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景観を考慮した色の誘目性

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景観を考慮した色の誘目性
景観を考慮した色の誘目性
AE12030
河原井智恵
1. はじめに
指導教員
入倉隆
像を図2~図4に示す。なお図2~図4においては看板画像
歴史的街並みのある都市では屋外広告物の色彩・面
積・設置位置等が規制されてきた。近年、東京などでも
[1]
屋外広告物の規制がみられる 。そのような規制をする
背景として、景観が人々の心象に影響を与えることが考
えられる。また、その街の印象を大きく左右する景観を
整備することで、良好な地域イメージを構築することが
できると考えられる。特に景観や街並みの印象に大きな
影響を与えると考えられる屋外広告物に関する研究は多
数なされている[2]。しかしそれらの研究で題材にされて
いるのは、歴史的街並みなどの市民が日頃から接してい
るわけではない場所がほとんどである。そこで本研究で
は私たちが生活するなかで最も身近な住宅街において、
誘目性を保ちつつ景観とも調和する広告物の条件を色の
観点から明らかにし、より暮らしやすい街づくりに貢献
することを目指す。
をすでに合成してある。
表1 使用した色のカラーコードと実測値
使用色
呼称
(カラーコード)
#FF0000
赤1
#B30000
赤2
#990000
赤3
#800000
赤4
#FF4500
橙
#FFD900
黄
#008000
緑1
#005900
緑2
#004D00
緑3
#004000
緑4
#0000FF
青1
#0000B3
青2
#000099
青3
#000080
青4
#4A1601
茶
#E8EBF0
白
2. 実験方法
色度
x
y
0.569
0.350
0.538
0.344
0.530
0.345
0.498
0.342
0.531
0.391
0.422
0.491
0.325
0.498
0.324
0.479
0.322
0.472
0.319
0.454
0.147
0.897
0.154
0.100
0.163
0.114
0.163
0.114
0.411
0.375
0.306
0.335
輝度率
Y[%]
11.2
8.82
6.59
6.43
14.5
44.9
14.3
10.2
7.76
7.07
7.04
5.54
4.93
3.99
5.60
90.5
表2 使用した配色の組み合わせ
2.1 実験環境
[白×赤1],[白×赤2],[白×赤3],[白×赤4],
図1に実験空間の様子を示す。実験は暗室内で行い室
[白×青1],[白×青2],[白×青3],[白×青4],
内の照明はすべて消した。被験者の前方にプロジェクタ
ーとスクリーンを設置した。被験者にはあご台を使用し
てもらい、スクリーンに映る画像を見てもらった。画像
は住宅街を背景としたところに、看板の画像を合成した
ものを用いた。被験者には背景画像に対する看板の印象
をSD法で評価してもらった。
[地の色×図・
[白×緑1],[白×緑2],[白×緑3],[白×緑4],
文字の色]
[白×茶],[赤3×白],[青3×白],[緑3×白],
[茶×白],[赤3×黄],[青3×黄],[赤3×緑1],
[青3×緑1],[緑1×青3],[青1×赤3],
[赤1×青3],[緑3×橙]
図2 背景 - 一軒家
図1 実験概要図
2.2 実験条件
被験者は20代の男性7名女性1名の計8名である。看板
に用いた色の作成時に用いたカラーコードと、色彩輝度
計で測定をしたY,x,yの実測値を表1に、使用した配色の
組み合わせを表2にまとめる。画像の合成などはすべて
Adobe Photoshop CS6 を用いた。また、使用した背景画
図3 背景 - 木造
住宅街においても馴染んでしまい、目立たないのではな
いかと考えた。
図4 背景 - マンション
2.3 実験手順
(1)
ランダムに呈示された画像を観察してもらう。
この時、呈示時間は制限しない。
(2)
画像を眺めたまま評価を口頭で答えてもらう。
(3)
(1)~(2)を画像75枚分繰り返す。
図6 実験結果
3. 実験結果および考察
図6より折れ線の形が各背景で似た動きをしているこ
SD法で得られた実験結果のうち形容詞対の中で最も
本研究の目的に関係があると考えられる、「調和してい
る-調和していない」の項目の評価尺度が0~3の条件だ
けを図5に抽出した。図5のグラフは「調和している-調
和していない」と同様に本研究で重要と考えられる「目
立つ-目立たない」の項目の被験者の評価の平均値をグ
ラフ化している。なおエラーバーは標準誤差を表す。
図5よりそれぞれの背景に対して最も「目立ち」の項
目が高かったもののSD法による評価を図6に示す。縦軸
に形容詞対、横軸に被験者8人の評価の平均値をとって
とがわかる。本実験では[白地×図・文字が有彩色]の配
色を13種類用意したが、特に有彩色部分に赤,青,緑を用
いたものは4種類ずつ色を用意した。しかし、評価を図6
のようなグラフにしたところ背景に関わらずほとんどの
項目で似たような折れ線の動きをしていた。また、形容
詞対ごとに分散分析をした結果でも背景による有意差は
見られなかった。このことからも、背景を変えても全体
的に評価の高いもの同士や評価の低いもの同士のグラフ
の形はあまり変化が無いと言える。また、表2に記した
有彩色同士の配色では目立ちは全体としてかなり高い評
いる。
価値をとっていたが調和の項目は低い値をとっていた。
4. まとめ
①
調和の観点では住宅街では[白地×図・文字が有彩
色]またはその逆の配色の評価が高かった。
②
目立ちの観点のみで見ると有彩色同士の配色は評
価値が高かった。一方、白と有彩色の配色は目立
ちの評価値はあまり高くなかった。
③
調和・目立ちの両項目で正の評価値をとっていた
ものは白が含まれる配色のみであった。
図5 実験結果(目立ちを抜粋)
④
背景を変えても看板の配色が同じ場合、評価はあ
まり変わらない。
図5より白と有彩色を用いた画像の「調和している-調
和していない」の項目の評価が高かった。特に[白地×
参考文献
図・文字が有彩色]のものが多く、目立ちは一般に誘目
[1]
東京都景観計画に基づく屋外広告物の規制
性の高い暖色>寒色という評価の順になっている。また、
http://www.toshiseibi.metro.tokyo.jp/kenchiku/koukoku/
図5より白地に緑や茶を配色したものは全体として調和
kou_kisei.pdf
はしていてもあまり目立たないという評価になった。こ
れは街路などで緑や茶は頻繁に目にする色であり、
[2]
12月8日閲覧
槇究,「看板の色変更に関する研究」,日本建築学会
環境系論文集,第77巻,第682号,pp941-948(2012)
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