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アナログ 回 路 設 計

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アナログ 回 路 設 計
ディジタル処理
のための
アナログ 回 路 設 計
連 載
交流電圧の表し方と実効値への変換回路の動作
第
11 回
ΔΣ型が RMS − DC 変換に使われ始めた理由
松井 邦彦
Kunihiko Matsui
今回のターゲット回路ブロック
センサ入力信号
RMS-DC
コンバータ回路
基準電圧源
クロック(水晶発振器)
ロー・パス・
フィルタ
(S /N 改善用)
アナログ
入力
温度センサ,
磁気センサ.
圧力センサなど
温度補償型ツェナ-ダイオード,
埋め込み型ツェナー・ダイオード,
バンド・ギャップ・リファレンス
ディジタル
出力
ΔΣ 型A-Dコンバータ
マイコンや DSP
ディスプレイ
分かるようになること
・交流電圧の大きさの表し方
・実効値 RMS とは
・実効値のいろいろな求め方と使い方
・ RMS − DC コンバータの中身と使い方
交流(AC : Alternating Current)電圧は電流の流
交流電圧の大きさを把握したい
れる向きが変わる電圧で,その値は時々刻々変化し
ます.この扱いにくい AC 電圧を扱いやすい DC(直
流)電圧に変換するのが,RMS − DC コンバータで
● 交流電圧の大きさの表し方
す.平均値のように波形を選ぶことなく AC 電圧の
大きさの指標を得られ,測定器やモータ電流の計測
常に変化する AC 電圧はピーク値,平均値,実効値
のどれかで表すのが普通です.
に使われています.現在,RMS − DC コンバータは,
AD536 や AD636 のようなアナログ演算型が一般的
図 11 − 1 は正弦波の場合を例にして説明します.
Zピーク値(peak)
です.今後は,ΔΣ変調を利用した IC が出てきた
図 11 − 1 のように,電圧の最大値や最小値を示しま
ように,アナログ回路よりも安価な IC 化に適した,
DSP を応用するディジタル直接演算方式の専用 IC
す.ピーク値にはゼロから最大値を表す場合(0 − P 値,
ゼロ・ツー・ピーク値と呼ぶ)と,最大値と最小値の
が登場してくるかもしれません.
差で表す場合(P − P 値,ピーク・ツー・ピーク値と呼
Vin
絶対値回路
|Vin|
Vout =|Vin|
LPF
2R
ピーク値
平均値 実効値
VM
VM
2
ピーク・
πVM 2
ツー・
ピーク値
2VM
C
R
平均値の出力を
VR で 1.11 倍に
2R
Vin
R
R
VR
しておけば,実
効値として読み
とれる
(正弦波の場合)
Vout
周期 T
図 11 − 1 AC 電圧の表し方
絶対値回路
平均値,実効値は正弦波の場合.波形の形が
図 11 − 2 AC 電圧の平均値を得られる回路
異なると係数は異なる
正弦波の場合,平均値を 1.11 倍すると実効値と等しい値になる
2008 年 6 月号
LPF
223
ぶ)とがあります.
Z平均値(average)
Z平均値から実効値を得る簡易的な方法
平均値は電力とは直接関係ないのですが,回路構成
次式のように,AC 電圧の半周期の時間的な平均電
圧になります.Vin の平均値を VA[Vave]とすると,
が簡単なため実効値にスケーリング
(目盛り付け)
され
て使われています.これを平均値検波−実効値指示方
VA = V
 ̄ ̄
(11 − 1)
in ……………………………………
式と言います.
と表記します.平均値は図 11 − 2 のように,AC 電圧
を絶対値回路で整流して,ロー・パス・フィルタ
例えば,表 11 − 1 より正弦波の平均値は実効値より
小さい値
(実効値の 1/1.11 倍)
になっていますから,平
LPF を通すだけで得ることができます.
Z実効値 RMS
均値を 1.11 倍すれば,実効値と同じ値を示します.
ところが,これは正弦波だけに限った場合の話で,
AC 電圧の 2 乗平均(Root Mean Square)
を示します.
V in の実効値を V E[V RMS]とすると,次式で表され
ます.
2 …………………………………
VE =√V
 ̄
(11 − 2)
 ̄
 ̄
in ̄
RMS − DC コンバータ回路は平均値回路に比べて回
路が難しくなります.自分で作ることもできますが,
通常は RMS − DC コンバータ IC を使います.
方形波や DC 電圧ではスケーリングしたことにより逆
に精度が悪くなります.
平均値から実効値を求めることはやや無理がありま
すが,安価に回路を組めるためロー・コストのディジ
タル・マルチ・メータではほとんどこの方法を採用し
ています.しかし,波形に左右されないで高精度に実
効値を測定するために,最近では RMS − DC コンバー
タを使った方式になってきています.
● 実効値は平均値よりも正確な電力を算出できる
実効値は 2 乗平均ですから,基本的には DC と同じ
電力(パワー)をもつ電圧のことです.
したがって,AC 電圧を実効値で表すと,AC およ
び DC の区別なく電力を表すのに使用できるので,と
実効値をアナログ演算方式で
出力する IC の特性
● 実験に使った AD536A の RMS − DC 変換方法
ΔΣ型 RMS − DC コンバータ IC を紹介したいのです
が,その前に,従来型の IC を実験してみます.ΔΣ
型と重なる点も多いので,参考になるかと思います.
ても合理的な優れた表現方法です.
表 11 − 1 実効値と平均値の関係
波 形
VM
正弦波
VM
方形波
(あるいは DC)
実効値
[VRMS]
平均値
[VAV]
スケーリング
係数
実効値
平均値
クレスト・
ファクタ CF
ピーク値 V M
実効値
VM / √ ̄
2
= 0.707V M
2
π VM
= 0.637V M
1.11
√
 ̄
2
VM
VM
1
1
VM / √ ̄
3
VM /2
1.155
√
 ̄
3
VM √D
 ̄
VMD
1/ √D
 ̄
1/ √D
 ̄
VM
三角波
T
VM
パルス波
ガウス・ノイズ
ピーク値やクレス
ト・ファクタは理
論的には無限
クレスト・ファク
タで決まるピーク
を越える時間の割
合が q
224
クレスト・
ファクタ
D :デューティ比
5
4
3
2
1
VE
−7
−5
−3
log q
−1
2
π VE
= 0.798V E
π
2 = 1.253
実用上は
4∼6を
使う
CF
1
2
3
3.3
3.9
4
4.4
4.9
6
q
32 %
4.6 %
0.37 %
0.1 %
0.01 %
63 ppm
10 ppm
1 ppm
2×10−8
2008 年 6 月号
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