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02. 科学コミュニケーション略史 (1) 観光プロデュース論C(科学

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02. 科学コミュニケーション略史 (1) 観光プロデュース論C(科学
02科学コミュニケーション略史
2016/10/17 10:38
02.科学コミュニケーション略史 (1)
観光プロデュース論C(科学コミュニケーション論)
イギリス編
科学コミュニケーション発祥の地
前史:19c以来の活動
クリスマス講演(王立研究所)
実験を織り交ぜながらの連続講演
ファラデー「ロウソクの科学」(1861)
サイエンス・フェスティバル(英国科学振興協会)
毎年1週間開催
19c後半にはこの年会で重大な研究業績の発表が相次ぐ
→専門を超えた討論の場として機能した
ダーウィン『種の起源』(1859)を巡って進化論の激しい論争(1860)
その後研究活動の専門分化→科学は素人には近寄り難いものに
「伝統的文化人ですら科学に興味を持たなくなった」(Snow,1959年の講演)
ロイヤル・ソサエティ報告書
『科学を公衆に理解してもらうために』(1985)
ThePublicUnderstandingofScience=PUS
科学の公衆理解を改善する必要性を強調
その取り組みの出発点として正規教育の重要性を強調
初等・中等・高等教育の各レベルで科学教育を拡充するべく提言
公開講演、児童活動、博物館・図書館などの充実策を提言
マス・メディアに対し
科学関係の記事や番組を増やすよう求める
科学ジャーナリストだけでなくジャーナリスト全体が、科学について認識を深めるこ
とが必要
科学者に対し
職業的義務として科学の公衆理解増進に取り組むよう求める
ジャーナリスト及び政治家と協力関係を構築するよう求める
etc.
BSE問題
1990年代後半「牛海綿状脳症(BSE)事件」
<経緯>
1980年代BSE感染牛は確認されていた
政府「当時の科学に基づいて」人間に感染する可能性を否定し続けていた
1986年以来、感染牛の報告数は増加の一途
マスメディア「ペスト以来の脅威」
1990年5月農業漁業食料省「専門家委員会の報告に従って」牛肉の安全性を訴える声明
専門家委員会は‥‥
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「当時のせいいっぱい」の知識による判断
当時はまだ発症メカニズムは不明(!)
「さらなる研究が不可欠」「評価が誤っていれば大変なことになる」と警告
行政は政治家は警告や制約を無視してアピールし続けた
1996年3月20日
政府は10名のvCJD患者(変異型クロイツフェルト・ヤコブ病)について、BSE感染牛を食べ
たことが原因である可能性を認めた
→英国社会は大混乱に
→科学者は市民からの信頼を失った
政策の転換
政府の科学コミュニケーション施策の重点の変化
科学の公衆理解増進 → 科学に対する公衆の不信感の除去
転機:勧告「科学と社会」by上院科学技術委員会
背景:科学技術社会論(Science and Technology Studies: STS)研究者たちの成果の
蓄積
勧告「科学と社会」
明らかにしたこと:
公衆の科学への関心は高いが、政府や産業界と関わりを持つ科学への信頼が低い
遺伝子組換え食品やクローニングなど直接的な利益を実感しにくい科学に対しても拒
否反応
信頼に対する危機的状態が「対話」を求める新しい社会状況を生み出していると強調
注目したこと‥‥公衆との対話を促進する際には?
科学的知識の不確実性やリスク
科学的知識の不確実性を隠せば、必ず、公衆からの信頼と尊敬を損なうと警告
(その他、政府への提言(先行事例の収集と基準作成)、科学教育改革、科学-メディアの
関係改善などの提言も)
STS(科学技術社会論)
「科学知識が増えれば、科学への肯定的態度が増す」わけではない
科学知識が多い人ほど科学一般を支持するが、倫理的な問題を孕む研究分野に対して
は否定的な態度を示す
英国・デンマークなど科学の理解度が高い国の人々が、他の諸国に比べて、科学に関心を持
っていない
「科学の公衆理解の不足」という認識に「?」
「[ ]」=無知な公衆に対して科学知識を与え啓蒙する、の否定
「[ ]」の存在
公衆は単に無知なのではなく、公衆なりの[ ]で独自の知識を持っている
「科学の公衆理解(PUS)」という用語自体が問題(勧告「科学と社会」)
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PUSからPublicEngagementへ
lay-experLseモデル
「素人の専門性」
専門知より経験知が役立つこともある
市民参加モデル
問題は、科学技術「ガバナンス」の「正統性(legiLmacy)」だった
デンマーク発「参加型テクノロジーアセスメント」
「素人」を評価主体にする
アメリカ編
国の威信、職業的地位の確立
冷戦終結前後の社会状況
冷戦期:科学研究は「国威発揚・国家安全保障のため」→正当化された
→国家による研究支援↑
終結後(1990年頃)
安全保障論による正当性↓
→より直接的な利益を求め始めた
『未来への扉を開く ―― 新たな国家科学政策に向けて』(1998)
科学コミュニケーションの重要性を強調
今後の研究支援の方策や研究環境の整備指針について勧告
科学コミュニケーションに関して
「科学研究が公的支援を受け続けるために必要」→3つの勧告
1) 大学は、大学院教育の一環として、ジャーナリズムもしくはコミュニケーションに関
するコースを履修する機会を科学者に対して提供する。また、ジャーナリズム学部
は、科学記事の執筆に関するコースを履修するようジャーナリストに奨励する
2) 市民との対話に適性のある科学者・技術者に対して、研究に使う時間を削って、自身
の研究の性質や重要性に関して市民を教育するよう奨励する。雇用主や同僚は、そう
した活動を行う研究者を不利に扱わない
3) 政府機関は、国家資金に基づく研究成果を誰もが利用できるよう責任を持つ。研究成
果と含意に関する平易な要約を作成し、ウェブサイトに掲載するなど、幅広く配布す
る
多様なアウトリーチ:NASA
1990年代後半から本格化
1997年「教育及び公衆へのアウトリーチ・プログラム」開始
学校向け:教育活動や教材提供
非正規教育機関向け:科学館・プラネタリウムでの展示・科学ショーの提供
アウトリーチ活動:一般公衆向けの講演やウェブサイト作成など
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多様なアウトリーチ:大学
学生への教育効果も考慮
例:MIT, Public Service Center
目的:地域などへの貢献を通じて、大学教育及び学生などの人生経験を豊かに
中学生たちと「科学プロジェクト」展示会
中学生:自分たちのPJの紹介→MIT学生と交流
MIT学生:生徒と議論&研究室や博物館など構内施設を案内
多様なアウトリーチ:科学界
科学界全体も奨励
例:米国科学振興協会(American Association for the Advancement of Science:
AAAS)
「科学技術の公衆理解増進賞」創設(1987)
市民は科学技術を高く評価
1. 米国市民の科学への関心は、日本や欧州などより高い
⁃
回答者の87%は科学的発見に対して「おおいに」もしくは「ある程度」関心を
持っていると回答
2. 米国市民の科学知識の水準は、近年変化していない
⁃
欧州と同程度
⁃ 日本・中国・ロシアより高い
3. 米国市民は科学研究の効用を高く評価
⁃
回答者の70%は、科学研究からの利益が、負の効果を「大幅に」もしくは「ど
ちらかというと」上回ると回答
4. 41%が「科学研究への政府支出が少ない」
⁃
2002年の34%から7ポイント上昇
職業的地位の確立
科学技術の情報伝達機関が、職業的地位を確立→活発な活動を展開
マスメディアの科学部門・研究機関の広報etc.
科学ジャーナリスト、サイエンスライターなどの養成コースのある大学:40以上
大学院レベルの教育も多い
奨学制度も充実
→既存メディア+大学・研究機関の広報へ
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