...

第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析 1.

by user

on
Category: Documents
5

views

Report

Comments

Transcript

第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析 1.
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
第 4章 .札 幌 市 の 生 活 保 護 に係 る 業 務 分 析
1. 業 務 分 析 の実 施 内 容
( 1) 業 務 分 析 の対 象
生 活 保 護 に関 する業 務 分 析 は、選 定 した区 の 保 護 課 及 び 本 庁 の保 護 指 導 課
における実 地 調 査 、札 幌 市 で共 通 して使 用 し ている電 算 システムと その関 連 シス
テム の状 況 の 検 討 及 び 各 区 が 毎 年 度 策 定 して い る実 施 方 針 の 内 容 の検 討 に よ
り実 施 した。
( 2) 対 象 区 の 選 定
保 護 の取 扱 い 件 数 が 多 い 区 には 様 々な態 様 の 具 体 例 が多 い と思 わ れ るこ と か
ら 、 実 地 調 査 の 対 象 区 は、 被 保 護 者 世 帯 数 が 多 く、 支 出 扶 助 費 が 多 額 で 保 護
率 も高 い東 区 、北 区 及 び白 石 区 の3区 を選 定 した(「第 3章 .札 幌 市 の生 活 保 護
の状 況 」の「3.札 幌 市 各 区 の状 況 」を参 照 )。
( 3) 実 地 調 査 の方 法
① 実 施 した手 続
3 区 での 実 地 調 査 では 業 務 フ ロー の ヒア リン グと ウ ォ ー ク スル ー を 行 った。 ウ ォ ー
ク ス ル ー と は 、 財 務 諸 表 監 査 に お い て 内 部 統 制 の 整 備 状 況 を 評 価 す る際 に 実
施 す る監 査 手 続 の 一 つ で あ り、 取 引 の 発 生 か ら 財 務 報 告 ま で の 一 連 の プロ セ ス
で 処 理 さ れ る帳 票 ・ 記 録 を 追 跡 し 、 業 務 が 適 正 に 実 施 さ れ て い る かど う か を 、 実
際 に作 成 さ れた 書 類 や 帳 票 類 、システ ムを 利 用 してい るの であ れ ば当 該 システム
の画 面 などを確 かめることによって検 討 する方 法 である。
こ れ に よ り、 3 区 間 で の 業 務 の 違 い が 分 か り、 効 率 化 が 図 れ る業 務 の 検 討 に あ
た っ て は 、 間 違 い の 発 生 が 予 想 さ れ るチ ェ ッ ク ポ イ ン ト に 対 し て 、 そ の 間 違 い を ど
の よ うに 防 止 ・ 発 見 す る体 制 を 構 築 してい るかと い う こ と を把 握 で きる。 また、 業 務
の フ ロ ー を 事 務 手 続 の 始 ま り から 終 わ りま で 追 い かけ るこ と から 、 フ ロ ー 全 体 の 把
握 が比 較 的 容 易 であるため有 用 な方 法 であると判 断 した。
この他 、帳 票 間 の照 合 、証 憑 突 合 、計 算 調 べ、再 実 施 、文 書 閲 覧 、比 較 ・趨
勢 ・比 率 などの分 析 、現 物 確 認 、現 場 視 察 などの手 続 を実 施 した。
② 具 体 的 な内 容
(選 定 した3区 での実 施 内 容 )
生 活 保 護 に 関 す る相 談 ・ 申 請 か ら 決 定 、 扶 助 費 の 計 算 と 支 給 、 保 護 の 停 止 ・
廃 止 、訪 問 調 査 ・ 資 産 調 査 ・収 入 調 査 ・ 自 立 支 援 などの 業 務 につ いて、 生 活 保
46
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
護 の 世 帯 類 型 別 ( 高 齢 者 ・母 子 ・障 害 者 ・ 傷 病 者 ・ その 他 ) の保 護 台 帳 ( 当 該 ケ
ースに関 係 するあらゆる資 料 (生 活 保 護 開 始 申 請 書 ・面 接 記 録 票 ・実 態 調 査
書 ・ ケ ー ス記 録 ・ 援 助 方 針 票 ・ 収 入 申 告 書 など ) が 綴 ら れた ファ イ ル )に よ り、3 区
間 で の 規 程 ・ マニ ュア ル ・ 書 類 な どの 違 いに 着 眼 し て 調 査 し た。な お 扶 助 の種 類
のうち生 活 扶 助 、住 宅 扶 助 、医 療 扶 助 及 び介 護 扶 助 以 外 の扶 助 、すなわち 、
教 育 扶 助 、出 産 扶 助 、生 業 扶 助 及 び葬 祭 扶 助 については、金 額 が小 さいので
調 査 の対 象 から除 外 した。
実 地 調 査 ではこのほか、自 主 的 内 部 点 検 に関 する書 類 、課 内 会 議 の議 事 録 、
契 約 や 支 出 に 係 る伺 書 な ど の 文 書 を 閲 覧 し 、 債 権 管 理 に つ い て も 実 施 状 況 を
検 討 した。
さらに、保 護 台 帳 (保 護 廃 止 になった分 の台 帳 を含 む)の保 管 状 況 、金 券 類
( 小 切 手 ・ 郵 便 切 手 ・タ ク シ ー チケ ット ・ ウィ ズ ユー カ ー ドな ど )の 受 払 残 高 管 理 状
況 と 保 管 状 況 、 預 金 通 帳 ・銀 行 印 など 重 要 物 の金 庫 での保 管 状 況 の現 場 視 察
を行 った。
( 保 護 指 導 課 での 実 施 内 容 )
保 護 指 導 課 に おけ る実 地 調 査 では、主 に生 活 保 護 法 施 行 事 務 監 査 に 関 す る
書 類 、各 種 統 計 資 料 及 び全 市 の担 当 者 会 議 の議 事 録 など を閲 覧 すると ともに、
生 活 保 護 費 に関 する予 算 執 行 状 況 の分 析 を 行 った。
次 に、生 活 保 護 行 政 に関 する札 幌 市 独 自 の電 算 システムである生 活 保 護 OA
シ ス テ ム に つ い て も 、 そ の 構 築 から 現 在 ま で の 改 修 や 機 能 追 加 の 状 況 、 現 在 の
稼 働 状 況 、 他 のシステム との 連 携 など を調 査 し、 効 率 化 の観 点 から改 善 すべき
点 がないかを検 討 した。
さ ら に 、 各 区 で 毎 年 度 策 定 し て い る生 活 保 護 の 実 施 方 針 の 内 容 を 検 討 し た 。
これはその年 度 における生 活 保 護 実 施 の重 点 目 標 や数 値 目 標 を定 めたもので、
生 活 保 護 に 関 す る業 務 の 基 本 と な るもの で ある。 各 区 が 策 定 し た 実 施 方 針 を 保
護 指 導 課 から 入 手 し 、 そ の 内 容 を 比 較 検 討 し た 。 選 定 し た 3 区 に つ い て は 特 に
詳 細 に検 討 した。
( 4) 他 の章 での記 載
上 記 で 行 った調 査 や検 討 の うち、 保 護 指 導 課 が行 った監 査 の 内 容 につ いては
「 第 5 章 . 保 護 指 導 課 に よ る監 査 」 で 、 債 権 管 理 に 関 し て は 「 第 6 章 . 債 権 管 理
及 び 不 納 欠 損 処 理 」 で 、 関 係 文 書 の 閲 覧 内 容 と 結 果 に つ いて は 「 第 7 章 . 関 係
文 書 の 閲 覧 」で、 予 算 執 行 状 況 に 関 しては 「第 8章 . 予 算 執 行 状 況 の 分 析 」で
記 載 した。
47
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
2. 実 地 調 査
( 1) 相 談 から 申 請 受 理 ・保 護 開 始 決 定 (却 下 ・ 取 下 げ) までのフローチャ ート
申 請 か ら 保 護 開 始 ま で の 流 れ を 示 す と 以 下 の よ う に な る。 こ れ は 、 札 幌 市 保 健
福 祉 局 総 務 部 保 護 指 導 課 が作 成 した「生 活 保 護 事 務 標 準 事 務 処 理 要 領
(新 任 現 業 員 必 携 )」の平 成 20 年 度 改 定 版 に よる業 務 フローである。
来所
通報
面接相談
申請受理
戸籍照会・資産照会
実地調査
(申請後 7 日以内)
検討
(要否判定等)
申請者から
取下げの意思
申請取下げ
却下
保護開始
48
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
( 2) 相 談 から 申 請 受 理 ・保 護 開 始 決 定 (却 下 ・ 取 下 げ) までの手 続
① 来 所 ・通 報 ・面 接 相 談
札 幌 市 の 場 合 、各 区 が 保 護 実 施 機 関 とな ってお り、区 の保 護 課 の 相 談 担 当 者
が、 ど うして 生 活 保 護 を 受 けな け れば 生 活 が 成 り立 たな い状 況 に 至 ったの かを 聴
取 し 、 「 面 接 受 付 票 」 に 記 載 す る。 た だ し 、 面 接 時 は メ モ を と り、 面 接 終 了 後 「 面
接 受 付 票 」 を エ クセル で 作 成 す る( 紙 の 様 式 も あるがあ ま り使 われて いない )。「面
接 受 付 票 」に記 載 した内 容 は「面 接 記 録 票 」及 び「民 生 委 員 意 見 書 」に転 写 さ
れる。なお、申 請 がない場 合 、「面 接 記 録 票 」及 び「民 生 委 員 意 見 書 」(のデー
タ)は、破 棄 される。
申 請 者 が 初 め て 区 の 保 護 課 に 相 談 に 来 た 場 合 、 相 談 担 当 係 が 個 室 ブー ス に
案 内 して 聞 き取 りを 実 施 す る。 ほと んどの 場 合 本 人 だけ が来 所 す るため、 相 談 担
当 者 と 1 対 1 で対 応 することが多 い。
聞 き取 る内 容 はどうい う事 由 で 生 活 困 窮 になっ たのかが中 心 であり、病 気 、リスト
ラ 、 離 婚 に よ るものな ど 様 々 な事 由 があ る。 一 通 り生 活 困 窮 の 事 由 を 聞 いた 後 に
相 談 員 は、 来 訪 者 の財 産 状 況 や 扶 養 親 族 の有 無 など を 聞 き出 し 、他 法 他 施 策
の 利 用 の 可 否 を 検 討 す る。 生 活 保 護 は 最 後 の セ ーフ ティ ネ ッ ト であ り、 財 産 の 費
消 や扶 養 可 否 の検 討 を行 い、そして 適 用 可 能 な他 の法 制 度 に よる諸 施 策 をす
べて適 用 して、 それ でもなお 生 活 困 窮 の状 況 が解 消 できない 場 合 に ついて、この
保 護 制 度 を適 用 す ることになっている。
生 活 保 護 の相 談 があった 場 合 は、 保 護 制 度 の説 明 を行 う。申 請 の意 思 がある
かど う かを 確 認 し なが ら 、 必 要 とな る申 請 書 類 (「 生 活 保 護 開 始 申 請 書 」、 「 資 産
申 告 書 」、 「 収 入 申 告 書 」 、「 扶 養 義 務 者 届 」、「 同 意 書 」) の記 入 の 説 明 を 行 う と
ともに、必 要 書 類 (預 金 通 帳 のコピー、保 険 証 、年 金 手 帳 、障 害 者 手 帳 、過 去 3
ヶ月 分 の給 与 明 細 、保 険 証 書 、車 検 証 など)のうち用 意 可 能 なものの提 出 を依
頼 する。
「 生 活 保 護 開 始 申 請 書 」 、「 資 産 申 告 書 」 及 び「 収 入 申 告 書 」 に 世 帯 全 員 分 の
必 要 事 項 を記 入 す る 。 「同 意 書 」には収 入 や 資 産 などについて保 護 課 が関 係 先
に問 い合 わせ照 会 することへの承 諾 意 思 が記 載 される。
通 報 に よ る場 合 には、 通 報 を 受 け た担 当 者 が「 通 報 票 」 を 作 成 し、 で きる限 り事
情 聴 取 す るこ と に な っ て い る。 通 報 は 病 院 や 民 生 委 員 から な さ れ る場 合 が 多 く 、
該 当 者 からの聞 き取 りは CW が実 施 して「面 接 受 付 票 」を作 成 す る。「通 報 票 」と
「面 接 受 付 票 」は回 覧 資 料 となる。
② 申請
相 談 担 当 者 は 、 ケ ー ス ご と の 「 面 接 受 付 票 」 を 1 日 分 取 りま と め 、 来 所 申 請 ・ 相
49
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
談 ・ 通 報 が そ れ ぞ れ 何 件 あ っ た かを 確 認 して 「面 接 受 付 日 計 表 」 を 作 成 して、 翌
日 の 回 覧 に 備 え る。 「 面 接 受 付 日 計 表 」には 「面 接 受 付 票 」の み を 添 付 し、 相 談
担 当 係 長 が 課 長 及 び S V に 回 付 す る。 S V は 担 当 地 区 の 「 面 接 受 付 票 」 の 内 容
を 確 認 す る。 申 請 が あ っ た 場 合 は 、 相 談 担 当 係 長 が 「 面 接 記 録 票 」 及 び 「 保 護
開 始 申 請 書 」な ど を地 区 担 当 のS V に 回 付 し、S V が 書 類 を 確 認 した 後 、 地 区 担
当 CWに渡 される。一 CW当 たりの新 規 申 請 の 受 付 の件 数 は多 くて月 4 件 ぐらい
で あ り、 一 時 的 に 新 規 申 請 の 持 ち 件 数 が 増 え る と 、 他 の C W と 新 規 開 始 事 務 を
分 担 している。
「 面 接 受 付 票 」は 、申 請 の 有 無 に か か わ ら ず 相 談 担 当 係 長 に 返 却 さ れ 綴 ら れ
る。
③ 戸 籍 照 会 ・資 産 照 会
申 請 者 の「面 接 記 録 票 」及 び「保 護 開 始 申 請 書 」などが CW に渡 されると、CW
は生 活 保 護 OA システム(以 下 「OA システム」という。)上 で戸 籍 照 会 、資 産 照 会
を開 始 す る。担 当 CW の 仕 事 はここ から始 ま るこ とになる。 生 活 保 護 に関 す る業
務 を行 うこの OA システムは、平 成 元 年 に札 幌 市 が独 自 に外 注 で構 築 したシステ
ムであり、それ以 降 必 要 に応 じて改 修 や機 能 追 加 が行 われており、その端 末 はす
べての区 役 所 の保 護 課 に設 置 されている。
戸 籍 照 会 には 本 人 は も と よ り、 本 人 の 扶 養 義 務 者 ( 本 人 を 扶 養 す る義 務 の あ る
者 )の調 査 も含 まれている。資 産 照 会 は各 金 融 機 関 に対 して申 請 者 の預 貯 金 口
座 の 有 無 と 、 有 る場 合 に は 当 該 預 貯 金 の 残 高 、 各 保 険 会 社 に 対 し て 申 請 者 の
保 険 契 約 の有 無 と、有 る場 合 には当 該 契 約 の内 容 の確 認 を行 うものである。
具 体 的 には戸 籍 照 会 の 場 合 、 申 請 者 が 申 告 した本 籍 地 が 誤 って いない かを住
民 基 本 台 帳 の端 末 により確 認 す る。確 認 後 、O A システムに本 籍 ・戸 籍 筆 頭 者 な
どを入 力 し、 戸 籍 謄 本 及 び その附 票 の送 付 依 頼 についての伺 書 を出 力 する。出
力 し た伺 書 は 課 長 の バ ー コー ド決 裁 を 経 た 上 で 、 本 籍 地 の 市 町 村 に 送 付 す る。
札 幌 市 内 であれば自 区 の戸 籍 住 民 課 に持 参 して請 求 を行 い、遅 くとも 3 日 以 内
に、札 幌 市 外 であれば 10 日 ほどで回 答 がある。
資 産 照 会 の場 合 は、OA システム上 で「資 産 伺 い書 兼 回 答 結 果 処 理 簿 」 を作 成
し 、 申 請 者 が 提 出 し た 同 意 書 を スキ ャ ナ ー で読 み 込 ま せ た コピ ー を 添 付 して 、 課
長 決 裁 を 受 け る。 決 裁 後 管 理 係 が 集 約 し て 資 産 照 会 を 行 う 。 回 答 が あ ると CW
は申 請 者 の申 告 内 容 と 一 致 してい るかを 確 認 し、回 答 結 果 を 「 資 産 伺 い 書 兼 回
答 結 果 処 理 簿 」に手 書 きする。
なお、本 来 は申 請 を受 理 した翌 日 から 14 日 以 内 に保 護 要 否 の通 知 を行 わなけ
ればならず(法 第 24 条 第 3 項 )、特 別 な理 由 がある場 合 でもその期 間 を 30 日 ま
でしか延 長 することがで きない(法 第 2 4 条 第 3 項 但 し書 )。しかし、戸 籍 照 会 や資
産 照 会 には最 長 で 3 ヶ月 を要 す る場 合 があることから、すべての回 答 が揃 う前 に
50
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
保 護 開 始 の要 否 が決 定 されることになる。
通 知 期 間 を 延 長 で き る特 別 な 理 由 と し て は 、 要 否 の 判 断 に か か る 収 入 の 状 況
が 不 明 で あ っ た 場 合 、 生 活 実 態 が 確 認 で き な か っ た 場 合 などが挙 げられる。
④ 実態調査
戸 籍 照 会 及 び 資 産 照 会 の 手 続 き開 始 後 、 C W は 申 請 者 の 実 態 調 査 の た め 、
家 庭 訪 問 を行 う 必 要 があ る。家 庭 訪 問 は申 請 を 受 理 し た日 から1 週 間 以 内 に 行
う こ と に な っ てい る。 申 請 者 の 中 に は 電 話 が 止 め ら れ て い る者 も い るため 、 そ の 場
合 には、相 談 来 所 時 に事 前 に訪 問 日 時 の取 り決 めをしておく必 要 がある。
申 請 受 理 後 最 初 の家 庭 訪 問 におけ る聴 取 は、調 査 が容 易 であれば 1 時 間 ほど 、
複 雑 であれば 3 時 間 に及 ぶ場 合 もある。この聴 取 では、保 護 歴 、生 活 歴 、加 入 し
ている社 会 保 険 ・国 民 年 金 、稼 働 状 況 、病 院 の受 診 歴 などを確 認 する。
特 に 生 活 歴 の 聴 取 は 申 請 者 の 生 活 状 況 の 把 握 に 有 効 で あ るた め 特 に 時 間 を
かけ て 行 う 必 要 が あ り、ま た 家 庭 訪 問 は 生 活 状 況 を 目 視 で 確 認 す るこ と が で きる
ので重 要 であり、実 態 調 査 は家 庭 訪 問 が基 本 となっている。
聞 き取 りと 視 認 を 実 施 し な が ら 、 「 実 態 調 査 書 」 に 生 活 歴 、 世 帯 主 及 び 世 帯 員
の 状 況 、資 産 の 状 況 とそ の活 用 の 有 無 、他 法 他 施 策 の 活 用 状 況 、 扶 養 義 務 者
の状 況 、住 居 の状 況 などを詳 細 に記 録 する。
この家 庭 訪 問 の後 に、CW は「実 態 調 査 書 」を整 理 し、「ケース記 録 」及 び「援 助
方 針 票 」を 作 成 す る( 「援 助 方 針 票 」は全 市 共 通 のものではない)。「ケース 記 録 」
「援 助 方 針 票 」にも 申 請 者 が 抱 え る問 題 点 、ど のような 指 導 を して援 助 していく か、
他 法 他 施 策 の 活 用 や 決 定 した 訪 問 格 付 け(訪 問 格 付 けについては後 述 す る) を
記 入 す る。 「 ケ ー ス 記 録 」 は 保 護 開 始 後 に も 被 保 護 者 の 最 新 の 情 報 を 入 手 し た
場 合 、随 時 追 加 記 載 を行 う。「援 助 方 針 票 」に も、年 1 回 年 度 末 近 くに実 施 され
るケ ー ス 総 点 検 に お い て 、 援 助 方 針 の 見 直 し に よ り訪 問 格 付 け が 変 更 と な る場
合 があるので、その旨 記 載 する。
⑤ 世 帯 認 定 ・保 護 開 始 決 定
上 記 の実 態 調 査 の結 果 、収 集 した世 帯 の情 報 を OA システムに入 力 し、必 要
に 応 じ て 最 低 生 活 費 と 収 入 の 状 況 を 入 力 し て 、 OA シ ステ ム に お いて 保 護 費 の
計 算 を 行 い 、 最 低 生 活 費 に 収 入 が 満 た な け れば 差 額 を 扶 助 す るこ と と な る。 OA
システ ムには 保 護 費 の 計 算 の 基 礎 と な る「 生 活 保 護 法 に よ る保 護 の基 準 表 」( 例
え ば 、 世 帯 員 の 年 齢 や 人 数 に よ り決 め ら れ る 基 準 額 等 ) の 情 報 が マ ス タ ー と し て
登 録 さ れ て い るの で 、 被 保 護 者 の 年 齢 な ど を入 力 す るだ け で 、 最 低 生 活 費 の 計
算 は 自 動 的 に な さ れ る。 し た が っ て 、 保 護 費 を 支 給 す る か否 かの 要 否 判 定 は 機
械 的 に行 わ れ るが、保 護 費 の計 算 のチ ェッ ク は CW が実 施 し、決 裁 時 に係 長 も
行 う。計 算 チェック後 に、OA システムから「保 護 決 定 調 書 」を出 力 し、保 護 要 とな
ったケースについて、CW は保 護 開 始 の決 裁 書 類 をとりま とめる。
51
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
保 護 開 始 決 定 の 決 裁 に 必 要 な 書 類 は、 申 請 者 提 出 書 類 、 実 態 調 査 書 、ケ ー
ス記 録 、援 助 方 針 票 、戸 籍 謄 本 、民 生 委 員 の 意 見 書 ほか各 挙 証 書 類 であり、こ
れらを 取 りま とめて係 長 、課 長 、部 長 の決 裁 を 受 けるが、支 給 開 始 の決 裁 は課 長
が ハン ディ タ ー ミナ ル で保 護 決 定 調 書 のバ ー コー ド を 読 み 取 るこ とに よ ってな さ れ
る。 保 護 開 始 時 に おいて 、バ ー コー ドの 読 み 取 りが さ れていな け れば 保 護 費 が 支
給 さ れ な い 。 未 決 裁 リ ス ト が 出 力 さ れ るが 、 こ れ に よ り 毎 月 の 保 護 費 の 決 定 作 業
の際 にバーコード決 裁 が漏 れていないか確 認 している。
⑥ 却 下 ・取 り下 げ
却 下 は、 保 護 を 要 しな い と 判 定 した 場 合 の 措 置 で あ り、高 額 療 養 費 など の 特 例
的 措 置 、境 界 層 該 当 によるものもある。
生 活 保 護 に 該 当 しな い 者 で あ っても、 申 請 意 思 が 表 明 さ れた 場 合 には 申 請 書
を 交 付 し 、 記 入 さ れ た 申 請 書 を 受 理 し 、 受 理 後 の 却 下 と な る。 そ の 他 申 請 して き
た の に 調 査 に 協 力 し な い ケ ー ス ( 訪 問 を 拒 否 す る、 実 態 調 査 に 応 じ な い な ど ) が
あり、30 日 ルールの 適 用 可 否 で 検 討 す る。3 0 日 経 過 後 も 保 護 の実 施 機 関 は、
必 要 な調 査 を行 い、開 始 または却 下 を決 定 しなければならない。 保 護 課 は 、申 請
か ら 30 日 を 経 過 す る 特 別 な 理 由 が あ る 場 合 に は 、理 由 を 明 示 し て 予 め 申 請
者 に 通 知 し な け れ ば な ら ず 、申 請 か ら 3 0 日 を 経 過 し て も 、そ の 通 知 が な い
ときには、申請者は申請が却下されたものとみなして、法的な手続きを行
う こ と が で き る 。 却 下 の場 合 は却 下 ケースと して 1 冊 の台 帳 にまとめて各 人 の
資 料 が編 綴 される。
高 額 療 養 費 などの 特 例 的 措 置 によ る却 下 は、 要 否 判 定 の際 に、 高 額 療 養 費 を
一 般 (70 歳 未 満 の場 合 )の額 80 ,100 円 で 判 定 した場 合 には保 護 要 となるが、非
課 税 世 帯 の額 35,400 円 で判 定 す れば保 護 否 となる場 合 には、申 請 を却 下 する
こ と に よ り 高 額 療 養 費 の 特 例 的 措 置 を 受 け るこ と が で き る 。 却 下 決 定 通 知 書 に
「国 保 特 例 高 額 療 養 費 該 当 」「 国 保 特 例 標 準 負 担 額 減 額 該 当 」 と記 載 さ れ、申
請 者 に 対 し て却 下 通 知 書 をも っ てす み や かに減 額 申 請 す るよ う 指 導 す るこ と と な
る。
境 界 層 該 当 に よ る却 下 には 介 護 保 険 法 に よ るも の と 障 害 者 自 立 支 援 法 に よ る
も の が あ る。 介 護 保 険 法 に よ るも の は 、 申 請 時 点 で の 介 護 に 関 す る 費 用 で 判 定
す る と 保 護 要 と な るが 、 減 額 さ れ れ ば 保 護 否 と な る申 請 者 に 対 し て 境 界 層 該 当
者 として却 下 し、「境 界 層 該 当 証 明 書 」などを 発 行 し、減 額 手 続 をさせる。
障 害 者 自 立 支 援 法 に よるものは、同 法 により障 害 者 福 祉 サービス、自 立 支 援
医 療 及 び 補 装 具 を 利 用 す る者 から 生 活 保 護 の 申 請 が あ った 場 合 に 、要 否 判 定
を 行 う と 、 保 護 要 と な るが 、 利 用 料 及 び 食 事 など 実 費 負 担 額 に つい て 減 額 も し く
は 免 除 す る措 置 が取 ら れ るこ とに よ って保 護 否 と な る場 合 には、境 界 層 該 当 者 と
して却 下 し、「障 害 者 自 立 支 援 法 における境 界 層 該 当 証 明 書 」などを発 行 し、減
52
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
額 手 続 をさせる。
申 請 者 か ら 申 請 取 下 げ の 意 思 表 示 が あ っ た 場 合 は 取 り 下 げ と し て 処 理 す る。
「 保 護 取 下 申 請 書 」 に 申 請 を 取 り下 げ る趣 旨 と理 由 を 記 載 させ 、 提 出 させ る。 提
出 を受 けた CW は申 請 者 から受 理 した書 類 一 式 の写 しを保 管 し、原 本 は申 請 者
に返 却 する。
( 3) 支 給 の手 続
① 保 護 費 の計 算
上 記 の 保 護 開 始 決 定 以 外 に、 保 護 費 の計 算 は翌 月 1 日 の 支 給 に 際 して、
当 月 の 15 日 前 後 が締 切 日 となる。締 日 には仮 締 めと本 締 めがある。仮 締 めと本
締 めについては CW などの担 当 者 レベルでの作 業 内 容 は同 じであり、本 締 めが
変 更 事 務 の 最 終 作 業 とな っ て い るが 、 で きる限 り仮 締 め で 作 業 内 容 を 完 結 さ せ
てい る。例 え ば、 保 護 受 給 者 から の収 入 申 告 が 仮 締 め で 間 に 合 わない ケース が
あり、その際 には見 込 みで実 施 することもある( 詳 細 は後 述 )。
② 窓口支給
窓 口 支 給 は、通 常 は生 活 保 護 費 の 1 回 目 の支 給 や何 らかの理 由 で 被 保 護 者
が 窓 口 支 給 を 選 択 し た 場 合 な ど に 発 生 す る。 管 理 係 に お い て 保 護 費 計 算 の 仮
締 めの毎 月 20 日 前 後 までに「係 長 口 座 用 資 金 前 渡 金 の支 出 負 担 行 為 伺 」 及
び 「 支 出 命 令 簿 」 を 作 成 す る( 「 支 出 命 令 簿 」は 全 市 共 通 のも ので はない )。 例 え
ば、北 区 の場 合 であれば必 要 額 の目 安 は 5 千 万 円 から 6 千 万 円 程 度 で財 務 シ
ステムの端 末 で 処 理 し、 支 出 負 担 行 為 は保 健 福 祉 課 との合 議 で 行 うが、支 出 命
令 は経 理 担 当 課 である保 健 福 祉 課 が決 裁 を 行 っている。
毎 月 25 日 前 後 に翌 月 支 給 の扶 助 費 のうち窓 口 支 給 分 の「保 護 決 定 通 知 書 」
を 被 保 護 者 宛 に 発 送 す る。 日 々 に お い て も 窓 口 支 給 の ケ ー ス は 北 区 の 場 合 、 1
日 当 たり約 25 件 ある。
被 保 護 者 が 通 知 書 を 持 っ て 保 護 費 を 取 りに 来 た 場 合 、 窓 口 支 給 し て 良 い かど
うかの確 認 を担 当 C W が行 う。窓 口 支 給 に問 題 ないと決 裁 されれば、被 保 護 者
は管 理 係 のところに 行 き、計 算 さ れた金 額 の小 切 手 を受 領 す る。この 際 、管 理 係
は OA システムで「生 活 保 護 費 支 給 調 書 」 を 出 力 し、本 人 の 持 参 した通 知 書 番
号 を 記 入 して 確 認 し、 小 切 手 の 受 領 印 を も ら う。 そ の「 生 活 保 護 費 支 給 調 書 」は 、
係 長 までの決 裁 がされる。支 給 調 書 には支 給 した小 切 手 No.が記 載 される。
被 保 護 者 は 当 該 小 切 手 を区 に 出 張 所 を設 け ている金 融 機 関 (北 洋 銀 行 )の 窓
口 で現 金 化 する。
日 締 めの処 理 としては、管 理 係 担 当 が小 切 手 控 の枚 数 と支 給 調 書 の枚 数 の一
致 を確 認 し、「現 金 出 納 簿 」に記 載 して、課 長 までの決 裁 を受 ける。翌 月 1 日 の
53
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
支 給 日 から 7 日 以 内 に係 長 口 座 用 資 金 前 渡 精 算 処 理 を行 う。「資 金 前 渡 精 算
書 」を作 成 し、 出 納 簿 の 預 金 残 高 の 一 致 を確 認 し 出 納 簿 を精 算 書 に 添 付 し て
決 裁 を 受 け る。 金 融 機 関 から の当 座 勘 定 照 合 表 が 到 着 次 第 出 納 簿 との 照 合 を
行 う。
③ 口座振込
生 活 保 護 費 の 支 給 は ほと んどが 口 座 振 込 で 行 わ れ る。 口 座 振 込 の場 合 には、
管 理 係 の担 当 者 が毎 月 12 日 前 後 に資 金 前 渡 金 支 出 手 続 を行 う。手 続 は窓 口
支 給 の 場 合 と 同 様 で あ り、 口 座 振 込 額 を 前 年 度 同 月 の 実 績 と 前 月 の 伸 び 率 か
ら見 積 もって伺 いを行 う。
本 締 め終 了 後 、OA システムで口 座 振 込 データを作 成 し送 信 を行 う。送 信 の締
め切 りは本 締 めの 2 日 後 であり、データは札 幌 市 のサーバーに転 送 され、本 庁 の
保 護 指 導 課 が 取 り出 す 。 保 護 指 導 課 か ら 北 洋 銀 行 札 幌 市 役 所 支 店 へ 各 区 の
口 座 振 込 デ ー タ を 引 き渡 す。 引 き渡 し の翌 日 に 区 部 長 口 座 に 資 金 前 渡 金 が 入
金 さ れ る。 支 給 日 の 前 日 ま で に 口 座 取 り 消 し が 発 生 し た 場 合 、 区 保 護 課 から 北
洋 銀 行 札 幌 市 役 所 支 店 へ連 絡 し、支 店 が取 り消 し処 理 を行 う。 振 込 デー タは当
該 支 店 から 各 金 融 機 関 へ 支 給 日 前 日 の 夕 方 送 付 さ れ る。 支 給 日 に な っ て 、 各
金 融 機 関 から 各 受 給 者 の 口 座 へ振 込 がで きな い場 合 は、口 座 振 込 不 能 処 理 を
行 う。
この処 理 では当 該 支 店 が受 給 者 の各 金 融 機 関 の振 込 口 座 への送 金 額 につい
て全 区 保 護 課 の振 込 データを取 りま とめ、支 給 日 から 7 日 以 内 に精 算 の手 続 を
行 う。 現 金 出 納 簿 の 締 め と銀 行 残 高 との 確 認 は、 窓 口 支 給 の場 合 と同 様 の 手
続 である。
( 4) 訪 問 調 査 活 動
訪 問 調 査 活 動 は 、 ケ ー ス ワ ー ク の 基 本 で あ り、 業 務 遂 行 上 最 も 重 要 な 活 動 で
あ る。 申 請 時 も 勿 論 だ が 、 保 護 開 始 と な っ て か ら も 継 続 的 に 被 保 護 者 と の コ ミ ュ
ニ ケ ー シ ョ ン を 図 るこ と に よ っ て 、 当 該 ケ ー ス の 世 帯 状 況 に 変 化 が あ っ た と きに 、
情 報 を収 集 して、今 後 のケースの方 向 性 を検 討 することになる。
訪 問 調 査 は、稼 働 指 導 が可 能 なケースであ れば、その頻 度 を増 すこ とによって
就 労 ・自 立 の実 現 を図 ることがで きる場 合 もあるので、そのようなケースについては
訪 問 頻 度 を多 く設 定 している。
札 幌 市 で は 、 ケ ー スに 応 じ て 訪 問 格 付 け を 設 定 し て い る。 この 格 付 け は 保 護 開
始 時 に 決 定 さ れ るが 、 開 始 後 に も 世 帯 員 の 状 況 の 変 化 が あ れ ば そ の 都 度 見 直
すことにな ってい る。 状 況 に 変 化 がな い場 合 で も年 度 末 近 くのケース 総 点 検 で見
直 しがされる。
ケ ー ス 総 点 検 は すべ ての ケ ース に つ いて 見 直 し を す るも の で あ り、 年 明 け から 年
54
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
度 末 にかけて実 施 される。総 点 検 は 各 課 の 係 の 中 で 、担 当 CW が 係 長 に ケ ー ス
の説明をする方法で行われるが、必要であれば課長も同席する。
また、総点検の結果、すべてのケースについて、援助方針に変更があれば
「援助方針票」に記載して、課長の決裁を受ける。
なお、札 幌 市 の生 活 保 護 実 施 方 針 に 基 づ き北 区 が 定 めてい るケース 格 付 基 準
及 び支 援 の着 眼 点 等 は以 下 のとおりである( 表 4-1)。格 付 けを ABC の3つに分
類 し、ケースの実 態 に応 じて 面 接 や家 庭 訪 問 の頻 度 、支 援 の着 眼 点 を 定 めてい
る。
(表 4-1)ケース格付基準及び支援の着眼点等
格付け
北区格付
面接頻度
家庭訪問
(分類)
統計要件
基準
最低基準
分類基準(支援の着眼点)
稼働指導を援助方針とする世帯(就労可能でありな
A
(A12)
年 12 回
年 6 回以上
中的な支援を行うことによって就労・自立の実現が
可能な世帯等
A
A'
(A6)
B
がら就労していない者のいる世帯)で、短期間に集
B
(B4)
転職(増収含む)や稼働指導のうち、条件・制約等
年6回
年 3 回以上 について考慮の余地がある世帯、また稼働能力の
活用以外で解決すべき重点的な課題のある世帯等
年4回
年 2 回以上 (A、C 以外の世帯)
経済給付を主として処遇することで足りる世帯
C
(C2)
年2回
年2回
C
(例)日常生活に留意すれば足りる高齢者世帯、治
癒が見込めない障害・傷病により稼働不可の者で
安否確認の問題がない世帯
C'
(C1)
年1回
年1回
単身者等で長期に医療機関又は社会福祉施設に
入院又は入所している世帯
(注)1 面接頻度は、家庭訪問、来所面接、関係先訪問を総じたものである。
(注)2 求職活動中の者については、毎月の収入申告書及び求職活動報告書の提出を厳重に指導し、
確実に履行させる。
55
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
( 5)諸 変 更
① 入 院 基 準 の変 更
被 保 護 者 が入 院 した場 合 、OA システム上 “入 院 ”区 分 に変 更 する必 要 がある。
入 院 期 間 中 は 入 院 患 者 日 用 品 費 以 外 の 生 活 扶 助 費 を 支 給 す る必 要 がない に
も係 わらず OA システム上 “居 宅 ”区 分 のままにしてしまうと、居 住 している基 準 で
生 活 扶 助 費 が支 給 されて過 支 給 となってしまう からである。
入 院 の事 実 の把 握 については医 療 機 関 から連 絡 がある場 合 と被 保 護 者 から連
絡 がある場 合 がある。 前 者 は、医 療 機 関 自 身 が入 院 医 療 券 の手 続 を 早 く開 始 し
たいためなどの理 由 に よる連 絡 であ り、入 院 後 遅 滞 なく C W になされ る。医 療 機
関 か ら の 連 絡 が な い 場 合 も あ り、 そ の 場 合 は 被 保 護 者 か ら の 申 し 出 に 基 づ き医
療 機 関 に確 認 することになる。
入 院 基 準 の変 更 を要 す る場 合 に、CW は OA システム上 で生 活 扶 助 を入 院 の
基 準 に 変 更 入 力 し 、 保 護 決 定 調 書 を 出 力 し、課 長 が 決 裁 時 に 同 調 書 のバ ー コ
ードをハンディターミナルで読 み取 ることで保 護 費 の額 が変 更 となる。
一 方 で 、 CW が O A シ ス テ ム 上 で 医 療 機 関 や 入 院 日 な ど を 入 力 す る ( 医 療 登
録 ) と 医 療 決 定 調 書 が 出 力 さ れ るが 、同 調 書 には バ ー コード はなく、 課 長 が 決 裁
欄 に決 裁 印 を押 印 する。
OA システム上 の基 準 の変 更 は入 院 見 込 期 間 が 1 ヶ月 未 満 か 1 ヶ月 以 上 かに
よる。1 ヶ月 未 満 の場 合 、基 準 の変 更 を要 しな い。1 ヶ月 以 上 の場 合 は、月 の初
日 に入 院 の場 合 当 日 から基 準 の変 更 を行 い、2 日 以 降 に入 院 の場 合 翌 月 1 日
付 で 基 準 の 変 更 を 行 う。 基 準 の変 更 に よ り過 支 給 が生 じ る場 合 、被 保 護 者 に 確
認 のう え、返 納 金 の支 払 方 法 を 決 め、返 納 金 収 入 認 定 もしくは戻 入 処 置 を とる。
返 納 金 収 入 認 定 の場 合 6 ヶ月 ま で分 割 で認 定 することが可 能 であり、当 該 分 割
状 況 を OA システムに反 映 させ、保 護 決 定 調 書 で決 裁 を受 け る。戻 入 処 置 の場
合 「扶 助 費 戻 入 伺 書 」 を作 成 し、納 付 書 を添 付 して受 給 者 に渡 し 金 融 機 関 に出
向 いて納 付 させる。
厚 生 労 働 省 で は こ ち ら の 方 法 が 原 則 と し て い る が 、被 保 護 者 の 利 便 性 、回
収可能性及び事務の効率性の観点からは、返納金収入認定の方が優れてお
り、実務上も収入認定がほとんどである。
退 院 の 場 合 、 被 保 護 者 本 人 及 び 医 療 機 関 から 連 絡 が あ る。 退 院 後 別 の 病 院
に通 院 する場 合 は入 院 していた病 院 から今 後 通 院 する病 院 への連 絡 もある。
② 世 帯 人 員 増 減 の基 準 変 更
世 帯 からの転 出 入 があった場 合 には、受 給 者 から「世 帯 の異 動 等 申 告 書 」の
提 出 を受 ける。氏 名 、人 員 増 減 となった月 日 、転 出 入 理 由 、転 出 入 先 を 調 査 す
る。ケース記 録 には転 出 年 月 日 、過 支 給 額 の返 済 方 法 及 び金 額 などを記 載 す
56
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
る。ケース記 録 の作 成 は基 準 変 更 処 理 と同 時 のことが多 い。
③ 収 入 の増 減
就 労 に 伴 う 収 入 は 毎 月 変 動 す るこ と が 想 定 さ れ るた め 、 認 定 の 方 法 は 見 込 認
定 と実 額 認 定 がある。見 込 認 定 には前 3 ヶ月 の平 均 によってその額 を求 め る方
法 がある。毎 月 の実 績 額 の変 動 が大 きい 場 合 には、最 初 は見 込 額 で 「保 護 決 定
調 書 」 に よ る決 裁 を 受 け 、 そ の 後 実 績 額 が 確 定 し た と き改 め て 、 実 績 額 で 「 保 護
決 定 調 書 」によ る決 裁 を 受 け る。毎 月 の実 績 額 が落 ち着 いてくると、 前 3 ヶ月 の
平 均 額 で、今 後 3 ヶ月 間 の支 給 額 とみなすことができる。この場 合 は「保 護 決 定
調 書 」はその都 度 は作 成 せず、最 初 の月 だけ作 成 される。
3 ヶ月 平 均 認 定 のケースにおいては、以 下 の業 務 フローとなっている。
受 給 者 よ り毎 月 、 「 給 与 明 細 書 」 と 「 収 入 ( 無 収 入 ) 申 告 書 」 の 提 出 を 受 け 、 CW
が日 付 入 りの受 付 印 を押 印 す る。上 記 資 料 に 基 づき、前 3 ヶ月 分 の給 与 金 額 な
どを入 力 し、OA システム処 理 により「稼 働 収 入 3 ヶ月 収 入 平 均 認 定 」を 出 力 する。
実 収 入 額 とのかい離 が大 きい場 合 は、過 支 給 額 または追 給 額 が生 じる。
実 額 認 定 の ケー スは 、 受 給 者 からの 申 告 額 によ り「 保 護 決 定 調 書 」 に よ る決 裁
を 受 け 、 実 額 が 決 定 した 月 に、 実 額 と 申 告 額 の 差 額 調 整 を し て 再 び 「 保 護 決 定
調 書 」による決 裁 を 受 ける。過 支 給 の時 は、返 納 金 収 入 認 定 として処 理 する。
そのほかに特 別 控 除 認 定 があり、年 に 2 回 、就 労 している受 給 者 に対 して認 定
さ れ るも の で あ る。 「 特 別 控 除 認 定 調 書 」 を 出 力 す るが 、 毎 月 の 収 入 額 な ど の 基
礎 デ ー タ の 入 力 は 不 要 で あ り、 年 間 特 別 控 除 限 度 額 は 年 間 収 入 に よ り自 動 計
算 さ れ る。 「 特 別 控 除 認 定 調 書 」 に 基 づ いて 「保 護 決 定 調 書 」 に 入 力 し 、 決 裁 を
受 け る。 一 月 の 認 定 額 に は 限 度 があ るた め、 これ を 超 え た 分 は 翌 月 以 降 の 認 定
となり、その都 度 「保 護 決 定 調 書 」を作 成 する。 認 定 がなくなる月 にも特 別 控 除 削
除 として「保 護 決 定 調 書 」を作 成 する。
④ ケース移 管 ・受 理
ケ ー ス 移 管 は 担 当 区 か ら 市 内 担 当 地 域 外 他 区 に 転 居 す る 場 合 が 該 当 す る。
手 続 と し て は 、 被 保 護 者 から 、 世 帯 の 「 異 動 申 告 書 」 、 「 家 賃 証 明 書 」 ( 新 住 居 ) 、
「生 活 保 護 申 請 書 」(移 送 費 、敷 金 、不 動 産 仲 介 料 等 が必 要 な場 合 )を提 出 さ
せ る。 ケ ー ス 記 録 の 上 、 決 定 調 書 、 各 種 連 絡 票 ( 国 保 、 税 務 、 民 生 委 員 、 必 要
に応 じ 住 宅 課 など 宛 )を 出 力 し、 添 付 す る。 区 外 に移 管 す る場 合 、さ らに レセ プト
3 ヶ月 分 の写 しを添 付 する。
ケ ー ス 受 理 は 他 区 か ら 担 当 区 へ の 転 居 あ るい は 担 当 地 区 が 変 わ る 区 内 の 転
居 であり、ケース台 帳 など一 式 を受 け取 る手 続 きを行 う。
57
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
( 6) 生 活 扶 助 と住 宅 扶 助
①生 活 扶 助
衣 食 そ の 他 日 常 生 活 に 必 要 な も の の 扶 助 で あ り、 個 人 の 食 費 ・ 被 服 費 ・ 移 送
費 、 世 帯 共 通 の 光 熱 水 費 ・ 家 具 什 器 費 な ど であ る。 障 害 者 ・ 母 子 な ど には 加 算
がある。生 活 扶 助 については OA システムで自 動 計 算 される。
生 活 保 護 法 によ る保 護 の 基 準 表 に おいては 第 一 類 、第 二 類 が その 中 心 とな る。
第 一 類 は 年 齢 ご と の 基 準 額 、 第 二 類 は 人 員 ご と の 基 準 額 で あ り、 こ の 第 二 類 に
は冬 季 加 算 がある。
札 幌 市 が当 てはまる級 地 区 分 1 級 地 2 の基 準 額 は、例 えば、3 人 世 帯 で世 帯
主 が 47 歳 の女 性 、その他 の世 帯 員 が 17 歳 と 16 歳 であった場 合 には、第 一 類
の基 準 では 41 歳 から 5 9 歳 が 36,46 0 円 、12 歳 から 1 9 歳 が 40,19 0 円 であるか
ら、生 活 扶 助 費 =36,460 円 +40 ,190 円 ×2= 116,840 円 となる。また、これに加
えて 18 歳 ま での児 童 がいる世 帯 は母 子 加 算 に該 当 し、児 童 2 人 の場 合 には
25,100 円 が加 算 されるため、第 一 類 と加 算 の 合 計 は 141,940 円 となる。第 二 類
の基 準 では 3 人 世 帯 であるから、50,890 円 が該 当 するので、最 低 生 活 費 としての
生 活 扶 助 合 計 は月 額 192,830 円 となる。
生 活 扶 助 の 一 例 と し て 引 越 し に 要 す る荷 物 の運 搬 に 係 る移 送 費 が あ る。 手 続
としては、 受 給 者 よ り 「 生 活 保 護 変 更 申 請 書 」 と 引 越 業 者 3 社 の 「 見 積 書 」
が 提 出 さ れ る 。CW は 3 社 の 見 積 の う ち 最 低 金 額 を 支 給 決 定 し た 旨 な ど を ケ
ー ス 記 録 に 記 載 す る 。 OA シ ス テ ム に 入 力 し 、 そ れ を 出 力 し た 「 保 護 決 定 調
書 」に 課 長 決 裁 (バ ー コ ー ド 決 裁 )を 受 け る 。受 給 者 か ら の 要 望 に 応 じ て 窓 口
支給または振込で支給する場合と業者に直接振り込む場合がある。
② 住宅扶助
家 賃 や地 代 のほか、賃 借 契 約 更 新 時 の費 用 、 家 屋 の改 修 や補 修 、さらに転 居
時 の敷 金 ・仲 介 手 数 料 などである。
生 活 保 護 法 に よ る保 護 の 基 準 表 にお いては、住 宅 扶 助 の うち 家 賃 に 相 当 す る
部 分 については人 数 により上 限 額 が決 められており、札 幌 市 では上 記 3 人 世 帯
の場 合 には住 宅 扶 助 は 46,000 円 以 内 ということになる。
住 宅 扶 助 の一 例 として敷 金 の支 給 がある。手 続 としては、 受 給 者 よ り 「 生 活 保
護 申 請 書 」 及 び 「 家 賃 証 明 書 」 の 提 出 を 受 け る 。 CW は ケ ー ス 記 録 に 、 転 居
の旨、金額、敷金の返戻の有無、支給限度額内であることの確認などを記
載 す る 。家 賃 ・地 代 に対 する住 宅 扶 助 は毎 月 の生 活 費 に計 上 して支 給 している
が、改 修 費 や敷 金 などについては、臨 時 的 に決 裁 を受 け個 別 に支 給 している。
58
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
( 7) 医 療 扶 助 と介 護 扶 助
①医 療 扶 助
医 療 扶 助 と は、 診 察 、 医 学 的 処 置 、治 療 材 料 な どの 範 囲 内 に お いて 行 わ れ る
もので、原 則 として医 療 行 為 などの現 物 給 付 により行 われるものである。
一 般 の被 保 険 者 (患 者 )の場 合 、「健 康 保 険 被 保 険 者 証 」を提 示 して医 療 機
関 の 診 療 を 受 け るが 、 被 保 護 者 の 場 合 は 、 福 祉 事 務 所 が 交 付 す る「 医 療 券 」 を
医 療 機 関 に提 出 し医 療 を受 け ることとなる。
医 療 券 交 付 ま での基 本 的 な 事 務 の 流 れ として は、被 保 護 者 からの診 療 や医 学
的 処 置 な どの ための 医 療 機 関 受 診 に 係 る申 請 に 基 づ き、 OA システム にて 医 療
券 などの発 行 を行 うための医 療 登 録 を行 い「医 療 決 定 調 書 」に決 裁 を受 け、医
療 券 を 交 付 す るこ と と してい る。 なお、 被 保 護 者 の 体 調 に よ っては 来 所 す るこ と が
で きな い 場 合 も あ るた め 、 そ の 際 は 電 話 で の 申 請 を 受 け 、 後 日 直 接 医 療 機 関 に
医 療 券 を送 付 す る旨 、医 療 機 関 へ電 話 で連 絡 を行 っている。
また、医 療 登 録 は、医 療 券 の発 行 が診 療 の給 付 が月 の中 途 を始 期 または終 期
と す る場 合 以 外 は 月 を 単 位 と し て な さ れ て い る た め 、 外 来 の 場 合 は 通 院 開 始 日
から最 終 通 院 日 の 属 す る月 の末 日 、 入 院 の 場 合 は入 院 日 から退 院 日 で 行 うこと
としている。
次 に 治 療 材 料 で あ るが 、 被 保 護 者 が 治 療 のため メ ガ ネ 、 歩 行 用 補 助 杖 、 装 具
などの治 療 材 料 が必 要 な場 合 は現 物 給 付 により扶 助 される。
基 本 的 な 事 務 の 流 れ と し て は 、 被 保 護 者 よ り 治 療 の た め 装 具 が 必 要 で あ る旨
の記 載 がなされた「保 護 変 更 申 請 書 」の提 出 を 受 け、CW は「給 付 要 否 意 見 書 」
を交 付 する。
被 保 護 者 は医 療 機 関 を受 診 した際 、上 記 意 見 書 に医 師 の意 見 を記 載 してもら
う。医 師 の判 断 が要 であれば、業 者 から見 積 書 を取 り業 者 も意 見 書 に捺 印 す る。
被 保 護 者 は医 師 及 び業 者 の捺 印 がある意 見 書 を CW に提 出 する。CW は記 載 さ
れ た 内 容 に 基 づ き、 そ の 要 否 を 実 施 機 関 医 と 協 議 し 、 そ の 結 果 に つ い て ケ ー ス
記 録 に 記 載 し て 、 「 保 護 決 定 調 書 」 を 作 成 し 、 課 長 決 裁 を 受 け る。 こ の 決 裁 後 、
管 理 係 の 医 療 事 務 担 当 者 が 押 印 し、 即 時 「 治 療 材 料 券 」 を発 行 し、「受 領 書 」と
合 わせて 業 者 に 送 付 す る。同 時 に 「治 療 材 料 請 求 書 管 理 簿 」に 記 載 する。 業 者
より上 記 「治 療 材 料 券 」と「 受 領 書 」が返 送 され る。
次 に 移 送 費 で あ るが 、 件 数 と し て は 移 送 費 の 中 で 最 も 多 い の が 通 院 に 要 す る
移 送 費 (交 通 費 )であ る。この 通 院 に 要 す る移 送 費 はバス、 地 下 鉄 などの公 共 交
通 を 利 用 す る場 合 と タ クシ ー を利 用 す る場 合 の 2通 りがあ る。基 本 的 な 事 務 の 流
れ は 、 被 保 護 者 か ら 通 院 の た め の 交 通 費 に つ い て 支 給 し て ほし い 旨 、 記 載 さ れ
た「保 護 変 更 申 請 書 」を受 け、被 保 護 者 に「給 付 要 否 意 見 書 」 を交 付 す る。被 保
護 者 は、医 療 機 関 から「給 付 要 否 意 見 書 」に 主 治 医 意 見 など を記 載 してもらい、
59
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
これを CW に提 出 す る。これを受 けた C W は、給 付 の必 要 性 ・交 通 手 段 ・経 路 な
どを検 討 し、その結 果 をケース記 録 し、OA システム処 理 後 、課 長 決 裁 を受 ける。
検 討 の 結 果 、給 付 を要 すると 決 定 した 場 合 は 、改 めて、「保 護 変 更 申 請 書 」を 交
付 す る。 被 保 護 者 は 交 付 さ れ た 申 請 書 を 医 療 機 関 に 提 出 し 、 医 療 機 関 に 通 院
日 を記 載 してもらいそれ を CW に提 出 す る。C W は提 出 された申 請 書 の内 容 を確
認 し、OA システムにて決 定 調 書 を作 成 の上 、課 長 決 裁 を受 け る。
なお、通 院 に要 する移 送 費 を決 定 する場 合 、 被 保 護 者 が通 う医 療 機 関 が比 較
的 近 距 離 かど う かに 特 に 留 意 し て い る と の こ と で あ る。 こ れ は 、 滝 川 市 の 生 活 保
護 費 不 正 受 給 事 件 ( 実 態 は 札 幌 市 居 住 で あ る に も 係 わ ら ず 、 滝 川 市 から 札 幌
市 の北 海 道 大 学 付 属 病 院 に通 院 するとい う名 目 で多 額 の通 院 移 送 費 を 不 正 に
受 給 し た 事 件 ) 以 降 、 給 付 範 囲 な ど の 要 件 が 明 確 さ れ た こ と も あ り、 特 に 留 意 し
ているとのことであった。
②介 護 扶 助
介 護 扶 助 とは、介 護 保 険 制 度 の保 険 給 付 の 対 象 となる居 宅 介 護 、施 設 介 護
など の介 護 サービスの 範 囲 内 で行 われるもので、 医 療 扶 助 同 様 、原 則 として 現
物 給 付 により行 われ る。
介 護 保 険 は 40 歳 以 上 の者 が加 入 している医 療 保 険 または年 金 から介 護 保 険
料 を支 払 い、介 護 サービスを利 用 した場 合 には原 則 として 1 割 が自 己 負 担 となる。
被 保 護 者 が介 護 保 険 制 度 の 被 保 険 者 であ る場 合 は、当 該 1 割 の 自 己 負 担 が
介 護 扶 助 として給 付 され、被 保 護 者 が介 護 保 険 の被 保 険 者 ではない場 合 には
全 額 が介 護 扶 助 として給 付 される。
介 護 保 険 制 度 の被 保 険 者 が 4 0 歳 以 上 65 歳 未 満 か、あるいは 65 歳 以 上 かで 、
介 護 サービスを利 用 で きる条 件 が異 なっている。40 歳 以 上 65 歳 未 満 の者 のうち、
医 療 保 険 に 加 入 し ていな い 被 保 護 者 は 介 護 保 険 の 被 保 険 者 とな らな いた め、
生 活 保 護 では独 自 の制 度 を設 けている。以 下 65 歳 以 上 の者 は介 護 保 険 の第 1
号 被 保 険 者 、40 歳 以 上 65 歳 未 満 で医 療 保 険 に加 入 しているものは第 2 号 被
保 険 者 、被 保 険 者 以 外 の者 については H 番 号 受 給 者 と記 載 す る。
第 1 号 及 び 第 2 号 被 保 険 者 に該 当 する者 は 各 区 保 健 福 祉 課 に介 護 認 定 調
査 に係 る申 請 をす る。申 請 後 、保 健 福 祉 課 の職 員 または在 宅 福 祉 サービス協 会
の職 員 が 被 保 険 者 宅 を訪 問 し、 認 定 調 査 を行 うとともに、主 治 医 から意 見 書 を
徴 取 す る。 認 定 依 頼 の た め の 書 類 を そ ろ え て 、 介 護 認 定 審 査 会 で 認 定 審 査 が
行 われる。この審 査 には約 1 ヶ月 を要 し、その結 果 は保 健 福 祉 課 から 被 保 険 者
へ 通 知 さ れ ると と も に 、 国 民 健 康 保 険 団 体 連 合 会 ( 以 下 「 国 保 連 」 と い う 。 ) へ も
異 動 連 絡 票 が送 られ る。 国 保 連 では事 業 所 から請 求 があ った介 護 報 酬 の 審 査 ・
支 払 事 務 を市 町 村 に 代 わって行 っており、 各 保 険 者 (ここでは 各 区 保 健 福 祉
課 )が 介 護 サー ビス利 用 者 の要 介 護 状 態 や認 定 有 効 期 間 など を国 保 連 へ 連 絡
60
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
す る必 要 が あ る。 認 定 結 果 を 受 け 、実 際 に 介 護 サ ー ビ ス を 利 用 す る場 合 は 被 保
険 者 は保 護 課 CW を通 じて介 護 扶 助 を申 請 する。保 護 課 では指 定 介 護 機 関 に
よ る利 用 開 始 かの確 認 を 行 い、 居 宅 サー ビスを 利 用 す る場 合 は、 要 介 護 度 に 応
じて居 宅 介 護 支 援 事 業 所 か地 域 包 括 支 援 セ ンターのケ アマ ネージ ャー にケア プ
ラ ン の 作 成 を 依 頼 す る。 そ の 後 提 出 が あ っ た ケ ア プラ ン の 写 し を も と に 、 サ ー ビ ス
利 用 事 業 所 宛 に 「 介 護 券 」 を 発 行 す る。 発 行 も れ が な い かど う かは 、 毎 月 、 管 理
係 が「介 護 給 付 費 公 費 受 給 者 別 一 覧 表 」 を出 力 して、各 CW が適 時 にチェック
している。
H 番 号 受 給 者 の場 合 には、介 護 扶 助 を利 用 す る前 に、他 法 他 施 策 における同
等 のサービ スが利 用 可 能 かど う かを検 討 す る。 原 則 として、H番 号 受 給 者 が介 護
扶 助 を 利 用 す る場 合 は 、 他 法 他 施 策 に お い て 賄 え な い 不 足 分 に つ い て 対 応 す
るこ と と な るた め で あ る。 実 際 に 介 護 サ ー ビ ス を 利 用 す る 場 合 は 被 保 護 者 か ら 保
護 課 の CW に要 介 護 認 定 に係 る申 請 があり、CW から在 宅 福 祉 サービス協 会 へ
認 定 調 査 と主 治 医 意 見 書 徴 取 依 頼 が行 われ る。以 降 は第 1、2 号 被 保 険 者 の
取 扱 いと同 様 で、介 護 認 定 審 査 会 の審 査 結 果 が保 健 福 祉 課 から 保 護 課 CW に
通 知 され るので、 その結 果 について被 保 護 者 へ通 知 す るとともに、 居 宅 介 護 サー
ビ ス の 利 用 の 希 望 が あ れ ば 、 要 介 護 度 に 応 じ て 、 居 宅 介 護 支 援 事 業 所 か地 域
包 括 支 援 センターへケアプラン作 成 依 頼 を行 う 。
( 8) 停 止 と 廃 止
① 停止
世 帯 に おけ る臨 時 的 収 入 の 増 加 、 最 低 生 活 費 の 減 少 な どに よ り、 保 護 を 必 要
としなくなった場 合 に、 それが一 時 的 なものであ り概 ね 6 ヶ 月 以 内 に 再 び保 護 を
要 する状 態 になることが予 想 されるときには保 護 の停 止 措 置 を行 う。
指 示 等 に 従 う 義 務 違 反 ( 稼 働 指 導 に 従 わ な い 場 合 な ど ) に よ る停 止 の 場 合 に
は 、訪 問 や 面 接 の 際 に 口 頭 での 指 導 が 前 提 とな る。 指 示 書 を 出 して も指 示 に 従
わない場 合 には、課 長 ・係 長 などと協 議 を行 う。
停 止 が 決 ま れ ば 実 態 調 査 の 結 果 を ケ ー ス 記 録 し 、 OA シ ステ ムに 入 力 し 、 「 保
護 決 定 調 書 」 出 力 後 課 長 のバ ー コード決 裁 を 受 けて「 保 護 停 止 決 定 通 知 書 」に
より通 知 するとともに、医 療 機 関 などに停 止 の旨 を連 絡 する。
② 廃止
収 入 の 増 加 、 最 低 生 活 費 の 減 少 な どに よ り保 護 を 要 し な くな っ た 場 合 、 こ の 状
態 が概 ね 6 ヶ月 超 と 見 込 まれる場 合 は保 護 の廃 止 措 置 を行 う。廃 止 する理 由 を
具 体 的 にケース記 録 し、OA システムに入 力 し 、「保 護 決 定 調 書 」出 力 後 課 長 の
バ ー コー ド 決 裁 を 受 け て 「 保 護 廃 止 通 知 書 」 を 送 付 す る と と も に 、 停 止 の 場 合 と
61
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
同 じく廃 止 の旨 を医 療 機 関 などに連 絡 する。
廃 止 扱 い とな ると、 後 日 再 申 請 があ った場 合 に は、実 態 調 査 ・資 産 照 会 など一
連 の業 務 を初 めからや り直 す必 要 がある。
稼 働 指 導 などに従 わない場 合 は、停 止 と同 様 に弁 明 の機 会 を 与 えた上 で廃 止
することができる。これを職 権 廃 止 という。
実 際 は停 止 とす るか廃 止 にす るかは判 断 が分 かれ る。求 職 活 動 や自 動 車 処 分
な どの 期 限 付 き指 示 書 を 交 付 して も 指 導 に 従 わ ない 状 況 が 続 いて い る場 合 、 一
旦 停 止 にしてから指 導 を継 続 し、それ でも従 わない場 合 に廃 止 することもある。
62
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
3. 生 活 保 護 OA システム
( 1) システムの概 要
生 活 保 護 OA システムが生 活 保 護 業 務 で利 用 されている基 本 システムである。
生 活 保 護 OA システム以 外 に、レセプトシステム及 び債 権 管 理 システムが業 務
に 利 用 さ れ て い るが 、 レ セ プト シ ス テ ム は 保 護 指 導 課 及 び 保 護 課 に お い て 医 療
費 の 確 認 な ど に 利 用 さ れ て お り、 ま た 、 債 権 管 理 シ ス テ ム は 生 活 保 護 実 施 の 過
程 で 発 生 した 返 還 金 ・ 徴 収 金 などの 債 権 を管 理 す るシス テム であ り、詳 細 に つ い
ては第 6 章 で触 れることにする。
生 活 保 護 OA システムで実 施 する業 務 は、生 活 保 護 における事 務 のほぼすべ
て に 及 ぶ 。 CW の 手 許 管 理 資 料 や 小 切 手 な ど の 現 物 の 事 務 を 除 き、 保 護 の 決
定 ・変 更 ・廃 止 は、当 該 システム上 の処 理 により行 われる。
システ ムの 構 成 とし ては菊 水 分 庁 舎 に おいて札 幌 市 全 区 分 の サー バーが 設 置
されており、各 区 の保 護 課 に置 かれている端 末 がイントラネットで結 ばれている。
システムの鳥 瞰 図 は下 記 のとおりである。
63
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
なお、現 在 生 活 保 護 OA システムには端 末 アクセス時 間 の制 限 (8 時 45 分 から
17 時 15 分 まで)がある。ただし、各 区 が業 務 の進 行 状 況 により自 らの権 限 でア ク
セス時 間 を 延 長 可 能 であ るが、土 曜 日 、日 曜 日 及 び祝 祭 日 は使 えない。また、ラ
イセンスの関 係 で CW 全 員 にはアクセス権 限 が付 与 なされていないのが現 状 であ
る。それとこのシステムでは、被 保 護 者 の情 報 を 綴 りこむ保 護 台 帳 のサイズに合 わ
せ、使 用 する紙 は B5 判 のフォームである。
( 2) システムの改 修
生 活 保 護 OA システムは平 成 元 年 4 月 に本 稼 働 となったが、その後 機 能 拡 張
の 必 要 が あ れ ば シ ス テ ム 改 修 で 対 応 し て きた 。 保 護 指 導 課 で は 過 去 の シ ス テ ム
改 修 や機 能 追 加 の履 歴 を記 録 した書 類 は作 成 していない。今 回 この報 告 書 を
作 成 するにあたり、過 去 の改 修 などの履 歴 を調 査 してもらった。なお、OA 機 器 故
障 とか生 保 OA 不 具 合 に関 する記 録 簿 ( 発 生 日 時 ・場 所 ・事 象 ・対 処 結 果 など)、
すなわち保 守 に 関 す る履 歴 としては、システム 開 発 会 社 が作 成 した 「生 活 保 護 シ
ステム保 守 一 覧 」がある。
過 去 のシステム改 修 や機 能 追 加 は、具 体 的 には以 下 のように行 われてきた。
① 平 成 5 年 4 月 (第 二 次 システム本 稼 働 )
・プログラム言 語 の変 更
・課 長 バーコード決 裁 の導 入
・窓 口 支 給 バ-コード決 裁 の導 入
・帳 票 の日 本 語 化
・例 月 一 括 処 理
・一 時 扶 助 決 定 の独 立 化
② 平 成 12 年 4 月 (第 三 次 システム本 稼 働 )
・資 産 照 会
・戸 籍 照 会
・査 察 指 導 簿
・窓 口 支 給 時 の小 切 手 印 刷
・意 見 書 OCR
・窓 口 払 いの再 構 築
・他 法 要 件 の履 歴 管 理
・医 療 一 括 再 構 築
・特 別 控 除 の再 構 築
・介 護 保 険 対 応
③ 平 成 14 年 4 月
64
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
・端 末 の PC(LAN)化
④ 平 成 15 年 4 月
・端 末 のイントラ統 合
⑤ 平 成 16 年 8 月
・債 権 代 理 納 付
⑥ 平 成 20 年 4 月
・支 援 給 付
⑦ 平 成 21 年 2 月
・家 主 代 理 納 付
こ の シ ステ ムの 当 初 の 主 眼 は 保 護 費 を 計 算 す るこ と の み で あ っ た が 、 改 修 に 改
修 を 重 ね る中 でも、 業 務 相 互 の チェ ック 機 能 や システム内 デー タの参 照 機 能 まで
も 完 全 に 調 整 す るこ と は で きず 、 現 状 の 業 務 から は 、 非 効 率 な 面 が 多 く あ るの が
現 状 である。
( 3) 他 のシステムと の連 携
生 活 保 護 の業 務 に関 連 するシステムとしては、同 じ保 健 福 祉 部 に属 する保 健
福 祉 課 の「保 健 福 祉 総 合 システム」がある。
保 健 福 祉 総 合 システムでは、高 齢 者 福 祉 、障 害 者 福 祉 、児 童 ・母 子 福 祉 、医
療 助 成 (老 人 、乳 幼 児 等 )、介 護 保 険 、保 健 に 関 する各 種 業 務 を行 っている。
このシステムにも生 活 保 護 の有 無 の情 報 を反 映 する必 要 がある。というのは介
護 保 険 料 の算 定 に影 響 を及 ぼすことがあるた めである。被 保 護 者 であれば、最 も
安 い保 険 料 が適 用 になるが、そうでなければ当 然 通 常 の基 準 が適 用 となるからで
ある。また、本 来 は有 料 だが、被 保 護 者 であれば無 料 になる福 祉 サービスがあり、
その取 扱 いにも影 響 する。
保 健 福 祉 総 合 シ ステムの 機 能 の 一 つ に共 通 管 理 システム 機 能 とい う ものがあ り、
関 連 シ ス テ ム で あ る住 民 記 録 、 税 務 、 国 民 健 康 保 険 、 生 活 保 護 の 各 シ ス テ ム と
連 携 で き るよ う に な っ て い る。 た だ し 、 こ の デ ータ 連 携 は 、 完 全 に 自 動 で 行 わ れ る
ものではないため、作 業 がもれる場 合 や、実 施 のタイミングがずれる場 合 がある。
また、被 保 護 者 について介 護 保 険 料 は第 1 段 階 という最 も安 い保 険 料 が適 用
され るが、 被 保 護 者 でないに も係 わら ず最 も安 い保 険 料 とな ってい る事 例 が 発 見
されたため、平 成 23 年 度 は保 健 福 祉 総 合 システムデータ全 般 と生 活 保 護 受 給
者 データを機 械 上 で突 合 し、生 活 保 護 受 給 者 のデータを特 定 した上 で、データ
上 確 認 をしており、食 い違 いが生 じた部 分 について、理 由 を調 査 中 である。
こ れも 非 効 率 な 一 面 であ るが、 札 幌 市 としては、 生 活 保 護 受 給 者 のみ を 対 象 と
する保 護 課 職 員 が、 広 く 一 般 市 民 の 福 祉 情 報 を見 ら れ る状 態 にあ るとい うのは、
65
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
情 報 共 有 に よ る業 務 効 率 化 とい ったメ リッ トよ りも、個 人 情 報 の使 用 の 観 点 からも
問 題 があるとい うデ メリッ トの方 が大 きい と考 え た結 果 、連 携 させていないと 思 われ
る。しかし、 同 じ保 健 福 祉 局 、保 健 福 祉 部 に 属 する業 務 に関 す る情 報 であ れば、
個 人 情 報 保 護 の観 点 よ り、業 務 効 率 化 を 優 先 しても特 に問 題 はないと考 える。
なお、札 幌 市 では、平 成 20年 度 の「札 幌 市 汎 用 電 子 計 算 機 システム検 討 委 員
会 」からの提 言 を踏 ま え、平 成 22年 度 よ り「新 基 幹 系 情 報 システムの再 構 築 事
業 」を実 施 している。
このシステム再 構 築 は、従 来 は各 システム間 (住 民 記 録 システム、国 民 健 康 保
険 システム、税 務 システム、保 健 福 祉 総 合 システム)のデータ連 携 が効 率 的 に行
われなかったところ、各 システムを共 通 した基 盤 フレームワーク上 に乗 せることでシ
ステム間 の連 携 、開 発 効 率 を向 上 させることを 目 指 している。
生 活 保 護 OAシステムは、今 のところ公 式 には上 記 の新 基 幹 系 情 報 システムの
計 画 対 象 には含 められてないため、今 後 の検 討 が期 待 される。
66
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
4. 実 施 方 針
札 幌 市 の 各 区 で は 、 毎 年 度 生 活 保 護 実 施 方 針 を 策 定 し て い る。こ れ は、 生 活
保 護 行 政 を 効 率 的 かつ 効 果 的 に 行 う た め に 不 可 欠 の も の と し て 、 実 施 方 針 の 策
定 が 厚 生 労 働 省 から 義 務 付 け ら れ て い る から で あ る。 す な わ ち 、 厚 生 労 働 省 で は
社 会 ・援 護 局 保 護 課 長 名 により平 成 17 年 3 月 29 日 付 で「保 護 の実 施 機 関 にお
ける生 活 保 護 業 務 の 実 施 方 針 の 策 定 につい て」を 通 知 して実 施 方 針 の 策 定 を要
求 している。
札 幌 市 で は 実 施 方 針 の 標 準 と な る「 札 幌 市 生 活 保 護 法 実 施 方 針 」 を 策 定 し 、
また平 成 23 年 度 の区 における実 施 方 針 の基 本 となる「平 成 23 年 度 区 保 健 福 祉
部 実 施 方 針 の 策 定 に つ いて」 を 通 知 してい る。こ れ ら が上 記 厚 生 労 働 省 社 会 ・ 援
護 局 保 護 課 長 通 知 の 考 え 方 に 準 拠 して い ること が 重 要 で あ り、 また 、 同 様 に 各 区
が策 定 した平 成 23 年 度 生 活 保 護 実 施 方 針 が上 記 の方 針 や通 知 と照 らして必 要
かつ十 分 でなければならない。
この検 討 を行 うにはまず厚 生 労 働 省 の通 知 を 理 解 する必 要 がある。
( 1) 厚 生 労 働 省 の通 知
生 活 保 護 制 度 を管 轄 す る厚 生 労 働 省 では、 各 実 施 機 関 に対 して、毎 年 度 「 生
活 保 護 業 務 実 施 方 針 」 を 策 定 す るこ と を 求 めて い る。 そ の 趣 旨 は、 効 率 的 かつ 効
果 的 な 業 務 運 営 を行 うた めには、適 切 な計 画 を策 定 し、 その計 画 に 沿 って 業 務 を
実 施 し、その結 果 を評 価 して、計 画 の見 直 しを行 うことが必 要 なためである。
従 来 から 「 生 活 保 護 運 営 方 針 」 の 策 定 は 義 務 付 け ら れ て い た が 、 内 容 が 形 骸
化 し てい る状 況 が見 受 け ら れた こ と から、 この実 施 方 針 を 策 定 す るこ と とし たも の で
ある。
この通 知 には 実 施 方 針 の策 定 方 法 などが記 載 されて お り、要 約 す ると以 下 のよ
うになる。
1. 実施機関における現状及び課題の把握
① 地域の状況を客観的資料などに基づいて分析し、対応すべき課題を整理すること
② 前年度の監査指摘事項などを踏まえ、実施機関の抱える問題点を分析し、その問題点の
要因を把握すること
③ 前年度に実施した業務の取組の結果を評価・分析し、改善を図る事項の有無について
検証すること
2. 実施方針の策定
① 上記1で把握した現状を踏まえ、毎年度、生活保護業務の実施について、実施機関が進
むべき方向、取り組むべき事項、問題点についての改善の方向、自立支援プログラムの
導入などを内容とする生活保護の実施の方針を定めること
② 実施方針は、早急な改善や対応が必要な事項を中心に策定すること
③ 問題が生じている要因の改善に向け取り組む内容が明らかになるよう、具体的な手順や
方法を、できるだけ取組の効果を測定する数値目標を設定して盛り込むこと
④ 査察指導員や現業員代表者で構成する策定委員会などによって原案を作成し、これを
実施機関の長以下関係職員の参加のもとに十分討議し、実施機関の決定事項として現
67
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
業員などに周知徹底させ、実効性のあるものにすること
3. 事業計画の策定及び取組の実施
① 月別あるいは四半期毎に、具体的な取組の内容及び実施時期を明らかにするための事
業計画を策定すること
② 事業実施にあたっては、適宜進行状況の確認を行い、必要に応じて計画の見直しを行う
など確実な事業実施に努めること
4. 結果評価
① 実施した結果及び効果を集約するとともに、取組内容の評価及び問題点の分析を行うこ
と
② 評価の結果、改善が必要な事項については、次年度の実施方針に反映させること
( 2) 札 幌 市 の 実 施 方 針 等
札 幌 市 では、 区 にお け る実 施 方 針 の標 準 とすべ きもの として 「 札 幌 市 生 活 保 護
法 実 施 方 針 」 を 策 定 し て お り、 こ の 方 針 の 「 Ⅱ 組 織 的 運 営 管 理 の 推 進 、 1 組 織 的
運 営 管 理 の 充 実 、(1 )実 施 方 針 の 策 定 と推 進 」 の中 で 以 下 の よ うに厚 生 労 働 省 の
通 知 と同 様 の趣 旨 の定 めがある。
Ⅱ 組織的運営管理の推進
1 組織的運営管理の充実
(1) 実施方針の策定と推進
・ 管内の特徴、問題点、保護動向等を的確に把握、分析したうえ、前年度監査指摘事項を
踏まえた実施機関における運営上の問題点をも勘案し、具体的な業務実施方針、事業
計画、実施要領等を策定し推進する。
・ 実施方針には、取組内容に対する具体的な手順、手法と共に、効果測定のための指標と
して数値目標を設定する。また取組内容の評価、問題点の分析を行い、その結果を次年
度の実施方針の策定に反映させる。
・ 実施方針は、策定委員会、部内会議等を経るなど全担当員が参画しうる方法によって策
定し、また部内研修に活用するなどしてその周知を徹底する。
・ 策定された実施方針、特に重点事業の進捗状況等について適時確認・検証し、円滑な
推進を図る。
また、札 幌 市 では 保 健 福 祉 局 総 務 部 長 が毎 年 度 各 区 保 健 福 祉 部 長 宛 に、策
定 する実 施 方 針 の留 意 事 項 を通 知 している。 平 成 23 年 度 の実 施 方 針 策 定 に係
る通 知 は平 成 22 年 11 月 2 5 日 に「平 成 2 3 年 度 区 保 健 福 祉 部 実 施 方 針 の策 定
について」として行 っている。
この通 知 を要 約 抜 粋 すると以 下 のようになる。
1 実施方針策定にあたっての考え方
(1) 札幌市生活保護法実施方針を区実施方針の標準とし、区内の保護動向、地域事情、運
営体制上の課題及び指導監査での改善是正事項等を検討のうえ策定すること
(2) 実施方針は業務の具体的指針であることを勘案し、実際的な活用のため、各種事業の実
施要領等について定めるなど、実務に配慮すること
また、策定には委員会の開催、課・係会議での検討など全職員の参画に配意すること
(3) 札幌市として取り組むべき共通課題
① 基本的に取組む課題
ア 稼働阻害要因のない者に対する積極的な支援
イ 病状把握に基づく稼働可否の検討の推進
ウ 子の父(母)及び老親の子に対する扶養義務調査の徹底
② 更なる向上に向けて取組む課題(関係機関からの指導・助言等)
ア 医療・介護扶助における他法他施策の活用(自立支援医療・更生医療)
イ 不正受給の未然防止と収入調査後の適正な措置
68
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
ウ 組織的判断におけるケース診断会議の実効性のある活用及び会議を基にした職員研
修の充実(具体的なケース診断会議要領等を作成し添付すること)
2 重点事業の設定
前年度の事業結果を検証のうえ、区の特性に応じた事業を設定すること
3 自主的内部点検
自主的内部点検については、事務的な処理に関する点検を主眼とし、適宜必要な項目を
選定すること
4 適正化対策事業
全市共通の問題について適正な運営を確保するため、現行の適正化対策事業実施要領
に基づき次の事業を設定すること
(1) 暴力団関係世帯点検及び関係機関連携事業
(2) 自動車保有世帯調査指導事業
5 数値目標の設定
業務・事業の効果を具体的に測定する指標として、数値目標を設定すること
各 区 で は こ れ ら を 基 に 区 独 自 の 「 生 活 保 護 実 施 方 針 」 を 毎 年 度 策 定 し て い る。
各 区 の職 員 はこの実 施 方 針 を重 要 視 して普 段 の業 務 に利 用 している。
( 3) 札 幌 市 の 実 施 方 針 等 の 妥 当 性
上 記 (1)と(2)の内 容 をチェックリスト方 式 で整 理 すると以 下 のよ うになる(表 4-2、
4-3)。
(表 4-2)厚生労働省の通知チェックリスト
現状及び課題の把握
地域の状況を分析して対応すべき課題を整理しているか
前年度の監査指摘事項を踏まえて問題点を分析して要因を把握しているか
進むべき方向が記載されているか
取り組むべき事項が記載されているか
現在抱えている問題点についての改善の方向が記載されているか
自立支援プログラムの導入について記載されているか
実施方針の策定
早急な改善や対応が必要な事項を中心にしているか
具体的な手順や方法が記載されているか
取組の効果を測定できる数値目標を設定しているか
策定委員会等が原案を作成しているか
実施機関の長以下関係職員が十分討議しているか
実施機関の決定事項として現業員等に周知徹底しているか
月別又は四半期毎に事業計画が策定されているか
事業計画の策定及び取
事業計画は取り組む重点事項・取組内容・実施時期が分かるようになっているか
組の実施
適宜進行状況の確認を行っているか
必要に応じ計画の見直しを行っているか
実施した結果及び効果を集約しているか
結果評価
取組内容の評価及び問題点の分析を行っているか
改善が必要な事項は次年度の実施方針に反映されているか
69
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
(表 4-3)札幌市の平成 23 年度実施方針チェックリスト
稼働阻害要因のない者に対する積極的な支援を課題としているか
病状把握に基づく稼働可否の検討の推進を課題としているか
子の父(母)及び老親の子に対する扶養義務調査の徹底を課題としているか
取り組むべき共通課題
医療・介護扶助における他法他施策の活用を課題としているか
不正受給の未然防止と収入調査後の適正な措置を課題としているか
組織的判断におけるケース診断会議の実効性のある活用及び会議を基にした職員
研修の充実を課題としているか
重点事業の設定
区の特性に応じた事業を設定しているか
自主的内部点検
事務的な処理に関する点検を主眼とし適宜必要な項目を選定しているか
適正化対策事業
暴力団関係世帯点検及び関係機関との連携事業を行うことにしているか
自動車保有世帯調査指導事業を行うことにしているか
数値目標の設定
業務・事業の効果を具体的に測定する指標として数値目標を設定しているか
上 記 札 幌 市 の平 成 2 3 年 度 区 保 健 福 祉 部 実 施 方 針 の項 目 は、共 通 課 題 や適
正 化 対 策 事 業 が具 体 的 に 示 さ れて お り、ま た、厚 生 労 働 省 の 通 知 を 逸 脱 して い
るものはなかった。
70
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
( 4) 各 区 に おける実 施 方 針 の妥 当 性
次 に、札 幌 市 各 区 が策 定 した平 成 23 年 度 生 活 保 実 施 方 針 において、重 点 事
業 と数 値 目 標 がどうなっているか調 べてみた(表 4-4)。
(表 4-4)各区の平成 23 年度重点事業と数値目標
重点事業
中央区
北
東
区
区
数値目標
誤支給防止対策
誤支給全件是正
精神障がいの他法活用
精神障がいの他法活用未確認ゼロ件
積極的な就労支援と稼働指導
病状把握実施率 100%
組織力の向上及び危機管理体制の強化
扶養義務照会実施率 100%
訪問調査活動の徹底
月間訪問率 120%以上
世帯の実態に即した指導・援助
月間訪問計画達成率 85%以上
係及び課における研修等の充実
被保護者の受診状況把握と医療扶助の適正実施
白 石 区 訪問調査活動等の適正実施
厚別区
面接機会(訪問面接・来所面接)の確保 100%
効果的な訪問調査活動の実施
格付に応じた訪問頻度達成率 100%
就労ボランティア体験事業の試行実施
訪問活動推進事業
月間訪問計画の訪問達成率 75%
豊 平 区 病状照会推進事業
基本的事務の正確な処理の徹底
訪問計画の 75%以上達成(訪問格付 A ケース
訪問活動
は 100%達成)
不正防止
清田区
就労支援プログラム参加者の就労実現達成
就労支援
率 50%
病状把握
上半期での病状把握達成率 90%
適正医療
危機管理
事務検討(事務処理・要領等の見直し)
南
区 訪問調査活動等の適正実施
西
区
月間訪問・来所面接達成率 100%
訪問調査活動の充実
訪問調査活動達成率 100%
稼働年齢層に対する病状把握
病状把握率 100%
訪問活動推進事業
訪問計画の 100%達成
手 稲 区 進路決定(中学・高校)を控えた生徒がいる世帯への
重点訪問
世帯訪問 100%・しおり交付 100%・対象学年生
徒本人面談 70%
71
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
重 点 事 業 をみると、 訪 問 調 査 活 動 の 充 実 、病 状 把 握 の 徹 底 (医 療 扶 助 の 適
正 実 施 ) を掲 げてい る区 が 多 い。この 実 施 方 針 の 重 点 事 業 は 保 護 指 導 課 に よ る
監 査 によって過 去 に指 摘 された事 項 を踏 まえた うえで設 定 されたものである。
このうち、訪 問 調 査 活 動 については、保 護 指 導 課 の監 査 でも その低 調 な活 動
が 指 摘 さ れてい る区 が 多 く、 訪 問 調 査 活 動 の充 実 を 掲 げ 、 数 値 目 標 を 設 定 して
いるが、区 によって計 算 式 が異 なっている。
例 えば、西 区 での訪 問 調 査 活 動 達 成 率 は以 下 の算 式 となっている。
(月間定期訪問実績数+月間定期外訪問実績数+来所面接+関係機関訪問)
(月間定期訪問計画数)
ま た、 東 区 では、 月 間 訪 問 率 と 月 間 訪 問 計 画 達 成 率 を 数 値 目 標 とし て設 定 し
ている。 月 間 訪 問 率 は既 存 と 新 規 を 分 けて 把 握 してお り、以 下 の 算 式 とな ってい
る。
{既存(家庭訪問+来所面接+不在+関係先訪問)+新規(家庭訪問+関係先訪問)}
(総ケース×4)
この算 式 では不 在 の場 合 と関 係 先 訪 問 も含 め ていることから、実 際 の訪 問 割 合
を算 出 するため、別 途 月 間 訪 問 計 画 達 成 率 を 設 定 している。
既存(家庭訪問+来所面接)
訪問計画
このように、 区 によ って計 画 の 達 成 度 合 い を計 算 す る方 法 が異 な っていた り、病
状 把 握 率 100%と か、扶 養 義 務 照 会 実 施 率 100%とか、100%が当 然 の数 値 を
目 標 にしている区 もあったり、目 標 達 成 の難 易 度 がまちまちである。
これは、 札 幌 市 の 場 合 、 生 活 保 護 の決 定 等 に 関 す る事 務 は、 市 長 から 各 区 保
健 福 祉 部 長 に 委 任 し て お り、 各 区 保 健 福 祉 部 が 自 主 的 に 事 務 を 行 う こ と と し て
いるからであ る。
72
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
( 5) 北 区 、東 区 及 び白 石 区 の 実 施 方 針 の比 較
往 査 した 3 つの区 の保 護 課 が策 定 した「平 成 23 年 度 生 活 保 護 実 施 方 針 」を
比 較 してみたところ、下 記 のとおりであった(表 4-5)。
(表 4-5)北区、東区及び白石区の実施方針比較表
北区
東区
白石区
重点目標
○
○
○
自主的内部点検
○
○
○
数値目標
病状把握実施率
○
−
−
扶養義務照会実施率
○
−
−
月間訪問率
−
○
−
月間訪問計画達成率
−
○
−
面接機会の確保
−
−
○
訪問調査活動実施指針(要領)
○
○
○
ケース格付基準表
○
○
○
訪問計画実施状況表
○
○
○
月別保有ケース・訪問状況報告表
−
−
○
ケース診断会議要領
○
○
○
次席ミーティング要領
○
−
−
ケース総点検実施要領
○
○
○
保護課職員研修要領
○
○
○
危機管理対応要領
−
○
−
MSWプロジェクト委員会運営要領
−
○
−
他法他施策の活用
○
○
○
適正化対策事業
○
−
−
その他
新規申請に係る処理の流れ
○
−
−
世帯類型と稼働に係る援助方針
○
−
−
弁明の機会
○
−
−
公用車使用に係る留意事項
○
−
−
稼働年齢層に対する病状把握
−
○
−
稼働指導及び転職・増収指導
−
○
−
扶養義務調査
−
○
−
事例の情報共有
○
−
−
各種要領
上 記 3 区 で 比 較 すると、各 種 要 領 においては、訪 問 調 査 活 動 や他 法 他 施 策 の
活 動 な ど ケ ー ス ワ ー ク の 基 本 と な る 業 務 に つ い て は 実 施 方 針 の 記 載 に 盛 り込 ま
73
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
れている。
ま た 、 東 区 で の MSW プ ロ ジ ェ ク ト と は 、 見 て ( Mite ) 、 す ぐ ( Sugu ) 、 分 か る
( Wakaru )の 頭 文 字 から 取 っ た名 称 で、 保 護 課 業 務 改 善 マ ニ ュアル を デ ータ ベ ー
ス化 するプロジェクトであ り、新 任 の CW が業 務 に行 き詰 ったと きに参 照 することで
実 務 に役 立 てている。
74
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
5. 改 善 すべき事 項
( 1) 指 摘 事 項
指 摘 事 項 はない。
( 2) 意 見 事 項
① マニ ュアルの統 一 化
生 活 保 護 業 務 に係 る全 区 共 通 の要 領 やマニュアルなどには、保 護 指 導 課 が
作 成 した「標 準 事 務 処 理 要 領 」、「札 幌 市 生 活 保 護 法 実 施 方 針 」、「生 活 保 護
OA 処 理 マ ニ ュア ル 」などが あ る。 一 方 で、 区 が生 活 保 護 の 実 施 機 関 にな っ てい
ること から、そ れぞれ で要 領 や 実 務 マニュア ルなどを作 成 している。保 護 指 導 課 で
も要 領 やマニュアルを 作 成 し、区 でも 作 成 す るのは二 度 手 間 とな り非 常 に非 効 率
であると考 え る。CW が他 の区 に異 動 した場 合 に、異 動 先 の区 が独 自 に定 めた要
領 ・マニ ュアルなど を最 初 から読 んで 理 解 す る必 要 があり、この点 でも 非 効 率 であ
る。
区 が そ れ ぞ れ で 対 応 し て い るこ と から 、 区 に よ っ て 取 り扱 い が 異 な る業 務 が 多 く
あ る。例 え ば、 最 も端 的 な 例 と して、 就 労 収 入 (給 与 ) の見 込 認 定 があ る。支 給 さ
れる生 活 保 護 費 は、最 低 生 活 費 から総 収 入 を 差 し引 いて 算 定 さ れ るが、就 労 収
入 の認 定 の方 法 には、見 込 認 定 と実 額 認 定 が ある。見 込 認 定 した 際 に、 翌 月 の
実 額 と の差 額 がた と え 少 額 でも 全 額 そ の差 額 分 を 認 定 (実 額 認 定 ) してい る区 と、
一 定 の 基 準 を 決 めて、 当 該 基 準 以 内 の 差 額 は 実 額 認 定 し ない 区 があ る。さ ら に
は、同 じ区 内 で 各 係 間 でも 異 なる処 理 がされて いる場 合 もあった。就 労 収 入 に限
らず、現 在 では 「その 他 世 帯 」の 受 給 者 が増 え ているこ とから、受 給 者 も多 様 化 し
つつあり、この点 でも各 区 、各 係 で処 理 に差 が出 ている可 能 性 がある。
また、実 務 例 について各 区 内 の情 報 共 有 で完 結 してしまっているものがあり、本
来 全 市 で 共 有 し 、 対 応 を 共 通 に す べ き事 項 が 他 の 区 に 伝 わ っ て い な い 可 能 性
がある。
こ の た め 、 保 護 指 導 課 の 指 導 機 能 を 強 く 発 揮 し て 全 市 統 一 の マ ニ ュア ル を 作
成 し、各 実 施 機 関 が統 一 した 基 準 に よ って迅 速 かつ的 確 に 事 務 処 理 を 行 え るよ
うに再 考 すべきと考 える。
ア ン ケ ー ト 結 果 か ら も 、 保 護 指 導 課 は 各 区 で 行 わ れ て い る生 活 保 護 行 政 を 全
面 的 にバックアップするものでなければ、現 場 の CW の負 担 は減 らないと感 じた。
東 区 では MSW により知 識 、事 例 の集 積 の作 業 が行 われており、これを各 区 でも
見 ることができて参 考 にすることが多 いとのこと である。この東 区 の MSW を保 護 指
導 課 が改 良 して、全 市 の唯 一 の共 通 マニュアルにすることも考 えられ る。
75
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
② マニ ュアルの充 実 化
マ ニ ュア ル など を 統 一 し 整 理 すべ きと 思 わ れ る点 と し ては 、 以 下 の よ う なこ と が 挙
げられる。
実 務 例 の収 録 を増 やす
生 活 保 護 事 務 は、生 活 保 護 法 や関 連 法 令 など、膨 大 なルールに則 って遂 行
しなければならない上 、個 々の人 間 の多 様 なケ ースに対 応 しなければならないこと
から、CW の判 断 に資 す る実 務 例 を 多 く 掲 載 すべ きであ る。この点 、 生 活 保 護 は
文 字 通 り、 個 々 の ケ ース に 対 応 す るもの で あ り、 マ ニ ュア ル 化 は 必 要 ない 、あ るい
は不 可 能 ではないかとの SV の意 見 もあった。しかし、現 に保 護 指 導 課 の監 査 に
お い て 、 援 助 方 針 が 不 明 確 で あ るな ど の 指 摘 も 多 い こ と から す れ ば 、 や は り、 実
務 例 を 充 実 す べ き で あ る。 こ れ に よ り、 判 断 に 要 す る 時 間 の 軽 減 に つ な が る と 考
えられる。
他 法 他 施 策 の共 通 チェックシート作 成
生 活 保 護 を 実 施 す るに 際 し 、 他 法 他 施 策 ( 雇 用 保 険 法 、 障 害 者 自 立 支 援 法
など)によ る援 助 が 可 能 であ れば、他 法 他 施 策 の方 が優 先 され る。この 他 法 他 施
策 につき、各 区 共 通 のチェックシートを整 備 す べきである。
現 状 、 各 区 の「 実 施 方 針 」には 記 載 されて い る区 と 記 載 さ れていない 区 があ る。
ま た 、 北 区 では 独 自 に チ ェ ッ クシ ー ト を 作 成 し 、保 護 決 定 調 書 の 添 付 資 料 と し て
いたが、他 法 他 施 策 の法 改 正 には追 い付 いていないとのことであった。
前 述 し た と お り、 他 法 他 施 策 は 改 定 が 頻 繁 で あ り、 よ り詳 細 な 知 識 が 必 要 と さ
れること を鑑 み ると、経 験 者 にと っても非 常 に難 しい事 務 であり、保 護 指 導 課 の監
査 において他 法 他 施 策 の検 討 もれの指 摘 が 多 いこと、各 区 の「実 施 方 針 」で重
要 ポイン ト として挙 げ ら れてい るこ と からす れば、 他 法 他 施 策 の 検 討 は重 要 である
と考 えられ る。
また、保 護 指 導 課 の監 査 において、CW に対 し、病 名 や処 方 された薬 から他 法
他 施 策 が 適 用 で きな い か確 認 し て み て は ど う かと い う ア ド バ イ ス の 記 載 も あ っ た 。
上 記 の 実 務 例 を 多 く す べ きと い う 点 と も 関 係 するが 、 病 名 、 症 状 と 他 法 他 施 策 と
の 対 応 表 、 早 見 表 な ど を 作 成 し 、 適 切 な 運 用 を 行 っ て 保 護 費 低 減 を 図 るべ きで
ある。
③ 業 務 の有 効 性 と効 率 性
業 務 の有 効 性 に関 しては、生 活 保 護 OA システム処 理 結 果 の出 力 帳 票 であり、
保 護 支 給 金 額 を 左 右 す る「 保 護 決 定 調 書 」 の 挙 証 書 類 ( 添 付 資 料 ) と の 照 合 、
決 裁 が中 心 となる。 その ほか係 長 は、判 断 の 基 礎 であ る「ケ ース記 録 」 を査 閲 ・承
認 し、「査 察 指 導 簿 」により C W の業 務 を指 導 ・監 督 するなどの内 部 統 制 手 段 が
ある。
業 務 の 効 率 性 に 関 し て は 、 前 述 し たマ ニ ュア ル の 統 一 化 及 び 充 実 化 が 大 きな
76
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
役 割 を果 たすと考 え られる。
生 活 保 護 事 務 の 特 性 と して、例 え ば、 母 子 加 算 の在 宅 者 か入 院 患 者 かによ っ
て加 算 額 が変 わるよ うに、 構 造 的 に加 算 と加 算 削 除 がセッ ト で行 わ れ る項 目 があ
るため、加 算 項 目 の認 定 もれや削 除 もれがミスの発 生 しやすいポイントとなる。
もし、ミスが発 生 したならば、事 後 の修 正 の処 理 に時 間 がかかり、これによ り時 間
外 手 当 が 生 じ れば 不 要 な 支 出 と な って しま う 。ま た、 内 部 的 には 事 後 に 修 正 した
と し て も 、 納 得 の い かな い 被 保 護 者 が 返 還 に 応 じ な い 場 合 に は 、 返 還 金 の 未 収
の原 因 となってしまう。
このように業 務 の有 効 性 が損 なわれるならば、 業 務 の効 率 性 や財 政 の健 全 性 も
阻 害 さ れ る。 一 方 、 業 務 の 効 率 が 悪 く な れ ば 多 忙 に な り、 正 確 な 仕 事 が で きな く
な っ て 業 務 の 有 効 性 も 阻 害 さ れ る。 こ の よ う に 業 務 の 有 効 性 と 効 率 性 双 方 の 確
保 が重 要 である。
業 務 の 有 効 性 ・ 効 率 性 を 高 め るた め の 方 策 と し て 、 下 記 の よ う な 項 目 が 挙 げ ら
れる。
決 裁 手 続 の見 直 し及 び決 裁 権 限 の移 譲
保 護 課 の書 類 は膨 大 なケース件 数 を処 理 するため決 裁 が多 すぎ、課 長 や係
長 の負 担 になっているとも考 えられるので、決 裁 手 続 や決 裁 権 限 の見 直 しを検
討 すべきである。
「業 務 管 理 表 (入 力 予 定 表 )」の有 効 活 用 及 び 統 一 化
CWの手 許 管 理 資 料 に「業 務 管 理 表 」または「入 力 予 定 表 」と呼 ば れている資
料 がある。この「業 務 管 理 表 (入 力 予 定 表 )」は、札 幌 市 生 活 保 護 事 務 の正 式 な
帳 票 ではないが、多 くのCWが作 成 し利 用 している資 料 である。入 退 院 、就 労 に
伴 う収 入 の増 減 など、変 更 の処 理 を行 う機 会 が多 いが、どの月 に変 更 の処 理 を
行 う 必 要 が あ ると い っ た 入 力 管 理 や 、 業 務 の 進 捗 状 況 の 管 理 に 利 用 さ れ て い る。
CWに入 力 もれ防 止 の手 段 は何 か尋 ねたところ 、この「業 務 管 理 表 (入 力 予 定
表 )」が個 々のCWの入 力 もれ防 止 の最 大 の内 部 統 制 とのことであった。
保 護 担 当 者 の意 識 においては、援 助 方 針 をどうするか、いかなる指 導 を行 うか
が判 断 を要 する問 題 であるため、これらの記 載 がある「ケース記 録 」は手 厚 く査 閲
さ れ て い るが、 「 業 務 管 理 表 ( 入 力 予 定 表 ) 」は係 長 に はあ ま り査 閲 さ れ てい ない 。
しかし、これを係 長 も査 閲 することが入 力 もれ防 止 に有 効 であると思 われ る。
「業 務 管 理 表 (入 力 予 定 表 )」はパソコンの共 有 フォルダに格 納 されており、係
長 もこの管 理 表 を見 ることがで きるが、フォルダ内 のものが作 業 中 のものか完 成 し
たものか明 確 でないということもあり、チェックま たは確 認 は行 っていないとのことで
あった。しかし、この管 理 表 が保 護 費 の計 算 変 更 という大 きな役 割 を果 たしている
以 上 、管 理 者 もチェックすることが望 ましいと考 える。
また、現 在 この資 料 は、CWの個 人 的 な管 理 資 料 であり、各 CWが使 いやすいよ
うに個 々にアレンジしているとのことであるが、これを統 一 化 す ることも効 率 化 に繋
77
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
がると思 われるので検 討 すべきであ る。
帳 簿 等 の作 成 省 略
現 在 実 際 に作 成 されている帳 表 (主 として手 書 きの帳 表 )について、その必 要
性 、作 成 頻 度 など を 調 査 し、システム 上 の 帳 表 で代 用 で きるものは 作 成 を 省 略 し 、
あるいは作 成 頻 度 を見 直 すことで事 務 を省 力 化 し業 務 負 担 を軽 減 す ることがで
きると 考 えられ るので、検 討 すべきである。
廃 止 台 帳 索 引 簿 の電 子 化 と統 一 化
白 石 区 では、廃 止 台 帳 索 引 簿 を 手 書 きで作 成 しているが、保 存 や検 索 のこと
を考 える電 子 ファイルで作 成 するのが効 率 的 で ある。なお、北 区 と東 区 はこの索
引 簿 をエクセルファイルで作 成 している。
索 引 簿 の項 目 は白 石 区 では五 十 音 ごとに氏 名 ・廃 止 番 号 (年 度 ご との連 番 )・
地 区 名 ・廃 止 年 月 日 であり、東 区 は年 度 (廃 止 年 度 )・箱 (保 管 す る箱 の番 号 )・
番 号 (廃 止 した年 度 の連 番 )・廃 止 番 号 ( 廃 止 年 度 -箱 番 号 -廃 止 した年 度 の連
番 号 )・50音 (あいうえお)・地 区 名 (被 保 護 者 の住 居 地 域 )・番 号 (ケース番 号 )・
氏 名 (被 保 護 者 名 )・ 開 始 日 (保 護 開 始 年 月 日 )・廃 止 日 (保 護 廃 止 年 月 日 )・
廃 止 理 由 (廃 止 台 帳 に記 載 されている理 由 )で あり、北 区 では廃 止 時 に付 される
整 理 番 号 ・保 存 箱 番 号 ・ケース番 号 ・氏 名 ・開 始 年 月 日 ・廃 止 年 月 日 となってい
る。これらについては、必 要 最 小 限 の項 目 にして効 率 化 すべきであると考 える。
小切手発行控えの取扱い
扶 助 費 を窓 口 で 支 給 するのに使 用 する小 切 手 の発 行 控 えの利 用 方 法 がまち
まちである。白 石 区 では控 えに日 付 ・金 額 ・渡 し先 を手 書 きしているが、北 区 と
東 区 では控 への記 入 はなく、支 給 台 帳 に小 切 手 番 号 を記 入 して対 応 関 係 を
明 確 にしている。発 行 控 えにわざわざ日 付 や金 額 などを手 書 きしなくても対 応
関 係 が分 かるのであれば、北 区 や東 区 のやり方 で十 分 であると考 え る。
④ 実 施 方 針 にお ける目 標 設 定
各 区 では、 毎 年 度 「生 活 保 護 実 施 方 針 」 を 作 成 している。この名 称 からす ると方
針 や 重 点 目 標 の み が 記 載 さ れ て い るよ う に も思 え るが 、 実 際 に は、 留 意 す べ きポ
イ ン ト に 特 化 し た 実 務 マ ニ ュア ル の 内 容 も 多 く含 んで い る。 ま た 、 各 区 の も の を 比
較 す ると、方 針 や重 点 目 標 、目 標 数 値 の 比 重 が高 い区 と 実 務 マニ ュアルの 比 重
が高 い区 がある。
厚 生 労 働 省 では実 施 方 針 を策 定 する趣 旨 を、 効 率 的 かつ効 果 的 な業 務 運 営
を行 うためとしている。このことから、実 施 方 針 の中 には業 務 効 率 化 の視 点 での取
り組 みや目 標 を 毎 年 度 入 れ ることを必 須 とし、成 功 例 は他 の区 でも取 り入 れ るこ
ととして、効 率 化 を追 求 し続 けることが大 切 だと 考 える。現 在 策 定 されている各 区
の実 施 方 針 は、何 かの業 務 を確 実 に実 施 するとか、基 本 的 事 務 を正 確 に行 う と
か業 務 の適 正 実 施 だけが記 載 されているが、業 務 の効 率 化 そのものを追 求 する
78
第4章.札幌市の生活保護に係る業務分析
視 点 がない。業 務 を適 正 に実 施 するとともに結 果 として作 業 の効 率 化 に繋 がる
取 り組 みや目 標 を設 定 するのも重 要 であると考 える。
⑤ 資 産 照 会 をす る対 象 金 融 機 関 の見 直 し
資 産 照 会 の 対 象 に す る金 融 機 関 の 範 囲 は 、 金 融 業 界 の 変 化 及 び 被 保 護 者
の 態 様 に 応 じ て 見 直 し を 行 う べ きで あ る。 近 年 は サ ブ プ ラ イ ム ロ ー ン 問 題 に 端 を
発 する世 界 的 な金 融 市 場 の 混 乱 のもと で被 保 護 者 は比 較 的 若 い単 身 その他 世
帯 が増 加 していることからこれは有 用 であると考 える。
⑥ システムに関 する事 項
システムの連 携 や全 般 的 なシステムの構 築 、操 作 に関 す る問 題 として 下 記 が挙
げられる。
「保 健 福 祉 総 合 システム」との連 携
保 健 福 祉 総 合 情 報 シ ステ ム とのさ ら な る連 携 が なさ れ れ ば、 介 護 保 険 の 取 扱
い や 福 祉 サ ー ビ スの 取 扱 いな どに 関 して 、 適 時 適 切 な 対 応 が で き、 有 効 であ る
と考 える。
「保 健 福 祉 総 合 システム」以 外 の関 連 システムとの連 携
生 活 保 護 行 政 の効 率 化 にために、「保 健 福 祉 総 合 システム」以 外 の関 連 シス
テムとの連 携 も検 討 すべきである。
OA システムでのアクセス権 限 付 与
ライセンスの関 係 で CW 全 員 へのアクセス権 限 付 与 がなされていない。ライセン
スを CW 全 員 に付 与 することにより、業 務 は効 率 的 に行 えると 考 える。
過 去 の改 修 履 歴
システムに関 して、過 去 に行 った仕 様 変 更 ・機 能 追 加 などの 改 修 履 歴 ( 金 額 や
相 手 先 も )が存 在 しない。 過 去 の 履 歴 は今 後 のシステム再 構 築 の 参 考 に もなるも
のと思 われるので必 要 であ ると考 え る。
79
Fly UP