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B - 名古屋大学

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B - 名古屋大学
主論文
植物ホルモン・アブシジン酸に応答した気孔閉鎖の
シグナル伝達機構の解析
都築 朋
名古屋大学大学院 理学研究科 生命理学専攻
生体システム論講座 植物生理学グループ
目次 略語一覧……………………………………………………………………………..4
要旨…………………………………………………………………………………..5
序論…………………………………………………………………………………..8
結果
1. 気孔開度変異体のスクリーニングと rtl1 変異体の単離……………………12
2. rtl1 変異体の表現型解析及び原因遺伝子の同定…………………………….12
2-1. rtl1 変異体の気孔表現型解析
2-2. rtl1 変異体の原因遺伝子の同定
2-3. 既知の chlh 変異体の気孔表現型解析
2-4. CHLH 発現抑制株(CHLH RNAi)の表現型解析
3. CHLH の ABA 受容体としての可能性の検証……………………………….15
3-1. 3H-ABA を用いた組み換え精製 CHLH タンパク質との結合解析
3-2. 種子発芽及び根伸長への ABA の効果
4. 孔辺細胞での ABA シグナル伝達経路における CHLH の関与の明確化…16
4-1. rtl1 変異体の孔辺細胞における ABA 応答性遺伝子の発現変動
4-2. rtl1 変異体の孔辺細胞における ABA に応答した AKSs のリン酸化
4-3. ABA による気孔閉鎖への高濃度 Ca2+の効果
4-4. 孔辺細胞細胞膜 H+-ATPase のリン酸化解析
5. CHLH 過剰発現株(CER6::CHLH-GFP)の乾燥耐性評価…………………19
6. Mg-キラターゼの孔辺細胞の ABA シグナル伝達への関与の検証..............20
考察………………………………………………………………………………….22
材料及び研究方法………………………………………………………………….29
1. 植物材料と栽培方法
2 2. 葉の重量変動を指標にした気孔開度変異体のスクリーニング
3. クロロフィルの定量
4. 気孔開度の測定
5. マッピング及びシークエンスによる原因遺伝子の探索
6. 野生型ゲノム CHLH の rtl1 変異体への導入(相補実験)
7. 組換えタンパク質及び抗 CHLH ポリクローナル抗体、抗 GFP ポリクロー
ナル抗体の作製
8.
3
H-ABA と組換え CHLH タンパク質との結合解析
9. 発芽率への ABA の影響
10. 根伸長への ABA の影響
11. ウェスタンブロッティング解析
12. 半定量的 RT-PCR
13. 孔辺細胞プロトプラストの単離
14. ABA 処理と Q-PCR
15. ABA 処理とファー・ウェスタンブロッティングによる AKSs タンパク質
のリン酸化解析
16. CHLH 発現抑制株(CHLH RNAi)の作製
17. CHLH 過剰発現株(CER6::CHLH-GFP)の作製
18. 乾燥ストレス耐性解析
19. 孔辺細胞細胞膜 H+-ATPase のリン酸化の免疫学的検出
20. chli1 ノックアウト変異体のジェノタイピング
引用文献…………………………………………………………………….....….51
謝辞………………………………………………………………………………..62
図表及び図表の説明
3 略語一覧 ABA Abscisic acid
ABI1 ABSCISIC ACID INSENSITIVE 1
abi1-1 abscisic acid insensitive 1-1
AKSs
ABA-responsive kinase substrates
cch conditional chlorina
CHLD Mg-chelatase D subunit
CHLH Mg-chelatase H subunit
CHLI Mg-chelatase I subunit
Col-0 Columbia-0
EMS
ethyl methanesulfonate
gl1 glabrous1
gun5-1
genomes uncoupled 5-1
Ler
Landsberg erecta
ROS
Reactive oxygen species
PP2C
Protein phosphatase 2C
PYR/PYL/RCARs
Pyrabactin resistance / Pyrabactin resistance 1-like / Regulatory
component of ABA receptor
RNAi
RNA-mediated interference
rtl1 rapid transpiration in detached leaves 1
SnRK2 SNF-related kinase 2
4 要旨 植物の表皮に存在する気孔は、その開度を調節することにより、植物と大
気間のガス交換を行っている。気孔は一対の孔辺細胞で構成され、青色光に応
じて開口し、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みや、蒸散等のガス交換を促
進する。一方、植物が乾燥ストレスに曝されると、植物ホルモンであるアブシ
ジン酸(ABA)に応答して気孔が閉鎖し、植物体からの水分損失を防ぐ。
これまでに、気孔開閉のシグナル伝達機構を解明するため、モデル植物で
あるシロイヌナズナを用いて、気孔開度変異体のスクリーニングが行われてき
た。本研究では、単離された変異体の一つである、rtl(rapid transpiration in
detached leaves)1 について解析を進めた。rtl1 変異体は、切り取った葉の重量
減少が野生株に比べて著しいことから単離された変異体であり、その植物体は
矮性でペールグリーンの表現型を示す。生育条件下の気孔開度は野生株とほと
んど差はないものの、気孔閉鎖を誘導する ABA を 20 µM 処理しても気孔が閉
鎖しない ABA 非感受性の表現型を示す。原因遺伝子同定を進めたところ、rtl1
変異体には第5染色体の Mg-キラターゼ H サブユニット(CHLH)遺伝子にミ
スセンス変異(L690F)を引き起こす1塩基置換(C2068T)が存在することが
明らかとなった。そこで野生型ゲノム CHLH を rtl1 変異体に導入したところ、
rtl1 変異体の表現型が相補された。さらに、CHLH の発現抑制株(CHLH RNAi)
を作製し、解析を行ったところ、rtl1 変異体と同様、矮性・ペールグリーンで
あり、ABA に応答した気孔の閉鎖がみられなかった。これらの結果から、rtl1
変異体の原因遺伝子が CHLH であることが明らかとなった。
CHLH は、クロロフィル生合成に関わる酵素、Mg-キラターゼを構成するサ
ブユニットの一つであり、近年、ABA との結合能から ABA 受容体としても機
能し、種子発芽や根伸長、気孔閉鎖等様々な ABA 応答に関与することが報告
5 されている。そこでまず、CHLH が ABA 受容体として機能しているかどうか
確認するため、3H-ABA を用いて結合解析を行ったが、組換え CHLH と ABA
の特異的な結合は観察されなかった。さらに、rtl1 変異体は種子発芽や根伸長
において正常な ABA 応答を示した。これらの結果から、CHLH は ABA 受容体
ではないものの、気孔孔辺細胞特異的に ABA シグナル伝達経路に関わってい
ると考えられた。
孔辺細胞における ABA シグナル伝達経路では、Ca2+がセカンドメッセンジ
ャーとして機能しており、Ca2+処理で気孔閉鎖が誘導されることが報告されて
いる。そこで、rtl1 変異体の気孔に Ca2+処理を行ったところ、ABA による気孔
閉鎖が誘導されることを見出した。この結果は、CHLH が孔辺細胞において細
胞内 Ca2+濃度の変動を介して、ABA シグナル伝達経路に関与していることを示
唆している。また、孔辺細胞における ABA 応答としては、気孔閉鎖以外に ABA
応答性遺伝子発現の変動や AKSs (ABA-responsive kinase substrates)タンパク質
のリン酸化も知られているが、rtl1 変異体の孔辺細胞はいずれも正常な ABA 応
答を示した。一方、ABA は気孔閉鎖を誘導するだけでなく、孔辺細胞細胞膜
H+-ATPase のリン酸化による活性化を阻害して青色光に応答した気孔の開口を
抑制し、効率的に気孔の閉鎖を促進することがこれまでの研究で明らかになっ
ている。そこで、rtl1 変異体の H+-ATPase のリン酸化が ABA によって阻害され
るかどうか調べたところ、この変異体では、ABA が存在しているにもかかわら
ず、青色光による H+-ATPase のリン酸化が抑制されず、CHLH が ABA に応答
した H+-ATPase の活性化阻害に関与していることが示された。
次に、孔辺細胞を含む表皮において CHLH を過剰発現させた植物の表現型
解析を行った。この CHLH 過剰発現体(CER6::CHLH-GFP)は、生育条件下で
も気孔が閉じ気味であり、気孔閉鎖において ABA 高感受性を示した。そこで、
乾燥ストレス耐性を解析したところ、野生株がほとんど枯死する条件でも、
6 CHLH 過剰発現体は生存できることが確認された。この結果は、孔辺細胞にお
ける CHLH の発現量を増加させることで、植物に乾燥耐性を付与できることを
示している。
ところで、クロロフィル生合成においては、Mg-キラターゼは D、H、I 各
サブユニットの複合体で機能する。そこで、サブユニットの一つであるIサブ
ユニット(CHLI)のノックアウト変異体の気孔開度への ABA の効果を解析し
たところ、rtl1 と同様 ABA 非感受性を示したことから、CHLH は CHLI ととも
に Mg-キラターゼ複合体として、孔辺細胞の ABA シグナル伝達に影響を与え
ている可能性が示唆された。
以上の結果より、本研究ではまず、CHLH が ABA 受容体としてではなく、
細胞内 Ca2+変動を介して、孔辺細胞特異的に ABA シグナル伝達経路に関与し
ていることを明らかにした。また、CHLH は ABA による気孔閉鎖だけでなく、
細胞膜 H+-ATPase の脱リン酸化を介した気孔開口の阻害にも関与しており、さ
らには、CHLI を含めた Mg-キラターゼの複合体が孔辺細胞における ABA シグ
ナル伝達経路に関与していることを示した。本研究により、ABA シグナル伝達
機構における CHLH の役割を明確にすることができた。さらに、CHLH を孔辺
細胞に過剰発現させることで気孔閉鎖を促進し、植物に乾燥耐性を付与するこ
とに成功した。今後、乾燥耐性作物の作出など、応用面への活用も期待される。
7 序論 植物の表皮に存在する気孔は、一対の孔辺細胞により構成され、その開度
を調節することにより、光合成に必要な二酸化炭素の取り込みや蒸散、酸素の
放出など、植物と大気間のガス交換を行っている(Shimazaki et al., 2007)。孔辺
細胞は、太陽光に含まれる青色光に応答して気孔を開口し、光合成に必要な二
酸化炭素の取り込みや蒸散など、植物と大気間のガス交換を促進する。気孔開
口は、青色光に応答した孔辺細胞の細胞膜 H+-ATPase の活性化により引き起こ
される(Assmann et al., 1985; Shimazaki et al., 1986; Kinoshita and Shimazaki, 1999)。
活性化された H+-ATPase が細胞膜の過分極を引き起こし、これに応答して、電
位依存性 K+チャネルが孔辺細胞内へ大量の K+を流入させ、水が取り込まれて
気孔開口に至る(Shimazaki et al. 2007)。
一方、植物が乾燥ストレスに曝されると、気孔は植物ホルモン・アブシジ
ン酸(Abscisic acid; ABA)に応答して閉鎖し、植物体からの水分損失を防いで
いる(Schroeder et al., 2001)。ABA による気孔閉鎖は、孔辺細胞の陰イオンチ
ャネルが活性化されて細胞膜が脱分極し、電位依存性の外向き整流性 K+チャネ
ルが開口して、孔辺細胞から K+ が排出されることにより引き起こされる
(Schroeder et al., 1987; Negi et al., 2008; Vahisalu et al., 2008; Kim et al., 2010)。
ABA シグナル伝達経路の最上流に位置する受容体については長い間議論
さ れ て き た が 、 近 年 、 Pyrabactin Resistance / Pyrabactin Resistance 1-like /
Regulatory Component of ABA Receptor (PYR/PYL/RCAR)ファミリーのタンパ
ク質が ABA 受容体として種子発芽や根の生育の阻害、気孔閉鎖など様々な
ABA 応答に関与することが証明された。pyr1 pyl1 pyl2 pyl4 四重変異体は、種子
発芽や遺伝子発現、気孔閉鎖等において強い ABA 非感受性を示すことから、
これらのタンパク質は、機能的に重複して働いているものと考えられている
8 (Park et al., 2009; Nishimura et al., 2010)。
このファミリーのタンパク質は、孔辺細胞において ABA を受容すると、
ABA シグナルの負の制御因子である ABI1 や ABI2 等の Protein phosphatase 2C
(PP2C)と直接結合することによってその活性を抑制し、その結果、PP2C に
よる抑制から解放された OST1 等のサブクラス III の SNF-related kinase 2
(SnRK2)が活性化される(PYR/PYL/RCARs-PP2Cs-SnRK2s 経路)(Ma et al.,
2009; Park et al., 2009; Santiago et al. 2009b; Cutler et al., 2010)。活性化された
SnRK2 は 、 陰 イ オ ン チ ャ ネ ル の 実 体 と 考 え ら れ る SLOW ANION
CHANNEL-ASSOCIATED 1(SLAC1)を活性化し、細胞膜の脱分極を引き起こ
す(Negi et al., 2008; Vahisalu et al., 2008; Geiger et al., 2009; Lee et al., 2009)。
また、ABA による細胞膜の脱分極は、細胞膜 H+-ATPase の阻害によっても
促進されることも示唆されている(Shimazaki et al., 1986;
Goh et al., 1996;
Roelfsema et al., 1998)。細胞膜 H+-ATPase は、C末端から 2 番目の Thr 残基が
青色光によりリン酸化されることで活性化されるが(Kinoshita and Shimazaki,
2002)、ABA はその細胞膜 H+-ATPase のリン酸化を阻害することにより(Zhang
et al., 2004; Hayashi et al., 2011)、光誘導性の気孔開口を阻害する。H+-ATPase 活
性が恒常的に高い ost2 変異体は、ABA を添加しても気孔の閉鎖が起きないこと
から(Merlot et al., 2007)、H+-ATPase の阻害を介した気孔開口抑制が気孔閉鎖
に重要であることを示している。また、ごく最近、気孔開口に関与する内向き
整流性 K+チャネル遺伝子の転写を制御する bHLH 型転写因子の ABA-responsive
kinas substrates (AKSs; AKS1, AKS2, AKS3)が、ABA に応答してリン酸化して、
K+チャネルの転写を阻害することにより、気孔開口を抑制することが示された
(Takahashi et al., 2013)。このように、ABA は気孔閉鎖と同時に開口も阻害す
ることで、効率的に気孔閉鎖を誘導する。
この他にも、孔辺細胞における ABA シグナル伝達経路には、Ca2+や活性酸
9 素種(Reactive Oxygen Species; ROS)、NO、ホスファチジン酸、イノシトール
誘導体、スフィンゴ脂質等のセカンドメッセンジャーが関与していることも報
告されている(Kim et al., 2010)。なかでも Ca2+については、ABA 処理によって
細胞質 Ca2+の上昇・振幅がみられることや(Allen et al.,1999; 2000; 2001; Islam et
al., 2010)、Ca2+のキレート剤である EGTA を処理すると ABA による気孔閉鎖
が抑制されることから(Hwang and Lee, 2001)、孔辺細胞における ABA シグナ
ル伝達経路においては Ca2+が重要な役割を担っている。
ABA 受容体としては、PYR/PYL/RCAR 以外に、G タンパク質共役型受容体
である G-protein coupled receptor 2(GCR2)(Liu et al., 2007), や G-protein coupled
receptor-type G proteins (GTG1, GTG2) (Pandey et al., 2009)、クロロフィルの生合
成に関与する Mg-キラターゼ H サブユニット(Mg-chelatase H subunit; CHLH)
(Shen et al., 2006; Wu et al., 2009; Du et al., 2012)も候補として挙がっているが、
GCR2 や CHLH については未だ議論の余地が残されている(McCourt and
Creelman, 2008; Cutler et al., 2010)。
CHLH の ABA 受容体としての研究では、シロイヌナズナの CHLH 遺伝子の
ミスセンス変異体(cch; conditional chlorina )やノックダウン植物体が、種子発
芽や根の生育、気孔閉鎖において ABA 非感受性となることが示されている。
また、別のグループは、CHLH 発現量は 概日リズムを調節する因子 TOC1 によ
って調節され、TOC1 を過剰発現させると CHLH 発現が低下し、ABA 非感受性
になることを示している (Legnaioli et al., 2009)。このように CHLH が ABA シグ
ナル伝達に関与することが示されている一方で、 大麦の CHLH である Xan-F
は ABA との結合能がなく、xan-f 機能欠損変異体は ABA に関連した表現型がみ
られないという報告もあり(Müller and Hansson, 2009)、CHLH の ABA シグナ
ル伝達への関与については、未だ議論の余地が残されている。
このように気孔開閉のシグナル伝達経路は明らかになりつつあるが、未だ
10 不明な点も残されている。そこで、本研究では、気孔開度に依存した蒸散によ
る葉の重量減少を指標に、気孔開度変異体のスクリーニングにより単離された
変異体、rtl(rapid transpiration in detached leaves)1 の解析を進めた。rtl1 は、
ABA 存在下でも気孔が閉鎖しない ABA 非感受性に加え、矮性、ペールグリー
ンの表現型を示す。マッピング及びシーケンス解析の結果、rtl1 変異体は CHLH
にアミノ酸置換(L690F)を引き起こす一塩基置換(C2068T)を持つことを見出
した。さらに、rtl1 変異体の表現型解析、3H-ABA を用いた ABA 結合解析や、
CHLH 発現抑制・過剰株の作製・表現型解析を行い、CHLH の孔辺細胞の ABA
シグナル伝達における役割の解明を目指して研究を進めた。
11 結果 1. 気孔開度変異体のスクリーニングと rtl1 変異体の単離
気孔開閉のシグナル伝達機構を解明するためにこれまでに多くの気孔開度
変異体スクリーニングが行われてきている(Mustilli et al., 2002; Kinoshita et al.,
2011; Hashimoto-Sugimoto et al., 2013)。変異体スクリーニングでは、気孔開度を
間接的に評価する必要があり、その一つに蒸散に依存した葉の重量変動がある。
これまでに、エチルメタンスルホン酸(EMS, ethyl methanesulfonate)処理によ
り変異を誘発したシロイヌナズナから、気孔開度に依存した蒸散による葉の重
量減少を指標に、気孔開度変異体のスクリーニングが進められてきた(Figure
1A)。その結果、12,338 個体の植物から、野生株より重量減少の大きい rtl (rapid
transpiration in detached leaves) 変異体 3 個体及び、野生株より重量減少の小さい
stl (slow transpiration in detached leaves) 変異体 2 個体が単離されていた。本研究
では、この重量変動スクリーニングで単離された変異体のひとつ、rtl1 変異体
について解析を行うことで、気孔開閉シグナル伝達の解明を目指した。
rtl1 変異体は、野生株に比べ、切り取った葉の重量減少が大きかったことか
ら単離された変異体である。野生株の葉の重量は、切り取ってから 90 分目で
65%まで低下したのに対し、rtl1 変異体は 35%まで低下した(Figure 1B)。また、
この変異体は、矮性・ペールグリーンの表現型を示し(Figure 2A)、実際、クロ
ロフィル含量は野生株の 35%程度まで低下していた(Figure 2B)。
2. rtl1 変異体の表現型解析及び原因遺伝子の同定
2-1. rtl1 変異体の気孔表現型解析
rtl1 は、切り取った葉の重量減少の大きい変異体であるが、通常の生育条件
下では野生株とほぼ同様の気孔開度を示した(Figure 3A)。
12 次に、気孔閉鎖を誘導する植物ホルモン ABA を添加した場合の気孔開度を
調べた。気孔閉鎖を誘導するために、あらかじめ植物を暗所に置いたところ野
生株は気孔が閉鎖していたのに対し、rtl1 変異体の気孔は少し開口していた
(Figure 3B)。そこで、光誘導性気孔開口の ABA による阻害効果を観察するた
め、20 µM ABA を光照射と同時に添加したところ、野生株では ABA 処理によ
り気孔開口が完全に抑制されたのに対し、rtl1 変異体では気孔開口の抑制がみ
られなかった(Figure 3B)。また、あらかじめ光を照射して十分に開口させた
気孔に対し、ABA による気孔閉鎖効果を調べるため、20 µM ABA を添加した
ところ、野生株の気孔は閉鎖したのに対し、この変異体では気孔の閉鎖がみら
れなかった(Figure 3C)。これらの結果から、rtl1 変異体の気孔は ABA 非感受
性の表現型を示すことが明らかとなった。
2-2. rtl1 変異体の原因遺伝子の同定
rtl1 変異体の原因遺伝子を同定するため、マッピングを進めた結果、rtl1 変
異体の表現型は SSLP マーカーnga151 と強い連鎖を示したことから、第 5 染色
体上腕約 29.5 cM に位置する Mg-chelatase H subunit (CHLH, At5g13630)が候補と
して挙がってきた(Figure 4A)。そこで、rtl1 変異体とバックグラウンドである
gl1 の CHLH 遺伝子のシーケンスを行い、塩基配列を比較した。その結果、rtl1
変異体にはミスセンス変異(L690F)を伴う一塩基置換(C2068T)が見つかっ
た(Figure 4B)。そこで、rtl1 変異体の原因遺伝子が CHLH であることを確認す
るため、プロモーター領域を含むゲノム CHLH を rtl1 変異体に形質転換した。
その結果、T2 世代において約 1:3 の割合で、矮性ペールグリーンの個体と野生
株様の個体が得られた。Figure 5 は、T3 世代のホモライン植物(gCHLH/rtl1)
の解析結果を示しており、植物体の大きさもクロロフィル含量も野生株と同程
度まで回復していた(Figure 5A, 5B)。次に、気孔の ABA 感受性を解析したと
13 ころ、ホモライン植物は rtl1 変異体とは異なり、野生株と同様の ABA に応答
した気孔閉鎖が観察された(Figure 5C)。以上の結果より、rtl1 変異体の原因遺
伝子は、CHLH であることが確認できた。
2-3. 既知の chlh 変異体の気孔表現型解析
rtl1 の原因遺伝子である CHLH の変異体としては、CHLH の 642 番目の Pro
が Leu に変わるミスセンス変異をもつ cch 変異体が知られている。cch 変異体
は、ペールグリーンで、且つ様々な ABA 応答に関して ABA 非感受性を示すこ
とが報告されている(Mochizuki et al., 2001; Shen et al., 2006)。そこで、cch 変異
体における光誘導性気孔開口の ABA による阻害や ABA による気孔の閉鎖につ
いて調べた結果、
rtl1 変異体と同様に ABA 非感受性の表現型を示した(Figure 6)。
また、cch の他にも CHLH に A990V 変異を持つ gun5-1 変異体が報告されてい
る(Mochizuki et al., 2001)。そこで gun5-1 変異体における光誘導性気孔開口の
ABA による阻害や ABA による気孔の閉鎖について解析したところ、gun5-1 は
cch (P642L)変異体や rtl1(L690F)変異体とは異なり、正常な ABA 応答を示し
た(Figure 6)。
2-4. CHLH 発現抑制株(CHLH RNAi)の表現型解析
前述のように rtl1 及び cch は ABA 非感受性の表現型を示したのに対し、
gun5-1 は正常な ABA 応答を示したことから、CHLH の ABA シグナル伝達経路
への関与を確認するため、CHLH のノックアウト変異体の入手を試みた。しか
し、CHLH は単一遺伝子であるため、そのノックアウト変異体は、アルビノの
表現型を示し、ほとんど育たない(Shen et al.2006; Huang and Li 2009)。そこで、
RNA-mediated interference(RNAi)により、CHLH の発現抑制株を作出した。作
出された 2 ラインの CHLH RNAi 植物において、CHLH の転写量、タンパク質
14 レベルともに低下していることを確認した(Figure 7)。この CHLH RNAi 植物
は矮性でペールグリーンの表現型を示し、クロロフィル含量を測定したところ、
野生株と比べて顕著な低下が認められた(Figure 8A, 8B)。そこで、CHLH RNAi
植物に対する気孔の ABA 応答性を調べたところ、CHLH RNAi 植物は、rtl1 と
同様に ABA を添加しても気孔の閉鎖がみられなかった(Figure 8C)。以上の
結果は、CHLH が気孔閉鎖の ABA シグナル伝達に関わっていることを強く示
唆している。
3. CHLH の ABA 受容体としての可能性の検証 3-1. 3H-ABA を用いた組み換え精製 CHLH タンパク質との結合解析
これまでに CHLH は、ABA と高い親和性(Kd = 32 nM)を持って結合する
ことから、ABA 受容体として機能することが報告されている(Shen et al., 2006;
Wu et al., 2009)。しかし、大麦の組換え CHLH タンパク質を用いた解析では ABA
と結合しないことが報告されており(Müller and Hansson, 2009)、CHLH の ABA
受容体としての機能は未だ議論されている。そこで、本研究では、CHLH と ABA
の結合を報告している Wu ら (2009) の方法に倣い、3H-ABA を用いて結合解析
を行った。結合解析では、すでに ABA 受容体として機能することが証明され
ている、CHLH とは全く異なるタンパク質である PYR1(Santiago et al., 2009a;
Nishimura et al., 2009)をポジティブコントロールとして用いた。また、
PYR/PYL/RCAR ファミリーのタンパク質は、PP2Cs の存在下で ABA と高い親
和性を示すことが報告されているため(Ma et al., 2009; Santiago et al., 2009b)、
PYR1 の結合解析は、PP2Cs の一種である ABI1 の共存下で行った。Figure 9A
は、結合解析に用いた精製組み換えタンパク質、His-CHLH、His-ABI1、His-PYR1
の電気泳動像を示しており、ほぼ単一バンドであることを確認した。結合解析
の結果、PYR1 は本研究においても、ABA との特異的な結合が検出されたのに
15 対し、CHLH と ABA との結合は認められなかった(Figure 9B)。また本研究で
は、プルダウン法による ABA 結合解析も行ったが、CHLH と ABA の結合は観
察されなかった(Figure 10)。このことから、CHLH が ABA と高い親和性をも
って結合する可能性は低いと考えられた。
3-2. 種子発芽及び根伸長への ABA の効果
ABA は気孔閉鎖だけでなく、根の伸長や種子発芽を抑制することも知られ
ており(Leung and Giraudat, 1998; Finkelstein et al., 2002)、cch 変異体は ABA に
応答した気孔の閉鎖がみられないだけでなく、種子発芽や根伸長においても
ABA による阻害がみられない ABA 非感受性であると報告されている(Shen et
al., 2006; Wu et al., 2009)。そこで、rtl1 変異体についても、種子発芽及び根伸長
における ABA の効果を解析した。興味深いことに、この変異体は種子発芽と
根伸長については正常な ABA 応答を示した(Figure 11A, 11B, 12A, 12B)。さら
に cch 変異体についても、Shen ら (2006)と同様の条件で解析したにも関わらず、
正常な ABA 応答を示した(Figure 11C, 11D, 12C, 12D)。これらの結果から、rtl1
や cch の ABA 非感受性は孔辺細胞特異的であると考えられた。
4. 孔辺細胞での ABA シグナル伝達経路における CHLH の関与の明確化
4-1. rtl1 変異体の孔辺細胞における ABA 応答性遺伝子の発現変動
rtl1 及び cch 変異体では、ABA による種子発芽の阻害や発芽後生育の阻害
が認められたことから、CHLH は孔辺細胞特異的に ABA シグナル伝達経路に
関わっていると考えられる。そこで、これらの変異体の孔辺細胞における、典
型的な ABA 応答性遺伝子(RAB18, RD29B)発現変動を調べた。対照としては、
野生株と既知の ABA 非感受性変異体 abi1-1 を用いた。
まず、野生株由来の孔辺細胞プロトプラストに 20 µM ABA を処理すると、
16 RAB18、RD29B ともに発現上昇が確認された(Figure 13A)。そして、rtl1 変異
体の孔辺細胞でも野生株と同様に、ABA による発現上昇が認められた(Figure
13A)。cch 変異体でも rtl1 と同様、ABA に応答した発現上昇がみられた(Figure
13B)。また、これらの変異体は野生株に比べ、発現上昇の度合いが高かった
(Figure 13A, 13B)。一方、この方法を用いて、abi1-1 変異体の孔辺細胞に ABA
を添加しても、発現量の上昇はみられなかった(Figure 13C)。以上の結果から、
CHLH は、孔辺細胞における ABA 応答性遺伝子発現には関与していないと考
えられた。
4-2. rtl1 変異体の孔辺細胞における ABA に応答した AKSs のリン酸化
ABA は気孔閉鎖だけでなく、気孔開口阻害にも関与することが知られ、そ
の機構の一つとして、bHLH 型転写因子 AKSs の ABA に応答したリン酸化が報
告されている。AKSs がリン酸化されると、気孔開口に関わる内向き整流性 K+
チャネルの転写が抑制される(Takahashi et al., 2013)。そこで、本研究でも同じ
手法を用いて、rtl1 の孔辺細胞で ABA による AKSs のリン酸化が起こるか調べ
た。すると、rtl1 変異体は、野生株と同様に、AKSs のリン酸化が検出されたこ
とから、rtl1 変異体の孔辺細胞は、AKSs のリン酸化に関しては、ABA に正常
に応答することが示された(Figure 14)。以上の結果から、CHLH は、孔辺細胞
における ABA に応答した AKSs のリン酸化には関与していないと考えられた。
4-3. ABA による気孔閉鎖への高濃度 Ca2+の効果
本研究の結果から、CHLH は ABA 受容体としては機能しないが、孔辺細
胞特異的に ABA シグナル伝達経路に関与している可能性が明らかとなった。
しかしながら、CHLH は孔辺細胞における ABA 応答性遺伝子発現の変動や
AKSs タンパク質のリン酸化には影響を与えないことも明らかとなった。とこ
17 ろで、ABA による気孔閉鎖には、細胞質 Ca2+がセカンドメッセンジャーとして
機能しており(Schroeder et al., 2001; Kim et al., 2010)、Ca2+キレート剤である
EGTA を処理すると、ABA による気孔の閉鎖が見られなくなることが報告され
ている(Hwang and Lee, 2001)。そこで、CHLH が細胞質 Ca2+変動に影響を与え
るか検証するため、rtl1 変異体の気孔に高濃度 Ca2+の処理を行った。単離した
表皮に対し 5 mM Ca2+を処理すると、野生株及び rtl1 ともにわずかに気孔が閉
鎖した(Figure 15A)。さらに、興味深いことに、Ca2+存在下で ABA を処理す
ると rtl1 変異体においても ABA による有意な気孔の閉鎖が見られた(Figure
15A)。cch 変異体も rtl1 変異体と同様、Ca2+処理により ABA 感受性の回復が認
められた(Figure 15B)。以上の結果より、孔辺細胞外への Ca2+の添加が rtl1 や
cch の気孔における ABA 感受性を回復させることが明らかとなった。
4-4. 孔辺細胞細胞膜 H+-ATPase のリン酸化解析
ABA はまた、孔辺細胞細胞膜 H+-ATPase のリン酸化を阻害して、青色光誘
導性の気孔開口を抑制することも知られている(Zhang et al., 2004; Hayashi and
Kinoshita, 2011; Hayashi et al., 2011)。本研究の rtl1 変異体は ABA による気孔閉
鎖が見られないことから、CHLH が細胞膜 H+-ATPase のリン酸化にも影響を与
え て い る 可 能 性 を 考 え 、 H+-ATPase の リ ン 酸 化 を 特 異 的 に 検 出 す る 抗 体
(anti-pThr)を用いて、免疫染色法により H+-ATPase のリン酸化の検出を行っ
た。
まず、野生株では赤色光照射下では Figure 16 のようにリン酸化が抑制され
ているが、そこに青色光を照射するとリン酸化が誘導された。しかし、あらか
じめ 20 µM ABA を処理すると青色光によるリン酸化が阻害された(Figure 16)。
一方、rtl1 変異体は、赤色光単独の照射下でも野生株に比べてリン酸化レベル
が高く、ABA を処理しても青色光によるリン酸化の誘導はほとんど阻害されな
18 かった(Figure 16)。そこで、H+-ATPase の発現量について H+-ATPase の触媒ド
メインに対する抗体(Anti-H+-ATPase)を用いて免疫染色法により解析したと
ころ、野生株と rtl1 変異体とで H+-ATPase の発現量には差がみられなかった
(Figure 16; Anti-H+-ATPase)。以上の結果は、CHLH は気孔閉鎖に影響を与え
るだけでなく、細胞膜 H+-ATPase の脱リン酸化を介した ABA による気孔開口
阻害にも影響を与えることを示している。
5. CHLH 過剰発現株(CER6::CHLH-GFP)の乾燥耐性評価
RNAi により CHLH の発現を抑制すると、rtl1 変異体と同様に ABA に応答
した気孔の閉鎖がみられなかったため(Figure 8C)、CHLH を過剰に発現させる
と、逆に ABA 高感受性になることが考えられた。当初、植物体全体に過剰発
現を誘導する CaMV35S プロモーターを用いた形質転換体の作製を試みたが、
CHLH 発現の高い個体は得られなかった。そこで、気孔を含めた表皮特異的な
プロモーターCER6(Hooker et al., 2002; Kinoshita et al., 2011)を用い、CHLH を
過剰発現させた植物体を作製した(Figure 17A)。まず、この植物の孔辺細胞で
組換え CHLH-GFP が発現していることを、GFP 蛍光の観察により確認した
(Figure 17B)。さらに、孔辺細胞プロトプラストを単離し、抗 CHLH 抗体を用
いて、内生の CHLH の他に導入した CHLH-GFP の発現を確認したところ、
CHLH-GFP が過剰に蓄積していることが確認できた。興味深いことに、CHLH
過剰発現株では内生 CHLH も同時に過剰に蓄積していることがわかった
(Figure 17C)。次に、この植物の生育条件下の気孔開度を解析したところ、野
生株に比べ、有意に気孔が閉じていた(Figure 18A)。また、野生株より切り取
った葉は、90 分経過すると切り取った直後の 70%前後まで重量が減少するが、
CHLH 過剰発現株では 80%程度の減少にとどまった(Figure 18B)。これらの結
果は、CHLH 過剰発現株は通常の生育条件でも気孔が閉じている表現型である
19 といえる。
そこで、CHLH 過剰発現株の乾燥耐性試験を行った。実験では、通常の生
育条件で生育させた植物に対し、給水を停止して乾燥ストレスを与えた。給水
停止 18 日目には野生株はほとんど枯死したにも関わらず、CHLH 過剰発現株は
緑が残っており、生存していた(Figure 19)。これらの結果から、CHLH 過剰発
現株では ABA に対する感受性が高いために、生育条件下でも僅かな ABA に応
答して気孔が閉じており、乾燥条件でも生存しやすくなったのではないかと推
察された。そのため、気孔の ABA 感受性を解析したところ、20 µM ABA を処
理した場合では野生株と CHLH 過剰発現株いずれも気孔が閉鎖したが、野生株
でほとんど閉鎖しないような低濃度(1µM)の ABA でも CHLH 過剰発現株で
は有意に気孔が閉鎖した(Figure 18C)。以上の結果から、CHLH を気孔で過剰
発現させると、気孔での ABA 感受性が高まり、植物自体の乾燥耐性が向上し
たと考えられた。
6. Mg-キラターゼの孔辺細胞の ABA シグナル伝達への関与の検証
Mg-キラターゼはCHLHの他に、CHLD、CHLIのサブユニットから構成され
る酵素で、クロロフィル生合成に関与する(Gibson et al., 1995; Willows et al.,
1996; Huang and Li, 2009)。Mg-キラターゼの他のサブユニットが、孔辺細胞にお
けるABAシグナル伝達に影響を与えるかどうか調べるため、CHLDやCHLIのノ
ックアウト変異体の入手を試みた。しかし、CHLD(At1g08520)はCHLHと同様
に単一遺伝子であるため、そのノックアウト変異体は、アルビノの表現型を示
し、ほとんど育たないことが報告されている(Shen et al.2006; Huang and Li 2009)
。
一方、CHLIは、CHLI1(At4g18480)とCHLI2(At5g45930)の2つの遺伝子が重
複して機能し、そのうちCHLI1が主要な遺伝子として機能している(Rissler et al.,
2002; Kobayashi et al., 2008; Huang and Li, 2009)。そこで本研究では、chli1ノック
20 アウト変異体を入手し、まず、CHLI1の転写産物が全く見られないことを確認し
た(Figure 20B)。この変異体は、極度の矮性とペールグリーンの表現型を示し
た(Figure 20C)。次に、気孔におけるABA感受性を解析したところ、興味深い
ことにABA非感受性であることが明らかとなった(Figure 20D)。この結果は、
CHLHのみならず、CHLIも気孔におけるABAシグナル伝達に関与していること
を示しており、Mg-キラターゼ複合体そのものが孔辺細胞のABAシグナル伝達に
関与していることが推測された。
21 考察 CHLH は ABA 受容体ではないが、孔辺細胞における ABA シグナル伝達に
関与する
気孔開閉のシグナル伝達機構を解明するためには、EMS 処理により変異を
誘発したシロイヌナズナから気孔開度変異体を単離することが一つの有効な手
法といえる。しかし、実際に顕微鏡で気孔開度を測定しながら、気孔開度変異
体をスクリーニングするには、大変な時間と手間を要する。近年、気孔開度に
依存した蒸散による葉面温度の違いを指標にスクリーニングが行われ、気孔が
閉じない変異体が単離されている(Mustilli et al., 2002)。本研究では、蒸散に依
存した葉の重量減少を指標に行われた気孔開度変異体のスクリーニングにより
単離された rtl1 変異体の解析を行った。
単離された rtl1 変異体は、矮性・ペールグリーンであり、ABA 存在下でも
気孔が閉鎖しない ABA 非感受性の表現型を示し、CHLH のミスセンス変異が
原因であることが示された(Figures 1-5)。CHLH は多様な機能をもつタンパク
質であることがこれまでの研究で示されている。第一に、CHLH は Mg-キラタ
ーゼを構成するサブユニットの一つであり、クロロフィル生合成の中間体であ
るプロトポルフィリン IX への Mg2+ の配位を触媒する(Gibson et al., 1995;
Willows et al., 1996; Huang and Li, 2009)。第二に、CHLH はプラスチドから核へ
のシグナル伝達に関与することが知られている(Mochizuki et al., 2001)。さら
に CHLH は、ABA との結合能から受容体として同定され、chlh ミスセンス変
異体(cch)は ABA に応答した気孔の閉鎖がみられず、また、種子発芽や根伸
長の ABA による阻害も起きないことが報告されている(Shen et al., 2006; Wu et
al., 2009)。
一方、本研究においては、Wu ら (2009)と同様の方法で組み換え CHLH タ
22 ンパク質と 3H-ABA の結合解析を行ったが、彼らとは異なり、特異的な結合は
観察されなかった(Figures 9, 10)。そもそも CHLH は、樹脂にカルボキシル基
を固定した ABA と結合するタンパク質として、ABA 受容体の候補となってい
る(Zhang et al., 2002)。ABA のカルボキシル基は生物活性に重要な部分であ
り、この手法自体に異議を唱える研究者もいる(Cutler et al., 2010)。また、本研
究では、rtl1 変異体と cch 変異体はいずれも気孔孔辺細胞においては ABA 非感
受性を示すものの、種子発芽や根伸長は ABA により阻害された(Figures 11, 12)。
これらの結果から、
CHLH が ABA 受容体として機能している可能性は低いが、
CHLH の ABA シグナル伝達に関与しており、しかもその関与は気孔孔辺細胞
特異的であると考えられた。
本研究では、
rtl1 変異体及び cch 変異体、CHLH RNAi の気孔孔辺細胞は ABA
非感受性を示し(Figure 3B, 3C, 6A, 6B, 8C, Shen et al., 2006; Wu et al., 2009)、
CER6::CHLH-GFP は ABA に対して高い感受性を示した(Figure 18C)。一方、
別の chlh 変異体である gun5-1(A990V)は、正常な ABA 応答を示し(Figure 6A,
6B)、大麦の chlh 変異体である xan-f10 は、3 塩基欠失により 424 番目の E が
欠失した変異体であるが、正常な ABA 応答を示している(Müller and Hansson,
2009)。これらの結果より、rtl1 の変異箇所(L690F)や cch の変異箇所(P642L)
の領域は気孔の ABA 応答に重要な領域であるが、gun5-1 や xan-f10 の変異箇所
は、ABA 応答性に影響を与えない領域であると考えられた。
CHLH は、Ca2+を介した ABA シグナル伝達経路に関与している
rtl1とcch変異体は、高濃度Ca2+を処理すると、気孔のABA感受性が回復した
(Figure 15)。これまでに、孔辺細胞にABAを処理すると細胞質のCa2+濃度の上
昇・振幅がみられることや(Allen et al., 2000; Hamilton et al., 2000; Pei et al., 2000;
Kwak et al., 2003)、Ca2+を添加すると気孔が閉鎖し(Allen et al., 1999; Nomura et al.,
23 2008)、Ca2+キレート剤であるEGTAを処理すると、ABAによる気孔の閉鎖が阻
害されたという報告がある(Hwang and Lee, 2001)。むろん、Ca2+非依存的にABA
によって気孔が閉鎖するという報告もある(Allan et al., 1994; Marten et al., 2007;
Siegel et al., 2009)。これらを考慮すると、本研究のrtl1やcch変異体の孔辺細胞内
では、ABAに応答したCa2+の変動が、CHLHの変異によって影響を受けた結果、
気孔の閉鎖が起きない可能性が考えられる。
葉緑体には 4~23 mM という高濃度の Ca2+が含まれていると考えられている
が(Portis and Heldt, 1976)、その Ca2+の機能や動態については不明な点が多い。
葉緑体に局在する Ca2+-sensing receptor(CAS)タンパク質は、細胞質 Ca2+の上
昇に関与しており、CAS のノックアウト変異体では Ca2+を処理しても気孔の閉
鎖が誘導されないことが報告されている(Nomura et al., 2008)。CHLH も葉緑体
局在のタンパク質であることから、葉緑体の Ca2+が ABA による気孔閉鎖にお
いて重要な役割を担っている可能性も考えられる。今後は、ABA 処理前後にお
ける孔辺細胞内 Ca2+変動を解析し、ABA シグナル伝達経路での CHLH と Ca2+
の関係を明らかにしたい。
CHLH は PYR/PYL/RCARs-PP2Cs-SnRK2s 経路とは別経路で孔辺細胞に
おける ABA シグナル伝達に関与している
本研究は、CHLH が孔辺細胞における ABA 応答性遺伝子(RAB18, RD29B)
の発現には関与していないことを示した(Figure 13A, 13B)。この RAB18 や
RD29B は、PP2C の変異体である abi1-1 では ABA 処理しても発現上昇がみられ
ないことから(Figure 13C, Saavedra et al., 2010)、ABA に誘導されるこれら遺伝
子の発現は、PYR/PYL/RCARs-PP2Cs-SnRK2s 経路に制御されていると考えられ
ている。Shen ら (2006)は、CHLH の発現を抑制すると、ABI1 及び ABI2 発現量
が上昇し、OST1 発現量が低下することから、CHLH は PP2Cs-SnRK2s 経路の上
24 流で関与していると結論している。一方、本研究結果では、cch や rtl1 変異体
は、孔辺細胞における RAB18 や RD29B の ABA に応答した正常な発現上昇が見
られ、abi1-1 変異体ではまったく発現上昇しなかったことから、CHLH が
PP2Cs-SnRK2s 経路の上流で関与する可能性は低いと考えられた。また、最近
では、KAT1 や KAT2 を含む内向き整流性 K+チャネルの発現をコントロールし
ている bHLH 転写因子 AKSs が ABA に依存してリン酸化され、これが
PYR/PYL/RCARs-PP2Cs-SnRK2s 経 路 を 介 し て い る こ と が 示 唆 さ れ て い る
(Takahashi et al. 2013)。本研究において、rtl1 の孔辺細胞プロトプラストに ABA
を添加すると正常に AKSs のリン酸化が見られた(Figure 14)。以上の結果より、
CHLH は PYR/PYL/RCARs-PP2Cs-SnRK2s 経路とは別経路で ABA シグナル伝達
に関与している可能性が高いと思われる(Figure 21)。
これまでの研究で、ABA 処理後に孔辺細胞内で ROS 含量が高まることや
ROS の一種である H2O2 の処理が気孔の閉鎖を促進することが明らかになって
いる(Kwak et al., 2003)。ROS 産生には、NADPH オキシダーゼ AtrbohF が関与
し、この AtrbohF は SnRK2 の一種である OST1 によって活性化されることが示
唆されている(Sirichandra et al. 2009)。今後は rtl1 変異体における ABA 処理
後の ROS 産生量や ROS 処理後の気孔表現型を解析し、ABA シグナル伝達経路
における CHLH の位置づけを確認していく必要がある。
CHLH は孔辺細胞細胞膜 H+-ATPase のリン酸化に影響を与えている
最近、Hayashi ら (2011)により、青色光に依存した孔辺細胞細胞膜 H+-ATPase
のリン酸化を、免疫染色法で検出する手法が確立された。この方法は、孔辺細
胞プロトプラストを単離して解析する手法に比べ、少量の植物材料で解析でき、
また、プロトプラスト単離に伴うストレスが細胞にかからないため、より本来
の植物体の状態に近い状況で解析を行うことができるという利点がある
25 (Hayashi et al., 2011)。この手法により、孔辺細胞細胞膜 H+-ATPase のリン酸
化の ABA による抑制が、PYR/PYL/RCARs-PP2Cs-SnRK2s 経路を介しているこ
とが示されている(Hayashi and Kinoshita, 2011; Hayashi et al., 2011)。そこで、rtl1
変異体の孔辺細胞での H+-ATPase のリン酸化レベルを解析したところ、rtl1 変
異体では、ABA を添加しても H+-ATPase のリン酸化の抑制が起きなかった
(Figure 16)。さらに、この変異体では赤色光単独照射時でも、野生株に比べ
H+-ATPase のリン酸化レベルが高かった。以上の結果より、CHLH は孔辺細胞
細胞膜 H+-ATPase のリン酸化に影響を与えることで、ABA による気孔閉鎖が起
きにくくなっている可能性が考えられた。また、ABA による細胞膜 H+-ATPase
のリン酸化の抑制には PYR/PYL/RCARs-PP2Cs-SnRK2s 経路と CHLH の両方が
関与していることが示されたことから、今後はこの両者の関係を明らかにして
いく必要がある。
一方、rtl1 と cch 変異体は、高濃度 Ca2+を処理すると気孔が有意に閉鎖した
(Figure 15)。Kinoshita ら (1995) は、孔辺細胞の細胞膜 H+-ATPase が Ca2+によ
り可逆的に阻害されることや、ABA による孔辺細胞細胞質の Ca2+濃度上昇に伴
い細胞膜 H+-ATPase が阻害され、気孔閉鎖が促進されている可能性を示してい
る。よって、rtl1 変異体では ABA 処理しても Ca2+濃度が上昇せず、その結果、
細胞膜 H+-ATPase が阻害されていない可能性が考えられる。今後、孔辺細胞に
おける Ca2+濃度と細胞膜 H+-ATPase のリン酸化レベルとの関係を解明すること
により、CHLH の役割が明らかになると考えられる。
Mg-キラターゼが孔辺細胞における ABA シグナル経路に関与している
本研究では、CHLH の量が気孔孔辺細胞における ABA 感受性に影響を与え
ることや、CHLH だけでなく CHLI も ABA シグナル伝達に関与している可能性
を示した。Legnaioli ら(2009)は、CHLH の転写自体が概日リズムを示し、さ
26 らに概日リズムの主要な因子である TOC1 は CHLH の発現を制御し、TOC1 を
過剰発現させると、CHLH の発現量が抑制され、その植物の気孔は ABA 非感受
性となることを報告している。また、Mg-キラターゼ活性も日周変動すること
が知られており(Papenbrock et al., 1999)、その活性により孔辺細胞における
ABA 感受性が調節されている可能性も考えられる。そもそも Mg-キラターゼは、
クロロフィル生合成の中間体であるプロトポルフィリン IX に Mg2+を挿入し
Mg-プロトポルフィリン IX を産生する酵素である。rtl1 変異体は、既知の CHLH
変異体 cch と同様に Mg-プロトポルフィリン IX 量が低下していると考えられる。
今後は、孔辺細胞における Mg-キラターゼ活性の概日リズムと気孔での ABA
感受性のリズムを明らかにし、孔辺細胞での ABA シグナル伝達経路における
Mg-キラターゼの生理学的な役割の解明につなげたい。
乾燥耐性植物の作出技術を用いた応用面への活用
孔辺細胞において CHLH-GFP を過剰発現させた植物は、生育条件下で野生
株に比べて気孔が閉じ気味であり(Figure 18)、乾燥耐性の向上が確認された
(Figure 19)。この乾燥耐性の向上は、CHLH 過剰発現株の気孔における ABA
感受性が高まった結果と考えられる。Shen ら(2006) は、CaMV35S プロモータ
ー制御で植物体全体に CHLH を過剰発現させると、ABA 高感受性となり、植物
体が乾燥にさらされても、萎れにくくなったことを報告している。本研究では、
気孔特異的に CHLH を過剰発現させることによって気孔を閉鎖させ、それによ
って乾燥耐性を付与できることを示した。気孔開度を調節することにより乾燥
耐性を付与した例としては、ソラマメのアクアポリン(Vicia faba VfPIP)を
CaMV35S プロモーター制御でシロイヌナズナの植物体全体に過剰発現させた
ところ、ABA に応答した気孔の閉鎖速度が速くなり、蒸散の低下がみられ、乾
燥耐性が付与されたことが報告されている(Cui et al., 2008)。ただし、この植
27 物では気孔表現型だけでなく、主根や側根の長さが長くなり、側根数も多くな
るという表現型もみられる(Cui et al., 2008)。よって、気孔開度のみを調節す
ることによって乾燥耐性を付与したのは、本研究が初めてと思われる。本方法
は気孔以外への影響が低いと考えられることから、 今後は、本研究で得られた
知見を用いた乾燥耐性作物の作出といった応用面への活用が期待される。
28 材料及び研究方法 1. 植物材料と栽培条件 本研究では、シロイヌナズナ(Arabidposis thaliana, エコタイプ Columbia)
の gl1(glabrous1)を野生株(WT)として扱い、スクリーニングで単離された
rtl1 変異体、既知の chlh 変異体である cch(conditional chlorina)及び gun5-1
(genomes uncoupled 5-1)、ABA 非感受性の変異体 abi1-1(abscisic acid insensitive
1-1)、chli1 ノックアウト変異体(SAIL_230_D11)を用いた。cch 変異体のバッ
クグラウンド植物は Col-0、gun5-1 のバックグラウンド植物は pOCA107-2
(Mochizuki et al., 2001)、abi1-1 変異体のバックグラウンドは Ler(Landsberg
erecta)である(Leung et al., 1997)。chli1 ノックアウト変異体は CHLI1 の第
3 エクソンに T-DNA が挿入された変異体である(Figure , Huang and Li, 2009)。
cch 及び gun5-1、pOCA107-2 は京都大学の望月伸悦先生より、chli1 ノックアウ
ト変異体及び abi1-1 変異体は Arabidopsis Biological Resource Center (Ohio State
University, Columbus, OH, USA)より分譲していただいたものである。種子は吸
水後 4°C で 4 日間低温処理した後、バーミキュライトと培養土を 1:1 で混合し
て入れたプランターに播き、16 時間明期、8 時間暗期、24±2°C、55~75%の相対
湿度で約4~6 週間植物育成部屋で生育させた。光は、白色蛍光灯(FL40SSW/37、
NEC)と植物育成用蛍光灯(FL40S・BRN-A、TOSHIBA)の混合光を約 50 µmol
m-2 sec-1 の光強度で照射した(Kinoshita et al., 2001)。
2. 葉の重量変動を指標にした気孔開度変異体のスクリーニング
シロイヌナズナ gl1 を親株としてエチルメタンスルホン酸(EMS)処理し
た M2 種子(Lehle seeds, Round Rock, TX, USA)を土植えし、16 時間明期、8 時
間暗期、24±2°C で約4週間生育させた。各株からロゼット葉1枚を採取し、微
29 量天秤(ザルトリウス、マスター天秤 LA 310S)で重量を測定した。測定後
の葉は、生育棚に置き、90 分後に再び重量を測定した。重量の減少率が野生株
に比べて大きく異なる株を変異体とした。各変異体はそのまま生育させ、M3
種子を採取した。本研究では、このスクリーニングで得られた変異体の一つ、
rtl1 の解析を行った。なお本研究で用いた rtl1 変異体は、3 回戻し交雑を行った
ものである。
3. クロロフィルの定量 Arnon (1949)の手法に従ってクロロフィルの定量を行った。生育約4〜6
週間目の野生株と rtl1、CHLH-RNAi 株の葉をそれぞれ1枚ずつ取って重量を測
定した後、200 µl の超純水(MilliQ, Millipore, Billerica, MA, USA)を加えてホモ
ジナイズし、800 µl のアセトンを加え、5 分静置した。12,000 rpm で 10 分間遠
心し、上清の 645 nm、663 nm での吸光度を測定した。ブランクとして、蒸留
水:アセトン=1:4 で混合したものを用いた。
4. 気孔開度の測定
Inoue ら(2008)の方法を参考にした。土植えの生育 4~6 週間目の植物の
ロゼット葉から単離した表皮に対し、暗処理、光処理、ABA 処理、Ca2+処理等
を行い、気孔開度を測定した。光照射は、青色光(10 µmol m-2s-1 , Stick-B-32; EYELA, Tokyo, Japan)と赤色光(50 µmol m-2s-1, LED-R; EYELA)を照射した。
光強度は、LI-250A Light Meter(LI-COR)を用いて測定した。生育条件下の気
孔を観察する場合には、単離して直ちに観察した。各処理において裏側表皮あ
たり 5 つの気孔開度を 5 断片測定した。
光誘導性気孔開口の ABA による阻害
30 前夜から暗室に置いた植物のロゼット葉からブレンダー処理により表皮を
単離し、気孔開度測定溶液(5 mM MES-BTB pH6.5, 50 mM KCl, 0.1 mM CaCl2)
に漬け、暗所に置いたものを暗処理とし、開度測定まで 2.5 時間光照射したも
のを光処理とした。20 µM ABA 添加と同時に 2.5 時間光照射しているものを
ABA 処理とした。ABA は DMSO に溶解した 20 mM ストックを 1/1000 希釈し
て使用した。
ABA による気孔閉鎖
上述と同じ方法で単離した表皮を気孔開度溶液に漬け、2.5 時間光照射を行
った後、ABA を添加しさらに 2.5 時間光照射を行った。DMSO を同量添加し、
さらに光照射を行ったものをコントロールとした。
高濃度 Ca2+処理による気孔開度への効果
単離した表皮を、5 mM Ca2+を含む気孔開度測定溶液に漬け、ABA 処理や
光照射を行った。
5. マッピング及びシーケンスによる原因遺伝子の探索
マッピング
rtl1 変異体に Ler を掛け合わせ、マッピングポピュレーションを作製した。
そのうちペールグリーンの表現型を示す F2 植物 143 個体から各々DNA を抽出
し、SSLP(simple-sequence length polymorphism)マーカーを用いてマッピング
を行った。rtl1 は、第 5 染色体に座乗する SSLP マーカーnga151 と強い連鎖を
示した。データベース「The Arabidopsis Information Resource (TAIR)」より、nga
151 の近傍にある Mg-chelatase H subunit (CHLH, At5g13630)が rtl1 の原因遺伝子
が候補として挙がった。そこでゲノム CHLH、及び CHLH cDNA のシーケンス
31 を進めた。
RNA の抽出と cDNA の合成
野生株と rtl1 ホモの種子を表面殺菌(20% 次亜塩素酸、0,05% Tween 溶液
で 15 分間浸けた後、超純水で 3 回洗浄)し、寒天培地(超純水1L あたり1袋
Murashige & Skoog 混合塩類、0.5g MES, 1% Sucrose (w/v), 0.8% Agar, pH5.7〜
5.8)を入れたシャーレに播種し、16 時間明期、8 時間暗期、24°C の室内で生
育させたそれぞれの株から、葉(約 100 mg)を採取した。RNA は、RNeasy Plant
Mini Kit (Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて添付マニュアルに従い、抽出した。
得られた RNA より、Prime Script 1st strand cDNA Synethesis Kit (TaKaRa)を用い
て、添付マニュアルに従い、一本鎖 cDNA を合成した。cDNA は-20°C で保存
した。
CHLH cDNA の増幅
合成した cDNA を用いて PCR を行った。反応溶液組成は、それぞれ、2 µl
cDNA、0.25µl Ex Taq、5µl 10 × Ex Taq Buffer、4µl dNTP mixture、プライマーは
CHLH-1-F と CHLH-4146-R(Table 1)を各 1.25µl、36.25 µl 滅菌超純水、計 50µl
で、PCR は 95°C で 3 分、(95°C で 30 秒、58.5°C で 30 秒、72°C で 4 分 30 秒)
×35 サイクル、72°C で 5 分の条件で行った。
シーケンス
BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing Kit (Applied Biosystems, Foster City,
CA, USA)を用いて、精製した PCR 産物を鋳型にしてシーケンス反応を行った。
反応溶液組成は計 10 µl、添付マニュアルの 1/4 スケールで、且つマニュアルの
方法に従って行った。プライマーの配列は Table に示した。反応終了後に、10 µl
32 反応溶液に 10 µl 滅菌超純水、2 µl 125 mM EDTA、2 µl 3M 酢酸ナトリウム、50
µl 100% エタノールを添加し、室温で 15 分間静置した。その後 15,000 rpm で
20 分間遠心し、上清を捨ててさらに 250 µl の 70%エタノールを加え、15,000 rpm
で 5 分間遠心した。沈殿を乾燥させ、15 µl の Hi-Di ホルムアミドを加えた。シ
ーケンスは、名古屋大学遺伝子実験施設内の ABI3100 シーケンサーにより行っ
た。
6. 野生型ゲノム CHLH の rtl1 変異体への導入(相補実験)
プラスミドの構築
野生株(gl1)より抽出したゲノム DNA を鋳型とし、GUN5-5’と GUN5-3’
のプライマーセット(Table 2)を用いた PCR でプロモーター領域を含むゲノム
CHLH を増幅し、pCRII/TOPO ベクターに導入し、pCRII/TOPO-gCHLH を得た。
こ の
pCRII/TOPO-gCHLH
を 鋳 型 に し て 、 Kpn-gGUN5-401F
と
Kpn-gGUN5-8963-R のプライマーセットを用いた PCR により、得た PCR 産物
(約 8,562bp)を pCR8/GW/TOPO ベクター(Invitrogen, Carlsbad, CA, USA)に導入
したものを pTOPO-GW-Kpn-gCHLH とした。
次に、Gateway System により、マニュアルの半量スケールで、マニュアル
に従って LR 反応を行った。Entry clone に pTOPO-GW-Kpn-gCHLH、destination
vector と し て pGWB1 ( Nakagawa et al. 2007 ) を 用 い た 。 LR 反 応 産 物
(pGWB1-Kpn-gCHLH)全量を 100µl DH5α に加え、タッピングした後、30 分
氷上に置き、42°C で 30 秒間熱処理し氷上に置いた。さらに 400 µl の SOC を加
え、37°C で、1 時間インキュベートした。その間 30 分経過した時点で、転倒
混和を行った。あらかじめ用意しておいた選択固定培地(50 µg/ml Kanamycin
sulfate を含む LB プレート)2 枚に菌を 150 µl と 350 µl 播き、37°C のインキュ
ベータに入れて一晩培養した。
33 プラスミド抽出とインサートチェック
選択培地に生えたコロニーから菌を採取し、50 µg/ml の Kanamycin sulfate
を含む 3ml の液体培地に入れ、37◦C、200 rpm で一晩振とう培養した。Plasmid
Mini Prep Kit (Sigma-Aldrich, MO, USA)を用いて大腸菌よりプラスミドを抽出
した。インサートチェックには、制限酵素 Kpn I を使用し、3 µl 滅菌超純水、1
µl 10 × Buffer、1 µl Kpn I、5 µl プラスミドを 37◦C で一晩インキュベートした後、
1% Agarose ゲルで電気泳動し、pGWB1-Kpn-gCHLH が出来ていることを確認
した。
アグロバクテリウムへの形質転換
抽出したプラスミド 1 µg を 100 µl のアグロバクテリウム(GV3101)のコ
ンピテントセルに添加し、37◦C で 25 分インキュベートし、1 ml の LB を加え、
28◦C で 2 時間インキュベートした。あらかじめ用意しておいたアグロバクテリ
ウム用選択培地(60 µg/ml Rifampicin, 30 µg/ml Gentamicin sulfate, 50 µg/ml
Kanamycin sulfate を含む LB プレート)に 1 枚当たり各菌 300、800 µl 播き、28◦C
のインキュベータに 4~5 日入れて培養した。
植物への形質転換
植物へのアグロバクテリウムを用いた形質転換は、Floral Dip 法(Clough and
Bent, 1998)に従って行った。選択培地に生えたコロニーからアグロバクテリウ
ムを採取し、60 µg/ml Rifampicin, 30 µg/ml Gentamicin sulfate, 50 µg/ml Kanamycin
sulfate を含む LB 培地に入れ、28◦C、150 rpm で一晩振とう培養した。この培養
液全量を、同じ組成の LB 液体培地 400 ml に加え、さらに 28◦C、150 rpm で一
晩振とう培養した。この 450ml の全培養液を遠心管(BECKMAN、356011)2
34 本に等量になるよう分注し、冷却高速遠心機(BECKMAN、Avanti HP-25)で
4◦C、8,000 rpm で 10 分間遠心した。次に上清を捨て、菌体を 5%スクロース溶
液 500 ml に 完 全 に 懸 濁 し た 。 そ こ へ Silwet L-77 (Bio medical science,
BMS-SL7755)を野生株の形質転換には 0.05%(v/v)、rtl1 変異体には 0.02% (v/v)
になるよう加え、この溶液に形質転換を行う植物を 30 秒間 2 回浸した。これま
での実験により、rtl1 変異体に対して 0.05% Silwet L-77 を用いると、形質転換
後、植物が枯死してしまうことが分かっていたため、rtl1 変異体には 0.02%で形
質転換を行った。
形質転換に用いた植物は、種子を滅菌し、1% Sucrose を含む寒天培地を入
れたシャーレに播種し、16 時間明期、8 時間暗期、約 24°C の室内で 14 日間生
育させた。その後、直径 9cm のポットに 8~10 株ずつ移植し、シャーレで生育
させた時と同条件でさらに約 2~3 週間生育させた後形質転換に用いた。もしく
は、プランターで 4 週間土植えした植物を、ポットに移植し、1~2 週間成育さ
せた後に形質転換に用いた。
薬剤耐性選抜とホモラインの確立
形質転換植物から採れた種子を滅菌し、選択固定培地(50 mg/l Hygromycin,
100 mg/l Carbenicillin Sodium Salt, 1% Sucrose (w/v), 1 袋 Murashige & Skoog 混合
塩類、0.5g/l MES、0.8% Agar (w/v), 1ml/l GAMBORG’S VITAMIN SOLUSION
1000×、pH5.7)1 枚当たり 750 粒ずつ、3 ml の 0.05% Agar に懸濁、播種し、16
時間明期、8 時間暗期、約 24◦C の室内で育成した。生育してきた T1 植物をア
ラシステムに植え替え種子を回収した。その種子を滅菌し、1% Sucrose を含む
MS 寒天培地に播種した。プレートで 2 週間生育させた後、これら T2 植物をプ
ランターに植え替え、それぞれの株について種子を回収した。回収した種子を
選択固定培地に播種し、発芽したものがほぼ全て生育すればホモラインとした。
35 7. 組換えタンパク質及び抗 CHLH ポリクローナル抗体、抗 GFP ポリク
ローナル抗体の作製
His-CHLH 及び GST-CHLH 組換えタンパク質の作製
葉緑体移行ペプチドを除いた CHLH のコーディング領域(At5g13630、
145-4,146 bp)を、野生株 gl1 より合成した cDNA を鋳型とし、特異的プライマ
ーセット(Table 3)を用いた PCR により増幅した。はじめ、PCR 産物を
pCR8/GW/TOPO に導入し、LR 反応により pDEST17(6 × His エピトープタグ付
き、 Invitrogen) 及び pDEST15(GST タグ付き、Invitrogen)に組み換えた。各々
大腸菌(BL21)に導入し、100 µg/ml の Ampicilin sodium salt を含む 2×YT 培地
(16 g/l tryptone, 10 g/l yeast extract, 5 g/l NaCl , pH7.0)150ml で一晩培養した。
この培養液全量を 50 µg/ml の Ampicilin sodium salt を含む 2×YT 培地 1200ml に
加え、0.1mM IPTG (isopropyl thiogalactoside)を添加し、さらに 30°C で一晩培養
した。His-CHLH タンパク質の精製は、His Bind Kit (Novagen, Madison, WI, USA)
及び Ni–NTA agarose (Qiagen)を用いて、添付マニュアルに従って行った。タン
パク質の濃度は、Bio-Rad protein assay (Bio-Rad Laboratories, Hercules, CA, USA)
によるブラッドフォード法により定量した。この精製された His-CHLH は、以
後の ABA 結合解析や抗 CHLH ポリクローナル抗体の作製に用いた。
一方、GST-CHLH は、glutathione Sepharose 4B beads (GE Healthcare, Uppsala,
Sweden)を用いて精製した。すなわち、900 ml 菌液から、遠心 (8,000 xg, 4°C, 10
min) により菌を回収し、40 ml 1xTBS (20 mM Tris-HCl, pH7.4, 140 mM NaCl) で
懸濁して超音波破砕を行った。その後、終濃度 0.1% Triton X-100 を加えて室温
で 30 分間インキュベートし、遠心(12,000 xg, 4°C, 10 min)して上清を回収し
た。上清と 240 µl Glutathione Sepharose 4B を室温で 30 分間インキュベートした。
1xTBS で 3 回洗浄した後、その一部を 10 mM Glutathione で溶出して、溶出前の
36 ビーズと溶出したタンパク質を電気泳動し、泳動像より、溶出率を求めた。算
出された溶出率と溶出されたタンパク質量より、ビーズに結合しているタンパ
ク質量を見積もった。ビーズに結合している状態で、ABA 結合解析に用いた。
抗 CHLH ポリクローナル抗体の作製
精製した His-CHLH タンパク質を抗原とし、ウサギに免疫することで作製
した(Asahi Techno Glass Co., Ltd, Chiba, Japan)。
抗 GFP ポリクローナル抗体の作製
クローニングした全長GFPを、PGEX-2T(Amersham Pharmacia, Tokyo, Japan)
に導入した。大腸菌(BL21)で発現させた組換えGST-GFPタンパク質に対し、
Thrombinで処理することによりGSTから切り離した。遊離したGFPを抗原として、
ウサギに免疫することで作製した(Asahi Techno Glass Co., Ltd, Chiba, Japan)。
His-PYR1 及び GST-PYR1 組換えタンパク質の作製
PYR1(At4g17870)のコーディング領域を、野生株 gl1 より合成した cDNA
を鋳型とし、特異的プライマーセット(Table 3)を用いた PCR により増幅した。
はじめ、PCR 産物を pCR8/GW/TOPO に導入し、LR 反応により pDEST17(6 × His
エピトープタグ付き、 Invitrogen) 及び pDEST15(GST タグ付き、Invitrogen)
に組み換えた。各々大腸菌(BL21)に導入し、His-CHLH や GST-CHLH と同様、
100 µg/ml の Ampicilin sodium salt を含む 2×YT 培地 20ml で一晩培養した。この
培養液全量を 50 µg/ml の Ampicilin sodium salt を含む 2×YT 培地 200 ml に加え、
0.1mM IPTG (isopropyl thiogalactoside)を添加し、30°C で一晩培養した。His-PYR1
タンパク質の精製は、His Bind Kit (Novagen, Madison, WI, USA) 及び Ni–NTA
agarose (Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて、添付マニュアルに従って精製した。
37 精製した組み換えタンパク質は氷上に置き、ただちにアッセイに用いた。精製
したタンパク質は、ABA 結合解析に用いた。GST-PYR1 は、glutathione Sepharose
4B beads (GE Healthcare, Uppsala, Sweden)を用いて精製した。すなわち、450 ml
菌液から、遠心 (8,000 xg, 4°C, 10 min) により菌を回収し、 20 ml 1xTBS (20 mM
Tris-HCl, pH7.4, 140 mM NaCl) で懸濁して超音波破砕を行った。その後、終濃度
1% Triton X-100 を加えて室温で 30 分間インキュベートし、遠心(12,000 xg, 4°C,
10 min)して上清を回収した。上清と 100 µl Glutathione Sepharose 4B を室温で
30 分間インキュベートした。1xTBS で 3 回洗浄した後、 その一部を 10 mM
Glutathione で溶出して、溶出前のビーズと溶出したタンパク質を電気泳動し、
泳動像より、溶出率を求めた。算出された溶出率と溶出されたタンパク質量よ
り、ビーズに結合しているタンパク質量を見積もった。ビーズに結合している
状態で、ABA 結合解析に用いた。
His-ABI1 組換えタンパク質の作製
本研究室において作製された pDEST-ABI1(大腸菌 BL21 に形質転換済み)
を、His-CHLH や GST-CHLH と同様、100 µg/ml の Ampicilin sodium salt を含む
2×YT 培地 50ml で一晩培養した。この培養液全量を 50 µg/ml の Ampicilin
sodium salt を 含 む 2 × YT 培 地 400 ml に 加 え 、 0.1mM IPTG (isopropyl
thiogalactoside)を添加し、30°C で一晩培養した。His-ABI1 の精製には、His Bind
Kit (Novagen, Madison, WI, USA) 及び Ni–NTA agarose (Qiagen, Valencia, CA,
USA)を用いたが、His-CHLH や His-PYR1 と異なり、精製に至るまでの全ての
溶液に、5 mM MgCl2 を添加した(Melcher et al. 2009)。精製したタンパク質は、
ABA 結合解析に用いた。
8.
3
H-ABA と組換え CHLH タンパク質との結合解析
38 組換え CHLH と ABA との結合については、3H-(±)ABA(370 MBq µmol-1;
American Radiolabeled Chemicals, Inc., St. Louis, MO, USA)を用い、フィルター
法及びプルダウン法の 2 種類の方法で解析した。
フィルター法
Wu ら(2009)の方法に従って行った。精製した 2 µM His-CHLH と 50 nM
3
H-ABA を 0.2 ml の Binding Buffer (10 mM Tris-Mes, pH 7.0, 2 mM MgCl2, 1 mM
CaCl2, 1 mM DTT, 250 mM mannitol)中で 25°C、1 時間インキュベートした。非
特異的結合の解析には、精製した 2 µM His-CHLH と 50 nM 3H-ABA にさらに、
ラベルしていない 50 µM ABA(no. A1049; Sigma, St. Louis, MO, USA)を添加し
た。インキュベート後、反応液を GF/F glass fiber フィルター(Whatman, Little
Chalfont, Buckinghamshire, UK)上に滴下し、吸引・ろ過することで、遊離 ABA
を除去した。そして、フィルター上に残っている遊離 ABA を除くため、フィ
ルターに 5ml の氷冷した binding buffer を滴下し、吸引・ろ過するリンスを 3 回
繰り返した。フィルター上に残っている 3H-ABA 量を、液体シンチレーション
カウンター(LSC-5100; Aloka, Tokyo, Japan)で測定した。ポジティブコントロ
ールとして、
His-RYR1 の ABA 結合解析も行った。PYR1 は PP2C
(ABI1 や HAB1
等)の存在下で ABA との親和性が高まることが報告されているため(Melcher et
al., 2009)、結合解析時には、2 µM His-RYR1 に His-ABI1 を混合した。
プルダウン法
Melcher ら(2009)の方法に準じて行った。すなわち、溶出前の Sepharose 4B
beads に結合した GST-CHLH(約 30µg)を 50 nM 3H-ABA とともに 0.2ml の
binding buffer に懸濁し、25°C、1 時間インキュベートした。GST-PYR1 の結合
解析では、Sepharose 4B ビーズに結合した GST-PYR1 (4.3µg)に精製した
39 His-ABI1 を 9.1µg 及び 50 nM 3H-ABA を binding buffer 中でインキュベートした。
Beads を 3 回 binding buffer で洗浄した後、ビーズに結合している 3H-ABA の量
を液体シンチレーションカウンターで測定した。
9. 発芽率への ABA の影響
Shen ら(2006)の方法に従って、種子発芽への ABA の効果を解析した。野生
株(gl1)、rtl1、Col-0、cch の種子 100 粒を表面殺菌した後、0 および 3 µM ABA
を含む MS 固定培地(1L 超純水に 1 袋 Murashige & Skoog 混合塩類、3% Sucrose、
0.8% Agar、pH5.9 を溶かし、オートクレーブの後、1000 倍希釈になるよう 3 µM
ABA を添加した。0 µM ABA に対しては、ABA の溶媒である DMSO を同量加
えた)に播種した。4°C で 3 日間低温処理した後、通常の蛍光灯照射下(50 µmol
m-2 sec-1)で 24°C の条件に置いた。そして 1~6 日目まで発根した種子をカウン
トした。
10. 根伸長への ABA の影響
Shen ら(2006)の方法に従って、根伸長への ABA の効果を解析した。gl1、
Col-0、rtl1、cch の種子を表面殺菌した後、MS 固定培地(蒸留水1 L あたり1
袋 Murashige & Skoog 混合塩類、0.5 g MES, 1% Sucrose (w/v), 0.8% Agar, pH5.8)
に播種した。4°C で 3 日間低温処理し、通常の蛍光灯照射下(50 µmol m-2sec-1)
で 24°C の条件に 4 日間置いた後、0、5、10、20 µM ABA を含む MS 固定培地
(1 L 超純水に 1 袋 Murashige & Skoog 混合塩類、3% Sucrose、0.8% Agar、pH5.9
を溶かし、オートクレーブの後、1000 倍希釈になるよう 5、10、20 mM ABA
を添加した。0 µM ABA に対しては、ABA の溶媒である DMSO を同量加えた)
に移し、プレートを垂直に立てて、通常の光照射下(50 µmol m-2 sec-1)、24°C
で生育させた。移植 7 日目に根の長さを測定した。
40 11. ウェスタンブロッティング解析
ウェスタンブロッティング解析は、Hayashi ら (2010) の方法に改変を加えて
行った。生育 4~6 週間の植物から切り取ったロゼット葉、もしくは地上部を、
乳棒と乳鉢で抽出バッファー(50 mM MOPS–KOH, pH 7.5, 2.5 mM EDTA, 100
mM NaCl, 1 mM phenylmethylsulfonyl fluoride, 20 µM leupeptin, and 2 mM DTT)中
ですりつぶした。抽出したタンパク質(50 µg)は、SDS-PAGE により分離した。
濃縮ゲルは 4%アクリルアミドゲルを、分離ゲルは CHLH および CHLH-GFP の
検出時には 7.5%アクリルアミドゲルを、14-3-3 タンパク質の検出時には 12.5%
ゲルを用いた。分離したゲル中のタンパク質を、ニトロセルロース膜(Bio-Rad
Laboratories)に転写した。転写には、転写装置(Trans-blot, Bio-Rad Laboratories)
を用いてトランスファーバッファー(48 mM Tris, 39 mM glycine, 20% methanol)
中で行い、1.5 mA/cm2 で 90 分間転写した。ニトロセルロース膜をポンソー液
(0.5% ポンソーS, 1% 酢酸, )で染色し、タンパク質が転写されていることを確
認した後に、ブロッキング液 [5% (w/v)スキムミルク, 20 mM Tris-HCl, 140 mM
NaCl, pH7.4, 0.05% (w/v) Tween-20]に浸し、20 分間振とうしてブロッキングし
た。その後、ブロッキング液で 1/3,000 希釈した一次抗体液中(anti-CHLH,
anti-GFP, anti-14-3-3 proteins)で、4°C で一晩処理した。その後、T-TBS(20 mM
Tris-HCl, 140 mM NaCl, pH7.4, 0.05% (w/v) Tween-20)で 5 分間 3 回洗浄し、ブ
ロッキング液で 1/3,000 希釈した 2 次抗体(Goat anti-rabbit IgG-HRP)を 3 時間
室温で処理した。その後 T-TBS で 5 分間 3 回洗浄し、化学発光試薬 Super Signal
West Pico Chemiiluminescent substrate(PIERCE)を用いて抗体のシグナルを検出
した。シグナルの検出には、Light Capture (AE-2150, ATTO)を用いた。
12. 半定量的 RT-PCR
41 生育 4~6 週間目の植物体のロゼット葉、もしくは植物体地上部より、
RNeasy Plant Mini Kit (Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて RNA を抽出し、
Takara PrimeScript II 1st Strand cDNA Synthesis Kit(TaKaRa, Tokyo, Japan)を用
いて一本鎖 cDNA を合成した。この cDNA を鋳型とし、遺伝子特異的なプライ
マーセット(Table 4)を用いて PCR を行った。TUB2(At5g62690)をローディ
ングコントロールとした。
13. 孔辺細胞プロトプラストの単離
孔辺細胞プロトプラストの単離は Ueno ら (2005)の方法に準じて行った。生
育 4-6 週間目の植物、約 250~300 株よりロゼット葉を切り取った。大さじ1杯
程度の葉に対し、90 ml の冷却した超純水(MilliQ, Millipore, Billerica, MA, USA)
を加えて 30 秒間ブレンダー(Waring Commercial, Hartford, CT, USA)で破砕し
た。58 µm ナイロンメッシュでろ過することにより、孔辺細胞を含む表皮断片
を回収した。全てのロゼット葉を破砕し、回収した後、再度 30 秒間ブレンダー
により破砕し、58 µm のナイロンメッシュを用いて、表皮断片を回収した。
集めた表皮断片を、100 ml の1次酵素液[0.5% (w/v) セルラーゼ R-10 (Yakult
Pharmaceutical Industry Co., Tokyo, Japan)、0.05% (w/v)マセロザイム R-10 (Yakult
Pharmaceutical Industry Co.)、0.1% (w/v) polyvinylpyrrolidone K-30、0.2% (w/v)
bovine serum albumin (BSA)、0.25 M mannitol、1 mM CaCl2、10 mM Mes-KOH、
pH 5.4]中で 24°C、1 時間、70 ストローク/min で振とう培養した後、氷上で駒込
ピペットを用いて 30 回ピペッティングし、葉肉細胞を表皮断片からはずした。
58 µm のナイロンメッシュでろ過して表皮断片を回収し、
1 mM CaCl2 を含む 0.3
M mannitol 溶液で表皮を洗い、150 ml の 1 mM CaCl2・0.3 M mannitol 溶液に表
皮断片を懸濁し、遮光して氷上で 30 分間静置し、浸透圧調整を行った。再び
58 µm のナイロンメッシュで表皮断片を回収し、1 mM CaCl2・0.3 M mannitol
42 でよく洗浄した。
回収した表皮断片を 100 ml の二次酵素液[1.5% (w/v) セルラーゼ RS、0.5%
(w/v)マセロザイム R-10、0.2% (w/v) BSA、0.4 M mannnitol、1 mM CaCl2、pH 5.4]
中で、27°C、50 ストローク/min で 40〜50 分間インキュベートし、孔辺細胞を
プロトプラスト化した。
駒込ピペットで 60 回ピペッティングした後、200 µm, 58
µm, 及び二重にした 10 µm のナイロンメッシュで二次酵素液を濾過し、濾液を
遠心管に入れ、遠心分離(1,900 rpm, 4°C , 14 min)した。遠心により沈んだ孔
辺細胞プロトプラストを 0.4 M マンニトール・1 mM CaCl2 溶液で 2 回洗浄 した。
この段階の孔辺細胞プロトプラストは、維管束やその他の断片が混入して
いるため、Histopaque 処理することで精製した。2 ml の 0.4 M マンニトール・ 1
mM CaCl2 溶液で懸濁された孔辺細胞プロトプラストに対し、2 ml の Histopaque
(No. 1077, Sigma-Aldrich, MO, USA)を重層・遠心(1,100 rpm, 4°C , 15 min)し、
中間層に集まった孔辺細胞プロトプラストを、パスツールピペットを用いて集
めた。そこへ 0.4 M マンニトール・1 mM CaCl2 溶液を添加して遠心し(1,500 rpm,
4°C, 15 min)、上清を除去することで Histopaque を取り除いた(Pandey et al.
2002)。精製された孔辺細胞プロトプラスト量は、Bio-Rad protein assay (Bio-Rad
Laboratories, Hercules, CA, USA)を用いたブラッドフォード法により定量したタ
ンパク質量を基準にした。この孔辺細胞プロトプラストを以後のウェスタンブ
ロッティングやファー・ウェスタンブロッティング解析、ABA 応答性遺伝子発
現解析に用いた。
14. ABA 処理と Q-PCR
生 育 5 週 間 目 の 植 物 よ り 単 離 し た 孔 辺 細 胞 プ ロ ト プ ラ ス ト を 5 mM
MES-NaOH、10 mM KCl、0.4 M mannitol、1 m MCaCl2 を含むバッファーに懸濁
し、20 µM ABA を添加して 24◦C、1時間インキュベートした。コントロール
43 には同量の DMSO を添加した。インキュベート終了後、ただちに RNeasy Plant
Mini Kit(Qiagen, Valencia, CA, USA)を用いて RNA を抽出し、Takara Prime Script
II 1st Strand cDNA Synthesis Kit (Takara, Tokyo, Japan)を用いて cDNA の合成を行
った。
Q-PCR 解析は、Kinoshita ら (2011)の方法に従い、相対的 Ct(thresholdcycle)
法により行った。各遺伝子に特異的なプライマーセットは、Primer Express 3.0
software (Applied Biosystems, Foster City, CA, USA)を用いて設計した。PCR はプ
ロトコールに従い、各遺伝子特異的なプライマーセット(Table 5)と SYBR Green
Master Mix (Applied Biosystems)を用いて、cDNA を鋳型にして行った。PCR 断
片の増幅は、Step One Real-Time PCR system (Applied Biosystems)を用いてモニタ
ーした。TUB2 を内部標準として使用し、各遺伝子の相対的発現量を算出した。
同じ cDNA サンプルにつき 3 反復し、これを別の植物個体で 3 回繰り返した。
15. ABA 処理とファー・ウェスタンブロッティングによる AKS タンパク
質のリン酸化解析
ABA 処理と SDS-PAGE
Takahashi ら (2013)の方法に従って行った。生育5週間目の植物より単離し
た孔辺細胞プロトプラストを 5 mM MES-NaOH、10 mM KCl、0.4 M mannitol、1
mM CaCl2 を含むバッファーに懸濁し、20 µM ABA を添加して 24°C、10 分間イ
ンキュベートした。コントロールには同量の DMSO を添加した。インキュベー
ト後、5 秒間遠心して上清を除いた孔辺細胞プロトプラストを-80°C で冷凍保存
した。凍結した孔辺細胞プロトプラストに対し、250 µl のバッファー(5 mM
MES-NaOH,10 mM KCl, 0.4 M mannitol, 1 mM CaCl2)を添加した後、15% (w/v) ト
リクロロ酢酸を添加し、ABA 反応を停止させた。遠心により(14,000 rpm、4°C、
10 min)
、上清を取り除き、沈殿を 100 mM Tris-HCl (pH8.0)でリンスした。タン
44 パク質を SDS で可溶化した後、SDS-PAGE(12.5%分離ゲル、4%濃縮ゲル)に
よりタンパク質(30 µg)を分離した。
ファー・ウェスタンブロッティング解析
ファー・ウェスタンブロッティング解析は、Hayashi ら(2010) の方法に従っ
て行った。分離させたタンパク質は、転写後のニトロセルロース膜をブロッキ
ング液に漬けて振とうし、その後ブロッキング溶液で 0.1 µM になるよう希釈し
た GST-14-3-3 融合タンパク質溶液と 4°C で一晩インキュベートした 。T-TBS
で 5 分間 3 回洗浄した後、ブロッキング液で 1/3,000 希釈した抗 GST 抗体(GE
Healthcare)とともに 2 時間、室温でインキュベートを行った。T-TBS で 5 分間
3 回洗浄し、ブロッキング液で 1/3,000 希釈した Goat anti-rabbit IgG-HRP 抗体
(Bio-Rad Laboratories)とともに 2 時間、室温でインキュベートを行い、ウェ
スタンブロッティング解析と同様の方法で検出し、シグナルの定量を行った。
16. CHLH 発現抑制株(CHLH RNAi)の作製
プラスミドの構築
RNAi により、CHLH 発現を抑制した株(CHLH RNAi)を、Shen ら(2006)
の方法を参考にして作製した。CHLH 遺伝子のスタートコドンより 2,363 ~3,015
bp までの領域(653 bp)を、特異的プライマー(Table 6)を用いた PCR により
増幅し、pCR8/GW/TOPO に導入した。RNAi 用のバイナリーベクターpYU501
(Ueno et al. 2007)に LR 反応により組み換え、pYU501-CHLH とした。
アグロバクテリウムへの形質転換
抽出したプラスミド pYU501-CHLH 1 µg を 100 µl のアグロバクテリウム
(GV3101)のコンピテントセルに添加し、37◦C で 25 分インキュベートし、1 ml
45 の LB を加え、28◦C で 2 時間インキュベートした。あらかじめ用意しておいた
アグロバクテリウム用選択培地(60 µg/ml Rifampicin, 30 µg/ml Gentamicin sulfate,
50 µg/ml Kanamycin sulfate を含む LB プレート)に播き、28◦C のインキュベー
タに 4~5 日入れて培養した。
植物への形質転換
植物へのアグロバクテリウムを用いた形質転換は、Floral Dip 法(Clough and
Bent, 1998)に従って行った。選択培地に生えたコロニーからアグロバクテリウ
ムを採取し、60 µg/ml Rifampicin, 30 µg/ml Gentamicin sulfate, 50 µg/ml Kanamycin
sulfate を含む LB 培地に入れ、28◦C、150 rpm で 450 ml 培養し、
「野生型ゲノム
CHLH の rtl1 変異体への導入(相補実験)」と同様の方法で、野生株 gl1 に形質
転換した。
薬剤耐性選抜とホモラインの確立
形質転換植物から採れた種子を滅菌し、選択固定培地(30 mg/l Hygromycin
B, 100 mg/l Carbenicillin Sodium Salt , 1% Sucrose (w/v), 1 袋 Murashige & Skoog
混合塩類、0.5 g/l MES、0.8% Agar (w/v), 1 ml/l
GAMBORG’S VITAMIN
SOLUSION 1000×、pH5.7)に播種し、「野生型ゲノム CHLH の rtl1 変異体への
導入(相補実験)」と同様の方法で、薬剤選抜し、ホモラインを確立した。以後
の解析には、T3 植物を用いた。
17. CHLH 過剰発現株(CER6::CHLH-GFP)の作製
プラスミドの構築
コザック配列を付加し、ストップコドンを除去した cCHLH の両端に Sal I
を付加したプライマーを用い、シロイヌナズナ野生株の cDNA を鋳型に PCR
46 により増幅させた。
pUC18::CaMV35S-GFP (S65T)ベクターを Sal I 処理してから、
SalI 処理した cCHLH PCR 増幅産物を、CHLH の 3’側と GFP の 5’側が繋がるよ
うに挿入したものを pUC18::CaMV35S-CHLH-GFP (S65T)とした。次に、CHLH
中にある Xba I 及び、CHLH と GFP 間にある Xba I サイトを site directed
mutagenesis PCR により除去した。そのプラスミドを鋳型に、CHLH の上流と
GFP の下流に Xba I サイトを付加したプライマーを用いた PCR により、増幅し
た CHLH-GFP PCR 増 幅 産 物 を Xba I 処 理 し 、 Xba I 処 理 し た ベ ク タ ー
pPZP211-CER6(Kinoshita et al., 2011)に挿入し、大腸菌 DH5α に形質転換した。
マーカーである 100µg/ml の Spectinomycin Dihydrochloride Pentahydrate を含む
LB 培 地 に 生 え た コ ロ ニ ー か ら 菌 を 採 取 し 、 100µg/ml の Spectinomycin
Dihydrochloride Pentahydrate を含む 3ml の液体培地に入れ、37◦C、200 rpm で一
晩振とう培養した。Plasmid Mini Prep Kit (Sigma-Aldrich, MO, USA)を用いて大腸
菌よりプラスミドを抽出し、制限酵素(Xba I)処理及びシーケンスにより、イ
ンサートが挿入されていることを確認した。用いたプライマーは、Table 7 に示
す。
アグロバクテリウムへの形質転換
抽出したプラスミド 1 µg を 100 µl のアグロバクテリウム(GV3101)のコ
ンピテントセルに添加し、37◦C で 25 分インキュベートし、1 ml の LB を加え、
28◦C で 2 時間インキュベートした。あらかじめ用意しておいたアグロバクテリ
ウム用選択培地(60 µg/ml Rifampicin, 30 µg/ml Gentamycin sulfate, 100 µg/ml
Spectinomycin Dihydrochloride Pentahydrate を含む LB プレート)に播き、28◦C
のインキュベータに 4~5 日入れて培養した。
植物への形質転換
47 植物へのアグロバクテリウムを用いた形質転換は、Floral Dip 法(Clough and
Bent, 1998)に従って行った。選択培地に生えたコロニーからアグロバクテリウ
ム を 採 取 し 、 60 µg/ml Rifampicin, 30 µg/ml Gentamicin sulfate, 100 µg/ml
Spectinomycin Dihydrochloride Pentahydrate を含む LB 培地に入れ、28◦C、150 rpm
で 450ml 培養し、
「野生型ゲノム CHLH の rtl1 変異体への導入(相補実験)」と
同様の方法で、gl1 に形質転換した。
薬剤耐性選抜とホモラインの確立
形質転換植物から採れた種子を滅菌し、選択固定培地(30 mg/l Kanamycin
sulfate, 100 mg/l Carbenicillin Sodium Salt , 1% Sucrose (w/v), 1 袋 Murashige &
Skoog 混合塩類、0.5 g/l MES、0.8% Agar (w/v), 1ml/l GAMBORG’S VITAMIN
SOLUSION 1000×、pH5.7)に播種し、「野生型ゲノム CHLH の rtl1 変異体への
導入(相補実験)」と同様の方法で、薬剤選抜し、ホモラインを確立した。以後
の解析には、T4 植物を用いた。
18. 乾燥ストレス耐性解析
Iuchi ら(2001)の方法に従い、解析を行った。バーミキュライトと培養土を
1:1 の割合で混合した土を詰めたポット(内径 7.5 cm)に播種し、3 週間通常の
条件で生育させた植物に対し、給水を停止させた。
19. 孔辺細胞細胞膜 H+-ATPase リン酸化の免疫学的検出
Hayashi ら (2011)の方法に従って行った。一晩暗処理した生育 4~6 週間目の
植物から、ロゼット葉を切り取り、超純水(MilliQ, Millipore, Billerica, MA, USA)
中で葉をブレンダー(Waring Commercial)により破砕し、58 µm のナイロンメ
ッシュで表皮断片を集めた。表皮断片を 2 ml の気孔開度測定溶液(5 mM
48 MES-BTP, pH 6.5, 50 mM KCl, 0.1 mM CaCl2)に懸濁し、赤色光(RL, LED-R,
Eyela, Tokyo, Japan, 50 µmol m−2 s−1)を 20 分間照射した。その後、RL 照射下で、
青色光(BL, Stick-B-32, Eyela, 10 µmol m−2 s−1)を 2.5 分照射した。ABA 処理す
る場合は、20mM ABA ストックを 1/1,000 希釈となるよう添加した後、光照射
を行った。光照射や ABA 処理した表皮断片を 58 µm のナイロンメッシュで集
め、4%パラホルムアルデヒド固定液(50 mM PIPES-NaOH (pH 7.0), 5 mM MgSO4,
5 mM EGTA)を入れたガラスシャーレに表皮断片を懸濁して、2 時間静置した。
固定された表皮断片を再び 58 µm のナイロンメッシュで集め、ポリリジン
(Sigma-Aldrich, MO, USA)コートしたカバーガラスに貼り付け、表皮断片の
上から、酵素液[1% Cellulase Onozuka R-10 (Yakult)、0.1% Macerozyme R-10
(Yakult)、137 mM NaCl, 8.1 mM Na2HPO4, 2.68 mM KCl, 1.47 mM KH2PO4]を 100
µl 滴下し、37°C で 15 分間置き、細胞壁の消化を行った。酵素処理後、1×PBS
(137 mM NaCl, 8.1 mM Na2HPO4, 2.68 mM KCl, 1.47 mM KH2PO4)で 2 回リンス
し、透過処理を行うために TritonX-100 を 1×PBS に希釈した膜浸透溶液(0.5%
(w/v) Triton X-100, 137 mM NaCl, 8.1 mM Na2HPO4, 2.68 mM KCl, 1.47 mM
KH2PO4)を表皮が浸る程度滴下し、室温で 30 分間処理した。膜浸透処理後、
1×PBS で 2 回リンスした後、BSA を PBS に溶かしたブロッキング液[2% bovine
serum albumin Fraction V (BSA; Sigma-Aldrich, MO, USA), 137 mM NaCl, 8.1 mM
Na2HPO4, 2.68 mM KCl, 1.47 mM KH2PO4]を表皮断片に 200 µl 滴下し、室温で
1 時間ブロッキングを行った。ブロッキング液を除き、抗 H+-ATPase 抗体もし
くは抗 pThr 抗体、又は免疫前血清を 3% (w/v) BSA(3% BSA, 137 mM NaCl, 8.1
mM Na2HPO4, 2.68 mM KCl, 1.47 mM KH2PO4)で 1/1,000 倍希釈した一次抗体液
を表皮断片に滴下し、37°C で一晩処理した。その後サンプルを 1×PBS で 5 分
間 6 回洗浄した。Alexa Fluor 488 goat anti-rabbit IgG (Invitrogen)を 3% BSA で
1/500 倍希釈した二次抗体液を表皮断片に滴下し、37°C で 3 時間反応させた。
49 1×PBS で 5 分間 6 回洗浄した後、スライドガラスに 50%グリセロールを滴下し、
そこに表皮断片がグリセロールに接するように載せた。表皮断片の顕微鏡観察
は、U-MGFPHQ フィルターを装着した蛍光顕微鏡(BX50; Olympus)を用いて
行い、蛍光像は CCD カメラ(DP72, OLYMPUS)によって撮影した。同じ露光
時間で撮影した 30 対以上の孔辺細胞の蛍光を、CS Analyzer version 3.0 (Atto)を
用いて定量し、その平均値を蛍光シグナル強度とした。
20. chli1 ノックアウト変異体のジェノタイピング
chli1 ノックアウト変異体のジェノタイピングは、植物体より単離したゲノム
DNA を鋳型に Table 8 に示すプライマーを用いて行った。
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61 謝辞
この研究全般にわたり、多大なご指導をいただいた名古屋大学大学院理学
研究科の木下俊則教授をはじめ、木藤伸夫准教授、高橋宏二助教、井上晋一郎
助教に心より感謝申し上げます。研究をここまで続けることが出来たのは、先
生方のお力によるものです。感謝しても感謝しきれません。東山哲也先生、芦
苅基行先生、松林嘉克先生及び先生方のラボの皆様には、研究に関して様々な
ご意見・ご助言を頂きました。深謝致します。
また、研究に関して有益なご助言等を頂いた岡山大学の村田芳行先生に感
謝致します。cch や gun5-1、pOCA107-2 種子を分譲していただきました京都大
学の望月伸悦先生にもお礼申し上げます。そして、プラスミドの作製等の実験
技術を丁寧に教えて下さいました、後藤恵さん、小野奈津子さんに感謝申し上
げます。いつも快く研究に協力していただいたラボの皆さま全員に、この場を
借りてお礼申し上げます。社会人となり、論文を書くためにラボを訪問した折
には、大変お世話になりました。重ねてお礼申し上げます。
グローバル COE プロジェクトのメンバーの皆様には、研究に関する助言等
を含め、温かい支援をいただきました。感謝申し上げます。
最後になりましたが、私が博士課程に進学することを許可してくれた両親
にも感謝いたします。
62 A
B
Relative weight (% of initial weight)
100
80
60
40
20
WT
rtl1
0
45
90
Time after detachment (min)
Figure 1 葉の重量変動を指標にした気孔開度変異体のスクリーニング
(A)  葉重量測定で使われた微量天秤。切り取った1枚の葉の重量を、切り取った直後、
45分目、90分目に測定し、蒸散による重量の減少の程度より、間接的に気孔開
度を評価した。 (B) 
単離された際の生育4週間目のrtl1変異体および野生株(WT、gl1)の葉重量変
動。○はWTの葉重量変動を、●はrtl1変異体の葉重量変動を示す。各時間の葉重
量は、切り取った直後の葉重量に対する割合(%)で表している。平均値
±SD(n=5)で示す。 B
WT
Chlorophyll contents (mg gFW-1)
A
rtl1
2.5
2.0
Chl b
Chl a
1.5
1.0
0.5
0
WT
rtl1
Figure 2 rtl1変異体の植物体の写真とクロロフィル含量
(A)  生育4週間目の植物体の写真。16時間明期・8時間暗期で生育させた。写真中の
バーは1 cmであることを示す。 (B) 
野生株及びrtl1変異体のロゼット葉のクロロフィル含量。□はクロロフィルaを、■
はクロロフィルbを示している。 Stomatal aperture (µm)
A
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0
C
Stomatal aperture (µm)
Stomatal aperture (µm)
B
4
3
WT
rtl1
Dark
Light
Light + ABA
2
1
0
4
WT
rtl1
Light
Light + ABA
3
2
1
0
WT
rtl1
Figure 3 rtl1変異体の気孔表現型
(A) 
生育条件下のWT及びrtl1変異体の気孔開度。生育4週間目の植物体のロゼット葉より
表皮を単離し、顕微鏡を用いて直ちに気孔開度を測定した。値は平均値
±SD(n=25)で示している。 (B) 
光に依存した気孔開口の、ABAによる阻害効果。一晩暗所に置いた植物のロゼット
葉より単離した表皮を気孔開度測定溶液に懸濁し、 20 µMABAを処理し、2.5 時間
光照射(青色光10 µmol m-2 sec-1と赤色光50 µmol m-2 sec-1の混合光)した。 は暗
所下での気孔開度を、□はABA無処理で光照射した場合の気孔開度を、■はABA処理
して光照射した気孔開度を示す。値は平均値±SD(n=25)で示している。 (C) 
ABAによる気孔閉鎖。ロゼット葉から単離した表皮を気孔開度測定溶液に懸濁し、
2.5時間光照射して十分に気孔を開口させ、20 µM ABA処理してさらに2.5時間光照射
を行った。□はABA無処理の場合の気孔開度を、■はABA処理した場合の気孔開度を
示す。値は平均値±SD(n=25)で示している。 A
Chromosome 5
centromere
23.72
B
139 (cM)
nga151
(99.3%)
Marker
RCI 1B
(98.3%)
nga 249
(94.8%)
1
CHLH
25.32
ATG
↓
29.62
(cM)
TAA
↓
L690 to F
↓
500 bp
:exon
:intron
F
P
D
S
L
I
G
N
I
694
WT TTTCCCGACAGTCTTATCGGGAACATT 2,082
**************
************
TTTATCGGGAACATT 2,082
T
T
T
C
C
C
G
A
C
A
G
T
rtl1
F
P
D
S
F
I
G
N
I
694
Figure 4 rtl1変異体の原因遺伝子の探索
(A)
マッピングの結果。RTL1は、SSLPマーカーnga151と強い連鎖を示し、
MgキラターゼHサブユニット(CHLH)遺伝子の近傍に位置すること
が明らかとなった。 (B)
rtl1変異体のCHLH遺伝子のシーケンス結果。上はCHLH遺伝子の構造
を示し、下はrtl1変異周辺の塩基配列およびアミノ酸配列を示す。四
角で囲った塩基が置換部位であり、右側の数字は、塩基配列番号及び
アミノ酸配列番号を示す。rtl1変異体には、ミスセンス変異(L690F)
を引き起こす一塩基置換(C2068T)が見つかった。 A
rtl1
WT
Chlorophyll contents
(mg gFW-1)
B
2.5
2.0
gCHLH/rtl1#1 gCHLH/rtl1#2
Chl b
Chl a
1.5
1.0
0.5
0
C
Stomatal aperture (µm)
5
4
WT
rtl1
#1
#2
gCHLH/rtl1
Light
Light + ABA
3
2
1
0
WT
rtl1
#1
#2
gCHLH/rtl1
Figure 5 相補植物の表現型
(A) 
生育4週間目の植物体(WT、rtl1変異体、gCHLH/rtl1)の写真。16時間明期・8時
間暗期で生育させた。写真中のバーは1 cmを示す。 (B) 
WT、rtl1変異体、gCHLH/rtl1のロゼット葉のクロロフィル含量。□はクロロフィ
ルaを、■はクロロフィルb含量を示している。
(C) 
ABAによる気孔閉鎖。あらかじめ開口している気孔に対し、20 µM ABAを処理し、
2.5時間光照射を行った。□はABA無処理で光照射した場合の気孔開度を、■は
ABA処理して光照射した場合の気孔開度を表している。値は平均値±SD(n=25)
で示す。 Stomatal aperture (µm)
A
4
3
2
1
0
Stomatal aperture (µm)
B
Dark
Light
Light + ABA
5
4
Col
cch
pOCA
gun5-1
Light
Light + ABA
3
2
1
0
Col
cch
pOCA
gun5-1
Figure 6 既知のchlh変異体の気孔開度へのABAの効果
(A) 
光に依存した気孔開口の、ABAによる阻害効果。一晩暗所に置いた植物
のロゼット葉より単離した表皮を気孔開度測定溶液に懸濁し、 20
µMABAを処理し、2.5 時間光照射(青色光10 µmol m-2 sec-1と赤色光50
µmol m-2 sec-1の混合光)した。 は暗所下での気孔開度を、□はABA無
処理で光照射した場合の気孔開度を、■はABA処理して光照射した気孔
開度を示す。cch変異体のバックグラウンド植物はColで、gun5-1変異体
のバックグラウンド植物はpOCA (pOCA107-2)である。値は平均値
±SD(n=25)で示している。 (B) 
ABAによる気孔閉鎖。ロゼット葉から単離した表皮を気孔開度測定溶液
に懸濁し、2.5時間光照射して十分に気孔を開口させ、20 µM ABA処理し
てさらに2.5時間光照射を行った。□はABA無処理の場合の気孔開度を、
■はABA処理した場合の気孔開度を示す。 A
WT
rtl1
CHLH RNAi
#1
#2
WT
rtl1
CHLH RNAi
#1
#2
CHLH
TUB2
B
Western
(anti-CHLH)
Western
(anti-14-3-3 proteins)
CHLH
14-3-3 proteins Figure 7 CHLH RNAiのロゼット葉におけるCHLH発現量
(A) 
半定量的RT-PCRによるCHLH転写量の比較。生育4週間目の植物のロゼット葉
から抽出したRNAより合成したcDNAを鋳型にして、26サイクルでPCRを
行った。TUB2をコントロールとした。 (B) 
ウェスタンブロッティング解析によるCHLHタンパク質の発現量の比較。ロ
ゼット葉より抽出した50 µgのタンパク質より抗CHLH抗体を用いて検出した。
コントロールとして、抗14-3-3抗体を用いて14-3-3タンパク質を検出した。 A
rtl1
B
Chlorophyll contents
(g mgFW-1)
WT
Stomatal aperture (µm)
C
5
4
RNAi #1
2.5
RNAi #2
Chl b
Chl a
2.0
1.5
1.0
0.5
0
WT
rtl1
#1
#2
CHLH RNAi
Light
Light + ABA
3
2
1
0
WT
rtl1
#1
#2
CHLH RNAi
Figure 8 CHLH RNAi植物の表現型
(A)  生育4週間目の植物体(WT、rtl1変異体、CHLH RNAi)の写真。16時間明期・8
時間暗期で生育させた。写真中のバーは1 cmを示す。 (B) 
WT、rtl1変異体、CHLH RNAi植物のロゼット葉のクロロフィル含量。□はクロ
ロフィルaを、■はクロロフィルb含量を示している。 (C) 
ABAによる気孔閉鎖。あらかじめ開口している気孔に対し、20 µM ABAを処理
し、2.5時間光照射を行った。□はABA無処理で光照射した場合の気孔開度を、
■はABA処理して光照射した場合の気孔開度を表している。値は平均値
±SD(n=25)で示す。 A
kDa
200.0
116.0
97.0
66.0
CHLH
**
kDa
97.0
66.0
ABI1
45.0
30.0
PYR1
20.1
45.0
Bound [3H] ABA (× 1000 dpm)
B
150
Total binding
Non-specific binding
100
50
0
CHLH
PYR1
+
ABI1
PYR1
ABI1
Figure 9 フィルター法による組換えCHLHと3H-ABAとの結合解析
(A) 
結合解析に用いた組換えHis-CHLH、His-PYR1、His-ABI1タンパク質の電気
泳動像。SDS-PAGEの後にCBB染色した。 図中の*は、CHLHタンパク質の
分解産物を、左側の数字は、分子量マーカーのサイズを示している。
(B) 
フィルター法による、組換えタンパク質(His-CHLH, His-PYR1, His-ABI1)
と3H-ABAとの結合解析。2 µMの組換えタンパク質を、50 nMの3H-ABAと
ともに25℃で1時間インキュベートした。非特異的結合の解析の際は、1000
倍過剰のラベルしていないABAも加えてインキュベートした。値は平均値
±SD(n=3)で示している。 Bound [3H] ABA (%)
400
Total binding
Non-specific binding
300
200
100
0
CHLH
PYR1 + ABI1
Figure 10 プルダウン法による3H-ABAと組換えCHLHの結合解析
Glutathione Sepharose 4Bと結合したGST-CHLHもしくはGST-PYR1を、50 nM 3H-ABAと
ともに25℃、1時間インキュベートした。非特異的結合解析の際には、1,000倍過剰の
ラベルしていないABAも添加し、インキュベートした。GST-PYR1の結合解析時には、
His-ABI1を反応液に添加した。 A
B
100
80
ABA
0 µM
Germination rate (%)
60
40
WT
rtl1
20
0
100
0 µM ABA
WT
3 µM
80
60
40
20
0
C
WT
rtl1
Col-0
cch
Col-0
cch
3 µM ABA
1
2
3
4
5
6
After stratification (day)
D
100
80
ABA
0 µM
60
Germination rate (%)
rtl1
40
20
Col-0
cch
0
100
0 µM ABA
3 µM
80
60
40
20
0
3 µM ABA
1
2
3
4
5
6
After stratification (day)
Figure 11 rtl1、cch変異体の種子発芽へのABAの効果
(A) 
ABAを含むMS培地での種子(WT, rtl1)の発芽率。種子を播種し、3日間の低温
処理の後、24℃・光照射下に置いた。値は平均値±SD(n=3)で示す。
(B) 
ABAを含むMS培地で発芽・生育させた植物(WT, rtl1)の写真。光照射下に置い
て10日目に撮影した。
(C) 
ABAを含むMS培地での種子(Col-0, cch)の発芽率。実験条件は(A)と同様であ
る (D) 
ABAを含むMS培地で発芽・生育させた植物(Col-0, cch)の写真。条件は、(B)
と同様である。
A
7
WT
rtl1
Root length (cm)
6
BABA
(µM)
0
5
10
20
0
5
10
20
WT
5
4
3
2
rtl1
1
0
0
5
10
20
ABA concentration (µM)
C
D
Root length (cm)
7
Col-0
cch
6
ABA
(µM)
Col-0
5
4
3
2
cch
1
0
0
5
10
20
ABA concentration (µM)
Figure 12 rtl1、cch変異体の根伸長へのABAの効果
(A) 
0、5、10、20µM ABAを含む培地でのWT及びrtl1変異体の根の伸長。MS培地で
60時間育てた植物を、0、5、10、20 µM ABAを含むMS培地に移植し、7日後に根
の長さを測定した。 (B) 
0、5、10、20 µM ABAを含む培地で7日間育てたWT及びrtl1変異体の植物の写真。
写真中のバーは、1 cmを示す。
(C) 
0、5、10、20 µM を含む培地でのCol-0及びcch変異体の根の伸長。条件は (A)と
同じである。
(D) 
0、5、10、20 µM ABAを含む培地で7日間育てたWT及びrtl1変異体の植物の写真。
条件は (B)と同じである。
Relative mRNA level
A
16
12
8
4
0
B
Relative mRNA level
30
WT
rtl1
RAB18
rtl1
WT
RD29B
- ABA
+ABA
20
10
0
C
Relative mRNA level
- ABA
+ABA
60
50
Col-0
cch
RAB18
Col-0
cch
RD29B
- ABA
+ABA
40
30
20
10
0
Ler
abi1-1
RAB18
Ler
abi1-1
RD29B
Figure 13 孔辺細胞におけるABA応答性遺伝子発現レベル
(A)
rtl1変異体の孔辺細胞におけるABA応答性遺伝子発現レベル。孔辺細胞プロトプラ
ストに20 µM ABAを処理し、1時間インキュベートした後、RNAを抽出し、定量的
RT-PCRにより発現量を解析した。各遺伝子発現レベルは、TUB2発現レベルによ
り標準化した。値は平均値±SD(n=3)で示している。
(B)
cch変異体の孔辺細胞におけるABA応答性遺伝子発現レベル。実験条件はAと同様
である。
(C)
abi1-1変異体の孔辺細胞におけるABA応答性遺伝子発現レベル。実験条件はAと同
様である。 A
WT
-ABA +ABA
rtl1
-ABA +ABA
53 kDa
43 kDa
Far Western
B
Signal intensity
(normalized with 14-3-3)
Western
(Anti-14-3-3
proteins)
40
30
14-3-3 proteins
43 kDa
53 kDa
20
10
0
-ABA +ABA
WT
-ABA +ABA
rtl1
Figure 14 rtl1変異体の孔辺細胞プロトプラストにおけるABAによるAKSsタンパク質の
リン酸化
14-3-3タンパク質がリン酸化部位に結合するという性質を利用し、 GST融合14-3-3
タンパク質をプローブとして用いたファー・ウェスタンブロッティング解析により、
AKSsタンパク質(43及び53kDa)のリン酸化を検出した。内生の14-3-3タンパク質
については、抗14-3-3抗体(anti-14-3-3 proteins)を用いたウェスタン解析により検
出した。孔辺細胞プロトプラストに20 µM ABAを処理し、10分間インキュベートし
た。Bのグラフは、Aのシグナル強度を定量化したもので、AKSs(43 kDa及び53
kDa)タンパク質のリン酸化レベルを、14-3-3タンパク質の発現レベルで標準化し、
野生株のABA無処理を1とした時の相対値で表している。 A
Stomatal aperture (µm)
4
- ABA
+ABA
3
2
1
0
CaCl2 (mM)
0.1
5
0.1
5
WT
B
Stomatal aperture (µm)
4
rtl1
- ABA
+ABA
3
2
1
0
CaCl2 (mM)
0.1
5
Col-0
0.1
5
cch
Figure 15 rtl1、cch変異体におけるABAによる気孔閉鎖への高濃度Ca2+の効果
(A)
WT及びrtl1のロゼット葉より単離した表皮を、0.1 mM、もしくは5 mM CaCl2
を含む気孔度測定溶液に懸濁し、20 µM ABAを処理し、2.5時間光照射を行っ
た。□はABA無処理で光照射した場合の気孔開度を、■はABA処理して光照射
した場合の気孔開度を表している。グラフの値は平均値±SD(n=25)で示す。
(B)
Col-0及びcchのロゼット葉より単離した表皮を、0.1 mM、もしくは5 mM
CaCl2を含む気孔度測定溶液に懸濁し、20 µM ABAを処理し、2.5時間光照射を
行った。グラフの値は平均値±SD(n=25)で示す。
A
WT
rtl1
RL+BL
RL+BL +ABA
RL
RL+BL
RL+BL +ABA
RL
Anti-pThr
AntiH+-ATPase
Signal intensity (a.u.)"
B
700
600
500
RL
RL+BL
RL+BL+ABA
400
300
200
100
0
WT
rtl1
Figure 16 rtl1変異体における孔辺細胞細胞膜H+-ATPaseの青色光によるリン酸化へ
のABAの効果
(A)
(B)
ロゼット葉より単離した表皮に赤色光(50 μmol m−2 s−1)を20分間照射し
(RL、 )、続いて赤色光に青色光(10 μmol m−2 s−1)を2.5分間重ねた(RL
+BL、□)。20 μM ABAを処理し、直ちに光照射を行った(RL+BL+ABA、■)。
上の写真は、H+-ATPaseのC末端から2番目のリン酸化されたThrを特異的に認識す
る抗体(Anti-pThr)を用いて免疫染色したもので、リン酸化状態を示す。下の写
真は、細胞膜H+-ATPaseの触媒ドメインを認識する抗体(Anti-H+-ATPase)を用い
て、免疫染色したもので、H+-ATPaseの発現量を示す。 Aの蛍光強度を数値化したもので、グラフの値は平均値±SD(n=30)で示す。 A
CER6::CHLH-GFP
WT
#1
Bright
B
#2
GFP
Merged
CER6::CHLH-GFP
WT
#1
#2
C
CER6::CHLH-GFP
WT
#1
#2
Western
(Anti-GFP)
GFP
Western
(Anti-CHLH)
CHLH-GFP
CHLH
Western
(Anti-14-3-3
proteins)
14-3-3 proteins
Figure 17 CER6::CHLH-GFPの植物体の写真と孔辺細胞におけるCHLH発現量
(A) 
生育4週間目の植物体(WT、CER6::CHLH-GFP )の写真。16時間明期・8時
間暗期で生育させた。写真中のバーは1 cmを示す。 (B) 
ロゼット葉より単離した裏側表皮における気孔の明視野像(左列)とGFP
蛍光画像(中央列)及び両者を併せた像(右列)。図中のバーは、10 µmを
示す。 (C) 
ウェスタンブロッティングによる、孔辺細胞プロトプラストでの内生の
CHLHと組換えCHLH-GFP発現量解析。内生のCHLH発現は抗CHLH抗体で、
導入したCHLH-GFPの発現は抗CHLH抗体及び抗GFP抗体を用いて検出した。
14-3-3タンパク質発現量をローディングコントロールとした。 5
*
4
*
3
2
1
0
WT
90
80
70
60
Stomatal aperture (µm)
50
0
C
#1
#2
CER6::CHLH-GFP
100
Relative weight
(% of initial weight)
B
Stomatal aperture (µm)
A
5
4
WT
#1 CER6::CHLH#2 GFP
30
60
90
Time after detachment (min)
0 µM ABA
1 µM ABA
20 µM ABA
3
2
1
0
WT
#1
#2
CER6::CHLH-GFP
Figure 18 CER6::CHLH-GHPの表現型
(A) 生育4週間目の植物体(WT、CER6::CHLH-GHP)の生育条件下の気孔開度。ロゼット葉より
表皮を単離し、直ちに気孔開度を測定した。値は平均値(n=25)±SDで示している。図中の*
は、野生株とCER6::CHLH-GFPの間で有意差があることを示している(Student’s t-test,
*P<0.01)。 (B) 野生株及びCER6::CHLH-GHPの切り取った葉の重量変動。○はWTの葉重量変動を、●及び■は
CER6::CHLH-GFPの葉重量変動を示す。各時間の葉重量は、切り取った直後の葉重量に対す
る割合(%)で表している。グラフの値は平均値±SD (n=6)で示す。
(C) ABAによる気孔閉鎖。単離した表皮を気孔開度測定溶液に懸濁し、1及び20 µM ABAを処理
し、2.5時間光照射を行った。□はABA無処理で光照射した場合の気孔開度を、 は1 µM ABA
を処理して光照射した場合の気孔開度を、■は20 µM ABA処理して光照射した場合の気孔開
度を表している。グラフの値は平均値±SD(n=25)で示す。
WT
CER6::CHLH-GFP
#1
#2
Figure 19 CER6::CHLH-GHPの乾燥耐性
16時間明期・8時間暗期で生育させた生育3週間目の植物に対し、18日間給水を
停止した。 A
SAIL_230_D11
ATG
↓
TAA
↓
500 bp
:exon
:intron
B
Col-0
chli1
CHLI1
TUB2
C
Col-0
Stomatal aperture (µm)
D
4
chli1
Light
Light + ABA
3
2
1
0
Col-0
chli1
Figure 20 chli1ノックアウト変異体の表現型
(A) MgキラターゼIサブユニット1(CHLI1)遺伝子の構造とchli1ノックアウト変異体で
のT-DNA挿入位置。ゲノムCHLI1の第3エクソンにT-DNAが挿入されている。
(B) CHLI1発現の半定量的RT-PCRによる確認。chli1ノックアウト変異体では、CHLI1発
現がみられない。TUB2をコントロールとした。
(C) 生育4週間目の植物体(Col-0, chli1)の写真。16時間明期・8時間暗期で4週間生育さ
せた。写真中のバーは1 cmを示す。
(D) ABAによる気孔閉鎖。単離した表皮を気孔開度測定溶液に懸濁し、20 µM ABAを処
理し、2.5時間光照射した。□は-ABAを、■は+ABAを表す。グラフの値は平均値
±SD(n=25)で示す。 青色光による気孔開口の経路
ABAによる気孔閉鎖の経路
青色光
phot1
phot2
?
H+-ATPase
H+
H+
H+
14-3-3
P
PYR/
PYL/
RCAR PP2C
ABA
SnRK2
[Ca2+]cyt
陰イオンチャネル
ClClCl-
過分極
内向き整流性
K+チャネル
K+
K+
+
K
脱分極
CHLH
CHLI
H 2O
葉緑体
孔辺細胞
H 2O
K+
K+ K+
外向き整流性
K+チャネル
Figure 21 孔辺細胞におけるABAシグナル伝達経路のモデル図
孔辺細胞において、ABAを受容したPYR/PYL/RCARは、PP2Cを阻害して
SnRK2を活性化する。その後、細胞内Ca2+変動を経て、陰イオンチャネルが開
口し、脱分極が起こる。それに伴って、外向き整流性K+チャネルが開いてK+が
排出されて、気孔が閉鎖する。またABAは、青色光を介した細胞膜H+-ATPase
活性化を阻害することで、気孔開口を抑制する。葉緑体に局在するCHLHは
CHLIとともに細胞内Ca2+変動やH+-ATPaseの活性化に影響を与えることにより、
ABAシグナル伝達経路に関与していると考えられる。 Table 1 シーケンスに用いたプライマー
プライマー名
配列(5'→3')
CHLH-1-F
ATGGCTTCGCTTGTGTATTCTCC
CHLH-145-F
TCTGCTGTATCTGGAAAGGC
CHLH-159-R
TCCAGATACAGCAGATTTCACC
GUN5-488-F
TGGACGCAGTTCTTGTCTTCC
GUN5-698-R
GCCTTGTCACTAGGTAAGTAG
GUN5-1089-F
GGATTTCTCTGGTCCAGTAGAG
GUN5-1293-R
CCATTCCTCTGTCGTCTGGA
GUN5-1727-F
TCCGTGAGTACCAAGACCTC
GUN5-1927-R
GAGGACTTGCTGACTTGGAG
GUN5-1996-F
GGAACACATGGTTCTCTCGAG
GUN5-2232-R
CGATATCAGCTCACTCACCTC
GUN5-2589-F
CGACAAGGGTATCTTGAGCG
GUN5-2793-R
GTTCGCCCTGTAGAACTTGG
GUN5-3158-F
GTGTGAGACCAATTGCTGATAC
GUN5-3379-R
GTTCCAACGCGTGTTTCCTTAC
GUN5-3776-F
CACTATCTGAGACAGTGAGGC
CHLH-3909-R
ACTCCATCCCACAGTGTTGG
GUN5-3996-R
CATGAGACGGTTCAGCATCTC
CHLH-4146-R
TTATCGATCGATCCCTTCGATCTTG
Table 2 プラスミド pGWB1-Kpn-gCHLHの構築に用いたプライマー
プライマー名
配列(5'→3')
目的
GUN5-5'
CCGATGAGAGAATCATAAACTCCC
gCHLHのクローニング
GUN5-3'
CACAGAGAGATGATGTCGTTTGG
gCHLHのクローニング
Kpn-gGUN5-401-F
CGCCGGTACCCAGCAGCCACGAGTCCTG
ATACAGCTCG
KpnI付加
Kpn-gGUN5-8963-R
CGCCGGTACCGTCTCGCGTCACGGCTAC
TGCAGATGAAGATG
Kpni付加
Table 3 組換えタンパク質用のプラスミド構築に用いたプライマー
プライマー名
配列(5'→3')
目的
CHLH-145-F
TCTGCTGTATCTGGAAACGGC
pDEST15-CHLH及び
pDEST17-CHLH作成
CHLH-4146-R
TTATCGATCGATCCCTTCGATCTTG
pDEST15-CHLH及び
pDEST17-CHLH作成
PYR1-1st-F
CCAAATTCAAACCATGCCTTCG
pDEST15-PYR1及び
pDEST17-PYR1作成
Nested PCR
PYR1-1st-R
CCTTGCACGTCATTCTCATC
pDEST15-PYR1及び
pDEST17-PYR1作成
Nested PCR
PYR1-2nd-F
ATGCCTTCGGAGTTAACACC
pDEST15-PYR1及び
pDEST17-PYR1作成
Nested PCR
PYR1-2nd-R
TCACGTCACCTGAGAACCAC
pDEST15-PYR1及び
pDEST17-PYR1作成
Nested PCR
Table 4 半定量的RT-PCRに用いたプライマー
プライマー名
配列(5'→3')
目的
GUN5-3158-F
GTGTGAGACCAATTGCTGATAC
CHLH発現量の解析
CHLH-3909-R
ACTCCATCCCACAGTGTTGG
CHLH発現量の解析
SAIL_230_D11_LP
ACCCATCAACATTGAGCTCTG
CHLI1発現量の解析
SAIL_230_D11_RP
GGAATCCAAATAAGGCCAAAG
CHLI1発現量の解析
TUB2-F
CATTGTTGATCTCTAAGATCCGTG
TUB2発現量の解析
TUB2-R
TACTGCTGAGAACCTCTTGAG
TUB2発現量の解析
Table 5 Q-PCRで用いたプライマー プライマー名
配列(5'→3')
RAB18-F
TGTAACGCAGTCGCATTCG
RAB18-R
CACATCGCAGGACGTACATACAT
RD29B-F
CGAGCAAGACCCAGAAGTTCAC
RD29B-R
TTACCCGTTACACCACCTCTCA
TUB2-F
AAACTCACTACCCCCAGCTTTG
TUB2-R
CACCAGACATAGTAGCAGAAATCAAGT
Table 6 プラスミド pYU501-CHLHの構築に用いたプライマー
プライマー名
配列(5'→3')
目的
CHLH-S-F
ACAGAGATTCTGTGGTTGGGAAAG
CHLH
(2,363–3,015 bp)の増幅
CHLH-S-R
GGCACTTGCCATTGCTGCTG
CHLH
(2,363–3,015 bp)の増幅
Table 7 プラスミド CER6::CHLH-GFPの構築に用いたプライマー
プライマー名
配列(5'→3')
目的
Sal-GUN5-F
ACGCGTCGACAAAATGGCTTCGCTTGTGTA
TTCTCC
SalI及びコザ
ック配列付加
Sal-GUN5-R
ACGCGTCGACTCGATCGATCCCTTCGATCT
TG
SalI付加
XbaI-CHLH-F
GCCTCTAGAAAAATGGCTTCGCTTGTGTATT
CTCCAT
XbaI及びコザ
ック配列を付加
GFP-XbaI-R
GCCTCTAGATTACTTGTACAGCTCGTCCATG
C
GFPの後ろに
XbaI付加
CHLH-A2502C-F
GGTCAACATTGCTGCTCTCGATCGTCCGGA
GGATGAG
CHLH中のXba
I除去
CHLH-A2502C-R
CTCATCCTCCGGACGATCGAGAGCAGCAAT
GTTGACC
CHLH中のXba
I除去
CHLH-XbaI-T3GGFP-F
CGATCGAGTCGACTCGAGAGGATCCATGGT
G
CHLH-GFP間
のXbaI除去
CHLH-XbaI-T3GGFP-R
CACCATGGATCCTCTCGAGTCGACTCGATC
G
CHLH-GFP間
のXbaI除去
GFP-1-F
ATGGTGAGCAAGGGCGAG
GFP側のシー
ケンス
GFP-20-R
TCCTCGCCCTTGCTCAC
GFP側のシー
ケンス
GFP-303-R
GAAGAAGATGGTGCGCTCC
GFP側のシー
ケンス
Table 8 chli1ノックアウト変異体のジェノタイピングで用いたプライマー
プライマー名
配列(5'→3')
SAIL-LB1
GCCTTTTCAGAAATGGATAAATAGCCTTGCTTCC
SAIL_230_D11_LP
ACCCATCAACATTGAGCTCTG
SAIL_230_D11_RP
GGAATCCAAATAAGGCCAAAG
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