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肥料制限苗に適する葉菜類

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肥料制限苗に適する葉菜類
研究成果紹介
肥 料 制 限 苗 に 適 す る 葉 菜 類
肥料制限苗とは
緩効性肥料を含む培地に播種したブロッコリー
(Brassica oleracea L.)のセル苗を、追肥せずに
灌水のみで慣行の2∼3倍の期間をかけて育苗管理
することで硬くしまった苗が得られます。育苗期
間中には、出蕾せず虫害発生が減少することや、
定植直後の土壌の乾燥に対し耐性を持つことが確
認されており、追肥をしていないという意味を込
め、肥料制限苗と呼んでいます。圃場への定植後
は初期生育が劣るものの正常に収穫できます。
そこで、ブロッコリー以外で同様の肥料制限を
行うことにより育苗時の虫害発生が減少し、かつ
出蕾が観察されない品目の検索を行いました。
調査した野菜品目
ブロッコリーと同じB. oleracea に属する野菜
としてカイラン、カリフラワー、キャベツ、ケー
ル(青汁用ケール)、ケール(コラード)および
コールラビを、 B. rapa としてチンゲンサイを、
アブラナ科以外の葉菜類としてホウレンソウ
(Spinacia oleracea)を供試しました。写真はコ
ールラビの肥料制限苗です。
コールラビ
肥料制限苗
慣行苗
写真 コールラビの慣行苗と肥料制限苗
育苗方法
灌水は発芽が揃うまでは頭上灌水、それ以降は
底面給水方式としました。肥料制限区は育苗期間
中追肥を行いませんでした(図)。比較対照とし
て育苗期間後半に適宜液肥を施与した区(以下、
慣行区)を設けました。育苗日数は肥料制限区は
56∼99日、慣行区は18∼30日としました。
育苗期間中の虫害発生程度、収穫量、長期間育
苗した際の出蕾の有無について調査しました。
虫害発生程度
カイラン、カリフラワー、キャベツ、ケール
(コラード)およびコールラビでは、肥料制限区
の虫害発生程度は慣行区と比較して減少しました
(表左囲み部分)
。
収穫量
ケール(青汁用ケール)以外の品目では、肥料
制限区の収穫量は慣行区と比較してやや減少しま
した(表中央部分)。
セル苗の出蕾の有無
カリフラワー、キャベツ、ケール(青汁用ケー
ル、コラード)およびコールラビでは300日を超
える期間育苗を行ってもセル苗の出蕾は観察され
ませんでした(表右囲み部分)
。
このように、カリフラワー、キャベツ、ケール
(コラード)およびコールラビでは、長期間にわ
たって灌水だけでセル苗を管理することで、育苗
中は虫害が減少し出蕾しないことが確認されまし
た。今後、定植後の活着・生育を向上させる方法
を開発することで、定植日から逆算して播種日を
決定することなく、好きなときに播種できる育苗
技術の確立が可能です。
表 慣行苗と比較した肥料制限苗の特性
品 目
慣行区と比較した 慣行区を100
y
出蕾の有無
虫害発生程度z
とした収穫量
カイラン
低(コナガ等)
94.0
有(300日)
カリフラワー
低(コナガ等)
87.0
無(540日)
キャベツ
低(コナガ等)
97.0
無(300日)
ケール
(青汁用ケール)
同(コナガ等)
130.0
無(540日)
ケール
(コラード)
低(コナガ等)
80.0
無(540日)
コールラビ
低(コナガ等)
69.0
無(540日)
同
チンゲンサイ(ハイマダラノメイガ)
91.0
有(230日)
ホウレンソウ 同(アブラムシ)
71.0
有(240日)
慣行区
播種
施肥
定植
肥料制限区
全期間灌水のみで栽培管理
z:(
播種
定植
備 考
慣行区:定植時
活着不良
)内は観察された害虫
y:肥料制限区において、(
)内の期間育苗した際の出蕾の有無
(野菜栽培チーム 米田祥二)
図 慣行区と肥料制限区の育苗方法の違い
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