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ドラゴンキューブ株式会社(青森市)
代表取締役社長
平 井 茂さん(61)
Hirai Shigeru
感動を創るという仕事
服
飾販売の仕事から現在のリサイクル業に業
務を変更したのが2003年。そのときから
ずっと目標にしていたのが宇都宮市にある会社で
す。同じくリサイクル業を展開する会社なのです
が、お客様に迷惑や不便をかけないようにという
社員の思いから生まれる最高のサービスに感動し
ました。
これこそわが社の目指すべき形だと感じ、何度
も足を運び勉強させてもらいました。そして生ま
れたのが「お客様、そして働く仲間と感動を創
る」という企業理念。感動を与えるためには相手
の期待を上回ることを提供しなければならない。
だからこそ相手を思い、その実現のために努力す
るのです。
働く人財の魅力こそ最大の商品
1951年青森市生まれ。神父を目指し上智大学神学部に入学。卒
業後、父親が経営する「株式会社ひらい」で服飾販売の仕事に就
く。2003年、リサイクル業に転向し、有限会社ゲーム倉庫設立。
2006年にドラゴンキューブ(株)と社名を変更。
お
客様が喜んでくれた分だけ売上は伸びる。
つまり利益率とは、お客様の喜びの度合い
を測るバロメーターだと思っています。
私はお客様に喜んでもらうためには「人の喜び
を自分の喜びに、人の悲しみを自分の悲しみに」
という、お客様と私たち働く仲間がともに共有す
る価値観を職場に構築すること、つまりお互いを
思いやる心が大切だと考えています。お客様も
人、働く仲間も人。人と人との関係で商売が成り
立ち、仕事もうまくできる。会社の収益を増やす
ということは商品の魅力も必要ですが、それ以上
にそこで働く人財の魅力、つまり「人間力」こそ
が最大の商品なんです。
私が社員を好きになったらみんなやる気になっ
た。みんながお客様を好きになったら、今度はお
客様が彼らのことを好きになってくれた。これが
社員がアイデアを凝らしてディスプレイしている「萬屋」浜館店の店内
6 あおもり絆カンパニー 2013.3
理想とする会社の姿なんです。
ドラゴンキューブ株式会社(青森市)─ お客様、働く仲間に感動を創るリサイクルショップ
お 人 互 会社が活躍の場になるために、
社員の頑張りに応えたい
客とい 社
様人に
、と補
仲
い
が
間
合
織
と
〝りう
感成人
動す財
〟﹁で
を人成
創間功
り力目
た﹂指
い
す
員にはいろんな人間がいます。
金髪だったりピアスをしていた
り。ある社員は自分に学歴がないこと
を人生がうまくいかない理由だと思っ
ていた。
「どうせ俺なんて」と、なんでも
諦めていた。しかし、アルバイトから仕
事を始め、正社員に、そして6年後店長
になった頃、彼は全て自分の怠慢が原
因だったということに気づいたんで
す。思い込みの「どうせ」を取り払い、夢
を持って頑張っています。夢を持つことで、その行動は将来に向かって価値の
あるものに変わります。お金は道具、価値ではない。仕事は会社のためではな
く、自分のため、そして会社は自分が活躍できる場所という思いと夢を持って
働いてほしいと思っています。
私は懸命に仕事をする彼らの姿を見るたびに「この子たちを幸せにしてあ
げないといけない」と強く思うんです。こんなにも頑張っている社員たちが幸
せにならないのはおかしい。私の仕事は、この社員たちの頑張りに応える会
社、体制を整えることだと思っています。
足りないものだらけの人間が多く集まっているのが、わが社の人財特性で
す。足りない部分は補い合えばいい。それは障がい者も健常者も同じ。支え合
う相互支援の風土を育てていくことが、わが社の目指すべき人財育成の形だ
と思っています。
この社員たちとともに活躍の場をこれからもどんどん広げていきたい。決
してエリートではないけれど、夢と希望があるわが社の人財で、さらなる高み
を目指していきたいんです。
ム倉庫」
(現「萬屋」)八戸店を訪ねた際、父親が
ばなし
気分が悪くなり、売り場を汚してしまいました。
しかし、八戸店の女性スタッフは怒ることもな
く、優しく抱きかかえながら体の心配をしてく
失った笑顔を取り戻させた
親身の応対
わたし宛に1本の電話がかかってきました。
れました。それ以後、父親は
「『ゲーム倉庫』
に
行きたい」
と言うようになり、その時のスタッフ
に会うために通い始めました。
その電話の女性は、父親が亡くなったこと、
その電話の女性は
「素晴らしいスタッフがいる
そして遺影に八戸店でそのスタッフと撮った
から褒めてあげてほしい」
と切り出し、理由を
笑顔の写真を使いたいと言ってくれたんです。
話し始めました。
認知症になり笑顔を見せなくなった高齢の
父親を、娘であるその女性はなるべく外に連
れ出し、回復を願っていました。ある日、
「ゲー
お客様の笑顔を取り戻し、私たち仲間にも
感動を与えてくれたこのスタッフを誇りに思っ
ています。
(代表取締役社長 平井茂)
あおもり絆カンパニー 2013.3 7
人事担当者に聞く
人財観
わが社の
やんちゃさも障がいも個性
個性に光を当てることで輝く
みんながみんなを好きになる
Q.企業理念を実現させる手法は?
メンタリング・
A. 理屈でなく実践型、
マネジメントの手法で意欲向上を
図っています。
お客様、働く仲間に感動を創る楽しい会社に
ドラゴンキューブ株式会社
していくために、社員個々の長所に光を当て、
代表取締役専務
自発的、意欲的に仕事できるよう意識を浸透さ
平 井 博 子さん(58)
せたいと考えています。
わが社は個性派集団です。もともとやんちゃな
彼らをやる気にさせるには、一般的な座学研修は
難しい。対話するなかで目標達成に必要な事を当
事者自身に気付かせ実行していく「コーチング」が、わが社にぴったりだと感じました。まず私が店長た
ちにコーチングを実践しました。すると、各店舗でもコーチングを行うようになり、店長たちから「以前
のように指示や命令しなくてもよくなった」と報告されるようになりました。
さらに「メンタリング・マネジメント(共感と信頼の人財育成術)」を導入。若い彼らを成長させるため
には、楽しくてノリがよくないと続きません。理屈ではなく実践から。トラブルに対して他人や環境の
せいではなく自己責任と捉え、自分を変えることで、徐々に社内の雰囲気が変わってきました。プラス
思考の自立型の人財を育て、
“相互支援組織”を作れるよう、社長が店長を好きになり、店長が部下を好
きになる、そして社員はお客様を好きになるように努めています。
Q.社員研修ではどのような事をしていますか?
A. 感動ストーリーを共有し、自由にアイデアを出し合います。
研修は入社式から始まり、毎月の研修会、経営計画発表会があります。
「感動できる入社式」は1泊2日。各店舗から生まれ
た感動ストーリーを、映像、音楽に思いを乗せて発表
し、盛り上げます。
年1回の経営計画発表会は9月末。来期に向けて社
長、営業部長らが所信表明するほか、最優秀店舗賞、最
優秀店長賞、社長特別賞など1年間の活躍を表彰する
場でもあります。
毎月1回の研修はパート・アルバイトを含む社員全員
が対象で、いくつかのグループに分かれて、シフトを組
んで行います。これまでやってきた研修の中で特にユ
8 あおもり絆カンパニー 2013.3
ドラゴンキューブ株式会社(青森市)─ お客様、働く仲間に感動を創るリサイクルショップ
ニークなのが「五人組」。副店長や店長候補の有望な若手アルバイトを集め、ハチャメチャなアイデアを
自由に出し合い、切磋琢磨してきました。
店長の半数以上はアルバイトから正社員になった人財です。できるだけ多くの人にチャンスを与えて
いきたいと考えています。
また、日ごろから社員はポケットに「感謝・感動カード」を入れていて、仕事の中でのちょっとした喜
びやお礼はすぐに書き込んで、相手の社員に渡せるようにしています。これらを集めて「萬屋感動ス
トーリー」の本を出そうと思っているんですよ。
Q.障がい者雇用の効果は?
A. 社員が互いに思いやる雰囲気が生まれました。
私たちはもともとエリートではない、足りないものを持っている者ばかり。障がい者は特別な人では
なく、何ができるかできないかがはっきりしているだけです。
各店舗(北海道を除く)に障がい者を1から3人ずつ、会社全体で13人雇用し、リサイクル品のク
リーニングや包装などのパートと同じ仕事内容、同じ時給で働いています。すでに2年以上勤めている
人もいます。楽しく仕事を続けることで自信がつき、確実に成長しています。
彼らの勤勉な姿勢に、他の社員もハッとさせられます。具体的に噛み砕いて話さないと理解できない
ことも多いため、社員の言葉づかいが自然と親切、丁寧になってきました。互いを思いやる、いい雰囲気
ができてきています。
オ タ カ ラ 社 員
仲間は放っておけない
店員の成長に感動
果だけが物差しではありません。僕らで創っ
ていく面白さ、感動が楽しい。この仕事が好
きでしょうがないんです。可能性しか感じな
基本的に各店舗は店長
いですね。
の責任でやっています。
浜館店では全員、週目標計画を立て、毎日
中古品を取り扱う仕事で
の仕事予定を1週間分書きこんでもらっていま
すが、決められたルー
ル、売り場戦略というも
萬屋浜館店店長
荒井章生さん(40)
す。これは1人ひとり仕事内容をしっかり考え
させる、意志表示の手段です。互いにそれを
のがない会社です。だか
見ることで、言葉のコミュニケーションで足
らこそ全員もがき苦しみます。店内では、商
りない部分を補います。中には、言葉づか
品ジャンルごとに担当者がアイデア満載の
い、見た目の“ハンディキャップ”がある人
ディスプレイで勝負。失敗したり、思い通り
もいますが、困っている仲間は放っておけま
にならなくて当たり前。恥ずかしいことでは
せん。彼らの成長を感じたとき、感動をもら
ありません。またチャレンジすればいい。成
うのは私の方なんです。
会社概要
ドラゴンキューブ株式会社
所在地:〒030-0843 青森市浜田玉川 172-8
TEL:017-722-7245
URL:http://yorozuya-dc.com
資本金:1,000 万円
設立:2003 年 10 月
従業員数:250 人
(パート・アルバイト 209 人含む)
業務内容:中古品の買い取り・販売
あおもり絆カンパニー 2013.3 9
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