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派遣労働者の権利向上へ向けての要請書

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派遣労働者の権利向上へ向けての要請書
2006 年 3 月 1 日
社団法人日本人材派遣協会
会
長
篠 原
欣 子
様
特定非営利活動法人派遣労働ネットワーク
理 事 長
中 野
麻 美
全国コミュニティ・ユニオン連合会
会
長
鴨
桃
代
派遣労働者の権利向上へ向けての要請書
時下、益々ご清栄のこととお喜び申し上げます。
派遣労働者の権利向上へ向けての貴協会の日頃の取り組みに敬意を表します。
さて、この 2 月に全国ユニオンが実施した「非正規労働者ホットライン」には、派遣労
働者をはじめ、請負、パートなどで働く労働者から、3 日間で 307 件の相談が寄せられま
した(別紙「非正規労働者ホットライン報告」参照)。
今回のホットラインは、「格差」を訴える相談が多く寄せられたのが大きな特徴でした。
金融関係で働く派遣労働者(30 代・女性)は「正社員の1/3の賃金で正社員以上の仕事
をさせられる」と訴えました。
「格差」拡大の背景で、派遣労働者の平均時給(全国平均)は、1704 円(1994 年)、1660
円(1998 年)、1465 円(2001 年)、1430 円(2004 年)、1309 円(2006 年中間報告)と低下
し続けています(別紙「派遣スタッフアンケート 2006 中間報告」参照)。
一方、雇用の不安定化も深刻です。ホットラインには「細切れ契約」による被害の相談
が多数寄せられました。
電話受信業務を行う派遣労働者(女性)からは「3 ヶ月更新で勤続 1 年。休憩が取れずト
イレにもいけないなど待遇がひどいので派遣会社に苦情を言ったら『次回更新をしない』
と言われた」という相談が寄せられ、また、営業を行う派遣労働者(41 歳・男性)からは「同
じ派遣先で 4 年働いた。1 年契約を 2 回、6 ヶ月契約を 3 回、3 ヶ月契約を 4 回更新してき
たが、契約満了で解雇された」との相談が寄せられました。
「格差」、賃金水準の低下、
「細切れ契約」による雇用の不安定化を背景に、
「派遣」とい
う働き方を必ずしも望まず、「正社員」など安定した働き方を望む労働者が増えています。
ホットラインには、正社員希望の派遣労働者(32 歳・女性・勤続 1 年半)から「契約内容は
『OA機器操作』だが、実際は庶務やアシスタント業務が主。年齢的にも普通に正社員を
探すには厳しいため、直接雇用制度を利用し現在の派遣先に正社員として雇用してもらい
たい」という相談や、ある母親から「39 歳の息子は正社員になりたいが、ハローワークに
行っても派遣の仕事ばかり」という相談が寄せられました。
「派遣スタッフアンケート 2006 中間報告」においても 58%の派遣労働者が「正社員の
就職を希望」しています。
貴協会が『派遣三悪』と位置づけて、その撲滅にご尽力いただいている「契約中途解除」
-1-
「事前面接」「プライバシー侵害」も、残念ながら後を絶ちません。
以上のような実態を踏まえ、下記のとおり要請いたします。貴協会に置かれましては、
労働者派遣業界全体の改善あるいは制度・慣行等の改善により、従来にも増して派遣労働
者の権利向上を図られますようお願い申し上げます。
記
第1
派遣業務と期間制限(直接雇用義務)について
1、 期間制限の適用を逃れることを目的に、実態が「自由化業務」あるいは「複合業
務」であるにもかかわらず「政令指定業務」を偽装することを排除すること
2、 いわゆる一般事務や庶務などの業務は、政令指定業務(「事務機器操作」や「フ
ァイリング」など)に該当しないことを周知徹底すること
3、 「複合業務」について期間制限が適用されることを周知徹底すること
現状と問題点
「非正規労働者ホットライン」では、庶務や雑用、電話の取り次ぎなどが業務のほとん
どを占めるにもかかわらず、契約業務は「OA機器操作」とされている例、電話による督
促業務を「テレマーケティング」と偽装する例など、実際には期間制限(原則 1 年)のか
かる「自由化業務」または「複合業務」について、契約書には「政令指定業務」を記載し、
期間制限を逃れている実態が浮き彫りになりました。
特に女性においては、日常業務の中に電話の取り次ぎ業務が占める割合は圧倒的に高く、
「OA機器操作」や「ファイリング」とはとても言えない実態が数多く見受けられます。
「営業アシスタント」業務を「OA機器操作」と偽装していた例において、期間制限違
反につき直接雇用の指導を受けたある派遣先企業は「従来、漫然と派遣労働者を活用して
きたが、労働局の指導を受けたのを機に、今後は派遣法の主旨に則って、派遣は短期的な
業務のみとし、長期的に継続する業務は直接雇用で対応するよう方針を変更する」と話し、
1 年を超えて勤務していた営業アシスタントの派遣スタッフ 19 名全員に「雇用申し込み」
を行い、うち 16 名が採用されました。
そもそも派遣労働の期間制限は、正社員を派遣労働者に置き換えるなどの「常用代替」
を防止するという観点から定められているものであり、派遣先が予定している業務につい
ては、派遣会社が正確に把握し、実態に即した契約業務を明記することが必要です。
従来の回答
05 回答-
自由化業務(一般業務)を政令指定業務(26 業務)と偽装することのないよう、
また、期間制限のかからない「複合業務」は付随業務の割合が 1 割以下であるこ
となど、ルールの周知徹底に努めたい。
派遣契約を締結する前に、本当に政令指定業務に該当するのか、派遣先に精査
するようお願いしています。
派遣元としてもきちんと判断するため、定期的にフォローアップして、26 業務
-2-
以外がないかチェックを継続するよう努めています。
今後の課題としては、付随業務が 1~2 割程度の業務については柔軟に対応する
などの議論が必要と考えます。
第2
派遣先での直接雇用と「紹介予定派遣」について
1、 通常派遣における派遣先の直接採用の妨害(さかのぼって「紹介予定派遣」、引き
上げ予告など)を排除すること
2、 派遣先と派遣労働者が直接雇用契約を締結することを希望する場合には、通常派遣
においても直接雇用に協力すること
3、 形式だけの「紹介予定派遣」を排除すること
4、 「紹介予定派遣」における採用内定取り消しトラブルをなくすための方策を講じる
こと
5、 「紹介予定派遣」を正社員採用目的に限定すること
6、 「紹介予定派遣」の特定行為において発生する受け入れ差別を排除すること
7、 「紹介予定派遣」における正社員登用率を調査・開示すること
現状と問題点
通常派遣において、派遣元との契約終了後に、派遣先と派遣労働者が直接の雇用契約を
締結しようとする場合に、派遣元が「困る」
「契約終了後、紹介予定派遣として一定期間派
遣した後でないと移籍できない」「さかのぼって紹介予定派遣の契約を結んでもらう」「今
派遣している派遣労働者を全員引き上げる」などの妨害をしてくるという相談が、派遣労
働者や派遣先から寄せられています。
派遣先が「紹介予定派遣」との十分な認識を持っていないのに、派遣労働者には「紹介
予定派遣である」と説明し、派遣開始後にトラブルに発展するケースが見受けられます。
「紹介予定派遣」において、
「派遣先から採用内定を取り消された」という相談が多く、
また、採用後に試用期間を設ける、有期雇用契約とするなど、
「紹介予定派遣」の趣旨に反
する実態も寄せられています。
従来の回答
05 回答-
派遣先の直接雇用への橋渡しは、派遣事業の大きな役割のひとつ。正社員への
橋渡しについて積極的に考えていきたい。
ただし、有期雇用など直接雇用された際の労働条件に注意が必要。直接雇用へ
の妨害があれば、業界として是正していきたい。
内定取り消しについては、協会としては聞いていないが、そのような事例があ
れば、そういうことのないよう努めたい。
紹介予定派遣による採用は、確かに常用であるに越したことはないが、有期雇
用でもよいから派遣先の直用になりたいという方もいます。
紹介予定派遣における事前面接については、差別が起きないようさらに周知し
ていきたい
-3-
第3
マージンについて
1、 賃金を削り取る不当に高額なマージンをなくすこと
2、 多重派遣による多重マージンを排除すること
3、 派遣料金の開示をルール化すること
現状と問題点
有料職業紹介事業と異なり、労働者派遣事業においては、法律上一切のマージン規制が
ないため、派遣会社が不当に高額なマージンを取っている例が見受けられます。
派遣先が派遣労働者の労働に報いるために派遣料金を上げたのに、派遣労働者の時給に
は反映されなかったという相談もありました。
また、多重派遣によって複数の会社にマージンを取られているという相談も後を絶ちま
せん。
派遣労働者がいくらの派遣料金に対していくらの賃金が支払われているのか納得して
働く環境を作るためにも、派遣料金の開示をルール化する必要があります。
第4
「事前面接」など特定行為禁止の徹底
1、以下を「事前面接」と定義し、差別の温床となっている「事前面接」を排除する
こと
-「事前打ち合わせ」「事前訪問」「職場見学」「業務確認」など名称を問わず、
また、自社内の競合であるか他社との競合であるかを問わず、派遣先が派遣労
働者を受け入れるか否かを判断する余地のある派遣先訪問
2、年齢制限を排除すること(求人誌など)
3、特定行為禁止を派遣先に周知徹底すること
現状と問題点
「何回も事前面接を受けているのに断られ続けている」「事前面接で結婚の予定や出産
の予定を聞かれた」
「事前面接で派遣先から『保育園の迎えがあると突発的な残業もできま
せんね』
『お子さんが熱を出たら休まなければなりませんね』などと言われ、断られた」な
どの相談が寄せられています。
「事前面接」などの特定行為は、1999 年の派遣法「改正」により禁止が明文化されまし
た。しかし、容姿・年齢・家族構成などによる差別の温床となっている「事前面接」、年齢
制限などの特定行為は、後を絶ちません。
派遣スタッフアンケートにおいても、現在の派遣先決定に際して 70%の派遣労働者が
「事前面接」を受け、被害を受けたとの声が数多く寄せられています。
なお、厚生労働省は「事前面接により採用決定がなされた場合には、派遣先と派遣労働
者との間に直接の雇用契約関係があるものと判断される場合が多い」との見解を示してい
ます。
-4-
従来の回答
03 回答-「事前面接」については、1 人の要請に 3 人も 5 人も面接させるなど、協会とし
て絶対に認められない。徹底して撲滅していきたい。
本人から希望しないのに、客先企業に採用権をゆだねるかのごとくやるのは良
くない。法律で完全に禁止されている。
04 回答-「事前面接」については、法は法なので、禁止という主旨をきちんと守っていき
ます。
「年齢制限」は、求人誌などではほとんどなくなっていると思います。ホーム
ページでも年齢制限は一切オミットしている。依然としてあるようであれば、き
ちんと対処していきたい。
05 回答-
特定行為として禁止されている「事前面接」については、派遣先の要請には応
じません。
若さや容姿などで人選を行う企業は時代錯誤であり、能力で判断すべきです。
「事前面接」のないよう派遣元を通じて指導していきたい。
「事前面接」を解禁するか否かについて、協会は、原則自由化すべきと考えて
います。適正な保護は必要であり、一定の条件の下で「事前面接」の解禁がなさ
れるべきと考えています。
しかし、
「事前面接」という言葉どおりのものの解禁を求めているわけではあり
ません。派遣元の存在価値がなくなるようなものは求めません。派遣先の意向を
加味して決定するというものを考えています。派遣元の決定権を派遣先に移すよ
うなことは全く考えていません。
「年齢制限」については、まさしく能力、経験、人柄を派遣するのであって、
年齢は無関係です。オーダーに際して年齢の希望があったときは、年齢制限を設
ける必要があるのかどうか、雇用主として判断していきたい。
第5
教育訓練制度について
1、 横断的な「教育訓練制度」を創設すること
現状と問題点
自社内での教育訓練の成果還元は、派遣会社間において横断的に労働力の移動がある労
働者派遣の実態においては期待できない場合があり、教育訓練の成果を労働者派遣業界全
体の利益として還元するには、「横断的な教育訓練制度」が不可欠です。
従来の回答
04 回答-
協会では、オフィススキル認定制度をやっているが、認定されたスキルが派遣
スタッフの賃金に跳ね返ってこないという問題がある。
企業が求めるスキルと認定したスキルにギャップがあり、なかなか根付かない。
しかし、技能・能力開発という看板を下ろすわけにいきませんから、何とか根付
かせていきたい
-5-
05 回答-
協会が掲げていける大きなテーマであり、調査検討していきたい。
派遣就労を通じてキャリアパスを描いていけるキャリアカード制度など、行政
と提携して議論を進めていきたい。
派遣スタッフのみならず、派遣元のレベルアップも必要。
キャリアカウンセリングについては、間もなく実行します。
第6
金融庁通達「派遣職員に係る管理態勢の強化について」
1、 同通達による派遣労働者の不利益(契約打ち切り、配置転換、不必要な管理強化
など)を排除すること
2、 事業主都合の休業については、賃金保障(民法 536 条)することをルール化す
ること
現状と問題点
金融庁通達(別紙参照)により、昨年末頃から、金融機関が派遣労働者に 5 日間の休業
を命じるなどの措置が取られています。
同通達により派遣労働者に不利益を及ぼさないよう、また、使用者の都合による休業に
ついては、賃金全額を保障するよう、ルール化する必要があります。
第7
賃金不払の撲滅
1、 労働時間の一部カットによる賃金不払を排除すること
現状と問題点
賃金支払期間の合計の労働時間について「30 分以上切り上げ・30 分未満切り捨て」と
いう措置をとることは認められていますが、日々の労働時間のカットは認められていませ
ん。
しかし、日々の「タイムシート」の記入に際して 15 分未満をカットして記入するとの
措置を取っている派遣会社が多く見受けられます。
第8
離職票について
1、 離職票の発行について「1ヶ月待機」を一律適用しないこと
2、 離職した派遣労働者が希望する場合には、すみやかに離職票を発行すること
3、 事業主都合の期間満了について「自己都合」取り扱いをしないこと
現状と問題点
派遣労働者がすみやかに離職票を発行することを希望しているにもかかわらず、離職後
1ヶ月間、離職票を発行しないとの措置により、多くの派遣労働者が失業しても雇用保険
給付を受けられないとの不利益を被っています。
-6-
厚生労働省も、離職した派遣労働者が速やかに離職票を発行することを希望しているの
に、一律に 1 ヶ月間離職票を発行しないとの措置は間違っていると話しています。
また、派遣労働者が更新を希望しているにもかかわらず、派遣先の意向により更新なし、
契約期間満了で離職した場合についても、離職後 1 ヶ月以内に、派遣労働者の希望に沿わ
ない派遣先を紹介し、それを断ると、離職理由を「自己都合」にされてしまう例が見受け
られます。
従来の回答
04 回答-
離職票の問題については、派遣スタッフが希望すればお出ししたい。ただし
我々としては、1ヶ月間よいお仕事があればオファーしたいということでいろい
ろと判断している会社もあると聞いています。必要があれば速やかにお出しする。
05 回答-
スタッフが直ちに発行することを希望した際にはすみやかに対応するよう周
知に努めたい。
第9
社会保険加入の徹底
1、 就労開始時点から社会保険に加入させることを徹底すること
現状と問題点
「長期の仕事」として派遣された派遣労働者が社会保険の加入を申し出た際、
「2 ヶ月経
たないと加入できない」として先送りし、しばらくしてから再度加入を申し出ると「さか
のぼって加入することになるが、労働者負担分を全額一括で払ってもらうので高額になる」
などとして社会保険加入を抑制するケースが見受けられます。
第 10
育児・介護休業について
1、 「長期」の派遣で、特別な事情がない限り更新を予定している派遣労働者につい
ては、指針に基づき、育児・介護休業を適用すること
現状と問題点
有期雇用であっても、特別な事情のない限り更新を予定し、実態として期間の定めのな
い雇用契約と判断される場合には、育児・介護休業の対象とする旨の指針が示されていま
す。
しかし、実質的に期間の定めのない雇用契約と解される長期の派遣労働者についても、
一律に「派遣労働者は育児・介護休業の対象とならない」との取り扱いにより、派遣労働
者が育児・介護休業を申し出ても拒否されたという相談が後を絶ちません。
また、妊娠を告げた途端に契約中途解除や更新拒絶により仕事を失ったという相談が相
変わらず寄せられています。
派遣という働き方では育児と仕事の両立ができないことから、出産を諦めている派遣労
働者も少なくありません。
-7-
交渉を重ねて、やっと派遣会社が育児休業を認めてくれても、保育園への入所や職場復
帰など、育児と仕事の両立にはさらなるハードルが待ち受けています。
乳幼児を抱える派遣労働者は、保育園への迎え時間が決まっていることから残業ができ
ませんが、ほとんどの派遣会社が「残業なしという条件だと紹介できる派遣先がない」と
話し、育児休業明けの復帰先を見つけられない実態にあります。
従来の回答
03 回答-「妊娠で切られる」ということではイメージが悪い。「派遣健保」としては、出
産手当金に加えて付加給付として 3 万円を出すなど応援している。
04 回答-
今までは、どちらかというと短期の就労ということで対応が不十分だった。法
案(育児・介護休業法改正案)に基づいてきっちりと対応していきたい。
05 回答-
ルールに定められたとおり、該当するスタッフに適用します。実態で判断しま
す。
第 11
偽装請負
1、製造業、建設業、ソフト開発業などに蔓延する「偽装請負」を排除すること
2、多重派遣に広がる「偽装請負」を排除すること
現状と問題点
製造業や多重派遣の隠れ蓑として横行する「偽装請負」で働く労働者から、残業手当不
払、有給休暇未付与、労働・社会保険未加入などの相談が寄せられています。
リストラ解雇後のポストに大量に労働者を送り込む「偽装請負」も横行しています。偽
装請負の拡大がリストラ解雇の促進につながっている面もあります。
また、偽装請負で働く労働者の多くが安全対策も講じられないまま、過酷で危険な業務
に就き、多くの労災事故が発生しています。
第 12
偽装雇用の撲滅
1、 雇用契約を「委託契約」や「請負契約」と偽装し、労働者を「個人事業主」と偽
装する、いわゆる「偽装雇用」を排除すること
現状と問題点
業務遂行に関して指揮命令を受け、労働時間を管理されている「労働者」であるにもか
かわらず、労働・社会保険、時間外割増賃金、年次有給休暇、解雇制限法理など労働者と
しての保護(労働基準法等)を適用しないために労働者を「個人事業主」と偽装し、雇用
契約を「業務委託契約」などと偽装する「偽装された雇用」(いわゆる「偽装雇用」)が拡
大しています。
偽装雇用により労働・社会保険を未加入としていた派遣会社が厚生労働省から厳しい指
導を受けるという事件もありました。
-8-
ホットラインにも、「会社の都合で一方的に労働者が『個人事業主』に切り替えられ、
雇用保険を打ち切られた」、ソフト開発などの労働者からは「残業代不払、有休もない、労
働・社会保険にも加入してくれない」などの相談が寄せられています。
従来の回答
04 回答-
偽装雇用による労働・社会保険未加入などとんでもない話。もしこういう事実
があれば、倫理問題小委員会を開いて説明を求めるという対応をしていきたい。
05 回答-
第 13
社会保険逃れなど言語道断であり撲滅しなければならない。
「細切れ契約」の撲滅
1、 長期の派遣を予定しているにもかかわらず短期契約(1~3 ヶ月など)を反復更
新する、いわゆる「細切れ契約」を排除すること
2、 業務の継続性や実態に即した雇用契約期間とすること
3、 派遣労働者が就く業務がどのくらいの期間継続する予定なのか、その期間を事前
に確認し、派遣労働者に告知すること
現状と問題点
「長期の仕事」と紹介されながら、契約期間は 1~3 ヶ月といった短期契約が繰り返し
更新される「細切れ契約」は、派遣労働者を雇用の調整弁として活用したいというニーズ
から拡大しています。実質的に期間の定めのない雇用契約と同質の状態に置かれながら、
「契約期間満了」の一言で解雇が行われている実態は、今回のホットラインでも浮き彫り
になりました。
派遣労働者は、「細切れ契約」によって、常に失業の不安にさらされています。
ホットラインの相談からも、「更新されないかもしれない」という不安から、不当な扱
いにも苦情さえ言えずに働いているという実態が浮き彫りになりました。
「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(告示)は、「有期労働契約を更
新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期
間をできる限り長くするよう努めなければならない」と定めていますが、派遣労働者の契
約期間はますます短期化し、「細切れ契約」が増加する傾向にあります。
従来の回答
03 回答-
長期の受注が見込まれるのにあえて切りやすくするということで「短期契約」
にするということについては見直していかなければならない。実態に合わせて契
約を結ぶべき。
04 回答-
派遣社員の意見を聴取しながら、できるだけ長期化していきたい。派遣先の受
け入れ期間が 3 年なら、できるだけ 3 年の派遣契約とあわせるのが望ましい。
05 回答-
合理的理由なく短期契約を反復更新するというのは好ましくない。派遣先には、
極力長い派遣契約をお願いしています。実情を把握した上で契約期間を決めてい
きたい。
-9-
第 14
「均等待遇」について
1、 同一の業務を行っている派遣先正社員との平等の待遇を確保すること
① 賃金(1 時間あたりの賃金、諸手当、一時金、退職金)
② 休暇・休業等の適用(例:年休、産前産後休暇、生理休暇、育児・介護休業、
慶弔休暇、休職など)
③ 時間外労働(派遣先の三六協定時間が短い場合にはそれを適用すること)
④ 福利厚生
⑤ 教育訓練
⑥ 通勤交通費
⑦ 安全衛生・労災補償
現状と問題点
派遣労働者が派遣先の正社員と同等あるいはより過酷な労働をしているケースは少な
くありません。にもかかわらず、賃金をはじめとする労働条件において、派遣労働者は派
遣先正社員を大きく下回っており、「格差」を訴える相談が多く寄せられています。
従来の回答
03 回答-
基本的な考え方に異論はない。しかし、どう実行するか、大きな障壁がある。
「教育訓練」については派遣先においても均等にやってもらわないといけない。
「福利厚生」
「教育訓練」
「安全衛生」については同じスタンスで闘っていきたい。
04 回答-
理想ではあると思いますし、それをめざしていきたいと思いますが、なかなか
一朝一夕にはいかない。3 年前にオランダの状況を見てきたが、業務別が横、技
能レベルが縦、どこの会社に行っても同じ賃金。社会全体がそういった賃金体系
が整っていくよう、日本経団連や連合と一緒にやっていきたい。
05 回答-
賃金を除いて、教育訓練、安全衛生、福利厚生など均衡が図られるべきです。
賃金については、派遣料金に基づくもの。進むべき方向として同一職種への均等
待遇を研究していきたいが、派遣会社だけでは解決できない。
第 15
最低時給 1780 円以上
1、 年収 300 万円を確保するため、最低時給 1780 円をルール化すること
現状と問題点
自立して生活していくために、せめて年収 300 万円を確保したい。しかし、派遣労働者
の時給水準は、冒頭のとおり下がり続け、年収においても 200 万円台前半で推移していま
す。
残業なしで年収 300 万円を確保するためには、時給 1780 円以上が必要です(時給 1780
円×1 日 7 時間×年間 240 日)。
正社員型の労働者が就業時間内に教育訓練を行っているのに比べ、派遣労働者は就業時
- 10 -
間外に、それも自費で教育訓練を行わざるを得ない厳しい状況にあること、通勤交通費も
賞与も退職金もなく、不公平に低い社会的保障(雇用保険の 1 ヶ月待機、育児休業給付・
傷病手当金の受給困難など)の中で働いていることを考慮すべきです。
従来の回答
03 回答-
時給 1465 円(派遣ネット 2001 年調査)というのは確かに低い。時給アップ
に取り組んでいきたい
04 回答-
少しでも高めの時給を設定していただけるよう交渉をしていきたい。
05 回答-
労働条件そのものについては、協会としては回答できないが、派遣スタッフの
方々の努力に報いるため、10 円でも高く提示できるよう努力していきたい。
第 16
常用代替・リストラ代替の防止
1、 リストラ、解雇後のポストへの派遣を行わないこと
現状と問題点
「常用代替防止」という労働者派遣制度の大原則に反して、常用代替が蔓延し、リスト
ラ・解雇後のポストへの派遣さえ行われています。
派遣労働者を「より安い労働力」「より雇用調整しやすい労働力」と位置づけて、正社
員から派遣労働者への置き換えを進めている派遣先企業も少なくありません。
ポストを奪われる労働者(正社員など)からそのポストに新たに就く派遣労働者への引
き継ぎや、自分のポストを奪う可能性のある派遣労働者への引き継ぎがスムーズに行われ
ず、いじめや嫌がらせの温床ともなっています。「パワーハラスメント」、いじめ、嫌がら
せ、それに伴うメンタルヘルスの相談も増加しています。
従来の回答
04 回答-
全くそのとおり。今度の法改正により、派遣先指針が改められて、その旨の規
定が設けられていますので、そういうところには派遣しないようにしたい。そん
なところに派遣すると派遣労働者が好ましくない環境におかれると思います。こ
の点について全くスタンスは一緒です。
労働争議が起きているからという情報があれば、十分注意するよう徹底する。
派遣先となり得る企業におけるリストラなどについて情報をいただければ、すぐ
対応(加盟各社へ通達)いたします。
05 回答-
リストラ後ポストへの派遣については、積極的な対応はしないが、派
遣先から要請があった場合には注意して対応します
- 11 -
第 17
派遣先紹介時の詳細情報明示制度の確立
1、 以下の 24 項目について、派遣元として事前に情報を把握し、派遣労働者に派遣
先を紹介するに際して、事前に情報を開示する制度を確立されたい。
―労働条件を明確にするために―
① 就業予定時間(変形労働時間やフレックスタイム制の適用を含む)
② 休日・休暇
③ 派遣料金と時給
④ 残業の有無と量
⑤ 就業場所(交通ルート、オフィスの配置等)
⑥ 業務の継続予定期間
⑦ 制服の有無
⑧ 福利厚生施設の有無と利用の可否(例:社員食堂、託児所、リフレッシュルー
ム、ロッカーの有無やオフィス内の飲食(弁当持込)の可否など)
⑨ 喫煙の取り扱い
⑩ その他、労働条件に関する事項
―業務遂行に関する不安をなくすために―
⑪ 業務内容の詳細
⑫ 貸与される備品(例:机、パソコンなど)
⑬ 就労開始時のガイダンス、顔合わせなどの有無
⑭ 引継ぎの有無と期間
⑮ ノルマの有無と内容
⑯ その他、業務遂行に関する事項
―職場への不安やいじめ、嫌がらせ等の不安をなくすために―
⑰ 派遣先の会社概要(従業員数など)
⑱ 配属部署の人員構成(雇用形態別、性別など)
⑲ 派遣先責任者の配置(同じ部署か、同じフロアかなど)
⑳ 派遣受け入れ理由(例:新規増員、派遣交代、社員から交代など)
21 派遣受け入れ実績
22 セクシュアルハラスメント防止対策、相談窓口の有無等
23 派遣先労働組合の有無
24 その他、職場環境に関する事項
現状と問題点
わずかな時間の訪問で職場の雰囲気や仕事の内容を把握できるはずもなく、違法な「事
前面接」でミスマッチを防ぐことはできません。むしろ、
「事前面接」は、派遣先が派遣労
働者を選別する場となっており、差別の温床となっていることは前述のとおりです。
ミスマッチを本当になくすためには、①派遣元がオーダーの内容や派遣先の状況を詳細
に把握し、②登録スタッフに把握した内容を明示し、③説明を受けた登録スタッフがその
紹介業務を受けるか否かを判断する-というシステムを確立する必要があります。
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従来の回答
03 回答- 24 項目は確かに全部大事。派遣元がすべてチェックできればすばらしい。派
遣労働者も安心して働ける。具体的に提案していただいているので、持ち帰って
ぜひ前向きに検討したい。おっしゃるとおり、詳細な情報を伝えていけば、スタ
ッフが判断できる
04 回答-
情報開示(24 項目)については、ほとんどの項目は派遣スタッフと話していく
中で開示しています。
05 回答- 24 項目については、一部を除いて基本的に説明しています。しかし、派遣料
金や継続予定期間、受け入れ理由は明示できない場合があります。
第 18
誓約強要、身元調査
1、 派遣先が派遣労働者に直接、誓約書や念書の提出を強要する等の行為を排除する
こと
2、 派遣受け入れに際して、派遣先に身元調査などを行わせないこと
現状と問題点
派遣先が派遣労働者に対して直接、誓約書や念書の提出を求めるケースが増加していま
す。機密情報の漏洩防止や個人情報保護を目的とするものであっても、労働者派遣制度の
形式に則って、①派遣元が派遣先に誓約する②派遣スタッフが雇用主である派遣元に誓約
する-という形式を取るべきです。
契約関係にない派遣先が派遣スタッフに対して直接、誓約書や念書を求めることは、労
働者派遣制度の趣旨に反するものであり、場合によっては、派遣先と派遣労働者との間の
契約関係を発生せしめるものと解されます。
また、派遣先が受け入れようとする派遣労働者の身元調査を行ったり、派遣元に身元調
査結果を報告するよう求めたりするケースが見受けられます。派遣法に定める特定行為禁
止や個人情報保護に反するものであり、業務と無関係な情報に基づく不当な差別にもつな
がり兼ねません。
従来の回答
05 回答-
誓約書は、派遣労働者から派遣元に出してもらい、本人の同意を得て、その写
しを派遣先に渡す-というのが原則。雇用関係がないのに誓約書を派遣先から求
められるのは問題。しかし、経産省や金融庁のガイドラインに苦慮しています。
厚労省も他の省庁に強く言ってほしい。派遣先による身元調査など言語道断です
第 19
通勤費非課税
1、 通勤費支給をルール化すること
2、 派遣先の協力・理解が得られないなどの事情により、通勤費の別途支給が困難な
場合には、賃金に通勤費が含まれていることを証明するなど、通勤費の非課税の
実現に協力すること
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現状と問題点
実費として通勤費がかかることは同じであるにもかかわらず、多くの派遣労働者の通勤
費が別立てで支払われていないために、通勤費相当額まで課税されているという実態は、
明らかに不公平です。
従来の回答
03 回答-
国税庁のガードは固い。時給と分離しないと非課税は難しい。この件は、懸案
事項として、協会としても引き続き国税庁に働きかけていきたい。
04 回答-
国税庁の壁が厚く、お役に立てず、残念。しかし、引き続き、この問題につい
ては、できるだけ協力していきたい。スタッフから通勤交通費証明書の要請があ
れば、できるだけ対応していきたい。引き続き、一緒に国税庁にも働きかけて、
もう一度仕切りなおしていきたい。
05 回答-
全く従来どおりのスタンスです。通勤交通費証明書については要望があれば発
行しています。行政対応については、知恵を絞っていきたい。
第 20
退職金共済制度
1、 横断的な退職金共済制度を創設すること
現状と問題点
派遣労働者の現状は、派遣先の「正社員」と同等あるいはそれ以上の業務をこなしなが
ら月例給与において著しく低い賃金を受けているケースが少なくないこと、夏季・年末の
一時金がないことから年収で比較するとさらに「格差」が広がること、さらに退職金制度
さえないことによる「格差」の拡大は計り知れないものがあります。
「派遣」という働き方を継続しつつも派遣会社を変更することもあり得る派遣労働者に
ついては、横断的な退職金制度を創設することが望まれます。
従来の回答
03 回答-
派遣健保組合で考えてみたい。スタッフからの要請があれば、スタッフからの
希望に応じて何らかの共済制度をやる用意はある。
04 回答-
むしろ、これについては、皆さんによい案があればいただきたい。今後の課題
としていきたい
05 回答-
協会としては難しい。各国の調査研究なども必要であり、引き続き検討してい
きたい。
非正規雇用、有期雇用全体に関わる福利厚生については、協会のみならず広く
検討していくことが必要。住宅ローンがなかなか組めないなどの問題もあり、非
正規雇用へのサポートを行政にも求めていきたい。
以上
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