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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System

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熊本大学学術リポジトリ Kumamoto University Repository System
熊本大学学術リポジトリ
Kumamoto University Repository System
Title
機械実習工場の紹介と利用状況
Author(s)
荷堂, 剛; 河野, 一義; 井上, 秋男; 岩瀬, 安利; 落合,
幸夫; 山野辺, 康平
Citation
Issue date
2011-03-17
Type
Presentation
URL
http://hdl.handle.net/2298/24037
Right
機械実習工場の紹介と利用状況
荷堂 剛,河野 一義,井上 秋男,岩瀬 安利,落合 幸夫,山野辺 康平
千葉大学工学部機械工学科
1. はじめに
機械実習工場では,学生や教員が研究に必要な装置や試験片などを,自ら工作機械を操り製作することができる.困難
な加工を要するときは,技術職員の補助を受けたり,加工を依頼することも可能である.また,機械工学科や他学科の学
生を対象に,工作機械の基本操作を学習するための実習を行っている.
しかし,機械実習工場には多くの改善点があり,今年度は学生が加工中に怪我をする事故があった.これらを利用状況
と併せて報告する.
2. 利用方法
学生が実習工場を利用するには,ライセンスを取得する必要がある.ライセンスは,実習を受講するか,それと同等の
加工技術を有する者に工場が与える.
ライセンス所持者は以下の手続きを行うことで,実習工場を利用すること
ができる.
1)工場利用者登録を行う.
(初回のみ)
2)工場管理者の許可を得る.
3)使用に際しては,作業報告書に記入する.(使用機械,作業開始時
刻,図面,加工手順等)
4)作業報告書に記入後,工場管理者に使用することを通知するととも
に,キースイッチがあるものは鍵を借りる.
5)作業終了後は,清掃,電源 off および付属品を所定の位置へ返却す
る.
6)使用が終了したら作業報告書に記入後,工場管理者へ作業が終了し
たことを通知し鍵を返却する.
実習工場の使用時間は,平日の 9:00~17:00(12:00~13:00 は使用禁止)と
し,休日や時間外の作業は禁止している.また安全対策として,安全講習の
受講,作業着とセーフティグラスの着用を義務づけている.
図 1 工作機械使用者登録・作業報告書
3. 設備
実習工場には図 2 のように各種工作機械が配置されている.実習工場は現在 4 部屋に分散しており,
部屋ごとに旋盤室,
フライス室,溶接室,マイクロ加工計測スペースと用途を分けており,機械工学科の技術職員で機器の管理などをしてい
る.このうちマイクロ加工計測スペースは,工学部附属創造工学センター内の一室である.
おもな工作機械として,旋盤 8 台,フライス盤 4 台,マシニングセンタ,NC フライス,CNC 旋盤,ワイヤ放電加工機,
形彫放電加工機,ボール盤,コンターマシン,溶接機などがある.
ボール盤
ボール盤
ボール盤
作
業
台
作
業
台
旋盤
フライス盤
フライス盤
フライス盤
フライス盤
グラインダ
工具研削盤
横フライス盤
研
削 盤
弓のこ盤
工場管理室
コンターマシン
グラインダ
TIG溶接
(a) 旋盤室
(b) フライス室
CAD室
ユニカット アーク
溶接
作業台 形彫放電加工機
旋
盤
平面研削盤
ワイヤ
放電加工機
作業台
マシンシャー
マシニングセンタ
NCフライス
マシニングセンタ
作業台
CNC旋盤
階段
(d) 溶接室
(c) マイクロ加工計測スペース
図 2 機械実習工場の配置図
4. 利用状況
表 1 に 2010 年の主な工作機械ごとの利用状況を示す.作業時間は,学生や教員等が作業報告書に記入した時間をまと
めたものである.
表から,汎用機械の使用頻度が NC 工作機械に比べ多いことが分かる.これは実験装置の製作など単品の部品の加工が
多いためである.一方,汎用機械以外ではワイヤ放電加工機は 1 台のみが設置されており,その使用頻度が高い.また近
年の傾向として,フライス盤の使用頻度が下がってきている.これは安全面や精度の問題から,フライス盤で加工できる
ものをワイヤ放電加工機で行うことが多くなってきているためである.しかしワイヤ放電加工機は加工時間が比較的多く
かかる.そのためほぼ毎日,利用予約がある状態であり,予約待ちが発生している.ワイヤ放電加工機の増設が望ましい.
この他に,困難な加工や外部や他学科から加工を依頼されることがある.年間 30 件程度であるが,複雑な加工が多い
ため 1 件当たりの加工時間は長い.しかし現在技術職員が使用した時に作業時間を記録していないため,依頼された加工
を含めた機械の稼働時間を把握していない,これは今後改善していく必要がある.
表1
旋盤
作業時間
実習
計
台数
564.5
90
654.5
7
1台当たり
の稼働時間
93.5
2010 年機械実習工場利用状況
フライス
NCフライ マシニン ワイヤ放 ボール
CNC旋盤
溶接 その他 計
盤
ス
グセンタ 電加工機 盤
298
11
254
8
199.5
193
64
140.5 1732.5
90
30
60
90
60
30
450
388
41
254
68
289.5
193
124
170.5 2182.5
4
1
1
1
1
4
2
97
41
254
68
289.5
48.25
62
5. 機械工学実習
機械実習工場では機械工学科とデザイン学科の学生に対し実習を行っている.以下に実習の内容を紹介する.
① 機械工学科
機械工学科では,3 年後期に,週 1 回 3 時間の日程で必修科目の実習を行って
いる.機械部品には丸物,平面上の物,複雑形状の物等がある.旋盤を用いた丸
物の加工,フライス盤による平面加工,複雑形状の加工が可能な放電加工等を体
験する.また,機械部品を接合,切断させるための電気溶接とガス溶断も体験す
る.これらの加工は,NC 装置による自動化の方向にある.そのため,NC プログ
ラミングについても学習する.授業は 5 班制で行い,5 工程を各 3 回,計 15 回で
実習を行う.詳しい実習の内容は,平成 19 年度実験・実習技術研究会にまとめた.
② デザイン学科
工学部デザイン学科の学生を対象に,
選択科目の実習を 4 年前期に行っている.
受講人数は年度ごとに異なるが,例年 10~20 名程度である.
実習の内容は受講人数によって毎年変えており,
今年度は 6 名の受講者に対し,
工作機械の基本操作を教える基礎実習を 5 回,残りの 10 回で工作機械を利用して
自ら構想,設計,製作をした,自由な作品を作らせた.最終回には自分の作った
図 3 実習(機械工学科)作品
作品をプレゼンし,その内容も含め評価をしている.
6. 事故報告
8 月 12 日,課外活動の学生が旋盤を使用中に怪我をする事故が起きた.学生は
フォーミュラプロジェクトのメンバーであり,学生フォーミュラに参加するため
に車両の部品を製作していた.旋盤加工中にワークがチャックから外れ,学生に
直撃し 6 針縫う怪我を負った.幸い骨や神経には異常はなかった.材料は直径
180mm,長さ 150mm の A2024 アルミニウム合金で,その重量 11kg はであった.
事故の原因として,いくつかの点があげられる.
1)事故当日は 2 名いる工場管理者の内 1 名が休暇を取っていたため,指導
が行き届かなかった.
2)比較的大きな材料に対してチャックのつかみしろが不十分だった.工場
管理者がチャックの保持力を増すためセンタ(心押し)での支持を指導
図 4 実習(デザイン学科)作品
する.
3)工場管理者は他の加工をするため,旋盤室からマイクロ加工計測スペースへ移動する.
4)大会を間近に控えていたため,焦りから通常よりも早い回転数で加工していた.またアドバイスされたセンタの
使用を行わなかった.
以上から今回の事故は,作業者の気の焦りから起きた事故だと分かる.工場
管理者としてはこのような事故が起こらないように,今後は作業計画をしっか
りと提出させ,気持ちにゆとりのある作業をさせる必要がある.また工場が分
散していることにも問題があり,指導の目が行き届かないことがある.1ヶ所
に集約した実習工場の構築が,より安全な実習工場の運営につながると考えら
れる.
7.おわりに
図 5 事故現場
再現
以上,千葉大学機械実習工場の現状を報告した.今年度は大きな事故があったが,これを教訓に今後はより安全でより
使いやすい実習工場の構築を目指していく必要がある.
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