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平成 11 年度調査研究の概要

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平成 11 年度調査研究の概要
平成 11 年度調査研究の概要
平成 11 年度に実施した調査研究は、
① 運転行動計測機を活用した安全運転教育手法に関する調査研究(Ⅱ)
② 高速自動車国道における自動二輪車、軽自動車の交通管理の在り方に関する調査研究
③ 運転者の身体能力の変化と事故、違反の関連、及び運転者教育の効果の持続性に関する調査研究
の3テーマです。
(1)運転行動計測機を活用した安全運転教育手法に関する調査研究(Ⅱ)
この調査研究の目的は、自動車安全運転センター安全運転中央研修所において、個々の研修生の運転行動
に関する基礎データを、従来の定性的な把握方法に代って、定量的に把握することによって、従来明らかに
することができなかった運転者の特性を解明し、
より効果的な実技指導を行おうとするものです。
このため、
平成 10 年度のブレーキングに続いて危険回避の運転行動についての基礎データを求めるため、若年層(20
歳代)
、中年層(40 歳代)
、高年層(60 歳代)の一般運転者などを被験者として、実車走行による障害物回避
と制動灯反応の実車走行実験を、安全運転中央研修所の模擬市街路や一般の道路について行いました。
その結果、障害物回避実験から、障害物を回避する際には、高年層の者ほど、まずブレーキで減速してい
ることが判明しました(図1−1)
。見方を変えると、一般的に陸上の輸送機関である自動車は、危険が迫っ
たときにはブレーキで減速することが好ましいと言われますが、高年層ほどこの習慣を身に付けていると言
えます。また、制動灯反応実験から、年齢の高いほど反応速度に対する個人差が大きいので(図1−2)
、高
年層ほど、速度を控えめにして、また、車間距離を長めにとって運転する必要のあることが判明しました。
ブレーキ操作
ハンドル反応
速度10km/h
ブレーキ操作
ハンドル反応
速度10km/h
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
教官
反応時間(秒)
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
60歳代
反応時間(秒)
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
40歳代
反応時間(秒)
反応時間(秒)
20歳代
ブレーキ操作
ハンドル反応
速度10km/h
5.0
4.5
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
ブレーキ操作
ハンドル反応
速度10km/h
注1 ハンドル反応時間(◆)は、単独状態で 30km/h 走行を行い、左右どちらかのランプが点灯した場合、その方向にすば
やくハンドル操作で回避を行うものとして、ランプ点灯からハンドル操作開始までの反応時間を計測した。
注2 ブレーキ操作時間(◇)については、回避行動時のブレーキ操作は任意としており、各被験者のハンドル回避反応時間
とともに、その際のランプ点灯からブレーキ操作開始までのブレーキ操作時間を計測・比較した。
注3 ランプ点灯から速度が 10km/h に下がるまでの時間()についても、合わせて計測・比較した。
図1−1 年齢層別のハンドル回避反応時間とブレーキ操作時間(被験者順の散布図)
1
1.8
1.6
反応時間(秒)
1.4
1.2
1
0.8
0.6
0.4
0.2
0
20歳代
40歳代
60歳代
教官
20歳代
20∼40km/h
20∼40km/h
20歳代
40歳代 60歳代
データ数(件)
19
12
28
平均反応時間(秒)
0.97
0.84
0.95
0.273
0.188
0.406
標準偏差(秒)
40歳代
60歳代
教官
40∼60km/h
40∼60km/h
20歳代
40歳代 60歳代
2
81
90
85
0.70
0.90
0.91
0.87
0.188
0.267
0.340
教官
教官
37
0.95
0.239
図1−2 走行速度別、年齢層別の制動灯に対する反応時間
(2)高速自動車国道における自動二輪車、軽自動車の交通管理の在り方に関する調査研究
高速自動車国道における軽自動車と自動二輪車の最高速度は 80km/h であり、大型乗用自動車、普通乗用自
動車等による最高速度 100km/h よりも低い速度が設定されています。一方、車両性能の向上、高速自動車国
道におけるトラクタートレーラーの通行規制の実施に伴う交通環境の変化等がみられるため、軽自動車と自
動二輪車を 100km/h で走行させた場合について、安全確保の均衡等の観点から交通管理の在り方の検討に資
する基礎データを得ようとするものです。このため、軽自動車及び自動二輪車の最高速度 100km/h 走行がこ
れらの運転者に与える生理面、心理面の影響及び車両挙動について、安全運転中央研修所の高速周回路にお
ける実車走行実験などを行いました。
その結果、軽自動車及び自動二輪車による 100km/h の運転は、車両性能面、運転者の生理面・心理面又は
車両挙動のいずれにおいても問題となる点は認められませんでした(図2−1、図2−2)
。また、高速自動
車国道において交通事故が発生した場合には、速度が速くなるにしたがって、軽自動車、自動二輪車、普通
乗用車とも被害の大きくなる傾向のみられることが判明しました(図2−3)
。一方、高速自動車国道におけ
る安全で円滑な交通環境を実現するため、軽自動車と自動二輪車の最高速度を引き上げることによって、交
通流の整合化が図られ、交通事故の誘発の要因となり得る追越等の事象が減少すると推定され、事故予防の
観点からは改善が期待されるとの結論を得ました。
2
55
未
満
∼
5
60 9
∼
6
65 4
∼
6
70 9
∼
7
75 4
∼
7
80 9
∼
8
85 4
∼
8
90 9
∼
9
95 4
∼
10 99
0∼
10 104
5∼
11 109
0∼
1
11 14
5以
上
55
未
満
∼
5
60 9
∼
6
65 4
∼
6
70 9
∼
7
75 4
∼
7
80 9
∼
8
85 4
∼
8
90 9
∼
9
95 4
∼
10 99
0∼
10 104
5∼
11 109
0∼
1
11 14
5以
上
80㎞/h
80㎞/h
未
満
∼
59
60
∼
6
65 4
∼
6
70 9
∼
7
75 4
∼
7
80 9
∼
8
85 4
∼
8
90 9
∼
9
95 4
∼
10 99
0∼
10 104
5∼
11 109
0∼
1
11 14
5以
上
55
未
満
55
∼
5
60 9
∼
6
65 4
∼
6
70 9
∼
7
75 4
∼
7
80 9
∼
8
85 4
∼
8
90 9
∼
9
95 4
∼
10 99
0∼
10 104
5∼
11 109
0∼
1
11 14
5以
上
55
未
満
55
∼
5
60 9
∼
6
65 4
∼
6
70 9
∼
7
75 4
∼
7
80 9
∼
8
85 4
∼
8
90 9
∼
9
95 4
∼
10 99
0∼
10 104
5∼
11 109
0∼
1
11 14
5以
上
6000
6000
5000
5000
発 4000
生
3000
件
数 2000
発 4000
生
3000
件
数 2000
1000
1000
0
0
瞬時心拍数の分布(軽貨物車)
7000
6000
3500
3000
5000
発
生 4000
件 3000
数
2000
2500
発
生 2000
件 1500
数
1000
1000
0
500
0
瞬時心拍数
100㎞/h
瞬時心拍数の分布(自動二輪400cc)
6000
発 4000
生
3000
件
数 2000
5000
1000
0
瞬時心拍数
100㎞/h
図2−1 車種別の瞬時心拍数の分布
3
55
80㎞/h
55
55
55
瞬時心拍数の分布(普通乗用車)
瞬時心拍数の分布(軽乗用車)
瞬時心拍数
瞬時心拍数
100㎞/h
80㎞/h
80㎞/h
100㎞/h
瞬時心拍数の分布(自動二輪750cc)
瞬時心拍数
100㎞/h
軽乗用車全被験者
3.00
ヨーレート(deg/s)
2.00
1.00
0.00
-1.00
-2.00
-3.00
序盤80㎞/h
序盤100㎞/h
中盤80㎞/h
中盤100㎞/h
終盤80㎞/h
終盤100㎞/h
終盤80㎞/h
終盤100㎞/h
終盤80㎞/h
終盤100㎞/h
終盤80㎞/h
終盤100㎞/h
軽貨物車全被験者
3.00
ヨーレート(deg/s)
2.00
1.00
0.00
-1.00
-2.00
-3.00
序盤80㎞/h
序盤100㎞/h
中盤80㎞/h
中盤100㎞/h
自動二輪750cc全被験者
3.00
ヨーレート(deg/s)
2.00
1.00
0.00
-1.00
-2.00
-3.00
序盤80㎞/h
中盤80㎞/h
中盤100㎞/h
自動二輪400cc全被験者
3.00
ヨーレート(deg/s)
序盤100㎞/h
2.00
1.00
0.00
-1.00
-2.00
-3.00
序盤80㎞/h
序盤100㎞/h
中盤80㎞/h
図2−2 直線走行時におけるヨーレートの分布
4
中盤100㎞/h
120.0%
普通乗用車
軽自動車
自動二輪車
合計
死亡・重傷率
100.0%
80.0%
60.0%
40.0%
20.0%
180
160
140
120
100
80
60
40
20
停止中
0.0%
図2−3 危険認知速度別の死亡・重傷率(全路線)
危険認知速度(km/h)
注1
2
3
4
第 1 当事者及び第 2 当事者(いずれも運転者)の死亡・重傷率
110km/h,130km/h,150km/h,170km/h の値は、事故統計になく、前後の速度の値の平均値である
線及びマーカーがないところは事故が発生していないことを示す
平成元年から平成 10 年の合計
(3)運転者の身体能力の変化と事故、違反の関連、及び運転者教育の効果の持続性に関する調査研究
この調査研究の目的は、運転者の年齢、視力等の身体能力と事故又は違反との関係を調査するとともに、
運転者の免許取得後の意識の変化を調べ、今後の運転者対策を効果的に進めるための基礎資料を得ようとす
るものです。このため、若年層(20 歳代)や高年層(60 歳代)の一般運転者などを対象として、実車走行に
よる右折実験と車線変更実験を、安全運転中央研修所の模擬市街路などにおいて行いました。
その結果、交差点などで右折する際には、対向車の位置や速度を正しく判断して、対向車との間に十分余
裕のある距離を保つことが必要ですが、年齢や運転経験にかかわらず、対向車の速度が高いほど、右折時の
余裕が少なくなっていたり、視力の悪い人ほど右折時の余裕が少なくなっている傾向がみられたので、この
ような人ほど十分に余裕のある右折を心掛ける必要のあることが判明しました。また、高年層は、速度や距
離に対する判断能力の個人差が大きいので、若年層以上に注意して運転する必要のあることも分かりました
(図3−1)
。
さらに、車両通行帯のある道路で車線変更をする際には、後続車の位置や速度を判断して、後続車との間
に十分余裕のある車間距離を保つことが必要ですが、年齢や運転経験にかかわらず、後続車の速度が高くな
ればなるほど、車線変更判断時間が短くなっているので(図3−2)
、十分余裕のある車線変更を心掛け、こ
の場合も、高年層は、概して若年層以上に注意が必要です。
5
-10
0
10(秒)
20歳代(経験3年以下)
昼間
40㎞/h
20歳代(経験6年以上)
60歳代(経験6年以上)
20歳代(経験3年以下)
昼間
50㎞/h
20歳代(経験6年以上)
60歳代(経験6年以上)
20歳代(経験3年以下)
昼間
60㎞/h
20歳代(経験6年以上)
60歳代(経験6年以上)
注 右折余裕時間とは、被験者が右折できると判断した時間(右折をしたら対向車と接触してしまうと判断するギリギリの距離
÷対向車の速度)と、被験者が実際に右折に掛かった時間との差である。
図3−1 対向車速度別、運転者属性別右折余裕時間
0
20
40(秒)
20歳代(経験3年以内)
昼間
50㎞/h
20歳代(経験6年以上)
60歳代(経験6年以上)
20歳代(経験3年以内)
昼間
60㎞/h
20歳代(経験6年以上)
60歳代(経験6年以上)
20歳代(経験3年以内)
昼間
70㎞/h
20歳代(経験6年以上)
60歳代(経験6年以上)
注 車線変更判断時間は、40km/h で走行する被験者が車線変更をしたら後続車と接触してしまうと判断するギリギリの後続車
との距離を、後続車と自車の速度差で割った値である。
図3−2 後続車速度別運転者属性別車線変更判断時間
6
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