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第25回 ISO/TC 4 ブリュッセル総会報告

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第25回 ISO/TC 4 ブリュッセル総会報告
第 25 回
ISO/TC 4 ブリュッセル総会報告
第 25 回 ISO/TC 4 会議日本代表団団長
遠山 史雄(日本精工株式会社)
2011 年 6 月 14 日から 6 月 17 日の 4 日間にわたり、ISO/TC 4(転がり軸受専門委員会)の本
会議、七つの SC(分科委員会)会議及び五つの WG(作業グループ)会議がベルギーのブリュ
ッセルにて行われた。以下にその概要を報告する。
1. 会議日程と主な議題
ブリュッセル総会の日程を表 1 に、各会議の主な議題を表 2 に示す。
表1
月日
6/14
時間
9:00-13:00
会議室 X
①TC 4/SC 8
定格荷重及び寿命
ブリュッセル総会日程
会議室 Y
②TC 4/WG 17
GPS の適用検討
14:00-18:00
6/15
6/16
④TC 4/SC 6
インサート軸受及び附属品
9:00-13:00
⑤TC 4/SC 7
球面滑り軸受
14:00-18:00
⑦TC 4/SC 9
円すいころ軸受
9:00-13:00
⑩TC 4/WG 19
鋼製円筒ころ
14:00-16:00
9:00-13:00
14:00-16:00
⑥TC 4/SC 5/WG 1
針状ころ軸受-取付寸法及び
公差
⑧TC 4/WG 18
転がり軸受用語
⑪TC 4/SC 4
公差
⑫TC 4/SC 11
リニア軸受
16:00-18:00
6/17
会議室 Z
③TC 4/WG 15
部品ライブラリ-リファレン
ス辞書
⑬TC 4 本会議
⑨TC 4/SC 5
針状ころ軸受
表 2 主な議題
会議名
① TC 4/SC 8
定格荷重及び寿命
② TC 4/WG 17
GPS の適用検討
主な議題
・
・
・
・
・
ISO 281:2007(動定格荷重及び定格寿命)の規格改正
“セラミック転動体を組み込んだ軸受の定格荷重の計算方法”に関して
“転がり軸受のグリース寿命の計算方法”に関して
ISO/WD 492.4(ラジアル軸受-公差)案の審議
ISO 199(スラスト軸受-公差)及び ISO 582(面取寸法-最大値)の規格改正の進め方
に関して
③ TC 4/WG 15
部品ライブラリ-リ
ファレンス辞書
・ ISO/DTS 23768-1(部品ライブラリ-第 1 部:転がり軸受リファレンス辞書)の投票結
④ TC 4/SC 6
インサート軸受及び
附属品
⑤ TC 4/SC 7
球面滑り軸受
・ ISO/DIS 3228(インサート軸受用鋳造及び鋼板製軸受箱)案の審議
果について
・ ISO 21107(転がり軸受及び球面滑り軸受-電子媒体用検索構造-用語による軸受の特
性・性能の識別)の扱いについて
・ ISO 12240-1(球面滑り軸受-第 1 部:ラジアル球面滑り軸受)、ISO 12240-2(第 2
部:アンギュラコンタクトラジアル球面滑り軸受)、ISO 12240-3(第 3 部:スラスト球
面滑り軸受)及び ISO 12240-4(第 4 部:球面滑り軸受ロッドエンド)の改正について
・ 新規案件に関して
⑥ TC 4/SC 5/WG 1
・ ISO/FDIS 3030(ラジアル保持器付き針状ころ-寸法及び公差)案についての討議
針状ころ軸受-取付 ・ ISO 1206(針状ころ軸受,寸法系列 48,49 及び 69-主要寸法及び公差)及び ISO 3245
寸法及び公差
⑦ TC 4/SC 9
円すいころ軸受
⑧ TC 4/WG18
転がり軸受用語
⑨ TC 4/SC 5
針状ころ軸受
⑩ TC 4/WG 19
鋼製円筒ころ
⑪ TC 4/SC 4
公差
⑫ TC 4/SC 11
リニア軸受
(内輪なしシェル形針状ころ軸受-主要寸法及び公差)の附属書案の審議
・ ISO 355(円すいころ軸受-主要寸法及び系列記号)の定期見直し
・
・
・
・
TC 4/WG 18 第 2 回アーリントン会議を反映した WD への意見の討議
ISO コンセプトデータベースの紹介
ISO 1206 及び ISO 3245 の附属書案の投票結果
ISO 3031:2000(スラスト保持器付き針状ころ及びスラストワッシャ-主要寸法及び公
差)及び ISO 3245:2007 の定期見直し
・ TC 4/SC 5 の業務範囲拡大に関して
・ ISO/DIS 12297(鋼製円筒ころ-寸法及び公差)について
・ TC 4/SC 4 の管轄規格変更に関して
・ ISO 10285(スリーブ形リニア玉軸受-主要寸法及び公差)の附属書の誤記に関して
・ ISO/FDIS 12090-1(プロファイルレールガイド-第 1 部:シリーズ 1, 2 及び 3)及び
ISO/FDIS 12090-2(第 2 部:シリーズ 4 及び 5)に関して
⑬ TC 4
本会議
・
・
・
・
・
TC 4 幹事国報告
TC 4/WG 及び TC 4/SC 業務報告、定期見直し結果報告
TC 4 の再編、特に SC 12 の設置に関して
2012 年度定期見直し規格について
今後の業務;ISO 15243(損傷及び故障-用語,特性及び原因)の改正について
2. 出席者
今回の総会には 15 か国、62 名の参加があった。前回の沖縄会議は世界不況の影響があり、10
か国、37 名と参加が少なかったが、今回は参加国数、参加者数共に前々回のパリ会議を上回っ
た。
各会議の出席国及び人数を表 3 に示す。
表 3 会議別・国別出席者
国名
①
SC 8
②
③
WG 17 WG 15
スウェーデン
1
4
アメリカ
2
1
1
イギリス
1
1
④
SC 6
⑦
⑤ ⑥ SC 5
SC 7 /WG 1 SC 9
1
1
1
1
2
1
1
1
⑧
WG 18
⑨
SC 5
⑩
WG 19
⑪
SC 4
⑫
SC 11
⑬
TC 4
3
1
2
3
1
5
1
1
1
4
1
1
1
1
1
1
オーストリア
1
1
ドイツ
4
2
1
1
2
1
フランス
2
2
3
2
1
2
ロシア
3
3
ベルギー
1
中国
2
デンマーク
1
1
1
トルコ
1
1
1
イタリア
1
スイス
1
オランダ
2
日本
5
4
4
3
6
3
4
6
3
6
7
8
11
合計
27
20
12
13
12
8
12
19
10
17
18
18
41
2
1
1
1
2
2
2
1
1
1
2
4
1
3
1
1
2
3
3
3
1
2
2
2
3
3
3
1
3
6
1
ブリュッセル会議日本代表団
3. 会議の概要
今回の会議は、前半 2 日間がブリュッセルの東側に位置する Diamant Conference and Business
Centre にて、後半 2 日間が西側に位置する NBN(ベルギー規格協会)にて行われた。日本は事
前に説明用の資料を準備するなどして、積極的に討議に参加した。
各会議の概要を以下に記載する。
6 月 14 日及び 15 日の会議会場である
6 月 16 日及び 17 日の会議会場である
Diamant Conference & Business Centre
ベルギー規格協会(NBN)
(1) SC 8(定格荷重及び寿命)
・ 日本から ISO 281:2007(動定格荷重及び定格寿命)の定期見直しで投票した修正必要項目を
説明した。また,アメリカ及びロシアから提出された文書(“疲労限が存在する根拠がな
い。”という内容)に関して討議を行った。提案者が欠席したため、アメリカからの説明は
なかった。ロシアは,超高サイクル領域では疲労限は低下するという意見であった。それに
対して、ドイツから反論データが示され,無限寿命を含んだ実用的な疲労限の定義をドイツ
が提案することになった。定期見直し及び総会で出された意見は、次回の ISO 281:2007 の
改正時に検討することで合意した。
・ ドイツから提出された“セラミック転動体を組み込んだハイブリッド軸受の静定格荷重及び
動定格荷重の計算方法”の規格化に関して討議を行った。日本だけが,ドイツ提案に対する
検討報告を行った。討議の結果、“ハイブリッド軸受の静定格荷重及び動定格荷重の計算方
法”の規格化の可能性を確認するため、“Load ratings for hybrid bearings(ハイブリッド軸受
の定格荷重)”の名称の Ad hoc グループを設立し、2011 年 9 月 15 日までにエキスパート登
録することが決定された。
・ 転がり軸受に使用されるグリースの寿命計算方法の規格化提案に関する討議があった。事前
準備をして臨んだのは日本だけで,グリース寿命の決定には多くの要因があり規格化は困難
であると主張した。ドイツからも変動要因が多すぎるとの同様意見が出され、グリース寿命
の規格化は、現時点では行わないことになった。しかし、グリース寿命は,将来のテーマと
して、検討を進めていく。
・ SC 8 の新たな業務項目として、次の 3 点が候補として挙がった。
- 実際の運転条件での摩擦損失の計算
- 最近の疲労形態の考慮
- 球面滑り軸受の静定格荷重及び動定格荷重
(2) WG 17(GPS の適用検討)
・ ISO 492(ラジアル軸受-公差)の GPS を適用した改正案の第 3 回目の審議を行った。
・ 序文において、日本からの ISO 1132-2(公差-第 2 部:検証の原則及び方法)を追記する提
案は合意されたが、日本が前回のアーリントン会議で削除を求めた ISO 14253-1(製品及び
測定装置の測定による検査-第 1 部:仕様に対する合否判定基準)に対して、TC 213(製品
の寸法・形状の仕様及び評価について検討する専門委員会)から、GPS を適用する規格には
記載するよう助言があり今後さらに議論していく必要がある。
・ 転がり軸受の従来用語に対する GPS 用語の相関については、まだ、これからの検討段階だ
が、GPS 記号を使用した図面指示方法については、ある程度固まってきた。
・ ISO 492 の改正案は、今後 CD(委員会原案)として TC 4 に提出し、NP(新業務項目提
案)となり、TC 4/WG 17 のコンビーナであるスウェーデンの Mr. Ebbe Östebo が、プロジェ
クトリーダーとして、3 年間の規格開発期間で進めていく。
・ ISO 199(スラスト軸受-公差)は、ISO 492 改正案をベースとして、改正作業していく。
・ ISO 582(面取寸法-最大値)は、TC 213 の意見を確認しながら、改正検討を進めていく。
・ 次回 TC 4/WG 17(今後 SC 4 の業務範囲に含め、SC 4/WG 4 となる予定。)会議は 2011 年
11 月 8~9 日にフランスで行う予定である。
(3) WG 15(部品ライブラリ-リファレンス辞書)
・ ISO 21107(電子媒体用検索構造-用語による軸受の特性・性能の識別)の改正は、
ISO/TS 23768-1(部品ライブラリ-第 1 部:転がり軸受リファレンス辞書)の作成過程で
出た意見を反映させて行う必要があり、ISO/TS 23768-1 の作成を担当した TC 4/WG 15 が
これを行うことで合意され、ISO 21107 の改正を予備段階の業務項目として TC 4 に提案
することにした。
また、改正は既にある意見を基に行ない、リニア軸受及び球面滑り軸受は今は含まない。
将来これらを含めるならば、 SC 11 及び SC 7 と協力して行うこととした。
・ ISO/TS 23768-1 は、軸受のみならず、TC 184/SC 4(オートメーションシステム及びイン
テグレーション-産業データ)で担当している部品ライブラリに関する規格[ISO 1358432(産業オートメーション及び統合-部品ライブラリ-第 32 部:実施資源 OntoML:製
品本体論構成言語)及び ISO 13584-42(第 42 部:記述法:部品ファミリを構成するため
の方法論)]に関連するため、TC 4 にリエゾン確立の依頼をすることとした。
・ XML1)フォーマットは今の TS が使用している OntoML2)フォーマットより多くの応用が可
能であるため、TS の改正には、XML フォーマットの適用を考慮することとした。
注 1)
eXtensible Markup Language の略名。1998 年 2 月に発表されたインターネット上で扱うデータを記
述するための新しいデータフォーマットである。
注
2)
Product ontology Markup Language(製品本体論構成言語)の略名。ISO 13584-32 参照
・ 軸受の規格化の進行状況から考え、ISO/TS 23768-1 の見直しは特別には行わず、次回の定
期見直し時に行うこととした。
(4) SC 6(インサート軸受及び附属品)
・ ドイツ及びフランスから、ISO/CD 3228.4(インサート軸受用の鋳造及び鋼板軸受箱)の時
からの提案として、附属書(参考)を追加して直径系列 3 のヨーロッパサイズを記載する案
が示されたが、日本が ISO/CD 3228.3 で提案した直径系列 2 のアジアサイズも加えた附属書
( 参 考 ) を 追 補 と し て 追 加 す る 新 た な NP を 日 本 か ら 発 行 す る こ と が 了 承 さ れ 、
ISO/DIS 3228 案は変更なしに承認された。これにより、規格案は ISO 中央事務局(以下
ISO/CS という。)へ送付し、DIS 投票に諮られることになった。
(5) SC 7(球面滑り軸受)
・ ISO/TC 123/SC 7(特殊滑り軸受)とのリエゾンを確立した。
・ ISO 12240(球面滑り軸受)シリーズ 4 規格に関する新たな ISO 規格修正案はなかった。
・ 中国から、球面滑り軸受及びロッドエンドの静定格荷重及び動定格荷重の計算方法の規格化
が会議での検討事項として提出されていた。しかし、中国が会議に出席しなかったため、後
で議長から書面で内容を確認することになった。
(6) SC 5/WG 1(針状ころ軸受-取付寸法及び公差)
・ ISO/FDIS 3030(ラジアル保持器付き針状ころ-寸法及び公差)案を 2011 年 2 月に ISO/CS
へ送付したが、FDIS の中で、図 A.1 に不備があり、変更案について合意した。本件は
ISO/CS に連絡し、FDIS 発行に間に合えば修正することになった。
・ ISO 3245:2007/CDAmd 1(内輪なしシェル形針状ころ軸受-主要寸法及び公差-追補 1:取
付寸法及び公差)の投票結果は、賛成 3、意見付き賛成 6、反対 4 で承認された。CD 投票
の際に出されたすべての意見に対する討議を行い対応策について合意された。主なものは、
① ISO 286-1(製品の幾何特性仕様(GPS)-長さ寸法公差に対する ISO コード方式-第 1
部:公差、寸法差及びはめあいの基礎)及び ISO 286-2(第 2 部:穴及び軸の公差等
級並びに寸法許容差の表)を引用しているので、その数値の羅列である表は削除する。
② ビッカース硬さに加え、ロックウェル硬さも表示する。
・ ISO 1206:2001/CDAmd 1(針状ころ軸受、寸法系列 48、49 及び 69-主要寸法及び公差-追
補 1:取付寸法及び公差)の投票結果(文書番号 N 331)は、賛成 4、意見付き賛成 3、反対
6 で否決された。反対の主な意見は、内輪付きの針状ころ軸受のはめあいに関するもので、
他の軸受の内外輪のはめあい全般にも適用できるので、TC 4 のレベルで討議したいという
意見が委員から出たことから、TC 4 本会議において確認することとした。
なお、6 月 17 日に開催された TC 4 本会議において討議した結果、他の軸受全般に適用しな
いこととなり、追補案は、TC 4/WG 17 で検討中の GPS も考慮に入れた内輪なし針状ころ軸
受用の軸の仕様だけに限ることになった。
(7) SC 9(円すいころ軸受)
・ ISO 355:2007(円すいころ軸受-主要寸法及び系列記号)の定期見直し結果について審議さ
れた。日本が指摘していた、誤記訂正 2 件及び寸法系列が重複している箇所 1 件の削除につ
いて、正誤票を発行することが決議され、日本が準備することになった。
・ 前回の ISO 355 の改正で追加した円すいころ軸受の中で、面取寸法最大値が ISO 582(面取
寸法-最大値)の表 4 に規定されていない軸受があるとの指摘に対し、SC 4 担当の ISO 582
の見直しに関わる問題であるため、翌日の SC 4 の会議でこの説明を行った。SC をまたぐ案
件となったが、ISO 582 表 4 の見直しを準備し、SC 9 から SC 4 に提案する形で対応するこ
とになった。
・ アメリカの提案で、インチ系列の検討が議題となっていたが、欧州からは、この案件推進へ
の協力が得られず、ほとんど審議されなかった。
・ アメリカから、ANSI/ABMA 19.1(メートル系円すいころ軸受)の改正内容についての報告
があった。また、次回の ISO 10317 の改正時に附属書に参考として ANSI/ABMA 19.1 の、等
級 K、N、C、B 及び A を加える議論がされ、NP をアメリカが準備することになった。
(8) WG 18(転がり軸受用語)
・ ISO コンセプトデータベースの紹介があった。用語、定義及び記号について次の ISO ウェ
ブサイトにて検索できる。https://cdb.ISO.org/cdb/search.action
現在は、すべての ISO 規格の“terms and definitions”の箇条にある用語及び定義が登録され
ており、今後の用語の規格への有効活用が期待できる。
・ ISO 5593(用語)の改正については、アーリントン会議を反映した WD(TC 4/WG 18 文書
番号 N 34)への意見を基に審議され、プロジェクトリーダーが、今回の審議結果及び次の
内容を含んだ改正案を作成することを合意した。

subunit に関する用語と定義

旧 ISO 5593 に記載されており再登録要求があった用語

利用可能な図

ISO 5593 の内容を一般的な用語に制限するため、ISO 1132(公差)シリーズ及び
ISO 281 ( 動 定 格 荷 重 及 び 定 格 寿 命 ) の 領 域 に あ る 用 語 は 含 め な い 。 た だ し 、
ISO/TS 23768-1(部品ライブラリ-第 1 部:転がり軸受リファレンス辞書)及び他の製
品規格の一般的な用語は含める。
なお、改正は予備段階とすることとした。
(9) SC 5(針状ころ軸受)
・ 投票のための ISO/FDIS 3030(ラジアル保持器付き針状ころ-寸法及び公差)案を 2011 年
2 月に ISO/CS へ送付したが、2010 年の ISO 286-1 及び-2(製品の幾何特性仕様(GPS)-長さ
寸法公差に対する ISO コード方式-第 1 部:公差、寸法差及びはめあいの基礎、及び、第
2 部:穴及び軸の公差等級並びに寸法許容差の表)の改正並びに ISO 14405-1:2010(製品の
幾何特性仕様(GPS)-寸法公差-第 1 部:長さ寸法)の制定に伴い、ISO/FDIS 3030 案の
A.3 に不都合が生じることが判明した。規格案が承認段階であることを考慮して、発行後に
正誤票を発行することを決定した。
・ ISO 1206:2001/CDAmd 1(針状ころ軸受、寸法系列 48、49 及び 69-主要寸法及び公差-追
補 1:取付寸法及び公差)について、TC 4/WG 17 で検討中の GPS も考慮に入れた内輪なし
針状ころ軸受用の軸の仕様だけに限ることになり、当初含まれていたハウジングとのはめ
あいは含めないこととした。
・ ISO 3245:2007/CDAmd 1(内輪なしシェル形針状ころ軸受-主要寸法及び公差-追補 1:取
付寸法及び公差)について、追補作成作業を中止して定期見直しに合わせて ISO 3245:2007
を改正することを決定した。
・ 今後の ISO 規格改正にあたっては、GPS を適用して改正を進める。
(10) WG 19(鋼製円筒ころ)
・ ISO/DIS 12297(鋼製円筒ころ-寸法及び公差)への各国意見に対する幹事国見解のうち、
コンビーナにより審議が必要と判断された案件について審議した。前回の会議までで、日
本と欧州との相違点のすり合わせがほぼ完了しており、欧州の材料しか適合しない規格を
引用している問題についても、材料の箇条を削除することで会議の前に問題が解決してい
た。そのため、今回の会議は、詳細な箇所の修正や、中国、ロシア、アメリカからの意見
を反映することが中心となった。
・ 平面内外径不同の量記号を VDwp から VDwsp に変更する意見が出され採用されるなど、中国か
らの用語の定義に関する数件の意見が採用された。
・ ころの表面粗さについては、日本は Ramax で規定することを提案していたが、ドイツが Ra
(16%ルール)を採用するよう主張し、ISO 規格は Ra で規定することになった。
・ 今回の会議は、FDIS 作成に向けた作業であるとともに、コンビーナの Mr. Michel Gorenne
が引退するため、担当する最後の会議となった。
(11) SC 4(公差)
・ SC 4 の業務範囲及び管轄規格の見直し提案は、TC 4 提案に対し、内容に公差を含まない規
格[ISO 113(プランマブロック軸受箱-主要寸法)、ISO 2982-1(転がり軸受-附属品-
第 1 部:テーパースリーブ-寸法)及び ISO 2982-2(第 2 部:ロックナット、座金及び止
め金-寸法)]を除き、SC 4 管轄下で取り扱うことが合意された。
・ SC 4 は GPS 適用を行う責任ある分科会なので、TC 4/WG 17 は SC 4 下の作業グループとす
ることを TC 4 に要求した。(今後 SC 4 の業務範囲に GPS 適用検討が含まれ、SC 4/WG 4
と改名される予定。)
・ 2010 年に改正発行された GPS 規格の ISO 286-1(製品の幾何特性仕様(GPS)-長さ寸法公差
に対する ISO コード方式-第 1 部:公差、寸法差及びはめあいの基礎)及び ISO 286-2(第
2 部:穴及び軸の公差等級並びに寸法許容差の表)を引用している TC 4 規格がある。今後、
SC 4 の中で、GPS 規格が TC 4 規格へ起こりうる影響について論議され、TC 4 に情報を提
出することが合意された。
(12) SC 11(リニア軸受)
・ ISO 10285:2007(スリーブ形リニア玉軸受-主要寸法及び公差)の附属書の表内に誤記があ
り有用性もないため、日本より表の削除を要求していた。しかし、ドイツでは顧客からの
要望があり削除できないということであった。そのため、誤記の箇所について日本から説
明を行った結果、誤記が認められ正誤票の発行を進めることになった。
・ ISO/FDIS 12090-1(プロファイルレールガイド-第 1 部:シリーズ 1, 2 及び 3)、及び、
ISO/FDIS 12090-2(第 2 部:シリーズ 4 及び 5)に、レール長さ公差が規定されていたので、
レール長さの公差は ISO 規格で規定する必要はないと日本から意見を出していた。ISO の
ルール上、FDIS 段階での技術的修正はできないということであったので、表を附属書(参
考)に移動することを代案として提案した。この移動も ISO のルール上、行えない可能性
があるため、幹事より ISO/CS へ問合せを行うことになった。可能であれば代案で進め、認
められない場合はこのまま規格発行を行なったのち、追補(Amendment)の発行を考えるこ
とにする。
・ 議案に書かれていた、インチ系列のリニア玉軸受については審議されなかった。
(13) TC 4(本会議)
TC 4 幹事、各 SC 及び WG の議長、幹事又はコンビーナから、決定事項及び進捗状況の報告
が行われ、以下の事項が決議された。日本は新設される SC 12(玉軸受)の幹事国として
ISO/TMB(技術管理評議会)の承認を得ることになった。また、五つの規格改正のプロジェク
トリーダーが日本から選出された。以下に決議事項の概要を示す。
・ グローバルディレクトリーの使用と業務管理について、各メンバーはグローバルディレク
トリーへの WG のメンバー登録を確実に行う。WG のコンビーナは、遅くとも 2011 年末か
らこのリストだけを基に、WG のエキスパートとの交信を行う。また、WG の文書は ISO
ライブリンクに保管することが合意された。
・ TC 213 との間の TC 4 リエゾン代表は、Mr. Anton Gergely(スウェーデン)に代わり
Mr. Hans Wiesner(オーストリア)が任命された。
・ GPS を ISO 582(面取寸法-最大値)へ適用検討するにあたり、TC 213 からの支援を受入
れる旨を TC 213 に連絡する。また、その連絡窓口は TC 4 リエゾン代表の Mr. Hans Wiesner
とすることが合意された。
・ TC 17/SC 4(鋼-熱処理鋼,合金鋼)は ISO 683-17(熱処理用鋼,合金鋼及び快削鋼-第
17 部:ボールベアリング及びローラベアリング鋼)の改正を開始したため、TC 17/SC 4 と
の間に幹事レベルのリエゾンを確立する。
・ GPS の導入に関して、TC 213 の各国のエキスパートが、GPS の知識やその実施方法につい
て援助することになった。Mr. Hans Wiesner は、TC 213 の対応可能なエキスパートのリスト
を入手し、TC 4 メンバーに連絡する。
・ TC 4/WG 15 は、引き続き ISO/TS 23768-1(部品ライブラリ-第 1 部:転がり軸受リファレ
ンス辞書)の制定並びに ISO 21107(転がり軸受及び球面滑り軸受-電子媒体用検索構造-
用語による軸受の特性・性能の識別)の改正を行い、次回の TC4 会議にて進捗を報告する。
・ ISO 492(ラジアル軸受-公差)の改正については、アップデートした規格案を NP に添付
して、CD として投票を行う。
・ TC 4/WG 18 は、引き続き ISO 5593(用語)の改正を行い、次回の TC4 会議にて進捗を報
告する。
・ TC 4/WG 19 は、6 月 16 日の会議の合意事項を基に、修正した ISO/FDIS 12297(鋼製円筒
ころ-寸法及び公差)案を ISO/CS に提出する。
・ 2010/2011 年定期見直し結果について、ISO 246(円筒ころ軸受のL形つば輪-主要寸法)、
ISO 1132-1(公差-第 1 部:用語及び定義)、ISO 1132-2(第 2 部:検証の原則及び方法)、
ISO 1224-1 ( 計 器 用 精 密 軸 受 - 第 1 部 : 主 要 寸 法 , 公 差 及 び 特 性 ( ミ リ 系 列 ) ) 及 び
ISO 1224-2(第 2 部:主要寸法,公差及び特性(インチ系列))については、投票にて確認の
承認がとれていたが、その他、ISO 582(面取寸法-最大値)、ISO 12043(単列円筒ころ軸
受-つば輪及びつばのない側の面取寸法)、ISO 15242-4(振動の測定方法-第 4 部:円筒
形状の内外径を持つラジアル円筒ころ軸受)、ISO 20516(調心座スラスト玉軸受及び調心
座金付きスラスト玉軸受-主要寸法)及び ISO 24393(リニア軸受-用語)についても討議
の結果、確認とすることとした。
・ ISO 464(止め輪付きラジアル軸受-寸法及び公差)については、定期見直し結果の意見を
基に改正を行う。このプロジェクトリーダーに Mr. Hubert Köttritsch(オーストリア)を任命
する。
・ ISO 2982-1 及び-2(附属品-第 1 部:テーパースリーブ-寸法、及び、第 2 部:ロックナッ
ト、座金及び止め金-寸法)については、定期見直し結果の意見を基に、改正を行う。こ
のプロジェクトリーダーに三木清史氏(JBIA)を任命する。
・ ISO 3290-1 及び-2(玉-第 1 部:鋼球,及び、第 2 部:セラミック球)については、定期見
直し結果の意見を基に、改正を行う。このプロジェクトリーダーに三木清史氏を任命する。
・ ISO 12044(単列アンギュラ玉軸受-外輪正面側の面取寸法)については、定期見直し結果
の意見を基に、改正を行う。このプロジェクトリーダーに三木清史氏を任命する。
・ ISO 15241(量記号)については、定期見直し結果の意見を基に、2 年間の迅速法で、部分
的な改正を行う。このプロジェクトリーダーに TC 4 幹事を任命する。
・ ISO 20515(ラジアル軸受,固定用切欠き-寸法及び公差)については、定期見直し結果の
意見を基に、2 年間の迅速法で、部分的な改正を行う。このプロジェクトリーダーに TC 4
幹事を任命する。
・ TC 4 の規格を TC 213 の CD-ROM に含める提案に関する決定については、提案に対する投
票結果に基づき、TC 4 の規格で公差を含んでいない ISO 113(プランマブロック軸受箱-
主要寸法)、ISO 2982-1(転がり軸受-附属品-第 1 部:テーパースリーブ-寸法)、
ISO 2982-2(第 2 部:ロックナット,座金及び止め金-寸法)及び ISO 15243(損傷及び故
障-用語,特性及び原因)を除き 27 規格を、ISO/TC 213 の次の版の CD-ROM に含めるよ
う TC 213 に依頼する。
・ TC 4 組織再編に関して、TC 4 N 1490 の提案に以下の修正を加え、現在の SC の業務範囲及
び担当規格を変更する。

ISO 113、ISO 2982-1 及び ISO 2982-2 は、TC 4 直下の管轄に残す。

SC 5 の名称を“Needle-, cylindrical- and spherical roller bearings”に変更する。

TC 4/WG 17 を SC 4 管轄の WG に変更する(WG 番号は、SC 4/WG 4 となる)。ま
た、TC 4/WG 17 のエキスパートをもつメンバー国は、SC 4 の P メンバーとなるよう
依頼する。
・ SC 12(玉軸受)を設置する。業務範囲は、すべての種類及びサイズの玉軸受の規格化(主
要寸法及び公差を含む)。当面担当する規格は ISO 3290-1 など 6 規格。JISC の責任の基で、
6 年任期の議長を三木清史氏(JBIA)が、また、国際幹事を白木高志氏(JBIA)が行う。
ISO/TMB にこの新 SC の設立の承認を得る。
・ ISO 15243(損傷及び故障-用語,特性及び原因)の改正について、NP が回付され承認さ
れた。この業務を開始するにあたって、TC 4/WG 20 を設置し、その名称は“Rolling
bearings damage and failures”とする。幹事にフランスの Ms. Nadiège Ludivion を任命する。
エキスパートは 2011 年 10 月 1 日までにコンビーナ及びプロジェクトリーダーを決める。作
業の複雑さを考慮して、予備業務項目として登録する。
以上、すべての決議は、全会一致で承認された。
TC 4 本会議風景
4. あとがき
今回の TC 4 総会は、ベルギー・ブリュッセルで開催された。前回の沖縄会議においてヨーロ
ッパで行われることが決まっていた今回の総会がベルギーで開催された理由は、2010 年に就任
した TC 4 議長 Mr. Walter Verhaert がベルギー出身であったためと思われる。
開催期間は 6 月 14 日(火)から 17 日(金)の 4 日間であった。近年の TC 4 総会は 5 日間で
行われているが、この週の月曜日がベルギーの祝日であるということで、通常より 1 日短い開
催期間となった。
会議会場は、前半 2 日間がブリュッセルの東側に位置する Diamant Conference and Business
Centre にて、後半 2 日間が西側に位置するベルギー規格協会(NBN)にて行われた。会場が 2
か所となったため、我々は二つの会議場の中間位置であるブリュッセル中心地に立地するホテ
ルに宿泊し、ホテルから会場まで、毎日地下鉄及びトラムを利用して 40 分程をかけて通った。
会議会場が変わるのは、慣れない土地において大変不便であったが、宿泊したホテル周辺は、
世界遺産であるグラン・プラス、ヨーロッパ最古級の高級ショッピングアーケードであるギャ
ルリ・サンチュベール、ステンドグラスが大変美しいサン・ミッシェル大聖堂などが徒歩圏内
にあり、会議終了後の僅かな時間を利用して、異文化に触れることができたのがとても幸いで
あった。
滞在中のブリュッセルの天候は変わりやすく、どんよりとした曇りの日と、爽やかに晴れ渡
る日とが交互に訪れた。気温は 15℃から 25℃位であり、体調を崩す委員もおらず、心地よく過
ごすことができた。
会議は、TC 4 本会議を含め、13 の会議が開催された。開催期間が 1 日短かったため、3 つの
会議室で同時に 3 つの会議が行われる日もあり、日本の参加者も分かれて参加することになっ
たが、事前に打ち合わせた参加者の配置により、委員同士でサポートし合い、各会議に適切に
対応出来た。また、会議によっては議論に応じて準備したプレゼンテーション資料を発表する
ことにより、各国間の相互理解を助け、合意へ向けての議論に貢献して、TC 4 における日本の
存在感を示す事ができたものと思われる。
今回の会議でとりわけ日本にとって重要な議題であった TC 4 組織再編における SC 12(玉軸
受)の設置及び日本の幹事国担当については、TC 4 本会議において、参加国の全会一致で決議
された。今後、上部組織である ISO/TMB(Technical Management Board、技術管理評議会)の承
認を経て正式に発足することになる。
TC 4 において日本が幹事国を担当するのは初めてであり、これまでの TC 4 における貢献が
評価されたことの現れである。これまで長年転がり軸受の標準化に携わっていただいた各社の
委員及び関係者のご尽力に感謝するとともに、今後より一層、日本が ISO 標準化活動に積極的
に参画していかなければならないという思いで一杯である。
TC 4 本会議の前夜に、ベルギー規格協会主催の夕食会が、アトミウムという 1958 年のブリ
ュッセル万国博覧会の際に建設されたモニュメントの最上階にある地上約 90m のレストランで
行われた。ブリュッセル市内の美しい夕景を眺めながら、各国の参加者との親交を深めること
ができた。
なお、2010 年まで約 9 年間、TC 4 議長を務めていただいた Mr. Michel Gorenne へ、日本から
感謝の楯を贈呈し、長年のご尽力に対してお礼を申し上げた。
最後に、複数の会議にチームワークをもって対応し、今回の会議の成果を上げる事ができた
事を、日本の参加者に深く感謝するとともに、今回の会議のための準備をしていただいた日本
ベアリング工業会事務局の皆様、そして、幹事国引受けを含め今回の会議へのご理解とご支援
をいただいた工業会の関係者の皆様にお礼申し上げる。
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