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大自然に“い~っぽ” - 国立花山青少年自然の家

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大自然に“い~っぽ” - 国立花山青少年自然の家
【主体性・社会性を育む幼児キャンプ】
「大自然に“い~っぽ”」
Ⅰ
事業実施の必要性と特色
少子化・情報化などにより,人と関わりがないまま幼少期を過ごしていく
現状がある。基本的な生活習慣や態度,人と関わる力などは幼少期に確実に
育まれるようにすることが大切である。そのため,幼少期からの自然体験活
動を通し,幼児が他者ともに関わり合って学ぶ場が必要となる。
本事業は,幼少期の子どもたちに自然体験活動の場を提供し,人と自然・
人と人とが関わりながら生活することで自主性や積極性・協調性の向上を図
ろうとするものであり、併せてそこで得られた成果を公立施設に普及してい
くとともに,幼少年期における自然体験活動の幅を広げていくものである。
具体的には,施設周辺の自然環境を活用した活動や生活を通して,主体性・
社会性を育んでいく。また,厳しい冬の中での活動を通して自然について学
ぶとともにたくましい心と体を培う。保護者は,実習・講義を通して自然体
験活動等の効果を体験的,理論的に学び,体験を経た子どもたちの理解や日
常に戻ってからの円滑な親子の関わりへとつなげていく。
また、今年度から「森のようちえん」の考え方と実践を取り入れたプログ
ラムを構成し、野外での生活をベースにした活動が幼児にどのような効果を
もたらすのかを検証することを目的としている。
Ⅱ
事業の概要
1 趣旨
幼児が自然を介した学びの場において,自立心や協調性、感性を育む。ま
た,その保護者が実習や講義を通して,幼児のための自然体験活動の意義に
ついて理解を深め日常生活につなげる。
2
主催
国立花山青少年自然の家
3
協力
山形県神室少年自然の家、山形県金峰少年自然の家、山形県朝日少年自
然の家、青森県梵珠少年自然の家、多世代はうす文字倶楽部、環境教育工
房 LinX、くりこま高原自然学校、森のようちえん東北交流フォーラム実行
委員会
4
後援
宮城県教育委員会、栗原市教育委員会
1
5
期日
【大自然に“い~っぽ”~秋~】
〈プレキャンプ〉
平成23年 9月10日(土)
[日帰り]
〈本キャンプ〉
平成23年10月 8日(土)~平成23年10月10日(月・祝)
[2泊3日]
【大自然に“い~っぽ”~冬~】
〈プレキャンプ〉
平成23年12月23日(金・祝)
[日帰り]
〈本キャンプ〉
平成24年1月14日(土)~平成24年1月15日(日)
[1泊2日]
6
参加対象と人数
幼稚園・保育園・保育所の年中・年長児(4歳児・5歳児)
20名とその保護者
7 参加状況
【~秋~】
〈プレキャンプ〉
〈本キャンプ〉
宮城県
宮城県
計
男
女
子ども
9
3
12
保護者
9
11
その他
1
計
19
計
男
女
子ども
8
3
11
20
保護者
6
10
16
1
2
その他
2
2
4
15
34
計
16
15
31
【~冬~】
〈プレキャンプ〉
〈本キャンプ〉
宮城県
宮城県
計
男
女
子ども
11
7
18
保護者
9
14
その他
3
計
23
計
男
女
子ども
11
7
18
23
保護者
8
14
22
3
6
その他
3
3
6
24
47
計
22
24
46
※その他は保護者プログラムに参加した小学生と乳児
2
8
日程
【~秋~
プレキャンプ】
9 月 10 日(土)
子どもプログラム
午
前
◇受付
保護者プログラム
10:00
◇受付
◇はじまりの会
◇森の自由遊び
10:00
◇はじまりの会
10:15~
◇森のおひるごはん♪
◇森 cafe
10:15~
◇森のおひるごはん♪
12:00~
午
◇森の自由遊び
後
◇おやつタイム
◇おやつタイム
◇おわかれの会
◇おわかれの会
◇子育て座談会
13:00~
12:00~
13:00~
【~秋~ 本キャンプ 】
〈子どもプログラム〉 10月 8 日(土)~10 月 10 日(月・祝)
10 月 8 日(土)
10 月9日(日)
◇起床
7:00
◇起床
6:00
◇朝食
8:00~
◇朝食
7:00~
◇出発準備
午
前
10 月 10 日(月・祝)
9:00~
◇テント片付け
8:00~
◇らんぶりんぐ☆
◇思い出を描こう
(田んぼまで散歩)10:00~
(お絵かきタイム)
9:00~
◇クッキングタイム!
(炊飯・飾り付け)11:00~
◇受付
午
後
◇お弁当タイム
12:30
12:00~
◇ともだち大集合
13:00~
◇田んぼであそぼ!
13:00~
◇ねどこどこどこ
14:30~
◇休んだり遊んだり
15:30~
◇秋をたべよう☆
15:30~
◇夕食
17:00~
◇みんなでパーティー
(おうちの人をご招待)
13:00~
◇明日へのい~っぽ
(お別れ会)14:00~
◇森の音楽会♪
夜
19:00~
◇えほんといっしょ
20:00~
(テントなどで就寝)
◇月見ドラム缶風呂
19:00~
◇えほんといっしょ
20:00~
(テントなどで就寝)
〈保護者プログラム〉
10 月 8 日(土)
10 月9日(日)
◇保護者集合
◇開講式
午
前
10:00~
10:30~
◇「歩育」観察
11:00~
(子どもが歩く姿を観察する)
◇買い物タイム
(おやつ作りの材料選び)
3
10 月 10 日(月・祝)
◇起床
6:00
◇朝食
7:30
◇実習
『子どもとつくりたいおやつ』
9:00~12:30
◇受付・子どもとのお別れ
午
後
◇昼食
12:00~
◇キャンプ場へ移動
12:30
12:30
◇体験したことのない活動
◇みんなでパーティー13:00~
◇事業説明
13:00~
『稲刈り体験』
◇明日へのい~っぽ(お別れ会)
◇帰宅
14:00~
13:00~
14:00~
◇子どもプログラムVTR視聴
18:30~
夜
◇子育て座談会
19:30~
講師:多世代はうす文字倶楽部
馬渡 達也 氏
【~冬~
◇受付
午
前
プレキャンプ】
12 月23日(金・祝)
10:00
◇はじまりの会
◇歩育(もりあるき・もりあそび)
10:30~
・
『サンタを探せ!』
・
『マザーツリーを見つけよう!』
◇森のクリスマスごはん♪
11:30~
・七面鳥の丸焼きなど
午
後
◇創作活動
12:30~
・クリスマスヘクセンハウスをつくろう!(お菓子の家づくり)
・松ぼっくりツリー、クルミキャンドルづくり
◇おわかれの会
14:30~
【~冬~ 本キャンプ 】
〈子どもプログラム〉 1月 14 日(土)~1 月 15 日(日)
1月 14 日(土)
1月 15 日(日)
午
◇起床・シュラフ片付け
6:30~
◇ひとりでできるもん♪
7:30~
(着替え・朝食)
前
◇おもいっきりゆきあそび②
9:00~
◇みんなでクッキング!
◇受付
12:30
◇はじまりの会
午
◇おもいっきりゆきあそび①
13:00~
後
◇あったかおやつタイム
14:00~
◇ひとりでできるもん♪
(着替え&寝床づくり)
16:00~
4
(炊き立てごはん、野菜スープ)
10:30~
◇みんなでいただきます!
12:30~
◇ひとりでできるもん♪
13:30~
◇明日へのい~っぽ(お別れ会)
14:30~
夜
◇夕食(バイキングに挑戦)
17:00~
◇お楽しみナイトイベント!
19:00~
◇えほんといっしょ
20:00~
〈保護者プログラム〉 1月 14 日(土)~1 月 15 日(日)
1月 14 日(土)
1月 15 日(日)
◇起床
6:30
◇朝食
8:00
◇選択実習
9:00~11:00
A:
「雪山トレッキング」
午
B:
「冬の野外クッキング」
前
◇実習「大人の創作活動②」
(テーマ)
「小正月行事
団子木づくり」
11:00~12:30
◇受付
◇みんなでいただきます!
12:30
◇開講式・事業説明
◇フリー参観&アンケート記入
13:00~
午
◇実習「大人の創作活動①」
(後片付けを観察する)
後
(テーマ)
◇明日へのい~っぽ
「子どもに雪遊びの楽しさをつたえよう!」
(子どもとの日常へのい~っぽ)
14:00~17:00
◇夕食・打合せ
夜
◇お楽しみナイトイベント
19:00~19:30
◇子育て座談会
21:00~
冬の巻
12:00~
(テーマ)
「子どもの自立に必要な体験とは?」
講師:多世代はうす文字倶楽部
馬渡 達也氏
5
13:30~
14:00~
10
企画のポイント
本事業は平成 16 年度のはなやまお泊り会が前身で、6 年目の継続事業
である。平成 20 年度までは、幼児及び小学校 1・2 年生を対象としていた
が、昨年度から幼児(年中・年長)に対象を絞って募集することにした。
また、事業開始当初から、幼児と保護者それぞれのプログラムに分かれて
実施している。
また、今年度から秋と冬のキャンプの 1 ヶ月前にプレキャンプを計画し、
幼児参加者の不安を少しでも取り除くように配慮した。保護者にも事前に
場所を把握してもらうとともに、事業内容への理解を深めてもらうように
努めた。このアイデアは幼稚園の先生方からいただいた意見であり、今後
の幼稚園行事としてのお泊り会企画に情報提供していきたい。
今年度の事業のねらいとしては、以下のことに焦点を絞って企画した。
【子どもプログラムのねらい】
①「大人が誘導しないキャンプ」
子どもの主体性を育む手段として、本部から子ども達への一斉指導は
一切行わなず、カウンセラーが子ども達の行動を支援するスタイルの「フ
リーキャンプ」を目指す。
生活体験を中心に、子ども達が自ら「やりたい」と思うことを選択で
きるようにし、大人は指示するのではなく、子どもの行動を受け入れて
サポートする。スタンスとしては「一緒に生活しながら子どものペース
に合わせる」。
②「ひとりではできない体験や遊びを通して、子ども同士が交わりをもつ」
発達段階的に、幼児期は放っておけば個々の活動になる。だからこそ
ひとりではできないことや協力しなければできないことを仕掛け、子ど
も達がどう行動するかを観察する。
【保護者プログラムのねらい】
③「体験したことのない活動の提供」
「親が体験したことがないことは子どもには体験させない」という仮
説を立て、親によい体験をしてもらい、子ども達に与えていくように働
きかける一歩となる活動を提供する。
④「季節感のある“食”について考える」
東日本大震災を機に、安全な食について考える機会が増えた。大人と
して、親として、子ども達のためにできることを考え、生活体験の中で
も必要不可欠な食に焦点をあてて、参加型活動プログラムを実施する。
【「森のようちえん」の考え方と実践の導入について】
東日本大震災を機に、今私たちの生活は、価値観の根源から見直すこと
が問われている。何が必要なのか、何が幸せなのか、何を学ぶのか、何を
求めて生きるのか。
6
そのような中で、子育て世代の保護者たちのニーズはどこにあるのかを
考え、
「自然」をもう一度見直しながら、テーマに据えて事業を展開したい
と考えた。自然に触れ、自然を感じ、自然に学び、自然と遊び、自然の恵
みに感謝する。ごく当たり前にあったものをどうとらえるか。
講師の馬渡達也氏との話の中で、
「震災と生きる力」というキーワードを
下に事業を構成する方向性が生まれ、キャンプを通じて「生きる力」をはぐ
くんでいくプログラムの検討を目指すこととなった。そこで「森のようちえ
ん」の考え方と実践をベースにして、事業づくりを行うことに決定した。
【「森のようちえん」と「生きる力」とのつながり】
(出典)「森のようちえん」で育まれる力(環境教育工房
LinX)
【「歩育」の実践の導入について】
幼児の自然体験を促す上で、
「身近な環境で気軽にできる体験」をプログ
ラムとして実施することを検討してきた。また、現代の子どもたちを取り
巻く環境として、自動車移動が増えたことによる都市部と地方における「歩
く活動」の格差が問題視されている。これら両方の側面から、歩くことに
よって、子どもが本来持つ能力を育てる取組みとして提唱される「歩育」
に着目し、プログラムに取り入れることとした。
「歩育」の定義は、
「日常の習慣的な歩行、非日常の行事などにおける歩
行体験を通じて、子どもたちの〈生きていく力=人間力の基礎〉を育む活
動」(『歩育のすすめ』村山友宏・山羽教文編著より)とされている。
また、五感を使った歩く喜びの体験を通じて、前向きにたくましく生き
抜く力を培い、健やかな心身をつくり、人や自然とふれあい、生きていく
幸福感を育むことを基本理念としている。
これらの考え方を踏まえ、歩行を促進するようなプログラムづくりを行
7
った。具体的には野山や森での自由遊び、ベースキャンプから移動を伴
う活動場所の設定など目的を持って歩くことができるよう配慮した。
11
運営のポイント
《子どもプログラム》
「大人が誘導しないキャンプ」におけるカウンセリングの配慮事項
今年度とりくむ「大人が誘導しないキャンプ」において、プログラムに
関わるカウンセラーのトレーニングを行い、子どもとかかわる上での共通
理解を図った。
①
子どもたちに指示したり誘導したりせず、一緒に遊んだり、話を聞いたりする。
②
本部からも一斉指示を出さない(子どもたちを集合させない)。
③
意図的に誘導しないが、放任ではない。カウンセラーは子どもにきちんと情報
を提供し、選択肢を与える。また、活動に必要な説明を行う。
④
意図的なグループをつくらず、事前に担当する子どもも決めない。最初の活動
を通して、自然にかかわりを持った子どもを見守っていく。
⑤
カウンセラーはペアで行動し、基本的に二人で子どもを見守る。
⑥
安全管理には最大限の配慮をする。
上記の内容について、前日にカウンセラーの学生ボランティアとともに、
ケーススタディやロールプレイを行い、当日に講師と最終確認を行う流れ
で、トレーニングを繰り返した。
また、プレキャンプにおける子どもたちの行動観察記録を、全員で情報
共有するなど、
「子ども理解」と「フリーキャンプの効果」に焦点をあてて、
スタッフも意識を高めた。
【キャンプ時における講師からの指導内容】
・子どもに選択肢を与え、「どうするか?」は子ども自身に判断させる。
・
「お手伝いしたい!」と言った場合は、何をやりたいのかを聞き、できるだけやらせる。
(「ダメ!」の禁止。禁止語の禁止。
)
・調理については、子どもの集中力を高める効果的な活動であるので、安全を確保しな
がら出来る範囲でやらせる。
・全員が同じ活動をしなくてもよい。そのために「大人がやるべきことは何か」を考え
て行動する。
・子どもの「気づき」を大切にして、立ち止まったり、途中で遊んだりすることを許容
する。
・子どもの遊びについては、基本姿勢は「見守り」。
・生活体験においては「自分のことは自分でやる」意識を持たせるよう努力する。
・プログラムで追われないように、今やることにとことん付き合う。
・子どもたちの話に共感し、活動に集中できる環境づくりに努めよう。
・「ワクワク感」が大切。自分自身もワクワクして取り組もう。
8
《保護者プログラム》
毎回夜のプログラムとして実施している「子育て座談会」
。講師の馬渡達
也氏(多世代はうす文字倶楽部)がテーマを設けて、保護者の方々に子育
てについて考える時間を提供してきた。
秋のテーマは「子どもの成長について考える」
。
子どもの発達において「感覚の統合」が重要で、体験や遊びを通して身
につけていくものであることをお話いただいた。また、成長において注目
されていることとして、歩くこと(歩育)と食べること(食育)があり、
親として知っておくべき情報を提供していただいた。
最後に、
「自分が考える“幼児の自立”とは?」というテーマでグループ
討議を行った。
【参加者が考えた“幼児の自立”】
・自分の考えに自信を持って行動できる。
・自ら考え自ら行動する。
・自分で動く。
・親に頼らない。
・自分の意思を持ち、自分で行動する。
・親がいなくてもガマンできる。
・自分の考えを言う。
・お友達を思いやることができる。
・他人の話を聞く。
・集団行動ができる。
・自分でお金をためて、自分の買いたいものを買えるようになった時。
・二本立ち。
・トイレを教えたとき。
・家庭以外での生活。家族以外の人とのかかわり。
冬のテーマは「子どもの自立に必要な体験とは?」。秋の子育て座談会で、
保護者の方々から出された幼児の自立に関する意見を深めることを目的に、
今回は「生きる力を感じるときはどんなときですか?」という質問で参加
者の考えをうかがった。
【「生きる力」を感じるときはどんなときですか?】
・食事をするとき
・決める
・夢
・誰かを守って生活しているとき
・目標
・子どもと思いっきり遊んだあと
・自分で考え、判断し、行動する
・自然にそなわっているもの
・耐え抜く力
・多くの人と一緒に行う力の大きさを知る
・知恵
・一人ですることができる
・臨機応変
・一人でいることができる
・上手に助けを求める力
・一人を怖がらない力
・表現力
・みんなとワイワイガヤガヤしているとき
・コミュニケーション
・変化するとき
・ケガや病気を克服したとき
・ごはんを残さず食べているとき
・おなかが減ったと感じるとき
・へこんだときでもすぐに開き直るとき
・困ったとき、悩んだとき、とにかく行動に移しているとき
9
12
安全管理のポイント
①「ふれあいの森」の使用
今年度は整備された場所からより自然に近い活動エリアに一歩ふみだし
たプログラムづくりをテーマにした。プレキャンプを実施することになり、
短時間での移動が可能で、整備されすぎていない場所として、キャンプ場
に隣接した「ふれあいの森」を活用することにした。
使用するにあたって、安全管理上3つの問題点があった。一つは周囲が
道路(車道)に囲まれていることにより、森から出た際の安全確保に配慮
する必要がある。フィールドマップを作成したり、道路と接する場所に看
板を設置したりするなどの安全対策を行った。
二つ目は下草刈り・枝打ちなどの環境整備の実施である。これまで積極
的に活動に使用していなかった場所であるため、かなり荒れた状態であっ
た。特に幼児が活動する上で、目の高さにある障害物を排除しておく必要
がある。その整備を行うために栗駒高原森林組合に協力をいただき、事業
実施前に職員の方々の研修を兼ねて下草刈りを実施した。
また、職員研修を実施し、危険箇所の確認と枝打ち実習を行い、子ども
の視点に立った環境整備について考えた。
②地域環境のよさや季節感を感じられる活動場所の設定
幼児期にしか育たない能力(臨界期や感受期など)があることや、幼児
期に完成される機能(脳の80%、感覚の90%)があることが、脳科学
の研究を中心に明らかにされている中で、それらに効果的な活動を「自由
遊び」のプログラムに取り入れるように意識して取り組んだ。
秋のプログラムでは、田んぼをフィールドにして活動を展開した。その
中で泥遊びや水路での遊び(丸太渡りや生き物採りなど)、里山遊び(くり
ひろいなど)に自発的に取り組む姿が見られた。
冬のプログラムでは、積雪期には使用しないコースをフィールドにして
五感を刺激する活動を展開した。雪の感触を楽しんだり、足跡で動物を追
いかけたり、日頃見ることができない景色を味わったりすることができた。
新鮮な体験を提供するために、季節における野外活動エリアの変化をス
タッフ全員が観察したり、実踏したりすることを心がけた。また、地域の
方々の協力を得て、季節感のある体験や年中行事の体験などをプログラム
とし、見通しを持って計画的に準備を進めてきた。
幼児が思いっきり身体を使って活動できる環境は、整備する必要はある
ものの、すべての危険を排除してしまうと身体を使うことに制限が出てし
まう。例えば水のある環境(沢、小川、水路、湧き水など)や倒木がある
森は、幼児の体験には絶好の場所であるとともに、身体バランスや発達状
況を観察できる重要な環境として確保していきたいものである。
10
13 実施状況
《秋 プレキャンプ 子どもプログラム》
【9月10日(土)】
(1)森の自由遊び
(2)森のおひるごはん
(3)森の自由遊び
(4)おやつタイム
(5)おわかれの会
《秋 プレキャンプ 保護者プログラム》
【9月10日(土)】
(1)森 cafe
(2)森のおひるごはん
(3)子育て座談会
(4)おやつタイム
《秋 本キャンプ 子どもプログラム》
【10月8日(土)】
(1)ねどこどこどこ
フリーキャンプであるため、子どもを主
体とし、カウンセラーは子どもに選択肢を
与える役割となった。最終的に「どうする
か」の判断は子どもに委ねることを確認し
てカウンセリングを行った。
(2)秋をたべよう
本部のスタッフが食事の準備に入り、意図的な誘導はせずに子どもた
ちの遊びを見守る形となった。男女に関わらず、調理に関心を持つ子ど
ももいることを事前に想定していたため、できる範囲の「お手伝い体験」
をさせた。子どもたちには「何をやりたいのか」をたずね、できるだけ
その通りにやらせることとした。基本的にフリーであるため、参加者全
員が取り組まなくてもよく、別な活動をしている子どももいた。
11
【10月9日(日)】
(1)らんぶりんぐ
子どもの気づきを大切にして、歩くこと
に集中するのではなく、何かをしながら目
的地を目指すことが「ランブリング」であ
り、今回はキャンプ場から離れた田んぼを
目的地に、立ち止まったり、遊んだりしな
がら向かった。スタッフは遠足をイメージ
して、子どもたちが自ら歩く気持ちを持つようにサポートした。また、
大人が自分から手をつながないこと、後ろから追うのではなく、ペース
をあわせながら前を歩くことを確認して出発した。
(2)田んぼであそぼ
目的地に到着してからも、スタッフは「子どもたちがどんなことに気
づくのか」を大切にして自発的な遊びを見守ることにした。子どもたち
が見つけた遊びは以下の通りであった。
・水路にいる生き物の観察
・丸太渡り
・栗拾い
・水遊び
・どんぐり集め
・山登り
・神社周辺での遊び など
(3)休んだり遊んだり
自分の体調に合わせて、ゆっくりと過ご
すことを伝え、本部は食事や入浴の準備に
入った。昼寝をする子、駆け回る子、絵本
を読む子、お絵かきをする子とそれぞれの
活動をしていたが、やはりスタッフのお手
伝いをする子が多く、男の子は写真のよう
にドラム缶風呂にお湯を沸かす作業に熱中
していた。
【10月10日(月・祝)
】
(1)起床・朝食
(2)テント片付け
(3)思い出を描こう
(4)クッキングタイム
(5)みんなでパーティー
(6)明日へのい~っぽ
12
《秋 本キャンプ 保護者プログラム》
【10月8日(土)】
(1)子どもとのお別れ
保護者にとって、子どもと離れる体験
こそが「体験したことのない」活動にな
る。子どもの親離れ・親の子離れの状況
を実体験で感じてもらうことを目的とし
た。結果は写真の通り。
(2)事業説明
講師の馬渡達也氏による「森のようち
えん」についての講義を設定した。事業
のねらいとともに、保護者の方々に子ど
もの発達に必要なものは何かを理解して
もらい、事業の効果を高めようと考え、
昨年度から継続して実施している。その
後、保護者には原則帰宅していただき、
子どものいない家庭の状態を体験してもらった。
【10月9日(日)】
(1)歩育観察
子どもたちが写真の奥にある田んぼで
遊んでいるところを、気づかれないよう
に「他者とのかかわり」という視点で観
察していただいた。幼児期は放っておけ
ば個の活動に終始し、他者と積極的に関
わることはないと言われている。幼稚園や保育園以外のコミュニティで
どのような関係性を築けるか、子どもの中でどれほどの社会性が育って
いるかを保護者にもみてもらう時間となった。
(2)稲刈り体験
今年度のねらい「体験したことのない
活動の提供」の最大の活動である。職員
の自宅の水田を提供してもらい、一枚の
田んぼを全て手狩りし、バインダー紐で
束ね、自然乾燥させるためのくい打ち、
くいがけまでを完了させることをミッショ
ンとした。大人社会でも仕事以外で共同作業に取り組む機会が減り、連
帯感や達成感を味わえる場が少なくなっている。また実体験を通して、
食の安全性やありがたみを感じることも大切な体験であると考え、実施
13
した。重労働ではあるが、
「一人ではできない体験」として、参加者に強
い印象を与えることができた。
(3)子育て座談会
恒例となっている子どもたちのキャンプ
1日目の映像をみる活動からはじまり、保
護者は自分の子どもの様子を食い入るよう
に見つめていた。スタッフから体調面や行
動面についての報告も行った。
その後、翌日の実習である「子どもとつ
くりたいおやつ」のメニュー作りを小グル
-プに分かれて検討した。季節感を味わう
ことができるものを条件に、午前中に購入
した食材をもとにつくるプログラム。真剣
な議論とともに、稲刈り体験をふりかえり
情報交換会も行った。
夜の保護者プログラムを単なる情報交換にとどめず、付加価値をつけ
ることを昨年度から意識している。今後も参加者が自主的に取り組める
活動を展開していきたい。
【10月10日(月・祝)】
(1)実習「子どもとつくりたいおやつ」
前夜に検討したメニューを手際よくつくるお母さんと、ジャム作りな
どの根気のいる作業に黙々と取り組むお父さん。材料を全て使い切り、
予定を上回る6品のおやつが完成した。
子どもたちと合流するパーティーでお披露目し、たくさんのおやつに
笑顔で集まる姿に、保護者からは「手作りのよさはここにある」という
声が聞かれた。
(2)子どもとの再会
今回も子どもたちは、親との再会を前
に「キャンプの思い出」を絵に表した。
帰路につく前に親子だけの時間をとり、
14
描いた絵を囲んで会話をしてみた。保護者には「自分から話さない
で、子どもの発言を待つ」ことを実践してもらった。
《冬 プレキャンプ 共通プログラム》
【12月23日(金・祝)】
今回は秋のプレキャンプの反省から、二つの
改善策を取り入れて実施した。一つは「親子一
緒の活動を取り入れる」こと。親子が別々のプ
ログラムに取り組むことにもねらいや効果があ
ることはこれまでの実践で十分実証できている
が、一緒に花山まで来た後に分かれるのは不自
然で、流れにも無理があるという指摘があり、
今回はあえて全日程親子一緒に行動してみるこ
とにした。
二つ目は「ストーリー性のある活動」の実施
である。これまでは子どもたちに主体性をもっ
て自由に遊ばせることに主眼を置いてきたが、
環境や素材に乏しい中で「自由に遊ぶ」ことの
難しさも感じられる。そこで今回はクリスマス
の開催であることから、こちらで設定したスト
-リーを提示して、子どもたちをファンタジー
の世界に連れ出すこととした。サンタからの手
紙があったり、七面鳥料理やお菓子の家づくり
があったりする本物のクリスマス体験を提案し、
楽しんでもらうことができた。
《冬 本キャンプ 子どもプログラム》
【1月14日(土)
】
(1)ひとりでできるもん
(着替え&寝床づくり)
冬の子どもプログラムは、館内での生活
時間が長くなることから、
「自分でできる
ことは自分でやってみる」生活体験重視の
プログラムとした。
まずは着替え。雪遊びのためのスキーウ
エアや帽子・手袋の装着から、戻ってから
の下着交換など、カウンセラーがやってあ
げるのではなく、できるかぎり自分でやる
までとことん付き合うことにした。プログ
ラムに追われれば、子どもの主体的な行動
15
に制約が出るので、ゆとりのある自由な時間構成を心がけた。
次に寝床づくり。秋にひきつづき自分で決めて自分で準備するスタイ
ルをとった。今回がはじめての参加となる子どもには、カウンセラーが
付き合ったが、秋も参加した子どもたちは思い思いの場所に、淡々と準
備するようになっていた。
(2)ひとりでできるもん(バイキングに挑戦)
キャンプ中3回の食事があるが、内2回
をレストランのバイキング食にし、自分で
食べたいものを、食べたい量選び、配膳す
る体験をさせた。子どもが届く高さに準備
されたテーブルから、一人ひとりこぼさな
いように注意して運ぶ姿に成長が見られた。
(3)お楽しみナイトイベント
食事後は、保護者プログラムで製作した
「雪のイベント」を体験した。雪灯篭の回
廊を通った先に、雪像やかまくらがあり、
中央には小正月行事の「どんと祭」
。萱が
立てかけられた松明に火がつけられると、
巨大な火柱が上がり、子どもたちはそのス
ケールの大きさにびっくりしていた。
【1月15日(日)】
(1)ひとりでできるもん
(着替え・朝食バイキング)
寝袋で一晩過ごした子どもたちだが、体
調を崩すものもなく、元気に朝を迎えた。
朝食のバイキングも、前日の経験を活か
してすばやく準備していた。同じことを二
度やることは子どもたちに自信をもたらし、スムーズに活動できるよう
になる。短い期間のキャンプだからといって、あれこれ詰め込みすぎる
のではなく、子どもたちの成長を確認できるような繰り返しの活動も必
要だと感じた。
(2)おもいっきりゆきあそび②
前夜に降った雪のため、ふわふわの新雪
原での雪遊びとなった。前日は道具を使わ
ない活動だったが、そりや雪玉製造機など
様々な道具を準備しておいた。
16
「一人ではできない活動」をなんとか仕
掛けたいと思っていたが、協力して取り組
むための目的と環境づくりについて、今後
の大きな課題となった。また、子どもたち
の日常生活にもそのような体験が不足して
いると考えられ、具体的なケースを想定し
シミュレーションの必要性を感じた。
(3)みんなでクッキング
今年度2回のキャンプに共通した活動と
して「キッズクッキング」を取り入れてき
た。子どもの集中力や注意力を育て、本物
の道具を使うことで自信をつけさせること
ねらいである。
今回は「ひとりでできるもん」のテーマ
を貫き、自分たちが食べるものを自分たち
でつくることにし、ご飯を炊くこととスー
プをつくることに専念した。カウンセラー
スタッフも、安全管理のための最小限のア
ドバイスにとどめ、全て子どもたちに委ね
た。その結果、これまでよりもやらされて
いる感がなく、主体的に活動する様子がみ
られた。
(4)明日へのい~っぽ
食事後は、秋と同様に描いた絵を保護者
と一緒に眺める再会の場面となった。今回
は季節感を感じる活動として、保護者プロ
グラムで「団子木づくり」をしてもらい、
がんばった子どもたちにプレゼントしても
らった。
《冬 本キャンプ 保護者プログラム》
【1月14日(土)】
(1)実習「大人の創作活動①」
(テーマ)「子どもに雪遊びの楽しさを伝えよう」
秋の好評を受けて、今回も保護者には「
連帯感と達成感」を味わうための活動をし
てもらうことにした。自己紹介を兼ねたは
じまりの会で、
「子どもに雪遊びの楽しさ
17
を伝えるためにどんなイベントを企画したらよいか」をトークテーマに、
話し合い活動を行った。その後創作活動に入り、無事に日没までに雪灯
篭、雪像、かまくら、松明を完成させることができた。
(2)お楽しみナイトイベント
夕食時に全員で打ち合わせを行い、子ど
もたちから見つからない場所で様子を観察
することになった。子どもが外に出てくる
前に急いで点火し、宿泊棟に移動した。
イベントが始まると、子どもたちは写真
のように目を輝かせて雪と炎の体験を楽し
んだ。それを見た保護者からも充実した笑
顔がうかがえた。
今回のイベントづくりについて、子ども
たちには保護者がつくったことを内緒にし
ていた。そのためか外に出ない子どももお
り、その後の保護者のふりかえりの中で、
残念に感じた方もいた。また、子どもの中
に創作物に対して破壊行為をする様子があ
り、どのように対応するべきか話し合った。
(3)子育て座談会~冬の巻~
(テーマ)「子どもの自立に必要な体験とは?」
18
【1月15日(日)】
(1)実習「大人の創作活動②」
(テーマ)小正月行事 団子木づくり」
前日に引き続き、創作活動に取り組んだ。
秋から継続しているテーマ「季節感」にち
なんで、小正月行事の「団子木」を作った。
最近は、家庭で作る方はほとんどなく、木
や飾りの意味を学ぶとともに、電子レンジ
でできる簡単おもちづくりも体験してもらった。
(2)みんなでいただきます
今回は子どもがつくった食事ではなかっ
たが、保護者は保護者同士で楽しくテーブ
ルを囲んだ。このような写真を撮れたのは
これまでで初めてであり、共同作業による
コミュニケーションが初対面の方々の距離
を縮めるのに大きな効果があることがうか
がえる。
(3)フリー参観
子どもプログラム「ひとりでできるもん」
の締めくくりとして、自分の荷物をまとめ
る作業を子どもに任せた。スタッフ・カウン
セラー・保護者すべての大人が、子どもの
作業を手伝うことなく見守った。自然な形
での参観であったため、ぐずったり助けを
求めたりする子はなく、スムーズに後片付けが済んだ。
19
Ⅲ
成果と課題
1 アンケート結果
《秋(本キャンプ後)》
(1)参加者の満足度(アンケート回収率 87.5%)
事業全体の満足度は100.0%であった。今年度から保護者プログラ
ムのテーマに掲げた「体験できない活動の提供」に共感を得たと考えら
れる。
「体験できないこと」=「一人ではできない」ととらえ、参加者全
員が協力して取り組むことによる、達成感や連帯感に対する満足度がア
ンケートに現れたのではないかと考える。
次回以降も継続できるような活動プログラムの検討と活動を支えるス
タッフの配置・拡充が必要となる。
設問事項
満足
やや満足 やや不満
不満
事業全体を通してはどうでしたか
100.0%
0
0
0
事業のプログラムはどうでしたか
92.9%
7.1%
0
0
事業の運営はどうでしたか
85.7%
14.3%
0
0
職員の指導・助言はどうでしたか
92.9%
7.1%
0
0
ボランティアの対応はどうでしたか
81.8%
18.2%
0
0
(2)自由記述
・子どもと離れた状況で、子どものことや自分のことをいろいろ考えら
れてよかった。
・自分で考えるというポイントがとてもよく、自然に協力できました。
・子どもの主体性を尊重して指導・助言するところがよい。
・子どもが参加できるうちは、毎年参加させたいです。
・去年も参加しましたが、去年とはまったく違い、親のプログラムにつ
いては考え、協力するという点が考えられており、とても楽しくコミ
ュニケーションがとれました。
・子どもの自主性を重んじて、余裕を持った時間配分がよかった。
・プレから本キャンプの間に、自宅でキャンプの話をすることが多かっ
たです。
・講師の先生のお話がとても勉強になりました。
・今回の主旨は「チャレンジ」だと思いますが、子どもにとってはすご
く成長できることだと思います。
・実際事業の内容は想像以上で、親への講義などは有意義なものでした。
子どもだけのチャレンジではなく、親も子どもへの環境やアプローチ
方法などを学べたので、下の子も次年度参加させたいと考えています。
・近くに住んでいるのに、このような内容を知る機会がないので、ちょっ
と残念です。
20
・被災地支援プログラムを検討していただきたい。子どもの心を癒やす
のは自然の力であり、有効だと思います。津波で自然の怖さを身をも
って経験しましたがいい方向で受け止めてもらいたいと思っています。
《冬(本キャンプ後)》
(1)参加者の満足度(アンケート回収率 95.5%)
1 回目と比較して、事業全体の満足度は低下した。今回も保護者プロ
グラムには、秋のキャンプで好評を得た「全員で協力する活動」を仕掛
けたが、活動以上に運営面の難しさが問題に感じた方が多かった。子ど
もたちと同じ活動エリアで共存するため、子どもプログラムを優先する
ことが多く、予定を変更することが度々あり、満足度低下の原因となっ
たと思われる。
普及啓発事業として、公立自然の家にプログラム普及を行う中でも指
摘されていた「同じ施設内で2つのプログラムを実施すること」や「保
護者と子どもが完全に接触しないこと」が今回のキャンプでも問題とな
った。改善策を検討することは当然だが、根本的な趣旨の見直しも迫ら
れると考える。
「保護者と子どもの同一プログラム化」や「接触を妨げな
い空間共有での事業実施」を提案するような検討を、次年度以降初めて
いきたい。
また、秋・冬ともに指摘を受けた「広報のあり方」について、再考の
余地がある。今年度は募集に関して二つの工夫を加えた。一つにインタ
ーネットの子育て支援サイトへの掲載依頼を行い、子育て世代の保護者
の方へピンポイントで情報提供できるようにした。二つ目に募集チラシ
をカードサイズにして、幼児が家庭に持ち帰りやすくすると共に、QR コ
ードをつけて、専用の申込フォームから携帯電話で申し込めるようにし
た。改善点の成果は確実にあり参加者は増加したが、参加者の方々から
見ると、満足度の高い体験ができる場である本事業を、もっと多くの方
に知ってほしいという思いがあることが伺えた。
設問事項
事業全体を通してはどうでしたか
事業のプログラムはどうでしたか
事業の運営はどうでしたか
職員の指導・助言はどうでしたか
ボランティアの対応はどうでしたか
満足
85.7%
76.2%
66.7%
71.4%
81.3%
やや満足
14.3%
23.8%
33.3%
28.6%
18.7%
やや不満
0
0
0
0
0
不満
0
0
0
0
0
(2)自由記述
・参加者主体でよいと思います。意図がはっきりしていてよかった。
・親の全力を出す(引き出す)感じがよかったです。
21
・どんと祭の火柱が高く、子どもに最高の衝撃を与えたと思う。
・
「自立」をテーマに、子ども・大人それぞれがプログラムを考えるとこ
ろがよかった。
・子どもへの見守りが必要なことを、改めて感じさせられました。
・親もやったことのない活動ができ、交友もできて楽しかった。
・初日の講演(座談会)が大変よく、納得できるところが多かった。
・親と離れての生活(泊をともなう)が初めてのことで、心配も多かっ
たのですが、その気持ちとは逆に「じゃあね」と自ら離れていき、と
ても楽しそうにしていました。
・子どもだけでなく、親もいろんな体験ができて勉強になる。今後、子
どもが成長していくためにはどうすればよいのかを考えるいいきっか
けになる。
・子どもたちの実態に応じて、プログラムに柔軟性を持って進めていた
だいたのがよかったと思います。
・子どもが親と離れ、自分の世界にいない人たち(友人や先生など)と
1~2泊することは、子どもにとって冒険になったと思う。この点が
すごくよい。
・子どもと一緒に行動することがあってもよいかも。
・とてもよい事業だと思いますので、もっと広く周知できる方法がある
とよいと思う。
・何もしなくても手に入る世の中(ネット、ケイタイ、TVなど取りに
行くことがないもの)、このような自分で考え、行動(考動)する場の
提供で、自ら何かを経験したいと思います。
2
カウンセラーおよび参加者保護者の記録より
本事業では、平成18年度から本施設で作成した調査「自立についての
調査項目」を用いて、体験活動が幼児の自立的発育にどのような効果をも
たらすのかを客観的に評価し、次年度の事業計画に活かしてきた。
今年度は事業のねらいも変更したことにより、調査に関しても見直しを
図った。子どもプログラムにおいて取り組む「大人が誘導しないキャンプ」
において、誘導しない体験がカウンセラーにどのような影響を与えるのか
を記録として残すために、事業後に感想文を書くこととした。
また、参加した保護者にも協力してもらい、フリーキャンプが子どもに
与える影響を調査するため、事業後の家庭における子どもの様子を記録し
てもらった。
これらの記録は、文集的に編集した(別紙)が、今後内容を分析し、本
格的に調査することが可能かどうかの判断材料にしていくことを検討して
いる。また、調査のための尺度を作成する上での予備調査として、活用し
ていく方針である。
22
《冬のキャンプ 事業評価会におけるカウンセラーの感想》
・時間通りに子どもたちを動かすには、子どもに対して早くから前もって伝え
る必要がある。
・子どもの中にカウンセラーにべったりな子がいた。どう対応すればよいか?
→カウンセラーをチーム制にして、交代できるようにする。一人で対応しな
いで人が代わるようにする。
→強制介入のタイミングもある。母親離れする時期。
・子どもの予想外のリアクションや対応があった。
・子どもたちに気づかせるような声がけが必要だと感じた。
・誘導しないのであれば、プログラム全体に余裕が必要。
・男の子に対して男性カウンセラーが少なく、対応がしきれなかった。
・全員で遊ぶような場面がなく、2~3人のグループでの遊びが多かった。全
員・全体で遊ぶ場面をつくっても面白かったと思う。
・室内遊びの時間が長くなってしまった。フリータイムの使い方を工夫して、
もっと外に出る時間をつくっても良かった。
・
「禁止語を使わない」というカウンセラーの約束に最後まで悩まされた。不自
然な対応になってしまったかもしれない。
・子どもが自分を出して生活することができていたと思う。
・できればボランティアに連絡を早く入れてもらえると、事業内容や趣旨、意
図を理解してカウンセリングに臨めると思う。
・子ども同士での教え合いが見られる場面があった。自分が誘導しないため、
子どもが自発的に行動できていたように思う。
・子どもたちの中に「やりたいことをやれない」もどかしさがあった。
「一人の
ほうがいいかも・・・」という呟きがあった。
・幼児期に自主性や社会性を育むのはとても大切だと思う。今後もこの事業の
意図を貫いてほしい。
・かかわりの中で子どもの活動特性をつかんでいくことが求められた。子ども
が急げないことや先を読めないことなどを理解した上で対応しなければなら
ない。
・女の子同士の活動の中で、仲間意識や思いやりのある行動が見られた。
・プログラムが決まっているほうがやりやすい・・・。
・でも自由なほうが・・・?
・「危ない」と思ったときの声がけをどのようにしたらよいか?
→指導者の経験に基づく力量に関係してくるので、一概には言えないが、準
備や自分のポジションの取り方で、回避できるようになることが大切。
・ボランティアへの連絡が遅いと思う。
・
「おやつがあるよ」と最初に伝えておいて、食べたいときに食べるようにして
おけばよかったのではないか?自分で決めさせる場面をつくることも大切に
感じた。
23
3
公立施設との連携について(報告)
本事業では、平成18年度から岩手県・山形県の公立施設への普及啓発
事業としてプログラムの提案と職員の相互交流を実施してきた。今年度も
継続実施し、新たに連携施設が一堂に会する「プログラム開発会議」を開
催することと、新規に事業を検討する施設に出前でプログラムを提供する
連携のスタイルをつくり実施した。また、事業を公開して見学できる体制
をとり、山形県と青森県の公立施設から参加していただいた。
【平成23年度
本事業における公立施設との連携実績】
期日
1
7/14
連携事業
開催場所
(連携における役割)
(参加者)
教育事業 幼児キャンプ「大自然にい~っぽ」
国立花山青少年自然の家
事業担当者プログラム開発会議
(主催者として会議を開催)
2
9/3~4
山形県金峰少年自然の家主催事業
山形県金峰少年自然の家
「わくわくちびっこキャンプ」
(企画指導専門職参加)
(運営協力者)
3
9/10
~11
山形県神室少年自然の家主催事業
山形県神室少年自然の家
幼児キャンプ「大自然にい~っぽ」
(活動プログラムの提案)
4
5
9/24
1/14
~15
6
1/14
~15
山形県朝日少年自然の家元気な森の学校推進事業
山形県朝日少年自然の家
「幼児の自然体験フォーラム」
(企画指導専門職、事業推
(事例発表者・講師として参加)
進係員参加)
教育事業 幼児キャンプ「大自然にい~っぽ」
国立花山青少年自然の家
冬の本キャンプ
(山形県神室少年自然の家
(運営協力者)
研修主事)
教育事業 幼児キャンプ「大自然にい~っぽ」
国立花山青少年自然の家
冬の本キャンプ
(青森県梵珠少年自然の家
(事業見学)
研修主事)
24
①連携先事業担当者とのプログラム開発会議
25
②山形県金峰少年自然の家主催事業「わくわくちびっこキャンプ」
26
4
事業を通した連携体制の広がりとその波及効果について(報告)
本事業は、今年度から「森のようちえん」の手法をプログラムに取り入
れ、森の中で主体的に遊ぶことができる子どもを育てることを目的に、く
りこま高原自然学校や森のようちえんを実践している団体(環境教育工房
LinX)と協力し、事業のアドバイザーに迎え、体制作りを行ってきた。
これらのつながりから、一昨年からはじまった「森のようちえん東北交
流フォーラム」の平成23年度開催地ならびに実行委員として、その事業
実践を提供する場を得ることができた。
このフォーラムは、11月12日にプレフォーラム、翌年2月25日~
26日に本フォーラムを開催した。東北各地で森のようちえんの実践に関
わる方々や、関心を持つ保護者などの参加を得て、基調講演や分科会、体
験版森のようちえんのプログラムを提供した。
現在、全国各地で注目を集めている「森のようちえん」と国立施設で取
り組む幼児対象事業の接点として、新たな連携をつくることができたのは
大変有意義であった。また、民間で実践されている先進的な取組みに触れ
ることで、今後のプログラムを検討する上で参考になるとともに、一つの
イベントに多様な立場から参画してつくり上げていく「新しい公共」につ
ながる第一歩となったと考える。
【森のようちえん東北交流フォーラム
in みやぎ栗原】
2/25(土)
2/26(日)
11:30 送迎バス出発
分科会(大研・オリ室)
(くりこま高原駅)
8:30
午前
8:30
B
10:15
受付 13:00
午後
夜
C
10:15
C
13:30
「森のようちえん」の
基調講演(大研)
実践(託児)
15:00
(野外エリア)
森のようちえん
野外エリア
第2炊飯場
B
13:00 分科会A(プレイホール)
14:40 全体会(プレイホール)
15:00 閉会・解散
「森のようちえん」見学
15:30
16:00
15:20 送迎バス出発
全体会(大研)
休憩(オリ室)
16:20 送迎バスくりこま高原駅着
17:00 自由時間
バス:16:30
18:00 夕食
新幹線下り:17:10
19:00 入浴
上り:17:16
20:00 交流会
21:45 終了・就寝
27
〔後援〕
栗原市教育委員会、河北新報、大崎タイムス
〔基調講演〕2/25(土)13:30~15:00
大場 隆博氏(日本の森バイオマスネットワーク)
演題 『子どもが育つ森の家』
~子どもが健康に育つ森と、住環境・木質エネルギー・未来の森林環境について~
〔全体会〕2/25(土)15:30~17:00
橋口 直幸氏(森の楽校フォレストランド)
テーマ『子どもの外遊びが豊かな未来につながる!』
~東日本大震災からの子どもの外遊びの新生~
〔分科会〕2/26(日)8:30~12:00(B・C)、13:00~14:30(A)
A:「足を動かすといいこといっぱい」~森のようちえんと歩育~
講師:馬渡達也(多世代はうす文字倶楽部)
B:「なぜ、森のようちえん?」~子ども観から考える~
講師:柴田千賀子、柴田卓(キッツ森のようちえん)
C:「子どもの主体性を支援する具体的な手立て」~トエックフリースクールスタッフの専門性~
講師:利根清子(NPO法人自然スクールトエック:徳島県)
5 成果
(1)秋のキャンプから
・本キャンプ中に子どもの変容が見られた。プレキャンプを実施した効果
が親の安心感、子どもの安心感に現れた。
・子どもの集団が、グループプロセスのストーミングの状態にまで成長し
た(対立の兆し)。具体的には名前を呼び合ったり、
「呼び捨てにすんな!」
という会話があったりした。この集団がさらにノーミング(対立にどう
ルール作りをするか?)やパフォーミング(コミュニケーション、友達
を誘うなどの動き)に成長するとフリーキャンプの成果が出ているとい
えるのではないか。
・事業として、仮説を立てて研究するポイントが見られた。研究や論理の
実証を目標に、今後も継続した取組みが必要である。今回のキャンプで
何が実証できたか、次回で何を実証できるかを整理していく。
・大人の求めに沿った事業展開ができた。
「こういう体験を期待していた!」
や「子どもの変化に驚いた!」などの声を、次回以降に活かす。
・初めて「時間枠がないキャンプ」を実施して、その効果をスタッフも体
感した。子どもが伸びやかにすごすことができ、家族を思い出してホー
ムシックになる子どもがいなかった。昨年と比較して、活動にスムーズ
に入ることができた。
28
・募集に関して、近隣3市教育委員会や子育て支援課との連携をはじめた
ことは大きい。幼・保への直接送付から教育委員会等への依頼のほうが
事業を広める上では効果的。電話やメールで依頼しても、快く引き受け
てくれることがわかった。
(2)冬のキャンプ
・事業の柱(ポリシー)については、今後も徹底してブレない方がいい。
「大
人が決めない」「自立」「生きる力」。
・保護者プログラムの様子から、保護者がワクワクしている。それだけこ
の事業やプログラムに対する期待感が高い。参加者のアイデアや活動の
中でのスピード感がいい。意欲・意識の高い参加者が多い。
・今回を実施して、前回の2泊3日のキャンプは時間に追われる感覚がな
かったと改めて感じた。1日ではあるが、余裕の面では大きいと感じた。
・前回まで泣いた子や泣いていた子が、今回のキャンプでは泣かなくなっ
た。それだけでも大きな成長が見られた。
・参加者が活動をプロデュースするコマをつくったが、関心の高い参加者
であるため、話し合いは前回同様盛り上がりを見せた。
・保護者は、子育てについて日頃感じていることを他の参加者と共有した
いという欲求を持って参加している。それを満たせるようなプログラム
構成を今後も意識したい。但し、それだけを意識すると夜の時間が長く
なる。現状のバランスを保ち、
「大人が夢中になる体験」との両立を意識
しなければならない。
・参加者からさまざまな意見や感想が出ると思うが、事業としてのポリシ
ーをもち、実施に関してもそれを貫いていくことが、今後の成果につな
がる。
・保護者に興味をもたせる工夫や、意欲をもって取り組んでもらう工夫が
大切。今回は結果的に活動を選択できるようにしたが、選択できること
はいいことなので、今後も実施していきたい。
・
「大人の非日常」をどう演出するか。それを求めて参加している方も多い
ので、今後は企画が益々大変になるだろう。
6 課題
(1)秋のキャンプ
・参加者が全体的に幼い傾向にあることが、描いた絵から見ると感じられ
た。文科省の調査(体力の低下と体力格差)などの分析を行い、事業へ
いかすような取組みが必要である。
・参加者が少ない。
「森のようちえん」をうたうのであれば20人は集めた
い。また男女のバランスもよくなかった。
・フリーキャンプの時間設定とコントロールができなかった。フリーとは
言ってもメリハリをつけ、ダラダラしないことが大切である。子どもが
29
決めているようで実は・・・くらいでないとコントロールできない場面
が多々見られた。(例)食事時間、午前・午後のくくりなど
・ボランティアスタッフ体制の継続性が大切である。今回のカウンセラー
で次回(冬)もいけると、子どもの変容がさらによくわかるはずである。
スタッフの共通理解を深めるためのスタッフトレーニングの重要性を感
じた。カウンセラーがやるべきこと、やらないことの確認も足りなかっ
た。
・フィールドが整備されすぎている。今回の田んぼ遊びでも、丸太はとて
もよかったが、それ以外は整備されすぎている。理想のフィールドとし
ては、水が自由に使えて、丸太が運べて、いろんなものがグチャグチャ
にある状態が望ましい。自然を使った遊び=創造性を養うような環境で
ありたい。
・募集チラシの効果が薄い。発送コストの割にリターンがない(チラシを
見て参加した方は3名のみ)
。次回からはQRコードをつけたカードを作
成したほうが良いのではないか。今回の参加者で、HPや掲示板を見た
方が多かった。カードは子どもたちが好きでよく手に取るし、携帯から
QRコードを活用する人が増えている。小さいカードならチラシほど置
く場所を取らない。改良の余地あり。
(2)冬のキャンプ
・活動における子どもの行動が気になった。全体的にスピードに弱い(そ
り滑りから)。最近の子どもたちは、「バランスが良い」などの感覚的な
ものが弱い傾向にある。これらの課題を活動プログラムに反映させられ
ないだろうか。
・見学していただいた公立施設職員の見解。
「本当にこれで大丈夫なのか?」
と常に感じていた。本質的に納得できずに過ごした。同じように事業を
実施する上での不安要素がある。自分としてはこの内容を実施する自信
や確信が持てない。
・誘導しないがゆえに、子どもに対する言葉がけの難しさを感じた。
・野外活動の強度について検証が必要だと思う。幼児期の子どもたちにお
いて、どれだけの強度の活動が適しているのか。前回のキャンプと比較
して検討しなければならない。
・年中と年長児を対象にしたが、5歳と6歳でできることの違いや差は大
きいと改めて感じた。異年齢集団のよさやそれを意識した内容が必要な
のかもしれない。
・子どもの自主性だからといって、
「雪遊びに行かない」という判断はよか
ったのか?活動としてある程度の方向性はあるので、それに沿った声が
けも必要になる。
・保護者の活動はスムーズだったが、いざ子どもにどう体験させるかとい
う部分で、こちらが想定していない部分があり混乱を招いた。最後の落
30
としどころを、きちんと参加者に伝えておかないとイメージが難しいと
感じた。
・親と子どもが会う、会わないについて、もっと明確な伝え方をしなけれ
ばならない。全体で考える(話し合う)時間をとったが、それを無視し
ている人もいた。次回からその点についてどうするかを検討する。
(親子
別プログラムの効果を検証する)
31
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