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KYT危険予知トレーニングノート5(Vol.54)
第5回 危険予知トレーニングノート さあ、やってみましょう 1‐ 2 杉山 良子さん 監修:武蔵野赤十字病院 専任リスクマネジャー・看護師長 杉山 良子 前号では、KYT基礎4ラウンド法で第2ラウンドまで述べました。 引き続き第3ラウンド(対策の樹立)、第4ラウンド(目標設定)を紹介します。 第3ラウンド… あなたならどうする?(対策の樹立) 第1ラウンドで出された危険ストーリーを第2ラウンドで絞り込 んで◎印をつけます。このシートの◎項目は「注射の混注作 業の途中で話しかけられよそ見をすると、 混注薬を間違える」 としました。こうした誤薬につながることを防ぐ対策を3ラウン ドでは発言していきます。例えば、 ● 取りかかっている注射作業は中断せず、 完結する。 ● 注射作業途中での他者の声かけには、 「注射作業中です、 待って下さい」と答える。 【状況設定】あなた(看護師)が朝のミーティングを終え、 9時切り替えの 点滴( 2層 バッグ)に混注をしていると、 医師が注射伝票をもってやってきました。 ● 混注作業は必要な薬剤をそろえて確認してから行う。 ● 混注薬は注射伝票に記入されている順番にそって混注し ていく。 このシートから想定される危険ストーリーの例 ● 等、 対策は一人称(自分が実施する言葉)で表現します。 注射の混注作業の途中で話しかけられ、よそ見をすると、そ 第4ラウンド… れまでしていたことを忘れて、混注していた注射薬を間違う。 ● 2層になっている点滴バックは隔壁開通することに気づかず 私たちはこうする(目標設定) そのまま使用すると、不適切な薬液の注入となる。 ● ● 注射針のような鋭利な用具を用いている時に、手元を見な いで作業をすると、針刺し事故を起こす。 第4ラウンドでは、対策の中から現実的で実効性のあるもの 注射伝票の変更を医師から指示される場合に、伝票をきち を、皆の合意で選びます。ここでは重要実施項目を「注射 んと見ないで耳で聞くだけだと、聞き違えて指示内容を間 作業途中の声かけには、 “待って下さい”と答える。」として 違える。 ● 業務が集中している朝の時間帯には割り込み業務が多いので、 *印をつけ、皆で唱和します。自分たちは必ずこれをしようと 看護師の集中力が分散して、ヒューマンエラーによる忘れが 確認し合うわけです。安全行動目標としてチーム内で設定さ 多い。 れました。 医療のKYTについて 9 医療の特質には、医療の対象は刻々変化していく人間(病気を たり、ミスの被害者にはなりません。だからこそ、自分の作業、 持った患者)であること、やり直しはできないことがあります。 行為の先には患者が存在していることを常に頭に入れて考え 工業界の建設現場などでは、ちょっとだからと油断して危険行 る必要があります。また、KYTでは自分は“どうする”と一人称 動をとると自分自身の身体に害が加わります。例えば、ヘルメッ で考えます。自分にとっての仕事の能率よりも、患者にとっての トをかぶらないでいたら上から鉄板が落ちてきて頭に大けがを 安全を最優先に考え行動して事故を未然に防止していく能力 するなどです。しかし、医療の現場では害を被るのは多くは患 を養っていくのが、医療安全のKYTです。KYTは、シートを見 者です。医療行為をしている看護師等が直接的に痛い思いをし ながら自分が行っていく安全行動を疑似体験していくのです。