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三相誘導発電機の自己励磁現象の考察

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三相誘導発電機の自己励磁現象の考察
広島工業大学紀要研究編
第4
0巻 (
2
0
0
6
) pp.21-26
論
文
三相誘導発電機の自己励磁現象の考察
猪上憲治*・時尻貴志**・山下英生***
(平成 17年 9月 8日受理)
C
o
n
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d
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r
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t
i
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no
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l
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E
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K
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n
j
iINOUE,
TakashiTAOJIRIandHideoYAMASHITA
(
R
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c
e
i
v
e
dS
e
p
.8,
2005)
Abstract
Thea
c
c
i
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tt
h
a
thouseholde
l
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c
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la
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g
er
o
t
o
r
,c
ondenser
度,また負荷の種類をそれぞれ変えて実験的に調べた。
1.まえがき
その結果,導出した理論式による計算値は実測値と良く
数年前,某電力会社の配電管轄内において,数十軒の民
一致し,この理論式が白励現象発生の有無を検討する際の
家の電化製品(テレビジョンなど)が壊れる事故が起きた。
シミュレーションに一般的に使用可能であることがわかっ
この原因は,系統に接続された小水力発電所の三相かご形
た。更に,実験から,コンデンサが接続された誘導発電機
誘導発電機 (250kVA) が力率改善用のコンデンサによっ
は,負荷の三相不平衡の度合いが大きくなるほど自励現象
て自己励磁現象を発生し,電圧が異常上昇したことによる
を起こしやすいことが明らかになった。
ものと推測されている。
本文は,まず自励現象の発生領域の理論式を導出する。
本論文では,この事故の原因を明確に把握するため,実験
次に,実験機の定格および定数と実験回路について述べ,
機 (2.2kVAの 4極機と 6極機)においてコンデンサによる
実験結果を示す。最後に,このたび得られた結果を要約し,
自己励磁現象の発生を理論的および実験的に考察している
今後の課題を示す。
O
すなわち,コンデ、ンサを接続した実験機の白励現象の発生領
2
.理
域を対称座標法によって理論的に求めた。更に,実験機にお
いて,白励現象の発生の有無をコンデンサ容量および回転速
E岡
いま,誘導機の定数および電気諸量を次のように置くと,
本広島工業大学工学部電気・ディジタルシステム工学科
H
吾
.
0
伶
広島工業大学工学研究科電子工学専攻
キ*キ広島工業大学工学部知的情報システム工学科
︼
つ
猪上憲治・持尻貴志・山下英生
C:コンデンサの毎相静電容量 [
F
l
コンデンサが接続された誘導機の電圧方程式は(1)式の
ように表される(1)。
i
j
p
(
t
), i
j
t
)
:固定子電流の正相分および逆相分 [
A
]
i
t), i
):回転子電流の正相分および逆相分 [
A
]
2t
2
rj,r
0]
2 :誘導機の固定子および回転子の毎相抵抗 [
t:時間 l
s
l
L
j,L2:固定子および回転子の毎相全インダクタンス [
H
]
M:固定子と回転子聞の毎相相互インダクタンス [
H
]
P:d
j
d
tに相当するオペレータ
た だ し , 回 転 子 (2次)側の諸量は固定子(l次)側へ
ω:任意の回転子速度に対する回転子の
電気的角速度 [
r
a
d
j
s
]
の換算値である。
)
(,
Mp
Cp
)
(n
Cp
ー
j
ω
・
I2
η +L2
(
p-j
ω
)
i
(
t
)ε一
2n
η叫
M(p+j
ω)
O
ε
)
(4'ιP
M(p-j
ω
)
手,匹
l
l
Mp
一一 +
η +LIP
b
.
411Dj
一一 +r
p
1+ム
jωf
一
ー
一
一
.
.
.
L
一
一
一
一
ー
ー
,
(
1
)
(1)式において,回転子側を消去すれば次のようになる。
)e
(,
F
1
l
M2()
一一 +
η +LIP一
P¥P-Jω
Cp
η +L
(
pー j
ω
)
2
O
・曹,
M2p(p+jω)
r
(p+j
ω)
2+L2
zhli
)
(4'ι
ILI
Cp
一一 +r
LIP
1+
,
(
2
)式 に お い て 正 相 分 が 求 め ら れ れ ば 逆 相 分 は 視 察 に
(計二(~目立+ネ;怜J(右)
よって得られるため,まず正相分のみに着目する。いま,
2
M λ(
;
"
j
ω
)
+r+LJ
, - .'.
J~' , =O
r
+
ム
j
ω
)
2
v
-
α ,'~j'"
,
イム+仕十戸{立J
=
O
(
3
)
j
の根を λ
" んとし,定数を κ
),んとすれば,i
j
p
(
t
)の解は次
,
ι+K〆
1+
)K
2
c
l
'
2
1
置く。
w
…・・…….....・ ・-…… (
4
)
H
(
3
)式を λについて整理すれば,
Y
[
1長J
+A
2
{2
十
1
.
o
ω)=j+
(
4
)式の右辺第 l項は定常電流である。
ただし,
[
1
-:
J
}
……....・ ・
.
.
.
.
… ・・
.
.
.
.
.
.
…
… (
7
)
H
H
H
α<1である。
aの高次項を無視すれば dは
(
7
)式を (
6
)式に代入し
ω
次式のようになる。
1
_
_
.
1
_
_-.!っ
j
τ二;--Jー
j
+41
1n(η -jωL )
1 ,r-jωL2= 0
一 一 定 一 十 一 一2
一 一2
一一←
L
)1
C
L2
CL/
2
r ω しL
ム
dニ ム
一 一l /
「 ¥
=y
,
一j
s
I
ω1 1
汽
円
J
円+2
r
2i
一 一 一 一 " ー
唱
,
いま
(
6
)
(
6
)式の近似解を求めるために,解の一つを次のように
式で表される。
i
I
P
(
t
)=
(
2
)
ω2
C
l ω2L/ -
(
5
)
J
¥ ω1 )
I
,
2
l-M/
L
I
L
2=σ とおけば
(
8
)
ただし , 1= σ
L)=σ
L2であり,全漏れインダクタンス
を表す。また
22
三相誘導発電機の白己励磁現象の考察
r
ム(布告 1
]
(
1
-右)立(乎)
f仏(
)
'
1-μ
刈
J
.
冶
叫
ω
刈
)
M L
J刈
ト
約
(
t
の
t
)
ニ九
i
2p一
イ
h+(
人 jω )
LJ
p
仏
ノ
引f
2
(
お
+
去7
-1
J
+
(
千y
s
l=
五
(
千)
(
1
-右 J
+立(す去[
l
J
(
お
+
走7
-J
¥
(
千y
川~LJトいい
ザ
υ
h旬
2JJ戸
εd許(仏七
一
イ
(ド
η+
(
九 刈
j
ρ
叫
ω)
L
2
-{
i
2n
二可
川)
~LJトい
い
μ
吋
kμμ
K ,S(;'3+1
許什(仏い勺
'
3
+}
)
LJ
.(
9
)
.
2
11111kftitti--J
my
一打
+rh
一+
M一叫
η+(
ん+)ω
れMV
1
一(16
)
・
(
17
)
ここに ,i
2n はそれぞれ定常電流を表す。
2p' i
(
6
)式
, (
7
)式より, λの他の解は近似的に次式から求め
κ
1ないしんは初期条件によって定まるある定数である
ればよいことになる。
4
)式ないし(17
)式によってすべての解が得られ
から , (
同2
+
(
7
)
j
+方+寸 o
4
)式の右辺第 l項は同期発電機としての
たことになる o (
定常項,第 3項は減衰項であるため,誘導機として動作す
るかどうかは第 2項のみを吟味すればよい。
(
10
)式の根は二つあるが,一方は逆相分となるので捨て
'
1 >0ならば第 2項は増大することになる
すなわち, ?
ることにすると次式の解が得られる。
ため,誘導機の端子電圧は上昇する。
(~J= す寸志-(すJ+令
したカ 1って
(古元一1](1 ーネ~)立(乎) >
0
=-/2+Js2
・
-(
1
1)
一(18
)
を満足するとき, (
4
)式の第 2項は発散する。誘導機の端
九=す古I~{ホ-(すJf る
(
+J
lも大きくなり ?
'
l も増大し,端子電
子電圧が上昇すれば L
圧は急激に上昇することになる
減少し,ア 1=0を満足する L
lの値まで電圧が上昇して安
定することになる。このときの発生周波数は ω(1-s
l
)に
=去~~{お-(すJT 会
(
+J
相当するものであって,回転子角速度 ω よりすべり
s
,
なる。
(
18
)式を満足しないときには, (
4
)式の右辺第 2項も減
衰項となるため ,i
1
p の実効値を
一(12
)
i
(
t
)=i
+K
/
;
"
/+K〆,/…...・ ・
.
.
.
・ ・
…
・
・
(
13
)
1
n
1
n
H
ム
K4
,残留磁気電圧の実効値
IIp
を Elp とすれば,結局
i
1
n(t)の解は次式で表される O
i
1
n 定常電流,
s
lだ
け少なし誘導機は明らかに発電機として動作することに
+お(すJ
ただし
しかし,電圧が上昇する
にしたがって L
lも増大するが,最大値を過ぎてから再び
お
+
(
すJ
同様に逆相分電流
O
l
J
2
1
, _SJW/ =J
ゐ ~l_ Pε
i J
.
(
(
1
/
ωC ω
L
1
)
1
H
1p =
'¥IL. 唱 =
.--IP円一
/
, I
T
¥
ー
:定数。
人
(ω)
/=
x一)(1-s
J
・
・
…
.
.
.
.
.
・ ・
.
.
… … ・・-…(14
)
ん/
(ω
)
=一1
2-)s
,
一…ー…・ …
ー
・ …
・
・
・
・・
・ …(15
)
H
H
一(19
)
H
回転子電流の正椙分と逆相分は次式のようになる
で安定し,誘導機は残留磁気による永久磁石式同期発電機
として動作し,回転子端子を開放した場合と全く同ーとな
る
。
固定子回路に,固定子巻線と直列に外部抵抗 Rlを挿入
O
した場合の自己励磁の発生条件も同様にして求めることが
でき,次式のようになる。
qJ
“
ヮ
猪上憲治・時尻貴志・山下英生
(
2
6
)式は,外部抵抗を挿入しない場合に誘導機が自己
(式;+唱デ 1}(1 一元~J
日J(~ +~t2r2)
>0
励磁現象を発生するコンデンサ容量を表している。
3
.実 験
・
-(
2
0
)
3
.
1 実験機の定格および定数
(
18
)式
, (
2
0
)式を満足する自励角速度 ω
sは共振角速度
本論文で,コンデンサによる誘導発電機の自励現象発生
ω。
=l
/
,
J
L1C より明らかに大である。特に外部抵抗を挿入
の有無を検討するために供した実験機は,極数のことなる
した場合にその差が大きくなる
2台の三相かご形誘導発電機であり,それらの定格を表 l
固定子回路に外部抵抗を
O
挿入した場合は,端子電圧があまり高くならないため ,L1
に示す。
また,表 2はそれら実験機の定数値である。なお,定数
2
0
)式を満足する自励回転数は高くな
が比較的小さし (
の決定は通常の直流電圧降下法による巻線抵抗測定,無負
る
。
(
18
)式を ωL1 について整理すると
荷試験,拘束試験によって行った。
1.
表 1 実験機の定格
I
~(
r
)1
1+η
ω
(ム)
2_~一一工+っ一一1..!..
~wL ,- -( 冒
¥>0
│ωL
一 一 ωI
ωc
I
_l_ ωl1
L ω c ω c
・
-(
21
)
したがって
ω ,>
定格値
目
項
3
4
60Hz
220V
8.6A
2.2kVA
1880min-1
相
数
極
数
周波数
定格電圧
定格電流
定格容量
定格回転数
i
~{l/WC +
法当
{
l
ザ+
,
-/
1
/…
3
6
60Hz
220V
9.8A
2.2kVA
1260min-1
1
IwC+ー 」 一 一 一
ωC一ω l ω c
(
1
j
ωC-ωl
)
日
表 2 実験機の定数値
(
2
2
)
(
2
2
)式において,一般に 1/ωCに対して他の量は小さ
いので,適当に省略すれば (
2
2
)式は (
2
3
)式のようになる。
五
ωL,
>
1
/
ωC+ r
,
+2rJ
1
/ωCー ωl
・
-(
2
3
)
(
2
0
)式より同様にして, (
2
4
)式が得られる。
斗
)A
ワ︼
(
A
1+R
1)(
ωL
1
/
ωc+ir
トベ +2η)
,>
11ωc-ωf
目
4極機
6極機
0.690
0.610
2.980
3.120
1
.410
1.
44 0
0.720
0.820
2.630
2.770
3.
49mH
3.67mH
104.27mH 69.25mH
3
.
2 実験装置および実験方法
図 Iに実験回路を示す。誘導発電機 IGの回転軸には,
それを駆動するための直流電動機 DMと,回転数を測定
)式を C について整理すると,
(
18
するためのタコメータ TGとが直結されている。
hd
戸
内〆臼
)
(
c 2 (ω4咋 +ω 2L,イ +ω4Ll~rJ
項
I次巻線抵抗 :r
1
l相の等価全インピーダンス
I相の等価全抵抗
2次巻線の等価抵抗:r
2
1相の等価全リアクタンス
全漏れインダクタンス:l
全インダクタンス:L1
-c(ω2Ll-~r2+ ωヨ/)+ム <0
実験は,次の方法によった。まず,誘導発電機の端子
から負荷を切り離し,端子に三相進相コンデンサのみを
となり, (
2
5
)式を解くと,
接続した状態で,電動機によって発電機の回転数を低速か
-b-.
J
b
て石c <C<-=b+長て五;
2a
2α
ら徐々に上昇させながら端子電圧を電圧計で測定した。次
・
-(
2
6
)
に,三椙進相コンデンサと並列に三相抵抗負荷を接続した
状態で,上述と同様の操作を行った。更に,三相進相コン
U
デンサと並列に単相抵抗負荷を接続した状態で,上述と同
となる。ただし
rl
rLil/
r2
ωIl
4J
rbrワ
+2ω
2n+
2rI
ω
一
I l - -む
;11
ω 斗 rh
α'oc
一
一
一
一
一
一
様の操作を行った。
なお,上記の実験に用いた 5個の三相進相コンデンサの
静 電 容 量 は 20μF, 50μF, 100μF, 150μF,250μFでこ
れらのコンデンサを並列に接続して容量を色々と変えた。
-24-
三相誘導発電機の自己励磁現象の考察
これらの図から明らかなように,白励現象の発生領域の
理論値と実測値は比較的良く一致している
C
したがって,
(
2
6
)式は,一般に三相進相コンデンサによる三相誘導発
電機の白励現象の発生を検討する際のシミュレーションに
有用であると言える。
3
.
3
.
2 無負荷時の自励現象の発生
図 4および図 5は
4極機および 6極機の無負荷時に
おける自励現象発生の観測結果である。
これらの閃から,発電機に接続されるコンデンサの静
電容量が大きいほど,発電機は低速度で白励現象を発生し
て電圧が急上昇し,その後は電圧が速度にほぼ、比例して上
昇することがわかる c また,静電容量が大きいと,発電機
l
は,定格速度は勿論のこと同期速度 (4極機は 1800min-,
6極機は 1200min-l) 以下の速度でも白励現象を発生す
IG:三相かご形誘導発電機
TG:タコメータ
V:交流電圧計
A:交流電流計
Sp S
2
:スイッチ
C: コンデンサ
ることがわかる
O
DM:直流電動機
300
図 1 実験回路
〉
3.3 実験結果
凸
り
'i
3
.
3
.
1 自励現象の発生領域の理論値と実測値の比較
図 2および同 3は
,
AU
耳慣件翌
>200
4極 の 誘 導 発 電 機 (4極機)およ
コンデンサの
」静電容量
i
ー持ー
100μF
十一+ー: 120.
1F
150μF
170μF
ー守一:200μF
ーφー : 250μF
ー
:
ー
:
び 6極 の 誘 導 発 電 機 (6極機)において,発電機にコンデ
ンサのみを接続した無負荷状態の白励現象の発生領域乞
(
2
6
)式に表 2の定数値を代入して計算した理論値と実測
図 4 4極機の無負荷における白励現象の発生
値の比較である。
300
自励現象発生領域
2500
ロ
ト
ll
ゥ
A
り
凸
り
{
﹀
一
花
3000
一一-理論値
0
実測値
j
コンデンサの
静電容量
コ
=
1
2
3
2
F
ー占ー:
Z
*
J
i
l00
ら 1
i
E2000
Z1500
150μF
ー
-:
170μF
一宇一:200μF
3
妻
霊1000
び0
[
85
00
100
200
300
C[μFl
図 5 6極機の無負荷における自励現象の発生
コンデンサの静電容量
図 2 4極機の白励現象発生領域の理論値と実測値の比較
[75g]Z お単一=一
3000
u n u n u n リハ u
白
nUAU
nり 凸 り 凸 り
目 リ ハU R u n U F 3
9
“ 9-ti14
自励現象発生領域
一般に,誘導機および同期機を問わず,コンデ、ンサが接
一一理論値
0 ・実測値
続されている発電機に抵抗負荷または遅れ力率の負荷が掛
ると,
コンデンサによる増磁作用が小さくなり,白励現象
は起こり難くなることが知られている。また,
2章の理論
で述べたように,発電機の固定子巻線に外部抵抗が直列に
、
ιL
~O
挿入されている場合は,自励現象発生の回転数が高くなる。
100
200
コンデンサの静電容量
図3
3
.
3
.
3 三相平衡負荷時の自励現象の発生
300
C[μFl
このたびの三相平衡負荷時の実験は,発電機の端子に抵
抗負荷をコンデンサと並列に接続して行った。この場合の
6極機の白励現象発生領域の理論値と実測値の比較
抵抗負荷の作用は,固定子巻線には有効電流も流れるため,
2
5
猪上憲治・持尻貴志・山下英生
固定子巻線と直列に外部抵抗を挿入した場合の作用と等価
機の端子電圧はほぼ三相平衡に保たれ,力率改善用のコン
的に同じであるとみなすことができる。
デンサに起因する白励現象は発生しない。しかし,母線と
, 4極機および 6極機において,それ
図 6および図 7は
の連系が切れると,発電機には三相不平衡負荷が直接掛り,
ぞれ I相当たりの抵抗値が 100.0の三相平衡の抵抗負荷
上述した理由によって白励現象が発生 L,過電圧が電化製
を掛けて実験したときの自励現象発生の結果である。これ
品に加わったものと推測される。
らの図から明らかなように,無負荷時に白励現象が発生し
た回転数の1.3倍程度まで回転数を上げても,何れのコン
コンデンサの
静電容量
一品ー: 150μF
デンサ容量においても自励現象は発生しなかった。これは,
上述の理由を裏付ける結果になっている
O
-ー: 170μF
一宇一 200μF
﹁Ill1トIll1ir
“
一﹀-﹀
AUAU
内
d
9
凸り凸り
ーφー
・ 250μF
l コンデンサの
静電容量
1
自励現象の発生なし
│一。一:250μF
唱'ム
AU
AU
出岨 N︹
K護
1
ー
-:
150μF
4一号ー:200μF
図 8 4極機の三木目不平衡抵抗負荷における自励現象の発生
I
B
O
O
300r
1800
N[min-1]
1
コンデンサの
静電容量
ー
:150μF
ー
:
170μF
-守一:200μF
>
>200ト
図 6 4極機の二三相平衡抵抗負荷における臼励現象の発生
出卜
-+一:250μF
~._;
午100
ー
:
j
ー
:
!コンデンサの
自励現象の発生なし
喪
150μF
170μF
ー干ー: 200μF
250μF
←:
図 9 6極機の三相不平衡抵抗負待における白励現象の発生
。
σ
寸1
00寸 200 1300 1400
回転数
図7
4 あ
N[min寸
6極機のさ相平衡抵抗負荷における白励現象の発生
と カf き
本論文では,コンデ、ンサが接続された三相かご形誘導発
電機の自己励磁現象の発生を実験機において理論的および
3
_
3.
4 三相不平衡負荷時の自励現象の発生
実験的に考察した。得られた結果を要約すると次のようで
図 8および図 9は
, 4極機および 6極機において,それ
ある。
ぞれ一つの端子聞に抵抗値が 100.0の三相不平衡の抵抗
(1)導出した白励現象の発生領域の理論式による計算値
負荷をかけて実験したときの白励現象発生の結果である。
は実測値と良く一致することから,その理論式は誘導
これらの図から明らかなように,三相平衡負荷時には
発電機における白励現象発生の有無を検討する際のシ
発生しなかった白励現象が,三相不平衡負荷時には何れの
ミュレーションに適用できる。
コンデンサ容量のときにも発生している。これは,三相不
(
2
) 白励現象は負荷の三相不平衡の度合いが大きくなる
平衡電流が作る逆相分磁界によって回転子に電流が誘導さ
ほど発生しやすくなることが,実験的に明らかにされ
れ,それが作る磁界によって固定子巻線に新たな起電力が
た。したがって,一般に発電機に三相不平衡の負荷が
誘導し,コンデンサに電流が流れて,コンデンサによる増
掛る配電はざけることが重要で、ある。
磁作用が増幅されるものと考える
今後の課題は,異常上昇の電圧値を求める計算式を導出
C
この実験結果から,前述した事故の原因は以下のように
推測できる
することにある。
O
長さ
"
事故は,水力発電所の誘導発電機と連系している母線を
考
文
献
遮断したときに起きている。常時は,配電線に三相不平衡
(1)足立良夫誘導機のコンデンサ自励現象 J,電気学
負荷が掛っていても逆相分電流を母線が吸収し,誘導発電
19
60)
会雑誌, VoL80,No_864, 1236-1243 (
ハ
hu
?︼
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