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中間報告書 わが国における 地方自治体監査基準設定に関する論点の整理

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中間報告書 わが国における 地方自治体監査基準設定に関する論点の整理
平成22年度
日本監査研究学会
課題別研究部会
「地方自治体監査基準」
中間報告書
わが国における
地方自治体監査基準設定に関する論点の整理
平成22年10月30日
部会長
石 原 俊 彦
(関西学院大学専門職大学院経営戦略研究科)
目次
1.
当研究の目的
1
2.
研究会の運営方法
1
2.1.
研究の進め方
1
2.2.
最終目標への研究期間中のロードマップ
2
2.3.
部会の構成
3
3.
研究会での議論
4
3.1.
事前の論点抽出
4
3.2.
議論された事項の整理
6
4.
重点的に議論された事項
8
4.1.
論点の整理
8
4.2.
現状の把握
8
4.3.
監査の目的論・あるべき姿
9
4.4.
監査に関する基礎的用語の整理
10
4.5.
監査基準の必要条件
11
5.
今後の検討事項
11
13
資料編
資料1
当研究会における論点整理(第1回研究会配付資料)
14
資料2
第1回
議事録(2009年11月23日)
29
資料3
第2回
議事録(2009年12月26日)
50
資料 4
第3回
議事録(2010 年
1月 30 日)
66
資料5
第4回
議事録(2010 年
8月
7日)
79
資料6
第5回
議事録(2010 年
9月18日)
91
1
当研究の目的
なぜ、いま監査基準の議論をしなければならないのか、改革のための改革といわれないよ
うに、その前提に対する共通の理解と地方自治体関係者の納得が必要である。
その際、続出する地方自治体の不正経理への対応、事業仕分けに代表される「無駄」の排
除といった分かりやすい課題に対応することができるように監査制度の改革を企図する整理
も必要である。しかし、地域主権改革を積極的に推進するための一つの重要な社会制度とし
て、監査制度の改革が求められており、監査基準の設定は、この監査制度改革の根幹をなす
ものであるという認識こそ不可欠であろう。
本研究部会は、こうした認識から、監査基準設定を主な議論対象とする場合には、地方自
治体の監査制度のあり方にまで踏み込む必要があるという発想で、議論が開始されている。
本研究部会は、現在の監査委員制度や包括外部監査制度を必ずしも前提として監査基準のあ
り方を議論するのではなく、地方自治体のあるべき監査制度に関する議論を通じて、地方自
治体監査基準(案)の策定に向けて調査研究を図るものである。
2
2.1.
研究会の運営方法
研究の進め方
この部会では、研究会方式でその調査研究を行っている。そして、部会員の勤務地が、全
国に分散しているので、インターネットを活用したメーリングリストを通じて、研究会での
議論を補完することとしている。
本研究に参加するメンバーはすでに、自治体の監査全般について多彩な経験や知見を有し
ており、それぞれ現状の地方自治体における監査について独自の問題意識を有している。そ
れゆえ調査研究の初年度においては、文献渉猟やフィールド調査に力点を置くのではなく、
部会構成メンバーのもつ様々な知見や問題意識についての意見を交換することで、現状の地
方自治体における監査の現状や実態について正確に把握することを心がけた。
また、その際、学会外部から多数の有識者に意見交換の場に参加していただき、より活発
な意見が交わされるような工夫を行った。本中間報告書は、こうした意見交換の内容を集約
し、自治体監査の現状と課題を監査基準設定の観点から整理したものである。
-1-
2.2.
①
最終目標への研究期間中のロードマップ
部会員から地方自治体監査のあり方について、あえて論点を固定せずに、議論すべき事
項についてなるべく多くの論点の提示を受ける。
②
提示された論点を前提に、内外の文献渉猟、監査委員及び監査委員事務局の実務担当者
からの実態把握、英国に代表される先行事例の研究並びにそれらの検討を前提としてわ
が国固有の問題点についてさらに理論的考察を加える。
③
こうした検討を自由討議の方式で積み重ねた上で、地方自治体監査基準(案)策定のため
の論点整理を実施する。
④
整理された論点ごとについて、さらに検討を行い、具体的考察を加える。
⑤
以上の検討を踏まえて、「地方自治体監査基準(案)」の策定を行う。
⑥
策定された「地方自治体監査基準(案)」については、中間報告、最終報告および研究
叢書という形式で研究成果をとりまとめ、学会、国会、政府及び地方自治体関係者へ提
示し、「地方自治体監査基準」の設定に向けた社会環境の形成を企図する。
図表1
地方自治体監査基準策定までのロードマップ
-2-
2.3.
■
部会の構成
部会構成員
石原
俊彦
(関西学院大学教授・公認会計士)・部会長
石川
恵子
(実践女子大学准教授)
伊藤
龍峰
(西南学院大学教授・福岡県監査委員)・副部会長
遠藤
尚秀
(新日本有限責任監査法人パートナー・公認会計士・
日本公認会計士協会常務理事<公会計委員会所管>)
■
髙原
利栄子
(近畿大学准教授)
西尾
宇一郎
(関西学院大学教授・公認会計士)
藤岡
英治
(大阪産業大学准教授)
森田
裕司
(有限責任監査法人トーマツ・パートナー・公認会計士)
吉見
宏
(北海道大学教授)・副部会長
意見交換の場に参加された地方自治体関係者<謝辞>
本研究部会では、部会構成員による意見交換の場(研究会等)に、次の地方自治体関係者
(順不同・敬称略)を招聘、相当の時間を費やして議論を行った。この議論からは、部会構
成員が本調査研究を進め、本中間報告書を集約する上で、非常に多くの有益な示唆をいただ
いた。ここに深く謝意を表するものである。
谷川正嗣奈良県代表監査委員、吉井信雄名古屋市代表監査委員、磯道
真日本経済新聞社
編集委員、新田一郎総務省自治行政局行政課理事官、丸山恭司岐阜県監査委員事務局監査第
一課主査、馬場伸一福岡市監査事務局監査第二課長、南昌則八尾市交通対策課課長補佐、宗
和暢之有限責任監査法人トーマツ・パートナー一、世羅徹有限責任監査法人トーマツ・パー
トナー、守谷義広新日本有限責任監査法人シニアマネージャ、長谷川太一新日本有限責任監
査法人マネージャ、井上直樹監査法人トーマツスタッフ、木村成志丹波市建設部下水道課主
査、酒井大策摂津市市長公室人事課主査、関下弘樹田辺市市民環境部保険課主査、澤田晋治
京都府職員研修・研究支援センター研修室主査、木村昭興柏原市市民生活部環境保全課主事。
-3-
3
研究会での議論
3.1
事前の論点抽出
研究会開催に当たり「自治体監査」に関する議論を円滑に実施することを目的として、
部会構成員等から議論すべき論点項目を提示するように求めた。求めた論点の分野は、「自
治体監査の目的・監査制度」「監査基準の設定主体」「監査主体」「監査実施」「監査報告」
など項目である。これに対して部会構成員等からは、数多くの論点が提示された。代表的な
論点は図表2のとおりである。具体的な論点の内容は、「資料1 当研究会における論点整理」
(14頁)を参照されたい。
これらにおいては、それぞれの経験や問題意識を背景として、さまざまな観点から論点が
提示されている。研究者や公認会計士などの専門家からは、次のような意見が寄せられた。
①
「自治体監査実務の実態を知りたい」
②
「自治体の監査実務について理論的に整理したい」
また、監査実務の経験者や実務担当者からは、次のような意見が寄せられた。
①
「現行法を前提とした自治体監査制度は、監査委員や監査委員事務局の独立性・専門
性などの点で十分でない」
②
「各自治体が手探りで実務を運用している」
③
「手がかりとなる理論的な支柱がなく現実の運用で困ることが多い」
これらの意見は主として、実務の運用面においても監査の目的、機能、原則論について基
礎となる考え方を固めるべきであるという旨の論点提示である。
事前の論点抽出に際しては、自治体監査の現状認識について、それぞれ立場によって見解
は異なるものの、自治体監査の運用の基礎となる監査基準の策定について学会、実務担当者
ともに最大の努力を行うべきである旨の共通認識が確認された。
-4-
図表2
1
事前の論点抽出で寄せられた論点
監査の目的・監査制度
・そもそも地方自治体の監査委員は、外部監査なのか、内部監査なのか。
・自治体監査の目的は何か。情報監査、実態監査か。保証型か、指摘型か。
2
監査基準の設定主体
・監査委員、監査委員事務局職員の専門性、独立性はどのようにあるべきか。
・監査基準の対象を財務監査に限定するのか、行政監査、ひいては業績監査まで範
疇とするのか。
3
監査主体
・監査基準の対象を監査委員に限定するのか、それとも外部監査人も対象とするの
か。
・行政監査、業績監査についても先行事例を参考に研究すべきだ
4
監査実施
・健全化比率審査でもミスが続発しており、現状の監査の実態に関心がある。
5
監査報告
・指摘、指導など自治体によりさまざまな公表方法がなされおり、標準化できない
か。
・業績監査における記述のあり方をどうするか。
など
-5-
3.2
議論された事項の整理
現行法を前提とした既成概念からあえて距離を置き、創造的な問題解決策となりうる「地
方自治体監査基準」を構築するために、研究会では自治体監査のあり方について自由討議の
方式により検討を行った。(議論の具体的な内容については、29頁以降を参照)。
この討議は、部会長がファシリテーターとなり運営した。研究者が自治体監査の実態につ
いて質問を行い、それに対して監査実務担当者が実態について具体的な事例を交えて回答を
行うというスタイルを繰り返して問題への考察を加えた。
また、自治体の監査実務担当者からの回答に関して、研究者や公認会計士から監査論や企
業の財務監査などの知見や理論的な側面から批判的に考察を行った。
さらに、国内の自治体監査の実態ばかりではなく、民間における内部監査、独立行政法人
監査、医療法人監査及び英国における自治体監査の先進事例についても各構成員から適宜、
発表を行い、考察を加えることで複眼的に自治体監査について検討を加えた。
折しも総務省の地方行財政検討会議から監査の組織や監査機能別の整理に関する「地方自
治監査制度の見直しの方向性」のたたき台が示されたところであり、この方向性に関しても
あわせて議論を行った。
研究会の模様(第 1 回研究会)
これら討議の過程について、特に重点的に議論された事項、地方自治体監査基準の
策定に深く関連する事項を中心として、親和図の形でまとめると、図表3のとおりと
なった。
-6-
-7-
図表3 これまでの議論の親和図
4
重点的に議論された事項
4.1
論点の整理
この親和図は、研究会における主な発言をカード化し、それらの内容の似たものをグルー
ピングしている。その共通項にラベルを付け、それらの共通項のラベルで似たものをグルー
ピングし、さらに共通点を見いだしてラベルを貼るという作業を繰り返して作成している。
また、グーピングが異なるが、関連性の強い項目は、曲線などむすびつけて視覚化し、関連
性を見ることができるようにした。
こうした作業を通じて、これまでの研究部会での議論を整理すると、①実務の現状認識、
②監査のあるべき姿の探求、③基礎概念・用語の整理の必要性、④監査基準の必要条件の4
つに集約される。
3.2.で紹介したスタイルで議論を進めて来たことから、現実論である実務の認識(①)、
理想論としての監査の目的論(②)が浮かび上がってきた。これらの現実論と理想論を比較
し、そのギャップを明確に認識し、そのギャップを埋めるために役立つ「地方自治体監査基
準」を今後探っていく必要があることがわかる。
また、議論の過程において、例えば、監査とはどのような概念であるのかという「概念フ
レームワーク」に相当する基礎概念や「不正」「意見」「結果」などの基本用語について混
乱が見られることが確認された。そのため、基礎概念及び基本用語の整理が求められる(③)。
さらに、議論を通じて、実効性のある監査実施を担保するために監査基準が備えるべき必
要条件(④)についてのいくつか有益な示唆が得られた。
4.2
現状の把握
研究会の初期の段階においては、自治体監査の現状について実務担当者の経験をふまえて、
その実態を確認するために多くの時間を費やしてきた。
これらの議論は、多方面にわたるが、「内部監査」の自治体監査では、大きな制度や政治
的なことには踏み込めないという「限界」が存在している。そのために、あえてこうした局
面では、包括外部監査などの外部監査人の活躍が期待されることが紹介された。
また、現状の自治体監査を不正の発見を目的とする「指摘型監査」、計算書類の正確性を
保証する「保証型監査」という分類を行い、現状の分析を行った。
まず、指摘型監査については、住民の期待も高く、監査実務担当者の認識もこの点にある
-8-
ことが確認された。
しかしながら、自治体の財務会計システムは、最近になって複雑化しており、不正経理や
横領事案などを限られた監査資源で探知することの困難さが指摘された。
これに対して、保証型監査について見ると、監査実務担当者では、自らの監査業務につい
て「保証をする」という意識はあまりないとの認識が示された。これは、現金主義の自治体
会計制度を背景に粉飾のインセンティブに乏しいことや現実として保証するだけの検証作業
を限定された現状のマンパワーでこなすことが困難であることなどが要因として考えられた。
ただ、最近、導入されている地方財政健全化法に基づく健全化比率審査においては、「保証
型監査」が取り入れられているところである。この比較的新しい審査の実践を元にして監査
基準を検討していることが有益ではあるという意見があった。
これらの監査の実践に関する意見の他に、現状の監査実務については、「自治体の統治機
構上の位置づけが弱いために実効性のある監査が実施できない」「首長のマネジメントとの
連関が不十分であり、監査の指摘が確実に改善策への結びついていない」「人の資質に頼り
すぎていて、専門職的な実施がなされていない」などの問題点が提示された。
最後に、各自治体において実際に用いられている「監査基準」について検討を行った。実
務で使われている「監査基準」は、公認会計士が準拠する監査基準とは大きく異なり、監査
の実施時期や様式を定める程度の原始的なものとなっていた。しかも、それぞれの自治体で
独自に設定していることが確認された。特に小規模自治体では、監査手帳(全国都市監査委
員会が公刊している監査マニュアル。監査項目ごとの着眼点が記載されている。)というマ
ニュアルが事実上の監査基準として機能している実態も紹介された。
4.3
監査の目的論・あるべき姿
監査の現状を把握すると同時に、自治体の監査のあるべき姿についても熱心に議論がなさ
れた。監査のあるべき姿や機能が明らかになれば、それを実現するための組織や権限を演繹
的に導く可能性が開かれる。
自治体には、営利企業と異なり、市場からの規律が働きにくく、無駄や非効率性が市場メ
カニズムを通じて改善されることが期待しにくい。そのために、監査が自治体の非効率を改
善するという役割は重要であることが再認識された。そのため、行政監査や業績監査などの
分野が重要となる。
また、監査の重要性について住民の理解を得ることは大切であり、相次ぐ自治体の裏金や
不正経理問題に代表される不正事案を摘発することも欠くことのできない機能であり、そう
した点からリスクアプローチによる監査の実施が求められる。
-9-
さらに、現状の自治体監査では、仮に不正や非効率を見落とした場合であっても、法的な
責任を問われる可能性はほとんどない。しかし、責任のない監査は、品質の低下を招く。例
えば、英国では、国の機関である英国監査委員会(Audit Commission)が自治体を監査す
るという仕組みが採用されている。こうした先進事例から得られる示唆は、有益であるとい
えよう。
平成 22 年7月に総務省に設置された地方行財政検討会議第 2 分科会において「地方自治
監査制度の見直しの方向性」と題する文書が公表され、議論のたたき台として今後の監査組
織など関していくつかの案が示された。監査基準と国における検討内容は密接に関連するこ
とから、この案についても議論を行った。構成員からは、「監査に関する技能資格の創設は
期待できる」「議会と監査の機能の住み分けを図るべき」「監査の品質管理には費用をかけ
るべきである」などの意見があった。改革の大きな方向性は評価されるものの、小規模自治
体の取扱い、公認会計士の地域間の偏在、監査コストへの納得感の醸成など改革実現にはい
くつかの課題があることが認識された。
なお、本課題別研究部会では、第二分科会の見直し案のうち、見直し案②と③を中心に、
今後の地方自治体における監査制度のあり方を検討すべきであるという結論が確認された。
4.4
監査に関する基礎的用語の整理
研究者、公認会計士、監査実務担当者らが議論をする中で、監査における基礎理論や基本
的用語について理解が一致していない点が確認された。
例えば、自治体監査は、不正の発見をすることが一義的な目的であると認識されているに
もかかわらず、発見すべき「不正」については明確な定義がなされていなかった。加えて、
地方自治法では、「監査」の他に「検査」「審査」など似た用語が用いられているが、それ
らの区別が曖昧になっていた。
また、私企業の財務監査においては、財務諸表の適正性に与える影響を考慮して監査の「重
要性(materiality)」を考慮する。この重要性という概念は、監査計画の策定、監査の実施、
監査証拠の評価及び監査意見の形成に影響をあたえる極めて大切な概念である。しかし、自
治体監査においては、「重要性」という概念を用いられることはほとんどないことが確認さ
れた。こうした用語についても整理をした上で、自治体職員にとってもわかりやすい形で定
義しておく必要がある。
さらに監査には「監査論」という学問分野としての研究の成果がある。これらの成果を生
かし、自治体監査に関する基礎的な概念についてその枠組み(フレームワーク)を明らかに
して「地方自治体監査基準(案)」の基礎となる「地方自治体監査に関するフレームワーク」
- 10 -
の必要性についても認識された。
これらの基礎概念や基本用語の整理は、まさに「地方自治体監査基準」の策定の土台とな
るものである。
4.5
監査基準の必要条件
研究者や公認会計士からは、監査には判断基準と監査のための行為規範が必要であり、
両者が揃えば、保証型監査であっても外部者である公認会計士でも、自治体監査を十分に行
うことが可能であるとの意見があった。
また、監査の品質を保つためにも、監査人の責任についても定める必要があり、例えば
非効率な取引を発見する義務を盛り込むべきであるという意見もあった。
これに対して、監査実務担当者からは、監査基準の利用者という立場から、自治体職員
にも容易に理解できる用語で書かれ「使いやすい」監査基準である必要性が指摘された。
5
今後の検討事項
このように議論を整理した上で、「地方自治体監査基準(案)」の策定に向けて、今後は、
以下の事項についてさらに考察を加えていく必要があるということが、確認された。
①
概念フレームワーク等の作成
自治体監査の仕組みについて、相互に関連する目的や基礎的な概念を明確にした上で、整
合的な体系を構築する必要がある。つまり、高次基準(メタ基準)としての地方自治体監査
に関する「概念フレームワーク」を構築する必要がある。
また、それを前提として、専門用語の定義とそれらの相互の関連性を整理し、加えて従来
の用語との統一化を図り、「監査基準」を策定する必要がある。さらに、分野ごとに実務指
針となる「ガイドライン」を定め、それらの多層構造により自治体監査の拠り所となる「地
方自治体監査の体系」を構築していくことが今後の課題となる。
もちろん、これらの策定においては、利用者である自治体職員にとってもわかりやすいも
のになることは留意されなければならない。
②
監査の基礎用語の定義
4.4.で明らかにしたように「監査基準」を記述するための監査の基礎用語について定義が
- 11 -
明確になっておらず、このことが自治体ごとに独自の運用をもたらし、自治体監査実務に混
乱を与える要因となっていた。
前述の「概念フレームワーク」の策定と並行して、自治体監査実務の現場において特に混
乱の見られる用語については、その定義を明らかにする作業を進めていくことも課題となる。
図表4
③
混乱の見られる自治体監査に関する代表的な用語
・不正
・財務監査、行政監査の区別
・重要性
・監査、検査、審査の区別
・指摘、指導、口頭指導
・非効率、不経済
・結果、意見・
・保証
など
他の監査における監査基準の検討
これまでの議論の中で、「独立行政法人監査」「医療法人監査」「地方自治法に基づく
外部監査」「内部監査」など種々の監査における監査基準のあり方や自治体監査との相違
点について検討を加えてきた。
これらの監査となっている組織の特性、背景となっている法制度、判断基準となる会計
基準との相違点に留意しつつ、有用な点については、積極的に「地方自治体監査基準」に
取り込みながら、その策定を進めていく必要がある。
なお、今後、策定する監査基準(案)は、自治体監査に関連する事項を包括的に網羅す
るが、基本的なものに焦点を絞り、いわゆる実務指針に相当する細部については、専門職
団体などによって研究・検討される各種規範により充実されることを企図している。
また、自治体監査が、地方公共団体の経済性・効率性の向上に貢献する見地から、決算
書類の保証型監査に限定せず、現在実施されている行政監査も視野に入れて検討すること
とした。
- 12 -
資
料
- 13 -
編
資料1
1
当研究会における論点整理(第1回研究会
配付資料)
地方自治体監査の目的(監査制度)
(1)監査目的
・これまでの公監査の重点が合規性監査や財務監査などの準拠性監査にあったが、3E監
査や VFM 監査といった有効性監査を含む業績監査に重点を転換した公監査の全体図を
描くのか。また、公会計改革により地方自治体では財務諸表の作成が進められている中、
財務諸表監査の取り扱いをどうするか。
以上の点から、「財務監査」「合規制監査」「準拠性監査」「業績監査」などを含め
た公監査の体系整理が必要ではないかと考える。
・監査委員監査の対象は、情報監査か実態監査か。決算審査や健全化判断比率の審査は明
らかに情報監査である。一方自治体監査の中心となっている財務監査、行政監査(地方自
治法 199 条1項、2項)は、実態監査を想定しているのではないか。我々監査委員も事
業管理監査はどうあるべきかついて悩んでいる。最小の経費で最大の効果を挙げる事務
処理の根本原則(地方自治法2条 14 項)の実現を目指すとすれば、実態監査をせざるを
得ない。3E監査このためにあると考えている。この為の監査基準はいかにあるべきか。
・すべての論点に共通することになろうかと思うが、地方自治体監査の目的を検討する必
要があろうかと思う。目的を明確にすることにより、その監査対象、監査を実施する主
体、監査実施手続などにつながるかと思う。その際、米国のイエローブックなどのよう
な諸外国との比較、先行研究の検討も必要かと思う。
・海外の監査基準で多く採用されているように、監査実施のフレームワークを財務監査・
準拠性(合規制)監査・業績監査(3E監査)によって検討するのか。該当する先行研
究としては、鈴木豊編『政府監査規準の構造』同文舘(2005)がある。
・ 昨今の不適切な経理問題、不正行為など行政活動に起こっている事象を踏まえて、現在
の内部チェック体制(財務会計処理、起案決裁手続き、契約事務など)の中で脆弱な部
分の整理を図り、日々の業務実施の中で注意すべき行動規範と行動・仕組みについて考
えることが必要ではないかと考える。常に不正事象がおこり得る可能性が潜む行為を早
期に発見し是正行為が行える仕組みの検討が必要である。
- 14 -
・地方自治体監査の目的によっては、学会において提案する地方自治体監査基準には、内
部統制に関する基準など、いわゆる公認会計士による外部監査と同様の内容を含む必要
があるかと思う。
・現状の監査委員監査の多様な監査・審査・検査の内容を、財務監査・法規準拠性監査・
業績監査のいずれに該当するか、また、保証業務(合理的保証業務か、限定的保証業務)
なのか保証業務以外の業務なのかを明確にする。(参考)日本公認会計士協会監査保証
実務委員会研究報告第 20 号「公認会計士等が行う保証業務等に関する研究報告」。
・「業績監査(performance auditing)」について、少なくとも言い及ぼすべきと考え
る。行政刷新会議が行っている「事業仕分け」は、何のために行っているのかという「顧
客価値」や「目標」、それをどれだけ達成しているのかという「達成度合いの把握」を
問うものであり、本質的には業績監査と同じものである。事業仕分けは公開で行われる
ため「政治ショー」的要素を強く持ってしまうが、今回民主党政権によって大々的に行
われる「事業仕分け」が国民の耳目を集めることにより、時宜用の「効果」や「効率性」
を問う国民の声はますます高くなると思われ、自治体監査がそれに対応していくことは
必須と考える。
・現行の行政監査を深化させることにもつながると思うが、3E(経済性、効率性、有効
性)を意識した業績監査についての基準を、行政評価法等の実践の反省を踏まえて議論
すべきです。もちろん業績監査の基準づくりは容易なことではありません。現状の施策・
事業には「目的」はあっても「測定可能な目標」も「期限」も明示されていないので、
業績を審査することはほとんど不可能だからです。行政においてはそういう「目標」や
「期限」を設定するのが難しいものが多いということも踏まえつつ、納税者への説明責
任を果たすために、事業実施主体に求められること、監査主体に求められることを整理
すべきと考えます。
・「地方自治体において監査の目的は何なのか」、「地方自治体における監査の中から、
今回の監査基準がカバーすべき監査は何か」、そもそも論かもしれませんが、「監査の
目的」が明確になれば、実施基準や報告基準も、おおよそ見えてくるのではないでしょ
うか。
・「保証型監査に限定した監査とするのか」、「保証型監査とした場合、今回の監査では
- 15 -
何を保証するのか」、「保証型監査に限定しない場合、どのような範囲が監査対象と考
えられるか」、監査対象をどう考えるかは、監査の目的との関連が深いと思います。
検討のステップとしては、「監査目的の明確化」→「監査対象の特定」→「監査目的
と監査対象から実施基準の検討」→「監査対象を前提に、専門性、独立性から監査主体
を特定」→「報告基準の検討」という流れが考えられる。
・現行の地方自治法に基づく監査制度を前提とするのか。保証型の財務諸表監査等の将来
的または先進的な取り組みは今後の課題か。
・新地方公会計制度や内部統制等、自治体によって取り組みはなされているが完全には法
規化されていないものも前提にするか。
・監査範囲の制約を想定するか。監査委員の権限との関係
・監査委員+監査委員事務局という監査部門を一つの組織体と見たときのガバナンスを考
える必要がある。誰がマネジメントするのか明確にする必要がある。法律上は、代表監
査委員にも読めるが、実際には、監査委員事務局長がマネジメントをしていることが多
い。また、監査を受ける首長と監査との連携は、誰が責任を持って行うかを明確にする
必要がある。
・監査委員監査に VFM 監査(業績評価)を導入することは、監査の政策への介入になら
ないか。業績評価は別主体が行うべきか。
・監査方針、監査テーマ、人材育成、監査手法の改善について、中長期の監査計画を義務
づける必要はないか。監査委員や事務局もおよそ3年以内で人が変わる中で、毎年のよ
うに思いつきで監査テーマを選定し、監査の人材育成は手つかずになっている。
・平成 21 年3月に地方公共団体における内部統制のあり方に関する研究会からの報告書
で提案されている「内部統制に関係を有する者の役割と責任」で示されているように首
長が作成し議会に報告する内部統制報告書に類する報告書に対して監査委員が適正意見
を表明するのか、その際の判断基準は何になるのか。
・地方自治体において、まず何を監査するのか、地方自治体の監査とは何かを検討する必
- 16 -
要がある。現状の監査はその対象を、地方自治法第 199 条第1項の財務監査、同条第
2項の行政監査に分けることが出来る。また、一般監査・特別監査の区分、定期監査と
随時監査、通常の監査と外部監査など監査対象・形態によって分類が様々ある。
・地方自治体の監査基準を策定する際に、地方自治体の何を監査するのか、例えば財務諸
表の保証を行う監査なのか、VFM(3E)の達成についての監査であるのか、またはそ
れらすべてを監査基準に包括していくのかなど検討しなければならない。何を監査する
かにもよるが、合規性監査ではリスクアプローチを取り入れていくことも検討すべきで
あろうと考える。
・公金の不正支出などの問題が明るみになっておりますが、自治体ではどのような内部管
理体制が確立されているかについて関心があります。外部監査においても地方自治体の
内部統制の評価がおこなわれると思いますが、どの範囲まで調査・評価対象とされてい
るのでしょうか。
また、当該監査は、地方自治法等にもとづく適法性監査の範囲なのでしょうか。妥当
性まで踏み込んだ監査がなされているのでしょうか。
・保証型監査のみを前提とするのか。「財政の持続可能性に関する監査人の所見」といっ
た現行の監査委員による決算審査等で実務的に行われている業務を含めて検討するのか。
・今後のアウトソーシングを想定して、合意された手続き(AUP)についても検討するの
か。
・業務監査(具体的には行政監査)の基準を想定するのか。
・国際監査基準に記載のある Public Sector Consideration では、公的機関を監査する
場合と、公的機関の監査人が監査する場合を含めて記載されている。今回の議論は自治
体(の財務情報)を監査することに焦点を当てるという理解でいいか。
(2)マネジメントとの関係
・行政改革の主要なツールとして行政評価が市長部局側において PDCA サイクルを展開
するために導入されましたが、この行政評価と監査委員側により行われる業績監査と
其々の目的や役割等のフレームワークの整理と相互関連の整理を図ることが重要ではな
- 17 -
いかと考えます。
そのためにも業績監査が準拠する基準として業績監査基準と業績測定する指標の基準、
業績監査計画の基準、業績監査実施基準(監査対象、計画、他)、業績監査報告基準(形
式、報告内容、評価、改善勧告など)、3E監査の基準(3Eの意味、そして業績に対
する合理的な保証の水準など)がいかにあるべきか、統一的な基準が必要ではないかと
考えます。
・昨今、地方自治体は様々な手法で行政評価の取り組みを進めています。これはVFMの
観点から行われているものでありますが、この評価主体に事業仕分けに代表されるよう
に有識者や住民をメンバーとして選定する傾向にあります。
外部の目線による行政の3Eのチェックの機能を一定果たしていると思われますが、
こういう取組が、監査による行政評価とどのような関係になるのかについても、一定の
方向性を整理する方が、地方自治体が監査に行政評価をやってもらわなくても、既に別
の仕組みでやっているという主張に応えることになると思われます。
2
監査基準の設定主体
(1)設定主体
・監査基準の設定母体をどう考えるか。各自治体自身(東京都会計基準のように)か、あ
るいは第三者団体(たとえば GASB。あるいは、日本公認会計士協会を含む)か。国に
その母体となる権限はあるのか(あるいはそれが望ましいのか)。その場合には、総務
省が適切か(会計検査院や、その他の組織が設定母体となる可能性はないのか)。
・素人的な質問ですが、本研究部会で提案します地方自治体監査基準は、いずれの機関に
よって基準が発効されるのでしょうか。総務省、会計検査院などを考えてしまいますが。
このようなことに捉われずに検討すると理解してよろしいでしょうか。
・現在、都道府県、市、町村が各々組織を有し、自主的に監査基準を策定しているが、そ
もそも、監査基準は誰がつくるべきなのか。一般に会計基準は、民間主体で策定すべき
であり公的主体の関与は抑制的であるべきと思われますが、監査基準はどうあるべきな
のか。諸外国のナショナルスタンダードを踏まえ、基準設定主体を検討する必要があり
ます。加えて法制的な位置付けをもたせるのかどうかについても検討する必要がありま
す。
- 18 -
地方自治体の場合、行政監査についての基準設定はかなり難しいと思われますが、行
政監査の基準策定についても「ムダ」を省く観点から、検討していただければと思いま
す。
(2)国際基準との関係
・国際基準との関係をどう捉えるか。INTOSAI による基準、IFAC による基準、その他各
国基準など。
(3)設定の論理
・内部統制の仕組みが欠如している現状を前提として考えるのか。それとも、取締役会の
ようなガバナンスがあり、COSO フレームワークにも準拠したような内部統制の整備さ
れた団体まで念頭に置いて監査基準を設定するのか。
・全国都市監査委員会の監査基準について、監査要点が不明確、リスクアプローチという
概念が希薄などの課題と考えられる点を列挙することによって、地方自治体監査基準の
現状を再認識する必要があるのではないか。それらの課題の解決策を検討することが、
地方自治体監査基準の設定についての示唆になるのではないか。
3
監査主体
・地方自治体監査基準で監査主体として位置づける者は、監査委員のみでOKか。外部監
査人、内部監査人(監査事務局職員がこれに該当するかどうかの議論もある)も含める
べきか。
・平成 21 年6月 16 日に地方制度調査会からの答申では、「監査機能の充実・強化」が
示されています。その中で監査委員の選任方法や構成については、引き続き検討となっ
ていますが、選任方法の論点以上に重要な点として監査人に求められる資質や役割とし
て何があるのか整理が必要ではないでしょうか。
例えば、国際最高会計検査機関(INTOSAI)の倫理コード(1998 年)のように、監
査人について規定がありますが、このような監査人の資質や役割を規定することで、地
方公共団体が監査人を選任する際の基準となり得るのではないかと考えます。
・議会選出監査委員の人的要件(専門的能力や実務経験)の現状とあり方を整理する必要
- 19 -
がある。
・自治体監査基準で監査主体を内部監査とするか外部監査とするか。地方自治法の規定で
は、包括外部監査、個別外部監査を除けば内部監査である。第 29 次地方制度調査会で
は、外部監査の方向を指向し監査委員の選任方法や構成(議会選挙と議選委員の廃止)
が議論されたが、今後の検討課題とされている。
・検討する監査基準の対象について。監査委員会のみを対象とするのか、それとも外部監
査(包括外部監査・個別外部監査)についても対象とするのか。後者である場合には、
会計士協会から公表されているガイドラインとの整合性についても検討する必要がある。
・公営企業の決算審査は、発生主義・複式簿記の知識を持った職員が必要となる。そのよ
うな資格要件などについて議論する必要はないか。
・監査主体については、その人的要件、独立性などの検討にあわせ、品質管理についても
検討する必要がある。
・監査委員の専門性の確保。特に、議員選出委員のありかた(必要性等)。その数の定め
は現行制度でよいのか。また、監査委員に公認会計士を選任することの利点、問題点(外
部監査との関係)など。
・外部監査人の数。特に、外部監査人に監査法人を選任する可能性。外部監査人が、年度
ごとに「包括的に」会計(財務)監査をする場合の問題点と、監査委員監査との関係。
・自治体の監査人の倫理の問題。特に、監査人としての倫理と、公務員倫理との関係。
・監査主体を特定する必要があるのか。監査主体の要件(独立性、専門的能力、実務経験)
の定義、それに関する現状の問題点と改善の方向性とも関連する。監査のアウトソーシ
ングも考慮して、民間の監査基準でいう「他の監査人の利用」についても定めるか否か。
・監査委員会事務局補助職員の位置づけについて、現状の監査では内部監査人と言わざる
を得ないのではないか。基準設定に際して、監査委員監査補助職員と内部監査人の明確
な区切りを求める必要があるのではないか。
- 20 -
・監査委員の資格として下記の地方自治法 142 条が適用されているが、補助金をもらい
市が出資する第三セクター(商業ベース)の監査役が、代表監査委員を兼務している市
もある。町村部に行くほど、地縁血縁が濃くなり、監査委員があらゆる利害関係を持た
ないことは困難となる。
また、監査人の外観的独立性の定義については、議選の監査人についても、どこの自
治体でも歳出の約1%にあたる議会費を主体である議員が消化し、選挙を通じて様々な
利害関係者の期待を背負っている。他にも監査委員がいるとは言え、果たして監査する
資格があるかは疑問であり、法律に依るだけでなく、再度整理をする必要性を感じる。
・上記でも述べた通り、主として町村部では、会計士はおろか税理士や中小企業診断士と
いった優秀な監査や経営に長けた人材の確保が、監査への認識の低さも相まって難しい。
この問題をどのように取り扱うか。
・現在、地方自治体の監査に関連する主体としては、自治法上、監査委員、議会、会計管
理者、外部監査が存在しており、各々の役割が重複していないか、コスト面にも留意し
て、役割と責任を改めて整理する必要がある。
・特に監査委員の現実の職務、体制を見ると、内部監査的役割と外部監査的役割の両面を
もっており、前者については、会計管理者との関係、後者については外部監査との関係
を整理する必要がある。
また、外部監査制度は、導入後一定の期間を経て、地方自治体の現場ではあまり機能
していないと評価されている原因も併せて検討する必要があります。地方制度調査会で
は、監査委員の議選の廃止に議論が集中しましたが、監査委員と議会の関係を整理する
必要もあります。
・誰に、どういう価値を提供するのかという「自治体監査基準」を作る「目的」を明らか
にすべきである。「監査主体」とは「基準の利用者」ということになると思われるが、
究極の受益者は市民(納税者)全体と考えられる。監査基準の達成すべき価値について
は、以下のように考える。
・実現すべき価値
業務遂行能力が高く、市民に信頼される自治体の実現。規律高く、透明で、的確
な施策を立案し、それを能率的に実施できる地方政府。より良いサービスをより安
- 21 -
く提供するとともに、「税金が無駄遣いされていない」という安心感を担保する。
・監査主体=監査基準の利用者
自治体監査基準の主たる利用者は、監査委員、監査事務局職員であるが、監査事
務局以外の自治体職員にとっても適正で効果的な事務執行の参考とできるものであ
るべき。さらに、行政監視を行う議員・市民によって議論の基準として参照される
ことを想定すべきである。
・識見を有する者(地方自治法第 196 条第1項)である監査委員の人的要件(専門的能力、
実務経験)の現状とあり方を検討する必要がある。
・監査委員事務局長(地方自治法第 200 条第3項)の人的要件(専門的能力など)につい
て明確にするべきではないか。内部監査の世界では、監査部門長(CAE)の役割が極め
て重要とされている。
・監査委員事務局の書記(地方自治法第 200 条第4項)の人的基準(専門的能力や実務経
験、監査委員事務局の在籍期間)の現状とあり方を検討する必要がある。
・監査主体には、内部監査人も含めるべきではないか。また、①のとおり、監査委員監査が
外部監査化されれば、新たに内部監査を実施する主体が必要ではないか。総務省の「地方
公共団体における内部統制のあり方に関する研究会」で議論されたように、地方自治体に
おける内部統制の整備、運用が求められているが、内部監査はモニタリングという内部統
制の重要な構成要素であるため、内部監査の欠如は内部統制および外部監査にも影響が及
ぶのではないか。
・小規模自治体における監査委員事務局のありかた。きわめて小規模の事務局(事務局長1、
職員1の配置など)の存在や、他の部局との兼職(議会事務局との兼職など)をどう考え
るか。外部へのアウトソーシングはありうるのか(監査委員事務局の内部監査性の議論と
の関連もある)。
・外部監査の適用範囲。小規模自治体にも拡大すべきか。その際の問題点(監査人の要件等
に関連:公認会計士の就任が可能か)など。
・外部監査人の資格要件の再考。現行制度でよいのか。あるいは、現行制度以外に監査人と
- 22 -
なり得る可能性のある者はいるのか。英国など他国制度とも関連。
・監査委員もしくは監査人に選定されるべき対象についても検討が必要である。現状では監
査委員は識見者及び議員からなるが、議員の監査委員就任が妥当であるかは相当疑義が生
じる。議員は、議会において行政運営をチェックする立場であり、おのずから監査人とし
ての立場とは異なる。また、仮に議員と監査人の立場が同じであるとするならば、同一の
視点でのチェックの必要性について疑問が生じ、現状では機能として重複が生じているの
ではないかと考えざるを得ない。
・監査主体には、監査委員以外に、外部監査人(監査法人、公認会計士)も含めるべきでは
ないか。また、第 29 次地方制度調査会では、独立性の問題をはじめ監査委員監査の外部
監査化が議論されたが、ここで議論された監査委員監査と想定される外部監査人(監査法
人、公認会計士)による外部(会計)監査との役割の違いは何か。
・監査委員の責任範囲について。夕張市の事例では限りなく粉飾決算が行われていたが、決
算審査を行った監査委員は責任を問われないのか。また、多発する不祥事について、行政
監査を行う監査委員は責任が問われないのか。
・監査主体は、被監査体とは独立した主体でなければならない。監査の上で特に重要な点は
独立性の確保であり、監査主体・被監査体がほぼ同一である現状の地方自治体監査では、
どのような策が講じられたとしても、独立性が担保されているとは言い難い。
そうなると、現状の地方自治体監査をベースに検討することは困難を要することが予想
され、新たな監査体制の構築についても言及するべきであろうと考える。
上記については、監査体制とも関連する事項であり、監査主体をどうするのかにより、監
査体制にも影響を与えるものと考える。
・監査委員の資格要件(専門知識等の有無)、独立性の問題について。(監査委員の中には
「天下り」的な委員が存在すると聞きますが)
・監査主体を特定するのか。監査主体について、日本の地方自治体の制度を前提とするのか。
その上で、具体的な議論(監査委員・監査事務局の専門能力要件・独立性(兼務)要件・
選任解任権限等について、一定のスタンダード(原則・考え方))をするのか。
それとも、監査法人・公認会計士による外部(会計)監査の導入も想定したものとする
- 23 -
のか。
4
監査実施
・監査手続を、全国都市監査委員会の監査基準のようにレディーメイドで列挙するか。従
前の大蔵省「監査基準」にあったように、限定列挙、例示列挙の議論を行うか。あるい
は、リスク・アプローチで、監査実施のフレームワークを示唆するか。
・現在の定期監査や公営企業監査は、ローテーションで行っているが、ローテーションの
基準となるべきものを議論すべきか。各団体で任せるべきか。
・内部統制を重視した監査となっていないため、内部統制に依拠するような監査を実施す
べきではないか。
・定期監査や決算審査の方法では、不正を見抜くことはできないのではないか。不正を防
ぐことを念頭においた、監査手続も必要ではないか。
・例月出納検査を毎月実施しているが、毎月実施する必要があるのか。各部課で任せるべ
き手続きはないのか。
・リスクアプローチで監査実施のフレームワークを作成するのであれば以下の内容につい
ての検討する必要がある。
・現行の監査基準(民間企業の監査基準)との整合性について。例えば、英国の地方自治
体の監査では APB(Audit Practice Board)が公表する監査基準もあわせて適用する
ことになっている。
・統制リスクと内部統制リスクについての検討。
・監査手法はリスクアプローチを前提にするか。地方自治法の定期監査に関する規程との
整合性は保てるか。
・保証型監査と個別指摘型監査という監査類型と、リスクアプローチという手法との関係
性の整理。
- 24 -
・自治体監査の監査計画の実態の把握と改善(可能)点
・不正や誤謬に対する監査人の責任と義務
・読みやすいように、具体的事例を豊富に入れるべきと思います。レディーメイドで羅列
する都市監査基準は、踏み込みが浅くて実際には役に立ちません。うちでもそうですが、
各都市の監査事務局でより詳細な「監査マニュアル」をつくって実務ではそっちを使っ
ています。
ただし、この「マニュアル」は各都市固有のルールに準拠したものなので、個別性が
強すぎて「基準」にはできません。羅列型の基準も、もう少し深めたところで必要と感
じています。
・定期監査は自治体組織の「定期検診」のようなものなので、旅費とか時間外勤務手当と
か「必ずチェックすべき項目」があります。職員に現金が渡されるところでは、「ここ
で間違いが起こると職員が処分される」ため、かならずチェックします。そういう意味
で、無意識にリスクアプローチを採っているとも言えます。
・ 自治体監査の監査すべき対象はとにかく極めて広範にわたるため、網羅的に監査の基準
を示した上で、「そのどれを重点的に見るのか」というリスクアプローチ的なやり方に
ついて基準があると、とても有益だと感じます。
・自治体監査は、「定期監査」「随時監査」「行政監査」「財政的援助団体等監査」「住
民監査請求監査」「決算審査」など法律で種類が分かれている。こうした法律上の分類
を所与のものとして設定するのか。大まかにアシュアランスとコンサルティングサービ
スのような2分類に分けるのか。アシュアランス型に限定するのか明確にしておく必要
がある。
・監査実施に係る基準の策定にあたっては、「どんな監査委員や事務局の担当者であって
も確実に監査が実施されるように詳細に定める」か、「人的基準のハードルを上げて、
専門的能力を確保した上で、実施方法は、指針にとどめる」か。いずれかになると考え
るが、その方向性を検討する必要がある。
- 25 -
・「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」では、「法令遵守」が重
要な構成要素となっている。しかし、現在の自治体監査では、会計規則などの財務会計
に関する例規を徹底するという視点はあっても、コンプライアンス監査で求められるよ
うな法の背景にある社会的・倫理的な要請まで踏み込んで行うことは少ない。こうした
視点を盛り込む必要はないか。
・「財務報告に係る内部統制の評価及び監査に関する実施基準」では、「ITへの対応」
が重要な構成要素となっている。しかし、現在の自治体監査では、情報システムに関す
る業務への監査が全く手つかずの状態になっている。システム監査の視点を盛り込む必
要はないか。
・かつて担当していた業務を監査を実施する場合には、客観性を確保するために例えば、
「1 年以上経過した後でないと監査できない」というルールを設ける必要性はないか。
現実では、経験していた業務の方が精通しているため積極的に監査を担当させている実
態がある。
・形式的な日付誤り、決裁漏れを指摘する監査担当者が多い。よりリスクの大きなことに
関心を集中させるために監査対象の重要性(materiality)を考慮した監査の実施という
視点を盛り込む必要性はないか。
・現在の自治体監査の監査計画は、単なる日程表作成で終わっている。ハイリスクな機関
の重点化など監査計画におけるリスクアプローチを明記すべきではないか。
・監査の実務では、対象機関の作成した調書と往査における確認、質問という「浅い」監
査手法しか実施されていない。これまで監査が蓄積したデータや同種機関の比較などを
通じた「分析的手続」や監査対象機関以外への「関係人調査」の活用など監査手法の「深
さ」について記載するべきではないか。
・建設工事の監査については、技術職をあてて実施している自治体が多い。こうした専門
的な領域についても、監査基準を設定する必要があるか。
・監査自体の品質保証や改善プログラムは法律では全く言及がない。監査実施における内
部の監督、定期的な内部評価・外部評価について議論する必要はないか。それがないと、
- 26 -
仕事をしないことが監査担当者の評価とされる傾向がある。
・情報の記録については、各自治体の公文書規程に基づく運用がなされている。
しかし、第三者のレビューや将来の監査計画立案の基礎資料として活用するには、構
成、様式、担当者名の明記、相互のリファレンスなど誰が見ても監査内容を再現できる
内容でなければならない。こうした情報の記録についても言及する必要はないか(情報
公開請求があった場合を念頭に整理しておく必要がある)。
・監査実施とも関連するが、監査が広範囲に及ぶことが予想される場合、監査事務・手続
きを効率化するため、リスクアプローチを用いて監査を行うことが予想される。その際、
リスクアプローチと内部統制をセットとして監査体制を構築していくべきであると考え
る。内部統制は、リスク評価やリスクへの対応手続きにおける重要な要素であり、リス
クマネジメントは内部統制の一部でもあり、関連性が極めて強い。実際の監査において
は、悉皆調査は困難であり、サンプリングに寄らざるを得ず、そのことからも、内部統
制を構築し、監査と両輪として制度設計を行うべきものと考える。
・複数の自治体で 2007 年度決算分の財政健全化指標の計算ミスがあったとのことで
(2009 年 11 月2日付日本経済新聞)、そもそも現状での外部監査がいかにしておこ
なわれているのかに関心があります。
5
監査報告
・受検する職員側としての混乱としては、首長、議会、監査委員と指示を受ける機関が3
つあるが、それぞれの主張は必ずしも一致しない。相対する場合は、指摘しているのに
改善されないということになるが、それぞれの主張がけん制される仕組みや調整する仕
組みができないものか。
・今後議論が予想される行政監査、VFM監査に関しては、政治性と3E が相いれない場
合にどうするのかの示唆が欲しい。行政経営上、監査委員は正論を述べても、市長と市
議にどう説明していくかの後ろ盾が必要である。
・監査報告書における、業績監査に関する記述のあり方。
- 27 -
・監査報告書の標準化の可能性。住民にとってよりわかりやすい監査報告とはどのような
もので、どのような方法を通じておこなえるのか。
・監査における監査委員、事務局、議会、首長の責任範囲を整理する必要があるか。また、
これを監査報告にどのような反映させるか。
・監査への制約があった場合に、その旨を監査結果に表示することを検討する必要はない
か。昨今の自治体財政の困窮により真っ先に人材や予算が削減される傾向にある。
・当県では、重大な事象は「指摘」、そうでないものは「指導」、さらに軽微なものは講
評しないで監査対象機関に対して「口頭指導」という色分けで、発見事項の評価を行っ
ている。発見した事象の伝達方法について、全国的な標準を作るのか、これまので各自
治体の運用を尊重する必要があるのか検討する必要がある。
6
その他
・行財政運営の改善・見直しのために、マネジメントサイクル(PDCA サイクル)を回して
いく事が重要です。この為監査当局としては、事後的に違法、不当、不適正行為につい
て指摘、注意、指導するだけでなく、リスクアプローチの視点から、事前的に内部統制
の4つの目的の実現のために執行部の内部統制の整備・運用の不備を指導することが役
割となるのではないか。
- 28 -
資料2 第1回 議事録
日時
平成 21 年 11 月 23 日(月) 13 時~17 時
場所
関西学院大学
梅田キャンパス
1408 教室
<参加者>
・出席
22 名
<次第>
1
研究部会長挨拶
2
メンバー紹介
3
研究会設置の趣旨と研究目的の確認
4
論点の抽出
5
意見交換
<議事内容>
○西尾
何を監査するのか、監査の目的を決めないと、とりとめのない話になりそうである。
○石原
論点整理をみると、財務諸表監査的に書いているメンバーもいれば、VFMで書い
ているメンバーもいる。不適正経理もある。これら一つか、いや全部か。諸外国には先行
事例があり、本日は示していないが、それらは何を目指しているか。地方自治体の財務報
告という点で、森田部会員はどう考えるか。
○森田
IPSAS は、財務報告の範囲を拡大させている。非財務情報、予測情報や社会指標ま
で範囲する議論がある。保証型の監査をすると言っても、狭義の決算書や財務数値に限定
するのか、非財務情報や将来情報まで含むのかは考えておかなければならない。
○石原
○D
○石原
○C
なぜ監査をするのかと言われた場合、何を考えるか。
自分の仕事が正しくなされているという保証がもらえる。
それは適正性と言うが、もっと一般的に言うと。
市民の目から見ると、警察である。財務警察。無駄使いを探すことである。
- 29 -
○石原
保証とはある人の行為に対してどうであるかという言い方である。警察的に例える
と、不正を探しに行って、「不正はありません。」という回答行為に対し、第三者として
保証するということである。
○C
保証するという発想はほとんどない。決算審査は数字が正しいかの保証監査であるが、
日常の監査に関しては保証という姿勢は全くない。「やばい」仕事をなくせ、「ぼろい」
仕事をやめろという観点で行っている。マネジメントの補完である。指摘と指導の違いは、
実務では非常に重要である。指導をどのように監査委員に説明するかが悩みである。
○B
公認会計士の言う監査とは異なる。コンプライアンス、そしてVFMであり、これは
地方自治の本旨である。公金を預かり効果的に使う。つまり無駄を省くということだ。監
査で一番長い間言われている問題は、独立性の問題である。国は憲法があって、会計検査
院があり独立性が担保されている。まずはあるべき論から始めるべきである。マニュアル
を作る時のガイドラインとなってほしい。コンプライアンスを考えると、内部統制があっ
て、VFMの基準作りができればいい。監査から事業を止めてはどうかと言われることは、
現場にとって非常にありがたいことである。監査が役に立つ時代が来たと言えるのではな
いか。
○石原
○B
内部統制について、もう少し詳しく説明願えないか。
コンプライアンスの問題で、今まで単発であった不適正経理が継続するようになった。
これは制度疲労である。人の資質に頼って仕事をしてきたのである。
○石川
あるべき論が何になるかは分からないが、海外の基準を取り入れるならば、財務監
査、業績監査あるいはVFM監査とあるだろう。実際はどうなのか、警察という話があっ
たが、あるべき論と実際をどう整理すればいいのか。
○B
誤解があると不本意であるが、私が言うのは独立しているかどうかである。独立、独
任と言うが、実際は内部監査である。地制調も監査の話はしていない。なぜなら独立性の
話はしていないからだ。国は会計検査院、英国も然り、なぜ地方だけ独立性を担保できな
いのか。そうじゃない方がいいというなら話は別であるが。
○J
内部監査ではだめなのか。
- 30 -
○B
先程Cさんが言ったようなことは払拭できない。
○C
なぜ自治体監査で不正の摘発ができないのか。実態が内部監査だからである。つまり、
トップの不正は暴けない。インサイダーなので口が出せない。内部監査人の限界である。
○J
企業のように、内部監査と外部監査を両方明確にすることでいいのでは。
○B
包括外部監査で初めて外部の人間が入ったのである。それはそれで活用している。真
面目な監査委員ほど、この外部と内部の枠内で悩んで限界を感じている。
○C
自治法が前提とする監査制度は外部監査人である。その下にいる職員は同じ市役所に
いる。インサイダーである。
○A
自治法は内部監査だと思う。監査委員を執行機関に位置付けている。執行機関である
ということは内部監査であり、監査役監査と立場が同じ。
○C
監査委員は市長から任命される。
○A
監査役も通常は株主総会、実質は社長からである。
○石原
○A
確認するが、監査委員は議会の同意、首長の任命でいいか。
【一同是の回答】
今の企業会計の監査基準の考え方は、不正行為を摘発することを目的としないと考え
る。財務諸表の適正性について意見を表明することである。監査委員は合規性、合法性に
これまでも重点を置いてきている。コンプライアンスの監査と財務諸表の適正性をみる保
証の監査、行政監査の 3 種類に分かれるのではないか。不正摘発だけではない。
○西尾
その通り。大きく分けると 3 つある。夕張の例にある通り、責任を取らない監査は
不要である。そのためには、これだけのことをしなさいという基準、また判断基準も作ら
なければならない。その時に 3 つ監査があれば、3 つとも全く異なる。一つのモノにはま
とまらない。大きなところでは同じでも、監査主体は異なるし、手続き、報告も異なる。
企業なら 100 万円の不正は許容しても、ここなら 10 円でもダメである。そこまでは見
られない。3 本立てを作るべきなのだろうか。
- 31 -
○A
ただ、県民、市民が我々(監査委員)に期待しているのは、決算書の適正性ではない。
不適正経理、不正の摘発がなぜ監査委員はできないのかである。そこにギャップがある。
○西尾
それが目的なら、ギャップもなくなる。市民の立場なら当然だ。よってそれに合致
する監査基準を作ればいい。どれだけコストが掛かるか別として、盗まれた方がましとい
うような監査基準となってもいい。
○森田
整理としては、情報監査と実態監査、保証型か指摘型があって、財務諸表監査は情
報監査で保証型である。何を保証するかというのは、言明か、行為を表した言明か、行為
そのものかである。言明を表すのが決算書なら分かる。行為を全部保証するとなると、こ
の保証基準は相当細かく決めなければならない。「○○円以上の××な不正はありませ
ん。」という行為そのものを保証することはおそらく無理である。経営者が内部統制でき
ているということに対し、保証を与えているのが昨年度から企業で取り入れられている監
査である。不正を保証型で監査しようとすると、首長が 100 万円以上の不正がないとい
うことに対し、どのような根拠があるのかそのプロセスを監査することになる。保証型か
指摘型かという整理は必要である。
○西尾
VFM も指摘型でいいのか。
○森田
その通りである。VFM を保証型にすると、言明が必要である。
○西尾
ただ、その監査の後に、宣言にあたる不正が出てきたらどうなるのだろうか。
○森田
それは首長が責任を取り、二重責任で監査人保証したのでもそうなるしかない。
○西尾
そんな監査は誰も引き受けないだろう。
○森田
精度が要求されると、無理だろう。
○C
我々の共通不満としては、言っても直らないということである。内部統制の問題であ
る。仕組みに問題がある。内部統制をコントロールする部署がない。
○石原
CIA で内部監査人を勉強されたときに、基準ってあるのか。
- 32 -
○E
○石原
漠然とした概念はある。手順はない。
CIA の基準と日本内部監査協会が内部監査の基準をまとめているが、こういったも
のをただき台にしたいと思う。これまでの議論を踏まえると、内部と外部はやはり分けた
方がいい。一つの提案であるが、内部監査はマネジメントの一環であるので、指摘型でも
いいと、外部監査は保証型がいいと仮定すれば、何か問題はあるだろうか。
○森田
○F
外部の目からの指摘型は住民ニーズがあると考えるが。
外部だから保証とは一概には言えない。包括外部監査は外部監査人がやっている非保
証型である。
○C
○森田
(包括外部監査は)何にも保証してくれない。
責任論で言うと、包括外部監査は、中身はともかく期限までに出せばいいというこ
とになる。
○F
監査の世界で言う責任はない。不履行である。財務諸表監査は、保証型なので、作成
する会計基準と、こうやって確かめたという監査基準がある。保証型の監査は拡大してい
る。
○石原
大学で監査論を教えると、基本要件があり、ASOBAC の影響で判断基準と行為基
準と言い切る。即ち保証型である。しかし、指摘に対する期待が大きい。ここに既存の監
査という概念を持ち込んでいいのか。日本の自治体には検査や審査という言葉がある。英
国の Audit Commission には Inspection Report というのがあり、これは指摘型である。
こう言った感じで言葉の整理ができるとありがたいが。
○西尾
不正があった時、取締役は捕まっても、監査役は捕まらない。なぜかというと、判
断基準と行為の基準がはっきりしないからである。責任の伴わない監査は不要である。よ
って、責任を追及するなら、行為と判断の基準が必要である。不正摘発型でも、何らかの
基準を置いておかないと、何に照らし合わせてかとい言うものがないと、制度として成り
立たない。
- 33 -
○C
参考までに、包括外部監査人に関しては市民オンブズマンが毎年レポートを出してい
る。偏ってはいるが。我々の役目は、Fraud Examiner かなと考える。危なそうな仕事に
牽制球を投げることである。
○遠藤
監査概念の整理では、2 つほど利用できる情報がある。公認会計士協会の保証業務
等に関する研究報告では、保証業務を定義している。定義は、「業務実施者として保証業
務とは一般に、主題に責任を負うものについて、その主題についての想定利用者に対して
信頼性を付与するために、業務実施者が自ら入手した証拠に基づいて基準に照らして判断
した結果を結論として報告する義務を有す。」
ここで言う保証は、Assurance で、法
律で言う保証とは異なる。我々は包括外部監査を監査とは言ってない。広義の監査と言え
るのかもしれないが、協会としては認識している。
公監査の分類としては、協会で委託した監査学会の公会計研究所座長の鈴木先生が、10
段階の公監査の展開をまとめている。第1~2では合規性、段階をへて3E、プログラム
の有効性の評価となる。こういったものをたたき台として整理すればいいのではないか。
保証という意味で、内部と外部を分けるのは分かりやすいと思う。
○H
話を聞いていて内部監査とは、指導性、実効性があってということが大原則と受け取
れる。パブリックへの不信感が大きいのは、マスコミも扇動している。全体の保証はでき
ないが、行為基準があれば、我々監査人も保証できるし、それが出来ない場合は指摘をす
ることは可能である。
○B
内部監査で保証型が一部出てきたのが、財政健全化法ではないか。健全化比率の指標
算出のプロセスを監査委員に責任を負わせるのは困難であるが、初めて責任を負わせるこ
とが出てきた。第三セクターでも 70 ほどがある。局がまず行い、そのあと財政がチェッ
クを掛けるが、スルーしてしまう。そのツケを全部こっちに持ってこられても困る。専門
家をいれてほしいとずっと指摘している。
○J
昨年と今年を比較すると大きく健全化指標が変わっているところがあって、問い合わ
せると半分くらいは昨年が間違っていましたと言われた。これは監査委員のチェックを経
て、議会の承認を得ている。独立性が監査委員にあっても、同等のチェック体制をとらな
いと無理である。
○B
何十とある外郭団体を、期間があって全部チェックするのは不可能である。基準が必
- 34 -
要であろう。
○石原
○C
健全化指標でミスがあった場合、罰則はなかったか。
ない。昨年から(健全化団体、再生団体)に適用になることになっていたということ
であれば大変である。
○B
ダイレクトに責任を問われることはない。
○C
ボーダーラインを超えない限り実害はない。
○F
責任の話で、保証型の監査が初めて監査委員に求められるようになったのに、その時
に依って立つ基準がないという現実なのか。
○森田
初めてではない。今でも決算審査はある。決算は適正であると明治以来、書かれ続
けている。
○C
○石原
決算審査が、保証監査なのか、実態監査なのかというもの問題がある。
決算審査をする際に監査委員はどんな手続きをしているのか。
○C
分析的手法だけである。
○A
中身は定期監査でつついている。その集大成が決算書である。
○石原
○A
一つ一つ伝票をみて、行うのか。
定期監査で終わっているという前提で、分析的手続である。
- 35 -
○石原
随時、定期、行政や財務と切り口は違うが、定期監査は財務監査なのか。そういう
整理も必要である。
○A
○石原
○A
○石原
○A
○森田
○A
財務監査である。
財務監査では、そこで行うのは分析であるのか。
定期監査は実態まで踏み込むこともある。
審査で行うのか。
決算審査は情報監査である。
定期監査は、我々の財務諸表監査で、取引論である。
決算審査は、上がってきた数字を昨年と比べて大きな相違がないか分析的手続きで見
る。公営企業であると、経営状況がどうか。
○石原
○A
○西尾
公営企業の決算で、実査、立会、確認は行うのか。
現金は実際に行う。貯蔵品はできていない。
監査委員が正しいというのは、情報監査としての財務諸表が、全体として適正とい
うことと、不正行為はないと言っていることと、著しく経済的におかしなことはないと言
っていること、この3つが入っているのか。
○A
○西尾
監査委員が言っているのは数値が適正であるということだ。
後の二つは入っていない。依るべき基準は別として、会計士の財務諸表監査と同じ
である。不正に関して、横領がないというようなことは言えるのか。
○A
それは定期監査の段階でやることだ。現金が合わない、帳簿と合わないということは、
定期監査の結果報告で行われる。
- 36 -
○西尾
会計士の行う財務諸表監査は、不正行為のあるなしは言ってない。また非効率なこ
ともやってないということも言ってない。
○A
数値は正確だと言いながら、分析をする中で非効率なことを発見した場合は、意見と
して、書かしてもらう。
○西尾
曖昧でないだろうか。そこに3つのことが書いてあるようだが、整理しなければな
らない。不正の定義付けもあるが、不正を見つけるのが目的なのか、非効率が何かという
定義づけも必要で、その判断基準がないとできない。今のままなら、監査委員が責任をと
る必要が全くない。何に基づいて、何をしなければならないと言われていない。期限だけ
である。
○A
意見書を期限内に出さなければならないだけ。
○B
市で不正があった時は、監査委員は責任を取らされた。
○西尾
○B
なぜ責任を問われるのか。
現実は、弁護士も会計士もいる外部の委員会が作られ、その報告の中で責任があると
された。
○西尾
○C
○西尾
○B
○西尾
○B
理解できない。訴訟すれば勝てるはずだ。
道義的責任、政治的責任である。
そういうことなら理解はできる。
風土がそうだということだ。
監査委員が責任を取るのか。
いや、監査委員も責任を取るということで、一蓮托生である。
- 37 -
○西尾
○C
○森田
政治的解決ということか。処分されても納得いかなければならない。
基準ができれば責任を問われる。大変である。
独立行政法人の会計監査は、国以外が監査する初めてのケースであった。独法の監
査基準があり、社会的に不正を暴くことを期待されたが、それはできないので、不正を定
義し、財務諸表の数字に重大な影響を与えるものを不正と限定し、それがあればディスク
ローズすると決めた。情報保証型で不正を取り扱った一つのパターンである。本体にも監
事監査があるので、この中では指摘・摘発型があり、判断基準も行為基準もないが、(指
摘・摘発の)期待はある。
○石原
独法の監査基準の現物と内容を数枚にまとめてもらえないか。
○森田
私は独法監査基準の策定メンバーで、(G氏と)一緒にまとめる。
○石原
独法監査基準は伝統的な民間企業的手法に基づいている。同様に、自治体の自治法
上の基準(監査実務を指摘か保証かの一覧)をC氏でまとめてもほしい。
○F
指摘型、包括外部監査も何を言ってもいいわけでもないので、協会でもガイドライン
をまとめている。
○石原
各種資料は、K氏に PDF にして送ってもらないか。
○森田
英国では不正、非効率について監査の効率性ということで、監査報酬の 7 倍くらい
の改善提案を出すという基準というか歯止めがある。
○石原
Audit Commission の inspection の論文などは石川部会員であたってもらえない
か。
○石川
了解。
○石原
指摘型、保証型、既存の監査基準と揃い始めた。この研究会で、今が内部監査なの
で、やめておこうではだめなので、内部と外部を分別したいと思うがどうか。
- 38 -
○森田
内と外となると、リスクアプローチも考えたい。財務諸表監査に限定すれば、これ
は非常に分かりやすい。少し広い範囲で考えた場合、非常に難しい。誰が、なぜ、ここが
リスクだと思い、監査資源を投入するのかという説明責任を果たさなければならない。最
近の民間の監査基準では大きいところである。
○C
実務的な対応とすれば、我々は職員をクビにしないためにどうすればいいかというリ
スクアプローチを行い、職員が現金を扱うような場面に監査資源を集中させている。それ
から近時の危険な例を情報収集し共有する。組織防衛的アプローチとでもいうのだろうか。
○石原
特に今日は、外と内、指摘と保証、特にこの二つについてはコンセンサスを得られ
ればいい。E氏には、CIA での内部監査について資料を収集してもらいたい。内部監査協
会は私の方で資料調達を行う。
地方制度調査会の動きに反旗を翻すようではあるが、地方自治体の監査委員事務局の職
員は内部監査であるという大枠での合意であろうか。
○森田
その議論はいいと思うが、検討課題として総務省として機関の共同設置として、監
査委員あるいは監査委員事務局が目玉として挙がっている。ここも踏まえたい。独立性と
いう議論もあるので。
○石原
共同設置の方向で動いているのか。
○森田
監査委員と事務局については有力と考えている。
○A
町村部の監査は広域でやろうという議論がある。
○石原
(調査会は監査について)最初からその方向なのか。
○森田
色々な機関を並べる中で、メリットとデメリットを考えているところ。徴税の共同
とかではなく、例えば福岡県の監査委員が、県下市町村の監査委員や事務局でもあるとい
うことだ。首長と議会との関係は整理する必要が、まだ課題として残っているが。
○D
合併できなかった自治体が、今後どうするのかという時に都道府県の役割をもう少し
市町村寄りに持ってくるということである。市町村合併によって都道府県の仕事も減った
- 39 -
ことであるし。
○C
事務局を県に持って行き、当然市町村からも職員を出せばいいが、独立性を保てるか
どうかは疑問である。また、町村の監査委員の報酬は、月3万円とか1万5千円というレ
ベルである。町村にすれば初めて監査が仕事になる。
○石原
ではその共同監査団は、内部か外部か。私はこれには反対で、中小市町村はコンソ
ーシアムを組み、内部監査をアウトソースすべきと考えている。外部監査にはせず、共同
で、その自治体についての専門知識を持った人を含める。
○C
私は、会計士がやるよりは、行政職員がやる方がいいと考えている。仕事は似通って
いるので。
○B
外部か内部かというと、私が周辺の一部事務組合に行って監査することがあるが、こ
れは外部監査である。遠慮なく意見は言う。なぜなら任命権者が異なるからだ。非常勤特
別職で、日当1万円なので、外部監査である。事務局体制があるわけではない。共同設置
となると、相当そこで張り付いて事務局体制も作らないと不可能である。
○石原
監査事務局が内か外かという延長線上にあると思うが、今の議論なら監査委員事
務局は内である。
○C
マネジメントのカイゼンを目的とするなら、内部である。目的で考えればいいのでは。
○A
監査委員は、株式会社の監査役はほぼ同じ立場で内部監査と考える。が、事務局は監
査委員の補助職員となる。内部監査人について、財務会計行為に関しては、本来会計管理
者がその役割を果たせば、監査委員事務局の財務会計行為に対する負担が緩和される。会
計管理者が担えば、本来の内部監査人の役割が果たせる。
○石原
○C
監査委員は内部か外部か。
よくわかりません。
- 40 -
○A
内部と考える。長の任命を受け、自治法が執行機関に位置付ける以上、内部である。
会社法で言う監査役と同じである。
○森田
○A
監査役は株主総会で選任されるが。
我々も一応議会の選任を受けている。
○森田
議会の同意を得ているなら外部と言えば外部。
○石原
いや、同意だから内部ではないか。選任ではないので。
○A
内部である。
○C
問題なのは、我々が指摘報告してきたことに対して、マネジメントに活かすという義
務付けがない。結果報告はあっても流せる。
○石原
自治法上は何かないのか。監査委員の指摘を首長は尊重するというような。
○A
結果報告と処置だけである。公表する。
○B
今は未措置でも公表する方向にある。うちは未措置でも公表している。監査の最大武
器は市民目線である。どれだけ探しこむか、同じことをすると、さらに厳しくネットに流
し抑止力を持たせる。いまの制度で最大努力している。
○石原
では、今後の研究会の議論として、一つは既存の制度を無視して、監査委員は外部
監査であるべきだ。その監査委員を支える監査事務局があり、これでは内部統制がないの
で、内部監査を企画や総務に置くべきだ。というようなあるべき論を一つ。これは基準で
はない。自治法を考えると監査委員は執行機関であり、内部監査であり、事務局も内部監
査人だ。外部監査をする人は指摘型であるが。というような前提で監査基準のありようを
整理していくか。
○森田
西尾部会員の言った監査の目的論、地方制度調査会の報告書が良くない。的確な表
現をしていると思うのは、地方分権委員会の第3次勧告の中で監査の機能を明確にしたう
- 41 -
えで、監査制度を再構築すべき。ここではないだろうか。機能が明確になれば、どういう
組織や権限が必要か分かる。
○C
今日分かったのは、我々は非常に弱い内部監査人であるということだ。
○B
本日は、総務省の方が見えてないので、少し弁解しておくと長の任命で監査委員にな
っているが、実は(地方制度調査会)後段で割と考えている。解任の手続きが非常に厳し
い。他の執行機関、例えば選挙管理委員会、教育委員会とあるが、選挙管理委員会と監査
委員会だけは、解任しようとすると議会の同意と合わせて公聴会が必要となっている。長
の不正を暴いても、長は解任をできない仕組みになっている。副市長はそうではないが、
監査委員は、4年間身分が保証されている。監査委員も心がけ次第のところもある。ただ
事務局が3年で定期的に代わると、厳しくすると帰られない人もでてくる。
○森田
○B
米国の GAO のように議会の付属機関、指揮命令系統にいるのも一つ方法である。
始めに言ったように、国には憲法で言う会計検査院という独立機関がある。地方はな
ぜないのか。これを議論する場がない。
○森田
○B
それは内閣府で持つべきか
地方制度調査会は総務省寄りである。国家行政組織法の3条委員会、8条委員会があ
るが、権限の弱い8条委員会なので、支えている事務局がどうしても地方制度の改正しか
視野がない。
○C
○西尾
会計検査制度も問題があって、独立性は高いが、監査には情がない。
彼らはそれが目的だからそれでいい。サボっている可能性もないことはない。なぜ
ならいくら以上という基準がないからだ。目的が摘発なのであれでいいと考えている。
○森田
先程の話で、指摘と指導という区分があり、会計検査院も同様である。これらを合
わせて整理すると現状の認識整理としては面白いのではないか。
○石原
結果があって、意見があって、指摘があるがどういう分別なのか。
- 42 -
○C
指摘とは公表されるということである。公表されるので重たい罰である。指導という
のは、その場にとどまる。重みが違う。
○森田
確か、検査院の場合は、措置要求が出ると、毎年、フォローアップしなければなら
ないはずだ。それで段階があるはずだ。
○K
指摘事項には2つ重要性があって、重要性の高い方が公表、低い方が指摘事項という
ことで、口頭で指導とは違うレベルでの注意を行う。指摘事項でも自治体によっては異な
る取り方をしている。
○A
各府県で違う。
○石原
C氏でまとめてほしい。
○伊藤
監査委員になってびっくりしたのは、こんな危ない仕事をたったこれだけの報酬で
はできないと正直な話で。福岡県の全体財政で2兆円、それを少ない作業によって最終的
に決算審査で適正だというのは危なっかしくて、福岡県は監査結果報告書というが、「以
上の理由からおおむね適正である」という表現をしていた。「概ね」の定義を誰も答えら
れないので、少なくとも自分たちの調べた範囲で適正というと分かるが、概ねと言うと全
体にわたると意見したが、これまでこうしてきたからと言われたが、3年目に少し変化が
出て概ねを取るようになった。決算審査と健全化判断に関しては少なくとも、アウトソー
スして保証型にしないと危ない。それ以外は監査委員が、指摘型の内部監査を行う。こう
いう区分けが大きく考えられるのでは。
○西尾
それでも監査委員をやられているのか。
○伊藤
そうである。
○西尾
そこがポイントである。会計士ならきっとしない。私も学校にきてから、ある組合
から監査を依頼されたが、報酬と決算額があわないので断った。基準があって責任を取ら
されるというのはここである。
- 43 -
○伊藤
決算審査や健全化判断比率に公認会計士にやってもらおうとしたら、今の包括外部
監査程度の報酬では到底できない。自治体が一方でどの程度出せるかというのは重要な問
題である。
○D
包括外部監査を導入した時に市は、700 万円である監査法人に依頼をした。この根拠
が特別地方交付税の措置となった。低くなっている原因である。これが市レベル出せるボ
ーダーラインとなった。ここに一般財源を投入してまでと考えることができるだろうか。
○C
このあたりが会計士の皆さんと一般的な公務員の認識ギャップで、決算にハンコつい
てお金がもらえるなら楽と考えている。役所の決算には粉飾したくなる要因はない。夕張
は例外である。3000 もの自治体が 60 年ほど決算をしてきてああいうことは一度もなか
った。黒字を増やすインセンティブも働かない。現金主義なのでごまかしようもない。決
算を議論するのもナンセンスな感もあり、合っていて当然と思っている。数字の中身は別
であるが、間違いはあるが、粉飾をする動機がない。貸付金が取れてないというようなこ
とはあってもそれをごまかすことはしない。正確性の話はピンとこない。
○D
八尾でも数字は合っているが横領していたというケースがあったが、3 年おきに起こ
っている。最初は保育所の国庫補助に、支出が還流してポケットに入っている、障がい者
団体への国庫補助金が還流してポケットに入っているというような事例がある。電算シス
テムでは問題はないが、不正が起こる。会計も監査も担当課も見つけられなかった。財務
会計システムが高度化する中で、これを監査委員に指摘させるのは無理では。
○石原
集約しようと思う。内部統制の扱いはしていないが、VFM、財務報告の信頼性、
コンプライアンス、資産の保全のうち監査委員がやっているものとして、VFMは指摘で
少しはやっているだろうか。
指摘
VFM
△
財務報告の信頼性
○定期監査
コンプライアンス
◎
資産の保全
○
保証
○決算審査
○
内部
外部
- 44 -
○C
それは行政監査である。
○石原
ムダ使いという指摘か。
○伊藤
しかし、実態となったらどうなのだろうか、形式的ではないか。
○石原
指摘のコンプライアンスはしている。
○C
それが中心である。
○石原
財務報告はどうか。
○森田
財務報告は保証型ではないか。
○石原
普通の定期監査と行政監査、審査という意味でいいか(指摘と保証に○)。では、
資産の保全はどうか。
○A
資産の保全は、例えば台帳整理はきちんとできているか。ということは行っている。
○石原
指摘ということだ。
○森田
決算書にある財産に関する調書を含めて審査対象である。(資産保全の保証に○)
○石原
これくらいであろうか。
○森田
VFM も指摘はあるのでは。
○石原
△くらいにとどめようか。(VFM 指摘に△)
理屈で分けると、指摘が内部監査
で、保証と指摘が外部監査となるのだろうか。
○西尾
それは一概には言えないのでは。
○石原
私のイメージでは執行機関というものの、B氏の言うように解任の手続等があるこ
- 45 -
とを踏まえると、地方制度調査会の方向性とおり、外部なのであろうと、監査委員が外部
であるということに大きな抵抗はないと思う。内部監査が内部統制、監査委員が外部監査
で、中でやったことを外でチェックするという観点で整理してはどうだろうか。VFM の
保証、コンプライアンスの保証が必要かという議論が出てくる。西尾部会員が言う、整理
していくあるべき方向性である。自治体の内部監査、外部監査の在り様については、内部
統制のこれだけを内部監査ですべきであるし、外部監査も最大でこれだけ対象があるとな
る。現状では問題はあるが。これでどうか。
○西尾
内部監査は内部統制を担うのでマネジメントである。内部監査は誰がするのか。
○石原
部分的に会計管理者などであろう。
○西尾
事務局の扱いは。
○石原
決まらない。微妙な存在である。その時に問題となるのが屋上屋の包括外部監査と、
個別外部監査である。VFM で入札改革を市長が進め、監査委員も指摘を続けたら、外部
監査人も指摘をするのか、保証をするのかわければ整理できる。
(図の整理の話)
○石原
伊藤副部会長が言うように保証の部分はアウトソーシングすべきと、それ以外は指
摘ということが分かるが、指摘と保証とあるけれども、全てしなければならないか。財務
報告は保証がないとダメと思うが。VFM は。
○森田
保証する以上は何かが必要である。判断基準と監査基準が要る。
○石原
VFM は、インダイレクト・レポーティングもいいと思う。経営者が VFM をちゃん
とするように内部統制間接報告書のような形で。コンプライアンスの保証について住民は
欲しているか。
○西尾
実際は無理である。資産の保全は。
程度の問題であると言える。
- 46 -
○石原
監査の概念で整理できないか
監査、レビュー、指摘という風に。指摘というのは
除外事項ではないのか。
○森田
監 査 手 続 き を 全 部 事 前 に 細 か く 事 前 に 決 め て お く の な ら 、 agreed upon ・
procedure で一部はできる。
【休憩】
○C
○西尾
監査報酬に同意できる有権者がどの程度要るのか。
その話はあると思う。包括外部監査が、制度として成り立たない、コンセンサスが
得られないのならやめてしまえばいいと思う。そのためには監査というものがどういうも
のかを理解してもらわないと、コストとパフォーマンスが分からない。この基準を作るこ
とで会計士の仕事がなくなるかもしれない。そんなにお金がかかるなら、それはそれでい
いと思う。
○C
財務諸表の監査は、あくまでも上場企業の株を買う人のための説明資料であるから、
そのために発達してきたものなのでそぐわないのでは。
○森田
何かあった時のために、住民監査請求か何かがあって監査してなく、監査委員に責
任が掛かってこない限りそのままであろう。
○西尾
どこまで求めるかはまた別の話ではないか。内部統制は会計士は外部なので実際に
どうかは分からない。
○C
○森田
○C
○森田
決算の不認定は別に影響はない。
不認定は分かるが、認定すると議会にも責任は及ぶ。
それは何の責任なのか。
実態のある責任とは思えない。
突き詰めるとそこには行く。
- 47 -
○C
包括的に責任があるというだけだ。
○石原
議会と監査の関係はどう整理するのか。
これも次回以降取り上げたい。
○森田
監査委員の意見が付いたものを以って初めて認定を検討する。今は監査委員が正確
だと言っているというのが実態である。認定されなくても影響がない。
○C
○石原
首長への不信任ということだ。
マネジメントの指摘が多いが、今あったように、外部監査の結果を議会はどうする
のか。ここで言う「外部監査人」は議会の選任を受けているわけではない。民間企業は株
主総会で選ばれている。
○C
議会はチェック機関であるという認識がされているが誤解で、予算と条例を議決する
ので決定機関である。政務調査費に限らず監査委員の対象であるはず。
○石原
普通、市民の目線では首長の行いをチェックするのが議会である。チェックする議
会との間に監査委員がいる。監査委員は何なのか。決算について議会は専門的知識もない
ので、監査委員が行うということでは理解できる。
○B
ただ単に監査委員の意見を付けて長が認定の議案に出すことが定められているだけで
ある。そのあとどうするかは議会の権限である。この話はわが国の監査の位置づけに関す
ることで、低いと思う。法もそうなっている。
○石原
自治法がしっかりしているのは決算が監査委員から出てくる。執行機関である。け
れどもなれ合いはだめなので、解任に歯止めをかけているということだ。内部監査外部監
査というのは言いにくい。
○B
実際やっているものからすると、内部とか外部とかなしに、一定のセカンドベストと
思ってやっている。独立すべきとは思うが、現在の枠組みの中でやっている。
○石原
形式内部、実質外部という考え方がいいのか。
- 48 -
○西尾
選任は別として、監査役とは異なるのでは。
○森田
いや、よく似ているだろう。
○西尾
監査役も内部か外部かという話はあるが、同じように考えればいいのか。
○森田
近いと思う。任命は異なるが。議会が株主総会かどうかということでもある。議院
内閣制でもないし。首長は直接選挙であるし。資料としては、最新の月刊自治フォーラム
と言う「議会監査制度改革とローカルガバナンス」では整理されている。
○藤岡
指導とか指摘という言葉は、医療法人でも診療報酬の関係でもあり、それに近いも
のがある。次回以降整理をしてきたいと思う。
○E
会計検査院の言葉の定義は私が調べてくる。
○遠藤
10 個くらいありますね。
○石原
次回以降も、伊藤、吉見両副部会長と相談しながらやっていきたいと思う。
○伊藤
(西南学院大学の紹介)
(第1回
研究部会
<次回研究会までの課題>
石原部会長
内部監査協会のガイドライン
森田部会員、G
独立行政法人監査基準
藤岡部会員
医療法人監査の「指摘」「指導」等の言葉の整理
石川部会員
Audit Commission の inspection の論文
F
指摘型、包括外部監査の会計士協会によるガイドライン
E
CIA の内部監査の資料、会計検査院の「措置」「指摘」等の言葉の整理
C
自治体毎の「指摘」「指導」等の言葉の整理
- 49 -
以上)
資料3 第2回 議事録
日
時
平成 21 年 12 月 26 日(土) 14 時~17 時
場
所
西南学院大学
西南コミュニティセンター
<参加者>
出席
21 名
<次第>
研究部会長挨拶
前回発言録の確認
資料1-99
協議事項
1
日本監査研究学会・公監査研究特別委員会研究報告(遠藤) 資料2-1
2
概念フレームワーク作業グループ編成の件
3
都市監査基準準則の概要
4
独立行政法人に対する会計監査人の監査の基準(概要)(G)資料2-3
5
日本の公監査基準-鈴木教授-
6
内部監査基準
7
会計検査院と自治体の報告方法
8
地方自治体監査事務局の報告の現状
9
地方自治体の定期監査
10
(石原)
(C・D)資料2-2
(D)資料2-4
(E)資料2-5~7
(E)資料2-8
(C・E)資料2-9
(C)資料2-10
Certified Government Auditing Professional の概要
参考資料
802 億円の男
(K)資料2-11
日経グローカル
<議事内容>
○石原
吉見副部会長が来られているので紹介する。
○吉見
(挨拶)
○石原
2回目を始めるが、まだ2回目なので勉強を進めようということで教材を並べさせ
てもらっている。前回の会議の内容を発言録ということでまとめている。大きく変更なけ
れば了承願いたい。また学会での報告の際には、誰の発言であるかの配慮は行う。本日中
のご確認を願う。
- 50 -
私事で恐縮あるが、地方政府法案の策定を原口総務大臣が取りまとめるための会議が創
設され委員に選任された。学者の選任を専門分野別に分けて偏らない点をアピールしてい
る。会計学を地方自治体の行財政改革ということで、総務省の中にもいたので枠を確保で
きた。財務会計制度の改革について期待されているようなので、本会でも監査、特に保証
型監査について、公認会計士の業容拡大ではないが、地方自治体に関わっていくのはいず
れの先進国でも一般的であり、そういう方向に道筋をつけられないかと考えており、まと
まった資料は提示していきたいと思うのでお力添えを願う。また、Jの骨折りで日経グロ
ーカルの記事を作成いただいているので啓発を願いたい。では、地方自治体の監査、公監
査について様々な先行研究の確認をしていきたい。鈴木豊先生が中心である「日本監査研
究学会・公監査研究特別委員会研究報告」について遠藤部会員から報告を願う。
○遠藤
鈴木氏が強調した点を中心に述べる。報告の構成は右の通りである。(同報告の要
点)
「資料2-1-1」にある「3」の部分については、鈴木氏が明記しているわけではない
が、中心概念としてまとめている。①パブリックアカウンタビリティ、②公的保証、③独
立性である。
○石原
遠藤部会員の説明の通り、提言で、監査法人や公認会計士が公監査を行っていく上
での特質なり不足する部分を整理している。
○西尾
公認会計士が公監査をやるための話と理解すればいいか。
○石原
報告書としてはそうまとめている。
○遠藤
公認会計士協会が受託しているので、会計士がした場合を考えられている。
○西尾
財務諸表監査もあるし有効性もある。会計士ができるのか。公認会計士がするには
広すぎる。
○遠藤
既存の監査ということになると言われる通りである。この報告は会計士がやるとい
うことである。
- 51 -
○西尾
分かる。会計士にする能力はないのではないか。
○吉見
もちろん、会計士だけではないのだが、議論の中で会計士協会から委託されている
ので、会計士の役に立つように考慮したのは事実である。法規準拠性や業績監査というこ
とになると、専門性があり西尾部会員の言うとおりだ。現実的には、保証業務で対応して
いるものもあるが、それとて専門性がない。公的部門の監査に会計専門職が乗り出すこと
は、英国の状況を見れば明らかだ。方向性としても、日本の監査の専門職が入っていく時
に財務監査のみしていればいいとはならないはずだ。では、準拠性監査や業績監査を含め
てどうしていくかということである。
○西尾
公認会計士は会計と監査の専門家である。監査をするには適しているが、もう少し
知識を付けていかなければならないということでいいか。
○C
会計士を、ないも同然の公会計監査で排除する必要は全くない。業績評価や政策評価
まで視野に置いてすると範囲が広くなり懸念がある。私どもは、あとから、予見すべきだ
ったと責任が問われることがある。よって保証という言葉をうかつに使うべきではない。
大きな誤解を生む。伊藤副部会長がいうように、ハンコをつくということは、業務を保証
することになる。極端な話、知事でも全業務は保証できない。政治的リスクを伴う。監査
するなら限定しないと難しい。
○石原
報告書の 184~185 ページにあるように、報告書を先行研究としたい。現状分析
し、エキスを帰納して提言となっている。監査的なモノは必要性が認識をされアンケート
にも表れているが、公認会計士の役割分担が不明確である。制度的にも未整備であり、準
拠基準の未確立と挙げている。公会計・公監査の展開を提言し、公会計のフレームワーク
的なモノを整理している。その上で、何をすべきかと 10 項目の提言に、公監査基準の統
一化活動とある。すべきことは整理されている。ただし、この報告書では整理を JICPA
がすべきと書かれている。
○C
○石原
○D
どこが担うかは、どこでもいいと思う。
統一化ということは何か分からないが。
統一化の対象化が分からない。
- 52 -
○石原
財務監査の実務指針の設定とか、コンプライアンスの実務指針というのはある。で、
そのあとに統一とある。
○吉見
統一とは、一つの組織形態に一つ作るということではなく、独法、自治体、国でも
使えるもので、個々の形態で違うことはあるが、パブリック・セクターを通じて共通する
基準のことである。例えば、GAO であり GASB がつくるといったものである。非営利組
織となると、もっとバラバラになる。概念的に筋の通った統一したものをどこかで作るべ
きで、どこでするかとなると当然会計士協会となるのである。会計士が監査する場合は、
会計専門職が外部として監査する際に、どこが基準を作るかと言えば、基本的には専門職
団体であろう。日本は特殊でずっと国が作ってきた。監査主体は会計士である。
○石原
次第の2の方で「概念フレームワーク作業グループ編成」を挙げている。監査基準
の研究を自治体職員がイメージする監査基準は、次第の3に挙げている準則のようなもの
である。研究報告の 180 ページにある実務指針とは、公認会計士がイメージする個別具
体的な事例に則した方向性を整理したものであると言えるかもしれない。186 ページの図
表4では、公監査の仕組みを流れ図とキーワードと利害関係者を枠組みとして整理をして
いる。専門用語の定義と相互関連性を整理し、その上に統一化と一般性を持たす監査基準、
その上に業種別と言った実務指針「ガイドライン」といった3層構造によって、ここで皆
の理解をいただけるなら、当面の議論の土台としたい。中間報告までは1年弱あるが、西
尾部会員、藤岡部会員、高原部会員、と私で作業部会を編成し、基礎概念の連鎖、FASB
のイメージで、「地方自治体監査に関するフレームワーク」を助言いただき作成したいと
考えている。(全員了解)
次第の3番の都市監査基準準則の概要であるが、一般の研究者はほとんど接点がない。
手元にあっても精読はすることがないので、D、C両氏で説明を願う。
○C
都市監査基準を制定しているのは、全国都市監査委員協議会(大阪市が事務局)で市
の監査委員の協議会である。ご感想をむしろ私が聴きたい。(内容・資料の説明)
私としては、国語辞典のような感想を持っているので、業務上参照することはあまりな
い。
○石原
大学で監査論を教えている方に聴きたいが、企業の場合、監査基準があり下に準則
がある。都市監査基準の準則をみていくと、第 1 章に総則があり、1~3節で基準を説明
し、第 2 章で「準則」の言葉の整理もなく、実施論に入り、通常実施すべき監査手続が述
- 53 -
べられている。企業会計を意識しているが、文言の使い方がおかしいと思うところが多い。
第 2 条の「保障」というのも理解できないところである。
○C
基準・準則というのは、ひな形のことを言っている。
○I
基準に準ずるものという理解でいいか。
○C
その通りだ。これをもとに作ってほしいということである。
○B
英語で言うと保障は「secure」か「indemnification」で損害に対する保障か。
○森田
○C
○吉見
○B
実際に各団体で、条例や監査基準がこれに準拠すべきという規定があるのか。
これを参考に規定を作ってほしいということである。
ルールではないが、実務要領のような形にしているところもある。
この下に監査手帳がある。これがマニュアルである。総論が準則である。条例とかは
一切関係ないが、何のためかというと、横浜市から 200 人足らずの村まで、市町村があ
り、常勤もいない。拠って立つものがないために作ったものだ。誰にとっての自治体かと
いうのは、人口によってバリエーションが豊富である。大都市であれば不要かもしれない。
小さいところは監査手帳がバイブルである。依拠しないことができないので役に立つもの
が欲しい。「都市監査基準」は市であるが、都道府県の場合はどうなのか。
○A
全国都道府県監査委員連合会(全監連)というのがある。ここがほぼ、「都市監査基
準」によく似たものを定めている。内容は一般論がある。東京都は自らのものがある。奈
良県にもあるが、監査マニュアルである。旅費の監査はどうするのか、といったものであ
る。まさに実務面のマニュアルである。監査マニュアルに変更させた。基準とマニュアル
のギャップは大きい。そこに上のレベルの基準がないとだめだ。重箱の隅をつつくだけで、
俯瞰できる基準が欲しいというのが3年間務めた感想だ。
○D
A氏の言われる「監査等の着眼点」であるが、調定の漏れがないか、収納金は適切に
保管しているかなどの質問事項が羅列されている。
- 54 -
○石原
今回都市の資料が揃ったので、E氏で全監連(都道府県)の資料をお願いできない
か。事務局は、47 都道府県と政令市、中核市、特例市に都市監査基準を集めてほしい。
○C
用語の定義をしないとだめではないか。監査基準と言っても分からない。
○石原
監査基準を考えるときにマニュアルを整理する必要がある。なので、基準、準則、
実務指針、マニュアルとしよう。
○A
全監連の監査基準は、私が今持っている。
○石原
着眼点という考え方は、監査論では、監査要件、監査目的ということである。基礎
概念を検討する際に確認しておきたい。
○森田
町村にも監査委員協議会があるが、町村議長会併設である。実際には県単位で作っ
ている県とそうでないところがある。(D
○石原
町村監査基準の本はあるとの助言あり)
町村の場合も事務局で調査を願う。47 都道府県の議長会で協議会があるところと
そうでないところ、協議会がある場合その活動内容、監査マニュアルがあるか、マニュア
ルがない場合はどうしているのか。都市ならマニュアルがあるなどの質問を考える。
では、資料 5 の説明をD氏でお願いできるか。
○D
(資料5の説明)公監査の本の中にたまたま鈴木先生の独法の資料があった。現時点
では、わが国では公監査基準は独法のものしかないとしている。
○石原
資料2-3に造幣局の監査報告書があるが、会計基準はあるが監査基準があるよう
には感じられないが。
○森田
監査に関する報告書に準拠するという形である。
○石原
所管省庁はどこか。
○森田
総務省行政管理局と財務省共監の独法会計基準検討会が行っている。
- 55 -
○D
2003 年に財務省と総務省の共同ワーキンググループにより作成している。
○森田
独法の所管は総務省の行政管理局である。公会計の話もあるので財務省主計局の公
会計室の共監で基準ができている。
○石原
なぜ会計基準の研究会が監査基準までつくるのか。
○石原
独法の監査基準はどの程度の分量になるのか。
○G
30~40 くらいでネットでも入手できる。
○C
町村の方では、全国町村監査委員協議会から監査必携という本が第一書籍から出てい
る。
○西尾
○C
○森田
独法は誰のために何のために監査をするのか。
金の無駄遣いをしているため
何のために財務諸表を作っているかという話を先にすると、国民に知らしめるため
ということが始めにあるのでその信頼性付与のために監査がある。実態的には財務省より
も主務省が独法管理監督をしているそのための報告である。事前統制から事後検証がある
ので、事後検証の財務諸表である。
○西尾
実質的には、主務省の責任逃れか。違法を発見した場合は、長を通じて主務省に連
絡しなければならない義務もあるが。これは何か。
○森田
主務省が独法を管理監督するための手先になっているということだ。
○西尾
「しなければならない」とあるが、資料2-4の 65 ページにある非効率を発見し
た場合は独法の長を通じて主務大臣に報告とあり改訂されているが、非効率ではないと思
っていたのに非効率であった場合はどうなるのか。
- 56 -
○森田
発見していないということである。会社法で言う不法行為を見つけた場合は、監査
役に報告しなければならないのと同じである。
○西尾
監査人の感覚で非効率と思った場合は報告すればいいのか。
○森田
そういうことである。見つけたのに報告しないということがだめである。
○西尾
出来の悪い監査人ならどうなるのか。効率悪い取引をみても気づかなかった場合は。
○森田
発見してないことになる。
○西尾
それでは意味がないのでは。
○森田
会社法も同じところがある。
○西尾
いや、会社法は社会通念上の明らかな不法行為を発見できなければ、責任が問われ
る。
○吉見
西尾部会員の言われるところはまさにその通りで、不法行為だけではない。
会計検査院が主として行うのはムダの検査である。他にも監査をすることになっているが、
いずれも会計士にやらせようとしているので問題になっている。
○西尾
見逃したものを発見していないと言いきることができればいいが、そうでないと怖
い。
○吉見
会計検査院もすべてのムダを言っているわけではない。
○森田
まさにここは保証型なのではないか。
○西尾
こう言うところはまさに自治体の監査基準を作っていく上で象徴的である。
- 57 -
○森田
実態に合わせて言えば、非効率を発見すれば議会に報告しなければならないという
ことになれば、監査委員が見つけられなかったときに責任を問うのかということである。
○西尾
それは問わなければ意味がないと思う。会計士が後ですることになっているのに、
分からなければ、基準で決めた意味がないということだ。
○森田
そうではなく、財務諸表の実施過程において発見したのであれば報告しなさいとい
うことである。
○西尾
非効率な取引は発見すべきことである。でないと基準に載せる意味がない。
○森田
いや、もしこの文がなければ分かったとしても報告する責任もないことになる。決
算書が合っているかどうかだけになる。
○西尾
○C
見つけていても会計士に何ら責任がないことになる。監査の意味がなくなる。
監査責任の責任論は、一般企業からすると大きく違う。会社にはマーケットによる規
律が働く。明らかにムダな行為は背任行為としてあるけれども、民間企業の存立のベース
からではない。ムダや不合理は私どもの方にたくさんあり、監査がそのためにある不祥事
が発見された場合、指摘しておけばよかったということはある。そのとき具体的な責任は
問われないが議会で怒られることはある。
○石原
財務諸表なのか3Eなのか、監査論の授業のように批判性なのか指導性なのか。不
正を見つけなければならないのかということである。これらは概念で整理したい。地方独
法がこの基準は当てはまるのか、また地方独法版があるのかないのかという整理をしなけ
ればならない。ニュージーランドだと政府が株式を持っている企業は、監査が入り、報告
がある。こういうところが何の監査をし、どういうものを発表しているのか。これは、地
方独法の基準を作る際に参考になる。
○G
○石原
あったと思う。
所管はどこか。
- 58 -
○森田
総務省である。
○石原
G氏に調査をお願いしたい。
【休憩】
○石原
○E
内部監査について資料をE氏から頂いているので説明を願う。
内部監査基準について、国際基準と国内基準がある。1947 年に IIA(内部監査協会)
が定めた。(資料2-5~7の説明)
会計検査院の報告方法と都道府県の報告方法(資料2-8の説明)
○石原
○E
本課検討事項とは何か。報告書に載るという意味か。
報告書には載る。例えば学校などは、学校自体に問題があっても、他の学校でもあり
そうな場合は、教育委員会で検討しろということである。
○石原
メンバーそれぞれのバックグラウンドが異なるので、イメージする監査基準も異な
る。私は、地方自治体の内部監査となると資料2-6をイメージするし、このレベルでは
ないだろうか。用語集がついているので概念整理にも重宝する。20 ページのSのところ
で、significance を重要性としているが、重要性について概念整理をしたい。専門職的実
施の国際基準とあるが、The Professional Practices Framework を訳しているの
か。IFRS などあるが、ガイドラインがスタンダードになるが、この辺りの問題提起を
どこかで学者の部会員にやってもらいたい。
○I
内部監査は経営者のためである。実施準則の中にアシュアランスとコンサルティング
とあるが、経営者のために行う内部監査のアシュアランスがイメージできないが。
○E
財務諸表の中身についての正確性であると思うが、会計士がするものと同じではない
か。
○I
事例としてはないと思うが。企業で何か内部監査でアシュアランスすることは知らな
い。
- 59 -
○遠藤
○E
○西尾
経営者が全部見られないので内部ではあるが専門家が見るというのはあると思う。
公認会計士と変わらないので重複しないようには記載されている。
経営者には適正な財務諸表を報告する義務がある。そのための体制を構築する。内
部監査部門が、各部門が適正に動いているので財務諸表が適正だというアシュアランスは
あるという考え方はできる。経営者が外に向かって宣言するには、中で適正にしているこ
とを経営者に保証しなければならない。
○C
用語集には定義がある。この体制ができているかどうかをいちいち外部の専門家に尋
ねるのは不便である。ところで、指導事項は公表しているのか。
○E
今まではすべて公表していた。今は件数しかしていないとのことである。
○C
補足すると、会計検査院と社会的地位が違うので、自治体の監査委員の指摘事項は抽
象的なものが多い。具体的にすると役所の中で生きていない、利害相反だ。
○石原
16 ページでアシュアランスとあるが、批判でいいのか。指導か助言か。昔のアシ
ュアランスとは異なるのではないか。会計士のやることが拡大してきたので、アシュアラ
ンスが広がりすぎている。
○西尾
変ってはいない。内部監査は会社のルールに基づいてどうかである。
○石原
アシュアランスの結論部分は証拠事実の客観的な検証となっている。
○西尾
内部監査自体が一定のルールに従ってやっているかどうかで判断基準も入っている。
○吉見
内部監査なので、アシュアランスや監査の定義を言いだすと、内部監査自体がそも
そも監査なのかという議論になる。報告書を書くわけではない。現に内部監査があるので。
○石原
この定義で言うと、アシュアランスは、独立性がメインで、コンサルティングは被
調査部門の依頼となっているのでその区別でいいのか。この件については、石川部会員に
お願いしたい。
- 60 -
○西尾
ここで言うコンサルティングは内部でするのか。
○石原
言葉の翻訳の問題ではないか。
○C
アシュアランスは基準に沿って確認するとあるが、我々は合規制監査という。ありと
あらゆる規則に対して合っているかが、自治体監査である。規則の合理性や正当制につい
ては考えない。そういうものもアシュアランスなのか。
○石原
その場合に考えるべきことがある。財務諸表監査の場合は、「主張」と言うが、主
張が基準に合っているかどうかを検証するのがアシュアランスで、主張のないところでル
ールがあるとかないとかいうのは違う。
行為であれ情報であれ、それらが基準と照らしてあっているかどうかが保証である。内
部監査で保証するには、何を主張しているかである。何を検証するのかがない。ガバナン
ス、リスク・マネジメントとあるが、何を確かめるのかが分からない。
○西尾
会社のルールに照らし合わせてである。
○吉見
トーマツはウェブサイトで内部監査を取り扱っているが。
○石原
トーマツの内部監査業務は何をしているのか。コソーシングか、アウトソーシング
か。
○G
○森田
静岡県では定期監査をしている。
内部監査というよりは監査委員事務局のアウトソーシングである。資料2-6とい
うのは、内部監査規定を作れということである。興味深いのは、業務が内部監査も外部監
査も何をすべきかを明確にした上で基づいてやりましょうということだ。外部監査になる
と、「Generally Accepted」になるので、適切なものが必要となるということだ。内部
監査なのだから、内部の裁量で決めればいい。
○E
営利、非営利に関係なく組織体の目標達成のための概念である。目的は組織によって
違うので自由にやりなさいよというイメージである。
- 61 -
○C
内部統制のセンターがないというのは、官房部門が目と鼻を持っていないということ
である。業務が動いている現場を総務局や財務局は知らない。自治体業務の鈍重さでもあ
る。
○吉見
会計士が内部監査は、コンサルティング業務として、せめて agreed upon といっ
たスタンスで企業と契約する。米国の例を考えると、監査と言うか保証の枠組みとなって
きている。
○森田
AUP の法人の中でも業務基準、マニュアルでも厳しくなっている。特に独立性で
そうである。
○石原
○C
○石原
次第8と9である。C氏から説明を願う。
(資料2-8~10 を説明)
指摘型か保証型かということで、監査委員の監査で決算審査は一般的に保証型とさ
れているが一般的にインパクトは弱い。私は財政健全化法を考慮すると、保証型の監査が
必要になってきていると考えている。4指標ないし5指標のチェックは保証監査だという
のは、共通認識として持っておくべきだろうか。これが地方自治体の監査委員の監査を変
えていけると考えている。実態として4指標、5指標を間違っていないかチェックをして
いる。
○C
事務局はしている。
○A
私のところは、健全化法が始まる段階で財政から上がってきた書類についてすべてチ
ェックした。工程調書にチェックが入るわけである。職員のチェック能力が上がった。
○石原
○B
B氏のところはどうか。
チェックはしている。従来の指摘型から健全化法ができたときに初めて保証型となっ
た。外郭団体から上がってきた数字を財政がチェックし、それをまた監査事務局でチェッ
クする。しかし、元が間違っていた場合はどうにもならない。外郭団体の段階で外部の公
認会計士にチェックをしてもらえないかと思う。そのときに基準が必要ではないかと思う。
- 62 -
総務省が毎年少しずつ出しているがまだ不十分に感じる。
○石原
どれくらい監査の基準や保証型監査が重要かを自治体の職員に分かってもらうスト
ーリーの中で監査の専門用語を整理してきたいと思う。健全化法監査は、決算4表の作成
と同様に、数字でみることができる。例えば将来負担比率は、それを検証するのに、個別
財務諸表だけでなく連結もみていかなければならない。「他の監査人云々」という専門用
語である。
また、その実質公債費率○%というのは市長の言明であると定義すると、それを検証す
るのに、通常実施すべき監査手続などをオーダーメイドの調査によって証拠を集めていき、
重要性の判断基準を決めてどうかということである。いわゆる通常の監査の考え方によっ
て健全化法監査を進める。内部証拠だけでの証左は決して監査にならない。外部証拠を積
極的に採用し独立性を持って経験ある専門家が見ていくべき。奈良県なら3か所見つかっ
た間違いが中小の自治体なら見つからない恐れもある。北海道は特に中小が危ない。会計
士の職域を増やすわけではないが、健全化法の監査に外部監査をいれていかないと精度が
ないという主張をすればいいのではと思う。
○森田
健全化法から入っていくと、C氏の言うように将来負担比率が 350%でラインがあ
るが、150%だったとすれば、そこにいくまでの間違いがどれほどなら許容されるのかと
いう問題がある。
また、外郭団体の決算書が適切でなかったとしても、その損失補償契約を合わせて 180%
で 350%を超えないのなら重要性に照らし合わせて OK となるのか。健全化法を強く主
張しすぎるとこういう問題に陥る。重要性にいくときに注意が必要である。
○石原
○C
○石原
健全化法で外部監査人が入ってきた場合、C氏はどう考えるか。
うれしいと思う。回らないので。
J氏が試行段階で 100 個以上の間違いがあったと記事化している。ますます財政
状況が悪くなることを考えるとリスクが大きい。重要性の判断基準がある。αリスクなら
いいが、βリスクならダメ。こうした議論ができてはじめてまともな監査の理論に入って
いける。
○C
数字を追いかけているだけが実状である。日本の役所の典型で極めて精緻で複雑で、
- 63 -
考えは優れているが業務のボリュームは考えていない。帳票をつくるのに、最終資料が膨
大になる。
○石原
それは民間でも同じところがある。
○森田
先ほどと逆のことを申し上げるが、総務省で健全化法がつくってチェックリストを
作って自治体に投げたところ、監査委員はこれだけしかチェックしたらダメなのか、とい
う反応があった。監査委員の責任を限定するのかという意見と、これだけチェックしてい
たら監査委員の責任は免れるのか、という意見がでてきた。大多数の自治体の監査に対す
る認識、保証型監査はこんな感じである。健全化法の指標の監査という観点から監査基準
を整理するのは非常にいい事例になると思う。
○A
監査委員を含め事務局はこれを機会に保証型監査に責任感がでてきた。決算審査は現
金決算なので現金収支は毎月例月出納検査と定期監査で出てきた数字を分析的手続によ
って前年度との比較でみていれば、それまでにこなせる。保証型監査の三セクや公社で連
結が入ってきたのでインパクトが大きい。これらには監査委員自ら赴き監査を行うという
手続を踏んでいる。
○B
財政で具体的にどういうところをチェックしたのかをヒアリングしたものを記録し、
手続的な面を重ねて担保をしている。
○石原
内部統制なので、監査人は監査調書に残している。実務が自治体でもあるのなら、
実はこれは・・・と監査の理屈の説明ができる。
○B
○石原
記録を残していかないと不安であるので。
私が最も注目していたのは、C氏が財政健全化法を保証と言うかどうかであった。
保証と言ってもらってありがたい。C・Eの両氏の議論にあった公認政府監査専門職と訳
すのか、これをK氏がまとめをしてもらっているので説明を願う。
○K
【資料2-11
C-GAP の説明】
- 64 -
○石原
各メンバーでご確認を願いたい。残り一つの参考資料も観ていただきたい。本日の
議事はこれで終了したい。発言録の修正は本日中にお願いしたい。次回は1月 30 日(土)
に関西学院大学上ヶ原キャンパスで行いたい。石川部会員に英国の公監査について話をお願
いしたい。
(第2回
<次回研究会までの課題>
・G
地方独立行政法人監査基準
・藤岡部会員
医療法人監査の「指摘」「指導」等の言葉の整理
・石川部会員
Audit Commission の inspection の論文
・F
指摘型、包括外部監査の会計士協会によるガイドライン
- 65 -
研究部会
以上)
資料4 第3回 議事録
日時
平成 22 年1月 30 日(土)
場所
関西学院大学
14 時~17 時
全学共用棟2階
大会議室
<参加者>
出席
19 名
<次第>
研究部会長挨拶
前回発言録の確認
協議事項
1
研究報告(遠藤)
2
Audit Commission の inspection の論文(石川)
3
医療法人監査の「指摘」「指導」等の言葉の整理(藤岡)
4
指摘型、包括外部監査の会計士協会によるガイドライン(F)
5
監査関係規程の体系・実務提要の監査基準(E)
6
その他
<議事内容>
○石原
(研究部会挨拶)監査基準の収集状況の報告、地方行財政検討会議の報告
○遠藤
監査委員、外部監査人の主体別によって監査の種類と審査を含め、地方自治体にお
ける監査についた内容、条文、目的と対象をまとめている。もう一つは、地方独立行政法
人の会計監査の基準について『地方独立行政法人の会計と監査の手引き』NPO 法人日本
公会計支援協会、中央経済社、2004 年 9 月 20 日から、「地方独立行政法人の会計と監
査の手引き」及び「地方独立行政法人に対する会計監査人の監査に係る報告書」の資料を
提供報告する。
○石原
1 枚目の資料は公認会計士近畿会でまとめたものであるが、条文根拠で工事監査は
なぜ「-」なのか。
○A
ない。多分(自治法 199 条の)1 項か2項に入っていると思うが。
- 66 -
○C
直接やってないところも多い。委託している場合が多い。工事の積算及び施工等のコ
ンプライアンスである。検査課がやっていることを再びやっていることが多い。
○石原
内部統制の議論で言うと、内部統制のセクションを作ろうとすれば、工事検査のセ
クションが内部統制の中なのか、監査委員監査の中なのか、あるいは両方なのか、場合に
よっては、財政担当部署にある場合もある。工事監査の現状とあるべき姿を求めたい。
○C
工事監査は謎である。検査をすり抜ければ後は問題がないということがおかしい。検
査課があるのに、さらに書類を作り直してということが分からない。
○石原
合規・合法から VFM まで5目的が自治法2条 14 項にあるが、財務監査・行政監
査と合規・合法、経済・効率・有効とはどう整理すべきか。
○C
財務ではない。積算の間違いと契約の中身が実際と違うということはよく言われてい
る。
○石原
○C
財務監査と言うと、合規・合法なのか。
そう思う。普通は書類しか審査できない。完成した建物に鉄筋が何本入っているとい
うことは、できない。書類上のことである。
○A
財務監査は合規・合法の検査だと思う。研修会の予算があるとして、1 人しか来てい
ないとすれば、その時は「もう少しやり方を考えたらどうか」という有効性の観点から「意
見」をする。定期監査だけではなく、そういったところまで踏み込むことは非常に悩まし
いところである。
○I
財務監査と行政監査の話があったが、大阪府でもこの二つをどこで分けるのかが問題
になった。あいまいである。財務監査はアウトソースすると言うが、どこまでかははっき
りしない。会計士にアウトソースするという点では、会計士法があり行政監査ができるか
という論点がある。1項で財務諸表監査の業務、2項で財務に関連する業務とあるが、こ
れが行政監査ではないという論点もある。
○C
今の包括外部監査が成り立たないが。
- 67 -
○I
実態はそうである。金融庁もあいまいになっている。環境監査、コンプライアンス監
査もあるが、どこが財務に関連するかと言えばグレーゾーンである。行政の仕事をすると
きは、法律に関して厳しくなるのではと感じている。
○A
自治法で行政監査が後から入ってきている。規程が曖昧である。
○C
元々は出納その他の業務であったが、平成3年の改正で行政監査が入り、それ以前は
機関委任事務でも形式が整っていれば何もできなかった。自治体の監査の発展が、1割→
3割→5割で全部と言う形で監査できるようになってきた感じがある。私は両者が区別で
きないと考えている。
○A
1項に財務監査の規程で財務監査がある。普通一般的に経営にかかわる事業と言うと
公営企業と解釈されているが、行政経営と言う観点になってきたら、行政監査となる。こ
の辺りの規程が整理されていない。
○C
199 条の 1 項の経営とは特別会計と企業会計のことである。
○A
なぜ特別会計だけなのか。普通会計でも、経営に関してはあるはずだ。一般会計で各
施設を経営している。そこの監査では、経営状況をみるはずだ。単なる財務執行ではない。
必然である。
○C
抜本改正が必要だ。
○石原
こう変えたらいいと発言してもらえるとありがたい。それでは石川部会員から、英
国監査委員会(Audit Commission、以下 AC)について報告を願う。
○石川
英国地方自治体の監査制度と監査基準と言うことで、前 2 回で出てきた論点につい
て英国ではどうなっているのかについて確認をしていきたい。
・
監査人の独立性
・
誰が監査基準をつくるか。Code of audit practice とその体系
・
専門性
・
内部監査
・
監査のフレームワーク
- 68 -
・
アシュアランス・サービスとコンサルティングの違い
(以上について説明)
○C
英国の監査人は誰が任命するのか。
○石川
AC である。
○石原
外部監査人は AC である。
○西尾
AC が外部監査人を選定し、報酬も決めるとあるが、その選定基準はどうなるのか。
それ自体日本で総務省ならば、その息が掛かっていないのか。
○石川
そういう意見もある。報酬は指摘事項が多ければ翌年の監査の工数と報酬が増える。
○西尾
出来が悪いからか。規模は関係ないのか。
○C
○森田
AC から監査人が巡回に来ると言うイメージではないのか。
15 年ほど前の話ではあるが、基本的には AC が監査を行う。監査リソースも持っ
ている。AC から3分の1か一定量を民間にアウトソースもしていた。アウトソースをし
ていても最終的には AC が責任を持った。監査報酬を決めるのは、日本の自治体では考え
られない。AC の監査は NAO(National Audit Office)がしている。標準の報酬一覧を
AC は作り公表している。AC が自治体に見積りをし、報酬を決める。民間の監査法人も
それをベースに交渉をする。私のイメージでは、今年は民間の監査法人と契約しろという
指示ができるようなものである。
○西尾
アウトソースされた外部者が報告書は出すのか。
○石川
出す。
○西尾
では誰の責任なのか。
○森田
受託した監査人である。
- 69 -
○西尾
つまり、民間の監査法人が自治体と交渉し報酬を決め、監査報告するということだ。
○森田
普通と同じで、昔の経団連のレート表と同じである。
○西尾
一般の私企業と同じである。
○石原
AC の収益構造と個別契約、CPA や CAA の報酬をL氏で報告願う。
○F
アウトソースを監査法人で受けると、自らではなく、AC が示す手続で監査を行うの
か。
○石川
そうである。
○西尾
合意された手続なのか。
○森田
そうではなく、底辺を AC が策定しているということだ。民間と同じで当時の私の
法人のロンドン事務所でも民間の監査と全く同じことをしていた。
○石原
Code of Audit Practice はこの分量なのか。これのさらに詳細なものがあるのか。
○石川
ある。その実務指針は CIPFA が出しているようなものが含まれてくる。
○西尾
財務諸表監査の無限定適正意見は理解できるが、VFM の無限定適正意見とはどう
いうことを表しているのか。何に照らして判断しているのか。
○石原
英語は両方とも unqualified であるが、無限定にこだわる必要はないのでは。4つ
あるうちの2番であるという意味ではないか。主観である。
○西尾
では、その2番を満たすのはどうすればいいのか。主観なのか。
○石川
調査には数値がたくさんある。自治体ごとに改善すべきサービス取り組むべきサー
ビスがありそれを数値化している。ホームレスの対策等々である。ほかと比べてコストを
掛かっているのかそうでないのか等だ。
- 70 -
○C
英国の地方自治制度はかなりユニークである。規格化が進み、法律でも限定列挙であ
る。日本は中央集権とは言うが、規格化が進んでないので何でもやらなければならない。
やることが同じだから比較ができる。
○石川
VFM
Conclusion も定めるべきだと決まったので行っている。CPA もできたこ
ともあるので。
○西尾
C氏の話で思うのは、自治体のやることが決まっていれば、割と客観的なレベルに
なるということは良く分かる。
○石原
CPA と CAA での KLOE についてもL氏で調査願う。
○遠藤
バーミンガムのレポートの例がある。conclusion と opinion が分かれている。ど
のあたりに水準があるのかが分からない。
○石川
文献では、AC の中では Audit と Review の区別はついていないし、保証水準も定
めていない。
○遠藤
監査の結果は、VFM opinion にならないのか。
○森田
それができたのは、Best Value 時の監査報告書ではないか。今日のものは、2008
~09 年に刷新されたのではないか。私が訪問した時は非財務指標の数値の出し方が適正
かという手続を AC がしていた。
○石川
○A
そういったことが積み重ねられてきている。
3E をやるための体制や、手続ができているかという監査と、その結果を評価すると
ころまで行ったのである。
○森田
○A
そうである。数値だけ見て改善提案をしていた。
VFM の評価まで行っているのが、今日分かった。監査の二重責任の原則を押し通せ
ば、本来は「体制があるのか」までであるが、評価するところまではギリギリなのではな
- 71 -
いか。
○森田
英国は完全な地方分権で、横並びで競走して下位に長期間いれば交付税が削られる
という政策でありそれに立脚している。
○石川
現在もそうで、並べている。
○石原
想像で言うが、KLOE は住民サービスで、Use of resources は役所の中の資源利
用なのだろうか。なので、opinion ではなく conclusion なのか。
【休憩】
○石原
藤岡部会員から、医療法人監査の指摘、指導の概念整理を説明願いたい。
○藤岡
病院の運営主体、医療機関について、指摘・指導も含め監査と言う観点から説明を
行う。(資料説明)
○石原
藤岡部会員の発表についても、自治体と関連や参考になる部分が多いので、中間報
告に盛り込んでいきたい。では、F氏の発表をお願いしたい。
○F
某市の包括外部監査について、私が担当していることもあり説明をしたい。包括外部
監査についての説明
保証ではなく指摘型、コンサル業務とも異なる。保証する対象もな
い。簡単なガイドラインもあるが、手続もないし、誰が監査人になるかで結果は異なる。
資格要件に、弁護士や会計士とあるが果たしてそれでいいかという疑問はある。結果と意
見の使い方についても検討の余地がある。
○石原
基本的な点で解決していない問題が多々ある。
○西尾
本来ダメなものを OK したが、付記してダメというケースが昔にあった。これも同
じようなケースなのか。本来言わなければならないことを遠慮するようなことは。
○F
それはない。
- 72 -
○C
それが包括外部監査人の唯一の取り柄である。我々が遠慮することを言ってもらえる
ことである。
○西尾
なら、意見と言わず、結果にすべて持って行くべきだ。
○F
私はそう思う。
○C
扱いが異なる。
○西尾
○F
2つあるのがおかしい。短文の報告書でもないのだから。
たまたま別件を発見した場合は、せっかくだからというのが意見である。合規性とか
3E で分けたり、影響度で分けたりと人によって異なるのがダメというのが私の意見であ
る。
○西尾
○F
○西尾
○F
○西尾
これは、何を結果に述べるとか意見するとかいうことはないのか。
自治法上は、監査をすれば報告をしなさいということだけだ。
それ以外に特に報告すべきものがあればするということか。
そうである。
となると、監査の目的に則して、沿うものは結果にかき、別件は意見と言う考え方
は正しいのではないか。
○伊藤
○F
そうとも言えない部分もあるが
当初は合規性しか触れないということがあった。
○西尾
それ以外に見つけたものは、些細なこと以外は書くべきである。
○伊藤
指摘事項は、重要性の原則が適用される。あれば結果にすべきだ。意見は種類が広
- 73 -
いような気がする。
○A
監査結果としての指摘は、実務では規則違反とか、不法行為は合規性の観点からであ
る。事務改善は、政策評価に踏み込む場合もあり、執行方法の見直しなどは意見である。
○伊藤
福岡県は、指摘事項は二つの重要性があり、高い方が公開公表事項であり、低い方
法を注意事項としている。注意事項は公表されないが、注意事項は当該部署にはインパク
トはある。
○F
合規性と3E、重要性は判断材料になると思う。あと私が意識するのは、措置状況に
ついてであり、可能なものは指摘していくが、具体的な方策のないものは意見でとどめる
場合がある。
○伊藤
一点尋ねたいが、外部監査人の指摘要件を述べていたが、自治体の財務や監査の経
験があるもの以外に何か要件として考えられるか。
○F
公認会計士協会で、外部監査をしている者で意見交換をするが、専門性のレベルの差
は大きい。予算制度、財務の制度を知らない場合もある。資格のみでなく、プラス必要だ
と思う。地元要件もあるが、マイナスである。幅広く持つべきである。
○西尾
会計士協会の1人としては大賛成である。資格要件を整備すべきだ。地元要件も間
違いだ。
○F
誰も受けないから、受けたという話になってしまう。
○西尾
公認会計士の地位向上にもよくない。
○森田
この制度は、監査人に何の責任もないので変な監査をして、報告書が出ても首長が
責任を負わなければならない。監査人を選んだ担保が要るとなると、地域会と言うことに
なる。逆に言うと、首長の意識改革が必要と言うわけだ。
○C
措置報告で意見は対象になるのか。
- 74 -
○F
対象ではない。
○C
となると、実現可能性がなくてもいいとなり、言いっぱなしになる。
○西尾
なので、意見はやめて、すべて結果にすべきである。即応できないことは、時間が
かかるという風に回答できるようにすればいい。
○C
措置報告はやった時だけすればという解釈がまかり通っている。
○F
制度上は、監査人の結果に措置をしなければならないし、すれば報告しなさいという
ことになっている。
○西尾
措置をしなければ、結果に何を書いてもいいわけだ。
○森田
ただ公表されるので、別のところから指摘を受けることがある。
○西尾
できない理由を言わないと肝心なことが進まない。
○F
監査人は制度の上に立って意見を述べるが、それに対して措置をするが、フォローア
ップする仕組みはない。包括外部監査に見合う制度がない。
○西尾
○C
結論に書くべきことを、できないので意見にすると全く責任がなくなる。
90 年代半ばの公金に関する不正事件の頃を受けての制度である。監査委員事務局か
らすると、何でも言ってもらえるところがいいところであるが、踏み込みが甘い場合があ
る。
○F
○西尾
○F
監査人の責任が不明確だと、品質が保てない。監査人の意識にかかっている。
現状では金をかけてする制度ではない。
制度として完結してない。
- 75 -
○C
○石原
○C
○石原
○C
○伊藤
外部監査をすると交付税が単位費用で措置されるということもある。
措置を行うというのは、どこに条文があるのか。
199条の第12項である。
主語は何か。
首長である。首長が措置をして監査委員が報告する。
先ほどのフォローアップの件であるが、翌年の監査人の監査で措置状況を注意する
ということで私たちはやっている。
○A
私のところも同じである。
○C
最近は、しないと決めた場合も報告公表自治体が増えてきている。
○石原
○C
○石原
12 条について、監査委員に報告するが、前に議会が入った場合どうなるのか。
議会に報告するのか。
議会に報告義務があると、包括外部監査でやったことが、システムとして生きてく
るのではないか。
○C
現状の報告義務は緩い。しなかった場合の理由を説明する定義が必要である。
○F
監査報告書は、首長、議長監査委員に提出される。
○D
まず、首長、そのあとすぐに議長と副議長、それから監査委員に。セレモニー的では
あるが。一度にやる。
○石原
監査委員と包括外部監査人の位置関係が分からない。法律改正するなら、首長は議
会に報告といった風に持って行くべきである。
- 76 -
○森田
毎年度措置状況について議会に報告しなければならないとすべきである。現状では、
多くの自治体で、過去の指摘事項のフォローアップをテーマにし監査すればいいので、そ
ういうところが多い。
○C
○石原
○C
○石原
事務局でできないものをしてもらう。
監査委員が監査して、首長と議会に出すが、その報告は。
監査人に帰ってくる。
そこを改善すべきではないだろうか。
○F
言いたいけど言えないことは、3E が言いにくいのか。
○C
制度的に大きなもの、政治的に因習化されないものは言えない。課長レベルで言える
ことは言う。自分がその立場でできることは言う。
○石原
監査委員をゼロベースで見直すという関係者もいるが、どう機能すればいいのか。
だれが責任を持つのか、監査委員ががんばっても首長が買えないと無理で、圧力を与えら
れるのは議会だけである。
○森田
監査委員を議会の機関とすべきである。
○C
もしくは、ボードに入るべきである。
○A
ボードに入れない。庁議にはいれないので責任も持てない。
○石原
○C
取締役会は民間であるが、庁議は法的機関ではない。
CIO、CFO、COO と首長、監査委員、会計管理者がいれば制度として取締役会はで
きる。資源配分系の局はボードで、実施部隊は状況に応じて入るべきである。
- 77 -
○A
監査委員にもっと責任を取らせるべきだと言うが、ボードにも入ってないのに責任は
取れない。
○C
情報の不足に悩んで、実態が分からないというが、監査すればどこの局が傷んでいる
かは分かる。その情報は共有すべきである。
○石原
E氏から監査関係規程の体系・実務提要の監査基準等について資料を提出してもら
っているので報告を願う。
○E
(監査関係規程の体系・実務提要の監査基準について、実状に合わせて説明)
○西尾
任意のグループで作成した実務提要が流通している状況である。
○C
昔は行政実例追加して載せていたが、分権法以降なくなった。
○A
東京都の監査基準は載っているのか。
○石原
見てみたい。
特に質問はないか。なければ今回はこれで終了したい。(事務連絡後、終了)
(第3回
<次回研究会階までの課題>
・事務局
Audit Commission の収益構造、監査報酬、CAA の KLOE
- 78 -
研究部会
以上)
資料5 第4回 議事録
日時
平成 22 年8月7日(土)
場所
関西学院大学
12時~14時
全学共用棟2階
会議室1
<参加者>
出席
12名
<次第>
研究部会長挨拶
協議事項
1 中間報告書(案)
2 地方自治体抜本改正に向けての基本的な考え方(総務省報道資料)
3 監査制度の見直しの方向性について(たたき台)
4 その他
<議事内容>
○石原
学会が 10~11 月にかけてあり、それに向けて今日は 4 回目の協議をわずかな時間
であるが行いたい。この研究部会の議論をまとめたものを資料1、6 月 22 日地方行財政
検討会議での「地方自治法抜本改正の基本的な考え方」を資料2、7 月 22 日のものを資
料3とし、これらの前に先生方で役割分担をし、2枚程度執筆いただきたいと考えている。
また、本日お配りしている資料1、実名を出しているのでどうするかなどを相談させて
もらいたい。資料2については総務省のサイトからもダウンロードができる。監査に関連
する部分が、全体 15 ページのうち 6 ページ程度監査に関する論点整理である。資料3は
「地方自治監査制度の見直しの方向性」で、これはたたき台であるが作成段階でも私はか
かわっていない。見直し案1~3それぞれについての説明がある。見直し案1はほぼすべ
てを外部にやってもらうもの、見直し案 2 は内部監査役の設置し現行の機能を移し、決算
審査と例月出納検査について外部の監査人に保証してもらうものである。大規模な自治体
が対象である。見直し案3は規模の小さな団体は、英国地方自治体監査委員会をイメージ
した共同監査機構を設置しようというものだ。包括外部監査は廃止としている。ここまで
の3案について今まで意見交換をし、都道府県、市、町村の監査委員協議会でそれぞれ意
見が集約されているところである。8 月末くらいには発表されるのだろう。どの方向へ行
こうとも我々学会としては指針が必要であるのには変わりない。既存の協議会などで作ら
れている指針をオープンにしてもらい、部分的には保証型監査もいれてもらいたい。地域
- 79 -
主権を進めるには、委譲された権限と財源を、プロセス責任で透明性を高め、結果責任で
アカウンタビリティを果たし、監査を受けてガバナンスを効かす。監査は縁の下の力持ち
であるということである。以上のことについてご意見をいただきたい。
○森田
叩き台が出る前にヒアリングをしたようだが、私の意見はうまく理解されていない
ようだ。制度論でいうと、大規模な市と中小規模の自治体を分けて話をしているが、一緒
になっている。今までやってなかったところに何かをやらせるのか、今までちゃんとやっ
ていたところに整理をしてやらせるのかでは全然異なるのではないか。今まで金をかけて
やっていたところとそうでないところも然りである。第 3 案は誰が金を出すのか、国であ
れば国が監査することになる。この組織のガバナンスはどうなるのか。公選が当然であろ
う。負担金はどうするのか、もらうとすれば、金があるのなら第 2 案でいいのではないか
と考える。お金を使うという意味では同じである。今機能していない監査委員の制度に金
をつけるのかどうかである。決算審査は保証型なので外部に出すのは正しいと思うが、財
政の継続性を監査法人がするのは可能なのかという思いもある。
○吉見
この3案は並立なのか。
○石原
そういうことではない。組み合わせも可能である。
○吉見
英国型の仕組みをモデルにしている。今の監査委員を全てまとめて内部監査役にす
る、都道府県とその傘下にある市町村の監査委員をまとめるとすると、数十名から 100
名を超える。今でも結構な金額がかかっている。
○石原
総務省のデータでは監査委員の人件費だけで 430 億円程度あるという。ACなら1
億ポンド程度である。政府の組織にはできないので、地方公共団体金融機構のような組織
になるだろう。そこに監査委員や事務局職員を出向や移籍という形をとるというイメージ
である。
○吉見
当初は、自分の町の監査委員が出向しているので、監査してもらうということか。
○石原
それを避けようというわけである。
○吉見
機構がひとつになれば出向などがあり得ると言うことか。共同組織と監査法人でも
- 80 -
どちらでもOKとすれば、入札にかけて良い方をとることができるということをイメージ
する。
○石原
最終的にはそうである。そこまでイメージした議論はまだできない。監査委員は
4,300 人そのうち 2,300 人が議選である。先日の分科会では政務官は小さな問題だとお
っしゃっていた。名古屋や阿久根では二元代表制が問題になっている。この制度化では執
行側に立ち入ってはならないことになる。議会軽視ではなく、議選の監査人も専門性がな
いのは認める議員もいる。議会として対応すべきである。常任委員会で監査委員会をつく
るのもひとつの方法であろう。監査委員は執行機関である。
○森田
議会の監視機能と監査の機能のすみ分けが必要ではないか。監視機能を重要と言う
のなら、議会から監査に資源のシフトを行なうべきである。こういった議論の整理が必要
である。
○石川
森田氏の言うとおり共同組織ができた場合、どのようなお金の流れになるのかが納
得を得られるのかが疑問であり、監査をやっているところとやっていないところでは損得
がでてこないか。こういう制度になってほしいと希望はしている。
○石原
お金の問題は、関心がなかったのであるが、大変な問題である。
○森田
お金を集めてやるので、「なぜ、うちばかりきつい監査をするのか。」ということ
がないようにどう担保するのか。金融機構の場合は国の仕事を代行していると思う。国の
整理では、全国はアドバイザリー式、中小は共同設置が良いと思うが、これとて難しいの
ではないかと考える。共同機関そのものの方法である。
○石原
共同機関をサポートする全国組織の設置というのは金もかからないのでいいのでは
ないか。研修機構と言うのは合意できそうだ。
○F
○石原
○F
自治体の包括外部監査を行なってきたが、本当になくなっていいかという気がする。
名前は変わり形態も変わるが監査は全て強化の方向である。
以前C氏が発言した保証型監査の自治体への導入への是非については、納得いくとこ
- 81 -
ろである。単に保証型でいいのか、必要なのは指摘指導型が求められているのではないか。
保証型メインでも色々言える位置づけが必要である。
○石原
監査を知らない人は報告書1枚をみて疑問を言うが、指摘も業務の一つであろう。
決算審査、健全化指標などは保証型だ。最小の経費で最大の効果は指摘であろう。財務 4
表までは保証型で行なうべきだ。
○F
監査をする立場で言うと対象をはっきりとさせてほしい。今の制度が変わることにつ
いての資料ではあるが、監査対象については資料に物足りなさを感じる。
○石原
監査対象や監査要点は私どもには当たり前であるが、難しい。
○森田
私の知っている自治体の監査部門ではなぜ今監査の議論をするのかということを言
っている。不適正経理と夕張の粉飾決算について、監査が機能していないと言うが、国の
補助金の問題点の方が先で、夕張には別の問題もあるだろう。それらのあとに監査や内部
統制があるのではないかと考えている。監査を変えるならこれらの問題は関係ないだろう
し、自治体の監査担当部局協力も得られないのではないか。
○石原
その通りである。夕張と補助金に関して、「私たちは真面目にやっているので、夕
張や補助金は関係ない。」と答えられれば、返す言葉がない。
○森田
この部分を正せば問題が解決するなら、監査委員はやっていられない。
○吉見
企業会計の制度改正もこのパターンが多い。品質保証も然り。内部統制もそうだ。
変な理由づけがあり、ほとんどの会社がエンロンや足利銀行をやっていたわけでない。
○F
○吉見
包括外部監査もカラ出張が発端である。枕詞になっている。
どうしてもきっかけになってしまう。制度を変える時は仕方がないのか、それがな
いと変わらない。
○F
関係がないと言えないというのが片方ではあるからだ。
- 82 -
○吉見
○F
違うと言っても現に出たではないかということだ。
夕張と補助金不適正経理はお決まりで仕方がないとしても、こういった監査制度を導
入する、行なうことでこれらがなくなるんですねと回答されてないことが問題である。
○吉見
企業会計でも今まで色々書いてきたが、変わらない面はある。むしろ不正はどんど
ん起こる。
○F
職員や住民への効果を説明すべきだ。監査能力が低いので専門家にやらせるだけでは
マイナーチェンジにしか見えない。
○吉見
制度を変える背景は、基準設定の力関係の変更がある。専門職から権限が取られて
いく傾向にある。米国が常にそうである。監査人から取られていく。第三者機関と言う政
府の息がかかったところに取られる。今回の基準設定でも自治体が持つのか、監査人か、
総務省かということが問題である。今まで法律に基づいてやっていたのであるが、そうで
なくなるだろう。市町村や都道府県でなく遠いところになるのではないか。
○森田
包括外部監査のカラ出張がそうであったように、屋上屋を重ねるという批判を今回
は活かさないとだめだ。制度導入で問題が改善されるのか。包括外部監査人の責任って何
か問われた。
○石原
○F
責任は重い。
包括外部監査で非常に効果が上がったものもある。制度として見た場合、措置してい
くのが誰かという全体設計がなかった。措置状況のモニタリング機能がない。
○石川
決算審査でもそうであるが、後がどうなのかという点が立ち消えになる。包括外部
監査人に権限を与えないと監査が終わればすべて終わりになっている。
○石原
監査人の責任と権限の明文化は必要と私も考えている。それと、地方公共団体の長
は内部統制に責任があると規定には絶対にはいる。なので、そういう意味でプロでないや
りたくない人が増えることを願っている。
では、部会としての基本的な考えとして見直し案と監査制度の現状と課題を斟酌し、監
- 83 -
査人の責任と権限の規定、個々の監査人の専門性・適格性を向上させる全国的な組織の設
立については賛同し、夕張と補助金の不適正経理が改革の発端と言うことではなく、自治
法を抜本的に改正すると言う観点で、監査の部分には我々の考えではまだ不足する部分が
あると言及するということでまとめようと思うが了解いただけないか。そういった感じで
皆さんの立場で思うところを、それぞれの分野でまとめたものを送っていただけないか。
○吉見
外部監査人と言った場合、イメージとして監査法人があるが、それ以外今の外部監
査人の規定にあるように専門家として弁護士や税理士などがあったが、そこは問題がない
のか。
○石原
論点には入っていないが、地方監査士と言う資格を設定することに関しては、地方
6団体の反対はないということは聞いている。国家資格でなく技能資格で設ければいいと
している。
○吉見
会計士であってもそれを取らなければならないのか。
○森田
それには反対をする。
○吉見
環境省が、環境監査士つくるのと同じ発想である。省庁ごとに作る必要はないので
はないか。監査をするのは会計専門職が一本でするということにしないと。
○遠藤
技能試験と言うものの、協会としても相当の反対があるだろう。
○森田
包括外部監査を選任する場合も、会計士協会の全国研修を受けた事という条件を付
けた自治体があった。
○吉見
それは専門職の内部でやっていることなので構わないが、省庁ごとにつくることに
意味が感じられない。
○F
その試験は、どんな会計士でもできるというわけにいかないので差をつけるという意
味の理解でいいか。
○石原
幾分かはそうである。監査のすそ野を広げたいという願いがある。
- 84 -
○F
監査の現状として、民間の監査業務が取れないので公的機関の監査業務が取り合いと
なり、コンサルなら一定の金額が取れるのに、監査なら途端に値がとれなくなっている。
2年間で半額ほどになっている。保証の方が、業務量が多いのにも関わらずである。コン
サルは能力重視だからである。保証業務はなし崩しになっている。
○森田
○F
○森田
○F
○吉見
監査共同機関を設置する上で一番重要なことは、報酬規定をつくることではないか。
報酬も大事であるが、報酬に見合った仕事をするということだ。
共同機関に品質チェックの機能を持たせればとんでもない権限となる。
監査報告書が紙だけで値打ちがないからである。
自治体だけでなく、公的機関にしても監査の報酬は支払うが、監査もほしいが、コ
ンサルの機能もほしいという要求が強い。監査のサービスは報告書1枚であるが、その過
程をどう見ているかについては理解されていない。民間は資金調達の問題もあるので理解
されている。監査法人は監査をすることで情報を豊富に得るので、原価割れであってもト
ータルで元が取れる。他の所でアドバイザリーサービスとして役に立つのである。このた
めにコンサルは値が下がらないと考えている。
○森田
勉強するきっかけとして何ら反対はしないのであるが、それがないと監査ができな
いということでは話にならない。
○石原
地方に会計士がないところでは、どうするかという問題もある。実際に監査委員が
監査をしている。適格性がない人が監査するのはやはりおかしいので、やはり能力アップ
してもらって資格は取るべきだ。それがないとできないというのは厳しいと認識するとこ
ろなので、持っていることが望ましいというところだろうか。
○森田
前の話に戻すと、会計士協会や監査法人が何に金を使っているかと言うと品質管理
である。新しい制度をつくるとそこにも金を使う必要がある。
○石原
それは共同機構で受益者負担をしてもらえばいいのではないか。
- 85 -
○森田
原資は自治体となるがいいのか。
○石原
そうなるのであるが、監査部門だけでなく、自腹で勉強に行って欲しい。
○森田
保証型の監査を行う制度をつくると、誰が品質管理するのかということになる。公
認会計士協会で限定してもらえれば、協会で行えるが、無理ということになると、金融庁
か、総務省になるのかということを考えていなければならない。独法監査は誰が品質管理
をしていいか整理できていない状態であり、それに不満を示しているのが会計検査院であ
る。制度設計が肝心である。
○石原
今の監査委員が行なう決算審査なんて、何の品質管理もないということだ。国にし
てもらう方がいいのだろうか。
○F
保証業務の品質管理をするのなら、会計士でも、税理士でも弁護士でもいいですよと
いうことにはならない。
○吉見
北海道道東地区は網走に会計士が1人いるだけである。北見市に数人、旭川までい
かなければならない。網走の会計士が全てするのかというのは無理な話である。
○森田
○F
○吉見
○F
○石原
○F
○石原
協会の青森県部会のメンバーも10人である。
地方でやっているメンバーとの話では、ひどいものがでることが多い。
一定規模以下の市町村については別途資格でいいとする妥協案もある。
監査法人しかするところがないという意見が多くを占める。
なので全国組織が必要と考えている。
個人でもできることが問題なのだ。
監査は、組織ですることを今回は規定することにしている。個人契約はないように
する。
- 86 -
○吉見
小さな町村では、決算額は監査法人から見れば中小企業レベルである。
○石原
昔、中小会社監査基準があったが、小規模と言っても公金で厳しい。首長の全体統
制がしっかりしていれば、スモール・オーディットでかまわないが、保証水準とは同じで
ないとならない。
○吉見
一番小さいところでは労働組合の監査なのでは。最低のところで20万円程度だそ
うである。現金監査だけである。会計士が行なうところでは最も小さいのではないか。も
う少し大きいところでは幼稚園ではないか。
○F
今は個人でしか契約できないところが問題であって、監査法人か個人がいいと思う。
小規模町村は個人でもいいが、政令市は個人でやるのはどう考えてもおかしいだろう。
○吉見
税理士や弁護士もいいとなると、変な話であるが自治体によってはバランスを考え
る。4つ資格があれば4つで回そうとする。弁護士の順になると意見が出ないので、両方
持っている人がいないか探すのである。税理士の順になると、税理士という名目で会計士
を探すのである。
○遠藤
包括外部監査は保証型ではないとしている。財務諸表監査や保証型監査となるとそ
れなりの体制が必要で、弁護士がする包括外部監査を我々は監査とは思ってない。土台も
主体も異なる。ごっちゃにしてもらいたくない。事前事後のシステム、チェック体制がな
いとだめである。
○吉見
資料の図では外部監査人から線が延びているので、それこそ弁護士も含めて包括外
部監査の監査人がそのままできると解釈されてしまう。包括外部監査は保証型の監査では
なく、包括外部「監査」なのである。資格要件も合ってしまう危惧がある。
- 87 -
○F
責任と権限の明確化については賛成とするが、保証型をする以上これは当然である。
条件として付けたいのは、責任の範囲と保証水準も明確にしてほしい。監査の範囲が財務
諸表や決算書であれば自ずと答えが出ないか。弁護士が合規性をみるというのなら会計士
は、そこから手を引く必要がある。包括外部監査は、監査ではないので多様な人から意見
を聞くということでいい。保証になった時点で全く変わる。
○石原
協会のPTで監査は会計士の専権事項であるということを早く訴える必要があるの
ではないか。
○森田
外部監査に関して、総務省は会計士でないとできないという認識を持っていいたと
思うが。あと自治法の抜本改正で大切と思っていることがあるが、例えば青ヶ島村のよう
な小さな市町村にBSが必要か。そんなものは必要ないのではないか。そうなると大規模
な市町村と同じ権限でいいのかということにもなる。東京都の直轄の部分を大きくして、
都の指導を仰ぎながら、監査も必要ないということにしてはどうか。義務と権限をセット
して再設計をやらないといけない。監査委員が2名いて、総務課が事務局を兼務していて
一応していることになっているようなところでは、監査をなくして県がここまで立ち入る
といった風にすべきである。そうでないと町村問題は解決しない。
○石川
英国もパリッシュがそうで別にしている。
○石原
中小は一方で地域主権である。合併できないところもあって、簡易監査や中小団体
の配慮は難しい。パリッシュは、公的性格が薄い。
○森田
いま権限を持っているところから奪うのは難しい。1800ある自治体のうち、半
分くらいはこの問題が当てはまるであろう。
○石原
JICPAとの連携を意識するのは必然である一方で、公認会計士協会に任せて本
当に大丈夫かというリスクもある。中小自治体に対応できるか、報酬、品質の問題がある。
会計士協会は金融庁が所管省庁である。総務省ではない。会計士協会は総務省になかなか
向いてくれてない。会計士協会がするのは理論ではそうなのであるが、どうすると皆が納
得するか、そう思うと私の考えた結果が資格だったのである。
- 88 -
○石川
責任と権限の明確化で言うと、今の監査委員制度に罰則はあるのか。
○石原
全くない。
○石川
罰則を設けると言うことなのか、そうであれば、その資格程度でいいのか。
○森田
法制化の議論となると国との整合性がでてくる。公会計論のときもそうであったが、
では会計検査院が何か責任を負うことがあるのかと言えば全くない。保証型はやっていな
いが。
○F
ゼロから1か2になる監査であって、やらないよりましという監査だからである。1
0あって10を目指しましょう、クリアしましょうという監査ではない。10に不足すれ
ば罰則である。
○石原
監査の見直し機運があるこの時期に、皆さんの後押しを得たい。監査をする専門的
職業は公認会計士しかいないという強い意見がある中で、他の監査主体に関しては慎重な
議論が必要としていいと思う。
○遠藤
これは1~3案で外部監査人がどこまでやりますかという議論とリンクしており、
保証型は財務諸表監査で、民間だと会計士だということで品質管理も行い機能をしている
と思っている。
○石原
中小やお金の問題とか、品質管理で、行政を知らない会計士が行ってBSもないの
かということにならないようにすべきである。
○遠藤
片や包括外部監査がなくなる方向で協会として効用を整理しようと思っているが、
包括外部監査で3Eの観点で指導性を十分に発揮したように、外部監査人は保証型だけど
プラスアルファで3Eもあるという観点で監査するのか。
○石原
今のところ、見直し案2ではそこまでは求めていない。
○森田
見直し案2のスライドの5ページのところで、外部監査人が行なう監査に決算審査
があるが、公営企業も全て行なうことになっている。外郭団体もある。
- 89 -
○石原
今の監査委員がやっていることである。
○森田
ということは財政援助団体もと言うことになる。この目的もはっきりしない。
○石原
別のペーパーで、長が監査することになる。
○森田
健全化審査になると、ここが絡んでくる。
○石原
そこが、総務省のロジックは内部統制である。
○森田
内部統制が機能しているかどうかは監査人の判断であって総務省の判断ではない。
となると、また金の話にもどるのであるが、こんな膨大な作業に少ない費用では対応でき
ない。
○石原
町村で監査事務局職員は平均で0.4人である。800万円/人として320万円
である。なので、委員の皆さんにこの案について、ここは賛成、ここは反対とその理由も
付して私にもらってまとめようと思う。総務省もここでの議論を評価している。
○森田
では総務省のいう基準は民間で言うところの地方自治体版で、保証型なのか
○石原
ゼロベースである。できれば20日までにまとめてもらえるか。
○森田
一番主張してもらいたいのは議会との役割分担である。地方議員の定数を半分にし
て監査に回すとかだ。議会議員が町村なら300万円として、定数が10とすれば、5名
分で1500万円となり、これなら人口1万人未満でも監査ができる水準である。
○石原
二元代表制を主張する議選の組織に向かって言うのは厳しいところである。
○森田
しかし、議会の責任のほとんどが監査に向くので、政策に集中できるのではないか。
○石原
では、次回の中間報告(最終)に向けての会議は、梅田で、13時~17時で行う。
学会は、30日~31日である。8月の盆明けにでも、それぞれの先生方からこの案に対
し書ける分野をいただき、副会長と相談したうえで体系化し皆さんに返すという形を取る。
- 90 -
資料6 第5回 議事録
日時
平成 22 年9月 18 日(土)
場所
関西学院大学
13時~17時
梅田キャンパス 1005教室
<参加者>
出席
19名
<次第>
研究部会長挨拶
協議事項
1 第4回研究会発言録の確認
2 中間報告書作成にむけて
3 その他
<議事内容>
○石原
本日は、これまで皆さんにご参加いただきました4回分の議論を整理させていただ
いており、議事録については30ページ以降にある。後ほどご報告をさせていただく中間報
告書の中身をご確認いただき、お気づきの点をこちらまでご連絡ください。
中間報告書を一枚捲っていただくと目次があり、次に当研究の目的として述べているのは、
この部会が監査基準の設定、監査制度のあり方に関する議論を通じて、それらの諸問題につ
いて調査研究を図るものである。けれども、どういった社会制度という前提のもとで監査が
明確にならなければ、当然、その基準の議論もなかなかうまく軸を合わすことができない。
このような問題から中間報告にあたるこの1年間では、地方自治体の現行の監査制度、実務
を含めて、大所高所から様々な意見の交換をしていき、明確に定めるわけではないが、部会
のメンバーの中でおおよその地方自治体監査のあるべき姿についての共通認識を把握し、そ
れに基づき監査基準のあり方について前程していく。研究の進め方については、研究会とメ
ーリングリストで行う。3ページのロードマップでは、来年も含めた2年間の地方自治体の
監査基準の策定に向っての歩みである。一言でいえば、この中間報告で論点抽出から論点整
理まで、おおよそ進んだという認識である。4ページで部会の名前で踏襲させていただいて
おり、ここについては、先ほど申し上げたように簡素になっている。7ページでは、本部会
の写真が掲載している。
具体的な中身の方に入るが本日、皆さん方に議論していただくのは、これまで議論された
整理ということで8ページの親和図(図表3)についてE氏に説明していただき、9~13
- 91 -
ページへと、皆さん方からご意見いただく内容を踏まえて、中間報告書として確定し10月
の学会に備えるという段取りである。
皆さん方にこの中間報告書のまとめ方について、色々とアドバイスをいただければと思
っている。9月末の公会計の研究会について、森田氏の方からご説明いただいてもいいか
と思うが。
○森田
新聞報道にも出たが、9月末あたりに「今後の新地方公会計の推進に関する研究会」
が発足する予定である。
○J
公会計に関する研究会を開くことだけは、以前から決まっていた。公会計のモデルを
何も統一するということを決めているわけではないが、いろんな東京都知事の話題に対し
て何か対応しないといけないだろうという意思決定である。今の審議官はわりと国際公会
計基準を尊重したいという意向を持っているようである。そこをうまくやっていこうとい
うことのようである。
○森田
当研究会が IPSAS に統一するための研究会ではないことは確かである。IPSAS の
議論も行う研究ではある。
○C
現行の予算書、決算書が分かりにくく、役にも立っていないというのは顕然たる事実
です。どの自治体においても、一部の優れた自治体を除いては、議会に提出される予算書
は全く役に立たない代物になっている。これは会計制度とは全く別の話で、分かりにくい
予算書の結果である費用決算書も当然として分かりにくく、意味のある数字が並んでいな
い。款・項・目・節といった区分で整理してあり、予算は全く意味のない数字である。
決算書に記載されている一例として、広報費で新聞を作って100万円、パンフレット
作って50万円、それを足して150万円といった数字は、ほとんど意味がない。自治法、
施行令、施行規則を改正して、分かりやすい予算書・決算書を作るように改正すればいい
と思う。現行の決算書が機能しないことと会計制度はほとんど関係ない。
現金主義の方が、近代的で役に立つ会計制度であることは当然である。複式簿記でキャ
ッシュフロー計算書と予算書ぐらい作れるとは思う。しかし、その後の対議会との歪んだ
関係を整理しなければ、分かりやすい決算書、機能する会計ができない。
○石原
そういった意見を研究会で言っていただく必要がある。会計士側の立場で自制的に
ものを言うとしたら、現金主義について思い込みの強い人も多くいる。
- 92 -
○J
しかし、それをするには、市で住民に現金主義で決算をすごく分かりやすく示してい
るという事例がないと説得力を持たない。
○石原
悪い意味ではないが、自治体職員の一部のメーリングリストの中では、それをやっ
ていると自負している人が実際に多い。
複式簿記を導入していても粉飾決算は沢山ある。複式簿記でも粉飾決算は行われるのは
会計の問題ではないということを言っていかなければならない。監査の問題である。
○C
それについて現金主義支持者の立場から言わせていただくと、現金主義では粉飾し難
い。問題になるような粉飾決算は、戦後50年間、3,000もの自治体が50年間、決算
をやってきて、問題になるような粉飾決算は少ない。この発生頻度少なさは、現金主義の
利点である。
○森田
現金主義が粉飾を防げるのは、現金の範囲の粉飾決算だけで、物品などの現物の粉
飾決算については、行われているかどうかも分からないというのが現状ではないか。
○A
自治体では、資産・負債をストックレベルで考えることが今までなかった。そこから
考えていくということが重要であり、そういう意味ではどうしても複式簿記・発生主義を
選択せざるを得ない。決算4表作成で、最も重要なのは、付属明細を作ることである。資
産の明細が役所にはない。物的管理だけで、そこに金額表示がない。
○C
新しくものを作っていくことが困難になって、税収が先細りする時代には既存のもの
を大切にしていくことが大事で、ストック管理がこんなに弱くては問題である。何がある
かということすら分からないというレベルの自治体が多い。年に一度、棚卸しを行うこと
は重要である。
○A
今年、監査事務局では、はじめて水道局の棚卸しに実際立ち会った。今までは、それ
さえしていなかった。
○森田
東京都では手間をかけずに自動仕訳で発生主義の複式簿記ができると言われる。し
かし、現金主義のデータを借方・貸方に並べたら、複式簿記にはなるが、発生主義になる
かどうかは全く分からない。費用収益と資産の認識をいつやるのかということをきちんと
整理しないといけない。東京都では IPSAS に準拠していると言うが、発生主義になってい
- 93 -
るかというとなってはいないところが沢山ある。棚卸資産についても、購入費用処理なの
か、きちんと棚卸しをして使用時費用処理なのか不明である。そう考えると自治体の中で、
現行の事務手続の仕組みを全部、発生主義に基づくデータが取れるかどうかを検証しなが
ら、全部をやり直ししなければいけないことになる。それはそう簡単にできるような話で
はない。まさに会計だけの話ではないし、仕事そのもののやり方を全部やり直すことにな
る。
○C
日本の自治体は、政府が海外の株式市場に上場する必要がないわけなので、国際基準
に合わせる基本的な動機づけがない。納税者にわかりやすければよい。政策決定者、ステ
ークホルダーにきちんとした財務情報が伝達できればよいのであって、それが日本流であ
っても何ら問題ないはず。
○石原
公募債を発行している自治体では、引受先金融機関で、外国人株主が多いところも
あり、国内基準でいいとは言えない。国債よりわずかだけよい利回りの地方債をいつまで
も銀行は買わない。銀行の株主からすると、保証もあるので実質ゼロリスクであるものの、
ローリスクー・ローリターンよりもハイリスクー・ハイリターンの商品をポートフォリオ
に組み入れたいという意向もある。
ここ数年で発行している地方債の引受の6割は、民間金融機関であり、公的機関や金融
公庫の引き受けは3割を切っている。民間金融機関に地方債を買ってもらえなければ、自
治体は借金ができないというところまできている。銀行に投資している外国人のポートフ
ォリオの観点からすると、外国の債券を買うときは IPSAS であり、ドメスティックなスタ
ンダードでは話にならない。
○森田
そもそもデェフォルトリスクの問題は、バランスシートの問題ではなく、制度の問
題である。将来税収や将来収入を見越したうえでの投資判断が行われている。そのために
役に立つ財務書類、役に立つ監査とは何かをと言われると、少し違う方向に話になる。
○石原
改定モデルの純資産の部の 3 番「その他一般財源等」のところが、その上の「公共
資産等整備一般財源等」と区分されており、「その他一般財源等」のマイナス分が基本的
に将来収入の構成部分になる。このことは日本の貸借対照表には載っているので、こうい
ったデータを出していかなければならないと言う切り口であって、IPSAS の議論では、そ
れがあるかどうかという問題もある。
- 94 -
○石原
ここから本日の議論の本題に入るが、E氏の方で7ページの3.2から13ページ
までご説明いただく。
○E
(中間報告書(案)に基づいて説明)
○石原
整理させていただいたた内容について、先生方からご指摘があればいただきたい。
この親和図から監査基準が必要だということが分かる。その中で、どういうふうに監査の
あるべき姿を整理していくかということが課題となる。例えば、日本の企業会計審議会が
出しているような監査基準、どちらかというと非常に分量を抑え、実務的なところは
JICPA に委ねるという方法もある。
しかし、沢山のことを文章化していった方がいいというイメージがあり、できれば米国
の監査基準である SAS にみたいに、一般基準、実施基準、報告基準という形で、それぞ
れ番号を付け、数行のパラグラフごとの文言をかなり注意しながら一定の分量になるよう
な監査基準という名前で、日本の地方公共団体の内部、外部の監査のあり方について啓蒙
的に指し示すような文章を、中間報告後に作っていきたい。新年度は既存の自治体の監査
要綱やマニュアルの内容を若干精査し、現行の自治体ができているところを踏まえて、う
まく統合するイメージで、上位基準という形でまとめることができればと思う。SAS のや
り方であれば、後々増すことができる。
その時々にいろんな方々が入ってきていただき、バージョンアップしていただけるよう
な、あまり思い込みに固まった認識に基づいた短い文章の集まったものではなく、どちら
かというとその反対のようなものを作っていければ、皆さん方の知見とか入れていけると
も思う。完璧な完成形というイメージではなく、色々な方々が様々な経験をもって書かれ
た文章をここの全体会議の中で議論したい。
【休憩】
○石原
○A
それでは報告書の中身の議論に入っていきたいと思う。
教科書的な質問になりますが、8ページの親和図の右の方に「監査基準の必要条件」
ということで、「監査には、判断基準と行為基準が必要」となっているが、判断基準は、
一般に認められた会計基準なりで、まさに監査基準のことを言うのではないか。
○石原
ご指摘の通りです。
- 95 -
○A
今後の議論になると思うが、監査対象を明確化ということで、まずは財務監査と準拠
性監査をとりあえず行うことになるのか、あるいは初めから業績監査まで監査範囲を広げ
るのかは大きな課題である。先日の地方行財政検討会議の第二分科会でも、行政監査につ
いては基本的に廃止するという意見も出ていたが、現状から言うと行政監査は財務監査の
中の1つと考えても十分いけるような中身である。行政監査となると業績監査指標や業績
指標がないと具体的な業績監査は非常にし辛いのではないか。そうすると当面は、財務監
査なり、準拠性監査のところにスコープを当ててやっていくのがいいのではないか。
○C
performance
auditing が米国で流行している。アングロサクソンとわが国が一番
違うのは、巨大自治体制度をひいていることである。実際、日本の自治体の仕事は、膨大
でしかも雑然としており、体系化されていない。米国では、監査人が毎年、efforts and
accomplishment(努力と達成)という performance auditing のレポートを出している
市もある。道路管理、下水、公営住宅管理が対象で、生活保護、介護保険、児童虐待はカ
ウンティが行っている。アングロサクソンのようなシンプルな自治制度を前提とした
performance
auditing を日本に導入することは、意味がない。
8ページの「国の制度と整合性が必要」で、これは独立行政法人とかの会計基準をイメ
ージしてやっているのか。国の制度とは何を意味しているのか。
○石原
会計の場合、国の制度との整合性は必要というのは、地方自治法の抜本的改正の中
にも入っている。
○E
○石原
○C
○森田
○C
会計制度とかのイメージだったかと思う。
これは場合によっては省く。
くれぐれも会計検査院制度をお手本にするということは、考えていただきたい。
なぜか。
日本中の地方公務員で、会計検査院を評価する人はいない。会計検査院を検査すると
いう制度がない。会計検査院の検査では、マネジメントの改善にもならない。検査された
側は、一過性で過ぎるのを待っているだけになっている。そういうような監査をしてはい
かんというのが、監査委員事務局の書かれざるルールです。
- 96 -
○石原
見直し案の2を見ると、行政監査が廃止されてるということで、多くの批判がある。
内部監査なり、内部統制の中に3E 的な要素を入れるという図になっているので、もとよ
り内部統制の一環で3E や行政監査的なものを継続することになると思う。
重要なものは、外部からの行政評価、3E 監査はどのようにすればいいと思いますか。
見直し案2では入っていない。なぜこの見直し案の中に外部の3E オーディットが入って
いないかと国に尋ねると、議会の二元代表制の議論が出てきて、結局、米国や英国に比べ
て日本の議会は非常に高コストの議会を持っているという認識で制度設計していきたいと
話されていた。つまり、議会としての明確な役割を前提として議論していかないといけな
い。だから議会も形式上は二元責任でチャックすることになる。監査と議会をうまくすみ
分けをしたいという考えの人が書かれたので、見直し案に抜けていて、行政監査は文章に
出てないが、議会の役割ということで外れているようである。
○森田
私の理解は、業績監査の判断基準、つまり業績が良いか悪いかの判断基準が明確に
なった上での監査である。例えば、英国監査委員会(AC)がやっていたことが近いと思う。
指標がそれよりも悪かったのか良かったのか、ランキングして上位何番目に入っていると
か、入っていないとか、入っていないのならそれはどうだ、といった評価は、外部が行う
と客観性の点で意義がある。本来は、議会が予算や政策決定を行うときの議決に絡む話な
ので、そのような整理が必要である。
○A
実務では、財務監査と業績監査は、はっきりと分けられない。実態から言うと、財務
監査をしながらその中で、業績監査をやっている。多くの自治体では、財務監査と業績監
査を明確に区別できていない。色々な業績に関する判断基準があり、その判断基準に基づ
いてどうなのかということの監査をするのであれば、独立した行政監査という形があり得
ると思う。今、判断基準がない中で、行政監査をどうするかについては、非常に難しい問
題である。
○C
例えば、男女共同参画社会を作るためのワークライフバランスに関する講演会をする
とすれば、100人の箱に10人しか参加がないというのは問題であるが、それはアウト
プットとして測定可能なのでやり易い。それを50人、80人参加があれば成功かという
と色々な議論がある。啓発事業の中止は、ネガティブなメッセージを社会に出してしまう
イメージがある。形式的にやり続けなければならないという性格もある。様々な価値観で
様々な論点を頼って様々な議論があって、それをトータルして有権者に判断してもらうと
しての場として、本来は議会がその機能を果たすべきである。我々は言われたことを、1
- 97 -
00人の箱があって、講演会に100人呼ぶことに努力することだけが役人の仕事である。
それをするかどうかはどちらかというと政策の仕事である。しかし、3E の観点からは外
部の視点が欲しい。合規性監査が容易に行えるのは、白黒がはっきりするからである。し
かし、経済性の問題は、常にグレーである。100人うち50人しか来なかったとしても、
良し悪しの評価ができない。
○A
ご指摘はよく分かるが、その場合、監査論の立場からいって、監査基準を本当に作れ
るのか。
○石原
「指摘」と「業績監査」とはどのような関係か。Performance indicator を用いた
業績監査で数値が、上がったとか下がったとか、そういう議論になる。業績監査を3E の
視点で考えると、経済性と効率性はお金の問題になる。例えば、ベンチマーキングできれ
ばいいが、できないものでも、コストの無駄や財源調達方法の経済性は、数値化できると
思い、「指摘型監査」、つまり「検査」になる。検査という手法と関連付けて整理するこ
とができないかと思っているがどうか。
指摘というとコンプライアンス違反の指摘もあるが、非効率の指摘もある。有効性の議
論は、アウトカムの議論になってくるので、非常に難しくなってくる。施策レベルの業績
監査では、さらに難しくなる。例えばレベルを分けて、事務事業レベルの VFM について
は、事業なのでベンチマーキングや外部監査でチェックできる。しかし、その事業そのも
のをやってよかったかどうかの判断になると、政策的・政治的な判断になってくる。それ
を議会にもっていったらどうかという議論がある。
外部監査を自治法の中に入れることは、前提として議会と外部監査の役割分担を行うよ
うである。
○C
議会に調査機能が必要と思う。議員個人の調査権だけでは不十分と思う。ある程度大
きな自治体では調査課というものを持っていますけど。首長がいやと言っても見に行ける
監査部門みたいなものがあればいいかもしれない。
○吉見
現に進んでいる制度改正の議論があり、そこにこの部会でこれから議論する内容を
持っていくかもしれないので、制度改正の状況はかならずしも無視できない。
少し分からないのは、「今の業績監査をどうするのか」ということ、「IPSAS」のこと
である。
- 98 -
○石川
中間報告書の「4.2
現状の把握」と「4.3
監査の目的・あるべき姿」で「4.
2」は現状からの示唆であり、「4.3」は、海外の状況の示唆であって、必ずしも「4.
2」から「4.3」に移行していない。現状と目的が一致していないように思う。
SAS の件は分かるが、もし、石原部会長の頭の中でこういうものが作りたいと思ってい
るもの、地方自治法の見直しという方向性が本旨にあって、それに基づいて作るというの
であれば、その方向で議論した方がまとまるのではないか。
○石原
その見直しの方向性は変わることがある。当面は、見直しの方向性を意識しなけれ
ばならない。
○吉見
我々ずっと海外の動向を見ながら議論してきたところがあるが、現行の制度の見直
しは、監査制度が海外の制度を参考にしているが、海外のモデルがあってそれを採用する
というものではない。だから、業績監査の位置付けも、現行の制度改正の中の位置付けと
本来のあるべき姿との位置付けは違う。
○石川
私も違うと思う。だから、先ほどの独立性についても少し違ってくるのではないか。
○吉見
業績監査をするなら、監査基準で可能だと思う。監査基準を細かく設計できればそ
れに越したことはないし、設計すべきと言われるが、今の民間を含めた監査というものは、
あまり細かい基準は作っていない。むしろ、もう少し大まかな原則主義で設計しておいて、
後のところは監査人が判断する。先ほどの話ではないが、講習会に何人参加したかも A 市
と B 市で同じ100人募集して50人参加しても A 市では良くて、B 市では駄目だという
こともあり得る。それは様々な条件をもとに監査人がそこで判断をする。
では、監査人はどうやって判断するかというと、IFRS であれば今までの様々な経験があ
って、海外などの監査法人の実例を聞きながら判断している。日本でやる場合、協会あた
りがまとめて事例を出してやっていかなければならない。いろんな事例が積み重なって、
開示されて判断がなされていくことになる。
○C
行政監査は、平成3年の自治法改正で認められた新しい制度である。2000年の自
治法改正までの機関委任事務が廃止になるまで、機関委任事務については行政監査の対象
ではなかった。例えば、生活保護の不正受給かどうかに関することも、機関委任事務であ
るから監査できない。機関委任事務についての支給方法や財務事務の処理方法の正確さに
ついてのみ監査できるものであった。
- 99 -
さらに平成3年までは、制度とか職員の配置であるとか、条例・規則のあり方、お金に
直接関係ないことは一切監査してはいけないという運用であった。様々な監査制度の本来
の目的は、コンプライアンスの次には効率性があるので、役所の組織が効率的に動いてい
るかということを監査しなくていいはずがない。
役所は、民間と違って日常茶飯事なところで無駄が生じるので、その無駄をいかに歯止
めするかが監査の大きな使命である。役所の仕事が多様で雑多であるために、基準が非常
に作りにくいため、簡単なところからやっていって、難しいところに迫っていくというア
プローチが正しいのではないか。
○吉見
行政監査を業績監査から外す、あるいは、現に進んでいる制度改正に沿った形でこ
ういう議論があるから議論から外すかである。
○C
監査の名称は問題ではない。財務監査と行政監査とに分けること自体が、実益のない
議論である。
○吉見
会計士側からするとそこは、保証型監査というように外面的には明確となる。これ
は行政監査で次は財務監査ということには絶対にならない。並行して行っているのは間違
いないが、監査意見を書くときに一緒に行って合わせて書くのはできない。
○E
実際の自治体監査では、定期監査でみるところもあれば、行政監査で使えそうだとい
うことでみるところもある。行政監査の場合は、レポートで色々と書けるので、定期監査
で発見した事象を行政監査で報告することがある。判断基準はないが、事実を掴んでおい
て、後から監査を受けた側が納得する判断基準を作っているのが現状である。実務ではそ
うせざるを得ないところもある。吉見氏がおっしゃられたように基本的なところだけ基準
を作っておいて、後の考え方、きちんと記録するなどして過程の透明化をした上で、専門
家や訓練をした人が行うなど、基準以外のところで監査結果の妥当性を担保するようなや
り方もある。
○C
行政監査はコンサルテーションである。行政分野やその横断的な分野で問題を診断す
る機能があり、監査をして改善を促す効果がある。
○吉見
それは例えば、今、出ている内部統制や内部監査にその機能を持たすことになると
思うが。
- 100 -
○F
森田氏がおっしゃったように、効率性についてもコメントしてくれないというのはそ
の通りだと思う。効率性や有効性を言うのであれば、言い難いところを外部にも言っても
らったら助かるというところもある。そう考えた時に、例えば100人の定員で10人し
か来ていないから非効率であると監査が言って、では止めるか継続するかという判断は監
査ではなくて議会の判断に任せる。そこには監査は立ち入らない。
逆に100人に対して80人来ているときはいいが、50人のときは良いのか駄目かは、
監査人に任せるしかないと思う。決算審査の場合、保証型監査は可能であるが、行政監査
を行うときでは、目標値があり、実績値が100であって、その目標値が間違っているか
どうかの監査は保証型かもしれないが、定員が100人だったのに10人しか来なかった
というところに意見を言うのは、監査の範囲を決められないので、おそらく指摘型の監査
でしかできないのでないかと思う。保証型の監査をするけれども、その過程で何か見つけ
たことがあれば、コンサルテーションという形で指摘してもいいのではないか。保証型の
場合、判断基準であろうが、行動基準であろうが範囲を決めないといけない。
○石原
ここで議論を整理させていただく。現時点で、首長・議会が監査で果たす役割は明
確には決まっていませんし、決められるものでもない。そこで、当面は監査を誰がやると
いう主体の問題は別として、監査としてこういうものがあるという切り口で入っていかな
ければならないと思う。
普通の監査基準であれば、前文はあり、その後に一般基準という入り方しているのは、
「何のための監査基準か」が決まっている場合である。自治体監査基準の来年の最終報告
として出したいのは、内部監査、外部監査、業績監査、できるだけ沢山入れたい。中間報
告書では、最初に監査の目的、種類、用語の整理し、それを受けてそれぞれの監査の類型
や目的に併せて、議論をやっていくことになる。中間報告が終わった後、年内には大きな
フレームワークを固める。
○吉見
2年後の最終報告書では、監査基準が後ろに入るのか。
○石原
私のイメージでは、監査基準(案)という非常に分厚い冊子の中で、日本の内部も
外部も含めた自治体監査のあり様を再構築する提案をしたいというイメージを持っている。
具体的な監査の手続きについては、要綱・マニュアルがある。そこには踏み込まない。
○吉見
そういう方向であれば、この中間報告書の目的のところに、最終的にはこうであっ
- 101 -
て、それに向けてのステップであると書いた方がいいのではないか。
○石原
日本の内外の監査基準(案)という切り口でまとめたい。
○森田
そこでは、保証型監査の監査基準はどうあるべきか。いわゆる財務諸表監査や会計
監査のような財務情報に限定してしまうのであれば、民間に同じようなものがあり、民間
の監査基準は、国際会計基準のクラリティ―版にどんどん合わせている。これは明確なル
ールであって、これを自治体の財務情報の監査、保証型の監査をするときにこれを使わな
いという選択は多分ない。そこに織り込まれているパブリックセクター・パースペクティ
ブ、つまり、公的機関の場合にはこんなことに注意すべきという項目が何十項目ある。昨
年に公認会計士協会で翻訳がすべて出ている。
それぞれパースペクティブについて、日本の自治体で監査基準を行うにあたり、それら
をどうのように反映させるかという点を最終段階では結論を出しておかなければいけない。
○吉見
国際会計基準のクラリティ版は、見事である。
○森田
どこの監査法人でも監査マニュアルを国際会計基準のクラリティ版に合わして修正
している。それを入れていったときに自治体監査基準で昭和31年のものを使うわけには
いかないので、国際監査基準のパブリックセクター・パースペクティブを日本の自治体に
適用した場合の取扱いについて、ここで議論することも有益である。
○石原
国際監査基準のような詳細なところにいくのはなく、先日、出版された『地方自治
体のパブリック・ガバナンス』の中で内部監査についてはチェックリストみたいなものが
あり、そのイメージがある。なぜ、国際監査基準に踏み込まないかというと、専門用語が
ものすごく羅列されているためである。私のイメージでは、最終の読者は自治体関係者な
ので、自治体関係者の方にある程度、理解してもらえるようなものにしたい。その意味で
は、用語の説明も必要になる。
○森田
国際監査基準は、さらにハイレベルなものでもいいと思うし、民間企業の会計監査
を想定して作られたものなので、そこから重要な点があれば最終報告に入れればいいので
はないかと思う。
○A
国際監査基準が出てくると、民間企業の監査基準が入ってくる。別途、保証型監査基
- 102 -
準として書いていくというイメージか。
○森田
項目によって対応を考えていかないといけない。今、おっしゃったような対応も一
つにはある。あるいは、金額的な重要性で監査を行うこともある。民間では通常、金額を
ベースで決めているが、自治体の場合、何を基準に判断するのか。10万円程度なら無視
していいのかなど、どの程度かの答えはなかなかないが、一定の考え方の整理は必要と思
う。
○A
外部との契約額だけ見て、判断するならば、そういうことになる。
○C
このプロジェクトの大きな意義としては、自治体の監査経験者に対して啓発する部分
がある。今の自治体監査は非常にガラパゴス化している。監査という同じ名称を使ってい
ながら、まったく企業監査、民間監査との連携がない。知見の交流がなく、自治体独自に
展開してきたものなので、用語の混乱がみられる。重要性の原則という発想を役人は基本
的に知らない。1円でも間違えたらいけないという発想がいまだに強い。
○F
民間企業では、投資家に決算書を公表し、第三者の専門家が適正だと意見するとき、
きちんとした手続きが基準で定められている。パブリックにおいても第三者の意見で適正
だということを、同じ保証水準で求められるという認識が必要である。パブリックでは、
投資家が損するかもしれなくても、潰れないので適正水準が高いという感覚であれば駄目
である。適正というのは、民間も行政も同じ保証水準である必要がある。
○A
リスクアプローチと裏腹なのが、重要性の原則だと思う。人等を含めた監査資源が厳
しくなってきている。その中でいかに効率的に運用し監査を進めていくかは、重要性の原
則をもっと前面に出していかないといけない。Cさんがおっしゃたように1円たりとも間
違いを見つけたら、それは指摘にするか口頭注意にするかは別として、1円たりとも間違
えてはいけない。はたしてそれが本来の監査なのだろうか。そういうところに重点を置い
ているから、例えば、消耗品とか旅費、給料、その他の手当が100円でも200円でも
間違っていたらどうだとかになる。そういうところに監査の資源をいつまでも充当してい
くことはよくない。監査資源の効率的運用を考えると事務局側がもう少し意識すべきとこ
ろである。
○C
3E 監査から合規性監査、業績監査のハウ・ツーについての問題はあるが、分からな
- 103 -
いのが保証監査である。財産の把握が不十分である、資産負債の把握が駄目という批判は
よく受けるが、現金主義会計で何を保証すればいいのか分からない。自治体の会計は、会
計手続の誤りがあるかもしれないが正確である。
○石原
これから議論を展開していくときに、今の自治法では検査、監査、審査という言葉
があり、それらをどう使っていくのか、対応表を利用して改めた方がいいのかというイメ
ージがある。
自治体職員が監査に対して一番イメージできていないのは、「監査とは、人のやった行
為や人が作成した情報が、独立した第三者の立場で正しいか、誤っているかの意見を述べ
ることである」という監査の本質的な機能についてである。それを監査論では「主張」と
いう言葉で整理している。「主張」のない世界で、会計士や監査人が指摘するのが検査で
ある。そのような言葉の整理から入っていかないと自治体の皆さんに読んでもらえない。
Cさんですら理解できない議論は、どこの自治体に出しても話にならないと思う。そう
いう観点でいくと VFM 監査の「主張」が何であるかと言われたとき、私の持っているイ
メージはない。そのような中で「監査」といえば inspection であると整理をしたい。
「審査」という言葉も、適正性で監査だという非常に基本的な位置付けがあるが、agreed
upon の手続ではないか。そのような言葉の整理は部会の先生方中心になっていただいて、
ここのメンバーが理解できるような形で整理し、具体的な執筆作業に入っていくという整
理がいる。どのような言葉を用いるのかという判断が難しい。
○F
保証型業務か非保証型業務に分かれていて、お墨付きを与えるというのが保証型であ
る。その保証型の中に監査と agreed upon のようなものが含まれている。agreed upon
は、決められた手続きをやって、その手続きの範囲内では異常が見当たらないことである。
○石原
でも、それは「検査」ではないか。
決められた手続きの中で、色々な重要性の判
断が出てくるので、それをベースにして適正意見を出すのが監査である。しかし、今の「審
査」は合っていますということだけで、それ以上は行っているのか。
○F
全体として、保証をしているか。
○石原
現行の決算審査で監査委員の事務局の意見も含めて判断している。
○森田
どこまでの手続きをするかの判断が伴う。8ページのところの整理に書いてあるが、
- 104 -
分析的手続ができていない。これを数値的にやっていくと、異常値の増減があれば聞き、
合理的かどうか聞いて OK を出す。これを agreed upon には落とすことはできない。
agreed upon は、対象を突合させてどうかであり、誰がやっても同じ結果である。
○石原
例月出納検査ではどうか。
○森田
例月出納検査が、色々な会計規程に準拠しているかどうかを具体的にどんな手続で
確かめるのか。
○C
さすがにそこまではマニュアル化していないが、かなり定型化された業務である。残
高試算表とその残高をその段階で合わせるということである。現金の残高と関係諸帳簿の
残高が合っているかどうかが重要である。
○森田
それであれば、agreed upon できる。
○石原
現在、自治法上使われている言葉を普通の監査論の授業の中で教える言葉の対応関
係を示すと、自治法上に存在しない言葉があると思うので、そこを整理したい。この整理
をするためには、現場の監査の知識と監査論の知識が必要である。
○A
前定期監査で各部局の勘定科目や取引科目を見ながら監査をしているが、それはあく
までも前提行為である。その後、決算審査に入って、分析的をして適正であるという意見
を出している。ところがこれを外部に出したときに、外部の方が適正意見を出すためには、
期中の取引記録の検証もしながら、最終的に適正意見を出す。行政内部で取引額の定期監
査をし、決算審査だけを外部に委託するとしたら、外部の方は適正という意見を書かない
のではないかと思う。やはりそれは、審査という手続である。
○H
それは、大きな増減を見た「レビュー」というレベルである。
○森田
保証水準はとても曖昧なところがあって、「レビュー」はとても大きなところでは
誤りが見つからなかったというものである。
○F
「レビュー」の場合は、これと、これと、これという手続をやった範囲では何も見つ
からなかったというものである。
- 105 -
○A
現行の決算審査は、取引記録をすべて見たことが前提で行っているので、決算審査だ
けを外部に依頼することは監査ではなく、「レビュー」ということか。
○C
何をもって保証しているのかという目的が民間企業と公共セクターとは違うので、そ
こでの議論が非常にし難い。企業の場合、利益の額が本当かどうかを最終的に確認したい
だけか。
○森田
そのようなイメージが先行するが、重要な指標ではある。利益だけではもちろんな
い。
○C
役所の場合、決算して黒字が出るのは、むしろ当たり前の話であり、黒字化していな
い方がおかしい。財政健全化法レベルのチェックだけで十分である。政策的な議論をする
ための管理会計的な予算の組み立て方ができていない。役所では黒字を出したからいいと
いうことではないので、ある程度政策にブレイクダウンした形の中での比較が重要であり、
そこまで落とさないとパフォーマンスの比較もできないし、VFM の議論がまったくできな
い。
政策と予算と組織が必ずしも一致していないので、役所の仕事は非常にやり難い。どの
事業にどれだけの資源が投入されているかを把握すること自体が難しい。予算を組み立て
直して、事業別に数値を出すのに手間がかかり、手間を要するわりには、出てきた数値が
役に立たない。予算をきちんと作っていくべきである。予算をきちんと作らないと決算が
理解し難くなる。
○A
今の話を聞いて、やはり検査、監査、審査という言葉は、自治法上定まっていないの
で、体系の中でどう位置付けるかを考えていかないといけない。
○森田
○C
言葉の整理をすることが重要である。
役所の場合、予算という民間企業ではあまり意識されないものが非常に重要になる。
財政の民主的統制という意味でも重要で、予算を作るために民主議会があるので、政府に
おいて予算は、財務の根幹であり、予算が決算より優越するのはむしろ当たり前である。
○石原
監査論の教科書と現行実務の言葉とを統一し調整するという切り口は、非常にあり
- 106 -
がたい指摘なので、大事にしてこの先の議論を進めていきたい。
○森田
大阪府で一昨年問題となったオーバーナイトの運用について考えてみると、府が実
際発表した財政数値あるいは健全化指標数値があったとして、それを監査法人がもし外部
で監査報告書を報告しとしたら、あれは本当に適正と意見を付けられるのかと思う。
まさに、現金主義会計のもとでも、会計上の判断やそれに対する監査上の判断には幅が
ある。発生主義であったとしても、現行制度のもとでも、その辺りは何らかの手当てをし
ていかないといけない。外部に頼まないにしても、監査委員自体に責任が及ぶことになる
ので、言葉の整理が重要になってくる。
○C
自治体はお金がないので、やはり積立不足が発生しやすい。以前は元利償還金だった
ので否応なしに取り立てられたが、お金がないということで止めることが簡単にできる。
常にその積立不足が生じるリスクがあり、実質公債比率でペナルティーがあるけれども、
大したことではないので、将来の財政リスクが大きくなる。
○石原
満期償還するときの減債積立基金を取り崩すことは、自治法違反ではないのか。
○C
通達違反になる。積立ルールは、自治省財政局長通達だったと思う。
○A
健全化判断比率でそれをやってしまうと、ペナルティーがあり悪くなる。
○J
積んでいないと決算統計に表れるからいいが、積んでいて、流用や貸し付けていると
どこにも出てこない。あれは大阪府で適正をつけられないということか。
○森田
それが今、何もない。総務省の見解でも不法とまでは言えない。
○C
違法ではないが、適正ではない。
○A
公営企業の一夜越しのお金が足らないために、一般会計で基金の繰替運用でやってい
る例はある。
○石原
監査基準の議論するときに、当然、判断基準という会計ルールの問題が出てくるの
で、大阪府のオーバーナイトの問題も満期償還の減債基金の取り崩しの問題も、要はやっ
- 107 -
てはいけないことをやっている。法律の問題ではなく、適正な会計情報を読者に渡すため
には、そういうことは間違いである。どこにもルールが定められていなくても、サブスタ
ンス・オーバー・フォームであり、いかにルールに見せかけてやれるのかもしれないが、
それが実態から乖離している場合は駄目である。オーバーナイトで借入して、例えば、貸
借対照表を資産1、負債100としたとき、オーバーナイトで借入して連結して、資産1
01、負債200になり、流動性比率が1%から50.5%に上がることになる。それを
一晩で行っても見せかけなので、それは駄目という判断を監査人は下さないといけない。
サブスタンス・オーバー・フォームという精神はできるだけ、監査基準の中には入れてい
きたい。今の自治体の皆さんに求められているのは、それが大事なことかもしれない。サ
ブスタンス・オーバー・フォームは、会計士の職業倫理である。
【休憩】
○石原
先ほど吉見氏から次年度のファイナルステップの類で特に中間報告の資料までの前
半部分にこのような文言やこのような示唆を入れたらどうかということがあった。
○F
先ほどもお話があったように、監査をきちんと定義したい。監査基準を示していくと
いう考えはいいと思う。
○森田
自治体のガバナンスや監視という機能からすると議会との役割分担の部分を報告書
冒頭の監査の機能を整理する上で、現状の議会の機能をどこまで書くかは別として、
『CIPFA』に石原部会長が書いている監視機能を議会と監査にどのように分担し、また、
監視をするためのコストをどのようにロケーションすべきか、それの海外と日本との状況、
日本における示唆があればいいと思う。
○J
今のお話でいくと、地方行財政検討会議では行政監査が廃止という案が提示されてお
り、議会と監査の役割について厳しい質問が浴びせられることになる。
○C
ガバナンスとマネジメントの話からすれば、ガバナンスになるのが本来の議会の仕事
であると理解している。外部性はある方がいいし、首長の暴走や怠慢をチェックするのは、
まさに有権者から選ばれた議会の仕事である。監査はやはりマネジメントではないかと思
う。監査は、ミクロなプロセスにおいて市役所の仕事を改善していくというところに本来
の使命がある。日本の統治機構を抜本的に変えなければいけない時期であるが、旧態依然
- 108 -
たる仕事のやり方をしていたら駄目であり、それを見直す機能が非常に重要である。ある
程度の客観性を持ちながら、仕事を改善していく機能は監査のミッションである。
○石原
米国の GAO は議会で、英国の AC は政府機関である。地方行財政検討会議でも議
論しているが、全国の共同監査組織は、地方共同法人方式を使う予定なので、そのどちら
でもない。米国でも、英国でもない仕組みとしての全国監査組織の構築が、この検討会議
の見直し案1~3の一番上に書いてある。それを何らこの部会である種のサポートをする
感じで進めていけたらいいと思う。
○石原
AC が廃止の方向にいっているが、あの機能全部ではないが、そのような組織を地
方分権、地域主権の時代に自治体自らが作っていくという方向性でこの部会を進めている
というのがあってもいい。それが監査基準の問題とどのように関連していくかという問題
は別にあるが。
○森田
それは監査の機能を整理すれば、その共同監査機構が監査機能のうち、どれを担う
のか、今の総務省の見直し案にあるように品質管理というレベルなのか、あるいは AC の
ように実際自治体監査をする機能を担わせるのかによるので、そういう意味からするとこ
の部会での議論とセットでいいと思う。その場合に、その機関のガバナンスがあるべき姿
であり、それに対して中央集権ではない形でやっていこうとするなら、その機関の民主的
正当性、日本監査機構長は直接国民選挙で選ぶのかという話も果たす機能とセットで考え
ないといけない。
○石原
総務省の見直し案の案1~3のいずれにも全国監査組織ということでそこに監査基
準の設定ということが書かれている。
この部会ではその全国監査組織を設定した場合、その組織が将来設定と思われる監査基
準の素案を作ったという整理で皆さん方がご了解いただけるなら、後は順調に進むことに
なる。
その素案では、外部監査だけでなくて内部監査も当然入ってくる。何も分からないとい
うところで監査基準を作るよりも、ここで一つのコンセンサスとして、全国版の監査組織
を作り、監査基準を作ることとなる。その将来の監査基準の設定に向けた素案をこの部会
で作るという合意のもとでやっている。
○C
監査基準のフォローアップとか、研修と研究のための組織として全国組織はまったく
- 109 -
異論はないが、具体的な監査をする機関としてはどうかと思う。
○石原
見直し案を見ていただいたら分かるが、案1でも2でも3でも全国版の監査組織は
監査をやらないと思われる。
○C
出先がするのか。
○森田
それは別途県単位で、地方監査機構を作れという観点である。
○石原
監査やるのは、今言っている全国版の仮称 AC ではないという考えである。監査を
するは都道府県単位の予定である。
○C
現行監査制度の最大の問題は、首長がそっぽ向いたときに強制する権限がないという
ところである。
○石原
それは全国監査組織の中で監査基準の中の内部監査、外部監査のところでその権限
を明記すればよい。
○森田
その辺も色々な考え方があるが、権限をどんどん移譲するのであるから、監査も国
でルールを作り、自治体の首長はやらないといけないという義務と権限移譲をセットで制
度化していくべきではないか。
○石原
いや、前提が地方共同組織なので、国の権限移譲とは違い、自治体が共同出資した
ところが設定するので、自らが決めたルールを自らで守るというイメージである。
○森田
そうなってくると、それこそ、その組織の長は誰がどうやって決めるのか。それが
一番重要になってくる。そうでないと自治体に対して権限を持てない。
○C
広域連合や一部事務組合におけるガバナンスの崩壊というか不存在というのは、地方
自治体関係者の中ではよく知られている。一部事務組合は惰性で運営されているところが
ほとんどである。だから監査も機能していないし、非常に非効率かつ汚職や事故も多い。
○石原
地方監査機構のガバナンスをするトップは、誰がやるのがいいか。各地方自治体が
- 110 -
選ぶというスタンスは間違いないか。地方公共団体金融機構は、誰が社長に就任している
のか。
○森田
地方公共団体金融機構は民間出身の方が長をしている。
○石原
どのようにして決まっているのか。
○森田
地方公共団体金融機構のガバナンスは、結局、誰もガバナンスできていない。26
6億もの出資金を各自治体から集めて、共同出資の形がやっととれた状態である。総務省
の地方債に関して組んでやっている。そういう意味ではあのような形をとっているけれど
も、機能的には総務省の出先機関となっている。
○J
何よりマーケットから毎月のように資金を調達するので、そこで監視が効くといえば
効く。変なことをしていると、金利が少しでも上がってしまう。
○C
監査機構の場合だと、自治体がうちの監査はこうでいいという要請が多く出てくるこ
とがあり得るので、その対処が難しくなる。
○石原
共同監査機構が監査するのではないので、難しくない。
○森田
もっと厳しい監査基準を作るべきではないか。
○A
○吉見
○A
○吉見
○A
○石原
一般の監査基準は公認会計士協会が作っているのか。
公認会計士協会です。日本は、企業会計審議会と公認会計協会で策定している。
日本の場合、政府監査基準という基本的な基準はないのか。
存在しない。
米国や英国にはある。わが国には、会計検査院はあるが、政府監査基準はない。
CIPFA のガバナンスが参考になるかもしれない。CIPFA は、全国1700の団体
- 111 -
から選ばれたカウンセラーという評議員がだいたい数十人いて、そこからボードメンバー
が十何人か選ばれ、選挙でプレジデントが選ばれ、そのプレジデントの任期が1年である。
毎年プレジデントが交代するので、実質的なマネジメントができない。この前来られたス
ティーブがそこのトップチーフエクゼクティブで、それにマネジメントダィレクターが6、
7人いるという、そんな組織をもっている。結果として、そこの組織の長に総務省に相当
する省庁から来られる可能性もある。
誰がガバナンスするのか、ということは、マネジメントチームとは関係ないので、CIPFA
のようなガバナンスが考えられる。監査を緩めろとかあるかと思うが、それはそこに入っ
ているメンバーの良識・良心になる。
○森田
地方行財政検討会議で3つのパターンを出して、3つとも残るかどうかは別として、
例えば、自治体に選択の幅を広げると、小さな団体は監査が緩くてもいいとかはならない
のか。
○石原
それは好ましくない。
○森田
だから、そこをどう縛るかが問題である。
○石原
そこは監査基準になる。私のイメージでは、いずれの見直し案を議論するときに重
要なことは、大都市の監査の保証や指摘の水準と地方都市の水準とずれていてはいけない
ことである。あるべき水準であるための方法論は、複数あってもいいというのが私のイメ
ージである。
小さな自治体は県単位で集まり、市町村同志でお互い助け合って規模の経済を出し、都
会なみの保証水準に上げるという議論でいいと思う。形式的に A や B というのでなく、監
査の本質で捉えなければならないのは、保証水準と思っている。
○森田
維持する責任は全国規模なのか。
○石原
維持する責任は自治体の長にある。
○C
専門的知見を持って、自治体の長が、うちは大丈夫ですよとか大丈夫でないとかいう
のをチェックしてくれるような機能なのか。
- 112 -
○A
○石原
その機能は、監査基準の設定機能と品質管理なのか。
研修を含めた広い意味の品質管理、監査人の的確性、監査基準の設定までは間違い
なく全国組織になる。
○J
総務省のたたき台は、それ全国組織で行うと書いてある。
○石原
書いてあるが、批判が出てくることが予想される。
○森田
AC みたいに全国組織が一義的にすべての自治体の監査をするのであれば、全国組
織が監査しない自治体は、他の監査法人に任せるという形でいいが、全国組織が監査をし
ない位置付けなので、その辺りの整理も必要である。
○C
○石原
○C
○石原
監査人を「監査する人たち」というイメージなのか。
いいえ、違う。
でも、それは品質チェックのはずではないか。
品質管理は、監査ではない。要は質を維持するために、形式的に外部監査人を決め
るのは議会、推薦が日本版 AC でどうかということある。
○森田
では、有資格者名簿みたいなものを作るということか。
○石原
それもまた難しいのでさらに議論が必要である。新年度の方向として、米国型でも
ない、英国型でもない、日本の地域主権の時代に即応した日本版全国監査組織の設定し、
そこが監査基準を設定するようなイメージでこの研究会報告書をまとめる。
○C
○石原
generally accepted ということか。
generally は、基本的にパブリックを意味し、議会となる。難しいが、議会が選ぶと
言ってしまうと、実質的には GAO と一緒になる。そうではない。
- 113 -
○A
今の議会がそれ相当の情報を持っているかといえば、そうではない。
○石原
二元代表制に関して、阿久根市や名古屋市で問題となっている。完全に議会と首長
が 1 と1になっている。例えば、監査的な機能、内部監査を議会にやってもらって、議会
にできない専門的な財務諸表監査だけを会計士中心にやるというのも一番簡単に思う。
しかしながら、監査のあり方を考えたとき、意識しておかないといけないのは、日本の
場合は、二元代表制であるがゆえに首長でも議会でもないというスタンスを持たないとい
けない。それに少しでも、お金がかからないように地方共同組織が必要である。
○石原
地方共同組織が議会を監査する。
○吉見
議会から独立していかないといけない。
○石原
その通りです。それを仮称日本版 AC として選ぶと大きな権力を持っている機関に
なるのも問題である。
○C
自治体には基準を使う義務があるという形にしておかないと使ってもらえない。
○石原
○A
自分たちが参加している機関の自分たちが認めた基準だというやり方である。
でも最後は、権威がなかったらいけないので、その権威性をどこが持つことになるの
か。
○石原
それこそ自治法の中に地方公共団体は適正な機関の監査を受けなければいけないと
いう条文を入れればいいと思う。
○吉見
それは大丈夫か。
○石原
「地方公共団体の長は、内部統制の整備運用する責任がある」というのは、政権が
変わらなければ、自治法に規定されたと思う。だから、それにはあまり抵抗感がない。
○C
監査の具体的なことをもう少し手続法的に整備し、しかるべき基準に従ってやらなけ
ればならないということを書くことが非常に大事である。
- 114 -
○石原
○C
それは完全に自治体マターである。
基本的に監査の仕事は、監査するとしか書いていない。
○石原
最終報告のときに基準にあわせて、自治法上こういう趣旨の文言を入れるか検討す
るもの良い。英国では、proper accounting practice と同じように Local Government
Act の中で、適正な会計慣行に準拠しなければいけないと書いている。そして、政令でそ
の適正な会計慣行とは SORP であり、英国では十数個ある SORP のうち自治体版は CIPFA
のものであるということが書いてある。このやり方をすればいい。
○森田
きちんとした監査を義務付けられているのにできていない状態を議会が認めた場合
は、放っておくのか。
○石原
難しいが、日本版 AC で選ばれた外部監査法人が出す監査意見は、議長と首長宛て
に出してもらう。だから、議会が認めるだとか、首長がどうするという性格にはならない。
○森田
report to は、それでいい。しかし、めくらサインだけしている監査だとしたときに、
品質管理で日本版 AC にどんな権限を持たせるのか。監査を受けなければならないとする
監査が、現状の小規模の町村の監査と一向に変わらなければ、自治法上、監査やり直しに
なるのか。
○石原
それはレアなケースだと思うが、基本的に検討会議の5回の分科会でも議論となっ
たが、それはオピニオン・ショッピングの問題であり、やはり品質管理の問題ではないの
か。
○森田
品質管理の問題であるが、その品質管理の権限がどこにあるのか。
○石原
自治法である。
○森田
自治法でどのようにするのか。もう一度、監査しろとするのか。これはレアケース
ではなく、1800の自治体のうち1000はそのような状況である。
- 115 -
○C
どれだけのことをしないといけないのか監査人も分かっていない。
町、村の監査員は2人いるけど、事務局は1人しかいない自治体もある。監査に投入さ
れているマンパワーは0.2人とか、0.3人の自治体もあり、基礎的な訓練も受けてい
なく、監査委員の方が頑張っている状態である。監査委員に県庁の元職員や役所のことを
少しでも知っている真面目な人が選ばれている。いわゆるプロフェッショナルな監査とい
う以前に我々が実施している指摘型の監査も非常に不十分である。
○石原
手抜きした監査をどうするかについては、品質の維持を監査基準でやらないといけ
ない。責任問題はやはり自治法で定めていくのが筋である。
○C
ただ、内部統制でも、上場企業にだけにしか課していない。職員が100人や200
人の町村で1万人いる組織と同じことをさせる必要はないのではないか。
○石原
そのような説明もあるが、例えば、村役場にとっては負担かもしれないが、人口2
万人の町役場で、水道、診療所合わせて予算が200億円ぐらいはある。民間企業で20
0億円のメーカーなら、立派な監査対象になる。だから、小さな自治体と言うが、普通の
1万人や2万人の町役場の規模というのは、全体のお金の動かし方からするとヘラクレス
のレベルではない。上場企業なみの内部統制は持ってもらわないと困るというのが民間か
らの理屈である。
○C
人材がいない。
○石原
だから、みんなで集まって、規模の経済を発揮する。
○森田
でも、その組織のガバナンスをどうするのか。県庁の職員の天下りで良いのか。
○石原
県庁も市役所も、政治家や市民が一方的に天下りを批判するが、まともな天下りも
沢山いる。そういう人たちの力がうまく結集されるような仕組みを作っていくことが大事
かもしれない。
○吉見
例えば、自治体の OB の方が職員として入いるケース場合、監査に関連して、特定
の自治体に関するときは適格事項を定めたりして、独立性を担保する仕組みを作っておい
てもいいのではないか。
- 116 -
○森田
実際のイメージを考えてみたら、県内でいくつかの村と町を集めて、共同監査機構
を作るが、監査できる人が誰もいないという場合もある。今まで指摘されなかった多くの
箇所まで監査を行い、従前の予算を大幅に超える監査報酬を支払わなければならないこと
はないか。
○石原
手数料を貰うところまで整理しないといけないが、基本的に人を出してもらうとい
うスタンスを考えているので、現在の事務局で0.4人であれば、それに相当する人に出
してもらうという発想です。
○森田
そうしたら5団体からそれぞれ0.4人集まって、2人になる。2人で5団体の数
をちゃんとした監査をするのか。それでは厳しすぎないか。
○石原
そこで明らかに2人や3人では足らないので、できれば10人になるぐらいにした
いが、その分は、やはり社会で必要なコストであるという理屈で対応せざるを得ない。
○森田
その分だけ自治体に多くお金を出してもらうことになるのか。
○石原
それは結果としてある。その代わり、お金は出ていくが、VFM を見ることもできる。
○森田
お金を出さす権限が必要ではないか。
○吉見
権限というよりも、なぜ監査をしなければいけないのかということであって、例え
ば、企業では監査を受けなければならないという規定がある。
○森田
しかし、そこに競争性がない。もし、1000万円かかると監査共同機構が言って
きたら、その町長はどうするのか。
○石原
それは仕方がない。
○森田
それでは言い値になる。
○石原
それは共同監査機構のガバナンスになる。
- 117 -
○森田
そこのバランスが難しい。
○石原
そこの核論の議論が本格的にできるようになれば、規模の小さな市町村の監査も個
人でなくなる。見直し案3であれば、そういうやり方になるかもしれないが、見直し案2
であれば監査法人になる。そのときには適正な競争性はある。他方、オピニオン・ショッ
ピングという問題に関する牽制が絶対に出てくる。どの制度を使っても長所、短所はある
と思う。
○森田
まさにそのリスクを軽減するのが全国組織なのか。
○石原
その通りです。
○C
監査を受けることを首長に義務付けることは必要である。そうしないと、今までなか
ったコストを支払わなければならないということになるで、なぜわざわざそんな監査を受
けないといけないのか、という感覚になると思う。
○石原
今回、企業ではなくて自治体という儲からない組織で監査制度の議論をしているの
は、やはり欧米の会計士の歴史と比べて、日本の会計士は、社会的信頼性が高くない。そ
のようなところで監査の重要性をどのように浸透させるかという取り組みは国の文化に対
する挑戦なので、非常にしんどいが、説明して、それから会計士業界の発展とか、監査法
人同志の適正な競争に基づく業界の発展に繋がっていくと思う。
○C
今までの自治体監査が地味だったため、自治体監査にお金を出すという考えは少ない。
監査に入ってもらってよかったと首長が思ってもらわなければならない。トップマネジメ
ントして、節約ができ、仕事がやり易くなったということになればいい。
○石原
政令指定都市である X 市では、白紙の請求書で裏金を作り30億ものお金を今でも
出てくるとの報道があった。普通に伝票をチェックして、物の動きとお金の動きをチェッ
クしたら、公益通報しなくても監査で出てくるのではないか。
自治体から悪意を持った適正経理をなくす効果は、監査で多少の何千万円かかる以上の
効果は出てくると思う。企業は海外に行ってしまっているので、企業のパイは知れている。
CIPFA の事務総長も書いているが、スペンディング・カットの時代でオーディットのコス
- 118 -
トも削減している。英国では、会計士が尊敬されているが、日本では公認会計士の魅力が
少ない。
○C
「公共監査士」はさらに儲からない商売であることは間違いない。
○石原
私が考える「公共監査士」は、自治体職員のモチベーションである。Aさんみたい
な方にどこかの県の監査をやってもらおうとするとき、必ず元部長なので天下りって言わ
れる。この人は適格があって、資格も持っている、独立性もあるのでやってもらいましょ
うとすれば、誰も文句は言わない。
○吉見
監査だけではなくて、公共会計士ではどうか。
○森田
例えば、公会計簿記3級ぐらいであればよい。しかし、監査と絡ますと問題がある。
資格の品質管理と維持管理について、コストがかかることを金融庁以外の霞ヶ関は知らな
い。
○石原
日本内部監査協会では、内部監査士(QIA)、公認内部監査人(CIA)の資格と同じ
レベルで、実際内部監査士という資格があるので、「自治体内部監査士」という資格を作
ってくれるかと聞くと考えるとのことであった。
○森田
それでしたら、いいのですけども。
○石原
私が考えているのは、国家資格ではなく、技能資格である。
○森田
その辺は資格という名前で独り歩きしてしまうことがある。「公共内部監査人」と
いう資格名でしたらそれがないと監査することができないというようにとられる。
○石原
既存の内部監査協会を使うというのはいいか。英国の IIA は、自治体の内部監査の
資格を持っている人のメンテナンスを行っている。
○森田
資格を作るのはいいが、会計士と一緒ではないにしても、きちんとメンテナンスを
しないと誰もその資格を見ないようになる。
- 119 -
○石原
QIA もフォローの資格を作っている。内部監査士は CPE がないかもしれない。国
もどのように資格の品質を維持するかという点に関心を持っていた。
○森田
○J
CPE があったとしても、形骸化する例はある。
監査のコストがかかるという点は、どのように考えるのか。
○石原
もちろん努力をして引き下げるということは重要だが、やはりそれは社会が負担す
るコストである。
○吉見
監査とは社会で必要なコストであり、社会的に負担するシステムを作るのが重要で
ある。
○森田
東京都と大阪府は、今、きちんとやっているからと言う。ではいくらお金かけてい
ると考えると、監査事務局職員が、東京都では90人で大阪府では50人近くいるわけで、
一人1000万円としてもそれぞれ9億円、5億円とかかっている。
○吉見
きちんとやっていると本人たちが言っても、結局、それは社会的に受け入れられな
い。今の仕組みであったら、いくらお金をかけようとも、監査事務局職員が何十人いよう
とも社会には受け入れられない。
○A
コストの話では、そこに抱え込んでいる人のコストを退職金まで含めて、いくら負担
しているということを考えないといけない。退職金まで含めると相当のコストがかかる。
○石原
今、おっしゃった通りで、やはり監査コストが必要な社会的コストであると世の中
の人に分かってもらうのがこの部会の使命と思う。その上で、先ほどお話させていただい
たようなシステムを構築する。
ただ、色々な自治体で出てきている無茶なお金の使い方に市民や国民が直面したとき、
監査に数億、数十億のお金を費やすことに対して NO という人はそんなにいないと思う。
○C
信頼される政府を目指してということになる。これから国民に負担をお願いしていく
制度が信頼されなければ話にならない。規律と効率性の両面において、しっかりしていか
ないとけないわけで、それはどちらも監査が担うべき仕事である。監査は非常に貢献でき
- 120 -
る分野である。
○石原
事業仕分けで一定の効果が出ると思うが、あくまでも対処療法的であり、限られた
時間で、ごく特定の人間が行い、場合によっては、ミスジャッジがあるかもしれない。そ
ういったものを大きな組織、全国組織として監査に取り組むということであり、品質が平
準化される中で、毎年度、毎年度きちんとチェックしていける。
対処療法の後には、この監査制度を内外揃えてきちんと作れるような根治療法をやって
いこうという問題意識を持っている。
○H
監査基準の件ですが、目的と種類をきちんと分けて、保証の中にうやむやに指摘が入
ることのならないようにきちんと区分していかないといけない。現状の現金主義会計の仕
組みの中で監査基準を設定や健全化指標の監査とかを考えていくと、網羅性を一概にして
問題にできるのか、今のところ難しいのではと思う。
○石原
ありがとうごいざます。研究会としては以上です。
(第 5 回
- 121 -
研究部会
以上)
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