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コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針 作成のための研究

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コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針 作成のための研究
厚生労働科学研究費補助金
難治性疾患克服研究事業
コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針
作成のための研究
平成23年度 総括・分担研究報告書
研究代表者 久保田 雅也
平成24(2012)年3月
目次
[I] 総括研究報告書
・・・・・3
コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究
研究代表者 久保田雅也 国立成育医療研究センター神経内科 医長
資料 コケイン症候群のケア指針
[II]分担研究報告書
1.コケイン症候群 I 型生存例と死亡例の検討
・・・・・17
分担研究者 久保田雅也 国立成育医療研究センター神経内科 医長
2.コケイン症候群の歯髄の神経病理について
分担研究者 久保田雅也
・・・・・21
国立成育医療研究センター神経内科 医長
佐藤哲二 鶴見大学歯学部解剖・組織細胞学講座 教授
3.コケイン症候群の発生頻度
分担研究者 久保田雅也
・・・・・26
国立成育医療研究センター神経内科 医長
研究協力者 柏井洋文、太田さやか、寺嶋宙、安藤亜希 国立成育医療研究センター神経内科
フェロー
4.コケイン症候群患者由来培養細胞における紫外線抵抗化生理因子の解析
・・・29
分担研究者 杉田克生 千葉大学教育学部養護教育学基礎医科学部門 教授
研究協力者 喜多和子 千葉大学大学院医学研究院 環境生化学講座 講師
5.コケイン症候群の中枢神経病理所見、および他の臓器病理所見の解析
・・・・32
分担研究者 林 雅晴 東京都医学総合研究所こどもの脳プロジェクト 副参事研究員
6.コケイン症候群の分子遺伝学的解析
・・・・・36
分担研究者 森脇真一 大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学 教授
7.光線過敏症の簡易な細胞診断方法の確立ならびにコケイン症候群由来細胞を用いた ips 細
胞の樹立、細胞老化の誘導による細胞増殖の抑制機構の解明に関する研究 ・・・・・39
分担研究者 立石 智 熊本大学 発生医学研究所 発生制御部門 講師
8.大脳基底核石灰化症の検討
・・・・・42
分担研究者 熊田聡子 都立神経病院 神経小児科 医長
9.コケイン症候群の腎障害と酸化ストレス
分担研究者 田沼直之 都立府中療育センター 小児科 医長
・・・・・44
10.XPG null マウスにおけるコケイン様臨床症状に関する研究
・・・46
分担研究者 中根裕信 鳥取大学医学部機能形態統御学講座ゲノム形態学分野 助教
[III] 研究成果の刊行に関する一覧表
・・・・48
[IV] 参考資料
・・・・・63
本研究班ホームページ
[V] 班員名簿
・・・・・64
[VI]研究成果(論文)抜粋
・・・・・65
2
厚生労働科学研究費補助金 (難治性疾患克服研究事業)
[I] 総括研究報告書
コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究
研究代表者 久保田 雅也 国立成育医療研究センター神経内科 医長
研究要旨
コケイン症候群(CS)の病態解明および治療とケアの指針作成のため、CS 発生頻度解析、
CSI 型死亡例の解析、CS の基礎的病態の解明、および CS の診療実態と死亡原因の詳細の
検討に基づく CS の治療とケアの指針作成を行った。紫外線致死感受性を軽減化する
annexin II による創薬、遺伝性光線過敏症に対する分子遺伝学的解析、CS モデル動物
としての Xpg null マウスの遺伝学的解析、CS 患者由来の繊維芽細胞からヒト iPS 細胞
の樹立、光線過敏症の簡易な細胞診断方法の確立、視床下部障害の臨床神経病理学的
検討、腎障害と酸化ストレスの解析、CS 類似の経過を示す未知の変性疾患の検索、以
上の成果および CS のケア指針を作成し当班ホームページ上に載せた。CS の診療に関わ
る全ての医療者、患者家族にとって情報の共有化が可能になると思われる。
分担研究者
細の検討に基づくCSの治療とケアの指針作
(1)杉田克生 千葉大学教育学部養護教育学基
成を行った。具体的には (1) コケイン症候
礎医科学部門 教授
群(CS)での DNA 損傷に対する修復機構
(2)林雅晴 東京都医学総合研究所 こどもの脳
の解析(杉田)
、(2) CS の視床下部障害の臨
プロジェクト 副参事研究員
床神経病理学的検討 (林)
、(3) CS など紫
(3)森脇真一 大阪医科大学感覚器機能形態医
外線性DNA修復異常で発症するすべての
学講座皮膚科学 教授
遺伝性光線過敏症に対する分子遺伝学的解
(4)中根裕信 鳥取大学医学部機能形態統御学
析(森脇)
、(4)CS モデル動物としての Xpg
講座ゲノム形態学分野 助教
null マウスの遺伝学的、病理学的解析(中
(5)立石智 熊本大学 発生医学研究所 発生制
根)
、(5) CS 患者由来の繊維芽細胞からヒト
御部門 講師
ips 細胞の樹立、
光線過敏症の簡易な細胞診
(6)田沼直之 都立府中療育センター小児科 医
断方法の確立、細胞老化の誘導による細胞
長
増殖の抑制機構の解明(立石)
、(6) CS の腎
(7)熊田聡子 都立神経病院神経小児科 医長
障害と酸化ストレス、睡眠障害と尿中メラ
トニン代謝解析(田沼)
、(7) CS 類似の経過
を示す未知の変性疾患の検索(熊田),(8)
A.研究目的
コケイン症候群の病態解明および治療と
ケア指針作成とホームページでの公開、新
ケアの指針作成のため、CS の基礎的病態の
たに判明した二次調査からCS発生頻度の再
解明、および CS の診療実態と死亡原因の詳
解析、
CSI 型の死亡例の特質の抽出
(久保田)
3
を行いCSの基礎と臨床を包括的にとらえ本
(倫理面への配慮)
症候群に関わる全ての関係者に資すること
全ての研究は、研究参加者の自発的な同
を目的とした。
意に基づくことを前提とし、必要に応じ研
究者所属機関の倫理委員会の承認を得て行
った。
B.研究方法
(1) CS 由来transform 樹立細胞において、
annexin II 遺伝子導入法や recombinant
C.研究結果
annexin II タンパク質
(rANX II)
を用いて、
(1) 遺伝子導入による細胞内の annexin
細胞の内外で annexin II 量を増大化させた
II 発現増大化、培養液中への rANX II 添加
場合の、紫外線感受性と紫外線損傷 DNA 修
による細胞外の annexin II 発現増大化は、
復機能が変動を解析した。(2) CS 患者家族
ともに紫外線致死高感受性を軽減化した。
会「日本 CS ネットワーク」の協力を得て睡
眠・体温調節異常に関するアンケート調査、
TUNEL-positive cells
(% of total cells)
および CS 剖検脳4例(死亡時年齢 7~35
歳)における視床下部、脚橋被蓋核(PPN)
に対する免疫組織化学染色を行った。(3)
紫外線性DNA修復異常で発症するすべて
の遺伝性光線過敏症に対する本邦唯一の診
断センターを本年度も研究分担者の施設で
維持し、各種DNA修復試験、分子生物学
50
40
30
20
10
0
rANX II
的手法を駆使して CS を診断した。(4) 生後
-
+
約 20 日令のマウスの膝関節・足関節の関節
腔の病理標本を作製解析、Xpg null マウス
図1 培養液中への rANX II 添加による紫外
の遺伝子発現の異常を知るために、
Xpg null
線誘導アポトーシスの抑制
マウスの臓器を用いた DNA マイクロアレイ
を解析した。(5) コケイン症候群患者由来
(2) CS10 例中7例で体温調節障害(変動体
の繊維芽細胞からヒト ips 細胞を樹立する。
温、低体温、夏季の高熱)がみられた。さ
および CS の簡便な細胞診断法を不定期 DNA
らに 10 例中6例で睡眠障害(日中の眠気、
合成(UDS)、RNA 合成回復(RRS)、DNA 合成回
入眠・覚醒障害、夜間睡眠中の中途覚醒が
復(RDS)を定量的に測定することにより確
頻回、睡眠時間での興奮)が認められた。
立する。
(6)CS 剖検例の腎臓を酸化ストレス
高度の脳萎縮にもかかわらず、MAP2・TH・
マーカーの免疫染色で解析、および睡眠リ
CD・VP 染色により、対照と同様に、視床
ズムの指標としての尿中メラトニン代謝物
下部亜核(室傍核、視索上核、腹内側核、
の測定を行う。(7) CS 類似の疾患2例の精
外側野)に陽性神経細胞集団を同定でき、
査を行った。
(8)CS の全国調査から浮かび上
腹内側核では OxA 陽性細胞も確認された。
がった症状からケア指針を作成、発生頻度
いずれの亜核にも GFAP 陽性アストロサイ
再計算、死亡例の詳細検討を行った。
トの増加を認めなかった。PPN では MAP2
陽性神経細胞の減少、
GFAP 陽性アストロサ
4
イトの増加がみられた。さらに4例全例で
うこと成功した。(6)CSの腎病変では現在の
AchE 陽性アセチルコリン神経が高度に減
ところ酸化ストレスマーカーの有意な上昇
少していた。(3) 新規に1例の CSA(10 歳
は認められず。CSにおいてメラトニンの主た
男児例)
、1例の CSB(4 歳男児)
、1例の
る代謝物6-sulphatoxymelatoninの低下が推定
XPD/CS(1 歳、男児)
、計3例の小児 CS を確
された。(7)CS類似の疾患2例の精査:1例は、
定診断した。さらに皮膚症状のみしか呈さ
精神発達遅滞、低身長、痙性対麻痺、末梢神
しておらず UV-sensitive syndrome (UVSS)
経障害を示し、6歳より頭部CT上大脳基底核
と過去に診断した症例(61 歳、女性)に最
と橋の石灰化が認められた。第2例は、小児
近CS類似の神経症状が出現し再検討したと
期には非進行性の知的障害を示したが、20代
ころ CSB であることが判明した。(4) Xpg
より急激に錐体外路症状と認知症が進行し
null マウスの関節内脂肪組織の消失や関節
た。頭部CTでの大脳基底核石灰化に加え、頭
空隙の狭小化を観察した。Xpg null マウス
部MRIにて黒質に特異な所見を認めた。
の歩行異常の一因として、小脳の異常のみ
ならず、関節病変が関与することが示され
た。また Xpg null マウスで有意に発現の差
がある遺伝子が約 30 個程度検出(DNA 修復
関連、DNA の転写関連、老化関連遺伝子等)
された。今後さらに詳細な解析を行う予定
図3 第2例の基底核、脳幹病変
である。(5) CS 患者由来の繊維芽細胞に山
中因子を導入することにより、
効率良く iPS
(8) 皮膚ケア、齲歯、難聴、眼科合併症、運
細胞を樹立することに成功した。今後 CS の
動障害、腎機能低下、高血圧、てんかん、言
病態解析に活用されることになる。
語発達・知的障害、栄養・摂食、睡眠につい
てケア指針を作成し当班のホームページ上
に載せた。(http://www.cockayneresearchcare.jp/)
本ホームページには当班が提唱するCS診断
基準案も掲載している。また、日本における
発生頻度の検討から100万出生あたり2.76と
算出、CSの診療実態と死亡原因の詳細の検討
から腎不全に対する対策が病期後期には重
要になることを示した。
図2 コケイン症候群患者由来の iPS 細胞
D.考察
(1)紫外線高感受性細胞の内と外のannexin
また培養細胞の新規合成DNA鎖またはRNA
II量を増大化させると、ともに紫外線致死感
鎖を標識することにより、光線過敏症の診断
受性を軽減化することができた。CSでのDNA
基準である不定期DNA合成(UDS)、RNA合成回
損傷に対する修復機構の創薬開発につなが
復(RRS)、DNA合成回復(RDS)を定量的に測定
る成果である。
することに成功しCSの簡便な細胞診断を行
5
(2)昨年度報告した尿中メラトニン排泄低下
ら栄養(内容および胃ろう造設等)に関して
と合わせて脳内時計の障害が示唆された。視
も検討が必要である。
交叉上核は高度の脳萎縮の影響か、4例とも
検討不能、PPN病変はREM睡眠維持に悪影響
E.結論
を及ぼすことが推定され、脳内時計の障害と
(1)紫外線高感受性細胞の内と外のannexin
合わせてCS患者での睡眠障害に関与する可
II量を増大化させると、ともに紫外線致死感
能性が示唆された。また、Meynert核アセチ
受性を軽減化することができた。
ルコリン神経は知能発達・学習との関連が知
(2) CS患者では体温調節障害、睡眠異常など
られ、Meynert核病変がCS患者の知的障害に
視床下部障害を推定する症状が有名である。
関連している可能性も考えられた。
CS患者10例のアンケート解析では、約3分の
(3) CSBとUVSS(UV-sensitive
2の例で体温調節障害、睡眠障害がみられた。
syndrome)の異同に関しては昨年度の報告書
また、高度の脳萎縮にもかかわらず視床下部
にも記載したが、最近遺伝子が同定されたU
亜核は確認されたが、視交叉上核は同定でき
VSS-Aに変異を持つ症例を除き、UVS
なかった。一方、Meynert核と脚橋被蓋核で
Sは包括的疾患概念としてのCSであると
アセチルコリン神経の高度減少が認められ、
考えるべきである。
CS患者でのREM睡眠障害、知的障害と関連す
(4) Xpg nullマウスのCSの病態モデルとして
る可能性が示唆された。
の有用性が確認された。
(3) CSは稀な疾患ではあるがCS様の臨
(5) iPS細胞樹立効率、維持の効率が低下して
床症状を呈する患者の診断、潜在的な軽症患
いることが予想されたが、問題はみられなか
者の発掘のためには本邦唯一維持している
った。また培養細胞の新規合成DNA鎖または
CS診断センターは引き続き継続すること
RNA鎖の標識によりCSの簡便な細胞診断が確
が重要であると考える。
立された。(6)CSにおける睡眠障害の一因と
(4) Xpg nullマウスのCSの関節拘縮の病態モ
してメラトニン代謝の異常が推定された。
(7) 1例はコケイン症候群の非典型例であ
デルとしての有用性が示された。同マウスの
る可能性が考えられた。2例目は新しい脳内
子等の異常もCSの本態と関連する可能性が
鉄沈着症と考えられた。
考えられ今後の発展が期待される。
(8)当班ホームページ上にケア指針を載せる
(5) コケイン症候群患者様由来のips細胞が
ことで CS の診療に関わる医療関係者のみで
効率よく樹立され、紫外線、酸化物質等に対
なく患者家族へも新しい情報が提供できる。
して高感受性となることが予想されCSの病
患者家族会ともリンクし今後の連携がさら
態解析が進むと思われる。また培養細胞の新
に進むことと思われる。また CS 発生頻度は
規合成DNA鎖またはRNA鎖の標識によりCSの
100 万出生あたり 2.76 であったがこれは西ヨ
簡便な細胞診断が確立された。
ーロッパの 2.70 とほぼ同じであり、人種差は
(6) CSにおける睡眠障害の一因としてメラト
ないものと考えられた。CS 末期腎不全に対
ニン代謝の異常が推定され治療薬としてメ
しては全身状態にもよるが透析等の導入、お
ラトニン製剤の選択が推奨される。
よび死亡例の Cachexia の進行が速いことか
(7) 大脳基底核石灰化を呈した診断未定の2
DNA修復関連、DNAの転写関連、老化関連遺伝
症例の診断過程を示した。これらの症例の診
6
断や病態を検索することが、コケイン症候群
Brain Dev (Epub) DOI:
の病態のさらなる解明につながると考える。
10.1016/j.braindev.2011.06.015
6 Hayashi M, et al. Brain vascular changes in
(8)CSのケア指針を作成し当班ホームページ
上に載せた。CSの診療に関わる全ての医療者、
Cockayne syndrome. Neuropathology
患者家族にとって情報の共有化が可能にな
(Epub)DOI:10.1111/j.1440-1789.2011.0124
ると思われる。CS発生頻度は人種差、地域差
7 Miyata R, Tanuma N, Hayashi M, Takahashi Y.
はなく、進行がより速い群はcachexiaが著明
Focal encephalopathy having recurrent episodes of
で末期には腎不全となる。早期からの対策が
epileptic status and cluster mimicking
必要である。
hemiconvulsion-hemiplegia-epilepsy syndrome.
Brain Dev 2011 (in press)
F.研究発表
8 Hayashi M, Miyata R, Tanuma N. Decrease in
1. 論文発表
acetylcholinergic neurons in the pedunculopontine
1 Suzuki, T., Lu, J., Hu, G., Kita, K., Suzuki, N.
tegmental nucleus in a patient with Prader-Willi
Retrovirus-mediated transduction of short hairpin
syndrome. Neuropathology 2011;31(3):280-285.
RNA gene for GRP78 fails to downregulate
GRP78 expression but leads to cisplatin
9 Hirata Y, Koga S, Fukui N, Yu A, Koshida S,
sensitization in HeLa cells. Oncology Reports, 25:
Kosaka Y, Moriwaki S 5-Aminolevulinic acid
879-885, 2011.
(ALA) - mediated photodynamic therapy to
2 Jiang, X., Ren, Q., Chen, S-P., Tong X-B., Dong,
superficial malignant skin tumors using Super
LizerTM .
M., Sugaya S, Tanaka T, Kita K, Suzuki N. UVC
mutagenicity is suppressed in Japanese
J Dermatoy 38:748-754, (2011)
10 Moriwaki S, Yamashita Y, Nakamura S, Fujita D,
miso-treated human RSa cells, possibly via GRP78
Kohyama J, Takigawa M, Ohmichi H Prenatal
expression. Biosci. Biotechnol. Biochem.,
diagnosis of xeroderma pigmentosum group A in
75:1685-1691,2011.
Japan. J Dermatol, in press.
3 Kita, K., Sugita, K., Chen, S-P., Suzuki, T., Sugaya,
11 森脇真一 色素性乾皮症 今日の皮膚疾患治
S., Tanaka, T., Jin, Y-H., Satoh, T., Tong, X-B.,
療指針 医学書院 印刷中
Suzuki, N. Extracellular recombinant annexin II
12 森脇真一 色素性乾皮症 皮膚疾患 最新の
confers UVC resistance and increases the Bcl-xL to
治療 2011-2012 p116 2011 南江堂 印刷中
Bax protein ratios in human UVC-sensitive cells.
13 森脇真一 遺伝性光線過敏症と患者家族会活
Radiat. Res., in press(DOI: 10.1667/RR2561.1.).
動 日本皮膚科学会雑誌、印刷中
4 Tanaka, T., Sugaya, S., Kita, K., Arai, M., Kanda, T.,
14 森脇真一 色素性乾皮症の遺伝子診断
Fujii, K., Imazeki, F., Sugita, K., Yokosuka, O.,
Visual Dermatology 10:448-451, 2011
Suzuki, N. Inhibition of cell viability by human
15 森脇真一 色素性乾皮症バリアント 皮膚で
IFN-β is mediated by microRNA-431. Int. J. Oncol.,
見つける全身疾患(メディカルレビュー社)
in press.
p40 2011
5
Hayashi M, et al. Lesions of cortical
16 田沼直之. 急性脳症とバイオマーカー. 小児
GABAergic interneurons and acetylcholine
科診療 74; 931-936, 2011
neurons in xeroderma pigmentosum group A.
17 Tateishi, S. A novel Rad18 ubiqitin
7
mice,第 34 回日本分子生物学会,横浜市
(2011.12.13-16)
2 田沼直之, 齋藤菜穂, 古島わかな, 福水道郎,
宮田理英, 中島啓介, 林雅晴. 重症心身障害
児者の睡眠覚醒リズムとメラトニン. 第 37
回日本重症心身障害学会学術集会(徳島),
2011.9.29-30
3 白井育子、
熊田聡子、
笠井恵美、
下田木の実、
八谷靖夫、栗原栄二 嘔吐後に傾眠を伴い、
基底核の石灰化、精神遅滞、痙性両麻痺、低
身長、構音障害を呈するが、ミトコンドリア
病を示唆する検査所見を欠く 9 歳女児. 第
59 回多摩小児神経懇話会 (2011.12.3)
4 林雅晴.大脳基底核疾患の画像と病理:最近
の話題. 第6回小児神経放射線研究会, 京都
(2011, 10.29)
5 Segawa M, Nomura Y, Hayashi M. An autopsy on
90 year old female of Segawa disease. 15th
International Congress of Parkinson’s Disease and
Movement Disorders, Toronto, Canada (2011, 6.8)
6 太田さやか, 寺嶋宙, 柏井洋文, 星野英紀, 古
山晶子, 林雅晴, 熊田聡子, 杉田克生, 田沼直
之, 久保田雅也 コケイン症候群の病型による
臨床経過の違いと診療実態について-全国調査
より- 第 53 回小児神経学会 2011 横浜
7 Suzuki, T., Lu, J., Hu, G., Kita, K., Suzuki, N.
Continuous approach for knockdown of GRP78
fails to downregulate GRP78 protein expression but
increases sensitivity to cisplatin in HeLa cells. 16th
World Congress on Advances in Oncology and14th
International Symposium on Molecular Medicine,
2011/10/6-7, Hotel Rodos Palace, Rhodes Island,
Greece.
ligase-mediated pathway for repair of
camptothecin-induced DNA damage. Cell Cycle 10,
(13) 2057-2058. (2011)
18 Yanagihara, H., Kobayashi, J., Tateishi, S., Kato,
A., Matsuura, S., Tauchi, H., Yamada, K., Takezawa,
J., Sugasawa, K., Masutani, C., Hanaoka, F.,
Weemaes, C. M., Mori, T., Komatsu, K. NBS1
recruits RAD18 via a RAD6-like domain and
regulates Pol h-dependent translesion DNA
synthesis. Mol. Cell 43, (5) 788-797. (2011)
19 Hendel, A., Krijger, P. H., Diamant, N., Goren, Z.,
Langerak, P., Kim, J., ReiBner, T., Lee, K. Y.,
Geacintov, N. E., Carell, T., Myung, K., Tateishi, S.,
D’Andrea, A., Jacobs, H., Livneh, Z. PCNA
ubiquitination is important, but not essential for
translesion DNA synthesis in mammalian cells.
PLoS Genet. (9) e1002262. (2011)
20 Kubota M, Chida J, Hoshino H, Kashii H, Ozawa
H, Koide A, Hoshino A, Koyama A, Mizuno Y,
Yamaguchi M, Yao D, Yao M, Kido H.
Thermolabile CPT II variants and low blood ATP
levels are closely related to severity of acute
encephalopathy in Japanese children. Brain Dev
(2011), doi:10.1016/ j.braindev.2010.12.012
21 Hoshino A, Saitoh M, Oka A, Okumura A, Kubota
M, Saito Y, Takanashi JI, Hirose S, Yamagata T,
G.知的所有権の取得状況
Yamanouchi H, Mizuguchi M
1. 特許取得
Epidemiology of
acute encephalopathy in Japan, with emphasis on the
なし
association of viruses and syndromes.
2. 実用新案登録
Brain
Dev. 2011 Sep 14; . PMID:21924570
なし
3.その他
2. 学会発表
なし
1 Nakane H et al. Histological analysis of
impaired spermatogenesis in xeroderma
pigmentosum group A gene (Xpa)-deficient
8
コケイン症候群
ケア指針
厚生労働省「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究」班
ホームページ(http://www.cockayneresearchcare.jp/)
1.
皮膚ケア
2.
う歯
久保田雅也
3.
難聴
田沼直之
4.
眼科合併症
5.
運動障害
6.
腎機能低下
7.
高血圧
杉田克生
8.
てんかん
安藤亜希
9.
栄養・摂食
10. 睡眠
森脇真一
杉田克生
熊田聡子
田沼直之
田沼直之
林雅晴
1. 皮膚ケア
生後 6 ヶ月後頃より重篤な光線過敏症が生じるCS患者の皮膚ケアの原則は紫外線
防御であり、その方法には物理的防御法と化学的防御法がある。前者(物理的遮光)は
まず生活環境の中での「紫外線」の存在を意識し、季節、時間、場所、状況(活動が屋
内か屋外か)などでその強さの違いを知ることから始まる。日中の外出制限、紫外線遮
光フィルム、日傘、長袖の衣服、帽子、手袋、紫外線カット眼鏡の使用を考慮する。一
方、後者(化学的遮光)は外出時にサンスクリーンや遮光リップクリームなどを用いる
方法である。
CS患者ではヌクレオチド除去修復系が十分に働かないため、紫外線、特にピリミジ
ン2量体や6-4光産物などのDNA損傷を引き起こしやすい UVB~UVA2 領域からの
防御が必須となる。紫外線対策として、
① 外出時には高 SPF 値、高 PA グレードのサンスクリーン剤(1)を外用し、長袖、長ズ
ボン、帽子、紫外線防護服、UVカット眼鏡を着用する
② 屋内では窓ガラスへUVカットフィルムの貼付し、太陽に面した窓には遮光カーテ
ンを使用する、
9
などがポイントである。適切な遮光を怠れば脳神経症状の進行を招く可能性が示唆され
ている。
光線過敏症状が生じれば日光露光部皮膚に紅斑、落屑、時に水疱形成がみられるが、
そのような際には3~4群のステロイド外用剤(2)を塗布する。
年長になれば肝機能、腎機能の低下に関連して皮膚の乾燥が進むが、この変化は保湿
剤で対応可能である。著明な皮下脂肪の萎縮に対する有用な治療法はない。
(1)
SPF(sun protection factor)は紫外線B波(UVB)(短時間で皮膚に紅斑など
の炎症を起こさせ、黒化につながる波長領域)から皮膚を防御する指数でCS患者では
40~50+のものが推奨される。PA(protection grade of UVA)は紫外線A波(UVA)
(一時的な黒化を引きおこし、皮膚老化につながる波長領域)から皮膚を防御する指数
でCS患者ではPA+++が望ましい。
(2)
リドメックス軟膏、キンダベート軟膏など比較的弱めの副腎皮質ステロイドを数日
間使用する
(大阪医科大学感覚器機能形態医学講座皮膚科学
森脇
真一)
う し
2.齲歯(虫歯)
齲歯(虫歯)はコケイン症候群の重要な診断所見であり、早期からの対策が必要です
(1)。Nance and Berry は遺伝子診断や紫外線感受性テストがなされなくとも低身長と
精神遅滞に加えて眼科的異常(白内障や網膜色素変性)、皮膚光過敏性、齲歯(虫歯)、
特徴的顔貌、難聴のうち3つがあれば強く CS が疑われるとしています。齲歯(虫歯)
は唾液分泌の低下や顎の動きの悪さが原因とされますがそれ以上のことはわかってい
ません。Ⅰ型では 80-90%の患者が早期から齲歯(虫歯)をもっているとされます。早
期からの歯科受診、口腔内衛生の指導、摂食指導、齲歯(虫歯)治療を受けることが望
まれます(1)。
(1) Boraz RA. Cockayne's syndrome: literature review and case report. Pediatr Dent.
1991;13:227-30.
(国立成育医療研究センター
10
神経内科
久保田雅也)
3.難聴
古典型コケイン症候群(CS type I)では、60%程度に感音性難聴がみられます。主に
高音域の両側性難聴が早い場合には幼児期より出現し、20 歳を過ぎるころには完全難
聴になってしまうことも少なくありません。聴性脳幹反応(ABR)を経時的に検査した
報告では、年齢とともに悪化する ABR 測定の閾値の上昇と III 波以降の潜時延長を認め
ています。これらの所見は急速に進行する感音性難聴の存在と脳幹部の進行性退行性病
変を示唆しています。また一方では病理学的に聴覚系の末梢受容器である内耳そのもの
の変性も認めることから、コケイン症候群にみられる難聴は後迷路性病変、すなわち蝸
牛神経と脳幹部を含む中枢神経系における聴覚伝導路の退行性病変から内耳・聴神経病
変(末梢性)に広がるものと考えられます。コケイン症候群では知能障害や難聴に伴う
言語発達の遅れや小脳性の構音障害を伴う場合が多いため、軽度の聴覚障害の兆候をと
らえるには ABR 検査等を経時的に行うことも有用です。玉井らは進行性感音難聴をとも
なうコケイン症候群兄妹例に補聴器装用指導を行い、聴性行動、発声行動、言語行動に
発達変化がみられたことを報告しています。しかし難聴が進行してくると補聴器装着が
困難になるのが現状です。聴覚障害の早期発見および経時的評価が重要と思われます。
(都立府中療育センター小児科 田沼
直之)
4.眼科合併症
眼科的異常としては、網膜色素変性症、眼球陥凹、斜視、白内障、眼振、角膜混濁な
どがある。知的障害に加え眼球陥凹や散瞳剤が効きにくいことなどから、白内障の外科
治療は熟練した医師が行うことが望ましい。さらに術後の無水晶体コンタクトレンズの
着用にも専門医の指導が必要である。視覚誘発電位の検査では、聴力検査より早めに異
常が指摘されることもあるとされる。知的障害があり一般の視力検査が施行することが
難しい場合は、視覚誘発電位検査、可能であれば網膜電位の検査により視力の評価を行
うことが望ましい。視力障害は年齢とともに徐々に進行していくが、網膜色素変性症に
対しては効果的な治療法は現在のところ見当たらない。臨床的にはまぶしがることも見
られるので、サングラスなども必要な場合は装着する。涙液分泌が乏しいので、年齢が
高じるに従い点眼薬なども考慮する。眼科的に網膜を検査してもらう場合には必ず網膜
11
血管の狭小化の有無を調べ、動脈硬化の指標とすることも大切である。
(千葉大学教育学部養護教育学基礎医科学部門
杉田克生)
5.運動障害
コケイン症候群の患者さんには様々な運動障害が見られます。
筋の緊張の調整がうまくできずに手足がつっぱったり(痙性)、体のバランスがとれず
にふらつく(失調)ため、歩くのが難しくなります。脊柱の変形のために体が前かがみに
なることや、股・膝・足首の関節が固くなって変形してしまうこと(拘縮)も、歩行を悪
化させます。手の運動の細かい調整にも障害を認めます。また体が勝手に動いてしまう
"不随意運動"が見られることがあり、特に手の細かいふるえ(振戦)が多いです。
残念ながら今の時点ではこれらの症状に対する根本的治療はありませんが、症状を緩
和させるためにケアや治療が行われています。
まず、歩行能力を維持し、関節の拘縮を予防するために、理学療法(リハビリテーシ
ョン)がおこなわれます。関節の変形に対しては、特殊な靴や補助器具(装具)を作りま
す。家庭や学校では、患者さんが転びにくいよう、また転んでもけがをしないよう、段
差や障害物を減らすなどの環境調整が必要です。
痙性や不随意運動に対しては薬による治療がおこなわれます。私達は、振戦に対して
TRH 誘導体という薬がある程度有効であった患者さんを経験しています。また筋の緊張
亢進や振戦に対してレボドパという薬が有効であったとの報告も出ています。
脳の運動調整に関係する部分を電気刺激することで、重症の不随意運動の改善を図る
治療(脳深部刺激療法)があります。最近、コケイン症候群の患者さんに対してもこの治
療を行った、との報告が出ていますが、効果の検証はこれからの課題です。
(都立神経病院
神経小児科
熊田聡子)
6.腎機能低下
コケイン症候群における腎機能低下(腎障害)は診断基準には含まれていないものの、
生命予後を左右する重要な症状と考えられます。本研究班で平成 21 年に実施した全国
12
調査では、腎障害の頻度は生存例 16 例中 1 例(6.3%)と多くはありませんが、死亡例
15 例中 8 例(53.3%)と高い割合でした。腎障害の診断には血液検査が有用で、普通は
腎臓によって取り除かれる代謝性老廃物である尿素とクレアチニン濃度の上昇でわか
ります。痩せの目立つ時(筋量の少ない場合)、血清クレアチニンは低めに出て腎機能
低下を正しく反映しないこともあるので最近はシスタチン C も腎機能の指標として測
定されています。腎機能低下の場合、血液は通常やや酸性に傾きます。血液中のカリウ
ム濃度は正常、またはわずかに高い程度ですが、腎不全の段階がかなり進んだり、大量
のカリウムを摂取したりすると、危険なレベルまで上昇することがあります。また、赤
血球数に多少の減少がみられることもあります(貧血)。カルシウムの濃度は低下し、
リン酸塩が上昇します。また、弱った腎臓は血圧を上げるホルモンを産生するため、腎
不全の人には高血圧がよくみられます。さらに、腎機能低下により余分の塩や水分を排
出できず心不全の原因になります。コケイン症候群の腎障害は病理学的には、大きく 3
つに分類されます。すなわち、糸球体病変(糸球体硬化症、糸球体基底膜の肥厚など)
、
尿細管病変(急性尿細管壊死)、間質性病変(線維化、間質性腎炎)です。ネフローゼ
症候群を合併することもあります。治療は現在までのところ保存的治療が中心です。本
研究班では、今後も腎障害の病態解析を進めていく予定です。
(都立府中療育センター小児科 田沼
直之)
7.高血圧
高血圧はよく見られる状態だが、乳児期や小児期では明らかな症状は呈さないことが
多いので、定期的に血圧を測定することが重要です。血中レニンの高値など腎血管性高
血圧や腎自体の障害からくる腎性高血圧もあるので、定期的な腎機能評価も大切になり
ます。一方3型の症例などで老化性病態としての動脈硬化症が明らかでないこともあり、
症例毎に頸動脈の血管硬化度を測定することも有用です。年齢が上がると食事量も減少
し運動量も激減するので、最終的には薬物療法が適応となります。腎機能を検討しなが
ら、Ca 拮抗薬、ARB/ACE 阻害薬、利尿剤、β遮断薬を適切に選択する必要があります。
Ca 拮抗薬は血管拡張作用があり、比較的副作用も少ないので、合併症の多いコケイン
症候群ではよく使われます。利尿薬の中では血中カリウムが減少することがあるので、
定期的検査が必要です。血中レニンが高い場合は、レニン阻害薬や ARB/ACE 阻害薬が適
応になり、病態や重症度により使い分けることになります。
13
(千葉大学教育学部養護教育学基礎医科学部門
杉田克生)
8.てんかん
コケイン症候群はてんかんのリスクは高くないといわれています(1)。140人のコ
ケイン症候群の患者さんを調査した研究ではてんかんのある患者さんは5%から1
0%という結果でした(2,3)。一般人口では、てんかんをお持ちの患者さんの割合(有
病率)は0.5%から1%であり、コケイン症候群の患者さんは一般の方よりはてんか
んを持つ割合が高いといえますが、同じく DNA 修復障害である色素性乾皮症よりもてん
かんのリスクは低く、主要な症状としては含まれません。本研究班の全国調査では有効
回答23人中5人がけいれん発作の既往があるとのことでしたがコントロールはいず
れも良好のようでした。
もし目の前でけいれん発作が起こったら、衣服をゆるめて顔を横に向け、もし吐いて
いるようなら口や鼻の周りを拭きます。舌をかまないように物を入れたりくわえさせる
ことは全く無用で、かえって口の中を傷つけたり、嘔吐を誘発し、誤嚥、窒息の原因と
もなるので行わないようにしましょう。外来で、目の前で発作を見るという機会は少な
いので、どういう発作が、どういうタイミングで、どのくらいの時間続いたかを聞かせ
てもらうことが重要となります。初めてのけいれん発作ではそういう余裕はないでしょ
うが、状況が許せばビデオに撮り、後で見せていただくとてんかん発作の質的診断、抗
てんかん薬決定の参考になります。一般的な誘因としては睡眠不足や過度の身体疲労が
発作を起こしやすい状態を作ります。コケイン症候群に特有の発作型や発症年令はあり
ません。
(1) Shorvon SD. The Treatment of epilepsy
(2) Nance MA, Berry SA. Cockayne syndrome: Review of 140 cases. Am J Med Genet
1992; 42:68-84
(3) Rapin I, MD. Cockayne Syndrome in Adults: Review With Clinical and Pathologic
Study of a New Case: J Child Neurol. 2006; 21: 991-1006
(国立成育医療研究センター
14
神経内科
安藤亜希)
9.栄養・摂食
コケイン症候群では、早期から体重増加不良、哺乳不良が認められます。摂食機能の
低下は神経症状の進行(主に偽球麻痺による)により出現し、食事摂取量の減少に伴っ
て栄養障害が出現するため、経鼻胃チューブ留置や胃瘻からの経腸栄養剤の注入に切り
替える栄養管理は重要です。予後に関係する特別な栄養メニューはありませんが、腎不
全がみられた場合には、蛋白制限、カリウム制限や高血圧に対する塩分制限なども必要
となります。
原らは、食事摂取量が落ちたコケイン症候群患者の摂食機能についてビデオフルオロ
グラフィー(VF)による評価を行い、食形態を変更することにより栄養摂取が改善でき
た例を報告しています。摂食機能の低下は個人差があるので、誤嚥を防ぎながら安全に
経口摂取ができる方法を検討するには、VF 検査による評価が有用です。
(都立府中療育センター小児科 田沼
直之)
10.睡眠
コケイン症候群(CS)患者では睡眠や体温調節の異常がみられ、視床下部障害の合
併が疑われる。家族へのアンケート調査によれば、体温調節障害(変動体温、低体温、
夏季の高熱)が高率にみられ、睡眠障害(入眠・覚醒障害、夜間睡眠中の中途覚醒が頻
回)も一部の症例で認められた。
次に松果体から分泌され概日リズム形成に関与する脳内ホルモンのメラトニンの尿
中代謝物(6-sulphatoxymelatoninn:aMT6s)を午前採取スポット尿で測定した。aMT6s
尿中排泄は、対照(Control)では幼児期に高値を示し、以後年齢に応じて低下した(下
図◆)。一方、CS患者での aMT6s 尿中排泄(▲)は、対照(◆)
、ならびにCSと同様
に塩基修復障害により神経変性が生じる色素性乾皮症(XP-A)患者(■)よりも低下し
ていた。
15
350
6-Sulphatoxymelatonin (ng/mgCre)
300
250
200
150
100
50
0
0
5
10
15
20
Control
25
Age (years)
XP-A
30
35
40
45
50
CS
<睡眠・覚醒リズム、体温リズムに関するケア>
CS患者においては、日中の活動度を高め内因性のメラトニン分泌を高めるとととも
に、一定した時間に就寝・起床する習慣を幼少時より心がけることにより、睡眠・覚醒
リズム、体温リズムを整えることが重要である。リズム異常が高度の場合、主治医と相
談した上で、2010 年日本で成人用睡眠導入剤として認可されたメラトニン受容体刺激
薬のラメルテオン(ロゼレム®)を、用量に注意しながら試みることも考慮される。
(東京都医学総合研究所
16
林雅晴)
平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
[II]分担研究報告書
研究課題:コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究」
1.コケイン症候群 I 型生存例と死亡例の検討
久保田雅也
(国立成育医療研究センター神経内科
医長)
研究要旨
CS1型の生存例 21 名と死亡例 20 例の周産期、臨床経過、徴候、検査デー
タをまとめ、両者を比較し、合計での割合を計算した。CS1型合計 41 例で 90%
以上に認めた徴候としては成長障害、日光過敏、難聴、窪んだ眼に代表され
る顔貌の特徴、足関節拘縮、精神遅滞、CT 上の基底核石灰化であった。これ
らの7つの所見が早期診断の重要なポイントとなることが確認された。生存
例と死亡例で有意差が出た所見としては体重、身長、有意語の有無、経口摂
取可能かどうか、死亡原因と関連した腎不全の有無、腎機能の指標としての
BUN, Cr, 尿蛋白、腎性の可能性が高い貧血、睡眠障害、涙液分泌低下等が明
らかになった。
分担研究者
久保田雅也
ター神経内科
生存例および過去の死亡例についての
(国立成育医療研究セン
一次調査を行い合計 674 病院から回答
医長)
を得た(回収率は 73.2%)。この結果
CS 生存例 37 名、死亡例 39 名、合計 76
A.研究目的
名という結果が判明し患 者 有 り と の 回
コケイン症候群1型の臨床経過の詳細、 答を得た病院・施設に臨床経過の詳細
および死亡例の臨床経過の特徴や生存例
を尋ねる二次調査票を実施した。本年
との相違を明らかにし早期診断と適切な
度二次調査を再度依頼した結果、CS 生
治療、ケアを行うための基礎的な資料を
存例 24 名(CS1型 21 名、CS3型 3 名)
、
作成することを目的とした。
死亡例 23 名(CS1型 20 名、CS2型 2 名、
B.研究方法
CS/XPD1 名)
、合計 47 名の臨床経過が集積
全国の小児科臨床研修認定施設、小
された。このうち CS1型の生存例 21 名
児病院、療育施設合計 921 病院に CS
(平均 16.1 才、男性 14 名)と死亡例 20
17
名(平均 18.9 才、男性 10 名)の成長・
の割合を計算した。数値データの有意差
発達、臨床経過、検査データを比較、検
は Student-t test で、その他はχ二乗テ
討した。
ストで検定し p<0.05 で有意差ありと判定
C.研究結果
した。
表に CS1型の生存例 21 名と死亡例 20
例の周産期、臨床経過、徴候、検査デー
タをまとめ、両者を比較し、また合計で
生存例 21 例
死亡例 20 例
p
合計 41 例
在胎週数(週)
39.4(20 例)
39.6(18 例)
NS
出生時体重(g)
2776.8(20 例)
3065.2(18 例)
0.04
(cm)
32.8(9 例)
32.4(4 例)
仮死あり
0(20 例)
3例(19 例)
NS
体重(kg)
15.3(21 例)
12.6(14 例)
0.04
身長(cm)
103.5(20 例)
96.2(10 例)
0.02
成長障害
20 例(20 例)
16 例(16 例)
NS
36/36(100%)
歩行可能
11 例(20 例)
10 例(18 例)
NS
21/38(55.3%)
有意語あり
18 例(20 例)
12 例(19 例)
0.046
30/39(76.9%)
精神遅滞
21 例(21 例)
20 例(20 例)
NS
41/41(100%)
経口摂取可能
19 例(20 例)
6 例(17 例)
0.0001
25/37(67.6%)
日光過敏
17 例(19 例)
17 例(18 例)
NS
34/37(91.9%)
窪んだ眼
19 例(20 例)
19 例(19 例)
NS
38/39(97.4%)
難聴
16 例(19 例)
12 例(12 例)
NS
28/31(90.3%)
白内障
11 例(17 例)
9 例(14 例)
NS
20/31(64.5%)
網膜色素変性
14 例(17 例)
11 例(11 例)
NS
25/28(89.3%)
視神系萎縮
6 例(14 例)
6 例(10 例)
NS
12/24(50%)
側弯
9 例(19 例)
3 例(12 例)
NS
12/31(38.7%)
足関節拘縮
18 例(19 例)
12 例(13 例)
NS
30/32(93.4%)
齲歯
10 例(16 例)
8 例(9 例)
NS
18/25(72%)
高血圧
3 例(10 例)
6 例(10 例)
NS
9/20(45%)
腎不全
1 例(21 例)
9 例(13 例)
<0.001
10/34(29.4%)
貧血
2 例(21 例)
8 例(15 例)
0.004
10/36(27.8%)
出生時頭囲
18
3/39(7.7%)
涙液分泌低下
2 例(12 例)
6 例(9 例)
0.02
8/21(38.1%)
発汗低下
10 例(15 例)
8 例(10 例)
NS
18/25(72%)
手指振戦
8 例(18 例)
9 例(12 例)
NS
17/30(56.7%)
亢進
12 例(19 例)
6 例(9 例)
NS
18/28(64.3%)
痙攣発作
4 例(20 例)
2 例(13 例)
NS
6/33(18.2%)
睡眠障害
2 例(17 例)
5 例(11 例)
0.04
7/28(25%)
体温調節障害
8 例(18 例)
4 例(7 例)
NS
12/25(48%)
下痢傾向
6 例(19 例)
5 例(9 例)
NS
11/28(39.3%)
基底核石灰化
17 例(17 例)
11 例(12 例)
NS
28/29(96.6%)
の異常
6 例(13 例)
3 例(6 例)
NS
9/19(47.4%)
ABR 異常
14 例(17 例)
4 例(4 例)
NS
18/21(85.7%)
ALT
63.9(20 例)
62.7(19 例)
NS
AST
114.8(20 例)
119.8(19 例)
NS
BUN
18.2(20 例)
40.5(17 例)
0.002
Cr
0.49(20 例)
1.67(16 例)
0.03
尿蛋白陽性
2 例(16 例)
9 例(11 例)
0.0003
下肢深部反射
神経伝導速度
表
11/28(39.3%)
CS1型の生存例 21 名と死亡例 20 例の周産期、臨床経過、徴候、検査データの比較
D. 考察
される顔貌の特徴、足関節拘縮、精神遅
周産期のデータでは出生時体重が死亡
滞、CT 上の基底核石灰化であった。これ
例で有意に大きいとなったがその後の臨
らは早期から認められ、診断基準にも入
床経過に影響したとは考えにくい。その
っている。これらの7つの所見が早期診
他、在胎週数、仮死の有無、頭囲等に有
断の重要なポイントとなることが確認さ
意差はなく、いずれも異常を認めず。少
れた。これらに次いで 80%以上認めた徴候
なくとも CS1型では胎児期、新生児期に
としては網膜色素変性と ABR 異常が挙げ
は異常は顕在化していないというこれま
られる。齲歯も従来の報告通り多く認め
での報告と同様であった。CS1型合計 41
た。またこれまでにあまり注目されてい
例で 90%以上に認めた徴候としては成長
ない徴候として発汗低下、手指振戦を半
障害、日光過敏、難聴、窪んだ眼に代表
数以上に認めた。けいれん発作は約2割
19
に認めたがコントロール良好であった。
も早期からの治療が必要である。
睡眠障害、体温調節障害は視床下部、脳
E. 結論
幹病理との関連も疑われる。下痢傾向は
CS1型合計 41 例で 90%以上に認めた徴
これまで報告はないが自律神経症状もし
候としては成長障害、日光過敏、難聴、
くは外分泌機能としての検討が必要であ
窪んだ眼に代表される顔貌の特徴、足関
ろう。
節拘縮、精神遅滞、CT 上の基底核石灰化
生存例と死亡例で有意差が出た所見と
であった。これらの7つの所見が早期診
しては体重、身長、有意語の有無、経口
断の重要なポイントとなることが確認さ
摂取可能かどうか、死亡原因と関連した
れた。生存例と死亡例で有意差が出た所
腎不全の有無、腎機能の指標としての BUN,
見としては体重、身長、有意語の有無、
Cr, 尿蛋白、腎性の可能性が高い貧血、
経口摂取可能かどうか、死亡原因と関連
睡眠障害、涙液分泌低下等が明らかにな
した腎不全の有無、腎機能の指標として
った。もともと CS では成長障害が著明で
の BUN, Cr, 尿蛋白、腎性の可能性が高い
あるが死亡例ではよりこれが顕著であっ
貧血、睡眠障害、涙液分泌低下等が明ら
た。体重の低さは必ずしも栄養の問題だ
かになった。
けではないが、cachexia となるのを遅ら
F.健康危険情報
特になし
せる方策として経鼻胃管、胃瘻などの経
管栄養導入は早期から必要かもしれない。 G.研究発表
生存例のほとんどが経口摂取可能である
1.論文発表
が両群は平均年齢が 16.1 才と 18.9 才で
発表予定
あり、この 2.9 年の差は大きいかもしれ
2.学会発表
ない。今回は摂食能力の経時的変化は把
発表予定
H.知的財産権の出願・登録状況
握できておらずこの 2.9 年での悪化が起
なし
こったのかどうかは不明である。身長の
1.特許取得
有意な差から類推すると体格差はもとも
なし
とあったと思われる。有意語にも差があ
2.実用新案登録
り成長および発達に2群で基本的な差が
なし
あると推測される。腎不全に関してもフ
3.その他
ォローと対策が重要となるのはいうまで
なし
もない。腎機能低下由来の貧血、高血圧
20
平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
[II]分担研究報告書
研究課題:コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究」
2.コケイン症候群の歯髄の神経病理について
久保田雅也
佐藤哲二
(国立成育医療研究センター神経内科
医長)
(鶴見大学歯学部解剖・組織細胞学講座
教授)
研究要旨
CS3型の2名(30才双胎女性)の齲歯治療で抜歯した歯髄の免疫染色を行い、神経自
体の減少を観察した。CS においては発汗低下、唾液分泌低下、軽度痛覚鈍麻、神経因
性膀胱などから自律神経系の障害が起こってくるが、これらの徴候は C 線維、Aδ線維
の減少をはじめとする末梢神経障害で説明可能であり、歯髄神経病理の異常は CS 病態
の一部を反映しているといえる。
すると明らかに神経自体が疎である。先天性
分担研究者
久保田雅也
神経内科
先天性無痛無汗症は先天的に C 線維、Aδ線維
医長)
佐藤哲二
胞学講座
無痛無汗症の患者の歯髄を図5、6に示す。
(国立成育医療研究センター
が欠損し、痛覚消失、発汗低下—消失を呈す
(鶴見大学歯学部解剖・組織細
る難病であるが、CS においても程度は軽いが
教授)
類似の C 線維、Aδ線維の減少が起こっている
A.研究目的
可能性がある。
コケイン症候群(CS)は中枢神経系以外に
末梢神経の障害も早期から認められる。機能
D. 考察
低下は運動、感覚、自律神経系におよび様々
2名の臨床経過については昨年度の報告書
な症状をもたらすが、今回 CS3型の患者の齲
において詳述した。3型の特性として CS に特
歯治療で抜歯した歯髄の神経病理を検討し、
有な臨床徴候が遅れて出現するが、2名の齲
発汗低下や痛覚鈍麻との関係を検討した。
歯に関してもこの年齢になるまで問題になる
B.研究方法
ことはなかった。臨床的に CS に特徴的な顔貌、
CS3型の2名(30才双胎女性)の齲歯治
知的障害、頭部 CT 上の石灰化、足関節拘縮等
療で抜歯した歯髄の免疫染色を行った。染色
の他に末梢神経障害も認める。また、発汗低
は PGP9.5 染色、神経鍍銀法、HE 染色、βIII
下、唾液分泌低下、軽度痛覚鈍麻、神経因性
Tubulin 免疫染色を行った。
膀胱などから自律神経系の障害も顕在化して
C.研究結果
いる。これらの徴候は C 線維、Aδ線維の減少
CS3型の歯髄は図1に示したように血管壁
をはじめとする末梢神経障害で説明可能であ
にのみ PGP9.5 陽性線維がみられたため、交
る。CS においては末梢神経障害は脱随、軸索
感神経性 C 線維ではないかと考えられたが、
障害のいずれも起こり、運動・感覚神経伝導
一部 Aβ線維が残っている可能性もある。
検査での異常が早期から出現する。これらの
図2−4のコントロールにおける染色と比較
検査では検出不能な細い線維の障害も今回の
21
歯髄で認めたように全身的に起こっていると
G.研究発表
推測される。
1.論文発表
なし
E. 結論
2.学会発表
CS3型の2名(30才双胎女性)の齲歯治療
なし
で抜歯した歯髄の免疫染色を行い、神経自体
H.知的財産権の出願・登録状況
の減少を観察した。CS においては発汗低下、
なし
唾液分泌低下、軽度痛覚鈍麻、神経因性膀胱
1.特許取得
などから自律神経系の障害が起こってくるが、
これらの徴候は C 線維、Aδ線維の減少をはじ
なし
2.実用新案登録
めとする末梢神経障害で説明可能であり、歯
なし
髄神経病理の異常は CS 病態の一部を反映し
3.その他
ているといえる。
なし
F.健康危険情報
特になし
図1
Cockayne 症候群:歯髄組織の神経線維。歯根部の歯髄(DP)にみられる血管(BV)の壁に分布する PGP9.5
陽性神経線維(→)を示す。D
象牙質;ヘマトキシリンで核染色。通常の歯髄組織に認められる感覚神経は検出され
ず。
22
図2
コントロール。根尖部の歯髄にみられた神経線維束(▼:Aβ 有髄繊線維だと思われる)
図3
コントロール。歯髄の中央部を走る神経線維束(▼)が血管(BV)と判行する。
23
図4
コントロール。歯髄中央部を走行する神経線維束(▼:Aβ、Aδ 有髄繊線維だと思われる)
神経線維束が血管(BV)に沿って走っている(a)。細い神経繊線維(∧)でかつ Varicosity 様の膨らみが見えることか
ら C-fiber と思われる(b)。
図5。無痛無汗症の歯髄。a:神経線維束(Aβ 有髄繊線維だと思われる)の横断面だが、反応は陰性である。b:同様の Aβ
有髄繊線維だと思われる横断面の反応は陽性である。
24
図6。無痛無汗症の歯髄。血管(BV)の周囲に分布する陽性線維。比較的血管の表層に分布していること、Varicosity
様の膨らみが観察されないことから、Aβ の有髄繊線維だと思われる。
25
平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
[II]分担研究報告書
研究課題:コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究」
3.コケイン症候群の発生頻度
久保田雅也 (国立成育医療研究センター神経内科 医長)
研究要旨
コケイン症候群(CS)は常染色体劣性遺伝疾患であり、頻度は 100 万人に 1 人程度のまれな疾患と
されるが正確な発生頻度については不明である。昨年度の本研究班の報告でも全国調査データを基
に CS の発生頻度を解析,検討したが。今年度は二次調査の再度の依頼を行い 15 名の新たな患者情
報が集積された。そのうち患者数の実態を反映していると思われる 1980 年以降で CS 発生頻度を計
算すると 100 万出生あたり 2.76 (2.19-3.11、95%信頼区間)となった。今回の調査の不十分性を考
慮しても CS 発生頻度は日本においては西ヨーロッパにおける 100 万出生あたり 2.7 とほぼ同様の値
をとり人種差は大きくないと考えられる。
分担研究者
過が集積された。この結果を基にCSの発生頻度を産
久保田雅也 (国立成育医療研究センター神
経内科
出した。
医長)
(倫理面での配慮) 研究遂行に際し、臨床研究に関
する倫理指針を遵守した。
A.研究目的
C.研究結果
コケイン症候群(CS)は常染色体劣性遺伝疾患で
47 名中臨床経過および出生年月日の明らかな 46
あり、頻度は 100 万人に 1 人程度のまれな疾患とさ
名の5年ごとの出生年を表にまとめた。(1 名は年
れるが正確な発生頻度については不明である。今回
齢不明のため除外した)
昨年度に引き続き新たに追加された二次調査に基
年人口動態統計の年間推計中の第 1 表人口動態総
づく全国調査データを基に CS の発生頻度を解析,
覧 の 年 次 推 移 (http://www.mhlw.go.jp/
検討した。
toukei/saikin/hw/jinkou/suikei09/index.html)
B.研究方法
より年間出生数を求め、出生 100 万人あたりの CS
全国の小児科臨床研修認定施設、小児病院、
また厚生労働省平成 21
発生頻度を計算した。
療 育 施 設 合 計 921病 院 に CS生 存 例 お よ び 過 去 の
死 亡 例 に つ い て の 一 次 調 査 を 行 い 合 計 674病 院
年
n/5 年
n/100 万出生あたり
から回答を得た(回収率は 73.2%)。この結果
2005-2009
2
0.37
CS生存例37名、死亡例39名、合計76名という結果が
2000-2004
5
0.87
判明し患者有りとの回答を得た病院・施設に臨床
1995-1999
7
1.174
経過の詳細を尋ねる二次調査票を実施した。本
1990-1994
5
0.823
年 度 二 次 調 査 を 再 度 依 頼 し た 結 果 、 CS生存例24
1985-1989
14
2.083
名(CS1型21名、CS3型3名)、死亡例23名(CS1型
1980-1984
8
1.05
20名、CS2型2名、CS/XPD1名)、合計47名の臨床経
1975-1979
3
0.339
1970-1974
2
0.198
26
1965-1969
0
0
1960-1964
1
0.122
平均
4.7
0.703
図
コケイン症候群 76 人の地域別分布
D. 考察
CS の発生頻度は 100 万人に1人とされてい
たが本邦での実体は不明であった。今回の全
表 追加された全国調査でのコケイン症候群の
国調査の結果 100 万出生あたり 1.59 という結
5年ごとの発生人数および 100 万出生あたりの
果が出たが、いくつか注意が必要である。大
発生人数
半の CS は小児科領域でのフォローがなされる
であろうが今回の調査には成人神経内科での
追加された全国調査のデータから計算する
フォローや小児科以外でのフォロー(整形外
と 100 万出生あたりの CS の発生頻度は 0.703
科、リハビリ科、眼科,耳鼻科,皮膚科)の
となった(表)。
みの患者は把握されていない可能性がある。
これをもとに一次調査を行った病院・施設
また低年齢での診断の困難さがあり最近5年
に全ての CS 患者が関っている、および二次調
間の少なさはおそらく未診断が影響している
査で回答の来なかった 76 名中 30 名の年齢分
と考えられる。また 1960 年代での患者数は実
布が今回の 46 名と同じであるという2つの仮
態を表しているとはいえないであろう。1960
定の下に出生 100 万あたりの CS 発生頻度を求
年代を除外すると 100 万出生あたり 1.99 とな
めると(0.703/0.732)x(76/46)= 1.59 となる。
った。また 1980 年以降で計算するとこれは
(0.732 は一次調査の回収率)
2.76 となった。Kleijer et al(1)によると西
今回の全国調査では CS の発生頻度は 100 万
ヨーロッパにおける CS の発生頻度は 100 万出
出生あたり 1.59 である。患者がほとんど把握
生あたり 2.7 である。これは今回の我々の得
で き な か っ た 1960 年 代 を 除 外 す る と
(1970-2009
年 )100
た値と大差はない。先に述べた今回の調査の
万 出 生 あ た り
不十分性を考慮すると CS 発生頻度は日本にお
1.99(0.98-2.83、95%信頼区間)となる。患者
いては西ヨーロッパにおけるそれと大きくは
数の実態を反映していると思われる 1980 年以
変わらず、人種による差や地域差はないとい
降 (1980-2009 年 ) で 計 算 す る と こ れ は
える。
2.76(2.19-3.11、95%信頼区間)となる。また
E. 結論
図に示すように CS の分布に地域差は認めなか
今回の全国調査において CS の発生頻度は
った。
100 万出生あたり 1.59 と判明した。1980 年以
降でこれを計算するとこれは 2.76(2.19-3.11、
95%信頼区間)となる。
今回の調査の不十分性を考慮すると CS 発生
頻度は日本においては西ヨーロッパにおける
発生頻度 100 万出生あたり 2.7 と大きくは変わ
らないといえる。
文献
(1) Kleijer WJ et al. Incidence of DNA repair
deficiency
disorders
in
western
Europe:
Xeroderma pigmentosum, Cockayne syndrome
and trichothiodystrophy. DNA Repair (Amst).
27
2008;7:744-50.
田沼直之, 久保田雅也
コケイン症候群の病
型による臨床経過の違いと診療実態について
F.健康危険情報
-全国調査より-
特になし
2011.5.28 東京
G.研究発表
H.知的財産権の出願・登録状況
1.論文発表
なし
1) 古山晶子、久保田雅也
運動発達
Cockayne 症候群の
1.特許取得
「ここまでわかった小児の発達」
五十嵐隆、久保田雅也
編集
なし
中山書店
2.実用新案登録
2010 pp170-173
2) 久保田雅也
なし
ヒトの随意運動の発達 「こ
3.その他
こまでわかった小児の発達」五十嵐隆、久保
田雅也
日本小児神経学会
編集
中山書店
なし
2010 pp2-6.
2.学会発表
1) 太田さやか, 寺嶋宙, 柏井洋文, 星野英
紀, 古山晶子, 林雅晴, 熊田聡子, 杉田克生,
28
平成 22 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)研究報告書
[II]分担研究報告書
研究課題:
「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班」
4.コケイン症候群患者由来培養細胞における紫外線抵抗化生理因子の解析
杉田克生(千葉大学教育学部・教授)
研究協力者:喜多和子(千葉大学大学院医学研究院)
研究要旨
CS 患者由来細胞は紫外線による DNA 損傷に対し修復能が低下している。紫外線致死抵抗化に関わる heat
shock protein 27 (HSP27)などのシャペロンとその結合分子である annexin II を用い、CS 細胞での紫外線致死
軽減化機構を解析した。また、CS の紫外線抵抗化を図るため、GRP78、HSP27 などのシャペロンや annexin
II の代謝に作用し紫外線高感受性を軽減する生理活性物質を検討した。紫外線高感受性細胞の内と外の
annexin II 量を増大化させると、ともに紫外線致死軽減化することができた。シャペロンや annexin II の代
謝を変動させる生理活性物質として、味噌成分である HEMF を同定した。HEMF は GRP78 の細胞内発現
レベルを増加させることで、紫外線致死抵抗化や変異誘導抑制に関わることが示唆された。
。
や annexin II の代謝に作用し紫外線高感受性を軽
分担研究者
減する生理活性物質を探索する。その結果 CS で
杉田克生(千葉大学教育学部・教授)
の DNA 損傷に対する修復機構の創薬開発につな
研究協力者:喜多和子(千葉大学大学院医学研
げる。
究院)
B.研究方法
A. 研究目的
CS 由来 transform 樹立細胞において、annexin
紫外線高感受性を示すコケイン症候群(CS)
II 遺伝子導入法や recombinant
annexin II タン
は中枢および末梢神経、皮膚、眼、腎臓など多
パク質(rANX II)を用いて、細胞の内外で
臓器の早発性老化を生じる常染色体劣性遺伝の
annexin II 量を増大化させると、紫外線感受性と
疾患である。CS 患者由来細胞は紫外線による
紫外線損傷 DNA 修復機能が変動するかを調べ
DNA 損傷に対し修復能が低下している。紫外線
た。紫外線致死感受性は、紫外線照射後のコロ
致 死 抵 抗 化 に 関 わ る heat shock protein 27
ニー形成法により、DNA 修復機能レベルは、損
(HSP27)などのシャペロンとその結合分子であ
傷 DNA(6-4PP と CPD)に特異的な抗体を用い
る annexin II を用い、CS 細胞での紫外線致死軽
た損傷除去能力の解析法により調査した。アポ
減化機構を解析する。また、CS の紫外線抵抗化
トーシス誘導を TUNEL 法で、アポトーシス誘
を図るため、GRP78、HSP27 などのシャペロン
導関連分子などのタンパク質量を Western blot
29
法で解析した。また、annexin II の細胞外表面へ
ことができた。しかし、そのメカニズムは異な
の結合を、細胞外表面タンパク質のビオチン標
り、細胞内 annexin II は、損傷 DNA 修復能力を
識により解析した。
増加させ、一方、細胞外 annexin II は、Ca2+-依存
さらに、Bcl-xL の発現抑制は、siRNA を用いて
的に細胞外表面に結合し、PI3K 依存的なシグナ
行った。
ルを介して Bcl-xL/Bax の比を上昇させることに
より CS 細胞の紫外線致死高感受性を軽減化す
C.研究結果
ることが示唆された。
シャペロンや annexin II の代謝を変動させる
遺伝子導入による細胞内の annexin II 発現増
大化、培養液中への rANX II 添加による細胞外
生理活性物質として、味噌成分である HEMF を
の annexin II 発現増大化は、ともに紫外線致死
同定した。HEMF は GRP78 の細胞内発現レベル
高感受性を軽減化した。細胞内 annexin II の増
を増加させることで、紫外線致死抵抗化や変異
大化は損傷 DNA 修復能力を増加させたが、細
誘導抑制に関わることが示唆された。
胞外の annexin II 発現増大化によって、損傷
DNA 修復能力の亢進は観察されなかった。培養
TUNEL-positive cells
(% of total cells)
液中に rANX II 添加すると、紫外線によるアポ
トーシス誘導が抑制された(図1)
。rANX II 添
加された CS 細胞において、Ca2+-依存的な
annexin II の細胞外表面への結合量増大と紫外
線致死軽減とが連動した。また、細胞外へのr
ANX II により、Bcl-xL/Bax の比が上昇したが、
phosphatidylinositol 3-kinase (PI3K)シグナル伝達
50
40
30
20
10
0
rANX II
阻害剤 LY294002 を rANX II と共に培養液中に
-
+
添加すると、rANX II 添加による Bcl-xL/Bax の
比の上昇と紫外線致死軽減化が共に抑制された
図1.培養液中への rANX II 添加による紫外線誘
(図2)。さらに、siRNA により Bcl-xL の発現を
導アポトーシスの抑制
抑制すると、rANX II 添加による紫外線致死軽
CS 細胞の培養液に rANX II(0.5 mg/ml)を添加 24
減化が抑制された。
時間後、紫外線(UVC,3 J/m2)照射し、さらに
これまでの共同研究者らの研究成果によると、
24 時間培養した後、アポトーシス誘導細胞を
シャペロン GRP78 が紫外線致死抵抗化に関わ
TUNEL 法で解析した。
るとともに紫外線による遺伝子変異誘導の抑制
rANX II
Addition Mock rANX II +LY29
6 h after
Bcl-xL
UVC
Bax
50
にも関与することがわかった。本研究で、種々
の味噌抽出液および味噌成分の一つである
4-hydroy-2(or 5)-ethyl-5(or 2)-methyl
Colony survival
(% of control)
-3(2H)-furanone (HEMF)を RSa 細胞に添加する
と、細胞内 GRP78 発現量が増加し、紫外線変異
誘導が抑制された。
D. 考察/結論
40
30
20
10
0
rANX II
LY29004
紫外線高感受性細胞の内と外の annexin II 量を
増大化させると、ともに紫外線致死軽減化する
30
-
+
-
+
+
5) Zahed M, Suzuki T, Kita K, Sugaya S, Suzuki
図 2. PI3K シグナル伝達阻害剤 LY294002 による
N. Screening of novel peptide ligands bound to the
rANX II 誘導 Bcl/Bax 比の上昇抑制および紫外線
carboxy-terminal domain of GRP94 by phage display.
致死軽減化抑制
Chiba Medical J. in press.
CS 細 胞 の 培 養 液 に rANX II(0.5 g/ml) と
LY29004(50 g/ml)を添加 24 時間後、紫外線
2.学会発表
2
(UVC,3 J/m )照射し 6 時間後の Bcl-xL と Bax
1) 佐々枝里子、小林悟、中島葉子、岩山秀之、
量を Western blot 法で解析した。紫外線致死感受
石田敦士、服部文子、安藤直樹 、伊藤哲哉、石
性はコロニー形成法で解析した。
川達也、杉田克生「コケイン症候群 の全身管理
プロトコールの作成」第 34 回日本小児神経学会
G.研究発表
東海地方会 2011/1/29 名古屋
1.論文発表
2) 田沼直之、宮田理恵、林雅晴、久保田雅也、
1) Torii M, Shimoyama I, Sugita K., Phonemic and
杉田克生、金子節子、荒木聡、百崎謙、大野耕
semantic working memory in information processing
策
in
尿中酸化ストレスマーカー解析」第 51 回日本小
children
with
high
function
pervasive
「色素性乾皮症・Cockayne 症候群における
developmental disorders. IMJ Vol 17, No 1, 35-39,
児神経学会 2010/5/21-23 福岡
2010.
3) 喜多和子、杉田克生、陳
仕萍、佐藤哲生、
2) Sugita K, Suzuki N, Oi K, Allen-Tamai M, Sugita
郭
茂、鈴木信夫「細
Ki, Shimoyama I. Cross-Sectional Analysis for
胞外に添加された HSPB-A によるコケイン症候
Matching Words to Concepts in Japanese and
群患者由来細胞の紫外線致死抵抗化」第 53 回放
English Languages. IMJ Vol 17, No 1, 41-45, 2010.
射線影響学会大会 2010/10/20-22 京都
文智、鈴木敏和、菅谷
3) Chen S-P, Dong M, Kita K,, Shi Q-W, Cong B,
Guo W-Z, Sugaya S, Sugita K, Suzuki, N.
H.知的財産権の出願・登録状況
Anti-proliferative and apoptosis-inducible activity of
1.特許取得
labdane and abietane diterpenoids from the pulp of
なし
Torreya nucifera in HeLa cells. Mol. Med. Rep. 3,
2.実用新案登録
673-678, 2010.
なし
4)
Lu
J,
Hu
G,
Kita
K.,
Suzuki
N.
3.その他
Retrovirus-mediated transduction of a short hairpin
なし
RNA gene for GRP78 fails to downregulate GRP78
expression but leads to cisplatin sensitization in
HeLa cells, Oncol. Rep. 25, 879-885, 2011.
31
厚生労働省科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
[II]分担研究報告書
コケイン症候群の実態把握および治療とケアの指針作成ための研究
5. コケイン症候群の中枢神経病理所見、および他の臓器病理所見の解析
分担研究者
林
雅晴
東京都医学総合研究所こどもの脳プロジェクト
副参事研究員
研究要旨 コケイン症候群(CS)患者では睡眠異常、体温調節障害が合併する。CS
の視床下部障害を明らかにし、治療法を考案するため、アンケート調査、4CS 剖検
例の視床下部と脚橋被蓋核で免疫組織化学的評価を進めた。10 例のアンケート解析
では約3分の2の症例で、体温調節障害、睡眠障害がみられた。また、高度の脳萎縮
にもかかわらず視床下部亜核は比較的保たれていたが、脳内時計に関係する視交叉上
核は切片上の問題から同定できなかった。一方、Meynert 核と脚橋被蓋核でアセチル
コリン神経の高度減少が認められ、REM 睡眠障害、知的障害と関連する可能性が示
唆された。
ン Vasopressin(VP)、Orexin A(OxA)、視床下部
分担研究者 林 雅晴 東京都医学総合研究所
こどもの脳プロジェクト 副参事研究員
に隣接する Meynert 核のマーカーAcetylcholine
A.研究目的
(3)中脳と橋の境界部に存在する脚橋被蓋核
esterase(AchE)。
(PPN)は、REM 睡眠の確立に重要な役割を担う。
Cockayne 症候群(CS)は転写関連の塩基損傷
修復機構の遺伝的欠損により生じ、発育障害、老
さらに CS と同様に、塩基修復の遺伝的異常によ
人様顔貌、日光過敏症、白内障、網膜色素変性、
り光線過敏と神経変性を来す色素性乾皮症にお
感音性難聴、末梢神経障害、腎障害などが見られ
いて、研究者は前記 Meynert 核と PPN のアセチル
る。CS 患者では時に睡眠や体温調節の異常がみ
コリン神経の障害が睡眠機構の異常を惹起する
られ、視床下部障害の合併が疑われるが、臨床的
ことを報告した(Brain Dev Epub)。そこで前記 CS
な解析は十分で行われていなかった。本年度も昨
4剖検例において PPN での MAP2、GFAP、AchE、
年度に引き続き CS 患者の生活の質を大きく左右
TH、CD に対する免疫染色を行った。
する視床下部障害に関して、臨床神経病理学的検
(倫理面への配慮)
討を進めた。
本研究計画は東京都神経研と協力医療機関の
B.研究方法
倫理委員会から承認されている。生体資料・剖検
(1)CS 患者家族会「日本 CS ネットワーク」の
脳の収集ならには治療にあたっては十分な説明
協力を得て睡眠・体温調節異常に関するアンケー
の上での書面による同意を患者家族から受けて
ト調査を実施し、4~31 歳の 10 例での結果を集
いる。
計評価した。
C.研究結果
(2)CS 剖検脳4例(死亡時年齢 7~35 歳)に
(1)10 例中7例で体温調節障害(変動体温、低
おいて、年齢相当対照剖検例とともに、視床下部
に対する免疫組織化学染色(免疫染色)を試みた。
体温、夏季の高熱)がみられた。さらに 10 例中
6例で睡眠障害(日中の眠気、入眠・覚醒障害、
指標とした蛋白は、神経細胞・アストロサイトの
夜間睡眠中の中途覚醒が頻回、睡眠時間での興奮)
マーカーである MAP2・GFAP、視床下部の基本構
が認められた(表1)。10 例中4例では体温調節
造マーカーの Tyrosine hydroxylase(TH)、Calbindin
障害と睡眠障害が合併していた。なお昨年度と同
D28K(CD)、Substance P(SP)、視床下部ホルモ
32
様に、家族からの聞き取り調査により二次性徴発
現に問題がみられないことを確認した。
(2)高度の脳萎縮にもかかわらず、MAP2・TH・
CD・VP 染色により、対照と同様に、視床下部亜
核(室傍核、視索上核、腹内側核、外側野)に陽
性神経細胞集団を同定でき(図1A)、腹内側核で
は OxA 陽性細胞も確認された(図1B)。いずれ
の亜核にも GFAP 陽性アストロサイトの増加を認
めなかった。ただし脳内時計の存在が想定される
視交叉上核は、4例とも部位が切片に切出されて
おらず、解析することはできなかった。一方、
Meynert 核では AchE 陽性アセチルコリン神経が
図2
高度に減少していた。
CS 剖検 PPN での免疫染色
(A)18 歳男性例 a の GFAP 染色
(3)PPN では MAP2 陽性神経細胞の減少、GFAP
陽性アストロサイトの増加がみられた(図2A)。
さらに4例全例で AchE 陽性アセチルコリン神経
が高度に減少していた。TH 陽性カテコールアミ
ン神経は比較的保たれていたが(図2B)、CD 陽
性 GABA 系介在神経も軽度の減少を示した。
図1
CS 剖検例視床下部での免疫染色
(A)18 歳男性例 a の視索上核 TH 染色
(B)18 歳男性例 b の TH 染色
(B)7 歳女性例の腹内側核 OxA 染色
D.考察
(1)昨年度は5例の解析で体温調節障害を指摘
したが、本年度の 10 例(4~31 歳)での検討で
は、約3分の2の症例で体温調節障害、睡眠障害
を認めた。一般に CS では、発育障害が必発だが、
性発育異常や下垂体ホルモンの調節障害は明ら
33
かではないとされる。昨年度、報告した尿中メラ
of epileptic status and cluster mimicking
トニン排泄低下と合わせて脳内時計の障害が示
hemiconvulsion-hemiplegia-epilepsy syndrome.
唆された。
(2)視床下部での免疫染色では、XP と同様に
Brain
(投稿中)、視交叉上核を除く亜核を同定するこ
10.1016/j.braindev.2011.06.011
とができた。性腺ホルモンを含めた下垂体ホルモ
3.
ンの分泌に異常を認めないこととの関連が示唆
Dev
(Epub)DOI:
Hayashi M, et al. Brain vascular changes in
された。視交叉上核は高度の脳萎縮の影響か、4
Cockayne
例とも検討不能だった。
(Epub)DOI:10.1111/j.1440-1789.2011.01241.x.
(3)XP と同様に、Meynert 核と PPN の AchE 陽
4.
性アセチルコリン神経が高度に減少していた。
syndrome.
Neuropathology
Tanaka R, Iwasaki N, Hayashi M, et al.
Abnormal brain MRI signal in 18q- syndrome not
PPN 病変には MAP2 神経細胞減少、GFAP 陽性ア
ストロサイトの増加もみられ、XP の PPN 病変よ
due to dysmyelination. Brain Dev (Epub)
り重度だった。PPN 病変は REM 睡眠維持に悪影
DOI:10.1016/j. braindev.2011.05.008
響を及ぼすことが推定され、脳内時計の障害と合
5.
わせて CS 患者での睡眠障害に関与する可能性が
Nakajima K, Hayashi M, Tanuma N, Morio T.
示唆された。また、Meynert 核アセチルコリン神
An autopsy case of polymicrogyria and
経は知能発達・学習との関連が知られ、Meynert
intracerebral
核病変が CS 患者の知的障害に関連している可能
intracerebral
性も考えられた。
calcification
hemorrhage.
dying
the
Neuropathology
(Epub)
E.結論
DOI:
10.1111/j.1440-1789.2011.01231.x.
CS 患者では体温調節障害、睡眠異常など視床
6.
下部障害を推定する症状が有名である。CS 患者
Miyata R, Hayashi M, et al. Oxidative stress in
10 例のアンケート解析では、約3分の2の例で体
mild
温調節障害、睡眠障害がみられた。また、高度の
reversible splenial lesion (MERS). Brain Dev
脳萎縮にもかかわらず視床下部亜核は確認され
7.
Meynert 核と脚橋被蓋核でアセチルコリン神経の
高度減少が認められ、CS 患者での REM 睡眠障害、
with
a
Shioda M, Hayashi M, et al. Lesions in the
central tegmental tract in autopsy cases of
知的障害と関連する可能性が示唆された。
developmental
brain
disorders.
Brain
Dev
2011:33(7):541-547.
G.研究発表
1. 論文発表
2.
encephalopathy
(Epub) DOI: 10.1016/j.braindev.2011.04.004
たが、視交叉上核は同定できなかった。一方、
1.
encephalitis/
8.
Hayashi M, Miyata R, Tanuma N. Decrease in
Hayashi M, et al. Lesions of cortical GABAergic
acetylcholinergic
interneurons
in
pedunculopontine tegmental nucleus in a patient
xeroderma pigmentosum group A. Brain Dev
with Prader-Willi syndrome. Neuropathology
(Epub) DOI: 10.1016/j.braindev.2011.06.015
2011;31(3):280-285.
and
acetylcholine
neurons
Miyata R, Tanuma N, Hayashi M, Takahashi Y.
9.
Focal encephalopathy having recurrent episodes
Saito
T,
Hayashi
neurons
M,
et
in
al.
the
Neocortical
layer-formation of human developing brains and
34
なし
lissencephalies: consideration of layer-specific
marker
expression.
Cerebral
2. 実用新案登録
Cortex
なし
2011;21(3):588-596.
3. その他
10. 林 雅 晴 . 色 素 性 乾 皮 症 の 神 経 病 変 . Visual
なし
Dermatology 2011; 10(5):456-458.
2. 学会発表
1. 林雅晴.大脳基底核疾患の画像と病理:最近
の話題. 第6回小児神経放射線研究会, 京都
(2011, 10.29)
2. 林雅晴.こどもの脳の発達における環境因子
と神経伝達物質代謝の影響. 東京都医学研
開所記念シンポジウム、東京 (2011, 7.20)
3. Segawa M, Nomura Y, Hayashi M. An autopsy
on 90 year old female of Segawa disease. 15th
International Congress of Parkinson’s Disease
and Movement Disorders, Toronto, Canada
(2011, 6.8)
4. 林雅晴、宮田理英、田沼直之.毛細血管拡張
性運動失調症の小脳皮質病変.第52回日本神
経病理学会総会学術研究会, 京都 (2011, 6.4)
5. 林雅晴、宮田理英、田沼直之.色素性乾皮症
におけるモノアミン神経病変に関する解析.
第53回日本小児神経学会総会, 横浜 (2011,
5.28)
6. 大場大樹、林雅晴、他.進行性の小脳失調症
とFanconi症候群を呈し診断のついていない
1例.第16回小児神経症例検討会(蔵王セミ
ナー), 山形・上山 (2011, 2.11)
G. 知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む)
1. 特許取得
35
平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)研究報告書
[II]分担研究報告書
研究課題:「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班」
6. コケイン症候群の分子遺伝学的解析
7.
森脇真一(大阪医科大学皮膚科・教授
研究要旨
コケイン症候群(CS)など紫外線性DNA修復異常で発症するすべての
遺伝性光線過敏症に対する本邦唯一の診断センターを本年度も研究分担者の施
設で維持し、各種DNA修復試験、分子生物学的手法を駆使して本年度は新規に
3例の小児CSを確定診断した。さらに皮膚症状のみしか呈さしておらず
UV-sensitive syndrome (UVSS)と過去に診断した症例(61歳、女性)に
最近CS類似の神経症状が出現し再検討したところCSBであることが判明し
た。CSBとUVSSの異同に関しては昨年度の報告書にも記載したが、最近遺
伝子が同定されたUVSS-Aに変異を持つ症例を除き、UVSSは包括的疾患
概念としてのCSであると考えるべきである。またこれまで非常に稀と考えられ
ていたⅢ型CS(遅発型、軽症型CS)であるが潜在的な患者は存在する可能性
は高い。
DS)測定、②紫外線感受性試験、③相補性
群試験などのDNA修復テスト、④遺伝子解
析、⑤タンパク解析などにより行った。
研究分担者
森脇真一(大阪医科大学皮膚科・教授)
A.研究目的
研究分担者は平成 10 年よりコケイン症候
群(CS)、色素性乾皮症(XP)など紫外線
性DNA修復異常で発症するすべての遺伝性
光線過敏症の診断センターを本邦で唯一維持
し、各種DNA修復試験、分子生物学的手法
を駆使してこれまで新規に 22 例のCSを確
定診断した。今年度も引き続き新たにCSが
疑われて紹介されてきた患者に対して細胞生
物学敵、分子遺伝学的な解析を行い、さらに
臨床症状を詳細に検討することにより、CS
におけるゲノタイプ・フェノタイプの関連に
ついての検討を行った。本研究によりCSに
おいて多岐にわたる臨床症状の発症機序解明
や分子レベルでの情報取得による重症度や予
後の推定に役立つものと思われる。
(倫理面への配慮)
上記の研究は大阪医科大学ヒトゲノム・遺
伝子解析研究倫理審査会において承認されて
いる。研究はその審査会の基準を遵守し、患
者あるいは家族の文書による同意を得た後に
施行し、その場合検体は連結可能コード化し
て取り扱った。個人情報には十分配慮し、検
体の保管も厳重に行った。またコントロール
細胞など一部の細胞はすでに論文などで発表
されており本研究者が長年連結不可能化して
保持しているものである。
C.研究結果
CSの確定診断は宿主細胞回復能を指標に
した相補性試験にて施行中である。
CS診断センターにおいては年度間に新規
に1例のCSA(10 歳男児例)、2例のCS
B(4 歳男児と 63 歳女性)、1例のXPD/
CS(1 歳、男児)を確定した。CSBとU
VSSの異同に関しては昨年度の報告書にも
B.研究方法
CSの確定診断は患者皮膚由来の培養線維
芽細胞を用いて①紫外線照射後の不定期DN
A合成能(unscheduled DNA synthesis ; U
36
記載したが、最近遺伝子が同定されたUVS
S-Aに変異を持つ症例を除き、UVSSは
包括的疾患概念としてのCSであると考える
べきである。またこれまで非常に稀と考えら
れていたⅢ型CS(遅発型、軽症型CS)で
あるが潜在的な患者は存在する可能性は高い。
D. 考察
今回の遅発型CSB症例の結果はUVSS
が遅発型CSBに移行する可能性あるいはU
VSSが独立疾患ではなくCSBという包括
的な疾患概念の中に位置する可能性を示唆す
る。
determined
by
plasmid
host
reactivation J Derm Sci, in press.
cell
3) Moriwaki S, Yamashita Y, Nakamura S,
Fujita D, Kohyama J, Takigawa M, Ohmichi H
Prenatal diagnosis of xeroderma
pigmentosum group A in Japan. J Dermatol,
in press.
4)Hirata Y, Koga S, Fukui N, Yu A, Koshida
S, Kosaka Y, Moriwaki S 5-Aminolevulinic
acid (ALA) - mediated photodynamic therapy
to superficial malignant skin tumors using
Super LizerTM . J Dermatoy 38:748-754,
(2011)
E. 結論
CSは稀な疾患ではあるがCS様の臨床症
状を呈する患者の診断、潜在的な軽症患者の
発掘のためには本邦唯一維持しているCS診
断センターは引き続き継続することが重要で
あると考える。またその過程で得られる貴重
な臨床材料(多彩な臨床症状を呈する患者皮
膚由来の初代培養線維芽細胞など)を詳細に
検討することによりCSの病態のさらなる解
明がいっそう進むものと予想する。このよう
な病態の解明は近い将来 iPS 細胞などによる
再生医療が進歩した後に可能となるかもしれ
ない「遺伝病の根本的な治療」に対しても有
用な情報をもたらすものであろう。最後にC
S患者会を通して、CS患者・家族はCSと
いう疾患の認知が低い故に多くの社会的制約
や差別を受けていることが判明した。市民や
医療関係者を対象とした研修会はこれからも
有用と考える。
5) Bradford PT, Goldstein AM, Tamura D,
Khan SG, Ueda T, Boyle J, Oh K-S, Imoto K,
Inui H, Moriwaki S, Emmert S, Pike KM,
Raziuddin A, Plona T, DiGiovanna JJ, Tucker
MA, Kraemer J
Cancer and neurologic
degeneration in xeroderma pigmentosum :
long term follow-up characterizes the role
of DNA repair. Med Genet 48:168-176, (2011)
6) Hiura Y, Nakanishi T, Tanioka M, Takubo
T, Moriwaki S
Identification of
autoantibodies for α‐and γ‐enolase in
serum from a patient with melanoma.
Jpn
Clin Med 2:35-417, (2011)
(邦文)
1) 森脇真一 誤診:しみ、本当は色素性
乾皮症
誤診されている皮膚疾患
(メディカ)レビュー) 印刷中
2) 森脇真一 色素性乾皮症 皮膚疾患 最
新の治療 2011-2012 p116 2011 南江
堂 印刷中
3) 森脇真一 紫外線を用いた皮膚病治療
皮膚科セミナリウム 日本皮膚科学会
雑誌 印刷中
4) 森脇真一 色素性乾皮症 今日の皮膚
疾患治療指針 医学書院 印刷中
5) 森脇真一 光線過敏症患者に対する遮
光指導 第 21 回太陽紫外線防御研究会
シンポジウム報告書 21:49-52, 2011
6) 森脇真一 遺伝性光線過敏症と患者家
族会活動 日本皮膚科学会雑誌、印刷中
7) 森脇真一 遺伝性早老症の病態、診断と
治療 難病と在宅ケア 印刷中
F.健康危険情報
なし
G.研究発表
1. 論文発表
1) Moriwaki S, Takigawa M, Igarashi N,
Nagai Y, Amano H, Ishikawa O, Khan SG,
Kraemer KH
Xeroderma pigmentosum
complementation group G patient with a
novel
homozygous
mutation
and
no
neurological abnormalities, Exp Dermatol
in press.
2) Moriwaki S,Takahashi Y, Shimizu H, Inoue
M, Sugiyama Y, Inoue S Decreased repair of
singlet oxygen-induced DNA damage in
xeroderma pigmentosum group A cells
37
皮膚で見つける全身疾患(メディカルレ
ビュー社) p40 2011
13) 森脇真一 皮膚疾患と看護 小児臨床
看護学各論 小児看護学(改訂 12 版)
p415-425 医学書院 2011
8)
森脇真一 DNA 修復機構と色素性乾皮
症 Monthly Book Derma (全日本病
院出版会) 印刷中
9) 森脇真一 高齢者の光線過敏症をみた
ら? 高齢者の皮膚トラブル FAQ (診
断と治療社) p94-97, 2011
10) 森脇真一 色素性乾皮症の遺伝子診
断 Visual Dermatology 10:448-451,
2011
11) 森脇真一 晩発性皮膚ポルフィリン症
皮膚で見つける全身疾患(メディカルレ
ビュー社) p23 2011
12) 森脇真一 色素性乾皮症バリアント
H.知的財産権の出願・登録状況
1.特許取得
なし
2.実用新案登録
なし
3.その他
なし
38
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
[II]分担研究報告書
8.光線過敏症の簡易な細胞診断方法の確立ならびにコケイン症候群由来細胞を用い
た ips 細胞の樹立、細胞老化の誘導による細胞増殖の抑制機構の解明に関する研究
立石
智(熊本大学発生医学研究所講師)
研究要旨
アイソトープを使用せずに不定期 DNA 合成、RNA 合成回復、DNA 合成回復試験を行い、コケイン
症候群を含む光線過敏症を簡易に細胞診断する方法を開発した。共同研究により、コケイン症
候群の患者様由来の繊維芽細胞から ips 細胞を樹立した。また、癌抑制遺伝子に異常をもつ細
胞に対して、細胞老化を誘導させることにより、細胞増殖を抑制する機構を解明した。
研究分担者
講師)
立石
を区別して診断できることがわかった(図 2)。コケ
イン症候群由来の繊維芽細胞にヤマナカ因子を導
入することにより、ips 細胞を樹立することに成功
した(図 3)。これは、熊本大学発生医学研究所幹細
胞誘導分野(江良教授)との共同研究により行われ
た。
Chk2 は癌抑制遺伝子であり、この遺伝子に異常
をもつと癌のリスクが上昇することが知られてい
る。今回、Chk2 と Rad18 の両方の遺伝子を欠損す
ると、細胞老化が誘導されることを見つけた。
智(熊本大学発生医学研究所
A. 研究目的
これまで、コケイン症候群の細胞診断は、放射
性同位元素を用いる専門的な手技であり、難易度
が高かった。今回、蛍光試薬を用いる細胞診断方
法により、色素性乾皮症(バリアント群を含む)お
よびコケイン症候群の簡易な細胞診断法を確立す
る。また、共同研究者との共同研究により、コケ
イン症候群の患者様由来の繊維芽細胞から ips 細
胞を樹立することを試みる。また、癌抑制遺伝子
に異常をもつ細胞に対して、細胞老化を誘導させ
ることにより、細胞増殖を抑制する機構を解明す
る。
D.考察
蛍光試薬を用いる簡易診断方法では、蛍光顕微
鏡で撮影したデジタル画像をイメージングソフト
ウェアで定量することにより客観的で信頼性のあ
るデータが得られ、色素性乾皮症、色素性乾皮症
バリアントまたはコケイン症候群が疑われる細胞
の診断を簡易に行えることがわかった。コケイン
症候群は酸化ストレスに対して感受性を示すこと
から、ips 細胞を樹立するのは困難であることが予
想されていたが、定法により樹立できることがわ
かった。今後この細胞を用いて、基礎研究および
臨床応用に向けて役立ててゆきたい。癌抑制遺伝
子である Chk2 遺伝子と損傷トレランスに関与する
遺伝子である Rad18 を欠損する細胞で、細胞老化
が誘導されることがわかった。この研究を発展さ
せて、コケイン症候群における細胞老化の発現機
構を明らかにしてゆきたい。
E.結論
コケイン症候群を含む光線過敏症に対する、簡
易な細胞診断法を確立した。コケイン症候群の患
者様由来の繊維芽細胞を用いて、ips 細胞を樹立し
た。Chk2 と Rad18 遺伝子を欠損すると、細胞老化
が誘導されることがわかった。
B.研究方法
細胞診断は、1.紫外線に対する感受性試験 2.
不定期 DNA 合成試験(UDS) 3. RNA 合成回復試験
(RRS) 4. DNA 合成回復試験(DRS)の 4 つの基準に
より、判定する。コケイン症候群の患者様由来の
繊維芽細胞を用いて、ips 細胞を樹立する。
(倫理面での配慮)
当該病院または熊本大学大学院生命科学研究部で
の疫学研究倫理審査委員会およびヒトゲノム・遺
伝子解析研究倫理審査委員会で審理を経て承認さ
れている。
C.研究結果
アイソトープを使用せずに蛍光試薬を用いて、
UDS,RRS または RDS 試験を行うことで簡易に、色素
性乾皮症、色素性乾皮症バリアントまたはコケイ
ン症候群を細胞診断できることがわかった。細胞
診断の流れを、図 1 のフローチャートで示す。今
回、特に蛍光試薬を用いて RDS 試験により、色素
性乾皮症バリアントとコケイン症候群由来の細胞
F.健康危険情報
39
総括研究報告書にまとめて記載。
G.研究発表
1.論文発表
①
*Tateishi, S. A novel Rad18 ubiqitin
ligase-mediated pathway for repair of
camptothecin-induced
DNA damage.
Cell Cycle 10, (13) 2057-2058. (2011)
②
Yanagihara, H., Kobayashi, J., Tateishi,
S., Kato, A., Matsuura, S., Tauchi, H.,
Yamada, K., Takezawa, J., Sugasawa,
K.,
Masutani,
C.,
Hanaoka,
F.,
Weemaes, C. M., Mori, T., Komatsu, K.
NBS1 recruits RAD18 via a RAD6-like
domain and regulates Pol -dependent
translesion DNA synthesis.
Mol. Cell
43, (5) 788-797. (2011)
③
Hendel, A., Krijger, P. H., Diamant, N.,
Goren, Z., Langerak, P., Kim, J.,
ReiBner, T., Lee, K. Y., Geacintov, N. E.,
Carell, T., Myung, K., Tateishi, S.,
D’Andrea, A., Jacobs, H., Livneh, Z.
PCNA ubiquitination is important, but
not
essential
for
translesion
DNA
synthesis in mammalian cells. PLoS
Genet. (9) e1002262. (2011)
2.学会発表
Tateishi, S., Watanabe, K., Sun, J., Iwabuchi, K.,
Yomogida, K. Rad18 is required for
double-stranded break repair and long-term
spermatogenesis, The 34th annual meeting of the
molecular biology society of Japan, Workshop
2011 Dec. 13-16 Yokohama, Japan
(発表誌名巻号・頁・発行年等も記入)
H.知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む。)
1.特許取得
2.実用新案登録
3.その他
40
図 2 DNA 合成回復試験による細
胞診断
各細胞に 15J/m2 の UV を照射し
1mM のカフェイン存在下で 6 時間
培養後に、培地に EdU を加えて 2
時間培養する。細胞に取り込まれ
た EdU を蛍光顕微鏡で可視化し、
ImageJ を用いて定量した。
図3
41
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
[II]分担研究報告書
コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究
9.大脳基底核石灰化症の検討
10.
熊田
聡子 東京都立神経病院神経小児科 医長
研究要旨
コケイン症候群に類似する大脳基底核石灰化を示し、既知の疾患概念に該当しない 2 症
例について検討した。第 1 例は、精神発達遅滞、低身長、痙性対麻痺、末梢神経障害を
示し、6 歳より頭部 CT 上大脳基底核と橋の石灰化が認められた。コケイン症候群の非
典型例である可能性が考えられた。第 2 例は、小児期には非進行性の知的障害を示した
が、20 代より急激に錐体外路症状と認知症が進行した。頭部 CT での大脳基底核石灰化
に加え、頭部 MRI にて黒質に特異な所見を認めた。新しい脳内鉄沈着症であると考え
た。両例とも遺伝子解析を予定している。これらの症例の診断や病態に関する研究が、
コケイン症候群のさらなる病態解明の手がかりとなると思われる。
熊田 聡子 東京都立神経病院神経小児科 医
管切開。精神発達遅滞、構音障害、痙性対麻痺を認
長
め、
軽微な頭部外傷後に嘔吐と意識障害を繰り返す。
低身長と骨年齢遅延あり。末梢神経障害あり。小頭
A. 研究目的
コケイン症候群は頭部 CT 上大脳基底核の石灰化
を特徴とする。同様の所見を示す疾患には、副甲状
腺機能低下症、ミトコンドリア病、Fahr 病、椎体
骨軟骨異形成、先天感染症が挙げられるが、原因の
明らかにできない症例も多い。今回は、既知の疾患
概念に当てはまらない大脳基底核石灰化症 2 例の
診断について検討した。
B. 研究方法
症、網膜色素変性・視神経萎縮、難聴、光線過敏症
は認めない。6 歳より頭部 CT 上、両側淡蒼球・被
殻・尾状核と橋正中部の石灰化が出現。頭部 MRI
では明らかな異常なし。
副甲状腺機能及びカルシウ
ム・リン代謝に異常なし。血液中の乳酸・ピルビン
酸が軽度高値を示すが、髄液では正常範囲。またミ
トコンドリア遺伝子変異の検索、筋生検、筋の呼吸
東京都立神経病院にて診療している症例の内で、
原因不明の大脳基底核石灰化を示した 2 例の臨床
鎖酵素活性検査に異常を認めなかった。
【症例 2】32 歳女性。乳児期より重度精神発達遅
経過ならびに検査所見を明らかにし、
診断について
滞とてんかんを認めたが、25 歳までは症状は安定
考察する。
し、独力で食事摂取や歩行可であった。筋緊張は低
(倫理面への配慮)研究及び研究結果の発表にあ
下し錐体外路症状を認めなかった。
25 歳で頭部 CT
たっては、
患者のプライバシー保護に十分配慮する。
C. 研究結果
が施行され、両側淡蒼球の石灰化を指摘される。頭
部 MRI では、両側淡蒼球・黒質の鉄沈着に加え、
【症例 1】9 歳女児。弟に精神発達遅滞と低身長あ
T1 強調像にて黒質の高信号と内部の線状の低信号
り。本児には先天性声門下狭窄があり 4 歳まで気
域を認めた(図)。
26 歳より錐体外路症状と認知症が
42
急激に進行し、30 歳よりは無動性無言症で臥床状
診断過程を示した。
これらの症例の診断や病態を検
態となった。脳内鉄沈着症の原因遺伝子 PANK2
索することが、
コケイン症候群の病態のさらなる解
及び PLA2G6 異常は認めなかった。
明につながると考える。
F. 研究発表
1. 論文発表
1. Static encephalopathy of childhood with
neurodegeneration in adulthood: the first case
report.
図.26 歳時の神経画像。a. 頭部 CT 両側淡蒼球
Kasai E, Kumada S, Yagishita A, Shimoda K,
に石灰化を認める。また中等度の大脳萎縮を認め
Shirai I, Hachiya Y, Miyachi S, Kurihara E.
る。b. 頭部 MRI T2 強調像。両側淡蒼球の低信号
(Movement Disorders 誌に年内投稿予定ですが
を認め鉄沈着が示唆される。c. 頭部 MRI T1 強調
acccept されますかどうか?)
2. 学会発表
1.第 58 回多摩小児神経懇話会 (2011/6/11)
像。黒質が高信号を示し、内部に線状の低吸収域
が見られる。
D. 考察
Idiopathic neurodegeneration with brain iron
2 症例とも既知の大脳基底核石灰化症には該当
accumulation の一例.
しない。
東京都立神経病院神経小児科
症例 1 は、当初ミトコンドリア病を強く疑った
笠井恵美、熊田聡子、下田木の実、
が、
精査にてこれを示唆する所見は得られなかった。 八谷靖夫、栗原栄二
最近コケイン症候群 typeB (CSB)の原因となる
2.
ERCC6 の変異で、神経症状を呈さない紫外線高感
東京都立神経病院神経小児科
受性症候群を生じうることが報告された。また、
白井育子、熊田聡子、笠井恵美、下田木の実、八谷
ERCC6 の変異により、皮膚症状が軽微で眼科的所
靖夫、栗原栄二 嘔吐後に傾眠を伴い、基底核の石
見を欠くが、
中年以降に頭蓋内石灰化と進行性の神
灰化、精神遅滞、痙性両麻痺、低身長、構音障害を
経症状を生じた症例も報告されている。本例も、コ
呈するが、
ミトコンドリア病を示唆する検査所見を
ケイン症候群の非典型例の可能性も考えられ、
今後
欠く 9 歳女児. 第 59 回多摩小児神経懇話会
皮膚線維芽細胞の紫外線感受性やコケイン症候群
(2011/12/3)
原因遺伝子の検索を予定している。
症例 2 は、特異な臨床経過と画像所見を呈し、
脳内鉄沈着症に属する新しい疾患の可能性がある。
G. 知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む)
1. 特許取得 なし。
調査の結果、本邦には本例の他に 2 例、同一疾患
と考えられる症例の存在することが判明した。
現在
2. 実用新案登録 なし。
エクソーム配列解析を用いた遺伝子の同定を準備
中である。
3. その他 なし。
E. 結論
大脳基底核石灰化を呈した診断未定の 2 症例の
43
平成 23 年度厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
[II]分担研究報告書
研究課題「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成ための研究班」
9.コケイン症候群の腎障害と酸化ストレス
田沼直之(都立府中療育センター・小児科医長)
研究要旨
コケイン症候群(CS)患者は小頭症、小脳失調、感音性難聴、末梢神経障害など多彩な
神経症状を呈する。さらに腎障害は死亡例の半数以上に認め CS の生命予後を大きく左右
する。昨年度までの研究成果で CS 患者の神経変性での酸化ストレスの関与を明らかにし
てきたが、今年度は CS の腎障害における酸化ストレスの関与を検討した。
研究分担者 田沼直之(都立府中療育センター・
小児科医長)
A.研究目的
コケイン症候群(CS)は DNA 修復機構のうち
転写関連の塩基損傷修復機構の遺伝的欠損によ
り生じる疾患で、発育障害、老人様顔貌、日光過
敏症、白内障、網膜色素変性、感音性難聴、末梢
神経障害、腎障害などがみられる。我々はこれま
でに剖検脳での神経病理学的解析や尿中酸化ス
トレスマーカー解析を通じて CS 患者の神経変性
での酸化ストレスの関与を明らかにしてきた。
一方、本研究班の平成 21 年度の報告で CS にお
ける腎障害について、死亡例では半数以上で認め
られたのに対し、生存例では少ないことがわかっ
た。これまでの報告から CS の腎障害は病理学的
には糸球体硬化症、糸球体基底膜の肥厚、尿細管
障害、間質性変化が認められているが、発症機序
については十分に分かっていない。本年度は剖検
例において腎障害に酸化ストレスが関与してい
るかを免疫組織学的に検討するとともに、腎障害
マーカーとしても最近注目されている Klotho 蛋
白を CS 剖検腎組織で免疫染色し、CS 患者の血清
を用いて ELISA 法にて測定した。
B.研究方法
(1)CS 剖検例 4 例(死亡時年齢 18~35 歳)と
同じく DNA 修復機構に異常がある A 群色素性乾
皮症(XPA)2 例、疾患対照として新生児仮死後
遺症 2 例、急性脳症後遺症 1 例の腎病変を検索し
た。DNA・脂質に対する酸化ストレスマーカーと
し て 、 そ れ ぞ れ 8-hydroxy-2’-deoxyguanosine
(8-OHdG)、4-hydroxy-2-nonenal(4-HNE)、カル
ボ ニ ル 蛋 白 の 指 標 と し て advanced glycation
end-product(AGE)、抗酸化酵素として、Cu/ZnSOD、
44
MnSOD の免疫染色を行った。さらに腎障害マー
カーKlotho 蛋白の免疫染色も実施した。
(2)Klotho 蛋白については CS 患者 6 例(4~31
歳)、XPA 患者 5 例、D 群色素性乾皮症(XPD)
患者 1 例、Werner 症候群患者 1 例の血清と尿を用
いて ELISA 測定(免疫生物研究所製)も合わせて
実施した。
(倫理面への配慮)
本研究計画は府中療育センターと協力医療機
関の倫理委員会から承認されている。生体試料・
剖検組織の収集にあたっては十分な説明の上で
の書面による同意を患者家族から受けている。
C.研究結果
(1)剖検腎を用いた解析では CS の 4 例中 3 例
で糸球体病変、尿細管病変を認めた。酸化ストレ
スマーカーの免疫染色では 8-OHdG、4-HNE はい
ずれも陽性所見を認めず、AGE は CS4 例、XPA2
例、仮死後遺症 2 例で尿細管上皮が陽性に染色し
た(表参照)。また抗酸化酵素は近位尿細管上皮
細胞、糸球体ボーマン腔などでいずれも表出し、
抗酸化システムは保たれていた。
(2)Klotho 免疫染色では CS 例の尿細管は XP
や疾患対照と同様に陽性染色を示し、発現量の低
下は認めなかった。ELISA においても血清サンプ
ルで同様の所見が確認されたが(図参照)、尿サ
ンプルではサンプル間のばらつきが目立ち、一定
の傾向が得られなかった。
D.考察
従来の報告にもあるように、CS 剖検例では 4
例中 3 例に腎障害を認めた。酸化ストレスマーカ
ーの免疫染色の結果から、CS 腎病変では AGE 以
外陽性染色は得られなかった。また AGE は腎病
変のない疾患コントロールでも陽性のため、CS
の腎病変に直接的には関与していないと考えら
れた。
klotho 遺伝子は、カルシウムホメオスタシスの
中枢である腎尿細管、脳の脈絡膜、副甲状腺ホル
モンを産生する副甲状腺の主細胞で強く発現し
ている。klotho 発現欠如マウス(klotho マウス)は、
多彩なヒト型の老化徴候を示し、生後約 100 日で
老化により死亡することから、老化モデルマウス
として解析が進められている。さらに、klotho 遺
伝子発現・蛋白量が腎不全患者の腎組織で顕著に
低下しているという報告(Koh N et al.; BBRC:
2001;280:1015-1020)があるため、CS 患者の腎障害
にも関与している可能性を考え、今回免疫染色と
ELISA 解析を行った。今回の結果から Klotho 蛋白
は CS 腎病変において発現量の低下を認めず、血
清 Klotho も正常レベルに保たれていた。残念なが
ら現時点において CS 腎病変の発症機序は明らか
にできなかった。今後さらなる解析が必要と思わ
れる。
E.結論
CS の腎障害には酸化ストレスが直接的に関与し
ていることは証明できなかった。今後さらに解析
を進め病態を明らかにしていくことが必要であ
る。
1) 田沼直之.急性脳症とバイオマーカー.小児
科診療 74: 931-36, 2011.
2) 安西有紀,林 雅晴,松岡正樹,高橋宏行,
宮田理英,田沼直之,大矢達男.パンデミック
(H1N1)2009 インフルエンザ感染により脳幹病
変を呈した急性脳症の 1 例.脳と発達 43: 57-9,
2011.
3) Hayashi M, Miwa-Saito N, Tanuma N, Kubota
M. Brain vascular changes in Cockayne syndrome.
Neuropathology. 2011 May 26.[Epub ahead of
print]
4) Miyata R, Tanuma N, Hayashi M, et al.
Oxidative stress in patients with clinically mild
encephalitis/encephalopathy with a reversible
splenial lesion (MERS). Brain Dev. 34: 124-7,
2012.
2.学会発表
1) 田沼直之ら.急性脳症治療にエダラボンは
有効か? 第 53 回日本小児神経学会総会, 横
浜 (2011, 5.26).
2) 田沼直之ら.重症心身障害児者の睡眠覚醒
リズムとメラトニン.第 37 回日本重症心身障
害学会学術集会, 徳島 (2011, 9.30).
H.知的所有権の出願・取得状況
(予定を含む)
該当するものは無い。
G.研究発表
1.論文発表
45
厚生労働科学研究費補助金(難治性疾患克服研究事業)
[II]分担研究報告書
10. XPG null マウスにおけるコケイン様臨床症状に関する研究
研究分担者 中根 裕信 鳥取大学医学部機能形態統御学講座ゲノム形態学分野・助教
研究要旨
XPG null マウスは、成長障害、小脳失調症状、短寿命を示す。本研究より同マウス関節内脂肪の異
常を見いだし、コケイン症候群の関節拘縮の病態解析モデルとしての可能性が示された。また、XPG
null マウス臓器の遺伝子発現異常も見られ機能との関連を調べている。上記より、コケイン様臨床症
状の病態の解析に XPG null マウスが有用である可能性が示された
XPG null マウスにおけるコケイン様臨床症状と各臓
器の病変との関係を病理学的及び分子生物学的に検討
し、同マウスがコケイン症候群の疾患動物としての有用
性を調べることを目的とする。
に着目することで、病理所見として関節内脂肪組織の異
常を示せ、症状・病変から病態の一部を明らかにできた
。今後、さらに末梢神経の関連を解析する必要がある。
また、コケイン症候群の患者さんでは腎障害が生命予後
に深く関わるため、その病態解明が急務である。そこで
、XPG null マウス腎臓を検索し、腎機能に関わる遺伝
子発現に異常がみられた。今後の腎機能との関連の解析
を待つが、病変を示さない XPG null マウス臓器の解析
から未知の病態を解明できる可能性があると考えてい
る。
B.研究方法
E.結論
XPG nullマウスにおけるコケイン様臨床症状の検討
するために、各日令のXPG nullマウス(〜3週令)の組
織検索を行う。検索には、各日令マウスを灌流固定した
標本を作成し、光学顕微鏡(場合によっては透過電子顕
微鏡を用いて)で検索する。コケインの剖検症例の所見
を参考にし、以下の点に留意する。同マウスの皮下組織
、性腺、網膜、聴覚器、小脳[小脳失調]、関節[関節拘
縮、亀背]、腎臓[慢性腎臓病]等を検索する。 [ ]内は
、コケイン症候群の臨床症状を示す。
XPG null マウスのコケイン症候群の関節拘縮の病態モ
デルとしての可能性が示された。また、XPG null マウ
ス臓器の遺伝子発現解析から、同マウスがコケイン様臨
床症状の未知の病態解析モデルとしての可能性も示さ
れた。
研究分担者 中根 裕信 鳥取大学医学部機能形態統
御学講座ゲノム形態学分野・助教
A. 研究目的
F.健康危険情報
総括研究報告書にまとめて記載。
(倫理面での配慮)
G.研究発表
本研究は、鳥取大学・動物実験安全委員会に実験計画
の承認を受けて実施している。
1.論文発表
C.研究結果
今後発表予定。
XPG null マウスにおけるコケイン様臨床症状の検討
の過程で、同マウスの歩行異常が、小脳の異常だけでな
く関節屈曲制限にも一因があると考えた。同マウスの膝
関節と足関節の病理学的検索から、関節内脂肪組織の異
常による関節腔の狭小化が観察された。また、予備実験
で、顕著な病変を示さない XPG null マウス腎臓におい
て腎機能に関与するいくつかの遺伝子発現に差がみら
れ、腎機能との関連を解析中である。
2.学会発表
1) Hironobu Nakane et al.
“Histological analysis of impaired spermatogenesis in
xeroderma pigmentosum group A gene (Xpa)-deficient
mice”,
第 34 回日本分子生物学会,横浜市(2011.12.13-16)
D.考察
XPG null マウスの歩行異常の症状を関節の屈曲制限
2) Hironobu Nakane et al.
46
“Histological analysis of adipose tissues in Xpg null mice”
第 117 回日本解剖学会総会・全国学術総会、山梨県甲
府市(2012.3.26-28) 発表予定
H.知的財産権の出願・登録状況
(予定を含む。
)
1.特許取得
なし
2.実用新案登録
なし
3.その他
なし
47
研究成果の刊行に関する一覧表
書籍
著者氏名
論文タイトル名
書籍全体の
編集者名
書 籍 名
出版社名 出版地
Hayashi M, T Oxidative stress in devel Ahmad S,
anuma N, Mi opmental brain disorders.
yata R
In: Ahmad S, eds. Austin: Lan
Neurodegenerat des Bioscien
ive diseases.
ce.
森脇真一
皮膚疾患 最新の 南江堂
色素性乾皮症
出版年
ページ
2011
東京
2011
印刷中
治療2011-2012
森脇真一
色素性乾皮症
今日の皮膚疾患治 医学書院
東京
2011
印刷中
森脇真一
皮膚疾患と看護
療指針
小児臨床看護学各 医学書院
東京
2011
p415-425
高齢者の光線過敏症を
(改訂12版)
高齢者の皮膚トラ 診断と治療 東京
2011
p94-97,
みたら?
ブルFAQ
森脇真一
誤診:しみ、本当は色素
誤診されている皮 メディカル 東京
2012
印刷中
森脇真一
性乾皮症
晩発性皮膚ポルフィリ
膚疾患
レビュー
皮膚で見つける全 メディカル 東京
2011
P23
ン症
身疾患
色素性乾皮症バリアン
皮膚で見つける全 メディカル 東京
2011
P40
ト
身疾患
論
森脇真一
森脇真一
小児看護学
社
レビュー社
レビュー社
雑誌
発表者氏名
論文タイトル名
発表誌名
巻号
ページ
出版年
Kubota M, Chida J, H Thermolabile CPT II variants a Brain Dev
oshino H, Kashii H, O nd low blood ATP levels are
zawa H, Koide A, Hos closely related to severity of ac
hino A, Koyama A, M ute encephalopathy in Japanese
izuno Y, Yamaguchi children.
M, Yao D, Yao M, Ki
do H
34
Hoshino A, Saitoh M, Epidemiology of acute encepha Brain Dev
Oka A, Okumura A, lopathy in Japan, with emphasi
Kubota M, Saito Y, Ta s on the association of viruses
kanashi JI, Hirose S, Y and syndromes.
amagata T, Yamanouch
i H, Mizuguchi M
PMID: 2192457 [Epub ahead of 2011
print]
48
20-7
2012
Saitoh M, Shinohara Mutations of the SCN1A gene Epilepsia.
M, Hoshino H, Kubota in acute encephalopathy.
M, Amemiya K, Taka
nashi JL, Hwang SK,
Hirose S, Mizuguchi
M.
53
558-564
2012
In press
2012
75
In press
2012
転倒する発作
重症痙縮患児(者)の治療意 日本重症心身障害 37
In press
2012
61-64
2011
Nakamura T, Morimoto Langerhans cell histiocytosis wi Auris Nasus Laryn Feb 9
x
N, Goto F, Shioda Y, th disequilibrium.
Hoshino H, Kubota
M, Taiji H.
特集/問診で決まるてんかん 小児科診療
久保田雅也
診療
久保田雅也
学会誌
義と治療選択のポイント
重症痙縮患児(者)の病態と
野崎誠、佐々木りか子、小児期のレクリングハウゼン 日レ学会
土井亜紀子、重松由起 病患者は初診時に何割が確定
子、久保田雅也、関敦
仁、東範行、小崎里華、診断できるか?
新関寛徳
Hayashi M, Oto T, Shi Lesions of cortical GABAergic Brain Dev
2
DOI: 10.1016/j. In press
braindev.2011.0
6.015
2011
DOI: 10.1111/j. In press
1440-1789.2011.
01241.x.
2011
31
280-285
2011
Visual Dermatolog 10
y
456-458
2011
Suzuki, T., Lu, J., Hu, Retrovirus-mediated transduction Oncology Reports, 25
G., Kita, K., Suzuki, N of short hairpin RNA gene for
879-885
2011
1685-1691
2011
oda K, Fukatsu R.
interneurons and acetylcholine
neurons in xeroderma
Hayashi M, Saito-Miwa Brain vascular changes in
N, Tanuma N, Kubot Cockayne syndrome
a M.
Neuropathology
Hayashi M, Miyata R, Decrease in acetylcholinergic
Neuropathology
Tanuma N
neurons in the pedunculopontine
t
tl l i
ti t
色素性乾皮症の神経病変.
林雅晴.
GRP78 fails to downregulate
GRP78 expression but leads to
Jiang, X., Ren, Q., Che
n, S-P., Tong X-B., Do
ng, M., Sugaya S, Tan
k
i
ki
UVC mutagenicity is suppressed Biosci. Biotechnol. 75
in Japanese miso-treated human Biochem.,
RSa cells, possibly via GRP78
expression.
49
Ren, Q., Jiang, X., Che Study of tap and first-class-river Chiba Medical J. 87
n, S-P., Tong, X-B., G water quality in eastern Japan
uo, W-Z., Suzuki, T.,
Sugaya, S., Tanaka, T., using a cytotoxicity test
Kita, K., Suzuki, N.
189-194
2011
Radiat. Res.
DOI: 10.1667/R In press
R2561.1.
2011
Int. J. Oncol
In press
2012
Endo M, Fujii K, Su Nationwide Survey of Nevoid Cancer Epidemiolo
gita K, Saito K, Koh Basal Cell Carcinoma Syndrome gy, Biomarkers &
no Y, Miyashita T.
Prevention
in Japan Revealing the Low
n press
2012
Sugaya S, Tanaka K, Studies on the amounts of serum Chiba Medical J. 87
Akagi T, Kasetani hydroperoxide, MMP-3, urinary
T, Qiu-Ji Z, Guo
WZ, Udagawa A, No 8-OHdG, and salivary IgA in
mura J, Sugita K, O rheumatoid arthritis patients who
hta R, Suzuki N
experienced Shinrin-yoku
In press
2011
130-132
2011
In press
2012
n press
2012
n press
2012
Kita, K., Sugita, K., C Extracellular recombinant
hen, S-P., Suzuki, T., S annexin II confers UVC
ugaya, S., Tanaka, T.,
Jin, Y-H., Satoh, T., T resistance and increases the
ong, X-B., Suzuki, N Bcl-xL to Bax protein ratios in
h man UVC sensiti e cells
Tanaka, T., Sugaya, S., Inhibition of cell viability by
Kita, K., Arai, M., Ka human IFN-β is mediated by
nda, T., Fujii, K., Imaz
eki, F., Sugita, K., Yok microRNA-431
osuka, O., Suzuki, N.
(forest-air bathing and walking).
Sugita K, Uesaka T, A family-based association study IMJ
Nomura J, Sugita K does not support DYX1C1 as a
i, Inagaki M
candidate gene in dyslexia in
Moriwaki S, Takigawa Xeroderma pigmentosum
Exp Dermatol
M, Igarashi N, Nagai complementation group G
Y, Amano H, Ishikawa
O, Khan SG, Kraeme patient with a novel homozygous
KH
J Derm Sci
Moriwaki S,Takahashi Decreased repair of singlet
Y, Shimizu H, Inoue oxygen-induced DNA damage in
M, Sugiyama Y, Inoue
xeroderma pigmentosum group
S
A cells determined by plasmid
Moriwaki S, Yamashita Prenatal diagnosis of xeroderma J Dermatol
Y, Nakamura S, Fujit pigmentosum group A in Japan
a D, Kohyama J, Taki
gawa M, Ohmichi H
50
18
Hirata Y, Koga S, Fuk 5-Aminolevulinic acid (ALA) - J Dermatoy
ui N, Yu A, Koshida mediated photodynamic therapy
S, Kosaka Y, Moriwak
to superficial malignant skin
iS
Bradford PT, Goldstein
AM, Tamura D, Kha
n SG, Ueda T, Boyle
J, Oh K-S, Imoto K,
Inui H, Moriwaki S, E
mmert S, Pike KM, R
aziuddin A, Plona T,
DiGiovanna JJ, Tucker
MA, Kraemer KH
Cancer and neurologic
J Med Genet
38
748-754,
2011
48
168-176
2011
35-41
2011
49-52
2011
印刷中
2012
印刷中
2012
degeneration in xeroderma
pigmentosum : long term
follow-up characterizes the role
of DNA repair
Hiura Y, Nakanishi T, Identification of autoantibodies Jpn Clin Med
2
Tanioka M, Takubo T, for α-and γ-enolase in serum
Moriwaki S
from a patient with melanoma
光線過敏症患者に対する遮光 第21回太陽紫外線 21
森脇真一
防御研究会シンポ
指導
ジウム報告書
森脇真一
紫外線を用いた皮膚病治療 日本皮膚科学会雑
誌
森脇真一
皮膚科セミナリウム
遺伝性光線過敏症と患者家族 日本皮膚科学会雑
誌
会活動
森脇真一
遺伝性早老症の病態、診断と 難病と在宅ケア
印刷中
2012
森脇真一
治療
色素性乾皮症の遺伝子診断
448-451
2011
2265-7.
2010
180-4
2011
74(6)
931-936
2011
43(1)
57-59
2011
Visual Dermatolog 10
y
Kanazawa K, Kumada Choreo-ballistic movements in a Mov Disord
S, Kato M, Saitsu H, case carrying a missense
Kurihara E, Matsumoto
mutation in syntaxin binding
N
25
熊田聡子、横地房子、 脳深部刺激療法施行後長期経 機能的脳神経外科 50
谷口真、沖山亮一、石 過を観察しえたパントテン酸
井一彦、磯尾綾子、川 キナーゼ関連神経変性の一
崎隆、木村活生、青木 例.
田沼直之
急性脳症とバイオマーカー
小児科診療
安西有紀,林 雅晴, パンデミック(H1N1)2009 イ 脳と発達
松岡正樹,高橋宏行, ンフルエンザ感染により脳幹
宮田理英,田沼直之, 病変を呈した急性脳症の 1 例
51
Miyata R, Tanuma N,
Oxidative stress in patients with Brain Dev
34
124-127
2012
10
2057-2058
2011
Yanagihara, H., Kob NBS1 recruits RAD18 via a Mol. Cell
ayashi, J., Tateishi, RAD6-like domain and
S., Kato, A., Matsuu
ra, S., Tauchi, H., Y regulates Pol -dependent
amada, K., Takezaw translesion DNA synthesis.
a, J., Sugasawa, K.,
Masutani, C., Hana
oka, F., Weemaes,
C. M., Mori, T., Ko
matsu, K
43
788-797
2011
Hendel, A., Krijger, PCNA ubiquitination is
PLoS Genet
P. H., Diamant, N., important, but not essential
Goren, Z., Langerak,
P., Kim, J., ReiBne for translesion DNA
r, T., Lee, K. Y., Ge synthesis in mammalian
acintov, N. E., Carel
l, T., Myung, K., Ta cells
9
e1002262.
2011
In press
2012
Hayashi M, Imamura T, clinically mild
Takanashi JI, Nagata R, encephalitis/encephalopathy with
Okumura A, Kashii H,
a reversible splenial lesion
Tateishi, S.
A novel Rad18 ubiqitin
Cell Cycle
ligase-mediated pathway for
repair of
teishi, S., D’Andrea,
A., Jacobs, H., Livne
h, Z
Hashimoto, K., Cho, The vital role of pol ζ and
J Biol Chem
Y., Yang, I., Akagi, REV1 in mutagenic, but not
J., Ohashi, E., Tate
ishi, S., Wind, N., H correct, DNA synthesis
anaoka, F., Ohmori, across benzo[]pyrene-dG
H., Moriya, M
and the recruitment of pol ζ
52
「コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究」班ホームページ
http://www.cockayneresearchcare.jp/
53
班員名簿 平成23年度
コケイン症候群の病態解明および治療とケアの指針作成のための研究班
区
分
氏
名
所
属
等
職
研究代表者
久保田雅也
国立成育医療研究センター神経内科
研究分担者
杉田 克生
千葉大学教育学部養護教育学基礎医科 教授
名
医長
学部門
林 雅晴
東京都医学総合研究所 こどもの脳プロ
副参事研究員
ジェクト
森脇 真一
大阪医科大学感覚器機能形態医学講座 教授
皮膚科学
中根 裕信
鳥取大学医学部機能形態統御学講座ゲ
助教
ノム形態学分野
立石 智
熊本大学 発生医学研究所 発生制御
講師
部門
研究協力者
田沼 直之
都立府中療育センター小児科
医長
熊田 聡子
都立神経病院神経小児科
医長
柏井 洋文
国立成育医療研究センター神経内科
医員
太田さやか
国立成育医療研究センター神経内科
フェロー
寺嶋 宙
国立成育医療研究センター神経内科
フェロー
安藤亜希
国立成育医療研究センター神経内科
フェロー
小俣 卓
千葉県子ども病院神経科
医長
杉田記代子
東京歯科大学市川総合病院小児科
非常勤医師
喜多 和子
千葉大学大学院医学研究院環境生化学 講師
講座
54
Fly UP