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ウコンのクルクミン

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ウコンのクルクミン
マニュアル参考様式 Ver.1
食品中の健康機能性成分の分析法マニュアル
平 成 22年 3月 作 成
四国地域イノベーション創出協議会
地 域 食 品 ・健 康 分 科 会 編
[email protected]
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
ウコンのクルクミン
作成者:愛媛県産業技術研究所
食品産業技術センター主任研究員
大野一仁
1 .ウ コ ン に つ い て
1.1 概要
ウコンは、ショウガ科ウコン属の多年草でインドが原産地とされている。ウコン属
の 植 物 は 世 界 に 約 50 種 あ る が 、国 内 で 栽 培 さ れ て い る 主 な 品 種 は 、ウ コ ン( 秋 ウ コ ン )、
キ ョ ウ オ ウ ( 春 ウ コ ン )、 ガ ジ ュ ツ ( 紫 ウ コ ン ) の 3 種 類 で あ る 。 栽 培 は 沖 縄 県 を 中 心
に 行 わ れ て お り 、 沖 縄 県 に お け る 生 産 量 は 、 53 ト ン ( 平 成 19 年 ) で あ る 。
最 近 、ウ コ ン の 有 す る 機 能 性 が 注 目 さ れ 、健 康 志 向 の 高 ま り の 中 、乾 燥 粉 末 、錠 剤 、
発酵茶、エキス入飲料等様々な製品が販売され、多くの消費者に利用されるようにな
っている。
愛媛県内でも県南の鬼北町等で生産されており、生産農家が乾燥粉末を製造し地域
の 特 産 品 と し て 、「 道 の 駅 」 等 で 販 売 し て い る 。 ま た 、 県 内 の 健 康 食 品 メ ー カ ー で も 地
元で有機栽培したウコン錠剤の製造・販売を始めている。
愛 媛 県 産 業 技 術 研 究 所 で は 、 平 成 12 年 度 に 「 ウ コ ン 加 工 利 用 研 究 」 を 実 施 し 、 ウ コ
ン乾燥粉末製造方法と乾燥粉末の退色防止及び渋味低減方法、さらに、加工品の試作
等を行い、その成果を利用して各種加工品が販売されている。
春ウコン
秋ウコン
写真1-1
ウコンの外観と断面
1
マニュアル参考様式 Ver.1
1.2 食品あるいは含有成分の機能性
ウコンには、黄色色素であるクルクミンが含まれている。その作用としては、肝保
護作用、抗酸化性、抗腫瘍作用、免疫賦活作用、抗炎症作用、抗菌作用で、その科学
的解明が進められている。
ウコンには、さらに数%の精油成分も含まれており、これらもまた芳香性健胃とし
ての作用や、抗菌作用などが知られている。漢方で、ウコンは、利胆、健胃、利尿、
止血、通経薬として用いられている。
1.2.1 クルクミンを含む食品
ク ル ク ミ ン を 含 む 食 品 類 は 、 ウ コ ン 類 で 、 ウ コ ン ( 秋 ウ コ ン )、 キ ョ ウ オ ウ ( 春 ウ コ
ン)などが挙げられる。但し、同じウコンでも紫ウコンには含まれていない。
カレー粉の原料として知られるターメリックもウコンの一種で、クルクミンを含ん
でいる。
<引用・参考文献>
1. 宮 城 幹 夫 : フ ー ド ・ ス タ イ ル 21,13, 58- 61(2009).
2. 若 尾 修 司 : 植 物 資 源 の 生 理 活 性 物 質 ハ ン ド ブ ッ ク , 268-270(1998).
2.クルクミン類(クルクミノイド)についての説明
黄 色 色 素 で あ る ク ル ク ミ ン 類 に は 、 ク ル ク ミ ン ( Curucumin) と 、 そ の 類 縁 体 デ メ
ト キ シ ク ル ク ミ ン( Demethoxy Curucumin)、ビ ス デ メ ト キ シ ク ル ク ミ ン( Bisdemethoxy
Curucumin) が 含 ま れ 、 こ れ ら は 総 称 し て ク ル ク ミ ノ イ ド ( Curucuminoids) と 呼 ば
れている。
これらクルクミノイド含量の把握は、ウコンの種類の判別や、品質の評価には欠
か せ な い 重 要 な 要 素 に な っ て い る 。そ の 含 量 は 、種 類 、品 質 等 に よ っ て 差 が あ る が 、
秋ウコン>春ウコンで、紫ウコンには含まれていない。
Curucumin 1 :
Curucumin 2 :
Curucumin 3 :
R 1 = R 2 = O C H 3 (Curucumin)
R 1 = O C H 3 , R 2 = H (Demethoxy Curucumin)
R 1 = R 2 = H (Bisdemethoxy Curucumin)
図2-1
クルクミンの構造式
2
マニュアル参考様式 Ver.1
3. 定量分析の方法について
ウコン及びウコン加工品中の3種類のクルクミン類(クルクミン、デメトキシクル
クミン、ビスデメトキシクルクミンを、同時に高速液体クロマトグラフィーにより定
量する方法を述べる。
3.1 準備する器具など
1.超 音 波 発 生 器
2.20ml 容 ( ま た は 50ml 容 ) の 共 栓 三 角 フ ラ ス コ
3.試 料 濾 過 用 メ ン ブ ラ ン フ ィ ル タ ー (親 水 性 テ フ ロ ン 膜 を 使 用 し た も の 、ポ ア サ イ
ズ O.20μ m、 25mm 径 : D I S M I C 、 25HP020AN、 アドバンテック社 製 )
4.高 速 液 体 ク ロ マ ト グ ラ フ シ ス テ ム 紫 外 検 出 器 、 カ ラ ム 恒 温 槽 (40℃ が 保 て る も
の )が 必 須
5.C18 逆 相 カ ラ ム (Nucleosil 100- 7C18、 4.6×250mm、 G L サ イ エ ン ス 製 )
[試 薬 ]
1.ア セ ト ニ ト リ ル (HPLC 用 )
2.メ チ ル ア ル コ ー ル (試 薬 特 級 )
3.酢 酸 (試 薬 特 級 )
4.ク ル ク ミ ン 類 標 品 (長 良 サ イ エ ン ス ㈱ 製 )
ク ル ク ミ ン 類 標 品 原 液 は 、各 々 10mg/10ml の 濃 度 に な る よ う に 精 秤 し て メ タ ノ ー ル で
溶 解 す る 。こ こ の 原 液 を メ タ ノ ー ル で 希 釈 し て 、20mg/100ml、50 mg/100ml、100 mg/100ml
の 標 品 溶 液 を 調 製 し 、ネ ジ 付 き 褐 色 サ ン プ ル ビ ン に 入 れ 、- 20℃ 以 下 で 冷 凍 保 存 す る 。
3.2 分析用試料の前処理・調製方法
1.生 鮮 試 料 は 予 め 凍 結 乾 燥 し て 粉 砕 後 、 冷 暗 所 に 保 存 し て お く 。 乾 燥 品 、 錠 剤 は 粉
砕する。
2.乾 燥 、 粉 砕 し た 試 料 約 0.1~ 0.4g を 精 秤 し 、 20ml( 50 ml) 容 の 共 栓 三 角 フ ラ ス コ
に入れる。
2.メ タ ノ ー ル 10ml を 加 え 、 15 分 間 超 音 波 抽 出 を 行 う 。
3.し ば ら く 静 置 し た 後 、上 清 を メ ン ブ ラ ン フ ィ ル タ ー で 濾 過 す る 。濾 過 し た 試 料 は 、
冷 蔵 庫 (1 日 を 越 え る と き は - 20℃ 以 下 )で 分 析 時 ま で 保 存 す る 。
4.分 析 用 試 料 及 び 標 品 を HPLC で 分 析 す る 。
3 . 3 HPLC に よ る 分 析 方 法
3 . 3 . 1 「 ア イ ソ ク ラ テ ィ ッ ク タ イ プ HPLC 装 置 の 場 合 」
(1)移動相の調製
移 動 相 は 、蒸 留 水 (超 純 水 ): ア セ ト ニ ト リ ル : 酢 酸 を 、55: 45: 1 の 割 合( 容 量 ) で
混合して調製する。
(2)分析条件
検出器、恒温槽、溶媒の流量等の条件は以下の通りとする。
検 出 波 長 :425 nm
恒 温 槽 :40℃
3
マニュアル参考様式 Ver.1
移 動 相 流 量 :1.3ml/ min
試 料 注 入 量 : 10μ l
(3)定性及び定量
① 分離された物質の定性は保持時間により行う。
② 定量は標準試料を用いた、内標を用いない絶対検量線法による。通常はクロマ
トグラムの面積から計算するが、微量物質の場合はピーク高を用いる方が精度
良く定量出来る場合もあるので、計算に用いる装置の特性に注意を払って選択
することが必要である。
4.分析例
4 . 1 ア イ ソ ク ラ テ ィ ッ ク タ イ プ HPLC 装 置 に よ る 分 析 例 と 定 量 分 析 結 果
分 離 さ れ た 物 質 は 保 持 時 間 か ら (標 準 物 質 と 比 べ )特 定 す る 。 定 量 に は 標 準 試 料 を 用
い、クロマトグラムのピーク面積から濃度を算出する。以下に典型的なクロマトグラ
フを図に示す。
ビスデメトキシクルクミン
デメトキシクルクミン
クルクミン
図4.1-1秋ウコン粉末のクロマトグラフ
5.食品の分析結果例
上記手法を用いて、県内産ウコン(春ウコン、秋ウコン、紫ウコン)、及びその乾
燥粉末中のクルクミン類の定量分析を行った。その結果、含まれるクルクミン類3種
は、それぞれウコンの種類で異なり、秋ウコンが多く、次いで春ウコンであった。紫
ウコンでは、いずれも検出できなかった。クルクミン類では、クルクミン>デメトキ
シ ク ル ク ミ ン > ビ ス デ メ ト キ シ ク ル ク ミ ン の 順 番 に 多 く 含 ま れ て い た 。下 記 表 に 示 す 。
4
マニュアル参考様式 Ver.1
表5-1
ウコンの種類
性
状
県内産ウコン及び乾燥粉末の定量結果
クルクミン
デメトキシクルクミン
ビスデメトキシクルクミン
( mg/100g)
( mg/100g)
( mg/100g)
春ウコン
生鮮
20
15
1
秋ウコン
生鮮
160
38
19
紫ウコン
生鮮
0
0
0
春ウコン-1
乾燥粉末
35
19
0
春ウコン-2
乾燥粉末
64
30
2
秋ウコン-1
乾燥粉末
380
60
21
秋ウコン-2
乾燥粉末
500
110
68
秋ウコン-3
錠剤
260
46
22
紫ウコン
乾燥粉末
0
0
0
(*注意)なおこの測定結果は、数多くのウコンと粉末のうちの一例であり、製品一般の
分析結果ではない。
6.分析上の留意、注意点
クルクミノイドは、光に弱いので、試料調製・分析にあたっては、長時間光に当て
たり品温が高くならないように注意し、抽出試料を褐色ビンに入れて、できれば冷凍
貯蔵することが望ましい。
7.その他
特になし。
8.定量法に関する引用・参考文献
1.福 島 悦 子 , 矢 崎 廣 久 , 加 瀬 信 明 : 千 葉 衛 研 報 告 ,20, 37- 40(1996)
2.平 田 恵 子 ,広 門 雅 子 ,植 松 洋 子 ,中 島 和 雄 ,松 井 敬 子 ,風 間 成 孔:東 京 衛 研 年 報 ,
40, 178- 182( 1989)
3.佐 藤 誠 , 志 村 恭 子 , 橋 爪 清 :三 重 保 環 研 年 報 ,49, 52-54( 2004)
4. 渡 辺 敏 郎 ,Mazumder Tapan Kumar,山 本 明 ,永 井 史 郎 ,寺 部 茂 : 日 食 科 工 誌 ,
47, 780-786( 2000)
-以上-
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