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薬に対する患者の対応

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薬に対する患者の対応
一31一
薬に対する患者の対応
緑
松 岡
The Patients’ Reactions to Medic・inc)s
Midori Matsuoka
はじめに
患者の立場から薬について調査した報告は見
暑:者がアンケート用紙を直接手渡し,調剤の待
合時間内に記入して貰った。アンケート用紙の
質問項目は別表の通りである、,
当らないようである。薬の生産量は年々増大す
る傾向にあるが,一イ本患者は指示どおり服用し
ているのだろうか。副作用についてどのように
考えているのだろうか、,薬についてどの程度の
調査結果
説明を’受けているのだろうか。といった素朴な
1.薬の好き嫌い
質問「薬好きなほうか,それとも嫌いなほう
問が次々と浮んでくる。
か。」
このような観点から薬の問題を取り上げてみ
薬好きユ3.8%,薬嫌い36.1%,どちらともいえ
ることも有意義なことと思われる。それゆえ著二
ない49%,無答1.1%であり,薬嫌いが薬好き
者はノし大病院に通院している再来患者349名を
の2.6倍であった。
対象として,薬に関するアンケート調査を行っ
た。
2.月ト之∫月(7)態1皇:(表1,
.表2, 表3)
1)質問 「病院から処方してもらった薬を決
められた時間どおりのんでいるか“ll
対象および方法
決められたとおりのんでいる72,2%,決められ
たとおりのんでいない3.2%,どちらともいえ
調査対象
ない23.5%であった,,
JL大病院に通院している再来患.者で,薬の内
決められた時間どおり服用していない理由の
服を1ヵ月以上続けている者349名について調
うち,忘れるという答は67.7%と圧{到的に多く
査した。薬剤部待合室で以.ヒの条件を満すもの
面倒9.7%,信頼できない4.3%,気持ちが悪
を次々と選んだ、,年令は3才から80才と広い幅
い3.2%,のみノ∫がわからない3.2%,その他
があった。幼児は母親に記入してもらった、,性
23.7%であった。但し重複回答あり、,
別では,男性180名,.女性169名でほ・“半々で
2)質問 「病院から処ノiしてもらった薬を決
あった。これらのうち!96名は几大病院に人院
められた敏どおりのんでいるか。Ll
した経験があった。
決められた通りのんでいる84.9%,決められた
調査方法
通りのんでいない2.9%,どちらともいえない10
九大病院薬剤部の待合室で,上記の対象者に
%,無答2.3%であった、、
決められた量どおり服用していない理由とし
九州大学医療技術短期大学部
て,忘れる67、7%と高く,量が多い13.3%,何
一32一
薬に対する患者の対応
に効くかわからない11.1%,信頼できない4.4
1)売薬服用の動機
%,気持ちが悪い4。4%,その他13.1%であっ
ゲ己薬イ採用者99 7r中, ド{分で’薬店で求めた35.4
た 話し手1複[司答:あり、
%,知.!\一や家族のすすめによる45.5%,コマ・..”一
シャルを見て14.5%,そのf也16.2%であ一、た.,
二∼《 1 . 》塁三(ノー) ,J卜乏タ奮j 凱ε≒ 1婁こ で ヌ「、」’.象 ・9,・ た…/‡∼} 名 )
2)フ71薬;iiiiJt−」(1)f里旺i〔∼(:5)
よ旨承}貯間どおり 才受’チ量:どおり
ijli l l] 境乏件j
早くよくなるたダ)51.5%,病院の薬は信用出
来ない2θO,その他45.5θ∂であ・つた,.
C:k し・ 72.2θr/ 84.8(λわ
い い え. 3.2依ン L?.99わ
.表4 . フ}己)葦≦のfjiL片」 (k’・S’象・K‘ 349.7,)
どちらとも
いえない
23.5てケン 10.O r・t1)
無辱 答 !.1% 2.:9 9?)
い な い
70.5ρわ
い る
28.4 9・ z..,
無 答
表2.内旨・」三斜司どおり内服しないf里rli
1.10”ei
農文す象者93名)
表5. 売薬併用の理L.h
,忘れる 67.7%
l対象者99名)
[fli f至i1 9.7(∼6
イ,1頼できない 4.3%
気持ちが悪い 早くよくなるため
3.29∂
51.5(!ty
病院の薬;は{、1用できない
のみ方力耐つからない 3.2%
2t.or?.t,
ため
その他 23.7%
そ の 他
※..重複回答あり
,4 r) . r) O・r,
歪旺 笈
r) . 1. o.?・y
」LII P I
表3.指示量どおり内服しない理由
(対象者45名)
,忘れる 53.396
量 力t’ .多 い 13.3(㌔
何に効くかわからない 11.1%
イ、}頼できなし・ 4.4 0’θ
うべ手与t,カご∫琶乱し、 4.4ρ∼)
その他 31.1%
※唯複い1答あり
4.薬の色に対する好・き嫌い(図1)
1)質問 「好きな薬の色はどれか,.’i
L’168.80∂, 貞℃ 9.7¢わ, 十兆 8。6ρ∂, 糸求 3.2%, 季登
2.9%,赤2.9%,1婁∫2.600,どの色でもよい
6.9θθ,無答10.3θわであった,、但し屯複団答あ
り,,
2)質問 「嫌いな薬の色はどれか.}
・示46.49b, 糸乗18.9θ・o, .∼f18.9θ6, 季登 6.6θわ, 木兆
3.’ノ己薬(7)fM:」手i(表4)
4.9%黄3.7%自1.1こ口どの色ともいえぬ
質問 「病院でもらう薬以外に売薬をのんで
7.4%, 無答18,9%であ’つた、
いるカ㍉,」
いる28,4%,いない70.5%,無答1.1%であiつ
以ヒの結.果から,白色が最も好まれ,ついで
た。売薬の内容は,漢方.薬42.4%,保健薬33.3
黄,桃の淡い色が好まれだ.反対に赤,ltf,緑
%,ビタミン剤20.2%,民間薬;8.1%,薬酒4
等濃い原色系のものは嫌われた、,
%,その他11.1%であった。但し重複回答あり。
一33一
松 岡
緑
〈嫌 い 〉
0%
40
く好
10
30 20
10
46.40/.
%
6.6%
桃
色
榿
色
3.7%
60
70%
2.9%
9.7%
68.sC/.
68
3.2%
緑
18.9%
青
18.9%
50
白
18.9%
7.4%
40
8.6%
黄
1.1%
30
2.9%
赤
4.9%
20
き〉
2.6%
関係なし
無
答
6.9%
10.3%
(重複回答あり)
図1.
薬の色に対する反応(対象者349名)
5.投薬量について(表6)
質問 「病院からもらった薬の量についてど
6.薬の効きめについて
質問 「薬の効きめについてどう思うかcl
う思うか。J
よく効くと思う44.7%,よく疑問を感じる9.5
適当53.3%,多すぎる20.1%,少なすぎる0.7
%,どちらともいえない38.4%,無答7.4%で
%,どちらともいえない25.2%,無答0.7%で
あった。
あった。
表6.薬の量について(対象者349名)
7.薬の連用について対する不安
質問 「同じ薬を連用して気がかりにならな
いか。]
適 当
53.590
不安になる40.4%,不安にならない28.9%,ど
多 す ぎ る
20.10/o
ちらともいえない25.5%,無答5.2%であった。
少なすぎる
O.70/.
どちらともいえない
無 答
25.20/.
O.7C/.
8.薬を服用しやすい時間
質問 「食前,食間,食後等薬ののみやすい
順に番号をつけよ。ll
服用しやすいのは食後52.1%,食直後31.8%と
一 34 一
薬に対する患者の対応
食後が高く,寝る前11.2%,食前5.7%,食間
副作用の説明者は,医師86.1%,看護婦8.4
%,知人7.2%,薬剤師5.4%,その他5.5%
1.1%,時間毎0.8%であった、、
9.薬について患者が受けた説明
であった。但し重複回答あり。
1)副作用について(表7)
b.質問 「薬の副作用について知っていた
a.質問 「薬の副作用について説明しても
方がよいか・.j
らったことがある,u
よいと思う94.3%,思わない1.1%,どちらと
はい47.6%,いいえ48.7%,無答3.7%であっ
もいえない3.7%,無答0.9%であ一つた、、
た。
表7. 薬の副作用について (対象者349名)
説明を希望する
9. 4.3 fl,Zlo
説明を’受けた
47.6%
48.70/b
説明を希望しない
1.19b
説明を受けていない
どちらともいえない
3.79/o
4旺 筑
ハ、、 L】
無 答
O.9 0/6
3.79・b
2)説明方法
ていねい64.2%,ていねいでない7.7%,全く
a.質問 「医師から受けた薬ののみ方の説
説明しない6.7%,無答8.6%であ一・)た、,
明をどのように思ったかLLI
c.質問 「看護婦から受けた薬ののみ方の
ていねい77.8%,ていねいでない10.9%,全く
説明をどのように思・つたかd
説明しない6.7%,無答4,6%であった。
ていねい47.9%,ていねいでない7,2%,全く
b.質問 「薬剤師から受けた薬ののみ方の
説明しない29.2%,無答15.7%であった。
説明をどのように思ったかCtl
表8 医師・薬剤師・看護妬吊の服用についての説明態度(対象者349名:)
説il月態度
医師(%)
薬剤師(%)
看護婦(θ∂
ていねいである
77.8
64.2
47.9
ていねいでない
10.9
7.7
7.2
全く説明しない
6.7
19.5
29.2
.抽… 笈
♂い、 【一1
4.6
8.6
15.7
考 察
また,いまの医.者は多種多量の薬を投与しす
般に患者は医師から投与された薬を忠実に
服用しないことが多いと言われているが,調査
結果に見られるごとく,多くの患者は投与され
者は20%で,半数以..Lは別に投薬量が多いと思
た薬を指示時間に,決められた分量服用してい
っていない、,もちろん医師により,病気の種類
た。もちろん,大学病院の患者と開業医の患者
により薬の量は大きく変動するであろう,,
は状況が異なるので,この結果を広く一般的な
薬の副作用について知りたいと答えた者は
結論とすることは出来ない。
94.3%と極めて高率であったが,副作用の説明
ぎる傾向があると、.耕つれているが,薬の量が適
当であると答えた.者は53%,多すぎると答えた
一35一
松 岡
緑
を受けていた者は,患者の約半数であった,,実
る傾向があるのは,薬の色としては心理的に抵
際問題として,薬についていちいち副作用を説
抗を覚えやすいためであろう。
明して投与することは難かしい問題を含んでい
指示どおり服薬しない理由として,忘れると
る。副作用に関心があるのは,薬害が.大きな社
いう答えが多い。調査データの示すように,患
会問題になっている世相を反映したものと考’え
者は本来薬が嫌いなものである。今後規則正し
る。副作用の説明は,主として医師から聞き,
い服薬をするように,より一一.一…層の指導が蜷まれ
薬剤師は殆んど行っていない現状である、,その
る、.
理由として,薬剤師はそのような場が少ないこ
と,医師の処方薬にいちいち副作用を説HJSする
ことはでき難いことがあげられる.,しかし,薬
結 論
剤部に薬の相談コーナのようなものがあっても
JL大病院に通院している再来患者349名を対
良いのではなかろうか。なせならば,薬の連用
象として,薬についてアンケーート調査を行った。
について不安に思っている者40%,薬の効きめ
⊥なる結果は次のようであった。
に疑問を持っている者9.5%というデータは無
1)70%以一しの患者は投与された薬を指示時間を
視出来ない数字と思うからである。
守って指示量どおり服用していた,
注目すべき現象としては,漢方薬を併用する
2)殆んどの患昔が薬の副作用の説明を希望して
者が売薬併用者の42.4%もいることである。漢
いるが,説明を受けたことがある者は約半数で
方薬ブームの世相の現れともいえるが,一考に
あった。
価する問題である、,
3)売薬を併用している患若は約4人に1人で,
薬の服用についての説明は,医師がも一.・とも
その約半数は漢ナ∫薬を服用していた、
ていねいで,つゾいて薬剤師,看護婦の順であ
4)薬の色は白色がもっとも好まれている、
る。薬理作用の知識の差もあるかも知れないが,
5)薬は食後が最も服用しやすい、,
立場の相違にもよるものであろ飢,
薬の色は自色が圧倒的に好まれている、,しか
し,錠剤の色づけば,患者が薬を判別し易い利
終りに,瓦州大学医学1刷附属病院薬剤部長・
堀岡一正義i教授のご助言に深謝致します,
点もある。.一一づ∫,赤,占=,緑の原色系が嫌われ
一別 表一
薬に関するアンケート調査
このアンケート調査は,薬に対する患者さんの正しい理解と,薬剤の効果をあげるための基礎資
料となるものです。薬について日頃どのように感じていらっしゃるかみなさまの卒二直なご意見をお
願い致します。
次の設問について該当すると思われる答えの番.号を○印で囲んで下さい、,ご協力をお願い致します。
Q1.あなたは薬好きなほうですか。それとも
Q3 あなたは病院から処ノ∫してもらう薬を,
嫌いなほうですか。
きめられた時間(例えば,食後,食:問,∼
(1) 薬;女チき (2) .薬敦兼い
時間毎等)どおりのんでいますか。
(3) どちらともいえない
(1)きめられた通りのんでいる。 (Q5,に進
Q2.あなたは九大病院の薬をのみはじめて,
んで下さい)
どのくらいになりますか。(期間)
Fli:鶏齢畿蒔も一
一36一
薬に対する患者の対応
のんでいない時もある
どう思いますか。
((2),(3)と答えた人は,Q4.に進んで下さ
(1)多すぎると思う (2)適当
い)
(3)少なすぎると思う
Q4.(きめられた通りのんでいない人に対し
て)その理由は何ですか。2つ以上に○印
(4) どちらともいえない
をつけても結構です。 (次は,Q5.へ進ん
んでいますか。
で下さい)
(1)いる (2)いない
Q10.あなたは病院でもらう薬以外の売薬をの
(1)面倒だから (2)信頼できないから
Y
(Q11.に進んで下さい)↓
(3)のんだら気持ちが悪くなるから
(Q15.に進んで下さい)
(4)のみ方がよくわからないから
Qll.病院でもらう薬以外の売薬をのんでいる
(5)忘れるから
人に対して(次は,Q12.に進んで下さい)
(6)その他( )
Q5.あなたは病院から処方してもらう薬を,
(1)常用している→何種類( )
きめられた量どおりのんでいますか。
Q12.どのような売薬をのんでいますか。 (次
(1)きめられた通りのんでいる(Q7,へ進ん
は,Q13.に進んで下さい)
で下さい)
(1)漢方薬 (2)民間薬
(2)きめられた通りのんでいない
(3>保健薬(胃薬) (4>ビタミン剤
(3)きめられた通りのんでいる時もあれば,
(5)薬 酒 (6)その他( )
のんでいない時もある((2),(3)と答えた人
Q13.どのようなきっかけで売薬をのむように
は,Q 6.へ進んで下さい)
なりましたか。(次は,Q14.に進んでくだ
Q6.(きめられた通りのんでいない人に対し
て)その理由は何ですか。2つ以上に○印
さい)
をつけても結構です。 (次は,Q7.へ進ん
(2)コマーシャルをみて
で下さい)
(3)知人にすすめられて
(1)量が多すぎるから
(4)家族にすすめられて
(2)信頼できないから
(5)その他( )
(3)のんだら気持ちが悪くなるから
Q14.なぜ売薬をのんでいますか。(次は, Q 15
(3)のんだ (4)何に効くかわからないから
に進んで下さい)
(5>,忘れるから
(1)早くよくなるため
(6)その他( )
Q7.あなたは,食前,食間,食後等の薬の内
(2)病院の薬だけでは信用できないため
服の仕方で忘れずにのまれるのはどれです
Q15.あなたは薬の効きめについてどう思いま
か。のみやすい順に( )内に番号を入れ
すか。
て下さV㌔
(1)よく効くと思う
()食前()食間()食後
(2)よく疑問を感じる
( )ねる前 ( )時間毎 ( )食直後
(3) どちらともいえない
Q8 薬の色についておたずね致します。
Q16.あなたは,同し薬を連用して気がかりに
(1)好きな薬の色・・赤・黄・榿・緑・青・白
なりませんか。
桃色
(1)不安になる
(2)嫌いな薬の色…赤・黄・榿・緑・青・白
(2)不安にならない
桃色
(3) どちらともいえない
Q9.あなたは病院からもらう薬の量について
Q17.あなたは,医師の薬ののみ方の説明をど
(2)ときどき用いる→何種類( )
(1)自分で薬店に行って
(3)その他( )
一37一
松 岡
緑
のように思いましたか,,
(!) Cよ レ、 (2)し、し、え
(1)ていねい
”一一’=:.lll一“一’
L誰から…蹴薬剤臼、{願繍知人,
(2) ていねいで’ない
Q18 あなたは,薬剤師の薬ののみ方の説明を
その他( )
Q21.あなたは,薬の副作用について知ってい
どのように思いましたか。
たほうがよいと思いますか。
(1)ていねい
(1)思う (2)思わない
(2) ていねいでない
(3> どちらともいえない
(3) 全く説明しない
Q22.あなたは, JL大病院に人院したことがあ
Q19 あなたは,看護婦の薬ののみプiの説明を
りまfSカ・、、
どのように思いましたか。
(D あ る (2) ない
(3>全く説明しない
〈1) ていねい
(2) ていねいでない
(3)全:く説明しない
Q20 あなたは,薬の副作用について説明して
もらったことがありますか,,
薬ののみ方について説明をうけたことがあ
りますか。
(1)ある (2> ない
イ可科 ( ) ’1生別 (
男 ・一女 )
年齢(
ご協力ありがとうございました。
JL州大学医療技術短期大学部
松 岡 緑
)才
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