...

018 CAEPF通信11号

by user

on
Category: Documents
350

views

Report

Comments

Transcript

018 CAEPF通信11号
CAEPF通信
第11号
2010年8月25日
特定非営利活動法人 西域生態系保全フォーラム
Central Asia Ecosystem Preservation Forum
事務局:〒421-2124 静岡市 葵区 足久保口組 2181-5
TEL/FAX:054-296-6536
E-mail:[email protected]
URL: http://www4.tokai.or.jp/saiiki/
郵便振替:00810-7-116029(加入者名:西域生態系保全フォーラム)
ウルムチ暴動から一年
昨年の7月5日ウルムチで暴動が起こった。最
初は一寸した騒乱と思えるものだったが、実はウ
イグル族と漢族の対立という事件だった。今まで
平和に共存していた民族同士が、なぜという思い
にかられた。新疆ウイグル自治区は、多民族の省
であり、民族同士が対決しては、破滅の道を進む
だけで、共存なくしては繁栄の道はないと常々思
っていたからです。表面上は平和に見えても、わ
れわれ外国人には、まだまだ見えない部分がある
のかと改めて感じたところでした。
昨年の暴動後、7月15日頃から、新疆と電話
が極端にかかりにくくなり、メールもこちらから
打っても、着いているのかいないのか、全く返事
が来なくなった。新疆との連絡が途絶えたため、
メールが届く天津農業大学の閻国栄先生を通じて
、新疆の様子を聞いてもらったが、彼もしばらく
は様子がつかめませんでした。
新疆と全く連絡がとれない以上、細かい打ち合
わせもかなわず、治安の状態も判らず、事件に巻
き込まれることになったらと、夏に計画した新疆
しんで
いました。平穏そのものでした。しかし、今年の
5月6日の大バザール、5月7日のウルムチ空港
は、ガラガラで観光客の激減が明らかでした。大
バザールには漢族が寄り付かなくなり、また、旅
行会社の社員はほとんど無給状態だったと聞きま
す。
ただ、昨年の暴動からまる1年目に当たる7月
5日前後は、警戒がかなり厳しかった。特に、国
境に近い塔城地区や伊犁地区はそうでした。塔城
市や裕民県では、その街に宿泊するのに、公安か
らパスポートのコピーを要求され、スーツケース
の中を開けさされて、書物類、地図類、電子機器
、GPS,撮影した写真などの検閲を受けた。7
月5日、塔城地区からウルムチに入りましたが、
ウルムチの街で、12人一組の公安官や警察官が
、軽機関銃と楯を持って巡回しているのが見られ
ました。一週間後の7月12日、飛行機でウルム
チに帰る時、イーニン空港で靴も脱がされ、バン
ドも外さされたのには、いささか驚きました。ま
た、ウルムチ空港では、バザールで買ったナイフ
類は、新疆から持ち出してはならないということ
でした。
暴動から1年後の新疆の様子をお伝えしましたが、
多少検閲の厳しいことがありますが、安全や治安には
全く問題ない状態です。安心してお出かけできます。
屋台
訪問は中止することにしたことは、CAEPF1
0号でお知らせしたとおりです。
12月になっても音信不通が続いていたが、今
年の2月の春節(旧正月)から、中国への国際電
話とメールは、研究機関や旅行会社など大きな機
関では、数回線がつながるようになりました。し
かし、個人間のメールや電話はまだ不便な状況が
続いていた。
新疆には、昨年の10月27日から3日間、今
年の4月26日から12日間、そして今回の6月
24日から21日間と3回訪問しました。
3回ともウルムチに入って感じたことは、以前
と何も変わったところはなく、今まで通りのウル
ムチであったことです。5月1日のメーデーにも
特に変化はなく、一般の人々は3日間の休日を楽
1
2010年春の新疆訪問
人達と圣柳を約300本植林する。新疆日報社及び
インターネット社のインタビューを受ける。若い女
性の記者に「なぜこんな貧しい省の植林に、日本か
ら植林に来るのか?」の質問に一瞬たじろぐ。「貧
しい省なんかではない。海のもの以外、農作物、石
油、石炭、天然ガス、鉱物資源、レアメタル、すべ
て自給自足できる豊かな省だと思っている。お金が
なければ、一日も生きて行けないところを貧しいと
ころという。豊かさとは何かをもう一度考え直して
ほしい。新疆を緑にすることは、中国東部、朝鮮半
島、日本にとっても重要なことと思っている」と。
日 時:2010年4月25日~5月7日
場 所:ウルムチでの植林、伊寧、新源
参加者:大石惇、廿日出正美、鈴木富、黒田康彦、
閻国栄、李新革、鮮学昌
新疆農業大学、外事弁公室との打ち合わせ
4月26日 新疆農業大学 20:00~22:
10アブラテイ副学長の招待で夕食会。チーマンさ
ん、馬梅さん、張永平外事処長、ウルムチ市園林局
曾秀英さん、閻国栄先生、李新革さん。廖康先生は
、トルファンでの強風の被害調査に。「静大農学部
でも来年から学生に海外研修科目を新設して、単位
が出るようになる。募集して新疆農業大学に来させ
たい。静岡大学内にアジア研究センターが発足、人
文学部の先生が6月末に偵察にくる」予定と伝える
。「新疆農業大にも人文系がある。交流したい。」
4月27日 新疆政府外事弁公室 19:00~
21:15「野馬」内で弁公室の招待で夕食会。張
曉迪副主任、任新軍来賓処長、朱俊来賓処副処長、
郭秀菊、王葵(新彊大学国際交流与合作処副処長)
も出席。われわれの伊犁州の訪問先にはすべて連絡
済みとのこと。弁公室に昨年秋の約束事を伝える。
「静岡県日中友好協会が9月に植林に、人文学部か
ら6月末から7月に偵察に来る。」「7月5日以降
OK。新彊大学は7月12日から夏休み、その間に
、人文学部の先生の訪問を希望する。10月から静
大に留学生を送りたい。まだ人は決まっていない。
9月の植林はまだ暑くて適期でない、10月は植樹
にいい時期だ。」「9月の国際貿易フェアーを見学
したい気もある。」「植林の穴をすでに掘ってある
。名前をなんとするか頭を痛めている。支援金は1
00万円でしたね。植える樹種は決まった。帰国す
るまでに知らせる。」「静岡大学に何人くらい送る
ことを考えておられるか?」「2人くらい。」
新疆日報の記者のインタビュウ
助成金交付の国土緑化推進機構からの要請で、植
林現場のGPSを測定する。
北緯43度38分84秒、東経87度49分08秒
標高1、264m。
植林終了後、中国科学院生態地理研究所の展示館
を見学。2階建の立派な展示館で、地形、土壌、岩
石、植物、動物、環境など、新疆内の自然科学分野
の博物館となっており、ミイラなどを展示している
ウルムチ市の博物館とは一味違った博物館で、じっ
くり見る価値は十分ある。
3年目の天山野生動植物保護地の植林
伊犁の大洪水と機構改革による資源圃の嘆き
今年で3年目の天山野生動植物保護地の植林に、
4名の参加者で行われた。昨年7月5日のウルムチ
での騒乱の影響か、同行者が少なく、大石理事長、
廿日出先生、静大山岳部紫岳会会員の黒田康彦、元
静岡県柑橘試験場の鈴木富さんの4人だった。
4月28日 植林の後、全メンバーで伊犁地区を
訪問した。我々4人と閻国栄先生と中青旅の鮮学昌
さんで、ウルムチから伊寧までマイクロバスで移動
。精河まで鉄道が複線電化され、単線電化で伊寧ま
で工事中で、今年中に鉄道が開通するらしい。何し
ろ中国はやることが早い。賽里木湖は全面結氷だっ
た。果子沟は、高速道建設中で、雪解け水が道にあ
ふれ濁流となって流れる。果子沟の出口(清水河
鎮)まで1時間半かかった。今年の冬は寒く長く、
杏の花が2週間遅れで満開だった。野苹果はまだま
だのようだった。
4月29日 大石と廿日出先生は伊犁州林業局に
挨拶に。伊犁州林業局の朱新生書記はウルムチへ出
張のため、伊犁州林業科学研究院を訪問。伊犁地区
植 林 風 景
4月27日 10:00植林現場に向けて出発、
11:30~13:00まで保護地の20人余の
2
駆のジープでなかったので、危険を感じ巨樹まで行
くのを断念する。残念だが新源に引き返す。
5月1日 今日はメーデーで休日。資源圃に向か
う。県道から資源圃に向かう道に、やたら一般の車
が多い。不安がよぎる。案の定大門は壊され、車が
20台ばかり、野果林の中に止まっている。次から
次へと車が入ってきて渋滞状態。子どもが馬に乗っ
て野果林の中で騒いでいる。数組がシートを敷いて
酒盛りか。宿泊施設も子どもたちに占領され、我々
が休憩する場所もない。これは何事が起ったのか。
この光景を見ているだけで気分が悪くなる。居たた
まれなくなって、早くこの場から去りたくなった。
気を取り直して、とにかくこの現状を写真に納めな
くてはと、写真を撮りまくる。
一つ良かったことは、一昨年設置した気象ロボッ
トの傍に、伊犁州の気象庁が風速計などを新たに設
置して呉れていた。那拉提風景区をみんなで見学し
たが、気が静まらなかった。新源貴賓館へ戻る。
全面結氷の賽里木湖
果子沟に建設中の高速道路
林業研究所と伊犁地区園芸研究所が合併して、伊犁
州林業科学研究院と名称が変わった。新しい組織は
、伊犁州林業科学研究院。院長は劉軍、副院長ピリ
ードン、書記ヌル。その中に生態研究所―園芸研究
所から3人移動。経済林研究所―所長尚(シャン)
振江、副所長許正、刁(ジャオ・diao)さん。治砂
造林研究所―。新源の資源圃は、野果林研究室と名
を変えて、カザフ族4人、ウイグル族1人に施さん
が資源圃の貼り付けになった。元園芸研究所の陳雲
華所長は調研員となり、旧林業研究所副所長の蘇馨
花さんはまだ任命されていないとのこと。新院長の
劉軍さんの権力が強く、ピリードン副院長が困って
いる様子であった。伊犁州政府の副州長牛正夫氏と
面会、野果林の保護と研究拠点としての資源圃の重
要性を訴える。その後新源へ
4月30日 新源に宿泊する許可証がないことが
判り、鮮さんとピリードンさんが伊寧市に戻り、公
安局で許可証を得てから、鮮さんが新源に乗り合い
バスで戻ることになった。我々は新源森林局のジー
プで「野苹果王」に向かう。今冬は雪が多くたどり
着けないかもしれないが、新源林業局張来全書記の
運転で向かう。八連入り口で、巨樹の管理人(エル
・ムラテイ)が、昨日と一昨日現場を見てきたとい
う話を聞く。馬で行ったとのこと。「去年の春、柵
内に100本くらい苗を植えたが、3本くらいしか
活着していない。それで秋には種子を播いてみたが
、まだ発芽はしていなかった。」標高1、700m
くらいまで来て、道路に水が流れてぬかるみで、4
資源圃内に入り込んだ一般の車群
資源圃内でトランプに宴会?
5月2日 廿日出先生、鈴木富、黒田康彦、鮮学
昌さんは特克斯に向けて出発。大石、閻国栄先生、
許正、刁さんは、則克台からやや上流の吐尓根郷か
ら谷に入る。何十年ぶりかの大水で、橋の上から住
民が恐る恐る流れを覗きこんでいる。悪路続きの谷
を遡るが増水で危険、30分程度溯登ったところで
引き返す。野生杏の谷に野生りんごも混じっていた
。
3
所長、閻国栄先生、安留保書記、朱さんの奥さん、
刁さん。お願いしたこと:牛正夫副州長、朱新生森
林局書記に、資源圃を野生果樹の研究の場として残
してくれるように強く訴えた。「野苹果は、ここに
しかない世界の宝だ、林先生と18年間かけて作っ
てきた、他に美しい観光地はいっぱいある、100
haくらい研究者以外は入れない、研究の基地として
残しても問題ないではないか」と。ピリードン副所
長と同じお願いをした。
17:00 黒田康彦、鈴木富さんがトルファン
訪問のためウルムチへ、伊寧空港で別れる。
5月4日 果子沟の増水によりウルムチに帰れな
くなることを恐れて、廿日出先生と1日早めて伊寧
からの脱出を計画する。7:30出発。19:15
ウルムチに到着。11時間半の長旅。夜、ウルムチ
一の屋台で李新革さんと夕食。すごい煙と活気で賑
やかそのもの。蛸や烏賊や鯵など生の海の魚やすべ
ての海産物が揃う。どこから来るのか驚きだ。
雪解けと降雨による大規模な斜面の崩壊
閻国栄さんも許正さんも初めての谷。ゴンネイス
河の対岸にも野生杏があった。この谷の野生杏は、
果肉は食べないが種子(仁杏)を採取して売ってい
る。さらにゴンネイス河を東に約20kmの伊犁鉄
鉱まで溯る。対岸の山裾に資源圃の赤い屋根が見え
る。写真を撮って伊寧市に向かう。途中、単科単属
単種の黄色の半日花(午前中だけ花が開きしぼんで
しまう花、今日は曇天で午後になっても開いてい
た)、天山桜桃の果実、黄色いケシも写真に収める
。赤いケシの開花は、6月に入ってからでまだ見ら
れない。
5月3日 廿日出先生、鈴木富、黒田康彦、鮮学
昌さんは錫伯民族博物館、白石峰に向けて出発。大
石、閻国栄先生は、ピリードン副院長と資源圃につ
いて会談。「看板の設置、大門の修理、鍵の取り付
けを懇願する。18年間の努力が全く無になった。林
先生があの現状を見たら何とおっしゃるか。あのま
までは、たちまち資源圃はだめになる。新疆農業大
学や北京農業大学や我々日本の研究者の研究の場と
して絶対残してほしい。人を入れても車は入らない
ようにしたい、車を入れたら終わりだ。管理人とし
て許正さんと刁さんを交代で2週間に1回とか見に
来るように推薦して欲しい。」と頼む。ピーリード
ン副院長は、「18年間の支援に感謝します。頭の中
では大石先生の気持ちはよくわかる。許正さんのよ
うな研究熱心な人がいたから、資源圃は今まで守ら
れてきた。上の人に報告するけれど、どうにもなら
ないかもしれない。体制を変えてゆかなければなら
ない。林先生からも話してもらうしかない。」「上
の人とは?」「州の偉い人で林業局の局長や、書記
の朱新生さんなどで、林業全般に関する権力のある
人達の考え方次第だ。科学研究院の力ではどうにも
ならない。一つは野果林資源に興味がないのが問題
であり、もう一つは経費の問題でもある。一番の問
題は、管理する人が居なくなったことです。6人が
貼り付けられ体制が整ったように見えるが、資源圃
に常駐者が不在で、通いで管理する限り放任と同じ
だからである。林培鈞先生と一緒に一からやり直し
だ。」
14:00から牛正夫伊犁州副州長の招待による
昼食会、出席者:牛正夫副州長、伊犁州林業局朱新
生書記、陳雲華調研員、ピリードン副院長、許正副
「リンゴの起源と伝播」のプロジェクト
5月5日 11:30 生態地理研究所の陳曦所
長と会談。1月の静岡大学での大石先生の発表を聞
いて、植物の関係者と話合い、研究所の所長其金か
ら「野生リンゴの起源と伝播」に、科学研究費とし
て拠出し今年から実施する。100人計画の中から
2名が参加することになった。一人は遺伝子関係の
研究者、もう一人は北京の植物研究所の張明理先生
をヘッドとして、ドクター1~2人、ポスドク1人
、マスター2人、に大石先生、閻先生さんを加えて
進める。やることの早さにびっくり仰天。13:0
0~14:10 陳曦所長による昼食会。
弁公室招待の夕食会
今、新疆大学タシブラット副学長の教え子の馬媛
さん(2005年タシブラットさんの研究室でお会
いしている)が、ポスドクで生態与地理研究所に来
ている。この人も加わる可能性が大きい。北京政府
が新疆工作会議を作って新疆はますます発展する。
夜、トルファンから帰った黒田康彦、鈴木富さんと
一緒に、昨日のウルムチ一の屋台で夕食。
5月6日 鈴木富、黒田康彦さんは、鮮学昌さん
と天池へ。大石は閻国栄先生と生態地理研究所との
プロジェクトの進め方について打ち合わせ。①現在
の野生リンゴの分布図を作る。②花の時期にセスナ
4
機または無人機を飛ばして航空写真を撮る。③カザ
フ、キルギスにカウンターパートを探して、研究の
一部を任せる。④地形群落、地理群落。地上調査と
航空写真を合わせる。地上の測定個体にはペンキで
マーキングする。中青旅の李新革さんが部屋に来て
、「今年限りの特典であるが、日本からウルムチか
らホータン、カシュガル、クチャのいずれかの都市
までの往復航空券は、南方航空を使えば、85,0
00円という超格安の航空運賃で来られる」との情
報を得る。ただし、伊寧は入っていない。
5月7日 9:50ウルムチ発、12:55北京
着。成田へ向かう黒田康彦さんと北京で別れる。
17:35北京発、21:15中部空港着。
22:00静鉄バスにて0:30静岡着。
天山野生動植物保護地の植林に参加して
黒田康彦
、
西域生態系保全フォーラムがウルムチ市森林局及
びウルムチ市野生動植物保護協会と協力して行う新
疆天山野生動物園の植林に参加しました。
新疆農大の副校長先生らや新疆人民政府外事部の
高官らの熱烈な歓迎と深夜におよぶ宴会に同席し、
大石先生の永年に亘る当地区への貢献のほど身をも
って感じました。
当日は好天のもとタマリスクの幼木の植林を行い
ました(と言っても、すでに準備がなされており我
々は溝に植えられた幼木に土をかけるだけでした
が)
その後はイーニン市、新源県の関係機関との会議
のある大石先生たちと別行動で、北新疆の一般のツ
アーでは行けない地域の観光に出かけました。
どこまでも続く大放牧地、広大な農地、水田や温
室群をみると、中国の底知れぬ可能性を感じました
。
食事も新鮮で豊富な野菜料理、卵料理、鳥・羊の
肉料理、良質な小麦でつくるナンや饅頭がおいしく
四名日本友人在天山野生
2010-04-29 12:12:00
来源:
食べすぎで1.6kgほど太って帰ってきました。
ウイグル族、回族、カザフ族らの少数民族が多く
北京や上海とは全く異なる、どこか中東の地にでも
いるような独特な街の雰囲気でした。昨年のウイグ
ル族の騒乱事件の影響で国内・海外からの観光客は
減っているようですが、今は平穏で、一人で市場な
どを歩き廻り、街頭の麻雀を見物していてもなんの
心配も要りませんでした。
大草原に暮らし、一日中羊や牛と共に生活し、季
節の変化を直に感じ、厳しくとも、美しい大自然の
中で悠々と生きるカザフ族らの放牧民を見ると、日
本で競争世界の中で汲々と生きてきた自分と比べ、
どちらが本当の人間として幸せなのか考えさせられ
る旅でした。
大石先生、廿日出先生、閻先生、ウルムチ・イー
ニン・新源の関係機関の方々、鈴木さんガイドの李
さん、鮮さんに感謝申し上げます。
物
心网(
下
木
)
跟
柳百余
0 条 手机看新
4月27日,日本西域生 系保全研究会的四名会 来到新疆天山野生 物
了一百多
柳。
,在
内 光区
下
据日本西域生 系保全研究会理事 、静
日中友好 会副会 、静 大学名誉教授大石惇
介 ,新疆自然生
境脆弱,受到全世界的 注。位于
木
南方的新疆天山野生 物 保
区占地75平方公里,植被稀疏, 市区的 境有很大影 ,在 里 展植 活 ,不 可以防
固沙, 提高市民的 化意 、
区域生 安全意 、改善 境意 具有重要意 。
中国新疆天山野生 植物保 地 化 目由日本“
特定非 利活 法人— — 西域生 系保全
研究会”提出申 , 得了日本“
(社)国土 化推 机构”、“ 色募集金”的 助,今年
是其第三次在此开展植
化活 ,日本“
(社)国土 化推 机构”是援助促 国土 化
及相关的国
力事 的社 法人机构,
已在中国河南 州等地开展了多年的植 活
。已 72 的大石惇表示,“
今年秋天我
将来 里植 ,把
工作 期开展下去
。”( 者
源)
新疆ウイグル旅行
鈴木 冨
今回、NPOの関係で大石先生とお近かずきになり
先生のおかげで実現することが出来た。
、中国西端の新疆ウイグル自治区に行く機会を得た
まず実感したのはその広大さでる。中国は日本の
。中国には仕事、観光も併せて数回訪問し、シルク
26倍の面積を有し、タクラマカン砂漠だけで日本
ロードにも是非訪れたいと思っていたが、
のそれと同等。又、ウルムチからイーニンまで70
5
0kmをバスで12時間走った等、日本の場合広大
となって、ウルムチよりも春が早い様子で心地良か
さを語る時、北海道が例に出されるが、その比では
った。やや標高の高い所では、野生のスモモやアン
ない。時折遠くに山は見えるものの、平坦かつ広大
ズ、リンゴ等が花盛りで、旅行者にとっては正に桃
な農地、荒れ地が続き、時折羊、馬、牛、ラクダま
源郷の感じを受けた。花を見ても、木肌を見ても日
でが見られ、集落が点在していた。
本にある栽培品を見ている感覚では木の種類を判別
ウルムチでの初日は、好天の中、植樹のセレモニ
できない。野生リンゴの花は大変美しく、葉も小さ
ーがあり、現地の人達と荒涼とした土地にタマリス
く花木としての価値は高いように感じた。多分、ス
ク(ギョリュウ科)の苗を植えた。雨は殆ど降らず
モモ類も探索すれば庭木としても、切り枝としても
、その上土壌は塩類集積で白くなっているほどにP
価値の高いものが見つかる可能性が高いと考えられ
Hが高いとのことで、育つ樹種も限られるそうであ
た。
る。以前植栽された木は順当に育っており、あちこ
食事については、有名なシシカバブやナンも数度
ちで植林している姿を目にしながら、乾いた荒地へ
食し、高級レストランから屋台まで経験した。相対
の植林の大変さを実感した。
的には油を多く使用した料理が多かったが、辛さ、
ウルムチの緯度は北海道の旭川とほぼ同じで、そ
香辛料共に違和感なく美味しくいただけた。小麦の
の上標高800mと言うことで、寒さを心配したも
産地とのことで、麺類も細いものから太いものまで
のの、4月26日、飛行機から降りると出発した時
多種多様。
の静岡市より暖かく20度を超えており、風もなく
ウルムチは220万もの人が暮らす大都会である
穏やかな日であった。しかしそれまでは寒かったと
が、農村部は日干し煉瓦の家が多い。
のことで、ポプラをはじめとする落葉広葉樹は芽吹
雨が年間300mm以下と少ないこともあり、屋根
いておらず、常緑針葉樹の殆ど無い町は、きわめて
の傾斜は緩く、庇も樋も無い。全体に粗末な感じで
殺風景な感じを受け、緑の価値を見なおした。ウル
、廃屋か否か一見しただけでは見当が付かない家が
ムチは冬期-20度にもなり土壌もアルカリが強い
多かった。そこかしこにレジ袋が散乱し、それらが
とのことから、針葉樹は生育しにくいとか。しかし
木の枝等に掛かり、更にペットボトルの投げ捨て、
、5月7日の帰国時には、ポプラ等がかなり展葉し
日本人にとって最も気がかりなトイレ事情は、特に
緑を心地よく感じた。日本は早春から初夏にかけて
女性には厳しいと思われた。
長い春だが、新疆では春がきわめて短くすぐに夏に
今回は現地の関係者にも大変親切な対応を受け、
なるようである。
ガイドは日本人ではと思われるほど日本語が流暢で
芽吹きが始まった草原で、羊が草を食べている風
あった。5月の訪問で、芽吹きの草原が美しかった
景はのどかで美しく、まるで絵のようであるが、そ
が、この地域は雨が少ないことから作物が無農薬で
の反面殆どの山には木が全くなく荒涼として正に沙
栽培でき果物は大変美味しいとのこと。次回は是非
漠である。地下には石油や天然ガス、石炭等資源は
、新疆の実りの秋、果物の秋を体験したいと願って
多いとのことだが、不毛の地では問題である。5000
~7000mの万年雪を頂く山脈があり、比較的水に恵
まれているようであるが、全ての緑の育成には灌漑
が不可欠である。更に耕地、植林を拡大しようとし
ても、水の確保は難しいと思われるが、今後どのよ
うに発展するのであろうか。
大石先生の根拠地であるイーニン地区は比較的降
水量も多く、土地も豊かで新彊の中では最も農業が
いる。
盛んであるとのこと。ポプラを初め全ての木々が緑
ナンとミルク茶を馳走になったカザフ族一家
6
2010年夏の新疆訪問
塔城地区学術調査
時 期:2010年6月24日~7月6日
参加者:隊 長:大石 惇 静岡大学農学部名誉教授
副隊長:近田文弘 国立科学博物館名誉研究員
鈴木紳弌 静岡大学客員教授
大庭俊司 元静岡県立農業高校教諭
河邊誠一郎 倉敷芸術大学教授
池ヶ谷のり子 河村式椎茸研究所研究員
坂本佳奈 料理研究家
中国側 閻 国栄 天津農業大学園芸学部教授
馬 媛 新疆大学資源与環境科学学院助教
張 宏祥 中国科学院新疆生態与地理研究所ドクターコース2年
李 新革 中青旅新疆国際旅行社日本部長
中国科学院新疆生態与地理研究所、新疆大学
、新疆農業大学訪問
6月25日 (金)ウルムチ
10:30 中国科学院新疆生態与地理研究所の
標本館見学。見事な展示で一見の価値あり。
13:00~13:50 中国科学院新疆生態与
地理研究所訪問。陳曦所長は職員の採用、博士課程
の審査等で忙しく劉文江(Liu W enjiang)科研計画処
長、外事弁公室の任新軍(R en)氏と張明理(陝西省
出身、元北京植物研究所所長、今回のプロジェクト
のDNA分析の責任者)と会談。途中から張立運
(植物生態学、閻先生の瀋陽の博士課程の時の恩
師)とも話し合う。
14:35~16:30 新疆大学訪問
焦健(Jiao Jianチャオ・チエン)国際交流所長と
昼食会。昼食会後、塔西甫拉提(タシプラット)副
学長と会談
新疆農業大学にてアブラティ副校長と任・張さん
20:00~22:00 「全飛徳」での夕食会
(新疆生態与地理研究所のご招待による)陳曦所長
出席。生物多様性研究の張元明(Z ang Y uanm ing)、
姚銀安(ヨンインアンY ao Y inan)両氏も出席。お
金の使い道は、大石先生と閻先生に任せる。張明理
先生は今回南疆に出張で行けないが、馬媛さんと張
宏祥さんの2人を塔城と伊犁の調査につける。ジー
プ1台も出しましょう。G P S はあまり使わないよう
に。採取資料は検閲を受けてから。厚遇に感謝。
和田(ホータン)地区の巨木を訪ねて
6月26日(土)
ウルムチ⇒ホータン
新疆大学にてタシブラット副校長とともに
17:00~18:00 新疆農業大学訪問
阿不来提(アブラティ)副学長、張永平処長、外
事弁公室任新軍氏らと会談。スライドによる新疆農
業大学の研究内容、施設などの説明を受ける。
ホータンの葡萄王
7
ホータン空港で、ガイドのアイラート・ジャゴド
ウンさん(和田師範大学数学部)の出迎えをうける
。
11:00~11:30 「葡萄王」(1986
年和田地区重点文物保護単位)見学。洛浦(:ロッ
プ)県杭桂(ハングイ)郷の民家{阿不来斯・艾合
実合実提(アブラス・アハマティ)}の家の庭にあ
る樹齢200年以上の古葡萄樹(品種:マーネイ
ズ)緑色の果皮 1000kg/年の収穫。
sp.)見学 根際直径3,5m、幹周11m。
17:15 ホータン博物館見学。
18:00 桑の繊維を利用した紙すきを見学。
0:15ホータン空港を飛び立つ、1:35ウル
ムチ空港着、2:15 環球ホテル着。
行ったことのない塔城地区学術調査
6月28日(月) ウルムチ⇒額敏
中国科学院生態与地理研究所のジープを加えた4
台のジープに分乗して、カラマイ経由で額敏に向か
う。1955年に発見され発達したカラマイ市は、
ウイグル語で「黒い油」の意味。カラマイまでは、
ジュンガル盆地の縁を走る沙漠の道路で、途中には
胡楊林も見える。カラマイ市からは、砂の混じった
風によって削られ、さまざまな奇妙な形をした岩山
を横断し、赤茶色の鉄分を多く含んだ岩の街、鉄鉱
沟を過ぎると額敏県に入る。ここからは、雪をいた
だいた斉吾尓喀葉尓(チョウルカヨル)山が目の前
に横たわり、遠くに塔尓巴哈台(タルパハタイ)山
の山波がかすかに見える。広い草原でここは新疆で
も有数の風の強いところで、数において達坂城の風
力発電所群には及ばないものの、200本くらいの
風車が回っていて、建設を待つ風車が横になって並
べられていた。
ホータンの千里葡萄長廊
15:40~「無花果王」見学。和田県拉依喀郷
政府后院内にある。1507年に植えたイチジク樹
面積40× 60m、樹高約6m、冠径25~28m
、2万個/年収穫。1年3回結果、冬の最低気温は
氷点下5℃くらい。冬は凍害を避けるために枝を土
中に埋める。冬季の剪定はしない。核桃の大木も何
本かみられる。
16:50~「核桃王」見学。1362年に植え
たカシグルミ(Juglans regia)
樹高15m。根際直
径1,5m、胸径2,2m、 枝張り20m、樹冠
約22m。年間5~6千個の果実。
老風口の風車群
ところどころ停車しては、近田先生の解説による
植物物語に耳を傾ける。
18:40額敏の街に到着。23時になってもま
だ明るい。
6月29日(火)額敏周辺調査
豪華に4台のジープがあるので、それぞれの調査
や好みによって、ジープを分けて行動することにす
る。今日は2台,2台に分けて行動する。
○野果林組(大石、池ヶ谷のり子、閻国栄、馬媛
ホータンの核桃王
6月27日(日)ホータン⇒ウルムチ
ガイドのアイラート・シャゴドンさんは、大石が
名古屋で、1987年学術調査報告書「西域一万公
里」を手渡した人だった。11年ぶりの偶然の再会
。
11:20~11:50 墨玉(カラカシュ)県
の樹齢1460年「梧桐樹」プラタナス(Platanus
、
張
8
張宏祥)は額敏野果林へ
○高山植物・昆虫組(近田文弘、大庭俊司、川邉
誠一郎、坂本佳奈、李新革)は、塔尓巴哈台山へ可
能な限り近づき可能なところまで登る。
野果林組は、斉吾尓喀葉尓山の北西山麓の谷に入
る。Malus
sieversiiが散在しているが、「苹果巣
蛾」(リンゴスガ Hyponomeuta
orientalis
生によると、この谷の樹木は、野苹果、ジュンガル
山楂、ドロノキ、白樺の仲間、ヒョウタンボク、ベ
リベリス、サビナ・シベリクムの7種のみだったと
。
16:00 更に谷を変えて水磨石(シュイモー
シ) に向かう。この谷も「苹果巣蛾」による食害
のひどさは同じであった。ヘリコプターによる空中
散布以外にはないのだろうか。
7月1日(木) 額敏⇒托里周辺調査⇒裕民
巴尓魯克(パルルク)山の東山麓の托里県老風口
果子沟に向かう。野生リンゴの他に野生の巴旦杏
(アーモンド)の群生も見られる。タチアオイの原
種やマオウ、ノバラ、シソ科の花が美しい。約4時
間それぞれに植物や蝶を追いかけて過ごす。
Zagulajev ) による食害がひどいのに驚く。ほとん
どの葉が食いつく
リンゴスガ[Hyponomeura orientalis Zagulajev]
の食害
最近の多雨増水でえぐられ倒れる野生リンゴ樹
リンゴスガによって食いつくされ葉が茶色に変色
した野生リンゴ樹
され、木全体が茶色に変色し、遠目にもそれとわか
る。薬剤散布のし易い尾根部分は比較的おかされて
ないが、手の届かない谷筋がひどい状態だ。「新彊
政府から10万元の資金提供があたったが、虫の発
生に間に合わなかった。4月末に資金があればと悔
やまれる。」谷全体の保護は絶望的に思える。
森林保護所には、夏の間常駐者を置いている。冬
は例年1mの雪(今冬は2m)が積り常駐は難しい
。等高線沿いに東に歩いて、野果林の群落がどのあ
たりまで生息しているのか確認する。野果林の存在
範囲をGPSで測定しながら、葉のサンプリングを
行う。
高山植物・昆虫組は、行けども行けども広い農地
ばかりで、高山植物、蝶ともに大した収穫は無かっ
たとのこと。計画者としての私は、行ったことのな
い塔城地区で、道路地図のような精密でない地図を
頼りに、ルートを決めたことに「すまないことをし
てしまった」と反省しきり。
6月30日(水)額敏周辺調査
全員で昨日の野果林組の隣の谷、霍吉尓特(フォ
ーチャートウ)河谷野果林へ向かう。
野猪沟(谷)に入って30分くらい行ったところ
で、洪水で道路がえぐられジープが通行不能。歩い
て上流に向かう。色とりどりの草花が咲き乱れ、写
真を撮り名前を覚えながら飽きることなし。近田先
野生の巴旦杏(アーモンド)の果実
16:15~16:40 欧亞(ユーラシア)大
陸の中心地を訪れる。アジアの中心地がウルムチ市
の南にあり、新疆に中心地が2つあることになり、
新疆は真の意味でユーラシアとアジアの真ん中。
17:30 裕民(ユーミン)の街の「裕民賓
館」に到着。ところが、ホテルのロビーで約2時間
、公安の検査待ち。旅券のコピーを要求されたり、
公安から入れ替わり係官が来て、李新革さんと問答
した後、ようやく宿泊許可が出る。部屋に入ってほ
っとしたところで、係官による全員のスーツケース
を開けて荷物検査。G P S は引き出しに隠す。地図類
、書物、電子機器を入念に検査。日本人の宿泊はは
9
じめてとのこと。外国人が珍しくて、検査の訓練で
もしているのか?などの冗談が飛び出す。20年前
の新疆にタイムスリップしたような感じ。泊めても
らえただけましか。
7月2日(金)裕民⇒額敏⇒塔城
新疆大学の馬媛さんと生態地理研の張宏祥さんは
、これから先、野果林の調査はなく、生態与地理研
究所でジープを使いたいとの伝令で、ジープでウル
ムチに帰ることになった。
巴尓魯克( バルルーク)山の西側にある野巴旦杏
林自然保護区に行く予定であったが、洪水で道がズ
タズタで通行不能ということで再度挑戦することに
する。塔城(ターチョン)への道も通行不能で直接
行けず、額敏経由で行かねばならないとのこと。ジ
ープならかなりのところは行ける筈なのに、半信半
疑? 強行突破も考えたがまあ仕方なく、途中紅花
畑や路端の花など見ながら塔城に向かう。
17:20 時間が余ってカザフスタンとの国境
の巴克図口岸に行こうとするが、武装警官による検
査があり、カザフスタンに出国する者以外は、通行
禁止ということで引き返す。昨年春は、何の問題も
なく国境まで行くことができたのに、昨年の7月5日
にウルムチ暴動が、起こったということで、国境近
くの警戒が特に厳しいのかもしれない。時期が悪か
ったようだ。市内の屋台で夕食。
7月3日(土)塔城周辺調査
喀浪古尓(カラ
ングア)河上流の水庫(ダム)
塔城の公安局から「カラングアダムの近くから奥
には行かないように」と李さんに話があったらしい
。それは、李新革さんの携帯に公安から連絡が届く
範囲から出ないようにということらしかった。知ら
ぬが仏でダムからさらに上り、工事中でこれ以上先
に行けないところで、車を止めて約2時間半周りを
散策する。植物の探索には種類も多くかなり良かっ
たが、蝶の採取には不満足の様子であった。ダム近
くまで降りてきて、ナンとトマトとキュウリの遅い
昼食をとる。
17:15「塔城西部大厦」ホテルに到着。ダム
付近に居る筈の李新革さんに公安が携帯をかけたが
、通じなかったとかで、裕民に続いて再び全員のス
ーツケースの検査があった。一人一人、冊子類、地
図類、名刺帳、写したカメラの画像を調べる。人に
よっては軽い検査で済んだ人もいたようだが、約2 月
時間後やっと終わった。公安にはほんとに辟易する
。いやになってもう一日塔城に泊る予定であったが
、明日脱出をもくろむ。カラマイに宿泊の予約をお ル
願いする。明日は、岩場の蝶をめざして、最初の日 問
に野果林組が行った額敏の野果林に立ち寄り、カラ
マイへ向かうこととする。蝶の探索組には最後のチ
ャンスである。目的の蝶に会えるかどうか。
7月4日(日) 塔城⇒額敏野果林調査⇒カラマイ
12:30 額敏野果林の森林保護所の建物に到
着。保護所の裏にある岩山に登る。野果林の生息す
る最高標高を確かめるために。額敏野果林の最も高
い場所に存在するMalusu sieversii は 北緯46度2
1分46秒、東経84度00分28秒、標高157
10
8mだった。蝶組もたった1匹だったが、狙ってい
た蝶を捕獲出来て満足そうであった。
16:00 森林保護所を後にしてカラマイに向
かう。風力発電風車群のところで、道路工事を避け
て、草原に入るが2号車がぬかるみにはまり、引っ
張り上げて脱出するのに30分かかる。克拉瑪依
(カラマイ)まで93km のところで、スコールの
ような夕立に会う。土沙漠の土壌は、雨も滲み込ま
ず、平らなところは一面海のようになり、傾斜地は
地表を濁流が流れる。沙漠には優しい雨が望ましい
。
7月5日(月) カラマイ⇒ジュンガル盆地調査⇒
ウルムチ
ジュンガル盆地を東に横切り、近田先生の道路沿
いの沙漠植物の講義を聞きながら、凸凹道をはしる
。タマリスク、ハロキシロン、カリゴヌムなどの耐
塩性植物、灌木と喬木の中間の性質を、1本の木に
すべての形態を合わせ持つ胡楊など沙漠植物のオン
パレード。真っ白で眩ゆいばかりの塩湖、その中に
緑の島、塩生植物の逞しさに圧倒される。
塩湖の中の緑の島(ジュンガル盆地内)
18:15 環球大酒店到着。
20:00 街でお別れの夕食 伊犁白酒 小5
本、ビール6本あける。今回の旅はいろいろハプニ
ングがあったが、皆ある程度の満足はしてくれた様
子。新彊の大自然が、些細なゴタゴタを包み込んで
、満足させてくれたのだろう。今日は暴動から1年
、ウルムチの街は、武装警官の隊列が目立った程度
で、特になにもなかった。
7月6日(火)ウルムチ市内観光 ウルムチ⇒瀋陽
で
11:00 大石、池ヶ谷さん、閻先生はホ
で休息。他の皆さんは博物館見学、紅山、書店
13:20 環球ホテルから翼龍大酒店に李さん
の車で大石、池ヶ谷さん、閻先生が移動
15:00 翼龍大酒店で皆と最後の昼食。近田
先生は夜のフライトにそなえて18:00まで昼寝
16:00~17:10 「北国春市場」「干鮮
果品交易区」で干果物のお土産など購入
18:20 ウルムチ空港到着
19:55 中国南方航空 CZ6492便で大石
以外の6名は瀋陽へ
22:20~23:10 蘭州(ランチョウ)空
港着発。
7月7日 (水)瀋陽⇒名古屋
1:15 瀋陽(シェンヤン) 空港到着
3:00 南方航空指定以外のホテル到着
充分睡眠がとれずきつい旅だった。
8:35
CZ697便にて瀋陽出発
11:40 中部国際空港に到着
12:00 空港内で昼食後解散
伊犁地区学術調査
時 期:2010年7月6日~7月15日
参加者:隊 長 大石 惇 静岡大学農学部名誉教授
副隊長 閻 国栄 天津農業大学園芸学部教授
林 培鈞 元伊犁地区園芸科学研究所所長
許 正
伊犁州林業科学研究院 経済林研究所副所長
陳 興貽 (株)J&C貿易 代表取締役
馬 媛
新疆大学資源与環境科学学院助教
張 宏祥 中国科学院新疆生態与地理研究所ドクターコース2年
謝 慶
中国科学院新疆生態与地理研究所マスターコース1年
新疆交流隊
上利博規 静岡大学人文学部教授、アジア研究センター長
李 新革 中青旅新疆国際旅行社日本部長
新メンバーとの合流と新疆大学人文学院訪問
7月6日(火)ウルムチ
23:00 陳興貽さんが翼竜大酒店に到着
1:00 静岡大学人文学部上利先生が翼竜大酒店
に到着
7月7日(水)ウルムチ
13:30~15:30 外事弁公室招待の日本料
理「平政」で昼食会
18:25~18:00 新疆大学人文博物館見学
18:30~19:30 新疆大学人文学部会議室
で会談。
20:00~21:00 屋台でのシシカバブー中
心の夕食
伊犁地区の資源圃と野苹果王の状況
野果林研究に関わる初代、2代、3代
7月8日 (木)大石と閻国栄先生は伊寧へ
上利先生と李新革さんはカシュガルへ
7;20 ウルムチ空港着
8:20~9:30 ウルムチ発~イーニン着(C
Z6821)
11:45~15:10 伊寧賓館近くの喫茶店の
一室で野果林に関しての勉強会
野果林研究者の林培鈞教授から、第2代継承者の
閻国栄教授、許正副所長、第3代継承者の馬媛、張
宏祥に、過去の野果林の様子、今まで行ってきたこ
と、今後の取り組みなど種々伝授(大石同席)。こ
のような機会が持てたことは、継続という意味にお
いて非常に有意義であった。明日、林培鈞先生もと
もに資源圃から「野苹果王」まで行くことにする。
7月9日(金) 伊寧⇒新源
9:45~12:50 イーニン発~新源着。李新
革さんに頼んだ通行証には、新源に宿泊できないこ
とになっていたが、新源貴賓館の総経理の判断で好
意的に泊めてくれる事になった。街の中をあまりふ
らつかない、街では日本語をなるべく使わないとい
う条件で。(旅行会社から申請して受ける通行証は
この辺が限界か)。何だか1992年に初めて資源
圃を訪問した時に逆戻りしたようだ。
14:45~15;15 伊寧市発~資源圃着
県道から資源圃に入る入口の「野果林風景区」の
案内看板は取り外され、無くなっていた。野果林改
良場のはずれの分岐点に、新しく「野果林風景区」
11
と左の矢印が示され、直進しないようには改善され
ていた。しかし、資源圃への方向にも「原生態旅遊
遊区」という新しい案内板も付けられていた。その
下に、地址:伊犁州野生保護区、電話:13899
757706,13565212596,1334
815031と書かれており、何を意図した携帯電
話番号か、電話の持ち主は誰なのだろうか気になる
。
ここに電話すれば、鍵を開けて呉れて、いつでも誰
でも入れるということだろうか。
これからが正念場かもしれない。
馬媛さんと張宏祥さんと謝慶さんは、許正さんの案
内で、資源圃内でのサンプリングに忙しい。
シンクイムシ(リンゴノナガキクイムシAgtillus
mali Matsumura. Fruit moth)の被害が目立ち、被
害が広がっていると感じた。枝の表皮を剥いて、中
に生息している幼虫の写真を撮る。
20:40 雷が鳴り、雨が降りはじめる。明日
「野苹果王」に行けるだろうか心配になる。
シンクイムシの幼虫
付け替えられた看板、直進が資源圃
7月10日(土) 雨 新源⇒ゴンネイス林場
10:40 雨が激しく、八連から「野苹果王」に
行くのを諦めて、那拉提観光とする。途中、草花の
写真を撮りながら、ゴンネイス河を溯る。
15:00 ゴンネイス林場の手前で、巴輪台に抜
ける車が通行止めになって、大型トレーラーと乗用
車など50~60台が、身動きできない状態で大渋
滞。高速道路の建設中で、いつ通れるようになるか
わからないという。引き返すことにする。烏拉斯台
(ウラスタイ)から巴音布魯克(パーインブルク)
の道は、来年中に主な部分は完成するが、開通予定
は再来年になっているらしい。
蜂蜜 3リットル(4kg)を130元で買う。
次第に値上がりしてきている。
7月11日(日)夜中雨
新源⇒巨木⇒伊寧
9:30 雨が上がったが、道路がぬかるんで行け
ないかもしれないと不安は残るが、日程の余裕は今
日しかない。八連で調査とサンプリングを行いなが
ら道路が乾くのを待って、午後から「野苹果王」に
向けて登ることにして出発する。
12:00~14:30 八連では野生リンゴのシ
ンクイムシの被害は余り見られない。ただ、伊犁地
区で最初にシンクイムシの被害が出たのはこの地域
と聞く。樹齢100~150年くらいの樹もみられ
、昔このあたり一面が野生リンゴで覆われていたこ
とを思わせる雰囲気が漂っている。日差しが強く風
もある。北京から病虫害の専門家が、10数人伊犁
地区に入っており、今日、 留県の野核桃自然保護
区を調べているという。帰りに会えたら野苹果の被
害の程度も説明しよう。
14:45 八連から「野苹果王」に向けて出発。
人や車や羊が頻繁に通るためか、春よりは凹みも少
なく道路はかなりしまって通り易くなっていた。天
山山脈の主脈の方には、黒い雲が立ち込め雨が近づ
春壊されていた大門の扉と看板も修復されていた
今春お願いしておいた大門は修理されて、新しい大
きな鍵も付いていた。
しかし、我々が中に入って、大門を開けたままに
していたら、一般の車が2台入ってきた。10~1
5分くらいで帰って行ったが、原生態旅遊区という
言葉から、林業局の頭の中に、資源圃も観光施設の
一つという考え方は変わらないと感じられ、今後も
注意して見守る必要がある。
今年の春に比べて、研究基地としての体裁はなん
とか保たれているようだが、まだまだ油断はできな
い。
12
とで、資源圃内で野生リンゴの植林をやりましょう
。「野苹果王」の場所は、天候と道路に左右されて
、行きにくいし、気温が低いし実験がしにくいとこ
ろで、しばらくは、あの状態で見守ることにしたい
。
資源圃内に掘られている2つの穴は、自治区の農
業局の科研費で、200平方メートルの「フィール
ド観察施設」を建てるための、土壌調査用の穴との
ことである。今後、林業局と農業局がいかに理解し
合い連携を強めて、野果林や資源圃を保護してゆく
かが鍵になる。
今夜、19:30から林先生が、林業科学研究院
に顧問として呼ばれている。資源圃の重要性と存続
を強く述べていただくようにお願いする。
19:30~20:25 伊寧発~ウルムチ着(C
Z6828)。伊寧空港では、安全検査で靴も脱が
され、バンドも外させられて厳しい警戒体制。
いて来るのがわかり、気は焦る。
15:20~15:40「野苹果王」周辺を写真撮
影。柵の中は草が生え、回復の兆しが見える。
以前の道路にも草が生え始めた
道だったところにも、背丈の低い草が生え始めてい
た。ただ、柵と道路の間が、家畜の通り道になって
、
草が1本もない裸地状態になっていて、やがて崩れ
て行くかもしれない新たな崩壊の心配が出てきた。
新疆大学、中国科学院生態与地理研究所訪問
7月13日(火)ウルムチ
16:00~17:00 大石、上利先生、李新
革さんが、新彊大学国際合作処長焦健さんと会う。
焦さんは新疆大学学長から、静岡大学に3カ月くら
いの研修がOKとの許可が出ている。静岡大学に来
られれば、交流は一気に進むだろう。ただ、静岡大
学が研究者でない行政官のような方の、研究者待遇
の受け入れが可能かどうかの問題がある。日本に帰
ってから学長とも相談して対処することにする。日
本への目的は、「日本文化研究」、「日中分化比
較」といったところ。時期としては、9~12月ご
ろが最適。
「野苹果王」の柵内の草生の回復と柵外の
裸地化
過放牧の怖さと保護の難しさを思い知らされた。低
い雲が近づいてきて急に雨が降り出し、早々に退却
する。でも、柵を張り巡らせてから、1年半ぶりに
訪れることが出来て、その後の状況がはっきり捕ら
えられたことは良かった。
20:50 伊寧賓館着。馬媛さんは仕事が忙しく
、今夜、伊寧から列車でウルムチへ帰る予定であっ
たが、切符が取れず、23:00の飛行機で帰るこ
とになった。
7月12日(月) 伊寧⇒ウルムチ
14:00~16:00 林培鈞教授と閻国栄教
授と許正副所長と大石が打ち合わせを行う。この3
日間は、今までの努力が中国科学院生態与地理研究
所にみとめられ成功だった。初代、2代目、3代目
と野果林研究が、継続できる希望が見えてきた。国
土緑化推進機構の申請が当たったら、新源森林局の
張来全書記、林培鈞先生、閻国栄教授、許正副所長
スーパーの前で夏休みの家庭教師募集の新疆大生
16:00~20:00 中国科学院新疆生態与
地理研究所 陳曦所長と閻国栄教授の単独会談とな
る。(面会時間が新疆大学とかちあって、大石は上
利先生と新疆大学へ向かったため)
陳曦所長との会談の要約 1、プロジェクトのタイ
トルは「中央アジア野果林空間分布と伝搬機制」で
今年と来年の2年間。2、研究所としては、共同研
13
究の連絡先は、陳所長と喬建芳さんを通してやって
ください。3、その後の大きい研究費が当たったら
、林培鈞先生も顧問として含めて考えるが、今は生
態地理研と静岡大学との共同研究である。4、再来
年に北京の中国科学院に、100万元くらいの規模
の申請をして当たるように頑張る。5、計画書の作
成は、大石先生と相談して閻国栄教授にお願いする
。6、今回の研究は、一つは野生りんごの分布の範
囲(地形図に合わせて現場調査)、衛星地図にあわ
せて標高900~2、000mの山を中心に。二つ
目は、分子生物学の分野で、ポピュレーションにつ
いては張明理先生に任せる。7、来年か再来年は、
カザフスタンとキルギスタンのサンプルを採取しよ
う。隣国で調査するのは、大変なのでカザフスタン
やキルギスタンの研究所に任せてサンプルを得る方
法を考えたい。8、来年も是非来て下さい。花の時
期は航空写真にはもってこいの時期で、後は8月の
果実の時期を中心に考えましょう。無人の飛行機を
6台持っているので飛ばして行こう。
7月14日 (水)ウルムチ⇒大連
12:00~17:30 ウルムチ発、石河庄経
由、大連空港着。上利先生と一緒に。18:00
南方航空の手配で、航空賓館。
7月15日 (木)大連⇒静岡
8:05~11:15 大連発~名古屋着。
生態与地理研究所の喬建芳さんと馬媛さんと
上利博規先生と(陳曦所長は公用のため欠席)
静大人文学部上利博規教授の新疆訪問日程
7月6日:名古屋12:15 CZ620 大連13:45
7月11日:トルファン、交川古城、カレーズ
大連18:00 C Z 6954 ウルムチ23:55
夜 ウイグル族歌舞団
トルファン泊
ウルムチ泊
7月12日:高昌古城、アスターナ古墳群
7月7日:外事弁公室,新疆大学人文学院
ベゼクリク千佛洞、火焔山、ぶどう園
ウルムチ泊
蘇公塔、バザール
トルファン泊
7月8日:ウルムチ8:50 CZ6803 喀什10:30
7月13日:午前 ウルムチへ
カラクリ湖往復
カシュガル泊
午後 新疆大学、博物館
ウルムチ泊
7月9日:イエテイガール清真寺、職人街、旧市街
7月14日:ウルムチ12:00 CZ6953 大連17:00
香妃墓、バザール
カシュガル泊
大連泊
7月10日:モル仏塔、高台民居、
7月15日:大連 8:05 CZ619 名古屋11:15
午後空路ウルムチへ
ウルムチ泊
に分け入って調査をし、昆虫・植物の採集を終えて
、
ダイコウアンレイ(大公安令)の探索
川邊誠一郎
中国訪問の3度目は捜索された旅に
この地は未開放地区である! 日本人が我々に許
しもなくここに宿泊する事は認められない!(おま
えらはスパイではないのか??)
平成22年6月から7月にかけての2週間、天山
山脈の北西端に位置する山岳地帯を歩いた。大石静
岡大学名誉教授や同行の親友大庭とともに、新疆北
西部最奥地・カザフスタンとの国境地帯の調査であ
る。
炎天下、乾燥した岩山によじ登り、山脈の奥深く
やっとのことでたどり着いた裕民のホテルには、公
安官が3名待ち構えていた。早く旅装を解き、汗と
ホコリを流したい。そんな思いも空しく、ホテルの
ロビーに延々と待たされ、ガイドと公安官との長い
やり取りが続いた。
初の日本人のご一行様だったらしく、中央政府か
らの厳戒指令(時期が悪かった)もあるようで、い
つまで経っても進展は見られない。もちろん我々は
この地区周辺への入域・調査許可書は得てはいた。
14
ウルムチから同行してくれている中青旅行社の李
新革さんが、必死になって我々の旅の趣旨を説明し
てくれた。そして求められるままにパスポートを含
む関係書類を全て見せ、そのコピーを(街のどこや
らで)取って来たりもして、2時間以上もたって、
やっと部屋に入る許可が出たと時にはホットしたも
のだった。しかし、甘かった。それだけでは済まな
かったのだ。
宿泊は許すけれど、全員の所持品を見せること!
難物満載
次は、いよいよ難物満載の河邉の番だ。悪知恵に
長けた河邉は、これまでの東南アジア・中国奥地で
の経験をフルに活かした。女性を含む3人の公安官
が、次は何が出てくるか?興味津々で入ってきた。
ご自分で、荷物の中身をすべて、ベットの上に広げ
てください。 比較的紳士的な物腰だし、自分で中
身を拡げるのであれば、何とかなりそうと考えた。
問題になりそうな、採集用具・根掘りや鋏などの
凶器?これらはかさばるため、部屋の片すみへ、と
いうわけにはゆかなかった。そこで、リュックに手
を突っ込んだ瞬間、両サイドに片寄せた。そして、
おもむろにまず土産用に求めた天山薬草蜂蜜とロイ
ヤルゼリー、そしてミツバチ花粉の大瓶を取り出し
た。次は、ホータン(和田)で買ったでっかいホー
タン石(玉ではなくて、単なる薬草粉末用石盤)に
巨大氷砂糖だ。着替えの服にホテルでくすねたパン
フレット類と洗面用具の数々も取り出して見せた。
そして、決めは自慢の絹のパンツ!あまりのくだら
なさに、呆れたのか?失望したのか?それ以上の厳
しい追求もなく、早々に次の部屋へ移ってくれた。
心配性の大庭が、採集昆虫類で何かボロを出すの
ではないかと多少気にはなったが、4人を調べた結
それが宿泊許可の条件だった。ともかく、怪しい一
団(それ以上に日本人に興味がある?)であると思
われていることは間違いなかった。学術調査といっ
ても、何しろ、年寄り名誉教授、国立科学博物館名
誉研究員に加えて、会社役員や女性菌類研究家、料
理研究家までが(カムフラージュとしてか?と)加
わっているのだから。
先方が期待?するような疚しい持ち物はほとんど
ないはずだが、ひょっとして、ひょっとする。こっ
そり採集してきた、あのウラル●●か?国境高山地
帯で見つけたあの高嶺の●●か?昆虫類は、まだ没
収されてもどうってことのない物ばかりだったけれ
ど、採集用具やら、刃物類が過激派の持ち物と間違
えられはしないか?地図類は大丈夫か?
何よりも、最大の危惧品は、記録用に持参してい
たGPSにあった(これはスパイの必需品。最大の
難物である)。やってきた地元公安官の中心は女性
である。しかも若くて美人ときている。これはかな
り厄介かもしれない?と心配はつのったが、幸いに
まだまだ口調・物腰も柔らかい。恐らくそれほど厳
しいチェックはないものと我々は踏んだ。
しかし、念のため、危うき品々は部屋の目立たな
いところにこっそり置いてしまう事にした。GPS
は6番目の部屋にいる見目麗しい女性の池ケ谷さん
担当。我々の昆虫・植物採集品、用具はさりげなく
カーテンの下に置くなど、日頃の悪知恵の粋をここ
に結集したのだった。
果くだらない連中だと認識ができていたのか、持参
書類の念入りなチェックはあったものの、ここも無
事の通過。
次は問題のGPS持参の池ケ谷さんの番である。
この時点では、まだスパイ嫌疑の恐れまでは、我々
の念頭にはなく、他所に隠す暇もなかったため、こ
れはどこか目立たない部屋の片すみにひっそりと置
かれた。物腰柔らかで、華奢な女性でもあり、公安
官たちとも友好裡に終了したようだった。
ここで、河邉のようにパンティーを出さなくて良
かった(さらに興味を惹いてしまう?)。
最後は、新疆ウイグルの家庭料理を研究している
料理研究家の坂本さん。明るく、好奇心、バイタリ
ティーがあり、誰にも好感を持たれるタイプである
。しかも、1年間の新疆大学留学の経験もある。中
国語もかなり自由に話すことが出来る。多少の中国
語のやり取りがあったのだろう。公安官にも気に入
られたようで、難なく無事終了。
こうして、やっと開放されたのだった(ただしこ
れは1回目である)。
検 閲
天山の植物の大家(豪華本も数多く出版してい
る)近田先生は、幸い植物写真と記録が中心である
。採取品も、せいぜい確認用の押し葉程度だ。まず
ここで様子見と時間稼ぎをしてもらうために、1番
目の部屋へ。・・無事にパス。
各種計画書、許可書(正統な)を所持している大
石隊長が2番部屋。気になる持ち物は、野果樹分布
記録と写真、そして周辺の地図程度だ。責任者でも
あり、多少の犠牲はやむをえないかと・・(しかし
、多少気になるものは引き出しに入れたらしい)。
・・無事だった。さすがにここではかなりの時間を
かけて、念入りにチェックがあった。とくに、書類
、地図、記録ノート類はもの珍しさもあり、念入り
だった。
3番目は、多少の昆虫採集もした好々爺の鈴木さ
ん。その人柄、外観からか?難なく通過した。
急発展する中国
1992年の1回目の大興安嶺(ダイコウアンレ
イ)探検以降、中国は経済的には大発展を遂げてき
たように見える。海岸沿いの大都市周辺だけでなく
、内部辺境の地まで、大開発・建築ラッシュの波が
拡がっている。しかし、あまりに急すぎて、細部に
わたる様々なサービス、マナー、生活環境などがま
だまだ追いついていない。13億人もいるからか、
一党独裁のためか、人権は軽く、中央も地方もその
人民政府、公安・警察権力は強大なものがある。
そして、20年前そのままの旧態依然の設備、シ
15
ステム、サービスもまだまだ残ってて、我々を辟易
させた。人口が急増し、生活内容も向上してきてい
るけれど、そのぶん自然開発・破壊もすさまじく、
今や中国の自然・資源は急激に衰退しはじめている
。
その意味でも、大石隊長らの西域調査フォーラム
の意義も大きいのではないかと思われる旅であった
。永年にわたり、新疆ウイグルを愛し、中国人民の
ためにこんなに貢献している大石先生を、近田先生
を、そして我々を、あまり粗末にするなよなー!!
事務局からのお知らせ
2010年8月をもって、本フォーラムも発足以
来6年目に入ります。過去5年間の初期は、「天山
有用植物資源圃」を研究基地としての内容の充実を
このような背景から、今後はこのプロジェクトに
図るために、資源圃専用のジープ1台の寄付や気象
集中せねばならない状況が生れてきています。
ロボットの設置等に勢力を充ててきました。200
本会は今まで植林と旅行、調査と旅行を兼ねたや
7年度から2009年度までの3年間は、国土緑化
り方でやってきましたが、これからは、プロジェク
推進機構の助成金の交付等により、ウルムチ市郊外
トの推進を優先して、やって行かざるを得ないと考
の天山野生動植物保護地の植林事業に携わってきた
えられます。プロジェクトの忙しい時期は、主とし
。
て開花時期(4月~5月初め)と結実の時期(8
そのかたわら、伊犁地区新源県内のタスバ山の標
月)に集中することになります。
高1、920mに残る野生リンゴの巨樹「野苹果
新疆旅行には、その影響の少ない時期を充てるや
王」の保護を目的に、伊犁州全国人民代表大会常務
り方でと思っています。もし、時期が重なるような
委員会主任の木哈提別克・阿得力別克(ムハトベク
ことがありましたら、中青旅の李新革さんと直接メ
・アデリベク)氏の指導力で、新しい迂回路を建設
ールなどを通じて、お願いしていただければ、快く
していただき、国土緑化推進センターと新源県林業
対応してもらえます。本会員の方で、今まで新疆に
局の協力を得て、トラックをはじめ、牛や羊が入ら
行かれた方は、皆お世話になっている方です。
ないように「野苹果王」の周囲を、東西130m、
中青旅新疆国際旅行社 日本部長
南北60mの柵をめぐらした。
李新革
所在地:
2010年春、現在までの野果林に対する熱意が
中国新疆烏魯木斉市建設路2号宏源大廈三楼
実って、「リンゴの起源と伝播」の研究に、中国科
E-mail や電 話番号など、必要ならお教えいたしま
学院新疆生態与地理研究所の所長其金による2年間
す。お問い合わせください。
のプロジェクトがスタートした。2年間は、主とし
て伊犁州内の伊犁地区、塔城地区の野果林を中心に
、野生リンゴの分布の範囲(地形図に合わせての現
場調査、衛星地図に合わせて900~2、000m
理事会・総会のお知らせ
の標高を中心に)を調査する。もう一つは、分子生
理事会は
物学の分野で、伊犁地区と塔城地区間の類似性やポ
10月24日(日)13:30~17:00、
ピュレーションについて行う。その調査の結果をも
総会は
とに、2012年には、北京の中国科学院に100
12月18日(土)13:30~17:00
万元規模の申請をおこなって、カザフスタンやキル
いずれも、いつ もの静岡商会議所会館を予定してい
ギスタンでの調査を目指します。
ます。御記憶いただきますようお願いいたします。
16
Fly UP