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鳥取大学における教育用ネットワークの整備

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鳥取大学における教育用ネットワークの整備
鳥取大学における教育用ネットワークの整備
鳥取大学工学部・榊原正明,鳥取大学教育地域科学部・石川雅雄
[email protected], [email protected]
鳥取大学では平成15年度から『必携パソコン』として新入生にノートパソコンを持たせることを
計画しています。ところが現在でも学生がノートパソコンを持ち込んで利用できる情報コンセントが1個も
ありません。それは、これまでの学内LANが『研究用』という位置づけにあり、学生が勝手に私物のパソ
コンを持ち込んでつなぐことは許されていなかったからです。実際には各研究室などでは、その研究室の責
任において学生にノートパソコンを利用させている先進的な研究室があることも事実です。その場合には研
究室や学科などでファイアウォールを導入し、卒業研究などにパソコンを利用していましたが、セキュリテ
ィ上の責任は研究室や学科にあり、学生は研究室に配属される3年生や4年生になるまで実際にパソコンに
触れる機会が少ないという不満がありました。
今回、英語のALCに代表されるようなCALLシステムと言われるコンピュータ支援の下の語学
独習システム導入に際して鳥取大学では1,2年生の利用できる演習用コンピュータの台数が少なすぎると
いう現状に鑑み、現在のコンピュータ演習室のみを利用したカリキュラムを組むことが難しく『必携パソコ
ン』の導入という結論に達し、高知大学を始め情報教育のためにパソコンの必携化を先進導入している大学
の例を調べ検討致しました。いずれも多くの学ぶべき点があることを発見しましたが、検討すればするほど
自分の大学の後進性と鳥取大学も押し寄せる情報化の波に取り残されないように改革、整備の必要性を痛感
いたしました。
今回の話は英語のような語学教育のカリキュラム改革・コミュニケーション英語・TOEC受験・CALL
システムの導入から始まり、そのためにノートパソコンの必携化の導入が決まりました。学内からは事実上
の学費の値上げだという声もありましたが、ノートパソコンを買わせるからには、それを活用できる環境を
整えなければいけないということで、全学の情報化推進委員会で認められたIT関連重点経費の一部を使っ
て今年度から年次計画で『教育用情報ネットワーク』というものを先進的な高知大学その他の例に学び今年
度から構築することとなりました。これは1,2年生を始め全学の学生がノートパソコンを使って英語のC
ALLシステムやその他で語学を学習すると共に情報教育にも役立てられるものです。また遅れ馳せながら
全学情報教育専門委員会という委員会が立ち上げられ、今後の情報教育、さらに発展してデジタルコンテン
ツを使った専門教育など、
『必携パソコン』および『教育用情報ネットワーク』を生かすための議論を行われ
ることになりました。
今回の報告ではゼロからのスタートに近い鳥取大学での『教育用情報ネットワーク』の構築につい
てその苦労話をご報告したいと思います。高知大学などを視察し、単にネットワークを引くだけではすまな
いことを知り、セキュリティ上の完全に分離した教育専用のネットワークとその管理・運用の責任の重さ、
学生のサポート・ケアのたいへんさ、情報教育の内容の充実など多くの点を学びました。
まずは、そのネットワーク構成について説明いたします。最初に書いたドラフトの冒頭部は次のようなもの
でした。
基本方針
(1) 教育用ネットワークとして完全分離。
(2) 教育用ネットワークにおいて障害等を起こった場合に全学の研究用ネットワークに障害を及ぼさないよ
うにする。
(3) 将来、学内ネットワークとの接続速度高速化
(4) 1000 BASE のバックボーンを261室が中心となるように集めて2台程度のALCサーバを分散配置
(5) プロキシサーバを分散配置(3∼5台)して sibling の関係によって連動させて外部ネットワークへの
見かけ上の接続速度の改善を図る。
(6) DHCP サーバを3台程度分散配置し1台が止まっても常に全体をカバーできるようにする。
初めは共通教育棟のみの計画でしたが、実際には、その後、予算の関係で年次計画になり、情報化推進委員
会の議論を経てファイアウォールやセンタースイッチの導入・冗長化が認められた代わりに、各学部の教育
用情報ネットワークを共通教育棟に置いたファイアウォール・センタースイッチの下にぶら下がる形で年次
計画によって順次拡張整備して行くことが方針化されました。
『必携パソコン』を持った新入生が順次学年進
行と共に各学部において専門教育を受けることが予想され、次年度から各学部の教育用情報コンセント整備
が必要であるという声が上がったからです。
実際のネットワークはステートフルインスペクションなどの先進的な機能を持った定評のある
VPN-1/FireWall-1 を使ったファイアウォールによって研究用ネットワークとは完全に分離され、教育用途
として限定され Proxy Server を使ったアクセスに制限をした運用を原則とすることを検討中です。
squid などの定評のあるソフトを使った proxy server を数台配置し、シャープのライセンスを持つ無料の
Super Proxy Script 等の JavaScript を使いプロキシの自動設定を行うなど、負荷分散を図りつつ、拡張性
に優れ、学生に利便を考えたシステムの構築を検討中です。最近では Layer4 Switch などの選択肢も十分
考えられますが、限られた予算の中でなるべく多くの学生の利用できる情報コンセント数をそろえたいとい
う趣旨にたって Linux によるサーバ利用など企業と違った学術機関らしいアカデミック系ネットワークの
構築や創意・工夫も必要であるということは、高知大などの多くの先駆的な例に学んだところでした。
現在では 1000BASE-T NIC やスイッチ類も技術革新によって年々価格が下がりネットワーク構築も容易
になりつつありますが、今から数年以上前に Linux firewall 等を使った創意工夫の元に現在を見越したよう
な大規模教育用ネットワーク構築を行った先見性には多くの学ぶべき点があり、決して予算を掛けることだ
けが使いやすいネットワーク構築の条件ではなく、管理者の技量と全学の理解・支援の重要性を学び、また、
過去でなく未来を見るためにはネットワークの知識と理解・学ぶ心が大切だと感じました。
今後は、この『教育用情報ネットワーク』を利用した学生の教育の中で成績管理などの問題が生じることも
予想され、OpenSSL などを利用したログインの暗号化・個人情報の保護など最新の技術を取り入れて行く
ことが必要だと思われます。
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