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今回の津波の反省 - 河川情報センター

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今回の津波の反省 - 河川情報センター
鳥 居 謙 一
水防災システム研究官
国土交通省 国土技術政策総合研究所
今回の津波の反省
 地震・津波の想定結果が大きくかけ離れていた。
 今般の津波が想定を上回る浸水域や津波高などで
あったことが、被害の拡大につながったことも否めない。
 過去数百年間に経験してきた最大級の地震のうち切
迫性のある地震を次に起きる最大級の地震想定として
きた。


切迫性:繰り返し発生している地震
地震発生の確度が高い地震(地震の全体像、地震動や津
波の再現が可能な痕跡がある)
 海岸保全施設等に過度に依存した防災対策には限
界があったことが露呈された。
中央防災会議専門調査会より
今後の対象地震の津波の考え方
(最大クラスの地震・津波)
 できるだけ過去に遡って科学的知見に基づく調査を進める。
 地震の予知が困難であることや長期評価に不確実性のある
ことも踏まえつつ、考えうる可能性を考慮し、被害が大きくな
る可能性についても十分に視野に入れて想定地震・津波を
検討する。
 防災対策が困難となることが見込まれる場合であっても、た
めらうことなく
 地震や津波は自然現象であることから、想定を超えることは
否定できない。
中央防災会議専門調査会より
津波レベル1
と 津波レベル2
 津波レベル1 :防波堤など構造物によって津波の内陸
への侵入を防ぐ海岸保全施設等の建設を行う上で想定
する津波である。最大クラスの津波に比べて発生頻度
は高く、津波高は低いものの大きな被害をもたらす津波
(防護レベル)
 津波レベル2 :住民避難を柱とした総合的防災対策を
構築する上で設定する津波である。超長期にわたる津
波堆積物調査や地殻変動の観測等をもとにして設定さ
れ、発生頻度は極めて低いものの、発生すれば甚大な
被害をもたらす最大クラスの津波(減災レベル)
中央防災会議専門調査会より
実例:岩手県沿岸の海岸堤防高
 最大クラスの津波(今回の津波)は海岸堤防を越流する
津波レベル1.5はあるのか?

津波レベル1





海岸保全施設
資産+人命
越流しない
財政、環境や利用、耐用年数
数十年~百数十年に一度
 津波レベル2
 総合的防災対策(避難が中心)
 人命
 破堤する
 何としても人命を守る
 最大級(千年に一度程度に相当)
 不確実性



防護レベル
昭和三陸、明治三陸、チリ
中央防災会議(2003)、慶長、
宝永、安政、昭和
 減災レベル
 東日本大震災(貞観地震)
 中央防災会議(2012)
L2を考える際の課題
 住民の避難が前提となる。
 1000年に一度しか来ない。
 住民の意識を継続させる。
=>教育システムとの連携
ソーシャル・キャピタル(人間関係資本)
住民の意識を測定・分析する(PDCAサイクル)
 構造物の維持更新
=>持続可能な更新システム
半永久構造物(土)
子孫への宝物
ハード:粘り強い堤防
 海岸保全施設等については、設計対象の津波高を超え
た場合でも施設の効果(水位低減、津波到達時間の遅
延など)が粘り強く発揮できるような構造物
 施設が破壊、倒壊するまでの時間を少しでも長くする
 施設が完全に流失した状態である全壊に至る可能性を
少しでも減らす
 減災効果を目指した構造上の工夫
 L1+αに対する構造物の設計ではない
典型的な被災パターン
天端被覆工
裏法被覆工
波返し工
表法被覆工
基礎工
基礎工
粘り強い堤防
 国総研:技術速報
波返し工
天端被覆工
裏法被覆工
表法被覆工
基礎工
基礎工
基礎工
これまでの津波対策
 明治三陸地震津波(1896.6.15)
 高地移転(個人ベース)
 昭和三陸地震津波(1933.3.3)
 高地移転(復興計画ベース)
 海嘯罹災地(かいしょうりさいち)建築取締規則(宮城県令)
 田老の防潮堤(海抜10m)+避難路の建設始まる
 チリ地震津波(1960.5.22)
 特措法:チリ地震津波対策事業(海岸堤防、河川堤防、防波堤、
防潮堤、導流堤、離岸堤、突堤、胸壁、護岸、防潮林、水門及
び嗣門の新設・改良)
 北海道南西沖地震津波(1993.7.12)
 防潮堤、高台移転、避難路
 地域防災計画における津波防災対策強化の手引き(1997)
水防災システムのモデル
―津波防災地域づくり―
 最大クラスの津波が発生した場合でも「なんとしても人命
を守る」
 ハード・ソフトの施策を柔軟に組み合わせて総動員させる
「多重防御」
 津波浸水想定、津波災害警戒区域、津波災害特別警戒
区域
 指定避難施設・津波防護施設(盛土(表面、周辺(法尻)、
天端、浸透)、胸壁、閘門)、の技術基準
 地域活性化の観点も含めた総合的な地域づくり
 津波に対する住民の意識を常に高く保つ
東大洲(肱川)の水防災システム
予測
堤防
• 洪水予報
• 暫定堤防(越流堤形式)
多重 • 遊水地(市道)
防護
避難
• 情報伝達
気象庁が提供する数値予報モデルの変遷(短時間予報について)
H14.5~H19.11
モデル
ダウンスケール
(全球)
GSM
ダウンスケール
(日本)
MSM
H15
H16
H17
H18
H19
 計算領域:全球 静力学モデル
 解像度:120km
 運用回数:1日2回
•
•
(日本)
RSM
初期時刻:00UTC:84時間予報(時間分解能:6時間)
初期時刻:12UTC:96時間予報(時間分解能:6時間)+192時間予報(時間分解能:12時
間)
 計算領域:日本 静力学モデル
 解像度:20km
 運用回数:1日2回
• 初期時刻:00, 12UTC:51時間予報(時間分解能:1時間)
 計算領域:日本 静力学モデル
 解像度:10km
 運用回数:1日4回
• 初期時刻:00, 06, 12, 18UTC:18時間予報(時間分解能:1時間)
(日本)  計算領域:日本 非静力学モデル
MSM
 解像度:5km
 運用回数:1日8回
•
•
初期時刻:00, 03, 06, 09, 12, 15, 18, 21UTC:15時間予報(時間分解能:1時間)
2007年5月より、03, 09, 15, 21UTCについては33時間予報に延長(時間分解能:1時間)
気象庁が提供する数値予報モデルの変遷(短時間予報について)
H19.11~現在(H23.11時点)
※GSMの高解像度化に伴ってRSMが運用停止し、MSMの計算はRSMを介さずに
GSMを境界条件にして実施されるように変更された。
モデル
H19
H20
H21
H22
ダウンスケール
(全球) H19.11
GSM
 計算領域:全球 静力学モデル
ダウンスケール
ダウンスケール
H14
H23
運用中
 解像度:20km
 運用回数:1日4回
• 初期時刻:00, 06, 18UTC:84時間予報(時間分解能:1時間)
• 初期時刻:12UTC:84時間予報(時間分解能:1時間)+192時間予報
(時間分解能:3時間)
(日本) H19.11
 計算領域:日本 非静力学モデル
MSM
H21.11
 解像度:5km
 運用回数:1日8回
• 初期時刻:00, 06, 12, 18UTC:15時間予報(時間分解能:1時間)
• 初期時刻:03, 09, 15, 21UTC:33時間予報(時間分解能:1時間)
H21.11
(日本)
 計算領域、解像度、運用回数については同上
MSM
運用中
 計算の境界条件に、GPS可降水量データの観測データが反映
RSMの予測雨量の精度(H17年度当時)
真名川ダム
川治ダム
500
400
H16福井豪雨
H13台風15号
実績積算雨量(mm)
300
200
矢作ダム
100
300
H16台風23号
200
3
100
400
H12東海豪雨
0
0
100
200
300
400
500
RSM予測積算雨量(mm)
実績積算雨量(mm)
実績積算雨量(mm)
400
2
0
300
0
H15台風10号
100
200
1
300
400
RSM予測積算雨量(mm)
※丸印傍らの数字は予測発表時間の順
200
100
P13、図−7 早明浦ダム
0
0
100
200
300
400
RSM予測積算雨量(mm)
※RSMはH19.11に運用終了
現在のMSM、GSM(H21.11-)の精度
大きな被害をもたらした新潟・福島豪雨および台風12号を含む、2011年の4つの出水事例
について、予測雨量と観測雨量を比較した
対象流域および降雨イベント:
池原ダム(電源開発@奈良県、流域面積約350km2)
 台風6号(7月17日~7月20日)
 台風12号(8月30日~9月5日)
 台風15号(9月19日~9月21日)
笠堀ダム(新潟県、流域面積約70km2)
 新潟・福島豪雨(7月27日~7月30日)
予測データ:
MSM 1日8回予測(15時間予測4回、33時間予測4回、時間雨量、5kmメッシュ)
GSM 1日4回予測(84時間予測、時間雨量、20kmメッシュ)※池原ダム流域のみ
観測データ:
気象庁レーダアメダス(1kmメッシュ、時間雨量)
比較方法:
それぞれのダム流域について、予測及び観測の毎時の流域平均雨量を求めて比
較
平成23年台風6号 観測雨量
35
30
900
台風6号
800
500
15
400
300
10
累加雨量(mm)
600
20
200
5
100
0
7/17
7/18
7/19
24:00
18:00
6:00
12:00
24:00
18:00
6:00
12:00
24:00
18:00
12:00
6:00
24:00
18:00
6:00
0
12:00
時間雨量(mm/h)
700
25
7/20
池原ダム流域の雨量時系列
(レーダーアメダス、池原ダム流域平均雨量)
平成23年台風6号 MSM
P13、図−9(1)
45
台風12号
35
30
25
1200
20
1000
15
800
10
600
400
5
200
0
0
8/30
8/31
9/1
9/2
9/3
9/4
9/5
池原ダム流域の雨量時系列
(レーダーアメダス、池原ダム流域平均雨量)
累加雨量(mm)
40
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
時間雨量(mm/h)
平成23年台風6号 GSM
平成23年台風12号 観測雨量
2000
1800
1600
1400
40
30
20
時間雨量(mm/h)
40
30
20
時間雨量(mm/h)
60
8/30
60
8/30
8/31
8/31
9/1
9/1
9/2
9/2
9/3
9/3
9/4
9/4
9/5
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
時間雨量(mm/h)
70
時間雨量(実測)
8/30 12:00
50
10
10
0
0
9/5
70
時間雨量(実測)
50
10
10
0
0
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
6:00
12:00
18:00
24:00
時間雨量(mm/h)
8/30 12:00 MSM33時間予測 池原ダム流域平均雨量
平成23年台風12号 MSM
70
9/1 18:00 MSM33時間予測 池原ダム流域平均雨量
60
時間雨量(実測)
50
9/1 18:00
40
30
20
予測時間
8/30
9/2 18:00 MSM33時間予測 池原ダム流域平均雨量
9/2 18:00
60
8/30
8/31
8/31
9/1
予測時間
9/1
9/2
9/2
9/3
9/3
予測時間
平成23年台風12号 GSM
9/4
9/4
予測時間
9/5
70
9/4 0:00 MSM33時間予測 池原ダム流域平均雨量
時間雨量(実測)
50
9/4 0:00
40
30
20
9/5
平成23年台風15号 観測雨量
台風15号
池原ダム流域の雨量時系列
(レーダーアメダス、池原ダム流域平均雨量)
平成23年台風15号 MSM
P13、図−9
(2)
平成23年台風15号 GSM
平成新潟・福島豪雨 観測雨量
Radar AMeDAS
60
積算雨量
1200
積算雨量:957mm
1000
800
50
600
40
30
400
20
積算雨量(mm)
70
200
10
7/27
7/28
7/29
0:00
18:00
6:00
12:00
0:00
18:00
6:00
12:00
0:00
18:00
6:00
12:00
0:00
18:00
0
6:00
0
12:00
時間雨量(mm/hr)
80
7/30
笠堀ダム流域の雨量時系列
(レーダーアメダス、笠堀ダム流域平均雨量)
大きく3つの雨量ピークが観測されている。
積算雨量分布図
(レーダーアメダス、7月27日~30日の積算)
出典:第1回「平成23年7月新潟・福島豪雨水害の検証
を踏まえた治水方策に関する懇談会」資料
新潟・福島豪雨 MSM 降り始め~二山目付近
新潟・福島豪雨 MSM 二山目付近~降り終わり
台風6号
台風15号
台風12号
31
第48回 水工学に関する夏期研修会
予測に対する心構えー予測を用いれば効率的になるのか?-
降雨倍率
<=実雨量
=>貯める操作
雨量比別・操作ルール別の浸水被害額の関係
32
Xrain
【凡 例】
栗駒山周
辺
新潟
富山・石川
能美
九州北
風師山
部 古月山
菅岳
鷲峰山
岡山 田口
広島
牛尾山
野貝原
熊山 六甲
常山
九千部
葛城
平成21年度整備
済
一関
一迫
京ヶ
瀬
中ノ
口
平成22年度整備
済
平成23年度整備済
※円は半径80kmの
観測範囲を示す。
水橋
関
東
尾西
富士宮
新横浜 関東
安城
香貫山
静岡北
鈴鹿
中部
静岡
近畿
桜島
桜島周
辺
全国11地域・27基が設置されている。(2012年4月現在)
Cバンドレーダと河川局X-MPレーダの観測状況
(H22.7.5 板橋での大雨)
板橋区役所
板橋区役所
34
XRAIN vs Cband 【関東地域:2011年8月26日】
16:30 (ピーク時)
広域図
拡大図
五月橋(川崎
市)
地点:五月橋(川崎市)
地点:五月橋(川崎
市)
25
地上雨量(mm)
Xバンドレーダ雨量(mm)
Cバンドレーダ雨量(mm)
10分間雨量
20
15
10
5
0
13:00
13:30
14:00
14:30
15:00
15:30
16:00 16:30 17:00
2011年8月26日
17:30
18:00
18:30
19:00
19:30
20:00
X-MPとCbandレーダの役割
 Cbandレーダ
 役割
全国をカバーし、豪雨時に観測不能領域を発生させることなく安
定的に雨量情報を配信。
 短所
①地上雨量を使用したオンライン補正によりリアルタイム性が低い。
②X‐MPに対してメッシュが粗く、観測精度は低い
 X‐MPレーダ
 役割:
CbandレーダのMP化により補正
を必要としないレーダ雨量算定手
法の確立を検討中。
→リアルタイム性の向上を目指す
都市部等の限られた地域で高精度かつ詳細な雨量情報を提供。
 短所:
①Cbandに対して観測範囲が狭く山間部等の観測範囲外が存在
②豪雨時に電波消散が発生
35
C-MPと既存Cbandレーダの比較
台風12号時の48時間積算雨量(2011年9月2日15時~9月4日14時)
地上雨量
既存Cバンドレーダ雨量
既存Cバンドレーダ雨量
(地上雨量によるオンライン補正済み) (地上雨量によるオンライン補正なし)
198k
m
120k
m
•C-MPレーダは、紀伊半島南部の強雨域を量的にも分布的にも良く表現。
•C-MPレーダは、補正を行わなくともリアルタイム補正を行ったCバンドレー
ダと同様な雨量分布を表現
C-MPと既存Cbandレーダの比較
2011年台風12号事例(2011/09/04 00:00 ~ 08:00)における10分雨量時系列図
アメダス新宮地点
30
地上雨量
C-MP雨量
25
10分雨量(mm)
Cオンライン補正
20
15
C‐MPレーダは、過大な雨量を示す
場合が見受けられるが、地上雨量
による補正を行わずとも既存Cバン
ドレーダ(オンライン補正済み)と同
等以上の精度で観測が可能
10
5
0
00:00 00:30 01:00 01:30 02:00 02:30 03:00 03:30 04:00 04:30 05:00 05:30 06:00 06:30 07:00 07:30 08:00
2011年9月4日
アメダス熊野新鹿地点
30
10分雨量(mm)
25
地上雨量
C-MP雨量
Cオンライン補正
20
15
10
5
0
00:00 00:30 01:00 01:30 02:00 02:30 03:00 03:30 04:00 04:30 05:00 05:30 06:00 06:30 07:00 07:30 08:00
2011年9月4日
※C‐MPレーダの雨量算定手法の
確立に向けて国総研で検討中
アセットマネジメント
 ISO55000におけるアッセットマネジメントの概念
アセットとは、組織にとって価値を持つもの(現在・将
来、有形・無形、金銭的・非金銭的、官・民)。
組織の状況
(ビジョン、ミッション、目的、ステークホルダー、利害関係者)
方針と目的
(求められるアセットの価値と便益)
アセット
(アセットの種類、状況、アセットライフ)
アセットマネジメント
(求められるアセットの価値を実現し、最大化する)
アセットマネジメントシステム
(組織、権限、情報管理、継続的改善、能力開発)
アセットマネジメント
 アセットの階層
アセットマネジメント
 アセットマネジメントシステム
組織の目的
アセットマネジメント の方針
アセットマネジメントシステム
(組織、権限、情報管理、情
報公開、監査、是正方法)
P
アセットマネジメントの計画
D
活動
(アセットライフ)
A
C
アセットマネジメント能力
アセット
社会資本メンテナンス戦略小委員会
継続的改善
アセットマネジメントの目的
河川構造物の老朽化の現状
【4】機械施設の老朽化
【1】河川管理施設の年次別設置数
劣化や発錆によりローラーが固着すると、ゲートが開閉不能
となり、逆流し、家屋等の浸水被害が発生する恐れがある。
排水樋門ゲートのローラー部(本川の水が支川に逆流しない
ように設置するゲートを円滑に上下させるために必要な部品)
【2】コンクリート構造物の老朽化
パラペットや水門の門柱などのコンクリート構造
物は、凍結融解・塩害やアルカリシリカ反応に
よってコンクリートのひび割れ・剥離が発生しさ
らに鉄筋の腐食が進行する場合があり、適切な
補修が必要です。
【3】鋼矢板の老朽化
鋼矢板護岸は、鋼材の腐食が進むと矢
板に穴があいたり、強度が低下する場
合があり、適切な補修が必要です。
河川構造物管理研究タスクフォースとは
破損すると圧力が逃げ、排水が困難になるだけでなく
逆流し、家屋等の浸水被害が発生する恐れがある。
吐出槽の逆流防止弁
(ポンプにより組み上げられた水が逆流しないように設けられる弁)
河川構造物の劣化
目的
河川構造物の維持管理、特に劣化河川構造物に係る長期予測に
関する技術検討、それを踏まえた中長期マネジメントに関する研
究は重要課題ではあるが、十分な検討がなされていません。
門柱部の鉄筋腐食
樋門の老朽化
社会資本整備全体の状況を把握しつつ、河川に適した構造物マ
ネジメント技術をフォローする国総研・土研の研究担当者の集団を
維持管理のPDCAサイクル
作るため、河川構造物管理研究タスクフォースを設置しました。
河川管理にかかる
技術的知見の充実
河川維持管理計画の
作成・修正
河川維持管理目標の設定
実施事項
技術基準等の見直し
例)分析評価の結果から見た、点
検頻度、内容の変更
A
P
 各種河川構造物にかかる劣化予測に関する技術検討
及びそのフォロー
 河川構造物の中長期マネジメント技術に関する研究
及び社会資本整備における他研究のフォロー
 実務レベルにおける点検・劣化診断等に関する技術助言
及び中長期コスト予測等に関する行政への助言
状態把握
分析評価
状態把握
分析評価
河川構造物
管理TF
例)河川巡視・点検等
による堤防等の変状
の発見→類似箇所に
おける過去の被災状
況、堤防の土質構成
等から見た、堤防等
の変状の分析、評価
例)河川巡視・点検等
による対策後の堤防
等の経過観察
→経過観察に基づく
状態把握、対策効果
の分析、評価
河川カルテ
データの蓄積
C
維持管理対策
例)堤防の補修・補強
D
河川構造物管理研究タスクフォース・組織図
リーダー
河川研究室
福島雅紀
主任研究官
新材料チーム
冨山禎仁
主任研究員
維持管理を効果的・効率的に
実施するための点検方法(実
施項目・実施頻度)、発見され
た変状やその規模に応じた維
持修繕の必要性の判断などに
ついて支援します。
河川構造物における鋼材の腐
食(異常腐食の原因究明や最
適な補修・改修方法など)、防
食(環境に適した防食方法や
各種耐食性材料の活用など)
に関する技術的なご相談に応
じます。
河川堤防基礎地盤の調査手法、
特に地形や地質構造の調査方
法と、基盤漏水に関わる事象に
ついて、土質・振動チームととも
にご相談をお受け致します。
先端技術チーム
堤防
宮武裕昭
上席研究員
上野仁士
主任研究員
基礎材料チーム
古賀裕久
主任研究員
塩害やアルカリシリカ反応など、
コンクリート構造物の劣化機構
や劣化した構造物の維持管理
手法について検討しています。
排水機場
水門
施工技術チーム
堤防や河川構造物のなかで、
擁壁、アンカー、矢板、軟弱地
盤などの土構造が絡んだ変状
の原因や、補強対策などにつ
いてご支援します。
竹田英之
主任研究員
河川用ゲートやポンプなどの機
械設備の維持管理技術につい
て研究を進めており、それに関
連する助言を行っています。
地質チーム
品川俊介
主任研究員
鳥居謙一水防災
システム研究官
土質・振動チーム
水理チーム
水・土砂の流れと構造物の相
互作用の問題(河川構造物周
辺の深掘、護岸や護床ブロック
の滑動など)について、形状的
(平面・縦断)・空間的(局所・全
体)・質的(土砂供給)な側面か
ら支援します。
樋門等構造物周辺で発生する
変状、土堤の浸透安全性や耐
震性の評価などの浸透対策や
耐震対策技術、計測機器を用
いた堤防のモニタリング、河川
土工の締固め管理基準などに
ついて支援します。
石原雅規
主任研究員
坂野章
総括主任研究員
河川環境課河川保全企画室
公共事業企画調整課施工安全企画室
社会情勢が変化する中で、河川という自然公物を適切に維持管理していくために
は、 「安全の確実な確保」「効率性・経済性」「技術の進化・継承」「地域の理解」な
どが重要な視点と考えており、 近年では、河川砂防技術基準維持管理編の策定、
PDCA型維持管理への移行、河道・堤防の点検技術の高度化、 河川維持管理に
おける官民連携、河川管理施設の老朽化対策、許可工作物の確実な維持管理の
ための連携強化などにより、 戦略的な維持管理の推進に取り組んでいます。
災害発生時等に確実な機能発揮が求められる河川用ゲート・ポンプ設備等の土木
機械設備の長寿命化を推進しています。
施設の要求性能を考慮した最低限の機能や維持管理水準の設定、 画一的な時
間計画保全から各種データの蓄積活用による状態監視保全への移行・健全度評
価の高度化、 メンテナンスフリー化や部材改良等の省力化技術・新たな保全技術
の適用検討、 関連する様々な技術基準類の改訂等に取り組んでいます。
河川構造物管理研究タスクフォースの活動
【1】 河川構造物の維持管理の高度化に関する研究
新材料チーム
水門、堰、ダムゲートなどの河川鋼構造物は厳しい腐
食環境にさらされており、適切な防食対策の適用が
構造物の維持管理上不可欠です。新材料チームで
は、塗装の高度化や耐食性材料(ステンレス、アルミ
ニウム合金、複合材料など)の適用などに関する技術
開発により、効果的で耐久性が高く、経済性に優れた
防食技術の確立を図ります。
地質チーム
河川堤防基礎地盤の調査手法に関する研究を行っ
ています。
特に地形や地質構造の調査方法、および基礎地盤の
パイピング抵抗性に関する検討を行っています。
(右は、航空写真から作成した地形段彩図で、旧河道
と自然堤防の地形がわかります。)
施工技術チーム
河川構造物に限らず、土構造物の老朽化による変状
が見つかった場合には、変状の深刻さの程度の判断
のほか、具体的な補強や更新方法などに対する知見
が必要となります。現在は、擁壁、アンカーに対する
補強や更新方法、軟弱地盤に起因して発生する変状
への対策などの研究を進めています。(右は、堤防裏
のブロック積擁壁に見られた変状です。)
巡視・点検による状態把握
維持管理がもたらす治水
機能の評価手法の検討
個々の構造物を河道を
含めた河川システムとして
一体的に評価し、最適な
維持管理水準を提示
先端技術チーム
限られた予算で効果的に機械設備を維持管理・更新
するため、個別設備のみならず、関連する複数設備
の社会的影響度等から総合評価する手法を研究をし
ています。
また、機械設備のより的確かつ効率的な維持管理の
ため、待機系設備における状態監視技術を確立する
研究をしています。
基礎材料チーム
基礎材料チームでは、構造物部分の点検・劣化診断
法を確立するため、コンクリート構造物の劣化メカニズ
ムや劣化したコンクリート構造物の点検、調査、補修
などの技術について研究しています。
土質・振動チーム
土質材料は一般的に劣化しにくい材料ですが、基礎
地盤まで含めて考えると、圧密沈下により樋門等の基
礎のある構造物の周辺では空洞が生じ、一般部でも
嵩上げが必要となるなどの変状が経年的に発生する
場合もありますので、これらの問題について、実態の
把握や評価技術などに関する調査研究を進めていき
ます。
水理チーム
構造物周辺の洗掘・侵食等の洪水中の地形変化メカ
ニズム(構造物周辺の河岸侵食や河床洗掘について
の経時変化、流木集積等が加わった場合のこれらの
状況変化)について研究しています。
35
30
橋梁のみ
25
標高(cm)
河川研究室
整備段階や維持管理計画策定の際に、複数の維持
管理案の中から最適な方法を選択するため、個々の
河川構造物を河道を含めた河川システムとして一体
的に捉え、維持管理がもたらす治水効果を明示的に
評価する手法について検討しています。例えば、巡
視・点検・維持補修が治水機能の確保に果たす効果
を評価する手法を提案します。
流木集積
20
15
流木設置タイミング
10
0
200
400
600
800
経過時間(sec)
1000
1200
河川構造物管理研究タスクフォースの活動
技術相談
【2】 現場支援
1)技術相談
河川構造物の維持管理技術には、構造物として土木構造物(コ
ンクリート構造物、鋼構造物、土構造物)、機械施設、電気施設そ
れぞれの技術体系を有するとともに、マネージメントとして点検、
分析、評価、補修の横断的な技術体系があり、維持管理の実務
においては、これらを総合的に取り扱うことが重要である。国総研、
土研の河川構造物の維持管理に関する専門家集団であるタスク
フォースは、劣化損傷の状況に応じて、必要な専門家チームを組
織して、現場からの技術相談に対応します。また、専門家チーム
を現地に派遣して、現地指導を行います。
現地調査
新技術の活用
確実かつ安全に古い塗膜を除去
(インバイロワン、特許権第3985966号)
2)維持管理ナレッジデータベース
河川構造物の維持管理においては、10年、20年単位での「継続」
が重要です。このため、補修履歴をその技術的な背景も含めて
保存することが重要になります。タスクフォースで受け付けた技術
相談の案件については、ナレッジデータ・ベースとして、損傷状況、
診断結果、補修方法などをデータベース化して管理します。また、
その後も状況についても事務所と連携してモニタリングを継続し
て追跡調査を継続します。この結果、構造物を継続的に追跡する
ことが可能となるとともに、技術開発のニーズの抽出が可能となり
ます。
本省
政策立案
長寿命化計画
モデル事務所
指定
3)技術情報の発信・交流
より合理的な維持管理には、現場の技術力の向上が不可欠です。
このため、タスクフォースのホームページを立ち上げ、劣化事例や
補修事例、点検や補修に関する新技術、技術相談案件、事務所
の取り組み、タスクフォースメンバーの研究などを紹介して、現場
の技術力の向上を目指します。また、産官学をメンバーとしたワー
クショップを開催して、情報交流の場を創出します。さらに、異分
野の維持管理の動向を把握し、維持管理をより高度化するため
に、専門家による講演会を開催します。これらの結果はHPで情報
提供します。
地整
施設管理
事務所
事務所
情報提供
(政策ニーズ・研究ニーズ)
河川構造物
保全政策
技術的助言
情報提供(新技術)
技術相談
情報提供
(現場ニーズ)
TF
技術支援
技術開発
助言
アドバイザーチームの派遣
情報提供(新技術)
チーム
研究室
チーム
河川構造物管理研究タスクフォースの活動計画
【1】全体目標
タスクフォースは、土研・国総研が担う研究開発、助言・技術指導を組
織化することにより
1) 技術、マネジメントの両面において河川維持管理をより
高度化させること(発展)
2)効果的・効率的な河川維持管理に係る最新の技術を現場に
導入し、根付かせること(導入・定着)
を目標とする。
【2】当面の取り組み課題
(1)各種河川構造物にかかる劣化予測等に関する技術検討
課題A:河川堤防の劣化評価技術に関する総合的な研究
課題B:機械設備、コンクリート構造物等の劣化予測技術のフォロー
課題C:河川構造物の維持管理に関する各分野の研究開発に関する
意見交換、相互調整
(2)河川構造物の中長期マネジメント技術に関する研究
課題D:大臣プロジェクト(特に、維持管理更新・費用の推計)に係る
技術的フォロー
課題E:維持管理更新・費用の推計を含む社会資本マネジメントに
関する他分野研究のフォロー
(3)実務及び行政への助言
課題F:河川管理課長会議等における点検・劣化診断技術検討への
助言
課題G:現地における個別案件のうち総合的検討が必要な場合の
意見調整
【3】3年間の活動計画(戦略)
1)連絡会議:
左記の課題に関する情報共有を図るため、タスクフォースメンバー
(本省リエゾン含む)によるタスクフォース連絡会議を3ヶ月に1回程度の
頻度で開催する。
2)テーマ設定:
タスクフォースと本省が連携して、現場で検討すべき技術テーマを設
定する。
3)モデル河川:
タスクフォースと本省が連携して、上記により設定されたテーマに対
応して維持管理技術に取り組む現場を選定する。
4)劣化・補修事例集:
劣化事例集や補修事例集を作成する。
5)相談窓口:
事務所に対する支援体制を構築し、相談に総合的に対応するために
設置する。それを整備局に周知すると伴に、窓口の1本化により情報の
集約を図る。
6)維持管理ナレッジDB:
技術相談案件について相談内容、指摘事項及び対応を整理したナ
レッジデータベース(DB)を構築していく。また、劣化・補修事例を収集
成果を踏まえて、過去のデータの整理にも取り組む。
7)HP(活動報告書):
タスクフォースの活動(事例集、技術相談実績、維持管理技術開発、
講演会など)を事務所に周知するHP(活動報告書)を開設する。
8)河川管理課長会議等:
タスクフォースの活動を周知するとともに、実務及び行政上の課題や
ニーズを把握するために、会議のテーマに応じてタスクフォースのメン
バーが参加する。
9)WS・講演会:
産官学の河川構造物の維持管理の関係者によるWSや他分野
(鉄道、ビル、エレベーターなど)の専門家の講演会を開催する。
これからの水防災システム
 L2=>浸水想定=>災害警戒区域、災害特別警戒区域
=>多重防護(防護施設)、指定避難施設、用途規制、建築規
制
 避難の主体である住民の意識が重要
 L1を超えた状態=>構造物の粘り強さ=>天端被覆工、裏
法被覆工、裏法尻基礎工=>弱点を補強する(バランス)
 平常時~L1までは、きちんと機能する状態を維持することが
前提(管理の主流化、PDCAサイクル、点検において異常を察
知する技術力)
 予測の限界を踏まえた活用(技術と社会)
ご清聴ありがとうございました。
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