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人工光環境下でのネギ栽培可能性に関する 研究 - MIUSE

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人工光環境下でのネギ栽培可能性に関する 研究 - MIUSE
Master's Thesis / 修士論文
人工光環境下でのネギ栽培可能性に関する
研究
山口, 智美
三重大学, 2007.
三重大学大学院生物資源学研究科博士前期課程共生環境学専攻
http://hdl.handle.net/10076/9168
修士論文
人工光環境下でのネギ栽培可能性に関する研究
山口
智美
2006年度
三重大学大学院
共生環境学専攻
生物資源学研究科
生物環境制御学研究分野
目
次
第1章緒言…===…….……=…………==…===………………===.…………===‥-・・・・-1
第1節研究背景
第2節論文構成
第2章ネギの性状と植物としての位置..……..…=….………...・--・・・-・・・--==--‥3
第1節ネギの形態的特性
第2節ネギの生態的特性
2.2.1.ネギの成育と環境
2.2.2.品種による特性の違い
2.2.3.食品価値
第3章ネギの価格・卸売量について….…=….…==…….….…….….…===………==-7
第1節調査方法
第2節価格・卸売量の動向
第4章分光分布の測定とR/FRの計算==………….……...……=….-‥===--==
ll
第1節はじめに
第2節方法
第3節結果および考察
第5華人工環境下でのネギ栽培実験=…==…=……..…….…=….......……………….18
第1節はじめに
第2節材料および方法
第3節結果および考察
5.3.1.茎径
5.3.2.生体重
5.3.3.草丈
5.3.4.乗数
5.3.5.葉先枯れ(最長菓・次の外葉)
5.3.6.乾物重
第4節まとめ
第6章露地栽培ネギとの比較=………..…….…..…….……=…….....….…...…..…==‥35
第1節調査方法
第2節結果および考察
第7章結言………………..…=….===...…=……....….……..…=….....….…==…....……38
第1節まとめ
第2節今後の課題
参考文献=…..…=………..…….…==……....…==……=…...…….…….......…==….........39
ifl
第1章
第1節
緒言
研究背景
露地栽培のネギは,秋に播種し春に仮植え、真夏の7月末に株を掘り上げて1ケ月
間天日で乾燥させた後、 8月下旬定植し11月に収穫を始める,という過程で播種から
収穫までに約一年の期間を必要とし1),生産期問および生産コストのかかる作物であ
る.さらに,大気汚染や連作による土壌汚染が原因とされる障害2)3),アブラムシによっ
て媒介されるウイルスによる障害4),ネギアザミウマ,ネギコガ,ネギハモグリバェなどと
いった害虫による障害がある5).ネギを食害する害虫のうち,特に昨今問題になってい
るのはハスモンヨトウ,シロイチモジョトウである.これらは,幼虫がネギの葉身内部に
入り込み,内側から食害するのが特徴である.しがって,農薬を散布しても直接幼虫に
薬剤がかからないため,接触毒の薬剤では効果が期待できない.さらに2齢幼虫まで
しか薬剤の効果がないことが,防除をより困難にしている6).
そこで光,温湿度,二酸化炭素濃度,培養液などの環境条件を植物にとって好適に
人工的に制御し,季節に関係なく自動的に連続生産できるシステム7)である植物工場
においてのネギ生産が期待される.植物工場では外界との物理的遮断がなされるた
め,外界の影響を全く受けず害虫の侵入も防げるため,障害の発生が無く,完全無農
薬の作物が栽培できる8).
しかし,植物工場には上記のようなメリットがある一方で,建設費やランプ電力,維持
管理費などのランニングコストが高いというデメリットもある9).植物工場で用いる光源
開発の例として,山口らがランプの特性をPPF効率とⅣFR値を用いて検討10)し,山口
らが実験により試作メタルハライドランプがレタスの成長に及ぼす影響を検討11)した.
そこで本稿では,この試作メタルハライドランプ,メタル-ライドランプ,高圧ナトリウムラ
ンプの3種類のランプを光源とする人工光型植物工場において,ネギ栽培を行い,そ
の成育を調査するとともに露地栽培のものとの外観比較を行い,その栽培可能性を検
討した.
第2節
論文構成
本論文は全7章から構成される.本章からはじまり,第2章ではネギの基礎的知識を
述べ,第3章では近年のネギの価格・卸売量の動向について述べる.第4章では分光
分布の測定について述べ,第5章では栽培実験の方法や結果および考察を述べ,第
6章では露地栽培のものとの比較検証をする.第7章で本研究のまとめを行う.
2
第2章
第1節
ネギの性状と植物としての位置12)
ネギの形態的特性
ネギは多年生草本で,かたく短縮した地下茎(盤茎)を有し,菓は先の尖った円筒状,
中空で菓序(葉の茎に対するつき方)1/2である.葉の下半分は葉鞘部と称し,数葉が
円心状に相重なっていて,いわゆる「白根」の部分を形成している.根はやや太いひも
状で,分岐は少ない.初夏のころ,菓の間から菓に似た中空の花茎を抽出するが,花
茎の長さは菓と大体同じで,中央部がやや肥大している.花茎の頂端には緑色の総
包に包まれた花球をつけ,花茎が伸びきったころ総包が裂開してやがて密生している
白色の小花が開花する.外菓と花茎は,種子の成熟後上部から黄変し,やがて枯れる
が,花茎の側部にできた葉芽が発育して新しい株となるため,植物体は枯死すること
なく生きつづける.しかし,越冬性の弱い一年ネギを寒地で栽培した場合には,冬の
寒さのため株全体が枯死してしまう.
第2節
ネギの生態的特性
2.2.1.ネギの成育と環境
ネギは多年生草本で,成育適温は20℃前後だが,品種によっては耐寒性がきわめ
て強く,シベリアでも越冬しうる.また,耐暑性の強い品種は熱帯にも成育する.このよ
うに,ネギは気候適温性が大きく,たとえば種子は2℃の低温でも長期間経てば発育
し,一方35℃の高温でも発芽する.土壌に対する適応性もかなり広く,
pH5.7-7.4の
間であれば正常に成育する.元来,粘質土壌でよく成育し,品質,収量ともにすぐれ
たものができ,おおむね沖積層に産地がなりたっている.しかし,根の酸素要求性は
野菜のなかでは大きいほうで,排水の悪いところでは成育が劣り,湛水がつづくと枯れ
てしまう.葉の甘味ややわらかさといった品質の点から,やや低温条件が望ましいので,
むしろ低温期によい収穫物が得られる.
3
2.2.2.品種による特性の違い
ネギの品種間にはかなり大きい生態的特性の違いがあって,それらの特性からネギ
の品種,作型が次の二つに大別される.
①夏ネギ型品種
春から秋まで成長を続ける
が,秋末になると低温のため成長が停止し,菓鞘部はいくぶん肥大して休眠状態に入
る.そして,冬は地上部が枯れて,短い葉鞘の基部だけの状態で越冬する.したがっ
て,冬の収量はあがらないが,夏から秋にかけての収穫に適する.冬期間休眠するた
め耐寒性(越冬性)が強く,東北,北陸地方の在来品種にこの夏ネギ型品種が多い.こ
れらの夏ネギ型品種は一般に品質がよく,とくに7-8月は冬ネギ型品種より商品性が
高く,収量もあがる. ②冬ネギ型品種秋から冬になって気温が下がっても,夏ネギ型
品種のように休眠に入らず,成長を続ける.そのため温暖な地方では,冬も収穫が続
けられるのでこの名がある.しかし,寒地での越冬性は劣るので,別名一年ネギと呼ば
れる.このなかには,九条ネギなどの葉ネギと千住ネギのような根深ネギとがある.以
上のほか,実際には両者の中間的な品種がある.東日本の加賀,松本,岩槻などは
夏ネギに近い中間型の品種で,冷涼地帯で作られている.また,葉ネギと根深ネギと
の中間的な越津のような品種も成立している.
2.2.3.食品価値
野菜の栄養価値は,特殊なものを除いて一般的に見た場合には,無機質とビタミン
(とくにAとC)にあるということができる.ネギの各成分量を表1に示す。他の野菜と比
較した場合,とくに目立つほどではないが適当量の無機塩類を含むほか,緑葉部では
ビタミンA,
Cがともに多く含まれているといえる.なお,軟白部にはビタミンAが全く含
まれず,
Cも緑葉部より含量が少ないことは他の軟自性野菜と同様である.ネギ類
B,
は,以上のような一般栄養価のほかに,古くから薬用植物として知られてきた.これは,
ネギ類の一種独特の「におい」のもととなるアリシン(Allicin)という成分がビタミンBlを活
4
性化し,ある種の病原菌に対して強い殺菌性を示すためである.健胃,殺菌,利尿,
発汗,整腸,駆虫などの薬効が認められている.野菜の食品価値としてもう一つあげ
なければならないことは,多くの野菜がカルシウム,カリウム,ナトリウム,マグネシウム
などアルカリ塩を多く含み,人体内で炭水化物,脂肪,蛋白によって生ずる酸を中和
し,体液を浄化している働きである.しかし,ネギ属植物はアルカリ性食品ではなく,酸
性食品とされている.これは,硫化アリール(C3H5)2Sを含んでいるので,体内で硫酸を
生じて酸性となるからである.この点では,アスパラガスや豆類の一部とともに野菜とし
て代表的なものといえる.
5
表2.1ネギの成分表(生体100g中)12)
炭水化物
カロリー
cal
根深ネギ
∫
菓ネギ
水分
蛋白質
脂質
糖質
繊維
灰分
g
g
g
g
g
g
カルシウムリン
mg
鉄
mg
mg
緑色部
24
92.4
1.7
0.2
3.9
l.0
0.8
100
51
1.0
白色部
25
93.0
1.4
0.1
4.5
0.6
0.4
29
24
0.3
25
92.5
1.6
0.2
4.1
0.9
0.7
6
第3章
第1節
ネギの価格・卸売量について
調査方法
平成17年,平成18年の最近2年間の東京と大阪の2か所の青果物卸売市場にお
けるネギの価格及び卸売量を農林水産省ホームページより調査した13).価格変動の
実態を定量化し,ネギの価格安定の必要性の把握を目的に実施した.以下の資料は
1年毎の結果を最大値と最小値および月別に取りまとめたものである.
第2節
価格・卸売量の動向
表3.1,表3.2はそれぞれ,東京大田市場と大阪本場市場での平成17年,平成18
年におけるネギの価格・卸売量の動向を表したものである.
平成17年の東京では,月平均の最高値が397円,最安値が232円でその差は■165
円であり,最大卸売量が997t,最小卸売量は400tでその差は597tとなる.大阪につ
いては月平均の最高値が489円,最安値は147円でその差が342円,最大卸売量は
279t,最小卸売量は115tとなりその差は164tである.
平成18年の東京では,月平均の最高値は511円,最安値は227円でその差は284
円,最大卸売量は987t,最小卸売量は424tでその差は563tとなり,大阪については
月平均の最高値は752円,最安値は270円でその差が482円,最大卸売量は269t,
最小卸売量は90tでその差は179tである.
表3.3,表3.4はそれぞれ最高値・最安値,最大卸売量・最小卸売量を示した月を表
したものである.なお,図中の上・中・下はそれぞれ,その月の上旬,中旬,下旬を表
している.
平成17年,平成18年の各年の東京,大阪とも最大卸売量月は12/下でネギが旬を
迎える時期となっている.逆に,平成17年の東京以外はネギの収穫時期ではない8/
中に最小卸売量月を示している.平成17年の東京,大阪と平成18年の東京では薬
7
味としての需要が増す7/下-8/中にかけて最高値となっている.
以上のことからわかるように,その時々でネギの値段や卸売量は大幅に変化する.
露地栽培のばあい,昨今の野菜価格の高騰や暴落にみられるように,天候の影響に
よって収穫量が変動し,それによって価格も大幅に変動する.悪天候続きで野菜の成
育が不十分になれば価格は高騰し,消費者は困窮してしまうし,逆に,好天続きで野
菜が成育しすぎれば価格は急落し,生産者は収入が減ってしまう.生産者の生活を守
るために廃棄処分をするという方法もあるが得策ではない.また,正月などの需要の増
す時期や旬ではない時期にも値段が上がる.このように、
1年の間の価格の大きな変
動は,消費者や生産者にとっては望ましくないことであるため,年間を通して安定した
価格が期待される.
8
表3.1平成17年におけるネギの価格・卸売量の動向
最高値
最安値
平均価格
最大卸売量
最小卸売量
(円/kg)
(円/kg)
(円/kg)
(t)
(t)
平均卸売量
(t)
東京
397
232
346.3 1
997
400
689.5
大阪
489
147
308.92
279
1 15
172.53
表3.2
平成18年におけるネギの価格・卸売量の動向
最高値
最安値
平均価格
(円/kg)
(円/kg)
(円/kg)
最大卸売量
(t)
(t)
東京
5 11
227
339.42
987
大阪
752
270
395.1 1
269
9
最小卸売量
平均卸売量
(t)
424
90
656.97
168.75
表3.3
平成17年におけるネギの最高値月・最安値月・最大卸売量月・最小卸売量月
最大
最小
最安値月
卸売量月
卸売量月
8/中
12/上
12/下
1/上
7/下
9/上
12/下
8/中
最高値月
表3.4
大阪
平成18年におけるネギの最高値月・最安値月・最大卸売量月・最小卸売量月
最大
最小
最高値月
最安値月
卸売量月
卸売量月
8/中
12/上
12/下
8/中
12/下
8/中
1/上
10
第4章
第1節
分光分布の測定とR/FRの計算
はじめに
植物成育に及ぼす光環境の影響は,主に光合成と光形態形成に関与する12).光合
成は植物成育に必要なエネルギーと同化物を与え,
PPFD(光合成光量子束密度:
photosynthetic
ppFDと密接に関係している.
photonflux
density)とはエネルギーでは
なく,光の粒子である光量子(光子)の個数で表現した単位である.光合成は葉緑素に
入射する光量子の数によって左右される.葉緑素の吸収波長域である400nmから
700nmの波長での光量子が単位時間・単位面積あたりに入射する個数を示したのが,
光合成光量子束密度である. PPFDの値が高ければ高いほど光合成が盛んに行われ,
ブドウ糖の生産が増加し,結果,乾物重の増加につながる11)
光形態形成は光環境にしたがって成長と発育を制御する.植物は質,量,方向,周
期といった光の状況を感知し,最適な成育を得る.植物は赤色光/遠赤色光を吸収
するフィトクロム,青色光/uvAを吸収する光受容体,
uvBを吸収する光受容体の
3種類の色素により光(290-800nm)を感知できる.植物生産において付加価値に富
む高品質な植物を栽培するうえで,この光形態形成の制御は重要である.光形態形
成のうちとくに植物の形状を左右する伸長成長は, 600-700nmと700-800nmの二
つの波長域に含まれる光量子比(良/FR比)に密接な関係があり,この値が大きいと伸
長成長の抑制,逆に小さいと促進傾向になるものが多い.
植物栽培光環境を計測し,人間の目に関する光の評価法であるR/FR比を算出す
るためには,分光分布の計測が必要である14)15)
ll
第2節
方法
今回,実験に用いた試作メタルハライドランプ,メタルハライドランプ,高圧ナトリウム
ランプの3つの人工光源ランプと育苗に用いた3波長域発光形蛍光ランプの分光分
布を計測した.その後,得られた値から試作メタルハライドランプ,メタルハライドランプ,
高圧ナトリウムランプの3つの人工光源ランプのR/FR値を算出した.計測に用いた
のは大塚電子(樵)製MCPDIOOのマルチチャンネル分光放射計で線密度300本/
512チャンネルのリニアフォトダイオードア
mm,焦点距離200mmの凹面回折格子と,
レイを組み合わせたものである.分光測定装置は汎用インターフェイス(GP-IB)を通し
てパーソナルコンピュータ(松下電器産業, pANACOMM353)で制御する.
赤色光/遠赤色光光量子束比(良/FR比)(600-700nm/700-800nm)は
ratio(600-700/700-800)
A/(h
・N・109)dl
i.o.op(A)・
I.o.op(A)・l/(h
・N・109)dl
・c
・c
として算出した.
ここに
h
〟
:ブランク定数,
h-6.6256×10-34,
〟-6.0225×
:アボガドロ数,
c
:光速度,
1023[mol
1]14)
12
c-2.9979×1023[ms11],
ランプ
受光蕃
図4.1分光分布計測の概略図
13
第3節
結果および考察
図4.1に育苗に用いた3波長域発光形蛍光ランプの分光分布を示す.
3波長域発
光形蛍光ランプは,育(450nm),緑(540nm),赤(610nm)の3波長域に光を集中させ
ており,菓焼けの原因となる赤外線含量が少ない.また,熱をあまり発生しないため,
植物に近接させて照射することができ,照明効率を大幅に増大できるため栽培効率を
上げることができるという利点がある.さらに,栽培空間を省スペースにできるため成育
促進効果につながる16)
図4.2に成育実験に光源として用いた試作メタルハライドランプ,メタルハライドラン
プ,高圧ナトリウムランプの分光分布を示す.試作メタルハライドランプは400nm700nmで比較的均一に分光分布をもつ.また,
メタルハライドランプは400nm,
550nm,
700nm-800nmにも分光分布をもつ.
600nmに分光分布のピークをもち,
上では値が低い.高圧ナトリウムランプは600nm付近では値が高いが,
700nm以
400nm,
700nm付近では値が低い11)
表4.1に各ランプのR/FR値を示す.試作メタルハライドランプは1.49,メタルハライ
ドランプは1.55,高圧ナトリウムランプは0.50であり,比較として自然光11)を示すと1.01
であった.
14
200
300
400
500
600
波長(nm)
図4.2
育苗に用いた蛍光灯の分光分布
15
700
800
200
300
400
500
波長(nm)
囲4.3
成育に用いた3種類のランプの分光分布
16
表4.1各ランプのR/FR値
試作メタルハライドランプ
メタルハライドランプ
高圧ナトリウムランプ
自然光11)(比較)
17
第5章
第1節
人工環境下でのネギ栽培実験
はじめに
植物工場での人工光栽培なら天候の影響を受けることなく,一年中安定した生産量
を確保でき7)8),需要の増す時期には,光やその他の植物成育に必要な条件を調節し
て植物の成育を促進し,需要に応えることができるため,一定の値段でいつでも手に
いれることができる.そこで,ネギも前節に示すように植物工場で栽培する利点があ
る.
ネギを人工光環境下で栽培する上で解明すべきことは,
1)露地栽培のネギは成育期間が長いため植物工場において成育期間の短縮化が可
能かどうか
2)試作メタルハライドランプ,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプの3種類のラ
ンプで成育したときの成長差の有無
3)商品として市場に出されている市販ネギ(露地栽培)について3種類のランプとの外
観上の品質比較.
である.本稿では以上の3つについて検討する.
第2節
材料および方法
栽培には市販のネギ(Allium jistulosum)種子をロックウール培地(Grodan AO36/40
6/15)に400個体播種し, 1区画あたり13本の3波長域発光形蛍光ランプ(National
20SS・ENW/18
20W)をそれぞれ蛍光灯器具(National,
を光源として用い,
FL
FA21021K)に取り付けたもの
1区画あたり100個体,計4区画において連続照射下で60日間,
発芽するまでは水道水,その後は市販培養液(大塚ハウスA処方,
50%濃度)を用い
た水耕栽培により育苗した.気温20℃,湿度は56%,ランプと植物体との距離は52cm
18
である.
均一な幼植物体を120個体選択して,安定器(日本電池株式会社,
作メタルハライドランプ(cM400ED
BU
)
HL-106A)に試
,メタルハライドランプ(cM360F・L/BU)
,高圧ナト
リウムランプ(NH360L)を取り付けたものを光源とする3つのランプ処理区にそれぞれ20
個体×2をロックウールにつけたまま移植した.ここでも上記の市販培養液を用いた水
耕栽培とし,根圏にはエアーポンプにより空気を供給した.ランプと植物体との距離は
それぞれ99cm,
170岬101・m
68cm,
2s
83cm,照度は94201Ⅹ,
84361x,
89101Ⅹである. PPFDはすべて
1の同一条件であり,実験期間中は連続照射とした.
処理開始時に初期値として10固体,処理開始14,
28,
36日目に各処理区から5個
体ずつサンプリングし,茎径(菓鞘部)【mm】,生体重【g】,草丈【cm】,葉数【枚】,莱
先枯れ長(最長葉、次の外菓)
【cm】の測定を行った.さらに,80℃で48時間以上通風
乾燥機で乾燥させ,乾物重【g】を測定した17)
19
蛍光ランプ
培養液
図5.1育苗装置断面図
20
(a)育苗9日目
O))育苗32日目
(c)育苗52日目
図5.2
育苗の様子
21
ランプ
培養液
図5.3
栽培装置の断面図
22
(d)試作メタルハライドランプ
(e)メタルハライドランプ
(i)高圧ナトリウムランプ
図5.4成育実験の様子
23
(g)処理後14日目
(h)処理後28日目
(i)処理後36日目
図5.5
処理開始14日目,28日目,36日目のネギの様子
(左から,試作メタルハライドランプ,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプ)
24
第3節
結果および考察
5.3.1.茎径
図5.6に茎径の変化を示す.
14日目までは試作メタルハライドランプ,メタルハライド
ランプ,高圧ナトリウムランプはそれぞれ11.38mm,
プ間での大きな成長差はみられなかった.
28
ll.26mm,
ll.58mmで,
3つのラン
日目には試作メタルハライドランプが
17.68mmと6mm近く成長したのに対して,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプ
はそれぞれ13.67mm,
13.37mmと2mm程度の成長だった.
36日目には試作メタルハ
ライドランプは19.30mmに成長したがメタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプは
14.27mm,
14.60mmまで成長した.茎径に関しては試作メタルハライドランプの成長が
よく,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプでは差はみられなかった.
5.3.2.生体重
図5.7に生体重の変化を示す.
14日目では試作メタルハライドランプ,メタルハライド
ランプ,高圧ナトリウムランプはそれぞれ17.77g, 15.82g,
22.76gで高圧ナトリウムラン
プの成長が一番よく,次いで試作メタルハライドランプ,メタルハライドランプと続いて
いる.しかし,
28日目になると,それぞれ46.40g,
36.46g,
29.02gと,試作メタルハライド
ランプの成長が一番よく,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプの順になっている.
36
日目になると試作メタルハライドランプ,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプ
はそれぞれ42.40g,
36.98g,
39.22gとなり, 28日目よりも減少してしまった.これは, 34
日目あたりから3種類のランプ共植物体が全体的に枯れたためである.その原因とし
ては,水耕栽培に用いた培養液を注ぎ足して使用していたのだが,その濃度が高くな
ったため,と考えられる.生体重に関しては試作メタルハライドランプの成育がよかっ
た.
25
5.3.3.草丈
図5.8に草丈の変化を示す.
14日目では試作メタルハライドランプ,メタルハライドラ
ンプ,高圧ナトリウムランプはそれぞれ52.4cm,
55.9cm,
60.4cmとなり,高圧ナトリウム
ランプの成長が一番よく,最短である試作メタルハライドランプとの差は8cmであった.
68.1cm,
28日目になるとそれぞれ67.3cm,
みられなかった. 36日目では71.1cm,
69.Ocmとなり3つのランプ間で大きな差は
75.7cm,
75.6cmとなり,メタルハライドランプと高
圧ナトリウムランプに差はなく,最長のメタルハライドランプと最短の試作メタルハライド
ランプとの差は4.6cmとなった.草丈に関してはメタルハライドランプと高圧ナトリウムラ
ンプでの成長がよかった.
5.3.4.葉数
図5.9に乗数の変化を示す.
14日目までは試作メタルハライドランプ,メタルハライド
ランプ,高圧ナトリウムランプの3つのランプ間で差はみられなかった. 28日目ではそ
れぞれ11.4枚,
10.4枚, 10.0枚と,試作メタルハライドランプでの成育が一番よかった.
36日目ではそれぞれ12.0枚,
ll.0枚, ll.2枚であり,このときも試作メタルハライドラ
ンプの成育が一番よかった.
5.3.5.葉先枯れ(最長葉・次の外葉)
図5.10に菓先枯れの変化を示す.
14日目の最長葉では試作メタルハライドランプ,
メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプの3つのランプ共ocmだったが次の外葉で
は高圧ナトリウムランプと試作メタルハライドランプではOcmなのに対して,メタルハライ
ドランプでは4.2cmと高い値を示している. 28日目ではメタルハライドランプのみが最
長菓で2.Ocm,次の外葉で5.1cmとなった.
36日目では最長葉で試作メタルハライドラ
ンプが0.4cm,メタルハライドランプは2.8cmであるが高圧ナトリウムランプはOcmであ
26
った.次の外菓では試作メタルハライドランプ,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムラ
ンプでそれぞれ1.4cm,
4.2cm,
2.4cmとなった.メタル-ライドランプでの菓先枯れが
高い値を示しているがこれは, PPFDを同一条件にするためにランプ位置を上下して
調節するのだが,この時,メタルハライドランプのPPFDが低いため他のランプと値を同
一にする際に植物体と接近し,そのために菓先の温度が上昇したためがと考えられ
る.
5.3.6.乾物重
図5.11に乾物重の変化を示す.
14日目では試作メタルハライドランプ,メタルハライ
ドランプ,高圧ナトリウムランプはそれぞれ2.17g,1.88g, 2.12gと, 3つのランプ間で差
はみられなかった.
28日目ではそれぞれ4.93g,
3.72g,
3.27gとなり,試作メタルハライ
ドランプでの成長が一番よく,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプでは大きな差
はみられなかった.
36日目ではそれぞれ6.67g,
4.16g,
4.47gとなり,このときも28日
目と同様に試作メタルハライドランプでの成長が一番よく,メタルハライドランプ,高圧
ナトリウムランプでは大きな差はみられなかった.乾物重に関しては試作メタルハライド
ランプでの成長が一番よかった.
第4節
まとめ
以上の結果から,今回,ランプによって成長の様子が異なっていることがわかる.読
作メタルハライドランプでは,生体重の増加や茎径の成長が一番よいことから葉鞘部
の肥大成長促進,葉数が一番多いことから新芽の発生促進がなされていると考えられ
る.葉数が多くなれば植物はそれだけ多くの光量子受光することができるようになる.
したがって,植物の光合成は促進され,乾物重の増加に結びつくと考えられる.実際,
葉数が最も少ないメタルハライドランプと比較すると乾物重は1.6倍となっている.高圧
ナトリウムランプとメタルハライドランプでは草丈の成長がよいことから伸長成長促進が
27
なされていると考えられる.
28
I
I
∈15
1
1
詣.o
5
初期値
図5.6
14日目
28日目
経過日数
36日目
茎径の変化.試作メタルハライドランプの成長がよくメタルハライドランプ,高圧
ナトリウムランプの両ランプの間では大きな差はみられない.
29
初期値
14日目
28日目
36日目
経過日数
図5.7生体重の変化.
14日目までは高圧ナトリウムランプの生体重が最も重く,それ
以降は試作メタルハライドランプが最も重い.
30
初期値
28日目
14日目
36日目
経過日数
図5.8
草丈の変化.最終的にはメタルハライドランプと高圧ナトリウムランプの草丈が
最も長い.
31
I
I
室
8.0
#
6・0
初期値
14日目
28日目
36日目
経過日数
図5.9
菓数の変化.試作メタルハライドランプが最も多く,メタルハライドランプ,高圧
ナトリウムランプの両ランプ間には大きな差はみられない.
32
田試作メタルハライド
■メタルハライドランプ
「ii■」
≡
高圧ナトリ
4.0
宝3.0
せ
状 2.0
嫌
1.0
#
嶋
崎
嫌
京
紫
初 期値
図5.10
嫌
崎
哨
嫌
舌
馬
14日目
嫌
岬
哨
経過日数
鎌
舌
烏
28日目
1
嶋
崎
36日目
菓先枯れの変化.メタルハライドランプで大きい値を示しているのに対して,
試作メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプでは36日目までほとんどみ
られない.
33
l
I
.iD
$
#
5.00
4100
3.00
初期値
14日目
28日目
36日目
経過日数
図5.11乾物重の変化.試作メタルハライドランプが最も重く,メタル-ライドランプ,高
圧ナトリウムランプの両ランプ間では大きな差はみられない.
34
第6章
露地栽培ネギとの比較
第1節
調査方法
市場に出されている露地栽培ネギについて,名古屋市瑞穂区初日町,サボ-レ瑞
穂店にて平成19年1月29日に購入し,外観上および茎径,生体重などを計測し,
3
種類のランプで栽培したネギ(14日目、28日目、36日目)と比較した.いわゆる中ネギ
とは長さ80cm程度,太さ8-10mmのものをいう18)が,この市販ネギおよび,人工光栽培
したネギもこの範暗に入る.調査は5個体,人工光で栽培した場合と同じく,茎径(莱
鞘部)【mm】,生体重【g】,草丈【cm】,菓数【枚】,葉先枯れ長(最長葉、次の外葉)
【cm】の測定を行った.さらに,80℃で48時間以上通風乾燥機で乾燥させ,乾物重
【g】を測定した.
第2節
結果および考察
市販ネギの茎径は14.40mm,生体重は28.00g,草丈は70.1cm,葉数は3枚,菓先
枯れ長は最長菓,次の外菓ともに0.Ocm,乾物重は3.11gだった.人工光栽培に関し
ていえば,茎径に関しては,
36
で17.68mm,
14.27mm,
28日目には一番成育のよかった試作メタルハライドランプ
日目にはメタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプでもそれぞれ
14.60mmまで成長している.生体重に関しては,
28日目には一番少ない高
圧ナトリウムランプでも29.02gとなっている.草丈では一番成育のよかった高圧ナトリウ
ムランプで69.Ocm,
れぞれ71.1cm,
36日目には試作メタルハライドランプ,メタルハライドランプでもそ
75.7cmまで成長している.菓数は育苗終了の段階で4.5枚となってお
り,成育終了時の最も少ないメタルハライドランプと比較しても8枚と2.6倍多くなって
いる.また,乾物重に関しても28日目には一番少ない高圧ナトリムランプで3.27gとな
り,36日目には一番多い試作メタルハライドランプで6.67gとなり約2倍の差となってい
る.人工光環境下でネギを栽培した場合,
36
35
日間の成育で露地栽培ネギと外観上,
同程度の大きさとなった.
36
図6.1露地栽培ネギ
37
第7章
結言
第1節
まとめ
人工光環境下でネギを栽培した場合,
36
日間の成育で露地栽培ネギと外観上,同
程度の大きさとなった.60日間の育苗と合わせて播種から収穫まで96日間,約3ケ月
の期間だった.露地栽培では一般的に播種から収穫までに一年を必要とするため,
人工光での栽培は露地栽培の1/4の成育期間となり,成育期間の短縮が認められた.
成長パラメータについては,試作メタルハライドランプでは生体重の増加や乾物重の
増加,メタルハライドランプ,高圧ナトリウムランプでは伸長成長が促進されるなど成長
の様子が異なっており,目的に合わせた光源の選択の必要性が認められた.露地栽
培と比較したところ,外観上,形態の曲がりや葉先枯れが認められるが,栽培装置の
改良により植物工場的に生産できる可能性があることがわかった.
第2節
今後の課題
今回は露地栽培との比較で外観上のものだけについておこなったが,栄養成分や
味覚,品質保持の点についても検討する必要がある.また,植物工場の構造上,栽培
箇所によって温度差が出てしまったので温度を均一にする必要もある.
38
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39
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40
com/
謝辞
本論文は,三重大学大学院生物資源学研究科共生環境学専攻生物環境制御学研
究室に在学中に行った研究をまとめたものである.
本研究を遂行するにあたり,ご指導を賜った三重大学村上克介教授には多くのご助
言を賜り,また研究設備を整備していただきました.深く感謝いたしますとともに御礼申
し上げます.本論文の御高閲を賜った三重大学王秀篇教授からは大変有益なご助言
を賜りました.深く感謝いたします.当研究室の森尾吉成助教授からは日頃より多くの
ご助言を賜りました.ここに記して感謝いたします.
最後に,多くのご助言をいただいた村上教授,森尾助教授をはじめ,当研究室の卒
業生を含む大学院生および学部生の方々に深く感謝いたします.
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