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ン」 クリニック 競技は真剣でも、子どもたちは みんな遊びが大好き!

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ン」 クリニック 競技は真剣でも、子どもたちは みんな遊びが大好き!
“遊び
の伝
が行
道師
く!
”
広島市:有朋柔道塾(前編)
ゆうほう
訪問先
6回
第
チャ
イル
ド
ニック
クリ
監修:
佐藤
(岐
阜
善人
准教
授)
学部
教育
大学
学園
聖徳
柔道を通して礼儀作法を
学んできた子どもたち
やっている以上強くなりたい、一
番になりたい、と思うのは自然な
こ と な ん で す ね 」。 穏 や か な 笑 み
れあってきた佐藤善人先生も目を
数え切れぬほどの子どもたちと触
経験をもち、遊びの伝道師として
ギーで満ちていく。小学校教諭の
片脚立ちで移動しながら相手とぶ
探して「ケンケン相撲」を始める。
ュッと締めると、それぞれ相手を
互いに礼。そして柔道着に帯をキ
とにかく塾生たちは、礼儀正し
く、元気がいい。顔を合わせると、
を浮かべて、柴田先生は言う。
見張るほどの、活気と士気にあふ
つかり、上げている足が畳につい
冷え切った道場が、小さな柔道
家たちが放つ、強く澄んだエネル
れた子どもたちがそこにはいた。
体幹、心肺を鍛えているのだ。
に開いた有朋柔道塾では、小学生
ぱらと集まってくる子どもたちを
そんな柔道塾で行う今回のAC
Pクリニック。いつもなら、ぱら
た ら 負 け。 遊 び な が ら バ ラ ン ス、
広島駅の少し南に位置する広島
みな み まち
市南区皆実町。井上忠司先生を顧
を中心に幼児から社会人まで、常
遊びに誘い込んで心をほぐしてい
問に、柴田光雄塾長が1996年
名ほどが週3回稽古に励んで
れば、できるまで無理にやらせる
にできない子はいます。できなけ
すので、練習メニューを同じよう
個人差、年齢幅、体格差もありま
多いです。もちろん能力や性格の
「運動能力や競技志向の高い子が
すでにもっているのだ。
団員というより、柔道家の風格を
違いない。しかし、子どもたちは
いる。地域のスポーツ少年団には
あわせ。指導者や保護者の方々で
「柔道は、常にケガの危険と隣り
するときの身体操作が実に上手だ。
もたちは、ぶつかったり転んだり
と佐藤先生は息を弾ませる。子ど
の小さい子に勝てないんですよ」
当然のように挑んでいく。私があ
で す ね。 小 さ い 子 が 大 き い 子 に、
「ここの子どもたちはたくましい
ケン相撲の輪に入っていった。
回は逆に先生が子どもたちのケン
くのが佐藤先生のやり方だが、今
時
のではなく、できなくてもいいん
の で す。 競 技 ス ポ ー ツ で す か ら、
躍している子もいます。上達する
3年生になったいま、大会で大活
のかを理解するよう、指導してい
もたち自身も、どんな危険がある
けています。大人だけでなく子ど
のときは膝の上で泣いていた子が、 全員に目が行き届くように気をつ
だよと言います。しかし、1年生
25
ブ
プロ
グラ
ム
ティ
アク
す。
競技は真剣でも、子どもたちは
みんな遊びが大好き!
子どもたちが大好きな「遊び」を引っさげて、全国を行脚する
ACPクリニック。遊びの伝道師は今回、西へ向かった。広島市
どもたちがみせた「遊び」への反応とは……
内で活動するスポーツ少年団『有朋柔道塾』。競技志向が高い子
Sports Japan 2014 / 03-04 36
遊び
「ひみつオニ」
2
ます」(柴田先生)
。
ら 急 遽、〝 走 る 〟 遊 び に ア レ ン ジ
て、準備運動が進んでいく。思う
い、すぐに大きな一つの輪になっ
てきた。子ども同士で声をかけあ
ニ、サン、シ」という声が聞こえ
と 子 ど も た ち の な か か ら「 イ チ、
を決めているそうで、遊びのなか
い子をあやしながら導くよう「係」
先生によると、年長の塾生には幼
見ようよ」と、声をかける。柴田
り、「 ち ゃ ん と 話 聞 こ う よ 」、「 前
遊びのセッションの最中も、高
学年の子どもたちは全体に目を配
を加えたものに変更しました」
存分稽古ができるよう、柔道の形
で は、 上 級 生 が こ と さ ら 優 し く、
ケンケン相撲が盛り上がってい
くうちに、稽古開始時間に。する
を前提にした静的・動的ストレッ
『大根ぬき』
(第
号『ニンジンぬ
『カラダでジャンケン』に続いて、
チで体を準備万端にしていくのだ。 3歳の男の子の手を引いていた。
遊びも真剣勝負!
っ て も、「 こ ん な に 抜 け な い 大 根
その瞬間、道場に大歓声が響い
た。「わーい!」
「やったー!」
き を 指 示 す る。「 だ る ま さ ん が で
んが転んだ〟のアレンジバージョ
を組んで離れないのだ。
子どもたちの熱烈な反応に、佐
藤先生も気合を入れてミッション
ん ぐ り 返 り 」「 だ る ま さ ん が 足 上
「 今 日 は 稽 古 の 前 に、 佐 藤 先 生 に
スタート。塾生たちの意識の高さ
げ た 」。 体 力 が あ っ て、 勝 負 に も
〝遊び〟を紹介していただきます」
を認識した伝道師は、この日準備
続 い て、『 王 様 だ る ま さ ん が 転
ん だ 』( 第 号 参 照 )。
〝だるまさ
子どもたちに、柴田先生が伝える。 は 初 め て 」
。隣同士がっちりと腕
深く礼。背筋を伸ばして正座する
柴 田 先 生 の 号 令 で、 一 同 整 列。 き』参照)へ。さすがは柔道家た
神棚に対し、指導の先生方に対し、 ち。佐藤先生が懸命に足をひっぱ
10
ンで、オニが〝だるまさん〟の動
をしようと考えていましたが、ケ
がる動きが入る〝ゆりかご〟遊び
つながるような、転がって立ち上
「 稽 古 前 と い う こ と で、 受 け 身 に
びは終了。「知っている遊びでも、
『 ペ ア オ ニ 』 を 行 い、 こ の 日 の 遊
こ の あ と、〝 こ お り オ ニ 〟 の ア
レ ン ジ バ ー ジ ョ ン『 ひ み つ オ ニ 』
がいっそう盛り上がる。
負けたくない。だから真剣。遊び
してきたプランに微調整を加えた。 こだわる子どもたちは、ここでも
ンケン相撲と準備運動の様子を見
ルールを少し変えたらもっと楽し
て、この要素は彼らにはもう十分
備わっていると感じました。だか
37 Sports Japan 2014 / 03-04
10
「カラダでジャンケン」
1
遊び
全員目をつむり、
佐藤先生に頭をなでられた人がオニ。
手ではなく、
体全体を使ってジャンケンをする。
この時点では、
オニ以外は誰がオニかわからない。
グーは体を丸めてしゃがみ、
チョキは右手足と左手足を前後に出す。
スタートの合図で一斉に走り出し、
オニはほかの人をこっそりタッチする。
そしてパーは両手両足を広げるポーズ。
タッチされたらその場でフリーズ。
全員で佐藤先生とジャンケンし、
負けた人から座っていく。
こおりオニと一緒で、
逃げている人にタッチされたら復活できる。
最後まで残った人が勝ち。
◀練習の前に、ケンケン
◀柔道の動きにのっとった準備運
相撲で遊ぶ子どもたち
動。みんな体格はさまざま
アクティブ・チャイルド・プログラムの内容については、日本体育協会のホームページからご覧になれます。
http://www.japan-sports.or.jp/ (トップページ 右 側 「PICK UP」 内 の バナーをクリックしてください)
■ 同プログラムについては、 コーチング・クリニック誌 (ベースボール・マガジン社刊) でも連載中です。
下の子に目を配り、優
◀▼上級生はいつも年
しく接している
遊び
3
「ペアオニ」
まず、
オニ以外は全員ペアを決める。
基本的なルールはこおりオニと同じだが、
オニにタッチされてフリーズしたときに、
よってペアの2人が両方フリーズしてしまった時点で脱落。
ありがとうございました
▲有朋柔道塾の柴田光雄塾長
そのペアを組んだ相手にしかタッチして復活させてもらえない。
▲礼に始まり礼に終わる。佐藤先生にも、
遊びにもルールがあるから楽しい
遊 び が 楽 し か っ た で す。 そ れ に、
けっこが好きなので、走りが多い
という小学2年生の男の子は、「か
リンピックで優勝することが夢」
からいいと思いました」。また、「オ
びは楽しいし、準備運動にもなる
の子。小学3年生の女の子は、「遊
か っ た で す 」、 と 小 学 2 年 生 の 男
という畳を這うような動きは体幹
転、開脚後転……。
〝スパイダー〟
端から端まで前転や後転、開脚前
おりの稽古に入っていった。畳の
遊びの時間が終了すると、子ど
もたちはいっそう元気に、普段ど
んは感じている。
さんあるでしょう」と若いお母さ
います。そこから学ぶこともたく
学生としての楽しみも必要だと思
での寝技の稽古。時間を惜しむよ
の補強にもなる。そして、二人組
と思います」と。
遊びで味わう達成感
ないでしょうか」と、2人の息子
けでなく、競争心も高まるのでは
いますよ。練習前に体が温まるだ
回の遊びは本当に楽しかったと思
見 守 る 保 護 者 の 皆 さ ん か ら も、
遊びを歓迎する声が集まった。「今
が大切であるかを示している。
は、 彼 ら に と っ て い か に「 遊 び 」
し、この有朋柔道塾の子どもたち
ととの間で葛藤するだろう。しか
貴重なトレーニング時間を削るこ
も た ら す さ ま ざ ま な メ リ ッ ト と、
団 を 導 く 者 と し て は、「 遊 び 」 が
を目指す子まで、エネルギッシュ
児から、オリンピックで金メダル
を寄せる。無邪気に走り回る3歳
田 先 生 は、「 遊 び 」 に そ ん な 期 待
で や る と 身 に つ く も の で す 」。 柴
なら楽しみながらできる。楽しん
イ運動をしているんだけど、遊び
なら勝てて、達成感を感じられる
ます。柔道では勝てない子が遊び
えているので、遊びはいいと思い
か、続けたいと思えるかと常に考
ういう子たちがどうしたら楽しい
は、おもしろくないでしょう。そ
す。投げられて負けてばかりの子
ACPを十分に理解していても、 うに、みんな練習に集中する。
「キツイことをしていると思いま
指導者、とくに競技志向の高い集
たちを通わせているお父さん。
かもしれない。それに、実はキツ
「うちの子は5歳のときに〝柔道
でオリンピックに出る〟と言って、 なこの子どもたちに対して、どう
まだ4年生ですが、人生そのもの
訪れる日が待ち遠しい。 どんな変化がみられるのか。再び
何 よ り 柔 道 を 大 事 に し て い ま す。 「 遊 び 」 を 生 か し、 子 ど も た ち に
といってもいいくらい。でも、小
Sports Japan 2014 / 03-04 38
健康と外遊び
佐藤先
生の
ワンポ
イント
コラム
さとう・よしひと
1972年、神奈川県生まれ。鹿児島大学卒業、東京学芸大学大学院修了。岐阜聖徳学
園大学教育学部准教授。岐阜県内の小学校や中学校の教諭、東京学芸大学附属大泉小
学校教諭を経て現職。専門は体育科教育学。日本全国で体育・保健体育の授業を参観
して授業づくりに関わり、子どもと運動とのよりよい関係づくりを目指す。
がら走り回ったりして遊んだこと
た子どもは朝食をしっかり食べ、
も記憶しています。文字どおり、
排便もします。そして学校で、活
昔の子どもは「風の子」でした。
動的な生活を送ることができるの
筆者の趣味はランニングです。
しかし、いまの子どもは室内遊び
です。この良好なサイクルに入れ
シーズンともなると、月間 150
をすることが多くなっているため、 ば、生活習慣病の予防に役立つと
~ 200km 程度走り、毎年フルマ
大人のように「火の子」になって
考えられます。子どもはますます、
ラソンやハーフマラソンに複数回
いるといえるのではないでしょう
風の子として活発に外遊びをする
挑戦しています。目標をもち、自
か。
ことでしょう。
“ 風の子 ” になること
による心身の成長
寒い冬も元気に遊んで
風邪や感染症対策を
ンニングしながら巡ることも楽し
身体活動を伴う外遊びが、子ど
このように考えてみると、元気
みの一つです。ところが、1 週間
もの心身の成長を促すことがさま
よく外遊びをすることは、子ども
ほど前から頭痛が治まりません。
ざまな研究成果により確認されて
の心身の成長にとって、また将来
無理はよくないと考え、ランニン
います。
的な疾病の予防に対して大変意味
グを我慢しています。走ることが
たとえば、佐々木
(2011) は
があることは明らかです。保護者
できないと退屈ですし、
「練習し
「様々な運動様式を包含する遊び
の「寒いから外で遊ぶのは止めな
ないと次の大会の記録が……」と
は、子どもの身体のバランスのと
さい」といった類の過保護な対応
いう不安にも襲われます。普段は
れた発育を促進する要素を持
は、子どもの現在、そして未来の
何気なくランニングをしています
つ」と述べていますし、橋本ら
健康を損なう危険性があるともい
が、あらためて健康であるからこ
(2008) は「身体活動とメンタ
えるのです。冬場に流行する感染
そ運動ができるのだと思い知らさ
ルヘルスの間にはポジティブな関
症対策として、日ごろから元気よ
れました。
係が指摘されている」と主張して
く外遊びをして、病気になりにく
「子どもは風の子、大人は火の
います。つまり、子どもたちは風
い(悪化しにくい)体の準備をす
子」ということわざがあります。
の子となって元気に遊ぶことで、
ることが重要なのではないでしょ
これは、
「子どもは寒風もいとわ
心身ともに健やかに成長してきた
うか。
ず、戸外で元気に遊び、大人は寒
のです。外遊びは、子どもにとっ
しかしながら、病気になったら
がり暖かいところにいる」といっ
て欠かすことのできない行為とい
外遊びを我慢してゆっくり静養す
た意味です。子どものころを思い
えるでしょう。
ることも重要です。無理をすれば
出してみると、学校から帰宅後、
また外遊びは、正しい生活習慣
長引き、外遊びができるまで回復
誰が誘うこともなく近所の小学生
を確立するといわれています。た
するのに時間がかかってしまいま
が集まり、
「ろくむし」
、
「エック
とえば、元気に遊べばお腹が減り
す。そんな「我慢」する力も外遊
ス」
、
「ゴム跳び」といった遊びを
ます。お腹が減るとご飯をたくさ
びは培ってくれているはずです。
空き地や道路でしていました。雪
ん食べます。ご飯をたくさん食べ
……と、自分に言い聞かせながら、
が降ると、かまくらを作ったり、
ると眠くなります。早寝は早起き
早期の回復を祈りつつランニング
そり遊びをしたり、雪合戦をしな
へとつながり、すっきりと目覚め
を我慢する筆者です。
子どもは風の子、
大人は火の子?
分のペースで走るのはとても気持
ちのよいことです。出張先にもシ
ューズを持参し、各地の名所をラ
*1
*2
〈出典〉* 1 佐々木玲子(2011)
遊びの中で培われる知力と体力 , 子どもと発育発達 , 9(2)84-88. * 2 橋本公雄 ・ 山添健陽 ・ 藤原大樹 ・ 鋤崎澄夫(2008)
子どもの身体活動と
メンタルヘルスの関係-行動目標値の策定を目指して- , 日本体育協会スポーツ医 ・ 科学専門委員会 , 日本の子どもにおける身体活動 ・ 運動の行動目標設定と効果の検証 , 61-68.
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