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タブレット端末の映像教材で学ぶ 子どもたちの現状

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タブレット端末の映像教材で学ぶ 子どもたちの現状
タブレット端末の映像教材で学ぶ
子どもたちの現状
メディア研究部
宇治橋祐之 タブレット端末やスマートフォンの普及により,授業や家庭での学習で,映像を利用して学ぶ機会が増えてきて
いる。2014 年度の「NHK 小学校教師のメディア利用と意識に関する調査」では,タブレット端末を授業に利用で
きる環境にあった教師は 24%であるが,
「今後授業で利用したいメディア」としてタブレット端末をあげた教師は
68%と他のメディアよりも高かった。調査後の 2015 年度からタブレット端末の学校への導入を決めた自治体も多く,
授業での活用が進み始めている。
また,これまで通信教育を提供してきた企業に加え,新規の企業が次々と,小中高校生が家庭でタブレット端
末を利用して学習するサービスを始めている。こうしたサービスの中心になっているのが,紙の時代には実現でき
なかった映像教材である。
映像教材の利用は長い歴史があるが,これまでと異なるのは,
「多様化」と「個別化」が進んだことである。教
室で全員に映像を提示する授業や,個人で定められた映像をもとに学習するだけでなく,授業でタブレット端末を
利用して,複数の映像教材から興味・関心に沿って映像教材を選択したり,学習者個別の進度にあわせて適切な
映像教材を見たりできるようになってきている。
こうした時代に,どんな映像教材が必要とされているのか,学習効果が上がっているものにはどんな特徴があ
るのか。主として小中学生の子どもたちのタブレット端末利用の事例をもとに,最新の教育メディアの研究成果や,
全国の学校などでの事例を交えながら,タブレット端末時代の映像教材のあり方について論考する。
た上で,利用される映像教材の特徴をまとめ,
はじめに
実際に学校や家庭でどんな風に利用されている
タブレット端末やスマートフォンの普及が進
み,学校の授業や家庭の学習で利用されるこ
かをみていきながら,今後の映像教材の方向性
を探っていく。
とが増えてきている。インターネット環境の充実
により,特に映像教材を利用して学習すること
が容易になってきており,対応するコンテンツも
次々と開発されてきている。
授業時間に子どもたちが個々のタブレット端
末で必要に応じて映像を選択して,それぞれ異
1. 家庭に学校に広がる
タブレット端末利用
(1)家庭でのタブレット端末・
スマートフォンの利用状況
なる映像を見て学習したり,移動中や家庭で手
タブレット端末やスマートフォンの利用が広
軽に映像を見たりできるようになることで,学習
がってきている。総 務省の『情報 通信白書』
の仕方も映像の作り方も変わってきている。
によるとスマートフォンの利用者は全 年代で
本稿では,タブレット端末の利用状況を示し
50
JANUARY 2016
52.1%,タブレットは 20.2%となっている1)。
タブレット端末やスマートフォンを,家庭でイ
者用情報 端末の導入を進めている。総 務省
ンターネットを利用する機器として利用する人も
の「フューチャースクール推進事業」と連携した
増えている。NHK 放送文化研究所の全国 7 歳
「学びのイノベーション事業」では全国 20 の学
以上の男女を対 象にした「2015 年 6月全国放
2)
校(小学校 10,中学校 8,特別支援学校 2)で,
送サービス接触動向調査」 では,付帯質問
1人 1台の学習者用情報端末を利用した実践研
でインターネット利用機器について尋ねている。
究が行われた 4)。
2014 年11月調査までは「パソコン」が最も多
こうした動きは文部科学省だけのものでは
かったが,2015 年 6月調査で初めて「スマート
ない。政府としても「情報通信技術を活用した
フォン」
(37.0%)と「パソコン」
(35.2%)が同程
新たな学びの推進」という方針を打ち出してお
度となった。そして次に多かったのは「タブレッ
り,2015(平成 27)年 6月30日に閣議決定され
ト端末」
(10.4%)である。
た「世界最先端 IT 国家創造宣言」では,教育
さらに年層別にみてみると7 ~ 12 歳では,ス
環境として「学校の高速ブロードバンド接続,1
マートフォン(26%),タブレット端末(18%)
,
人 1台の情報端末配備,電子黒板や無線 LAN
パソコン
(16%)の順,13 ~19 歳でみるとスマー
環境の整備,デジタル教科書・教材の活用な
トフォン(67%)
,パソコン(41%)
,タブレット
ど,初等教育段階から教育環境自体のIT化を
端末(16%)の順に多かった。なお 7 ~ 12 歳の
進め,児童生徒等の学力の向上と情報の利活
「タブレット端末」利用は 2014 年度(9%)より
増加している。
用力の向上を図る」としている。
ここでいう1人 1台の情報端末はタブレット
同じ調査で付帯質問として,YouTube やニコ
端末とほぼ同義と考えられるが,現時点ではそ
ニコ動画といった動画サイト利用についても尋
の種類はいろいろである。画面サイズは新書サ
ねている。動画サイト利用者は全体では43.3%
イズの 7インチから,B5からA4サイズ弱の10
で,前年,前々年より増加。若年層をみてみる
~ 12インチなどがある。キーボードはなく画面
と,7 ~ 12 歳男女45%,13 ~ 19 歳男性 85%,
で入力するだけのものもあるが,ディスプレー
13 ~ 19 歳女性 87%となっている。
部分を回転させたり,水平にスライドさせたり
インターネットをスマートフォンやタブレット端
すると,キーボード部が現れて,通常のパソコ
末で利用し,そこで映像を見ることが,中学生
ンと同じように利用できるコンバーチブル型と呼
や高校生を中心に,子どもたちの間に広がって
ばれるものや,画面とキーボードが分離可能な
きている様子がうかがえる。
ものもある
(タブレットPCともいう)
。本稿では,
画面をタッチしたり,ペンで入力したりし,持ち
(2 )学校でのタブレット端末の利用状況
学校でのタブレット端末の利用も少しずつ広
歩きができる大きさのものはキーボードの有無
を問わずタブレット端末としている。
さて,こうしたタブレット端末は学校でどの
がってきている。
文部 科学 省では教育の情報化を進めてい
程度利用されているのであろうか。文部科学省
るが, 特に 2010( 平成 22)年 8月に骨子を公
の「学校における教育の情報化の実態等に関
3)
表した「教育の情報化ビジョン」 以後,学習
する調査結果」5)によると,2015 年 3月1日現在,
JANUARY 2016
51
また,学校にタブレット端末を導入する場合,
全国の公立小中高,中等教育学校,特別支援
学校のタブレット端末の配備台数は15 万6,018
複数の台数を購入することが多いのも特徴的で
台。前年の 7 万 2,678 台から倍増している。ただ
ある。同じ2014 年度の調査で「授業で児童に
しこれは,全国 3万4,458 校の合計値である。
タブレット端末を利用させている教師」は 6%に
また,NHK 放送文化研究所の小学校教師
とどまったが,
「児童が利用できる端末」の平
を対象にしたメディア利用に関する調査では,
均台数は13.3 台であった。40人の学級だとして
授業で「タブレット端末を利用できる環境にあ
も3人で1台を利用できることになる。また,利
る」とした教師は,2013 年度は 12%であった
用している教科は国語,算数,理科,社会の
が ,2014 年度には 24%であった 。表 1 に示
ほかに,体育や総合的な学習の時間など多岐
したように,9 割近くの教師が利用できるとし
にわたっていることも明らかになった。後述す
たデジタルカメラやパソコンなどほかのメディア
るように,タブレット端末を先進的に導入して
と比較するとまだ広がっているとはいえないが,
いる学級では,教師が教材提示に利用するだ
メディア機器としては価格が安いことや操作が
けでなく,グループで1台あるいは1人 1台の端
容易であることなどもあり,導入が進んでいる。
末を,さまざまな教科の授業で多様に使ってい
6)
7)
る様子がみられる。
タブレット端末がほかのメディア機器と比べ
表 1 小学校教師が授業で利用できる
環境にあるメディア(2014年度)
(n=2,795) (%)
て特徴的なのは,現時点で利用できる小学校
教師の数は少ないが,授業で利用したいという
デジタルカメラ・
デジタルビデオカメラ
パソコン
88
インターネット
84
2014 年度の小 学 校教師を対 象にした調査
実物投影機
80
で,タブレット端末を今後の授業で利用したい
テレビ受像機
76
録画再生機
73
とした教師は全体で 68%,2013 年度の 54%か
プロジェクター
73
電子黒板
48
タブレット端末
24
89
教師が多いことである(表 2)。
ら増加している。年代でみると,20 代,30 代
で 7 割を超え,他の新規メディアと比べて特に
若い世代の利用意向が高いことがわかる。
表 2 小学校教師が今後授業で利用したいメディア(2014年度)
(%)
男女別
年代別
教師全体
男性
女性
20
代
30
代
40 代
50 代
(2,387 )
(n=947 )(n=1,430 )(n=415 ) (n=530 ) (n=706 ) (n=700 )
52
電子黒板
68
64
70
69
67
67
68
タブレット端末
68
75
63
74
74
68
60
指導者用のデジタル教科書
59
56
60
54
60
63
56
学習者用のデジタル教科書
協働学習で利用できる
ソフトウェアやツール
教師が教材などについて意見交換
できるウェブサイトや SNS
45
48
44
49
45
46
43
27
33
22
26
32
29
22
25
28
23
27
24
26
23
JANUARY 2016
これは教師自身も日常的にスマートフォンや
タブレット端末を利用していて操作に慣れ親し
んでいるためや,さまざまな設定が必要なコン
ピューターに比べ手軽なイメージがあるためと
態を示し,計10 場面での実践事例を類型化し
ている(図 1)。
このうち,映像の活用に関わるのは,例えば,
「A1 教員による教材の提示」での動画の提示
や,
「B1 個に応じる学習」
「B2 調査活動」
「B3
考えられる。
家庭に学校にタブレット端末は広がりつつあ
り,そこで映像を見る環境も整ってきている。
思考を深める学習」
「B5 家庭学習」などで,デ
ジタル教材としての動画を見たり,教師や自分
たちが作成した自作教材を見たりすることであ
2.「多様化」
「個別化」が進む映像教材
(1)タブレット端末で利用される映像
る。
学びのイノベーション事業の実証校では,
「学
習者用のデジタル教科書」8)として,動画やシ
タブレット端末は学校でどのように利用され
ミュレーション教材などを1人 1台の情報端末
ているのであろうか。文部科学省では『学びの
で利用することもできた。同報告書には数多く
イノベーション事業 実証研究報告書(概要)』
の実践事例が紹介されているが,その中からタ
で,
「ICTを活用した指導方法」として,
「一斉
ブレット端末の動画活用で効果があったと報告
学習」
「個別学習」
「協働学習」の 3 つの学習形
されているものをいくつかあげてみる。
図 1 ICT を活用した指導方法
『学びのイノベーション事業 実証研究報告書(概要)』
JANUARY 2016
53
(国語)
・古典の学習において学習内容に関連した
動画を児童がタブレット PC 上で繰り返
し視聴する。
(理科)
・児童が実験器具の操作手順についての動
画資料を各自のタブレット PC で確認し
た後,実験する。
・児童がタブレット PC のカメラを活用し
て植物の成長の様子を撮影し,デジタル
ノートに観察記録を作成する。
(外国語活動)
・児童が学習者用デジタル教科書・教材を
活用して各自で発音練習を行う。
(音楽)
・合奏の個人練習の際,各パートの音源を
保存したタブレット PC を児童が確認し
ながら各自で楽器の練習をする。
(図画工作)
・グループごとに児童がタブレット PC で
撮影した画像を用いて電子紙芝居(アニ
メーション )を作成する。
・絵や立体,工作等の作品の画像や動画を
児童がタブレット PC で鑑賞する。
(家庭科)
・調理や制作の手順に関し,動画や画像を
電子黒板や児童用タブレット PC に提示
し,児童が確認する。
(体育)
・器械運動の様子をタブレット PC を使っ
て児童が互いに撮影し,自身の動きの改
善点を確認する。
また,子どもたちが実際に身体を使って何か
をする際の確認用としての動画利用もさまざま
な教科でみられる。
「理科」の実験,
「外国語
活動」の発音練習,
「音楽」の楽器の練習,
「家
庭科」の調理手順,
「体育」の器械運動などで
ある。こうした動画には見本となる既製のもの
と,タブレット端末の撮影機能を使って教師や
子どもたちが自作するものとがあるが,いずれ
にせよ1人 1人のペースにあわせて,動画を繰り
返し再生したり,途中で静止したりすることで,
技能の定着に役立つと考えられる。
これまでの放送番組やDVD 教材,パソコン
教材などの動画教材は,全体の情報量の制約
などがあり,1つの単元に対応する1つの動画だ
けが用意されていることが多かったが,自作動
画も含め多様な動画が用意され,学習者が個
別に自分のペースで見られる動画がタブレット
端末で利用されているといえる。
(2 )NHK for School の番組とクリップ
では, 全 国各地の学 校で 利用されている
NHKの 学 校 放 送 番 組や関 連する映 像 教 材
(NHK for School)はこうした動きの中,どのよ
うに制作されているのであろうか。
NHK学校放送番組は,2001年からインター
授業でのタブレット端末の動画利用にはいく
つかの傾向がみられる。まずは,教室内で見
ネットで番組と関連する動画クリップのストリー
ミングでの公開を行っている。
ることができなかったり,静止画だけではわか
動画クリップとは資料映像を1〜3 分に編集
りにくかったりする事象を,子どもたちが個別
した,いわば映像の百科事典である。例えば,
に確認する利用法である。
「理科」
「社会科」
「国
2001年から放送と動画クリップの公開を始めた
語(古文)
」
,そして「図画工作・美術」におけ
総合的な学習の時間向け番組『おこめ』の場
る鑑賞などである。もともと授業での映像利用
合,国内外の稲作作業の様子などの社会科に
はこうした教科で多かったが,1人 1人がタブ
関係する映像,発芽の様子や田んぼの生き物
レット端末で動画を見られることで,学習効果
などの理科に関係する映像,米の調理法など
が高まると考えられる。
家庭科に関係する映像など,約 200 の動画ク
54
JANUARY 2016
図 2 番組とクリップの関係図
番組
(第1回)
番組
(第 2 回)
番組
(第 3 回)
基本情報クリップ
+
(第1回)
番組
関連クリップ
発展クリップ
基本情報クリップ
(第 2 回) +
番組
番組
(第 3 回)
関連クリップ
発展クリップ
基本情報クリップ
+
関連クリップ
発展クリップ
リップなど,さまざまなレベルのクリップも提供
できるようになった(図 2)。
こうした形で動画を提供するようになった背景
には,知識は教師から子どもたちに一方向に伝
達されるものではなく,子どもたちがある対象に
ついて,それぞれ異なる理解を組み立てるよう
な形で構成していくものだという学習観もある。
複数の動画からそれぞれの学習者の状況や必
要に応じて選択していくことで,知識が構築され
ることをねらっているのである。
(3)
『未来広告ジャパン』
(5 年生社会科)の番組とクリップ
具体的な番組とクリップの関係をみていこう。
2015 年度から放送が始まった小学校 5 年生向
リップを,15 分×20 本の番組とあわせてウェブ
9)
け社会科番組『未来広告ジャパン』は,番組と
サイトから見られるようにした 。個々のクリッ
クリップを計画的に制作している番組である。
プ映像は番組と関連づけられているが,その
その典型的な回である「日本の食料自給率は低
番組だけでなく,ほかの番組や学習内容から
いままでよいか」
(9/9 放送)を見てみる。
も参照できるように,汎用性を持たせて制作さ
れている。
10 分の番組では「現在の食料自給率は 39%
であること」
「食生活の変化や輸送技術の進歩
それまでの学校放送番 組は,原則15 分の
により輸入が拡大したこと」
「海外での災害や異
番組を年間 20 ~ 35 本のシリーズとして構成し
常気象などの際に食料輸入が難しい場合もある
て,基本的には学級全体で同時に視聴して学
こと」などの現状を示した上で,
「農産物直売所
習することを前提として制作してきた。しかし,
などの地産地消の試み」と「植物工場の試み」
番組とあわせて,インターネットで動画クリップ
が始まっていることを取り上げている。しかし,
を提供できるようになったことで,番組は問題
番組では結論を出さず,
「日本の食料自給率は
を投げかけるオープンエンドの形式で制作して,
低いままでよいか」と子どもたちにあらためて投
その問題を考えるのに役立つ事例をクリップと
げかけるオープンエンド形式になっている。
して公開することもできるように
なった。また,番組で扱った用
語や概念など基礎的な内容に
ついてのクリップや,関連する
情報のクリップ,番組では取り
上げなかった発展的な内容のク
『未来広告ジャパン』
(小学 5 年社会科)
http://www.nhk.or.jp/syakai/mirai/
JANUARY 2016
55
番組とあわせて提供されているクリップのタ
が,より端的に問題点を指摘している。8 ~ 11
イトルは以下のとおりである。計13 本で,トー
は食料自給率アップのためのさまざまな取り組
タルの時間数は 34 分 52 秒になる。
みの紹介である。番組で取り上げた農産物直
1. 日本の食料自給率(3 分 3 秒)
2. フード・マイレージ(2 分 33 秒)
3. 外国産の安い食料(2 分 16 秒)
売所や植物工場だけでなく,ほかの事例も扱っ
ていて,さらに学習を深められるようになって
いる。12 ~ 13 は自給率アップとも関連するが,
4. 輸入がささえる豊かな食生活(2 分 24 秒)
日本食を輸出するという,番組では扱っていな
5. 食料を輸入にたよることの問題(1 分)
い視点である。
6. 食料の輸入増加と日本の農業・漁業
(2
分 26 秒)
7. 大量の輸入と食べ残し
(2 分 10 秒)
8. 農産物直売所~地産地消の取り組み~
(3
分 13 秒)
9. 工場で育てる野菜(1 分 49 秒)
(3 分 4 秒)
10. 野菜くずをえさにする
11. フード・アクション・ニッポン
~食料自給率アップ作戦~
(5 分 9 秒)
12. 外国での和食ブーム(1 分 55 秒)
13. 世界に売りこむ日本の食(3 分 50 秒)
問題提起となる番組は学級全体で見ることを
想定しているが,13 本のクリップは,教師や子
どもたちが選択的に見ることを想定している。特
にタブレット端末がグループに1台,あるいは個
人に1台ある場合には,教師がグループごとに
見るべきクリップを指示したり,子どもたちが個
別に必要と思うクリップを視聴したりすることが
考えられ,実際にそうした授業も行われている。
NHK for Schoolでは現在,理 科,社会 科
を中心に,
『未来広告ジャパン』以外の番組シ
リーズでも10 ~ 15 分の番組 1本に対して10 ~
20 あまりの動画クリップが提供されている。動
画クリップは合計 5,000 本以上公開されており,
番組に紐づいた関連クリップとして示されるだ
けでなく,キーワードや学習指導要領をもとに
検索して,個別に視聴することもできる。
放送番組だけの時代からインターネットの時
第 9 回「日本の食料自給率は低いままでよいか」
関連動画クリップ
http://www.nhk.or.jp/syakai/mirai/
shiryou/2015_009_04_shiryou.html
クリップの内容はいくつかの種類に分類する
ことができる。用語や概念を詳しく説明する1
や 2 のクリップ,そして輸入の現状を伝える3
や4 のクリップは全体像の理解につながる基礎
的なものである。続く5 ~ 7 は食料を輸入に
代になり,動画の「多様化」と「個別化」が進
んでいる。
3. 授業で広がるグループや個人での
タブレット端末利用
(1)NHK for School の
タブレット端末での活用
頼ることと,そのことによる問題点を取り上げ
では,実際に NHK for Schoolの番組や動画
たものである。番組でも扱っている内容である
クリップを利用してどんな授業が行われている
56
JANUARY 2016
のだろうか。放送番組や視聴覚教材を授業で
ト端末を利用した授業を行った。授業のねらい
利用してきた教師の間で進められている,タブ
は「源頼朝及び源義経の活躍を取り上げ,平氏
レット端末での動画利用の実践をみてみる。
と戦った源氏が勝利をおさめたことを理解する」
2015 年 8月4日(火)~ 5日(水)に国立オリ
ことである。
ンピック記念青少年総合センター(東京都渋谷
授業を行うにあたり,福田教諭は子どもたち
区)で開催された,第 19 回視聴覚教育総合全
に具体的なイメージを持たせるために,タブレッ
国大会兼第 66 回放送教育研究会全国大会で
ト端末で NHK for Schoolの動画クリップ「平
は,タブレット端末で映像を利用した実践の
氏と源氏」
(2 分14 秒),
「源氏と平氏の戦い」
(2
発表が相次いだ。特にテーマ「タブレット端末
分 32 秒),
「平氏の滅亡」
(2 分),
「頼朝の約束」
を活用した『わかる・できる』授業」では,3 つ
の典型的な事例の発表があった。
(2 分1 秒)の 4 本を見られるようにした。児童に
は調べた内容をノートに整理して記述すること
1つめは浜松市立三ヶ日西小学校の菊地寛教
を指示し,教科書,資料集とあわせて,動画
諭の 6 年生理科「食べ物のゆくえ(消化)
」の授
教材をもとに調べ学習が行われた。福田教諭
業である。グループで1台のタブレット端末を
によると,動画クリップの視聴により具体的な
活用した。授業はまず小学校 6 年生向け理科
イメージを持てたことで,子どもたちのノートの
番組『ふしぎがいっぱい(6 年)』の「食べると…」
記述量が増えたと考えられるという。
(10 分)の回をクラス全員で視聴することから始
まる。
3 つめは東京都北区立豊川小学校の岡田江
奈実教諭の3 年生体育のタブレット端末を活用
番組視聴後,グループごとに学習課題を持
した授業である。持ち運びが可能なタブレット
ち,何を追求するかの計画を立てる。その上で,
端末は校庭や体育館,プールなどの体育の授
例えばヨウ素デンプン反応の実験などを行い,
業でも活用が始まっている。
消化についての理解を深めていく。この場面で
授業ではまず,ばた足で泳ぐ子どもたちの足
タブレット端末が活用される。子どもたちは,
の動きを,教師が防水ケースに入れたタブレッ
実験内容にあわせて必要な動画をタブレット端
ト端末で撮影した。次の時間は教室で行い,
末で選択視聴する。さらにこの学校には無線
小学校 3 〜 6 年向け体育番組『はりきり体育ノ
LAN 環境があるので,教室だけでなく理科室
介』の「け伸び ・ばた足・かえる足に挑戦だ !」
でも動画の視聴は可能である。そこで実験をす
を全員で視聴する。その後にタブレット端末を
る傍らにタブレット端末を置いて,動画で手順
グループに1台配布し,動画クリップの「できる
などを確認したという。菊地教諭によると,グ
ポイント」と,教師が撮影した各自の泳ぎの動
ループごとに動画クリップの再生と一時停止を
画を比較しながら視聴する。その振り返りをも
繰り返して,
「消化」とは何かを話し合う様子も
とに,再びプールでばた足の練習を行った。岡
見られたという。
田教諭は,動画クリップで泳ぎのイメージを獲
2 つめは石川県金沢市立十一屋小学校の福
得し,そのことで練習する際の目当てが明確に
田晃教諭の授業である。6 年生社会科「武士
なったことで,子どもたちの泳距離が伸びたり,
の世の中」の調べ学習で,1人 1台のタブレッ
泳げなかった子が泳げるようになったりしたの
JANUARY 2016
57
ではないかとしている。
稲垣忠准教授によるもの 11)で,2012 年度から
菊地教諭の授業はグループ 1台のタブレット
始まり今も行われている。6 年生の算数,比例
端末で,番組の全体視聴と動画クリップの選択
と反比例の単元を対象とした1クラスのみでのト
視聴の2 段階で構成されている。福田教諭の
ライアルである。教科書の例題に相当する部分
授業は1人 1台のタブレット環境があることもあ
を,指導者用のデジタル教科書を使って佐藤
り,個人で動画クリップを選択視聴することが
教諭が説明する5 分程度のビデオを作成,子ど
中心となっている。また,岡田教諭の授業は
もたちは映像の入ったタブレット端末を自宅に
番組と動画クリップだけでなく,自分たちの泳
持ち帰って視聴して,その内容をノートにまとめ
ぎの動画と比較したところが特徴的である。
た後に授業を受ける。
教科の内容や授業でのねらい,タブレット端
稲垣准教授によると,実証授業の結果,
「反
末の台数などの環境で,授業の内容は異なる
転授業の導入により,学校での授業展開に余
が,複数の動画の中から必要に応じて選択をし
裕が生まれ,児童が話し合い,理解を深める
て,それを「全体で見る」
「グループで見る」
「個
時間を確保しやすくなる」
「家庭では平均 3 回程
人で見る」などさまざまな見方を組み合わせた
度ビデオを視聴している。ビデオ視聴を授業の
授業が全国で少しずつ行われ始めている。
前提にすることで,すべての児童が事前に視聴
できた」
「事前・事後の単元テストを実施した結
(2 )タブレット端末での動画活用の広がり
54頁の「学びのイノベーション事業」の実践
事例で紹介したように,授業で多様な動画の活
用が始まっている。さらに1人 1台のタブレット
果,下位群が 0 名となり,評価テストの期待平
均点を上回った」という3点が明らかになったと
いう。
より大規模に反転授業を実施しているのが
端末環境になった場合に期待されているのは,
佐賀県の武雄市である。武雄市では 2014 年 4
図1の「B5 家庭学習」で示した「情報端末の持
月に市内の全小学生にタブレット端末を配布,
ち帰りによる家庭学習」である。
スマイル学習(武雄式反転学習)を2014 年 5月
特に最近は反転授業(Flipped Classroom)
から開始した。対象は市内全 11校の小学校 3
と呼ばれる学習形態に注目が集まっている。反
年生以上の算数と4 年生以上の理科で,動画
転授業は一般に「説明型の講義など基本的な
は,各校の教員が原案を作り,作成は民間の
学習を宿題として授業前に行い,個別指導やプ
教育業者が行った(2015 年度からは中学校全
ロジェクト学習など知識の定着や応用力の育成
学年の理科と数学でも実施)。
に必要な学習を授業中に行う教育方法」とされ
2015 年 9月に出された「検証報告書要約版」
ている 。授業前に視聴する動画は,教師が
によると,学校間で実施率に大きな差が生じ
自作する場合や,既存の教育用の動画を利用
たという。また,教員へのアンケートでは動画
する場合がある。
コンテンツは使いやすかったという肯定的な回
10)
反転授業が小学校での実証研究として初め
答が多かった一方,こうした学習に不向きな単
て行われたのは,宮城県黒川郡富谷町立東向
元もあるという指摘もあったという。なお,成
陽台小学校の佐藤靖泰教諭と東北学院大学の
績向上への寄与については明らかになっていな
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い。学校と家庭をつなぎ,タブレット端末で反
こうした講座がこれまでの教育サービスと異
転学習を行うという試みはまだ端緒についたば
なるのは,基本的には無償で受講できること
かりで,さらなる検証が必要と考えられる。
(有償で認定証を発行するものもある)
,そして
数週間程度で学べる「学習コース」として,段
4. 家庭でのタブレット端末を利用した
学習の広がり
(1)無料の大規模公開オンライン講座
階的に学習を進められることである。例えば
JMOOC では,1 週間を基本的な学習の単位と
し,その週に見るべき10 分程度の講義動画が
5 〜10 本公開される。受講者は動画を視聴し,
家庭で個人が自主的にタブレット端末を利
確認のための小テストに答えていく。最後に課
用して行う学習も広がり始めている。その契
題が提示されるので,提出期限内に提出する。
機となっているものに,大規模公開オンライ
「1か月コース」であれば,これを4 週繰り返し,
ン講座と呼ばれる,MOOC(Massive Open
最後に出される総合課題を提出して完了。週ご
Online Course)がある。2012 年にアメリカで,
との課題と総合課題の全体評価が修了条件を
「Cousera」
「Udacity」
「edX」という 3 つのサー
満たせば修了証がもらえるという仕組みだ。た
だしMOOC の受講は受講者の自主性に任され
ビスがスタートしている。
Couseraは大学の講義をMOOCとして公開
ており,ウェブサイト上で受講登録をするだけで
する教育ベンチャー企業である。2015 年 9月時
入学資格も必要ない。そのため受講の完了率
点で,世界 120 の大学や組織が 1,000を超える
は低く,概ね 1割程度である。
大学レベルの MOOCを公開しており,受講者
MOOC は高等教育が中心だが,初等中等教
は1,300万人を超えている。また学習コースは
育向けの無料の教育ウェブサービスの「Khan
多言語で提供されており,日本からは東京大学
Academy(カーンアカデミー)」も広く世界で利
が参加している。
用されている。
edXは米国を中心とした大学連合がオンライ
個人による映 像制作が 容易に可能となり,
ン講座をMOOCとして公開するコンソーシアム
YouTubeなどを利用して手軽に動画を公開でき
である。2015 年 9月時点で世界70 の大学や組
る環境が整ったことで,こうした教育動画が広
織が 500を超えるMOOCを公開している。日
がりつつあるのである。
本からは京都大学,東京大学,大阪大学,東
京工業大学,北海道大学が参加している。
そして日本でも一般社団法人日本オープンオ
ンライン教育推進 協議会(略称 JMOOC)が
(2 )民間教育企業などの動画サービス
日本でもウェブを使った教育サービスが生ま
れてきている。
2013 年に設立され,2014 年 4月からNTTドコ
教 育 系 NPO 法 人 まにゃび ー は, 無 料で
モとドコモgaccoが運営する
「gacco」
,ネットラー
大学受 験 勉強が 可能なウェブ 授業サービス
ニング社が運営する「Open Learning」
,放送
「manavee」を2010 年に開設している。動画は
大学が運営する「OUJ MOOC」の3 つの配信プ
日本全国の大学生や社会人が先生となり黒板な
12)
ラットフォームでのサービスが行われている 。
どを使い講義するもの。動画 1本の長さは長く
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ても15 分程度で,現在,大学受験に関係する
える。タブレット端末を利用した学習コースを
11科目で1万以上の授業動画を公開している。
導入した学習塾・予備校としては,
「栄光ゼミ
さらに講義ごとに設置した掲示板で講師や他
ナール」
「学研教室」などがある。
の生徒への質問も可能で,受講者が確認テスト
を作って共有しほかの受講者が解くなど,受講
者同士で交流できる機能も備えている。
さらに,これまで教育コンテンツを制作して
こなかった業種からの新規参入もみられる。
リクルートマーケティングパートナーズが展開
こうした動きに対して,これまで紙ベースで
する「受験サプリ」は,2012 年からスマートフォ
通信教育を提供してきた民間教育企業や,学
ンなどで見られる無料のコンテンツを公開する
習塾,予備校事業者でも,タブレット端末で
とともに,定額で講義動画見放題のサービスを
13)
動画を利用するサービスが始まっている 。
始めている。講義はその教科の有名講師が行
「進研ゼミ」で知られるベネッセコーポレー
うもので,1講座は 20 分×3 回で構成され,講
ションでは,2014 年 4月からタブレット端末向
義の後に確認テストで知識を定着するという仕
けサービス「チャレンジタッチ」を始めている。
組みだ。
入会すると専用のタブレット端末が届き,子ど
こうしたタブレット端末で動画を利用した
もたちはタブレット端末の音声や動画の教材に
サービスは受講者がログインして映像を見るの
ペンでタッチしながら学習を進めていく。また,
で,視聴履歴というビッグデータを活用できる
これまで郵送していた課題は,タブレット端末
のが大きな特徴だ。例えば,動画制作にあたっ
上で即時に採点し個別に答えの解説画面を提供
ては,受講者の動画再生時間や,どこで脱落
しているという。タブレット端末だけでも学習
したかなどのデータをもとに作り方を変えること
は完結するが,現時点では記述力をみる問題な
ができる。また,個々の受講生に対しては,視
どでは印刷物のテキストも併用しているそうだ。
聴履歴をもとに見るべき動画を推薦するなど学
Z会も2015 年度から,添削のやりとりをオン
習のフォローアップも行える。それぞれのサー
ライン化した「iPad スタイル」というサービスを
ビスはまだ始まったばかりで,データの蓄積が
開始した。大学受験生向けの「映像授業」を
十分ではない部分もあるようだが,個人個人の
閲覧して手書きで解答した答案をiPadで撮影
ニーズにあわせた学習サポートが行える可能性
して提出し,添削された答案は iPad 上に配信
があり,今後の動きが注目される。
されるという仕組みだ。タブレット端末は iPad
に限られるが,家庭にiPad があればそのまま
利用できることが特徴である。
5. まとめ
通信教育以外の民間教育企業でもタブレット
学校が各教科で教える内容を定めた学習指
端末を利用した教育サービスに取り組むところ
導要領の改定作業が進んでいる。実際の施行
が増えている。塾や予備校では近年,授業の
は 2018(平成 30)年度以後になるが,その基
様子を映像で撮影して,遠隔地などに配信する
本となる論点整理が 2015(平成 27)年 8月26
事業を強化しており,その延長線上にタブレッ
日に公開された。そこでは,
「何を知っているか」
ト端末での動画活用が位置づけられているとい
にとどまらず,
「何ができるようになるのか」を
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重視すること,知識から「資質・能力」へのシ
フトが強調されている。そして「深い学び」
「対
話的な学び」
「主体的な学び」をもたらすために
アクティブ・ラーニングの導入が推奨されている。
タブレット端末で動画を活用した学習も,大
きくはこの流れに沿った形で広がっていくと考
えられる。学校では,同じ動画を一斉に視聴
する授業とあわせて,グループや個人で動画を
選択的に見る授業が進められ,家庭では,個
人が主体的に学ぶのをサポートする教育コンテ
ンツの利用が進むと考えられる。そしてこうし
た選択が有効に行われるためにビッグデータが
活用されるようになるであろう。
教育現場で利用される動画の中には,すで
にこうした動きにあわせたものが現れてきてい
る。
「多様化」と「個別化」はますます進むと考
えられる。
ただその一方で,短い動画教材がたくさん
あっても本当に自律的に選択できるのか,また,
短い動画だけを見るのでは,一定の長さとス
トーリーを持つ映像を読み取る能力が身につか
ないのではないかという議論もある。タブレッ
ト端末があれば,時間と空間を越えて学習でき
る便利さがある一方,画面の大きさの制約や,
動画の時間の制約が生まれるのではないかとい
うのである。
1人 1台のタブレット端末での動画活用につ
いては,今後もさまざまな動きがあると予想さ
れるが,教育界の大きな動きや,これまでの映
像視聴能力に関する知見なども参考にしなが
ら,引き続き動向を注視していきたい。
(うじはし ゆうじ)
注:
1)
『情報通信白書平成 27 年版』http://www.soumu.
go.jp/johotsusintokei/whitepaper/index.html
2)
調査の詳細については「人々は放送局のコンテン
ツ,サービスにどのように接しているのか ~『2015
年 6 月全国放送サービス接触動向調査』の結果
から~」
『放送研究と調査』2015 年 10月号を参照。
3)
『教育の情報化ビジョン』全文(2011〈平成 23〉
年 文部科学省)
http: //www.mext .go.jp/ b_ menu / houdou /
23/04/1305484.htm
4)
「学びのイノベーション事業 実証研究」の成果につ
いては,2014(平成 26)年 4 月発行の報告書に詳
しい。
ht t p: //w w w. mext .go.jp/ b _ menu /sh i ng i /
chousa/shougai/030/toushin/1346504.htm
5)「学校における教育の情報化の実態等に関する調
査結果」については下記参照のこと http://www.
mext.go.jp/a_menu/shotou/zyouhou/1287351.
htm
6) 調査の詳細については「メディア変革期にみる
教師のメディア利用 ~2013 年度『NHK 小学校
教師のメディア利用に関する調査』から~」
『放
送研究と調査』2014 年 6 月号を参照のこと。
7) 調査の詳細については「進む多様化と新しいメ
ディアへの期待 ~2014年度『NHK 小学校教師
のメディア利用と意識に関する調査』から~」
『放送研究と調査』2015 年 6 月号を参照のこと。
8)
学習者用のデジタル教科書は,主に子どもたち
が個々の情報端末で学習するためのもので,教
科書紙面データだけでなく,音声,動画等のさ
まざまなコンテンツを含む。教科書という名称で
あるが,現行制度上は副教材と位置づけられる。
9)
NHK の番組と動画クリップに関する取り組みの
経緯は下記に詳しい。教育放送研究会編(2012)
『教育放送 75 年の軌跡』日本放送教育協会
10) 反転授業と反転学習については東京大学大学院
情報学環・反転学習社会連携講座のウェブサイ
トに詳しい。http://flit.iii.u-tokyo.ac.jp
11) 詳細は
「
「一人一台端末時代」
のメディアと教育」
稲垣忠『放送メディア研究 12』NHK 放送文化
研究所を参照のこと。
12) MOOC の動 向については,
「 日本 教 育 工学 会
SIG-05 レポート」
(2015)を参照した。
13)
教育産業でのタブレット端末の利用動向につい
ては,
『教育産業白書 2015 年版』矢野経済研究
所を参照した。
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