態系への影響を報告
~海底に生息する微小生物の予期せぬ多様性変動~
JAMSTEC 海洋生物多様性研究分野の
豊福高志主任研究員と山口大学の川村喜
一郎准教授、高知大学の村山雅史教授ら
は、フランス、オランダ、フィンランド
の研究者らと共同で下北沖を学際的に調
査し、2011 年 3 月 11 日に発生した東
北地方太平洋沖地震に伴う津波により、
本海域の底層生態系が激しく攪乱されて
試 料 採 取 地 点( 左 上 ) 水 深 55m
(St1)、81m(St2)、105m(St3)、
211m(St4)。
水深 81m の海底から採取されたコ
ア(右)。海底面に貝殻の破片のよ
うなものが沢山見つかった。コアも
海底面から深さ 5cm 付近で粒子の
大きさに変化が見られ、また上部ほ
ど粗い粒が溜まっている。今回見ら
れた主な有孔虫(左下)。
いたことを明らかにしました。
下北沖は、高さ 10 mを超える中程度
環境への取組み
の津波が観測された海域です。津波発生
から5ヶ月後の 2011 年 8 月末に学術
研究船「淡青丸」による研究航海を実施、
耐圧カメラを取り付けたマルチプルコア
ラ―を用いて海底の様子を観察しながら堆積物を採取し、堆積構造や底生生物群集の分布などを調べました。
その結果、浅い海底には過去の調査では報告されていない貝殻片が多く観察されました。貝殻片は、水深が増すにつれ少なく
なっていました。採取した堆積物は、上部にサイズのばらついた砂粒を含んでいました。この堆積構造は、通常とは異なり、徐々
に流速が早くなる引き波の中で短時間のうちに堆積した際にできる構造と考えられます。この構造が津波の流れによる構造な
のか、同年 5 月に発生した大型台風 2 号の影響がないかを判断するためシミュレーションで再現実験を行いました。その結果、
大型台風程度の流速では今回確認された砂粒を移動させることはできず、津波による流れで形成されたと結論付けられました。
底生生物の分析では、通常は水深 10 ~ 50 mに生息するツキヒガイやコベルトフネガイが、水深 81 m地点で見つかりました。
有孔虫は、水深 55 mで 59 種、81 mで 63 種、105 mで 49 種が生きた状態で見つかりました。有孔虫は種類により生息深
度がある程度決まっているため、同じ場所に多くの種が生息するのは非常にまれです。強い流れに運ばれて混ざったと考えら
れます。その一方で、水深 211 m地点では単一種の有孔虫が占める、多様性の極めて低い状態が見られました。
本成果は、下北沖において地震・津波が海底へおよぼした影響をまとめた最初の報告です。津波で海底がどのように擾乱さ
れたかの様子を再現した上で、過去の津波堆積物における供給源推定の精度を高め、今後の歴史地震の調査に重要な知見をも
たらすものと期待されます。
プレスリリース http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20141217/
http://www.jamstec.go.jp/j/kids/press_release/20141217/
56 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
(4)北西太平洋の微小な渦が海洋循環へ与える影響を解明
JAMSTEC アプリケーションラボ佐々木英治主任研究員、地
球環境観測研究開発センター笹井義一主任研究員らは、サブメ
ソスケール現象と呼ばれる、海洋で発生する 1 ~ 50㎞規模の
微小渦や筋状構造が、海洋循環の季節変動に大きな影響をおよ
ぼしていることを明らかにしました。
海洋では、強い海流の周辺に直径 100 ~ 300㎞の中規模渦
が数多く分布し、流れとともに熱や物質を運び海洋循環に大き
な役割を果たしています。この中規模渦などが互いに干渉する
と、1 ~ 50㎞スケールの微小な渦や筋状構造の流れ「サブメソ
スケール現象」が生じます。これまでに、サブメソスケール現
象は冬季に活発化し鉛直流を伴うことが報告されていますが、
海洋循環への影響は明らかになっていませんでした。
本研究では、スケールの違う様々な現象がどのような関係性
を持つのか明らかにするため、スーパーコンピュータ「地球シ
ミュレータ」を用いて高解像度海洋モデルによる北太平洋の数
値実験を行いました。
その結果、北西太平洋の黒潮続流の周辺で、冬季に海洋表層 北太平洋における冬期(上段)と夏期(下段)の海面流速の回転運
の混合層が厚くなり、その混合層内でサブメソスケール現象が
活発化すること、また、よりスケールの大きい中規模渦に運動
動の大きさ(暖色は時計回りの温かい渦、寒色は反時計回りの冷た
い渦)(左)と、東経 155 度の鉛直流速(色)と密度(コンター)
の南北断面(右)。
エネルギーが遷移し、この中規模渦を活性化させることで、海洋循環の季節変動に大きな影響をおよぼしていることを明らか
にしました。さらに、今後 10 年以内に打ち上げ予定の地球観測衛星による高解像度の海面高度観測から、サブメソスケール
現象が詳細に捉えられる可能性を見出しました。
今後は、地球温暖化による海面水温の上昇が渦の挙動に与える影響、ひいては海洋循環への影響についてさらなる解明が進
むと期待されます。
http://www.jamstec.go.jp/j/kids/press_release/20141215/
(5)海洋における銅同位体比の分布を高精度で解明
~重金属元素の同位体比が海洋大循環を辿る指標になる可能性を示唆~
JAMSTEC 高知コア研究所同位体地球化学研究グルー
プの高野祥太朗研究生と谷水雅治主任技術研究員は、京
都大学化学研究所、京都大学大学院理学研究科と共同で、
微量金属元素の化学分離手法を用いて、海水中に溶存し
た銅の同位体比(65Cu/63Cu)の精密測定に成功しました。
その結果、世界で初めて銅同位体比の鉛直分布と海水の
年齢が非常によく相関していることを見出し、銅をはじ
めとする微量重金属元素の同位体が海洋循環メカニズム
を紐解く重要な化学トレーサーとなり得る可能性を示唆
しました。
イ ン ド 洋( 左 )、 北
西 太 平 洋( 中 央 )、
北東太平洋(右)の
各海域における深さ
別の銅の同位体比
(青線)及び AOU(み
かけの酸素消費量:
黒線)の相関関係。
海洋深層水の循環経路や速度を知るには、海水中の放射性炭素(14C)量を用いる手法が一般的ですが、これまで数百万年単
位の古い海洋環境を辿ることができませんでした。また、排出量が急増した人為起源の金属元素が、海洋環境におよぼす影響
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 57
環境への取組み
プレスリリース http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20141215/
を把握する指標として「同位体」が用いられますが、海水中における銅や亜鉛、鉄、ニッケルなどの重金属元素の同位体比の
変動が微量であるため、高度な観測技術と分析手法が必要でした。
そこで研究グループは、新たな微量元素分析手法を確立し、2008 年~ 2012 年に採取された東太平洋、西太平洋、インド洋、
北大西洋の海水中の銅同位体比の精密計測を行いました。その結果、銅の 65Cu/63Cu 同位体比は表層から深層に行くにしたがっ
て約 0.3‰(千分率)程度高くなっており、深層海水でみると、大西洋、インド洋、太平洋の順に 65Cu/63Cu 比が上がってい
くことが分かりました。この 65Cu/63Cu 比の傾向は、深層水の年齢の目安となる海水のみかけの酸素消費量(AOU)とよく
相関しており、本研究手法を用いれば、太古の海洋における海水循環速度を解明できる可能性を示しています。
今後、対象をニッケルや亜鉛などの重金属元素の同位体に拡大し、それぞれの元素に関して、人為的影響や物質循環の把握
を行い、国際プロジェクト「GEOTRACES」(海洋の微量元素・同位体による生物地球化学研究)に貢献していく予定です。
プレスリリース http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20141205/
http://www.jamstec.go. jp/j/kids/press_release/20141205/
(6)ゴエモンコシオリエビは胸毛のバクテリアを食す
~深海動物と外部共生菌の見えざる関係性を世界で初めて科学的に実証~
JAMSTEC 深 海・ 地 殻 内 生
物圏研究分野の和辻智郎研究員
らは、沖縄トラフの深海熱水噴
出孔の周囲一面に生息するゴエ
モ ン コ シ オ リ エ ビ(Shinkaia
crosnieri )が、自身の体毛に付
着するバクテリア(外部共生菌)
を食べて栄養とする直接的な証 ゴエモンコシオリエビ(上)深海の
拠を得ることに成功しました。 熱水噴噴出孔域に住む甲殻類の一種。
ヤドカリに近い種で体表に多数の毛
深海動物と外部共生菌の栄養的 が生えている。体長は 5cm 程度。
13
C で印をつけた二酸化炭素を与えて、13C の取込み量を調べる実験と各組織(毛、筋肉、腸)におけ
な共生関係を明確に示す初めて
環境への取組み
の成果です。
る取込み量(右)
世界の深海熱水噴出域では外部共生菌を体に付着させた動物(宿主動物)が多数発見され、宿主動物は外部共生菌を栄養に
していると推測されてきました。しかし、宿主動物の生け捕りは難しく、宿主動物に外部共生菌を食べさせるような実験がで
きなかったため、外部共生菌が宿主の栄養源であることを確かめられませんでした。
これまでに和辻研究員らは、生け捕りにしたゴエモンコシオリエビを初めて外部共生研究に導入することで、ゴエモンコシ
オリエビは熱水成分を利用して生育する化学合成細菌とメタン酸化細菌から栄養を貰うことや外部共生菌には化学合成細菌と
メタン酸化細菌が含まれることを示しました。
今回、ゴエモンコシオリエビの栄養源となる化学合成細菌とメタン酸化細菌が外部共生菌に属することが決定的となる証拠
を探しました。ゴエモンコシオリエビの外部共生菌を色素で染めて追跡すると色素が腸内に運ばれたため、ゴエモンコシオリ
エビが外部共生菌を食べる直接的な証拠が得られました。また、ゴエモンコシオリエビの腸をすりつぶした抽出液に外部共生
菌を消化する活性を確認しました。さらに、外部共生菌の炭素固定量は宿主のゴエモンコシオリエビが受け取った栄養分より
も 40 倍以上高く、外部共生菌だけが栄養源になり得ることを実証しました。これらの結果から、「ゴエモンコシオリエビは外
部共生菌を経口摂取し、その外部共生菌を栄養源として消化・吸収する」ことが初めて科学的に証明されました。
本成果は熱水噴出孔の周囲に生息し、バクテリアを体に付着させる深海動物の生態を解明した重要な発見といえます。一方で、
こうした深海動物が外部共生菌を積極的に育てているかどうかはまだ分かっていません。自身の食べ物を育てる動物は人間を
除くと極めて珍しく、和辻研究員らはゴエモンコシオリエビが外部共生菌を積極的に育てているとすれば大変おもしろい研究
になると考えています。今後の研究により、その科学的な実証が期待されます。
プレスリリース http://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20141014/
http://www.jamstec.go.jp/j/kids/press_release/20141014/
58 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
Ⅴ.社会的取組み
1. 組織統治
(1)リスクマネジメント
ト規程を制定しました。具体的なリスクマネジメントの活
動としては以下のような事項を実施し、組織一丸となって
リスクマネジメントに取り組んでいます。
① 概要
リスクとは、JAMSTEC の事業目的の達成を阻害し、望
ましくない結果をもたらす危険性や不確実性のことをいい、
財務上や研究開発上のリスク、社会規範上のリスクなど、
多様なものがあり、事業活動に伴う公害の発生や油の流出
などに代表される環境汚染などの環境影響についてもこの
リスクに含まれます。リスクマネジメントとは、これらの
リスクを的確に把握し、低減化を図るための仕組みの事を
いいます。
JAMSTEC ではリスクマネジメントの強化に向け、2010
◦リ スクマネジメント委員会を開催して、リスクマネジ
メントに関する諸規程及び体制の整備、リスク対応状
況等について検討・審議する。
◦各 部署にリスクマネジメント推進担当者を配置し、リ
スクマネジメントの推進を図る。
◦職 員に対するリスクマネジメント研修を定期的に開催
する。
◦監査室によりリスクマネジメントに関する監査を行い、
監査結果を理事長に報告する。
年 5 月にリスクマネジメント基本方針とリスクマネジメン
リスクマネジメント基本方針
独立行政法人海洋研究開発機構(以下「機構」という。)は、機構が抱える多様なリスクを的確に把握し、その発生の可能性を低減
し、また発生した場合の損失の最小化、早期復旧及び再発防止に努めることにより、機構の事業目的の達成を容易にし、国民の皆様
から信頼される組織を目指すこととする。
リスクとは、機構の事業目的の達成を阻害し、望ましくない結果をもたらす危険性や不確実性のことをいう。ここでいうリスクには、
安全に係るリスク、研究開発に係るリスク、経営管理に係るリスク等の機構の事業活動に係る全てのリスクを含む。
機構のリスクマネジメント活動は、以下の事項の達成を目標とする。
1.機構の各事業に相当程度の影響(損失)を与え得るすべてのリスクを発見・特定し、経営レベルで掌握する。
2.統一的な指標に基づき、各々のリスクが経営に与えるインパクトを客観的に数量化し、対応の優先順位を明確化する。
3.主要なリスクについて、平常時の対応を主管する組織を明確化する。
4.主要なリスクについて、各リスクの対応策を整備する。
5.緊急時の対応について、責任者および対応組織とその権限・責任が明確化され、機構内の指揮命令系統を確立する。
6.定期的な教育・研修を通じ、全役職員がリスクマネジメントに係る諸規程の内容を熟知する。また、自らの役割を認識し、
責任ある的確な行動をとる。
理事長は、機構の最高責任者として、機構のリスクマネジメントを総理する。
機構におけるリスクは、リスクマネジメント規程及び安全管理規程並びにこれらに関連する諸規程に基づき、的確に把握し、対応
する。
2014 年度は JAMSTEC の職員に対し、次の説明会や研
修を行いました
○内部者(インサイダー)取引防止に関する説明会(2014
年 7 月 16,23 日)
○電子メールの外部転送ポリシー説明会(2014 年 10 月
17,20 日)
○研 究活動・公的研究費に係る不正防止ガイドライン改
正と機構における対応案の説明会(2015 年 1 月 27 日)
(2)コンプライアンス(法令等の順守)
① コンプライアンスの体制
コンプライアンスとは、狭義で「法令順守」の意味で理解さ
れることもありますが、明らかな法令違反とは言い切れない不
祥事についても対応する必要性があることから、JAMSTEC で
は法令に留まらず社会規範の順守までをも含むものとして考え
ています。
JAMSTEC では、2007 年 12 月に「コンプライアンス行動
規準」と「コンプライアンス規程」を制定し、不正・不法行為
の未然防止に取り組んでいます。また、研究活動の不正につい
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 59
社会的取組み
② 2014 年度の取組み
ては、2006 年 9 月に「研究活動行動規準」と「研究活動にお
ける不正行為への対応に関する規程」を定めました。
JAMSTEC の事業活動において関係する環境関連法令の
順守状況は次の通りです。2014 年度においては法令に違
http://www.jamstec.go.jp/j/about/compliance/
反した事実はなく、処分は受けていません。
適用を受ける主な環境関係法令
エネルギーの使用の合理化に関する法律(省エネ法)
② 法令順守の状況
主な法令の目的
遵守状況
電力などのエネルギーの合理的使用、省エネ
○
環境負荷の少ない物品の調達
○
国等における温室効果ガス等の排出の削減に配慮した契約
の推進に関する法律(環境配慮契約法)
環境負荷が少なくなるように工夫した契約
○
環境情報の提供の促進等による特定事業者等の環境に配慮
した事業活動の促進に関する法律(環境配慮促進法)
事業活動に係る環境配慮等の状況に関する情報の提供
○
廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)
産業廃棄物などの適切な処理
○
大気汚染防止法
大気に放出するばい煙等の管理
○
水質汚濁防止法
公共用水域(海域、河川など)へ排出する排水の管理
○
下水道法
下水道に排出する排水の管理
○
特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の
促進に関する法律(PRTR 法)
対象となる化学物質の排出量の把握
○
海洋汚染等及び海上災害の防止に関する法律
(海洋汚染防止法)
船舶などから海洋への油や廃棄物排出の規制
○
放射性同位元素等による放射線障害の防止に関する法律
(放射線障害防止法)
放射線障害の防止と放射性同位元素等の適切な管理
○
核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律
(原子炉等規制法)
核原料物質、核燃料物質、原子炉の平和利用の確保と、適
切な管理及び規制
○
組換え DNA 実験の適正な実施
○
国等による環境物品等の調達の推進等に関する法律
(グリーン購入法)
遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の
確保に関する法律(カルタヘナ法)
○:良好 △:指導あり ×:違反あり
社会的取組み
(3)個人情報の保護
近年、高度情報通信技術の進展により、個人情報の利用
が著しく拡大し、コンピューターやネットワークを利用し
て大量の個人情報が処理されています。そこで、個人情報
の適正な取扱いに関する基本理念などを定め、個人情報の
有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護することを目
的として、2003 年 5 月、個人情報保護に関する各種の法
律(
「個人情報の保護に関する法律」等)が制定され、個人
情報を取り扱う事業者が遵守すべき法的義務が定められま
した。
国立研究開発法人である JAMSTEC の場合、2005 年 4
月に施行された「独立行政法人等の保有する個人情報の保
護に関する法律」やその関係法令が適用されており、これ
60 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
らの諸法令を遵守するために、「個人情報保護管理規程」等
を定めて個人の権利利益の保護を行っています。
また、情報システムの継続的かつ安定的な運用及び機構
内で電子的に作成されたり伝送される情報についての安全
性と信頼性を確保するため、「情報セキュリティ管理規程」
を定めています。
なお、2014 年度は、新任職員向け研修のほか、以下の
個人情報保護に関する研修会を実施しました。
○個人情報保護教育研修会【全職員向け】
(2014 年 9 月 19,26 日)
○個人情報保護教育研修会
【個人情報保護管理者・担当者向け】
(2015 年 2 月 17 日)
(4)知的財産権の管理
JAMSTEC では「知的財産に関する基本的な考え方(知
財ポリシー)」を制定し、
知的財産権とは、発明や創作によって生み出されたもの
を、発明者の財産として一定の期間保護する権利です。
JAMSTEC が我が国のみならず国際的に海洋科学技術の
中核的機関として機能していくためには、海洋に関する「知」
を不断に創出し、それらを社会経済の発展のために活用さ
れるよう発信していくことが不可欠です。JAMSTEC は優
れた人材と世界最高水準の技術を併せ持つ世界有数の研究
開発能力を有しており、先進的な研究開発成果を知的財産
の形で広く公表していくとともに、産業界や他の機関が利
用しやすいように、組織を挙げた取組みを進めていくこと
としています。
●知的財産の定義
●知的創造サイクルの活用
●知的財産管理をビルトインした研究開発活動の推進
●知的財産権の帰属・承継
●研究成果の社会への還元による社会貢献
●企業等との連携における透明性の確保
を基本的な考え方として「職務発明等活用規程」を定め、
知的財産の創造、保護、管理、活用に積極的に取り組んで
います。
なお、2015 年 3 月末の時点での知的財産の保有数は以
下の表とおりです。
知的財産の保有数
国内
海外
116
36
54
93
意匠
2
2
商標
17
0
プログラム著作物登録
13
-
7
-
特許
特許出願中
ノウハウ *
(*)企業等に実施許諾する場合に登録認定
JAMSTEC
TRIVIA
13.梅雨前線の正体 ( 新しい気象技術と気象学 )
茂木耕作 著/東京堂出版刊
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 61
社会的取組み
「科学は小説より奇なり」! !
付き合いにくい梅雨を楽しむための見方とは ? 不快を愛着に、不思議を納得に、
知識を理解に変える旅へご案内します。気象観測研究者が、梅雨と付き合いやす
くなるための三つの体験ツアーにご案内します。当たり前に見ていた天気図の中
にある意外な発見、梅雨を観にでかけた際の予想外の興奮、そして理解が深まる
につれて増える出会いと感動と新たな謎。梅雨について一般的に言われているこ
と、ちょっと踏み込んだ話、最先端の研究の現状を「体感」するための一冊。み
なさんも経験的に「聞いたことは、忘れがち。観れば、覚えていられる。でも本
当に理解できるのは,取り組んだとき。」ということを感じていませんか。梅雨
前線について何を取り組めば、理解できるのか ? あなたもまずはその扉を開いて
出かけてみましょう !
2. 労働慣行
(1)健康の管理
横須賀本部及び横浜研究所には健康管理室を設け健康管
理専門の職員が常駐しているほか、週に 1 ~ 2 回産業医に
よる健康相談を行っています。
そのほかにも、法令に定めるところにより定期健康診断、
関連制度ハンドブック」にまとめて、各制度の紹介をして
います。
(4)ハラスメントの対応
セクシュアル・ハラスメント(セクハラ)に代表される
特殊健康診断を実施するとともに、健康保険組合の健診補
職場における様々なハラスメントは、職員の人としての尊
助制度を活用した人間ドック受診者への補助を行うなどし
厳を不当に傷つける社会的に許されない行為であるととも
て、職員に健康の維持・増進を働きかけ、また管理を行っ
に、職員の能力発揮を妨げ、職場秩序を乱し適切な業務遂
ています。
行の障害となることに繋がります。職場でのハラスメント
(2)メンタルヘルス
JAMSTEC では職員のメンタルケアのため、カウンセラー
の資格を有した者が常時相談を受け付けているほか、外部
機関と提携しカウンセリングを受けることのできる体制を
整えています。
また、年に 1 回、イントラネット上で実施できるメンタ
ルタフネスのセルフチェックの機会を設けています。その
他、外部の相談窓口として、従業員支援プログラムを導入
しています。
(3)ワーク・ライフバランス
対策については、セクハラに関しては法律により事業主に
配慮が求められていますが、昨今ではセクハラ以外の様々
なハラスメントも大きな問題となっています。特にパワー・
ハラスメント(パワハラ)やアカデミック・ハラスメント(ア
カハラ)などは職場環境を悪化させるだけでなく、職員の
心身の健康を害し長期療養を要する場合もあり、組織に対
する影響は看過できないものとなっています。
JAMSTEC では様々なハラスメントを防止し排除するた
め、「ハラスメントの防止等に関する規程」を制定していま
す。また、相談窓口を設けて随時相談を受け付けているほか、
「ハラスメント防止のためのハンドブック」を作成して職員
に配布し、ハラスメントを未然に防止し、快適に働くこと
ができる職場づくりのため、また良好な人間関係を築くた
め、ハラスメントの防止と啓発に取り組んでいます。
ワーク・ライフバランスとは、仕事と仕事以外の生活を
調和させ、誰もが働きやすい仕組みをつくることといわれ
ています。JAMSTEC においても仕事と子育ての両立を可
能にし、働きやすい環境の整備に取り組んでいます。具体
的には、出産・育児休暇制度に関する説明会の開催や、育
児休業者復帰支援プログラムなどの支援活動、また、各制
度の理解増進及び積極的な利用を図るため、
「産前産後休暇・
育児関連制度ハンドブック」を作成して職員向けに公開し
ています。2014 年度には、仕事と育児の両立で生じる様々
社会的取組み
な問題点について意見交換を行う場「育児カフェ」を開催
しました。
○開催日 横須賀本部(2014 年 5 月 14 日)
横浜研究所(2014 年 5 月 19 日)
○寄せられた意見に対する取り組み状況
・休暇制度の柔軟な運用を求める要望を踏まえ、「年次有
給休暇の積立取扱規則」を改正し取得条件を緩和しま
した。
・イントラネット上に子育て関連情報を掲載するページ
を新設しました。妊娠初期から職場復帰後まで、育児
中の職員の参考になる情報を各まとめました。
また、高齢化が進む社会に備えるため、仕事と介護の両
立を可能にするための環境整備にも取り組んでおり、「介護
62 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
ハラスメント防止のための
ハンドブック序文
3. 社会貢献
(1)社会貢献の方針
JAMSTEC は、海洋 ・ 地球環境分野における調査・研
究開発を実施し科学技術の進展に貢献していますが、こう
した活動の他に社会への直接的な貢献についても、本来業
務の一環として積極的に取り組んでいきます。
JAMSTEC は、社会への貢献として、子供たちをはじめ
一般の方々との交流を通じ、海洋や地球についての知識の
らに産業界との積極的な交流を通じた研究開発成果の産業
利用などに取り組みます。
JAMSTEC は、こうした社会貢献への取り組みのため、
毎年度の総事業費の一定割合(当面1%を考えています)
を振り向けるとともに、自らの業務がどのようにしたら社
会とつながって行くことができるかを念頭に置いて、職員
がそれぞれの業務に従事できるような環境を作っていきま
す。
普及と理解の増進、教育界との連携による人材の育成、さ
JAMSTEC が社会貢献に取り組むに当たっての基本方針は、以下の通りです。
1.通常業務におけるアウトリーチ活動の重視
JAMSTEC では、中期計画の推進のため、より具体的なアクションプランを作成し、その中で各研究プログラムの推進や機構の管
理運営に関し、社会へのアウトリーチに向けた目標を示しています。
その実現に向けて、役職員が邁進することが、まず重要であると考えます。
2.社会貢献型事業の実施
次の 3 つの視点から社会貢献への取り組みを強化します。
(1)科学技術理解増進活動の充実
対話型重視のアウトリーチ活動(普及・啓発活動)を実施します。
海洋・地球科学技術の知識を体系的に提供できるよう努力します。
学校、水族館 ・ 科学館、地域等とのネットワークやボランティアの参加を得て、多様な年齢層 ・ 社会層における海洋 ・ 地球に関
する科学技術への関心・知る意欲を高めるための活動を進めます。
(2)人材の育成への寄与
将来この分野に進みたいと思う小・中・高校生が増えるよう、海洋・地球科学技術に接する機会を提供し、夢や期待を育むよう
努めます。
大学、産業界、自治体等との連携の下、若い世代の「伸びうる能力」を最大限引き出し、高い専門性を有する研究開発プロフェショ
ナルを育てます。
(3)成果の活用
研究成果の中で、追加的努力によってすぐに社会に役立ちそうなものは、社会貢献型事業として重点的に進めます。
成果が広く社会で活用されるよう、知的財産化します。
海溝型地震の即時検知・通報システム等、社会に直接役立つ新技術の開発を進めます。
新江ノ島水族館では、JAMSTEC の有人潜水調査船「し
んかい 2000」
(2004 年 3 月退役)が外部展示されています。
有人潜水調査船「しんかい 2000」は、人が乗船して深海
を調査するために作られた日本初の本格的な潜水船であり、
1981 年の運航開始から 2004 年の退役まで、世界各地の
海で 1,411 回の潜航を行い、深海調査を通して新たな海洋
科学技術の分野を拓くとともに、有人潜水調査船の建造・
運航技術を飛躍的に発展させました。「しんかい 2000」の
最も潜航回数の多かった相模湾に隣接する新江ノ島水族館
もたらした有意な科学的・技術的成果と将来に向けた海洋
科学技術の意義と役割について理解を深めることを目的に、
毎年開催されている「しんかい 2000」公開整備などのイ
ベントへの協力を行っています。
2014 年 3 月までに 4 回行われた整備イベントでは、「し
んかい 2000」の運航に携わっていたかつての「しんか
い 2000」運航チームによる船の構造についての説明、潜
航調査の体験談、機体外皮や覗き窓の取外し、取付け、ス
ラープガンなどの調査観測機器(ペイロード)の取付けや
CTFM(前方監視)ソーナーの作動実演などを行い好評を
博しました。
にて 2012 年 7 月に「しんかい 2000」の常設展示コーナー
「深海Ⅱ~しんかい 2000 ~」がオープンしました。同船が
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 63
社会的取組み
(2)社会貢献活動の紹介
<実施概要>
●開催場所
新江ノ島水族館(神奈川県藤沢市片瀬海岸 2-19-1)
●開催日時
2014 年 7 月 6 日(日)14 時 00 分~ 15 時 30 分
2014 年 12 月 28 日(日)14 時 00 分~ 15 時 30 分
元「しんかい 2000」運航チーム
取り付け作業実演風景
JAMSTEC
社会的取組み
TRIVIA
14.JAMSTEC カレンダー
JAMSTEC では毎年、研究活動や深海生物の写真で構成した JAMSTEC カレンダーを販売しています。JAMSTEC
各拠点のグッズ販売所及びホームページにて購入することが出来ます。
2015 年の JAMSTEC カレンダーでは、
25 周年を迎える「しんかい 6500」特集として、
様々な場面で撮影された「し
んかい 6500」の選りすぐりの画像を集めました。※ 2015 年版の販売は終了いたしました。
64 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
4.国際協力・外部機関との連携
(1)国際連携とプロジェクトの推進
JAMSTEC では、海洋科学技術の中核機関として国際協
(2)共同研究及び機関連携による研究協力
JAMSTEC では、研究開発によるイノベーションの創出、
力を推進し、JAMSTEC 及び我が国の国際的プレゼンスの
社会への成果還元を図るため、国内外の大学、企業、研究
向上を図り、また地球規模課題の解決に貢献するため、次
機関等と共同研究及び機関連携等の協力関係を構築してい
の事項を実施しています。
ます。2014 年度については、共同研究契約としては国内
①国連機関・国際条約の対応、及び海外研究機関との連携等
93 件、海外 45 件、機関間協定としては国内 18 件、海外
○政府間海洋学委員会(IOC)、国際科学会議(ICSU)、全
球地球観測システム(GEOSS)等への貢献
○国 連 海 洋 法 条 約(UNCLOS)、 気 候 変 動 枠 組 条 約
(UNFCCC)、生物多様性条約(CBD)等への適切な対応
○海外研究機関との研究開発協力及び交流の促進
○機構の国際化促進
②国際深海科学掘削計画(IODP)の推進
○国 際深海科学掘削計画(IODP)を 推進する地球深部
探査船「ちきゅう」の運用
○「ちきゅう」乗船研究者に対する科学的、技術的支援
○掘 削コア試料の保管・管理・提供及び取得したデータ
の円滑な提供
○日本地球掘削科学コンソーシアム(J-DESC)を通じた
研究者間コミュニケーションの促進
③地球規模課題への対応
○気 候変動、物質循環、生物多様性等の地球規模課題へ
23 件について契約又は協定を結びました。また、企業ニー
ズとのマッチングを促進し、民間企業等との新たな連携関
係及び共同研究を模索するため、外部機関との意見交換会
を 32 件実施しました。
国内機関との共同研究契約締結数の推移と相手方の内訳
名称
共同研究契約件数(新規課題)
相手方内訳数(新規相手方)
2012 年度 2013 年度 2014 年度
89(36) 98(27) 93(30)
103(43)104(32)109(38)
大学、大学共同利用機関法人 45(19) 48(14) 58(20)
国、自治体、独立行政法人
33(14) 35(11) 27( 8)
民間、財団法人等
25(10) 21( 7) 24(10)
注 1:( )内は新規課題数又は新規相手方の数
注 2:相手方が複数にまたがる共同研究もあるため、表の合計は本文と一致
しない場合があります。
の貢献
国際連携とプロジェクトの推進に係る 2014 年度の主な実績
第 47 回 IOC 執行理事会及び国家管轄権外域の海洋生物多様性の保全と利用(BBNJ)に関する国連非公式作業部会に出
席しました。また、IOC 協力推進委員会及び国内専門部会を開催し、広く専門家による意見交換を実施しました。他にも、
地球観測に関する政府間会合(GEO)ワークプランシンポジウムに出席し、観測や観測データ共有の進捗及び次期 GEO
のあり方を議論しました。
海外研究機関
との連携
ブラジル科学技術イノベーション省、インド地球科学省それぞれと、新たに海洋分野における研究協力に関する意図表明
文書を締結しました。
また、オーストラリア地球科学研究所(GA)、インド国立海洋研究所(NIO)、ベトナム地質・鉱物資源研究所(VIGMR)、
ベトナム海洋天然資源・環境調査センター(MGMC)及び ANZIC(豪州、ニュージーランド IODP コンソーシアム)を
含む計6機関・1コンソーシアムと覚書を新規に締結し、JAMSTEC の国際化をさらに進めました。
国際深海科学
掘削計画
(IODP)の推進
アメリカ地球物理連合大会(AGU)で、IODP と国際陸上科学掘削計画(ICDP)の最新情報の周知を行うことを目的として、
欧米の掘削船運航機関及び陸上掘削プログラムと共同で Town Hall Meeting を開催しました。米国国立科学財団(NSF)
を始め、各加盟国からも科学掘削プロジェクトの幅広い関係者の参加があり、会場では最新情報を提供し、科学掘削につ
いて様々な交流・議論が活発に行われました。
地球規模課題
への対応
生物多様性及び生態系サービスに関する政府間プラットフォーム(IPBES)第1回総会が開催され、アジア太平洋地域の
パネルメンバーとして JAMSTEC の理事が選任されました。
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 65
社会的取組み
国際機関・
国際条約関連
5.表彰・顕彰
JAMSTEC に所属する職員が次のとおり外部から表彰されました。なお、2014 年度発表分を掲載しています。詳細につき
ましては、ホームページで掲載しておりますのでご覧下さい。
http://www.jamstec.go.jp/j/jamstec_news/award/
褒賞の名称
2013 年度日本地震学会若手学術奨励賞
平成 25 年度岩の力学連合会賞 ( 論文賞 )
第 43 回日本産業技術大賞・審査委員会特別賞
2014 年度日本地球惑星科学連合フェロー
2014 年度日本地球惑星科学連合フェロー
平成 26 年度情報通信研究機構部内表彰 優秀賞 ( 団体 )
第 9 回 IOC/WESTPAC 国際科学シンポジウム
若手研究者賞(口頭発表部門)
2014 年度日本気象学会賞受賞
2014 年度日本気象学会藤原賞受賞
第 19 回計算工学講演会グラフィックスアワード特別賞
第 19 回計算工学講演会グラフィックスアワード特別賞
TMS joint Foraminifera and Nannofossil Spring Meeting 2014
Presentation Awards
NIMS CONFERENCE 2014 最優秀ポスター賞
第 7 回 海洋立国推進功労者表彰
「7th International Scientific Conference on the Global
Water and Energy Cycle」 若手研究者賞受賞
米国地球物理学連合(American Geophysical Union; AGU)
2014 年のフェローに選出
平成 25 年度特別研究員等審査会専門委員(書面担当)表彰
2014 年度日本気象学会正野賞
第 12 回産学官連携功労者表彰 内閣総理大臣賞
日本第四紀学会若手発表賞
ION GNSS+2014 Best Presentation Awards
水文・水資源学会論文賞
2014 年度色材研究発表会 優秀ポスター賞
社会的取組み
日本生気象学会「第 53 回日本生気象学会大会若手・学生発表コン
テスト」優秀賞
日本大気化学会奨励賞
第 15 回極限環境生物学会年会 ポスター賞
第 30 回素形材産業技術表彰 奨励賞
第 30 回素形材産業技術表彰 第 3 回素形材連携経営賞「中小企業
庁長官賞」
Prince Albert I Medal
日本気象学会 SORA 論文賞
2014 年 SOLA 論文賞
2014 年度日本地震学会学生優秀発表賞
第 17 回水産海洋学会論文賞
日本水路協会水路技術奨励賞
日本機械学会奨励賞(研究)
平成 26 年度日本地震学会論文賞
the 2014 Editors’Citation for Excellence in Refereeing for
Journal of Geophysical Research Oceans.
東レ理科教育賞奨励作
2015 年度 日本海洋学会日高論文賞
日本海洋学会 奨励論文賞
可視化情報学会平成 25 年度学会賞「映像賞」
66 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
受賞者(受賞時の役職・所属を記載)
野田博之研究員(数理科学・先端技術研究分野)
林為人グループリーダー(高知コア研究所)
「深海探査機『江戸っ子 1 号』プロジェクト」(海洋工学センター)
山形俊男ラボ所長(アプリケーションラボ)
池田元美嘱託(アプリケーションラボ)
松浦正己(前部長),吉田弘部長,石橋正二郎グループリーダー代理,
福田達也技術主任,菅澤誠技術主任,大田豊技術主事,
土居真知子事務スタッフ(海洋工学センター)
中嶋亮太ポストドクトラル研究員(海洋生物多様性研究分野)
阿部彩子招聘主任研究員(統合的気候変動予測研究分野)
時岡達志特任上席研究員(統合的気候変動予測研究分野)
阪口秀分野長(数理科学・先端技術研究分野)
西浦泰介技術研究員(数理科学・先端技術研究分野)
豊福高志主任研究員(海洋生物多様性研究分野)
木下圭剛ポストドクトラル研究員
(海洋生命理工学研究開発センター)
「深海探査機『江戸っ子 1 号』プロジェクト」(海洋工学センター)
山崎大研究員(統合的気候変動予測研究分野)
小平秀一研究開発センター長
(地震津波海域観測研究開発センター)
石川剛志グループリーダー(高知コア研究所)
松井仁志研究員(地球表層物質循環研究分野)
「深海探査機『江戸っ子 1 号』プロジェクト」(海洋工学センター)
長島佳菜技術研究員(地球環境観測研究開発センター)
藤田実季子技術研究員(シームレス環境予測研究分野)
山崎大研究員(統合的気候変動予測研究分野)
木下圭剛ポストドクトラル研究員
(海洋生命理工学研究開発センター)
井上智晴ポストドクトラル研究員(地球表層物質循環研究分野)
松井仁志研究員(地球表層物質循環研究分野)
嶋根康弘技術副主任(海洋生命理工学研究開発センター)
渡健介技術副主任(海洋工学センター)
「深海探査機『江戸っ子 1 号』プロジェクト」(海洋工学センター)
山形俊男ラボ所長(アプリケーションラボ)
長谷川拓也主任研究員(地球環境観測研究開発センター)
美山透主任研究員(アプリケーションラボ)
中尾篤史研究生(地球内部物質循環研究分野)
西川悠特任技術研究員,五十嵐弘道技術副主任,
石川洋一グループリーダー
蒲地政文招聘上席研究員(地球情報基盤センター)
小林大洋主任技術研究員(地球環境観測研究開発センター)
松田景吾研究員(地球情報基盤センター)
有吉慶介技術研究員(地震津波海域観測研究開発センター)
相木秀則主任研究員(アプリケーションラボ)
桑野修研究員(数理科学・先端技術研究分野)
小林大洋主任技術研究員(地球環境観測研究開発センター)
谷本陽一招聘上席研究員(アプリケーションラボ)
吉田晶樹主任研究員(地球深部ダイナミクス研究分野)
Ⅵ.コミュニケーション活動
JAMSTEC のイベント
JAMSTEC
では年間を
通 じ、 各 研
究所の施設
一般公開や、
研究船の一
般公開、各種セミナーなどを開催しており、体験乗船、セミナー、ラ
ボツアーなど楽しい企画をあわせて実施しています。
2015 年度のイベントについては JAMSTEC のホームページで逐次
お知らせしていますので、皆様のお越しを心からお待ちしております。
http://www.jamstec.go.jp/j/pr/event/index.html
< 2014 年>
2014 年度に実施した主なイベント
● 4 月26 ~ 27 日…… 「しんかい 6500」実機がやってくる!~ニコニコ超会議 3 超深海ブース~
● 5 月1 ~ 5 日… …… 初島ところてん祭り特別イベント【初島海洋資料館】
● 5 月 10 日………… 施設一般公開【横須賀本部】
● 6 月 7 日………… 「よこすか」「うらしま」船舶一般公開【函館港(北海道函館市)】
● 7 月 20 日………… 施設一般公開【むつ研究所】
● 7 月 20 日………… 「かいれい」船舶一般公開【舞鶴港(京都府舞鶴市)】
● 8 月1, 8, 15 日… … 夏休み! JAMSTEC 個人見学ツアー【横須賀本部】
● 8 月6, 7 日………… 夏休み科学実験教室【横浜研究所】
● 9 月 13 日………… 「新青丸」記念講演・船舶一般公開【大槌港(岩手県上閉伊郡大槌町)】
● 10 月11 日………… 施設一般公開【横浜研究所】
● 11 月 3 日………… 施設一般公開【高知コア研究所】
● 11 月23 日………… 施設一般公開【国際海洋環境情報センター】
● 12 月 3 日………… 第 11 回 地球環境シリーズ講演会「熱帯気象理解の鍵 -マッデン・ジュリアン振動-」
【ヤクルトホール(東京都港区)】
< 2015 年>
● 2 月 28 日………… 第 10 回海と地球の研究所セミナー「しんかい 6500」完成 25 周年
「夢を!深海へ!!~ To the deep sea with our dream !~」【神戸海洋博物館(兵庫県神戸市)】
● 3 月 4 日………… 平成 26 年度海洋研究開発機構研究報告会「JAMSTEC2015」【東京国際フォーラム(東京都千代田区)】
3 月 19, 20 日… … 研究船を利用した研究成果発表会「ブルーアース 2015」【東京海洋大学 品川キャンパス(東京都港区)】
JAMSTEC
TRIVIA
15.海と地球の情報誌 Blue Earth
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 67
コミュニケーション活動
海洋地球科学に関する情報誌です。最近
の研究成果や技術開発などを分かりやすく紹
介しています。最近のトピックスは「海洋生
物の生存戦略に学べ!持続可能社会に向けた
「飛躍知」の創造へ」や「進化する海洋・深
海探査機・調査研究船の最先端に迫る」です。
こちらの冊子は定期購読することも可能で
す。詳細は、下記 URL をご参照ください。
http://www.jamstec.go.jp/j/pr/publication/subscription.html
横浜研究所 地球情報館は毎月第 3 土曜日も開館しています
横浜研究所の地球情報館は毎月第 3 土曜日も開館し、1 階映像展示室、2
階ギャラリー、図書館などをご利用いただけるほか、公開セミナーや地球シ
ミ ュ レ ー タ の 見 学 ツ ア ー な ど の イ ベ ン ト も 開 催 し て い ま す。 ま た、
JAMSTEC オリジナルグッズ・刊行物も販売していますので、ぜひお立ち
寄りください。
イベントの内容やスケジュールについては
http://www.jamstec.go.jp/j/pr/esm_sat_open/ をご覧ください。
2014 年度に行った地球情報館公開セミナーのテーマは以下のとおりです。
演 題
講演者
(所属・役職は講演時のものを記載しています)
ブロッキングと異常気象
山崎 哲
アプリケーションラボ
海洋コアの科学
阿波根 直一
高知コア研究所 科学支援グループ
カイメン四方山話 ―生態と進化のふしぎ―
椿 玲未
海洋生命工学研究開発センター
サンゴ礁と粘液の話
中嶋 亮太
海洋生物多様性研究分野
地球深部の動き ~マントルとコアの対流~
柳澤 孝寿
地球深部ダイナミクス研究分野
地球を食べる生物、地球をつかうわれわれ
熊谷 英憲
海底資源研究開発センター
「ちきゅう」オタク養成講座
~あなたのまだ知らない「ちきゅう」を教えます~
倉本 真一
地球深部探査センター
大陸河川の科学 ~大気・陸面・海洋をつなぐ流れ~
山崎 大
統合的気候変動予測研究分野
北極海の環境変化 ~観測研究から分かってきたこと~
西野 茂人
地球環境観測研究開発センター
繰り返し地震活動から解き明かす、地震発生 パターンの特徴
有吉 慶介
地震津波海域観測研究開発センター
JAMSTEC Library Communication
地球情報館公開セミナーが開催される第 3 土曜日に
合 わ せ て、 図 書 館 よ り ニ ュ ー ス レ タ ー「JAMSTEC
Library Communication」を発行しています。各回の
コミュニケーション活動
公開セミナー講師が推薦する文献や関連する一般書・
児童書などを紹介し、2015 年からホームページ上で
閲覧が可能となりましたので、ぜひご覧ください。 http://www.jamstec.go.jp/j/pr/seminar/
また、横浜研究所の図書館は、海洋及び地球科学に
関する児童書から専門書までを幅広く収集し、一般に
公開しています。皆様のご来館をお待ちしております。
68 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
安全・環境報告書の評価
第三者による検証
環境報告ガイドライン2012年版との対照表
環境報告の記載事項
2015 記載頁
環境報告の基本的事項
記載がない場合の理由
1.報告にあたっての基本的要件
(1)対象組織の範囲・対象期間
2、3
(2)対象範囲の捕捉率と対象期間の差異
3
(3)報告方針
2、3
(4)公表媒体の方針等
2、3
2.経営責任者の緒言
1
3.環境報告の概要
(1)環境配慮経営等の概要
14 ~ 28
(2)KPIの時系列一覧
45 ~ 48
(3)個別の環境課題に関する対応総括
44、49
4.マテリアルバランス
44
環境マネジメント等の環境配慮経営に関する状況を表す情報・指標
1.環境配慮の方針、ビジョン及び事業戦略等
(1)環境配慮の方針
29
(2)重要な課題、ビジョン及び事業戦略等
30、31
2.組織体制及びガバナンスの状況
(1)環境配慮経営の組織体制等
29 ~ 33
(2)環境リスクマネジメント体制
33、59
(3)環境に関する規制等の遵守状況
59、60
3.ステークホルダーへの対応の状況
(1)ステークホルダーヘの対応
11 ~ 13、63 ~ 68
(2)環境に関する社会貢献活動等
11 ~ 13、53 ~ 58
4.バリューチェーンにおける環境配慮の取組状況
(1)バリューチェーンにおける環境配慮の取組方針、戦略等
50 ~ 52
(2)グリーン購入・調達
50 ~ 52、60
(3)環境負荷低減に資する製品・サービス等
-
(4)環境関連の新技術・研究開発
55 ~ 58
(5)環境に配慮した輸送
-
(6)環境に配慮した資源・不動産開発/投資等
-
(7)環境に配慮した廃棄物処理/リサイクル
36 ~ 39
事業活動に伴う環境負荷及び環境配慮等の取組みに関する状況を表す情報・指標
1.資源エネルギーの投入状況
(1)総エネルギー投入量及びその低減対策
32、44 ~ 49、53
(2)総物質投入量及びその低減対策
36、38、44 ~ 49
(3)水資源投入量及びその低減対策
44、45、47、49
2.資源等の循環的利用の状況(事業エリア内)
53、54
3.生産物・環境負荷の産出・排出等の状況
(1)総製品生産量又は総商品販売量等
-
(2)温室効果ガスの排出量及びその低減対策
44 ~ 49
(3)総排水量及びその低減対策
44、45、47、49
(4)大気汚染、生活環境に係る負荷量及びその低減対策
44 ~ 49
(5)化学物質の排出量、移動量及びその低減対策
38、39、44
(6)廃棄物等総排出量、廃棄物最終処分量及びその低減対策
36、38、39、44、46 ~ 49
(7)有害物質等の漏出量及びその防止対策
36、37
4.生物多様性の保全と生物資源の持続可能な利用の状況
29、37
「環境配慮経営の経済・社会的側面に関する状況」を表す情報・指標
1.環境配慮経営の経済的側面に関する状況
(1)事業者における経済的側面の状況
27
(2)社会における経済的側面の状況
-
2.環境配慮経営の社会的側面に関する状況
59 ~ 66
1.後発事象等
(1)後発事象
(2)臨時的事象
2.環境情報の第三者審査等
非製造業
非製造業
非製造業
非製造業
非製造業
無し
無し
69、70
2015 年 9 月
・環境マネジメントシステム審査員 (CEAR)
・技術士(環境部門)
・環境カウンセラー(事業者部門)
JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015 69
安全・環境報告書の評価
国立研究開発法人 海洋研究開発機構(JAMSTEC)の安全・環境報告書の掲載内容の網羅性について独
立した外部の専門家から評価を受けるのは今回で 3 回目となりましたが、継続して報告書の信頼性向上に
努力されていることを確認いたしました。
今年度は、安全面での取り組みの掲載が充実されております。特に、安全パトロールの実施、ヒヤリハッ
トご意見箱の設置による情報の共有化、また、実験従事者に対するバイオ関連、化学、放射線など
JAMSTEC の業務特性を考慮した重要な業務の安全教育など事故の未然防止対策の推進を高く評価します。
今後は、この報告書が幅広く、より多くのステークホルダーの皆さんに開示・伝達される工夫を期待い
たします。
JAMSTEC SAFETY&ECO-REPORT 2015 によせて
第 三者 意 見
2015 年9月
日本海洋事業株式会社(左から) 安全技術室
課長 水井 吉之 氏
室長 相原 正則 氏
専門役 赤間 英之 氏
毎年「環境報告書」を作成し、事業活動における
間中の船内生活も環境負荷の軽減に努めながら、快
環境負荷を公表されていることは大切なことであ
適に過ごされていると想像出来ます。
り、多くの方々にその活動を理解していただける報
安全衛生及び環境マネジメントシステムは、上手
告内容と感じています。一般の方々にはなかなか理
にシステムを運用させなければならず、組織でのシ
解しづらいと思われる調査内容、調査機器、調査船
ステム管理体制をしっかりと固めることが大切と感
舶に関しても、写真・絵等を用いて、理解しやすい
じています。安全・環境会議として、理事長を議長
言葉で丁寧に説明され非常に分かりやすい報告と思
とした組織体制が構築されており、経営責任者の関
います。
与が正しくなされている組織体制であることが分か
東北海洋生態系調査研究船「新青丸」が特集とし
ります。平成 27 年度の安全衛生・環境配慮目標が
て 掲 載 さ れ て い ま す。 こ の 船 舶 の 建 造 目 的 は、
達成され、正しく検証評価されることを念願してお
2011 年に発生した東日本大震災後の東北の豊かな
ります。目標達成には機構職員皆さまの意識・動機
海の復興を図ることであり、海洋調査機関である国
付けが不可欠であり、ビーチクリーン、エコキャッ
立研究開発法人海洋研究開発機構の意思を、確かな
プの収集、使用されていない電気製品の電源 OFF、
ものへとさせたのではないかと感じ拝読させていた
これらの地道な活動が意識付けに大切ではないかと
だきました。
「新青丸」
の最大特徴である、
ダイナミッ
感じました。出来ることから始め、守らなければい
クポジショニングシステムの機能がよく理解出来る
けない規則を守り、限られた資源を有効に活用させ、
内容で、広大な海洋で数センチ単位に行動が出来る
安全を守り環境負荷を低減させる仕組みが益々発展
このシステムは、これまでの調査船舶とは異なるき
することを望んでおります。
め細かな海洋調査が可能となり、国民が期待するで
今後も地球温暖化による異常気象の発生、大地震・
あろう、海洋環境観測、海洋地底調査、海洋気象観
大災害の発生が懸念されています。最先端の海洋調
測など多方面の調査が、より一層確実なものになっ
査を行い、データを蓄積・解析し、正しく国民へ伝
たのではないかと感じます。
「新青丸」はプロペラ
えることが求められると考えています。今後も環境
を電動機により駆動する電気推進が採用されていま
負荷の低減に努め、弊社が運航を受託している船舶
すが、元となる発電原動機の性能が環境負荷低減に
を含め、すべての研究船、探査機の安全運航と研究
対応された機器であり、また、照明も消費電力の少
成果の活用を期待しております。
安全・環境報告書の評価
ない LED タイプが採用されています。乗船研究者・
乗組員にもその環境対応への意識が伝わり、調査期
70 JAMSTEC SAFETY & ECO-REPORT 2015
●
編集後記
今年で 10 回目の発行となる「環境報告書」は、
「安全・環境報告書」と名称を変更いたしました。
これまでの「環境報告書」でも、HSE(Health, Safety and Environment:労働衛生・安全・環境)
にかかわるリスク管理・マネジメントシステムは、適切な事業活動の継続における重要な要素であ
ると考え、掲載をしていたところですが、巻頭の“理事長ごあいさつ”で触れましたとおり、昨年
発生した電化製品の漏電等を起因とした小火(ぼや)事象を契機に、JAMSTEC にとって都合の良
いことだけを公表するのではなく、本報告書のような形で自らの活動を見つめ直し、より安全で環
境に配慮した事業活動を推進するため、改善を続けたいと考えております。
今回の特集では、東北海洋生態系調査研究船「新青丸」をご紹介させていただきました。新船が
竣工しますと横須賀本部岸壁への帰港にあわせて、職員向けにも見学会が開催されます。竣工した
ての船は内側も外側も本当にきれいで、思わず靴を履いたまま乗船して良いのかと思うぐらいです。
2016 年 4 月には本年 6 月に佳子内親王殿下の御臨席を賜り、命名・進水式が執り行われた“海
底広域研究船「かいめい」
“の試験航海がスタートする予定です。
今後も船舶のみならず各研究拠点において、施設一般公開や各種環境に関連した講演の開催を予
定しておりますので、お近くにお越しの際は是非お立ち寄りください。
本報告書の定期的な発行を通じて、JAMSTEC における安全及び環境等に関する取組みを定期的
に見直し、公表するとともに、多くの皆さまとのコミュニケーションツールとしてご利用いただけ
るような誌面づくりを心がけて編集いたしますので、本報告書に関して、どのような事でも構いま
せんのでご意見やご感想をお知らせいただければ幸いです。
最後になりましたが、本報告書の作成に当たりましてご協力を賜りました関係各位に、この場を
お借りして厚く御礼を申し上げます。
2015 年 9 月 安全・環境報告書編集担当
本報告書に関するご意見・ご感想をお寄せください
本報告書に関するご意見をホームページ内にて承っております。
次回作成の参考としたく、率直なご意見・ご感想を頂戴できましたら幸いです。
国立研究開発法人海洋研究開発機構
公式ホームページ URL: http://www.jamstec.go.jp/
安全・環境報告書掲載ページ URL:
http://www.jamstec.go.jp/j/about/environmental/report.html お問合せ先
〒 237-0061 神奈川県横須賀市夏島町 2 番地 15
国立研究開発法人海洋研究開発機構 安全・環境管理室
電話 046-866-3811(代表)、ファックス 046-867-9105
E-Mail:[email protected]
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