...

調査結果とその利用(PDF:49KB)

by user

on
Category: Documents
7

views

Report

Comments

Transcript

調査結果とその利用(PDF:49KB)
<目
Ⅱ
次>
※青色の項目には文書内リンクが設定されています。
調査結果とその利用
1
我が国の人口
(1)我が国の人口は世界人口の2.2%
(2) 人口は,第1回調査以降75年で2.2倍
(3)人口増加率は低下
(4)人口集中地区の人口は,総人口の64.7%
(5)東京都,大阪府などでは,人口の9割以上が人口集中地区に居住
(6)戦後一貫して上昇する65歳以上人口の割合
(7)ほぼ50%に近い女性の25∼29歳の未婚率
(8)我が国の人口重心は引き続き東南東に移動
(9)M字型を示す女性の年齢別労働力率
(10)拡大が続く雇用者の割合
(11)第3次産業就業者の割合は更に拡大
(12)夜間人口と昼間人口
(13)東京都特別区部は324万人の流入超過
(14)緯度・経度で区画する地域メッシュ統計
(15)小地域統計の時系列比較が可能な基本単位区別集計
2
結果の利用
(1)人口及び世帯の地域的分布と構造を明らかにして行政的に利用
(2) 基本的な母数としての利用
(3)各種法令に基づく利用
ア
衆議院議員選挙区画定審議会設置法(平成6年法律第3号)
イ
地方自治法(昭和22年法律第67号)
ウ
地方税法(昭和25年法律第226号)
エ
地方交付税法(昭和25年法律第211号)
オ
都市計画法(昭和43年法律第100号)
カ
過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)
キ
その他の法令
(4)行政上の諸施策等への利用
ア
少子・高齢化対策の基礎資料
イ
地域開発計画への利用
ウ
環境整備のための基礎資料
エ
防災対策及び防災計画での利用
オ
その他
(5)人口分析などに利用
(6)他の統計への利用
Ⅱ 調査結果とその利用
1
我が国の人口
(1) 我が国の人口は世界人口の2.2%
平成7年10月1日現在の我が国に常住する人口は1億2557万人で,平成2年国勢調査
の人口(1億2361万人)に比べ196万人,1.6%増加した。
国際連合の推計によれば,平成7年(1990年)の世界の人口(年央推計人口)は57億
1642万人であり,日本の人口はその2.2%を占めている。
この推計によると,平成7年(1995年)に1億人を超えている国は,10か国あり,中
国の12億2千万人(世界人口の21.4%)を筆頭に,インドが9億4千万人(同 16.4%),
アメリカ合衆国が2億6千万人(同4.6%),インドネシアが2億人(同3.5%),ブラ
ジルが1億6千万人(同2.8%),ロシアが1億5千万人(同2.6%),パキスタンが1
億4千万人(同2.5%),バングラデシュが1億2千万人(同2.1%),ナイジェリアが1
億1千万人(同2.0%)であり,我が国の人口はパキスタンに次いで世界第8位である。
(2) 人口は,第1回調査以降75年で2.2倍
我が国の総人口は,明治5年(1872年)に初めて調査された本籍人口では3481万人で
あった。その後,第1回国勢調査が行われた大正9年(1920年)では5596万人であった
から,平成7年の第16回調査までの75年間で約2.2 倍となった。
(3) 人口増加率は低下
我が国の人口増加率は,明治初期の年平均0.5%から徐々に上昇し,明治30年代に年
平均1%を超えて,明治45年には人口が5000万人を超えた。
さらに,大正15年には6000万人に達し,昭和11年には7000万人となり,明治5年から
約65年で我が国の人口は倍増した。
その後,出生率の低下や第2次世界大戦による海外への人口流出などにより,増加率
は一時1%を割ったが,戦後の昭和20∼25年は,海外からの引き揚げ,復員に加えて,
ベビーブームが重なり,年平均2.9%と極めて高い率となり,23年には人口が8000万人
を超えるに至った。
昭和25年以降は,出生率の低下とともに年平均人口増加率も低下を始め,30∼35年に
は年平均0.9%となったが,その後は徐々に回復し,1%台を保って推移し,41年には
遂に人口が1億人を突破した。
その後,昭和46∼49年の第2次ベビーブームの到来もあり,年平均人口増加率は1.2%
から1.4%にまで上昇し,わずか8年後の49年には1億1000万人となった。
しかし,昭和50年代に入ると,出生率の低下により年平均人口増加率は次第に小さく
なって1%を割り,1億1000万人から10年かかって59年6月末に1億2000万人を突破し
た。昭和60年以降も年平均人口増加率は低下を続け,昭和60∼平成2年は0.4%,さら
に平成2年から平成7年の間では0.3%と戦後の最低水準を更新している。
(4) 人口集中地区の人口は,総人口の64.7%
人口集中地区は,町村合併促進法(昭和28年施行)によって市町村の合併が急速に進
んだことに伴い,市の区域が形式的に急激に拡大したことにより農漁村的性格の強い地
域が含まれるようになったため,実質的な都市的地域を示す地域として設定されたもの
である。
平成7年の人口集中地区は,全国3,233市町村の3割に当たる1,003市町村に1,389地
区設定されている。
人口集中地区に居住する人口は8125万人で,全国人口の64.7%を占めている。この割
合の推移をみると,初めて設定された昭和35年には43.7%であったが,45年には50%を
超え,その後も上昇を続けて平成7年には64.7%となった。
人口集中地区の面積は,新潟県の面積にほぼ等しい12,261k㎡で,国土面積の3.2%に
当たる。すなわち,総人口の6割を超える人々が国土の約3%に集中していることにな
る。この結果,人口集中地区の人口密度は6,627人/k㎡と,人口集中地区以外の人口密
度(123人/k㎡)の53.9倍となっている。
(5) 東京都,大阪府などでは,人口の9割以上が人口集中地区に居住
都道府県別に総人口に占める人口集中地区人口の割合をみると,東京都が97.9%と最
も高く,次いで大阪府が95.7%,神奈川県が93.3%となっており,この3都府県で9割
を超えている。このほか,京都府(81.8%),埼玉県(77.7%),愛知県(73.8%),
兵庫県(73.4%),北海道(72.2%),千葉県(70.4%),福岡県(68.4%)及び沖縄
県(64.7%)を合わせた11都道府県が全国平均(64.7%)以上となっている。
(6) 戦後一貫して上昇する65歳以上人口の割合
平成7年の我が国の人口を年齢3区分別にみると,0∼14歳人口(年少人口)が2001
万人,15∼64歳人口(生産年齢人口)が8716万人,65歳以上人口(老年人口)が1826
万人となっており,それぞれ総人口の15.9%,69.4%,14.5%を占めている。
65歳以上人口は,昭和25年には416万人にすぎなかったが,その後は急速に増加し,
平成7年には1,826万人となり,昭和25年からの45年間で約4.4倍に増加した。この間の
総人口は約1.5倍しか増加していないことと比べると,戦後の65歳以上人口の増加がい
かに著しかったかが分かる。
国際連合の資料によると,65歳以上人口の割合が7%を超えると,その国は「高齢
化した国」(Aged Country)として扱っているが,我が国の65歳以上人口の割合が7%
を超したのは昭和45年である。その後,昭和50年7.9%,55年9.1%,60年10.3%,平
成2年12.0%,7年14.5%と高齢化が加速する傾向にある。
なお,「日本の将来推計人口(平成9年1月推計の中位推計)」(国立社会保障・人
口問題研究所)では,65歳以上人口は今後も増加を続け,平成25年(2013年)に3000万
人を超えると予想している。
(7) ほぼ50%に近い女性の25∼29歳の未婚率
年齢階級別に未婚率をみると,男女とも年齢が高くなるにしたがって低下しており,
特に,平均初婚年齢前後の年齢階級では大きく低下している。
男性では,20∼24歳の92.6%から,平均初婚年齢の28.5歳(平成7年人口動態統計)
を含む25∼29歳では66.9%,30∼34歳では37.3%と,20歳代後半から30歳代前半にかけ
て急速に低下しており,女性についても同様に,平均初婚年齢(26.3歳)前後の20∼24
歳の86.4%から,25∼29歳では48.0%,30∼34歳では19.7%と低下している。
この年齢階級別未婚率を昭和45年と比較してみると,近年,若い年齢層で未婚率の大
幅な上昇が認められる。特に女性は,高等教育への進学率の上昇や就職機会の増大,あ
るいはそれらとともに経済的自立の拡大と相まっての結婚観の多様化などを反映して,
20∼24歳の未婚率が昭和45年の71.6%から平成7年には86.4%へ上昇し,25∼29歳では
18.1%から48.0%に達している。
(8) 我が国の人口重心は引き続き東南東に移動
人口の地域的分布を集約して示すものとして人口重心がある。人口重心とは,ある地
域に分布している人口の一人一人が同じ重さを持つと仮定して,その地域を支える点を
いう。
平成7年の我が国の人口重心は,岐阜県郡上郡美並村(長良川鉄道半在駅の東約1,82
5mに当たる東経136度58分06秒,北緯35度37分01秒の位置)にあり,平成2年の人口重
心に比べ,東へ約1.3㎞(東へ約1.2㎞,南へ約0.2㎞)移動している。
人口重心の動きをみると,一貫して東あるいは東南東方向に移動しており,我が国の
人口分布が東京を中心とした東日本への集中を続けてきたことを示している。
昭和40年以降の人口重心の移動距離は,昭和40年∼45年の約8.3㎞から50年∼55年は
約1.5㎞と短くなった後,60年∼平成2年には約3.1㎞と若干長くなったものの,平成2
∼7年は約1.3㎞となり,最も短い移動距離となっている。
(9) M字型を示す女性の年齢別労働力率
平成7年における15歳以上人口1億543万人のうち就業者は6414万人,完全失業者は
288万人,この両者を合わせた労働力人口は6702万人で,15歳以上人口に占める労働力
人口の割合(労働力率)は63.6%となっている。これを男女別にみると,労働力人口は
男性4040万人,女性2662万人で,労働力率はそれぞれ78.8%,49.1%となっている。
労働力率を年齢階級別にみると,男性は在学者の多い15∼19歳では18.8%と低いが,
大学などを卒業して労働力人口へ参入する20∼24歳では75.8%,25∼29歳では95.9%と
急激に上昇し,30歳から55歳までの各階級で97%台の高い率となっている。その後,定
年年齢に入ることから低下して65歳以上では41.9%となっている。
一方,女性の労働力率は,15∼19歳では15.6%と低いが,20∼24歳では74.2%と全年
齢階級中最も高い率を示している。25歳から34歳にかけては,結婚,出産,育児等のた
め労働市場から離れる者が多くなるため,労働力率は低下する。35∼39歳から再び上昇
して,45∼49歳で69.2%ともう一つのピークを迎える。50歳以上では年齢とともに次第
に低下して65歳以上では15.7%となっている。このように我が国の女性の年齢階級別労
働力率は,女性特有のライフスタイルを反映し,二つの山を持つM字型となっている。
(10) 拡大が続く雇用者の割合
就業者(6414万人)を従業上の地位別にみると,会社などに雇用されている雇用者
(役員を含む)が5208万人(就業者に占める割合は81.2%),個人経営の商店主・工場
主・農業主や開業医・弁護士・著述家などの自営業主(家庭内職者を含む。)が782万
人(同12.2%),家族従業者が424万人(同6.6%)となっている。
従業上の地位別の構成は,家業的就業形態である農業人口の大幅な減少と,産業部門
における経営形態が個人経営から法人組織へと進行していった戦後の我が国の産業構造
の変化によって,雇用者の割合が急速に拡大し,昭和25年の39.3%から平成7年では
81.2%と,この45年間に2倍以上となっている。
(11)第3次産業就業者の割合は更に拡大
就業者(6414万人)を産業3部門別にみると,農林漁業の第1次産業に382万人,鉱
業,建設業,製造業の第2次産業に2025万人,商業・運輸・通信業,サービス業などの
第3次産業に3964万人が就業しており,その構成比はそれぞれ6.0%,31.6%,61.8%
となっている。
我が国の産業別就業構造の推移をみると,明治時代の殖産興業政策によって工業の進
展が始まったものの,第1回の国勢調査が行われた大正9年には,第1次産業が53.8%,
第2次産業が20.5%,第3次産業が23.7%と第1次産業の比重が極めて大きかった。そ
の後,引き続く工業化の進展と経済発展により就業者の産業別割合は,第1次産業から
第2次産業へ,さらに第3次産業へと比重を移し,昭和15年には第1次産業が44.3%,
第2次産業が26.0%,第3次産業が29.0%となった。しかし,戦争による工業施設の崩
壊等もあって,昭和25年の就業者の産業別構成は,第1次産業が48.5%,第2次産業が
21.8%,第3次産業が29.6%と,第1次産業が50%近くまで回帰した。その後は経済の
高度成長と都市化の進展などにより産業構成が急速に変わり始め,第1次産業就業者の
就業者総数に占める割合は,昭和35年32.7%,45年19.3%,55年10.9%,平成2年
7.1%と10%を切る水準まで急速に縮小し,平成7年には6.0%となっている。また,第
2次産業は,高度経済成長期に重厚長大の基幹産業として著しい伸長をみせたが,昭和
48年の石油危機を契機とした不況と経済の安定成長への転換により,50年の34.1%で頭
打ちとなり,平成7年には31.6%へと低下した。これに対し,第3次産業の割合は,昭
和25年の29.6%から一貫して拡大し,50年に51.8%と50%を超え,その後も上昇して平
成7年には61.8%と6割を超えた。
このように,我が国の産業構造は,就業者の構造の面からも高度経済成長から経済の
安定成長への移行とともに,経済のサービス化が進行していることがうかがえる。
(12)夜間人口と昼間人口
昼間人口とは,例えば,A市の昼間人口は,
A市の昼間人口=A市の常住人口(夜間人口)
−(A市から他の市町村へ通勤・通学している者)
+(他の市町村からA市へ通勤・通学している者)
のように計算される。
このように,国勢調査による昼間人口は,常住人口に通勤・通学に伴う人口の流入・
流出を加除して得られる各地域の人口で,他市区町村からの買物客など,非定常的な移
動者までも含むものではない。また,通勤者の中には夜間勤務者などもいることから,
昼間人口といっても,日中の特定の時刻や時間帯に,ある地域にいる人口の総数にその
まま対応するものではないことに注意する必要がある。
昼間人口に関する統計はいろいろな方面で利用されているが,例えば,上水道や下水
道を始めとする各種の公共的設備・施設・サービスの配置・供給計画をきめ細かく立案
するためには,各都道府県・市区町村が実質上どのような規模と構成の人口を擁してい
るかを知ることが重要である。この目的のために,常住人口だけでなく,昼間人口も重
要な資料となる。また,昼間人口は,地方交付税交付金算定の基準の一つとしても用い
られている。さらに,昼間人口算出の基礎となる通勤・通学人口の流れの方向と規模の
統計は,交通体系整備のための重要な基礎資料となる。このほかにも昼間人口と常住人
口の比や,昼間人口の経済的構成などは,各都市の果たしている実質的な経済的機能の
分析などの重要な基礎資料となっている。
このように,昼間人口に関する統計は,通勤・通学者の流入,流出の激しい都市部と
その周辺では特に重要なものとなっているが,国勢調査で従業地・通学地が共に調査さ
れるようになったのは,昭和35年の調査からである。
国際的には,ECE(国連ヨーロッパ経済委員会)の人口・住宅センサスに関して,
従業地が基本的調査事項,通学地が他の有用な調査事項とされ,国内の各行政区域で従
事する者の数を集計すべきであると勧告している。
(13)東京都特別区部は324万人の流入超過
平成7年の調査による通勤・通学人口やこれを調整した昼間人口の結果は,次のとお
りである。
①
我が国の通勤・通学者数は6347万人である。このうち,自市区町村内で通勤・通
学する者が3278万人で,通勤・通学者全体の51.6%を占め,県内の他市区町村へは
2451万人(38.6%),他県へは619万人(9.8%)がそれぞれ通勤・通学している。
この通勤・通学者の推移をみると,平成2年までは,自市区町村より他市区町村
への通勤・通学者の割合が伸びて,通勤・通学の遠距離化が進んでいたが,7年は
2年とほぼ同じ割合となっている。
②
東京都特別区部に居住している就業者・通学者は496万人で,そのうち,区部以外
に通勤・通学している者(流出人口)は46万人,区部以外から通勤・通学している
者(流入人口)は369万人となっており,この結果,区部における昼間の就業者・
通学者は819万人で,324万人の流入超過となっている。
区部への流入人口は,埼玉県から105万人,神奈川県から97万人,千葉県から87
万人と,この3県で流入人口の4分の3以上を占めており,都下や茨城県からの流
入出を含め,区部の内外に朝夕,400万人以上の人が通勤・通学のための移動を行
っている。
③
東京都特別区部の昼間人口は1119万人で,夜間人口の794万人を326万人上回って
おり,夜間人口を100とした昼夜間人口比率は141.0となっている。区別に昼夜間人
口比率をみると,都心部の千代田,中央,港の3区,副都心の新宿,渋谷の2区及
びこれらの隣接区である文京,台東,墨田,江東,品川,目黒,大田,豊島の8区
の計13で昼間人口が夜間人口を上回っている。なかでも千代田区では,夜間人口の
3.5万人に対し昼間人口は95万人で27倍に達している。そのほか,中央区(11倍),
港区(6倍),新宿区(3倍),渋谷区(3倍)で昼・夜間人口の差が目立ってい
る。
このように通勤・通学による人口の流動は大都市を中心として多く生じており,
大阪市,名古屋市などでも中心部の昼間人口は,その周辺から多くの人口が流入し
ている。
(14) 緯度・経度で区画する地域メッシュ統計
近年における社会・経済情勢の複雑化,多様化に伴い,地域に関する各種の統計情報
の需要がますます増大している。これと相まって,統計情報もより詳細な地域情報の整
備が要請されている。
地域メッシュ統計は,このような需要に応じるため,従来から各種の統計調査の地域
表章区分として用いられている市町村などの行政区域別統計とは異なる観点から区画さ
れた小地域別の統計である。
我が国におけるメッシュ統計の編成は,昭和43年ごろから始められ,既に30年余りを
経過しており,現在では,国,地方公共団体等多くの機関で各種の統計データを地域メ
ッシュ別に編成し,その結果は地域開発,都市計画,生活環境整備など多くの分野で利
用されている。
メッシュ(Mesh)という言葉は,「網の目」あるいは「ふるいの目」などの意味であ
る。つまり,地域メッシュとは,対象地域を幾つかの網の目に分けた地域区分のことで
ある。地域メッシュの区分方法には種々の方法があるが,一定の経度及び緯度間隔に基
づいて区画する方法(「経緯度法」と呼ばれる。)が最も多く利用されている。
総務庁統計局が編成する地域メッシュ統計は,経緯度を用いて区画する「標準地域メ
ッシュ」の区分によっている。この区分は,「統計に用いる標準地域メッシュ及び標準
地域メッシュ・コード」として,行政管理庁(現,総務庁)から告示されている。さら
に,この経緯度法による地域メッシュの区分方法は日本工業規格(JIS C 6304)として
指定されている。
これによると,地域メッシュは「第1次地域区画」から「分割地域メッシュ」までの
段階に分けられている。「第1次地域区画」は,経度1度,緯度40分ごとの経線と緯線
によって区画した一辺がほぼ80㎞の方形の地域である。次の段階の「第2次地域区画」
は,第1次地域区画について,経度・緯度をそれぞれ八等分し,一辺がほぼ10㎞の方形
の地域である。さらにこれを小さくしたのが「第3次地域区画」で,前者について経
度・緯度を十等分し,一辺をほぼ1㎞の方形としたものである。この第3次地域区画を
「基準地域メッシュ」と呼んでいる。この基準地域メッシュの縦・横を二等分した方形
の地域を「2分の1地域メッシュ」といい,さらに,「4分の1地域メッシュ」等の分
割地域メッシュに細分できる。
前述の行政管理庁告示では,第1次地域区画から分割地域メッシュまでを通じて,す
べての地域メッシュに統一的なコードが与えられている。
(15)小地域統計の時系列比較が可能な基本単位区別集計
基本単位区は,恒久的かつ最小の地域単位として,平成2年の調査から画定されてい
る。基本単位区別集計としては,基本単位区ごとに人口,世帯,住居等に関する結果を
集計することとしている。基本単位区は,最小の地域単位であるから,市区町村内の各
種の小地域(町丁・字,支所・出張所区,学校区,町内会,自治会,連合町内会・自治
会,保健所管轄区域,地域の特性《オフィス街,繁華街,商圏,工場地域,市街地,農
業地域など。》,選挙区,投票所区など)について,その地域を構成する基本単位区の
データを合算することにより,必要な小地域のデータを容易に作成することができる。
また,基本単位区は,恒久的な境域で画定されているので,今後は地域事象の時系列
比較が可能となる。
2 結果の利用
(1) 人口及び世帯の地域的分布と構造を明らかにして行政的に利用
国勢調査は,人口や世帯の地域分布を明らかにするとともに基本的な事項について国
内や地域別の構造を統計として提供している。さらに,これを定期的に実施,提供する
ことにより,時系列変化が得られ,統計的処理により将来の姿を推計することが可能と
なる。
国勢調査結果利用の第一は,人口及び世帯に関する基本的な姿を全国及び地域的に提
供し,行政の基本資料として利用することである。人口や世帯が行政の基であることは
当然のことであり,この姿を統計という数字で理解し,国及び地方公共団体の行政施策
の企画・立案及び政策評価に利用することである。例えば,ある地域において高齢者が
多いのか,あるいは若年就業者が多いのかを知り,それに見合った行政施策を実行(高
齢者福祉行政や若者向け設備の建設等)することである。このような利用は,すべての
調査事項について可能であり,また,各調査事項の組み合わせ集計(クロス集計ともい
う。)を行うことによって,より詳細な利用が可能となる。
また,国勢調査は全国一斉に実施され,同一の定義で統一されている。したがって,
各種の法令の中で人口総数や属性別人口を用いる場合,国勢調査の結果を利用するのが
数字の客観性において優れていることになり,実際その例も多い。これも行政利用の一
例である。
(2) 基本的な母数としての利用
国勢調査の結果は,各調査事項に関する全国及び地域の母数として利用するのが,第
二の利用である。例えば,標本調査で明らかとなった1世帯当たりの消費支出に国勢調
査で得られる世帯数を掛けると,我が国全体の世帯の消費支出が計算される。世帯の消
費支出を全数調査で調べることは不可能であるから,国や地域別の総量を計るためには
国勢調査の人口や世帯数に標本調査で得られる1人当たりや1世帯当たりの値を乗じて
総数を求める方法が用いられる。この方法は雇用者数や雇用者世帯などの属性別にも適
用できる。
国勢調査の結果を母数として用いる方法は,もう一つある。それは発生率を計算する
ときの分母として用いる場合である。例えば,出生率や死亡率を計算する際,その分子
は人口動態統計から得られる出生数や死亡数であり,その分母は国勢調査から得られる
人口となる。出生率や死亡率は人口動態統計が公表されると同時に提供されるが,この
ような率の計算には分母となる人口が必要であり,ここに国勢調査の人口が利用される。
さらに,人口1,000人当たりの交通事故発生数とか災害被災者数などの計算にも国勢調
査の人口が母数として利用される。このような利用は,人口総数だけでなく属性別にも
可能である。
なお,国勢調査の人口は5年ごとしか提供されないが,毎年の出生率等の計算に用い
る基準人口は,国勢調査人口をベースとして,その後の出生,死亡,人口移動を加減し
て計算されている。これが現在推計人口といわれるもので,国勢調査の年以外の年の10
月1日現在の推計人口が総務庁統計局から公表されている。
次に,具体的な利用例を,各種法令に基づく利用,行政上の諸施策等への利用及び人
口分析等学術研究等への利用の三つに分けて説明する。
(3) 各種法令に基づく利用
各種の法令で国勢調査の結果を使用するように定められているものも少なくない。こ
れらの法令の主なものには,地方自治法,地方税法,地方交付税法など地方公共団体に
関するものが多い。最近では,衆議院議員選挙の小選挙区割の資料として使うことが決
まった。以下に,これらの法令のうち主要なものと具体的な内容について,簡単に紹介
することとする。
ア
衆議院議員選挙区画定審議会設置法(平成6年法律第3号)
衆議院議員選挙区画定審議会は,「衆議院小選挙区選出議員の選挙区の改定に関
し,調査審議し,必要があると認めるときは,その改定案を作成して内閣総理大臣
に勧告する。」こととされている。この改定案の作成に当たって,各選挙区の人口
は,第3条において国勢調査の人口を用いることが規定されており,また,勧告の
期限は,第4条において国勢調査(統計法第4条第2項本文の規定により10年ごと
に行われる国勢調査)の結果による人口が最初に官報で公示された日から1年以内
に行うか,各選挙区の人口の著しい不均衡(注:簡易調査における人口など)その
他特別の事情があると認めるときは勧告ができると規定されている。
イ
地方自治法(昭和22年法律第67号)
地方自治法では,都道府県・市町村議会議員の定数,議会の常任委員会の数,都
道府県の部局の設置基準並びに指定都市となるための要件などに人口をメルクマー
ル(指標)として用いている。この「人口」は,同法第254条で「官報に公示された
最近の国勢調査又はこれに準ずる全国的な人口調査の結果による人口」と定義され
ている。
①
都道府県議会の議員定数の決定
注)
都道府県議会の議員の定数は,同法第90条により,「人口75万未満の都道府県
にあっては40人,人口75万以上100万未満の都道府県にあっては人口70万から5万
を増すごとに40人に1人を加えた数,人口100万以上の都道府県にあっては人口93
万から7万を増すごとに45人に1人を加えた数とし,120人を上限として,その範
囲内で条例により定めることとする。」と規定されている。
②
市町村議会の議員定数の決定
注)
市町村議会の議員の定数は同法第91条により次の範囲内で条例により定めるこ
とと規定されている。
「市町村の議会の議員の定数は,次の各号に掲げる市町村の区分に応じ,当該各
号に定める数を超えない範囲内で定めなければならない。
1
人口2千未満の町村
12人
2
人口2千以上5千未満の町村
14人
3
人口5千以上1万未満の町村
18人
4
人口1万以上2万未満の町村
22人
5
人口5万未満の市及び人口2万以上の町村
26人
6
人口5万以上10万未満の市
30人
7
人口10万以上20万未満の市
34人
8
人口20万以上30万未満の市
38人
9
人口30万以上50万未満の市
46人
10
人口50万以上90万未満の市
56人
11
人口90万以上の市
人口50万を超える数が40
万増すごとに8人を56人
に加えた数(その数が
96人を超える場合にあ
っては,96人)」
注)上記①、②の条文に関しては、平成15年1月1日から施行される。
③
市の設置要件
市となるべき普通地方公共団体の要件の一つとして,同法第8条第1項第1号
で「人口5万以上を有すること。」と規定している。なお,このほかの要件とし
て同項第2号以下で,中心の市街地内にある戸数が全戸数の6割以上であること,
商工業など都市的業態に従事する者及びその世帯員が全人口の6割以上であるこ
と,都市的施設などの都市としての要件を備えていることを挙げている。
④
指定都市・中核市・特例市の要件
指定都市の要件として,同法第252条の19で「政令で指定する人口50万以上の市
(以下「指定都市」という。)…後略…」と規定されている。
また、中核市の要件として,同法第252条の23で「人口30万以上を有するこ
と。」、特例市は、同法第252条の26の3で「政令で指定する人口20万以上の市
(以下「特例市」という。)…後略…」と規定されている。
⑤
都道府県議会・市町村議会の常任委員会数の決定
都道府県や市町村の議会の常任委員会の数については同法第109条で,次の基
準により条例で定めることとされている。
⑥
都
12以内
道及び人口250万以上の府県
8以内
人口100万以上250万未満の府県
6以内
人口100万未満の府県
4以内
人口100万以上の市
8以内
人口30万以上100万未満の市
6以内
人口30万未満の市並びに町村
4以内
都道府県の部局の数の決定
都道府県庁の行政組織における総務部,商工部などの「部局」の数について,
同法第158条で次のとおり規定している。
「都道府県知事の権限に属する事務を分掌させるため,条例で都に11局,道及
び人口400万以上の府県に9部,人口250万以上400万未満の府県に8部,人口100
万以上250万未満の府県に7部,人口100万未満の府県に6部を置くものとす
る。」
ウ
地方税法(昭和25年法律第226号)
地方税法では,同法第310条で個人の均等割の税率を定めているが,これによる
と標準税率を,
人口50万以上の市
年額3,000円
人口5万以上50万未満の市
年額2,500円
その他の市町村
年額2,000円
と定め,これを超えて課する場合においても,各区分ごとにそれぞれ3,800円,
3,200円,2,600円を超えて課することができない旨を定めている。このように人
口規模に応じた規定となっているが,この法律における「人口」の定義は,地方
自治法の例によっている。このほか,同法第349 条の4でも国勢調査人口を用い
る規定がある。
エ
地方交付税法(昭和25年法律第211号)
地方交付税の総額は,国税3税(所得税,法人税及び酒税)の32%,消費税の
29.5%及びたばこ税の25%と定められている。
地方交付税による交付金は,地方公共団体における財政の均衡化,自主的,計
画的な行政運営に果たす役割は大きく,現在ではほとんどの地方公共団体が地方
交付税交付金を受けているが,地方財政計画によれば,平成6年度の地方交付税
交付額は地方財政の歳入総額の19.2%に当たる15兆5020億円が見込まれた。
この交付額の算定に当たって,地方公共団体の行政に要する標準的な経費の測
定単位として,国勢調査の人口(人口,市部人口,町村部人口,高齢者人口,都
市計画区域における人口,林業,水産業及び鉱業の従業者数)及び世帯数を用い
ることが,同法第12条で規定されている。また,同法第13条では,寒暖の地域差,
人口規模などにより単位当たりの費用に差があるものについては,測定単位を補
正することができるように規定されているが,この補正にも国勢調査の結果が用
いられている。
オ
都市計画法(昭和43年法律第100号)
都市計画法では,都市計画の策定に当たっては,人口規模,産業別人口を始め
いろいろな事項についての現況と推移を勘案して作成するよう,同法第5条,第
6条及び第13条で規定し,同法施行令で,この法律及び政令に規定する人口とし
て国勢調査の結果を用いるよう定めている。
カ
過疎地域自立促進特別措置法(平成12年法律第15号)
過疎地域自立促進特別措置法は,過疎地域活性化特別措置法が失効したことに
伴い制定された法律である。この法律では,過疎地域に指定する場合の人口の要
件として,①国勢調査の結果による市町村人口が7回前(35年前)の国勢調査人
口より30%以上減少した場合,②同期間の人口減少率が25%以上であって,国勢
調査の結果による人口のうち65歳以上の人口が24%以上の場合,③同期間の人口
減少率が25%以上であって,国勢調査の15歳以上30歳未満の人口が15%以下の場
合,④24年間の人口減少率が19%以上の場合のいずれかに該当することを挙げて
いる(同法第2条及び第32条)。このほかに定められている要件をも満たし過疎
地域に指定されると,教育施設,児童福祉施設,消防施設などにおける国の補助
金が大幅に増額されるほか,道路,医療,交通の確保対策などの面で多くの便益
がもたらされる。
キ
その他の法令
以上の法令のほかにも,公職選挙法,政党助成法,租税特別措置法,農村地域
工業等導入促進法,災害対策基本法施行令,交通安全対策特別交付金等に関する
政令,低開発地域工業開発促進法施行令,地方道路譲与税法施行規則など多くの
法令で国勢調査の結果を用いる規定を設けている。
(4) 行政上の諸施策等への利用
ア
少子・高齢化対策の基礎資料
国際連合の基準では高齢者人口の割合が7%を超えた国を「高齢化した国」と
定義している。昭和45年の国勢調査結果によって我が国の65歳以上人口の割合が
初めて7%を超えたことが明らかとなり,本格的高齢化社会が始まった。高齢者
の割合はその後も上昇し続け,平成7年調査結果では14.5%に達している。昭和
45年当時から,将来我が国の高齢者割合が20%を超えることが予想されており,
高齢化対策は長期の行政課題であった。ところが最近はこれに加えて「少子・高
齢化社会」という言い方が一般化している。こうなった背景は,高齢化が予想を
上回るスピードで進み,その要因が出生率の急速な低下,すなわち少子化にあっ
たからである。かつては36%を超えていた15歳未満の子供の割合は,急速に低下
して平成9年に65歳以上人口割合と逆転し,その後もこの差は広がりつつある。
今や,少子・高齢化対策は我が国行政の最大課題の一つとなった。平成12年1月
の第147回通常国会における総理大臣の施政方針演説でも「世界に例を見ない少子
高齢化が進行する中で,国民の間には社会保障制度の将来に不安を感じる声も出
ております。医療,年金,介護など制度ごとに縦割りに検討するのではなく,…
(略)… 総合的な検討が求められております。」と高齢化対策の必要性にふれ,
さらに「急速な少子化は社会全体で取り組むべき問題であります。」と少子化に
ついても言及している。また,平成12年4月からは高齢化対策の重要な柱となる
「介護保険制度」が始まるとともに,少子化についても「少子化対策推進関係閣
僚会議」を設置してその対策に本腰を入れている。
国勢調査は高齢者と子供の数と割合を全国及び地域別に提供し,この「少子・
高齢化問題」の基礎資料となっている。さらに,一人暮らしの老人の数など高齢
者がどのような世帯構成の中で生活しているか,あるいは子供が祖父母と同居し
ているかなど高齢者や子供がいる世帯に関する詳細な統計も提供している。少
子・高齢化問題の実態を数字として発信してきたのは国勢調査であり,今後もこ
の問題について詳細な現状を明らかにしていく必要がある。
イ 地域開発計画への利用
人口の地域的な分布や地域ごとの増減は,地域発展の指標として,また,道路,
きょうりょう
橋梁 ,港湾,空港,上下水道,学校,福祉施設,公園,避難場所などの様々な
施設計画の基準として,総合開発計画の策定に重要なものである。
地方・地域の開発計画は,全国ベースの総合開発計画と調和を取りながら,い
かに住民の住みよい環境の拡充・整備をしていくかが課題である。開発計画に当
たっては,現在の状況の正確な把握と分析が必要であり,また,長期の予測展望
が欠くことのできないものである。人間が生活する上でその地域がどれほどの満
足できる環境をもっているかは,自然,人口,産業,財政,社会保障,教育,文
化,保健,安全性,利便性等の指標によって測られる。そして,満足できる生活
環境とは,これらが各々調和を保ちながら一定の水準にあることが必要である。
このためには,地域に関する正確な統計情報が必要となる。
国勢調査は,もともと地域別の統計を提供するということが一つの目的であっ
た。さらに,全数調査である国勢調査は市区町村という最小行政区域の結果はも
ちろんのこと,それ以下の小地域について人口に関する結果提供が可能である。
特に,恒久的統計地域単位として導入された「基本単位区」を用いることによっ
て,小地域の時系列比較が可能となり,行政区域以下の小地域の地域開発に関す
るデータ利用の利便性が格段に向上している。
ウ
環境整備のための基礎資料
環境という言葉は,大気,海洋,河川などの自然環境から,私たちの生活を取
り巻く住宅,道路,上下水道などまで,その意味は非常に広いものである。最近,
環境に関して,特に目立ってきているのは,環境問題を日本という一国の問題と
してとらえるのではなく,世界的な視点でとらえようとする動きである。地球温
暖化防止対策というのがその典型である。平成9年12月には,この問題の議論を
行うため「気候変動枠組条約第3回締約国会議」(通称「地球温暖化防止京都会
議」という。)が開催され,「温室効果ガス」(特に,二酸化炭素)の排出削減
について議論された。そこでの議論に出てくるものの一つに「人口一人当たり排
出量」という考え方がある。これを計算するためには当然のことながら,その国
の人口総数が必要となる。我が国の国勢調査を始めとして,各国が実施する人口
センサスが,この計算のための基礎資料となる。
平成9年度の我が国の「環境白書」は,古代の地中海のクレタ島において,豊
富な自然資源によってもたらされた文明が人口の増加によって滅亡したことを例
として,現在の世界的規模の人口増加がもたらす環境破壊の危険性を述べ,それ
を避けるため,物質の「循環」と自然との「共生」の社会システムを構築すべき
と強調している。そして,国土を「圏域」(「地方生活圏」,「広域市町村圏」,
「定住圏」などの人間の活動範囲から形成される地域と「流域圏」などの自然地
域をいう。)に分け,圏域ごとに「循環」と「共生」を図るよう提言している。
ここでいう人間の活動範囲から形成される「圏域」を設定するためには,地域に
関する詳細な人口統計が必要となり,国勢調査の結果がここに利用される。また,
国勢調査の結果は,設定された「圏域」内の人口あるいは属性別人口としても利
用される。
エ
防災対策及び防災計画での利用
「災害は突然やってくる。」とは昔から言われていることである。ここでは実際
に起きた災害に利用された国勢調査結果の例を紹介する。
平成7年1月17日午前5時46分,神戸市を中心とした大地震が発生し,死者6
千人以上,負傷者4万4千人に達する大災害となった。「阪神・淡路大震災」で
ある。
政府は,早速「阪神・淡路復興対策本部」(本部長:内閣総理大臣)を設置し,
関係行政機関が講ずる復興のための施策に関する総合調整の体制を整備し,国,
地方公共団体一体となって復興に向けて動き出した。
復興が軌道に乗る中で,平成7年国勢調査が被災地域も含めて実施された。被
災者及び被災地域の人口・世帯の実態を知るため,上記復興対策本部及び兵庫県
は,国勢調査結果の早期提供及び地方集計を希望した。統計局・統計センターで
は,要望に応えるべくデータ確定と提供及び集計作業を進め,集計結果は平成8
年10月に復興対策本部に提出されている。阪神・淡路大震災発生からほぼ9か月
後に行われた平成7年国勢調査時に神戸市内などには40,000に近い仮設住宅が存
在していた。この結果は復興初期の実態を表すものと位置付けられ,その後の復
興計画の基礎資料とされている。その後,平成10年住宅・土地統計調査結果でも
被災地域の復興状況を知ることができたが,今回の平成12年国勢調査によって震
災後ほぼ5年の復興状況が把握できる。このように,国勢調査は大震災があった
場合,その被災状況や復興状況を正確に把握するものとして利用できる。
平成12年3月31日に北海道の有珠山が22年7か月ぶりに噴火した。数日前から
火山性地震が頻繁に起こり,噴火がほぼ予知できたことから前日には周辺1市2
町の住民に避難勧告が出されたため,噴火に伴う負傷者は出なかった。主噴火口
からの3km圏,5km圏の地域と人口をCMSデータで見ると,図のとおりである。
これによると,実際の避難対象人口は,主噴火口を中心とした5km圏内人口とほ
ぼ一致している。
また,平成11年9月30日に発生した茨城県東海村における放射能漏れ事故の際
にも,事故現場から一定距離以内にある人口が国勢調査のCMSデータを用いて
瞬時に計算されている。その結果は,事故現場から1km圏内が2,094人,5km圏内
が64,343人であった。この人達は,実際に被爆したわけではないが,もし事故の
規模が大きくなった場合は被爆の可能性が強い人達である。CMSデータは,小
地域統計であり,ほぼ正確な同心円内の人口が算出できることから,このように
災害が生じたときの避難人口を推計したりするのに利用される。
我が国で起こる災害には,地震,火災,洪水,津波など種々あるが,狭い国土
に多くの人口を抱えていることから防災対策は避けられない問題である。災害は,
多くの場合予知が難しい。そこで,住民の安全を守り,災害の規模をできるだけ
小さく食い止める防災対策が必要となり,そのための行政施策が重要となってく
る。
防災対策でまず必要なことは,対象となる地域あるいは都市の状況の正確な把
握である。地理的要因はもちろん,人口,人口密度あるいは昼間人口等によって
も対策の立て方は異なってくる。例えば,人口の過密地帯である人口集中地区で
地震が発生すれば,それに伴い火災が起こるといった,いわゆる二次災害による
被害が大きくなる可能性が高い。特に,大都市では急激な人口集中により防災上
の空間又は非難場所としての緑地帯などを考慮する余裕もないまま,家屋密集地
域が形成されてきた。したがって,ひとたび災害が起こると,過疎地に比べて,
被災者の数は一層多くなるとともに,被害の規模も大きくなる。このような都市
部の防災対策の基礎資料として,国勢調査で得られる人口,人口密度,人口分布
などが利用される。消防施設,避難場所等の設置に当たっては,現在の人口とそ
の将来予測値が必要となる。また,昼と夜の人口が著しく異なる都市部について
は,防災のための設備と機能は,災害の発生が昼間,夜間のいずれであっても十
分に対応できるよう考慮されなければならない。そのための基礎資料として,通
勤,通学に伴う人口の流れと量が把握できる昼間人口に関する結果が利用される。
上記のような調査結果の利用のほかにも,労働政策,産業政策,住宅政策など
国勢調査結果の利用は多岐にわたっている。
オ
その他
平成7年は第2次世界大戦終了後50年目に当たった。同年11月に公表された
「国民生活白書」は,「戦後50年の自分史―多様で豊かな生き方を求めて」を主
題として,戦後の国民生活や国民意識の変化を分析している。分析には図をふん
だんに使って,戦後50年間の変化を明らかにしていることから,当然国勢調査の
利用も多い。国勢調査が利用されている図の題名を幾つか挙げると,次のような
ものがある。①昭和戦後世代の台頭,②ホワイトカラーの増加した職業別構造,
③高齢者の同居率は年々減少,④核家族化は頭打ちで単独世帯が増えている,⑤
男女とも未婚率が上昇,⑥男が多くなった男女別人口比,等々である。これらは,
国勢調査結果の解説でも述べられていることであり,戦後の国民生活の変化の象
徴でもある。
上記は各省庁が公表する白書における国勢調査の利用例である。白書類は,行
政課題の発掘とその対策について述べる必要があることから,現状の把握を行わ
なければならず,そのため統計利用が多い。特に国勢調査は,行政の基本である
人口及び世帯に関する統計が,全国及び地域別に提供されることから,「青少年
白書」,「経済白書」,「労働白書」等,各種の白書で利用されている。
(5) 人口分析などに利用
国立社会保障・人口問 題研究所が発表している将来推計人口や,将来推計世帯は,
いずれも国勢調査の結果を基に推計されるものである。また,地域別の人口推計も
国勢調査結果を利用して幾つかの機関で行われている。将来の人口,世帯数は,今
後の福祉経費,医療経費等を推計する基となるものであり,各方面で利用されてい
る。
さらに,平均寿命などをみる生命表の計算も国勢調査の年齢別人口が基になって
いる。このように人口学研究においては,国勢調査は重要な資料となっており,こ
のほか社会学,経済学,地理学などの研究にも利用されている。
国民所得の計算においても,そのベンチマーク(ある時の水準)として国勢調査
の結果が用いられている。例えば,家計の最終消費支出の計算には世帯数が,雇用
者所得の推計には産業別雇用者数がそれぞれ用いられている。また,県民所得の推
計においても同様に利用されている。
このほか,国勢調査の結果は,会社・企業にも広く利用されており,特に,需要
予測のため,地域別人口や年齢別人口の結果に強い関心が持たれている。
(6) 他の統計への利用
国勢調査は,国内に居住するすべての人,世帯を調査することから,個人あるい
は世帯を調査対象とする各種統計調査のフレームとしてそのデータが利用される。
統計調査を設計する際,その調査の性格と,労力や費用などの経済性,調査結果の
早期集計と公表など迅速性,また,調査結果の質と正確性等を考え合わせ,調査対
象全部を調査する全数調査が不向きと判断された場合,調査対象の一部を取り出し
て調査する標本調査により行うことになる。例えば,統計局で毎月行っている労働
力調査や家計調査,5年ごとに行われる就業構造基本調査や全国消費実態調査は,
国勢調査の調査区をフレームとして標本設計を行っている。
また,他の統計で推計などを行う際にも,全数調査である国勢調査の結果をベン
チマーク(又はベンチマークの基礎資料)として用いている。労働力調査や住宅・
土地統計調査がその例となる。
Fly UP