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ふるさとへの愛と誇りをもつ児童生徒の育成

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ふるさとへの愛と誇りをもつ児童生徒の育成
Ⅰ
研究主題
ふるさとへの愛と誇りをもつ児童生徒の育成
~
総合的な学習の時間における地域素材の教材化を中心として
~
Ⅱ
主題設定の理由
急激に変化する国際社会の中で、我が国では、大都市及びその周辺地域に人口が集中し発展を遂
げる一方、地方の若者がふるさとを離れ、過疎化や高齢化が進むという問題が生じている。また、
児童生徒にかかわる教育的課題も様々にある。中でも、人間関係の希薄化と自然体験や社会体験の
減少は、児童生徒の人間形成に深くかかわる課題である。人間関係の希薄化は、地域の年中行事や
諸活動に積極的にかかわらなくなってきたという大人社会の問題でもある。自然体験や社会体験に
ついては、児童生徒の身近にそれらを行う場や機会が少なくなってきたという実態を踏まえ、今後
も学校教育の様々な場で取り入れていかなくてはならない。そのためには、まず地域の自然、文化
財や産業を知ることが大切である。また、若者のふるさと離れや人間関係の希薄化に対応するため
には、ふるさとのよさや課題点を学び、地域社会の中での自己の在り方や生き方を考えさせる教育
が必要である。このような現状を受けて、「宮崎ならではの教育」の中でも、ふるさと教育の充実
が掲げられている。
高鍋町には、石井十次や高鍋城(舞鶴城)跡、高鍋湿原など、郷土の偉人や貴重な文化財等がた
くさん存在する。しかし、児童生徒がそれらを学ぶ機会が少なく、ふるさとへの愛着が薄いという
実態を受け、昨年度から「ふるさと学習」の研究に取り組んできた。その結果、ふるさとのよさを
知れば、興味・関心を高めることができるという成果を上げることができた。一方、ふるさと学習
を小中学校9年間の教育課程のどこに位置付けていくかという小中連携に関する課題、地域素材の
効果的な取り上げ方や提示の仕方といった授業に関する課題など、今後も工夫し研究を深めていく
べきことが明らかになった。また、1単元の授業や限られた教師の実践だけでふるさとへの思いを
深めていくことは困難であり、小中学校9年間を通して継続して実践していかなくてはならないこ
とも確認できた。
そこで、本年度も引き続き「ふるさと学習」の研究と実践を行い、小中学校が連携して9年間を
通して取り組んでいくために、総合的な学習の時間を中心とした実践が望ましいと考えた。また、
児童生徒にふるさとのよさやすばらしさを実感させるためには、自然体験や社会体験をできるだけ
多く取り入れることが効果的であると考えた。そして、本年度も、まずは児童生徒のふるさとへの
興味・関心を高めることに主眼を置き、次第にふるさとへの思いを深めていくようにするとともに、
ふるさととのかかわりの中で自己の在り方や生き方を見付けさせることをねらいとして、本主題及
び副題を設定した。
Ⅲ
研究目的
小中学校9年間を通して、高鍋町の地域素材を教材化した授業実践を行うことで、ふるさとへの
興味・関心とともに、ふるさとへの愛と誇りをもつ児童生徒を育成する。
Ⅳ
研究仮説
小中学校9年間を通して「ふるさと学習」を教育課程の中に位置付け、総合的な学習の時間の
年間指導計画を工夫すれば、系統的・継続的な実践ができ、自然体験や社会体験を充実させるこ
とで、ふるさと高鍋町への興味・関心を高めることができるであろう。
1
2
総合的な学習の時間において、地域素材を生かせる単元指導計画や学習指導過程を工夫すると
ともに、児童生徒の意識調査をしながら指導の工夫改善を図れば、ふるさと高鍋町への興味・関
心を高め、ふるさとへの愛と誇りをもたせていくことができるであろう。
Ⅴ
研究内容
系統的な年間指導計画の工夫
(1) 地域素材の選定と年間指導計画への位置付け
(2) 自然体験や社会体験の充実
(3) 「ふるさとマップ」の作成と活用
1
2
単元指導計画と学習指導過程及び評価の工夫
(1) 地域素材を生かせる単元指導計画の工夫
(2) 児童の興味・関心を高める学習指導過程の工夫
(3) 児童生徒の意識調査
12─1
Ⅵ
研究の全体構想
宮崎ならではの教育
地域の実態
憲法・関係法規
学習指導要領
町教育方針
○ ふるさとを愛し、自分に自信と誇りを持つ子ども
○ 夢や希望を抱き、社会に貢献する気概を持つ子ども
児童生徒の実態
保護者の願い
【研究主題】
ふるさとへの愛と誇りをもつ児童生徒の育成
~
小
中
連
携
に
よ
る
一
貫
教
育
の
推
進
1
~
町
内
の
小
中
学
校
に
よ
る
合
同
研
究
【研究で目指す教師、児童生徒像】
ふるさと学習の必要性やよさに気付き、授業で積極的に活用する教師
ふるさとへの興味・関心をもち、愛と誇りをもつ児童生徒
教師像
児童生徒像
高
鍋
町
の
地
域
性
Ⅶ
総合的な学習の時間における地域素材の教材化を中心として
【研究の仮説】
小中学校9年間を通して「ふるさと 2 総合的な学習の時間において、地域
学習」を教育課程の中に位置付け、総
素材を生かせる単元指導計画や学習指
合的な学習の時間の年間指導計画を工
導過程を工夫するとともに、児童生徒
夫すれば、系統的・継続的な実践がで
の意識調査をしながら指導の工夫改善
き、自然体験や社会体験を充実させる
を図れば、ふるさと高鍋町への興味・
ことで、ふるさと高鍋町への興味・関
関心を高め、ふるさとへの愛と誇りを
心を高めることができるであろう。
もたせていくことができるであろう。
【研究内容】
系統的な年間指導計画の工夫
2 単元指導計画と学習指導過程及
び評価の工夫
(1) 地域素材の選定と年間指導計
(1) 地域素材を生かせる単元指導
画への位置付け
計画の工夫
(2) 自然体験や社会体験の充実
(2) 児童の興味・関心を高める学
(3) 「ふるさとマップ」の作成と
習指導過程の工夫
活用
(3) 児童生徒の意識調査
1
時総
間合
の的
ねな
ら学
い習
の
年次計画と研究経過
【19年度】 地域素材の収集と整理、教材化の工夫
【20年度】 年間指導計画及び単元指導計画の作成、学習指導過程及び評価の工夫
5月
昨年度の成果と課題の確認、研究主題・仮説等設定
6月・7月
小中学校各学年のテーマ設定と地域素材の選定
8月・9月
年間指導計画及び単元指導計画作成
10月・11月
授業実践と考察、意識調査用アンケート作成とふるさとマップ作成
12月・1月
研究内容考察、研究集録執筆
2月
研究の反省と次年度の方向付け
【21年度】
各学校での実践による単元指導計画及び学習指導過程のさらなる工夫、地域素材の見直し
12─2
Ⅷ
1
研究の実際
系統的な年間指導計画の工夫
(1) 地域素材の選定と年間指導計画への位置付け
小中学校が連携して9年間を通して取り組んでいくために、まずは取り上げる地域素材を
選定し、児童生徒の発達段階に応じて教材化していく必要がある。また、小学校2校と中学
校2校で、「ふるさと学習」に関してはそれぞれが共通して取り組んでいくよう年間指導計
画に位置付けた。
ア
小中学校各学年のテーマ設定と地域素材の選定
小中学校9年間のそれぞれにおいて、学ぶべき内容を明確にするために各学年ごとにテ
ーマを設定した。その上で、高鍋町にある優れた地域素材の中から教材化する価値のある
ものを精選し、9年間を通して系統的・発展的に知り、学び、体験することができるよう
にした。また、小学校第6学年の歴史をはじめ、社会科の学習と関連が深い内容にするよ
う考慮した。
なお、できるだけ早いうちから地域への興味・関心をもたせた方がよいと考え、小学校
第1・2学年でも朝の読み聞かせや生活科の中で地域素材に触れる機会を設けた。
学
年
テーマ
取り上げる地域素材と主な学習内容
1・2 学年 高鍋に興味・関心をもつ 歴史・伝説(読み聞かせ)、自然(生活科)
小
3学年
高鍋の自然を知る、学ぶ
高鍋湿原、アカウミガメ、小丸川、大楠
学
4学年
高鍋の偉人を知る、学ぶ
秋月種茂、石井十次
校
5学年
高鍋の産業を知る、学ぶ
米作り、お茶作り、キャベツ栽培、焼酎製造、牡蠣
6学年
高鍋の歴史を知る、学ぶ
舞鶴城跡、家老屋敷跡、持田古墳群、朝晩学校跡
1学年
高鍋の文化や福祉に触れる
盆踊り、福祉,文教の町の由来
2学年
高鍋を見つめ,体験する
職場体験学習
3学年
高鍋と自己の在り方や生き方を考える
高鍋町のよさ、進路学習
中
学
校
イ
小中学校各学年の「ふるさと学習」の位置付け
総合的な学習の時間は、各学校ごとに特色を生かした年間指導計画が既に作成されてい
るので、「ふるさと学習」に関しては共通して実践できるよう位置付けた。その際、社会
科の学習内容をはじめ、中学校での職場体験や進路学習との関連を図り、年間のどの時期
に行うのが適当かを考慮した。また、次年度以降本格的に実践していくことから、新学習
指導要領の標準授業時数に基づいて作成した。
1学期
2学期
3学期
3学年
25単位時間
4学年
25単位時間
5学年
35単位時間
6学年
25単位時間
中 1学年
20単位時間
学 2学年
30単位時間
校 3学年
35単位時間
※ 小学校は年間70時間、中学校は1学年が年間50時間、2・3学年が年間70時間
小
学
校
12─3
(2) 自然体験や社会体験の充実
地域の自然や歴史、文化等の貴重な素材を学習するには、実際に見て、触れて、体験するのが
効果的である。そこで、どの内容を学習する際にも、できるだけ多く自然体験や社会体験を取り
入れるようにした。自然体験や社会体験は校外学習となるため、基本的には、片道30分以内で
行けるところは徒歩で、それ以外は町営バスや路線バスを活用することとした。町営バス活用の
際は、1台のバスで数カ所をピストン輸送するなどしたが、やはり移動時間や移動手段の確保は
困難であるので、以下のような手立ても考えた。
ア
イ
学校行事等との関連付け
小学校は、学校行事として出かける社会見学や遠
足で、「ふるさと学習」の自然体験や社会体験がで
きる場所を見学地として選定できないかと考えた。
今のところは第3学年の高鍋湿原だけであるが、今
後第4学年では「友愛社」(石井十次記念館)、第6
学年では持田古墳群見学を考えている。
中学校では、体育大会で町の盆踊り等に取り組ん
だり、第2学年の立志式において町内出身の有名人
の講話を聞いたりする活動を取り入れてきた。今後
は,職場体験学習で地域の方々と触れ合ったり地場
産業を体験したりする活動を充実させたい。
【高鍋湿原を散策する様子】
校内でできる体験活動
米作りや福祉体験など,校内でできる体験活動がある。校外に出かけて実際に体験するのと
同様の体験を校内で行うことで,各学校の教育課程に合わせて計画することが可能となり,時
間をかけて継続的に観察したり体験したりすることができた。
(ア) 米作り体験(中学校第3学年)
高鍋農業高校の職員の方に説明を受けた後,4
月に田植え,6月までに除草,8月に稲刈りをす
る。その後,食の集会において地域の特別栽培米
や地場作物についての講話を聞くことで,地域特
有の農作物について関心を高めていた。
また,秋の収穫時にはひときわ喜びを味わい,
地域の食文化と伝統について学び,そのよさを実
感することができた。
【餅つきの様子】
(イ) 地域の高齢者との交流(中学校第1学年)
車椅子体験やハンディキャップ体験,感覚機能
ハンディキャップ体験をした。高齢者の方をいた
わろうという心を育てることに加え,地域の方々
との触れ合いが深まった。
また,高鍋の郷土料理について教わり調理をす
るという活動も行った。郷土料理のおいしさを味
わうだけでなく,高齢者の方々の知恵と技能に敬
意を抱いたようである。
ウ
【感覚機能ハンディキャップ体験の様子】
家庭・地域との連携
家庭や地域で自然体験や社会体験をすることは、地域のよさを身近に感じ取ったり家族や地
域の人とのつながりを深めたりする上で意義がある。そこで、小中学校各学年の「ふるさと学
習」の内容を学級通信で紹介し、学習中や学習後に家庭や地域で体験できることをお願いした。
具体的には、小丸川や高鍋湿原散策といった自然体験、地域の祭りや盆踊り参加といった社
会体験である。今後は町の広報誌でも「ふるさと学習」を紹介し、家庭や地域での実践をより
広めたいと考えている。
12─4
(3)
「ふるさとマップ」の作成と活用
地域素材を活用していくためには、まず、地域にどんなものがあるのかを知る必要がある。
地域素材を知ることで、ふるさとへの興味・関心が高まり、意欲的にふるさとについて調べる
ことができる。また、教師も地域素材の所在を把握していると、地域素材を積極的に授業に活
用することができる。そこで、「ふるさとマップ」を作成し、町内のどこに地域素材があるの
かを整理した。
昨年度のマップを基に、本年度は、主に総合的な学習の時間に活用することを念頭に置き、
各学年の単元で活用できるよう、(自然・産業)(歴史・偉人)に区別して整理した。さらに、
教師用と児童生徒用を作成した。
【教師用】
「ふるさと
マップ」を見
て、大体のこ
とが把握でき
るよう、所在
だけでなく、
注釈もつけて
いる。
【児童生徒用】
所在とどん
なものかをイ
メージできる
よう写真を入
れている。し
かし、自分た
ちで調べてい
くための資料
の一つとする
ために、細か
な注釈は入れ
ていない。
「ふるさとマップ」を作成したことで、研究員自身が地域素材を分野別に把握することがで
きた。授業では、昨年度作成した「ふるさとマップ」を活用することはできたが、本年度の「ふ
るさとマップ」を授業に活用するまでには至らなかった。
しかし、本年度中には「ふるさとマップ」を町内の全職員へ配付し、今後授業での積極的な
活用を図る予定である。また、児童生徒用の「ふるさとマップ」は次年度以降提供し、教科や
総合的な学習の時間等の調べ学習の際に、自主的に学習する資料の一つとして活用させていき
たい。
12-5
2 単元指導計画と学習指導過程及び評価の工夫
(1) 地域素材を生かせる単元指導計画の工夫
地域の特色を生かすことは、児童生徒が地域のすばらしさを発見し、心を動かし、地域に生
きる気概をもてるように支援することである。そのためには、ふるさと学習を進める上で地域
素材をどのように活用していくかが大切なことである。本年度の研究では、児童生徒に驚きや
関心をもたせられるような地域素材の取り上げ方に注目して、単元指導計画の中に「導入の工
夫」と「体験活動」をどう位置づけるかということを意識して授業を行った。
【小学校第5学年】「しっちょる!高鍋町!」(35時間扱い)の単元指導計画
学習内容及び学習活動
指導上の留意点
資料・準備
1 田植え(米作り)をする。
○ 田植え(米作り)を通して、 人材バンク
【体験活動】
高鍋町の農業について関心をも
たせる。
時
第
1
時
(4)
第 2 高鍋町の特色のある産業について ○ 社会科の学習で学んだことや
2
話し合う。
自分の体験から、高鍋町につい
時
て疑問に思っていることや調べ
特産物の提示の工夫
(1)
てみたいことなどを話し合う。
本時
3 学習テーマを立てる。
○ 社会科の学習で学んだこと
第 (1)見学、体験の感想
や、見学、体験から生じた疑問
3 (2)見学、体験で疑問に思ったこと
や調べてみたいことなどを問題
時 (3)課題別グルーピング
として設定させる。
(2)
○ 出てきた課題をもとにグルー
プを作らせる。
4 学習計画を立てる
○ 問題を解決するために必要な
(1)方法・手段
計画を立てさせ、一人一人が見
第 (2)体験活動の依頼・実施
通しをもってできるように指導
4 (3)時間設定
する。
時
○ グループの課題を立てた上で
(2)
細かい活動計画を立てるように
する。
5 課題別に調べ学習をする。
○ 学習計画をもとに、体験活動
<考えられる内容>
を入れたり、調べたりする。
第
・ 高鍋町の米作りについて
5
・ 高鍋町のお茶作りについて
時
・ 高鍋町のキャベツの生産につ
(8)
いて
・ 高鍋町の焼酎造りについて
・ 高鍋町のカキについて
6 グループごとに、調べたことの発 ○ 発表の中で一番に言いたいこ
表会をする。
とを、資料をもとに検討し、発
(1)発表テーマの原稿作り
表の主題に明確なイメージが持
(2)掲示資料の種類や提示の順序等
てるようにする。
第
の検討
○
友達の発表を聞いたり、意見
6 (3)発表・伝達の手段の決定
を交換したりする場を設定す
時
る。
(10) (4)資料作成作業
(5)中間発表会(工夫・改善すべき
点についての話し合い)
(6)助言をもとに手直し作業
(7)発表会
第 7 黒木酒造の見学をする。
○ 見学を通して、自分たちが住
7
【体験活動】
む高鍋町の地元の産業について
時
さらに関心をもたせる。
(4)
8 高鍋の特色のある産業についてま ○ これまでの学習を通して、体
とめをする。
験したことなどを想起しなが
第
(1)感想文作成
ら、高鍋町に対する愛情を深め
8
(2)感想に対する意見交換会
られるようにする。
時
○
意見交換会を行うことによ
(4)
り、活動をふり返らせ、日常生
活でも生かせるようにする。
12-6
社会科の教科書
社会科資料集
ふるさとマップ
学習計画表
人材バンク
発表資料
アドバイスカー
ド
発表会資料
移動手段
(徒歩)
この計画の中では、高鍋町の産業に関わる体験活動を単元の導入と終末に設けることで、児童
の興味・関心が持続できるようにした。また、学習の方向性として、各グループの学習課題の追
及→産業のPR→学習テーマの追求という学習展開で活動を進めた。
第1段階・・・ 自分たちが選んだ高鍋町の産業について詳しく調べ、産業の「どんなことを」
「だ
れに」「どんな方法で」PRすれば、それに携わっている人々が喜ぶのかを考え
ながら、追求活動を行う。
第2段階・・・高鍋町の産業をいろいろな人たちにPRすることで、高鍋町を見つめ直す。
第3段階・・・学習テーマ「しっちょる!高鍋町!」に戻り、産業から高鍋町を見つめた時、高
鍋町に対しての自分の考えや思い、願いをまとめ、自分たちにできることを考え
実行する。
これらの活動の中に体験活動を取り入れることで、身近な地域から課題を見つけ、自ら学ぼう
とする意欲と課題解決に必要な資質能力を育てていくことができると考えた。
時
第
1
時
【中学校第2学年】「高鍋町のよさを発信!」
(6時間扱い)の単元指導計画
学習内容及び学習活動
指導上の留意点
資料・準備
1 食の集会
○ 視覚的な資料をそろえて、栄 スライド
・ 食糧自給率や高鍋町の農畜産物
について概要を学習する。
養教諭と給食委員が分かりやす 感想文記入用紙
く説明する。
【体験活動】
第
2 調べ学習の課題設定
○ 食の集会の感想文を分析して
2
・ 班分け
おき、課題の設定や班分けがス
時
・ 計画立案
ムーズに行われるよう支援する。
第
3
3 前時に設定した課題について調べる。 ○ 食の集会や県の農畜産物関係 広幅用紙
・ まとめ作業
の資料を準備しておく。調べた 画用紙
時
内容をより効果的に表現できる マジック
(2)
よう次時の発表を意識させる。 はさみ
第
4 発表(前半)
○ 高鍋町の農畜産物の特徴につ 記録用紙
4
・ 高鍋町の農家について
いて、班員で協力しながら発表
時
・ 高鍋町の農産物について
するよう促す。
・ 高鍋町の畜産物について
第
5 発表(後半)
○ 前時の発表内容を復習し、本 記録用紙
5
・ フードマイレージについて
時の学習内容を積み上げること
時
・ 高鍋町の特別栽培米について
で、系統性をもたせる。
(本時)
・ 地域食材を使った献立について
この計画の中では、「食」をテーマとして取り上げ、「食」を中核とした課題を自ら設定し、
解決する学習を通じて、「食」への関心を多面的に高めるとともに、自らの食生活を見直し、改
善しようとする実践的な態度を育てることを目標にしている。「食の集会」で食糧自給率やフー
ドマイレージ・地産地消・高鍋町の農畜産物・特別栽培米についての話を聞くことで、高鍋町の
農畜産業に関心をもち、それについて調べていこうとする意欲を高めることができた。
自分の課題を追求する段階では、高鍋町役場の支援を受けて、
「宮崎農林水産統計年報」や「宮
崎県の農業産出額データ」を基にして、高鍋町の農畜産物の特長に気付くことができるよう配慮
した。
また、インターネットで調査したり、農業生産者に電話で問い合わせを行ったりして調査した
ことを昼食時の栄養放送や学校のホームページで紹介することを目指してまとめるよう支援し、
生徒の意欲を喚起した。
これらの活動から、身近な地域から課題を見つけ、自ら学ぼうとする意欲と課題解決に必要な
資質能力を育てていくことができると考えた。
12-7
(2)
ア
児童生徒の興味・関心を高める学習指導過程の工夫
ふるさと学習を進める上で、小中学校9年間を通しての地域素材を生かした授業を実施して
いくことが大切である。そのためには、児童生徒の興味・関心を高め、継続していくことが重
要であると考える。本年度の研究では、学習指導過程において地域素材の提示の仕方に注目し、
授業実践を行った。
検証授業①:小学校第5学年「しっちょる!高鍋町!」の実践
高鍋町の様々な産業を誇りに思うとともに、携わ
っている人々の苦労や願いを知ることで、自分たち
にできることを実行していこうとする気持ちをもた
せることがねらいである。
検証授業を行った第1時では、導入の段階で、児
童が高鍋町の特産物について関心をもつことができ
るよう、写真や実物等を提示した。その際、提示の
仕方を教師が特産物のPR活動のように行うことで、
児童がそれについて調べていこうとする学習意欲が
高まった。
【高鍋町の特産物をPRする場面】
次に、本研究で作成したふるさとマップを活用し、高鍋町の産業について写真等を交えながら
提示することで、児童が主体的に課題を見つけていくことができるように支援を行った。さらに、
今回の実践の中で、イメージマップを活用した。1学期に行った「田植え」の共通体験やこれま
での自分の体験を通して分かった高鍋町の産業について、疑問や気づいたこと、やってみたいこ
とを短いことばでつなげていくことで、自分たちの考えがどんどん広がり、課題を見つけること
ができるようにした。
【ふるさとマップを活用した資料提示】
イ
【イメージマップの活用】
検証授業②:中学校第2学年「高鍋町のよさを発信!」の実践
高鍋町の農畜産物について学習することで地域の
よさに気づき、誇りに思うと共に他へ紹介すること
ができることがねらいである。
検証授業を行った第6時では、展開の段階で、高
鍋町の特別栽培米と普通米を生徒が実際に味わうこ
とで、高鍋町の特別栽培米に対する認識を高めるこ
とができた。授業後の感想の中でも、高鍋町が宮崎
県で一番小さい町であるにもかかわらず、いろいろ
な種類の農畜産物を生産し、その収量の多さに驚き、
今まで知らなかった多くのことに気付くことができ
た。
【高鍋町の特別栽培米と普通米を味わう場面】
12-8
ウ
検証授業③:中学校 第1学年「郷土について学ぼう」の実践
1) 指導計画(全23時間)
時間
主な学習内容
(1) 1 郷土を見つめる。(オリエンテーション)
(4) 2 地域の高齢者と交流する。(体験活動)
(2) 3 盲導犬について地域の方から話をうかがう。(講話)
(3)
本時
3/3
8 郷土について学ぶ。
(1)高鍋について知っていること、調べたいことをあげよう。
(2)高鍋町について知る。(産業 観光等)
(3)高鍋町について知る。(町章 町の花 町の木 偉人等)
(2) 9 活動を振り返る。
2) 学習指導過程
時間
学習内容及び学習活動
1
前時の内容を振り返る。
指導上の留意点
○
3分
高鍋町内の産業や観光につい
資料・準備
ワークシート
て、学習内容を振り返り、確認す
る。
2
10分
高鍋 の町 章 ・町 の花
町の 木 につ い
○
て知る。
予想させる時間を設定し、意見
交換を行うようにする。
パソコン
スクリーン
プロジェクタ
3)
エ
検証授業の結果
○ 授業を通して、それぞれの出身小学校で学習してきた
「郷土:高鍋町」についての内容を再度確認することが
できた。
○ 総合的な学習の時間を通して、郷土のことについて学
ぶ良い機会となり、学習後は違った視点から高鍋町を見
ることができるようになった。
検証授業④:小学校 第3学年「大好き 高鍋!」の実践
1) 指導計画(全33時間)
時間
主な学習内容
(1)
1 学習の進め方について話し合う。(オリエンテーション)
7 グループごとに、調べたことの中間発表会をする。
8 「大好き高鍋」の自慢大会をし、単元全体のまとめをする。
(1) 発表
2/5
(2) 発表に対する意見交換会
(3) 学習を通して感じたことを作文にまとめる。
2) 学習指導過程
時間
学習内容及び学習活動
指導上の留意点
(9)
(5)
本時
1
3分
30 分
本時の学習内容を知る。
○
それぞれの班が調べたことを発表する。
情報を発信することで、みんなが大
好き高鍋となるような発表になるよ
大好き高鍋の自慢大会をしよう。
2
うに確認する。
○
調べたことを発表する時の視点や
聞き手への視点を与えておく。
3)
検証授業の結果
○ 初めての総合的な学習の時間と言うことで、すべてにおい
て支援が必要であったが、流れ的にはつかむことができた。
○ 高鍋町のことについて知らないことが多かったが、体験学
習や調査活動を通して、児童は、少しずつ自分たちのふるさ
と「高鍋」を知ることができた。
12-9
資料・準備
各班の発表
に必要な物
(3)
ア
児童生徒の意識調査
意識調査(アンケート)の工夫
本研究で検証する評価の視点は、「児童生徒が、ふる
さとへの興味・関心をもち、ふるさとへの愛と誇りを
感じているか。」である。昨年度までの研究で、各教科
のように数値目標を設定するのは困難であることから、
本年度も「ふるさとへの思いに関する意識調査」とい
う形でアンケートを実施し、学習前と後との意識の変
容で評価することにした。本年度の各学校の意識調査
の結果は、次の通りである。
<小学校第5学年の例>
【学習後のアンケート】
ふるさと学習を行った結果、どの学校でも高鍋町が好
きになったと答える児童生徒が増えている。この結果は昨年度も同様の傾向がみられ
た。しかし、児童生徒の意識は今後生活体験等で変化していくものと思われるので、
今後も継続して行っていく。
イ
Ⅸ
小中学校9年間の変容を探るための工夫
意識調査の結果で児童生徒の変容のすべてを判断できるわけではないので、小中学
校9年間を通して児童生徒のふるさとへの興味・関心を深めていく評価の内容を工夫
する必要がある。各学年で1年間を通してふるさとの何がわかったのか、ふるさとに
対する思いはどう変わったか、などを記述させることで児童生徒の変容を探ることが
できると考える。そして、ポートフォリオを活用し、資料、アンケート、感想などを
ファイリングしていき、次の学年でも継続した取組を行うことを大切であり、次年度
から各学校で実践していくようにする。
成果と課題
1 研究の成果
○ 小中学校各学年で学ぶべきテーマを設定し、年間指導計画に位置付けたことにより、小中
学校それぞれが共通して、また連携して地域素材を系統的・発展的に知り、学び、体験する
ことができるようになった。
○ 単元の導入で児童生徒が驚きや関心をもつような地域素材を提示し、実際に見たり触れた
りする自然体験や社会体験を効果的に取り入れたことで、児童生徒はふるさとへの興味・関
心を高め、ふるさとのよさを再発見することができた。
2
今後の課題
単元指導計画や学習指導過程のさらなる工夫とともに、作成した年間指導計画に基づいて
町内の全職員が共同実践していけるよう、啓発と手立てを工夫していかなくてはならない。
○ 町の広報誌や「ふるさとマップ」の配付を通して、家庭や地域社会との連携を図り、児童
生徒がふるさとのよさを身近に実感できるよう、自然体験や社会体験をする機会を多く設け
ていく必要がある。
○
【参考文献】
○ 宮崎の教育創造プラン「宮崎ならではの教育」
○ 地域を生かせ! 総合的学習の展開
○ 高鍋町歴史総合資料館要覧、他関係資料
○ 高鍋町の文化財第五集「高鍋の史跡」
、第八集「高鍋の先賢」
宮崎県教育委員会
東洋館出版社
高鍋町
高鍋町教育委員会
【研究同人】
所
長
研究指導員
研 究 員
萱嶋 稔
武田廣規
恒松秀明、古賀潤一(高鍋東小学校)
稲元雅子、渡邊孝紀(高鍋東中学校)
12-10
田代見二、冨永恵里(高鍋西小学校)
黒葛原武、矢野佐知子(高鍋西中学校)
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